Re: 手探り航法・旅日記
Re: 手探り航法・旅日記
msg# 1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
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居住地: 兵庫県
投稿数: 650
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ブロンコ改の燃費テスト第2弾です。
前回に引き続き、大阪・八尾空港から、私の母港・松山空港まで移動しながら、さらに詳しい測定を行いました。
その結果、先日ご紹介しました「ブロンコの場合、エンジン全開飛行は、もっとも燃費のいいフライト」だろうという仮説は…たいへん申し訳ありませんが、半分ほど間違っていたことが分かりました。
実際の燃料消費パターンは、さすがにもう少し、複雑になっています。以下にテスト飛行の内容と、その結果をご紹介させて頂きます。例によって、まずフライトプランをお目に掛けます。
■ブロンコ改の燃費テスト・その2■(八尾空港から松山へ)
◎八尾空港
▼247度20nm
◎関空(VOR 111.8)
▼240度15nm
★友が島VOR 116.40
▼63度150nm
★串本VOR 112.90
▼313度72nm
◎徳島空港(VOR 114.90)
▼270度39nm
△三好市
▼263度15nm
△四国中央市
▼266度19nm
△西条市
▼263度24nm
◎松山空港(VOR 116.30)
これは八尾から松山への直行ルートではなく、途中の紀淡海峡で南へ折れて、紀伊半島南端の串本VORまで往復した後、四国へ向かうコースです。燃費計測では、頻繁に速度を変更します。そのつど速度が安定するまで待たねばなりませんので、この時間を稼ぐため、たっぷり寄り道をすることにしました。
●タキシング中は、とても「大食い」:
前回は、八尾空港でフライトをセーブしました。このデータをロードして、珍しくエプロンから飛行を始めます。実際にやってみますと、いきなり滑走を始めるよりも、ずっとリアルな気分を楽しむことができました。タワーとの交信や、航空管制の勉強もしてみたいですね。
時刻は、0930UTC(日本時間は午前6時半)。天候だけはリアルウエザー機能で読み込まれ、西寄りの風約6Kt。快晴です。燃料は前回のまま補給せず、機内タンクがほぼ満タンの2063Lbs。補助タンクは容量の約3分の2にあたる3215Lbsです。
…エプロンから誘導路に入り、風下に当たる、主滑走路の東端に向けてタキシング。滑走路の直前で、規則通りに一時停止。燃料を最終的にチェックしますと、5分余りの地上走行で、126Lbsも使っていました。巡航なら約30nm飛べる量です…ああ、もったいない!!
他機がいないのを確認して(いるはずも、ありませんが)滑走路に入り、エンジン全開。5000ftの滑走路をいっぱいに使って、エアボーン。直ちに機首を、紀淡海峡の友が島VORに向けます。
●やれやれ、計り直しかぁ!!:
この時点ではまだ、毎分の燃費は全開時が最良だろうと思っていましたので、各高度の最高速と燃費を手早く計って、さっさと松山に向かうつもりでした。
そこでエンジン全開のまま、まず高度2000ftの最高速度をチェックしますと、258Ktをマーク。ここで補助タンクの残量を、1分間隔で2回計測すると、消費量は毎分19Lbs。以前計った200〜220Ktの燃費(各高度で毎分16Lbs)より16%も増えています。1Lbsあたりの飛行距離を算出しても、明らかに減少しています。
これには相当、がっかりしました。やはりもう一度、何種類もの速度・高度できっちり燃費を計り、もっとも経済的な飛行条件を改めて発見するしかない、というわけです。
燃費は、単純な高度と速度の関数ではありません。かといって、エンジン回転数の関数でもなし。回転数が同じ100%であっても、飛行条件によって、ターボプロップ・エンジンの発生トルクは変動します。トルクと燃費の間には相関がみられますが、これまた高度に影響を受けます。結局あらゆる要素が、相互に絡み合っているようですね。
…ブロンコの計器盤には、エンジン計器が3段2列に並んでいます。上から順に、
・トルク計 :フルスケール2000FT-Lbs(フィート・ポンド)
・回転計 :フルスケール100%
・排気温度計:レッドゾーン880度C
となっています。私はこれら6つの計器を見ながら、これから始まる測定の手間を想像して、ちょっとため息をつきました。
●ひたすら計測あるのみ:
200〜220Ktの燃費は前回、低空から20000ftまで計測済みですので、今回はもっと高速域を試すことにします。
