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手探り航法・旅日記(その3)

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 .2 .3 .4 .5 .6 | 投稿日時 2011-9-14 4:40 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 お陰様をもちまして、気まぐれ航法・旅日記「その2」のコンテンツも順調に増え、かなり重くなってきました。通信環境によっては、表示に時間が掛かる場合もありますので、前回より少し早いですが「その3」を開かせていただきます。今後ともどうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 ロンドン・グリニッジ=明石間のフライトは前回、v2.4.0の登場をきっかけに、スイスへ寄り道したところで休憩しました。今回は、v2.4.0用に新登場したピラタスPC-9Mをライトチューンして、従来のPC7改に代わる新しい「旅の仲間」に育てる道を探ります。
 塗装の変更と、自作のフライト・コードラント(航空四分儀)搭載、操縦性の調整や、計器類の小改修などを進めまして、v2.4.0の新しいGPS/FMSとMapの使用法を確認しつつ、訓練を兼ねてスイス南西端のジュネーブへショートフライトします。(大長文になりました。済みません)

●外観および改造点:
 PC-9Mは、ピラタス社の軍用ターボプロップ練習機の第2作で、実機は原型となったPC7(初期型541馬力/Mark-兇700馬力)を、950馬力にパワーアップした中等練習機です。両機の外観は、ベントラルフィンと風防以外ほとんど共通ですが、上昇率は33%増(3880ft/min)、10000ftの最大巡航速度は17%増(298KTAS)と大幅に性能が上がっており、実力は大戦中の戦闘機くらいでしょうか。

 ○素晴らしいディテール:
 FlightGearのモデル機は、やはりDavid Culpさんと Erik Hofman さんのPC7をベースにしたそうですが、全面的にリニューアルされており、機首のエア・インテークの微妙な曲面、脚柱の鍛造部品とホイールなど、パーツの情報量(面を構成する頂点の数)が大幅に増え、見事な出来映えです。シートも、PC7は簡素な北欧家具を並べたみたいでしたが、PC-9Mのはちゃんと、マーチンベイカーの射出座席に見えます。仮にPC7が、精密に設計されたペーパークラフトだとしますと、PC-9Mはまさにプラモデルのレベルです。近年のパソコンの性能向上を計算に入れて、思い切ってディテールアップに出た作品、といった印象を受けます。
 外観だけではなく。フルフェザーした3Dプロペラと始動スイッチ、開閉式の風防、スピードブレーキや灯火類を新設し、パネルにはRMI(VORとNDB局の方位を直読する計器)を設けるなど、私がPC7に望んでいた改善点が、ほぼすべて現実になりまして、「ちょうどこんなのが、欲しかった!」と感激しました。
(ついでにご報告しますと、ピラタス社のターボ・トレーナーの最高峰・PC-21も、すでにFlightGear版の機体が出ています。ジェット機まがいの近未来的な機体に、軽く湾曲した5枚ブレードの獰猛なプロペラが付いた、まるでルイジ・コラーニのデザインみたいな高等練習機で、もちろんPC-9Mよりも、さらに性能が上がっています。実機同様、完全なグラス・コクピットですが、まだ計器はダミーで、一切作動しないのは残念。操縦性も少々ラフです。遠くない将来に、完成の域に達することを切に祈っています)

 ○オリジナル塗装に:
 さてPC-9Mの改造は、塗装から手を着けることにします。本機のLiveriesは軍用迷彩が中心ですが、クロアチア空軍のアクロチーム「クリラ・オルイェ」用の、白を基調とした華やかなカラーリングが、ひときわ目を引きます。余談ながら、本モデルのファースト・オーサーは、Petar Jedvajさんという方ですが、お名前の綴りからしますと、クロアチアの方ではないかと想像しています。
 私はこの塗装が気に入り、胴体ストライプの形を一部お借りして、自機デザインを作りました。PC7改と同様にジュネーブ市の紋章入りで、機首に書いた「エスカラード」という愛称は、同市の代表的なお祭りから取りました。17世紀にジュネーブを包囲したサヴォア軍を撃退し、独立を守った記念日で、勇猛果敢なおばあさんが、城壁にハシゴを掛けて攻め込む敵兵めがけて、煮えた野菜スープをぶっかけた…という、楠木正成の赤坂・千早城の闘いみたいなエピソードがあります。

 ○パイロット人形と天測用装備:
 塗装が済んだら、パイロットに乗ってもらいます。今回もOV-10ブロンコの人形を借用しますが、いざ座らせてみると、あまり見栄えがしません。パイロットというより、グラサン姿の「バイクのおっさん」みたいな印象なのですな。なぜだろう…と悩みまして、YouTubeでスイス空軍PC7アクロチームのビデオを見たところ、バイザーと酸素マスクが小さすぎ、形も違うことが分かりました。ヘルメットもやや小さくて、かつ縦長すぎるので、3Dモデリングソフトで全部修正。これでどうやら、飛行機乗りらしくなりました。ついでに上体を少し起こして、背もたれの角度にマッチさせておきます。

 最後に、自作の天文航法用フライト・コードラントを、後部射出座席の頂部に搭載。念入りに調整し、ボーデン湖の上を何度も飛んで、天測と計算を重ねましたが、今回はしばしば、経度に数十分(距離数十nm)の誤差が出ます。試しにクロックの日付を前日に合わせると、ほぼ10分角程度まで誤差が縮まるのですが…なぜそうなるのかは、分かりません。
 高度角から算出する緯度は従来通り、1分角未満の誤差に収まっていて、立派に実用レベルです。天文航法には色々な種類があります。これまでの「子午線高度緯度法」(南中時を測定)以外の方法を使うのでしたら、基本的には、高度角の測定結果さえ正確であればいいので、恐らく何とかなるでしょう。今後の旅路で、ゆっくり煮詰めるつもりです。

●視界とパワー:
 飛ばしてみて、まず気になったのは、パイロットの視点の低さです。
マイアルバムに紹介させて頂いた、デフォルトと改造後の、パネルの見え方比較をご覧下さい。デフォルトでは、滑走路が機首やパネルに隠れてしまいます。アプローチ中は機首を左右に振って、時々コースを確認する必要があり、大変操縦しにくく感じました。そこでAircraft/PC-9M/PC-9m-set.xmlを開き、<view n="0">(コクピット・ビュー)の項目にある、<y-offset-m archive="y"> 1.18</y-offset-m>の数値を、わずか12儿發ぁ1.30」に変更したところ効果絶大で、写真でご覧の通り、劇的に視野が開けました。

 ○エンジン出力について:
 次に、エンジンの出力を検討します。
FlightGearで長旅をする場合、もちろん巡航速度は高いほど楽です。これはリアリティーとの兼ね合いですが、私は出力を増して、ちょっぴり速度を上げてしまえ…という誘惑に勝つことが出来ません(^^;)。ただプログラム上のパワー設定は、必ずしも実際の出力数字ではなく、あれこれテストをした上で決まるわけですから、多少アレンジする余地はあろうと思います。
 実物のPC-9Mは、PC7後期型(Mark-供砲1.36倍の出力ですが、FlightGearのPC-9Mはデフォルト推力が2128(ポンド?)で、実はPC7のデフォルト2464よりも、逆に小さくなっています。なぜこれでいいのか、考えても結論は出ませんので、私のPC-9M改は暫定的に、推力の設定をPC7改と同じ3000にしています。しかしパワーを上げた分、必ず速度が上がるかといいますと、そうでもないのですね。上昇力は劇的に増え、昇降計を振り切っていますが、全速水平飛行のトリムが変化し、より大きな俯角が付いて抗力が増えたようで、10000ftの最高速度は、実機よりも少し低下してしまいました。ならば、デフォルトの出力に戻せばいいかといいますと…このあたりは、プロペラ軸のスラスト角調整とも関連していまして、そう簡単ではなく。まだ決定的な設定値を得ていません。

 ○燃費とタンク容積について:
 次は、長旅で気になる航続力を調整します。
PC-9Mはデフォルトのタンク容積が1000Lbs×2ですが、これでどのくらい飛べるのでしょう。幸いTatさんが作られたffe.nasは、v2.4.0環境でも(残飛行時間と距離は無理ですが)燃費を表示しますので、スイス東部で高度別のテスト飛行を行い、次のようなデータを得ました。文中のGS(対地速度)はGPS表示の数値ですが、試験当日は風向がコースとほぼ直角であり、風速も4Kt程度だったため、実用上はKTAS(Kt表記の真大気速度)と同じと考えてよさそうです。
 ・高度10000ft
全開時  282KIAS(GS320Kt)2.91nm/gal
開度90% 264KIAS(GS307Kt)3.082nm/gal
開度85% 254KIAS(GS295Kt)3.17nm/gal
 ・20000ft
全開時  241KIAS(GS323Kt)3.62nm/gal
開度90% 228KIAS(GS307Kt)3.42nm/gal
 ・30000ft
全開時  222KIAS(GS350Kt)3.92nm/gal。
 ・30000ftから35000ftへ上昇中
全開時  200KIASあまり(GS340Ktたらず)3.79nm/galくらい。
 ・35000ft
全開時  198KIAS(GS344Kt)3.85nm/gal。

 ラフな高度区分で、あまり当てになりませんが、ベスト燃費は一応30000ftの3.92nm/galです。これに燃料の搭載量(満タン303gal)を掛けると1187nm。離陸・上昇分の燃料消費量などが入っていないので、実際の航続力ではなく参考数字ですが、もうちょっと長い足が欲しいと思いました。
 PC-9Mの燃料計のフルスケールは、1400Lbs(×2槽)です。そこでプログラム上の設定を変更し、実際に搭載可能な燃料(デフォルトでは計2000Lbs)を、目盛り一杯の計2800Lbsまで増量しました。単純掛け算の参考数字では1663nmとなります。離陸・上昇分を考えると、実際のレンジは1500nmくらいでしょうか。PC7改の2500nm以上と比べれば短いですけれど、当面は大きな海を横断しないので、これでよしとします。実機のレンジは公称860nmなので、改造によって2倍近く伸びたことになります。

 余談ですが、今回のテストで35000ftを飛行中、AI(人工水平儀)が左へ約20度傾いてロックし、まったく動かないことに気付きました。降下に移ると、27000ftからピッチ方向のみ動くようになり、20000ftくらいですべての軸が正常化しました。まるで凍結したような感じで、初めての経験です。原因不明ですが、どうも20000ftを超えると、何度でも起きるようです。HUDは正常に働きますので、飛行自体は可能です。

●パネル及び計器のチューニング:
 これは色々と希望がありました。まずレーダーを追加したい。真方位と磁方位、真大気速度、スロットル開度をデジタル表示する特設パネルも、PC7改で作ったら便利だったので、欲しいと思いました。ところが本機は、PC7と違って3Dの計器類を使っており、組み込み方が分からないし、例えば従来のレーダーを3D版に作りかえる方法なども、さっぱり見当が付きません。正直これは想定外で困りました。
 幸いPC-9Mの計器類は、比較的充実しているので、ともかく使用法をきっちり確認しようと、それぞれの計器のxmlファイルを開いて、読める範囲で目を通しました。その結果、色々なことが分かりました。

 ○気速計にTAS指針を追加:
 例えば、気速計ですが。文字盤には、赤白だんだらの超過禁止速度マーク(280KIASに固定)のほかに、ツメのような形をしたインデックス・ポインタ(目印)が2組あります。一つは常に95KIASを指すようになっており、明らかにファイナル・アプローチ速度です。もう一つは、145KIASを指すように設定されているのですが、V1やVRにしては速すぎるし、使い道は謎でした。そのうち、この速度で上昇すると、上昇率が非常に大きいことが判明。たぶん、低空における最適上昇速度を示すマークだと思われます。
 また、あれこれいじっているうちに、internal propertiesの中に、前バージョンで見つからなかったTASの数値を発見しましたので、指示計器速度の指針を参考にして、真大気速度を示す針を追加しました。ますAC3Dで気速計のacファイルを開いて、「KTAS」と名付けた赤い針を書き加え、次にxmlファイルの中に、針を動かす角度などのアニメーションを記述。この針は、高々度では文字盤のフルスケール・300Ktを振り切るはずなので、零戦の気速計のように、盤面に「2周目」の補助目盛りを描き加え、最大で360KTASまで表示できるようにしました。うまく作動しますので、航法の基礎データとして重宝しそうです。

 ○コーションライトを改造する:
 ピラタスPC-6Mのパネル上部中央には、「FIRE」「Master-Alarm」「Master-Coution」の三つの警告灯があります。シミュレーション上は、Master-Alarmは失速警告、Master-Coutionは燃料警告灯として働くようになっており、FIREはクラッシュした時に点灯するようプログラムされています(役に立つのかなぁ)。
 このうち燃料警告灯は、デフォルトでは残量80gal×2で点灯する設定でした。まだ1時間半も巡航できる分量ですので、最初に点灯したときは、まさか燃料警告だとは思いませんでした。実用上は多分、高度10000ftで30分全開飛行できる量(概算で55gal)くらいの残量で、警告が出るのが適当だろうと思います。そのように設定変更して地上テストを行い、2槽ある燃料タンクが、いずれも27.5gal未満になったときに点灯することを確認しました。
 あとは…DMEの赤いデジタル表示が異様に暗くて、非常に見えにくかったので、鮮やかな黄色に変更。取りあえず計器改造は、この程度です。

●操縦性のチューニング:
 これらの作業を進めながら何日も、訓練を兼ねて盛んに短時間の飛行テストをしていたのですが、操縦性についても幾つか、重要な調整を行いました。

 ○プロペラ軸のスラスト調整:
 大きなところでは、最終進入時にパスを下へそれた場合、パワーを上げて降下率を抑えようとすると、強い機首下げが発生する傾向を修正しました。これはPC7でも顕著に出た癖で、低翼機のためプロペラ推力軸が重心や風圧中心より高いので、パワーオンで機首下げモーメントが、オフで機首上げモーメントが発生するものです。うっかり対処が遅れると、本当に逃げ場がない感じで高度を失い、恐ろしい大バウンド付きアンダーシュートを体験します。
 PC7改の場合は、プロペラ軸に3.5度のアップスラストを与えると解決しましたが、PC-9M改は4.5度アップでも、期待したほど強い効果は出ませんでした。また前述のエンジン推力増加テストを、この操縦性の調整と同時に進めていたのですが、ここまでアップスラストを大きく取ると、大幅なパワーアップをしても、ほとんど速度が増えないケースがあり、推進効率の低下を感じました。そこでアップスラストは3度に減らし、同時に推力軸の高さを半分以下にしたところ、パワーのオン・オフに対する反応は、一気に素直になりました。またわずかながら、最高速度が増加する傾向が見えました。
 また、本サイトで一時盛んに話題になった、ロール復元力も微調整しました。手放しではバンク角が増加する傾向があったところを修正し、しかし勝手に水平に戻るほどではなく、ほぼ同じ姿勢を保つようにセットしています。ついでに、どっかから借用してPC7改で使っていた、グラウンド・エフェクトの式とテーブルを移植し、不足を感じたエルロン舵角と、エレベーターのアップ側舵角を、調子が良かったPC7の値に合わせたりして、これでほぼ調整を終えたと思いました。

 ○ノーズギアの操舵角に問題が:
 私はある日、操縦性のテストをしながらスイス中部まで西進し、Bern-Belp空港に降りようとしました。
ここは首都ベルン郊外の小空港で、スイス空軍パイロットの初等訓練にも使われているそうです。着陸が易しいなら私も訓練に使おうかと、様子を見に立ち寄ったのですが、当日は機首の右100度から18Ktの風が吹いて、良いコンディションとは言えませんでした。とは言っても、この程度の横風には慣れていますので、かなりうまくウイングローで右脚から降りましたが、減速に掛かったところ、風上に強く振られて滑走路を逸脱。そのままグリーンの上で四輪ドリフト…じゃなかった、三輪ドリフトに入って、見事にグラウンド・ループしました。うーん、残念。そして、信じられません。
 この機体はどうも、かなり横風に弱いようです。ザンクトガレン=アルテンハイム空港に戻った際も、また減速時に風上側グラウンド・ループが発生しました。さらに、加速時には修正舵に修正舵が重なって蛇行することもあります。これは何としても改善しなくては。私はまずジョイスティックの再調整から取り掛かり、ラダー軸のデッドゾーンを増減して、最終的にはゼロに設定し、微少な角度の舵が使えるようにしました。これでもまだ、グラウンド・ループに入りやすいので、操舵プログラムを確認したところ、PC7では5度だったノーズギアの最大舵角が、なんと30度に拡大されていました。これはどう考えたって過大で、操舵への反応が過敏になります。私は8度に再調整し、その後ほとんど問題はありません。

 PC-9MのAircraft Helpには、「m ...Nose Wheel steering」という項目があります。mキーを押すと、確かにパネル左端に「NWS」という作動灯が点灯するのですが、操作の前後でノーズギアのステア特性が変わったとは思えず、また再度mを押してもトグルが効かず、作動灯が消えないので、現在は触らないようにしています。私の想像では、後先の考え無しに、小回りがきくようにノーズギアの最大舵角を増やしたところ、操縦性のバランスが崩れたのでしょう。そこで尾輪ロックの「L」キーをヒントに、舵角制限機能か何かを付けたのだと想像しますが、飛行機の前輪ステア装置は、もっとシンプルに設計すべきだと思います。小回りがしたければ、ブレーキを使えば済むことです。

 ○どうなってるのですか着陸灯:
 もう一つ、本機の不思議な機能を思い出しました。dキーで着陸灯をオンオフできますが、この灯火は周囲の明るさに従って、自動的に明度を変えるように出来ています。つまり、真っ昼間に点灯すると、滑走路上に明るい楕円を描きますが、日が落ちるに従って光量が減ってしまい、夜になると点灯しないのです。これってさすがにもう、笑うしかないです。改善を待ちましょう…(^^;)。

●Map機能について:
 いよいよv2.4.0で注目の機能、GPSとMapの操作練習に入ります。すでに皆さんも試されたことと思いますが、GPSはv2.0.0とほぼ同じ操作法ながら、バグフィックスが進んでいます。またMapは、カーナビやAtlas画面の模倣ではなく、FMS(Flight Management System=航法など、自動操縦全般を管理するコンピュータ)の地図画面、という位置づけですね。出来ればマニュアルが欲しいので、以下に米国版Wikiで見つけたMapの項目のうち「序論」と「使用法」のみ抽出し、拙訳をお届けします。

 以下の中で、CTRL+クリックを使ってMap上にマーカーを置くと、自機からの距離と方位が分かる…というのは新発見でした。私が以前ご紹介した、フリーウェア「斜めものさし」を使う「ABUNAI航法」と本質的には同じですが、地形データなどもMapに表示されるようになれば、なかなか便利だと思います。

==========これより訳文。
○1序論:
 マップ・ダイアログは、シミュレーター内部の航法データ、例えば空港や滑走路、航法援助無線などを、視覚的に表現し提供することを目指しています。いかなる地理的なデータ(原注:国境、海岸線、道路や川)も表示されませんが、基本的な国境線と海岸線は今後、追加でサポートされる可能性があります。マルチプレイヤーのトラフィックは表示することができますし、将来の航空路ではたぶん、障害物や他のオブジェクトが表示できるでしょう。マップ内のアイテムについては、航法援助無線の周波数や、ルート上の区間の距離や方位などのデータを表示することができます。
 航空機の情報、特に(原注:GPSに由来する)現在の航跡と方位も表示されます。マップは必要に応じて、航空機の機首方位を上にしたり、そのまま普通のナビゲーション表示にしたり、向きを変えることができます(原注:記号と配色は、ボーイングNDの画面表示に似せてあります)

○4使用法:
 メニューバーを参照(原注:F-10でトグル)し、Autopilotを開いて、Mapをアクティブにします。
 左マウスボタンで画面をドラッグすると地図がパンし、またマウスホイールでズームイン・アウトします。パンはカーソル(原注:矢印)キーでもパンすることができ、ズームは+/-キーでも可能です(hide注:実際は+は無効で、代わりに=が使えるようです)。CTRL+クリックでマーカーポイントを配置すると、航空機からこの地点へ空色の線が引かれ、距離と方位が表示されます(原注:航空機の動きにつれて更新されます)。
 VORに周波数を合わせると、航空機が無線局の利用可能範囲にいると仮定して、選択されたラジアルおよび、距離を示す円が空色に表示されます。ILSに同調すると、対応するローカライザが、通常の青の代わりに空色で表示されます。
==========ここまで訳文。

●GPSについて:
 次に、GPSとオートパイロットを使ってみます。
まだ詳細は分かりませんが、v2.4.0でGPSを使うには、v2.0.0と同様に「Route Manager」を起動し、出発地と目的地、各中継点を入力します。最低限、この入力の書式を覚えれば使えそうです。
 以下は、今回のジュネーブへのナビゲーション・ログです。◎(空港)や△(フィックス)の記号のあとに書いた「BANIN@3000」などの記述が、Route Managerの入力書式です。またカッコ内が意味です。
 

◎ザンクトガレン=アルテンハイム空港LSZR 磁気偏差=偏東1° 標高=1306ft
  ▼
BANIN@3000(ボーデン湖上のフィックス「BANIN」を3000ftで通過)
  ▼
△BANIN/300/10@4000(「BANIN」から真方位300度・距離10nm地点を高度4000ftで通過)
  ▼
LSZH@5000(ICAOコードでチューリヒ空港。5000ftで通過)同空港は偏差8.5°E 標高1416ft
  ▼
GRE@8000(グレンヒェン空港LSZGのVOR<注:IDで表記すること>を8000ftで通過)
      空港は偏差7.5°E 標高1411ft
  ▼
LSGN@8000(ヌーシャテル空港を高度8000ftで通過)
  ▼
◎6.37,46.46@6000(北緯46度46分、東経6度37分<イヴェルドン空港LSGY>を6000ftで通過)
         (注:書式は経度が先。緯度との間にカンマを入れる。秒単位まで入力可)
  ▼
ISW17@6000(レマン湖のフィックスISW17を6000ftで通過)
  ▼
GVA08@4000(レマン湖のフィックスGVA08を4000ftで通過)
  ▼
◎LSGG(ジュネーブのコワントラン空港)偏差ゼロ 標高1411ft
 RWY-23(226°)のILS=110.90

 GPSの初期テストは主に、ザンクトガレン=アルテンハイム空港からボーデン湖に出て、周辺を飛び回りながら行いました。スイスの標高の高さを忘れて高度設定を行い、湖面すれすれを低空飛行して焦りまくる場面もありましたが、その後はおおむね順調で、不安なくジュネーブに到着しました。しかし、まだ十分に確認できていない要素も多々あり、今後の旅で詰めたいと思います。

●ジュネーブに「ジェ・ドー」(大噴水)が出現:
 FlightGearシーナリーのジュネーブに最近、観光名物の大噴水(約140m)がようやく出現しました。日本で言えば、東京タワーの登場に匹敵する慶事かも(^^;)。実物の噴水は非常に高いので、水がノズルから延々と上昇する途中で、空気抵抗によって脈動が発生するのか、数秒おきに頂部がどーんと高くなり、直後には崩れて低くなって、やや不規則に全高が変動します。またカーテン状に広がって湖面に落ちる膨大な水も、刻々と濃淡の変化を見せます。FlightGearの噴水も、ごく単純なパーティクルを巧みに使って、このあたりの表情を結構それらしく演出しています。
 実物の噴水は、レマン湖にある防波堤の一角から吹き出していますが、FlightGearのオブジェクトは、手違いでビル街の中から吹き上げており、ちょっとがっかりします。調べてみますと、噴水オブジェクトの緯度経度は非常に正確なのですが、湖面と市街地テクスチャーの位置が間違っており、ずれて見えることが分かりました。今回、マイアルバムでお目に掛けるジュネーブの噴水は、私が勝手に湖面へ移したものです。このほうがリアルに見えますけれども、もしかするとオブジェクトの作者さんは、シーナリーの不正確さに対する無言の抗議を込めて、自分からは位置修正をしない…事実を曲げない…道を選ばれたのかも知れません。もしそうでしたら、申し訳ない気がしています。
 あれこれを思いつつ、空模様に秋の足音がする仮想のスイスで、仮想飛行の旅を続けます。
投票数:131 平均点:5.34
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2011-9-14 13:41 | 最終変更
toshi  長老   投稿数: 1077
Hideさん、こんにちは。
toshiです。

PC-9Mについては、公式サイトのAircraft downloadページにあるPC-9M_20110307.zip よりも新しいファイルが作者のページにあったので、ダウンロードして使ってみました。

Pilatus PC-9M - pjedvaj FlightGear
http://sites.google.com/site/pjedvajflightgear/pilatus-pc-9m

地面を照らすライトがなくなり、キャノピーの見た目が変わるなど、いくつかの修正が加わっていました。
修正点は、Jul 10付けとSep 10付けの以下の記事にも簡単に書かれていました。

http://www.flightgear.org/forums/viewtopic.php?f=4&t=10341&p=136185

新しいファイルでも、NWS (mキー)は機体の動特性になんら影響しませんでした。
本機体のFDMであるJSBSimに関わるファイル Aircraft\PC-9M\Systems\nws.xml の中で、NWSがオフの時は前輪の角度が5%になるように設定している部分があるのですが、うまく機能していないようです。
また気が向いたらもう少し詳しく調べてみるかもしれません。

以上、ご参考まで。
投票数:125 平均点:5.28
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-9-15 2:44 | 最終変更
Tat  長老   投稿数: 375
hide さん
いつも楽しい記事をありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。

さて、ffe.nas ですが、ちょっと古くなって来ていますので、
パフォーマンスモニターを利用してください。
最新版は ここ を参照してください。
投票数:124 平均点:5.08
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-9-18 21:26 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
toshiさん、Tatさん、hideです。
 貴重な情報を、どうもありがとうございます(^^)/。ご返事が送れて済みません。

 まずPC-9Mの新バージョンですけれども、さっそくダウンロードして、あれこれテストしました。
第一印象は、
・エンジン始動時に、黒っぽい排気を吹き出すようになった。
・キャノピーの表面に、反射の描写が加わった。
・操縦性が素直になっている。
…といったあたりが、特に印象的でした。
始動時の黒い排気は、コクピット・ビューですと、操縦席内部にも充満して見えるので、臭いが立ちこめているような気分になり、思わずキャノピーを開けたりしていますが(笑)、そのうち慣れるでしょう。
 キャノピー表面の反射は、正直言って強すぎると感じました。最初の試乗の時、私はたまたま日没前に離陸したのですが、ぐるりと回って滑走路に向かう際、山のかなたに日が傾いて、地表は陰になっていました。私は後席で操縦していましたが、こちらはキャノピーに貼られた白い反射模様が、前席よりもさらに派手なため、ほとんど地形をかき消してしまい、近くにあるはずの尾根の位置が分からなくなって、大変不安を感じました。
 結局、PC-9M/Shaders/Glass.png(反射模様)をPhotoshopで開き、コントラストを-80、明るさを-30に減らしたところ、「そういえば、かすかに反射があるな」という程度に目立たなくなって、快適になりました。

 操縦性はよくバランスが取れていて、私があれこれいじって仕上げたモデルより、正直マシですので、とうとう自作計器や改造計器、塗装データなどを持って、こっちの新型モデルに乗り換えてしまいました。調整が難航していたエンジンのパワーは、デフォルトの15%増(PC7改の約3割減)にとどめる一方、機体重量を15%だけ軽くしてみたところ、操縦性に変な癖を付け加えることなしに、速度と上昇力を一回りだけ増やすことができました。(突然こんな軽量化は困難ですから、いささかルール違反気味ではありますが。まぁピラタス社が試験的に、どっさり新素材を使って改造してくれた…といった想定で)

 これらの試験飛行や調整には、Tatさんのパフォーマンスモニターが、さっそく大活躍しております。こういうすごいツールがあるとは、知りませんでした。先日、ピラタスPC-9Mのパワーを増したところ、昇降計を振り切りっ放しだったので、フルスケールが2倍に使える、感度1/2の補助指針を追加しました。これは便利ですが、アナログなので数値読み取りにやや問題があったところ、パフォーマンスモニターにデジタル昇降計が設けられていて、大変便利になりました。残燃料による航続距離に、対気距離と対地距離の両方があるあたりも、非常に実戦的だと感心しました。また離陸/着陸距離の表示機能は面白いですね。ピラタスPC-9M改の場合、なぜか着陸後にオートブレーキが効かないのですが、virtflyさんのJunkers EF-128 では、問題なく機能しました。まだ使いこなせていませんが、重ねてお礼申し上げます。
投票数:121 平均点:5.29
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-10-3 12:59 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 今回は、toshiさんにご紹介いただいた、新しいピラタスPC-9Mベースの改造機に、幾つか計器類の改良を加えてから、旅の空に戻ります。
 ジュネーブを出発して、スイス・アルプスのメインストリートを駆け足で楽しみ、プラハを経由してベルリンに進出するコースです。途中、v2.4.0の新しいGPSの機能に付きましても、やや詳しく触れます。

●人工水平儀と昇降計を改良:
 では、計器改造のお話から始めましょう。
 ここ数週間、スイス領内でPC-9M改のテストを重ねましたが、前回ちょっと触れましたように、この機体はなぜか20000ftを越えますと、AI(Attitude Indicator=姿勢計/人工水平儀)のロール表示が不正確になり、35000ftではピッチ/ロールともロックしてしまいます。PC-9M/Models/Instruments/AI/AI.xmlファイルを開いても、特に高度関係の記述はなく、原因不明です。これをまず、何とかしたいと思いました。
 「プログラム上は傾くはずがないのに、計器が傾斜する」という経験は、実は以前にもあります。天測用のフライト・コードラントを開発中、本来はジンバルに乗った状態で水平を保つはずの方位リングが、数度傾斜したままになって、困ったことがあります。このリングには当時、6分角単位で3600本の目盛りを立体オブジェクトとして組み込んでいましたが、あれこれ調べたところ、モデリングソフトの操作を誤って、多数のパーツを同一のグループ名で、何重にも階層状にグループ化していたことが分かりました。そのため、無用の再計算が何度も行われ、演算の端数が積み重なって、一定の誤差を生んだものと想像しています。グループをすべて解いて、1回の操作で全部品を一つのグループにしたところ、あっさり解決しました。

 …この記憶があるので、立体オブジェクトに何か問題があるのかと疑って、人工水平儀の球体を、ちゃんと作動していた旧型PC-9Mのものと交換してみました。しかし残念ながら、この方法では効果がなく。結局のところ、現行OV-10ブロンコの人工水平儀を移植して使うことにしました。
 これは完璧に動作しますが、一点だけ問題がありました。PC-9Mでは、ILSのグライドパス指針が水平儀に付いており、ブロンコ用に取り替えると、針が無くなってしまうのです。しかし、進入時に後席の計器盤を使えばクリアできます。後席は視界がやや悪く、滑走路が隠れますけれども、Foggle(IFR訓練用の一部目隠しゴーグル)を掛けたみたいに、計器進入の練習に集中できる面もあり、これはこれで新鮮な気分です。接地時は手探り同然で少々不安ですが、再び前席へビューを切り替えれば済むお話です。
 この応用として、後席のビューは計器盤をアップ気味にしておき、ワイドレンズ気味の前席と切り替えて使う、という手も時々試しています。ズーム調節の手間が省けて便利です。将来は「前席は主にVFR、後席はIFRと航法中心」といった風に、用途も装備も使い分けることになるかも知れません。

 次は昇降計の改良です。
私のピラタスPC-9M改は、その後もパワーや操縦性の調整を重ね、現在のエンジン出力は、デフォルトの3割増しで落ち着いています。上昇力はかなり強く、低空でしたら6000ft/min以上を維持できます。昇降計のフルスケール(4000ft/min=実機の上昇力と同じ)を振り切ってしまいますので、感度1/2の指針を新設し、盤面の目盛りに2倍の補助数字を書き加えて、毎分8000ftまで読めるようにしました。
 改造内容は、計器の3Dオブジェクトに、太さゼロの直線を1本描き加えて「VSI.needle2」とオブジェクト名を付けることと、PC-9M/Models/Instruments/VSI/SI.xmlを開き、本来のVSI.needleを動かすための記述をそっくりコピペして、作動角度の数値を半分に書き換えるだけです。「太さゼロの針にする」というのは、少し前に発見したコツで、ズームで拡大してもワイドに引いても、画面上は常に太さ1ピクセルに表示され、高い精度で読み取り可能です。赤い発光色にしておくと、細くても非常に鮮やかに見えます。

●新しいGPSとRoute Managerについて:
 前回も少しお話ししましたが、v2.4.0のGPS機能は、v2.0.0から仕様の多くを受け継いでいます。そのためか本家Wikiには、前バージョンの説明文しか見あたりません。が、実際は以下のように使い勝手が変化しています。まず、大幅に改良された点を挙げます。

(1)Route Managerのバグフィックスが進み、異常終了しなくなった。
(2)コース入力手順が少し変わり、機能が増えた。Route Managerの基本操作は次の通り。
    (■注■:以下◎印は、新しい機能を含む操作手順)
   ・起動時に選択した空港が、「Departure」欄に表示されていることを確認。「Arrival」
    欄に目的地の空港を入力して、リターンキーを押す。
   ・「Waypoint」欄に次々と中継地(以下Waypoint)を入力し、そのつど「Add」ボタンを
    押す。この作業を繰り返して、Waypointのリストを作る。FlightGearではこのリストを
    「flight-plan」と呼んでいる。(実際はnavigation log=航法計画書かも)。
   ◎Waypointは、自動的に選択することもできる。目的地をクリックして「Route」ボタン
    を押すと、リスト上に数カ所から数十カ所のVORや空港、フィックスなどが、中継地と
    して表示される。また飛行コースが、ピンクの折れ線となってMap画面に現れる。
   ・flight-planが出来上がったら、「Activate」(アクティブ化)ボタンを押す。すると
    GPSは、デフォルトの「OBS」モードから、長距離飛行に適した「LEG」モード(リスト
    に並んだ中継点を、順次示す状態)に切り替わる。
    (参考:GPSには、計3種類の作動モードがある。詳しくは英文Wikiを参照。2010年3月
    26日付の本連載「その2」に拙訳あり)
   ◎任意のWaypointを、クリックで選択し「jump to」ボタンを押すと、そこが次の中継地
    になる。途中のWaypointは無視される。プルダウンメニューの「Previous Waypoint」
    と「Next Waypoint」を使っても同じ。
    また従来のGPSは、飛ぶにつれて中継地がリスト上から消えたが、v2.4.0では飛行後も
    リスト全体がそのまま残る。
   ◎flight-planは「Save...」ボタンで保存できる。ファイル名は、ローマ字なら何でも
    OKらしい。拡張子はxmlでもnavでもいいし、付けなくても読み取り可。
   ◎保存したflight-planは、エディタで自由に再編集できる。Route Manager上で再編集
    する場合は、リスト上で修正の必要なWaypointを選択し、「Remove」で1地点を丸ごと
    消して、再入力する必要がある。
(3)オートパイロットの使い方が変わった。
    コース(或いは目的地)を入力してアクティブ化すると、オートパイロット・ウィンド
    ウの針路保持(Heading Control)機能に、新たに「GPS/FMS Heading」という選択肢が
    独立して現れるようになった。このため、GPSの動作中(目的地への針路を表示中)でも
    任意の針路保持モードが使用可能になり、航法の自由度が大幅に増えた。
    例えば「GPSで飛行中、眼下の街を見物したくなった。ウィングレベラーやOBSを使って
    自由に飛び回り、終わったら所期のコースに戻る」といった飛行が可能になった。

以下は反対に、不便になった部分です。
(4)デフォルトでは、Route Managerの「Departure」に起動空港が選択されているが、
   HUD上に空港コードが表示されなくなった。また飛行中も、目的地や中継地の名称が
   画面に出ない。HUDには常に「OBS:U**」と表示されるが、意味不明。
(5)テスト版「v20110530」から、HUD画面に矢印マークが現れて、アクティブWaypointの
   方角を指していた。便利だったが、v2.4.0では常に起動空港の方角だけを指し、あまり
   役に立たなくなった。
(6)これによく似た機能として、従来はGPS Settings画面の下部にある、「NAV1 Slave」に
   チェックマークを入れると、HSIのCDI指針が、常にGPSコースの方位とクロス・トラック
   エラー(横方向への逸脱度)を表示し、便利だった。しかしv2.4.0では、NAV1 Slaveが
   OBSモードのみで有効になるらしい。使用頻度の高い「LEG」モードでは使えなくなった。

●HSIに、GPS指針を追加する:
 以上に見るように、GPSの機能は強化されましたが、不便になった点もあります。特に飛行中、目的地や中継地の方位がデジタル数字のみで示され、計器の針で表示されなくなったのは、GPSをメインに航行する場合かなり不便です。そこでHSIを改造し、Waypointの方角を常時指す針を追加しました。
 この機能は、何年も前から欲しかったのですが、作り方が分かりませんでした。今回は、昇降計の追加針と同様に、幅ゼロピクセルの赤い「GPSneedle」を作り、次にPC-9M/Models/Instruments/HSI/A-10-HSI.xmlに、次のような一文を追加しました。(CDI指針を動かす記述を基にしています)
<!-- GPSneedle -->
<animation>
<type>rotate</type>
<object-name>GPSneedle</object-name>
<property>orientation/heading-magnetic-deg</property> ■1
<axis>
<x>1.0</x>
<y>0</y>
<z>0.0</z>
</axis>
</animation>

<animation>
<type>rotate</type>
<object-name>GPSneedle</object-name>
<property>instrumentation/gps/wp/wp[1]/bearing-mag-deg</property>■2
<axis>
<x>-1.0</x>
<y>0</y>
<z>0.0</z>
</axis>
</animation>

 まず■1の記述で、針を機首方位(磁気方位)に向け、続いて■2の記述で、Waypointへの方位角だけ逆向きに回転させています。この「逆向き」というのがミソで、「機首方位-Waypoint方位」という引き算を、回転式の計算尺のように、アナログな動作で実行しているわけですね。このテクニックは、遅まきながら今回初めて理解して、おおいに感心しました。
 この針は最初RMIに取り付けたのですが、HSIのほうが方位目盛りが細かく、またコクピットビューの真正面にあるため、ずっと読み取り精度が高いことが分かり、作り直しました。その後、Waypointへの距離表示も欲しくなり、HSIの左上に組み込まれたDMEのドラム式数字表示器を利用して、アクティブWaypointへの距離を示すようにしました。パネルには独立したDME表示器がありますので、VOR使用時も問題はありません。

 これで、欲しかった道具がすべて手に入りました。ないのはレーダー・スコープくらいですが、Map(事実上のFMS)画面が兼用しており、ターゲットへの方位と距離を測る機能までありますので、特にスコープを新設する必要はありません。では旅を再開することにします。

●アルプスを駆ける:
 以下に今回の、コース全体をご紹介します。
◎ジュネーブ コアントラン空港LSGG
  ▼86°71nm
  (実際は直航せず、レマン湖沿いにローヌ渓谷へ)
◎ラーロン空港LSTA(アルプス銀座・ローヌ渓谷の小空港。東6nmにブリーグ 46.19N-8.0E)
  ▼197°21nm
◎ツェルマット45.58N-7.40E(すぐ南南西にマッターホルン)
  ▼17°21nm
◎ラーロン空港LSTA
  ▼83°8nm
◎ブリーグ 46.19N-8.0E(ここから、北のアレッチ氷河へ)
  ▼0°14nm
◎メンヒ山頂 46.33.30N-7.59.51E(北北東にアイガー、南西にユングフラウ)
  ▼322°10nm
◎インターラーケン 46.41N-7.51E
  ▼52°29nm
◎ブオクス・シュタンス空港LSZC(ピラタス本社)
  ▼57°57nm
◎ザンクトガレン・アルテンハイム空港LSZR(ピラタス支社)
  ▼59°104nm
◎ミュンヘン フランツ・ヨゼフ・シュトラウス空港EDDM
  ▼42°143nm
◎プラハ ルジニェ空港LKPR
  ▼348°146nm
◎ベルリン テンペルホーフ空港EDDI

 アルプスは、ご存じのように、フランス東部からオーストリアへ、約1200キロ延びる大山脈群です。このうちスイス・アルプスは、おおむねスイスの国土の南半分を占めています。中心軸に当たるのが、ほぼ東西に走るローヌ川の巨大渓谷です。
 今回のフライトでは、スイス西端のジュネーブからローヌ渓谷に入り、渓谷の中央付近にある街・ブリークまで進みます。ここを起点に、渓谷の南方と北方の山脈群にそれぞれ分け入り、幾つかの名峰を間近に眺めることにしましょう。

 ジュネーブのコワントロン空港で、0700時(現地9時)に起動。雲量は6900ftにscatterd、25度の風1Ktという素晴らしい天気です。燃料の搭載量は、満タンの約3分の1に当たる509.1Lbs(77.1gal)×2としまして、上記のコースを入力し、エンジンを始動。西へ向かって離陸し、上昇しながら東へ反転します。
 ジュネーブから、「アルプス銀座」(?)のローヌ渓谷へ向かうには、大ざっぱに二つのルートがあります。一つは、市街地からよく見える最高峰・モンブランを目指すコース。もう一つは、ローヌ川の氷河が彫ったレマン湖に沿って東進するコースで、今回はこっちを選びます。
 余談になりますが…ヨーロッパ観光の主役が中国人でも日本人でもなく、まだアメリカ人であった1960年代、ジュネーブに降り立った彼らは、誰もがせっかちに「モンブランは、どれだ?」と訊ねたそうです。しかしモンブランは直線でも100キロ先で、見えるのは快晴の日だけ。そこでジュネーブの人たちは、しばしば手前の低い山を「あれがモンブラン…」と指さしたそうです。この山を大昔、アメリカモンブランと呼ぶのだと教わったのですが、実際はどの山だったのか、数十年ぶりに調べてみると、約半分の距離にあるフランス領オート・サヴォア県の「ル・モール」山(1863m)だと判明しました。前回、マイアルバムの画像でご紹介しましたが、説明が抜けていたので、唐突ながら触れておく次第です…(^^;)。

●霊峰マッターホルン:
 レマン湖は、ヨーロッパで3番目の規模を持つ淡水湖。その東端から南へ向け、たおやかなU字断面を持つローヌ渓谷に入った途端、幸運にも大快晴になりました。GPSをサブに使っていますが、山を見分けるには地文航法を行う必要があるので、無数に並ぶ峰々のトップ近くまで上昇し、Atlas画面(機体連動なし)を地図代わりに開いて、うきうき気分で現在地を確認します。
 とにかく周囲は、絶景です。以前は視界を100nmにしていたため、アルプス山中は重すぎて、FlightGearがシーナリーを読むたびに2、3分停止しましたが、50nmに落とした現在は快調です。それにしてもv2.4.0は、非常に安定が良くなりました。以前なら、とっくに異常終了していたでしょう。大感謝しております。
 やがてイタリアに通じる、シンプロン峠越え道路の起点・ブリーグの街を発見。かつて世界一周フライトの途中に、2007年11月8日付の本連載で、ペルー人飛行家ジョルジュ・シャヴェーズが1910年にブレリオ機で行った、初のアルプス横断を再現しましたが、あの出発点の街です。今回は2nm西で別の谷筋に入り、20nmほど南下してツェルマット上空へ。ご存じ名峰マッターホルンの登山基地です。

 前回飛んだ時もそうでしたが、あの山は意外に、FlightGearのシーナリー上では見つけにくいです。絵はがきで有名な、尖ったピラミッド状の姿は、かなり限られた角度からの風景なのですね。あのアングルですと、右手前に見える鋭い尾根は垂直に近く見え、高度な人工登はん具を使わない限り、絶対に登れないだろうと感じられます。が、真横に当たる西側の氷河から眺めると、実はこの尾根はゆったりと、相当なだらかに伸びています。アルプス登山の先駆者の一人、エドワード・ウィンパーは若き日にこの発見をして、1856年に度重なる挑戦のすえ初登頂に成功。しかし下山時に、7人中4人が滑落死する悲劇に見舞われました。
 フライトシミュレーター上で山探しをする場合、あらかじめ接近ルートを決めておき、目的の山がどう見えるのか、確かめておくのがベターです。この日もそうしたのですが、かなりウロウロしたあげく、やっと緯度経度を基に、マッターホルンの山頂を確認しました。

