FrontPage > FlightGearマニュアル > 第7章

The FlightGear Manual Version 1.0

第7章 フライトシミュレータの基本チュートリアル

このドキュメントは http://www.flightgear.org/Docs/getstart/getstartch7.html の日本語訳です。

Table of Contents

訳注: 画像が小さすぎて見にくい場合は、画像をクリックして拡大してください。

7.1 序文

航空というのは両極端なものです。

このチュートリアルで使用する航空機はセスナ 172p です。 これは、現実世界の数多くのフライトスクールで使用されている偉大な航空機です。

getstart13x.png

以下の文章は、このチュートリアルを補足し、チュートリアルを読み進めるにつれて生じるかもしれない疑問の多くに答えてくれるでしょう。 特に最初の記事は、航空機の主要な部品や操縦の入門としてためになります。

本チュートリアルはできる限り正確に書かれていますが、きっと間違いもあるでしょう。 あらかじめお詫びをします。

7.2 起動

FlightGear を起動する方法は、使っているプラットフォームやディストリビューションにより様々です。

7.2.1 MS Windows

MS Windows では、FlightGear の GUI ウィザードを使って機体や起動位置を選択することができます。 はじめに、以下に示すように、機体としてセスナ 172p を選択します。 本チュートリアルに合わせるには 2D パネルのものは選択しないでください。 (とは言え将来は、2D の方が訓練に適していると感じるかもしれません。) Next ボタンを押して空港を選択します。

getstart14x.png

本チュートリアルではどの空港から起動しても構わないのですが、FlightGear のデフォルトの空港であるサンフランシスコ (KSFO) から起動するものと仮定します。

getstart15x.png

KSFO を選択して Next ボタンを押すと、シミュレータについてのたくさんのオプションを設定できます。 初めて飛行する場合は noon (昼) で起動することを推奨します。 また、小さめの 800 × 600 の Resolution (解像度) で起動することをお勧めします。 あとになってオプションを設定して飛び回ったり高い解像度を使ったりしても良いのですが、明らかにパフォーマンスに悪影響を与えます。 Run ボタンを押すと選択したオプション設定で FlightGear が起動します。

getstart16x.png

もし Windows 環境で FlightGear の最新版がうまく動かなければ、グラフィック要件の低い初期のバージョン (例えば 0.9.8) を試してみるのも良いでしょう。 以前のリリースは FlightGear ダウンロード トップページ に記載されている FTP ミラーの中にあります。

もし Windows Me を使っていて、フライトシミュレータが突然つっかえ始めてフレームレートが落ちるなら、Explorer と Systray 以外の全てのタスクを FlightGear の起動前に殺してみてください。 もし殺したタスクの一つがアンチウィルスやその手の保護ソフトである場合は、明らかにセキュリティ上のリスクが生じます。 また、ある Windows ME マシンでは、FlightGear の設定を 800 × 600 にすると良い結果が得られるのに、より低い 640 × 480 の解像度は FPS (フレーム毎秒) の度合いがずっと低くなる要因になっていました。

7.2.2 Linux とその他の Unix 系

Linux とその他の Unix ライクなシステムでは、コマンドラインから FlightGear を実行しなければならないかもしれません。 FlightGear をインストールしてもシステムのメニューに見当たらなければ、以下を試してください。

7.2.3 暗闇の中?

--timeofday=noon オプションをつけないと、FlightGear はサンフランシスコの現在の時刻 (訳注: 機体のいる場所の現地時間) で起動するため、ヨーロッパにいる人には夜になることが多々あります。 シミュレータ内の時刻を昼に変えるには、メニューから Weather->Time of Day を選んで Noon を選択してください。

getstart17x.png

もしメニューから FlightGear を実行する場合 (例えば KDE や Gnome 環境)、FlightGear 起動アイコンのプロパティを編集し、単純な fgfs コマンドを fgfs --timeofday=noon --geometry=1024x768 のように、あるいはお望みのコマンドオプションに変更することができます。 コマンドラインオプションについての詳細は第3章にあります。

7.3 最初の挑戦 - 真っ直ぐに飛ぶこと

FlightGear を起動すると、次のようなウィンドウが表示されてエンジン音が聞こえてきます。

getstart18x.png

起動すると、航空機は滑走路の端にいて、エンジンがローパワーで動いています。 飛行機は時々少し振動しますが、動くことは無いでしょう。

キーボードについて

vを打って、機体を外側から見てください。 v を繰り返し打って様々な視点 (view) をスクロールし、コックピットに戻してください。 (V を打つと逆向きに視点が循環します。)

getstart20x.png

現実世界ならば、全てが動作し、可動部品を邪魔するものが無く、機器の開口部に障害物がないことをチェックするためにあらゆる点から点検していたことでしょう。 シミュレータ内では、これはもう我々のために出発前にやってあります。

Page Up キーを約8秒間押してください。 すると、エンジン音が上昇するのが聞こえるでしょう。

航空機が滑走路を加速し始めます。 それにつれて航空機が左に流れ、ついに離陸するという前に左に傾き、地面に落下し、墜落します (多分)。

View -> Instant Replay メニューで墜落のリプレイを見ることができます。 ダイアログウィンドウ下部の Replay ボタンをクリックし、それから vV を使って外側から機体を見てください。 以下の図に、フライトの最後の部分を示します。 F3 を打つとスナップショットを撮ることができます。 また、F10 キーを使うとメニューバーのオンオフを切り替えられます。

getstart21x.png

自分の墜落を見物し終わったら FlightGear を終了し (File->Quit を使います)、先ほどと同じオプションを使ってシミュレータを再起動します。

真っ直ぐ飛ぶには航空機のコントロール・ヨーク (操縦桿) が必要です。

getstart22x.png

ジョイスティック、あるいはマウスを動かすことでヨークを操縦することができます。 マウスで行うには、マウスをヨークモードにする必要があります。 マウスの右ボタンをクリックしてそのモードにしてください。 マウスカーソルが + 表示になります。 マウスを動かし、それに応じてヨークが動作するのを見てください。 v を打って機体を外から見てください。 もう一度マウスを動かすと、尾部のエレベータ (昇降舵) と、両翼の端にあるエルロン (補助翼) が動くのが見えます。 何かが動くのを見るには視点が機体から遠すぎるなら、x を数回打ってズームインします。 X はズームアウトします。 Ctrl-x はデフォルトのズームレベルに視界を戻します。 V を打ってコックピットに視点を戻してください。

マウスの右ボタンをもう一度クリックするとマウスがビューモードになります。 このモードではマウスカーソルが ↔ 表示になります。 これにより、周りを容易に見回すことができるようになります。 マウスの左ボタンをクリックすると視界が中央に戻ります。 さらに右クリックをすると通常のマウスモードに戻ります。

まとめると、マウスを右クリックすると3つのモードを循環します。

マウスでヨークを操作してもう一度離陸を試みます。 右クリックでマウスをヨークモード(ポインタ形状は +)にし、Page Up キーを押し続けてエンジンのスロットルを全開に上げます。 滑走路に対して航空機が曲がるのをマウス/ヨークを使って真っ直ぐに保とうとはしないでください。 左に流れるがままにしてください。 空中に浮き上がるまで待ちます。 その後、マウスを使って航空機が真っ直ぐに飛ぶようにします。 (もし航空機を地上で操縦したければ 7.5節 を見てください。)

