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Re: 手探り航法・旅日記

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通常 Re: 手探り航法・旅日記

msg# 1.1.1.1.1.1.1.1.1
depth:
8
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2006-2-11 7:12
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 650
 皆さんこんばんは、hideです。
さて…極地冒険飛行の次は、いっそう本格的に、航法のお話に取り
組みます。

 ■フライトシムの航法とは?■
 私は、ここに書かせて頂くのをきっかけに、自分のフライトシミ
ュレータ航法を、基本から整理して勉強し直したいと思いまして、
先日来、これまでに買った飛行機や航空管制の本を読み返したり、
ネットを漁ったりしていました。
 この日本語版HPの「作業場のページ」で、zeek52さんがまとめら
れた労作「NAVの簡単な使い方」を拝見しますと、

 「こちらは英語のページですが絵をたくさん使ってNAVについて
  説明してるので読みやすいです
  http://www.navfltsm.addr.com/index.htm」
というご紹介があります。

 私も最近、全体の四分の一ばかりを、斜め読みさせて頂きました
が、確かにすごい入門書ですね。米国の航空ナビゲーションの歴史
を紹介しつつ、主にMSFSを使って非常にリアルな航法を行うための
網羅的な解説が、基礎からぎっしり詰まっており。「あれは、こう
なっていたのか!」と、うなることもしばしば。これを丹念に全訳
すれば、用は足りてしまうのですが、なにぶん版権の問題がありま
すし、私の語学力では、もともと無理な相談です(^^;)。

     ○

 思えば…フライトシムで遊ぶ場合は「どの程度、リアルな航法を
やるべきか」という問題がついて回ります。ざっと整理すると以下
のような選択肢がありそうです。

(A)アプリケーションの機能を最大限活かして、極限まで実機に
   近い飛行を目指す。これは非常にやりがいがある半面、勉強
   が大変です。まず航空図から、買い集めなくては…。

(B)ならば、できるだけ楽をしたい。
    近距離は、Atlas利用の「カーナビ・フライト」で十分に
   間に合います。実機でも、VFR(有視界飛行方式)の資格で
   自家用機を駆るアマチュアパイロットが、GPSを使って飛び
   回る場合は、これにやや近いのかなと思います。フライトシ
   ムですと、Atlasに地形が一応表示されるので、ほぼ全天候
   の飛行も可能ですね。ただし慣れると、或いは物足りなくな
   ってくるかも知れませんが。
    長距離飛行は、私としましては、以前お話しした「ラーム
   ライン航法」を、強くお勧めしたいところです。ただしこの
   方法は、いわば地球儀の上に、ざっと絵を描くようなテクニ
   ックで、正直あまり悪天候のことを考えていません! 実際
   問題として、ちょっと派手に雲を出すと、山岳地帯の空港な
   どには降りられず、電波航法と併用する必要があります。
   そこで…

(C)興味と必要に応じ、リアルな航法テクニックを加えていく。
   具体的には、電波航法を一応使いこなす…というあたりが、
   やはり現実的だろうと思います。

 本連載は今後、ある程度までは実世界のフライトを意識しつつ、
FlightGearの世界を楽しみながら、皆さんとともに、より便利な全
天候ナビゲーションの確立を目指したいと思います。
 あくまでも、私が素人なりに理解した範囲ですので、ここが間違
っているとか、このほうが飛びやすい、というご意見をお待ちいた
します。また仕事が忙しいときは、しばらく連載をさぼりますが、
どうか、ご容赦をお願い申し上げます(^^;)。

 ■単位と記号■
  次に進む前に、本連載で使う単位や記号を整理しておきます。
 距 離:ノーティカル・マイル(1海里=1852m。単位記号nm)
 速 度:ノット(1ノットは時速1nm。単位記号はKt)
     実際は、指示対気速度(KIAS)や真対気速度(TAS)、
     さらに対地速度などの別があり、それぞれ役目が違うが
     ここでは省略します。
 高 度:フィート(1フィート=約0.3m。単位記号ft)
 方 位:度(北をゼロにして右回り。普通は磁気方位)
 燃 料:搭載量はガロン(容積)かポンド(重量)で表示。
    (1ガロン=約4リットル、単位記号gal)
    (1ポンド=約0.45キログラム。単位記号Lbs)
    ●注●:FlightGearは、一部の機体では、燃料の搭載量に
    よる重量変化を精密に再現しています。例えば双発セスナ
    C310のYasim版は、片翼タンクから燃料を抜くと、地上で
    派手に傾きます。
     しかし燃料の重さや、飛行による燃料の消費を省略して
    しまった機体もまた、たくさんあります。つまり…いくら
    飛んでも、ガス欠が起きない場合があります。

 周波数:キロヘルツ(日本の航空図は一部メガヘルツ表示ですが
     FlightGearでは、キロヘルツに統一されているようです
     ので、これに合わせることにします。単位記号KHz)