●大氷河を遡航して:
 山頂上空で記念写真を撮影後、機首を巡らして再びローヌ渓谷へ。今度は谷の北方に広がる、ベルナー・オーバーラント(首都ベルンに近い、スイス中央高地)へ向かいます。ブリーグから、北側の山腹を東へ巻いてゆく谷筋に入ると、間もなく谷底は氷のテクスチャーに覆われます。ヨーロッパでは最大規模という、アレッチ氷河の最下部に取り付きました。
 白っぽいテクスチャーは、フラットな谷底のみに貼り付けてあって、なかなかうまく氷河の実感が出ています。かなりわくわくしながら、緩やかな左旋回で遡上を続けますと、やがて機体は「ベルナー・アルプスの屋上」…と呼びたいような、多くの山頂に囲まれた、広くて平らな鞍部に出ました。北端に並ぶアイガー、メンヒ、ユングフラウの3名山が、アレッチ氷河の源流です。ここまで快晴ですと、実世界なら、少なからぬ登山客の姿が見えたかも。アイガーとメンヒ山頂の間の稜線をすれすれに飛び抜けると、いきなり下界が開けて湖が見え、北方はるかに平野が広がりました。二つの湖…トゥーン湖とブリエンツ湖の間に見える、山岳観光の中心地・インターラーケンの上空を通過。さらに東へ二つの湖をたどり、ピラタスの本社があるブオスク・シュタンス空港を目指します。
 マッターホルンで迷いすぎたのか、ここで燃料警告灯が点いたので、ブオスク空港に臨時着陸。このあとデューベンドルフ空港LSMDに立ち寄って、タッチアンドゴーをしました。ここは来年に世界一周飛行を計画している、ローザンヌ大学で開発中の太陽電池飛行機「ソーラー・インパクト」が、最初のテスト飛行を行ったところです。
 離陸から約2時間後、ミュンヘンに到着。さんざん山国を飛んだ後ですので、ドイツ国内が平らなのに驚きました。ミュンヘンもなかなか立派に作り込まれた空港です。日を改めて、プラハ経由でベルリンへ。

●テンペルホーフ空港、いまだ開業中:
 ミュンヘンで0830時(現地10時半)に起動。205度3.6Ktの微風、快晴の中を0838時に離陸しました。
30秒足らずでGPSの空港座標に達し、HSIに新しく設けた赤いGPSターゲット指針が、くるりと回転してプラハを指しました。間もなく高度10000ftでGPS方位、250KIAS(287KTAS)にセット。快適なフライトが始まりました。世界は相変わらず平らで、耕地と原野が半々というところ。強いて言えば、チェコ領が近づいてからは、空港の数が非常に減りました。西ヨーロッパにはウジャウジャあったABNが、視界50nm以内にはほとんど見あたらないのです。やがて地平線に、巨大な湖のようなものが見えたので、思い切り望遠ビューで眺めると大都会。プラハでした。
 0910時、空港真上でGPSの目標が、ベルリンに切り替わります。オートパイロットを外して、市街地へ旋回。川が屈曲してきらりと光り、中州が二つ…ヴルタヴァ川。ドイツ語ではモルダウですね。私は昔から、スメタナの交響詩「我が祖国」(モルダウは、有名な第二楽章)が大好きですので、けっこう感激しました。

 眼下は都市テクスチャーが広がりますが、現物は赤茶色の屋根瓦に覆われた、旧市街地が美しいはずで、塔がたくさんあるのだとか。その塔の一つから1577年、ある男が巨大彗星(のちのハレー彗星)を観測し、彗星という現象が「月よりも遠くで起きている」ことを確認。天動説を覆す材料の一つとなりました。この男…ティコ・ブラーエの最後の望みは、「歴史に名前を残したい」だったそうですが、彼の名前は現在、月面最大のクレーターに残されています。
 市街地を旋回し、何度もモルダウ川を撮影。北に機首を向け、ベルリンのGPS方位に合わせます。30000ftを目指して緩上昇。0930時ごろ、左前方の平野に、かなり大きな都市が見えました。Mapによるとドレスデン。大戦中の空襲被害の大きさは歴史的で、死者は2万5000人とも10万人とも言われますが、FlightGearのドレスデンには、なぜか10カ所以上も教会があり、煙突もやたらに立っていたのが印象的でした。

 前方にベルリンの都市圏が広がり、間もなく3空港が視界に入りました。私の好きなテンペルホーフは、3年前に廃港になったのですが、FlightGearの世界では、ABNを2基も回して、いまだに堂々と営業中であります。ここも世界一周の時に訪問して以来ですが、しばらく見ない間に、ますます細部まで作り込まれ、機体や車両もたっぷり並んで、すごい空港になっています…うれしいなぁ。名物の大屋根の下へタキシングし、スイス・インターナショナル・エアラインズやKLM機のそばで、そっとエンジンを停止しました。久しぶりに距離を稼ぎましたが、やはり旅は、楽しいものですね。
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なし 二つの秘密基地

msg# 1.2.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-10-11 6:20
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 前回到着したベルリンから日帰り圏内に、とても興味深い空港が二つあることが分かりましたので、この機会に見物することにしました。レヒリンとペーネミュンデです。

 前者は第三帝国空軍の旧テストセンター、後者はよく知られるように、若き日のウェルナー・フォン・ブラウンが、V2号及び原型機のA4ロケットを開発・試射した場所です。ただ訪れるだけでは面白くないので、ゲテモノ機…じゃなかった、常識にとらわれない設計で知られる、ブローム・ウント・フォス社の試作機2種を飛ばして、コクピットからの視界などを調べてみることにしました。

●「KG200」の基地へ:
 コースは次の通りです。
◎ベルリン テンペルホーフ空港EDDI
   ▼335度55nm
◎RECHLIN LARZ空港EDAX
   ▼35度63nm
◎PEENEMUNDE飛行場EDCP
   ▼188度102nm
◎ベルリン テンペルホーフ空港EDDI

 テンペルホーフでピラタスPC-9M改を起動し、GPSのRoute Managerに上記のコースを入力。打ち終わったら名前を付けて、すぐセーブしておきます。今回は、レヒリンとペーネミュンデでそれぞれ再起動して、別の機体に試乗しますが、終わって移動する際はそのつど、このflight-planファイルをロードすれば、いちいち目的地を入力せずに済みます。今回はたった2地点を経由するだけですが、寄港地の多い長距離フライトの場合は、非常に便利だと思われます。

 この日ベルリンの天候は、高度1100ftに雲量few、305度の風12Ktと、まずまずでした。ピラタスPC-9M改を起動し、燃料はデフォルトに設定している約1000Lbs(477Lbs×タンク2基)のまま、0711時(ローカル0911時)ごろエンジンを始動。機体は12秒の滑走で離陸し、2分半で10000ftに達しました。この高度で全開巡航すると、速度は272KIAS(310KTAS)くらい(おっと、本来は250Kt制限の高度ですね)。燃費は2.816nm/galで、あと430nm飛べる燃料を持っています。GPSモードで針路保持をして、ひたすら広い平野を眺めていると、15分あまりで前方に大きな湖が見えてきました。間もなく、HSIに新設したGPS指針がグルリと回転し、もうレヒリンの上空に着いたみたいです。
 オートパイロットを全部切り、右に90度バンクして真下を見ると、滑走路とABN(飛行場灯台)が確認できました。コンパスと滑走路を見比べ、今日の天候を思い出しながら風下へ。PC-9Mにはスピードブレーキが付いていますから、これを開いてハーフロールを打ち、スプリットSに近い機動で急降下に入れ、どんどん高度を下げて行きます。
 ファイナル・アプローチに入ってから、誤って誘導路を狙って降下していることが分かり、すぐに目標を滑走路に切り替えて、ふんわり着陸。この飛行場にはPAPIがないので、ミスに気付きにくかったようです。0738時、誘導路脇の草地に止めて、エンジンをオフ。残燃料は353Lbs(53.5gal)×2。低地の広い平原に位置して、そばに湖があることといい、日本で言えば旧海軍の土浦航空隊が、或いはこんな感じなのでしょうか。確かに障害物はなく、訓練とかテスト飛行向きの場所です。

 私は、ナチスドイツ空軍のお話には疎いのですが、Wikipediaなど複数のサイトによりますと、ここには大戦中、KG200(第200爆撃航空団)という部隊がいて、新型機のテストや長距離偵察、スパイを運んでパラシュート降下させるなどの特殊任務を行い、捕獲した連合軍機も活用していたそうです。そう言えば20年あまり前、イギリス(?)で書かれた「KG200」という小説を読みましたが、これにも捕獲したB-17でスパイを運んだり、連合軍の編隊に紛れ込もうとする話が出てきました。著名な女性グライダー飛行家にしてテストパイロット、ハンナ・ライチェ(ライチュの表記もあり)の伝記には、彼女が創設に尽力し、志願して参加したライヒェンベルグ(V-1号に操縦席を付けた特攻兵器)部隊のことが書かれていますが、これもKG200の傘下だったことを今回初めて知りました。なかなか大きな組織だったのですね。
 蛇足ながら…彼女の自伝によると、この有人V-1号は、イギリスの港湾施設への体当たり攻撃を目指した兵器だったそうですが、戦局の悪化で時機を失したとして、作戦は取りやめになりました。日本は逆に、敗色濃厚になると特攻一色に走ったのと比べ、冷静な判断だったような気もします。ドイツも負けてくると、木製の「国民戦闘機」を急造し、グライダーしか操縦したことのないヒットラー・ユーゲントを乗せて、B-17の大編隊に突撃させるという、かなり無茶な計画を立てましたが、あの手の機体にも結構、防弾ガラスや脱出装置が付いていたりするのには、脱帽です。
 こうした装備が、実線で本当に役立つかどうかはともかく、搭乗者を人間扱いしようとする姿勢を感じます。それを意気に感じて「よし。俺はあす、命を捨てよう!」と覚悟を固めるか、それとも逆に国家から「死んで来い」と白鞘の短刀を渡されて、腹をくくるか。かつての日独の文化の違い、と言えばそれまでですが。私はどんなに無謀な作戦でも、「任務達成イコール生還」という図式を守ることが、人間の本能に照らして自然であり、従って用兵者の最低のマナーだと思います。

●非対称形の偵察機:
 今回はこの飛行場で、左右非対称の飛行機として有名な、BV-141試作偵察機に試乗します。「双発機並みの、広い視界と射界を持つ単発機」というコンセプトを追求したら、こんな形になった…のだそうですね。ドイツは航空エンジンの生産数で、アメリカに全く太刀打ちできませんでしたから、「2台のところを1台で」という気持ちは、よく分かります。さて性能と乗り心地は?
 まず、スペックを見ましょう。量産型(1937年完成)は1560馬力で3人乗り、全長約14m、全幅約17.5m、自重4.7トン、最高速度438km/h(高度3500m)、航続距離1200キロ。一応武装はあり、50キロ爆弾を4発積んだそうです。前方機銃2挺、旋回機銃2挺を持っていますが、口径は7.92mmですから、とても戦闘機を追い払うような腕力はありません。頼みの最高速度も、同じ時期に開発された「神風」号(九七式司令部偵察機)は500km/hで、大戦初期にサン=テグジュペリが搭乗したブロック174偵察機も530km/h出ますから、本機の438km/hは、かなり見劣りがします。偵察専門の機体にしては中途半端な性能で、爆装できるところをみると、むしろ直接協働機にするつもりだったのでしょうか。

 さて試乗です。パーキングブレーキが外れていて、エンジンを掛けると動き出したため、慌ててブレーキを掛けたところ、一気にノーズオーバー(逆立ち)してしまいました。ううむ、恥ずかしいです。
 再度挑戦してフラップ1段、60Ktくらいでふんわり離陸。順調に高度を上げましたが、まもなく左に傾斜する癖に気付きました。胴体が重いのか、左側にしかない水平尾翼が発生する、ダウンフォースのせいでしょうか。「やっぱりキミは、まっすぐ飛ばないのだね」と呟きながら、エルロンのトリムを調節したところ、案外簡単に修正できました。ロール安定は、FlightGearの機体としては平均で、つまり「ずっと放置すれば、だんだん傾く」という感じです。
 わざわざ機体を非対称にしてまで、手に入れたかった視界は、どんなものかと言いますと。操縦席からは確かに、前方や右側が非常によく見えます。左にはナセルと胴体がありますので、ほぼ目の高さから上しか見えず、けっこう不便です。また風防の棧というか、窓枠が太いものですから、かなり邪魔です。後席から振り向いてみると、後方視界も似たような傾向で、確かに大きく開けていて、偵察機としては便利でしょうが、窓枠が相当気になります。この機体で偵察任務に出撃すると、機体左側から近づく敵機を見張るためには、ひんぱんに大きなバンクを行って、胴体の陰を確認する必要がありそうです。

 最高速度は、実測でせいぜい200Ktくらい(高度20000ft)。上昇力はけっこうあり、急旋回も出来ますが、宙返りとか縦の運動も試そうと思ったところ、離陸後数分にして、スロットルが閉じたまま、まったく開かなくなってしまいました。FlightGearでは初めての体験です。ジョイスティックは生きているし、キーボードでもスロットルは動かないし…どうしようもありません。滑走路の延長線上でぐるぐる旋回降下し、タイミングをみてファイナルアプローチに入り、フラップを出し入れしながら降りて行きました。途中、もう少し間を取ろうと旋回したら、50Ktまで落ちてしまって半分失速。しかし失速特性が良く、急にコントロールを失ったり落下したりせずに、半分舵が効いていまして、そのまま滑走路のすぐ脇に降りて無事でした。癖はありますが、そんなに悪い飛行機ではありません。
 降りたらペラが止まり、すでにエンストしていたことが判明。原因は分かりません。コンソール画面を点検すると、
     WARNING: PUI: Too many live puInterface open at once!
と出ていました。起動Wizardに戻って機体を変更しようとしたら、FlightGearが応答しません。念のため、パソコン自体を再起動。PUIとは何だろうと思って検索したら、japaneseさんが各種設定フォーラムの「Re: マルチプレイヤーに反映されません」(2009年2月16日付)に書いておられたのと同じもののようでしたが、その後は特に異常は見られませんでした。何が何でも、BV-141を徹底的に研究したい…という訳ではありませんので、このへんでペーネミュンデに向かうことにします。

●PC-21でウゼドム島へ:
 ネットをあちこち眺めていたら、ピラタスPC-9Mを作って下さった作者さんが、すでに公開中のPC-21を改良して、ダミーだったグラスコクピットに、基本的な計器を表示する改良を加えているのを発見。すぐさまダウンロードして、レヒリンからペーネミュンデへの移動に使ってみることにしました。

 PC-21のパネルは定石通り、正面にPFD(飛行基本計器)、右にEICAS(エンジン計器など)があって、かなり見やすい作りですが、KTAS計やトルク計など、まだ動かないものも散見されます。左側の航法パネルは未完成で、ピンぼけの地図画像を貼ってごまかしてあります。実際にMap画面がはめ込まれると、感動ものでしょうね。いずれにせよ気分一新で、わくわくします。私はクラシックな航法や機体の話題が多いですけれども、MSFS2000を愛用していた10年ほど前は、主にリアジェット45の長距離改造機を飛ばしていたので、統合電子計器だって結構好きなのです。見やすさと情報量では文句なしに優れており、いまや軽飛行機にもどんどん採用されているのは、もっともだと思います。(かなり高価になりそうですが)

 新しいPC-21は、あまりにも座高が高いので、試しに5儔爾欧討澆泙靴拭ビューの画角は前席が80度、後席75度と、少し後席をズームアップしているのは、視界と計器の見え方を、前後で使い分ける思想のようです。私も同じ考えなので、後席はさらに画角の狭い60度に変更しました。
 前日に、PC-9M改のために作ったflight-planを再びロード。Activateボタンを押してから、現在いるEDAXを選択してJump toボタンを押し、この空港をアクティブWaypointにします。離陸して空港の中心を通過すると、Waypointは次のペーネミュンデ空港に切り替わります。
 1105時、エンジン始動。獰猛な感じの5枚羽根プロペラが回転し、煙を噴いてから安定。4552ftの滑走で離陸し、2分58秒で15000ftに到達しました。パワフルです。速度が乗ってくると、滑走中に少々左右へドリフトする癖が気になりますが、以前に比べるとマシになりました。GPSコース033で自動保針。そのまま全開で加速し、離陸5分半で283KIASをマーク。TASが表示されないのは残念ですが、330度7.7Ktの向かい風でGS352Ktだから、360KTAS近く出ているはずで、わがPC-9M改よりも一段と高速になっています。こりゃすごい!

 離陸後10分で、前方にウゼドム島が見えました。ここはユトランド半島(デンマークの大半があるところ)の根元の東側で、バルト海に面しています。湾や半島、入り江と島が複雑に絡み合い、昔は広大な無人地帯が広がっていて、狩猟にもってこいだったそうです。

●フォン・ブラウンの夢の跡:
 ベルリン工科大学の学生時代、フォン・ブラウンは結成されたばかりの団体「宇宙旅行協会」に加わって、液体燃料ロケットの開発実験中、陸軍兵器局の砲術弾薬部にスカウトされました。ドイツ軍は第一次大戦に負けた結果、口径3インチ以上の重砲を持つことを禁止され、他国が振り向かなかったロケット兵器の開発に、大きく力を入れていたのです。フォン・ブラウンは、宇宙への夢の実現手段と割り切ったらしく、民間人技術者として陸軍に就職。以後どんどんミサイル兵器開発にのめり込んでいくわけですが…北海へ発射していた試作ロケットの射程が伸びるにつれ、人目に付かない、新たな打ち上げ実験場が必要になりました。フォン・ブラウンが実家でこの話題を持ち出したところ、両親が提案したのがウゼドム島でした。彼は現地を見に行って、これこそ適地だと判断。やがて発射台や研究棟、工場、液体酸素の製造施設、発電所、滑走路を2本持つ飛行場などが建設されました。
 何度もの失敗を経て、V-2号の原型となるA4ロケットが、初の完璧な飛行を見せたのは、1942年10月3日のこと。重さ13トンのA4はペーネミュンデから打ち上げられ、ジャイロで姿勢制御を行いながら190キロを飛翔し、針路の左右誤差は4キロにとどまりました。最高高度は約100キロで、それまでの長距離砲弾の記録40キロを2倍以上更新し、史上初めて宇宙空間を飛んだ人工物となりました。ただしフォン・ブラウンが、のちにアポロ計画の立役者として、本格的に宇宙への道に復帰するには、敗戦を挟んでまだまだ非常に長い時間が必要でした。

 さて…FlightGearのウゼドム島は、ペーネミュンデ飛行場の滑走路が1本あるだけで、あとは様々な植物のテクスチャーが広がる、平らな地形です。島の北端の滑走路から東側の部分が、発射台の並んでいた区画で、その南に開発施設や研究者の住居、西に発電所などがあったのですが、これらは旧東独政府が徹底的に破壊したそうで、GoogleEarthで確認すると実世界でも、ほとんどの土地が森に戻っています。

 島の10nmあまり手前で、PC-21のスロットルをオフ。ブレーキを展張し、バレルロールを打ったりしながら減速して高度を下げ、風下に回り込んで、あっさり着陸。飛ばしやすい飛行機ですが、高速なだけにアプローチ速度も速くて、100Ktくらいで最終進入しないと不安です。90Ktまで下げると翼端からヴェーパーを引き、これが失速の前兆なのか、単に一定の迎角で出るのか知りませんが、やや無理をしている気がします。滑らかに進入を続け、フェンス越えぎりぎりで再びスロットルを閉めると、水平までフレアした時点で上げ舵を使い切ってしまい、あとはピッチコントロールが効かない状態で、ストンと接地しました。重心を下げるかなんかして、舵の引きしろを残しておかないと、ゴーアラウンドは危なそうです。ただ、スロットルを開いた際のピッチダウン現象は小さいので、進入時の姿勢変化が少なく、その意味では楽です。
 エンジンを止めてキャノピーを開くと、晴れ間が見える空から、いつの間にか雨が降っていました。ペーネミュンデでは再びブローム・ウント・フォスの、ヘンテコな飛行機に試乗します。

●カンブリア紀の「怪物くん」:
 今度は変形3発機のBV-170。せっかくBV-141が節約したエンジン1台を、さっそく消費しちゃうの?という感じですな。両側のエンジンは、主翼端のナセルに搭載され、これがデッカイものですから一種の3胴機に見えます。ナセル後方に、方向舵付きのウイングレットがある代わり、機尾に垂直安定板はありません。コクピットは胴体のほぼ後端、水平尾翼の直前にありまして、激しい機動を掛けたり乱暴な着陸をすると、ひどい目に遭いそうです。それどころか…ちょっと気流が乱れたり、オートパイロットが頻繁にトリムを動かすだけで、神経質な上下動が発生して、気分が悪くなっちゃいそうです。もっとも、コクピットから地面は非常に近いので、乗り降りだけは楽ですね。
 強烈な違和感の総仕上げを行うのは、主脚の位置です。主胴体と翼端の特大ナセルにそれぞれ1本あり、計3本が平行に並ぶ希有な作例です。この飛行機をひとことで言えば、「カンブリア紀の奇怪な海洋生物」でキマリかも。もっとも大戦中のドイツ試作機群は、まさに「カンブリア爆発」の航空版ですけれども…。

 事前の予想では、この機体レイアウトの場合、主翼とナセルに滑走路が隠れて、着陸はかなり困難になると思いました。起動してみると、はたして水平線のすぐ上が、主翼にカバーされて見えません。後席の爆撃手の方が、わずかに主翼から遠ざかるだけ、前方視界がよいようです。いざとなったら着陸時は、こっちの視界に切り替えて、パイロットの肩越しに前を見よう、と思いました。コクピットは総ガラス張りで、本来は視界が良いはずですが、例によって窓枠が太いので、けっこう圧迫感を受けます。

●ターボプロップ機より速く、しかし大食い:
 エンジン始動。3点姿勢でフラップを1段下げると、ブラインドを少し下ろしたように、ますます前方が見えなくなりました。なにやらもう、笑ってしまいますね、これは(^^;)。地平線は隠れ、滑走路も左右の足もと程度しか見えません。従って離陸滑走は手探りで、非常に心細かったです。

 50Ktでぐんぐんシッポが浮いて、ごくあっさり離陸。いったん飛び上がれば、そう悪くない飛行機です。加速はよく、翼端に大重量がある割には、ロール・レートもまともです。5000ftあたりで少々振ってみましたが、連続宙返りを非常に軽くこなし、バレルロールもドンと来い。ただし、ブラックアウトの連続です。予想外に速度が出るためで、うかつにスティックを引くと、思わぬ高Gが掛かります。
 10000ftで加速を続けたところ、340KTAS(GS391Kt)を指して、まだ加速する気配でした。明らかに、ターボプロップのピラタス軍用練習機シリーズより速い! しかし燃料計の針が、目に見える勢いで落っこちていきます。調べると、タンクは7つ設定されていますが、実際に稼働するのは2基だけで、しかも消費量が大きく、気が付けば残りわずか125Lbs(21gal)しかありません。大変だ!とすぐ反転。10nmほど引き返してファイナルに入ったら、ガス欠でペラが空転を始めました。

 しかし、この機体は滑空比が非常によろしい。フラップを出すと素直に減速・降下し、引っ込めるとスッと加速します。燃料切れの軽い状態では、グライダーに近い印象です。フラップはフルスパンで、そのためエルロンはなく、大型のスポイラーで代用しており、このへんは三菱F-1みたいに現代的。何かと不思議な飛行機です。視界の悪さも、空中ではコクピットビューの視野を、ワイドに引けば相当マシになるので、パイロットが自由に視線を動かし、視界を広く感じる実機の場合は、そう致命的ではないのかも知れません。
 ただし翼端の特大ナセルは、やはり非常に邪魔で、ベースレグ上では滑走路が見えません。実機の場合は多分、ひんぱんに大バンクを振って、必要なところを見たのでしょうね。着地寸前はもっと悲惨で、フラップをいっぱいに降ろすと、前方下向きの視界が広範囲に奪われ、滑走路両側の白線を探すのに必死。おまけに前方は、もともと長い胴体が邪魔になって見えにくいです。あの神風号でも、機首が少々長いため、前方視界に難があり、着陸時は斜めにベースレグを飛んで滑走路を視認し、着地直前に初めて滑走路に正対するという、変則的な飛び方をしたそうですけれど。BV-170は機首どころか、胴体全部が目の前にあるのですからね…。

 視界の問題を除けば、ファイナル進入時の操舵は軽く自然で、50Ktで接地寸前でも、エレベーターの利きしろが十分に残っており、ふんわり降ろすことができました。デッドスティック・ランディング(エンジン停止のまま滑空着陸)という非常事態にあって、この飛ばしやすさは印象的で、私はだんだん、この前世紀の「怪物くん」が好きになってきました。飛行後の印象をひとことで言えば、「強烈な動力性能を持った、高速モーターグライダー。視界に問題ありだが、見かけより素直」でしょうか。
 一瞬、燃料を注ぎ足してベルリンまで帰ろうかとも思ったのですが、窓枠が邪魔で景色が見にくく、従って地文航法がやりにくい機体だし、GPSを使うにしても、どっちみち航続力が足りないので、やはりPC-9M改に乗り換えることにしました。冷静になってみると、動力性能の割に上昇率はとても小さく、得意の加速も水平姿勢を保った場合のみ顕著に発揮されるという、あれこれ癖のある機体でもあります。

     ○

 PC-9M改を起動。大きな曲面ガラスの涙滴型キャノピーに再会し、大空とパイロットがぴったり触れ合う抜群の視界に、改めてホッと安心しました。先ほどと同じflight-planを読み込んで、ペーネミュンデをアクティベート。1215時(現地午後2時15分)に離陸すると、GPSは目標をすぐテンペルホーフに切り替えました。今ではすっかり乗り慣れて、一番快適な飛行機です。もっとも、GPS用に改造したHSIの距離計がうまく動かず、1桁目の数字ドラムしか回転しないという問題を発見。HUDを併用して飛行を続けます。15000ft付近に少し雲が出る中、ベルリンの50nm手前から降下を開始。テーゲル空港を横目に見ながら、無事にテンペルホーフへ舞い降りてタキシーし、大屋根下のエプロンへ滑り込みました。

 馴染んだホテルに、帰ってきたような気分です。さて日本へ向かう、次回の旅路はどうしようかな?
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なし 太陽を使いこなす

msg# 1.2.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-10-25 17:41 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 ピラタスPC-9Mの改造がひとまず仕上がり、GPSも一応うまく使えるようになりましたので、そろそろ天文航法の研究に舞い戻ることにしました。今回はベルリン=ワルシャワ間を飛んで、天測による位置決定技術の集大成といえる「位置の線航法」を、初めて本格的に実習します。

 「位置の線航法」とは、「自機が、この線上のどこかにいる」という直線を、何本か求めてチャート上に作図すると、交点が現在位置を示す…という手法です。昼間でしたら、数時間おきに太陽を観測し、高度角を計ることによって、そのつど1本の位置の線が得られます(後でおさらいします)。また夜間でしたら、ほぼ同じ時刻に3個以上(2個でも可能ですが、あまり精度がよくありません)の星の高度角を観測し、3本かそれ以上の位置の線を得て、航空図上に交点を作図すると、その場所が現在位置です。ちょうど、船舶から陸の目標への見通し線を海図に記入して、その交点を船位としたり、NDB局を二つ受信し、その方位から現在地を得たりするのと原理はそっくりで、いわゆるクロスベアリング(交差方位法)の一種です。

●天文航法の、本質的な謎:
 すでにご紹介しましたように、私は最近、太陽の南中時の高度角を計る「子午線高度緯度法」を使っていました。これは天文航法の原点で、1回の測定で自分の緯度が決まります。計算も赤緯(太陽の天球上の「緯度」)などの足し算引き算だけでシンプルです。これに、グリニッジの正午との時差(1年周期で生じる太陽の進み遅れ=「均時差」を補正)から経度を求める計算を組み合わせて、1回の測定で緯度経度の両方を求めていました。こちらも計算が単純です。いずれも、現地の正午ごろ1回しか計測チャンスがないのが、最大の欠点です。(注:実際の天文航法では、経度を求めるための天測は南中時ではなく、天体が真東か真西に来た時に行います。その方が精度が高いのでしょうが、理屈はよく分かりません)
 いっぽう「位置の線航法」は、天体が見える限り、いつ観測してもデータが取れます。1回では位置が決定できませんが、何回でも観測して、何本もの位置の線の交点として、最後に現在地が確定できます。特に船舶の場合、たとえ正午に曇っても、前後に晴れれば大丈夫となれば、非常に便利でしょう。また夜間は、複数の星をほぼ同時刻に観測できますので、比較的短時間で位置の線の交点が得られます。
 欠点としては、かなり計算が面倒なこと。また航空機で使う場合、昼間の観測には大きな問題がありそうです。基本的には太陽しか見えませんので、太陽が大きく位置を変えるのを待って再観測しないと、2本目の位置の線が得られません。チャートに交点を作図する時、位置の線の交差角は大きいほど測位精度が高く、30度以下は好ましくないとされます。地球の自転角速度は毎時15度ですから、最低でも2時間待ち、と言うことになります。ベストの交差角は90度(3本取るなら60度)ですが、最初の観測から最後の観測まで4〜6時間掛かることになり、大抵のフライトは終わってしまいます(^^;)。

 天文航法は、軍用機でも民間の長距離便でも、1960年ごろまで盛んに使われた技術ですが、昔の飛行家たちは一体どうやって、こんな大きな欠点を乗り越えたのか不思議でした。あまりにも不便なので、私は3年前に初めて天文航法に挑んだ時、実世界では(精度が出ないため)計らない太陽の方位角も、internal propertiesから入手して計算に加え、任意の時刻に1回の測定で、一気に緯度経度の両方が算出できる方法を考えました。しかし…まともな教科書で勉強して、初めて分かったのですが…この独自の方法には原理的な見落としがあり、位置の線は出るものの、一発で現在地を確定することは困難でした。では、それに代わる方法は?

●昔の鳥人は、位置の線から何を読んだ?:
 バブル・セクスタント(航空用の気泡六分儀)を使い、実際に大洋や極地を越えた飛行家たちの記録を、何例か読んでみますと、彼らのやっていたことは、以上に述べた教科書的な(船舶向けの)測位法とは違うらしいことが、だんだん分かってきました。飛行中、せっせと位置の線を取っていますが、彼らは図上でそれを交差させて、機位を出した気配があまりないのです。
 本連載で3年前にご紹介した戦前の飛行家、サー・フランシス・チチェスター(戦後は世界的ヨットマン)は1931年、軽水上機でタスマニア海を横断した際、わずか1時間おきに4、5回も天測を重ね、そのつど太陽の方位をチャートに記入していますが、位置の線の交点は描いていません。また戦前の米国を代表する極地探検家、リチャード・バードが1926年、飛行機による初の北極点往復をした時の航法図も、これとよく似ています。何本も位置の線が描いてあるが、交点は見あたりません。この航法は…なんなのだ?
 彼らはどうも、推測航法がメインのようです。天測は補正手段と割り切って、チャートに描いた切れ切れの線から、私には見えない何かを読み取っていたらしいのです。その謎を解く文献が(少なくとも日本語では)見つからないこともあり、実態は分かりませんでした。答えが見えないまま、すでに3年が経ちましたので、こうなったら想像や先入観は捨てて、実際にFlightGearで位置の線航法をやってみるしかあるまい、と思いました。自分で作図してみればチャートの線が、何かを語ってくれるかも知れません。

 フライトシミュレーターの航法では、天体の見かけ位置が信用できるとは限りませんが、現在のFlightGearで子午線高度緯度法を行うと、緯度については非常に正確で、ほぼ必ず1分角未満の誤差にとどまっています。時差による経度の計算結果にはばらつきが出るものの、太陽の高度角は信用できます。位置の線航法では、天体の方位測定は不要で、高度角しか実測しないのですから、十分に有望だと思いました。

●天文航法の「位置の線」とは:
 ここで簡単に、原理のおさらいをしておきましょう。マイアルバムにアップロードさせて頂いた「太陽を使いこなす」という画像の中段右側にある、白い説明図をご覧下さい。
 いま仮に、あなたが太陽の高度角を六分儀で計ったら、60度だったとします。太陽を60度で見上げる地域は、地球上に丸く分布しており、その集合は図上のオレンジ色の円になります。こうした円を「位置の圏」と呼びます。あなたが同じ地点で、数時間おきに太陽を3回測定したり、夜間に三つの星を測定して、3種類の「位置の圏」をチャートに描いたとすると、三つの円はほぼ1点で交差するはずで、そこがあなたの現在地です。ただし「位置の圏」は巨大すぎて作図困難なので、実際の航法計算では、この円上にあなたの推測位置を定めて、そこを通る接線を便宜上「位置の線」として使います。ではこの推測位置は、どうやって求めるかと言いますと…離陸後の針路と速度、経過時間から計算します。推測航法というやつですね。
 で。推測計算で仮の位置の線を得たら、次は実際に太陽の高度を計って、本当に60度になるかどうか調べます。実測値が60度より大きければ、本当の位置の線はAに近いし、逆に小さければBに近いところにいることがわかり、確定的な位置の線(青色)が引けます。

 位置の線を算出する流れを、少し具体的に見ていきましょう。あなたが空港を出発して巡航速度で一直線に飛び、1時間後に天測する場合を考えます。
(1)まず巡航速度と風向風速から、自機の対地速度と真の飛行方位を計算します。
(2)これをもとに、1時間後の自機の予測位置(緯度経度)を算出し、チャートに
   書き込んでおきます。(マイアルバムの白い説明図で言えば、空色で描いた
   「位置の線(計算値)」の中心点が、この予測位置に当たります)

(3)1時間後の推測位置における、太陽の推測方位と推測高度を、あらかじめ算出します。
   (これがないと、位置の線が確定しません。天測した直後に、ドタバタ計算することも
    可能ですが、結果を得るのが遅れますので、出来れば先に)
 このあたりからの計算には、航法用の天文データブックである「天測暦」と球面三角法(三角関数の迷宮!)が必要で、航法の教科書に公式や例題が載っていますが、素人には習得は大仕事です。一応原理だけ理解したら、計算は機械にやってもらいましょう。専用の電卓もありますが、私はタダで手に入る「航海士のためのExcel用関数集 Navigational Functions Version 1.13」を使っています。11年前にリリースされたアドオンですが、現在も下記のアドレスで公開され、今年の「理科年表」に載っている日々の天文データと、ほぼ完璧に同じ計算値を返します。
     http://www4.ocn.ne.jp/~happoone/hfsoft-1.htm
(航海用関数集は他にもありますが、Navigational Functions は機能が多く、使い勝手も柔軟です)
 天文航法の計算には、やや予備知識が必要です。例えば天測暦は、一般の大手書店にある理科年表でも代用できますが、理科年表は太陽の経度方向の動きについて「均時差」という補正値を使うのに対し、天測暦は「E値」という特殊な変数(均時差+12時間)を使っています。またNavigational Functions や、アメリカ製のフリーウェア「Navugator Lite」は近似値計算式を内蔵していて、天文データブックは不要ですが、同様の計算に「グリニッジ時角」(世界時+均時差+12時間)という別の変数を使います。自分でExcelを使って演算する場合、E値は無視しても構いませんが、均時差とグリニッジ時角の最低いずれかは使うので、天文の入門書などで、よく意味を理解しておく必要があります。

(4)先ほどチャートに書き込んだ、1時間後の推測位置から、いま算出した太陽の推測方位へ
   直線を引きます。マイアルバムの「図1」に、水色で描いた「太陽の方位」がこれです。
   次に1時間後の推測位置から、いま引いた線に直角に線を引きます。
   (図では水色の「位置の線(計算値)」です)
(5)観測予定時間がきたら、太陽の高度を測定します。
(6)太陽の高度角の実測値から、先ほど求めた推定高度を引きます。
   この差の数値を、「修正差」或いは「インターセプト」と呼びます。
 インターセプトの単位は「度」ですが、通常は60倍して「分」に直しておきます。高度角の1分角の差は、距離にしますと1nm(ノーティカル・マイル=海里=1852m)に当たります。

(7)もしインターセプト(分単位)がゼロなら、あなたは水色の「位置の線(計算値)」の
   真上にいます。おめでとう。しかし通常は大なり小なり、誤差が出ることと思います。
    白い説明図に赤い線分で示したインターセプトは、数値が負の場合で、あなたは予測
   値より小さな角度で太陽を見上げています。つまり水色の「位置の線(計算値)」より
   太陽から遠い位置Cにいますので、太陽から遠ざかる方向へ「1分角=1nm」の換算率で
   インターセプトの数値だけ距離を計り、C点に水色の線と平行の線を引きます。これが
   青で示した「位置の線(実測値)」です。
    逆にインターセプトが正の数字であれば、あなたは予測値より大きな角度で太陽を見上
   げていますので、太陽に近づく方向へ距離を計り、位置の線を引きます。自機はこの線上
   にいます。

…これでやっと、位置の線が1本手に入りました。数時間後にもう1本計算すれば、2本の交点がその時点の現在地です。「数時間後には、かなり遠くにいるが、位置の線は交差するのか?」という疑問もありましょう。まさにその通りで、実際は第1の位置の線を、飛行距離の分だけ図上で平行移動して、第2の観測位置まで持って行く必要があります。移動速度の大小とは無関係で、船舶の航法でも全く同じ操作をします。
 実例を見た方が分かりやすいので、ベルリン=ワルシャワ間飛行のご紹介に進みましょう。

●ベルリンのモーニングサイト(朝の天測):
 まず、飛行コースをご覧に入れます。
◎ベルリン テンペルホーフ空港EDDI 52-28-22.89N 013-24-14.20E Var.2E
   ▼91°279nm RLでは93.8度278nm
◎ワルシャワ Varsovie Okecle空港EPWA 52-09-56.70N 020-58-01.64E Var.4E

 「52-28-22.89N」とは、北緯52度28分22.89秒のことです。緯度経度には幾つも略記法がありますが、海上保安庁の書式を借りています。「Var.2E」は磁気偏差の向きと大きさで、Variationが東へ2度、つまり磁針が真北の2度東を指す(偏東2度)という意味です。
 さて…飛行距離は278マイル。となりますと、低空を250Kt(高度10000ft以下の制限速度)でゆっくり飛んでも1時間強ですね。どう考えても飛行中、天測は1回しかできません。つまり、このままでは位置の線の交点から現在地を出す、というテクニックは使えないわけです。さてどうするか。
 私が思いついた解決策は単純で、「離陸の数時間前に、空港で観測して、位置の線を1本出しておく」というものです。あとで冷静に考えると、出発点から250nm(無風時)先に、飛行予定コースと直交する線を1本描いても、同じだったような気もしますが…思いついたことは、何でも試してみることにしました。フライトシミュレーターの天文航法は、どっちみち未完成なのですから。

 テンペルホーフでピラタスPC-9M改を起動し、自作のフライト・コードラント(航空四分儀)を南東へ回して、UTCの0612時(ローカル0812時)30秒に太陽の高度を測定。うゎあ、たったの3.74度しかありません。冬が近づいていますし、ベルリンはけっこう高緯度なのですね。どうも精度は、ヤバそうな予感が漂いますなぁ。
 出発点の地上で計ったのですから、本来は実際の高度角と、その予測計算値(緯度経度と現在の日時分秒からワークシートで計算)の差は、ゼロでないと困ります。しかし、あまりにも太陽が低いせいか、-6.76分角の差が出ました。眼高や視差など、実世界では補正計算の対象になる誤差原因を検討しましたが、関係なさそうで原因不明。くそっ…「図1」をご覧下さい。赤で「修正差(インターセプト)」と書いた、赤くて短い線がこの-6.76分に当たる、長さ6.76nmの修正差です。ちゃんと出発点にいるのに、わざわざ誤差を含んだ「位置の線(実測値)」を、青線で描き込むのは馬鹿げていますが、初めての作業なので、手順確認のためと割り切り記入しました。これで「モーニングサイト」(朝の天測)は、おしまい。燃料を満タンにします。

●さあ昇ってこい、太陽よ:
 クロックを進めて1027時とし、少し光量が増した景色の中でエンジンを始動。雲量は4200ftにscatterd、20000ftにfewでした。風は185度から5.2Kt。Virtual E6-Bで補正計算すると、250Ktで0.3Ktプラス、修正角は右1.1度と出ました。すると…修正コースは92.1度か、と私は思って、オートパイロットに入力しましたが、飛行後にこれは、誤って大圏コースの初期針路を計算に使ったことが分かりました。正解は、ラームライン(航程線=常に針路一定となる飛行コース)の針路93.8度+修正角1.1度=約95度だったのです。最初にお目に掛けたコースデータに、使いもしない大圏コースを先に記入したのが間違いの元だったのですが…これに気付かないまま、間もなく私は東向きに離陸して、左旋回上昇に入りました。
 ベルリン市街が眼下に沈んで、どんどん視界が広がります。昔のMSFSのベルリンは、壮麗な歴史的建物をたくさん並べていましたが、今のFlightGearのシーナリーは、近代的なビルばかり。あっ、連邦議会が見えた。中央ドームはガラス張りです。有名なナチスの放火事件で壊れたからですが、歴史を感じさせるのは、あれとテンペルホーフ空港くらいですかね。市街地をゆっくり2周しながら高度10000ft、速度は250KIAS、針路は東向きと、ほぼ完全に巡航状態を作って、1038時にテンペルホーフ空港中央を通過しながら、オートパイロットの針路保持をオンにして、推測航法を開始しました。
 広大な平野の上を東へ向かいます。少し時間的余裕を持たせたつもりでしたが、1043時ごろには、早くも太陽が子午線に近づいてきました。フライト・コードラントを真南に指向し、太陽をクローズアップします。

 今回からリアリズムを追求し、天測の難しさを知るため、ポーズを使わずに観測することにしました。太陽がグレーの子午線カーソルに掛かって南中する瞬間に、TimeのUTCを正確に読むと同時に、0.1度単位の赤い高度角目盛りを打ったカーソル(視野の向きを自動追尾)で、太陽の高さを正確に読むわけですが、チャンスは一度だけです。白く輝く光輪を、ミカンくらいの大きさまで拡大すると、1秒ごとに微かに高度を増し、そのペースが次第に遅くなってくるのが分かります。もうすぐ正中です。高度角目盛りを読み違えると、飛んだことになるので、私はコードラントのビューを、アップにしたりロングに引いたりして、目盛りに打った10度ごとの数字を確認。数秒後の南中時は、高度角が27.2度台になりそうです。

 「さあ昇れ、昇ってこい、大いなる真昼よ」…遠い昔に読んだ、ある海洋小説の一節が心によみがえってきます。はいっ、南中!! 正確にはUTC1047時27秒、高度角27.24度でした。昔の商船ではこの瞬間、六分儀を構えたセカンドオフィサー(航法担当)が、気合いを入れてストップウォッチを起動。クロノメーターと照合して正確な南中時刻を記録し、チャートテーブルへ行って計算を始めたのですね。

●てんやわんやの、メリパス(南中時の天測)計算:
 私も計算です。従来の、南中時用ワークシートが出したヌーンポジションは、52-28-00N 14-20-53Eですが、最近の経験からすると、経度は西へ10分以上誤差が出ていそうです。今回は航法に使わず参考にとどめ、正午の位置の線を計算します。
 太陽が真南だから、直交する位置の線はちょうど東西に向きます。これを作図するには、まず太陽の方角線を描きますが、その起点として現在の推測位置(緯度経度)が必要です。これはインターセプトの計算にも使います。ベルリンから9分間で42nm飛んだとして、予測緯度・経度は…しまった、ワークシートを用意していませんでした。作図でやるしかないけど、頼みのAtlas画面は…だめだ、ログを取るためにバックグラウンドで起動中です。A4の自作航路図(Atlas画面を印刷したもの)に作図しても精度が出ないので、飛行を記録していたAtlasを切って、代わりに非連動のAtlas画面を起動。「斜めものさし」を使って、画面上に飛行距離のベクトルをプロットし、Atlasカーソルの緯度経度表示機能で、観測時の推測位置を52-28E 14-35Eと読み取りました。ポーズを使わないと、なんと焦りまくって忙しい…いや、これも一種のロマンかな。

 メリパス(Meridian Passage=太陽の子午線通過時)のインターセプトは、プラス0.1分角と判明。距離にして0.1マイル(185m)の誤差で、望外の好成績です。しかし、ここから作図で正確に現在地を出すのが、けっこう難しいことも分かりました。出発時の位置の線を、セオリー通りに三角定規で、現在の推測位置まで平行移動しましたが、私の自作地図では、すぐ1nm程度の誤差が出てしまいます。2本の位置の線の交点は取れたものの、紙上では緯度経度の線が粗く、座標として読み取るのは困難です。あれこれ手間を掛け、再び非連動のAtlas画面を使って北緯52度34分、東経14度38分付近と判断しました。
 結果は「図2」をご覧下さい。赤い線分が、モーニングサイトの位置の線を平行移動したもの。青い「正午の位置の線」との交点Aが、求める現在地なのですが。私は間違えて、ここでB点に印を付けてしまいました。このことが間もなく、さらに混乱を呼びます。

●ワルシャワへの道を開いた、第3の天測:
 B点から、ワルシャワへ修正コースを引き直すと、分度器で求めた真方位で95.5度。すでに1107時で、試行錯誤を重ねる間に、デフォルトの針路で20分も飛行しています。実際の天文航法では、計算に必要な直進飛行時間を10分程度とみて、これを織り込んだ修正針路を算出するのだそうですが、不慣れでまったく不可能です。とは言え、何らかの修正値を出さなければ。
 ええと、観測から作図や計算で25分経過。その間に117nm飛んでいるので、その地点を正確に地図上で出すには? 出発前にテンペルホーフで取った位置の線の、本来は無用な6分角のインターセプト(距離では6nm)も、何らかの形で相殺しなくてはなりませんが、フィックス(実測した現在位置)を6nm、反対方向にずらすだけでいいのかな? 評価する方法がうまくつかめないまま、飛行機は真大気速度280KTASで飛び続けます。正午に得た確定位置(誤ってB点と判断)では、コースから北へそれているのは確実に見えるので、1110時になってから、地図をにらんでの山勘で、思い切って真方位96度に変針しました。
 次に必要なのは、ワルシャワ到着の予定時刻です。さっきのフィックスからだと、残る飛行距離は234nmなので、風が一定だから単純計算で1137時と算出しました。