左に傾いたり...

getstart23x.png

右に傾いたり...

getstart24x.png

あるいは地面に突進したりするのを防がなければいけないことが分かるでしょう。

getstart25x.png

航空機の機首の少し上に地平線が安定するようにして、おおむね真っ直ぐに飛ぶよう努力してください。

getstart26x.png

ビデオゲームやより単純なシミュレータに対してあなたがどんなスキルを持っていようとも、多分最初は成功しないでしょう。 恐らく離陸後あっという間に航空機は墜落することでしょう。 この瞬間に、大半の志願者はやる気をなくし、シミュレータまたは実際の航空機を飛ばす努力をすることをあきらめてしまいます。 ちょっとだけ耐えてトライし続けてみてください。 いずれ、必要とされる微妙な制御入力の感覚が養われるでしょう。

一番よくある間違いは、機首を持ち上げようとしてマウスを前に動かすことです。 実は、そうするにはマウスを後ろに動かしてヨークを引かなければなりません。

同様に、機首を下げたい時はマウスを前に動かさなければなりません。 これは奇妙に思えるかもしれませんが、全ての航空機のコントロール・ヨークはこのように設計されています。 やがて、どうして他の方法で動作すると毎回考えていたのか不思議に思うようになるでしょう。 少しマウスを動かすだけで航空機に大きな影響を与えることも分かるでしょう。 初めは、マウスの感度を下げることが役立つかもしれません。

このことを頭に思い描くのが難しければ、次の例えが有用かもしれません。 机の上にサッカーボールがあり、そのてっぺんに手を「接着」したと想像してください。 もし手を前に動かすと、ボールは前に転がり、指先は机を指します。 もし手を後ろに動かすと、ボールは後ろに転がり、指先は天井を指します。 あなたの手が航空機なのです。

flight_simulator_tutorial_11.jpg

二つ目の間違いは、制御入力がそのまま航空機のバンクに一致すると考えることです。 言い換えると、コントロール・ヨークが水平なら航空機も真っ直ぐに飛ぶと信じることです。 これは真実ではありません。 ヨークが制御するのは航空機のバンクが変化する割合です。 もし航空機が左に20°バンクしていてコントロール・ヨークが水平ならば、航空機は他の力が作用するまでずっと20°でバンクし続けます。 もし水平飛行に航空機を戻したければコントロール・ヨークを少しだけ右に回し (マウスを少しだけ右に動かす)、しばらくの間は少し右に維持する必要があります。 航空機はゆっくりと右に回転するでしょう。 地平線と水平になった時点でコントロール・ヨークも水平に戻します。 すると航空機は水平を維持します (他の力が姿勢を変化させるまでは)。

三つ目の間違いは、ヨーク/マウスの「正しい位置」を探そうとすることです。 当然ながら、ほっといても航空機が真っ直ぐに飛んでいくように微調整したくなるでしょう。 実際は、そのような理想的なヨーク位置は存在しません。 航空機は空中では本質的に不安定なものです。 マウスの微小な動きで航空機の高度を絶えず修正し真っ直ぐに飛ぶように保たなければなりません。 初めはそれにすっかり気を取られるように思うかもしれませんが、ちょうど車の運転と同じように、航空機を真っ直ぐ水平に保つことはすぐに自然に出来るようになるでしょう。 もっと長距離のフライトでは、オートパイロットを使って航空機を水平に保つことにそのうちなるでしょうが、それは本チュートリアルの範囲外です。

必要な制御入力についてのセンスを微調整する手助けとしては、外界の風景に目を向け続け、計器やヨークを見つめないことです。 地平線の角度と、機首の上に対する地平線の高さをチェックしましょう。 地平線と航空機のエンジンカバーがあなたにとっての主飛行計器なのです。 計器パネルはたまに見る程度にしてください。

マウスがヨークコントロールモード (ポインタ形状は +)である間は FlightGear のウィンドウの端にマウスを動かさないでください。 マウスは一度ウィンドウから出ると航空機を操縦することを止めてしまいます。 しかもぎりぎり悪い瞬間であることがしばしばです! ウィンドウの外側でマウスを使いたければ、マウスの右ボタンを2回クリックしてまずはマウスをノーマルモードに戻してください。

4つのキーボードの矢印キーまたはテンキーの8246キーを使ってヨークを操縦することもできます。 初めはこのほうがマウスよりも簡単に思えるかもしれませんが、正確な飛行をするために必要な繊細な微調整ができないので、マウスで耐え抜くほうがずっと良いのです。

空港の周囲を飛行している間にビープ音が聞こえるかもしれません。 これは着陸援助用の信号です。 当分の間は気にしないでください。

航空機を空に着実に上昇させることができるようになった時点で、これをマスターしたことに気付くでしょう。 次のステップは、一定の高度に航空機を保ったりゆるやかに上昇や下降したりすることで自分の制御下に置くことを学ぶことです。

一定の高度に航空機を保つには、高度計を観察し、航空機が上昇や下降をしないようにマウスをそれぞれ前や後ろに動かすことで高度計に小さな変化を与える必要があります。

高度計の計器は計器パネルの中央最上段にあります。 長針は100フィートの位、短針は1000フィートの位を示します。 以下の高度計は高度300フィート、約100メートルを示しています。

getstart28x.png

上昇や下降するとそれに伴って高度計が変化し、高度が上がると時計回りに、下降すると反時計回りに回転します。 もしも高度計が「巻き戻されていく」のを見たら、高度が落ちつつあり、機首を少し持ち上げるためにマウスを後ろに動かす必要があると言えます。 しばらくすると、水平飛行時には地平線に対する機首の相対位置がいつも同じであることに気付くでしょう。 これが水平飛行のための航空機姿勢です。 機首をこの同じ位置に置くことで、計器を参照せずにほとんど水平に飛行することが出来るようになるでしょう。 そこから高度の微調整が可能になります。

注意: 高度計は絶対的な海抜高度を自動的に示すことはしません。 現地の気圧に合わせて調整しなければなりません。 高度計左下の小さな黒いノブで調整できます。 FlightGear を起動して地上にとどまってください。 (マウスをノーマルモードにして) 黒いノブの内側をクリックします。 左半分をクリックすると気圧計が後ろに戻ります。 右半分で気圧計が前に進みます。 現在の高度を調整するのにこの小さなノブを使ってください。 原則として、高度が確かに分かっている時にノブを使ってください。 もし高度1,100フィートにいることを知っているのなら、高度計が1,100フィートになるように調整してください。 マウスの中ボタンをクリックするとノブが速く回転します。 Ctrl-c を打つと2つのボタンが半分ずつハイライトします。

getstart29x.png

「海抜高度」と「対地高度」には重要な違いがあることに注意してください。 もしあなたが海抜高度 (above mean sea level, AMSL) 24,000フィートでエベレスト山の近くを飛行しているならば、対地高度 (above ground level, AGL) はずっと低いでしょう。 自分の周囲の地面の高度を知っておくことは明らかに役に立ちます。

