Re: 手探り航法・旅日記
Re: 手探り航法・旅日記
msg# 1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
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居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです。
今回も、クラシック機の飛行を織り交ぜます。
まずブロンコ改で、スイスのジュネーブからパリへ。ここでファルマン複葉機などに試乗した後、フランス北岸のカレーへ向かい、ブレリオXI号機に乗り換えまして、1909年のドーバー海峡の初横断飛行を再現。続いてロンドンに入ります。(長文ですので、2回に分けて一挙アップさせて頂きます)
■クラシック機と遊びながら、ロンドンへ■(その1)
(ジュネーブ〜パリ〜ロンドン)
コースマップ:e000n40
e000n50
w010n50
ジュネーブ起動時の、リアルウエザー風向風速:
9000ft 50度 2.9Kt
6000ft 40度 2.6Kt
3000ft 30度 2.4Kt
雲量:
大快晴。
(注:以下●印は、磁気偏差を加えたコンパス針路。
今回は微風のため、風力補正は省略しました)
◎ジュネーブ、コワントラン空港LSGG(VOR 115.75)
N46.14.17-E006.06.32 偏差0度
▼325度75nm
★DijonVOR 111.45
▼318度127nm
★CoulommiersVOR(112.90)
▼プロペラ機は6000ftで通過。
284度(●285度)28.6nm地点を4000ftで
左旋回、71度(●72度)で最終進入。
そのまま8nmでRWY。
◎パリ、ル・ブールジェ空港LFPB(VOR 108.80)
48° 58' 10.00" N 002° 26' 29.00" E 偏西1度
RWY27=ILS110.55 RWY07=ILS109.90
▼341度73nm(●342度)
★AbbevilleVOR(108.45)N50.08.06-E01.51.11
▼4度50nm(●5度)
◎Calais Dunkerque空港LFAC(VOR 110.55)
▼ブレリオ=263度9nm進み、317度を洋上18nm。
▼ブロンコ=298度26nm
★Dover VOR(114.95)N51.09.41-E01.21.32
▼277度69nm(●279度)
★Ockham VOR(115.30)N51.18.17-W00.26.50
▼342度2.9nm(●344度)
◎ロンドン・ブルックランズ飛行場EG11
N51.21.02-W00.28.09 偏西2度
(総計460nm)
●ABUNAI航法の距離・方位誤差について:
最初に少々、航法技術関連のご報告をします。
…私が以前考案した、Atlas画面上でマウスポインタを動かせば、目標への距離と方位が表示される「ABUNAI航法」の話が、最近は出てこないな、とお感じの方もおられるかも知れません(^^;)。
ABUNAI航法は、飛行中は必ずしも必要ありませんが、フライトプラン作成には極めて便利です。しかし今回の世界一周は、1区間の飛行距離が長いため、距離を計るにはAtlas画面を大縮尺にせざるを得ず、測定誤差が心配でしたので、もっぱら各中継地の緯度経度を基に、区間距離・方位を算出しておりました。
しかしこれでは、計算にかなり時間が掛かります。出来ればABUNAI航法を使いたいので、大縮尺の測定では、どの程度の誤差が出るのか初めて検証を試みました。誤差が生まれる要因は、主に
・Atlasを大縮尺にした場合に生じる、地図の歪み。
・マウスポインタ解像力の、相対的な低下。
…の二つが考えられます。地図の歪みの方は、中央からの距離・方位を正確に描く、「正距方位図法」を使えば問題ないのですが、演算に時間が掛かるため、スクロールマップ向きではありません。実際のAtlas画面は、計算が簡単な正距円筒図法を主に使っていますので、困ったことに大距離では、方位にも距離にも誤差が出るのです。では一体、どの程度の誤差なのでしょうか。
地図は一般的に、高緯度になるほど、測定距離が長いほど、表示誤差が大きくなります。そこで今回はAtlas画面上に、方位45度の線分を50nm、100nm、200nm、400nmの長さに描き、それぞれの方位と長さをABUNAI航法で測定し、始点と終点の緯度経度から算出した方位・長さと比較しました。測定は北緯30度を起点にした場合と、60度の場合の2回行い、緯度の影響も確認しました。
すると結果は、以下の通りでした。
◎Atlas航法による測定の距離・方位誤差