 しかし。本当にさっきの変針でいいのでしょうか。判断材料として、ぜひもう一本、位置の線が欲しいと切実に思いました。天気はいいし、南中の瞬間が必要な子午線高度緯度法と違って、新たな位置の線を一本得るだけなら、いつ観測したって構いません。コードラントを再び南に指向して、さっそく測定。高度角は26.36度、UTCで1122時ちょうどでした。
 ここで「図3」をご覧下さい。さっき変針した96度線(細い赤線)の上に、現在の推定位置を、時刻と飛行速度から案分して53-20N 19-10Eと判断してプロットし、まずこの位置から、この時刻の太陽の方角(計算したところ194.8度)に線を引きました。以上の推測緯度経度と時刻から、太陽の推定高度が計算できるので、これを実測値と比較すると、その差(インターセプト)はプラス0.0552度(3.3分角)となり、推定位置から3.3マイル(図の短い赤線)だけ南にいることが判明。なので、さっき引いた太陽の方角の194度線上、推定位置より南に3.3マイル下がったところに、直角に青い位置の線を引きました。

 新たに取った位置の線は、先ほどの修正コース(細い赤線)より、やや南にあります。位置の線は、もちろんピンポイントの現在地は示しませんが、実測で出た一種の確定データです。幸い位置の線の向きは、修正コースの針路とよく似ていますので、私は修正コースより、やや南にいることが確信できました。ワルシャワを正確にヒットするには真東か、少し北へ修正しなくてはならないのですね。市街地の北へ外れるのと南へ外れるのでは、どっちがマシか考えますと、北へそれた場合のほうが、そばを流れるビスワ川を修正目標に取りやすいのでベターです。

●ビスワ川、そしてゴール:
 そこで1129時に89度へ変針。気が付けば今度のフライトは、作業の大部分がパソコン画面ではなく、パソコンラックの左に置いたサイドテーブルの上で進んでいます。天測と各種計算はパソコン上ですが、結果を必ず自作地図上に作図して、分度器で角度を確かめたりしながら、次の策を練っているからです。パイロットであると同時に、操縦は誰かさん任せで外を見る暇もなく計算する、多忙なナビゲーターの気分も少々しており、まさに一人二役です。ふと視線を画面に向けると、機体の左に大きな川が平行に走っているのが見えました。
 やった、街の真ん中へ向かうビスワ川です。もうすぐ目的地で、私は正確なコースの上か、すぐ北にいます。コードラントを川に向けて、機上から見た俯角を計ると18度でした。地面の標高が分かりませんが、高度10000ftで考えますと、ビスワ川はだいたい10キロ離れていることになり、見た目の印象と一致します。雲が少なくて幸いでした。

 ワルシャワ市手前の小空港EPSUが視界に入り、1136時ごろ市街地上空に到着。南寄りに目的地のEPWAが見えます。FlightGearではVarsovie Okecle空港といいますが、実物は現在、ワルシャワ・フレデリック・ショパン空港というのだそうです。去年がショパンの生誕200年ですから、最近の命名かも知れませんね。
1144時着陸、1145時ランプイン。燃料残は1045Lbs(158gal)×2でした。

 一応、初めて天文航法の位置の線を交差させて、クロスカントリーに成功しました。勘違いで蛇行しましたが、前後方向は1分半くらいの誤差でした。大混乱しましたが、加速モード無しのリアルタイム厳守、ポーズ無しのフライトはスリル満点、非常に充実した飛行でした。そのぶん、本気でイライラしましたが(^^;)。改善点がいろいろあり、さっそくメモしました。最大の発見は、「位置の線は、クロスベアリングで現在地を一点に絞らなくても、役に立つ」ということでした。以上ご覧に入れましたように、今回は最終段階で追加の位置の線を取ったことが、最終的なコース確認に非常に役立ちました。

●半分解けた、位置の線の謎:
 これで思い出したのが、国際的なフェリー・パイロット(機体空輸専門の飛行家)として有名だった故・清水千波氏の大西洋横断です。氏は1974年、ビーチクラフト・ボナンザで、カナダのセントジョーンズからスペインのマラガ(ジブラルタルの近く)へ単独飛行しましたが、行程のほとんどを推測航法と天測で飛んでいます。清水氏の生涯を描いた「孤独の操縦桿」(福本和也著、徳間文庫)に、天測結果を描き込んだチャートが収録されており、これによると現地時間の1015時(UTCで1415時)にセントジョーンズを出発。3時間後に太陽を右翼のアビーム(真横)に見た時点で、3分間隔で連続2回天測し、位置の線を描き込んでいます。夜間、アゾレス諸島を通過時にNDBで若干のコース修正を行い、さらに推測航法を継続。翌日夕刻にもう一度、西日を観測して位置の線を得て、間もなくゴールイン。つまり、位置の線の交点を使って現在地を決定するテクニックは、一度も使っていません。
 しかし航路をよく見ると、非常に合理的に天測を活用したことが分かります。まず出発後3時間目の測定では、太陽がアビームですから、位置の線は当然、針路と平行です。そして位置の線は、ほぼぴたりと予定コースに重なっています。つまり最初の天測は、推測航法の精度を、初期段階のうちに確認するためのものだったのですね。これと対照的に、2日目の位置の線はコースとほぼ直角です。ゴール接近を前に、飛行距離を確認する目的とみられ、燃料が足りるかどうか最終確認する意味もあるのでしょう。リチャード・バードの飛び方もよく似ており、やはり初期に針路と平行の位置の線を求め、北極点付近では数分おきに観測を繰り返して、飛行距離を確認しています。いま思えば、あれは極点の位置を見定める作業だったのですね。

 という次第で、空中航法の場合の位置の線は、クロスベアリングをしなくても、十分に有意義だと言うことが分かりました。机上の想像では思いつかず、精密なフライトシミュレーターで実験して、初めて知り得たことです。しかし…今回名前を挙げたもう一人のパイロット、サー・フランシス・チチェスターの天文航法は、まだ私には半分ほど謎です。彼は洋上で、ほぼ直角に変針して目的地に向かうのですが、私は長い間、この変針はコース左右方向の誤差を吸収する手段だと思っており、3年前にも本連載で、そのようにご紹介しました。しかし今では、もっと深い技術的根拠があるものと思います。まだ中身が完全には見えていませんが、いつの日か解明しましたら、ぜひご報告させて頂きます。長文、失礼しました。
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なし 61度線が飛行可能に

msg# 1.2.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-11-21 12:28 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 前回に引き続き、天測航法を研究しながら、ワルシャワからモスクワを経て、さらにシクティフカル空港UUYYへ向かいます。それ一体どこ?と首を傾げる方も多いと思いますが、正解は「ロシア連邦コミ共和国の首都」で、私も正直「そんな国があったのか」と今ごろ初めて知りました。取りあえずは、モスクワから北東約540マイルにある、北緯61度38分の内陸の小都市、とご理解下さい。北極圏に近づくと空港が少なくて、あまり選択の余地がありません…。

 今回は、わざわざ冬に高緯度へ行きますが、そのココロは、
    「FlightGearのv2.4.0では、北緯61度線付近を無事に飛べるかどうか、検証する」
という懸案を果たすためです。
 FlightGearのシーナリーには、北緯60度30分〜61度の陸地部に、幅30nmの標高ゼロメートル地帯があり、北半球を一周しています。今年2月13日、本連載の北極飛行「オーロラフライト2010」最終回で、この現実世界にはない谷を「大地溝帯」「グレート・サークル・バレー」と呼んでご紹介したことを、覚えておられる方もおいでと思います。FlightGear v2.0では、大地溝帯の一部上空でシーナリーのタイル展開が止まったり、アプリ自体の異常終了が頻発し、安定したフライトは望めませんでした。
 このままでは、各種の北極航空路の再現はもちろん、日本=シベリア間を自由に行き来することさえ困難と思われ、当時は非常にがっかりしました。が、のちほどご紹介しますように、今回v2.4.0で一部を横断飛行するとともに、UFOによる上空無人探査を北半球全域で行ったところ、大地溝帯は現在、正常に飛べるようになっていることが分かりました。改良に当たられた方々に、深く御礼申し上げます。

●ロシアの大平原を行く:
 今回は、約1カ月の間に行った2回の長距離フライトと、これにまつわる天文航法用チャートやExcel計算表の改良、そして大地溝帯の探査飛行を、1回にまとめてご紹介するため、記述があちこちに飛んで少々読みづらくなり、申し訳ありません。まず時系列通りに、ワルシャワ=モスクワ間のフライトからご紹介しましょう。

 モスクワへの旅路は、以下のような直線コースです。
◎ワルシャワ Varsovie Okecle空港EPWA 52-09-56.70N 020-58-01.64E Var.4E
  ▼72.11度631.9nm
◎モスクワ ドモジェドヴォ空港UUDD 55-24-31.63N 037-54-22.73E Var.9E
 FlightGearのモスクワには三つの大空港があり、実世界では市街地南方のドモジェドヴォが、もっとも発着便が多いそうですので、ここを目的地としました。

 前回のベルリン=ワルシャワ間飛行では、Atlas画面を印刷したチャートに、天測や計算の結果を作図して位置を出しました。また測定や計算を行うに当たっては、時間が切迫する機上作業のリアリティーを高めるため、ポーズキーを一切使わないことにしました。今回も同様の航法チャートを用意しますが、ポーズ無しのガチンコ勝負の慌ただしさを痛感しまして、チャートとExcel計算表に改良を加えました。

●大航海時代風の、改良型チャートを採用:
 天文航法では大抵、推測航法や地文航法を併用します。これらに使う紙のチャートは、いわば手動のスクロールマップであって、自動では動きませんが、代わりに鉛筆で位置の線や推測位置をどんどん記入し、絶えず内容をリフレッシュすれば、それなりに連続的に自機の位置を把握することが出来ます。定規や分度器で図上にデータを記入する手応えは、この種の伝統的(?)航法の面白さでもあります。

 航空図や海図には、欄外に緯度経度の目盛りがあり、現在地を読み取ったり、距離(1度=60分=実用上は60nm)の物差しにしますが、Atlas画面のプリントアウトには、こうした1分角単位の目盛りがないので、たいへん不便です。目盛りを自作しようにも、例えば一般的なメルカトル図法の場合、緯度の線の間隔は、その地点の緯度のセカント(コサインの逆数)に比例して連続的に変化しますので、ちょっと方眼紙を持ってきて代用…という訳にはいきません。
 そこで航法チャート上では、機体の位置を記入する際は、緯度経度を直接利用するのではなく、出発点や目的地からの方位と距離に換算し、コンパスと定規を使って現在地を描き入れることにしました。私は以前から、自作のチャートにはマイル単位の距離尺(縮尺基準は画面中央)を印刷していますが、今回から新たに出発地と目的地に、それぞれ分度器の画像を加えました。これはコンパスローズ(海図・航空図に幾つも印刷されている方位盤)の代用品です。また天文航法用の自作Excel計算表も改良して、出発地及び目的地を基点とした自機の方位と距離が、常に表示されるようにしました。
 マイアルバムの「61度線が飛行可能に」の図(モスクワ=シクティフカル区間)をご覧頂くとお分かりのように、出来上がったチャートは方位線だらけです。どっかで見覚えがあるな…と思ったんですが、これは大航海時代に使われた、非常にクラシックな「ポルトラノ海図」に、結構よく似ていますね。

●外れも、大当たりもある天測:
 ワルシャワ出発時の天候は、180度の風7.7Kt。いっさい雲なしの大快晴でした。燃料搭載量は、タンクの半分強の1709Lbs(129.5gal×2)とします。
 天文航法は、時間と場所に制限があります。なので、いつどこで何を観測したいのか決めて、タイミングを逆算して出発時刻を決めます。このフライトは、おおむね東北東(真方位72度)へ向かう直線コースですので、最初の天測で、針路と同じ方位72.11度の位置の線を手に入れてチャートに記入し、まず推測航法の精度を確認したいものです。もし航法が正確なら、位置の線と予定コースは図上で重なるはずです。その後、正午の天測で確定位置を1回出し、あとは推測航法でモスクワへゴール、という作戦を立てました。モスクワ市街地は非常に大きく、かつ放射状に広がっているので、まず外すことはありません。

 さて、求める位置の線が、針路と同じ72.11度ならば…太陽は直角の位置(コクピットの右真横)に来るので、朝日が72.11+90=162.11度に見える時に測定すればOKです。私の天測計算用Excelファイルは、日時と推定緯度経度から、予測太陽方位と予測高度角を算出するように作ってありますので、ざっと位置を決めてから、何通りか時刻を打ち込むと、簡単に観測時刻が割り出せます。今回はUTC(世界時)の0906時44秒と決まりましたので、ここから離陸時刻や、機体の起動時刻を逆算します。
 この日は午前9時、ワルシャワ空港上空10000ftでモスクワに機首を向け、真大気速度280KTAS(指示対気速度=メーター読みでは245KIASくらい)で航法を開始することにしました。航法精度を確認するためには、最初の天測を30分くらいは遅らせたいのですが、正午の天測との間が短くなって、2回の測定で得られる「位置の線」の交差角(1時間の差につき15度。30度未満では不正確)が小さくなり、肝心の測位精度が悪くなります。飛行機の天文航法はこのように、とかく時間的にきゅうくつです。

 …実際のフライトでは、最初に得た位置の線が、予定コースとぴったり重なり、順調な滑り出しでした。その後、風の変化に応じて針路を微調整しながら、東ヨーロッパの平原を快適に飛びましたが、0953時(現地の正午)に南中時の太陽を測定したところ、計算上の推定位置が、常識的に予想される緯度経度から1度あまり(距離にして約70nm)も外れてしまい、びっくりしました。Excel計算表にバグがあるようで、今回は位置の線を使う航法は当てに出来ません。バックアップとして、南中時の太陽高度と時刻(グリニッジとの時差)を使う従来の方法で、緯度経度を出しました。この方法は経度が甘いのですが、後で検証したら、誤差は緯度で0.6分角(距離0.6nm)、経度で4分角(同3.2nm)という好成績。いつも、こうだといいのですが。
 正午の天測では、新たな珍現象を発見。太陽は真南(自作フライト・コードラントに装備した、180度のカーソル)に差し掛かる直前から、明らかに降下を始めていました。はて、最高高度の瞬間と真南の通過時と、どっちを「南中」と見なせばいいのでしょう。私は真南を取って計算し、ちゃんと答は合っていました。しかしこれで、FlightGearでは「南中とは、天体の見掛け高度角が最大になった瞬間である」という天文学的常識が、時には壊れていることが分かりました。

●モスクワ郊外、コクピットが炎に包まれる:
 その後、航程のほぼ中間点で、小空港MOGILEV(UMOO)の真上を通過して確定位置が得られ、予定コースをぴったり飛んでいることが分かりました。この日、私は休みでしたが…拙宅の昼食が予想より早かったため、UMOOに緊急着陸を決意。エンジンを止めて実世界の食卓に向かい…2時間あまり経ってから、放置しておいたパソコンのコクピットに戻って、エンジンを再始動し、飛行を再開しました。ここんとこ、天測の都合で倍速モードを使っていませんが、飛行中の時間経過と現実のそれが、一致するのは快適です(^^)。

 東欧からロシアの旅は、ひたすら大平原が続きますので、ほとんど洋上を飛んでいるようなものです。この日は風向風速の変化が穏やかだったため、推測航法の信頼性が高く、時折コースの修正計算を行いながら、のんびり続航しました。午後になってようやく少し雲が出てきましたが、ほぼ終日快晴。お昼にたっぷり休んだのと、高緯度地域を東に飛んでいる影響で、陽が傾くのが早く感じられます。UTCの13時半(現地16時半)ごろ、灯火が輝く大都会が見え、ドモジェドヴォ空港上空へ到達。進入コースに機体を向けるころ、ちょうど太陽が地平に掛かり、私は「モスクワ郊外の夕べ」を鼻歌で演奏しながら、3本ある平行滑走路のうち西寄りの、かなり長い32Lを選んで着陸しました。
 ここまでは、よかったのですが。
32Lに着地後、どこまで走っても、エプロンへ入ることが出来ません。誘導路は何本かあるものの、みんな滑走路に合流する直前で途切れています。FlightGearの空港平面図は、場所によって出来不出来の差が激しく、実際とかなり違う場合もありますので、私は構わず滑走路を離れ、グリーンの上を徐行してエプロンを目指しました。ところがこの日に限って、機体が馬鹿に激しく揺れるようです。そのうちに何やら、大きな音がした途端、コクピットが黄色とオレンジの炎に包まれました。

 反射的に「C」キーを押しましたが、キャノピーは開きません。パネルには「FIRE」のライトが、初めて点灯しています。燃えてからでは、遅いんですけどもね…これじゃ警告灯ならぬ「火災お陀仏灯」。機外視点に切り替えると、ピラタスPC-9M改は機首を高く空中に持ち上げ、ドンドコ燃えさかっております。例によってパーティクルを使った見事な描写で、怖いと言えば、なかなか怖いです。すぐ消火する方法もなさそうで、私は呆然として機内と機外を撮影し、アプリを終了しました。
 こう派手に愛機が燃えてしまうと、さすがに気が滅入ります。といって旅を中止するのも嫌なので、ピラタス社のロゴ入りC-130でも作って、スイスから代機を空輸するシーンを撮影して遊ぼうかと、ちょっとだけ考えました。あとで調べると、UUDDの32Lは現在、実世界では閉鎖中なのだそうです。だったら路面には、ちゃんと空中から見えるように「×」印を付けなきゃ…などと考えて、だんだん腹が立ってきたのですが、試しに南紀白浜空港で機体を起動してみると、ここも閉鎖された旧1000m滑走路に×印はないので、まぁ仕方ないか。というわけで、炎上事件はウヤムヤにしまして、旅を続行します。

 翌日、市街地西寄りのヴヌーコヴォ国際空港UUWWを経由(タッチアンドゴー)し、市北部のシェレメーチエヴォ国際空港UUEEまで移動しました。モスクワ見物のショートフライトですが、ランダム配置の建物と、環状道路や川の描画以外、まったく何もありませんでした。ロシア語のFlightGearホームページは存在するので、クレムリンや赤の広場のオブジェクトを期待していたのですが、荒涼としていて残念です。

●地図と計算表の改良再び:
 前回のベルリン=ワルシャワに引き続き、天文航法を使ってワルシャワ=モスクワ間を飛んだ結果、私の航法チャートが、まだまだ「ポーズ機能を使わない、真剣勝負の航法作業」に追いついていないことを実感し、改良を加えました。Excel計算表も、バグフィックスを兼ねて作り直します。
 当初のチャートは、Atlas画面の高緯度デフォルト表示である「Sanson Flamsteed」(サンソン図法)で印刷していたのですが、画面中央から放射状に描くコースについては、ほぼ正しい方位・距離が表示されるものの、周辺部では緯度経度軸が直交しないため、方位が不正確になります。なので「Change Projection」(投影法変更)ボタンを押し、三つの選択肢から「Equidistant Cylindrical(Local)」(正距円筒図法・局地用)を選んで使うことにしました。このモードでは緯経度線が直交し、画面縦横比も緯度によって自動計算されるため、方位はかなり正確です(メルカトル図法ほどではないですが)。距離も周辺部で精度が落ちるものの、一辺700nmの大縮尺でも、南北端で約6%の誤差で済むようです。

 いっぽう、太陽の予測高度や方位、そして機体の予測位置などを出すExcel計算表は、以前から必要機能を1画面分の広さに納める方針で作っていたのですが、これでは改造や拡張が難しいため、基本的な機能を1行に長く並べて設計し直し、現在の緯度経度(推測計算値、または手動入力の確定値。選択可能)だけを、次の行に自動コピーする仕組みにしました。これで、飛行時間や距離が予想外に延びても、途中で最終行をコピペすれば表の拡張が可能です。もっと早く、こうしたシステマチックな構造にしたかったのですが、なかなか手が回りませんでした。
 また、従来は地文航法(1区間飛んでは、地上目標を見て風の影響を知り、補正する)と推測航法(風の補正計算をしてから飛ぶ。風向風速が不明なら、仮に無風として推定位置を刻々とプロットし、後でまとめて補正)の使い分けが曖昧で、時々混乱したのですが、基本は推測航法に一本化。表計算の作業手順を、次のように再構成しました。
(1)風が変わったり、天測したり、地上目標で確定位置を得たら即、行頭に現在時刻を入力。
(2)すると、現在の推定緯度経度が表示されるので確認する。
   ただし天測や地上目標で確定位置を得た場合は、先の推定緯度経度を消し、確定位置に
   書き換える。またデータ項目名を表示するセルをクリックし、ドロップダウンリストを
   使って、表示を「今の推測緯・経度」から「■■フィックス■■」に切り替えて、ミス
   を防止する。
(3)巡航速度と、現在の風向風速を入力し、針路と飛行時間の補正値を得る。
(4)以後、この補正値が正しいものとして飛ぶ。
(5)さらに風が変わるか、確定位置が得られるたびに、新しい行に移動して再計算する。

 また従来は、1枚の計算表にすべての中継地を書き込んで、1行あたり1区間としていたのですが、これでは計算上「変針」と「風向風速の変化」を区別できず、ゴールまでの距離・方位の計算が正常に行われないため、「直線1区間につき計算表を1枚使う。変針するたびに、新しい計算表に移行する。風が変わったときは、同一の表内で改行する」という形式に整理しました。こうした改良の結果、入力と判断の効率が大きく向上し、「ポーズ無しのガチンコ航法」に対応するスピードが、ようやく確保できました。
 GPSフライトに比べると、もの凄い手間を掛けるわけですが…SID/STARを丹念に調査し、エアラインの航路やダイヤの再現にエネルギーを注がれる人が、あちこちにおられると同時に。私は「ナビゲーションとは何か」を、体で実感する方向へ注力しているわけで、まぁ楽しみ方はそれぞれです(^^;)。

●いざ、北緯61度線へ:
 いよいよ北方、「大地溝帯」の調査フライトに取り掛かります。
コースは次の通りです。マイアルバムの図もご参照いただければ幸いです。
◎モスクワ・シェレメーチエヴォ空港UUEE 55-58-22N 37-24-53E Var.009E
   ▼16.44度314.6nm(280KTASで67.4分)
△地溝帯A点 61-00-00N 40-15-10E
   ▼90度183nm(同39.2分)
△地溝帯B点 61-00-00N 46-32-45E
   北ドヴィナ川の西岸にプリヴォジノ、北にヴィチェグダ川をはさんでコトラスの町。
   ▼72.62度129.9nm(同27.8分)
◎シクティフカル空港UUYY 61-38-49N 50-50-42E Var.016E EV342ft

 上記の表に280KTASとあるのは、高度10000ftの真大気巡航速度の参考値ですが、今回は飛行速度を稼ぐため高度を20000ftまで上げて、300KTASで巡航しました。GPSやVOR航法ならもっと高く飛びますが、天文航法は地文航法を併用する(地上目標が見えれば、天測よりずっと速く、現在地が確定できる)場合が多いので、中高度か低空を飛ぶのが便利です。マイアルバムに掲載したチャートでお分かりのように、今回は途中で2回変針しますので、計算表はExcelウィンドウ内に3枚用意し、それぞれに区間の起点・終点の緯度経度と、おおむね予想される通過時刻を記入しておきます。
 今回は、AとBの中点付近で正午の観測を行うことにしましたので、離陸はUTCの0722時ごろです。これでは太陽はまだ真横に見えず、コースと重なる(推測航法の精度確認に使える)位置の線は得られません。太陽をコース真横に見る方位は106度ですが、早朝のため今の季節は太陽が低すぎ、地平に隠れてしまいます。今回は無理せず正午に1回だけ、位置の線の交差が取れればよしとします。その代わり3区間とも、湖や川などの目標物が豊富なので、地文航法の位置確定に使えそうです。

 シクティフカル空港に関する情報が少なく、万一降りられない場合に備え、代替空港を探しました。その場合はウラル山脈まで行く羽目になるので、今回は珍しく満タン(2800Lbs)で離陸です。
 UTCの0710時ごろ起動。20000ftの風向風速は25度8.8Ktで、珍しく1122ftにovercastの雲がありますが、幸いレイヤーは薄いようです。風力補正の計算結果は291Kt16.7度と出ました。
 0714時にRWY07から離陸。グルリと回って上昇し、0722時に予定コースで空港上空通過。226KIASまで加速したところで、真大気速度の指針がちょうど300KTASに達しました。機体が安定したところで、さっそく太陽にコードラントを向け、高度角を測定。結果は12.88度(0726時00秒)でして、計算表には約-5nmのインターセプト(予測高度との修正差)が表示されました。一般的に言えば許容範囲の精度ですが、離陸直後にこれだけの誤差を見せつけられるのは、ちょっと残念でもあります。推測航法と違って、天測の誤差は飛行時間とは無関係ですから、決して不自然な結果ではないのですが…。

●大地溝帯を、快調に飛ぶ:
 眼下は今回から雪景色。集落混じりの耕地が続き、凍った大河が横たわります。地図でボルガ川と判明し、ちょっと感動。0743時、燃費は3.2745nm/galと好調で、あと4時間44分(1370nm)も飛べる計算です。

 ボルガ川は間もなくリビンスコエ湖に出会い、愛機は合流点の真上を通過。これで確定位置が判明し、コースぴったりでした。0810時にはキュベンスコエ湖を通過し、また予定ぴったり。今日の推測航法は、ほぼドンピシャです。さて問題は、北緯60度30分〜61度の大地溝帯。約10分後、最悪の場合はFlightGearが止まるか、シーナリーが空白になるか。異常がなければ、V2.4.0は名作なんですけれど。
 0818時、下方に時々満月が見えては、地平が描画されて消え、落ち着かない気分を味わいました。左にヴォゼ湖が見え、いよいよ地溝帯の上空へ。HUD高度計と電波高度計の標高差がゼロになった以外、変化はありません。シーナリーは正常に生成されています…ありがたい。今のところは、異常なし。
 0828時、大地溝帯を渡り終え、北緯61度に到達。とたんに電波高度計が復活しました。以後61度線に沿って東進し、ビューの倍率を上げると、地表には東西に、かすかに段差というか、連続した斜面が確認できました。v2.4.0のシーナリーにも大地溝帯は存在しますが、取りあえずこの地域は無事、飛べています。

 UTCの0849時49秒に正午の天測。太陽高度角は11.64度で、従来の子午線高度緯度法(グリニッジとの時差を併用)では北緯60度59.95分、東経43度32.2分と出ました。推測経度は44度で、ちょっと差があります。いっぽう、位置の線の交点から出した現在地は、北緯61度0.01分、東経43度35分。ちなみにスクリーンショットで確保しておいた「正解」は、東経43度53分55秒でした。マイアルバムの図に、これらの観測結果を黒字で記入しておきましたが、緯度は事実上一致し、経度はかなりばらついています。2種類の天測で得た位置より、推測航法の方が高精度という結果になってしまい、ちょっと複雑な気分です。
 0905時、北ドヴィナ川を通過。計画通り72.6度に変針し、すぐ風向風速を調べて打ち込み、71.06度の修正針路を得て続航。万事快調で、0831時にはシクティフカルに到着の予定です。
 0926時、ほぼ真正面にABN(飛行場灯台)が見え、やったね…という気分。そのまま空港上空に乗り入れたところ、滑走路の端を通過しまして、航法精度の高さが確認できました。

 シクティフカルは、ロシアの最果てによくある、林業と鉱業の街です。気が遠くなるような大平原を、大きな川が這い回り。支流との合流点に小さな市街が張り付いて、その真ん中付近に、粗末だが滑走路の長い空港が、騒音問題もヘッタクレも無く、デーンと座っています。どうせ寒いんだから、みんな固まって住もうよ…みたいな構造の街でありますが、だだっ広いモスクワよりは、どこか温かな雰囲気に見えました。
 パワーアイドルで降下中、低空では雲量が増え、いったん滑走路をロストしましたが、補助的にILSとNDBを見て再び空港を視認。うまく着陸して、ランプイン。燃料残は723Lbs(109.5gal)×2でした。

●帰ってきたUFO…北半球全域を探査:
 大地溝帯のフライトに俄然、展望が見えてきましたので、他の地域も飛んでみることにします。
今年2月の大地溝帯発見時には、北半球を取り巻くベルト状の谷のうち5カ所をピックアップして、上空や周辺を無事に飛べるかどうか調べました。その結果、
(1)シベリアのヤクーツク空港UEEEから、レナ川沿いに南下し、大地溝帯に接近。
(2)アラスカ西端フーパーベイPAHPから、大地溝帯を横断して南方のCFKへ。
…のフライトで、何度トライしても、地形空白と異常終了が発生しました。特に(2)のほうは、GPSに空港コードを入力しただけで落ちる有様でした。これ以外にもシベリアや中国の広域で、異常が相次ぎました。

 今回、まずこの2カ所を再探査しましたが、ヤクーツクからのフライトは、この地域としては初めてシーナリー生成の異常もなく、異常終了なしに270nmを南下して、アルダン空港UEEAの場所に到着しました。「場所」と書いたのは、Atlas画面にある空港がシーナリー上には現れなかったからですが、起動時の空港リストにも出ないので、現在のシーナリーデータからは抹消されている可能性が大です。
 また(2)は、海岸の空港から順調に洋上を飛んで、目的の小空港に着陸しました。その間の海岸線の地形タイルが一部非表示で、実際よりも広く海が広がりましたが、事故なく飛べることは確認できました。

 もっと多数の地域を調べたいものですが、何カ所飛べば安全、という線引きは不可能ですから、少し違った角度でテストする必要を感じました。そこで思いついたのが、一種の無人探査です。UFOを自動操縦で大地溝帯上空に放ち、どこまでも東西に飛ばして、異常終了が起きるかどうか試すもので、睡眠中に実施可能なため、手間が掛からない…という大きなメリットがあります。シーナリーはTerrasyncで自動取得しますので、必要なら後で調べることも出来ます。
 結果のみ言いますと、シクティフカルを発進したUFOは、大地溝帯の中央に当たる北緯60度45分を維持し、真方位90度、速度約500KIASで、2日に分けて20時間ほど飛び続けまして、無事に北半球を一周し、出発点に戻ってきました(特に好きな機体ではないけれど、帰還すると結構、かわいいと感じました)。大地溝帯に沿って行う飛行と、先にご紹介した横断飛行はやや性格が異なりますが、これで大地溝帯上空は、全域にわたって事故なく飛行が可能だと、見なしてよかろうと考えています。
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なし 星が導くウラル越え

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-12-10 8:47
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 ロンドン・グリニッジ子午線から、明石の日本標準時子午線へ向かう、ユーラシア大陸横断飛行の続きです。今回は約1150マイル(nm)進んで、ウラル山脈を飛び越え西シベリアへ。ヨーロッパ・ロシアをあとにして、いよいよアジア入りですが、ゴールはまだまだです(^^;)。

 天文航法研究も佳境に入り、今回は太陽に加えて、初めて恒星や惑星を観測しました。また以前は粗い手製の航法チャート上で、位置の線を平行移動して最新のものと交差させ、現在地を求める方法をご覧に入れましたが、今回は船舶で実際に使われる「天測位置決定用図」を、初めてフライトシミュレーターの航法に導入し、より簡単かつ高精度の作図を実現しました。
 では、さっそくコースと作戦をご紹介しましょう。

●●シベリアへの道:
◎シクティフカル空港UUYY 61-38-49N 50-50-42E Var.016E EV342ft
   ▼107.6度175.6nm
△A点(ウラル山脈西の変針点) 60-45-00N 56-37-00E
   ▼90度115.8nm
△B点(ウラル山脈東の変針点) 60-45-00N 60-34-00E
   ▼130.5度534.5nm
◎オムスク空港UNOO 54-58-01.35N 73-18-37.85E Elev 311 feet MagVar 011°E NDB332
          RWY066/246(ILS=108.30/110.10) 7/25 15/33 NDB332
   ▼89.5度322.2nm
◎ノヴォシビルスク・トルマチョーヴォ空港UNNT 55-00-45.44N 82-39-02.36E

 前回到着したシクティフカル空港からノヴォシビルスクまで、お馴染みのAtlas画面を利用したチャートを作って眺めながら、私はどうコースを引いたものか、しばし考えました。
 シクティフカルのすぐ南には、例の幅30nmの平たい谷間「大地溝帯」が走っており、約200nm東で、ウラル山脈の分水嶺を貫通しています。取りあえずここを飛べば、地形が目印になって楽だし、山脈の通過時は両側の山の断面が見えるので、ワイドに引いて撮影すれば面白いだろう…などと思いました。大地溝帯の中心・北緯60度45分の線を東へ進み続けると、やがて広大なオビ川に出逢い、そのまま川沿いに飛べば自動的に南へ機首を振ってゴール、ということになります。天気さえ良ければ楽ですが、航法上はあまり、面白味がありません。そこでマイアルバムの図のように、山脈を抜けたらすぐ大地溝帯を捨て、南東に進んでオムスクを探し、最後の区間はほぼ真東に飛んで、ノヴォシビルスクに向かうことにしました。

 このフライトで、天文航法が一番役に立つのは恐らく、地図中央の西シベリア低地を、オムスクに向けて南東に進む区間でしょう。ここは目印が少ないので、天測で推測航法の精度を確認したいところです。以前にも少し触れましたが、こういう場合は予定コースと重なるように、同じ方位のLOP(Line Of Position=位置の線)を求める手があります。天測で得たLOPをチャートに描き込めば、コースとの比較で、自分が左右どちらに、どれだけそれているか一目で分かります。
 実際の測定結果は、マイアルバムの説明図下段の地図に茶色の線で記入しました。「太陽 1009時」とあるのが、その時に見えた太陽の方位線。これと直角に「LOP」と書いてある線が、その時に算出した「位置の線」です。青で示した予定コースのすぐ北側にあり、実際の航跡が、予定より左方向へ約4.7nmずれていたことを示しています。観測手順は以下の通りです。

(1)コースの中央付近に1点、太陽の天測予定地を決める。
   (私の場合は、オビ川の支流・トボル川の上空を観測点としました。緯度経度は、
    おおむね57-49N 67-22Eです)
(2)天測する際の、太陽の方位を決める。
   (LOPとは、ある時刻に特定の天体を「同じ高度角で見上げる地点の集まり」
    ですから、本来は地球上に巨大な円を描きますが、便宜上もっと短い接線
    で代用したもの…と考えられますので、観測者から見た天体の向きに対し、
    常に直角に描かれます。従って、針路と正確に同じ向きのLOPが欲しい時は、
    太陽が機体の真横に差し掛かった瞬間に、高度角を計ります。今回の区間
    針路は130.5度なので、130.5度+90度=220.5度に太陽が見えたとき、測定
    します)
(2)太陽が、その方位に来る時刻を求める。
   (私の場合は、自作の天測計算ワークシートに、試行錯誤でさまざまな時刻を
    入力し、太陽方位の推測計算値が220.5度になるようにします=0956時55秒)

…この時刻から逆算して、出発時刻を決めます。ウラル山脈周辺は低空で観察したいので、高度10000ftを巡航速度280KTASで飛ぶと仮定し、出発はUTCの0752時としました。

 いま使っている天測計算ワークシートは、「太陽による位置の線航法テーブル Ver.B 恒星付き」と呼んでいる最新版です。太陽の動きのほか、必要に応じて天文データを手動入力すれば、任意の天体のLOP(位置の線)も計算できます。これは天文計算と推測航法の両方に使えます。1枚のワークシートに計4区間分コピペして、それぞれの冒頭に出発時刻(または通過予想時刻)や速度などを入力して行くと、中継地点の推測緯度経度、出発地・目的地から推測位置を見た場合の距離や方位、所要時間などが自動計算されますので、辻褄が合うかどうか確認します。こうしてナビゲーションの準備が整うまでに、あっという間に1時間半が経っていました。埼玉県・ホンダフライングスクールの地文航法教科書によりますと、「航法計画書が1時間以内でできることが自家用操縦士の目標」だそうです。がんばりましょう…。

●●昼間も明るいアークトゥルス:
 シクティフカルでピラタスPC-9M改を起動します。パソコンのクロックをUTCの0740時(現地1240時)に合わせ、満タンにしてエンジン始動。(日付変更時の混乱を避けるため、私のパソコンは最近、ほぼ常にグリニッジ時間で動いています)
 天候は、1300ftにovercastの雲がありますが、幸い厚さが1000ftしかないので、brokenな雲のように描画されています。風は10000ftで220度21Ktと少々強め。お昼時なのに太陽は低く、地平線からわずか直径6個分だけ上にあり、高緯度地方の冬を感じさせます。
 0746時離陸。高度10000ftまで上昇旋回し、速度250KIAS(280KTAS)、針路107度にセットして、出発点となる滑走路真上を航過し、0752時に航法を開始しました。すぐワークシートに風向風速を入力し、修正針路111.6度を得てオートパイロットで保針。対地速度は274Ktと推算され、次の中継地「A地点」の通過予定は0830時ごろと決定。ようやくホッとして地上を見下ろせば、灰色の雪景色が広がっています。ウラル山脈は、どのくらい見えるかな。

 右手やや後ろに、昼間の星を発見。日照が短くなったのをきっかけに、今月に入ってから少々、星を観測する練習をしていましたので、直ちにフライト・コードラント(航空四分儀)を向けて、0806時00秒に高度角を測定。結果は42.16度で、方位はざっと223度でした。使えるぞ、でもこの星はなんだろう?
 船舶用の航法フリーウェア「Navigator Lite 32」を起動し、観測した年月日時分秒と推定緯度経度を入力して「Visible stars」ボタンを押すと、航法に使う太陽や月、主な恒星など31個の天体の配置が図示されます。今のは、うしかい座の主星アークトゥルス(和名・麦星)と判明。さらにボタンを押し、Declination(赤緯=天球上の緯度)やGHA(グリニッジ時角=経度ゼロの線から測った、天球上の経度方向の位置)を表示させてワークシートに入力。するとアークトゥルスは現在、この位置からは、高度角41.15度に見えるはず、という推測計算の結果が返りました。
 ここで先ほどの実測高度角をワークシートに打ち込むと、推測値との差(インターセプト、または修正差と呼びます)が算出されます。結果はプラス0.74分角で、私は推測航法で得ている緯度経度よりも、実際はアークトゥルスの方角へ0.74nmだけ近づいたところにいる、と言うことが分かりました。さて、マイアルバムの画像をご覧下さい。下段の航法チャート左上に、黄色で描いた★マーク入りの線が、アークトゥルスの見える方角を示した線です。この線と青い針路の交点が、観測地点の推定位置です。「LOP」と記入した黄色い位置の線は、ほとんど推定位置と同一なので、この図では同じ位置に描き込みました。以上がLOP作図の実例です。

●●星の天測に、どんどん習熟:
 アドリブの恒星観測が成功し、しかも非常に高精度でしたので元気百倍。嬉しさを噛みしめていると、すぐ太陽が南中。あわてて高度角を計ると6.78度で、時刻は0812時55秒でした。私のワークシートは、正午の天測計算については専用の機能があり、太陽の高度角に一つ補正数字を足す「子午線高度緯度法」で緯度を出し、太陽南中時とUTC正午の時差から経度も出して、緯度・経度を同時に一発で表示します。が、この方法は経度にある程度の誤差が出ます。この日は61-09N 54-10Eという答えが出ましたが、幸い誤差は東6nmにとどまり、かなり快調でした。続いて先ほどのアークトゥルスと同様の方法で、太陽の南中時のLOP(位置の線)も算出しました。南中時には、太陽はもちろん真南にあり、これと直角のLOPは正確に東西に向きます。従って、南中時のLOPの位置(推測緯度に修正差を足し引きした数値)は緯度そのものであり、欠かしたくないデータの一つです。計算法は違いますが、ほぼ先ほどの子午線高度緯度法と同じ答えが出ました。
 ついでに言いますと…真南にある太陽の高度を計って緯度が出るのでしたら、真東や真西の太陽(あるいは他の天体)を測定したら、LOPは正確に南北(経線と平行)を向くので、ずばり経度が得られるのでは…と思えますが、まさにその通りです。ただし太陽が低い冬期は、高緯度では恒星や惑星を使わないと無理です。

 これまで、星を観測しなかったのには、幾つか技術的な理由があります。最大の理由は、航法に使う特定の星を夜空で見分ける「索星」作業が、想像以上に困難だったからです。
 3年前の最初の挑戦では internal properties を使い、機外ビューのカメラ視点を極端に遠ざけて、米粒のように小さくなった機影ごしに、星を見ました。この方法では時々カメラ視点が地中に潜るので、地表の灯火類と星が入り交じってしまい、とても見分けられませんでした。
 この問題は、フライト・コードラントの開発により解決しました。しかしそもそも、私は星が好きですが、星座は詳しくありません。またFlightGearでは、星の見え具合(明るさ・大きさから受ける印象)が必ずしも実物通りではなく、星の色彩も再現されません。なので、仮想の天球に見えているのが宵の明星かシリウスか、或いはアークトゥルスなのか、さっぱり分からなかったりします。よくある「星座早見盤」は国内の空が対象で、今回のような旅には無力です。従って「Navigator Lite 32」の索星画面には大感謝で、これがなければ、星の航法利用は困難だったと思います。また実機では、天測予定時刻に見える星を数個選んで、事前に高度・方位計算を終えておくようですが、FlightGearでは、事前計算を済ませた星が、うまく見つからない場合も多々あります。なので、逆に「いま高度角を計った、この星はいったい何?」とドタバタ調べて、計算に移行する方が、ずっと確実です。

●●ウラルの「断面」を飛ぶ:
 間もなく地平線に月が見え隠れしましたので、これも高度をゲット。ただし地平を割っており-2.4度でした。一応、LOPを求める計算を(推測緯度経度および天体方位、推測高度角と実測値の修正差を算出)しましたが、月の修正差は54分55秒角(距離換算で約55nmの誤差)もあって、とても航法の対象になりません。月の運動は、太陽や恒星よりずっと複雑ですので、FlightGearではあまり精度を与えていないのでしょう。

 0820時ごろ、左手の地表に浅い段差が見えて、大地溝帯に入ったことが分かりました。7分後、右手にも段差が見え、大地溝帯の中央部へ予定より3分ほど早く着いたことが判明。さっそく両側の段差の方位をコードラントで計ると、ちょうど機首が中心にあって、ほぼぴったり予定コース上にいることを確認しました。0843時ごろには、ウラル山脈の分水嶺に達するはずです。
 やがて大地溝帯の両側が、目立つほど盛り上がってきました。いわば山脈の断面図ですが…けっこう低いものです。0844時ごろ分水嶺を確認しましたが、とても南北2500キロに及ぶ「世界最古の山脈」の切れっ端とは思えません。調べてみますと、ウラル山脈の最高点は1895mで、平均ですと1000mかそこらだそうです。高さのみ言えば、四国最高峰の石鎚山や、東京・奥多摩の山々と同程度だったのですね。0852時、計算より少々早くウラル山脈を脱出。川と鉄道の交点が見え、イブデリとか言う街の付近だろうと想像しました。予定通りオムスクへ向けて変針し、5度ばかり修正角を調整。これで当機は欧州を離れ、アジアに入った次第です。

●●便利な上昇率を発見…オムスクへ:
 0910時、毎分2000ftで上昇を開始。この区間は534nmもあるので、高度を上げて速度を稼ぐことにしました。しばらくして気付いたのですが、ピラタスPC-9M改はこの上昇率ですと、指示対気速度はじりじり下がりますが、真大気速度は280KTASに落ち着き、30000ftくらいまで長時間維持します。つまり上昇中でも、対地速度は高度10000ftを巡航中と同一で、航法計算が非常に楽です。いいことを発見しました(^^;)。
 0921時、高度27000ftでレベルオフ。加速が始まり、真大気速度は335KTASで安定しました。さすがに高空では速いです。速度変更に伴い針路も修正して、あと71.5分でオムスクに到着するはずです。このデータを基に改めて、太陽のLOPがコースと平行になる時刻を確認。1007時に天測すれば大丈夫です。

 0938時、今度は金星の観測に成功。高度角は6.92度で、推測位置との修正差は+7分角とまずまず。最初は修正差の値が大きく発散してしまいましたが、急いでチェックしたところ、マイナスとなるべき赤緯の値を、プラスに入力したことが判明。すぐ修正して事なきを得ました。私の天測・計算技術は安定期に入りつつあり、操作にも習熟してきたようで、面白いように測定が成功します。0946時、オビ川の支流が真下に見えて、ほぼコース上と確認。あと260nmくらいで、1033時ごろオムスクに到着の見込み。天文航法を使うフライトでは倍速モードを全く使いませんので、天測と計算、修正操縦を重ねて3時間近く飛ぶと結構疲れます。きょうはオムスクに降りる流れでしょうね、こりゃ。

 1005時になって、太陽が計算より少し早く右アビーム(真横)に来ました。高度角は2.70度。LOPの修正差は-4.69分角ですので、コースの右4.7nmくらいにいると判断しました。推測航法の精度も、天測による確認作業も快調。下手に針路を修正するより、このまま続航して、オムスク空港を左4.7nm付近(高々度では足もと同然)に探した方が、精度と航法簡略化の両面でベターに思えます。
 鉄道と道路の交差点が近くに見え、いわゆるウラル工業地帯のようです。しかし日本の四大工業地帯のような都市ベルトはなく、小都市が点在する感じで、どちらかというと…北九州工業地帯の後背地、筑豊の炭田地帯を行くみたいなムードです。やがて眼下には、直径数百メートルとみられる、小型の湖(池?)が一面に現れました。これが、本で読んだ沼沢地帯かな?

