サンテグジュペリの郵便飛行
サンテグジュペリの郵便飛行
msg# 1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
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居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです。ご無沙汰しました。
今回はフランスのツールーズから、スペイン南岸を経由して、アフリカ西岸・セネガルのダカールへ向かいます。
最初はコンコルドでひとっ飛び…と思ったのですが、このコースは1920年代にフランスが築いた、南米への長大な郵便航空路の一部です。特に起点となったツールーズから、バルセロナへのピレネー山脈越えは、私の大好きな飛行家・作家サンテグジュペリが、初めて郵便飛行をした区間で、この体験は後に小説「夜間飛行」や「南方郵便機」に生かされました。FlightGearで、このフライトを再現しない手はありません(^^)/。
そこで当時の郵便機に近い複葉機で、当時の航法を再現し、史実に近い夜間飛行を試みることにしました。
●使用機●
第一次大戦終了時、大量の余剰機とパイロットが民間に放出されました。まだ旅客を運ぶのは無理でも、郵便の高速輸送なら大きな需要があります。欧米ではすぐ郵便飛行が始まり、鉄道や船便に大差をつけようと、早くから危険な夜間飛行が行われ、無数のドラマを残しました。
郵便機には、比較的性能のいい2人乗り軽爆撃(偵察)機を改造して使いました。米国では、スリムなデハビランド・DH−4が主流で、前席に郵便物を積み、パイロットは視界のいい後席で操縦しました。フランスでは、ずんぐりしたブレゲー14型の両下翼に貨物庫を取り付け、パイロットは前席で操縦。サハラ砂漠では後席に、不時着に備えて現地人通訳が同乗しましたが、のちに無線電信機を積んでからは通信士が乗りました。ちなみに…パイロットが現在地を見失った場合、コンパスよりも現地人通訳の方向感覚のほうが、正確だったという説もあります。
今回のフライトのため、郵便機風の2人乗り複葉機を探したところ、過去にも一度ご紹介しました、以下のフランス語サイトで、スタンプSV4という練習機を見つけました。
http://helijah.free.fr/flightgear/hangar.htm
SV4は1930年にベルギーで造られ、有名なイギリスのデハビランド・タイガーモス練習機とよく似ています。エンジンは、同じデハビランド製のジプシー・メジャー130馬力ですから、スマートな機首の形などはそっくりです。
入手したFlightGearのモデルは、テクスチャーがpngファイルになっており、そのままではエラーが出て、機体が赤1色に表示されますので、GIMPなどでrgb形式に変換する必要があります。GIMPは現在、操作性を大幅に改善した新バージョンが出ていて、以下のサイトで入手できます。
http://www.geocities.jp/gimproject/gimp2.0.html
本機はプロペラの影響で、地上では強く右に偏向し、低速で慎重に離着陸する必要があります。空に上がってしまえば、非常に操縦しやすく、舵の効きは甘いものの、軽い曲技もできます。前後席いずれも操縦可能で、Dキーにシフトなどを絡めると、座席のサイドドアや、カウリングの開閉ができます。最高速は100Ktちょっとで、巡航速度は80Kt程度ですが、減速しても燃費はほとんど変わりません。航続距離はごく短く、150nmくらいです。パネルにはコンパスがないので、HUDを使う必要があります。
●航法●
初期の郵便機は、地上目標を確認しつつ飛ぶ「地文航法」を使いました。雲海の上で、コンパスを頼りに推測航法をするのは厳禁されていましたが、これはエンジンが故障して、雲の中を降下する際、山に衝突する恐れがあったからです。そのためパイロットはごく低空を飛び、航空図には目立つ目標や、不時着地で障害となる樹木などを、ぎっしり書き込んでいたそうです。
のちに通信士を乗せるようになると、複数の地上局が電波を方位測定し、機体の位置を割り出して針路を指示する例もありましたが、あまり精度は良くなかったようです。
地文航法には、地図が必須です。そこでGoogle Earthの画像を印刷し、ツールーズ=バルセロナ間の地図を作りました。最初は直航に近いルートを想定したのですが、よく資料を調べると、当時はまずピレネー山脈沿いに東進し、地中海近くまで出て、標高わずか1000ftの峠を越えたことが分かりました。
サンテグジュペリは作品中で、悪天候の夜間ピレネー越えを、まるで騎士と龍の壮絶な戦いのように描いていますが…彼自身、下降気流に捕まって3000ftも落下し、高度300ftで立ち直った経験があります。低くても、全天候の山越えは冒険だったのですね。
では、フライトプランをお目に掛けます。ローマ字は通過地点の町ですが、地図と見比べないと、あまり役に立ちません。また私は従来、実機通りに磁気方位を使ってきましたが、SV4は磁気コンパスがないので、HUDを使用する関係上、真方位で書いてあります。補正計算がない分、すごく楽ですが…。
■サンテグジュペリの郵便飛行■
(ツールーズ=バルセロナ間)
◎ツールーズ空港(43.37.45N-01.21.45E)
▼126度31.8nm=20分
△Casternaudary(43.19.02N-01.57.07E)
▼110度18.6nm=13分
△Carcasonne(43.12.47N-02.21.16E)
▼98度27.7nm=17分
△Narbonneの交差点(43.08.55N-02.58.51E)
▼188度27nm=17分
△Perpignan(42.42.09N-02.53.37E)
▼194度11nm=7分
△Le Boulou(42.31.29N-02.50.00E)
谷間の街。少し先で南南東へ。
▼160度3.8nm=2分半
△Le Pertus峠(42.27.53N-02.51.46E)
▼188度42nm=25分
△Macanet de la Selva(41.46.39N-02.43.55E)
ここから南西へ。海岸に出てもよい。
▼225度41nm=25分
◎バルセロナ空港(41.17.56N-02.04.53E)LEBL
(総計196nm、約2時間)
●昼の部=「鳥人」の気分を味わう:
快晴のツールーズ。SV4の前席に座ってエンジンを始動。機首を振る機体をなだめつつ離陸します。最初はルート偵察と慣熟飛行を兼ねて、真昼に飛んでみました。
ツールーズから地中海沿岸までは、運河と道路、鉄道が絡み合って南東へ延びていますので、これに沿って飛びます。私の世界一周の旅は先日まで、暗い冬の英国にいたのですが、南仏の太陽を浴びながら、高度わずか1000ft、速度100Ktでのんびり飛ぶと、コンコルドでは決して味わえない「鳥のような飛行」が堪能できて、とても楽しいフライトになりました。
複葉機の地文航法は、ちょっと原始的な「手づくり」の気分に満ちています。地平線の目標に機首を合わせ、しばらく飛んで方位を調節し、風の影響を修正。手製の地図とダイバーズ・ウォッチを見比べて、あれはカルカソンヌ、これがペルピニャンだなと、町を確かめながら進みます。ナルボンヌという町で、道路は南に分岐し、私もここから南下します。
ピレネー越えのペルテュス峠は、地中海のすぐそばにあり、もっと内陸をイメージしていた私は改めて驚きました。山越えが難しいなら、なぜ最初から海上に出なかったのか…とも思いますけれど、ブレゲー14型は、約120飛行時間に1回の割でエンジンが故障し、ほぼ同じ頻度で悪天候による不時着も相次いだので、できるだけ地上の、しかも迷いっこない、安全第一のルートを選ぶ必要があったのですね。納得しました…。
ペルテュス峠には一カ所、谷筋を間違えやすい地点があり、さっそくメモを取りました。スペイン領へ降下すると、早くも燃料が欠乏したので、海岸線に飛行場を探し出して着陸。これに懲りて、地図に路線沿いの空港を全て記入しました。
それで気付いたのですが、このルートはフランス国内でも、特に飛行場が密集しています。間隔は約50キロで、郵便機の不時着場や中継地が、現代に引き継がれているのかなと思うと、うれしくなりました。航空史というものは、例えシミュレーションであっても「現地を飛ぶ」ことで、実に多くの新発見があります。
次はいよいよ、同一ルートの夜間飛行です。
●夜の部=星々のような、地上の灯:
夜間飛行では難易度を上げようと思い、500ftから1500ftにかけて3層の雲を出しました。離陸後反転し、空港をパスする際に腕時計のゼロ目盛りを長針に合わせ、飛行時間を計ります。
夜は運河が見えないものの、道路と鉄道の灯は、相変わらず絶好の目標です。地表はよく見えませんが、照明されたサイロが幾つもあり、牧草地の上空だと分かりました。3Dオブジェクトがオンですと、町を示す四角いマークの上に教会が現れます。私は時計を頼りに、町ごとの通過予定時刻を概算し、それがまたピタリと当たるので、気分よく飛び続けました。
実機のパイロットはもっと緊張し、無意識のうちに絶えず不時着地を探していたことでしょう。ちなみに私は夜間、灯火のない小飛行場はすべて見落としました。
軽い複葉機で気流に翻弄され、広大無辺な夜空を飛ぶのは、地上との隔絶感や航法の不安に、開放座席の寒さが加わり、さぞ孤独だったろうと思います。まして同僚が、しばしば殉職するとなれば、なおさらですね。
欧米の主要航空路に灯台ができるのは、もう少し後。リンドバーグは、平原の一軒家に住む少年が、庭に100ワットの電球を灯して「あなたの郵便機が家の上を飛びます。目標にしてください」と手紙を寄こし、機上からこの灯を見るたびに、心を打たれたと書いています。
またサンテグジュペリは小説「夜間飛行」の中で、嵐で難航するパイロットが、恐怖の中でどれほど切実に「光」を求めるか、迫真的な描写を繰り広げています。彼はこうした体験から、飛行中はるか下界にまたたく灯に向かって、まるで片思いのように、そっと感情移入する習慣を身に付けました。やがて彼は、それぞれの灯を人が住む小さな星に見立て、あの「星の王子さま」を書くことになります。
○
…昼間は低く見えたピレネーが、威圧的なシルエットになって行く手を塞ぎました。私は断雲を避け、谷間を縫って上昇しましたが、危うくミスコースしそうになり、稜線をかすめてUターン。コースさえ確認できれば、あとは狭い高地を横断して、スペインの平野をめざすだけです。
昼間と同じ、海岸の飛行場に降りて給油。海岸沿いに倍速モードで飛び続け、一面に灯火が輝くバルセロナに到着。史実では郵便飛行士は、アリカンテまで飛んで交代したのですが、一応堪能したので、ここまでとします。
今回は雲量を控え、乱気流も出さなかったため、期待したほどスリルはありませんでしたが、じっくり地図を見て、自分の目だけを頼りの航法(もちろん、Atlasは非表示)を楽しみ、現代機とはひと味違う、印象的なフライトになりました。
●時代背景●
フランスの郵便飛行史を、手短かにご紹介します。
ツールーズの軍用機メーカー、ラテコエール社が大戦直後の1918年暮れ、バルセロナまで初のテスト飛行を行い、翌秋からパイロット12人で郵便輸送を開始。最初の15週間で6人が墜死したものの、北アフリカのラパト(カサブランカの近く)まで週3往復を維持することに成功しました。
5往復に1回はエンジンが故障し、悪天候による事故も相次ぎましたが、サハラ西岸沿いにダカールまで事業を拡大。炎熱の砂漠では故障が増え、遊牧民の銃撃もありました。その後アエロポスタル社が事業を継ぎ、南米の南端まで路線を伸ばし、アンデス越えや南大西洋横断空路を開拓。同社は多くの物語を残して1930年に倒産し、3年後エールフランスが誕生します。
パリ=ブエノスアイレス間は、汽車と船で23日掛かりましたが、郵便機は当初から1週間に短縮。これは一種の革命でした。一連の郵便飛行では通算121人もの搭乗員が殉職しましたが、パイロットも整備員も「自分たちは歴史を作っている。これは英雄的な仕事だ」と、強い信念を持っていたと言われます。
昔の鳥人は、つくづく短命でした。米国でもリンドバーグが郵便飛行士になったころ、パイロットの平均余命は900飛行時間だったそうです。
■サハラ砂漠西岸の郵便空路を行く■
(バルセロナからダカールへ)
セネガルのダカールまでは、再びコンコルドを使います。
◎Barcelona空港LEBL・RWY11654ft
▼大圏コース230度465nm
◎ジブラルタル空港LXGB
▼大圏コース219度925nm
◎DAKHLA空港(シズネロス)GMMH
▼大圏コース189度544nm
(△YF060、空港5.3nm手前)
◎ダカール空港GOOY ILS=110.30 RWY17 11500ft
(計1934nm)1200Kt=約1時間40分
超鈍足機から超音速機に乗り換えると、フライトの内容があまりにも違って戸惑いました。コンコルドの飛行は雄大ですが、機械に振り回される気もします。この機体は、ほとんどの操作をパネル上で行う必要があり、うっかりメニューバーからオートパイロット関連の設定をすると、無効になって慌てます。私は速度保持が外れていることに気づかず、最初は上昇率を増やしたとたん失速し、見事に墜落しました。あ〜あ!!
日を改めて早起きし、ひたすら雲海を見ながら、ダカールまでの約2000nmを消化しましたが、コンコルドは少々飛ばさなかっただけで、すぐ操縦スキルが落ちてしまう感じです。とはいうものの、非常に速くて便利ですね。
次回は大西洋を越えて、南米に入るつもりです。
●追伸●
FlightGear 1.0.0の場合、ネット未接続でリアルウエザーをオンにしていると、Zキーで視程を調整した瞬間、勝手に終了することが多いようです。私の環境だけの問題かも知れませんが、要注意なのでご報告しておきます。
今回はフランスのツールーズから、スペイン南岸を経由して、アフリカ西岸・セネガルのダカールへ向かいます。
最初はコンコルドでひとっ飛び…と思ったのですが、このコースは1920年代にフランスが築いた、南米への長大な郵便航空路の一部です。特に起点となったツールーズから、バルセロナへのピレネー山脈越えは、私の大好きな飛行家・作家サンテグジュペリが、初めて郵便飛行をした区間で、この体験は後に小説「夜間飛行」や「南方郵便機」に生かされました。FlightGearで、このフライトを再現しない手はありません(^^)/。
そこで当時の郵便機に近い複葉機で、当時の航法を再現し、史実に近い夜間飛行を試みることにしました。
●使用機●
第一次大戦終了時、大量の余剰機とパイロットが民間に放出されました。まだ旅客を運ぶのは無理でも、郵便の高速輸送なら大きな需要があります。欧米ではすぐ郵便飛行が始まり、鉄道や船便に大差をつけようと、早くから危険な夜間飛行が行われ、無数のドラマを残しました。
郵便機には、比較的性能のいい2人乗り軽爆撃(偵察)機を改造して使いました。米国では、スリムなデハビランド・DH−4が主流で、前席に郵便物を積み、パイロットは視界のいい後席で操縦しました。フランスでは、ずんぐりしたブレゲー14型の両下翼に貨物庫を取り付け、パイロットは前席で操縦。サハラ砂漠では後席に、不時着に備えて現地人通訳が同乗しましたが、のちに無線電信機を積んでからは通信士が乗りました。ちなみに…パイロットが現在地を見失った場合、コンパスよりも現地人通訳の方向感覚のほうが、正確だったという説もあります。
今回のフライトのため、郵便機風の2人乗り複葉機を探したところ、過去にも一度ご紹介しました、以下のフランス語サイトで、スタンプSV4という練習機を見つけました。
http://helijah.free.fr/flightgear/hangar.htm
SV4は1930年にベルギーで造られ、有名なイギリスのデハビランド・タイガーモス練習機とよく似ています。エンジンは、同じデハビランド製のジプシー・メジャー130馬力ですから、スマートな機首の形などはそっくりです。
入手したFlightGearのモデルは、テクスチャーがpngファイルになっており、そのままではエラーが出て、機体が赤1色に表示されますので、GIMPなどでrgb形式に変換する必要があります。GIMPは現在、操作性を大幅に改善した新バージョンが出ていて、以下のサイトで入手できます。
http://www.geocities.jp/gimproject/gimp2.0.html
本機はプロペラの影響で、地上では強く右に偏向し、低速で慎重に離着陸する必要があります。空に上がってしまえば、非常に操縦しやすく、舵の効きは甘いものの、軽い曲技もできます。前後席いずれも操縦可能で、Dキーにシフトなどを絡めると、座席のサイドドアや、カウリングの開閉ができます。最高速は100Ktちょっとで、巡航速度は80Kt程度ですが、減速しても燃費はほとんど変わりません。航続距離はごく短く、150nmくらいです。パネルにはコンパスがないので、HUDを使う必要があります。
●航法●
初期の郵便機は、地上目標を確認しつつ飛ぶ「地文航法」を使いました。雲海の上で、コンパスを頼りに推測航法をするのは厳禁されていましたが、これはエンジンが故障して、雲の中を降下する際、山に衝突する恐れがあったからです。そのためパイロットはごく低空を飛び、航空図には目立つ目標や、不時着地で障害となる樹木などを、ぎっしり書き込んでいたそうです。
のちに通信士を乗せるようになると、複数の地上局が電波を方位測定し、機体の位置を割り出して針路を指示する例もありましたが、あまり精度は良くなかったようです。
地文航法には、地図が必須です。そこでGoogle Earthの画像を印刷し、ツールーズ=バルセロナ間の地図を作りました。最初は直航に近いルートを想定したのですが、よく資料を調べると、当時はまずピレネー山脈沿いに東進し、地中海近くまで出て、標高わずか1000ftの峠を越えたことが分かりました。
サンテグジュペリは作品中で、悪天候の夜間ピレネー越えを、まるで騎士と龍の壮絶な戦いのように描いていますが…彼自身、下降気流に捕まって3000ftも落下し、高度300ftで立ち直った経験があります。低くても、全天候の山越えは冒険だったのですね。
では、フライトプランをお目に掛けます。ローマ字は通過地点の町ですが、地図と見比べないと、あまり役に立ちません。また私は従来、実機通りに磁気方位を使ってきましたが、SV4は磁気コンパスがないので、HUDを使用する関係上、真方位で書いてあります。補正計算がない分、すごく楽ですが…。
■サンテグジュペリの郵便飛行■
(ツールーズ=バルセロナ間)
◎ツールーズ空港(43.37.45N-01.21.45E)
▼126度31.8nm=20分
△Casternaudary(43.19.02N-01.57.07E)
▼110度18.6nm=13分
△Carcasonne(43.12.47N-02.21.16E)
▼98度27.7nm=17分
△Narbonneの交差点(43.08.55N-02.58.51E)
▼188度27nm=17分
△Perpignan(42.42.09N-02.53.37E)
▼194度11nm=7分
△Le Boulou(42.31.29N-02.50.00E)
谷間の街。少し先で南南東へ。
▼160度3.8nm=2分半
△Le Pertus峠(42.27.53N-02.51.46E)
▼188度42nm=25分
△Macanet de la Selva(41.46.39N-02.43.55E)
ここから南西へ。海岸に出てもよい。
▼225度41nm=25分
◎バルセロナ空港(41.17.56N-02.04.53E)LEBL
(総計196nm、約2時間)
●昼の部=「鳥人」の気分を味わう:
快晴のツールーズ。SV4の前席に座ってエンジンを始動。機首を振る機体をなだめつつ離陸します。最初はルート偵察と慣熟飛行を兼ねて、真昼に飛んでみました。
ツールーズから地中海沿岸までは、運河と道路、鉄道が絡み合って南東へ延びていますので、これに沿って飛びます。私の世界一周の旅は先日まで、暗い冬の英国にいたのですが、南仏の太陽を浴びながら、高度わずか1000ft、速度100Ktでのんびり飛ぶと、コンコルドでは決して味わえない「鳥のような飛行」が堪能できて、とても楽しいフライトになりました。
複葉機の地文航法は、ちょっと原始的な「手づくり」の気分に満ちています。地平線の目標に機首を合わせ、しばらく飛んで方位を調節し、風の影響を修正。手製の地図とダイバーズ・ウォッチを見比べて、あれはカルカソンヌ、これがペルピニャンだなと、町を確かめながら進みます。ナルボンヌという町で、道路は南に分岐し、私もここから南下します。
ピレネー越えのペルテュス峠は、地中海のすぐそばにあり、もっと内陸をイメージしていた私は改めて驚きました。山越えが難しいなら、なぜ最初から海上に出なかったのか…とも思いますけれど、ブレゲー14型は、約120飛行時間に1回の割でエンジンが故障し、ほぼ同じ頻度で悪天候による不時着も相次いだので、できるだけ地上の、しかも迷いっこない、安全第一のルートを選ぶ必要があったのですね。納得しました…。
ペルテュス峠には一カ所、谷筋を間違えやすい地点があり、さっそくメモを取りました。スペイン領へ降下すると、早くも燃料が欠乏したので、海岸線に飛行場を探し出して着陸。これに懲りて、地図に路線沿いの空港を全て記入しました。
それで気付いたのですが、このルートはフランス国内でも、特に飛行場が密集しています。間隔は約50キロで、郵便機の不時着場や中継地が、現代に引き継がれているのかなと思うと、うれしくなりました。航空史というものは、例えシミュレーションであっても「現地を飛ぶ」ことで、実に多くの新発見があります。
次はいよいよ、同一ルートの夜間飛行です。
●夜の部=星々のような、地上の灯:
夜間飛行では難易度を上げようと思い、500ftから1500ftにかけて3層の雲を出しました。離陸後反転し、空港をパスする際に腕時計のゼロ目盛りを長針に合わせ、飛行時間を計ります。
夜は運河が見えないものの、道路と鉄道の灯は、相変わらず絶好の目標です。地表はよく見えませんが、照明されたサイロが幾つもあり、牧草地の上空だと分かりました。3Dオブジェクトがオンですと、町を示す四角いマークの上に教会が現れます。私は時計を頼りに、町ごとの通過予定時刻を概算し、それがまたピタリと当たるので、気分よく飛び続けました。
実機のパイロットはもっと緊張し、無意識のうちに絶えず不時着地を探していたことでしょう。ちなみに私は夜間、灯火のない小飛行場はすべて見落としました。
軽い複葉機で気流に翻弄され、広大無辺な夜空を飛ぶのは、地上との隔絶感や航法の不安に、開放座席の寒さが加わり、さぞ孤独だったろうと思います。まして同僚が、しばしば殉職するとなれば、なおさらですね。
欧米の主要航空路に灯台ができるのは、もう少し後。リンドバーグは、平原の一軒家に住む少年が、庭に100ワットの電球を灯して「あなたの郵便機が家の上を飛びます。目標にしてください」と手紙を寄こし、機上からこの灯を見るたびに、心を打たれたと書いています。
またサンテグジュペリは小説「夜間飛行」の中で、嵐で難航するパイロットが、恐怖の中でどれほど切実に「光」を求めるか、迫真的な描写を繰り広げています。彼はこうした体験から、飛行中はるか下界にまたたく灯に向かって、まるで片思いのように、そっと感情移入する習慣を身に付けました。やがて彼は、それぞれの灯を人が住む小さな星に見立て、あの「星の王子さま」を書くことになります。
○
…昼間は低く見えたピレネーが、威圧的なシルエットになって行く手を塞ぎました。私は断雲を避け、谷間を縫って上昇しましたが、危うくミスコースしそうになり、稜線をかすめてUターン。コースさえ確認できれば、あとは狭い高地を横断して、スペインの平野をめざすだけです。
昼間と同じ、海岸の飛行場に降りて給油。海岸沿いに倍速モードで飛び続け、一面に灯火が輝くバルセロナに到着。史実では郵便飛行士は、アリカンテまで飛んで交代したのですが、一応堪能したので、ここまでとします。
今回は雲量を控え、乱気流も出さなかったため、期待したほどスリルはありませんでしたが、じっくり地図を見て、自分の目だけを頼りの航法(もちろん、Atlasは非表示)を楽しみ、現代機とはひと味違う、印象的なフライトになりました。
●時代背景●
フランスの郵便飛行史を、手短かにご紹介します。
ツールーズの軍用機メーカー、ラテコエール社が大戦直後の1918年暮れ、バルセロナまで初のテスト飛行を行い、翌秋からパイロット12人で郵便輸送を開始。最初の15週間で6人が墜死したものの、北アフリカのラパト(カサブランカの近く)まで週3往復を維持することに成功しました。
5往復に1回はエンジンが故障し、悪天候による事故も相次ぎましたが、サハラ西岸沿いにダカールまで事業を拡大。炎熱の砂漠では故障が増え、遊牧民の銃撃もありました。その後アエロポスタル社が事業を継ぎ、南米の南端まで路線を伸ばし、アンデス越えや南大西洋横断空路を開拓。同社は多くの物語を残して1930年に倒産し、3年後エールフランスが誕生します。
パリ=ブエノスアイレス間は、汽車と船で23日掛かりましたが、郵便機は当初から1週間に短縮。これは一種の革命でした。一連の郵便飛行では通算121人もの搭乗員が殉職しましたが、パイロットも整備員も「自分たちは歴史を作っている。これは英雄的な仕事だ」と、強い信念を持っていたと言われます。
昔の鳥人は、つくづく短命でした。米国でもリンドバーグが郵便飛行士になったころ、パイロットの平均余命は900飛行時間だったそうです。
■サハラ砂漠西岸の郵便空路を行く■
(バルセロナからダカールへ)
セネガルのダカールまでは、再びコンコルドを使います。
◎Barcelona空港LEBL・RWY11654ft
▼大圏コース230度465nm
◎ジブラルタル空港LXGB
▼大圏コース219度925nm
◎DAKHLA空港(シズネロス)GMMH
▼大圏コース189度544nm
(△YF060、空港5.3nm手前)
◎ダカール空港GOOY ILS=110.30 RWY17 11500ft
(計1934nm)1200Kt=約1時間40分
超鈍足機から超音速機に乗り換えると、フライトの内容があまりにも違って戸惑いました。コンコルドの飛行は雄大ですが、機械に振り回される気もします。この機体は、ほとんどの操作をパネル上で行う必要があり、うっかりメニューバーからオートパイロット関連の設定をすると、無効になって慌てます。私は速度保持が外れていることに気づかず、最初は上昇率を増やしたとたん失速し、見事に墜落しました。あ〜あ!!
日を改めて早起きし、ひたすら雲海を見ながら、ダカールまでの約2000nmを消化しましたが、コンコルドは少々飛ばさなかっただけで、すぐ操縦スキルが落ちてしまう感じです。とはいうものの、非常に速くて便利ですね。
次回は大西洋を越えて、南米に入るつもりです。
●追伸●
FlightGear 1.0.0の場合、ネット未接続でリアルウエザーをオンにしていると、Zキーで視程を調整した瞬間、勝手に終了することが多いようです。私の環境だけの問題かも知れませんが、要注意なのでご報告しておきます。
投票数:25
平均点:5.20
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手探り航法・旅日記
(hide, 2006-1-14 7:08)
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Re: 手探り航法・旅日記
(ゲスト, 2006-1-16 21:25)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-1-23 13:06)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-1-25 21:41)
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Re: 手探り航法・旅日記
(tetsu, 2006-1-28 14:18)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-1-30 9:44)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-3 16:30)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-8 19:39)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-11 7:12)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-14 18:44)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-17 4:40)
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Re: 手探り航法・旅日記
(ゲスト, 2006-2-17 8:04)
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Re: 手探り航法・旅日記
(tetsu, 2006-2-17 21:52)
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Re: 手探り航法・旅日記
(Hit, 2006-2-19 1:02)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-28 5:18)
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Re: 手探り航法・旅日記
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コンコルドのバーチャル・クルーたち
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コンコルドのマニュアル訳(前回の続きです)
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コンコルドで初の超音速飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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サンテグジュペリの郵便飛行
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サンテグジュペリの郵便飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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コンコルドで初の超音速飛行
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コンコルドのマニュアル訳(前回の続きです)
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コンコルドのバーチャル・クルーたち
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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天測航法に挑む(前編)
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天測航法に挑む(後編)
(hide, 2008-6-19 9:28)
- ホンダジェット試乗と大瀑布 (hide, 2008-6-27 21:01)
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天測航法に挑む(後編)
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Re: 手探り航法・旅日記
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