Re: 手探り航法・旅日記
hide
居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです、こんばんは。
実践的なナビ訓練に、少々お付き合い頂いたところで、今回はフライ
トプランの立て方をある程度、本格的に勉強したいと思っております。
最初は、VFRチャート(航空図)を使うことを念頭に置き、風の影響や
磁気コンパスの偏差を補正する「推測航法」を基礎にした、かなり実物
の軽飛行機の飛び方に近い、フライトプランの作り方を考えます。
その後で…これは次回以降になりますが、応用編として、航空図の代わ
りにAtlasの地図画面を活用し、本物のE-6B航法計算盤(回転式の多用途
計算尺)の代わりに、フリーウェアなどを使う、よりFlightGear向きで、
手間とお金はかからないが、それなりに十分楽しめる、私たちのための
ナビ技術を、工夫していきたいと考えています。
■かなり本格的な、フライトプランの立て方■
まずはVFRチャートが、欲しいところです。
私は大昔、初めてDOSマシン用のフライトシムを購入したとき、自分で
航空図(?)らしきものを描きました。著作権料を惜しんだソフトハウス
が、VFRチャートの複製を同梱してくれなかったからです。代わりに全国
約80カ所の、VORとNDBの周波数と緯度経度、それに約30空港の滑走路方位
と緯度経度を書いた、簡単な一覧表が付いていました。本物の無線施設の
データが、実際にアプリの中で使えるなんて、これはすごいと感動しまし
た。しかしやはり、チャートがほしい。
「地図もなしに、飛べるかあ!」
と私はつぶやいて翌日、大きな白地図を買ってきて、全国の無線施設と飛
行場を記入し始めました…。その後、書店によっては日本航空機操縦士協
会の「区分航空図」(やや大縮尺の、概略版VFRチャート)を売っている
ことを知り、全国8枚を数回に分けて買いました。新しい空港は載って
ないけど、今も大事に使っています。(実際の飛行なら、もちろん最新の
航空図が必要ですけれど)
○
さて。以下のご説明は、実際にチャートが無くても、十分お読みいただ
けます。書く私の方では一応、チャートがあるつもりになって、お話を進
めます。ただし、航空路の利用や管制圏の複雑な約束事は、ほとんど知識
がないので、取りあえず除外。「こうすれば、目的地に着く」という側面
を中心に、航法計算の実際をご紹介します。例外は飛行高度で、すでに
ご存じとは思いますが、以下のようなルールがあることを、一応おさらい
しておきましょう。
・コースが0〜179度:
IFRでは1000ft×奇数。VFRではさらに500ftを足す。
・コースが180〜359度:
IFRでは1000ft×偶数。VFRではさらに500ftを足す。
(いずれも磁気方位。単なる機首の向きではなく、風の偏流角を除いた本
当の飛行方向です。VFRの場合は3000ft以上で適用。IFRの場合、実際は
これだけではなく、かなり複雑な規則があるようです。実機の人たちのHP
を拝見すると、やはりIFRの資格取得は、相当な難関のようですね)
では、フライトプランを作りましょう。以下のサイトで記入用紙が入手
できますので、順に書き方をご紹介します。記入が終わったとき、あなた
はもう、飛ぶ準備が出来ていますよ。
http://www.navfltsm.addr.com/flightplan.pdf
これはフライトシム用ですが、ほとんど実機用のワークシートと同じだそ
うです。シミュレーションでは、コンパスの自差(機体固有の誤差)が生
じないため、その記入欄は省略されています。
●注●:…以下のご説明は、かなり込み入っていますので、お差し支え
無ければ、実際にワークシートに架空の数値を書いたり、紙の上に架空の
針路をざっと落書きして、必要に応じ、色々な角度を書き足したり、引い
たりしてみることをお勧め致します。