 1026時、地方時ではまだ午後4時半ですが、日が傾いて、地上に道路の灯火が見えてきました。まもなく蛇行する川と都市、そして右手から空港が出現。オムスクです。私は機体がコース右にそれたと思っていましたが、これは勘違いでした。インターセプト(高度角と推測値の修正差)はマイナスでしたから、自機は推定位置を挟んで、太陽から遠い向きにいたわけで、実際はコースの左にそれていたのでした。
 1032時、スピードブレーキを開いて旋回降下に入り、低空で雲が邪魔になったので、ILS進入に切り替えます。以前お話しした人工水平儀の不調と交換のため、愛機はグライドパス指示器が後席にしかないので、そっちで操縦してビームに乗り、視界のいい前席に切り替えて滑走路を目視。左から21Ktの横風を受けつつ、片足からそっと降ろしました。タッチダウン寸前に、空がオレンジ色に染まり始め、美しい夕景の中を着陸。1050時、誘導路までタキシーして停止。燃料残は566.9Lbs(85.9gal)×2で、4割ほど残ったものの、予定通りノヴォシビルスクまで続行していたら、ややギリギリだったかも知れません。

●●「星の狙撃手」:
 エンジンを止め、風防を開いた機体を放置して、しばし休憩していますと、次第にまた元気が出てきました。この日は天候が非常に安定しており、恒星や惑星の天測にも慣れつつあるので、結局もうちょい頑張って、やっぱりノヴォシビルスクへ入るか、という気分に落ち着きました。

 燃料を少し足して、合計672.7Lbs(101.9gal)×2とします。1124時、あかね雲の中で始動。激しい横風を受けながらオムスクを離陸し、反転して1127時に空港上空で定針。コースは約3度修正。280KTASで飛びながら、例の上昇率2000ft/分をキープしつつ33000ftへ上がって、1141時にレベルオフ。その後3分間で197KIAS(342KTAS)まで加速しました。1233時に目的地へ到着予定です。
 ここで、正面か真後ろの星を観測してLOPを求めれば、自分の進出距離が分かります。ほぼ機首が真東なので、ずばり経度が取れるはずです。正面わずか右に手頃な星があり、1157時に高度角を計ったら25.23度。フリーウェア「Navigator Lite 32」で確認すると、これは木星でした。DeclinationとGHAも取って推測高度角を算出し、推測緯度経度とともに計算すると、LOPの修正差は-2.25分となり、予定よりわずかに西寄りを示しています。この時点の推測経度は77-39.3Eで、天測で実際に得た経度は77-37.05E。いっぽう、画面キャプチャーによって確認した正解は…東経77度57分14秒でした。うう〜む、約20分角の誤差ですね。

 今回は、マイアルバムの上段でご紹介した通り、実物の船舶で使う「天測位置決定用図」を、初めてフライトシミュレーターの航法に使ってみました。個別の地点で、時間間隔をおいて測定したLOPを3本、最終測定時の推定緯度経度地点に、まとめて重ね書きしてしまうテクニックです。天測の教科書によると、過去にご紹介した「航空図に作図した複数の位置の線を平行移動し、交差させて使う」方法と、等価なのだそうです。話がうますぎるようですが…欧米でも盛んに使われており、作図が非常に単純になって、すごく便利です。この方法を使った場合でも、この時点の経度は東経77度38.3分と出て、精度はほとんど同じレベルでした。
 20分角の誤差はやや残念ですが、この高緯度ですと、誤差の実距離は4〜5nmのはず。3年前に天文航法の研究を始めた時、空港が視認できる距離との関係で、航法の許容誤差を10nmと見込んだことを思うと、取りあえず実用精度をカバーしています。低緯度ではどうなるのか、まだ少々不安ですけれども。

 図では省略しましたが、1219時にも機首正面付近でアルデバランを観測。高度角13.51度でした。ほぼ真東に飛んでいますので、LOPの算出結果は実用上、経度と考えてよろしいでしょう。得た数値は東経81度40分で、HUDの緯度経度表示をもとに誤差を試算したら、やはり約10分角だけずれていました。しかしこれは、推測航法で得た東経80度50分よりずっと正確でしたので、アプローチを前に、目的地の空港までの距離確認手段としても、天測は有意義な場合があることが実証できました。
 こんな場合は当然、「過去のLOPとの交点を作図して…」などと考えている時間はありません。いきなり得た1本のLOPを、とっさに単独で使うのです。「星が見えた。LOPが取れた。これは針路との相対関係で、何の役に立つだろう。緯度を意味するのか、経度の代用品か、予定コースの左右どっちにいるかを教えてくれるのか?」と、頭が突っ走って答えが出る感じです。まだ実際に試していませんが…例えば目的地の100nmかそこら手前で、何回もLOPを求め、うち1本が目的地を串刺しにする瞬間を選んで変針すれば、天測をNDBホーミングに近い感覚で使うことも可能です。(以前お話しした、フランシス・チチェスターがタスマニア海横断に使った、洋上で直角に近い変針をする独自の天文航法は、このような原理だろうと考えています)

 天測による航法は、まるでインターネット時代における、無線電信のようなものです。利便性・即時性・確実性の点で、GPSには絶対かないませんが、航法の根本原理をきっちり押さえたソリューションであり、オペレートする人のスキルによって、精度や使い勝手が大きく変化し、創意工夫の余地がふんだんにあります。天測をするナビゲーターは、いわば星の狙撃手であって、ナウシカのような「風使い」ならぬ、「星使い」への長い道を歩む、旅人のような気がします。

●●シベリア鉄道の橋の上で:
 1227時、予定より数分早く、滑走路の灯火の真上に到達。滑走路の配置を見ると、すぐ隣の空港だったので、変針して予定の空港へ向かい、ブレーキを開いてダイブに入りました。暗いので今回もILS進入し、無事に着陸。1239時(現地1839時)ごろ、灯火が点在するエプロンらしいところに乗り入れて、エンジンを停止。燃料残は、333.3Lbs(50.5gal)×2とたっぷり。やれやれ、盛りだくさんな旅でした。

 余談ながら、ノヴォシビルスクについて少々。この街はシベリア鉄道建設中の1893年に、大河・オビ川の架橋地点として建設され、最初は皇帝ニコライ二世にちなんで、ノヴォニコラエフスク(新しいニコライの街)と呼ばれましたが、革命後はノヴォシビルスク(新しいシベリアの街)と改名されました。
 「ノヴォニコラエフスク」時代の1925(大正4)年8月14日、この街に史上初めて、日本国籍の飛行機がやってきました。東京の代々木練兵場を出発して、モスクワ経由でロンドン、パリ、ローマなどを親善訪問した、朝日新聞のブレゲー19型「初風」と「東風(こちかぜ)」の2機です。
 1910(明治43)年に、同じ代々木練兵場で、陸軍の徳川好敏大尉が初の公式飛行をして以来15年。欧米からは、記録飛行に挑む長距離機が次々訪日しており、日本からもぜひヨーロッパへ…という悲願を、初めて実現したフライトでした。まだ国産機には無理な長旅で、定評あるフランス機を購入しての計画でしたが、未開地の多い全行程1万7000キロを、実質28日間で無事に翔破したのは見事です。これは、革命後のソ連が初めて外国機を受け入れたケースであり、モスクワでも中継地でも、大きな支援と歓迎を受けています。その一方ではシベリア横断飛行そのものが、ソ連への申請時には達成例がなく、ソ連側が許可寸前に滑り込みで、自国機による史上初横断を果たす…といった一幕もあったようです。

 この大飛行は、昭和30年代ごろまでは、子供向け「飛行機の図鑑」などに紹介されていましたが、最近は忘れ去られた感がありました。残念に思っていたら、2004年になってノンフィクション作家・前間孝則氏(もと航空エンジン技術者)の「朝日新聞訪欧大飛行」(講談社、上下2巻)が出版され、ようやく全貌が詳しく分かりました。「国家的壮途」に挑む緊張と栄光ばかりでなく、ハプニング満載の「珍道中」ぶりも程よく入り交じった、ヒコーキ好きには楽しい読み物です。
 久しぶりに読み返してみると、2機は1日平均1000キロを、基本的にノンストップで飛んでおり、最長の飛行区間は約1200キロで、当時のブレゲー複葉機とエンジンの信頼性に感心します。ほぼ全行程が地文航法で、例外的に推測航法を使った時は「羅針盤飛行」と呼んで、かなり緊張の連続であったようです。なので当然ながら、天文航法は使っていません。また無線電信機も搭載していませんでした。

 …私の東向きユーラシア・フライトは、今回のオムスク=ノヴォシビルスク区間で、西向きに飛んだ「訪欧機」の航跡と、向きは反対ながら、初めて重なり合いました。今回の原稿を書き終えるに当たって、ピラタスPC-9M改で再離陸し、現在のFlightGearが描くノヴォシビルスク上空を一周してみると、なかなかの大都会です。雲の垂れ込めた市街地を、緩やかに蛇行するオビ川には、白っぽい線路が交差しています。
 「あれが、シベリア鉄道か」と感動して低い雲の下に降り、橋の上をかすめると…ほぼ同じ高度を懸命に巡航する、緑色の塗装を輝かせた2機の複葉機と、一瞬すれ違ったような気分にも、なってくるのでした。
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なし バイカル湖を渡る

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 すっかり年の瀬になってきました。ロシアを東進する旅を急ぎます。今回は西シベリアの大都市・ノヴォシビルスクから、中央シベリアのバイカル湖へ向かいます。
 この区間は、前回ご紹介した大正時代のブレゲー19型複葉機「訪欧大飛行」と、ほぼ同じコースを反対向きに飛びます。当時のブレゲー機にとって、天候が急変するバイカル湖と、その西に広がる不時着不可能なタイガ(大森林)は有数の難所だったとか。当時をしのんで、バイカル湖の横断区間では、スタンプSV-4複葉機を使いました。全体に、若干のトラブルとスリルに見舞われたものの、ここぞという場面で天文航法が威力を発揮し、なかなか楽しいフライトを味わいました。

 コースは以下の通りです。
◎ノヴォシビルスク・トルマチョーヴォ空港UNNT 55-00-45.44N 82-39-02.36E
   ▼78.2度341.6nm
◎クラスノヤルスク・イェメリャノヴォ空港UNKL
   ▼109.1度236.8nm
◎ニツェユーディンスク空港UINN(タイガの中)
   ▼129.6度246.5nm
◎イルクーツク空港UIII(バイカル湖西岸)RWY113(ILS111.30)/293(ILS110.30)Elev1577ft →824.9nm
   ▼103.7度116.1nm
◎ムキノ空港UIUU(バイカル湖東岸奥)RWY08(True078)/26(ILS110.30) Elev1680ft
計941nm
 ほぼシベリア鉄道沿いの「へ」の字型コースです。ピラタスPC-9M改を使って第1区間は東北東、第2・第3区間はおおむね南東へ。バイカル湖南西岸の都市イルクーツクに着いたら、スタンプSV-4に乗り換えて、琵琶湖の50倍近い巨大湖を横断し、東岸の山あいにあるムキノ空港へ滑り込みます。地上が見える間は地文航法で位置を確認し、天候が悪ければ推測航法を使って、可能なら天文航法で補正する、という段取りです。

●●暗いシベリアの冬:
 画像は省略しますが、例によってAtlas画面を利用したコース図を区間ごとに作成。最初の区間では、出発から1時間後に太陽の高度を測定して、推測航法の精度を確認しようと思いました。となると、その時点で太陽を真横に見る(コースと重なるようにLOP=位置の線を描く)必要がありますので、あれこれ逆算して、出発時刻はUTC(協定世界時)の0401時(現地時間1101時)と決定。FlightGearを起動後、パソコンのクロックを調節し、やや余裕を見て0345時とします。
 まだ北緯55度にいて、季節は冬至が近いのですから、お昼前なのに早朝並みの暗さで、太陽は地平線から約5度にあります。しかし、雲は20000ftにscatterdのみ。風は高度10000ftで120度6.2Kt、24000ftでも125度6.3Ktと穏やかです。よろしい。燃料は念のため2800Lbsの満タンとして、ピラタスPC-9M改を始動。離陸後、高度10000ftまで左旋回上昇し、0355時に滑走路真上を横断して航法を開始。風が弱いので、針路の修正角は1度弱です。
 出発地・ノヴォシビルスクの市街地を東へ通過すると、シベリア鉄道の鉄橋が目に入りました。先が長いので、0400時から毎分2000ftで上昇を開始。巡航速度を稼ぐため、高度を30000ftに上げておくことにします。

 この区間の主な目印は、165nm先にあるケメロヴォ空港UNEEです。すぐそばを飛ぶはずなので、ちゃんと視認できればフィックス(確定位置)が得られ、天測は必要ないかも知れません。0408時に30000ftまで上昇して加速に転じ、間もなく206KIAS(342KTAS)に達しました。
 0420時、右アビーム(真横)に空港を視認。フライト・コードラントで俯角を計ると33度。この時点の電波高度計の示度(約29000ft)を基に、空港までの距離を計算すると、ざっと7nmでした。予定より少し早いけどオビ川の支流も見え、ケメロヴォ空港に間違いないでしょう。となると航法はかなり正確です。風をチェックすると、195度6.3Ktに変化していましたので、針路を微調整。対地速度は346KTASも出ていて、39分後の0459時にはクラスノヤルスクに着きそうです。よしよし、順調…。

●●大ショック、パソコンが勝手に再起動:
 位置が確定できたので、天測は当面必要ありません。のんびり飛行メモをタイプしていたのですが、どうもエディタの調子がおかしくて、時々勝手に改行してしまいます。原因はWindowsのようで、さっきから「更新ファイルをインストールしろ、再起動しろ」と、しつこくダイアログを表示していますが、長距離飛行の最中に、とんでもない!まだ数時間は、このまま動いてもらわなくてはダメです。再起動を断りながら続航していましたが、カーソルがジャンプしたはずみか、勝手に「OK」ボタンが作動してしまい…
              「ああああああああああっ!」
…と叫ぶ間に、FlightGearが終了しました。
休日の朝から針路計算し、コース図を作って、やっと離陸して、実時間のお昼前まで飛んだのに。モチベーションが、それこそガタッと落ちました。面倒な航法はもうヤメヤメ、さっさと最短時間で伊丹へ帰ろう、モンゴルあたりまでGPSオートで直線飛行だ、目覚ましを掛けて寝ちまうぞ…と一時は本気で思い。しかし一応気を取り直して、システムの手当をしてから、さっき視認したケメロヴォ空港で再起動しました。

 天文航法の誤差を小さくするため、シミュレーション内の時刻を、パソコンのクロック調整で決定している関係上、すぐに再起動すると機内時計も天体位置も、ほぼ「先ほどのお話の続き」の時刻になります。幸い風は205度3.8Kt、雲量は6400ftにscatterdと、引き続き飛行日和です。燃料を、ここまでの消費量を引いた程度の搭載量に再調整し、0456時に離陸。クラスノヤルスクまで、あと223nmもあるのは残念ですが、元気が出て来ました。再び毎分2000ft上昇を開始し、0515時に35000ftでレベルオフ、330KTASまで加速。
 太陽がほぼ真横に来ましたので、0514時00秒に天測したところ、予定コースの右わずか2.72分(=2.72nm)の線上にいることが分かりました。快調です。その後、風の変化による針路修正を行いながら、0542時にめでたくクラスノヤルスクの、イェメリャノヴォ空港UNKLを発見。ぐるりと旋回して空港真上を正確に通過し、次の区間の航法を開始しました。眼下を蛇行するのはエニセイ川。よく見ますと、シベリア鉄道と幹線道路が、互いにもつれ合うようにして、ほぼ川沿いに延びています。

●●タイガ上空、真昼の星を計測:
 風は35度3.8Ktと、引き続き穏やかです。下界はひたすら、広くて平らな荒野が続いています。計算では0624時に、次の中継地・ニツェユーディンスク空港UINNに到着の予定。0554時、さらに風速が1.3Ktに落ちました。イルクーツクまで500nm近いフライトですが、順調に飛べそうです。
 仮に天候が悪化しても、こちらは雲の上。昼間の星が幾つか見えます。右後方を振り返ると、お馴染みアークトゥルスが光っており、ニツェユーディンスク付近に着くころには、もっと真後ろ近くまで回り込むので、高度角を計れば、ほぼコースと直交するLOP(位置の線)が得られるため、前後方向の進出距離が分かると思われました。太陽と金星も視界内にあり、いわばNDBを3本受信しているようなもの。頼もしい限りです。

 …さて、順調に推移したフライトでしたが、だんだん雲量が増えてきて。私は0625時ごろ、ニツェユーディンスクの上空を通ったはずでしたが、空港を視認できませんでした。これは計算外で、あれこれズームを調整し、後方を探しましたが見あたらず。ロシアの空港には時々、ABN(飛行場灯台)がない所もあります。そのうち眼下に道路と線路が見えはじめ、向きから考えてシベリア鉄道および、ほぼ並行する幹線道路だと思われますので、一応オンコースと判断しました。
 実世界ではそろそろ、針葉樹の巨木が密生する「タイガ」地帯です。かつては空き地というものがなく、シベリア鉄道の線路上にまで枝が伸びていたそうで、不時着場所はゼロ。エンジンが止まったら最後、梢に衝突して墜ちるしかなく、多くのソ連パイロットが犠牲になったそうです。現在はどうかというと、鉄道の支線や道路などが相当たくさん視界に入りますので、少なくとも軽飛行機なら、何とかなりそうです。

 イルクーツク到着は0720時くらいになるはずですが、通り過ぎてもバイカル湖が見えるし、北からはエニセイ川の支流・アンガラ川が近づいてくるはずなので、少しでも雲に切れ間があれば、まず迷わないでしょう。しかし念のため、天測をしておく方がベターです。周囲の空を見渡すと、金星とアークトゥルスが、ほぼ直角の位置関係になっています。これはうまい。LOP(位置の線)をプロッティング・シート(天測位置決定用図)に描き込めば、ほぼ直角に交わります。恒星や惑星の天測は本来、3天体かそれ以上を測定するのですが、位置関係が直角なら2天体でも、かなり高精度の測位が出来そうです。
 0650時に金星を、2分後にアークトゥルスの高度角を取って、素早く計算。結果を位置決定用図に作図し終わったのが0706時でした。図から得た緯度経度(53-38.7N 101-26.5E)を、Atlas画面利用のチャート上に落としたら、自機はゴールのイルクーツクから見て、予定コースの5度南にいました。これに従って針路を変更し、一連のドタバタ作業が終わって、やっと機外を見たら、いつの間にか天候急変。眼下は一面の雲海で、地表はまったく見えませんでした。天測と計算をしておいて良かったと、つくづく思いました。予定では0715時にイルクーツクに着くはずです。

●●ピンポイントで空港ヒット:
 どこまで飛んでも雲また雲。やがてイルクーツク到着予定の0715時がやってきました。ゼロ秒の瞬間、一気にスロットルを絞ってブレーキ展開、60度近い急バンクで左旋回降下を開始。シベリアには高い山がありませんから、このまま同一地点で螺旋降下を続け、雲海を突き破る作戦です。23000ft付近でovercastの雲に入りましたが、天候メニューの表示では厚さ1000ftしかないはずの層が、実際はずっと厚くてなかなか抜けず、3000ft近く灰色の世界を降下しました。万一、シーナリーの描画異常が起きていて、雲を抜けても薄青い虚空しかなかったらどうしよう、と思ったくらいです。ようやく下に抜けると、高度11600ftにまだbrokenの雲が広がっており。これが割に密度のあるレイヤーで、うまく地上が見えません。ふと右(バンク中なので実際は上)を振り返ると、いま抜けてきたovercastの雲が、黒く覆い被さっていて不気味な光景。旋回急降下のまま、もう一層雲を突き破ります。さて、下は平野かバイカル湖か、それともイルクーツクか。

 おおおおおっ?…ありゃなんだ、話がうますぎるぞ(^^;)。
キャノピーの左、主翼付け根のすぐ前、つまり機体の真下近くに、滑走路がぐるぐる回転しながら、せり上がってくるのが見え。予測外の高精度で、イルクーツク空港に的中しました。二つの星から位置を出すには、観測の間が開いてはダメです。また位置決定後は直ちに進路修正しないと、時間経過と共にどんどん誤差が累積して、せっかくの測定が無意味になります。なので、突っ走るように観測・作図・計算を進め、ドタバタで修正値を出して推測航法し、最後に手探りで雲中降下した結果が、ピンポイントの標的ど真ん中。これは感激でした。高精度であったことはもちろん、最近は何度観測しても大外れをしなくなり、天文航法に信頼性が備わってきたことが、さらに嬉しいです。
 蛇行する川の彼方に、ちらりと鉛色のバイカル湖が見えました。さらに降下し、市街地の上で反転して東向きに滑走路へ進入。この空港も…グライドパスのそばに、邪魔なビルがありますな。うまく降りて誘導路で停止し、燃料残を計ると377.1Lbs(57.1gal)×2。まだ1時間くらい飛べる感じでした。FlightGearが落ちたとき、計画を変更して、GPSオートでモンゴルへ抜けたりしなくて、本当に良かった。今回の旅で、もっとも印象的な体験を逃すところでした。

●●バイカル湖を越え、谷間の街へ:
 イルクーツクからは、スタンプSV-4複葉機を使います。胴体に書いた愛称「初風」は、86年前の朝日新聞「訪欧機」2機のうち、1機の名前と同じです。3000Lbs近く燃料を積むピラタスPC-9M改に慣れると、満タンで142Lbs(23.7gal)というのは、さすがに頼りない感じがします。風も11Kt出て、少々天気が心配。テール・ドラッガー(尾ぞり機)の操縦は久しぶりですので、荒れて欲しくありません。

 0735(現地1535)時にエンジン始動。3000ftにbroken、11000ftにovercastの雲がありますが、今回は層がやや薄く見えます。まあ、たぶん大丈夫…行くかぁ。
 0749時、7000ftに上がって150度100ノットを維持。上昇に燃料の1割を使ったので、85Ktまで減速しました。この状態でスロットル開度は70%くらいです。0757時、いよいよ凍結した湖上へ。
 バナナみたいな形の湖の南西岸から、湖の中央付近に出て少し北上し、東岸へ渡って、湖に流れ込むセレンガ川の河口デルタを探す予定です。この川を遡上すれば、そのまま低い山筋の背後に回って、ムキノ空港UIUUが見つかるはず。海岸からいきなり、山一つ越えてしまえばすぐですが、バイカル湖は天候が激変するところだそうで、もし荒れまくってシーリング(雲底高度)が地面すれすれに下がったら、どうなるかと心配です。航法無線が全くない複葉機に乗っているので、ここは慎重にAtlas画面のプリントアウトを見ながら、低空で川沿いに迂回コースをたどることにします。

 湖面は凍結して、暗い鉛色。頭上には一面に雲があり、下方にもだんだん雲海が広がって、サンドイッチの具になった気分です。背後も雲に閉ざされ、出発した西岸は見えません。正確な機位はつかめないものの、全部で52〜3nmも飛べば、取りあえず陸に上がるはずです。雲の下に出ておこうと、付近の山より高いはずの5500ftを指して降下。ふわりと霧に吸い込まれ、白い空間を手探りで飛行。数分後、スポンと晴れ渡った空に飛び出し、はるか前方に陸岸が見えました。
 その後も、雲に視界をふさがれたり晴れたりを繰り返し、やっと陸上へ。いつの間にか陽が傾き、地上に明かりが点きました。シベリア鉄道が再び眼下に見え、やがてセレンガ川を発見。川に沿ってゆっくり東進すれば、もう迷う心配はなさそうです。
 風が強まる夕焼けの中、低い山をかわして東の谷間へ進入。セレンガ川の中州や周辺に、ウラン・ウデの街の灯が広がります。夕焼けの照り返しが、山肌に微細に反射して映え、美しい光景です。現在のFlightGearは色彩の変化も豊富かつデリケートで、夕景はつくづく手の込んだものになりました。

 0908時、空港を視認。ABNはありませんが、主滑走路の明かりが見えます。しかし風向がまずく、16Ktの風を真横から受ける形です。横風用滑走路はあるものの…照明がありません。折しも黄色い夕焼けが、赤紫に変化する時間で、山陰の地表は刻々と暗くなって行きます。ほとんど見えない横風滑走路に風下から進入し、何とか1回バウンドしましたが、それ以上うまく減速してくれません。
 ゴーアラウンドして、ますます暗くなる滑走路に接近。機外ビューなら、まだ何とか路面が見えますが、肝心のコクピットビューは風防ガラスが暗く、ずっと見えにくくなります。再び路面にタッチしたものの、どうしてもバルーニングして、行き足が止まりません。
 やっと気付いたのですが、スロットルが開度約30%で固着していました。もう横風用滑走路は見えないので、主滑走路で勝負するしかなく、燃料コックのチェックマークを外してエンストさせ、機首を高く上げて尾ぞりから落とす気持ちで、デッドスティック・ランディング(無動力着陸)を決行。軽く3バウンドしただけで、何とか機体を止めました。これが3車輪機でしたら、横風30Ktでも大丈夫ですが。テール・ドラッガーとなると、半分の風速でも緊張します。あかね色の残照が、つくづく目に染みる気分でした。
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なし 子午線の旅・ゴール

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。本年もどうぞよろしくお願い致します。実世界では、日本は多くの難題を抱えていますが、どうか平和で希望の多い年になりますように。

 さて、天文航法と地文航法を主に使う、私の「GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅」は今回、シベリアから馬力を掛けて国内に戻り、一挙にゴールを迎えました。
 バイカル湖からモンゴルのウランバートルに出て、次は北京で給油するはずが、手違いで長時間離席している間に、飛行機は東シナ海まで進んでしまいまして…「えーいっ、このままノンストップで福岡まで行ってしまえ!」となって、あっさりと帰国。岡山県の岡南空港で、スタート時にロンドンのグリニッジ子午線(経度ゼロの線)を越えたのと同じ、スタンプSV4複葉機に乗り換え、ゴールラインに決めた日本標準時子午線(東経135度)の真上に建つ、明石市立天文科学館前を通過し、ほぼ赤道3分の1周に当たる長さの旅を終えました。この天文科学館は今回、新たに3Dオブジェクトを作ったのですが、苦心の末、ちゃんと時計台の針が動くようにプログラムできて、私としては大満足です。スタンプSV4で母港の伊丹RJOOに帰着後、もう一度岡南飛行場から同じ区間を、ピラタスPC-9M改でも飛び直しました。

 モンゴルの金持ちは、ドイツでベンツを買うと自宅まで運転して帰るそうで、「遊牧民にとって、1万キロのドライブは全然苦にならない」のだとか。私も今回、ピラタス社のあるスイスから伊丹のhide格納庫まで、PC-9M改をフェリー(機体空輸)したことになり、ちょっぴり遊牧民的な気分になりました。ちなみに、離陸地点となったロンドン南部・ビギンヒル空港から、着陸地・伊丹RJOOまでの全航程は6956nmで、使用機の内訳はスタンプSV4複葉機が計520nm、ピラタスPC7改が435nm、新たに常用機に採用したピラタスPC-9M改が6018nm。ドイツの「二つの秘密基地」のお話の際に、レヒリンからペーネミュンデまで試乗したピラタスPC-21が63nmでした。一部区間が重複するため、機種別合計は全航程と一致しません。

 では、最終回のコースをご紹介します。
(Elevは空港の標高、Magは磁気方位、MagVarは磁気偏差、Trueは真方位、記載無しも真方位)
◎ムキノ空港UIUU(バイカル湖東岸奥)RWY08(True078)/26(ILS110.30) Elev1680ft
   ▼186.2度239.3nm
◎チンギスハーン国際空港ZMUB Elev4364ft MagVar004W RWY-14(True136deg ILS110.30)/32
   ▼137.7度630.2nm
◎北京空港ZBAA MagVar006W RWY-18L(True173 ILS109.30)/36R(ILS109.90)
   ▼125.6度276.5nm
◎威海空港ZSYT VOR112.50 ←ムキノから約1146nm
   ▼132.9度342.9nm
◎済州国際空港RKPC VOR109.00 Rwy06/24(True058 ILS109.90/238 111.30)MagVar006W
   ▼85度165.7nm
◎壱岐空港RJDB VOR113.20 NDB355
   ▼98度30.7nm(Mag105度)
★福岡VORTAC-DME 114.50 (RWY True150-ILS111.70)MagVar006W
   ▼Mag77度34nm
★新北九州空港VORDME 113.85 (RWY True169-ILS109.15)
  ▼Mag83度55nm
★玖珂VORTAC 114.30
   ▼Mag87度98nm
★高松VORTAC-DME 117.50
   ▼Mag002度16nm
◎岡南空港RJBK RWY-09/27
   ▼Mag90度53nm
△明石市天文科学館・日本標準時子午線
   ▼Mag107度13nm
◎神戸空港RJBE
   ▼Mag56度14nm
◎大阪国際空港RJOO
1625nm

●●朝青龍関のふるさとへ:
 バイカル湖の東岸から、山一つ越えた地方都市、ウラン・ウデ(赤いウデ川)のムキノ空港で、飛行を再開します。
 この街は人口38万人で、ブリヤート共和国の首都だそうです。例によって、初めて知る国名・地名でしたが、北京へ伸びるシベリア鉄道支線の基点であり、ミル・ヘリコプターの大工場がある航空産業都市だとか。ロシアはもともと人口密度が希薄ですが、スターリンの時代に国防上の理由から、工場をどんどんウラル山脈周辺と、もっと東のシベリアに疎開して、飛んでもない縦深性(地理的奥深さ)を持った工業国家になりました。ナチス・ドイツはご存じのように、モスクワ以東も爆撃できる4発の「ウラル爆撃機」開発を試みましたが、途中で放棄しており、旧ソ連の工業疎開政策は大成功だったと言えそうです。

 さて、そのムキノ空港で0053時(現地0653時)に起動したら、オレンジ色の朝焼けが見事でした。305度の風8.8Ktと順風です。モンゴルの首都、ウランバートルのチンギスハーン国際空港までは約240nmしかないので、燃料は軽めに1500Lbsもあれば十分。航法ワークシートは、すでに伊丹まで出来ています。
 0058時エンジン始動、0100時離陸。間もなく高度24000ftで定針。地平のすぐ上に太陽が見えますが、雲は比較的多く、5000ftにscatterd、12000ftにbrokenでした。気速は222KIAS(312KTAS)で、46分後にはウランバートルに着く予定です。セレンガ川を右に見るコースですが、この雲では視認できません。かわりに前方に昼間の星が見え、航海フリーウェア「Navigator Lite」に現在時刻と推測位置を入力して調べてみると、お馴染みの恒星、アークトゥルスだと分かりました。
 太陽との方位は、60度くらいの深い交角を持つので、必要な場合にそれぞれの高度角を計れば、かなり高精度で緯度経度が出そうです。言わばお守りを、天球に飾っている気分ですね。

 0121時、大地がせり上がってきて、モンゴル高原に差し掛かる気配。あと数分でたぶん、モンゴル領に入ります。幸い雲が切れて0128時に大きな川が見え、コース図と照合したところ、北緯49度45分くらいにいると判明。さらにコースをごくわずか、西へ外れていることが分かり、針路を修正。天気メニューから風を調べると、335度1.3Ktになっており、修正の正しさを確認しました。本来は地形を見て得たフィックス(確定位置)から、風向風速を算出しなくてはならないのですが…今回このあたりは、作業を簡略化しております。
 やがて眼下に、たくさんの線路が見え始め、正面付近に空港を視認。0151時ジャスト、空港の東側アビーム(真横)約1nmのところを通過。松山市より小さな市街地が視界に入り、これが首都ウランバートルです。幾つもの細長い湖が、ほぼ東西に四つか五つ並んでおり、その間に市街があります。朝青龍はこんな眺めを機上から見て、「ああ、帰ってきた」と、ほっとするのでしょうね。街の東側は谷の出口、西が高原で、温泉でも湧きそうな地形です。風光明媚な印象ですが、湖のように見えるのは、実は大きな砂地だと分かりました。乾燥した高原の国ですが、恐らく夏は非常に美しい土地だと思います。
 エンジンアイドル、降下。空港に南から進入。北は湖みたいな砂地に面しているが、南は山があるので、ちょっと邪魔になります。滑走路をもっと東西向きにすればよさそうですが…卓越風の関係で、たぶんダメなのでしょう。0200時、ランプインしてエンジン停止。燃料残は456.4Lbs×2。

●●いつのまにやら北京を越えて、海の上:
 日を改めて、北京に向かいます。燃料は満タン2800Lbs搭載し、離陸。0228時に高度20000ftで巡航開始。まもなく上昇率1500ft/minで上昇を始めて、真大気速度282〜283KTASを維持。眼下はうっすら雪をかぶった荒野の高原で、標高は4000ftくらい。機体の右下同方向に、シベリア鉄道の支線とアジアハイウエーの3号線が走っています。0349時に37000ftまで上がって、あと560nm105分で、0529時に北京着の予定です。
 0401時、ぴたり真正面(0.13度の違い)に金星が見え、高度角を計ると11.39度。コースと直角のLOP(位置の線)が得られたため、DME代わりに利用して進出距離を確定し、推測位置より5.84nm手前にいることが判明。到着予定時刻を0534時に修正しました。
 0429時、灰色に凍結した巨大湖のようなものに差し掛かりました。この場所に、そんな湖や海があるはずがないし、表面には道路と鉄道が走っており…これは、ゴビ砂漠の東の端でした。5分ほどで通過して、また植生のある冬景色に戻りましたが、アジアは何だが、底抜けに広いです。
 ここで私は、ウイングレベラーを使って定針したまま、ちょっと中座して買い物に出ました。1時間足らずで帰ってくれば、ちょうど北京の上あたり、という計算だったのですが…道路が混雑して、パソコンの前に戻ってきたのは2時間ちょっと後の0646時。機体はとっくに北京を過ぎ、大海原の上を飛んでおりました。

 ここは黄海か、それとも東シナ海か。一体どこへ向かうべきか。Atlas画面をプリントアウトしたコース図は、まだ北京までしか作っていません。ただしAtlasを、FlightGear非連動で単独起動して、地図代わりに使う用意は出来ていますし、燃料も念のため満タンにしてきたので、このまま日本まで飛ぶことも出来ます。ともかく現在地を確定しなくては。

 まず推測航法です。航法ワークシートを参照すると、最後に推測位置を出したのは2時間22分前で、そこから346KTASで飛んでいるため、818.8nm来たはずです。ざっと北京から137度へ188nmの地点で、北緯37度50分、東経119度25分くらいのはず。するとまだ黄海ですが…実際は燃料を消費して軽くなり、かなり気速が増しているため、この数値はまったく当てになりません。
 そこで天測です。南に金星が見えたので、高度角を計ってLOPを決定。この時の位置の線は、ほぼ東西方向に走っているので、測定値を緯度と見なしても大きな差は出ません。結果は北緯35度1分と出ましたが、間もなく、慌てて観測時刻を間違えていたことが判明。再計算では34度46分でした。するとここは東シナ海…それも、すでに韓国南岸より南に来ています。経度は、推測計算では東経122度7分。ならば中国東岸が見えるはずですが、これも実際は、もっと東へ来ているはずです。天測で得た緯度を基に、経度もざっと推測すると、115度の方角236nmあたりに、中継地点の済州島があるはずです。ただし、一連の計算を終えたのが0708時で、この間にも機体は飛び続けているため、済州島はもっと近づき、108度170nmあたりに来ていると判断。取りあえずこの計算が正しいとして、0710時にコースを108度に変えました。「ポーズ・キーを使わない、ガチンコ航法」に切り替えて以来、計算や判断に要する時間の重みを痛感します。
 次は燃料の心配です。残りは約800Lbs(120gal)なので、最低でも400nmくらい飛べて、福岡までは持つでしょう。しかし現在地がどうも怪しいので、NDBで確認することにしました。

●●最後は電波を使って、福岡へ進入:
 韓国南部の木浦NDBを受信すると、局の方位は左真横、真方位で30度です。長崎の福江NDBは102度に聞こえて、機首の正面から10度ほど左。これをもとに、Atlas画面上に自機の位置をざっと描くと、北緯33度16分、東経125度19分あたりにいるようで、済州島は東南東ではなく、むしろかすかに北寄りのようです。結局、NDBだけでは現在地の精度に確信が持てなかったので、最終的にはVORを受信して、済州島上空に到達。続いて対馬と長崎県本土の一部を視認し、壱岐VORを通過。はるかかなたに、福岡空港のABN(飛行場灯台)が視認できました。やれやれと、150KIASに減速して降下を開始。0808時、陽が傾いて地表のあちこちに灯りが点きました。

 福岡市の北、志賀島上空を通って、東西に伸びる砂州「海の中道」にある福岡VORTAC上空から、福岡空港に向けてファイナル旋回。実世界の福岡VORTAC局(あるいは、併設の航空交通管制センター)は、真上にレーザービームを発射していますが、あれと同じに見える輝線のオブジェクトを、3Dで作っておけば良かったなと思いました。オレンジ色の夕焼けの中、明るく照明を点した福岡空港の滑走路に、ピタリと機首を向けます。滑らかにタッチダウン…帰国です。実世界なら通関や検疫が必要ですが、福岡空港の国際線って、東西どっち側のターミナルだっけ? 0821時、微かな記憶で西側に駐機してエンジン停止。あとで調べると合っていました。燃料残102.8Lbs(15.6gal)×2。

 東シナ海では天文航法を使って、楽勝で現在地が出せると思いましたが、2時間あまり飛び続ける間に推測航法が不正確になり、天測計算の出発点となる推測位置が大きく揺らいでしまい、かなり慌てました。無人飛行の2時間あまりの間、なるべく速くと思ってスロットル全開のまま、実際の巡航速度を大きく超過する値をオートパイロットに入れて飛んでいたため、燃料消費が進んで機体が軽くなると共に、どんどん実速度が上がったのが誤差の原因です。やはり巡航速度は、きちんと一定の値に縛っておくべきでした。
 次に、NDBを使ったクロス・ベアリング(複数の無線局からの受信方位線を、地図上で交差させて現在地とする。電波による「位置の線航法」)が、かなり不正確だった問題ですが…これは、計測の順番が不適切でした。どの航法の教科書を見ても、「針路に対して前後方向にある、なるべく遠い目標を先に測定すること。横方向、特に近くにある目標は、測者から見て速く動くので、後で測定して素早く作図すること」などと書いてあります。私は逆に、真横にあたる木浦NDBを先に測定し、たっぷり数分考えた後で、ほぼ正面にあった福江NDBを測定しましたので、位置を得た時点では、既に機体が数十nmは先へ進んでいたと思われ、かつ計測終了時の時刻の記録がやや曖昧で、誤差と混乱が大きくなりました。
 300Ktを超える対地速度で飛ぶ航空機の場合、どのような航法を使うにせよ、あっという間に自機の位置が変わることは、強く意識しておくべきです。こう考えると、位置の線をクロスさせるタイプの航法は不向きで、ベクトル一本で位置が確定するVOR/DMEの方が、高速機に適しています。そのVOR/DMEも、かつて練習したコンコルドの超高速では受信圏が狭すぎて不便で、やはりGPS+FMS画面が必要になってきます。多くの中継地点をたどる場合、VORをGPSに切り替えたくなる境界は、ちょうどジェット旅客機の巡航速度か、その少し上あたりでしょうか。

●●区分航空図とSID/STARの世界:
 実に半年ぶりの国内飛行。福岡から、岡山県の岡南飛行場に向かいます。2358時(ローカル0858時)にFlightGear起動、南の風、10000ftで180度7.8Kt。雲は4000ftにfew、16000ftにscatterd。燃料はデフォルトの約1000ポンドとします。
 久しぶりに国内の区分航空図を開くと、やはりSIDに沿って飛ばなくては申し訳ない気分になり、参考書を取りに本棚へ。ええと、「ヤメック1」ディパーチャーを試すことにしましょう。南へ離陸して、福岡VORTACの160度ラジアル22nmにある通過点「YAMEK」に到達し、左旋回。豊田VORのラジアル209度をインターセプトして、豊田から47nm地点を6000ft以上で通過。福岡VORTACの081度ラジアル「タガワ・トランジション」に乗って、玖珂VORに向かう…といった段取りです。

 0920時、福岡離陸。0926時にヤメック通過。ちょっと大回りになって豊田VORを捕捉。0927時、47nm地点を通過。ほぼ所定のコースをたどっていますが、ヤメック上空で右下に鳥栖ジャンクションを確認したほかは、ほとんどまったく計器とルート図以外、何も見る余裕がありません。計器飛行って、こんなだっけ。ようやく外を眺めると洞海湾、右に新北九州空港が見え。海自・小月のABNが点滅したと思ったら、VOR1に福岡VORTACの81度ラジアルが迫ってきました。0831時にインターセプトして、まもなく北九州空港の上空を15000ftで通過。0935時、山口宇部空港のすぐ南を通過。きっちりオンコースです。と思ったら、今度は空自の防府基地ABNが見えます。つくづく日本は狭い国ですね。はるか上空には、金星、月、太陽、アークトゥルスが輝いているのですが、いまはただ愛機を、見守ってもらうことにしましょう。

 岩国基地視認。すぐ玖珂VORTACに差し掛かり、通過時に92度へ変針。玖珂の5nm手前から、懐かしい松山空港のABNを遠望。広島西飛行場が見え、最近設置された原爆ドームの3Dモデルを、ドアップで探しましたが、確認できませんでした。西ヨーロッパを巡航していると、空港の多さに感心しますが、こうやってみると日本も、さすがに高密度です。高松VORの手前で、着陸地の岡南空港を確認。降下しつつ150nmに減速し、0105時、高松VOR上空5000ftで左へ直角にターンし、岡南空港に機首を向けます。3000ftまで降りながら接近し、ダウンウインド・レグの中央へ45度に進入するVFR形式のコースを取って、東から滑走路へ。横風ながら微風で、0113時に着陸。誘導路に入れてエンジン停止、燃料残は246.7Lbs(37.4gal)×2でした。日を改め、スタンプSV4で明石、そして伊丹へ、最終航程を飛びます。

●●東経135度線へ:
 早朝にスタンプSV4を起動すると、JSTの0611時。夜明け前で地平線が真っ赤です。明石のゴールライン通過時刻を考えて、0844時(UTCの2344時)に調整。雲は1800にfew、2800にscatterd、10000ftにbrokenと、あんまり良くない天気です。315度15Ktと、ゆっくりペラが回るほどの風が吹いていて、パーキングブレーキを掛けていても、機体の位置と向きがずれてきます。だがまあ、低空なら地表は見えるはずです。
 UTCの2351時(ローカル0851時)、エンジンを始動。すぐ離陸。右へ旋回して磁気方位の真東に機首を向け、軽くトリムを取って上昇飛行。2800ftから続く雲を抜けて、3050ftくらいでレベルオフ。しかし雲が邪魔で、結局スロットルを絞り2500ftまで降下。速度は80KIAS、針路は磁気方位75度くらいに取って、海岸線を東へ進みます。家島が見え、現在地は赤穂のあたり。かなり偏流があり、7度近く逸脱している感じで、まことに複葉機らしい、鈍足フライトの始まりです。

 0018時(ローカル0918時)に、ようやく姫路上空。水平線に明石海峡大橋が見え、30分弱で40nmを飛びました。風がどんどん強くなって20Ktを超え、0020時には、なんと305度の30Ktに。伊丹に降りる場合は、ほぼ滑走路が向かい風になりますが、神戸空港は横風となり、着陸困難でしょう。いまさらどうしようもないですが、幸い燃料は8割近くあるので、伊丹まで十分に持ちそうです。雲底高度が上がり、眼下に山陽道らしいものが見えました。
 0025時、関空と神戸空港のABNが点滅しています。60Ktで降下を開始。明石市街地が見え、山陽線に沿って500ft以下に降りて、市立天文科学館の時計塔を視認。低空で近づいて0031時ごろ、時計塔の真南を通過。東経135度線、ゴールです! ぐるりと回ってもう一度、西側からローパスし、写真を撮りまくりました。

●●明石市立天文科学館:
 この建物は日本標準時のシンボルとして1960年に造られ、天文や地球に関する展示とプラネタリウム、各種の日時計、太陽の子午線通過を観測する装置などがあります。高さ54mの塔に設置された大時計の文字盤中央が、ぴたり東経135度だそうです。時計のそばの看板に、「SEIKO TIME」と大書してあるのが、いかにも時代を感じさせますね。精工舎(当時)の時計が、初めてオリンピックの計時に使われるのは、この4年後の東京大会で、スイス製以外の時計の採用は五輪史上初という、なかなかの快挙でした。