7.4 旋回の基本

もしも十分な燃料があるならば、何千マイルも真っ直ぐに飛ぶことで (訳注: 地球を1周して) 同じ空港に戻ってくることが出来るでしょうが、方向を変えられるとずっと楽しくて有用なフライトができます。

ある程度真っ直ぐに飛ぶことが出来るようになったら、そろそろ旋回を学びましょう。 原理は単純です。

旋回するのに高角度のバンクは必要ありません。 安全で安定に旋回するには20°で十分です。 旋回釣合計は、航空機を後ろから見た絵でバンク角を指示する計器です。 以下の図は、航空機が右に20°バンクした時の旋回釣合計を示します。 バンク角は、地平線の角度を観察することによっても知ることができます。

getstart30x.png

以下のことを試してみましょう。 航空機を20°にバンクさせ数分間保持しながら機体の外に目を向けます。 120秒ごとに同じ地上物を繰り返し見ることでしょう。 これは、360°旋回するのに120秒 (あるいは180°に60秒) かかることを示しています。 これはとりわけ航法に有用です。 航空機の飛行速度が何であろうと、20°でバンクすると、セスナ 172P ではいつでも180°の旋回に60秒かかります。

つまり、航空機を左や右にバンクさせると左や右に旋回します。 航空機を地平線に水平に保つと真っ直ぐに飛行します。

旋回計の底にある小さな紫色のボールは横向きの力を示しています。 現実世界なら旋回時にこの力を感じるはずですが、これをシミュレーションすることは不可能なので、ボールを目で単に見るしかありません。 もしもきちんと (ラダーを少し使って) 旋回すれば、ボールは中心にとどまります。 ボールが例えば右に押されるならば、これはパイロットもまた右方向に押されることを意味します。 車が左に曲がる時と似ています。 きちんと旋回している間は、たとえ急旋回であっても、乗客が機内で横向きの力に耐えるようなことはありません。 ただ遠心力によって座席に少し強く押されるだけです。

検証してみると、航空機を高角度にバンクさせてヨークを引くことで、もっと急旋回ができることに気付くでしょう。 バンク角60°以上での旋回はアクロバット飛行と軍事飛行の領域であり、セスナのような航空機では危険です。

7.5 地上でのタキシング

FlightGear はデフォルトで、都合よく真っ直ぐ滑走路を向いて出発準備ができた状態で起動しますが、格納庫から誘導路を通って滑走路までどうやって航空機を移動するのか不思議に思うかもしれません。 これがタキシングです。

下の絵に示す回転計は、エンジンがどれだけ速く回っているかを1分間あたりの回転数 (RPM) を使って100 RPM 単位で示しています。

getstart31x.png

Page Up キーを数回打って、回転計が (上図のように) 1,000 RPM を示すようにしてください。 必要に応じてエンジン速度を落とすには Page Down キーを打ってください。

およそ 1,000 RPM で航空機は滑走路を前進しますが、加速や離陸はしません。

.」キー (フランス語の Azerty キーボードでは Shift-;) を打ってください。 航空機は右に急転換します。 もし「.」キーを押し続けると航空機は停止します。 「.」キーは航空機の右輪ブレーキをかけます。

左輪ブレーキをかけるには「,」キーを使います。

,」キーと「.」キーは、本物の航空機の足元にある2つのブレーキペダルをシミュレートします。 スロットルとブレーキペダルを使って航空機の速度を制御し、地上で曲がることができます。

ブレーキは、滑走路をゆっくりとタキシングしている時に非常に便利です。 航空機の前輪の方向を操作することもできます。 本物の航空機では、足元のラダーペダルを踏みます。 曲がりたい方向と同じ側の足で踏んでください。 ラダーペダルを持っていない場合、2つの方法で仮想のラダーペダルを操作できます。

シミュレータを起動し、vV を打って外側から機体を見て、x キーを数秒間押して機体にズームインしてください。 前輪を見ながら、テンキーの 0 キーを押してみてください。 それからテンキーの Enter キーを押してみてください。 前輪が向きを変えるのが分かるでしょう。 マウスの右ボタンをクリックしてヨークコントロールモード (ポインタ形状は +) にしてください。 マウスの左ボタンを押し続けてラダーコントロールモードにし、マウスを右や左に動かしてください。 機尾にある大きな垂直の操縦翼面、つまりラダーが前輪と一緒に動くことに注意してください。

私は、前輪が地上にある間はマウスを使ってラダーペダルを操作し、離陸後はテンキーの 0Enter キーを使うようにしています。 言い換えると、前輪が地上にある間はマウスの左ボタンを押し続けています。 これにより、地上で正確かつ簡単にラダーを制御できます。 その後、前輪が浮き上がったらマウスの左ボタンを単に離しています。

7.5.1 対気速度

車を運転する時と同じように、どのくらいの速さで移動しているのかを知るのは良いことです。 航空でスピードメータに相当するのは対気速度計 (airspeed indicator, ASI) で、1時間あたりの海里 (つまりノット) で測ります。

getstart33x.png

1ノットは毎時1.85325キロメータです。 つまり、飛行中の速度をおおまかに km/h で理解するには、表示されているノットに2をかけてください。 1ノットは毎時1.15115マイルなので、非常に大雑把に言うと1ノットは1mph (マイル毎時) です。 いくつかの航空機 (特にパイパー J3 Cub) の ASI はノットではなく mph で表示します。

対気速度計は、周囲の空気に対する航空機の速度を表示するのであり、車のスピードメータのように地面に対する速度を表示するのではありません。 もし航空機が地上に停止しており、正面から10ノットの風が吹いているのなら、対気速度計は10ノットの対気速度を表示しますが、航空機は地面に対して動いてはいません。

航空機が離陸のために滑走路を40ノット以上で滑走している時は、前輪が接地しないようにしなければなりません。 前輪は高速走行用には設計されていないため、現実世界だと振動し擦り減ってしまいます。

離陸中に40ノットを超えたらすぐにコントロールヨークを静かに後ろに引き、前輪を地面から離してください。 地上を高速走行時に急に曲がってはいけません。 航空機がひっくり返る恐れがあります。

以下の絵は、前輪がわずかに浮いているところを示しています。 これをやりすぎないでください。 機体の白い機首カバーが地平線より十分に下にくるよう保ってください。 ほんの少し機首を持ち上げるだけで良いです。

getstart34x.png

では問題です。 もし前輪がもう滑走路に触れていないとしたら、航空機の方向を操作するにはどうするのでしょうか? 答えは、やっぱりラダーペダルを使います。 上記に触れたように、ラダーペダルは前輪と機尾のラダーの両方に接続されています。 ラダーとは機尾にある大きくて垂直な可動部のことです。

getstart35x.png

対気速度が40ノット以上になると、ラダーに十分な気流が発生し航空機の方向を操作できるようになります。

前輪と機尾のラダーが航空機を回転させる割合は全く同じではないことに注意してください。 もし前輪よりもラダーの方が支配的ならばラダーの角度を合わせなくてはなりません。 そうするには、テンキーの 0Enter をすばやく打ちます (あるいはマウスの左ボタンを押した状態でマウスを動かし、ラダーをしっかりとコントロールします)。