長さ 北緯30度 北緯60度
・ 50nm -0.1 nm -0.1 度 -0.57nm -0.55度
・100nm 0.12nm 0.49度 2.93nm 1.33度
・200nm 1.57nm -0.09度 4.27nm 0.7 度
・400nm 4.84nm 0.31度 17.05nm 2.78度
…ご覧のように、北緯30度では距離・方位とも実用上、問題になる誤差は出ませんでした。北緯60度でも200nm以下に限れば、少々天候が悪くても、目的地の空港が視界に入る程度ですので、まあ合格点だと思います。という次第で、めでたくABUNAI航法は、かなり大距離でも実用になることが分かりまして、今回のコースは久しぶりに、これを併用して飛行計画を立てました。
(ABUNAI航法の詳しいご利用法は、本連載の今年2月18日掲載分をご覧下さい)
さて、いよいよフライト編です。
●久しぶりに、STARをたどってパリ着陸:
…快晴・微風のジュネーブを出発します。
滑走路を西へ離陸し、上昇しながら約6nm進んで反転。空港VORを起点に航法を始める、お馴染みのリバーサル・ディパーチュアを行い、すぐ北に横たわる、仏領のジュラ山脈(地質学の「ジュラ紀」は、これが語源)を飛び越えました。
ひたすら平野が続いて、やがてフランス中部のディジョンVORを通過。ワインで有名なブルゴーニュ地方を北進し、パリ東南東のCoulommiers VORから、ル・ブールジェ空港07滑走路へのSTAR(計器飛行方式の標準進入経路)へ入ります。ネットでは、なかなか海外のSID(同標準出発経路)やSTARのデータを入手できませんが、ここのは幸いダウンロードできました。
…まず、Coulommiers VORを6000ft(プロペラ機の場合)で通過。コースを284度に取って、ほぼILS進入コース上にあるNDBを目標に左旋回を始め、200度ほど反転する形でファイナルに入るのですが…FlightGearの地形上には、このNDBがなかったので、あらかじめVORからの進出距離を測っておきました。
コース北方には、パリ市街地と空港が広がっています。普段は、目分量で進入してしまうのですが、ていねいにSTARをたどった方が、やはり実感が湧きますね。なぜかILS受信には失敗しましたが、快晴のため問題なく着陸しました。
●欧州初飛行…サントス・デュモンの14bis号:
パリでは、以前ダウンロードさせて頂いた、豪華な3D市街地群を見下ろしながら、クラシック機を楽しみます。
まずブールジェ空港東隣の、シャルル・ドゴール空港26R滑走路で、ブラジル人の飛行家、サントス・デュモンが1906年に、欧州初の動力飛行をした複葉機「14bis」号を始動しました。ダウンロード先は、前回ご紹介しましたブレリオXI号機と同じサイトです。(以下にアドレス再掲)
http://helijah.free.fr/flightgear/hangar.htm
14bisはカナード型の複葉機で、前方に昇降舵と方向舵を設け、垂直尾翼は特にないという形式。上下主翼間の支柱に、カーテン(仕切り布)を張ってあるものの、十分な「風見安定」を得るのは、やや難しそうですね。
FlightGear用の機体は、なぜかラダーの効きが左右逆になっている上、ロール制御も極めて過敏です。私はマウスの感度を落としたにも関わらず、滑走路で片翼を地面に当ててしまい、連続10回もクラッシュしました。そして…やっと70Ktまで加速したにも関わらず、ついに離陸できませんでした。高度1500ftで強制起動しても、ほぼ操縦不能と言ってよく、がっかりしました。
上記サイトは、けっこう歴史的な機体の宝庫です。多くはプラモデルのように精巧で、美しい仕上がりなのですが…こんな風に、飛行特性に問題のある機体も、しばしば見られます(^^;)。
史実では、デュモンは1906年10月に、高度3mで距離60mを飛行。翌月には距離220mを達成しました。一方ライト兄弟は、最高傑作と言われた「A型」をフランスに持参。1908年にウイルバーが124.7kmを2時間20分で飛び、フランス航空人に強い衝撃を与えました。会心のウイルバーは、デュモンの飛行を「犬に追われた、ニワトリのジャンプ」と酷評したそうです。
●ファルマン機でパリを行く:
しかし、ライト兄弟の絶頂期はここまで。フランスの航空人たちはライト機が、主翼を操縦ワイヤーでひねって、エルロンの役割を果たす「たわみ翼」を使い、完璧な釣り合い旋回を行っていることを知るや、素早く自機に取り入れました。
フランスではファルマンやボワザン、ブレリオらが、またアメリカではカーチスが、ライト兄弟を猛追。わずか1年後の1909年、フランスのランスで開かれた飛行競技会では、栄光のライト機は、ついに1種目も入賞できませんでした。