 ここでイギリスに目を転じ、グリニッジの旧王立天文台をストリート・ビューで訪れると、黒ずんだ古い煉瓦造りの建物の一角に、ポスターくらいの白い表示板があって、本初子午線を示す赤線が描かれ、
             「PRIME MERIDIAN OF THE WORLD」
と文字が並び、その下にグリニッジ標準時のデジタル時計がはめ込まれています。英国趣味の地味な演出ですが、その意味するところは大であって、「ここが地球のセンターライン。私たちの先人が作った、世界の緯度の原点だ」と、大声で宣言しているようなものです。イギリスで「近代化遺産」というと、これとか、ジェームス・ワットが発明した蒸気機関1号機、スティーブンソンの試作機関車…などが目白押し。うらやましい限りです。日本で近代化遺産というと、イギリスから買ってきた煉瓦を、単に積み上げた倉庫だったりしますからね。なので、せめてFlightGearの日本標準時子午線には、少し見栄えのする標識が欲しい、と思いました。

 天文科学館は、よく見ると複雑なカーブを持ったビルなので、灯台のような時計塔だけ作ろうか、とも思いました。しかし同館のホームページに、各階の簡単な見取り図があり、Photoshopで歪みを取って平面図に戻すと、何とか原画に使えることが分かりました。プラネタリウムの直径が分かったので、図面上の尺度も得られ、外観写真を集めて少しずつ工作を進めた結果、何とかそれらしく見えるものが出来ました。モデリングの座標軸は時計塔の中央に合わせ、シーナリー上の135度0分0秒に設置してあり、経度のずれを実測すると0.0秒角未満です。誤差はたぶん、スケールサイズにして10儖米發世隼廚い泙后
 せっかく日本標準時を示す子午線上にあるのですから、時計の針も実際にJSTに合わせて動かそうと思い、FlightGear.orgのオブジェクト集を見ましたが、時計塔の作例は見つからなかったため、ピラタスPC-9Mのパネル時計と、伊丹で私が借用しているライプチヒ空港管制塔の、レーダーを回すためのスクリプトを参照して、時計の針を動かすプログラムを書きました。

●9時間の時差を組み込む方法:
 ポイントは、internal properties/instrumentation/clock/indicated-sec を参照し、factorを6(1秒間に6度進む)とすれば秒針、同じく0.1(1秒間に0.1度進む)とすれば長針、同様に0.008333(1秒間に0.008333度進む)とすれば短針のスクリプトが出来ますが、このままではUTC表示になってしまいます。JSTにするには、この短針のindicated-secの値に、UTCとの時差である9時間(32400秒)を足す必要があります。私はNasalが分からないのでスクリプト内部では計算が出来ず、困ったことになったと思いました。しかし、指針の表示角については、針を動かす記述を繰り返せば、アナログ的に針の作動角の足し算をしたのと同義ですので、internal propertiesに用意されている、UTCとの時差の秒数を呼び出して、もう一度短針を動かす記述を行いました。
 短針(Hour-hand)部分の記述だけを取り出して、以下にお目に掛けます。

  <animation>
    <type>rotate</type>
    <object-name>hour-hand</object-name>
    <property>/instrumentation/clock/indicated-sec</property>
    <factor>0.008333</factor>
 <center>
  <x-m>0.0</x-m>
  <y-m>-4.65</y-m>
  <z-m>46.1</z-m>
 </center>
    <axis>
      <x>0</x>
      <y>1.0</y>
      <z>0</z>
    </axis>
  </animation>

  <animation>
    <type>rotate</type>
    <object-name>hour-hand</object-name>
    <property>/sim/time/local-offset</property>
    <factor>0.008333</factor>
 <center>
  <x-m>0.0</x-m>
  <y-m>-4.65</y-m>
  <z-m>46.1</z-m>
 </center>
    <axis>
      <x>0</x>
      <y>1.0</y>
      <z>0</z>
    </axis>
  </animation>
 この記述を使えばコクピットに、ローカルタイムを表示する補助時計を設けることも可能でしょう。
(後日、東京のシーナリーをUFOで探査し、NTT-DoCoMoビルの壁面に時計を発見して、作者さんが私と違う方法で針を動かしておられることを知りました。が、JSTへの換算方法は分かりませんでした)

●●わが家へ:
 雪をかぶった六甲をスタンプで超え、逆瀬川(宝塚市)方面に降下。母港・伊丹の主滑走路の風下側45度から接近して、少し早めにベースレグに入り、1248ごろ、325度14Ktの風の中を、スムーズに着陸。10分近く掛かってタキシングして、「World Cruise」のマークが懐かしい、わが格納庫前で停止。燃料残は91.7Lbs15.3galで、タンクの6割強ありました。ロンドンのビギンヒルを離陸し、グリニッジ子午線上空からシベリアを越えて、本当に帰ってきました。長らく夢見た天文航法の実用化という、大きなおみやげ付きです。また倍速モード(Aキー)をほとんど使わず、ひたすらリアルタイムで飛び続けた「等身大の旅」でもありました。

 一休みして、ピラタスPC-9M改で同じ岡南=伊丹間のショートコースを飛行。離陸して右旋回、4000ftに上昇しながら岡山VORTACのラジアル133度をつかんで小豆島に出て、小豆VORDMEに乗って東進し、明石海峡ごしに神戸空港ABNを見通すラインで飛び続け、大阪NDBに案内してもらって、ファイナルアプローチ。右40度から25Ktの風を食いながら、FlightGearでは結構難しいウイングローが、この日はうまく決まって、風上側の脚から滑らかに着地。0330時、格納庫前に停止。傍らを急上昇してゆくAIの777が懐かしいです。

 長文で失礼しました。次に取り組みたい長距離フライトと使用機は、すでにある程度、具体的にイメージが見えていますが、当分はのんびりと国内で、各種の勉強やオブジェクトの工作などを進めたい気分です。
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なし 3種の横風補正法

msg# 1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-1-17 9:49
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 今回は趣向を変えて、操縦のお話です。着陸時の横風補正を中心に、操舵について最近得た情報や、ささやかなトレーニングの成果をご報告します。

 半年にわたって連載させて頂いた、ロンドン・グリニッジから明石への長距離飛行の間、私は天文航法と地文航法を、予想以上にうまく使いこなすことができて、とてもハッピーでした。しかしナビゲーション研究と長距離飛行、航空史の追体験フライトなどをテーマにしていると、操縦自体の勉強やテクニック向上、リアルな飛行ルールの学習などは、疎かになる傾向があります。
 航法は知的スリルに満ちた精度勝負の世界ですが、操縦には感覚的興奮を伴うスポーツの要素もあり、シミュレーターの改良が進む中、もっと両方を楽しまなくては…という気がしまして、ロンドンからの飛行では、「これが一段落したら、操縦の基本を勉強し直そう。スキルアップしよう」と、何度も考えました。

 素人が勉強する場合、ネットや雑誌などでも、非常に多くの情報が得られますが、こうした断片的な知識を適当に繋ぎ合わせていると、思わぬ誤解をするケースが、ままあります。私の天文航法研究も、過去にこうした失敗があり、昨年になって航海用のプロ向け教科書を買ったところ、一気に理解が進んで実用化に成功しました。なので今は、体系的に編集された教科書や教則本の威力を、改めて痛感しています。ところで、操縦に関する私の主要な参考書は、子供のころ買った「軽飛行機の操縦★上級編」(航空情報別冊、1973年)です。数年前に蔵書の中から「再発見」し、大いにバーチャル・フライトに活用しましたが、上級編なので、離着陸のコツなど最も基本的なエアワークは載っていないし、GPS登場のずっと前(NDBがまだ、国内にたくさんあった時代)の内容で、さすがに古く感じられるため、新しい本を探すことにしました。

●●航空グッズ店「オントップ」にて:
 兵庫に住む私が利用するのは、大阪・日本橋電気街のビル2階にある「オントップ」です。1階は無線機の専門店で、終日エアバンドなどの音声が流れています。狭い階段を上っていくと、壁際に往年の名機(高校時代に使ったアマ無線機もあり、感激)が積まれ、見とれながら着いた2階には、実機のジャンク計器などがゴロゴロ。小さなお店ながら、航法用具やニーボードなどパイロット用品、操縦三点セットやパネル系デバイスを装備した3画面シミュレータ(FS2004搭載)とアプリ、航空DVDや電動ラジコン機、ダイキャスト模型、そして書籍と書類・チャート類の本棚などがぎっしり並んで、空好きには文字通り…宝の山。

 真剣に立ち読みの末、今回は「飛行機の操縦 基礎編」(土屋正興、鳳文書林)と、同じく「航法編」を買いました。筆者は航空大学校の名物教授だった由。「基礎編」はタキシングや離陸、着陸などのテーマごとに、操縦だけでなく、交信やミス回避のコツなどもセットにして、時系列に沿って書いてあるため、読みやすい本です。ちゃんと索引があるのも良心的です(技術系の本では常識だと思いますが、同じ著者の「計器飛行方式」は、分厚いのに索引が無くて不便でした)。
 航法編のほうも、基礎となる地文航法と推測航法が、実際の訓練フライトを反映した形で説明され、VFRの出発や進入・着陸などについても、たくさん記述があって分かりやすい本です。ただし、期待していたGPSやRNAVなどの現状は扱わず、戦前からあるE6-B航法計算盤について、みっちり解説する…といったスタンスです。航法計算盤は、いわゆる「風力三角形」を、目盛り盤の上に簡単な手間で作図する道具で、確かに基礎の基礎ですけれども、いまどき本当に、これに鉛筆でマークを付けて、偏流角やWCA(横風成分に対する針路修正角)を求めながら飛んでいる人は、いるのでしょうか?

 幸い、ほかにお客さんがいなかったもので、若い店員さんに、この点を質問しました。
彼は愛想良く笑って、「訓練では、まだ航法計算盤を使います。私も以前、セスナとバロンで操縦訓練を受けましたが、計算盤で風のベクトルが頭に入っていると、降下開始点の判断が正確に出来るとか、基礎がきちんと身に付きます。ただし一般的なフライトには、GPSが非常に普及しています」と教えてくれました。「特にアメリカでは、すでにGPSアプローチが認可された関係で、古いセスナにも、すべてGPSパネルが取り付けられ、ILSの代わりに使われています」。「となると、ジェプセンのチャートさえあれば、どこにでも降りられるんですか」と聞くと、「そうです。地上設備が要らないから、導入も簡単」とのこと。
 最近は軽飛行機も、ガーミン社のG1000のような、GPS付き統合グラス・コクピットを装備するようになり、「大型機のFMSみたいに、エンルートからILS進入まで、プログラムして飛ぶことが可能になってきた」とも聞きました。いずれも断片的には得ていた知識ですが、実際に体験した人から説明を受けますと、「やっぱり、そうなってるんだな」と感銘を受けました。
 そこで本棚を振り返って、「いま伺ったお話のような、ナビゲーションの最前線が分かる本は?」と訊くと、彼は「うーん。日本ではまだまだ、これからです」と苦笑しました。そして「RNAV方式の設計と原理」(中西善信、鳳文書林)を手で示し、「日本でも旅客機は既に、RNAVを使っていますね。でもRNAVの航路設計に関する日本語の本はあるけれども、まだ使う立場からの本はありません。GPSも同様です」。GPSへの対応は、船舶関連の書籍の方がずっと先行しているようです。
 ちなみにガーミンG1000は、FlightGearの世界ではディーゼル軽双発機「ダイヤモンドDA42」に、コンパチ機が組み込まれています。カラーパネルはなかなか美しく、クリッカブルなボタンが数十個もある、非常に意欲的な作りですが…実際は、多くの機能が未実装で惜しまれます。気長に完成を待ちたいです。他にも、これという先進的な航法パネルを持つFlightGear版小型機がありましたら、どなたか教えてください。

●●ロール復元力について:
 操縦経験者に質問できる機会は少ないので、ついでに以前から疑問に思っていた、ロールの復元力についても教えてもらうことにしました。
 「実機では操縦桿から手を離すと、ロール軸の安定性や復元力はどうですか?」と質問すると、「セスナは、トリムが取れた状態ではロール安定が高く、手放しでは自分からはバンクしません。バンクさせる際は軽く抵抗があり、いったんバンクしてからは、自然に操縦桿に従います」とのこと。バンク中の機体の振る舞いは、60度くらいの大バンク角だと「2Gくらい加速度が掛かっていますが…強いロール復元力が働きます。45度や30度でも、復元しようとします。角度に関係なく、復元力は常に正です。いっぽうバロンの場合は、パワーがあるためか、もっと軽くバンクに入ります。その後は…戻ろうとするか、一定のバンク角を保とうとするか、自分からもっと傾こうとするかは、微妙にバランスが取れている感じ」だそうです。

 店員さんは、最初にグライダーを学んだそうですが、舵について「グライダーはなかなか、エルロンだけではバンクしません。まずラダーを強く踏み、続いてエルロンを使う感じ。お陰でラダーを強く操作する癖が付いて、飛行機でもなかなか抜けませんでした」と話していました。これで思い出したのは、空自の古いパイロットの手記です。彼はF86が大好きでしたが、86ではグライダーとは逆に「スティックだけで操縦した。ところがF4に移ったら、レシプロ機並みにラダーが必要で驚いた。たぶん逆ガル主翼のため」とのこと。そう指摘すると、店員さんは「私の訓練教官も空自出身で、ハチロクで同じ体験をしていて、F4に移ったら、空気の濃密な4000ft以下ではエルロンが十分利かず、ラダーを足さないとバンクしないと話していました」と、教えてくれました。ああ、この話は本当だったんだなと実感。
 また関連で、店員さんは737(確か)のフルフライトシミュレータ体験にも言及。やはり基本的にラダーは使わなかったそうで、それでも旋回計のボールは飛ばない(横滑りしない)そうです。「旅客機は、テールモーメント・アームが大きいので、ラダーを使うと機尾を振り回すことになり、お客さんに不快感を与えます。セスナでも後席に座っていて、パイロットがラダーを使うと分かります」と話してくれました。

●●ラダーを踏んだときの、ロール挙動は?:
 もう一つ非常に気になっていた、ラダー操作とヨーの利き具合も訊ねました。「手放しで、ラダーだけを踏むという操作は、実際にはないと思いますが、もし実行したら機体はどう反応しますか?」。

 「やはり、まずヨーが出ます。セスナの場合、そのまま強く踏み続けると、そのうちにロールも出ます」というお話。そこで「私はFlightGearというシミュレーターをやっているんですが、機体によっては、ラダー操作でヨーよりずっと強くロールが出ます。実機でそんなことは、あるのでしょうか?」と訊ねると、少なくともセスナやバロンでは、そんなことはなくて、「ラダー操作では、ヨーが出ます。ロールも発生しますが小さくて、向きはヨーと同じ」とのことでした。そうか、やっぱりそうだったか。…ここでもう一人お客さんが登場したため、私は丁重にお礼を言って、1階に向かってディセントしました。

 なぜ私が、この質問をしたかと言いますと。最近主に愛用するピラタス社の練習機シリーズ、つまりPC-9M(Petar Jedvaj, Ernest Teuscher作)と、この原型になったPC-7(David Culp, Erik Hoffman作)は、いずれもラダーを大きく使った場合、ヨーよりもロールの方がずっと強く出るからです。そのため、滑走路へ接地する際、横風補正に使うウイング・ロー(サイド・スリップの一種)や、高度処理に使うフォワード・スリップのような、ラダーとエルロンを逆向きに使ってバランスさせる操舵が、非常に困難です。
 例えばウイング・ローは、ご存じのように滑走路に正対した状態で、一定のバンク角を保ったまま、機首方向へ直進する飛び方です。そのためには、風上に向かってエルロンで翼を傾け、スリップを発生させて横風を打ち消し、同時に風下側へラダーも切って、バンクで生じたヨーを相殺しますが、PC-9Mでこれをやると、機体はエルロンを振り切って、風下へ強くロールしたがる傾向があります。こうした操縦反応は、絶対におかしいと思っていたのですが…「オントップ」の店員さんのお話で、裏付けられたと思いました。

 どうして、こんな味付けの舵になっているのか、よく分かりませんが、ラダーのみで過激なロールが発生すると、例えばスナップ・ロールを打つのは簡単になります。スナップ・ロールはご存じのように、翼端失速を利用して急激に旋転を引き起こす技です。「急に強い上げ舵を取り、同時にラダーを片方に一杯に取る」という操作でよいだろうと思いますが、FlightGearの機体は、基本的には翼端失速を起こさないらしく、ラダー操作によるヨーに伴い、派生的に生まれるロール成分だけで機体が回るようです。なので、機体によっては、ゆったり・もったりと旋転して、バレルロールが崩れて宙返りに化けたような、変な機動になります。PC-9Mの作者さんは、こうした挙動を嫌ったのかも知れませんが…現在のFlightGearでは、もっと自然な操縦特性の機体でもスナップ・ロールは可能ですので、首をひねっています。

●●伊丹でせっせと、スリップの練習:
 それはともかく、こうして新しい本と若干の情報が手に入り、私は先日からRJOO伊丹でショートフライトを重ねて、さまざまな機体で、手始めにスリップ系の操作を練習しています。フットバーを持っていないのが少々残念ですが、ジョイスティックのツイスト軸でも、特に不便はありません。

 操縦の「基礎編」には、このスリップ系の操作法が詳述してありますが、お陰でこれまで、若干の誤解をしていたことが分かりました。私が初めてエルロン/ラダーの逆舵について知ったのは、中学時代に初めて坂井三郎氏の「大空のサムライ」を読んだときです。フラップのない複葉練習機で、万一の不時着時に高度処理を行う場合に備えて、今で言うフォワード・スリップ(坂井氏の言い方では、サイドスリップ)を習うシーンが図解入りで詳述され、非常に印象的でした。この技は「横風を打ち消す際にも使う」とありましたので、後年になって、進入時に風上へ機首を向けて横風成分を消す、いわゆる「クラブ・メソッド」(クラブ法、クラブ飛行)の存在を知ったとき、フォワード・スリップと同一のものだろうと思いましたが、これは大誤解で、クラブ・メソッドは単に、偏流角(横風成分によって、風下に流される角度)の分だけ、風上に針路を補正する飛び方でした。ただ横風をキャンセルするだけでしたら、このほうがずっと楽なので、私も自然に取り入れて自主的にやっていたんですが…どうも、お恥ずかしい次第です。

 おさらいのため、以下に横風補正系の操縦法を、整理してみます。
(1)クラブ・メソッド:
 アプローチ中に使う「カニの横ばい」飛行。単に風上へ、必要なだけ針路を補正する。
 3舵は中立。滑走路に対し、機体を斜めに向けて接近するが、空力的には横滑りしない。
(2)フォワード・スリップ:
 大きく風上方向へラダーを使ってヨーを発生し、横風を打ち消す。同時に大きくエルロンを
 風下方向に取って、風上への旋回を防止する。機体は大きくスリップし、空気抵抗が増える
 ため、降下率が大きくなる。主に、高すぎる進入高度を処理する(加速せずに降下する)時
 に使う。当然、ラダーとエルロンを大きく取るほど、降下率が増える。
(3)ウイング・ロー:
 仮にクラブやフォワード・スリップのまま接地すると、角度によっては脚を折ったり転覆す
 る。そこで接地前にラダーを踏み換えて、機体を滑走路と平行にする必要がある。
 ウイング・ローの操作は、風上方向にエルロンを使って、バンクで生じるスリップにより、
 横風を打ち消す。同時に風下へ大きくラダーを取って旋回を防止し、バンクしたまま滑走路
 へ軸線を合わせ、まっすぐ進入。風上側の脚から先に接地させる。実際の操作では、最初は
 主にラダーを使って、機首を滑走路に合わせておき、一呼吸遅れてエルロンを利かせた方が
 うまくアラインできるようだ。

 セスナ172で、これらの練習を試みましたが、最初は苦心しました。まず、FlightGearの Global Weather を調節して、任意の風向・風速にする操作が、単純なようで実は分かりにくく、設定が進みませんでした。モードをDisabledにして数値を打ち変えても風の変化が起きず、実際はいったんStormyか何かに切り替えてから、数値を入れ直す必要があるようでした。
 どうにか、滑走路に真横から風が吹き始めたので、セスナで再トライ。しかし舵の使い方を考えながらモタモタ飛ぶと、わずか90Ktの進入速度でも速すぎて、空港を通り過ぎてしまいます。遅いパイパーJ4カブに乗り換えて50Ktで進入し、やっとうまく行くようになりました。この機体にはフラップがありませんが、まずクラブで接近し、フォワード・スリップでぐいぐい高度を殺し、スッとウイング・ローに切り替えて、滑走路に最終的なアライン…という一連の動作が、どうにか実行できるようになりました。成果を、マイアルバムにアップさせていただきます。

●●大胆に繊細に:
 FlightGearでは、もちろんGを直接体験することは出来ませんから、旋回計のボールを飛ばしても(スリップやスキッドを起こしても)、乗り心地が悪くなるわけではなく。これまでラダーの操作は、さほど明確には意識していませんでした。が、ラダーを積極果敢に使う技を覚えると、より自在に飛べるようになり、一層パイロットらしい気分になってきました。これまでは正直「もっと色々な機体に、スピードブレーキが付いていれば楽なのだが」とも思いましたが、大いなる誤解でした。スリップを身につければ、胴体全体がエアブレーキです! ついでに操縦全体が、以前より多少センシティブになり。トリムもパワーに応じてエレベータだけでなく、エルロンまで頻繁に調整するようになって、またまたFlightGearが面白くなりました。
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なし セスナを再履修する

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-2-2 10:35 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 前回は、2種類のスリップを使った横風進入練習を行い、少しだけ腕が上がった気がしましたので、引き続き軽飛行機で、基本的な操縦おさらい訓練を続けます。今回は、あまりじっくり操縦したことの無かったセスナ172pを使い、伊丹RJOOのトラフィック・パターンを丹念に回ります。
 すでに十分詳しい方が多いことと思いますが、頭をまっさらにして勉強してみると、昇降舵トリムの設定や機体重量・重心位置などに関して、幾つか新しい発見があり、結構わくわくしました。ご参考になることを祈りつつ、以下にご紹介させて頂きます。

●●チュートリアルで、セスナをおさらい:
 172pを選んだのは、たぶん世界一普及した民間初等練習機であることと、資料が多いこと、従ってフライトシミュレーター上では、恐らく一番リアルに性能・機能が再現されていると期待でき、またFlightGearでも若干の操縦チュートリアルが用意されていること、などが理由です。
 その昔。フライトシミュレーターを始めた当初は正直、チュートリアルをバカにしていました。「飛行機の操縦くらい、本と模型で知っているぜ!」というわけです。しかし、試しにMSFS2000のフライトスクール機能を使ったところ、従来Uコン機や紙飛行機を飛ばした経験では、あまり正確につかんでいなかった、パワーと上昇率・飛行速度・トリムの関係をリアルに学ぶことができて、改めてフライトシミュレーターの威力を感じました。この時は、セスナ182Sで「自家用操縦免許」のチェックライドに合格し、続いて「計器飛行」の途中まで進んだところで、やめてしまいましたが…惜しかったかなと、後で思いました。
 という次第で、前回から始めた「おさらい訓練」でも、操縦に関する基礎知識の欠落部分や、疑問点の答が見つかることを期待して、FlightGearのセスナのメニューバーに入っている、チュートリアルを試しました。項目は次の通りです。
 エンジン始動
 タキシング
 離陸前点検
 無線機調整
 高度計調整
 離陸
 着陸(ストレート・イン)
 トラフィック・パターン
 エンジン故障

 手元に鳳文書林の「飛行機の操縦 基礎編」と「セスナ172取扱法」(M、N、P型のマニュアルを1冊にまとめ、ほぼ全文を日英対訳にした本)を置いておき、随時参照しながら順番に試しました。

●●始動、タキシング、ランナップ点検:
 起動すると、英文の画面テロップが次々と出ます。ただしすぐ消えてしまうので、あとで Tutorials フォルダのxmlファイルを開いて、内容を読み直す必要がありました(^^;)。最初のシーンは、リバモア・ムーニー空港KLVKで始まります。エンジンを始動すると、約500rpmでアイドリングします。指示に従って800〜1000rpmまで上げると電流計の針が跳ね上がり、充電が始まるのが印象的でした。ちょうど、ふた昔くらい前の車を運転している気分です。セスナでは、以前どなたかご指摘された計器照明のレオスタットみたいに、各部の操作フィーリングを、より実物に近づけようという努力が見られますね。あちこち見回していたら、アームレスト付近にクリッカブルポイントを発見。ドアが開くことを初めて知りました。

 次のタキシング練習では、誘導路脇の標識を見ながら場内を進みます。前記「飛行機の操縦 基礎編」によると、タキシング中に斜め後方から強風を受けると、エルロンによる修正操作の利きが反転するそうですが、FlightGearでは再現していません。エレベーターとラダーも同様で、常に前方から風が吹いている利き方です。最後に、滑走路手前のランナップ・エリアで止まるよう指示されます。
 ランナップとは…最近あまり聞かなくなった言葉ですが、レシプロ機の離陸前に発電機を切り替えたりする、例のエンジン点検のことです。セスナでは、他の一連の離陸前点検と一緒に行います。このために停止する場所をランナップ・エリアと呼び、プロペラ機全盛時代の米国では、専用スペースが設けられる例もあったらしいですが、「基礎編」によりますと、現在は誘導路から滑走路末端に入るため機体を転回する、道幅が広くなった地点を指します。停止線の手前にいったん止めますが、実世界では2、3機が滞留する場合もありますので、プロペラ後流を他機に向けないよう、注意が必要とのこと。

 大ざっぱな点検手順は、まずパーキング・ブレーキを掛けて、3舵を端から端まで目一杯動かして作動チェック。FlightGearでもジョイスティックを使う場合は、作動範囲や遊びを自動調整するために必須の動作ですね(スロットル軸もお忘れ無く)。
 次は、ゆっくりと回転を1700rpmまで上げます。これは回転計のグリーン・ゾーン直前に当たります。ちなみに「パワーオン」という言葉は、グリーン・ゾーンまで回転を上げた状態を指し、「パワーオフ」はそれ未満のことだそうです(私はスロットルを完全に閉じることと混同していました)。
 パワーオフの最高回転数まで上げて、電流と電圧、油圧計の指針が、それぞれのグリーン・ゾーンに達し、パネル左上のサクション・ゲージ(一部計器を作動させるバキュームの負圧計)も動くことを確認。次いでイグニッション・スイッチをBOTHからLとR単独に切り替えて、回転の落差が125rpm以内であること、LとR同士の回転数の差が50rpm以内であることを確認。さらにキャブヒート(スロットル左の四角いつまみ)を引いたときに、回転が落ちることを確認します。ただしFlightGearでは、BOTH以外だと100rpmほど落ちますが、LとRの間に差はなく、キャブヒートを使っても回転は落ちません。(シミュレーター上では、実際に飛行に必要な操作ではありませんが…)
 ちなみに始動時、マニュアル及びチュートリアルでは、赤いミクスチャー・コントロールが、フルリッチ(最大濃度=最前方)になっていることが求められますが、これは標高3000ft以下の滑走路の場合だそうです。と言うことは…セスナでミクスチャーを、リーン(希薄)側に引く操作が必要になるのは、高度3000ft以上だったのですね。初めて気が付きました。(注:誤ってリーンのまま低空に降りてくると、FlightGearでも実際にエンストする恐れがあります)

●●FlightGearご推奨の、離陸トリム位置:
 ところで離陸前点検には、「エレベーター・トリム:TAKE OFFにする」という項目があります。操縦に直接関係するだけに、シミュレーター上でも欠かしたくない操作ですが、さて、どうやったらいいのでしょう。
 172pのエレベーターのトリムハンドルは、ご存じのように、スロットル下のセンター・コンソールにあります。現行バージョンでは、画面をクリックしても動かないようですが、テンキーの1とENDか、ジョイスティックのボタンで操作できます。このハンドル部を拡大表示すると、現行モデルには「TAKE▲OFF」という表示があり、その右に白い目印バーが見えていて、トリム操作に従って上下に動きます。本来はこの白いバーを、「TAKE▲OFF」表示の▲印に合わせるのが、恐らく正しい離陸トリムの位置だろうと思われます。
 試しにこの設定にしてみますと、エレベーターが少し上げ舵状態になります。そのまま離陸を試みますと、機体は操縦桿にバックプレッシャーを掛けるのを待たず、60Ktで勝手に浮いてしまい、以後のフライトでも過剰に機首を上げる傾向が見られます。セスナ172pは、実機マニュアルでもチュートリアルでも、ローテーション操作をして離陸することになっています。従ってFlightGearの172pが離陸する際は、この▲印のトリム位置ではやはり不適切で、中立から少し下げ舵気味の設定がベストです。
 チュートリアルで「離陸前点検」「離陸」「トラフィック・パターン」を選択すると、自動的に下げ舵気味のトリムに設定されます。この状態を示した写真を「投稿画像」(旧マイアルバム)にアップしておきます。自分で設定する場合は、赤い矢印で示した位置に、白いバーを合わせればOKです。またHUDのトリム目盛りを使う場合は、黄色の矢印に△マークを合わせてください。
 なお、マニュアルには「ラダー・トリムも、装備していればTAKE OFFにする」とありますが、FlightGearでは代わりにエルロン・トリムを使って、エンジンパワーの増減によるトルク補正を行うようですね。離陸時は、デフォルトの中立位置がベストだと思います。

●●オプションいっぱいの離陸操作:
 離陸は、チュートリアルではごく簡単です。ノーフラップ65Kt(実機マニュアルは55Kt)で、あっさりエアボーンします。いっぽう「基礎編」の離陸の解説には、滑走路のセンターにアラインするコツや、前輪ステアリングからラダーによる制御への移行時の操作、標準的な離陸と短距離離陸の操作の違いなどが詳述されています。短距離離陸の場合、下げ舵を使って滑走すると最小抗力姿勢になり、滑走距離が短くなる…といった指摘は非常に面白いです。ただし実験したら蛇行しやすくて、あまり実用的ではありませんでした。ラダーより前輪のほうが、ステアリングの利きがずっと敏感なので、加速して浮き掛けた前輪を再び路面に押しつけると、機体が左右に暴れやすいのです。
 滑走中の横風補正はラダーだけではなく、本来はエルロンも風上側に使うそうです。エルロンは翼面を下げた状態の方が、上げるよりも(たぶん主翼迎角の分だけ)抵抗が大きいため、そちら側に軽いヨーが発生し、これをエルロン・ドラッグと呼びます。アドバース・ヨーにちょっと似ていて、「へーっ!」と感心しましたが、これも実験では残念ながら、効きが確認できていません。(空力ファイルには、drag_due_to_aileron なんていうパラメータは見あたらないようですから、無理かも知れません)

 ちなみに、離陸を中断して急停止する場合、制動距離が足りなかったら、どうすべきか。「基礎編」によりますと、固定脚機は片足フルブレーキングでスピン、引き込み脚機では、思い切って脚を収納してしまい、胴体の摩擦で止める…のだとか。当然、滑走路の閉鎖や事故調の聴取を覚悟しなさいね、という荒技です。FlightGearでは胴体着陸をすると、むしろ摩擦が減ってしまいますので、この方法は機体の改造が必要になりそうです。

●●正しいトラフィック・パターンとは?:
 いよいよ、場周経路を回るわけですが…トラフィック・パターンの大きさや高度は、どうやって決めたらいいのでしょう。10年以上前、MSFS2000のチュートリアルでは、確かシカゴのメイグス・フィールドを離陸して、AGL(地表からの高度)1600ftでダウンウインド・レグを飛び、滑走路末端が後方45度に見えた時点で第3旋回、そして最終進入、という感じでした。イメージは思い出せますが、クロスウィンド及びダウンウインド・レグに入る、第1旋回と第2旋回のタイミングがよく分かりません。

 そこで「基礎編」を調べますと、トラフィック・パターンのサイズは機体規模によって千差万別ながら、前半の旋回位置は高度で決めるようです。軽飛行機では、400ftまで上昇したら第1旋回。ダウンウインド・レグの飛行高度は、800ftないし1000ftが一般的とのこと。FlightGearのチュートリアルでは、500ftで第1旋回、1000ftで第2旋回をしてダウンウインド・レグに進入、という教え方です。
 空港によっては、トラフィック・パターンを「eAIP」(国土交通省の航空路誌・電子版)で公表しているそうですので、私も無料閲覧を申し込みました。航空路誌とは、航海術で言う「水路誌」(港湾施設や水路の状況、利用ルールなどを詳細にまとめた定期刊行物)に当たるもので、空港の非常に詳しい資料です。が、残念ながらトラフィック・パターンまで図示している例は、極めて少ないことが分かりました。
 私が見つけたのは現在のところ、調布飛行場と岡南飛行場だけです。前者は、多摩川周辺の鉄道線路や駅をランドマークに使って、あらゆる方向から調布のトラフィック・パターンへ進入する経路が描かれています。パターン自体は単なる長方形で略記され、高度のみ1000ftと具体的でした。また岡南飛行場は、付近の河川や道路に沿って滑走路へたどり着くコースが描かれ、なんだか「お車でお越しの方、現地はこちら」の看板みたいな味わいがあります。

 FlightGearのチュートリアルでは、KSFOから半島を隔てて西の海岸にある、ハーフムーンベイ空港KHAFのトラフィック・パターンを飛びます。手順をご紹介しますと…
 離陸。毎分600ftで上昇、コースを120度に変更し、500ftで左旋回。
 引き続き上昇。1000ftで左旋回、ダウンウインドに入ってレベルオフ。
 スロットル60%、100Ktで飛行。指示を待って50%でフラップ1段下げ、90Kt維持。
 さらに指示を待って左旋回。ベースレグでフラップ2段目、毎分500ftで降下継続。
…なぜかこれ以上指示が出なかったので、そのまま左旋回して滑走路に正対し、そっと降りました。

 このチュートリアルでは、指示通りに飛行すると離陸後、どんどん山に向かってしまいます。第2旋回点は尾根すれすれという、絶対あり得ないコースで、なぜこうなっているのか不明です。私の求めるものとは違いますので、今後練習を進めるには、自分なりに先の高度500ft/1000ft旋回ルールを使って、普段利用している空港上にコースを作るしかなさそうです。

●●伊丹を飛びながら、機体重量を変えてみる:
 「投稿画像」にアップした「セスナを再履修」の左側、トラフィック・パターンを描いたAtlas画面をご覧下さい。これが伊丹の飛行実例で、3枚は同縮尺です。あんまり上手ではありませんが…(^^;)、一番上は、
 .妊侫ルト燃料(ほぼ標準タンクの満タン相当。172pの燃料タンクは
  数種の仕様がある)で1人乗り。離陸・上昇は全開。長方形の標準経路。
 同じ条件で飛んだ、楕円形のショート・パターン。
 スロットル90%で飛んだ、長方形の標準経路。
という実測図です。ショートパターンはダウンウインド・レグが滑走路に近いため、パワーオフのまま進入する場合などに使います。
 なぜで出力を絞ったかと言いますと、,鉢△離侫薀ぅ箸任蓮△い困譴眈緇採┐やや過大となり、滑走路の途中で第1旋回点に入ってしまうことと、レベルオフの時点で高度が跳ね上がりやすく、1000ftをメインテインするのが多少難しく感じられたからです。しかし一方では、わざわざパワーを絞って離陸・上昇というのも不自然な気がします。そこで見方を変えて、試しに機体を重くしてみることにしました。

 Atlas画面の上から2枚目は、パイロット(体重180Lbs=約100キロ)の他に、同じ体重の同乗者3人を載せて満席にした、言わば「マキシマム・デブ飛行」です(^^;)。さすがに上昇率が減りまして、高度1000ftに届きにくくなった分、飛行経路が長く延びています。このフライトでは念のため、私としては初めての経験ですが、セスナの「ウェイト&バランス」を調べてみることにしました。詳しくは、マニュアルの表とグラフを見ないと分かりにくいのですが、一応ご紹介しますと、天秤計りの練習問題にそっくりなモーメント計算で、次のような手順になります。
(1)飛行機には、重心位置算出に使う基準点(モーメント・アームの原点)
   がある。172pでは、エンジンとキャビンを仕切るfirewall(防火壁)の
   位置に来る。仮に同じ重量物でも、この基準点から遠い場所に積むほど
   重心は大きく後方へ移動する。以上を確認した上で…
(2)積載物の一覧表に、機体そのものと燃料、座席ごとの搭乗者、貨物室に
   積む手荷物などの、個別の重量と基準点からの長さを記入する。
(3)個別の重量の合計を出し、最大離陸重量(または、タキシング燃料分を
   加えた、最大ランプ重量)の制限内であることを確認する。
   FlightGearでは、メニューのFUEL欄に機体総重量が表示される。
(4)個別の重量×基準点からの長さ÷1000を計算し、結果をすべて合計
   して、モーメントの積算値を出す。
(5)ウェイト&バランスのグラフを見る。縦軸が総重量、横軸がモーメント
   の積算値を示す。(3)と(4)で出した数字を当てはめ、両者の交点
   が、飛行可能範囲を示すエンベロープ(包絡線)の内側にあればいい。

 …もし交点が、エンベロープの前方に飛び出していれば、重心が前過ぎます。後方にあれば、重心が後ろ過ぎるのだし、上にあれば機体そのものが重すぎます。先ほどの「マキシマム・デブ飛行」状態では、ぎりぎりU類(シャンデルなど、軽い一部曲技が可能)の飛行可能領域に入っていましたが、あと少しでも荷物を積むと、重量も重心位置もずれて、この飛行機はN類(曲技禁止)の扱いになります。

 最後に、下段のAtlas画面をご覧下さい。これは同乗者が副操縦士1人(180Lbs)だけという「ミニマム・デブ」状態のトラフィック・パターンです。トリムもチュートリアルの離陸位置にしてあり、非常に操縦しやすく感じられました。飛行経路の長さは、前記2枚の画像の中間みたいなコースになりました。これですと離陸後の直進中、滑走路の末端に届く前に500ftに達して旋回するという不自然が、ちょうど解消されるようです。ただしネットでは、第1旋回は「500 feet AGLか滑走路の先端まで、遠い方を満たしたときに行う」との説も見つかりますので、ともかく末端までは直進すべきなのかも知れません。さらにご存じの方は、どうか教えてください。
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なし ちょっと課題も…V2.6.0.感想

msg# 1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-2-21 22:28 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。Ver2.6.0の正式リリースおめでとうございます。
 皆様お試しのことと思います。私も18日夜(日本時間)に、ダウンロード可能になったのを確認してすぐ入手し、さっそく伊丹RJOOの周辺を飛ぶ程度の、簡単なテストを重ねました。が、私の環境ではグラフィック関係などに、あれこれ課題が散見されまして、どうもうまく使いこなすことが出来ずにいます。

●雲について:
 起動後の第一印象では、3D雲などが変化しました。本家サイトの紹介文によりますと、高々度の雲の描写がリアルになったそうですね。ただ低空の層雲の形には、少々違和感があります。2.4.0では、文字通り綿をちぎったような、繊維質の美しい断雲でしたが、2.6.0の雲はポップコーン状の白い塊に戻り、輪郭が不自然に青みを帯びて、2世代ほど昔のバージョンにおける雲の描写に、先祖返りしてしまった観があります。また雲と同じくらいの高度に、短い線分状のノイズが若干発生します。「小雨が降り始めたかな、いや、違うな」という程度で、困るほどではありませんが、やや目障りです。

●AI機:
 本家の紹介文によりますと、今回のバージョンアップではAI機のコントロールに関して、かなりの改良があった由。使い方は分かりませんが、確かに東京都内や大阪平野を低空飛行していると、空港へアプローチする全日空機にしばしば出逢いまして、少なくともAI機のランダムな行動が活発になっているようです。空がにぎやかになりますので、これは歓迎です。
 一方…わが母港の伊丹RJOOでは、困ったことが起きました。エプロンに近いRWY-32Rの着地点付近に、起動後必ず737が出現し、そのまま居座って滑走路を塞いでしまうのです。737は、同じ地点に重複して何機も出現し、次第にANAとJALの塗装が入り交じって、不気味な眺めになります。どうやらジェイエアの小型機も、2機ほど交じってくるようです。伊丹では、ANAの777を自作シナリオで反復離陸させていますので、AI機能自体を切るわけにはいきません。試行錯誤の末、preferences.xmlの中にある、

 <traffic-manager>
  <enabled type="bool">true</enabled>
   (中略)
 </traffic-manager>

…という項目の、true を false に書き換えると、この「居座り機」が出現しなくなることが分かりました。ただし、これを追い払うと、たまに空港周辺をランダムに飛ぶ飛行機もいなくなりますので、どちらを取るかは利用する空港の事情と、お好みによりそうです。

●テクスチャーのShader効果:
 そのほかグラフィック関係では、Shaderの設定方法が改善・整理されました。特に水面の描写は美しく、これまではわずかな動きであった、波の表現が豊かになり、実際の風向・風速とリンクするようになりました。しかも風浪(wave=風で直接起きる波)と、うねり(swell=風域外に残るwave。波頭が丸い)を、ちゃんと別々に動かしているようで、感心しました。洋上航法では、偏流の判断に利用できるかも…。
 その一方、都会を彩る urban effect は、ちらつきが増えたようで、見づらくなりました。スライダーで利きを弱くすると、今度は遠距離で都市テクスチャーの解像力が極端に落ちて、ぼんやりした草原のような印象になってしまい、あまり都市には見えなくなります。また、パソコンへの負荷が少し大きくなりました。それやこれやで新環境は、まだ期待したほど楽しく感じられません。

 Shader設定のあらゆる組み合わせを試したり、テクスチャー・フィルタを強くしたり弱めたり、あれこれ改善策を探していたところ、今度は地上テクスチャーの一部が、夏景色でテストしていたにもかかわらず、真っ白な雪景色風の描写に変わってしまいました。この現象は2回発生し、1度はパソコンのリスタートで解決しましたが、2度目はこの方法も無効で、Shader機能そのものをオフにするしかありませんでした。(ただし水面の波描写は、メインのShaderスライダをオフにしても、サブメニューに並ぶ個別の設定スライダを動かすことで単独起動できます)

 この、テクスチャーが真っ白になる問題を解決しようと、ついにVer2.6.0のインストールをやり直しました。従来は、アンインストール後も残る各種データや設定ファイルをそのままにしておき、重ね書きで再インストールや別バージョン導入を行っていたのですが、今回は念のため徹底的に消して、まっさらなインストールを試みました。ところが、伊丹に駐機しておいた旅客機群が(待避先から戻しても)出現せず、原因不明…という問題も新たに生まれ、いよいよ収拾が付かなくなってきたので、極めて異例のことながら、最終的にはCドライブの丸ごとバックアップデータを使って、起動環境そのものをVer2.4.0使用時の状態に、すっかり書き戻してしまいました。なので現在は、空港は元通りだし、雲や街並みはきれい…というわけで、取りあえずはホッとしています。(しかしMy Picturesフォルダを上書きしてしまい、前記トラブルの記録写真を失いました)(笑)

 ではこのまま、2.4.0を使い続けるかというと、そうも行きませんね。いつまでも旧バージョンで「旅日記」その他のご報告を続けるのも、あまり意味のないお話です。遅かれ早かれ、再びVer2.6.0(もしくは、それ以降のバージョン)に切り替えなくてはなりませんが…JSBsimが改良されたことに伴い、Ver2.4.0用の機体には不具合も出る(ピラタスPC-9M改は、駐機場でバランスが取れず竿立ちする)ため、2.6.0用機の再改造とか結構手間が掛かりますので、ちょっと一休みして、様子を見てからにしようかとも思っています。

 皆さんは、Ver2.6.0の調子はいかがでしょうか。ご参考ながら私の環境は、Core-i7 Q720@1.6GHzにWinXP-proのSP3、グラフィックが GeForce GT240M 790MHz 1024MBです。

     ●

 このメッセージは、「FlightGear v2.6.0 リリース」に返信させて頂くか、各種設定フォーラムで新規の項目にするか悩みましたが、感想的な内容も多いので、取りあえずこちらへ納めておきます。
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なし v260を再導入する

msg# 1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-3-5 11:11 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 その後、再びv260をインストールしました。初回に比べると快調に動いており、主に伊丹RJOOのトラフィック・パターンやショート・パターンを、時々セスナ172pや、v260向けに仕立て直したピラタスPC-9M改で周回しています。今回はv260再導入のお話に加え、以前の「セスナ再履修」の続編としまして、無線機や高度計の設定方法について新たに分かったことや、v260向け機体の無線機改造などに関してご報告します。

●●v260を再導入する:
 前回、私はv260を組み込んだものの、どうもしっくり来なくて、いったんv240に戻してみたのですが…古い環境で特にやり残したことはなく。また新バージョンに関して、特段の追加情報もないようですので、v260を再び導入して、改めて扱い方を研究することにしました。