(厳密には、これに上昇経路と降下経路の飛行速度と距離を加えた上で、
飛行時間と所要燃料をはじき出す必要があります。今回は少々時間が無く
て省略しました。ごめんなさい)
●シートの一番上には、次のような基本的な記入事項があります。
Date(日付):
Depart(出発空港名):
Desatination(目的空港名):
Cruise TAS(Kts)(巡航速度=ノット):
厳密には、これは真対気速度(True Air Speed)と言いまして、速度
計の読み(IAS=指示対気速度)を補正する必要がありますが、このへ
んは、アプリによっても設定が違います。MSFSですと両方使えるので
すが、FlightGearがどうなっているのか、じつは私も未確認ですので、
ここでは便宜上、速度計の読みだと思ってください)
●シートの一番下には、目的地の空港の滑走路方位と長さ、標高を書き
ます。いずれも厳密には、フライトシムでも必要です。
●シートの中央には、飛行区間ごとに、さまざまなデータを記入する欄
が、何段にもわたって設けられています。(飛行コースには通常、無
線標識や空港などを利用して、幾つかの中継点を設けます。混雑する
大空港や飛行禁止区域、高山、悪天候などを避けるため、普通は目的
地に着くまでに何回も、変針する必要があるからです)
区間ごとの記載事項は、以下の通りです。上から順に記入しながら
必要な計算をすると、各区間を飛ぶための航法計算が、すべて完了す
るように作られています。
From:(区間の出発点)具体的には、空港や無線施設、FIXなど。
To: (区間の到着点)同上。
TC: (区間の針路。真方位=True Courseを、角度で記入する)
自分で任意のコースを引いた場合は、その区間の線分の
中央に分度器を当てて、経度の線(チャート上の垂直線)
との角度を計って記入します。端に寄せて計ると誤差が
出ます。
もしヴィクター航空路(航空図に青い線で書いてある、VOR
局同士を結んだ航空路)を飛ぶなら、この欄の記入は不要
です。後でご説明するように、チャートに記載してある磁気
方位が、そのまま飛行に利用できるからです。
WIND:Knots・From
(区間の風速と風向を、ノットと真方位の角度で記入)
実機の場合は気象通報をチェック。FlightGearの場合は、
メニューの「Weather」から、現在の風向・風速を読みます。
WCA(R+ L-):
(風向・風速に応じた、区間針路の修正角。あとで出し方を
ご説明します)
TH: (区間の真針路=True Heading。TCにWCAを、加えたもの)
MH: (区間の磁気コンパス針路=Magnetic Heading。THの数値に
偏差=コンパスの針が、真北からそれる角度=を加えます)
例えば下地島の偏差は、偏西3度。THに3度足します。
ニューヨークの偏差は、偏東15度。THから15度引きます。
以下のサイトで、世界の主な地域の偏差が分かります。
http://www.geo-orbit.org/sizepgs/magmapsp.html
●注●:チャートさえあれば、ことは簡単です。ヴィクター
航空路の場合はチャート上に、ちゃんと磁気方位が書いてあ
るので、そのままこの欄に記入します。また、任意のコースを
引いた場合も、実はチャートを使って簡単に角度が計れます。
チャートには、すべてのVOR局やNDB局の周囲に、直径約7
センチ(半径10nm)の円が描かれ、磁気方位の目盛りが打って
あります。この方位盤に、描いたコースを三角定規で平行移動
すると、あっという間に磁気方位が判明、という次第です。
(昔の海図では、この方位盤に、16方位や32方位を示す細い
三角形が描かれていました。これが、まるでとがった花びら
のように見えることにちなんで、現在でも、この磁気方位盤
を「コンパス・ローズ」と呼んでいます。海や空のロマンを
感じさせる、詩的な名前ですね)
Total nm:
(区間の距離。Nautical Mile=海里で記入、読みはマイル。
ヴィクター航空路なら、チャートにVOR局間の距離も記載さ
れています。任意のコースを引いた場合は、定規を当てて、
チャートの欄外に印刷された、縮尺目盛りで計ります)
GS Knots:
(区間の対地速度=機体が実際に地面に対し、移動する速度。
Cruise TAS=空気に対する巡航速度に、風速の影響を加えて
出します。これは、ごく簡単なベクトル合成で得られます)
●解説●:紙の上に飛行方向と巡航速度を、1本の矢印で
書きます。例えば真方位(TC)45度へ巡航速度(Cruise TAS)
120Ktで飛ぶなら、右に45度傾いた、長さ120ミリの矢印を書
きます。これを、三角形の底辺と考えます。
次にこの先端に、風向・風速を示す矢印を書き加えます。
仮に北の風20Ktなら、下向きに長さ20ミリの矢印を書きます。
巡航速度の矢印の根元から、風向・風速の矢印の先端へ直線
を引きます。これを三角形の斜辺と考えます。すると「風向
三角形」と呼ばれるものが完成します。これは、あらゆるナ
ビゲーションの原点である推測航法の、そのまた原点といえ
る図です。
・底辺と斜辺の間の角度=WCA(偏流角とも言います)。
・斜辺の長さ =GS Knots(対地速度)
…という関係になっています。上記の例では、北風は針路
に対し、向かい風のベクトル成分を含んでいますから、
GS Knots(実際の対地速度)は、Cruise TAS(この説明文
では、速度計が示している、対気巡航速度)より数ノット
遅くなります。もし完全な向かい風でしたら、もちろん20
ノットまるごと、遅くなります。
WCAとGS Knotsは、当然ながら数値計算でも出すことが出来
ますが、機上では作図も計算も面倒なので、普通は「E-6B
航法計算盤」という器具か、コンピュータを使います。
Total Time:
(区間の飛行時間。Total nmを、GS Knotsで割ります)
Fuel Rate:
(時間当たりの燃料流量。実機はマニュアルに載っています。
FlightGearの場合は、燃料流量計がある機種なら、あらかじめ
巡航速度で計っておきます)
Total Fuel:
(区間の使用予定燃料。Total Time×Fuel Rateで算出します)
○
どうも、お疲れ様でした!
以上の作業を、飛行の全区間について繰り返したら、フライトプランは
完成です。コンパスでたどるべき正確な針路も、所要時間も、必要な燃料
の分量も、すべて算出することができました。あなたは、たとえAtlasが
無くても、途中でVOR受信機が故障しても、コンパスと時計と速度計さえ
あれば、みごとに目的地に着けるのです。オートパイロットで正確な針路
と対気速度を維持すれば、十分に可能です。
(多くの軽飛行機パイロットは、戦後かなりの期間、実際にこうした推測
航法をメインに使い、無線標識をサブにして、飛び回っておられたようで
す。飛行時間を厳密に管理し、航法の精度を高めるため、離陸後は大きく
旋回して飛行速度が安定するのを待ち、その上で次の中継点への針路を取
って、飛び立った空港の真上を通過し、この瞬間に、航法計算上の「出発
時刻」を記録していたと聞きます。現在はGPSが広く普及したため、ここ
まで厳密な時刻・速度管理をしなくても、安心して目的地に向かえること
と思います。航法は時代とともに、どんどん進化しますが、ここにご紹介
したものが、基本中の基本だと思います)
○
フライトプランの立て方は、詳しくはこのFlightGear日本語HPでも紹介
されている、フライトシムの航法を独習するための英文ホームページ、
http://www.navfltsm.addr.com/index.htm
…のなかにある、「Air Navigation」の各章や、それに続く電波航法の説
明を読んでいただければ、より完璧です。
また飛行経路を、実際の民間航空機などに近づけたい場合は、「月刊エ