前輪とラダーの操作に慣れてくると、この新しい操作方法を使って航空機の離陸時に滑走路上を真っ直ぐに保てるようになります。

例えば右に向きすぎているとします。 テンキーの 0 を数回打って向きを左に戻します。 航空機が完全に真っ直ぐに立ち直るまで待っていてはいけません。 進みたい方向に航空機が達するよりも前にテンキーの Enter を打ちます。 そうしないと修正が大きすぎて、再び曲がらないといけなくなるでしょう。 マウスを使う場合には、このような修正をもっと簡単かつ正確に行うことができます。

まとめると、地上の航空機の方向を操作するには2つの方法があります。 主脚両輪の差動ブレーキとラダーペダルです。 このような制御系統の冗長化が航空ではよく使われます。 もし一つの方法が機能しなくなっても、もう一つの方法を使って作業を実行することができます。

航空機が地上を滑走するとなぜ左にドリフトし、右のラダーペダルを少し踏んで補正しなくてはならないのか不思議に思うかもしれません。 その主な理由はプロペラが作り出す気流です。 この気流は機体に沿ってらせん状に進みます。 そのわずかな渦流の上部は垂直尾翼を右に押します。 これにより機首が左に向くのです。

テンキーの 5 を打つと、ヨークとラダーが全て真ん中に戻ります。 これは飛行前の予防措置として有用です。 飛行中にあちこち操作してしまった場合に「命を救って」くれることもあります!

7.6 高度な旋回

地上で曲がる時と同様に、空中で旋回する方法は2つあります。 上述したように翼のエルロン (ヨーク/マウスで操作) を使うか、機尾のラダー (ラダーペダル/テンキーの 0Enter で操作) を使います。

なぜ2つの方法があるのでしょうか? 冗長化のためという理由も一部にはありますが、主な理由はこれらが相補的だからです。 ラダーの主な作用はヨー (上下軸まわりの回転 (訳注: 機首を左右に振る運動)) ですが、エルロンの主な作用はロール (前後軸まわりの回転 (訳注: 航空機が左右に傾く運動)) です。

飛行中にエルロンを使って旋回する時でも、ラダーがちょっとだけ必要になります。 ラダーを少し加えてください。 こうすることで、エルロンを使用してロールする時に発生するアドバース・ヨー (訳注: 旋回したい方向とは逆向きに機首を振る現象) を補正することができます。 実機では、この横方向の動きを感じることができます。 シミュレータ内では、旋回釣合計で仮想的にチェックできます。 以下の絵では、エルロンを使って右に強く旋回している間に小さなボールが右方向に押されています。 つまり、パイロットもまた右方向の力に耐えているということを示しています。 これを補正するには、右のラダーペダルを押します (テンキーの Enter を数回打ちます)。 通常の飛行時は、この小さいボールが真ん中に来るようにラダーを使う必要があります。

getstart36x.png

つまり、通常の飛行時にはエルロンで旋回し、地上近くの低速時にはラダーを使います。 けれども、一方の方法を使えば他方を全く使わなくて良いということではありません。 高高度で高速時にはラダーもやはり必要です。 地上に近い時は、ラダーと相互にエルロンを少し用いて、翼を地平線に水平に保たなければなりません。

タキシング時でさえもエルロンを使うべきです。 さもないと強い横風で機体が吹き飛んでしまうかもしれません。 これに対抗するには、風に向かってエルロンを切ります。 こうすると、風上側のエルロンが上がり、翼を押し下げる役目をします。

急速で強引な動きをラダーに加えるのは避けましょう。 高速に地上を移動している時にこれをやると、航空機はあまりも急に曲がってしまいます。 低速飛行時には、非常に危険な種類の失速を引き起こします。 高速飛行時には、あらゆる種類の空気力学的あるいは身体的な不快感を生じます。 そうではなく、ラダーは緩やかに動かしてください。

私のお勧めは、飛行中にラダーで旋回する練習をすることです。 70ノット程度の低速で飛んでください。 エンジンパワーを増減させて高度を安定に保つようにしてください。 地上の目印に向かってラダーを用いて旋回して機首方位を維持し、その後新たな方位に航空機を旋回させます。機体がどのようにヨーするのか見ましょう。 先行してラダーを操作することを学びましょう。 急角度の旋回をしようとしないでください。 ヨーク/エルロンを使って翼を常に水平に保ってください。

7.7 Wieheisterology について

Wieheisterology とはドイツ語のフレーズ 「Wie heißt Er 〜 この名前は何ですか」から来ています。 この節では、航空機の計器、スイッチ、制御について記述します。 シミュレータ内であればエンジンスロットルとヨークだけで基礎的な航空機を離着陸させることができますが、安全で効果的に成し遂げるには全ての制御を用いる必要があります。

7.7.1 エンジン制御

航空機のエンジンは、単純さや信頼性、能率性を優先して設計されています。 現代の自動車で使われているような先進的で電子的な点火システムや燃料噴射ではなく、電力に頼らない旧来の技術を使います。 そうやって、完全な電気故障を引き起こしてもなお航空機は飛ぶことができます。

マグネト

左下の計器パネルの下に、マグネトスイッチとエンジンスタータがあります。

getstart37x.png

スイッチを見るためには、P を打って図的な計器パネルを表示するか、Shift-x を打ってズームアウトします (x でズームインし、Ctrl-x でズームを戻します)。

スイッチを動かすには {} キー (フランス語の Azerty キーボードでは Alt Gr キー) を使います。

自動車エンジン内部の燃料は電気スパークで点火することをご存知の方も多いでしょう。 現代の車は電子点火を用いています。 その代わりに航空機エンジンは、より旧式の (でも信頼性の高い) マグネト (磁気) 点火を用いています。 冗長化のために2つのマグネトがあり、片方は「左」、もう片方は「右」のマグネトです。 マグネトスイッチを OFF に切り替えると、両方のマグネトがスイッチ・オフになりエンジンは始動しません。 マグネトスイッチが L なら左のマグネトを使っていることになります。 R なら右のマグネトを使います。 BOTH なら両方を使います。 飛行中は BOTH を使いましょう。

飛行中に両方のマグネトを使うことを考えると、スイッチが存在する理由は何でしょうか? その理由は、飛行前点検の際に各マグネトが正常に動作することを確認するからです。 これをするには、1500 RPM に上げて、それからマグネトスイッチを L にして回転計を観察します。 回転数がわずかに落ちるのが分かるはずです。 もしエンジンが切れるなら、左のマグネトが壊れています。 もし回転数が落ちるのが見られなければ、両方のマグネトはまだオンなので、スイッチが故障しているのかもしれません。 その後、右のマグネトでも同じ試験をします。 もちろん、シミュレータ内ではマグネトが故障するとは思えません!

