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Re: 手探り航法・旅日記

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通常 Re: 手探り航法・旅日記

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79
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2007-9-8 13:38
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 650
hideです。
 さて今回は、北京から南下しまして、河南省の鄭州で西へ変針。ほぼ黄河に沿って進み、陝西省・西安(かつての古都・長安。シルクロードの起点)を通過。さらにチベットに近い甘粛省の蘭州まで、全行程900nm近い無着陸飛行を試みます。

 この先は、VORがほとんどない地域を飛ぶ予定ですので、今回の長距離移動を利用し、推測航法の訓練をしておきます。

●空港情報データベースを発見:
 海外の長距離フライトでは、行く先々の空港情報が必要です。正確な位置やVOR周波数などは、Atlas画面から読めますが、出来れば以下のデータも、一度に手に入れたいものです。

 ・滑走路の方位と長さ(Atlas画面で測定すると面倒)
 ・滑走路の標高(Atlasの色分けに頼ると誤差が大)
 ・空港における磁気偏差(専用HPで調べずに済ませたい)
 ・テキスト表示の緯度経度。(誤記防止にコピペしたい)

 そこでネットを探しましたら、実機のパイロットさんのブログから、以下のような全世界対象のサイトを発見しました。

      http://worldaerodata.com/

 空港名(横文字)かICAOコードを打ち込みますと、前記データの他に滑走路の勾配、標準時間帯、無線施設、灯火類、給油できる燃料の種類まで分かります。着陸コース図も手に入れば完璧なのですが。さすがに無料公開はされていません。(注:フライトシム用の公開例は、少し古いデータのようです)
 …以下にお目に掛けるフライトプランには、このサイトを使って、少し詳しい空港データを入れています。

■大黄河の流域をゆく■(北京〜蘭州)
マップe110n40
   e110n30
   e100n30

◎北京空港 CAPITAL INTL ZBAA
40°04'48.40"N 116°35'04.40"E 116 feet Var006°W
18R/36L 18L/36R VOR-DME 117.2 5.8 NM 102.8
NDB 380 12.4 NM 169.0(他のVOR 114.70)
   ▼199.4度
    (Mag205度、●補正203度)236nm
★Weixian VOR(115.70)N36.21.50-E114.55.04 Var004.5°W
   ▼205.4度
    (Mag210度、●補正208度)123nm
◎鄭州(チョンチョウ=Xinzheng)ZHCC
34°31'10.82"N 113°50'27.20"E 495feet Var004°W
12/30 VOR-DME 114.5 NDB 256 14.9 NM 167.3
   ▼269度
   (Mag272度、●補正268度)252nm
◎西安(シーアン=Xianyang)VOR 115.30 ZLXY
34°26'49.63"N 108°45'05.73"E 1572 feet Var003°W
05/23 VOR-DME 115.3 NDB 359 14.4 NM 339.5
   ▼296.3度
   (Mag300度、補正292.8度)280nm
◎蘭州(ランチョウ=Lanzhou)ZLLL
36°30'54.87"N 103°37'14.79"E 6388 feet Var002°W
18/36 VOR-DME 114.3 NDB 198 18.9 NM 334.8

 総飛行距離:892nm

 【注1】空港データの記入順:
 空港名とICAOコード、緯度経度、標高、偏差(例:Var006°W=偏西6度)、滑走路方位、VOR周波数など。
 【注2】推測航法の針路について:
 ▼マーク後の針路データは、最初の数字が真方位。カッコ内Magは磁気方位で、出発・到着空港の偏差平均から算出。
 簡略化のため、コース前半の鄭州までは風向90度・風速10Ktとし、後半は風向180度・風速15Ktに統一。この数値を、フリーウェアの航法計算ツール「Virtual E-6B」に入れて、風力補正済みコンパス針路(●印)を出しました。

●北京から、広大な農業地帯を鄭州へ:
 ほぼ快晴の北京「首都国際空港」。36L滑走路を北へ離陸します。6nm進んで右に標準旋回し、反転して空港VOR上空を通過。針路203度で2倍速に入れ、4000ftをめざします。
 ブロンコは残念ながら、オートパイロットの「Heading Bug」(磁気方位モード)が使えませんので、私はコンパスを見て手動旋回し、ウイングレベラーで針路を固定しています。針路を数値入力する「Heading Bug」モードより精度は落ちるはずですが、旋回時はHSIを拡大表示したり、コンパス盤面の機首方位マーク(幅4度)も補助目盛りとして活用するなど、工夫をしています。