アライン」誌の増刊号などで時々出版される、「出発進入経路」「空港着
陸コースマップ」といった書籍を手に入れ、エンルート(途中経路)には
実際のチャートに記載されている、ヴィクター航空路を使うと、相当リア
ルになるのではないかと思います。熱心な方は、自分が搭乗したエアライ
ンの飛行を、再現して楽しんでおられるようですね。
では、おやすみなさい。
●おまけ●:磁気方位と偏差について。
磁気方位というのは、磁気コンパスが指す、「磁北極」(北米大陸のは
るか北、北緯77度あたりにあります)を基準にした方位のことです。北極
点を「真北」とする、日常的に使われる「真方位」とは、各地でずれてい
ます。このずれを偏差と呼びます。
偏差は地域によって違い、海図や航空図記載されています。0〜20度く
らいの地域が多いですが、北極に近い地域では50度に及ぶ場所も。磁気コ
ンパスが真北よりも西を指す場合を「偏西○度」、東を指す場合を「偏東
○度」と呼びます。
飛行機や船のコンパスは、磁気コンパスでもジャイロ・コンパスでも、
磁気方位を指すよう作られていますので、実際の操船や操縦には、基本的
に磁気方位を使います。しかし地図は「北が上」の真方位で描いてあるの
で、最初に地図上で真方位による針路を計ってコースを決め、後で磁気方
位に換算する必要があるわけです。
偏差の大きさは、日本列島では九州南端付近で偏西5度くらい、北海道
北端で偏西10度くらいです。アメリカ合衆国は、偏西20度から偏東20度く
らいまで、大きな幅があります。
いずれにせよ、長距離飛行ではどんどん偏差が変わり、飛行方向がずれ
てきますので、フライトプランにも、いちいち区間ごとに偏差を書き込ん
でおき、飛行中に補正しなくてはならないのです。
実践的なナビ訓練に、少々お付き合い頂いたところで、今回はフライ
トプランの立て方をある程度、本格的に勉強したいと思っております。
最初は、VFRチャート(航空図)を使うことを念頭に置き、風の影響や
磁気コンパスの偏差を補正する「推測航法」を基礎にした、かなり実物
の軽飛行機の飛び方に近い、フライトプランの作り方を考えます。
その後で…これは次回以降になりますが、応用編として、航空図の代わ
りにAtlasの地図画面を活用し、本物のE-6B航法計算盤(回転式の多用途
計算尺)の代わりに、フリーウェアなどを使う、よりFlightGear向きで、
手間とお金はかからないが、それなりに十分楽しめる、私たちのための
ナビ技術を、工夫していきたいと考えています。
■かなり本格的な、フライトプランの立て方■
まずはVFRチャートが、欲しいところです。
私は大昔、初めてDOSマシン用のフライトシムを購入したとき、自分で
航空図(?)らしきものを描きました。著作権料を惜しんだソフトハウス
が、VFRチャートの複製を同梱してくれなかったからです。代わりに全国
約80カ所の、VORとNDBの周波数と緯度経度、それに約30空港の滑走路方位
と緯度経度を書いた、簡単な一覧表が付いていました。本物の無線施設の
データが、実際にアプリの中で使えるなんて、これはすごいと感動しまし
た。しかしやはり、チャートがほしい。
「地図もなしに、飛べるかあ!」
と私はつぶやいて翌日、大きな白地図を買ってきて、全国の無線施設と飛
行場を記入し始めました…。その後、書店によっては日本航空機操縦士協
会の「区分航空図」(やや大縮尺の、概略版VFRチャート)を売っている
ことを知り、全国8枚を数回に分けて買いました。新しい空港は載って
ないけど、今も大事に使っています。(実際の飛行なら、もちろん最新の
航空図が必要ですけれど)
○
さて。以下のご説明は、実際にチャートが無くても、十分お読みいただ
けます。書く私の方では一応、チャートがあるつもりになって、お話を進
めます。ただし、航空路の利用や管制圏の複雑な約束事は、ほとんど知識
がないので、取りあえず除外。「こうすれば、目的地に着く」という側面
を中心に、航法計算の実際をご紹介します。例外は飛行高度で、すでに
ご存じとは思いますが、以下のようなルールがあることを、一応おさらい
しておきましょう。
・コースが0〜179度:
IFRでは1000ft×奇数。VFRではさらに500ftを足す。
・コースが180〜359度:
IFRでは1000ft×偶数。VFRではさらに500ftを足す。
(いずれも磁気方位。単なる機首の向きではなく、風の偏流角を除いた本
当の飛行方向です。VFRの場合は3000ft以上で適用。IFRの場合、実際は
これだけではなく、かなり複雑な規則があるようです。実機の人たちのHP
を拝見すると、やはりIFRの資格取得は、相当な難関のようですね)
では、フライトプランを作りましょう。以下のサイトで記入用紙が入手
できますので、順に書き方をご紹介します。記入が終わったとき、あなた
はもう、飛ぶ準備が出来ていますよ。
http://www.navfltsm.addr.com/flightplan.pdf
これはフライトシム用ですが、ほとんど実機用のワークシートと同じだそ
うです。シミュレーションでは、コンパスの自差(機体固有の誤差)が生
じないため、その記入欄は省略されています。
●注●:…以下のご説明は、かなり込み入っていますので、お差し支え
無ければ、実際にワークシートに架空の数値を書いたり、紙の上に架空の
針路をざっと落書きして、必要に応じ、色々な角度を書き足したり、引い
たりしてみることをお勧め致します。
(厳密には、これに上昇経路と降下経路の飛行速度と距離を加えた上で、
飛行時間と所要燃料をはじき出す必要があります。今回は少々時間が無く
て省略しました。ごめんなさい)
●シートの一番上には、次のような基本的な記入事項があります。
Date(日付):
Depart(出発空港名):
Desatination(目的空港名):
Cruise TAS(Kts)(巡航速度=ノット):
厳密には、これは真対気速度(True Air Speed)と言いまして、速度
計の読み(IAS=指示対気速度)を補正する必要がありますが、このへ
んは、アプリによっても設定が違います。MSFSですと両方使えるので
すが、FlightGearがどうなっているのか、じつは私も未確認ですので、
ここでは便宜上、速度計の読みだと思ってください)
●シートの一番下には、目的地の空港の滑走路方位と長さ、標高を書き
ます。いずれも厳密には、フライトシムでも必要です。
●シートの中央には、飛行区間ごとに、さまざまなデータを記入する欄
が、何段にもわたって設けられています。(飛行コースには通常、無
線標識や空港などを利用して、幾つかの中継点を設けます。混雑する
大空港や飛行禁止区域、高山、悪天候などを避けるため、普通は目的
地に着くまでに何回も、変針する必要があるからです)
区間ごとの記載事項は、以下の通りです。上から順に記入しながら
必要な計算をすると、各区間を飛ぶための航法計算が、すべて完了す
るように作られています。
From:(区間の出発点)具体的には、空港や無線施設、FIXなど。
To: (区間の到着点)同上。
TC: (区間の針路。真方位=True Courseを、角度で記入する)
自分で任意のコースを引いた場合は、その区間の線分の
中央に分度器を当てて、経度の線(チャート上の垂直線)
との角度を計って記入します。端に寄せて計ると誤差が
出ます。
もしヴィクター航空路(航空図に青い線で書いてある、VOR
局同士を結んだ航空路)を飛ぶなら、この欄の記入は不要
です。後でご説明するように、チャートに記載してある磁気
方位が、そのまま飛行に利用できるからです。
WIND:Knots・From
(区間の風速と風向を、ノットと真方位の角度で記入)
実機の場合は気象通報をチェック。FlightGearの場合は、
メニューの「Weather」から、現在の風向・風速を読みます。
