Re: 手探り航法・旅日記
Re: 手探り航法・旅日記
msg# 1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
hide
居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです。皆様ハッピーGW!! ご無沙汰を致しました。
概ね上天気が続いていますね。私は3月ごろから、仕事がダンゴになっておりました。連休中もどうやら2、3日しか休めませんが、やっと余裕が出てきましたので、ゆるゆるとフライトを再開します。
練習不足のため、数日前に神奈川県・厚木基地で、ブロンコ改のタッチアンドゴーを試しました。最初は高度・速度が大きくふらついて、がっかりしましたが、久しぶりに味わった、大地が足元に退いていく浮揚感は、パソコンの画面上とは言え、やはり楽しいです(^^)。
着陸を数回試したところ、Atlas画面上では進入コースの長方形を、かなり正確に重ねて描くことができました。ちょっと自信を取り戻し、羽田VORを頼りに都心へ出て、新たにインストールした、新宿のビル群を堪能しました。(Riktovさん、ありがとうございます)
ネットで航空事故の調査報告書を読みますと、事故機パイロットの総飛行時間とともに、「最近30日間の飛行時間」が、必ず記載されています。実機も1カ月くらい休むと、操縦に大きな影響が出るのでしょうね。
●ブロンコ改の燃費検証フライト:
さて、数回にわたりご報告しました、「ABUNAI航法」の開発も一段落しましたので、厚木基地から私の「母港」松山空港まで、ブロンコ改を回航しながら、高度・速度別に詳しく燃費を測定し、出来れば近く取りかかるつもりの、「次の大旅行」に備えることにします。今回は取りあえず、大阪の八尾空港まで移動します。燃費の測定法は、以下の通りです。
・まず、高度2000ftで巡航中の燃費を計る。
200Kt、210Kt、220Ktの3通りの速度で、燃料タンクの
残量を記録。1分後の残量も記録して、毎分の消費量
をポンド単位で調べる。
・2000ftから5000ftまで、上昇中の燃費を計る。
オートパイロットで5000ftの高度保持を掛けると、機体は
毎分500ftの上昇率を保つ。この状態で、巡航時と同様に
200Kt、210Kt、220Ktの3種類の速度で燃費を測定する。
・5000ft巡航中の燃費を計る。
(これも3種類の速度で測定。以下同様)
・10000ftまで上昇中の燃費を測定。
・10000ft巡航中の燃費を測定。
・20000ftまで上昇中の燃費を測定。
・20000ft巡航中の燃費を測定。
…これを、ブロンコ改の上昇限度とみられる35000〜37000ft付近まで、延々と繰り返すわけです。毎度ながらテスト飛行は、短気では到底、務まりません(^^;)。
次に、フライトプランをお目に掛けましょう。
今回は燃費計測が主目的ですので、ナビはAtlas(ABUNAI航法)に頼って、ごくラフに飛ぶことにします。VORはほとんど使いません。フライトプラン上のコース表示は、すべて磁気方位ですので、機内のコンパス・VOR計器はそのまま使えます。HUDのコンパス表示と、Atlas画面の右下にある方位表示は(いずれも真方位ですので)、東へ7度ずれます。
■厚木から八尾空港■
◎厚木基地
▼245度25nm
△箱根山頂
▼248度27nm
◎清水市・美保飛行場(空自と海保の航空基地)
▼226度18nm
△大井川河口
▼260度26nm
△浜松市・天竜川河口
▼283度41nm
★知多半島・Kowa-VOR(113.50)
▼328度12nm
◎中部国際空港・セントレア(VOR 117.80)
▼21度24nm
◎名古屋空港(VOR )
▼280度33nm
△米原市
▼253度10nm
△琵琶湖・沖島
▼234度16nm
★大津VOR
▼212度27nm
◎八尾空港(VOR 114.60)
●出発…そして地上目標の、距離を目測する方法:
シミュレーション時刻、0810時(UTC)。
快晴。北寄りの風約6Kt。
ブロンコ改は、未明の厚木基地滑走路の南端にいます。2機のブロンコ改のうち「US Air Force」仕様を選択しましたので、補助タンクまで満タンです。燃料搭載量は機内2070Lbs(ポンド)+補助4554Lbsです。