飛行中に2つのマグネトのうちの一つが故障することがあるかもしれませんが、もう片方がエンジンを動かし続けるでしょう。 1つのマグネトが故障すること自体がまれであり、両方同時に故障することはまるで聞いたことがありません。

{ を打ってエンジンを止めたかもしれません。 エンジンを始動するには、まず } を3回打ってマグネトスイッチを BOTH にしてください。 それから、エンジンが始動するまでスタータ・モータの s を数秒間押します。

マウスのノーマルモードでも、スイッチの左や右をクリックすることでマグネトスイッチを回してエンジンを始動することができます。 Ctrl-c を押すと黄色い長方形のハイライトで両方のクリック箇所を見ることができます。

スイッチを OFF に回すとエンジンの騒音が止まります。 スイッチを素早く L に戻せば、プロペラがまだ回転しているためエンジンが再始動します。 プロペラが止まるまで待つと、L や R、BOTH にスイッチを切り替えてもエンジンは始動しません。 (常にいつでも、エンジンが停止したらすぐにマグネトスイッチを OFF にしてください。)

スロットル

getstart38x.png

エンジンパワーを増やすにはスロットルロッドを押し込む (Page Up キー)ことはもうご存知でしょう。 エンジンパワーを減らすにはロッドを引き出します (Page Down キー)。 また、レバーの左と右をクリックすることもできます (素早く動かすにはマウスの中ボタン、Ctrl-c で左右半分ずつハイライト)。

「パワーを増やす」とは実際のところどういう意味なのでしょうか? エンジンに供給する燃料を増やすことを意味するのでしょうか? 答は Yes ですが、やっていることを完全に理解するにはそれでは不十分です。 エンジンには膨大な量の空気もまた供給されていることに気付く必要があります。 エンジンのシリンダーは、燃料と空気のミクスチャー (混合物) を燃焼させます。 燃料単独では燃えないのです。 燃料と空気のミクスチャーだけが爆発してエンジンのピストンを動かします。 というわけで、スロットルを押し込んだ時は、エンジンに供給される燃料と空気の両方が増加するのです。

ミクスチャー

空気の量と燃料の量の比はとても重要です。 両者の比は綿密に調整する必要があります。 これがミクスチャーレバーの役割です。 以下の絵はミクスチャーレバーをかなり引き出し過ぎた状態を示します。

getstart39x.png

ミクスチャーレバーを完全に押し込んだ時、たくさんの燃料と僅かな空気をエンジンに供給します。 この状態は「リッチ」ミクスチャーとして知られています。 レバーを完全に引き出した時は、過剰な空気が供給されて「リーン」ミクスチャーになります。 最大パワーを発生する正確な位置はこの2つの極限の間にあり、通常は、完全に押し込んだ状態から極めて近くにあります。

エンジンを始動して離陸しようとする時は、ミクスチャーを燃料リッチにします。 つまり、ミクスチャーレバーを押し込みます。 ミクスチャーを燃料リッチにしておくとエンジンの始動が容易になります。 また、エンジンの信頼性がもう少し高くなります。 欠点は、燃料の一部がエンジン内部で燃え切らないことです。 これは単純に無駄になり排ガスと共に排出されます。 これによりエンジンの汚れが増すため、エンジンの供給パワーが減少し、シリンダー内部の残留物の蓄積によってエンジンが徐々に劣化します。

通常の飛行に入ったら、ミクスチャーレバーを少し引いてミクスチャーをより最適にする必要があります。 これをチェックするには以下のようにします。 シミュレータを起動します。 B キー (Shift-b) でパーキングブレーキをオンにします。 スロットルを押し込んで最大にします。 エンジンの回転数は最大点近くになっているはずです。 ミクスチャーレバーをゆっくりと引きます (ノーマルポインタモードのマウスを使います)。 回転数が少し増加するのが分かるでしょう。 燃料供給量を増やすことなしにパワーを増やすことができるのです。 無駄になる燃料が無くなり、汚れも少なくなります。 もしミクスチャーレバーを引き続けると、今度は空気が多すぎるために回転数が減少に転じます。 過剰な空気はシリンダー内部の爆発を遅らせ、爆発温度を下げるため、熱力学的なエネルギーが減少します。 ミクスチャーは最適に調整しなくてはなりません。 熱力学的な理由により、最適なミクスチャーは正確に最大パワーが得られる点ではありません。 エンジンにとっては、最大パワーよりもほんの少しリッチかリーンの状態で動かしたほうが良いのです。 こうすることで、燃料の異常燃焼 (デトネーション) によりエンジンに爆発的ダメージをもたらす可能性を回避します。 最大パワー点は最大回転数から分かります。 (もう一つ別の方法は、エンジンの排気温度をチェックすることです。 大まかに言って、最高温度になる点がそうです。)

ミクスチャーを制御することで、同じ速度と距離に必要な燃料をより少なくすることができ、それゆえ遠くまで飛行でき汚染を減らせます。 けれども、取り扱いに失敗すると深刻な問題を引き起こします。 高高度を飛行しており、ミクスチャーレバーをそれに応じて引いていると仮定します。 高高度では、摂取できる酸素が少ないので、正しいミクスチャーは非常にリーンであり、つまり燃料は少ししか使われていません。 その後、着陸に戻るために降下します。 もし降下する時にミクスチャーレバーを押し忘れると、空燃比があまりにリーンになりすぎてエンジンが単純に停止します。

着陸時には、少し燃料がリッチになるようミクスチャーを調整し直さなければなりません。 つまり、ミクスチャーレバーを押し込むということです。 このようにするとエンジンはもう少し信頼性が向上し、高度を下げるのにより適した状態になります。

エンジンを停止させるのにマグネトを OFF にするのは正しいやり方ではありません。 正しい方法はミクスチャーレバーを引くことです。 まずスロットルを完全に引き出してエンジンのパワーと燃料消費を最小にします。 それからミクスチャーレバーを引くと、ミクスチャーには過剰な空気が含まれているのでエンジンが停止します。 このようにして、無駄になった燃料の残留物が詰まることがないようにします。 最後に、マグネトスイッチを OFF にして、エンジンが知らぬ間に再始動することのないようにします。

重要な注意点について。回転数指示計はエンジンパワーを示しているとお思いかもしれませんが、それは誤りです。 回転数を増加させるものは2つあります。エンジンパワーと機体速度です。 これを確認するには、ある高度に飛び立ち、エンジンパワーを最小に引っ張ります。 地面に向かって降下してみて、それから上昇して高度を戻します。 速度にあわせて回転数が急激に変わるのがわかるでしょう。 降下中は増加し、上昇中は減少します。

この落とし穴の1つは着陸に向けてエンジンパワーを調整する時です。 高速に飛びながら飛行場に向けて降下中であるとしましょう。 着陸時の理想回転数は 1,900 RPM 程度であることを知っているので、1,900 RPM になるまでスロットルを引きます。 適切な回転数に調整したとお思いでしょう。 もうこれ以上何も気にすることは無いと思うかもしれません。 でも、水平飛行にすると、飛行機の速度が回転数とともに落ち始めます。 数分後、飛行速度は思った以上に遅くなります。 回転数がもうかなり遅くなっていることを見ていません。 高度を失うか失速するかのどちらか、あるいはその両方になるでしょう。 スロットルと回転数指示計に注意を払ってください。 スロットルをもっと徐々に引くか、素早く押し戻す心の準備をしましょう。