WCA(R+ L-):
(風向・風速に応じた、区間針路の修正角。あとで出し方を
ご説明します)
TH: (区間の真針路=True Heading。TCにWCAを、加えたもの)
MH: (区間の磁気コンパス針路=Magnetic Heading。THの数値に
偏差=コンパスの針が、真北からそれる角度=を加えます)
例えば下地島の偏差は、偏西3度。THに3度足します。
ニューヨークの偏差は、偏東15度。THから15度引きます。
以下のサイトで、世界の主な地域の偏差が分かります。
http://www.geo-orbit.org/sizepgs/magmapsp.html
●注●:チャートさえあれば、ことは簡単です。ヴィクター
航空路の場合はチャート上に、ちゃんと磁気方位が書いてあ
るので、そのままこの欄に記入します。また、任意のコースを
引いた場合も、実はチャートを使って簡単に角度が計れます。
チャートには、すべてのVOR局やNDB局の周囲に、直径約7
センチ(半径10nm)の円が描かれ、磁気方位の目盛りが打って
あります。この方位盤に、描いたコースを三角定規で平行移動
すると、あっという間に磁気方位が判明、という次第です。
(昔の海図では、この方位盤に、16方位や32方位を示す細い
三角形が描かれていました。これが、まるでとがった花びら
のように見えることにちなんで、現在でも、この磁気方位盤
を「コンパス・ローズ」と呼んでいます。海や空のロマンを
感じさせる、詩的な名前ですね)
Total nm:
(区間の距離。Nautical Mile=海里で記入、読みはマイル。
ヴィクター航空路なら、チャートにVOR局間の距離も記載さ
れています。任意のコースを引いた場合は、定規を当てて、
チャートの欄外に印刷された、縮尺目盛りで計ります)
GS Knots:
(区間の対地速度=機体が実際に地面に対し、移動する速度。
Cruise TAS=空気に対する巡航速度に、風速の影響を加えて
出します。これは、ごく簡単なベクトル合成で得られます)
●解説●:紙の上に飛行方向と巡航速度を、1本の矢印で
書きます。例えば真方位(TC)45度へ巡航速度(Cruise TAS)
120Ktで飛ぶなら、右に45度傾いた、長さ120ミリの矢印を書
きます。これを、三角形の底辺と考えます。
次にこの先端に、風向・風速を示す矢印を書き加えます。
仮に北の風20Ktなら、下向きに長さ20ミリの矢印を書きます。
巡航速度の矢印の根元から、風向・風速の矢印の先端へ直線
を引きます。これを三角形の斜辺と考えます。すると「風向
三角形」と呼ばれるものが完成します。これは、あらゆるナ
ビゲーションの原点である推測航法の、そのまた原点といえ
る図です。
・底辺と斜辺の間の角度=WCA(偏流角とも言います)。
・斜辺の長さ =GS Knots(対地速度)
…という関係になっています。上記の例では、北風は針路
に対し、向かい風のベクトル成分を含んでいますから、
GS Knots(実際の対地速度)は、Cruise TAS(この説明文
では、速度計が示している、対気巡航速度)より数ノット
遅くなります。もし完全な向かい風でしたら、もちろん20
ノットまるごと、遅くなります。
WCAとGS Knotsは、当然ながら数値計算でも出すことが出来
ますが、機上では作図も計算も面倒なので、普通は「E-6B
航法計算盤」という器具か、コンピュータを使います。
Total Time:
(区間の飛行時間。Total nmを、GS Knotsで割ります)
Fuel Rate:
(時間当たりの燃料流量。実機はマニュアルに載っています。
FlightGearの場合は、燃料流量計がある機種なら、あらかじめ
巡航速度で計っておきます)
Total Fuel:
(区間の使用予定燃料。Total Time×Fuel Rateで算出します)
○
どうも、お疲れ様でした!