例によって離陸後、いったん基地上空まで引き返して、滑走路中央を起点に航法を始める「リバーサル・ディパーチュア」を行います。簡単かつ正確に基地上空に戻れるよう、ここでVORをセットしたいところですが、厚木には、民間機が使えない(ブロンコでもダメ)TACANしかありませんので、代りにNAV1受信機に、ILSの周波数を入れておきます。
エンジン全開でブレーキを放し、ドンドコ滑走。機体が重いので、150Kt近くまで加速して、やっとローテーション(上げ舵)を掛けました。
滑走路を約3nm離れ、VOR代わりに受信しているILS電波の到来方向を、計器盤のHSI(コンパス兼VOR・ILS・NDB指示器)で確認。右30度バンクで反転旋回し、昇る朝日をちらりと見ながら、高度2000ftで基地上空を通過。200Ktで箱根へ針路を向けます。
ブロンコが3000ftで飛んでいる場合、正面に見える地上目標が計器盤上部に隠れる瞬間、機体からの距離は約3nmです。今は2000ftですので、滑走路の中央が隠れた時点で、距離は約2nmです。Atlasを使うと、機体から目標までの距離が正確に計れますので、操縦席からの見え方と距離の関係を、調べておくと便利ですよ。
実機を操縦される皆さんも、機体の各部を照準器代わりに使って、上昇中の迎角など、さまざまなデータを得ておられるようです。
●箱根を越えて、西へ:
2000ftの低空で、神奈川県西部の丹沢山系に向かいます。(ここも学生時代、友人と登った山々。懐かしいです)。
間もなく正面には、フタコブラクダの背中のように、二つに分かれた箱根の山頂が、白いシルエットになって浮かびました。5000ftをめざして、オートパイロットで上昇に移ります。
…こう書いている間にも実は、頻繁にポーズを掛けては、燃費測定を続けています。メニューバーの「File」から「Browse Internal Property」「consumables」「fuel」「tank」の順番で選択し、さらに補助タンク(tank[1]/)を開いて残量をチェック。秒針をにらみながら1分間飛んで、またチェック。10Kt加速しては、また同様の測定。上昇に移ると、また3通りの速力で測定。忙しいフライトになりました(^^;)。
あまり景色を見る暇もありませんが、愛機は順調に飛んで、箱根山頂が目の前です。衝突しそうですが、ここで上昇率を増やしたり、大バンクを掛けて急旋回しては、せっかくの燃費計測データが狂います。そっと左へ10度変針し、コブのような山頂をすれすれにかわすと突然、目の前に芦ノ湖が広がりました。連休ですから、実世界の箱根の空は、パラグラやハンググライダーで、さぞ混んでいることでしょう…。
●おはよう、セントレア:
10000ftで、天竜川の河口を通過。離陸後40分で、もう中部国際空港(セントレア)上空に達し、高度15000ftで通過します。コクピットからは空港が、もやの関係でよく見えませんが、視界を機外に切り替えて見下ろすと、細長い空母のような姿が確認できました。空港橋は、再現されていないようですね。
先ほどからエンジン回転数は、ほぼ100%に達しています。15000ftまで昇るとエンジン全開でも、220Ktを維持するのがやっとです。やはりブロンコは、低空が得意な飛行機ですね。近い将来、高々度・長時間飛行の旅を想定しているのですが、どうなることか、ちょっと不安です。
続いて、名古屋空港を通過。名古屋というと、どうも「エビふりゃー」を思い出しますが、ここは「日本のツールーズ」と呼ぶべき、航空宇宙産業都市でもあるのですね。三菱重工の航空機開発も確か、お隣の岐阜空港でしたか…この近くで行われているはず。などと考えながら、米原市へ向けて変針。さらに上昇します。
17000ftくらいで米原上空を通過。この高度ですと、上昇中は195Ktしか出ません。大津VORの近くで、20000ftに到達。高空から見下ろす琵琶湖は、何だかとても、小さく見えます。
●八尾空港へ急降下:
もやを通して巨大な、大阪都市圏が広がってきました。もうすぐ八尾空港です。ここは多分、関東で言いますと調布飛行場に当たる、関西の自家用機活動の中心地。マスコミの取材機とか、いわゆるジェネラル・エビエーションの機体も、多数駐機している飛行場だろうと思いますが、位置はちょうど、大阪空港(伊丹)へ向かう進入コースの真下。関西は、他にも関空と神戸空港の空域が絡み合っていますので、実世界では交信や操縦に、ずいぶん神経を使いそうです。
さて八尾上空。20000ftから、どうやって降りるか。
本来ならば、はるか手前から高度を下げるべきですが…ブロンコ改の正体は猛禽類(地上攻撃機)。急降下はお手のものです。
まず、オートパイロットの速度保持を160Ktまで下げておき。減速が利いたところで、針路保持と高度保持を解除。左に大きくバンクして、スリップしながら旋回急降下。左へ約200度のターンをする間、一気に1500ftまで降りてしまいました。
この場合、オートスロットルが利いて、エンジンはアイドルとなり。ブロンコのプロペラは自動的にピッチ角がゼロになって、エアブレーキとして働きます。従って、昇降計を振り切る急降下中も、対気速度は約250Ktを保ちます。タービンエンジンなので、降下しても混合気の設定変更は必要ありませんしね。実にもう、飛びやすい機体です(^^)/。
…空港の南でターンを終え、低空で滑走路を視認。空港直上を南から北へ通過しながら、左旋回で主滑走路のダウン・ウインド・レグに入り、大阪湾に向かって3nmほど、リードを取ります。十分距離を開けてから左旋回。ベースレグ上で、ギアとフラップをダウン。さあ、ファイナルです。
●着陸速度の、簡単な決め方:
ここで最終進入の速度設定を、簡単にやる方法をご紹介します。滑走路に正対したら、オートパイロットの速度保持を、最終進入速度にセットします。この数値が分からなければ、着陸速度プラス10〜20Kt程度にセットします。ブロンコの場合、通常は100Ktで着地しますから、110Ktにしておけば大丈夫です。(これは手動着陸の例ですから、オートパイロットの高度保持と針路保持は使いません)
PAPI(着陸誘導灯)を頼りに、正確な降下経路に乗ったら、対気速度は自動的に、適切なアプローチ速度になっています。
この後も正常な降下を続ける限り、速度変更の必要はありませんので、滑走路の2、3nm手前でオートパイロットの速度保持を切ります。後はスロットルに手を掛けながら進入し、着地点の寸前で、アイドリング付近まで絞れば、かなり簡単に降りられます。
(軽飛行機などは、ここでアイドルにします。ブロンコは、本当にアイドルまで絞ると、プロペラがエアブレーキになりますので、滑走路寸前で失速する恐れがあります。本機の失速は非常に穏やかなので、気付くのが遅れやすく、慌ててエンジンを全開してもリカバリー出来ないことも。スロットルは必ず、アイドル寸前で止めましょう)
…こんにちは、八尾空港。まずはスムーズな着陸でした。誘導路をたどって駐機場に入れ、パネル右下のスイッチを使って、両エンジンを停止しました。
●ブロンコの燃費は、こうなっていたのか!!!:
そうそう、現時点での燃費テストの結果を、ぜひご報告しなくてはなりません。
今回は、さまざまな高度・速度で、上昇中と水平飛行中の燃料の残りを約50回測定し、引き算をして約20通りの条件で、1分当たりの燃料消費量を得たわけですが。生データを並べてみますと、予想もしていなかった結果が出ました。ブロンコ改の燃費は、
「高度・速度・スロットル開度に関係なく、常に毎分16ポンド」
…だと言うことが、判明したのです。
正直、驚きました。「これって、手抜き設計じゃあ、ありませんか?」というのが私の偽らざる、最初の感想です(^^;)。
しかし、少し冷静に考えれば。これは完全なリアリティー無視、というわけではありません。ジェットエンジンなどのガスタービン機関は、もともと全開時の熱効率が、非常に高いのです。(だからこそジェット旅客機は、最高速度に近いスピードで巡航するのですね)
今回の燃費測定では、高度は20000ft以下、速度は200〜220Ktの範囲だけを計りました。従って、まだ確実ではありませんが…もしも、あらゆる条件下で、燃料消費量が毎分16Lbs(ポンド)だとしますと、補助タンク付ブロンコ改の最大滞空時間は、スロットル開度に関係なく、