改めて2000ftから順に、5000ft刻みで高度を上げながら、まず各高度の最高速度と、燃料消費率を測定。次いで速度を10〜20Kt下げて計り、最良の燃費が得られる速度を探りました。
飛行の詳細は省略しますが、結果的にはフライトプランの飛行距離では足りず、最終的に太平洋に出て南下を続け、串本VORから190度・82nm沖まで進出してしまいました。
ここから反転して測定を続け、次第に上昇率が鈍るなか、ようやく高度30000ftの計測に入ったのが、徳島空港の上空です。エンジンのトルクは低空の約半分まで落ちてしまい、非常にゆっくり加速しています。吉野川に沿って西へ飛びながら、時間を掛けて最高速度を測定しました。
1105時。徳島空港の西22nmで、やっと速度計が止まり176Ktを記録。ここで機体がゆっくりと、軽いピッチングを始めました。
手動操縦で修正は利くものの、オートパイロットに戻すと、次第に揺れが大きくなります。悪性の、いわゆる「発散性の振動」です。私はブロンコを改造する際、かなり手間を掛けて調整し、高速域の揺れを止めたのですが。高空で空力特性が変わると、こんな速度で再発することもあるのですね。
軽負荷(燃料が少ない状態)ですと、ブロンコ改は37000ftあたりまで上昇可能ですが、現在の機体重量では、安定性の面でもパワーの点でもこのあたりが、一応の限界のようです。少し残念ですが燃費テストを打ち切って、一気に高度1500ftまで急降下しました。
●松山空港へゴールイン:
さあ、高度を落としてしまえば、ブロンコ改は元気です!! 徳島・松山間は少々、物騒な飛び方を試みました。
データは取ったし、補助タンクの残りだけで、松山までは十分届きますから、もう燃費は関係ありません。1500ftまで下げた後、吉野川の谷間を地上すれすれに、全速力で突進。各地でしばしば、米軍機が行って問題になった、地形追従訓練みたいな飛び方です。実世界でしたら、これはとんだ「低空暴走族」。ちょっと気が引けますが、なかなか爽快でもあります。
「a」キーで3倍速まで上げまして…あとは高速ドライブの感覚で、徳島道と松山道の上を飛び、新居浜市を過ぎ、「桜三里」の峠をすれすれに飛び越えると、もう松山平野です。
道後温泉や城山に、超低空であいさつし。沖にある興居島を回って着陸コースへ。過速気味ながら、ふんわりタッチダウン。エプロンに乗り入れて、エンジンを切りました。松山空港よ…ただいまっ!!
●ベスト燃費が得られる速度は、低空で240Kt:
終わってみると、かなりきれいな燃費データが出ました。分かりやすい部分を、以下にまとめます。高度別データのうち、一番上の数値は最高速度です。最初の2000ftでは、燃費の最良点を探ろうとして、かなり細かく速度を変えています。末尾の「航続力」という項目は、燃料1ポンドあたりの飛行距離です。
高度 速度 回転数 発生トルク 毎分消費 航続力
(ft) (Kt) (%) (FT-Lbs) (Lbs/nin) (nm/Lbs)
2000 258 100 1410 19 0.226
247 98 1300 17.8 0.231
240 96 1195 16.7 0.240
235 95 1140 16.3 0.240
5000 253 100 1360 18.7 0.225
240 98 1200 16.7 0.240
10000 243 100 1220 16.7 0.243
240 100 1180 16.3 0.245
15000 223 100 1010 16.1 0.231
20000 199 100 900 16.3 0.203
25000 188 100 740 16.4 0.191
30000 176 100 680 16.2 0.181
(表が少々、デコボコして済みません。毎度難しいです)
以上の測定結果から、
「高度15000ft未満では、おおむね240Ktが最良。
15000ft以上では、最高速が一番燃費がいい」
ということが実証できました。
これまでは実機のスペックなどを基にして、約200Ktが経済速力だと思っていたのですが、実はもっと速度が出せたのですね。
エンジントルクに注目しますと、10000ft以下では約1200FT-Lbsを発生している時が、もっとも経済的です。表にない任意の高度を飛ぶ場合は、この出力にスロットルを合わせるべきでしょう。
また以前は簡単な試験結果から、低空ほど燃費がいいと信じていましたが、240Ktで巡航する場合は、厳密に言えば高度10000ftが、ごく僅差ながらベストの結果になりました。
以上をもとに、ブロンコ改の航続力を計算します。離着陸や上昇にも燃料が必要なので、概算ではありますが、