以上の作業を、飛行の全区間について繰り返したら、フライトプランは
完成です。コンパスでたどるべき正確な針路も、所要時間も、必要な燃料
の分量も、すべて算出することができました。あなたは、たとえAtlasが
無くても、途中でVOR受信機が故障しても、コンパスと時計と速度計さえ
あれば、みごとに目的地に着けるのです。オートパイロットで正確な針路
と対気速度を維持すれば、十分に可能です。
(多くの軽飛行機パイロットは、戦後かなりの期間、実際にこうした推測
航法をメインに使い、無線標識をサブにして、飛び回っておられたようで
す。飛行時間を厳密に管理し、航法の精度を高めるため、離陸後は大きく
旋回して飛行速度が安定するのを待ち、その上で次の中継点への針路を取
って、飛び立った空港の真上を通過し、この瞬間に、航法計算上の「出発
時刻」を記録していたと聞きます。現在はGPSが広く普及したため、ここ
まで厳密な時刻・速度管理をしなくても、安心して目的地に向かえること
と思います。航法は時代とともに、どんどん進化しますが、ここにご紹介
したものが、基本中の基本だと思います)
○
フライトプランの立て方は、詳しくはこのFlightGear日本語HPでも紹介
されている、フライトシムの航法を独習するための英文ホームページ、
http://www.navfltsm.addr.com/index.htm
…のなかにある、「Air Navigation」の各章や、それに続く電波航法の説
明を読んでいただければ、より完璧です。
また飛行経路を、実際の民間航空機などに近づけたい場合は、「月刊エ
アライン」誌の増刊号などで時々出版される、「出発進入経路」「空港着
陸コースマップ」といった書籍を手に入れ、エンルート(途中経路)には
実際のチャートに記載されている、ヴィクター航空路を使うと、相当リア
ルになるのではないかと思います。熱心な方は、自分が搭乗したエアライ
ンの飛行を、再現して楽しんでおられるようですね。
では、おやすみなさい。
●おまけ●:磁気方位と偏差について。
磁気方位というのは、磁気コンパスが指す、「磁北極」(北米大陸のは
るか北、北緯77度あたりにあります)を基準にした方位のことです。北極
点を「真北」とする、日常的に使われる「真方位」とは、各地でずれてい
ます。このずれを偏差と呼びます。
偏差は地域によって違い、海図や航空図記載されています。0〜20度く
らいの地域が多いですが、北極に近い地域では50度に及ぶ場所も。磁気コ
ンパスが真北よりも西を指す場合を「偏西○度」、東を指す場合を「偏東
○度」と呼びます。
飛行機や船のコンパスは、磁気コンパスでもジャイロ・コンパスでも、
磁気方位を指すよう作られていますので、実際の操船や操縦には、基本的
に磁気方位を使います。しかし地図は「北が上」の真方位で描いてあるの
で、最初に地図上で真方位による針路を計ってコースを決め、後で磁気方
位に換算する必要があるわけです。
偏差の大きさは、日本列島では九州南端付近で偏西5度くらい、北海道
北端で偏西10度くらいです。アメリカ合衆国は、偏西20度から偏東20度く
らいまで、大きな幅があります。
いずれにせよ、長距離飛行ではどんどん偏差が変わり、飛行方向がずれ
てきますので、フライトプランにも、いちいち区間ごとに偏差を書き込ん
でおき、飛行中に補正しなくてはならないのです。
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手探り航法・旅日記
(hide, 2006-1-14 7:08)
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Re: 手探り航法・旅日記
(ゲスト, 2006-1-16 21:25)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-1-23 13:06)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-1-25 21:41)
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Re: 手探り航法・旅日記
(tetsu, 2006-1-28 14:18)
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Re: 手探り航法・旅日記
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Re: 手探り航法・旅日記
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Re: 手探り航法・旅日記
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-14 18:44)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-17 4:40)
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Re: 手探り航法・旅日記
(ゲスト, 2006-2-17 8:04)
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Re: 手探り航法・旅日記
(tetsu, 2006-2-17 21:52)
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Re: 手探り航法・旅日記
(Hit, 2006-2-19 1:02)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-2-28 5:18)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-3-5 18:21)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-3-6 4:18)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-3-12 14:40)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-3-13 12:45)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-3-15 20:47)
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Re: 手探り航法・旅日記
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-3-29 0:58)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-4-2 21:39)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-4-12 12:58)
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Re: 手探り航法・旅日記
(hide, 2006-4-14 16:47)
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コンコルドのバーチャル・クルーたち
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コンコルドのマニュアル訳(前回の続きです)
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コンコルドで初の超音速飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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サンテグジュペリの郵便飛行
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サンテグジュペリの郵便飛行
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ベルリンを経て、仏ツールーズへ
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コンコルドのマニュアル訳(前回の続きです)
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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新しいブロンコ3種でブラジルを南下
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天測航法に挑む(前編)
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天測航法に挑む(後編)
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- ホンダジェット試乗と大瀑布 (hide, 2008-6-27 21:01)
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天測航法に挑む(後編)
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