7.7.2 翼と速度

例えばエンジンをフルパワーにして飛行しているとします。 至極当然なことに思えるかもしれませんが、機首を少し下げると下降し、機首を少し上げると上昇します。 飛行機は機首の方向、つまりプロペラが向いている方向に飛ぶ、と考えるのは最善ではありません。 ロケットに対してはこのモデルで良いでしょうが、飛行機に対してはそうではありません。 ロケットを持ち上げるのはエンジンですが、飛行機を持ち上げるのは翼です。 これは大きな違いなのです。

硬くて四角い大きなボール紙を用意し、水平に手に持って腕を伸ばし、胴体を回転させてボール紙を素早く水平に動かしてください。 空中を平らに移動する時は浮力を感じません。 ちょっと腕をひねってボール紙に少し上向きの角度をつけると、空中に持ち上がろうとするのを感じるでしょう。 ボール紙に上向きの力が働いているのです。 このようにして翼は飛行機を空中に保持します。 翼には少し上向きの角度がついており、飛行機を持ち上げます。 ボール紙の角度を大きくすればするほど揚力も増えます。 (あまりに角度を急にするとむしろブレーキ力を感じるでしょう。 ボール紙が「失速」するのです(後述)。)

getstart40x.png

先に、翼は迎え角無しで空中を移動すると持ち上がらないと書きましたが、これは正しくありません。 もし翼がボール紙のように平らな板であればその通りなのですが、そうではありません。 翼は少しカーブした翼型をしています。 そのため、たとえ迎え角無しに空中を移動しても揚力が生じます。 実際、迎え角がわずかに下向きであっても揚力が生じます。 高速飛行時には、翼の角度がわずかに地面に向いた状態で航空機は飛んでいるのです!

getstart41x.png

空中を移動する翼の角度が重要であることが分かりました。 他にも大事なことがあります。 それは速度です。 再びボール紙を手に取りましょう。 あるわずかな角度で保持して、その角度を変えないでください。 さまざまな速度で空中を動かしてください。 ボール紙を動かすのが速ければ速いほど、上向きの力は大きく働きます。

ちょっとややこしいことに、空中を上昇すると飛行機は速度を下げようとします。 下降すると速度を上げようとします。

これは単なる妥協の産物です。 ある一定の高度と速度で飛行したければ、エンジンパワーとヨーク/エレベータ(出来ればトリム(後述))の両方を調整する必要があります。 同じ速度を保ったまま下降したければ、ヨークを少し押し、そしてエンジンパワーを下げないといけません。 その他いろいろ。 エンジンパワーとヨークの両方を常に調整しなければなりません。 けれども、通常の飛行時にこれをやる場合は単に、快適なエンジンパワーのレベルを選び、それからヨークとトリムで高度を決めます。

シミュレータで実行できるとても面白い訓練として、エンジンパワー全開でまっすぐに飛びます。 水平飛行を保ったまま最高速にします。 それからエンジンパワーを最小に絞ります。 徐々にヨークを引いて飛行機が一定の高度を保つようにします。 飛行機は徐々に減速し、その一方で水平飛行を保つためにはヨークをどんどん引かなければなりません。 速度が低下すると翼による揚力が減少するので、翼の迎え角を増やすことで速度のロスを補います。 このことは、飛行機は必ずしも機首が向いている方向に移動するわけではないことを意味しています。 この実験では、一定の高度を保つために機首を上げています。 飛行機の速度が非常に遅く、機首が非常に高くなると、サイレンが鳴るのが聞こえます。 それは失速警報です(下記参照)。 これは、その翼型で揚力を発生させるにはあまりに迎え角が大きすぎることを示しています。 翼はもはや揚力を生じておらず、飛行機は直ちに高度を失います。 これを是正する唯一の方法は、ヨークを前に押して機首を下げて迎え角を小さくし、それからフルパワーにして速度を上げ、最後に注意しながらヨークを戻して水平飛行にします。

では問題です。 飛行機の速度と高度を制御するにはヨークとスロットルのどちらが良いのでしょうか? 答えは、まさに何をしようとしているのか、そしてどういう状況なのかによります。 通常の飛行時には、上述したように、快適なエンジンパワーのレベルに設定し、エンジンのことは一旦忘れて、あとはヨークとトリムに頼る傾向があります。 離着陸の際は、ヨークとスロットルの使用に関してとても厳密な手順があり、正反対のことを実行します。 つまりヨークとトリムで速度を制御し、エンジンのスロットルで高度と降下速度を制御します。 これについては後ほど議論します。

7.7.3 フラップ

フラップは翼の後部、機体の両側にあります。

getstart42x.png

フラップの展開と格納にはフラップ制御レバーを用います。

getstart43x.png

マウスでレバーをクリックして操作するか、[ キーと ] キーを使います。 [ キー1回につきフラップを1段格納し、] キーで1段展開します。 v を打って飛行機を外側から見て、[] を試してみましょう。 (図的な計器パネルの場合、フラップレバーは右下にあります。)

セスナ 172P におけるフラップ設定は4段階あります。

フラップは少々デリケートです。 1段目のフラップは110ノット以上で展開しないでください。 2段目と3段目のフラップは85ノット以上で展開しないでください。

フラップにより多大な抗力が飛行機に生じ、高速で飛行中の飛行機にブレーキがかかります。 これは、85ノットまたは110ノット以上で飛行するならフラップを忘れずに引き戻しなさい、というもうひとつの理由です。

フラップ位置を目で見てチェックするには、マウスビューモードを使って翼の後ろを見るか、Shift-右矢印で視点を右にシフトしてから素早く Shift-上矢印 で視点を前方に戻します。

フラップは翼の形状を変化させることで翼の揚力を増します。 フラップを1段目に設定すると、同じ速度でも翼の揚力が増します。 それゆえ、離陸時には少し早く空中に浮き上がります。 フラップには、機首をより低くした姿勢で飛行機を飛ばすという効果もあります。 これにより、離着陸時に滑走路が良く見えるようになるので便利です。

また、フラップは飛行機の抗力を増します。 2段目と3段目のフラップは揚力よりも抗力の方がずっと大きくなるので、飛行機にブレーキをかけるのに用いられます。 飛行機が非常に良く滑空するようになるので、これは特に着陸する時に便利です。 エンジンパワーを完全に絞っても飛行機は降下しますが、それでは速度が遅すぎます。 ブレーキをかけつつ地面に向かって本当に降下するにはフラップを2段か3段展開する必要があるのです。

降下中にフラップでブレーキをかけるということは、降下中にもっとエンジンパワーが必要になるということです。 これは奇妙に思えるかもしれません。 なぜ単純にエンジンを最小に絞りフラップの段階を少なくしないのでしょうか? 答えは、飛行機にブレーキを強くかけてエンジンパワーを増やしたほうがあなたの操作に素早く反応するので良いのです。 仮にエンジンが故障したとしても、必要に応じてフラップを単に格納して滑走路に向けて滑空すれば良いのです。