 ■あれこれのルール■(その1:計器飛行と有視界飛行)
 ちょっとだけ、航空法関係のお話をします。
 複雑な管制区に分かれた、実際の空のお話はさておいて、まずは
どんな場合に、パイロットの自由意志がものを言うVFR(有視界飛
行方式)で飛んでいいのか、或いは完璧な誘導を受けるIFR(計器
飛行方式)を使うべきか、簡単に見てみましょう。

 ・VFRの条件:(VMC=有視界飛行の気象条件)
(以下は簡略版。また私の本は古いので、少し変わっているかも)
 3000m以上で飛ぶ航空機(つまりジェット機):
   視程8000m以上で、かつ、
    雲から上下300m以上、水平に1500m以上離れていること。
 3000m以下で飛ぶ航空機(プロペラ機):
   視程5000m(管制区域内)か1500m以上(区域外)で、かつ、
    雲から上150m以上、下300m以上、水平に600m以上離れて
    いること。

 …こう書いてみると、やはり相当、面倒ですね。
とりあえず、フライトシムの場合は「速度が速いジェット機のほう
が当然、視程がよくなければならない。ジェット機で約4nm、プロ
ペラ機でも約3nm先が見える必要がある」「雲からは上下1000ft、
水平距離で1nmくらい離れている必要がある」と理解しておけば、
間に合いそうです。
 …ではなぜ視程は、この距離に決められているのでしょう?

 ■ナビの土台は、実は着陸■
 この視程の問題は、着陸の際に、どのくらい先から滑走路が見え
なくては危険か、という問題に関係しています。
 私の実感では、飛行というものはすべて、最大の難関である目的
地への着陸操作から逆算して、航法も操縦も、すべての手順が決め
られていると思います。そこで今回は私の着陸手順を、少し詳しく
お話しします。
 滑走路への進入角は通常、俯角にして約3度です。実際の進入方
式は、いずれご紹介する通り様々ですが、フライトシムで有視界進
入する場合、私は以前FS2000の解説本で学習した、次のような方法
を基礎にしています。

 (1)着陸でまず悩むのは、いつ降下を始めたらいいのか、とい
    う問題。そこで高々度からの降下は、以下のような「3対
    1ルール」を使う。
    飛行高度(単位はft)を100で割り、続いて3で割る。
    すると、滑走路の何nm手前で降下を開始すべきか分かる。
    ●例●:36000ft÷100÷3=120nm
    つまり120nm手前でエンジンを絞って降下開始。
    徐々に減速し、ジェット機なら200Ktくらいにセット。
    機種によってはここでフラップを1、2段出す。

 (2)飛行場の十分手前(例えば約10nm)で、1500ftまで降下し
    て、いったん水平飛行にする。そして水平飛行中、徐々に
    減速しながらフラップをだんだん下ろし、最終的にフルダ
    ウンにする。車輪も早めに出しておく。速度は最終進入速
    度に合わせる。ジェット機で120〜130Kt前後。
    減速した分、どんどん降下するので、少々パワーを加えて
    水平飛行を保つ。巡航状態より低速で飛ぶ分、機首はやや
    上げた姿勢にして揚力を保つ。
    (ここで言う「高度」とは、飛行場からの高さ。従って、
    事前に標高を調べておくのが本来のやり方です。しかし
    面倒な場合は、電波高度計を使ってください。FlightGear
    のHUDを使うと、一番右の目盛りが海抜高度、その内側の
    目盛りが地上からの高度=電波高度計の指示です)

 (3)この高度からは、滑走路がよく見える。滑走路脇にある、
    PAPI(4つ一組の進入角度灯)が、全部赤く光っているの
    を確認する。そのまま接近を続ける。
    (この状態ではまだ、滑走路までかなり距離があるので、
    機体は滑走路に降りるためのグライドパス(降下経路)よ
    りも、下を飛んでいます。このまま水平に直進を続けると
    グライドパスのほうから、だんだん下がってきて、やがて
    機体と交差します)

 (4)PAPIは、赤白4つずつのライトが、それぞれ異なる角度で
    設置されている。機体の高度低下とともに一つずつ、赤か
    ら白に変色して見える。
    白色灯2つ、赤色灯2つになった時点で、ぴったりグライ
    ドパスの上にいる。ここでエンジンを4分の1くらい(機
    種による)まで絞って、最終進入を開始。
    あくまでも、エンジンを絞るだけ。機首の仰角は変えない
    ようにする。すると高度が下がるだけで、前進速度は変わ
    らない。先ほどの水平飛行時と同じ、ジェット機で120〜
    130Kt程度(機種による)をメインテイン(維持)する。

    PAPIの赤色灯が増えたら低すぎる。白色灯が増えたら高す
    ぎる。高度はパワーの増減で調整し、昇降舵はあくまでも
    補助的に使う。さもないと減速しすぎて失速したり、逆に
    過速に陥って着陸できなくなる。

 (5)あとは滑走路端にある、横断歩道みたいな縞模様の寸前で
    パワーを切って、引き起こし操作をする。タッチダウン!

