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Re: 手探り航法・旅日記

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通常 Re: 手探り航法・旅日記

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depth:
68
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2007-2-27 22:48
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 650
hideです。
 前回ご紹介しました、Atlasの画面表示に、方位・距離表示機能を追加した「ABUNAI航法」を活用して、詩人にして童話作家・宮沢賢治のふるさと、岩手県を南下します。


■「イーハトーヴ」の空を行く■(続き)
  (マップデータ:e140n40.tgz
           e140n30.tgz )
 では、改めてフライトプランをお目に掛けましょう。

◎三沢基地(VOR 115.4)
     ▼160度10nm
◎八戸空港(NDB 381)
     ▼215度48nm
△岩手山
     ▼190度10nm
△雫石町
     ▼93度7nm
△盛岡市
     ▼193度16nm
◎花巻空港(VOR 112.80)
     ▼122度16.5nm
△遠野市
     ▼107度20nm
△釜石市
     ▼219度36nm
◎松島基地(TACAN 114.30)

 以前ならAtlasで緯度経度を計り、「Virtual E6-B v1.4」計算器で針路と距離を算出したものですが…今回はABUNAI航法のお陰で、Atlas画面上の中継地を、マウスポインタで次々と指すだけで、あっさり作業を終えました。
 (Atlas地図にも歪みがありますから、図上で方位と距離を計測しますと、長距離では多少の誤差が出ます。どの程度になるか、そのうち分析評価したいと思っています。ただABUNAI航法では、飛行中に絶えずコースの修正が可能なため、実用上は問題ないと思います)

●冬の星座の下で:
 …今回は夜間飛行で、三沢を西に離陸します。リアルウエザーが選んだ天候は、雲量が1600ft=few、2600ft=scatterd。340度の風21Kt程度です。やや強風ですが、ABUNAI航法では、風力補正は飛行中でも可能ですので、事前の計算は省きました。
 離陸後、VORを頼りに反転し、3000ftで三沢基地上空を通過。南の八戸空港へコースを合わせると、間もなく地平から八戸の滑走路と、点滅する航空灯台が見えてきました。

 八戸上空で、Atlas画面と「斜めものさし」の縮尺を変更し、48nm先の岩手山をめざします。風のため針路がそれるので、ABUNAI航法の分度器表示を頼りに、右へ10度ほど修正しました。
 鉄瓶で有名な「南部」地方を低空で飛びながら、ふと視界を右に振ると、6〜7個の小さな星が、米粒大に密集しているのが見えました。冬の夜空の宝石・プレアデス星団です。FlightGearには、ちゃんとモデリングされていて、嬉しいですね。
 さらに空を探すと、少し前方に予想通り、オリオン座が広がっていました。気分はさながら「銀河鉄道の夜」です(^^)。
 (これら星座や太陽の高度を、フライト画面上で、正確に計る方法が見つかると、1950年代くらいまで行われた、天測航法が再現できて面白いのですが…今のところ、方法を思いつきません)

●岩手山をかすめて:
 Atlasによると、前方に丘陵地帯があります。「Atlas標高カラーチャート」によれば、標高は最大で3500ft。自機の方が低いので、3700ftまで上昇。やがて暗がりの中、機体は頂上をかすめて通過し、その向こうに、たくさんの光が広がりました。
 眼下には、3本の光の筋が南方へ伸びています。東北自動車道と、あとは国道でしょうか。再びABUNAI航法で針路を修正し、ぴったり岩手山へ機首を向けます。

 岩手山の高さは、「Atlas標高カラーチャート」によると最大5000ft。オートパイロットの設定を5000ftに変更しましたが、少し手遅れでして、前方に真っ黒な、ピラミッド状の影が立ちはだかりました。
 ここは変針することにして、距離と針路を確認。地形から見て、より安全な左手へ機首を向けました。ぶつかる心配はありませんが、「暗黒の富士山」のような夜の山塊は、少々不気味です。怪物の背を、そっと乗り越えるようなスリルを味わいつつ、中腹をすり抜けました。

●進化するナビゲーション:
 従来の、VOR中心のフライトですと、夜間飛行はいわば、点と点を結ぶ孤独な作業です。途中の闇には、何が隠れているのやら、よく分からないわけですが…この航法ですと、常に地形と対話しながら飛んでいる感じで、低空飛行が一層楽しくなりました。

 あちこちで読んだのですが…実機の計器飛行の世界でも、かなり近い将来に、大きな変化が起こりそうです。
 例えばアメリカでは、従来は有視界飛行をしていたヘリコプターに、GPSアプローチが急速に普及しつつあります。空港近くに設けられた目標点にGPSで接近し、そこから目視で所定の進入路をたどる方式で、病院のヘリポートを含む数百の空港が、すでに対応を済ませたとか。足の遅いヘリは、ジェット機用に設定された、遠回りをするIFR進入コースには不向きですので、この方法は日本でも注目されています。

 また日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)は、FAA(米連邦航空局)と共同研究で、「NOCTARN(適応型飛行経路)」という、空港に向かって任意の曲線コースでアプローチする、新しい計器進入の実機テストを進めています。これは小型機のディスプレーに、混雑や騒音を防ぐ最適コースと地形を、3D表示して飛ぶものです。
 大型機では、従来のVOR航空路には依存しない、「RNAV(広域航法)」という飛び方が、すでに始まっていますが、アメリカでは将来、出発地と目的地を、いきなり直線(!)で結んでしまう航法の実現をめざし、管制方法の再編成を研究しているようです。
 …こんな時代の風を感じながら、私もイージー・ナビゲーションの新しい方法を見つけたくて、ABUNAI航法を考案しました。

●花巻空港に寄港:
 岩手山から少々南下すると、すぐに雫石町。ここは71年に、空自のF86と全日空の727が衝突した場所です。犠牲者162人の冥福を祈って、夜空をぐるりと270度旋回。その後、盛岡を経由して南下を続け、花巻空港の上空に差し掛かりました。
 当初は、もう少し先まで行くつもりでしたが、今夜は時間がないので、ここに降りることに決定。いったん空港を通過し、南からベースターンによるアプローチを行い、ILSをセットしました。

 …初めての空港への夜間VOR進入は、心細いものですね。VOR指示器の型によっては、着陸やり直しなどで設定コースを大きく外れた場合、位置関係が分かりにくく、一層不安になります。
 ABUNAI航法の場合は、やり直しも、緊急着陸も簡単です。またブロンコはILSをセットしますと、DMEに距離表示が出ない欠点がありますが、この航法では、いつでも独自に方位と距離が読めますので、この問題も克服できます。あとは滑走路とPAPIさえ見えれば、あまり昼間の着陸と変わりありません。

●画面を「夜間視力」にセットする:
 というわけで、今回はリラックスして進入しましたが…なぜかILSのグライドパス指針が、HSIの盤面に表示されません。おかしいなあと思いながら、強い横風の中を着陸しました。
 私はうっかりしていましたが、もともとブロンコは、ILS指針が照明されないのですね。不便ですが、照明を追加する改造は、私には無理です。結局、ディスプレーの調整で切り抜けることにしました。

 グラフィックのプロパティを開いて、ガンマ補正を掛けて中間トーンを明るくし、暗夜に目の慣れた(或いは、満月の夜くらいの)明るさに設定しました。これで何とか、照明のない計器も読めます。
 この配色を「夜間視力」という名で保存し、デフォルトの配色と切り替えて使おうと思ったのですが、FlightGearを起動中に切り替え操作をしますと、フレームレートが極端に低下して、飛べなくなることが分かりました。プロパティから、いちいち調整する場合は大丈夫です。

●「グスコーブドリの伝記」:
 先ほどの岩手山は、あとで活火山と知りました。県HPによると、過去に大噴火の記録があり、95年から火山性微動が続いたため、産官学やマスコミが連携し、対策を練っているそうです。
 火山と聞くと、宮沢賢治の童話「グスコーブドリの伝記」を思い出します。1932年に発表されたこの作品は、未来技術の予測小説としても面白いので、脱線して申し訳ありませんが…まだお読みでない方のために、少しご紹介させて下さい。

 主人公ブドリは、岩手をモデルにした農業国・イーハトーヴの少年。冷害の大飢饉で両親を失い、妹と離散。ある科学者に才能を見出され、「イーハトーヴ火山局」で働くことになります。
 この小国には300も火山があり、火山局は全山を監視して、噴火の迫った山には、命がけでマグマを抜く工作を行い、住民を守っています。ブドリは悲惨な体験から、「災害や凶作を防ぎたい」との思いが強く、優れた技師に成長。干ばつを防ぐ人工降雨などにも活躍して、生きがいに満ちた数年を過ごしました。
 やがて大冷害が再来。このままでは、また大量の餓死者や、一家離散が避けられません。ブドリは大気中の温暖化ガスを、人工的に増やして気温を上げようと、ある大胆な計画を立てました…。

 …作中、飛行船が夜の雲海に薬品をまく、人工降雨のシーンは幻想的です。また火山局内の描写にも、驚かされます。「タイプライターのような機械」が100台以上並び、観測データを刻々と受信。巨大な立体地図の上に、各火山の活動状況が「数字になったり、図になったり」して表示される…という情景は、まるで宇宙船の管制センター。よくこんな場面を、80年も昔に思いついたものですね。
 賢治の科学観は、今から見れば、やや素朴ではありますが。ひたむきに人間を守る、輝かしい「知恵の砦」のようなイーハトーヴ火山局が、私は好きです。本作品は、すでに版権が切れているので、「青空文庫」から無料でダウンロードできます。

●リアス式の見本、三陸海岸:
 日を改めまして、ブロンコ改で花巻空港を離陸。今度は昼間のフライトです。3000ftで市街地の上空を旋回し、南北に流れる北上川に見とれた後、一路東へ。怪談などの伝承集「遠野物語」で名高い、遠野市を経由して、高度3700〜5000ftで北上山地を越え、太平洋岸に出ました。
 ここ三陸海岸は、典型的な「リアス式」です。高度を3000ftまで落とし、速度は240Ktまでアップ。次から次へと現れる、細い半島と狭い湾を飛び越えて、スピード感あふれる旅を楽しみました。

 やがて宮城県上空へ。Atlas画面上で、マウスポインタを航空自衛隊の松島基地に合わせ、再び針路と距離を確認。ここは戦闘機の教育航空団があり、ブルーインパルスのホームベースです。1500ftまで高度を落とし、RWY-25へダイレクト進入態勢を取ります。さらに接近しますと、横風用の滑走路があることに気付きました。

 地表の風力は、310度の風10Ktです。そこで横風用のRWY-33に降りることにしまして、ゴーアラウンド(着陸やり直し)。左に90度旋回して太平洋に出て、3nm沖で反転し、最終進入しました。
 今回は、機内タンク(2070Lbs)だけを使ったのですが、飛行距離が短かったため、燃料は1418Lbsも残りました。次回は関東方面をめざして、もっと距離を稼ぐことにします。

●ピラタスで松島上空を舞う:
 空港の南西には、松尾芭蕉もほめた景勝地・松島湾が広がっています。到着後、今度は曲技機のピラタスPC7を起動しまして、ちょっと観光フライトに出ました。FlightGearのテクスチャーは、一足早い気もしますが、夏景色に戻しておきました。
 松島湾には大小の小島が散在し、美しい風景ですが、本来は松林や奇岩が売り物でしょうから、FlightGearでは、やや「がっかり名所」の部類です。しかし、ピラタスの軽快な運動性が新鮮で、しばしスタント(曲技飛行)に時間を忘れました。

 これは「飛ぶって、楽しい!!」と感じる飛行機ですね。2000ftから、まず連続宙返り。エルロン・ロールでくるくる回った後、インメルマン・ターンやスプリットSを交え、空中を踊りまくりました。
 最後に、バレル・ロールにもトライ。あいにく私の環境では、ラダーの単独操作ができないため、機首方位が左右に動いてしまいますが…まあ多少は、それらしい気分を味わいました。
 PC7は全開で約300Ktも出ますし、スロットル50%でも198Ktを維持できます。零戦並みか、ちょっと速いくらいでしょうか。航法計器はコンパスだけですが、Atlasを使うABUNAI航法でしたら、どこへでも行けます。これは面白い…と思って、一応燃費を計ってみましたが、非常に大食いで、満タンでもスロットル50%で約27分、90nm程度しか飛べないことが分かり、ちと残念です。しかしアプローチも楽ですから、今後も時々「観光」フライトに使うことにしましょう…。
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