 さて眼下は、地平線まで農地が広がり、たまに道路と川、小都市が見えます。HSI(コンパス兼VOR指示器)を見ますと、CDI指針(VORのずれを示す針)が、かすかに左にそれています。これを手動操縦で修正。やがて北京のDMEが受信できなくなったので、NAV1を次の中継点・Weixian-VORに切り替えました。
 Weixianまで、あと75nmくらいの地点から、CDI指針は逆に右にそれ始めました。そのまま続航し、機体はVOR局の左2.3nmを通過。飛行距離に対する左右誤差は約1%と、かなり優秀でしたが、途中でコースを修正しましたので、あまり参考にはなりません。そこで次の区間は一切、修正なしで飛ぶことにしました。

●VOR電波と機体の経路の差:
 旋回してWeixian-VORへ戻り、機体を次の区間針路に合わせておいて、正確にVOR上空を通過。再びコンパスだけを頼りに、第2の中継地・鄭州に向かいます。
 208度を維持して、ひたすら南下。VOR針路誤差を示すCDI指針は、今区間でも最初は左へ少し外れ、最後は右に少し外れて行きました。これは一体、どういう現象なのでしょうか…。

 色々考えた末、やっと思い当たりました。
私は今、コンパス針路を一定に固定して、長距離を直進しています。これはラームライン(Rhumb line=等角航路、または航程線)と呼ばれる飛行経路で、一般的な「メルカトル図法」の地図に描きますと、直線になります。しかし同じコースを、丸い地球儀の上に書き移しますと、南にわずかに膨らんだ弧を描くはずです。
 また逆に。地球儀の上に糸をピンと張り、出発点と目的地を最短距離で結ぶコースを描くとします。ご存じのように、これは大圏コースと呼ばれ、メルカトル図の上に転写しますと、北に膨らんだ弧になります。飛行する際は、針路を連続的に修正する必要があるため、手動操縦には向きませんが、FlightGearのオートパイロット連動GPS航法は、この飛行経路を使っています。

 VORの電波は直進するので、大圏コースを飛びます。受信する私はラームラインを飛んでいますから、コースの最初と最後では、それぞれ逆の方向に、VORが針路誤差を示すわけです。
 長距離の推測航法をするたびに、原因不明の小さなドリフトを感じたのは、これだったのですね。ニュージーランド飛行以来の、航法の謎が一つ解けました。ばんざぁい(^^)!!

 となると推測航法では、このVOR誤差は無視して、算出した針路を信じて飛べばいいわけですね。試しに「ABUNAI航法」で針路を実測しましたが、VORのドリフトとは無関係に、正しい対地針路を維持していることを確認しました。実際、機体はやがて蘭州VORを、1nm未満の誤差でドンピシャリ通過しました。
 周防正行監督の、大学お相撲映画「シコ踏んじゃった!」の試合シーンでは、学生たちが「自分の相撲、自分の相撲!」と声援を送りますが、私も好結果に嬉しくなって、思わず
     「よっしゃ、自分の航法、自分の航法!」
と呟きながら、西へ…。

●黄河よ!! 黄河よ!!
 この蘭州VOR通過の直前、私は黄河を横断しました。これがもう、実に印象的な眺めでした。
 360度に広がる大平原を、あっちの地平から、こっちの地平へ、幅2nmくらいある流れが横たわっています。川面には、小さな村が乗ってしまいそうな、大きな中州が、平気で幾つも転がっています。Vキーで機外視点に切り替えて、視野をワイドに引くと、大空に散った断雲が、また素晴らしい眺め。スナップショットを撮るアングルに迷いました(^^)。(アップロード欄にあります)
 http://www.jp.flightgear.org/modules/myalbum/photo.php?lid=47&cid=2
 この大河をコンパス代わりに使い、低空で西安まで遡上したら、さぞ素晴らしい旅になるでしょう。しかし今回は、航法の精度をしっかり確認しなくてはなりません。残念。

 ここで風を変更。風向180度・風速15nmとします。鄭州空港から先は、この風力データを計算機に入れる代りに、ABUNAI航法を使って機上で偏流測定を行い、補正針路を算出する、より自立性の高いナビゲーションに切り替えました。
 黄河南方の山岳地帯へ差し掛かります。そろそろ、黄土高原と呼ばれる黄砂のふるさとです。FlightGearでは青い黄河も、実際は黄褐色をしているのでしょうね。高度設定を10000ftに変更し、機体はやがて、薄い雲の層を突き抜けて浮上。平らな雪原のような、幻想的な景色が広がるこの一瞬が、私は好きです。

