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Re: 手探り航法・旅日記

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通常 Re: 手探り航法・旅日記

msg# 1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
depth:
44
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2006-8-22 22:52
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 650
hideです。
 「風向風速」のお話に熱中していましたので、そろそろ反動で、計器飛行の勉強をしたくなり、先日から「計器飛行方式」(鳳文書林、4700円)という本をかじっていました。今日は、各種のチャート(航空図)を参考にマカオへ向かい、計器進入します。

●IFRフライトを、どう再現するか:
 私がこれまで行ってきた「計器飛行」は、実はほとんど「電波航法を補助に使ったVFRフライト」に近いものです(1971年の雫石事故以前は、雲上の有視界飛行も、認められていたそうですが)。出発地から任意のコース・高度・速度を取り、無線標識を飛び石伝いにたどって、いつ着くかは風まかせ。好きな方位から目的地に近付き、気が向けば最終進入だけ、コースマップを参考にする…というものでした。

 しかし実際の計器飛行は、ご存じのように、切れ目なく地上の管制を受けて飛ぶ、いわゆるIFR(計器飛行方式)フライトです。私の知識はまだまだ足りませんが、
  ・「飛行場管制」
     (タキシングや離着陸管理、フライトプランの承認)
  ・「進入・ターミナルレーダー管制」
     (空港と航空路間の、飛行経路管制およびATIS放送)
  ・「エンルート管制」
     (航空管制部による、航空路を巡航中の管制)

…の3層に分かれた各機関が、刻々と飛ぶ飛行機の管制を、順番に引き継ぐわけですね。FlightGearには、フライトプランを作ったり、承認を受ける機能はまだありませんが、「飛行場管制」(たぶん)の一部が、利用できるように作られている、と理解しています。ただ、実際にKFSOの滑走路に機体を止めて、メニューの「ATC」にチェックを入れ、「’」キーでタワーに呼びかけようとしても、常に「No transmission available」と答が返りまして、うまく行きません。このあたりを、どなたか教えてくださいましたら、幸いです。
 交信は今後の課題にして、取りあえずは、より計器飛行らしい航法を目指すことにします。こんな具合でしょうか…。

 (1)空港離陸後、空港から航空路への、標準的な飛行経路
    SID(Standard Instrument Departure)に従って、航空
    路へ向かう。これにはSIDチャートを入手する必要がある。
 (2)航空路に乗ったら、エンルート・チャート(IFR空路図)に沿
    って目的地をめざす。
 (3)目的地の数十nm手前から、標準的なアプローチ経路
    STAR(Standard Terminal Arrival route)に従って、
    空港に接近する。これにもSTARチャートが必要。
 (4)市販の「空港進入コースマップ」などに従って着陸する。

●チャートを手に入れる:
 さて、資料となるチャート類(航空図)が必要です。
「VATSIM - Navigation Charts and Flight Planning Tools」というサイト
     http://usa-w.vatsim.net/charts/
には世界数十カ国の、空港データ・ポータルサイトの一覧があり。シミュレータ用のアプローチ・チャートや、現地政府機関などが公開している、実物の空港データが手に入ります。各国の、代表的空港のIFRアプローチに関しては、かなりチャートが見つかります。台湾などはエンルートもあります。


■海南島からマカオへ■
  (マップデータ:e110n10.tgz
           e110n20.tgz )
 では、海南島から中国本土・マカオへのフライトプランをご紹介します。計器飛行に合わせて、今回から記号を少々変更しました。
  ◎:空港
  ★:VOR局
  ☆:NDB局
  △:ラジオ・フィックス(インターセクション)
     =航法の目印にする、航空図上の通過点。通常は
       タワーへの位置通報点を兼ねる。二つの無線局の
       ラジアル交点、または一つの局の特定ラジアルと、
       局からの距離により位置が定義される。
  ○:それ以外の変針点
     =特に名称がなかったり、任意に設けるもの。
  ▼:上の行(地点)から下の行への飛行ルート。
  ETE:予定飛行時間。