 ●注●この(4)が最終的な進入開始点で、着陸の成否を決める
重大な場面です。ここで飛行場が、完全に見えていないと、着陸は
危険です。
 この地点は高度1500ft、滑走路からの距離は5nm弱。つまり先ほ
どご紹介した、VFR(有視界飛行)の気象条件は、いくらか余裕を
持って、安全な着陸開始を保障しているわけです。

 ちなみに、降下角3度のグライドパス(理想的進入経路=いわば
滑走路に通じる、ただ一本しかない大空の滑り台)の上にいる時、
高度と滑走路までの距離は、次のような関係になっています。

 距離(nm) 高度(ft)
 15     4780
 14     4460
 13     4140
 12     3820
 11     3500
 10     3180
 9     2870
 8     2550
 7     2230
 6     1910
 5     1590
 4     1270
 3     960
 2     640
 1     320

 ●おまけ●:この「高度1500ftで、いったん水平にして、しばら
く直進する」進入法は、基本的にはフライトシムのための、便宜的
な操縦法だとご了解下さい。確かに操縦しやすいので…少々昔の飛
行機はたぶん、これに近い飛び方をしていたんじゃないかと思いま
すが、現在のジェット旅客機は、各空港の着陸コースマップを見て
も、どうも、こんな水平飛行はしないような気がします。第一、騒
音が大変ですよね。

     ○

 私が南極あたりでモタモタしているうちに、Hitさんが「B737の
NAVについて」のスレッドに、ILSのことをお書きになったので、以
下をあわてて書き加えます(^^;)。とりあえずですが、少しでもご
参考になりましたら…。

 ■電波に、進入開始点を教えてもらう■
 私は、さっきお話しした、最終進入の開始点を見つけることが、
ナビの基本にしてゴールだと感じています。実は電波による誘導の
ほとんどが、どんな視界のもとでも最終的に、機体をこの位置に、
正しい高度と正しい方位角、そして正しい速度で持って行くために
あるわけですね。
 次回からいよいよ、電波航法に入らせていただきます。電波航法
にはご存じのように、主にNDBとVOR、ILSの3種類があり、すべて
FlightGearで実際に使えます。

 □電波施設には、それぞれ得意分野がある□
 このうちNDBは、無指向性の電波を四方に放つ、いわば電波の灯
台です。これで無線局(例えば空港のそばにある)の方角が分かり
ます。比較的単純な仕組みで、読み取り方も簡単。でもこれだけで
いちおうの計器進入が可能です。中波ですので、かなり遠距離から
でも受信できます。

 VORは、多数の指向性電波を、放射状に放つ仕組みです。NDBと同
様に局の方角を知ることが出来ますが、それだけでなく、無線局を
中心に、好きな方角に伸びるコースを任意に拾って、自機でトラッ
キングする(たどる)ことができます。

 VOR局の電波は空中に、絶えず航法の参考になる、目に見えない
多数の線を引いています。航空図には、飛行機からタワーへの位置
通報点として、小さな三角マークが随所に書いてありますが、そこ
に無線局があるわけではないのに、なぜこの場所が機上から分かる
のだろう、と昔は不思議に思いました。実はこれは、2つのVOR局
から来る、2本の電波の交点です。
 実機でもFlightGearでも、飛行機は2台のVOR受信機を積んでい
ますから、この交点を判別することが出来ます。具体的には、1本
のVORビームに乗って飛びながら、別の特定の1本をぴったり受信
した瞬間に、この交点の上にいるわけです。つまりVOR局は、何も
ない山中や海上にも、電波標識の代わりをする、仮想の目標地点を
作り出すことができるのです。

 □無線局までの、距離もわかる□
 VOR局には通常、DMEと呼ばれる距離測定機能が併設され、VOR電
波の受信中は、無線局までの距離や到達までの時間を、FlightGear
の計器板に、実際に表示することが出来ます。一部機体で動作確認
をしました。超短波なので、レンジはNDBより少々短くなります。

 またILSは、いわば電波で作った空中の滑り台。滑走路への着陸
コースそのものを、計器板に示します。これも以前どこかでご紹介
しましたように、FlightGearの一部の機体と空港で、動作確認をし
ました。残念ながら、このILS電波を利用して、自動着陸をする機
能まではない模様です。

 □女性オペレータと交信しませんか?□
 そのいっぽうで、搭載されている無線電話を使って、飛行場の気
象情報などを受信する仕組みがあり、実際に英語で(雑音まで入っ
た)レディオ・ボイスが聴けます。ちなみにオペレーターは女性で
す…幾つくらいかな、とか(笑)。

 いずれも回を改めて、私に分かる範囲で、FlightGear上の操作法
をご紹介します。VORは操作と読み方が少々ややこしいので、勉強
不足もあって、後回しにする予定ですが、次回はまずNDBの操作と
活用法をご紹介し、皆さんを着陸進入開始点へご案内したいと思い
ます。その後、着陸に便利なILSなどに進むつもりです。(といっ
ても、ご遠慮なくどんどん先に、何でも書いて下さいね! 一緒に
勉強しましょう)
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