●FlightGearが異常停止:
 標高7000ft近い山岳地帯を抜け、西安を通過。かつて「長安の都」だったところですが、意外に小振りな、谷間の街ですね。これよりシルクロードの始まりです。
 西安のVOR通過時は、約4nm誤差が出ました。今日の各航程は途中で偏差が変化していますし、FlightGearが再現する、風によるドリフト量にも若干の誤差があります(2006年8月13日連載分)。従って、先ほどの「誤差ゼロ」は相当、運がいい例だと言えます。

 …ここで、思い出すも不愉快なトラブルが。西安の少し先で、どうもパソコンの処理速度が遅くなった、と思いましたら、地形データが途中から消えるエラーが発生。機体が空白地帯に差し掛かったとたん、無情にもFlightGearは終了しました。
 この手の症状が出ますと、私の技術ではCドライブの内容を、すっかり書き直すしかありません。数カ月前に保存したイメージファイルをロードし、北京から全コースを飛び直しました。

 ムチャクチャ腹が立ちましたが、同じコースを2回飛ぶ機会はめったにありません。そこで2度目の飛行では、久しぶりにオートパイロットの「True Heading」(真方位)モードを使い、磁気方位+ウイングレベラーを使う飛行方法と、航法の誤差の比較をしました。真方位モードでは、針路を小数点以下まで入力できるうえ、磁気方位に換算する際の四捨五入もなくなるため、一段と精度が上がるはずです。
 でも実際にやってみると、有意な差はありませんでした。先ほど触れました「ドリフト量の誤差」問題や、或いはFlightGearの地球モデルと実際の(真球ではない)地球との差などに、吸収されてしまうのでしょう。全体として…今の航法のやり方は、正しいと考えて良さそうです。

     ○

 蘭州〜西安間は推測航法を取りやめ、先ほどやりたかった、黄河に沿って遡航するフライトを実現しました。広大な流れを見下ろし、また山岳地帯を蛇行する谷間を抜けてゆく旅では、グランドキャニオンとは味の違う、スケールは大きいが柔和な風景を、存分に楽しむことができました。
 この区間の黄河は、東向きに逆行したり、「三日月湖」を形成するような、極端な蛇行はなく。おおむね西を向いて流れているのは幸いでした。

●坂井三郎も見た、これが函谷関?:
 西安を過ぎると、黄河本流は北に折れます。ブロンコ改と私は、西へ延びる支流・渭水に沿って飛び続けました。おお、そう言えば。名所「函谷関」は、この近所ではないでしょうか?

 往年の零戦エース・坂井三郎さんの「大空のサムライ」には、黄河と渭水の分岐点のすぐ西で、「カルメ焼きを上から見たような醜怪な地形」を目撃する場面があります。「かつて地球が出来たとき」のような、薄気味悪い光景だそうで、どうも巨大な割れ目が無数に切れ込んだ、一種のハゲ山のようですね。坂井さんは航空図で函谷関という地名を読み、箱根山の歌にある「函谷関も、ものならず」の歌詞の元かと納得。「えらい見物をした。飛行機乗りのありがたさだ」と書いています。

 FlightGearで、これが見えるなら、ぜひ見たいものです。地図で場所を調べ、三門峡を過ぎたあたりから、渭水の南岸を探しますと、「そう思って見れば、そうも見える」…といった感じの、妙にデコボコした丘陵を発見。あれですかねぇ。
 豪州のエアーズロックはよく見えたので、ちょっと期待したのですが。欧米人に有名でない場所は当然、何の加工もしてありませんから、見分けが難しいようです。
 現在は、Cドライブに「Google Earth」を入れていないのですが、近いうちに再びインストールして、あれが函谷関だったのかどうか、確認してみたいと思います。

●高原の街、蘭州に着陸:
 これ以上、FlightGearがトラブっては困るので、航程の最後は負荷の少なそうな雲の上を、淡々と進みました。

 蘭州の空港は、標高6388ftの高原の上。ほぼ理想的な角度で、ダウンウインドレグに接近したのですが…褐色の地面に滑走路が紛れてしまい、いくら近づいても見つかりません。やっと2nm手前で視認して、慌てたはずみに誤って風上側へターンしてしまい、アプローチをやり直す羽目になりました。

 2回のアプリ停止をはさんだものの、ともかく蘭州までやってきました。ちょっと西遊記みたいな気分です。
 次回は、チベットの大高原などを飛びます。
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