 では、フライトプランの本文です。
◎Mailan空港ZJHK(N19.56.04-E110.27.37)←出発地
(東ILS 108.50 西111.50) ←ILSを出発時の目標に使用
  ▼42度(44M)18nm ETE7.5' 5000ft 
          ↑針路・距離・予定飛行時間(分)・高度
   (東に向かう高度は、1000ft×奇数倍がルール)
★Dong murantou-VOR 112.70 ←局名と周波数
 (N20.09.05-E110.40.23)    ←局の位置
  ▼54.3度(56M)178.4nm ETE1:14' 7000ft
☆Gaolan-NDB 204(N21.53.11-E113.15.36)
 (MCU(マカオVOR)116.40を受信。6890ftへ降下)
  ▼101度(99M)
△ROMEO(Gaolan99M × MCU208M)←電波の交差点
  ▼101度(99M)9nm ETE3.8' 3000ftへ降下
○左旋回点(Gaolan99M × MCU177M)
  ▼028M(真方位030度)
○ILS-MCN109.70のローカライザ343Mをインターセプト。
  ▼343M(真方位345度)
△PAPA(MCU-VOR局の343M 10.2nm手前)
  (ホールディング・パターン入口。左旋回163度M 1分間)
  ▼343M(真方位345度)ILS 109.70に乗る。ETE4.2'
◎Macao空港(N22.08.48-E113.35.33)
 (参考:Macao-VOR位置:N22.08.07-E113.35.52)

 飛べば2時間弱なんですが。図解なしに、こんな面倒な代物をお読み頂くのは、無謀ですね…ごめんなさい(^^;)。
 オートパイロットの針路は真方位です。しかしチャートに記載の針路や、無線局のラジアルは磁気方位です。勘違いすると迷子になりますので、真方位は「度」、磁気方位はM(Magnetic)を付けて区別しました。

 今回のコースは、少し偏差(真方位と磁気方位のずれ)があります。コンパス方位(HUDを除く)は、海南島付近で真方位プラス1・5度、マカオ付近ではプラス2度の補正が必要です。
 逆に言えば。VORに乗って飛ぶには、ラジアル方位から1・5〜2度引いた針路を、オートパイロットの「True Heading」欄に入れる必要があります。「どうも、うまくラジアルに乗れない」という方がおられましたら、これが原因かも。全世界の主な偏差一覧は、以前ご紹介した
   http://www.geo-orbit.org/sizepgs/magmapsp.html
にあります。

 またIFRフライトは、同一のコースや空港を、多数機が時間差で共有する管制飛行なので、予定時間を守って飛ばないと、あまり意味がありません。そこで実際の私のメモはETEに加え、実飛行時間(ATE)、予定到着時刻(ETA)、実際の到着時刻(ATA)の欄を作り。また▼マークの下に、それぞれ1行を加えて、風向風速を折り込んだ、機首方位・実速度・ETEを書き加えました。
 正確なETEを出すには、推測航法の原理で、風の影響を補正計算する必要があるからですが。表はますます複雑になり、(後で述べるように、アプリケーションが終了してしまう問題もあって)全部は活用し切れませんでした。これ以上、自己流の簡易メモを工夫するより、以前作ったような、実際のフライトプラン用紙に近いものが、ベターな気がします…。

●リバーサル・ディパーチャーを試す:
 では出発します。
 ジェット機では速すぎて、考える暇がありませんので、いつものセスナC310を使います。天候は、1500〜3000ftに厚くオーバーキャスト(全天)の雲を出し、4000〜5000ftはブロークン(約半分曇り)にしました。風向風速は北の風7Ktです。
 今回のフライトは離陸直後、FlightGearがやたらに重くなったりして、2回ほど起動をやり直しました。最初にAtlasを立ち上げておかないと、どちらのアプリもスムーズに動作しないようですね。うっかりしていました。

 Mailan空港のRWY27を離陸し、どんどこ上昇。ここの出発方式は資料がないので、適当に作りました。
 空港にはVORもNDBもないため、代わりにILSのローカライザを受信し、上昇しながら西へ直進。鉛色の雲が、頭上から押しかぶさって、間もなく視界ゼロ。人工水平儀に視線を移します。
 ILSから4.5nmの地点で、左220度ターン。涙滴型の飛行経路を描いてILS上空へ戻り、高度5000ftで通過。ここを航法上の出発点とします。これは「リバーサル・ディパーチャー」と呼ばれる出発方式で、日本の空港で一般的な、ベースターン(基礎旋回)によるアプローチ法を、ちょうど逆にしたような飛び方です。
 旋回中に雲をぶち破り、白銀に輝く雲上に浮かび上がりました。機体はかなり正確な、ナス型の飛行経路を描き。左へ1nmだけそれて…ILS近くを通過。VOR指示器を見ながら、コースを修正。さらに7000ftへ上昇しながら、北東18nmのDong murantou-VORへ向かいます。