…そんなお話を思い出しながら、次に私は、この時代の名機の一つ、ファルマンIX型複葉機を起動。日本初の飛行(1910年)では、徳川好敏大尉も、同系列の機体に乗ったのでしょうね。これも、先ほどのサイトからダウンロード可能です。ファルマンとブレリオ機は、離陸時の直進不良を除けば、割に操縦しやすい機体です。
さてル・ブールジェ空港から、ゆるりとパリの空へ飛び立ちましたが…パリの街には、クラシック飛行機が、とてもよく似合いますね。モンマルトルの丘の、白いサクレクール寺院を見下ろし、エッフェル塔の回りを何度も周回。ついでに宙返りにも成功しました。シャンゼリゼ通りを低空で駆け抜けるなど、20世紀初頭の鳥人の興奮を、わずかながら味わった気分でした。
【注】サントス・デュモンに関する補足:
(彼は飛行機のほか、多くの飛行船試作で有名で、エッフェル塔の初周回飛行に成功。一時ヘリコプターも研究し、ブラジルでは「航空の父」とされます。ダンディーな紳士で、飛行中を想定して、天井から椅子とテーブルを吊って食事したり、街角に飛行船を係留してカフェに立ち寄るなど、古き良き時代の発明家らしい(?)奇行でも、パリ市民に愛されました。晩年は、航空機が戦争に使われることを深く悲しんで、自殺したと言われます)
●バロン滋野、フランス上空の航跡:
ところで…この第一次大戦前のパリを、日本の飛行家が、自分で設計した飛行機で飛び回ったことを、ご存じでしょうか。
このパイロットは、滋野清武という男爵です。1910年、28歳で音楽を学びに渡仏して航空熱に取りつかれ、まず自動車免許を取ってエンジンに慣れ、1912年に万国飛行免状を取得。さらに複葉機を設計し、この図面が製造業者に高く評価され、間もなく実機が完成。亡妻の名にちなんで「わか鳥号」と命名して飛び回りました。写真を見ると、空気抵抗の少なそうな、スマートな機体です。
滋野氏は帰国後、陸軍で操縦を教えたものの、国内初飛行の徳川好敏大尉から、なぜか冷淡に扱われた様子で、持ち帰った「わか鳥号」が大破する不運にも見舞われ、1914年に再渡仏。間もなく第一次大戦が勃発し、彼はフランス陸軍航空隊に義勇兵として志願して、大尉に任官しました。ちなみに大戦中、フランス軍のパイロットになった日本人は数人いて、被弾炎上した乗機から身を投げ、戦死した人もいます。(不幸なことに、軍用機がパラシュートを標準装備したのは、第一次大戦後のことでした)
滋野氏は、偵察や爆撃任務を生き延び、念願の戦闘機隊に転属。ここでは、連合軍トップエースのギヌメールや、戦後リンドバーグと競って大西洋に消えたルネ・フォンクら、そうそうたるメンバーが、最新鋭のスパッド戦闘機に乗っていました。部隊マークはコウノトリですが、滋野氏だけは愛機の胴体に丹頂鶴を描き、「これは日本のコウノトリだよ」と、笑っていたそうです。
一説によれば、滋野氏は通算6機を撃墜。となると日本初のエース(公認撃墜5機以上)でもあったわけですね。いずれにせよ彼はフランス最高の勲章、レジオン・ドヌールを貰っています。
在仏中に新しい奥さんを得て帰国したものの、宮内庁の反対で正式の入籍は許されませんでした。国内で活躍の場を得ないまま、42歳で病没したのは気の毒ですが、航空技術で世界一だった時代のフランスの青空に、短いが鮮烈なコントレール(飛行機雲)を描いた生涯は、日本の航空史に長く残ることでしょう…。
長くなって申し訳ありませんが、忘れがたい人であり、まだご存じない方のため、この場を借りてご紹介させて頂きました。
(ロンドンへの旅、続編はこの後すぐ)
今回も、クラシック機の飛行を織り交ぜます。
まずブロンコ改で、スイスのジュネーブからパリへ。ここでファルマン複葉機などに試乗した後、フランス北岸のカレーへ向かい、ブレリオXI号機に乗り換えまして、1909年のドーバー海峡の初横断飛行を再現。続いてロンドンに入ります。(長文ですので、2回に分けて一挙アップさせて頂きます)
■クラシック機と遊びながら、ロンドンへ■(その1)
(ジュネーブ〜パリ〜ロンドン)
コースマップ:e000n40
e000n50
w010n50
ジュネーブ起動時の、リアルウエザー風向風速:
9000ft 50度 2.9Kt
6000ft 40度 2.6Kt
3000ft 30度 2.4Kt
雲量:
大快晴。
(注:以下●印は、磁気偏差を加えたコンパス針路。
今回は微風のため、風力補正は省略しました)
◎ジュネーブ、コワントラン空港LSGG(VOR 115.75)
N46.14.17-E006.06.32 偏差0度
▼325度75nm
★DijonVOR 111.45
▼318度127nm
★CoulommiersVOR(112.90)