 インストール方法はごくオーソドックスに、いったんv240をアンインストール後、旧来のデータやフォルダ構造はそのまま残し、同じ場所にv260を上書きしました。現状では半年ごとに定期バージョンアップが期待できるようですので、いかにスムーズに移行作業を進めるかは、一つの研究テーマになりそうです。私の場合は、CドライブとDドライブの各ルート・ディレクトリに、それぞれFlightGearフォルダを設けて、Cドライブにアプリ本体や機体データを、またDドライブにsceneryとterrasync、Atlas地図のタイルデータを展開しています。その上で、
(1)自作3Dオブジェクトは、C:/FlightGear/data/Scenery/Objects/e130n30 の1カ所にまとめる。
   起動ウイザードのFG_SCENERY順位は、このSceneryフォルダを最上位にする。
   (順位の2番目は D:/FlightGear/terrasync になっています)
(2)改造した機体は、他機のフォルダや汎用計器フォルダにパーツを読みに行く構造を避け、
   必要なパーツはすべて自機フォルダ内にコピーを置き、自己完結性を持たせる。
(3)その他ABN(飛行場灯台)など、あらゆる改造品、追加品のインストール場所と方法の
   メモを作って、変更のたび更新する。
(4)旧バージョンの起動ウイザード画面(パスなど)を撮影・保存する。
…といった方法で、少しでも作業をシステマティックに進めようと努力しています。
今回は、比較的スムーズにv260への再移行が進みました。

 再インストール後に、セスナで伊丹周辺とKSFO付近を飛行。事前準備のお陰か、特設の格納庫や自作駅ビル関係、改造AVN(飛行場灯台)も正常に表示され、伊丹ではv240に引き続き、自作のパーキングポジションからの起動が確認できて快適です。v260のセスナ172pは排気温度計が付き、デフォルトでは床面にある燃料コックがOFFになっている(ただし、このままでもエンジンは回る)のが目新しいですね。私はトリムが少しデリケートに感じられ、固有安定性は一層低くなったような印象を受けました。
 v260の特色の一つは、Shader機能のレベルアップですが、Urban effectはやはり少々ノイジーに感じられ、セルを強調する3D雲デザインと共に、慣れが必要だと思いました。メニューの View/Rendering Options を開いて様々に調整しましたが、 Random Vegetationをオンにした途端、地上テクスチャーがいったん消え、数秒後に再び表示された時点で、またも市街地部分が、雪景色のように真っ白になりました。この時は冬景色にセットしていたのですが、Snow line設定はデフォルト(標高3200m)でしたので、大阪平野に雪が積もるはずはありません。Shader のサブメニューを開いて Urban スライダをオフにすると、通常の都市テクスチャーに戻りましたが、Urbanを再び利かせると再発しました。スライダを右に動かすほど、真っ白に化けるようです。着陸後、夏景色で再起動して試すと、取りあえず無事に Urban effect が機能しました。当面はUrban 機能だけオフにして Shader を使うことに決定。夏と冬景色の両方で、時々 Urban をオンにして観察していますが、起動ウイザードで最初から Random trees をチェックしておくと、今のところ再発はありません。

 天候は従来より活発に変化するようで、この日は盛んに雨が降ったり止んだり。リアルですね。新しい雲のデザインも、悪天候の場合はなかなか悪くありません。不具合のお話は他に、初回インストール時にご報告した「雲と同じくらいの高度に、短い線分状のノイズが若干発生」する問題が、現在も起動のたびに必ず発生します。大きな問題ではありませんが、写真が撮れましたので、真っ白な市街地と共に「投稿画像」(旧マイアルバム)にアップしておきます。

 さらに、伊丹RJOOの滑走路上で発生した「居座り機」問題ですけれども。初回インストール時は、起動するたびに毎回、RWY-32Rを塞ぐ形で発生し、困っておりましたが、基本的にランダムな現象のようで、今回の再インストール以後は、滑走路上に現れなくなりました。たまに出現して誘導路に居座りますが、幸い邪魔になる場所ではありません。日によっては「お友達」がもう1機現れて、エプロンを少々散歩した後、「居座り機」に近づいて合体します。この程度でしたら、もちろんじゃまではなく、賑やかでありがたいですね。

●●セスナ再履修…無線には、マウスのセンターボタンが必須:
 v240で2月に始めた「初級おさらいフライト」はその後も続き、伊丹でかれこれ70回くらい発着訓練をしました。下手な私もこれだけトラフィック・パターンを回ると、いつの間にか飛行精度がだんだん上がってきます。ざっと風の修正計算をしてから離陸すると、方位角は当初から、ほぼピタリで周回できましたが、気速と高度の誤差は1割程度あって、恥ずかしい思いをしていました。現在は少しマシになり、快調な日は5%以内くらいでしょうか…。10年ほど前に一度、もうちょっと上のレベルまで行ったのですが、その後は長距離飛行でオートパイロットばかり使い、すっかりへたくそになっておりました。

 チュートリアルの続きで役立ったのは、まず無線機の設定です。私の場合は、単にATISを聴くだけですけれども、これまではパネルの無線機をクリックするのが面倒で、基本的にはメニュー・バーから入力していました。これだけでは面白くないので、172pのパネルに付いている、Bendix-KingのCom/Nav無線機のいじり方をチュートリアルで調べたところ、「現在のラジオ機器をいじるには、マウスのセンターボタンが必要だ」ということを、初めて知りました。現在の172pの場合、周波数の整数部はセンターボタン、小数部は左ボタンで設定できます。
 これは、極めて重大な発見でした。なにしろ…私はF-14のTACANチャンネルとか、クリックで一方向には変化するが、逆方向に動かす方法が分からない、実に腹立たしいボタンに、以前から時々出会っておりますが…あの大部分は実は、センターボタンを使う仕掛けだったんですね(^^;)。全く気が付きませんでした。

 しかし、飛ぶたびに周波数を入力するのは面倒です。そこで C:/FlightGear/datapreferences.xml のデフォルト周波数を書き換え、Com/NavとADFで、伊丹と神戸のATISとILS及びVOR、それに大阪NDB(伊丹のファイナル入り口)などを、ノータッチで受信できるようにしています。HSIのCDI方位設定も、ILSがある伊丹32Lに合わせてあるので、簡単に計器進入ができます。
 というわけで、起動すると即、伊丹のATISが聞こえますが…ここで注意しなければならないのは、デフォルトでは最新のデータは受信できず、また高度計の設定に使う気圧は、なぜか常に標準大気圧の29.92インチ(水銀柱)になっていることです。必ず「<=>」キーを押して、いったんスタンバイ周波数に切り替え、もう一度押して目的の周波数に戻します。するとMETARの内容がリセットされるようで、正しいデータがアナウンスされます。

 172pのラジオ・スタック(無線機が積んであるところ。機種によってはラジオ・ラックと呼ぶ)には、2台のCom/Navの上にADF受信機があり、更にてっぺんに、各機器の音声をスピーカーやヘッドホンに振り分けるオーディオ・パネルがありますが、本来このパネルのスナップ・スイッチを切り替えると、NAVとADFの受信局コールサインが、モールス符号になって聞こえるはずですが…機能していないようです。NAVにつきましては、個々の無線パネルにあるボリュームを大きくすると、ちゃんとVORとILSのコールサインが聞こえますが、NDBだけはまったくモールス符号が聞こえません。これは残念です。
 一方ADF受信機には、面白い機能があります。今まで気付きませんでしたが、起動時から連続加算を続ける「フライト・タイマー」と、ボタンを押すとゼロ戻しが掛かる「エンルート・タイマー」が組み込まれています。後者を使うと、一つのNDBを受信して、方位だけでなくNDB局までの距離も求める「ランニング・フィックス」という航法テクニックが使えそうです。仮にNDBの指針が、自機のアビーム(真横)を指した瞬間にタイマーを再起動し、指針が10度動くまでの時間(分単位)を計ると、航法の本によれば、
     距離d(ノーティカルマイル)=自機の速度(Kt)×経過時間(分)/10(度)
という関係が成り立ちます。要は、三角測量の基線長を、速度計とタイマーで計って、頂角から「三角形の高さ」を求めるわけですね。

●●オートパイロットでも、センターボタンが活躍:
 172pのラジオスタック最下段には、同じくBendix-King(オーナーは昔ハネウェル、今はガーミン社)のKAP140という、高度・方位保持+VOR/ILS/トラッキングが可能なオートパイロットが付いており、(しかも腹立たしいことに、メニューバーの標準オートパイロット設定機能は、使えないように殺してあるので)いつかは操作法を覚えたいと思っていました。
 幸いFlightGear JP wiki には現在、親切なマニュアルがあり、用意されたリンクでハネウェル社のマニュアルをダウンロードして、飛び方の説明図を眺めると、使い方がよく分かります。残念ながら速度保持機能がないことと、機体の反応にシャープさと節度(ダンピング特性)のいずれも不足しているため、使用感はあまり快適ではないのですが、パネルを使って操作すると、多少それらしい気分は出ます。
 このオートパイロット・パネルでも私は最初、操作性の悪さに悩まされました。高度設定をする場合、上昇率や降下率は簡単にクリックで設定できますが、ホールドしたい高度の入力が大変です。ある日私は、伊丹から172pで、オートパイロットの操作練習をしながら京都まで進出し、大津のNDBを使って、先ほどご紹介したランニング・フィックスの実習をしようと思いました。なぜ大津かと言いますと、最近は日本国内からどんどんNDB局が消え、関西には伊丹・関空周辺の3カ所と、大津にしかないからです。大阪上空は、航空図にどっさり情報が印刷してあって、航法用の補助線を引いたり出来ませんが、滋賀まで行けば余白があるので大丈夫…と思った次第です。ところが上昇中、目標高度をオートパイロットに入力する段になって、びっくり。マウスの左クリックでは、1回につき20ftしか高度が変化せず、しかも長押しリピート機能なし。従って、もし5000ftに設定したければ、250回もカチカチやらないとダメ…ということですよね。いざやってみると、これが大変でした。

 結局3000ftで(150回カチカチして)京都に到着し、琵琶湖を一望しましたが、相当猛烈に腹が立ってランニング・フィックスどころではなく。すぐオートパイロットをディスエンゲージし、しこたま倍速モードを掛けて、激しく揺れながら伊丹にとって返し、着陸しました。もう二度と172pでクロスカントリーはやらないぞ、と思ったのですが。後日ふとセンターボタンを試したところ、100ft単位で高度が変化することが分かりました。おまけにマウスホイールを使うと、ぐりぐりスクロールが利いて、楽に5000ftが入力できちゃいました。このパネルは結構、便利に出来ていたのです。ああ、恥ずかしい!

●●高度計の設定:
 次は、高度計の気圧合わせのお話です。よく知られるように、一般的には出発前にATISを聞いて、高度計規制値(水銀柱/インチで示される気圧)を聴取し、高度計の調整ノブをクリックして、コールスマン・ウインドウ(気圧設定窓)の数値を合わせれば、指針が正しく滑走路標高を示します。
 ただし日本では14000ft(アメリカは18000ft)を超えると「気圧高度」に切り替え、規制値を標準大気圧の29.92インチに統一し、高度の呼び方もftから、100ft単位の「フライトレベル」に変わるわけですね。個別の空港に合わせる方式をQNH、気圧高度方式をQNEと呼びます。戦前の海軍でやっていたような「操縦席に座ったら、まず高度計の指針をゼロに合わせる」という、現地ゼロ目盛り方式はQFEと呼び、今も中国とロシア及び周辺国で使われているそうです。ちなみに、これらの名称はアマ無線などで知られる「Q符号」(電信用略号)の一種で、かつては海事・気象・航空用を合わせて数百種あったそうですが、航空用は現在、通信規則としては廃止されています。

 私は長らく、この高度計規制値の設定をさぼって、標準大気圧を使うQNEのまんまで飛んでいたのですが、トラフィック・パターンを精密に飛ぶには、高度を目安にして旋回点の位置を決める必要があるので、最近はきちんと毎回ATISを聞いて、QNH規制値に合わるようになりました。気圧=天候の変化が肌で感じられ、なかなかリアルで結構です。しかし…14000ftを超えるときには、QNEへの設定変更を頻繁に忘れます。降りてくる時はなおさらで、実害はないけれど、困ったものですね。

●●モールス符号が聞ける無線機を移植する:
 こんな次第で、最近はフライトごとにCom無線機をいじり、ATISを聴くことが当たり前になりました。以前は諸般の事情で、ほぼパソコンの音声を切って仮想飛行にいそしんでいた私も、ヘッドホンを付けて操縦するようになってきたのですが、こうなると、Nav無線機に設定したVORやNDB局のコールサインを、モールス符号で聴きたくなります。
 実は、FlightGearで国境を越えて飛び回りますと、自分が受信しているNDBやVORがどれなのか、分からなくなることがあります。受信圏ぎりぎりの遠距離からチューニングすると、たまにADFやRMIの指針が、あらぬ方角を指すのです。Ver.9.*.*時代のFlightGearですと、あまり遠い目標にGPSをセットすると、あり得ない方角や距離を表示することが頻繁にありましたが、VORやNDBの場合は、この手のエラーがはっきり出た記憶はありませんので、恐らく遠距離にある同一周波数の他局を、偶然受信してしまったのでしょう。昨年夏から今年1月に掛けて連載させて頂いた、ロンドン・グリニッジ〜明石間のフライトでも、最後の東シナ海横断でこれを体験し、少々混乱しました。

 こんな時、一番手っ取り早いのは、受信局のコールサインを確認することです。セスナ172pは無線パネルのボリュームさえクリックすれば、VORとILSの局名がモールス符号で聞き取れますが、先ほどちょっと触れましたように、ADFはこの機能が効きません。また愛用のピラタスPC7改は、非常にコンパクトなコリンズのラジオが詰め込んであって、見かけはいいのですが、実はモールスの受信がまったく出来ず、これまでも不便を感じてきました。取りあえずピラタスPC-9Mだけは、何とかしたいと思いまして、完全に作動する無線一式を求めてv260デフォルト登録の機体をテストしたところ、セネカIIがモールスに完全対応していました。Com/Nav無線機の外観は172pと同型ですが、パスが違うので、プログラム的には別物かも知れません。またオーディオ切り替えパネルは、まったく型の違うガーミン製が付いています。
 そこで、セネカII用の無線機器を丸ごと借りることにしまして、ピラタスPC-9M改のフォルダ内に、必要なブツをすべてコピー。旧来の無線機や計器の座標を参考に、取り付け位置のメモを作り、うまくビルトインして作動に成功しました。無線パネルと航法計器は、実機と違って接続されているわけではなく、それぞれが独立して internal properties からデータをもらうだけですから、移植は簡単です。とはいえ残念ながら、オーディオ切り替えパネルは完全には作動せず、ボタンをクリックしても作動ランプが点かなかったり、Nav無線機の音声をパネルからオンオフ出来なかったりしますが、それでもADFを含め、全モードでモールス符号が聴けるようになり、当初の目的を果たしました。ちょっといい気分です(^^)。

 なおピラタスPC-9M改は、そのままではv260のJSBですと問題が出るので、新たに対応版のPC-9Mを導入。塗装からフライト・コードラント(自作の航空四分儀)まで、装備関係はv240用と同一に仕上げました。セスナに乗り慣れると、以前行っていたパワーアップと軽量化の改造は無用に思われましたので、飛行性能に関してはオリジナルに近い状態のままです。ただし、エンジンの推力軸を3度アップスラストに設定し、ファイナルアプローチでスロットルを開くと降下する欠点を解消したほか、ロール制御の部分を少し書き換えて、ラダー操作時の過大なロール発生を抑制し、フォワード・スリップやウイング・ロー操作に対する応答性を改善しました。

 ロンドンからの、もう一機の「旅の仲間」であるスタンプSV4複葉機も、同様にV260向けの「お仕立て直し」を済ませており、徐々に新バージョン向けの機体ファミリーが整いそうです。なかなかv260世界の新機能などを味わう段階に達しませんが、先日はHydeさんが改良された nav.dat.gz を組み込ませて頂き、グライドパスのエラーが大きかったスイスの某空港でさっそく実験。絶大な効果に目を見張りました。ありがとうございます。これも結果を投稿画像でご覧に入れます。
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なし Re: v260を再導入する

msg# 1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-3-5 12:51 | 最終変更
Hyde  長老 居住地: ジョージア  投稿数: 169
hideさん。 Hydeです。

さっそく試していただいたようで真にありがたいのですが、実はLSZRは私の所では正常に表示されない空港で、調整をパスした数少ない空港の一つなんです。
アンテナの高度も変わっていませんので、変化したのは、別の要因ではないかと思われます。
フランスの北東部、スイスのチューリッヒ回りはモデリングの問題らしく、空港の無いところが散在します。 多分、今シーナリーチームで議論している問題ではないかと思います。 モデラーがルールを守っていないためterrasyncに入れられなくなっているようです。 モデラーの方は、terrasyncが対応すべきだといっていますが。

他の方は正常に表示されていますか? 私だけでしょうか。
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なし ILSにゴースト発見

msg# 1.2.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2012-3-7 0:52 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
Hydeさん。hideです。
 貴重なご指摘・問題提起をありがとうございました。
スイスのザンクトガレン=アルテンハイム空港LSZRは、ILSのグライドスロープ(GS)調整の対象外だったと伺いまして、びっくり仰天しました。
 なぜ私のテストでは、はっきり高度差が出たのか、考えても分かりませんでしたので、改めて同空港で追試を行いました。結論から申し上げれば、Hydeさんのご賢察通り、別の原因が見つかりました。FlightGearのグライドスロープには実物と同様、本来の信号よりも高いところに、ゴースト信号が存在します。

●●4通りの飛行テストを実施:
 追試験は、以下の条件で行いました。
場所:LSZRのRWY-10。(拙宅では表示可能です。でもスイスはBuochs/LSZCが空港リストに出ません)
機体:ピラタスPC-9M改。
天候:快晴無風、気圧は29.92inHgに設定。

 測定方法は、離陸後ILSを受信しながら、バックコースを飛んで約8nmで反転。滑走路に向かってILSに乗り、ギアダウン・フラップ1段・90KIAS保持で、自動アプローチを行いました。この間、GPSで空港(RWY-10の末端)までの距離を計って、距離6nmから接地点まで、ほぼ1nmごとにポーズを掛けて画面コピーを取り、距離と高度を記録しました。距離は0.001nm単位で、また高度測定は1ft単位で、いずれもinternal properties から読み取りました。
 改造後のnav.dat.gzを使った場合と、オリジナルのnav.dat.gzのままで飛行した場合を、それぞれTerrasyncで得たシーナリーと、ダウンロードで得たシーナリーの2条件で試すことにして、計4通りの飛行試験を計画しました。(実際は3通りだけ実施し、最後にほぼ同条件で1回再試験:後述)

 測定結果は、以下のように処理しました。
空港の滑走路標高を、平均で1276ftと見なし、internal properties の indicated-altitude-ft で得た高度数値から標高を引いて、絶対高度(対地高度)を算出。この数値を、滑走路までの距離(nm)をフィートに換算した数値で割り、そのアークタンジェントを求めて度数に変換し、90度から引いて、グライドスロープの角度を観測箇所ごとに出しました。
 実際の測定・計算結果は、次のようになりました。「GS傾斜角」の数値を、ざっと眺めてみてください。

▼テスト1 改造済みnav.dat.gz使用 Terrasyncで取得したシーナリー
距離nm  高度  絶対高度  GS傾斜角
6.033   3774  2498    3.898459725
4.999   3336  2060    3.879934507
3.995   2919  1643    3.872252979
3      2498  1222    3.83535406
1.997   2085  809     3.814459699
1.449   1860  584     3.795015673
1.005   1676  400     3.747820408
0.481   1461  185     3.622033422
-0.027  1280  4       178.6032617(接地点データ。角度数値は無意味)

▼テスト2 改造済みnav.dat.gz使用 ダウンロードで取得したシーナリー
距離nm  高度  絶対高度  GS傾斜角
6.014   3863  2587    4.049616054
5.037   3458  2182    4.078058223
4.997   3440  2164    4.076796078
3.999   3021  1745    4.107749112
3.006   2607  1331    4.167992449
1.991   2181  905    4.278326881
1.5    1981  705    4.423222161
1.002   1776  500    4.694978225
0.483   1560  284    5.527462782
-0.23   1277  1     179.9590007(接地点データ。角度数値は無意味)

▼テスト3 オリジナルのnav.dat.gz使用 ダウンロードで得たシーナリー
距離nm  高度  絶対高度  GS傾斜角
6.01   3879  2603    4.077280621
5.016   3450  2174    4.08011025
4.006   3024  1748    4.107621449
3.004   2606  1330    4.167635115
2.007   2188  912    4.277052606
1.505   1983  707    4.42104221
1.01    1779  503    4.685778211
0.507   1570  294    5.451686008
-0.207   1282  6     179.726673(接地点データ。角度数値は無意味)

 …この試験では、通常のグライドスロープ傾斜角(2.5〜3.0度)よりも、大きな数値が出ています。これは距離データが、ILSアンテナ位置から計ったものではなく、滑走路の手前末端をゼロ点としていることが主原因ではないかと思います。「改造済みnav.dat.gz・Terrasync」の場合より、「改造済みnav.dat.gz・ダウンロード」の場合の方が、グライドスロープは有意に角度が増しています。これはILSアンテナの位置が両シーナリーで大きく異なるためのようです。Terrasync版では、ILSは短い芝生の滑走路に設置されており、着地点は空港の中央寄りになります(ABNが滑走路中央を塞ぐ、いささか異様な作りです)。しかしダウンロード版では、ILSは本来の長い舗装滑走路に設けられ、着地点はずっと手前の位置に来ます。

 また肝心の、「改造済みnav.dat.gz・ダウンロード」と「オリジナルnav.dat.gz・ダウンロード」の比較試験(上記のテスト2と3)では、残念ながら有意な差は出ませんでした。この時点で私は、ちょっと途方に暮れました。

●●ILSのゴースト信号について:
 そこで、鳳文書林から出ている「計器飛行方式」(土屋正興著)でILSの項を参照したところ、ILSには本来のビームの他に、疑似電波が発生する恐れがあること、フロントコース(VORで言うインバウンド)の疑似電波は、グライドスロープの角度が12〜14度の付近で発生することがある、との指摘が見つかりました。
 ネットで調べますと、こうした高い場所に出る疑似電波のことを、英語では upper ghost slopes と呼ぶらしいです。複数形になっているところを見ると、無線の高調波(本来の周波数の整数倍に、疑似信号が現れる現象)みたいに、何通りもあるのでしょうね。となると、私もゴーストを捜してみなくては。

 上記の「テスト3」と同じ条件で、ただし…どんどん急上昇しながら、ILSバックコースの上空でゴーストを捜したところ、予想通り、グライドスロープ指示器に反応がありました。最初は指針が激しく上下して「コースアウトだよ」と警告するのですが、この動きが緩慢になったときに、機首角度を調整して指針を追うと、実際のビームがあるはずの位置よりはずっと高度が高いのに、指針の動揺が収まって、正常なグライドスロープ受信時と全く同じ状態になります。この状態で、やはり距離と高度を記録し、GS傾斜角を求めたのが次のテーブルです。

▼テスト4 オリジナルのnav.dat.gz使用 ダウンロードで得たシーナリーで さらに高空を探す
距離nm  高度  絶対高度  GS傾斜角
4.805   6461  5185    10.07060213
4.064   5693  4417    10.14167042
1.451   2970  1694    10.87651663
0.928   2428  1152    11.54710673
0.505   1973  697     12.79788995

 …この通り、傾斜角が2倍強になっていることが分かります。では、本物のグライドスロープとアッパー・ゴーストを、どうやって見分けたらいいのかと言いますと、前述の教科書には、次の方法が出ています。
          DME表示距離(nm)×300=高度(ft)
 DMEと高度の関係が、おおむねこれに当てはまれば、本物のビームです。幸いFlightGearの場合はずっと簡単で、ゴーストの場合は、オートパイロットでロックすることが出来ません。手動操縦で指針を中央に合わせておき、そっとグライドパス保持をオンにした場合、そのまま保持されれば本物。機首が落っこちて、本物のパスを探しに行ったら、オバケというわけです。なので、投稿画像でご紹介した写真は、すべて手動操縦によるものです。
 またゴースト信号は、空港までの距離が0.5nmを割り、いよいよ接地点に近づくと捕捉できなくなって、計器のグライドスロープ指針が再び上下に激しく動き始め、ロストシグナルを告げます。

 最後に…この現象が、LSZRに特有のバグではないことを確認するため、伊丹でも同様に高空のゴースト捜しを試みましたが、全く同様に発見することができました。となるとこれは、ILSにリアリティーを持たせるための機能でしょうか。これまでは全く気が付きませんでしたので、FlightGearのどのバージョンから存在するのかは不明です。

●●自動着陸について:
 本実験では、試しにタッチダウンまでフレアを掛けなかったのですが、「テスト1」では、大バウンドの予想を覆し、ストンとスムーズに降りました。不思議に思って「テスト2」で再度観察したところ、自動的にフレアしてメインギアから接地し、続いてノーズギアが降りました。現在のピラタスPC-9M改は、グラウンド・エフェクトが入っていませんので、こんなはずはないとびっくり。「テスト3」では機外から眺めたところ、昇降舵が動いて再びフレアが利き、きれいに降りました。無風のためもあり、センターラインのほぼ真っ芯を捉えていて、たぶん…私よりもうまいです。感心しました。

 バウンドさえ覚悟するなら、FlightGearではかなり以前から、無風ですと自動で降りることが可能でした。しかしv260では、とうとう機体の種類を問わず利用できる自動フレア機能が付いたのでしょうか。オートランドのお話は777だけかと思っていましたので、ならば誠に感激です。伊丹でも再実験しましたが、軽い横風環境で、見事に降りました。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-3-7 10:29 | 最終変更
Hyde  長老 居住地: ジョージア  投稿数: 169
hideさん、Hydeです。

確認できました。 RJTT 34Rで通常のアプローチでLOCのみをONにして、GSが出てもそのまま直進すると、また下からポインタが上がってきて、777ではキャプチャーしました。
ローカライザーが60度おきに4本のゴーストが有ることは知っていましたが、GSは知りませんでした。 貴重な情報をありがとうございました。
ちなみに、/sim/realism/false-radio-courses-enabled をFALSEにすると、どちらも無効にすることができました。

自動着陸でフレアが自動でかかるのは知りませんでした。 まだ、他の機種では試していないのですがやってみます。 どなたか他の機種で試して見た方はおりませんか。

それと、hideさんが使ったダウンロードで取得したシーナリーはどこからダウンロードしたものでしょうか。 教えていただけないでしょうか。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2012-3-7 13:38
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
Hydeさん、hideです。
 さっそくRJTTのILSアッパー・ゴースト追試結果を教えて下さって、大変ありがとうございます。
私は逆に、ローカライザーにゴーストがあることを、まったく知りませんでした。また、これらを止める設定につきましても初耳で、大変勉強になりました。

 自動フレアは、スタンプSV4複葉機と川崎T-4練習機でも、作動を確認しました。バウンドせずに降りられるかどうか、機種によって若干、相性の善し悪しはあるようですが…幅広く作動しそうな感じですね。またシーナリーのダウンロード先は、以下の通りです。本サイトのトップにある、「地形データのインストール法」からも行くことが出来ます。
  http://www.flightgear.org/legacy-Downloads/scenery-2.6.0.html
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Hyde  長老 居住地: ジョージア  投稿数: 169
hideさん、Hydeです。

まず、私のところでLSZRが出なかった件は、私のミスでした。 私は、FG_SCENERYは最初にdata/Sceneryに次にdata/terrasyncを指定してあるのですが、SceneryのTerrainのほうにだけここのデータが入っており、Objectsになかったためと分かりました。 これを削除してterrasyncの方を使うようにして表示されるようになりました。 ただ、スタートポジションが10と10Lの間のタクシーウェイになっており、ILSでもそこに降りてしまいます。 この回りの空港が表示されなかったのもこのせいだと思われ、もう一度確認してみます。

それから、GSスロープの角度が大きかった件は、そのように設定されているからです。
6 47.48498300 009.55431400 1298 10875 10 400099.806 IAL LSZR 10 GS
nav.datにはこの様に設定されており、400099.806の頭3桁がGSのスロープ角で400で4度を表しています。
この回りは、山が多いためどうしても急角度のGSを使わざるを得ないようで、LSZAでは6度になっています。 シャトル用の20度を除くとこれが世界最大のようです。 さすがにこの角度になるとタッチダウンが難しいです。
さらに、PAPIが合っていない件は、apt.datを見ると3.15度というのが2つほどありましたがほとんどの空港が3度となっており、GS角度が3度でないところでは、違いが出てもしようがないということですね。

いずれにせよ、850バージョンがそろそろ出てくるので(羽田のD滑走路もすでに入っているそうで作らなくてもいいといわれました)、出てからもう一度この近辺を調べてみたいと思います。

ところで、ダウンロード版とterrasync版でデータが違うのですか? 私は、どちらもおなじものだと思っていました。 どちらを使ったほうがいいのでしょうか。

もうひとつ、高度を計算するときindicated-altitude-ftは使わない方がいいと思います。 特に高地の場合温度変化の校正に時間が掛かり安定するまでに10分ほどかかる上に、誤差が大きくひどいところでは700ftぐらいの誤差が出ます。 さらに、このデータにはコクピット(センサー)の高さも加味されているので、機種によって違います。
おすすめは、画面上で'/'キーを押すとInternal Propertiesが出てきますので、environment/groud-elecation-mを使うのが確実です。 これは、地面の絶対高度を表していますので、それとRadio Altで計算すると正確なものが得られます。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-3-9 12:32
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
Hydeさん、hideです。
 LSZRをめぐる追加情報や様々なご教示を、どうもありがとうございました。

 グライドスロープの角度は、なるほど、そういう仕様だったのですね。もし私が挙げた、距離測定の基点(GPSが狙った滑走路末端)とGSアンテナのずれが、スロープを急角度に見せた理由だとしますと、遠距離では角度が小さくなるはずなので、あの解釈は誤りでした。また高度の計測については、METARをDisabledにしてQNHを29.92に縛り、その後Manual imputモードにしたので、ほぼ誤差はないと思ったのですが、温度という要素がありましたか。/instrumentation/altimeter内には、/indicated-altitude-ftとpressure-alt-ftが表示され、両者に2〜3ftの誤差があったので、なぜなのか、またどちらを使うべきなのか迷いました。

●LSZRの怪:
 さて。ダウンロード版のシーナリーと、Terrasync版の違いですが…以前は、まったく同一なのだろうと思っていました。その後、羽田空港のビルや東京市街地の建物の整備が進んだのを契機に、3Dオブジェクトに関してはダウンロード版よりTerrasync版の方が、はるかに充実していることに気付いて、だんだんTerrasync版を使うようになりました。しかしILSや滑走路など、基礎的な空港データに差があることが分かったのは、今回が初めてです。
 改めて観察したところ、LSZRは、ダウンロード版でもTerrasync版でも、滑走路のリスト表示そのものに問題があります。
 実世界の同空港を GoogleEarth で観察しますと、東西に長い敷地の南の長辺にアスファルト滑走路があり、北の長辺に誘導路やエプロンがあります。中間地帯は広い芝生で、灯火らしいものが少しあり、軽飛行機などの滑走路として使用されている模様です。これに対しFlightGearのLSZRは、滑走路が3本あります。長いアスファルト舗装の主滑走路(末端の方位表示は 10R-28L)に加え、短い芝生滑走路(緑色)が2本設けられていますが、なぜか起動ウィザードのRunwaysリストには、「10、10L、28、28R」の計2本4方向しか表示されません。

 Terrasync版で「10」を選択しますと、3本の滑走路のうち、中央の芝生滑走路が選択されます。ILSは舗装滑走路ではなく、この芝生滑走路に設置されていますが、困ったことに滑走路の中心部にはABNが建っています(なので、計器着陸すると滑走路ではなく、誘導路に降りたように見えるかも)。またTerrasync版では、起動時に舗装滑走路を選択する手段はありません。
 いっぽうダウンロード版のLSZRでは、やはりRunwaysリストに「10、10L、28、28R」の計2本4方向が表示されますが、ここで同じ「10」を選ぶと、今度は舗装滑走路が選択されます(本来の名称は「10R」なのですけれどね)。そしてダウンロード版のILSは、この舗装滑走路に設けられており、快適に降りることが出来ます。なぜこうなっているのか、さっぱり分かりませんが、何らかの整理作業が必要と思われます。

●どっちがいいか、ダウンロードとTerrasync:
 悩ましい問題ですね。これまでは、3Dオブジェクトが充実していることと、シーナリーの事前ダウンロード無しに長距離が飛べるため、ほぼ文句なしにTerrasyncを選んでいましたが、仮に今回のように、ダウンロード版の方が信頼できるようなケースが今後頻発すると、困ったことになります。
 またTerrasync版にも、通信速度が壁となって、機体の前方シーナリーの先読み・展開が、事前にダウンロードしたデータより、かなり遅れるという問題があります。いつも自機の少し前方で、風景のタイルが途切れて絶壁になっている…というのも味気ない話で、改善されることを祈ります。ただし風景のデータサイズは今後とも、大きくなって行く一方でしょうから、基本的には通信速度やパソコンの画像処理能力を上げるしか、対策は無いのかも知れませんね。

付記:これまではLSZRを「ザンクトガレン=アルテンハイム空港」と表記していましたが、正しくは後半は「アルテンルハイン」と判明。「r」を1字、読み落としておりました…(^^;)。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-6-20 16:36 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。長らくご無沙汰を致しましたが、謹んで「旅日記」を再開させて頂きます。以前から少しずつ準備していた、新しい方式の長距離飛行を始めようと思っております。

●「空に寝泊まりする」飛び方:
 これまで私の長距離フライトは、1回の飛行時間がせいぜい半日でした。
諸般の事情で、FlightGearに没入できる時間は限られますから、その間に一気に距離を稼ぐ必要があります。当初は「Time of day」機能を使って、時刻を「noon」か「dawn」あたりにセットして離陸し、Aキーによる倍速モードを多用して飛び、ポーズを掛けて撮影や計算を行ったり、困ったときは「長考」をしていました。しかし天文航法の研究を始めたところ、「Time of day」や倍速モードを使うと、天体の動きに無視できない誤差が出ることが分かり、使用を断念。時刻を調節する際は、パソコンのクロックを調整するようになりました。天文計算上はUTC(グリニッジ時間と同じ)に合わせてしまうと便利です。
 ところがv260では、クロック操作で任意の時刻にしたり、クロックをUTCに合わせると、FlightGearが起動の瞬間に異常終了する場合があります。METARと関係があるような気がするのですが、未確認です。こうして次第に私は、常に「実時間・実時刻」でフライトせざるを得なくなりました。これでは距離が稼げませんが、巡航速度をあまり上げると、天文航法はもちろん、NDBを使ったクロスベアリングでさえ、速すぎて計算が苦しくなります。正直、現在のピラタスPC-9M改の巡航速度(高空では対地350Kt)でも、ちょっと速すぎるくらいです。そこで発想を転換して、もっと減速する代わりに思い切って長時間飛行をする、という選択肢はないものかと、しばらく前から考えていました。

 ヒントになったのは、私が子供のころから何冊か愛読した、堀江謙一さんらシングルハンド(単独航海)の外洋ヨットマンの航海記です。交代要員がいない彼らは、夜はヴェイン・ラダー(風力利用の舵角維持装置)任せで睡眠を取り、シケと闘って疲労困憊した場合も、一応安全と判断したらバッタリ眠ります。風が変わったら自然に目が覚めて帆を調整できるので、操船を中断して寝てしまうというのも、ありなのです。
 もし、これに似たことをFlightGearの航空機でやると、どうなるでしょう。極端に長時間滞空が可能な機体を、睡眠中や勤務中もオートパイロットで飛ばしておき、1日に1回程度の離着陸と、数回の航法計算・針路修正をこなすとすると、毎日でも大規模なフライトが続行できるのでは? 実機で言いますと、副操縦士と交代しながら、食事と仮眠を挟んで飛び続ける、例えば哨戒機みたいなイメージですね。あるいは…海上で生活しながら長距離を飛ぶ、海鳥みたいな生活かな? 実際にどこまで可能なのか、一度実証試験をしてみようと思いました。

 使用機は今回、飛行艇にします。もともと長距離飛行・哨戒用で航続力があり、洋上に不時着できること、いざとなれば都市・集落の近くに接岸し、空港に依存せず給油しても不自然ではないこと、などが理由です。まず、六分儀を組み込んだショート・エンパイア飛行艇を思いつきました。が、同機は非常に手の込んだ傑作ではあるものの、英国空軍のバブル・セクスタントより、私のフライト・コードラント(航空四分儀)の方が便利ですし、水陸両用機のほうが柔軟に運用できそうです。という次第で、幾つかの試験飛行も行った末、最終的にはPBYカタリナを選びました。外観は正直、提灯アンコウみたいな機体ですけれども…機内を見回すと、ヨットの船室みたいな居心地のよさも感じます。
 航法面でも、海上を飛ぶ方が安全です。仮に1000nm先の目的地へ一晩掛けて飛んだ場合、途中で必ず風向風速が変わりますから、コースがずれて山に激突する心配もあります。私は、最初の段階ではGPS+オートパイロットを使ってテストするつもりですが、慣れれば推測航法で飛び、目覚めたり外出先から戻るたびに、主にVORやNDBでフィックス(実測位置)を取るつもりです。出来れば大陸に沿って沖合を飛び、衝突の危険はないが、いつでも陸岸の航法援助施設を利用できる、という距離を保てると理想的ですね。天文航法も面白いですが、相当手間が掛かりますので、主に無線標識の少ない大洋の真ん中で使うことになりそうです。

●機体の準備:
 PBYカタリナは最近改良され、コクピットの装置類やキャビン全般がディテールアップされました。外観上の特徴である、後部両舷のブリスター(二式大艇で言う、スポンソン式風防のことですが、以後は米国関連サイトの表現に従います)も、Dキーで回転し開閉してくれます。滞空時間も最低12時間は大丈夫で、タンクを大きくすれば24時間も夢ではない、と期待しました(実際は改造後、20時間前後は飛べると思います)。
 ただし航法計器はコンパスとADFしかないので、私は3月の下旬から、ピラタスPC-9M改の一部計器を、カタリナに移植する作業に掛かりました。あらかじめ撮影してあったカタリナの主計器盤写真をもとに座標を計り、ADFを外してRMIに置き換えたり、旧式の人工水平儀とジャイロコンパスを、それぞれILS対応のADIとHSIに置き換え、DME及び一部の無線パネルを追加。これらは簡単なはずでしたが、意外な伏兵がありました。電源回路です。

 まずADIを組み込んでみました。サイズがカタリナの純正計器類より少々大きく、グレアシールドに食い込むとか、真下のジャイロコンパスに干渉するとか問題はあったけど、ともかく定位置に出現。イグニッションをオンにすると、水平儀が起動しました。ただしILSは赤いフラグが出たままで動きません。そこでA10-ADI.xml(PC-9Mは、A10のADI計器を使用中)を調べたところ、電気関係の変数を発見。どうも現在のADIは「通電されて」いないと、作動しないらしいことが判明しました。
 最近、FlightGearの各機体にある「electrical」というファイルが、だんだん複雑になっていて、仮想の電気系統に育とうとしている気配があります。何のためか分かりませんでしたが、機体を完全な「冷温停止」状態から飛行状態に起動する際、スイッチ操作に従って、さまざまなシステムが順次目を覚ます、といった手順を再現し、リアリティーを増すためのようです。特にグラス・コクピットでは、最初はパネルが「停電して真っ暗」でなくてはならない…という要請があるのでしょう。それは分かりますけど、配線やスイッチのオンオフ、給電容量などをコントロールできないと計器一つ移植不能、という状態はやっかいです。

 ADIに関しては、Aircraft/PBY-Catalina/Systems/electrical-fdm.xmlというファイルを開いて、全く理解できないままに、内容の一部をADIに書き換えて追加したら、幸い電源が入って作動しました。ADFも、最初は不作動でしたが、internal propertiesの計器の、kr-87/outputs/needle-deg というパスを引用したら、やっと受信できました。しかしこれは、メニューバーにあるADF周波数セット欄とは別物。従っていちいち、無線パネルのダイヤルを操作しないと受信不能です。kr87無線パネルは、面倒なので放棄してしまいたいのですが、これを使わないとコールサインのモールス信号が聴取できず、長距離飛行では局の判別が出来なくなってしまいそうで、そのままにしています。

 ほかにRMIとDMEの不作動だの、邪魔なグレアシールドを切り取ったりサイズ変更すると、そもそも機体が起動できなくなるとか、うんざりするほど課題がありましたが、省略します。そのうち改造は動力性能・空力面に移行しまして、重量と馬力のアンバランスにより、プロペラのピッチ角を少しでも増大すると、高度と速度の維持が不可能になるとか、またまた問題があり、調整を重ねました。同じころ、妻と私の親が3人同時に倒れるという、現実世界の大事件がありまして…この対応や余波のため改造はますます遅れ、飛行艇の出発は、6月までもつれ込んだ次第です。

●深夜に伊丹出発、バシー海峡をめざす:
 では、試しに飛びます。以下のようなコースです。万事うまく行ったら徐々にコースを延長し、出来ればそのまま2回目の西回り世界一周に挑戦して、「平均速度の自己最低記録」と「達成日数の自己最短記録」を狙いたいと思います。取りあえずは、台湾=フィリピン間のバシー海峡を狙って飛び、両国どちらか都合の良い方に着陸して給油します。

伊丹RJOO
   ▼215度37nm
友が島VOR(TME)116.40
   ▼225度25.5nm
小松島NDB(KJ)352
   ▼208.6度50nm
足摺岬 33.14.25N-134.11.00E
   ▼219度540nm
嘉手納VOR(KAD)26.21.24N-127.46.05E 112.00
   ▼222度465nm
バスコ(バシー海峡・バタン島の空港)20.27.03N-121.58.29E NDB276(BS)

 航法はVORとNDB主体。補助に天測、非常用にGPSを使うつもりです。新型Atlas(Ver.11)をチャート代わりに使いますが、いざという時は当然FlightGearにアタッチして、FMS代わりになってもらいます。天文航法はもちろん、電波航法も長らく使わないと勘違いをしますので、取りあえずバスコまでは練習区間としてGPSオートをセットしておき、この間に測位トレーニングをします。以後は成り行きで。

 6月15日の日本時間・0055時にPBYを起動。燃料は12000Lbs満タン。0110時、GPSにバスコまで入力終わり。0111時滑走開始。38秒6271ftの滑走で離陸し、GPS針路に定針。目標高度5000ft。
 闇夜の大阪湾に出ます。重い機体が4000ftで少々ダッチロール。手動で押さえて、やがて神戸空港のアビーム(真横)を通過。少し機体が落ち着き、自動で90KIAS、高度5000ftを維持。スロットル78%くらい、2700回転、吸気圧27インチで巡航。DMEによるとRJOOから31キロ(注:改造DMEの properties が作動せず、この時は表示ドラムの記述を修正して、nav[0]のメートル単位距離データを代入していました)。GPSによると友が島まで19nm。対地速度は100ノット出ています。北風に乗った形ですね。
 0128時、航続距離を増やそうと、プロペラピッチレバーを半分ほど手前(角度増大側)へ。1620回転まで落ち、燃費は相当改善して0.95nm/galに。推測残距離1878nm、残飛行時間18:34などを確認。明日の夜まで燃料が持つ計算です。友が島水道を通過して、海自ヘリ基地のある小松島へ自動変針。次いで0150時、小松島で変針し室戸に向かいます。

 ここで大きなトラブル発生。高度をいちいち指定しなかったためか、変針点で勝手に機体が降下し始めたのです。起きていて良かった!と思いましたが、慌てて修正操作中に、オートパイロットの癖でヨー運動が出ている…と思ったのが実際はフラットスピンでして、回復が間に合わず墜落。PBYは、もともと重くてアンダーパワーですが、私はさらに燃料搭載量を増やしており、機体は過荷重で神経質です。くっそー!
 おまけに再起動したとたん異常終了。パソコンをリセットしてもダメ、FlightGearのオートセーブ・ファイルを投げ捨ててもダメ。Ver.2.6.0になってから起動失敗が増えており、久しぶりにムチャクチャ腹が立って、もう次のバージョンが出るまで、旅はやめようかと思いました。

●四国沖で夜が明ける:
 結局、基本通りにFlightGearの全項目をリセットして、再起動成功。やはり焦ってはいけませんね…(^^;)。0245時、再び伊丹で満タンにして始動、離陸。0257時、関空を左前に見ながら、重い機体がようやく安定しました。用心のため以後当分、プロペラピッチを操作しないことにします。
 ところがもう一つ、トラブル発生。出発前にリセットしたのに、パソコンがしきりに「**をインストールしたので、**分後にリスタートします」と言う。冗談じゃありません!! このままでは長時間の自動操縦が不安なので、0337時ごろ夜明け前の紀伊水道に着水し、パソコンをリセットしました。私が欲しいフライト途中セーブ機能は、ついに廃止されてしまったらしいので、緯度経度と燃料残をメモしておき、海上で再起動するわけです。セーブできないのは不便ですが、仮にセーブデータから再開すると、リアルタイムではなくてシミュレーション内部の時刻になるはすで、天文計算上は好ましくなく、痛し痒しです(…って言うのはしかし、ややこしい天測をする私の意見です。皆さんは本当に、途中セーブ機能がなくても大丈夫なのでしょうか)。