フラップを完全に展開している時に降下率をさらに上げたい場合はどうすれば良いのでしょうか? ラダーペダルを片側にゆっくりと押します。 こうすると飛行機の横腹に気流が当たりブレーキがかかります。 エルロン (ヨーク) を使って旋回を補正します。 これは横滑りとして知られており、いつでもやめることが簡単に出来るので高度を次第に下げるのに非常に有効な方法です。

7.7.4 失速 (ストール)

機体に揚力が生じるためには翼の表面を空気が滑らかに流れていなくてはなりません。 けれども、翼の迎え角が大きすぎるとこの流れが破壊され、もはや翼は揚力を生じなくなります。 揚力が無ければ航空機は飛ぶことが出来ず、地面に向かって急速に落下します。 これは失速として知られています。

失速はどんな高度であろうと緊急事態です。 失速はあらゆる速度で発生し得ますが、低速飛行時によく起こります。 航空機にはそれぞれ特有の失速速度が存在し、そこでは十分な揚力が得られる迎え角はありません。 失速速度よりも十分に速い速度を常に保持しなければなりません。 その手助けとして、航空機には失速警報が装備されており、迎え角が (訳注: 失速角に) 近づくと音が鳴ります。

もし失速に遭遇したら、救済措置として直ちに機首を下げてフルパワーにし、再び飛行速度に到達したら機首を水平に持ち上げます。 ただし、そうすると航空機は高度を失うので、着陸時や離陸時には出来ません!

スピン (きりもみ) は、低速で急旋回している最中などに片方の翼が他方より早く失速した時に起こります。 片方の翼はまだ飛んでいるので、航空機は失速した翼の方に向きを変えようとし、ますますスピンがきつくなります。 スピンから抜け出すには、ラダーをあててスピンを正して通常の失速状態にしてから前述のようにリカバーする必要があります。

セスナ 172 やパイパー・カブのような航空機は良質の失速特性を有しており、スピンに入りにくくなっています。 F16 のような高性能ジェットはより悪質の失速特性を有しており、簡単にスピンに入ってしまいます。

シミュレータ内でこれを練習するには以下のようにします。

あるいはフラップ設定を変えて失速したり、突然高度を変化させて高速失速したりする実験を行うこともできます。

異なる航空機で実験してみてください。 セスナ 172 と比べるとセスナ・サイテーション・ジェットはもっと悪質でほとんど警告無しに失速します。

7.7.5 トリム

トリムはグレーの点のある黒っぽい大きな垂直の輪で、計器パネルの中央下にあります。

getstart44x.png

FlightGear では、Home キーと End キーでトリムを調整します。 Home は輪を上に回転し、''End'は輪を下に回転します。 トリムの輪の上半分または下半分をクリックすることも出来ます。

第一近似としては、トリムはヨークと同じ動作でありエレベータに作用します。 トリムの輪を下に回転するのはヨークを引くのと同じことです。 けれどもトリムとヨークの間には重要な違いがあります。 トリムは変化させた後も同じ位置にとどまりますが、ヨークは力を加えている間だけエレベータに作用し、手を離すとエレベータは中立位置に戻ります。

巡航飛行の間、航空機を一定高度に保つのに必要なエレベータの位置は完全な中立位置とは異なり、航空機外の空気や現在の燃料レベル、積載量によって変わることでしょう。 明らかに、一定高度に保つためにヨークをずっと保持し続けるとすぐに疲れてしまいます。 巡航飛行に必要なエレベータの力をトリムでもって「トリムアウト」することでヨークを中立位置にしておくことが出来るようになります。

離陸の際はトリムを中立にしなければなりません。 さもないと、普通のレベルのヨーク制御では離陸できないか、あるいは早く離陸しすぎてしまいます。

着陸の際は、トリムを調整してヨーク/マウス/エレベータが中立位置になるようにします。 こうすると、より簡単にわずかな調整で姿勢と位置を操作出来るようになります。 セスナ 172p では、トリムを中立位置に調整します。 チェロキー・ウォーリア II では、トリムを少し「引いた」状態にします。

トリムの輪の動きはヨークよりもずっとゆっくりであり、トリムに微妙な変化を与えることが出来ます。 辛抱強く回しましょう。

7.7.6 どの方位に飛んでいる?

どの方向に向かっているのかを知ることは良い考えです。 飛行している方向を決定する基本的な方法は3つあります。

7.8 レッツ・フライ

これまでに、ラダーを使って滑走路をキープし、まっすぐ飛行して降下、上昇し、滑らかに旋回出来るようになっていることでしょう。 この節では、離着陸に対するもう少し現実的なアプローチについて述べ、知っておいた方が良いより繊細な概念を紹介します。

7.8.1 現実的な離陸

通常の離陸においては以下の一般的なルールが適用されます。

つまり、75ノット付近の一定速度で離陸して空に上昇する必要があります。 ですが、40ノットで機首を少し持ち上げると、恐らく55ノット付近で航空機は離陸しようとするでしょう。 速やかに75ノットに加速するには、離陸した瞬間に機首を少し下げ、それから75ノットになるまで持ち上げます。 航空機の速度を制御するにはヨークを使います。

前に学んだことと結びつけて言うと、マウスを使った通常の離陸は以下で構成されます。

  1. 空港の高度に基づいて高度計を正しい高度に調整します。 参考までに、KSFO は海水位、つまり0フィートです。
  2. ヨークの位置を観察し、エルロンとエレベータが中立位置にあることを確認します。
  3. 右マウスボタンを押してコントロールモードにマウスを変更します。
  4. ラダーを制御するために左マウスボタンを押し続けます。
  5. フルパワーをかけます (スロットルが完全に押し込まれるまでPgUp を押し続けます)。
  6. 航空機が滑走路を加速するので、マウスを使って細かく調整してセンターをキープします。
  7. 40ノットに達したら左マウスボタンを離し、マウスを少し引いて前輪を持ち上げます。 この時、マウスはヨークを制御しています。
  8. 約55ノットで航空機が滑走路から浮き上がります。
  9. 70ノットに加速するまで機首を少し下げます。
  10. 滑走路に沿うようキープします。
  11. 上昇しながらヨークを使って ASI を70ノットにキープします。 もし対気速度が落ちたら機首を下げます。 もし対気速度が上がったら機首を少し上げます。
  12. 500フィートに達したら向かいたい方向に旋回し、1,000フィートまでは建物の上を飛ばないようにします。

7.8.2 着陸

着陸のルールは離陸とほとんど同じですが、逆順になります。

滑走路上に目標ポイントを設定すると着陸はずっと容易になります。 目標ポイントを観察することにより、降下が速すぎるのか遅すぎるのかを簡単に知ることが出来ます。 もし目標ポイントが上に動くのなら、降下が速すぎます。