(機内タンク2070Lbs+増槽4554Lbs)÷毎分16Lbs
=414分
=6時間24分
…ということになります。これを基に、性能ぎりぎりの航続距離を叩き出す飛び方を考えますと、ごく単純に、
「離陸から上昇、巡航中も、ひたすらエンジン全開。
その高度で実現可能な、最高速度を維持すべし」
という答が得られます。
ここまで解が単純ですと、例えば「この機体で、果たして大西洋横断は可能か?」などという計算が、非常に簡単にできますので…これはこれで長距離飛行ユーザーとしては、大変ありがたいと思います。
過去に幾つかのフライトシムで、同じような計算をしましたが。ある機体の最大航続力を出すには、まずあらゆる高度・速度の組み合わせの中から、最良の燃費を出す条件を調べる必要があります。その上で…例えば離陸直後はエンジン全開で急上昇しておき、一定の高度から上は段階的にエンジン出力を絞るなど、無数の上昇パターンを試して、もっとも経済的な飛び方の最適解を、手探りしなくてはなりません。あの苦労は正直、しなくて済むのでしたら幸いです(^^;)。
●
次回は高々度燃費テストを続けながら、松山へ向かいます。「エンジン全開飛行は、もっとも燃費のいいフライト」という仮説が、ブロンコ改で本当に証明されるのか。このあたりが楽しみです。
概ね上天気が続いていますね。私は3月ごろから、仕事がダンゴになっておりました。連休中もどうやら2、3日しか休めませんが、やっと余裕が出てきましたので、ゆるゆるとフライトを再開します。
練習不足のため、数日前に神奈川県・厚木基地で、ブロンコ改のタッチアンドゴーを試しました。最初は高度・速度が大きくふらついて、がっかりしましたが、久しぶりに味わった、大地が足元に退いていく浮揚感は、パソコンの画面上とは言え、やはり楽しいです(^^)。
着陸を数回試したところ、Atlas画面上では進入コースの長方形を、かなり正確に重ねて描くことができました。ちょっと自信を取り戻し、羽田VORを頼りに都心へ出て、新たにインストールした、新宿のビル群を堪能しました。(Riktovさん、ありがとうございます)
ネットで航空事故の調査報告書を読みますと、事故機パイロットの総飛行時間とともに、「最近30日間の飛行時間」が、必ず記載されています。実機も1カ月くらい休むと、操縦に大きな影響が出るのでしょうね。
●ブロンコ改の燃費検証フライト:
さて、数回にわたりご報告しました、「ABUNAI航法」の開発も一段落しましたので、厚木基地から私の「母港」松山空港まで、ブロンコ改を回航しながら、高度・速度別に詳しく燃費を測定し、出来れば近く取りかかるつもりの、「次の大旅行」に備えることにします。今回は取りあえず、大阪の八尾空港まで移動します。燃費の測定法は、以下の通りです。
・まず、高度2000ftで巡航中の燃費を計る。
200Kt、210Kt、220Ktの3通りの速度で、燃料タンクの
残量を記録。1分後の残量も記録して、毎分の消費量
をポンド単位で調べる。
・2000ftから5000ftまで、上昇中の燃費を計る。
オートパイロットで5000ftの高度保持を掛けると、機体は
毎分500ftの上昇率を保つ。この状態で、巡航時と同様に
200Kt、210Kt、220Ktの3種類の速度で燃費を測定する。
・5000ft巡航中の燃費を計る。
(これも3種類の速度で測定。以下同様)
・10000ftまで上昇中の燃費を測定。
・10000ft巡航中の燃費を測定。
・20000ftまで上昇中の燃費を測定。
・20000ft巡航中の燃費を測定。
…これを、ブロンコ改の上昇限度とみられる35000〜37000ft付近まで、延々と繰り返すわけです。毎度ながらテスト飛行は、短気では到底、務まりません(^^;)。
次に、フライトプランをお目に掛けましょう。
今回は燃費計測が主目的ですので、ナビはAtlas(ABUNAI航法)に頼って、ごくラフに飛ぶことにします。VORはほとんど使いません。フライトプラン上のコース表示は、すべて磁気方位ですので、機内のコンパス・VOR計器はそのまま使えます。HUDのコンパス表示と、Atlas画面の右下にある方位表示は(いずれも真方位ですので)、東へ7度ずれます。