 0348時。暗い空が、微かに赤く染まる海上に機体が出現し、先ほどと、ほぼ同じ燃料搭載量に調整。GPSに室戸岬の緯度経度と嘉手納基地VOR、バスコのNDBのみ再入力し、無事に離水。間もなくバラ色の夜明けが訪れまして、世界はなかなか綺麗です。4時8分、室戸岬の変針点を通過。あとはバシー海峡目指して突っ走るのみ。何かトラブルが起きた際、失速まで大きなゆとりが欲しくて、巡航速度を100Ktにアップしました。0503時ごろ、宮崎空港VORと鹿屋NDBを受信。モールス信号を聴いて局名が確認できたので、方位測定したところ、土佐清水市の真南約50マイル、31.51N-131.57Eあたりにいました。なかなか順調です。左後方に太陽が出てきました。私はしばらく仮眠しようとベッドへ。まるで機内の簡易ベッドに転がった気分ですが、こういう「有事即応」の雰囲気で眠るのは、嫌いじゃありません。

●南西諸島を台湾へ:
 0831時、目覚めてディスプレーを見ると、ミルク色の霧しか見えず、フリーズしたかと思いましたが、無事に飛行中。やがて晴れて、南西諸島のどれかが見えました。315nmくらい来たはずで、0851時(ここまですべて日本時間)にKAD(嘉手納VOR)のモールスが聞こえたので位置を取ると、さっきの島影は与論島だったみたいです。もうすぐ沖縄本島。後で思えば、尖閣諸島のそばにいたわけで、話題の島をちょっと見たかった気もします。

 眠って食べて雑用を済ませ、15日の1256時(UTCでは0356時)ごろ、波照間と宮古島のNDBを方位測定し、クロスベアリングで緯度経度を出したところ、八重山諸島のはるか南、22.39N-123.31Eと判明。表計算で求めた推測位置とかなり食い違っていて、数カ月のブランクの間に、航法の腕が落ちたことが分かりました。しかし最新Atlasの画面が、チャートとしてうまく機能するので、以後は数値計算ではなく、作図で位置を出す方法にシフトすれば大丈夫。以前から何度もご紹介した、フリーウェアの「斜めものさし」を起動して、Atlas画面のデフォルト倍率「125」に縮尺を合わせ、原点をAtlas画面中央の「+」マークの真下に敷き込んでおきますと、マウスポインタであちこち指すだけで、機体からの距離と方位がほぼ正確に出ます。NDB2局の受信方位をこの方法で調べると、地図上で「ここが現在地」という場所が分かり、Atlasに緯度経度が表示されます。画面をズームすると、距離表示は合わなくなりますが、ズーム比「125」倍の他には「1250」倍だけを使うようにすると、表示を10倍するだけで修正できます。この方法では、10nmやそこらの誤差は出てしまいますが、目的の島や空港はたぶん視認できるでしょう。

 13時すぎ、視界内にある雲のレイヤーが、すべて同じ向きに傾いていることを発見。この現象は6年くらい前、当時のFlightGearを使って極地へ飛行中、緯度が上がるにつれて発生しましたが、その後は確認したことがありません。この時点で離陸から12時間くらい経っており、超長時間飛行の影響によるものなのか、新たなトラブルの前兆ではないか、レイヤーの傾斜角は航法の役に立たないか…などと考えましたが、そのうちに自然復旧。ただし後で再発しました。
 また1323時に、前方海面にテクスチャーの異常を発見。海のタイルが四角く欠けています。いよいよ危ないかな? 異常終了すると、嫌だなあ。とメモした途端、また10nmほど先まで描画されまして、以後余り気にしないことにしました。1336時、正面215度にバスコNDB(BS)を受信。台湾東岸のランユーNDB(LY)は290度に入感しており、これで得られた位置は21.41N-122.48E。バスコまで作図上の距離は89nm、GPS測定では83nmですので、まずまずの精度です。
 1446時。所用を済ませてパソコンの前に戻り、GPSを見たら、もうバスコを通り過ぎています。それはよろしいのだけど、後方はるかに山が見えて、どうやらあれがバスコらしい。本機の高度より少し高い感じで、よくまあ激突しなかったものです。

●右エンジン停止、次いで機体が竿立ちに…:
 1556時、フィリピン群島の一つを通過。小さな島を見下ろしていると、回転計の黄色い右エンジン指針が、変な上下動をするのが見えました。あっと思った途端、右エンジンが停止。FlightGearで飛行中に片エンジンが勝手に止まるのは、初めての体験です。
 右エンジンは、止まっただけでなく、時折思い出したように吹き上がります。そのためか、機体が不意に竿立ちになって、ブラックアウトやレッドアウト、ロールを発生。必死に立て直しながら、高度を失いました。燃料タンクを調べると、4つのうち0番と3番が空。1番と2番はそれぞれ1147.5Lbs(173.9gal)残っています。両タンクのチェックマークを外しても、まだ右エンジンは完全停止せず、機体は暴れ続けました。幸い、島の真上です。最初はルソン島に再び定針したものの、到底たどり着けないと思い、不時着水を敢行。島へタキシングして、そっと平らな岸に機体を寄せてエンジン停止。トラブルを解消するには、アプリを再起動するしかないと思いまして、正確な位置や方位をメモ。北緯18度50分28秒、東経121度18分51秒。機首の向きは295度、右舷側に陸。あとで調べると、バブヤン諸島のフガ島という所でした。長さ22キロ幅6キロ。ちなみに、こんな小島にもかつては日本軍が駐屯していたそうです。

 FlightGearを終了する前に、念のため左エンジンを始動。どうもスロットルが、勝手にアイドルに戻ろうとします。いよいよリセットするしかなさそうですが、あちこちつついている間に、突然うまくエンジンが吹けるようになったため、ギアを出してビーチング(上陸)しました。燃料の総量を計って、均等に545Lbsずつ4つのタンクに入れ直すと、両舷エンジンの再始動に成功。ちゃんと快調に吹き上がります。しめた。翼端フロートを出して、のそのそ水中へ。水鳥のような気分です。1636時に離水。
 ルソン島北西部のラオアグ国際空港(RPLI)めざして高度を上げると、「LAG」のモールスが聞こえ始めました。前方に淡く岸と山が見えます。やったぁ、フィリピンのルソン島です。どっさり耕地があり、小さな湾と、かなり海に迫った低い山々が見え。その間に小さな平野が点在して、愛媛とか和歌山県あたりの景色に近い気がします。あったかく、香しい空気が流れているような気がして、両舷のブリスター風防を開いたまま、オープンカー気分で低空飛行。さっきエンジントラブルがあったため、山地や谷間を飛ぶと、ちょっとだけ不時着が心配です。さてラオアグ空港ですが、調べたら国際空港なのにATISもILSもありません。天気が悪くないので、取りあえずは必要ありませんが。

 1706時、もやの彼方に都市が見え、その向こうに…待望のABNを発見。滑走路方位のラジアル190度をHSIにセットします。かなりの横風の中をウイング・ローで降りて、無事にタッチダウン。オートブレーキで、たった717.8ft走って停止し、誘導路に入って1721時にエンジン停止。伊丹から昼夜16時間10分掛けて、わりとあっさり?フィリピンに到着しました。

●大豪雨。低気圧の列をかきわけ、ミャンマーへ:
 3日後の6月18日に、次の航程へ進みました。

ルソン島 ラオアグ国際空港RPLI 18.10.40N-120.31.52E
   ▼718.6nm259.8度
ベトナムのダナン空港VVDN VOR114.4DAN NDB212DJ 16.03.08N-108.11.53E
   ▼690nm275.1度
ミャンマーのヤンゴンVOR112.3YGN 17.05N-96.14.51E
ヤンゴン空港VYYYは、ここから214度12nm

 日本時間の0040時にFlightGearを起動。UTCではまだ前日の15時40分ですが、もし天測しなければ、この日付は特に意味を持ちません。ラオアグではDMEを修理して、本来のマイル表示に戻しました。これまで作動しなかったのは、実は…NAV-1のデフォルト周波数を、伊丹のILSに書き換えていたためです。伊丹はILS/DMEではないので、幾らテスト飛行をしても、そもそも電波が入感しなかったのですね。大赤面!!

 燃料は3000Lbs(454.5gal)×4タンクが全部満タン。天気は9000ftにovercast、2000ftにbrokenの雲があって、204度の風19Kt。おまけに雨とくる。くそーっ、思わぬ悪条件ですね。実世界では、拙宅の窓の外は台風4号で荒れ模様でしたが、フィリピンは関係ないだろうと、高をくくっていたのです(^^;)。
 0048時(以後日本時間)、エンジン始動。100KIASで飛ぶ予定で針路計算をすると、対地88Ktで真方位250.9度、WCAは9.1度左と出ました。向かい風です。もっとずっと南下して、貿易風帯を探した方がいいのでしょうか。ならばインドネシアのコタバル当たりを狙うかな。しかし既に、北回帰線より南にいます。貿易風(東寄りの恒常風)が吹くものでしたら、とっくに吹いていい緯度です。まあ、日中の天気次第ですな。

 0058時(1558UTC)に離陸。暗夜の豪雨で、ほとんど視界がありません。計器を見なければ姿勢も分からないほどで、ラオアグにはILSがないし、今すぐターンして降りる必要が生じても、こりゃとても無理です。凄いことになりました。
 0115時(UTC1615時)、出発点から28nm。依然として猛烈な雨。対地速度98nm、燃費は目下0.699nm/galと低調で、回転数は2700でした。ここでプロペラピッチレバーをノブ1個分だけ手前に引いて(具体的にはシフト+nキーを押して)、ピッチ角を少し増大させてみますと、回転数は2050まで落ちて、燃費は0.83nm/galくらいまで改善。推測残距離も1618nm、推測残時間16時間36分と伸びました。機体が燃料満タンで重いうちに、ペラのピッチ角を増やすのは少々大胆ですが、高度速度は維持できており、一応このフライトは、天気を除けば快調な滑り出しです。0157時(1657UTC)になっても、風のデータは同じ。よって同じ設定で続航するとしましょう。

 0232時、ラオアグから154nm進出。猛烈な雨が続いています。これから一体、どうなるのでしょう。南シナ海の実況天気図と予想天気図、アメダスの画面が見たいけれど、それに当たるものが発見できません。ふと思いついてGoogleEarthを起動し、オプションの「天気」を表示したところ、地球規模で雲のレイヤーが発生しました。よかった! 数値はなくても概況がつかめます。
 衛星写真によれば、日本の台風4号の後ろには、低気圧がカルマン渦のように一列に並んで、南西方面へダンゴになっています。低気圧中心からの雲の張り出しは、暴風半円の南側が特に大きいため、追い風(貿易風帯)を期待して南下するのは、全く見当外れだと分かりました。逆にダンゴの列の北側の、可航半円に入れば追い風です。中国沖の海南島を目標に、西に進むことにして…海南島南岸のサンヤVOR112.5(SYX)をNAV-1にセット。VORの位置(18.18.26.N-109.10.20E)と、0238時の現在地(ラオアグ260度160nmの17.52.58N-117.43.36E)から針路を計算し、488.54nm273度と出ました。風はまだ205度19Ktだから、修正計算して対地速度は実質91.3Kt、真方位で針路262.9度、WCAは10.1左。推測航法と、VORやNDBによる位置確定を繰り返すフライトが、大荒れの空で続きます。
 雨は、さらに激烈になってきました。狂ったワープから出られない宇宙船のようです。機外視点では、ほとんど機体が見えないくらい。おまけにラオアグVORの受信圏を出てしまい、何も受かりません。NDBが香港に合わせてありますが、当分ダメでしょう。まあ頻繁に風の変化をチェックして、現在地と補正針路を確認していれば、海南島を見失うようなことはないでしょうが…暴力的な雨足以外に、せめて星でも船でも、何か見たいし、何か聴きたいものです。

 1時間近く経った0334時、微かに何かが聞こえました。ヘッドホンをひっつかむと、モールス符号の「RW」です。香港の啓徳空港NDB! 0335時の受信方位は343度、これで位置の線が1本得られました。コースの左右誤差があまり無ければ、作図によると、位置は18.38N-115.22Eくらいでしょうか。しかし推測飛行距離を当てはめると、あまりに前進しすぎていて、辻褄が合いません。ともかく、引き続き西へ。

●ベトナム上空からタイ、ミャンマーへ:
 少し仮眠を取った後、日本時間0540時(UTC2340時)に、やっと雨が止んでいました。香港のVORとベトナム東岸フエのNDBを使って、16.31.43N-112.31.07Eにいることが判明。海南島を目指す、西への針路から大きく南へ外れ、ほとんど当初予定のダナンに向かっています。どこかで低気圧の西側を飛んで、風が北寄りに振れて流されたのでしょう。この時点でも305度16Ktの風が吹いていますが、雲は4000ftにscatterd、1400ftにfewと、天気は回復しつつあります。ならば予定通り、このままダナンを目指しても差し支えなさそうです。以後、修正計算を重ねながら、曇った洋上を西南西へ。やがて世界がバーミリオンに染まって、壮麗な夜明けが訪れました。

 ミャンマーのヤンゴンVORを目指して、ベトナムとラオス領内を通過。薄い雲を通して、ぼんやり大地が見えますが、水田ではなく畑が広がり、白いサイロや赤い農家があって、針葉樹が生えています。アジア・モンスーン地帯というより、イギリスに似ているのは残念です。植生や風土が、もっとリアルなら…FlightGearの世界旅行は、ずっと楽しくなるのですが。いっぽうタイの山岳地帯は、割にジャングルっぽい色合いで、少し気分が出ました。熱帯を飛ぶときは3Dの針葉樹を消して、テクスチャーだけにした方が無難です。タイ領内でMEF(チャートに記載されている、その地域の最大標高)が、現在の飛行高度5000ftを少し超えたので、7000ftまで上昇。プロペラピッチも再調整し、燃費は1.1167nm/galまで改善しました。前回、エンストに繋がった、燃料の不均等な消費は今回も同じでしたが、飛行中に1回、タンク内の残量を均一にしたため、特に問題は生じませんでした。
 Atlas画面を土台にした推測航法が、一応うまく行くことが分かったので、タイ西岸からアンダマン海に出るあたりで、今度はAtlasをFlightGearにアタッチして、地図連動のカーナビ的フライトもテスト。また小雨が降りましたが、眼下に雲があるものの頭上は快晴。地表が雨だと、高度に関係なく降るのでしょうか。「狐の嫁入り」的な風情はありますが、変な感じですね。
 順調に飛び続け、ILSを使ってヤンゴン進入。ゴーアラウンドに備えて、プロペラピッチを最小角度にして降下を続け、ようやく滑走路がインサイト。ところが西から東へ小さな断雲が、地表をこするように移動していて、それがたまたま接地点あたりに居座って、焦りました。ともかく飛び抜けて、横風をかなり修正しつつ、長い滑走路に再び接近してタッチダウン。やれやれ…AI機がいなくてよかったです。1508時、誘導路でエンジン停止。12時間18分のフライトでした。

 今回は、6月15日と18日の2日間に計28時間28分飛んで、稼いだ距離はざっと2850nmです。天気は散々でしたが、アジア・モンスーン地帯の6月をたっぷり実感したと思えば、なかなか得難いフライトです。実時間・実時刻・そしてリアルウエザーならではの味でしょうね。大長文で失礼致しました。
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なし 海鳥の旅∧侘計

msg# 1.4.1.1.1
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hideです。
 「海鳥の旅」の第2回をお届けします。
この長旅は、コースの全容をきちんと決めてありませんが、大ざっぱに言いますと当面は、アフリカの南半分を横断し、どこかで大西洋を渡って北米へ…といったイメージを持っております。細部は今後詰めて行きますが、馴染みのないアフリカで何を見たいかというと、取りあえずは巨大なビクトリア湖とタンガニーカ湖です。
 なので当面はビクトリア湖の東方、ケニアのナイロビに着くことを目標に、今回はミャンマーのヤンゴンからアフリカ沿岸をめざして、インド洋横断に取り掛かります。ヤンゴン=ナイロビ間は4000nm近くありますので、まずベンガル湾を渡って、インド南端付近のスリランカで給油。さらに広大なインド洋南西部に乗り出して、アフリカまでの中間付近にあるセイシェル諸島をめざします。

 時間さえ掛ければ楽勝…と思いましたが、途中でまさかのロストポジション。予定より数百マイルも離れた海に出てしまい、波乱のフライトになりました。途中で新作の航法計器・偏流計のテストもしましたが、こちらもまだまだ、改良が必要と分かりました。さてコースは、以下の通りです。

ヤンゴンVYYY 16.54.10N-96.07.51E VOR112.3HGU
  ▼238度1118nm
スリランカのコロンボVOR112.7KAT 07.09.40N-79.52.05E バンダラナイケNDB315CNL
  ▼264度1460nm
セイシェルVOR・空港FSIA113.1SEY NDB373SEY 04.40.39S-55.31.54E
  ▼1170nm252度
ケニア・ナイロビVOR・空港113.1NV NDB-278NO/379AL 01.17.58S-36.57.14E 5231ft
 文中に**.**N-**.**Eと書いてあるのは「北緯**度**分、東経**度**分」のことです。VORやNDBの文字に続く数字はもちろん周波数、さらに後のアルファベット2〜3文字はコールサインで、機体が受信圏内に入れば、モールス信号として聴取することが出来ます。

●広大なベンガル湾へ:
 23日の未明に、ヤンゴンで起動。天気は1600ftにbroken、2100ftにfew、10100ftにovercastと崩れ気味ですが、風は3.6Kt245度と穏やかで、100Ktで飛んだ場合は計算上、実速度が96Kt、針路が238度とわずかな補正で済みます。
 わがカタリナは、パネルに協定世界時の時計がないので、以下はパソコンで確認する日本時間になってしまいますが…0153時(現地2323時、UTC1653時)、深夜のヤンゴンを出発しました。順調に5000ftを超えて、さらに9000ftを狙いましたが、重量過大の機体はすぐ減速してしまいます。回転数やプロペラピッチを様々に調整しながら、何とか高度を稼いで西へ。0213時の燃費は0.76nm/gal程度で、計算上の残り航続距離1550nm、残り滞空時間は13時間48分くらい。高度や速度が落ちないか警戒しつつ、ここから徐々に回転数を落として1800回転にセットしたところ、燃費0.94nm/gal、残距離1899nm、16時間51分くらいまで改善しました。
 指示対気速度は98KIAS。私が速度計に追加した真大気速度指針は、ちょっと速い110KTASを指示。パフォーマンス・モニタに表示されたGS(対地速度)は112.8ktでした。出発30分後の0223時にDME(今回から再びマイル表示)を確認すると、順調に66nm進出しています。上下を雲に挟まれていますが、眼下には灯りが見えます。よしよし、ジョージくんに任せて眠るかな。
(なぜか昔から米俗語では、オートパイロットをGeorgeと呼ぶので、私もカタリナの副操縦士席に座っている人形を、密かにジョージくんと呼んでいます)

 日本時間の0715時に起床、5時間22分経ちました。590nmくらい来たことになりますが、なにぶんベンガル湾の真ん中でして…アンダマン諸島のポートブレアVOR115.7PPB、カルニコバルNDB355CN、スリランカの東岸バティカロアNDB320BAT、コロンボのVOR112.7KATなど、いずれも受信不能で外は真っ暗。これは神経にこたえるなあ。0733時、燃費は1.09nm/galと快調で、残航続距離は1496nm、残時間は13時間21分。
 燃料は、全4タンクが3000Lbs満タンでしたが、この時点の残量は第1タンクが1369Lbs、第2が2347Lbs、第3も2347Lbs、第4が2021Lbsと、相変わらず不均等な減り方をしています。放置すると、いずれ第4タンクが空になった時点で、また右エンジンが勝手に止まったり吠えたりしますので、残量を均等に調節しました。今回、初めて装備したトータライザ(燃料の総量計。internal properties に、ちゃんと項目が用意されていますので、既成の燃料計を改造しました)を見ても、約7割残っています。まずは安心。

●やっと夜が明ける:
 ベンガル湾をGoogleEarthで見ると、中部は雲がとても少なく、これから行く南西部は快晴。ちなみに今の天候は、雲が2000ftにfewで風は225度7.5Kt。風がわずかに南へ振れましたが、スリランカとインド南部は標高が低く、コースが少々北へ寄る分には問題はないので、針路はこのまま。
 0837時、洋上は夜明けです。前回のエンジントラブルが気になって、左右エンジンの回転数、推力、時間当たり燃料消費に差はないことを確認。雲がまた、後ろに傾く異常現象が起きていますが、フライトに影響はないようです。
 まもなくADFの針が振れて、249度にNDBの感度がありました。ヘッドホンからモールス信号が流れます。
            「−・−・ ・・・・ −・・・」
「C、H、B」のコールサインは、プリセットしたスリランカ東岸のチャイナベイです。バティカロアNDB320の「BAT」も、234度に取れました。時刻は0857時。チャート代わりのAtlas画面上で、これらの受信方位を調べると、現在の緯度経度は、09.51N-84.37Eあたりです。としますと、コロンボへの真針路は241度くらい。風が255度6Ktだから、対地速度は計算上104Kt、修正針路は242度ですので、0900時ちょうどに針路修正。Atlas上で計ると、コロンボまではあと325nmくらいなので、日本時間の1200時ごろ到着です。よしよし。

 いつの間にか、空と海が青く輝き、すっかり朝に。無線をいじっている20分あまりのうちに、暗いバーミリオンから劇的に夜が明けました。太陽の真下近くを飛んでいるので、黎明と薄暮は短くて、夜から朝へ、朝から夜へと短時間に移り変わるはずです。0917時にはコロンボのVORも、ほぼ正面に入感。まだDMEは動きませんが、航法上は着いたも同然。とは言うものの、まだ2時間40分も掛かります。でかい海だなぁ!

●試作品の偏流計をテストする:
 淡々と飛びながら、今回初めて試作した偏流計のテストをしました。偏流計というのは、風によって針路が予定コースから何度くらいずれているか、対地速度はどのくらいかを測定する光学器械です。かつては、航法援助無線が届かない遠洋飛行に欠かせない道具で、INS(慣性航法)の普及以前は長距離旅客機などに搭載されていました。今も海上自衛隊のYS-11Mに装備されているそうで、P3Cなども恐らく、念のために持っているのではないかと想像します。

 仕掛けは何種類かありますが、私が参考にしたのは「ジオスコープ」と呼ばれるタイプです。この器械は筒状で、コクピットの床に、潜望鏡を逆さにしたみたいに取り付けられ、接眼レンズをのぞくと真下の地表が見えます。視野には、前後方向に数本の平行線が入っていて、ダイヤル操作で左右に回転します。パイロットまたは航法士は、この平行線を少しずつ回し、眼下を過ぎてゆく波頭などが、完全に線に沿って流れるように調整します。そして角度目盛りを読むと、機体が風に流されながら、実際に飛んでいるベクトル方位が分かる仕組みです。計画針路との差が「偏流角」(ドリフト・アングル)であり、向きを逆にみれば「修正角」(WCA=ウィンド・コレクション・アングル)になります。
 ジオスコープの視野には、左右方向にも、2本の平行線が入れてあります。これは対地速度を測るためのものです。線の1本は可動式で、視野の中央付近にあり、ダイヤル操作で前後に動きます。この可動式の線の横には、高度目盛りが打ってあります。もう1本の線は固定式で、視野の後端付近にあります。まずダイヤルを操作して、可動式の線を現在の高度にあたる目盛りに合わせ、目印となる波頭を選びます。次いで波頭(または、投下した発煙筒など)が、可動式の線と固定式の線の間を移動する時間を、ストップウォッチで測定。この秒数と換算表から、対地速度が分かる仕掛けです。実に簡単明瞭ですね。

 偏流計は、正確な推測航法を行う基盤の一つですので、以前から何とかして、FlightGear用の装置を作りたいと思っていました。数年前、本連載でご紹介した世界一周のころは、デスクトップ・アクセサリーとして出回っているフリーウェアの分度器を使って、波頭の向きを計ろうとしましたが失敗。結局はAtlasの航跡を、フリーウェア「斜めものさし」の分度器機能(これは非常に優秀で、今も欠かせない道具)で計るのが、もっとも簡単かつ正確でした。しかし…出来るものでしたら実際に、地表の目標物や洋上の波頭を観察して、偏流を計ってみたいものです。幸い現在は、精密な方位測定が可能なフライト・コードラント(自作の航空四分儀)を持っていますので、これに平行線を追加すれば、ビューを真下に向けるだけで測定できそうです。

 「投稿画像」コーナーにアップした、「海鳥の旅∧侘計」の組み写真をご覧下さい。画面右にある3枚が偏流計の説明です。今回の旅は目下、無線航法を盛んに使っておりまして、フライト・コードラントの出番がありませんが…一応こんな風に、カタリナの垂直尾翼に取り付けてあります。1番上の写真を見ると球体の真下に、魚焼きの網みたいな四角いものが、赤く光っていますね。あれが偏流観測用に設けた10本の平行線で、天測用の方位・高度カーソルと連動し、視野の動きに合わせて自動回転します。いっぽう対地速度測定用の平行線は、私の技術では高度に合わせて前後に位置を調節する仕組みを作ることが出来ないため、このモデルでは省略しました。対地速度は当面、パフォーマンス・モニターなどで知るつもりです。

 2枚目の写真は、実際にコードラントのビューを真下に向けて、平行線越しに海を見たところです。太陽の位置によっては、波頭がうまくチカチカ光ります。しかし実際にテストしてみると、もっとビューを拡大表示しないと、波頭が流れる方向が、つかみにくいことが分かりました。コードラントは天測のため、見晴らしのいい場所に置く必要があり、尾翼に設置したのですが、胴体後部ごしに海を見下ろす関係上、あまりアップ画面にできないのです。これは問題です。
 また、視野の中央に1本だけ横線がありますね。あれを波の列(というか、うねり)に合わせると、風向が分かるはずなのですが…v260のうねりは、上空から見るとカーブの集合になっているため、なかなか向きが分かりません。また観測結果とinternal propertiesを比べても、波と実際の風向とは、どうも合っていない気がします。このへんも含めて、さらに改良と実験が必要ですが、いずれ続報をお目に掛けましょう。

●コロンボから、アラビア海へ:
 そうこうするうちに、もう一度仮眠を挟んで、愛機は首尾よくコロンボに到着。日本時間の正午前に起きてアプローチに入り、緑の平野が広がるスリランカ西岸を飛行、1211時ごろ着陸しました。燃料は半分弱の5300Lbsほど残っていますが、次の目的地のセイシェルまでは到底無理で、給油が必要です。というわけで、2352時(1552UTC)にコロンボで再び機体を起動。今後のコースを再掲します。

スリランカのコロンボVOR112.7KAT 07.09.40N-79.52.05E バンダラナイケNDB 315CNL
  ▼264度1460nm
セイシェルVOR・空港FSIA113.1SEY NDB373SEY 04.40.39S-55.31.54E

 天候は1600ftにscatterd、1800ftにfewと回復気味ですが、5000ftで235度13Ktと、ちょっと風が強くなりました。満タン。風の補正計算を終えて、いざ飛ぼうとしたところパソコンの調子が悪く、パーキング・ブレーキを解除できなくなったため再起動。どうも、幸先のよろしくない飛行です。0020時ごろ離陸。
 ヤンゴンからのフライトでは、なし崩しに高度を上げたため対地速度が安定せず、機体の進出距離をうまく推測計算できませんでした。途中までVORで確定位置が出ますから、実害はないのですが…どうせなら出発地を基点に、すっきり計算できた方がマシです。そこで今度は旋回しつつ、巡航高度の5000ftまで上昇し、巡航速度まで加速した上で空港の真上を通過し、航法上の出発時刻を記録する…という、非常にオーソドックスな方法を取りました。
 正面少し右に、下弦の月が見えます。星も多数出ているため、そろそろ天測の練習に掛かりたいのですが、天文航法というのは、1カ月くらい放置すると、幾つもの勘どころを忘れます。そもそも、自分が絶えず改良した航法用ワークシートの使い方が、分からなくなってしまいます(^^;)。この問題は、マニュアルを書き直して解決しましたが、どうも最近、太陽も恒星も試験観測の誤差が大きく、時刻設定か表計算か、どこかに問題が潜んでいるようです。ことによると…コードラントの取り付け位置が問題かな? ピラタスPC-9M改でもスタンプSV-4複葉機でも、ビューのカメラ軸を念入りに微調整しても、どうにも測定精度が上がらず、コードラントの位置を変更したらうまく行った、という例がありました。調査やテストにはたっぷり時間が必要ですので、当面は無線航法と推測航法でしのいで、いざとなったらGPS/Atlasを使い、天文航法の復活はナイロビ到着後にでも、手を着けることになりそうです。

 こうして飛んでいるうちに、日が変わって24日。今回は少し高度を上げ、増速することにします。0123時、プロペラピッチを浅い位置に戻して上昇し、10000ftで120KIASにセット。安定後の燃費は0.85nm/galとまずますです。ピッチ角を最大まで上げても、回転数は2000までしか下がらず、本機にはこのくらいの高度が適切なのかも知れません。燃費は1.06nm/galまで改善し、残航続距離1964nm、残時間13時間57分。パフォーマンス・モニターが示す対地速度は140.2Kt=9.5時間でセイシェル到着。日本時間の1110時ごろですね。

 0150時ごろ、インド南端から南西方向にある、モルディブ諸島のマレNDBを受信。MLのモールス符号を確認しました。このへんから雲が濃くなってきて、0204時には49.7度の風7.6Ktを記録。ついに待望の、東寄りの風になってきました。いわゆる貿易風だと思われます。VORによれば、コロンボから190nmの予定コース上にいます。風の修正計算だけやり直して、新たな修正値をゲット。機体が少し軽くなったと見え、燃費はさらに良くなって1.1167nm/galに。残航続距離1972nm、13時間20分。安心して、朝まで寝ることにします…。

●ロストポジション:
 少々寝過ごして、1053時(日本時間)に機長席へ。朝日が後ろにあって、洋上を飛んでいますが…セイシェルもマダガスカルも、さっぱり無線が受信できません。なぜだ。ここはどこだ?
 残燃料は、4個のタンクがそれぞれ0gal、243gal、243gal、123galになっています(ポンド表記とガロン表記が入り乱れて済みません)。1番タンクは既にカラですが、幸い4番タンクも空にならないと、右エンジンの異常は発生しないことが、すでに分かっています。今のうちにと、計609galを152galずつ均等に、各タンクへ分配し直しておきました。まだ6時間/594nm飛べる計算ですが、いまや非常事態で、もっと滞空時間が欲しい場面ですから、さらに100Ktに減速しました。すると、残航続時間は7時間48分に伸びましたが。燃費は0.8822nm/galとなって、残航続力は594nmと悪化。これは、さじ加減がいかんな…と、110KIASに戻すと燃費は0.901に改善。もうちょい増速して115Ktとすると、逆に0.8941と悪化したため、ベストとみられる110KIASを選択しました。肝心かなめのライフライン、燃料の手当が終わったところで、再び航法に戻ります。

 もう一度VORやADF(こっちの方が遠距離から受信可能)を試しましたが、マレもマダガスカルもセイシェルもモーリシャスもソマリアも受かりません。ううむ、機体がバックするはずもないしなあ。
 無線がダメとなると、少しでもマシな推測位置が必要です。いったん偏流計で波頭を見ましたが、これはまだ当てになりませんので…メニューから天気をチェック。すると240度50Ktという、飛んでもない向かい風が吹いていました。あれ、追い風気味の貿易風に、変わったんではなかったのか? くそっ!!
 同じ程度の向かい風が、ずっと吹いたとすると、まだセイシェルの500nmくらい手前にいる可能性もあります。いちおう1134時に太陽高度を計って、自信がないものの天測計算をしてみると、セイシェルの東南東200nmちょっとにいる可能性がある、と出ましたが、これはおかしい。ならばNDBもVORも受からない理由が分かりません。
 やむを得ず、FlightGearをAtlasにアタッチしたら、なんと現在地は北西に大きく外れ、アフリカ東部からアラビア海に突き出した、空港がほとんどない、ソマリアの海岸線を目指していました。この時点の大ざっぱな位置は北緯7度、東経55度付近(メモを書き間違えたので、その後の針路・距離計算から推測)ですから、セイシェル諸島に向かって南西に飛んだはずが、実に700nmも(!)目的地の北にいたことになります。これは私の航法史上、どう考えたって最大級の誤差ですね…(..;)
(強風で流されたのが原因、と考えていたのですが。後になって、コース計算も間違っていたことが分かりました。目的地セイシェルの緯度を、南緯なのに北緯と入力したためで、目的地まで1460nm264度と計算したのですが、正しくは1621nm244度で、機首が20度も北へそれたことになります。嗚呼)

●やっと着陸…突風で竿立ちに:
 残る燃料で到達できそうな、ほぼ唯一の選択肢は、この地点からほぼ真北…アラビア半島南のアデン湾入り口にある、ソコトラ島でした。針路342度、距離は386nm。風は230度37Ktでしたので、修正計算をしたところ、対地速度は150ktにまで増え、WCA(修正角)も左14.1度と非常に大きく出ました。カタリナの鈍足が、強風の影響をさらに大きくしているようです。
 道中ずっと快晴でしたが、もやで洋上は10nm程度しか視界がありません。風の修正計算を続け、1506時になってやっと海岸を視認。カタリナは砂漠と森、そして農地に覆われた山の上を飛び、島の北岸に抜けて西へ旋回し、空港に風下から接近。風向は真正面で好都合ですが、風速はなお30Ktもあります。
 15時半、強い向かい風の中を着陸した機体は、すぐ行き足が止まりました。パワーを上げて芝生に乗り入れ、誘導路へ近道をしましたが、まるでパーキング・ブレーキを引きずっているみたいに、足が遅いこと。それにどうも、機体が傾きます。最初は地面が傾斜しているのだと思いましたが、そうでもないようです。と思う間にバンク角が増して、機体は左に傾いたまま立ち往生。機外視点に切り替えると、愛機は左翼端を地面に当てて、ノーズオーバー(機首を接地させた逆立ち)に近い姿勢を取っていました。突風を斜め右から受けたためですが、こんなの、初めてです。

 幸いカタリナのクラッシュ判定は甘いので、フリーズを食わずに済みました。なかなかタフな飛行艇で、ますます好きになりますが、エンジンを止めても吹かしても、舵を切っても、水平に戻る気配が無く、少々焦りました。ふと思いついて翼端フロートを下げたら、いったん地面に沈んでから「浮力」で翼を押し上げ、ポンと跳ねるように水平姿勢に復帰。はずみで今度は尻餅をつきましたが、これはもちろん、軽くエンジンを吹かせば機首が下がるので、簡単にリカバリーできました。
 それはいいのですが、南西の風は着陸20分後、さらに40Ktまで増速。これは…大変なところに来てしまいました。雲は2000ftにfewの上天気。GoogleEarthで調べても、半径200nm以内に雲らしい雲はありません(画像は1時間おきに更新)。だがら嵐ではありません。となると、これからずっと吹くのでしょうか。この島を出て行くときが大変です。

●インド洋には、貿易風って…なかったんですね:
 それにしても、なぜこの緯度で、強い南西風が吹くのでしょう。中緯度高圧帯の南にあるアラビア海では、「大気の大循環」に基づいて、北東からの恒常風(貿易風)が吹くものとばかり、思っていたのですが。

 幸い手元に、古代の復元船で実験航海を重ねるアメリカの海洋探検家、ティム・セヴェリンが書いた「シンドバッドの海へ」という本がありました。中世アラビア式大型帆船を復元し、オマーンから中国まで、ちょうどこのあたりの海を通って航海した記録です。その本の図解を見たら…アラビア海では、確かに北東の風が吹いたことになっています。しかしよく見ると、「North East Monsoon Winds」と書いてある。で、ベンガル湾は逆に南西風が書き込んであり、こっちも「South West Monsoon Winds」と注釈があります。え、これって季節風だったんですか。
 よく見直すと、この航海は11月から翌年2月まで、アラビア海で北東風を受け、その後は6月末まで、ベンガル湾と南シナ海で南西風を受けたのでした。この海域の風は緯度ではなく、季節で決まるのです。さらにネットで調べると…「インド洋には、貿易風はない」と明記したサイトがありました。理由は、すぐ北に世界最大のインド亜大陸、そしてヒマラヤ高原があるため、季節風の効果が特に強く、世界規模の大気大循環の産物である貿易風をしのぐから…でしょうね。ということは、インド洋をケニアへ向かう旅は、秋までずっと向かい風ってことです。やれやれ(^^;)。しかし勉強になりました。これも旅のロマンかな?

 不毛のソマリア海岸に沿って、向かい風の南下をするか。それとも、もっとアフリカ内陸に入ってから南下した方がいいのか。もう少し、風向などを見て考えたいと思います。
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なし 海鳥の旅ケニア着

msg# 1.4.1.1.1.1
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 「海鳥の旅」第3回は、前回たどり着いたイエメン領・ソコトラ島から、ケニアのナイロビへ向かいます。フライトシミュレーター上でアフリカ東部に進出するのは、これが初めての経験です。

 最初は強風下の夜間飛行、夜が明けても雲の中で、ゴールのナイロビも地表まで雲が垂れ込めて、ややしんどい条件でしたが、何とか翔破できました。ナイロビがアフリカきっての大都会(人口336万人)だと言うことは知っていましたが、標高1600mの高原にあって、かなり涼しいのが大きな魅力、だったとは初めて知りました。あの名峰キリマンジャロも100nm南にあり、さっそく見物。後でご報告をさせて頂きます。

●画面に時計を追加:
 まず、ちょっと技術的なお話を。カタリナ飛行艇のパネルにUTC(協定世界時)の時計を付け忘れたので、前回と前々回は、あろうことか日本時間で飛行記録をメモして、そのまま本連載にも使ってしまいましたが、非常に分かりにくかったと思います。済みません…私自身、非常に不便でした(^^;)。そこでソコトラ到着後、以前やっていたように、パソコンのクロックをUTCに合わせるテストを行い、ついでに画面上に、複数の標準時に合わせた時計を幾つか増設しました。
 クロックそのものをUTCに合わせてしまうと、天文航法の計算に何かと便利なのですが、v260では過去何度か、起動の最終段階で異常終了しています。ことによるとFlightGearは、この時点でMETARを読み込むのでしょうか。クロックのプロパティで「自動的に夏時間の調整をする」をチェックしていると、出発空港におけるMETAR更新のタイミングによっては、時刻設定に何か矛盾が生じてエラーになるのではないか…と想像しまして、今回は試しにチェックを外したら、無事に起動するようになりました。ただし再現性は十分確認できていませんので、参考データですけれども。
 また以前から、UTCと飛行中の各地域のローカル時刻を常時、画面に出しておけるフリーウェアが欲しかったのですが、今回探し回ったら「Qlock」という名の時計ツールが見つかりました。はがき大から小指サイズまで、大きさも色も表示内容も、かなり変更できるデジタル時計で、画面上の好きな位置に、異なる時間帯にセットしたものを何個でも貼り付けられます。世界の主な都市の時刻を選ぶ仕掛けですが、自由に都市を追加できるので、私は「UTC」と「JST」を新たに作って、ナイロビ時間と共に出しておき、非常に便利でした。(UTCの代わりにロンドン時間を使うと、自動的にサマータイムになってしまい、航法には使えません)

●出発前に、ソコトラ島を見物:
 日本時間の夜中にパソコンを起動し、例によって終夜飛ぼうとカタリナの出発準備をしたのですが、現地ソコトラ島はちょうど日没直前でしたので、明るいうちに少しだけ観光飛行をしました。

 この島は、予備知識を持たずに飛び込んでしまいましたが、絶え間なく強風が吹いて、非常に印象的でした。そこでGoogleで島のことを少し調べたところ、奇想天外な植物群がどっさりあって、世界遺産になっていることが判明。そういえば…バオバブに似た、シイタケみたいな形の巨木(竜血樹)を、テレビで見たことがありましたっけ。あれが、ここかぁ。
 飛行艇では足が遅いので、ピラタスPC-9M改を起動し、約30分で北岸から南岸へ往復。もちろん植物が見えるわけではなく、景色を眺めるだけですが、幅2nmもある巨大な砂浜(前回は砂漠だと思いました)から、断崖となって台地が立ち上がる地形とか、標高は低いけどゴツゴツしたカルスト地形の山岳地帯など、駆け足ながら楽しんで滑走路へ帰還。出発時は風が15Ktまで弱まり、夕凪を感じさせましたが、日没ぴったりに戻った時は、再び40Kt近く吹いていました。やはり、凄いところですね…ではアフリカへ向かうとしましょう。

●あれ、滑走路に灯りがない:
 以下がコースです。一部の高山を迂回するため、途中に変針点を一つだけ加えました。
◎ソコトラ国際空港OYSQ 12.37.46N-53.54.19E NDB280SCT 
   ▼1049nm231.5度
◎ケニア東部のワジル空港HKWJ VOR112.5WAV NDB318WA 01.44.44N-40.04.59E
   ▼262nm225.7度
◎ナイロビ・ジョモ・ケニヤッタ国際空港HKJK VOR113.1NV NDB-278NO/379AL
01.17.58S-36.57.14E 5231ft

 現地が夕闇に包まれるUTC1540時、再びカタリナを起動して満タンに。例によって風向風速を調べて、針路の補正値と対地速度を算出しておきます。通常は飛び立ってからしばらく、空港VORのアウトバウンド・ラジアルを受信し、コースと飛行距離を確認をしますが、ソコトラにはVORもないのでADFのみセット。1548時(以下すべてUTC)にスロットルを押し込んで、離陸を開始します。

 滑走を始めてすぐ、こりゃ何か変だと思いました。迂闊ながら、滑走路にまったく照明がないことに、走り出してから気が付いたのです。止まるなら…まだ間に合います。しかし離陸をやり直しても、もっと暗くなるだけです。見れば機体の下を、ほの明るい影が流れてゆく気配。こりゃセンターラインだ、滑走路の中央付近にいるので大丈夫と判断しまして、コンパスを確認し、手探りの離陸を続行しました。
 機体は重く、加速はゆっくり。滑走路の端は一体、どこにあるのでしょう。FlightGearの小空港は、しばしばエプロンが省略され、いい加減な形に作られています。実家に近い松山空港もそうなんですが(立腹!!)、滑走路と平行に誘導路が1本あり、両者を繋ぐインターセクション(短い通路)は両端と中央の3カ所だけ、滑走路の中央外側にABNがある、というワンパターンです。この場合ABNは、滑走距離がまだ半分残っている、という標識として役立ちますが。ソコトラには滑走路灯さえありませんからABNもなく、どこが滑走路の中点で末端なのか不明です。目を凝らしながら何とか離陸し、じりじり高度を取りました。
 先月18日、ルソン島のラオアグ国際空港を出る際も豪雨に遭い、引き返したくても無理…という思いをしましたが、今度も強風の中、満タンで過荷重の改造機を操って、無灯火の滑走路に戻るのは困難です。何か起きたら、チャート(Atlas画面)を頼りに沖に出し、着水を強行するのが唯一の手でしょうか。

 離陸後も、出来の悪いオートパイロット任せでは、重い機体が失速する危険を感じ。スティックの動きを極力抑えた手動操縦で、気速110KIAS、上昇率1000ft/minを維持して高度を上げ、10000ftに到達しました。そのまま110KIASを維持して巡航に移行。視界の悪い夜で、メニューには雲が20000ftにscatterd、2000ftにfewと表示されていますが、まるでovercastみたいに見えます。
 あとはいつもと同様に、燃費データを取っては針路・速度の修正計算を行い、徐々にプロペラピッチを立てて燃費向上を図る、といった作業が続きます。適当なところで打ち切って、そろそろ私は副操縦士人形のジョージくん(本来はオートパイロットの米俗語)に引き継いで、仮眠に入りましょう。
 自室のベッドに身を投げると、今夜も私はだんだんと、カタリナ飛行艇の後部胴体に寝ているような幻想に包まれて行きました…爆音。薄いブリスター風防ごしに、気流と雲と星々が、すぐそばに広がって…。

●アフリカの闇を、降下する:
 なのに、変な時間に目が覚めてしまいました。まだUTCの1756時、私の部屋はJSTの0256時です。
風が210度27Ktに変わっています。放置できないので、速度と針路を再補正して、結果は104Kt227度。針路を補正値通りに修正。雲は2000ftにfewで、天候はやや回復気味です。恐らくソマリア海岸に差し掛かったあたりですが、或いはまだインド洋上なのか、地表は見えず自信がありません。仮にいま、闇の中に不時着するとしたら一体、車輪は出すべきか出さざるべきか。どっちに外れても怖いですね。

 光の筋が幾つか見え始め、陸上を飛んでいるらしいと判明。道路ですな。1955時、その道路5本が一点に集まっている、街らしい地点を通過。Atlas画面を見てあれこれ想像しましたが、交差点は無数にあって、ここが現在地、と言える場所を絞り込むことは出来ません。およそ起きる時刻ではないのですが、目が冴えてしまって、航法やエンジン調整を始めてしまいました。

 UTC2220時。依然として道路が見えますが、正確な位置は不明。あまり内陸側に寄ると、やがてケニア領内に入ったときに高い山があります。風向風速を確認して針路を再計算。このフライトでは、アフリカ北東のソマリア領内を長時間飛びますが、ここは空港も航法援助無線施設も非常に少ない国で、なかなか確定位置が出ません。ようやくケニア北東州マンデラのNDBが入感し、やがてもう少し南西の、ワジルのNDBとVORも受信。あれこれチャート上でクロスベアリングを行い、推測位置を出したり、エンスト防止のためにタンク内の燃料移送をしているうち、0053時になってからVORで、ワジルは295度方向に26nm、という確定位置をゲット。さらに計算の結果、ナイロビは現在地から225度にあることが分かりました。
 風は270度6.4Ktなので、計算すると修正値は227.8度125.6Kt。所要時間は2時間4分ですので、0315時ごろに到着予定でしょうか。天候は7000ftにscatterd、14000ftにbrokenの雲量。チャート(Atlas画面)をじっくり眺めていると、ナイロビへのコースの右手にあるケニア山(4985m)との間隔が十分ではなく、だんだん気になってきました。0117時、220度に変針。これで近くを通過する際も、55nm程度の間隔を取ることができます。ナイロビ到着は0418時ごろの計算で、もう少しすれば明るくなることでしょう。

     ●

 0233時、かすかに空が赤くなって、ナイロビのVORが240度88nmに入感。緯度経度は00.37S-38.08Eあたりと判断しましたが、かなり確度が高い自信があります。燃料は48%残っているし、ケニア山も大きく離れています。針路を240度に修正し、着陸準備の時間稼ぎに90KIASへ減速。あと40分程度ありますが、上下を雲に挟まれて、夜明け前の暗い空を巡航中。もっと明るくなって欲しいものです。チャートを検討しながら何度も針路調整して0306時、私はプロペラピッチを浅い位置に戻して、高度10000ftから徐々に降下を始めました。

 ナイロビのVORを受信し、DMEも正常に働いています。もしピラタスPC-9M改を飛ばしているのでしたら、もう何の不安もありません。濃密な雲中飛行であっても、VOR/DMEを信じて段階的に降下し、安心して空港をヒットできます。こっち側からですとナイロビのILSはたまたま、バックサイドになりますけれども、ならば滑走路をフライパスして8nm先で反転し、ILSに乗って自動進入すれば大丈夫…もし手動/自動ともに操縦性がよく、しかも安定したPC-9M改でしたらね。
 ですがカタリナ飛行艇は、そんなに出来が良くないのです。オートパイロットの針路保持は、デフォルトの磁気方位モードと、いつでも機首方位をロックできるウィングレベラーが、ともに不作動。唯一動く真方位モードも、目標方位に向かう前に、なぜか機体が反対方向に一度バンクするという、おかしな癖を持っているのです。車で左折する際に、いったんハンドルを右に切り、車体をブルンと振って弾みを付け、反動でキュッと左へ回頭する、危ないドライバーがたまにいるでしょう? あれをスローモーションでやるみたいなものです。このため、自動進入に必要なCDI保持モードで飛ぶと、機体はどんどん蛇行してしまいます。また手動操縦で進入中も、思ったより早めに減速が効いて、しばしば水平姿勢のまま失速に入るという、ちょっと困った癖もあります。ですので視界は、出来るだけいい方がありがたいのです。

 というわけで、視界ゼロの雲中をナイロビへ接近する最後の60nmは、それなりに神経を遣いました。西へ進むにつれて地面の標高は上がるのですが、いつまで経っても、ちっとも地表が見えません。雲のレイヤーは(高度は忘れましたが)低層に1枚あるだけで、厚みも650ftくらいと表示されていましたが、不思議なことに私は高度10000ftから降下していく間、実際はずっと雲の中にいました。ナイロビ空港の標高は約5230ftですので、直線進入でファイナルアプローチを始める(か、周回コースのベースレグに入る)には、その1500〜2000ftくらい上空にいるのがベストでしょうけれど、7000ftまで降りても6500ftを割っても、まだ地表は見えません。他空港に向かうべきかな、と真剣に思いました。

 ダイバート先を探すため、チャートとMETAR情報サイトを調べていると、明るくなってきたベージュ色の雲に切れ目が生じ、初めて暗い大地が見えました。雲はbrokenで厚く高く、まるで大きなドレープのある長いカーテンが何枚も重なり合って、裾を大地にこすっている感じ。数nm先まで地表が見えたと思えば、数秒後にはまた視界が閉ざされる、という繰り返しです。Atlas地図によれば、ここのILSはカテゴリー気任垢里如∨榲はコンスタントに800mの視程が得られないと、降りちゃいけないのです。そこは適当に無視するとしても、不案内の土地でこの視程は、かなり危険に思えました。
 しかし、微風です。ほぼ滑走路ぴったりの方位で、快調に接近中です。もう少しやってみましょう。空港に接近していくと、霧の層を通して、真っ白な点滅光が見えました。これは一体、なんだ?