当然のことながら、滑走路に対して正対する必要があります。 ということは、飛行方位は (下記 (a) に描かれているように) 滑走路の中心線と一致していなければなりません。 このように到着するためには、滑走路の起点を目標にしてはいけません (b)。 そうではなく、滑走路より十分手前の架空のポイントを目指します (c)。 そして、その架空のポイントに到達するよりもかなり前に滑走路に向かって緩やかに旋回し始めます (d)。 このように飛行を補正するための旋回やバンクは非常に緩やかであることがしばしばです。 旋回釣合計では気づかないレベルかもしれません。 これは、内部の飛行計器よりも外側の地平線に頼った方が良いという一例です。

getstart47x.png

マウスを使ったストレートインでの着陸は以下のようになるでしょう。

  1. 空港より1,500フィート高く、滑走路から一直線上に数マイル離れた場所で約1,500rpmにパワーを絞ります。 すると、いくらか速度が下がり徐々に降下し始めます。
  2. 一旦115ノットを下回ったら、フラップを一段展開します (])。 すると、揚力が増えつつも速度が下がります。
  3. 引き続き降下し続けるように航空機のトリムを取り直します。
  4. 1,000フィート付近でフラップをもう一段展開します (])。 すると抗力がかなり増大しますが、機首越しに見える視界が良好になります。
  5. エレベータとトリムを使って速度を調整します。 70ノット以下で飛行しているならヨークを押し、70ノット以上で飛行しているならヨークを引きます。 もしジョイスティックを使っているなら、エレベータに圧力をかける替わりにトリムを使います。
  6. エンジンのスロットルを使って高度を調整します。 降下が速すぎるならパワーを加え、高度が高すぎるならパワーを絞ります。 高すぎるのか低すぎるのかを知るには滑走路上の数字を観察するのが簡単です。 もしそれが画面を上に動いて行くのなら、降下が速すぎるのでパワーを増やします。 もしそれが下に動いて行くのなら、高度が高すぎるのでパワーを絞る必要があります。
  7. 滑走路の直線上をキープするために機首方位を微調整します。
  8. 約500フィートのところで最終段のフラップを展開します (])。 すると抗力が著しく増加するので、降下率を一定に保つためにパワーを増やす準備をしておきます。
  9. 滑走路のすぐ上でパワーをアイドルに絞り、ヨークを使って緩やかに機体を水平に引き戻します。 これは「ラウンドアウト」と呼ばれ、滑走路の数フィート上空を地表と平行に航空機を飛行させることになります。 正しい高さでラウンドアウトを行うことをマスターするのは難しい課題です。 より簡単にする方法、目標ポイントを凝視するのではなく、地平線を観察することです。
  10. ヨークを少し操作して翼を水平に保ちます。 両脚を同時にタッチダウン (接地) させたいからです。
  11. ヨークを引き戻し続けます (訳注: 機首を少しずつ持ち上げます)。 約55ノットで主脚がタッチダウンするでしょう。 これは「フレア」と呼ばれます。
  12. タッチダウンしたら、航空機をまっすぐにキープするためにラダーを使う準備をしてください (テンキーの 0 とテンキーの Enter)。
  13. 40ノット以下になったら機首を地面に向けて下げてください。
  14. 左マウスボタンを押し下げ、前輪/ラダーをマウスを使って制御します。
  15. 30ノット以下になったら、ブレーキ b を使って航空機をさらに減速させます。
    getstart48x.png

飛行機が止まったかあるいは非常に低速になったら b キーを離して少しエンジンパワーを加えて駐機場や格納庫に向かってタキシングをします。

7.8.3 エンジンのシャットダウン

エンジンを停止するには以下のようにします。

7.8.4 着陸の中断

うまくいかなかったり以下のような外部要因のためにいつでも離陸を中止する心の準備をしておかなければなりません

着陸を中断するには、フルパワーをかけて (PgUp を押し続ける)、上昇に向けて機首を上げ、上昇し始めたらフラップを格納します ([ キー)。

着陸は離陸よりもずっとハードです。 KSFO (サンフランシスコ、デフォルト) のような大きな滑走路に着陸するのは KHAF (ハーフムーンベイ、KSFOの約10マイル南西) のような小さい滑走路よりもずっと容易です。

着陸練習をするには、ターミナルウィンドウ内で以下のコマンドラインを使い、滑走路に機首を向けて飛行した状態でシミュレータを起動します。 航空機は滑走路の5マイル手前に位置しており、高度1,500フィート、速度約120ノットです。

fgfs --offset-distance=5 --altitude=1500 --vc=120 --timeofday=noon

着陸に向けたアプローチを70ノットではなく65ノットで行うと、利用する滑走路長をずっと短くすることが出来ます。 しかしながら、特に失速速度にずっと近いという理由から、もっと上手に制御する必要があります。 70ノットで着陸するのとは実に異なります。

7.9 風への対処

熱気球について考えてみます。熱気球は大きな空気の立方体の中にあると考えてください。気球は地面から見ると早く動いているかもしれませんが、空気から見ると静止しています。どんなに風が速くても、熱気球に乗っている人はそよ風すら感じません。

同様に、飛行機も大きな空気の立方体の中を飛んでいて、その空気の塊に対して相対的に飛んでいます。この空気の立方体の地面に対する動きを飛行機の上では感じられません。

パイロットであるあなたは、これに反して周囲の空気の地面に対する速度に興味を持っています。 それはあなたを左右に吹き流すことがあります。あなたをより遅く、あるいはより早く目的地まで連れて行くこともあります。

あなたが追い風で飛ぶなら、飛行機の対気速度自身に加え、風の速さを加えます。従って、地面に対してより速く動きます。あなたは、より早く目的地に到着するでしょう。

風が飛行方向とは逆方向に吹く、向かい風なら飛行機自身の対気速度から風の速さを引き算します。したがって、地面に対してより遅く動きます。あなたは、到着が遅くなり、風景を楽しむ時間が多くなるでしょう。

上の2つのケースはかなり簡単です。 飛行機の側面に向かって風が吹く、横風の時はもっと複雑になります。以下の図を考えてください。

あなたは、目標の左、あるいは右にどれだけ、どのくらいの角度で向ける必要がありますか? 真面目に計算するなら、幾何学と三角関数を使用して最適な角度を計算します。
(訳注:例えば左30度から10ktの風が吹くならば、横風成分は、sin 30°× 10 = 5 (kt)となる。なので、100ノットで飛んでいるなら、asin (5/100)=2.87°左に機首を向ければ良いでしょう。)
ですが、あなたは大体まっすぐ飛ぶならば全く計算をする必要はありません。トリックは、あなたが飛ばしたい方向に目標となるポイントを選んで、それがどう動いて見えるを観測する事です。 もし左や右に流されていればそれに気が付くでしょう。 そうしたら、明らかになった横滑りを補正するために、左か右にゆっくりと機体を向けるよう意識します。 はじめのうちは、やろうとしている事を頭で考える必要があるかもしれませんが、まっすぐに飛ぶことを学んだ時と同様に、すぐに無意識に出来るようになります。 もはや目標に向かって機首を保持しなくても目標の方向に飛ぶことが出来るようになることでしょう。

風速に対する対気速度が速ければ速いほど、必要となる補正量は少なくなります。

7.9.1 横風離陸

== 以下、翻訳中 ==


編集メモ


トップ   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS