T-4 製作記 Step5: テストフライト
Tat
投稿数: 375
あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願います。
さて、機体設定ファイルも作成できたので早速テストフライトしてみます。今回は 3D Model も少し充実して来た 2008/01/04 版を使用します。
テストフライトでは、重心位置、最大速度、離着陸距離、海面上昇率、静的/動的安定性、前方向での最小半径、機体の挙動などさまざまな項目があります。T-4 はブルーインパルスとして活躍しているので、幸いな事に航空ショーでの展示課目のデータ(高度、機体の向き及び速度)が書籍等で取得できます。従って今回のテストでは重心位置の確認をすると共に、航空ショーでの展示課目とモデルの挙動とを比較してみることにします。これ以外のテスト項目については別の機会にどこかに記述したいと思います。
それでは私がテストした項目と結果を順に紹介して行きます。
** 重心位置の確認
重心位置の確認は燃料をほぼ空にした状態と、満タンに積んだ状態で行います。空にした状態で機体が尻餅をついてしまうようであれば、重心位置が後ろ過ぎます。また、満タンにした状態で離陸に時間が掛かりすぎたり、機体の挙動がもっさりしすぎるようだと重心位置が前過ぎます。
*** 空燃料での重心位置の確認
まずは T-4 を指定してフライトギアを起動します。機体が利用できるようになったら、メニューから "File" >> "Browse Internal Properties" を選択して、プロパティーダイアログを表示します。
次にダイアログから /consumables/fuel/tank を選択し、level_gal_us を0 にします。同様に /consumables/fuel/tank[1] の level_fal_us も 0 にします。この状態で尻餅をつかなければ大丈夫でしょう。
*** 満タン時の離陸速度と距離
機体の燃料が満タンの時の離陸距離や速度が正しいかどうかで重心位置が前過ぎないかどうかを確認します。まずは "h" キーを押して現在位置の緯度、軽度を確認します。次に普通に離陸して140kts 付近で離陸します。機体高度が地上からの相対高度で10ft になった所で "p" ボタンで一時停止し、現在位置を確認します。最初に計測した位置と比較する事で離陸距離が計算できます。
距離計算には次のサイトが便利です。
http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/bl2stf.html
T-4 の場合、以下の様な結果になります。
出発点
北緯 35°33′34.6000″
東経 139°46′09.7000″
到着点
北緯 35°33′16.6000″
東経 139°46′23.8000″
離陸距離: 658.674(m)
手元にある T-4のデータと比較してみると、離陸距離は 610m となっています。燃料の搭載量が記述されていないので満タン時だと仮定すると、今回の 658.674m は8%の誤差ですので、そんなに大きく外れた値ではありません。ほんの少し後方に移動させるか、若干機首の重りを軽くする程度でカタログ値から±5% 以内になりそうです。
** 機体の挙動確認
T-4 の展示課目は色々あるのですが、今回はその中の2つについて確認して行きます。
*** Vertical climb roll
この展示課目は、高度 300 ft @ 400 - 430 kt で水平飛行中に 6-6.5G で引き起こして垂直上昇します。右に4.25回ロールして、9,000ft まで上昇した時に速度が 100-120kt となるものです。
フライトギアで実演してみますと、320 ft @ 400 kt で6Gで引き起こし 90°で上昇、4.5回ロールして 9250 ft に達した所で 120kt になりました。垂直距離の誤差が 2% ですから、かなり実機に近い近い値がでているといえるでしょう。上がりきった後の挙動がわからないのですが、120kt は失速寸前の状態です。そのまま背面ループで急降下して、なんとか失速を逃れました。
*** Low Angle Cuban
この課目はピッチを低く保ちながら滑走路上のわずか10数フィート上を加速して、速度が240kt のところで3-4Gで引き起こします。160-180kt で 700-800ft で垂直になり、そのまま背面になるまでループを維持し、-20°のピッチ角で1.5回ロールしながら降下し、300ft でレベルオフとなります。ループ頂点での速度と高度は 2500ft @ 150kt だそうです。
これについても実際にフライトギアでテストしてみる事にします。燃料を 200ガロンにした状態で 140kt で離陸後数ftを必死に維持し240kt まで加速。240kt で3.5G で引き起こします。1100ft @ 204kt で垂直になり、2700ft @ 145kt で背面になりました。-20°でロールしながら降下して 300ft では 425kt となりました。
実機のデータと比較すると 垂直時の高度/速度差が +300ft(+30%)/+24kt(+13%) と結構大きいですね。背面時には +200ft(+8%)/-5kt(+3%) ですから割と近い値になっています。このデータだけで判断すると、フライトギア上のT-4 の挙動は、引き起こし直後から垂直になるまでは速度の減少率が実機よりも小さく、垂直姿勢後は速度の減少率が実機よりも大きいことになります。つまるところピッチ変化に寄る揚力係数と抗力係数がずれている事が判ります。
このデータを得る為に10回程飛行しましたので、正直なところ私の操縦が下手だけなのかもしれません。垂直になる迄はもう少し G を掛けて速度を落とし、垂直から背面まではスティックを若干起こし気味にして速度低下を抑えれば課目データに記述された通りの飛行が可能なのかもしれませんが、結構難しいです。
** 考察ちっくなまとめ
2008/1/4 現在での T-4 の重心位置は、とりあえずフライトギアの世界では許容範囲内であることが判りました。重心や空力中心位置に関しては引き続き静的/動的安定性等も含めてテストしていく必要があります。
展示課目データに基づいた挙動に関しては実機の T-4 と比較して非常に小さい差 (Vertical climb roll で 2%)と、大きな差(Low Angle Cuban の垂直姿勢時の高度/速度差が +30%/+13%)との両方が計測できました。Vertical Climb Roll での誤差が小さいことからは、エンジンの推力係数と機体の抗力との関係が比較的実機に近くなっている事が推測されます。Vertical Climb に関してはスロットル全開と90°ピッチの維持とパイロットの操作が明確なので、実機との比較に適した課目だと言えます。
Low Angle Cuban の垂直時の誤差からは、引き起こし時の揚力/抗力が実機よりも少ないのではないかということを想像させます。但し、実機のパイロットがどのような操作を行っているか迄はデータから読み取れないので、実機にどれだけ近いかは想像の域を出ません。この意味では厳密な比較には詳細なパイロットの操作方法を知る必要があります。(あとは私がその操作方法をどの程度追従できるかですね)
実はこのデータは最初のテストフライトデータとしては出来過ぎです。というのも、実はこの状態にするまでには2週間程度の時間を要しています。最初にテストデータを記述した際にはもっともっさりしていました。機会があればその時のデータを利用して、作業場のページにでも最初に作成したモデルでのテストフライトデータをまとめてみたいと思います。多分まともに垂直ループはできないでしょう。また、その状態から何を変更して現在の状況になったかも記述して行きたいと思います。
さて、機体設定ファイルも作成できたので早速テストフライトしてみます。今回は 3D Model も少し充実して来た 2008/01/04 版を使用します。
テストフライトでは、重心位置、最大速度、離着陸距離、海面上昇率、静的/動的安定性、前方向での最小半径、機体の挙動などさまざまな項目があります。T-4 はブルーインパルスとして活躍しているので、幸いな事に航空ショーでの展示課目のデータ(高度、機体の向き及び速度)が書籍等で取得できます。従って今回のテストでは重心位置の確認をすると共に、航空ショーでの展示課目とモデルの挙動とを比較してみることにします。これ以外のテスト項目については別の機会にどこかに記述したいと思います。
それでは私がテストした項目と結果を順に紹介して行きます。
** 重心位置の確認
重心位置の確認は燃料をほぼ空にした状態と、満タンに積んだ状態で行います。空にした状態で機体が尻餅をついてしまうようであれば、重心位置が後ろ過ぎます。また、満タンにした状態で離陸に時間が掛かりすぎたり、機体の挙動がもっさりしすぎるようだと重心位置が前過ぎます。
*** 空燃料での重心位置の確認
まずは T-4 を指定してフライトギアを起動します。機体が利用できるようになったら、メニューから "File" >> "Browse Internal Properties" を選択して、プロパティーダイアログを表示します。
次にダイアログから /consumables/fuel/tank を選択し、level_gal_us を0 にします。同様に /consumables/fuel/tank[1] の level_fal_us も 0 にします。この状態で尻餅をつかなければ大丈夫でしょう。
*** 満タン時の離陸速度と距離
機体の燃料が満タンの時の離陸距離や速度が正しいかどうかで重心位置が前過ぎないかどうかを確認します。まずは "h" キーを押して現在位置の緯度、軽度を確認します。次に普通に離陸して140kts 付近で離陸します。機体高度が地上からの相対高度で10ft になった所で "p" ボタンで一時停止し、現在位置を確認します。最初に計測した位置と比較する事で離陸距離が計算できます。
距離計算には次のサイトが便利です。
http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/bl2stf.html
T-4 の場合、以下の様な結果になります。
出発点
北緯 35°33′34.6000″
東経 139°46′09.7000″
到着点
北緯 35°33′16.6000″
東経 139°46′23.8000″
離陸距離: 658.674(m)
手元にある T-4のデータと比較してみると、離陸距離は 610m となっています。燃料の搭載量が記述されていないので満タン時だと仮定すると、今回の 658.674m は8%の誤差ですので、そんなに大きく外れた値ではありません。ほんの少し後方に移動させるか、若干機首の重りを軽くする程度でカタログ値から±5% 以内になりそうです。
** 機体の挙動確認
T-4 の展示課目は色々あるのですが、今回はその中の2つについて確認して行きます。
*** Vertical climb roll
この展示課目は、高度 300 ft @ 400 - 430 kt で水平飛行中に 6-6.5G で引き起こして垂直上昇します。右に4.25回ロールして、9,000ft まで上昇した時に速度が 100-120kt となるものです。
フライトギアで実演してみますと、320 ft @ 400 kt で6Gで引き起こし 90°で上昇、4.5回ロールして 9250 ft に達した所で 120kt になりました。垂直距離の誤差が 2% ですから、かなり実機に近い近い値がでているといえるでしょう。上がりきった後の挙動がわからないのですが、120kt は失速寸前の状態です。そのまま背面ループで急降下して、なんとか失速を逃れました。