・10000ft以下では、まず間違いなく1500nm以上。
・高度30000ftを維持しても、1100nm以上。
…が期待できそうです。
この数値ですと、太平洋をアリューシャン経由で、また大西洋をアイスランド・グリーンランド経由で横断すれば、ブロンコ改でも東西周りの世界一周が可能です。ただし私がやってみたい、カリフォルニア・ハワイ間の無着陸を狙うなら、さらに機体を改造しないと無理。この場合、重い燃料を積んで、離陸できるかどうかは未知数です。
高度別の燃費特性は、本当はエンジン性能ファイル(T76.xml)に書き込んである、数表を見れば分かるはずです。どなたか解析してくださると、誠にありがたいのですが…(^^;)。
○
ここで、今回寄港しました大阪・八尾空港にまつわるお話をご紹介しましょう。ここは関西の自家用フライトの中心地で、落語家の桂文珍さんも、風変わりな愛機を駐機しています。
●文珍師匠の、「空飛ぶ羽織」:
かつて但馬空港がオープンした折、「初めて着陸したのは、桂文珍さんの自家用機でした」との報道があって。その時は「あーそうですか、物好きな芸能人ですな」と思いました。芸能人のパイロットと言えば、私は故・横山やすしさんの印象が強く。氏が大昔、セスナを買って報道陣に公開した時は、例によって…かなり酩酊しておられたので、正直あまり、いい印象は受けなかったのです(^^;)。
だがしかし。文珍さんについては、2カ月ほど前にNHKの特集を見て以来、「こりゃなかなか、本物のパイロットだ」と、すっかり認識を新たにしました。感心した理由は二つありまして。第一は文珍さんの、飛行機選びのセンスです。
愛機はドイツ製の、スピードカナードSCOIB−160という、タンデム複座の軽飛行機ですが、これが実にお洒落な機体。FlightGearホームページの最上段、青いタイトルの左に画像が載っている、先尾翼(カナード)型の軽飛行機と、ほぼ同型です。
ただし胴体は別物のようで、グライダーの機首部分みたいな流線型。非常にスマートで、かなりSF的な機体です。初の民間宇宙船「スペースシップワン」や、世界無着陸一周機「ボイジャー」を設計したバート・ルータンの作で、国内にはこれ1機とか。
最大巡航速度は約200Kt、経済速度約150Ktと、レシプロ単発機としては比較的高速です。カナード機だけに失速特性は良く、勝手に頭を下げてリカバーするそうです。フラップはなし。サイドスティック式の操縦桿を持つため、コクピットはF-16に少し似ています。
感心の第二は、操縦の腕前です。飛行経験はすでに1200時間を突破。番組では「出演が三つ重なったため、後部座席に羽織を積んで、広島と宮崎、長崎を1日で回ったことがあって。達成した時は、やったぁ! と思いましたね」と語っておられました。これには正直、舌を巻きました。つまり文珍さんは、計器飛行もできるのです。
八尾からこの3空港を回りますと、全行程は直線でも715nmです。単純計算で5時間弱。これに発着時のタイムロスと、出演時間や前後の時間調整がある上、放送局や演芸場への往復(長崎空港は特に、市内から遠い)にも何時間か必要です。八尾への帰着は、恐らく夜になってから。天候だってその間、どんどん変化します。となると、有視界飛行の資格だけでは、まず無理…ではないでしょうか。
事実、調べてみますと文珍さんは、自家用ライセンス取得後、わずか3年で計器飛行の資格を得ています。失礼ながら決して若くなく、多忙を極める芸人さんとしては、並みの精進ではないと思います。うーむ、これからは「文珍師匠」とお呼びしようかな…(^^)。
以下のサイトでは、ご本人がユーモアたっぷりに、フライト人生を語っています。
・「落語的飛行のすすめ」
http://www2g.biglobe.ne.jp/~aviation/bunchin.html
ブロンコ改の燃費テスト第2弾です。
前回に引き続き、大阪・八尾空港から、私の母港・松山空港まで移動しながら、さらに詳しい測定を行いました。
その結果、先日ご紹介しました「ブロンコの場合、エンジン全開飛行は、もっとも燃費のいいフライト」だろうという仮説は…たいへん申し訳ありませんが、半分ほど間違っていたことが分かりました。
実際の燃料消費パターンは、さすがにもう少し、複雑になっています。以下にテスト飛行の内容と、その結果をご紹介させて頂きます。例によって、まずフライトプランをお目に掛けます。
■ブロンコ改の燃費テスト・その2■(八尾空港から松山へ)
◎八尾空港
▼247度20nm
◎関空(VOR 111.8)
▼240度15nm
★友が島VOR 116.40
▼63度150nm
★串本VOR 112.90
▼313度72nm
◎徳島空港(VOR 114.90)
▼270度39nm
△三好市
▼263度15nm
△四国中央市
▼266度19nm
△西条市
▼263度24nm
◎松山空港(VOR 116.30)
これは八尾から松山への直行ルートではなく、途中の紀淡海峡で南へ折れて、紀伊半島南端の串本VORまで往復した後、四国へ向かうコースです。燃費計測では、頻繁に速度を変更します。そのつど速度が安定するまで待たねばなりませんので、この時間を稼ぐため、たっぷり寄り道をすることにしました。
●タキシング中は、とても「大食い」:
前回は、八尾空港でフライトをセーブしました。このデータをロードして、珍しくエプロンから飛行を始めます。実際にやってみますと、いきなり滑走を始めるよりも、ずっとリアルな気分を楽しむことができました。タワーとの交信や、航空管制の勉強もしてみたいですね。
時刻は、0930UTC(日本時間は午前6時半)。天候だけはリアルウエザー機能で読み込まれ、西寄りの風約6Kt。快晴です。燃料は前回のまま補給せず、機内タンクがほぼ満タンの2063Lbs。補助タンクは容量の約3分の2にあたる3215Lbsです。
…エプロンから誘導路に入り、風下に当たる、主滑走路の東端に向けてタキシング。滑走路の直前で、規則通りに一時停止。燃料を最終的にチェックしますと、5分余りの地上走行で、126Lbsも使っていました。巡航なら約30nm飛べる量です…ああ、もったいない!!
他機がいないのを確認して(いるはずも、ありませんが)滑走路に入り、エンジン全開。5000ftの滑走路をいっぱいに使って、エアボーン。直ちに機首を、紀淡海峡の友が島VORに向けます。
●やれやれ、計り直しかぁ!!:
この時点ではまだ、毎分の燃費は全開時が最良だろうと思っていましたので、各高度の最高速と燃費を手早く計って、さっさと松山に向かうつもりでした。
そこでエンジン全開のまま、まず高度2000ftの最高速度をチェックしますと、258Ktをマーク。ここで補助タンクの残量を、1分間隔で2回計測すると、消費量は毎分19Lbs。以前計った200〜220Ktの燃費(各高度で毎分16Lbs)より16%も増えています。1Lbsあたりの飛行距離を算出しても、明らかに減少しています。
これには相当、がっかりしました。やはりもう一度、何種類もの速度・高度できっちり燃費を計り、もっとも経済的な飛行条件を改めて発見するしかない、というわけです。
燃費は、単純な高度と速度の関数ではありません。かといって、エンジン回転数の関数でもなし。回転数が同じ100%であっても、飛行条件によって、ターボプロップ・エンジンの発生トルクは変動します。トルクと燃費の間には相関がみられますが、これまた高度に影響を受けます。結局あらゆる要素が、相互に絡み合っているようですね。
…ブロンコの計器盤には、エンジン計器が3段2列に並んでいます。上から順に、
・トルク計 :フルスケール2000FT-Lbs(フィート・ポンド)
・回転計 :フルスケール100%
・排気温度計:レッドゾーン880度C
となっています。私はこれら6つの計器を見ながら、これから始まる測定の手間を想像して、ちょっとため息をつきました。
●ひたすら計測あるのみ:
200〜220Ktの燃費は前回、低空から20000ftまで計測済みですので、今回はもっと高速域を試すことにします。
改めて2000ftから順に、5000ft刻みで高度を上げながら、まず各高度の最高速度と、燃料消費率を測定。次いで速度を10〜20Kt下げて計り、最良の燃費が得られる速度を探りました。
飛行の詳細は省略しますが、結果的にはフライトプランの飛行距離では足りず、最終的に太平洋に出て南下を続け、串本VORから190度・82nm沖まで進出してしまいました。
ここから反転して測定を続け、次第に上昇率が鈍るなか、ようやく高度30000ftの計測に入ったのが、徳島空港の上空です。エンジンのトルクは低空の約半分まで落ちてしまい、非常にゆっくり加速しています。吉野川に沿って西へ飛びながら、時間を掛けて最高速度を測定しました。
1105時。徳島空港の西22nmで、やっと速度計が止まり176Ktを記録。ここで機体がゆっくりと、軽いピッチングを始めました。
手動操縦で修正は利くものの、オートパイロットに戻すと、次第に揺れが大きくなります。悪性の、いわゆる「発散性の振動」です。私はブロンコを改造する際、かなり手間を掛けて調整し、高速域の揺れを止めたのですが。高空で空力特性が変わると、こんな速度で再発することもあるのですね。
軽負荷(燃料が少ない状態)ですと、ブロンコ改は37000ftあたりまで上昇可能ですが、現在の機体重量では、安定性の面でもパワーの点でもこのあたりが、一応の限界のようです。少し残念ですが燃費テストを打ち切って、一気に高度1500ftまで急降下しました。
●松山空港へゴールイン:
さあ、高度を落としてしまえば、ブロンコ改は元気です!! 徳島・松山間は少々、物騒な飛び方を試みました。
データは取ったし、補助タンクの残りだけで、松山までは十分届きますから、もう燃費は関係ありません。1500ftまで下げた後、吉野川の谷間を地上すれすれに、全速力で突進。各地でしばしば、米軍機が行って問題になった、地形追従訓練みたいな飛び方です。実世界でしたら、これはとんだ「低空暴走族」。ちょっと気が引けますが、なかなか爽快でもあります。
「a」キーで3倍速まで上げまして…あとは高速ドライブの感覚で、徳島道と松山道の上を飛び、新居浜市を過ぎ、「桜三里」の峠をすれすれに飛び越えると、もう松山平野です。
道後温泉や城山に、超低空であいさつし。沖にある興居島を回って着陸コースへ。過速気味ながら、ふんわりタッチダウン。エプロンに乗り入れて、エンジンを切りました。松山空港よ…ただいまっ!!
●ベスト燃費が得られる速度は、低空で240Kt:
終わってみると、かなりきれいな燃費データが出ました。分かりやすい部分を、以下にまとめます。高度別データのうち、一番上の数値は最高速度です。最初の2000ftでは、燃費の最良点を探ろうとして、かなり細かく速度を変えています。末尾の「航続力」という項目は、燃料1ポンドあたりの飛行距離です。
高度 速度 回転数 発生トルク 毎分消費 航続力
(ft) (Kt) (%) (FT-Lbs) (Lbs/nin) (nm/Lbs)
2000 258 100 1410 19 0.226
247 98 1300 17.8 0.231
240 96 1195 16.7 0.240
235 95 1140 16.3 0.240
5000 253 100 1360 18.7 0.225
240 98 1200 16.7 0.240
10000 243 100 1220 16.7 0.243
240 100 1180 16.3 0.245
15000 223 100 1010 16.1 0.231
20000 199 100 900 16.3 0.203
25000 188 100 740 16.4 0.191
30000 176 100 680 16.2 0.181
(表が少々、デコボコして済みません。毎度難しいです)
以上の測定結果から、
「高度15000ft未満では、おおむね240Ktが最良。
15000ft以上では、最高速が一番燃費がいい」
ということが実証できました。
これまでは実機のスペックなどを基にして、約200Ktが経済速力だと思っていたのですが、実はもっと速度が出せたのですね。
エンジントルクに注目しますと、10000ft以下では約1200FT-Lbsを発生している時が、もっとも経済的です。表にない任意の高度を飛ぶ場合は、この出力にスロットルを合わせるべきでしょう。
また以前は簡単な試験結果から、低空ほど燃費がいいと信じていましたが、240Ktで巡航する場合は、厳密に言えば高度10000ftが、ごく僅差ながらベストの結果になりました。
以上をもとに、ブロンコ改の航続力を計算します。離着陸や上昇にも燃料が必要なので、概算ではありますが、
・10000ft以下では、まず間違いなく1500nm以上。
・高度30000ftを維持しても、1100nm以上。
…が期待できそうです。
この数値ですと、太平洋をアリューシャン経由で、また大西洋をアイスランド・グリーンランド経由で横断すれば、ブロンコ改でも東西周りの世界一周が可能です。ただし私がやってみたい、カリフォルニア・ハワイ間の無着陸を狙うなら、さらに機体を改造しないと無理。この場合、重い燃料を積んで、離陸できるかどうかは未知数です。
高度別の燃費特性は、本当はエンジン性能ファイル(T76.xml)に書き込んである、数表を見れば分かるはずです。どなたか解析してくださると、誠にありがたいのですが…(^^;)。
○
ここで、今回寄港しました大阪・八尾空港にまつわるお話をご紹介しましょう。ここは関西の自家用フライトの中心地で、落語家の桂文珍さんも、風変わりな愛機を駐機しています。
●文珍師匠の、「空飛ぶ羽織」:
かつて但馬空港がオープンした折、「初めて着陸したのは、桂文珍さんの自家用機でした」との報道があって。その時は「あーそうですか、物好きな芸能人ですな」と思いました。芸能人のパイロットと言えば、私は故・横山やすしさんの印象が強く。氏が大昔、セスナを買って報道陣に公開した時は、例によって…かなり酩酊しておられたので、正直あまり、いい印象は受けなかったのです(^^;)。
だがしかし。文珍さんについては、2カ月ほど前にNHKの特集を見て以来、「こりゃなかなか、本物のパイロットだ」と、すっかり認識を新たにしました。感心した理由は二つありまして。第一は文珍さんの、飛行機選びのセンスです。
愛機はドイツ製の、スピードカナードSCOIB−160という、タンデム複座の軽飛行機ですが、これが実にお洒落な機体。FlightGearホームページの最上段、青いタイトルの左に画像が載っている、先尾翼(カナード)型の軽飛行機と、ほぼ同型です。
ただし胴体は別物のようで、グライダーの機首部分みたいな流線型。非常にスマートで、かなりSF的な機体です。初の民間宇宙船「スペースシップワン」や、世界無着陸一周機「ボイジャー」を設計したバート・ルータンの作で、国内にはこれ1機とか。
最大巡航速度は約200Kt、経済速度約150Ktと、レシプロ単発機としては比較的高速です。カナード機だけに失速特性は良く、勝手に頭を下げてリカバーするそうです。フラップはなし。サイドスティック式の操縦桿を持つため、コクピットはF-16に少し似ています。
感心の第二は、操縦の腕前です。飛行経験はすでに1200時間を突破。番組では「出演が三つ重なったため、後部座席に羽織を積んで、広島と宮崎、長崎を1日で回ったことがあって。達成した時は、やったぁ! と思いましたね」と語っておられました。これには正直、舌を巻きました。つまり文珍さんは、計器飛行もできるのです。
八尾からこの3空港を回りますと、全行程は直線でも715nmです。単純計算で5時間弱。これに発着時のタイムロスと、出演時間や前後の時間調整がある上、放送局や演芸場への往復(長崎空港は特に、市内から遠い)にも何時間か必要です。八尾への帰着は、恐らく夜になってから。天候だってその間、どんどん変化します。となると、有視界飛行の資格だけでは、まず無理…ではないでしょうか。
事実、調べてみますと文珍さんは、自家用ライセンス取得後、わずか3年で計器飛行の資格を得ています。失礼ながら決して若くなく、多忙を極める芸人さんとしては、並みの精進ではないと思います。うーむ、これからは「文珍師匠」とお呼びしようかな…(^^)。
以下のサイトでは、ご本人がユーモアたっぷりに、フライト人生を語っています。
・「落語的飛行のすすめ」
http://www2g.biglobe.ne.jp/~aviation/bunchin.html
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手探り航法・旅日記
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Re: 手探り航法・旅日記
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コンコルドのバーチャル・クルーたち
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コンコルドのマニュアル訳(前回の続きです)
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コンコルドで初の超音速飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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サンテグジュペリの郵便飛行
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サンテグジュペリの郵便飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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天測航法に挑む(前編)
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天測航法に挑む(後編)
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- ホンダジェット試乗と大瀑布 (hide, 2008-6-27 21:01)
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天測航法に挑む(後編)
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