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再び脇道にそれますが、Alpha-Jet の Yasim モデルをチューニングしていて気づいた事を忘れないうちに記述しておきます。

重心位置の調整

機体作成において割と時間が掛かるのが重心位置の調整と重量の調整です。重心が前過ぎるとなかなか離陸しませんし、後ろ過ぎると尻餅をついてしまいます。また重心が後ろ過ぎるからといって、重り(ballast) を前方に追加するとピッチ方向の操作性が鈍くなります。重心位置の調整には、fuselage タグ、エンジン(jet 又は propeller タグ)、及び ballast タグを利用します。

ジェットエンジンの場合、重心が後ろに行きがちですが、これを燃料や ballast を増やす事で釣り合いを取ろうとするとノーズが重すぎて離陸距離が伸びたり、舵が聞きにくくなり、ピッチ方向にもっさりとした動きになります。この場合は fuselage タグの値を調整してみましょう。

チューニング前の Alpha-Jet の fuselage タグはこんな感じでした。

<fuselage ax="6.141" ay="0" az="-1.039" bx="-5.909" by="0" bz="-0.203" width="1.164" taper="1" midpoint="0.5"/>

この設定から読み取れるのは以下の情報です。

3D モデルと見比べてみると、a, b 点は正しいのですが、taper と midpoint, width がちょっと怪しいです。Alpha-Jet を側面からみてみると、コックピット付近と吸気口の辺りがふくれていまして、先端は尖っています。末尾は割と細めに絞られています。3D モデルから読み取れることをまとめると以下のようになります。

これをタグで表現するとこうなります。

<fuselage ax="6.141" ay="0" az="-1.039" bx="-5.909" by="0" bz="-0.203" width="1.64" taper="0.1" midpoint="0.34"/>

次に、ジェットエンジンの取り付け位置と重量を見てみましょう。

<jet x="-5.20" y="-0.70" z="-0.33" 
   mass="2118" 
   thrust="8660" 
   tsfc="0.371" 
    egt="950">
  <actionpt x="-9.3" y="-1.03" z="-0.37"/>

エンジンが 機体中心から 5.2m後方にあります。ノズルは 9.3m後方にあります。3Dモデルでこの位置を調べると、エンジンは水平尾翼の真下で、ノズルは更に後方になります。3Dモデル上のエンジンとノズルはそれぞれ機体中心から 1.5m, 2.83m 後方にあるように見えます。[url=http://www.aviationnow.com/media/pdf/spec_04_gas_turbines.pdf]ジェットエンジンのデータ表[/url]を参照すると Alpha-Jet のエンジンは46.4インチの長さ(1.17m) になります。重心が真ん中にあるとすれば ノズル位置 (2.83m後方)から 1.17/2 を引くと 2.245m になります。 これがエンジンの重心位置のはずです。エンジンの重量も 640lb なので修正します。修正後は以下のようになります。

<jet x="-2.245" y="-0.70" z="-0.33" 
   mass="640" 
   thrust="8660" 
   tsfc="0.371" 
    egt="950">

actionpt x="-2.83" y="-0.64" z="-0.93"/>

バラストも重すぎたので調整してみます。

 <!-- pilots -->
 <ballast x="3.28" y="0" z="-0.61" mass="230"/>
 <ballast x="1.96" y="0" z="-0.38" mass="230"/>
 <!-- armament -->
 <ballast x="2.33" y="0" z="-1.03" mass="190"/>

この状態で コマンドライン版 yasim を動作させてみると、このような出力が得られました。

Solution results: Iterations: 2617

Drag Coefficient: 9.778578
      Lift Ratio: 103.775475
      Cruise AoA: -2.670801
  Tail Incidence: 2.443516

Approach Elevator: -0.523635

              CG: x:-0.550, y:0.000, z:-0.399

3Dモデル上でこの位置を確認してみると、後ろのランディングギアが 機体中心から0.470m 後方にあります。重心位置(CG の X座標は ランディングギアよりも後方にありますね。ということは尻餅をついてしまいます。)

これらの値は3Dモデルに基づいているである程度は正確なはずですが、それでも合いません。実機と同様の重量分布を得る為に、fuselage, jet, のタグを若干調整することとします。重心位置はランディングギアより前方で主翼空力中心よりも後方になるはずですから、重心位置の x座標を =0.2m 程前方に移動する必要があります。これを調整する為には再び fuselage タグを調整し、胴体の前後は若干太めにし、胴体の最大幅を少し前方に移動(0.34 → 0.23)しました。

 <fuselage ax="6.141" ay="0" az="-1.039" bx="-5.909" by="0" bz="-0.203" width="1.64" taper="0.4" midpoint="0.23"/>

次に jet タグも調整し、エンジンの重心位置を前方へずらしました。

<jet x="-1.15" y="-0.70" z="-0.93" ...