*** Low Angle Cuban
この課目はピッチを低く保ちながら滑走路上のわずか10数フィート上を加速して、速度が240kt のところで3-4Gで引き起こします。160-180kt で 700-800ft で垂直になり、そのまま背面になるまでループを維持し、-20°のピッチ角で1.5回ロールしながら降下し、300ft でレベルオフとなります。ループ頂点での速度と高度は 2500ft @ 150kt だそうです。
これについても実際にフライトギアでテストしてみる事にします。燃料を 200ガロンにした状態で 140kt で離陸後数ftを必死に維持し240kt まで加速。240kt で3.5G で引き起こします。1100ft @ 204kt で垂直になり、2700ft @ 145kt で背面になりました。-20°でロールしながら降下して 300ft では 425kt となりました。
実機のデータと比較すると 垂直時の高度/速度差が +300ft(+30%)/+24kt(+13%) と結構大きいですね。背面時には +200ft(+8%)/-5kt(+3%) ですから割と近い値になっています。このデータだけで判断すると、フライトギア上のT-4 の挙動は、引き起こし直後から垂直になるまでは速度の減少率が実機よりも小さく、垂直姿勢後は速度の減少率が実機よりも大きいことになります。つまるところピッチ変化に寄る揚力係数と抗力係数がずれている事が判ります。
このデータを得る為に10回程飛行しましたので、正直なところ私の操縦が下手だけなのかもしれません。垂直になる迄はもう少し G を掛けて速度を落とし、垂直から背面まではスティックを若干起こし気味にして速度低下を抑えれば課目データに記述された通りの飛行が可能なのかもしれませんが、結構難しいです。
** 考察ちっくなまとめ
2008/1/4 現在での T-4 の重心位置は、とりあえずフライトギアの世界では許容範囲内であることが判りました。重心や空力中心位置に関しては引き続き静的/動的安定性等も含めてテストしていく必要があります。
展示課目データに基づいた挙動に関しては実機の T-4 と比較して非常に小さい差 (Vertical climb roll で 2%)と、大きな差(Low Angle Cuban の垂直姿勢時の高度/速度差が +30%/+13%)との両方が計測できました。Vertical Climb Roll での誤差が小さいことからは、エンジンの推力係数と機体の抗力との関係が比較的実機に近くなっている事が推測されます。Vertical Climb に関してはスロットル全開と90°ピッチの維持とパイロットの操作が明確なので、実機との比較に適した課目だと言えます。
Low Angle Cuban の垂直時の誤差からは、引き起こし時の揚力/抗力が実機よりも少ないのではないかということを想像させます。但し、実機のパイロットがどのような操作を行っているか迄はデータから読み取れないので、実機にどれだけ近いかは想像の域を出ません。この意味では厳密な比較には詳細なパイロットの操作方法を知る必要があります。(あとは私がその操作方法をどの程度追従できるかですね)
実はこのデータは最初のテストフライトデータとしては出来過ぎです。というのも、実はこの状態にするまでには2週間程度の時間を要しています。最初にテストデータを記述した際にはもっともっさりしていました。機会があればその時のデータを利用して、作業場のページにでも最初に作成したモデルでのテストフライトデータをまとめてみたいと思います。多分まともに垂直ループはできないでしょう。また、その状態から何を変更して現在の状況になったかも記述して行きたいと思います。
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投稿ツリー
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T-4 製作記
(Tat, 2007-12-18 1:21)
-
T-4 製作記 - 機体パッケージについて
(Tat, 2007-12-18 8:39)
-
T-4 製作記 - 作業手順
(Tat, 2007-12-18 21:15)
-
T-4 製作記 - Step1: 資料収集
(Tat, 2007-12-18 22:19)
-
T-4 製作記 - Step2: ラフな3Dモデル作成
(Tat, 2007-12-20 12:37)
-
T-4 製作記 - Step3: フライトモデルの作成 (1)
(Tat, 2007-12-20 23:17)
-
T-4 製作記 - メリークリスマス
(Tat, 2007-12-24 16:27)
-
T-4 製作記 - Step3 フライトモデルの作成 (2)
(Tat, 2007-12-27 1:51)
-
T-4 製作記 - Step3 フライトモデルの作成 (3)
(Tat, 2007-12-27 11:17)
-
T-4 製作記 - Coffee Break
(Tat, 2007-12-27 11:41)
-
T-4 製作記 - Coffee Break (2) Yasim モデルのチューニング
(Tat, 2007-12-29 1:26)
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Re: T-4 製作記 Step4: 機体設定ファイル作成
(Tat, 2007-12-29 1:50)
-
T-4 製作記 Step5: テストフライト
(Tat, 2008-1-10 19:34)
-
T-4 製作記 Step6: 詳細な3Dモデルの制作 (その1)
(Tat, 2008-1-30 1:48)
- T-4 製作記 Step6: 詳細な3Dモデルの制作 (その2) (Tat, 2008-2-1 1:23)
-
T-4 製作記 Step6: 詳細な3Dモデルの制作 (その1)
(Tat, 2008-1-30 1:48)
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T-4 製作記 Step5: テストフライト
(Tat, 2008-1-10 19:34)
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Re: T-4 製作記 Step4: 機体設定ファイル作成
(Tat, 2007-12-29 1:50)
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T-4 製作記 - Coffee Break (2) Yasim モデルのチューニング
(Tat, 2007-12-29 1:26)
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T-4 製作記 - Coffee Break
(Tat, 2007-12-27 11:41)
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T-4 製作記 - Step3 フライトモデルの作成 (3)
(Tat, 2007-12-27 11:17)
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T-4 製作記 - Step3 フライトモデルの作成 (2)
(Tat, 2007-12-27 1:51)
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T-4 製作記 - メリークリスマス
(Tat, 2007-12-24 16:27)
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T-4 製作記 - Step3: フライトモデルの作成 (1)
(Tat, 2007-12-20 23:17)
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T-4 製作記 - Step2: ラフな3Dモデル作成
(Tat, 2007-12-20 12:37)
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T-4 製作記 - Step1: 資料収集
(Tat, 2007-12-18 22:19)
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T-4 製作記 - 作業手順
(Tat, 2007-12-18 21:15)
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フライトモデルの修正
(Tat, 2008-6-22 10:43)
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Re: フライトモデルの修正
(hide, 2008-6-24 12:28)
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Re: フライトモデルの修正
(Tat, 2008-6-26 12:51)
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Re: フライトモデルの修正
(hide, 2008-6-27 11:42)
- Re: フライトモデルの修正 (sambar, 2008-7-25 1:22)
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Re: フライトモデルの修正
(hide, 2008-6-27 11:42)
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Re: フライトモデルの修正
(Tat, 2008-6-26 12:51)
-
Re: フライトモデルの修正
(hide, 2008-6-24 12:28)
- Re: T-4 製作記 (Tat, 2008-7-20 6:07)
- Re: T-4 製作記 (Tat, 2008-10-18 7:00)
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Re: T-4 製作記
(Tat, 2012-7-21 13:02)
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Re: T-4 製作記
(Hyde, 2012-7-21 22:21)
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Re: T-4 製作記
(Tat, 2012-7-22 10:47)
- Re: T-4 製作記 (Hyde, 2012-7-22 11:18)
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Re: T-4 製作記
(Tat, 2012-7-22 10:47)
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Re: T-4 製作記
(Hyde, 2012-7-21 22:21)
- Re: T-4 製作記 (kozenigata, 2012-7-31 21:56)
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T-4 製作記 - 機体パッケージについて
(Tat, 2007-12-18 8:39)