■厚木から八尾空港■
◎厚木基地
▼245度25nm
△箱根山頂
▼248度27nm
◎清水市・美保飛行場(空自と海保の航空基地)
▼226度18nm
△大井川河口
▼260度26nm
△浜松市・天竜川河口
▼283度41nm
★知多半島・Kowa-VOR(113.50)
▼328度12nm
◎中部国際空港・セントレア(VOR 117.80)
▼21度24nm
◎名古屋空港(VOR )
▼280度33nm
△米原市
▼253度10nm
△琵琶湖・沖島
▼234度16nm
★大津VOR
▼212度27nm
◎八尾空港(VOR 114.60)
●出発…そして地上目標の、距離を目測する方法:
シミュレーション時刻、0810時(UTC)。
快晴。北寄りの風約6Kt。
ブロンコ改は、未明の厚木基地滑走路の南端にいます。2機のブロンコ改のうち「US Air Force」仕様を選択しましたので、補助タンクまで満タンです。燃料搭載量は機内2070Lbs(ポンド)+補助4554Lbsです。
例によって離陸後、いったん基地上空まで引き返して、滑走路中央を起点に航法を始める「リバーサル・ディパーチュア」を行います。簡単かつ正確に基地上空に戻れるよう、ここでVORをセットしたいところですが、厚木には、民間機が使えない(ブロンコでもダメ)TACANしかありませんので、代りにNAV1受信機に、ILSの周波数を入れておきます。
エンジン全開でブレーキを放し、ドンドコ滑走。機体が重いので、150Kt近くまで加速して、やっとローテーション(上げ舵)を掛けました。
滑走路を約3nm離れ、VOR代わりに受信しているILS電波の到来方向を、計器盤のHSI(コンパス兼VOR・ILS・NDB指示器)で確認。右30度バンクで反転旋回し、昇る朝日をちらりと見ながら、高度2000ftで基地上空を通過。200Ktで箱根へ針路を向けます。
ブロンコが3000ftで飛んでいる場合、正面に見える地上目標が計器盤上部に隠れる瞬間、機体からの距離は約3nmです。今は2000ftですので、滑走路の中央が隠れた時点で、距離は約2nmです。Atlasを使うと、機体から目標までの距離が正確に計れますので、操縦席からの見え方と距離の関係を、調べておくと便利ですよ。
実機を操縦される皆さんも、機体の各部を照準器代わりに使って、上昇中の迎角など、さまざまなデータを得ておられるようです。
●箱根を越えて、西へ:
2000ftの低空で、神奈川県西部の丹沢山系に向かいます。(ここも学生時代、友人と登った山々。懐かしいです)。
間もなく正面には、フタコブラクダの背中のように、二つに分かれた箱根の山頂が、白いシルエットになって浮かびました。5000ftをめざして、オートパイロットで上昇に移ります。
…こう書いている間にも実は、頻繁にポーズを掛けては、燃費測定を続けています。メニューバーの「File」から「Browse Internal Property」「consumables」「fuel」「tank」の順番で選択し、さらに補助タンク(tank[1]/)を開いて残量をチェック。秒針をにらみながら1分間飛んで、またチェック。10Kt加速しては、また同様の測定。上昇に移ると、また3通りの速力で測定。忙しいフライトになりました(^^;)。
あまり景色を見る暇もありませんが、愛機は順調に飛んで、箱根山頂が目の前です。衝突しそうですが、ここで上昇率を増やしたり、大バンクを掛けて急旋回しては、せっかくの燃費計測データが狂います。そっと左へ10度変針し、コブのような山頂をすれすれにかわすと突然、目の前に芦ノ湖が広がりました。連休ですから、実世界の箱根の空は、パラグラやハンググライダーで、さぞ混んでいることでしょう…。
●おはよう、セントレア:
10000ftで、天竜川の河口を通過。離陸後40分で、もう中部国際空港(セントレア)上空に達し、高度15000ftで通過します。コクピットからは空港が、もやの関係でよく見えませんが、視界を機外に切り替えて見下ろすと、細長い空母のような姿が確認できました。空港橋は、再現されていないようですね。