▼プロペラ機は6000ftで通過。
284度(●285度)28.6nm地点を4000ftで
左旋回、71度(●72度)で最終進入。
そのまま8nmでRWY。
◎パリ、ル・ブールジェ空港LFPB(VOR 108.80)
48° 58' 10.00" N 002° 26' 29.00" E 偏西1度
RWY27=ILS110.55 RWY07=ILS109.90
▼341度73nm(●342度)
★AbbevilleVOR(108.45)N50.08.06-E01.51.11
▼4度50nm(●5度)
◎Calais Dunkerque空港LFAC(VOR 110.55)
▼ブレリオ=263度9nm進み、317度を洋上18nm。
▼ブロンコ=298度26nm
★Dover VOR(114.95)N51.09.41-E01.21.32
▼277度69nm(●279度)
★Ockham VOR(115.30)N51.18.17-W00.26.50
▼342度2.9nm(●344度)
◎ロンドン・ブルックランズ飛行場EG11
N51.21.02-W00.28.09 偏西2度
(総計460nm)
●ABUNAI航法の距離・方位誤差について:
最初に少々、航法技術関連のご報告をします。
…私が以前考案した、Atlas画面上でマウスポインタを動かせば、目標への距離と方位が表示される「ABUNAI航法」の話が、最近は出てこないな、とお感じの方もおられるかも知れません(^^;)。
ABUNAI航法は、飛行中は必ずしも必要ありませんが、フライトプラン作成には極めて便利です。しかし今回の世界一周は、1区間の飛行距離が長いため、距離を計るにはAtlas画面を大縮尺にせざるを得ず、測定誤差が心配でしたので、もっぱら各中継地の緯度経度を基に、区間距離・方位を算出しておりました。
しかしこれでは、計算にかなり時間が掛かります。出来ればABUNAI航法を使いたいので、大縮尺の測定では、どの程度の誤差が出るのか初めて検証を試みました。誤差が生まれる要因は、主に
・Atlasを大縮尺にした場合に生じる、地図の歪み。
・マウスポインタ解像力の、相対的な低下。
…の二つが考えられます。地図の歪みの方は、中央からの距離・方位を正確に描く、「正距方位図法」を使えば問題ないのですが、演算に時間が掛かるため、スクロールマップ向きではありません。実際のAtlas画面は、計算が簡単な正距円筒図法を主に使っていますので、困ったことに大距離では、方位にも距離にも誤差が出るのです。では一体、どの程度の誤差なのでしょうか。
地図は一般的に、高緯度になるほど、測定距離が長いほど、表示誤差が大きくなります。そこで今回はAtlas画面上に、方位45度の線分を50nm、100nm、200nm、400nmの長さに描き、それぞれの方位と長さをABUNAI航法で測定し、始点と終点の緯度経度から算出した方位・長さと比較しました。測定は北緯30度を起点にした場合と、60度の場合の2回行い、緯度の影響も確認しました。
すると結果は、以下の通りでした。
◎Atlas航法による測定の距離・方位誤差
長さ 北緯30度 北緯60度
・ 50nm -0.1 nm -0.1 度 -0.57nm -0.55度
・100nm 0.12nm 0.49度 2.93nm 1.33度
・200nm 1.57nm -0.09度 4.27nm 0.7 度
・400nm 4.84nm 0.31度 17.05nm 2.78度
…ご覧のように、北緯30度では距離・方位とも実用上、問題になる誤差は出ませんでした。北緯60度でも200nm以下に限れば、少々天候が悪くても、目的地の空港が視界に入る程度ですので、まあ合格点だと思います。という次第で、めでたくABUNAI航法は、かなり大距離でも実用になることが分かりまして、今回のコースは久しぶりに、これを併用して飛行計画を立てました。
(ABUNAI航法の詳しいご利用法は、本連載の今年2月18日掲載分をご覧下さい)
さて、いよいよフライト編です。
●久しぶりに、STARをたどってパリ着陸:
…快晴・微風のジュネーブを出発します。
滑走路を西へ離陸し、上昇しながら約6nm進んで反転。空港VORを起点に航法を始める、お馴染みのリバーサル・ディパーチュアを行い、すぐ北に横たわる、仏領のジュラ山脈(地質学の「ジュラ紀」は、これが語源)を飛び越えました。
ひたすら平野が続いて、やがてフランス中部のディジョンVORを通過。ワインで有名なブルゴーニュ地方を北進し、パリ東南東のCoulommiers VORから、ル・ブールジェ空港07滑走路へのSTAR(計器飛行方式の標準進入経路)へ入ります。ネットでは、なかなか海外のSID(同標準出発経路)やSTARのデータを入手できませんが、ここのは幸いダウンロードできました。