●雲上を巡航、複雑なアプローチへ:
 ETA(予定到着時刻)ぴったりに、このVORの真上を通過。さて雲海を見下ろし、洋上のエンルートを淡々と巡航。私はオートパイロットに任せ、ちょっとパソコンの前を離れて、仕事なども片付けます…。

 VORから100nm。そろそろ圏外になりますが、次のGolan-NDBがまだ受信できません。機体はほぼコース上。デッド・レコニング(推測航法)に入っても問題ありませんが、なぜ受信できないのだろう。
 あ。NDBの周波数が下一桁、間違っていました(^^;)。数字を入れ直すとADFの針が立って、機首から右4度を指しています。風と偏差の影響を引いても、まだ若干ずれているので、修正を加えました。

 Gaolan-NDBを通過し、アプローチ経路に差し掛かります。NDBから磁気方位99度(真方位は+2度なので、オートパイロットを101度にセット)で約8分飛び、マカオVORのラジアル208度との交点を通過。ここがフィックス「ROMEO」です…といっても、Atlasに表示はありません。
 さらに9nm直進し、マカオVORラジアル177度との交点で、磁気方位28度(真方位30度)に変針し、やがてマカオLISをインターセプトする予定です。おっと、高度を3000ftまで下げておかなくては…毎分1000ftで降りていくと、雲の中でNAV2(マカオVOR)の針が、盤面中央へじりじり移動。待ってくれ、その前にILSをNAV1にセットしなくては。計器も私も、フル稼働といった感じです。
 磁気方位28度への変針を、つつがなく終え。NAV1でILSのローカライザをつかみ、北風の影響を考えながらインターセプト。中国本土の山々を背景に、海上空港が浮かんでおり。ランウェイへぴったり進入中。うむ、とうとうここまで、やってきました。

●空中待機を試みる:
 滑走路手前10.2nmのフィックス「PAPA」に到達。ここはホールディング・パターン(空中待機経路)の入り口です。ここでタワーから突然、ホールデイングを命じられたと想定して、実際にパターンに入ってみました。フィックスを起点に左180度旋回し、最終進入路の反方位で1分間直進。さらに左180度旋回をして、もとの進入コースに戻り…再びフィックスを通過して完了です。往復各1分と、180度旋回が各1分ですから、1周で4分が経過するわけですね。
 フィックスを起点に楕円を飛ぶのは、さぞ難しかろうと思ったのですが。パターンの一辺ではILSに乗るので、往路と復路でそれぞれ、風向を意識して機首方位を調節すれば、むやみに困難ではありません。Atlas画面に、陸上競技場のような楕円が、かなりきれいに描けたのを見ると、いい気分です。ただし2周以上すれば、ずれると思います。本によると、風に流される場合の補正テクニックは色々あって、楕円一つ描くのも、立派なナビゲーションの一種だと分かります。
 視界ゼロの雲中飛行で、風速もあれこれ変えながら、このホールドの練習をみっちりやると、計器飛行は確実に、うまくなると思います。

 …機体を滑走路に向け、いよいよ着陸です。最初は自動進入しようかと思ったのですが、どうもC310は、ローカライザ(機首方位制御のビーム)に乗せようとすると、左右に激しく「いやいや」をします。機体の動揺周期とオートパイロットの操舵タイミングが共振しないよう、速度を変えたりしましたがダメなので、グライドパス(上下角制御)だけ自動で飛んで、早めにマニュアルに切り替えてタッチダウンしました。

●準備がすべてのIFR:
 従来よりも一回りか二回り、本格的な計器飛行を、今回は体験できました。IFRフライトは、事前の勉強と、飛行計画を十分に練ることが、決定的に重要ですね。離陸してからのボロ隠しは不可能ですが、逆に本を読んだ分、丹念にプランに手を入れた分、必ず飛びやすくなります。これが分かったのは最大の収穫です。実機でも「IFRのフライトプラン作成には、飛行時間の数倍掛かる」と言われるそうですが、納得できます。
 その一方で今回は、FlightGearが飛行中に2回、着陸後も1回、勝手に終了しまして、散々な目に遭いました。どこが悪いのかなあ…これは。環境も設定も、特に変えた覚えはないし、ウイルスもスパイウェアも、検出されないのですが。ちょっと心配しています。
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