Yasim で重心位置をチェックすると、CG: x:-0.423, y:0.000, z:-0.416 となりました。なんとかランディングギアの前方に移動しました。これで少しは軽快になるでしょう。

揚力、抗力の調整、最高速度、失速速度の調整

機体の挙動を調整するには、機体の揚力や抗力、着陸時/巡航時の迎え角など、様々な要素を調整する必要があります。ここでは、フライトモデルのタグをどのように変更すれば、どのような現象が起こるかを説明して行きます.

approach タグの変更による影響

approach タグの aoa (迎え角) を大きくすると、以下の現象が起きます。

実際に aoa が 8 の時と 7 の時とで比較してみます。

<approach speed="120" aoa="7" fuel="0.3"> の時の yasim の出力:

Drag Coefficient: 9.160148
      Lift Ratio: 113.896637
      Cruise AoA: -2.690489
  Tail Incidence: 2.303423

Approach Elevator: -0.572742

              CG: x:-0.423, y:0.000, z:-0.416

<approach speed="120" aoa="8" fuel="0.3"> の時の yasim の出力:

Drag Coefficient: 9.369031
      Lift Ratio: 106.831940
      Cruise AoA: -2.474701
  Tail Incidence: 1.990073

Approach Elevator: -0.615560

              CG: x:-0.423, y:0.000, z:-0.416

お判り頂けたでしょうか?

次に approach タグの speed を 120 から 110 に変更してみます。どうなるでしょうか?

<approach speed="110" aoa="8" fuel="0.3"> の時の yasim の出力:

Drag Coefficient: 8.563505
      Lift Ratio: 138.939148
      Cruise AoA: -3.319333
  Tail Incidence: 3.216748

Approach Elevator: -0.669531

              CG: x:-0.423, y:0.000, z:-0.416

変化をまとめると、以下のようになります。

cruise タグの変更による影響

cruise タグを変更するとどうなるでしょうか? <approach speed="110" aoa="8" fuel="0.3">の設定にしたまま、cruise タグの speed と altitude をそれぞれ変更してみます。

speed を 500 から 510 に変更した場合の出力

Drag Coefficient: 8.101376
      Lift Ratio: 146.837555
      Cruise AoA: -3.492537
  Tail Incidence: 3.468721

Approach Elevator: -0.680664

興味深いのは、approach の速度を減速した時と同じ様な値の変化が見られます。次に speed は 510 のままで altitude を 30000 から 31000 に変更してみます。

alt を 30000 から 31000 に変更した場合の出力

Drag Coefficient: 8.275223
      Lift Ratio: 143.781418
      Cruise AoA: -3.338158
  Tail Incidence: 3.240537

Approach Elevator: -0.670667

今度は speed を増加した場合と逆の値の変化となっています。

エンジン出力の調整による揚力、抗力への影響

重心位置の調整で参照したジェットエンジンの一覧表によると Alpha-Jet のエンジン1基あたりの推力は 2980lb でした。そこでエンジン出力をカタログスペックに併せます。

<jet x="-1.15" y="-0.70" z="-0.93" mass="640" ''thrust="2980"'' tsfc="0.371"  egt="950">

この状態での出力は以下のようになります。 thrust = 2980 の時の出力:

Drag Coefficient: 8.275223
      Lift Ratio: 143.781418
      Cruise AoA: -3.338158
  Tail Incidence: 3.240537

Approach Elevator: -0.670667

ここで、thrust を 4980 に変更してみるとどうなるでしょうか? thrust = 4980 の時の出力:

Drag Coefficient: 13.823707
      Lift Ratio: 81.984703
      Cruise AoA: -3.057622
  Tail Incidence: 2.914496

Approach Elevator: -0.610547

cruise タグの alt を増加させた時と同じ傾向が見られますね。

まとめ

さて、これまでの実験結果のまとめます。 揚力を増す為の設定には以下のものが挙げられます。

揚力を減らす為には上に書いたものの逆の変更になります。揚力を増加させた時の副作用として以下の現象が発生します。

この他にも wing タグを調整すれば揚力や抗力は変化します。これに関してはまた別の機会に紹介します。


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