…まず、Coulommiers VORを6000ft(プロペラ機の場合)で通過。コースを284度に取って、ほぼILS進入コース上にあるNDBを目標に左旋回を始め、200度ほど反転する形でファイナルに入るのですが…FlightGearの地形上には、このNDBがなかったので、あらかじめVORからの進出距離を測っておきました。
コース北方には、パリ市街地と空港が広がっています。普段は、目分量で進入してしまうのですが、ていねいにSTARをたどった方が、やはり実感が湧きますね。なぜかILS受信には失敗しましたが、快晴のため問題なく着陸しました。
●欧州初飛行…サントス・デュモンの14bis号:
パリでは、以前ダウンロードさせて頂いた、豪華な3D市街地群を見下ろしながら、クラシック機を楽しみます。
まずブールジェ空港東隣の、シャルル・ドゴール空港26R滑走路で、ブラジル人の飛行家、サントス・デュモンが1906年に、欧州初の動力飛行をした複葉機「14bis」号を始動しました。ダウンロード先は、前回ご紹介しましたブレリオXI号機と同じサイトです。(以下にアドレス再掲)
http://helijah.free.fr/flightgear/hangar.htm
14bisはカナード型の複葉機で、前方に昇降舵と方向舵を設け、垂直尾翼は特にないという形式。上下主翼間の支柱に、カーテン(仕切り布)を張ってあるものの、十分な「風見安定」を得るのは、やや難しそうですね。
FlightGear用の機体は、なぜかラダーの効きが左右逆になっている上、ロール制御も極めて過敏です。私はマウスの感度を落としたにも関わらず、滑走路で片翼を地面に当ててしまい、連続10回もクラッシュしました。そして…やっと70Ktまで加速したにも関わらず、ついに離陸できませんでした。高度1500ftで強制起動しても、ほぼ操縦不能と言ってよく、がっかりしました。
上記サイトは、けっこう歴史的な機体の宝庫です。多くはプラモデルのように精巧で、美しい仕上がりなのですが…こんな風に、飛行特性に問題のある機体も、しばしば見られます(^^;)。
史実では、デュモンは1906年10月に、高度3mで距離60mを飛行。翌月には距離220mを達成しました。一方ライト兄弟は、最高傑作と言われた「A型」をフランスに持参。1908年にウイルバーが124.7kmを2時間20分で飛び、フランス航空人に強い衝撃を与えました。会心のウイルバーは、デュモンの飛行を「犬に追われた、ニワトリのジャンプ」と酷評したそうです。
●ファルマン機でパリを行く:
しかし、ライト兄弟の絶頂期はここまで。フランスの航空人たちはライト機が、主翼を操縦ワイヤーでひねって、エルロンの役割を果たす「たわみ翼」を使い、完璧な釣り合い旋回を行っていることを知るや、素早く自機に取り入れました。
フランスではファルマンやボワザン、ブレリオらが、またアメリカではカーチスが、ライト兄弟を猛追。わずか1年後の1909年、フランスのランスで開かれた飛行競技会では、栄光のライト機は、ついに1種目も入賞できませんでした。
…そんなお話を思い出しながら、次に私は、この時代の名機の一つ、ファルマンIX型複葉機を起動。日本初の飛行(1910年)では、徳川好敏大尉も、同系列の機体に乗ったのでしょうね。これも、先ほどのサイトからダウンロード可能です。ファルマンとブレリオ機は、離陸時の直進不良を除けば、割に操縦しやすい機体です。
さてル・ブールジェ空港から、ゆるりとパリの空へ飛び立ちましたが…パリの街には、クラシック飛行機が、とてもよく似合いますね。モンマルトルの丘の、白いサクレクール寺院を見下ろし、エッフェル塔の回りを何度も周回。ついでに宙返りにも成功しました。シャンゼリゼ通りを低空で駆け抜けるなど、20世紀初頭の鳥人の興奮を、わずかながら味わった気分でした。
【注】サントス・デュモンに関する補足:
(彼は飛行機のほか、多くの飛行船試作で有名で、エッフェル塔の初周回飛行に成功。一時ヘリコプターも研究し、ブラジルでは「航空の父」とされます。ダンディーな紳士で、飛行中を想定して、天井から椅子とテーブルを吊って食事したり、街角に飛行船を係留してカフェに立ち寄るなど、古き良き時代の発明家らしい(?)奇行でも、パリ市民に愛されました。晩年は、航空機が戦争に使われることを深く悲しんで、自殺したと言われます)
●バロン滋野、フランス上空の航跡:
ところで…この第一次大戦前のパリを、日本の飛行家が、自分で設計した飛行機で飛び回ったことを、ご存じでしょうか。
このパイロットは、滋野清武という男爵です。1910年、28歳で音楽を学びに渡仏して航空熱に取りつかれ、まず自動車免許を取ってエンジンに慣れ、1912年に万国飛行免状を取得。さらに複葉機を設計し、この図面が製造業者に高く評価され、間もなく実機が完成。亡妻の名にちなんで「わか鳥号」と命名して飛び回りました。写真を見ると、空気抵抗の少なそうな、スマートな機体です。
滋野氏は帰国後、陸軍で操縦を教えたものの、国内初飛行の徳川好敏大尉から、なぜか冷淡に扱われた様子で、持ち帰った「わか鳥号」が大破する不運にも見舞われ、1914年に再渡仏。間もなく第一次大戦が勃発し、彼はフランス陸軍航空隊に義勇兵として志願して、大尉に任官しました。ちなみに大戦中、フランス軍のパイロットになった日本人は数人いて、被弾炎上した乗機から身を投げ、戦死した人もいます。(不幸なことに、軍用機がパラシュートを標準装備したのは、第一次大戦後のことでした)
滋野氏は、偵察や爆撃任務を生き延び、念願の戦闘機隊に転属。ここでは、連合軍トップエースのギヌメールや、戦後リンドバーグと競って大西洋に消えたルネ・フォンクら、そうそうたるメンバーが、最新鋭のスパッド戦闘機に乗っていました。部隊マークはコウノトリですが、滋野氏だけは愛機の胴体に丹頂鶴を描き、「これは日本のコウノトリだよ」と、笑っていたそうです。
一説によれば、滋野氏は通算6機を撃墜。となると日本初のエース(公認撃墜5機以上)でもあったわけですね。いずれにせよ彼はフランス最高の勲章、レジオン・ドヌールを貰っています。
在仏中に新しい奥さんを得て帰国したものの、宮内庁の反対で正式の入籍は許されませんでした。国内で活躍の場を得ないまま、42歳で病没したのは気の毒ですが、航空技術で世界一だった時代のフランスの青空に、短いが鮮烈なコントレール(飛行機雲)を描いた生涯は、日本の航空史に長く残ることでしょう…。
長くなって申し訳ありませんが、忘れがたい人であり、まだご存じない方のため、この場を借りてご紹介させて頂きました。
(ロンドンへの旅、続編はこの後すぐ)
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手探り航法・旅日記
(hide, 2006-1-14 7:08)
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Re: 手探り航法・旅日記
(ゲスト, 2006-1-16 21:25)
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(tetsu, 2006-2-17 21:52)
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Re: 手探り航法・旅日記
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Re: 手探り航法・旅日記
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コンコルドのバーチャル・クルーたち
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コンコルドのマニュアル訳(前回の続きです)
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コンコルドで初の超音速飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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サンテグジュペリの郵便飛行
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サンテグジュペリの郵便飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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天測航法に挑む(前編)
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天測航法に挑む(後編)
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- ホンダジェット試乗と大瀑布 (hide, 2008-6-27 21:01)
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天測航法に挑む(後編)
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