先ほどからエンジン回転数は、ほぼ100%に達しています。15000ftまで昇るとエンジン全開でも、220Ktを維持するのがやっとです。やはりブロンコは、低空が得意な飛行機ですね。近い将来、高々度・長時間飛行の旅を想定しているのですが、どうなることか、ちょっと不安です。
続いて、名古屋空港を通過。名古屋というと、どうも「エビふりゃー」を思い出しますが、ここは「日本のツールーズ」と呼ぶべき、航空宇宙産業都市でもあるのですね。三菱重工の航空機開発も確か、お隣の岐阜空港でしたか…この近くで行われているはず。などと考えながら、米原市へ向けて変針。さらに上昇します。
17000ftくらいで米原上空を通過。この高度ですと、上昇中は195Ktしか出ません。大津VORの近くで、20000ftに到達。高空から見下ろす琵琶湖は、何だかとても、小さく見えます。
●八尾空港へ急降下:
もやを通して巨大な、大阪都市圏が広がってきました。もうすぐ八尾空港です。ここは多分、関東で言いますと調布飛行場に当たる、関西の自家用機活動の中心地。マスコミの取材機とか、いわゆるジェネラル・エビエーションの機体も、多数駐機している飛行場だろうと思いますが、位置はちょうど、大阪空港(伊丹)へ向かう進入コースの真下。関西は、他にも関空と神戸空港の空域が絡み合っていますので、実世界では交信や操縦に、ずいぶん神経を使いそうです。
さて八尾上空。20000ftから、どうやって降りるか。
本来ならば、はるか手前から高度を下げるべきですが…ブロンコ改の正体は猛禽類(地上攻撃機)。急降下はお手のものです。
まず、オートパイロットの速度保持を160Ktまで下げておき。減速が利いたところで、針路保持と高度保持を解除。左に大きくバンクして、スリップしながら旋回急降下。左へ約200度のターンをする間、一気に1500ftまで降りてしまいました。
この場合、オートスロットルが利いて、エンジンはアイドルとなり。ブロンコのプロペラは自動的にピッチ角がゼロになって、エアブレーキとして働きます。従って、昇降計を振り切る急降下中も、対気速度は約250Ktを保ちます。タービンエンジンなので、降下しても混合気の設定変更は必要ありませんしね。実にもう、飛びやすい機体です(^^)/。
…空港の南でターンを終え、低空で滑走路を視認。空港直上を南から北へ通過しながら、左旋回で主滑走路のダウン・ウインド・レグに入り、大阪湾に向かって3nmほど、リードを取ります。十分距離を開けてから左旋回。ベースレグ上で、ギアとフラップをダウン。さあ、ファイナルです。
●着陸速度の、簡単な決め方:
ここで最終進入の速度設定を、簡単にやる方法をご紹介します。滑走路に正対したら、オートパイロットの速度保持を、最終進入速度にセットします。この数値が分からなければ、着陸速度プラス10〜20Kt程度にセットします。ブロンコの場合、通常は100Ktで着地しますから、110Ktにしておけば大丈夫です。(これは手動着陸の例ですから、オートパイロットの高度保持と針路保持は使いません)
PAPI(着陸誘導灯)を頼りに、正確な降下経路に乗ったら、対気速度は自動的に、適切なアプローチ速度になっています。
この後も正常な降下を続ける限り、速度変更の必要はありませんので、滑走路の2、3nm手前でオートパイロットの速度保持を切ります。後はスロットルに手を掛けながら進入し、着地点の寸前で、アイドリング付近まで絞れば、かなり簡単に降りられます。
(軽飛行機などは、ここでアイドルにします。ブロンコは、本当にアイドルまで絞ると、プロペラがエアブレーキになりますので、滑走路寸前で失速する恐れがあります。本機の失速は非常に穏やかなので、気付くのが遅れやすく、慌ててエンジンを全開してもリカバリー出来ないことも。スロットルは必ず、アイドル寸前で止めましょう)
…こんにちは、八尾空港。まずはスムーズな着陸でした。誘導路をたどって駐機場に入れ、パネル右下のスイッチを使って、両エンジンを停止しました。
●ブロンコの燃費は、こうなっていたのか!!!:
そうそう、現時点での燃費テストの結果を、ぜひご報告しなくてはなりません。
今回は、さまざまな高度・速度で、上昇中と水平飛行中の燃料の残りを約50回測定し、引き算をして約20通りの条件で、1分当たりの燃料消費量を得たわけですが。生データを並べてみますと、予想もしていなかった結果が出ました。ブロンコ改の燃費は、
「高度・速度・スロットル開度に関係なく、常に毎分16ポンド」
…だと言うことが、判明したのです。
正直、驚きました。「これって、手抜き設計じゃあ、ありませんか?」というのが私の偽らざる、最初の感想です(^^;)。
しかし、少し冷静に考えれば。これは完全なリアリティー無視、というわけではありません。ジェットエンジンなどのガスタービン機関は、もともと全開時の熱効率が、非常に高いのです。(だからこそジェット旅客機は、最高速度に近いスピードで巡航するのですね)
今回の燃費測定では、高度は20000ft以下、速度は200〜220Ktの範囲だけを計りました。従って、まだ確実ではありませんが…もしも、あらゆる条件下で、燃料消費量が毎分16Lbs(ポンド)だとしますと、補助タンク付ブロンコ改の最大滞空時間は、スロットル開度に関係なく、
(機内タンク2070Lbs+増槽4554Lbs)÷毎分16Lbs
=414分
=6時間24分
…ということになります。これを基に、性能ぎりぎりの航続距離を叩き出す飛び方を考えますと、ごく単純に、
「離陸から上昇、巡航中も、ひたすらエンジン全開。
その高度で実現可能な、最高速度を維持すべし」
という答が得られます。
ここまで解が単純ですと、例えば「この機体で、果たして大西洋横断は可能か?」などという計算が、非常に簡単にできますので…これはこれで長距離飛行ユーザーとしては、大変ありがたいと思います。
過去に幾つかのフライトシムで、同じような計算をしましたが。ある機体の最大航続力を出すには、まずあらゆる高度・速度の組み合わせの中から、最良の燃費を出す条件を調べる必要があります。その上で…例えば離陸直後はエンジン全開で急上昇しておき、一定の高度から上は段階的にエンジン出力を絞るなど、無数の上昇パターンを試して、もっとも経済的な飛び方の最適解を、手探りしなくてはなりません。あの苦労は正直、しなくて済むのでしたら幸いです(^^;)。
●
次回は高々度燃費テストを続けながら、松山へ向かいます。「エンジン全開飛行は、もっとも燃費のいいフライト」という仮説が、ブロンコ改で本当に証明されるのか。このあたりが楽しみです。
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手探り航法・旅日記
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コンコルドのバーチャル・クルーたち
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コンコルドのマニュアル訳(前回の続きです)
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コンコルドで初の超音速飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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サンテグジュペリの郵便飛行
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サンテグジュペリの郵便飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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天測航法に挑む(前編)
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天測航法に挑む(後編)
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- ホンダジェット試乗と大瀑布 (hide, 2008-6-27 21:01)
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天測航法に挑む(後編)
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