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Re: 手探り航法・旅日記

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通常 Re: 手探り航法・旅日記

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58
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2006-12-2 22:23
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 650
hideです。
 先日から暇を見ては、厚木基地周辺を飛び回って、少しずつOV-10ブロンコのテストをしています。この秋から冬は、しらみつぶしに性能試験をする時間がないので、「ちょい乗り」をしては、気に入らない個所に手を入れる程度ですが、まずはご報告をさせていただきます。

 ブロンコは、飛行性能の本格テストや熟成が楽しみですが、後でご紹介しますように、航法計器の設計も優れています。しかし航法装置全般としては、モデリングが未完成で、使いづらい面もあります。また説明書が一切ないため、使用法がよく分かりませんでした。そこで最初は、まともに電波航法が出来るのか、いささか心配になって、ブロンコの研究と並行して、以前から進めているセスナc310civilianの、さらなる性能アップを試みました。

●揺れを抑える、各種のダンパー効果:
 c310は、巡航の144Ktでは安定していますが、倍速モードを使ったり、パワーアップして200Ktくらいで巡航を試みると、オートパイロット使用時に、極めて不安定になります。ロール(左右傾斜)方向の揺れと、ヨー(左右首振り)方向の揺れが連結して、どんどん動揺が激しくなり、最後には横転して機首を下げ、錐もみに入ります。これを何とかしたいと、前から思っていました。
 xmlファイルには、舵の効きなどと共に、ロールやヨー運動にブレーキを掛ける要素、つまりダンピング・レートが、必ず書いてあるはずです。この数値をいじれば、解決するのではないか…。

 そう思って、初めてc310.xmlのフライト・コントロール関係をにらんでいたら、ありました。
818行目に、<description>Roll_moment_due_to_roll_rate_(roll_damping)</description>というのがあって、その下の825行目の数値を変更すると、確かにロールの減衰率が変化します。
 ヨーやピッチの減衰率も調整可能です。そのほか、ラダーの効きに応じてエルロンの効きを増減させるとか、3舵+フラップ相互の作用がさまざまにプログラムされており、改めて飛行機の運動とは、極めて複雑なものだと思いました。

 jsbモデルの動揺は、ロール方向の動きが目立ちますが、これを抑制するには、同時にヨーの減衰率を増やすのがコツです。ちょっと数値を変えただけで、jsb機の旋回時に特有の、あのブランコのような、ゆらゆら運動が姿を消し、たいへん驚きました。

   「急に、素直になりやがったぜ!」(「紅の豚」より)

 …と、私は思わず歓喜の叫びを上げて。さっそく高速オートパイロット飛行を試したのですが、かなり調整をしたものの、結局c310を200Ktで安定したまま自動飛行させるのは、相当難しいことが分かりました。
 しかし、これらのレートを調整すれば、jsb機体の操縦の味を、繊細に料理することが出来ます。皆さんも一度、取り組まれてはいかがでしょうか。

 こんなことを実機でやったら、例えば舵の面積を変えるのには、再設計と製作に、凄いコストが掛かるでしょうね。操縦系統のレバー比などを、ちょっと変えるだけでも、かなりの手間。数字を打ち直すだけで実験を重ね、墜ちても平気なシミュレーターとは、つくづくありがたいものです。

●ブロンコの航法システムなど:
 改めてOV-10を飛ばしてみますと、素直な操縦性を始め、セスナにはない装備や仕様に感心します。

 まず、推力関係ですが。
この機体のプロペラはアイドリング中、ピッチ角がゼロになっています。そのため、パーキング・ブレーキを掛けなくても、クリーピングが起きません。また降下時に、スロットルをアイドルまで絞ると、プロペラの抵抗がエアブレーキとして働き、効率よく高度を殺すことが出来ます。(ただし低空に降りた後は、しっかりスロットルを開けないと、ベース・レグを回る間に失速します)

 次は、航法システムのお話です。
ブロンコは本来、低空を駆け抜けて、着弾観測や銃撃・爆撃をする飛行機です。軍隊以外では、森林火災の監視などに使われるようです。ミッション中、パイロットの目は地上に釘付けで、あまり計器盤を見ている余裕はありません。
 そこで航法計器は、(少なくともFlightGearでは)たった一つ。ジャイロコンパスにVOR/ILS指示器とADF指示器を組み合わせた、いわゆるHSI(ホリゾンタル・シチュエーション・インジケーター)に、DME(無線施設までの距離計)を内蔵しており、さらにセレクターには、TACANの受信モードもあります。
(注:TACANとは戦術航法装置=VORの軍用版。民間機は距離情報のみ受信可能。FlightGearの世界でも同じです)

 このHSIは、見かけは中央にCDI(コースのずれ指針)があって、セスナなどのVOR1指示器とそっくりですが、方位盤の外周に、白いバグ(小さな指針)が設けられているのが、最大の特徴。このバグはVOR局、NDB局、ILS局の方角を、ダイレクトに示します。
 セスナなどのVOR指示器は、ベアリング(あらかじめ設定したコース方位)から、どれだけ左右にそれているか示すことが第一で、「VOR局が一体、どっちにあるか」は、分かりにくいですね。このバグがあれば、例えば旋回降下中に視界を切り替えなくても、滑走路(ILS局)のある方角が一目で分かり、極めて便利です。

●使えない機能も…:
 しかしながら、FlightGear版ブロンコのナビ・システムは、まだまだ未完成です。HSIの真下の航法パネルには、

・ベアリング・セレクタ:VORやADFなどの切り替え。
・モード・セレクタ  :多分オートパイロットの
            針路保持モード選択。

…の二つがあるのですが、前者をTACANにあわせても、実際は受信できませんでした。一瞬期待したのですが、肩すかしを食いました。また後者は、クリックすると回転はするのですが、実はスイッチ自体がダミーのようです。なにしろ説明書もないため、私は最初のうち、すっかり混乱してしまいました。

 文句は、まだあります。HSIの赤い「ヘディング・バグ」をクリックで動かすと、普通はオートパイロットの針路保持機能のうち、もっともベーシックな、磁気方位を使う「Heading Bug」モードと連動し、バグを合わせた針路へ旋回するはずですが、作動しません。そもそも、この「Heading Bug」モード自体が、正常に機能しません。オートパイロット・メニューから方位を打ち込んだ場合でも、設定針路を無視して、同じ場所で旋回を続けます。
 となるとオートパイロットは、「True Heading」(真方位)モードでキーボードから数値を入れる必要があります。この数値は、航空図に書いてある磁気方位ではダメで、いちいち真方位に換算しなくてはなりません。ついでに言えばHSIが、狭い計器盤の中央・最下段にあるのも、見にくくて不便です。

●コクピットの改造:
 あれこれ、腹は立ったのですが、せっかく大きな可能性を秘めた飛行機なので、何とか使いこなしてやるぞと、決意も新たに。まず風防正面にある、射撃照準器(スイッチを入れなければ透明ですが、周囲の枠が邪魔になります)を取っ払い。低くて見えにくいHSIを、風防ガラスの最下部まで持ち上げました。

 ブロンコのパネル関係ファイルは、2Dパネルをベースとした、セスナ系や737と勝手が違っておりまして、改造には、かなり試行錯誤をしました。まず照準器は、Aircraft\OV10\Models\USAFE\Instrumentsフォルダの中にある、gunsight.acを開き、最初の1行「AC3Db」を残して全文削除。これで、前方視界はクリーンになりました。次にHSIの位置変更は、Aircraft\OV10\Models\USAFEフォルダの中のov10.xmlファイルを開きます(同じ階層のNASAフォルダに、同名のファイルがありますが、これではダメです。USAFE機のファイルが、NASA機も制御しています)。このファイルのHSIという項目の真下にある、43行目からの3行…

<x-m>-3.04</x-m>
<y-m>0</y-m>
<z-m>0.062</z-m>

…の<z-m>の項目が、3Dパネルの場合、垂直軸の座標を示します。この数値を変更すると、計器が上下に動きます。この書き込みにある数値は、すでに変更を加えたものです。同様に、そのすぐ後にあるnavpanel.xmlの項目(これが、2つのセレクター・スイッチのパネル)も、

<x-m>-3.001</x-m>
<y-m>0</y-m>
<z-m>-0.024</z-m>←ここを変える

…と変更します。

 HSIとスイッチパネルには、ホットスポット(クリック用の透明ボタン)がたくさんあります。Aircraft\OV10\Models\USAFEフォルダの中の、panel-hotspots.xmlで位置が変更できます。
(全部書き出すと、かなりの分量ですので、今回は省略させていただきますが、ファイルをご希望の方はどうぞ、flightgear-hide@mbr.nifty.comまでメールを下さい)

●武器よさらば:
 例えば、スピットファイアやP-51D。ああいう、騎士のように端正な飛行機でしたら、FlightGearの平和な空にも似合いますが、ブロンコは「ベトナムの殺し屋」といった風情で、ちと凄みがありすぎます。そこで腹の下に吊ったバクダンと、ロケット・ランチャー(前回、機銃ポッドと書いたのは間違いでした。ごめんなさい。機銃は固定装備です)を外すことにしました。中央の流線型の物体は、230galも入る補助燃料タンクなので、ありがたく残しておくことにします。

 ov10.xmlファイルの258行目、**** External Stores **** というただし書き以降には、<model>というカッコで前後をくくった、各8行の項目が5カ所あります。このうち、

 ・lau68-left.xml(ロケット・ランチャー)
 ・lau68-right.xml
 ・mk82-right.xml(爆弾)
 ・mk82-left.xml

 …を含む最初の4項目を、それぞれ前後にある<model>ごと全文削除。最後にあるtank230gal.xmlを含む項目は、さきほどの落下タンクですので、そのままにしました。

 最後に、機体外装を純白に全塗装。コクピット後方に、プロペラ回転面への注意を促す、派手な赤線が入っているのが、いいアクセントになります。コクピット両サイドにも赤で、大きく「J-HIDE」のロゴ(「J」+4文字は、戦前の民間登録符号のまね)を入れ。お腹の落下タンクも、真っ赤に塗って完成です。

 タンクのテクスチャーが、どこにも見つからなくて、かなり悩みましたが、tank230gal.acファイルの冒頭付近に、rgb3原色のブレンド率を、数字で表した記述が見つかりました。先頭の数字がレッドでしょうから、これを0.9まで上げ、他のグリーンとブルーを、それぞれ0.0にしましたら、ちゃんと鮮やかな赤になりました。

●燃料どっさり、貨物も人も…:
 FlightGear版・ブロンコの兵器類は、実際はすべて燃料タンクとして機能します。コクピットのスイッチを入れると、兵装ラックから実際に、エンジンへ燃料が回ることを確認しました。それぞれ、燃料が20galくらいしか入らないのですが、ファイルを書き換えると、大きな落下タンクの複数搭載も可能です。
 ということは、必要に応じて、機体の搭載能力のリアリティーを保ったまま、かなり大量の予備燃料が積めるわけで…非常に面白い「長距離自家用機」に育つ可能性が見えてきました。

 実機は狭い胴体後部に、6人の空挺隊員を詰め込むことが出来ます。座席をたためば、担架を積んだり、軽輸送機としても使えるそうです。FlightGearでも、よく見ると胴体内に、ちゃんと6つの簡易座席が再現されています。「殺し屋専科」かと思ったら、「空飛ぶミニバン」の顔も持っているのですね。

     ○

 航法装置については、一日も早い完成を望みます。ただし現状でもVOR、ILS、ADFが使えますし、もちろんVORのホーミングなども、オートパイロットで可能です。
 オートパイロットの、針路保持機能とのリンクの悪さも、ショートカットキーの多用などで、ある程度はカバーできます。HSIを高い位置に上げましたので、デフォルトの正面視界のまま、Xキーのひと押しで、コンパス・カード(方位盤)をめいっぱい、拡大表示することができます。これは磁気方位で針路を表示しますから、これを頼りにマニュアル操舵で、機首を精密に目標の方位に向け、ctrl+Wでウイング・レベラーを掛ければ、手で方位を入力する必要はありません。

 あとは、高度別の最高速と上昇率のチェックとか、ベスト燃費の高度・速度を見つけるなど、試したいことはたくさんあります。またブロンコは、VORを同時に一つしか受信できないので、計器飛行に欠かせない中継点であるフィックス(通常は、2つのVOR局からの電波の交差点)を見つけるのが、かなり困難になりますが…さて、どうするか。まあ課題も幾つかあります。
 このあたりは、実際に航法をやって、生のデータを取らない限り、よく分かりません。操縦系統の調整などもしながら、そろそろ国内を飛び回ってみましょう。
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