 さらに近づくと、それはABNのライトコーンだと分かりました。霧の中ではABNは最初、点光源の白色光に見えるのですね、初めて知りました。空港上空をフライパスすると、滑走路灯が微かに見えて、これなら降りられると直感。持っている装備を十分に使おうとAtlasをアタッチし、便利極まるスクロールマップに感謝感激しつつ、空港の10nm先でターンしてILS進入。ずっと雲しか見えませんでしたが、着陸寸前になって、再び白いライトコーンと滑走路灯を視認。これでもう「ハクナ ワシワシ!」(スワヒリ語で「問題ありません」)という気分です。グライドパスが少々上下にぶれましたが、そのままタッチダウン。ケニア・エアウェイズの旅客機を横目に、エプロンに入ってエンジン停止。なかなか達成感のある、印象的な着陸でした。

●キリマンジャロの雪と氷河:
 現地の1015時ごろ、ピラタスPC-9M改に乗り換えて市街地を一周。次いで105nmばかり南下し、キリマンジャロを見に行きました。アフリカ最高峰、そして独立峰としては世界一の標高5895m。熱帯の濃い緑の上に、誰かがダンプ一杯のアイスクリームをぶちまけたような、見事な雪山でした。これはFlightGearの天気設定の中で、積雪が始まる標高を、デフォルトの3200mにセットしていたからで、実際のキリマンジャロはもっと頂上近くだけに雪があるようです。ただし山頂には、小規模ながら氷河も存在します。
 FlightGearシーナリーの山頂にも、一部分だけ色違いのテクスチャーが貼ってありましたので、もしやと期待して接近し、ネットで得た映像と比べてみたら、やっぱり氷河でした。ほぼ赤道直下なのに、感動です。
 すっかり感心して、山頂付近をぐるぐる回って帰投。降りてから、燃料警告灯に気付きました。お散歩フライトや訓練では軽快に運動できるよう、デフォルトの燃料は少なめにセットしておりますので、全開で1時間半のフライトは、ぎりぎりでした。今回はセーフでしたけれども、気をつけましょう…。

 このフライトは、6月30日から7月1日にかけて行いました。連載わずか3回目、離着陸は5回目。伊丹離陸から経過日数17日にして、アフリカまで来てしまいました。睡眠中もオートパイロットで距離を稼ぐフライトは、いまのところ成功です。ナイロビでは少し時間を頂いて、今後のフライトのための整備や改良、訓練を進めるつもりです。
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なし 海鳥の旅づ径革命

msg# 1.4.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-7-19 6:35 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。ケニアのナイロビまで来た「海鳥の旅」の第4回は、久しぶりに天文航法のお話です。ここんとこ測位精度が低迷していたのですが、観測装置を点検・再調整し、外洋ヨット用の航法ツール「Navigator」の最新版を購入したところ、私の天測計算は大躍進を迎え、測位精度も実用レベルに戻りました。また最新版のAtlasにも慣れてきましたので、これまでに分かったキー操作の一覧を、のちほどお目に掛けます。

●天測の「道具」を洗い直す:
 先にご紹介したインド洋横断は、前半のベンガル湾こそ快調でしたが、スリランカで給油後、アラビア海横断中は突風に流されたうえ航法を間違え、目的地のセイシェル諸島から700nmも北にある、イエメン領ソコトラ島に転がり込む羽目になりました。(この島はそれなりに、面白かったですけれども)(^^;)

 手こずった理由は、アラビア海が広くてVORやNDBの不感地帯に入ったからですが、こんな時こそ役立つはずの天文航法が、v260に移行後は飛行艇の改造やテストに追われ、きちんと準備できていませんでした。伊丹出発前に、ようやく少し試しましたが、太陽の観測で得た「位置の線」は、正解から10nmも離れていて、実用性はあるがギリギリという線。また恒星や惑星の観測で「位置の線」を出してみたところ、ほぼ常に30nm以上の誤差が出て、こりゃとても使えないぞ、と頭を抱えました。電波航法が好調なのを幸い、放っておいたのですが、いつまでもそうは行きません。

 以前ご紹介しました「GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅」(2011年7月10日〜2012年1月5日連載)では、広大なシベリアを横断中に、天文航法がビシバシ決まったのですが…今回はどこがどうなってしまったのか。「海鳥の旅」ではこれから先も、航法援助無線の不感地帯をゆく場面がありそうですので、今のうちに天文航法の不具合を、きっちり解決することにしました。観測器具もワークシートも特に変更していないのに緯度経度が狂う場合、すぐ思いつく可能性は、
 1.カタリナでは、フライト・コードラント(自作の四分儀)の搭載法が適切でない。
  (不思議にも、取り付け位置をちょっと動かすと、精度が変わる場合があります)
 2.私の天測計算ワークシートで使用中の、太陽の動きを近似計算する関数と、
  最新のFlightGearに内蔵された計算式が、合わなくなってきている。
 3.恒星や惑星のデータを得ていた「Navigator Lite」という無料お試し版
  ソフトも、同様に計算式が古くなってきた。
…などが想定できます。
 まずは、フライト・コードラントの精度確認・調整から取り掛かることにしました。

●コードラントの精度を確認、再調整:
 私のフライト・コードラントは、ごく大ざっぱに言いますと、方位目盛りリング(360度の分度器。常に水平を保ちゼロ度が真北。南北に天体の正中時=子午線を示すカーソルあり)と、高度角目盛りリング(仰角90度+俯角45度の分度器。常にビュー視野の中央を追尾)、それにコア(センターにある、ビューのカメラ位置調整用の照準器)の三つと、外側のケース類で出来ています。
 例えば方位リングは、厳密に水平でなくては困るし、高度角を測る目盛りリングも、きっちり直角に立っていないと測定誤差が出ます。また、いずれのリングも当然ながら、図形のセンターが正確に基準点に合っていなくてはダメです。モデリングソフトのAC3Dを使って、パーツごとに分解能の限界近くまで、どアップにして調べてみましたが、幸いわずかながら修正の必要があったのは、方位リングのセンター位置くらいでした。

 コードラントは、外観こそ単純ですが、方位と仰角・俯角など1700本を超える目盛りが付いており、従ってその2倍にあたる3400個以上のvertex(多角形や多面体の頂点、線分の両端となる点)を持つ、けっこう重い3Dオブジェクトです。そのためかどうか確言は出来ませんが、コードラントを調整しようとすると、時としてAC3Dが正しく動かなかったり、操作通りの精度が出ないこともあります。なので、細かく見れば各部品に多少の誤差は含まれているのですが…幸い、いずれも測定時の角分解能(最良で0.01度くらい)を脅かすレベルではなさそうでした。

 点検・調整を終えたパーツをマージして、新しいコードラントを1台組み立てた後、カタリナへの取り付け位置を、垂直尾翼から左主翼前縁へ変更しました。これまでは尾翼に設置しても精度が出なかったので、思い切って取り付けの前後位置を、機体の座標原点に近い場所に移した方が正確になるのかな、と感じたからです。他機では過去、実際にそんなケースがありました。カタリナの場合、エンジンナセルや主翼が高い位置に大きな視角を塞いでしまうので、全天のほとんどが邪魔されず見えて、かつ真下向きの視野(偏流計)で海面も見ることのできる場所は、翼前縁以外には、あまり残されていません。

 取り付け位置が決まったら、コアに組み込んだ3軸の、赤い発光色の照準線(guageline-X、guageline-Y、guageline-Zと名前があり、メニューから呼び出し可)を、それぞれAC3Dで全長100mに延ばして、これを目印にビューのカメラ位置を調整します。カメラ位置がセンターからずれていると、ゲージラインは点ではなく線分に見えますので、internal properties の座標数値を少しずつ打ち直し、カメラ位置を動かします。各ゲージラインがほぼ1ピクセル大に縮むまで、座標を小数点以下6〜7桁まで調整したら、internal propertiesの数値通りに、set.xml のカメラ座標を書き換えて出来上がりです。
 ここで試しに、カタリナを大西洋上に出現させ、コードラントの視野を水平面の全周に振って、高度角の最小目盛り(0.1度)を目印に水平線を見ると、どの方位でもきっちり同じ高さに見えました。勝利っ!! ここで視野を真上に振って、カーソルを左右にグリグリ回転させると、高度角リングと南北方位カーソルが、ほぼ完全に天頂を軸に回っているように見えましたので、こっちもまあ、よしよしと思いました。
 これで「天測の照準器」である、コードラントの調整は終了です。

●最新版のNavigatorを入手:
 次は、観測結果を計算して緯度経度を出す手順を、再検討します。
天文航法というのは、ざっと復習しますと、次のようなプロセスになります。(過去に何度か太陽の例を挙げましたので、今回は恒星や惑星を使う例を、かなり実戦的に書きます)

FlightGearの空を見て、はっきり見える明るい星を探す。最低2個、出来れば3個以上を選ぶ。
 星と星の方位角は、なるべく大角度で交わるのがいい。2個なら直角、3個なら120度となる位置
 関係が理想。近くの星同士を組み合わせても、精度は出ない。また事前に星を決めておくのも
 望ましくない。FlightGearの夜空の索星(目的の星を探す)作業は、思ったより難しい。
⊆,房機の針路と速度、経過時間から、現在地の緯度経度を推測計算する。
E景弦卷.愁侫箸、パソコン利用の星座早見を起動。いま求めた推定位置から現在時刻に見え
 る星の配置を表示させ、さっき選んだ星の名前を調べる。
づ景弦卷,篝浦汰畍のソフトには、その時点の星の方位と高度角の計算値も出るので、その
 位置に、自分が選んだ星が本当に見えるどうか、また星を間違えていないか確認する。
ゴ岼磴い覆韻譴弌∨榿屬隆兮をする。出来るだけ精密に高度角を測り、その瞬間の時刻を読み
 取る。
Δ海了刻を天測計算ソフトなどに入力して、その時分秒における星の予測高度角を表示させ、
 実際に測定した高度角から、いま出した計算値を引く。差がプラスなら、自機は推定緯度経度
 よりも星に近い位置にいる(だから、より高く見える)。差がマイナスなら、逆に星から遠ざ
 かる位置にいる(従って、低く見えた次第)。
天測計算ソフトまたは航空図を使って、以上の結果を作図する。最初に算出した推定現在地に
 マークを記入し、そこから星が見えた方角へ線を引く。例えば差がプラス1分角なら、マーク
 から星の方向へ1nm寄った位置に、星への線と直角に新たな線を引く。これが「位置の線」で、
 自機はこの線上のどこかにいる。
  また、例えば差がマイナス3分角なら、星から3nmだけ遠ざかる位置に、「位置の線」を引く。
 高度角の差と推測位置からの距離は、常に「n分角=nマイル」という1対1の比になる。
複数の星を測って、複数の位置の線を作図する。2本の線ならその交点、3本なら交差によって
 描かれる三角形の内心(内接円の中心)が、自機の実測位置になる。

…という次第です。
 1個しかない太陽を計測する場合は、3〜4時間待って位置が動いてから再観測しないと、緯度経度は算出できないのですが、星なら同時に何個か観測すればよろしいので、やや簡単です。FlightGearの場合は特に、真っ昼間でも大抵は、幾つか星が見えるので、慣れれば日中も短時間で緯度経度が出せます。

●天文航法全般の流れを処理する、頼もしい道具:
 以上の作業は従来、全部をパソコン上で行うのは無理でした。私が考案した天測計算ワークシートは、太陽の予測位置を計算する関数を組み込んでありますので、太陽の観測で得られる「位置の線」は算出できますが、恒星や惑星は扱えませんでした。それらを扱いたければ、当時使っていたNavigatorのお試し版にデータを表示させて、その数値をワークシートに手動操作で入力する必要がありました。このNavigatorお試し版は、位置の線を算出したり、位置の線同士の交点(現在地)を作図する機能も持っていましたが、あくまでも実際に洋上で使うためのもので、FlightGearとは相性が悪く、そうした高度な機能までは利用できませんでした。また星座早見機能も貧弱で、よく星を誤認したものです。

 しかし今回、ネットで購入した最新版は、先ほど箇条書きにした手順通りに、すべての作業をアプリ内で処理可能です。毎秒更新される精密な星座早見で星を確認し、計測した星の高度角を入力すると自動的に「位置の線」を作図し、複数の「位置の線」から、これまた自動で現在地を図示し、緯度経度を数値で出す。おまけに位置の線と現在地を、海図の上に描いてくれる…まさに、胸のすくようなアプリケーションです。
 また各種の設定機能が行き届いていて、FlightGearでは再現できない(気温による大気の屈折率変化などの)補正値は省略することが出来るし、六分儀やコードラントで太陽や月の高度を計る際、丸い天体のどこを照準するかも、選択可能です。通常は下辺を狙うのですが、下弦の月を観測する場合は上辺に切り替え可能ですし、天体の中心も選択可能です。なぜこの機能が大事かというと…FlightGearの太陽と月は、じつは視直径が実物の2倍もあるため、「天体の中心を測る」モードがないと、高度角が航法計算に使えないのです。月や星を実物大にすると、たぶんパソコン画面上では小さ過ぎて、かえって「不自然」に見えるのでしょう。

 このソフトは外洋ヨット用に作られており、風向風速をリアルタイムでダウンロードし、推測航法で現在地を出すとか、目的地への方位・距離と現在の風に応じ、もっとも効率よく距離を稼ぐコースを探るとか…そういう高度な機能まであるらしいのですが、なにぶん英文マニュアルなので、まだよく分かりません。私としては、以上お話しした基本的な機能だけでも、十分に役立ちますし感動的です。これで35ドルなら、実に安いもんだと思いました。「投稿画像」で、このソフトの雰囲気をお伝えします。
 購入先は、ブラジルのドメインのサイトで、さまざまな天文データを公開したり、身近な材料とパソコンを利用して六分儀や八分儀を自作する方法を紹介するなど、面白いところです。アドレスは下記の通りです。
          http://www.tecepe.com.br/nav/default.htm
(そういえば。FlightGear上では、非常にリアルに操船できるヨットや帆船も造れそうですね。例えば風上に向かってジグザグに航走する際のヨットの帆は、クローズホールドという張り方をしますが、あれは空力的には、非常に大きなスロッテッド・フラップを付けた主翼が、海面から縦に生えたようなものですし…)

●フラミンゴの湖と、オオミズナギドリの島:
 先日ようやく、この新型 Navigator を使って、実際に緯度経度を出すことができて、わくわくしました。太陽と恒星による観測では誤差4nm、それに月の位置の線を加えると、ちょっと誤差が広がって6nmという結果でした。従来の私の計算法とツールでは、月はFlightGear上に見える位置と計算上の位置がまったく合わず、天測に使えない天体でしたので、これは嬉しい進歩です。恒星よりも動きが速いためか、まだ誤差が幾分大きいですが、何とか私の考える実用レベルには収まっています。
 私はホッとして、ナイロビ北方のナクル湖へ、カタリナで散歩フライトに出かけました。しばらく陸上機としてしか飛んでいないので、広い水面にドボンと降りると、いい気持ちです。

 ナクル湖は、フラミンゴで有名なところだそうで、試しに GoogleEarth で拡大してみると、なるほど…北岸から西岸にかけて、岸辺の近くに無数の不規則な筋が見え。もっと超拡大すると、それらはピンクや白の無数の点に化けました。群れ具合からすると、これらの点々は大きな鳥に間違いなさそうで、想像を絶する数です。実景なら一体、どんな壮観でしょうね。
 私の好きな航空短編小説家で、童話でも知られた英作家、ロアルド・ダールは青春時代、この湖の上を飛んだそうです。彼はパブリックスクール卒業後、冒険を求めてタンガニーカ(現在のタンザニア)でシェル石油の駐在員になり、優雅な豪邸暮らしと野獣・毒蛇の危険が背中合わせ、という日々を送っていました。第二次大戦が始まると、すぐナイロビに出頭してRAFに志願。タイガーモス練習機で初等訓練を受けるのですが…この時代の飛行訓練は、ソロに移行後しばらくの間、練習生の裁量でかなり自由にコースを決め、監視を受けずに一人でのびのびと、慣熟飛行が許されたようです。
 軍規風紀がメチャ厳しかったはずの日本海軍も、例外ではなく。阿川弘之氏の長編「雲の墓標」には、敗色深まる時期の学徒兵が「最近、かなり空中の行動が自由になった」ので、ほのかに心を寄せていた女性の自宅上空に飛んで行き、挨拶の急降下を掛けたが、彼女は出てこなかった…という、結構切ない場面がありました。開戦直後の英領ケニアは、さらに自由な雰囲気だった模様で、ダールの青春時代の自伝「単独飛行」を読みますと、手慣れたタイガーモスを自在に駆り、超低空で野生動物の大群を追いかけたり、フラミンゴに見とれたり、雪をかぶったケニア山の頂上まで飛んだり、大空の自由を満喫しながら、「なんて自分は、運のいい若者だろう!」と繰り返し思った、と書いています。

 「うーーん、生きた世界は全然違うけど、俺はその感じ、たぶん分かるよ」から、「自伝のあのシーンは、このあたりだったんだな」まで、さまざまな感想を抱きながら、私はバーチャル世界のカタリナで、アフリカの湖畔や丘陵地帯を越えて低空飛行しました。もちろんフラミンゴは出てきませんが、FlightGearのテクスチャーも多少は種類が増えてきたのか、日本やヨーロッパとは森の緑もひと味違い、何となくワイルドな景色に見えたりもします。

     ●

 お話は変わり。すっかりご紹介が遅れましたが…私が今回のフライトに使っているカタリナ改は、「水薙」号という愛称にしました。読みは「みずなぎ」で、海鳥のオオミズナギドリにちなんだ名前です。
 オオミズナギドリは、日本では春から秋に見られるポピュラーな鳥だそうで、私が以前勤務した京都府舞鶴市の沖にある、冠島という無人島にもたくさん生育していました。ここは島自体が天然記念物で、普段は立ち入り禁止ですが、鳥類研究者が年に何度か調査のため、海自の提供する船で冠島に入っていました。

 私も昔、この調査に同行したことがありますが、冠島はアイロンのような形の、切り立った小島です。平野はほとんどなく、沿岸部も砂浜の代わりに、尖った石に覆われた「ガレ場」ばかり。ゴム長や運動靴では歩行困難で、石の上に安定して立つことさえ一苦労です。必ず登山靴を履いてひもを締め上げ、足首を固定してしまうのがコツでしょうか。
 お目当てのオオミズナギドリは、地面に巣穴を掘って繁殖する鳥で、先生たちが手を突っ込むと、「あれれ、ボク捕まっちゃったよ!」みたいな呑気な顔をして、おとなしく出てきます。背中は茶系で、体長40〜50僂琉豸スリムで地味な鳥ですが、先生が測定のため、そっと手で翼を左右へ引っ張ると、私が想像したよりもずっと長大な、約1mもある精悍で美しい主翼が広がり、感動しました。「これは大変、お見それ致しました…生まれながらの、長距離飛行家でいらしたんですね」と、つい言葉まで改めちゃう気分です(^^;)。
 オオミズナギドリは、日本で夏を過ごすとフィリピンやスリランカ、オーストラリア北部へ渡って越冬し、繁殖期以外は海上で生活するそうです。思い切り長距離を飛ぶ水陸両用飛行艇に、いかにもふさわしい名前に思えて、私は今回のフライトの使用機の名前に「水薙」を選びました。
 ああ、だがしかし。カタリナの主翼は太く短く、とてもオオミズナギドリのように美しくありません。少しでもほっそり見えればと、グラデーションを加えた塗装を工夫してみましたが、とてもとても…(^^;)。

●Atlasの操作も、これで楽に:
 新しいAtlasにもかなり慣れてきましたので、これまでに判明したキー操作を、以下にまとめておきます。

スペース:ウィンドウ左側のGUIメニュー(オン/オフ)
   +:ズームイン
   −:ズームアウト
   a:航空路表示(低空/高空/オフ)
   A:空港表示(オン/オフ)
   c:一定距離をジャンプ(まだ制御法不明)
   d:速度・位置の小型ウィンドウ表示(オン/オフ)
   f:フライトトラック=航跡表示(オン/オフ)
   j:ジャンプウィンドウ表示(オン)
     文字列を入力すると空港・無線施設ソート→クリックするとジャンプ
     ウィンドウ外をクリックしてjを押すと閉じる
   l:画面表示のオプションウィンドウ(オン/オフ)使い方不明
   m:カーソル変更(距離表示用同心円/ポインタ位置の緯度経度を表示/中心に固定)
   M:MEF=Maximum Elevation Figure=エリアごとの最大標高表示(オン/オフ)
     (注:緯度・経度1度のグリッド単位で表示)
 o/s:フライトトラックの保存フォルダを開く(キャンセルで閉じる)
   P:自機を自動追尾してスクロール(オン/オフ)
   q:終了
   v:ラベル表示(オン/オフ)

 それでは皆様、Tutaonana(また会いましょう、のスワヒリ語)。
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なし 海鳥の旅サに∀司儀

msg# 1.4.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-8-10 1:40 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
 hideです。残暑お見舞い申し上げます。
「海鳥の旅」も約3週間、ナイロビで止まっておりましたが、ここしばらくは、Anders Gidenstam さんが開発された、FlightGear用のバブル・セクスタント(気泡六分儀)RAF Mk9の使い方を練習していました。

 FlightGearの世界では現在たぶん唯一の、航空用六分儀をリアルに再現しようとしたモデルだけに、前から使ってみたかったのですが、なかなか実現に至りませんでした。前回、天文航法ソフト「Navigator」の導入がうまく行って、天測計算が大幅に楽になりましたので、この機会に年来の「宿題」を片付けようと思った次第です。使用機は戦前、イギリスの国際線旅客機として活躍した、ショートS23エンパイア飛行艇。場所は世界第3位の巨大湖、アフリカのビクトリア湖です。
 なぜ今まで、この六分儀を使わなかったかというと。わがフライト・コードラントのほうが正直、ずっと便利だから、ということもありますが。それ以前の問題として、私は長い間、Mk9六分儀の粗動ネジや微動ネジを、一体どうやったら逆方向に動かせるのか、分からなかったからです。最近のFlightGearのパネル操作系に増えてきた、マウス左ボタンと中央ボタンを使い分ける方式で、分かってみれば簡単なのですが…残念ながら、なかなかこのクリック操作に関する説明を見つけられず、解決に4年近くを費やしました。

●「空の女王」エンパイア飛行艇の操作系:
 Mk9六分儀は現在、私が知る限りではボーイング314飛行艇とショートS23エンパイア飛行艇に搭載されています。ボーイング314は主翼上に、ナビゲーター専用の小さな風防を持っていますが、天井が邪魔をして上の方が見えない構造で、観測に不向きです。なので、今回はエンパイア飛行艇を使いました。wikiを読んで、エンパイアの操縦法を調べましたが、なかなか面白い飛行機ですので、以下に概要や特色をお話ししたいと思います。

 ショート・エンパイアは、有名なショート・サンダーランド飛行艇の原型機です。長距離郵便機・旅客機として1936年に初飛行。一見ズングリしていますが、よく見れば「翼とプロペラを水面から離すため、背は高いけど幅はスリム」という、4年後に試作機が飛ぶ川西・二式大艇と同様のプロポーション。無駄な突起や段差、支柱が一切ない、洗練された設計です。
 計42機作られて、英国インペリアル航空(戦後のBOAC、現BA)の主力機として、サウザンプトンを基点に大西洋横断や、南アフリカ、シドニーなどへの長大な定期航空路に投入されました。全長27m、翼幅35m。920馬力×4発で最大速度174Ktを発揮。乗員5人、乗客17人、郵便物など貨物2鼎鮑椶擦泙靴拭ほぼ同寸の二式大艇(人員輸送型「晴空」)が、2階建て客室に最大64人を収容できたことを思えば、乗客が少ないですが…そこは大英帝国。サロンありプロムナードありの広い客室を、ゆったり使って丸一日飛び、夜は植民地の要港に係留して、お客様は豪華ホテルでお休み、という旅を続けて地球の裏側まで行く、まさにインペリアルな旅客機ですので、こんな人数が手頃だったのでしょう。

 FlightGearのエンパイアは、かなり丁寧に作られていて、各種の機器の操作法には、戦前の飛行機の古風な味わいがあります。フライトデッキは長時間飛行に備えて広く、機長席の後ろはたぶん無線室。副操縦士席の後ろは機関士席(パネルのみ)があって、その後ろが1段高い通路になり、実機ですと航法士席がありますが、このモデルでは省略されています。
 通路突き当たりの隔壁や天井には、燃料計や燃料タンク開閉弁、燃料ポンプのテスト弁などが並んでおり。カウルフラップの操作ハンドルも、このコーナーの左右両壁にあって、クリックして回し続けると、カウルフラップが片翼のエンジン2基ずつ、徐々に開いたり閉まったりします。面倒ならデフォルト(全閉)のまま飛んでもノープロブレム、エンジンはオーバーヒートしません。
 燃料搭載量には実機と同様に3種類の仕様があり、Liveries を切り替えると、機首に描かれた愛称と共に、搭載タンクや弁、燃料計の数が変わります。Cambria 号は主翼+胴体タンク8基を持つ長距離型、Cavalier 号はタンク6基の中距離タイプ、そしてデフォルトの Canopus 号(量産第1号機)はタンク2基の短距離型です。本機の愛称は全部Cで始まり、Cクラスボートとも呼ばれます。
 なぜ燃料計まで、パネル上ではなくフライトデッキ後部にあるかというと。現代のように電気で針を動かすリモコン表示ではなく、ハンドル操作でタンク内の浮きの高さを測って、油面のレベル=燃料残量を知るという、かなり原始的な(失礼、信頼性の高い?)仕組みになっているからです。燃料計や弁、ハンドル類を使う時は、キー操作によって副操縦士(の視点)を席から立たせて、フライトデッキ後部まで歩いて行きます。天測の時も、副操縦士が活躍します。

 フラップの上げ下げは、頭上の操作つまみを上げ位置・下げ位置のいずれかに回し、じっとフラップ角度計を見て、ここぞと思う瞬間にオフ位置にする、という操作法。目玉商品・スペリー社のオートパイロット(通称ジャイロパイロット)も独特で、メインとなる針路保持機能は、ジャイロコンパスに付属する針路設定目盛りをセットし、センター・ペデスタル(この機体の用語では、スロットルボックス)後部にある、長いレバーを右に倒してエンゲージします。バンクはせずに、ラダーだけ動かして強引に機首方位を変える仕組みで、小角度の変針ならこれで十分なのだとか。では、大角度の変針はどうするのかといいますと、ロール調整つまみを手で回して、必要なだけバンクを掛け、また手動操作で戻すのだそうです。それって、自動操縦じゃない気もしますが…いいか(^^;)。

 ペデスタルの右には、前後に動く長いレバーがあり、前に倒すと4発エンジンのうち外側2発の回転が落ちますが、自動的に速度保持をしてくれるわけではなく、用途が分かりません。他にピッチ制御つまみもあり、昇降舵の舵角がクリックで変えられます。これも特に、操縦を自動化する仕組みではありません。しかし、かつての大型飛行艇は、操縦桿に大きな力を掛ける必要があったらしいので、機力操舵が可能になるだけでも、パイロットはずいぶん助かったのかも知れません。
 このオートパイロットはまだ改良中のようで、今後が楽しみです。幸いFlightGear標準方式の(針路・高度・速度をプリセット可能な)オートパイロットも、通常通りメニューバーから使えますので、必ずしも使いやすいとは言えない、現代離れした凝った仕組みを抱えていても、飛ばしやすさは全然損なわれていません。この点は、非常にユーザー・フレンドリーな設計だと思います。

●ビクトリア湖をゆく:
 今回の飛行コースをご案内しましょう。
◎ナイロビ・ジョモ・カンヤッタ国際空港HKJK VOR113.1NV NDB-278NO/379AL
01.19.00S-36.55.50E 5307ft(滑走路中央)
   ▼281度66nm
☆NAROK-NDB(368NK)01.06.09S-35.51.03E
   ▼312度91nm
◎KISUMU空港(HKKI) NDB-KISUMU347KI 00.05.09S-34.43.43E
   ▼280.4度126.4nm
☆PORT BELL NDB270PB 00.17.44N-32.39.21E

 ナイロビから、まずカタリナ飛行艇で1時間余り、ケニア領内を西へ飛びます(NDBを使って内陸を行く平穏な航程でしたので、詳述しません)。ビクトリア湖の東岸、KISUMU空港に着いたら、滑走路からタキシングして湖に飛び込み、100mほど沖に出てエンジンを停止。緯度経度を記録しておいて、同じ位置でエンパイア飛行艇を起動。さらにビクトリア湖の北岸を西へ進んで、ウガンダの首都・カンパラ郊外にある PORT BELL 港に着水します。湖の主要港の一つで、昔は実際にエンパイア飛行艇が利用したそうです。
 ビクトリア湖の面積は琵琶湖の100倍。3カ国に囲まれていて約3000の島があり、気分はすっかり「海」です。ポートベルまで1時間余り飛んでも、まだ湖の東西方向の長さの、やっと3分の2に過ぎません。

●エンパイアの離水と巡航:
 KISUMU空港のちょい沖で、エンパイア飛行艇を起動します。機首近くの水面には係留用の、オレンジ色のブイが浮いています。起動時は機体が繋がれていませんが、小文字bキーで係留状態になり、機体がブイに引き寄せられます。またシフト+bキーで係留索が外れます。ほんの20mも離れると「ブイが遠すぎる」と言われて、機体を近づけないと再係留できなくなります。ツェッペリンNT07飛行船は、到着地で新しく係留塔を設置することが出来ますが、エンパイアにはそうした機能はありません。

 エンジンの始動は、パネル中央のスナップスイッチでマグネトーをオン(BOTH)にして、その上に4個並んだ赤いセルボタンを使います。以前は、まず後部隔壁へ行って燃料タンクのコックを開ける必要があり、なかなか操作法が分からず苦心しましたが、現在はデフォルトでコックが開いています。
 エンパイアには水中舵が無く、かなり加速しないと水上では旋回しないため、低速では必要に応じて、4基のエンジンのうち外側2基の片方を吹かし、推力を使って向きを変えます。水上で停止中は、風に吹かれる感じでゆっくり右に回っていますので、右外翼の第4エンジンを先に始動して動きを止め、次いで離水方向に機体を向けるとよろしいようです。
 頭上のフラップスイッチを「下げ」にして、角度計が3分の1(約7度)になったところで停止。wikiによりますと、フラップを下げすぎると離水中にポーポイズ(イルカ飛び運動。悪性だと発散して水面に突っ込み大破)を起こすそうですので、わざと何度かやってみましたが、まだ発生していません。ただしWater Loop(水面上のスピン)は1回だけ派手に起きて、クラッシュ判定は免れたものの仰天しました。

 離水は、軽い機首上げ(正規は9度)を維持して、風上に向かって行いますが、70Ktくらいでいったん加速が鈍り、いわゆるハンプ(水の抵抗が最大となる速度)を再現しているようです。しばらく待つと、プレーニング(水上スキーのような水面滑走)に入って速度を上げ、80Kt弱あたりでローテーションが利いて離水します。
 図体の割にエンジンは非力で、すぐ高度を稼ごうとすると、低空でも上昇率は毎分800ft程度、高度4000ft付近では毎分400ftくらいしか発揮しません。離水後、焦らず十分加速してから上昇することと、ミクスチャーを少し早めにリーンへ動かす(5000ftに達したら開度4分の1くらいにする)のがコツで、少し上昇率が改善されます。ミクスチャー・レバーは、スロットルのすぐ後ろにあります。その下にも4本レバーがあり、プロペラピッチだと思っていたら、実はエアスクリューだそうです。しかし…ミクスチャーとエアスクリューは一体、どう違うのでしょうね?

 なかなか昇らない機体を、ゆっくり左へ旋回させながら9000ftまで上昇。KISUMU空港の滑走路中央で予定針路に乗り、オートパイロットを掛けました。今回は天文航法のテストですから、測位精度のよしあしを知るには、観測と計算の初期条件となる推測位置の精度が高い方がいいので、パネルにある古風なスペリー式オートパイロットではなく、メニューバーにある標準機能のやつを使います。リアルウエザーも切ってしまい、南の風5Ktが続く中、機首をポートベルに向けました。

 副操縦士(の視点)を立ち上がらせて、天井の天測ハッチをクリックで開きます(YouTubeで見つけたエンパイア飛行艇の製造、飛行シーンを集めたニュース映画集によると、このハッチの位置は正確です)。一段高い後部通路に上がって、ハッチから空中へ「身を乗り出す」と…おおっ、すごい開放感。まるで激しい風の音が聞こえるようです。下を見ると、副操縦士席の右の壁に六分儀がありますので、グリップをクリックして「手に取り」ます。この辺の状況は、ぜひ投稿画像をご覧下さい。

●六分儀の扱いにくさを、巧みに再現:
 FlightGear用の六分儀が存在することを、初めて知ったのは4年前で、世界一周の途中、toshiさんに教わりました。しかし当時はまだこのMk9を実装した機体はなく、自分で組み込む技術はもちろんないので、苦心の末、同じように天体の高度角が計れる「フライト・コードラント」を自作したわけですが、私の装置は六分儀というより、測量用のトランシットによく似た仕組みです。トランシットは三脚に固定し、水準器で水平にしないと使えませんが、FlightGearでは観測装置を、機体のピッチやロールと同じ量だけ、逆向きに自転させるプログラムを書けば、簡単に正確に水平が得られます。理想的なジンバルのようなものですね。
 しかし実世界の、揺れる船上や機上では三脚もジンバルも使えませんので、手持ちで正確に水平を保ちながら観測できる装置が必要です。航海用の六分儀は、水平線と天体を光学的に重ねて表示して、高度角と水平を割り出すように出来ていますが、航空用のものは水平線の代わりに水準器を使います。ファインダーの十字線の中心に天体が来るよう狙いながら、天体と重なって泡が中央に見えるように、高度角目盛りのダイヤルを微調整しつつ(これで泡が上下に動く)、装置を微妙に傾けて(これで泡が左右に動く)正確に水平にしたうえで、高度角と時刻を同時に読む、という面倒な作業が必要です。おまけに天体は1秒ごとに少しずつ、位置を変えてしまうのですから厄介です。

 FlightGear用のMk9でも、ファインダー内に、水準器の泡を示す小さな円が表示されますが、この円はマウス操作で高度角目盛りを動かしたり六分儀を傾けると、ちゃんと上下左右に動きます。デフォルトでは泡が小さくて見えませんが、ダイヤルを操作(実物はダイヤフラムで液圧を調整)して、泡を大きくすることができます。最大サイズでは、太陽や月の視直径とほぼ同じで、星を見るときはもっと小さくして、照準の精度を上げます。
 ここまで読まれた方は、「なぜわざわざ六分儀を傾けるのか。水平のまま使えば手間が省けるではないか」とお考えでしょう。が、FlightGearのMk9は、機体に対して水平であって、地面に対しては水平でないので、天体を狙ったら、そのつど必ず泡を追いかけて水平を出さないと、正しく高度角が計れないように出来ています。六分儀の操作の煩雑さ微妙さを、うまく再現しているわけですが…お陰で私も、一応操作できるようになるまでに数十回の観測を繰り返して、かなりストレスをため込んでしまいました。

 今回のフライトでは、不慣れによるミスもあって、約1時間の飛行中、ほとんど操縦せず景色も見ずに、ひたすら天測と計算をしていました。実は同じコースで計3回の飛行を行い、ほかにもKSFO沖の太平洋に100nmほど進出して練習したのですが、どうしても測位精度が上がりません。位置の線を何本か得たら、交差させて緯度経度を出すわけですが、「Navigator」が出した緯度経度は最良でも誤差30nm、ひどい時は正解から約60nmもずれていて、正直これじゃ「いくら何でも実用には…ちょっとなぁ!」という結果でした。
 かつてコードラントで測定し、自作のワークシートで緯度経度を計算すると、最良の場合は約1nmの誤差でした。いま「Navigator」で計算すると、コードラントで計ったデータでも、ほぼコンスタントに5nm程度の誤差が出ます。今後Navigatorの使い方を改善して、この誤差を縮められればと思いますが、Mk9を使った場合に生じる大誤差は、とてもそんなレベルじゃありませんので、このままフライトに常用するのは困難です。しかし昔の機上天測がどんなものだったのか、雰囲気をつかむことは出来て、興味深い体験になりました。

●ポートベルに着水:
 いささか疲れて時計を見ると、もうポートベル到着の予定時刻が迫っています。目の前には、島が点在する奥深い湾があって、その向こうに市街地が見えます。あまり大きな街ではありませんが、たぶんウガンダの首都カンパラでしょう。湾の奥から突き出た、小さな半島の先端部に、航法のゴールに選んだポートベルのNDBがあるはずで、ほぼぴったりヒットしそうですが、エンパイア飛行艇には無線航法装置がまったくないので、本当にここはウガンダ上空なのか、いまひとつ確証が得られません。
 ならば、他に目印は? 航空図がわりのAtlasを見て、正面から少し左手を探したところ、予想通りの場所にエンテベ国際空港のABNを発見しました。よーし、付近には他に空港が無いので、街はカンパラに間違いありません。副操縦士には、天測ハッチから降りて着席してもらいましょう。天文航法は60nmくらい外れたのに、推測航法は結局北に1.2nmずれただけで、ほぼ的中したのはちょっぴり皮肉です。

 カンパラ市街地上空でエンジンを絞り、南に旋回。南北に走る湾を左手に眺め、滑走路に見立てながらダウンウインドレグ(実際は向かい風だったけど、5Ktですから無視無視!)を飛んで降下を続け、ベースレグに向かって旋回し、フラップを展開します。さあ、ファイナルターン。大きな艇体をゆっくり湖面に降ろして、Water Contact! の表示を確認。ポートベルの小半島の先端を狙って惰性で滑走し、うまく200mかそこら沖で停止しました。もやいを取りたいところですが、係留ブイを自分で新設する仕掛けがないのが残念です。

 ■追伸■ 私が天測やクラシック機のことしか頭にないかというと、無論そうではありません…(^^;)。
大阪の航空グッズ店に注文した新刊書「アドバンスド・アビオニクス・ハンドブック」(佐藤裕訳、鳳文堂出版)が先日届きました。GPS航法の実際やRNAVを詳しく解説した本は、これまで全然見つからなかったので、ネットで見た途端に即発注してしまいました。天文航法のスキルを維持拡大し、同時に電子航法もじわじわ勉強して、そのうち更にFlightGearの楽しみを広げたいと思います。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-9-4 23:44 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 遅くなりましたが、v280のリリースおめでとうございます。
私の「海鳥の旅」も前回、アフリカ・ビクトリア湖北岸のウガンダ領ポートベル港に到着した後、しばらくストップして、v280への切り替えと各種の修正作業を進めました。ひとまず旅が続けられる状態になりましたので、今回はテストを兼ねてどんどん南下を続け、長大なタンガニーカ湖の景観を楽しみ、南アフリカ・キンバリーではダイヤモンド採掘跡のクレーターを眺め、アフリカ大陸の最南端を通過。ようやくケープタウン国際空港まで進出しました。

 ところで皆さん。ケープタウンと言えば「喜望峰」ですよね。昔からよく「アフリカ最南端の岬」と呼ばれてきましたが、正しくは喜望峰はアフリカの「南西端」。本物の「最南端」アガラス岬は、西北西に150キロも離れており、こっちの知名度は今ひとつ。どうして喜望峰ばかり有名になり、最南端と誤解されたのでしょう…今回は最後に、両方の岬を訪ねます。

●v280の第一印象と rembrandt について:
 時系列順に、お話を進めます。8月22日にv280をインストール。テクスチャーや空の見え方が改善され、新たな「rembrandt」機能のお陰で、機体の影が太陽の位置に従って刻々描かれ、着陸灯も有効になるなど、グラフィックの進歩が印象的ですね。気になるフレームレートは、起動直後は30〜59で、rembrandt使用時のみ12くらいに落ちてしまい、やや不便という感じでした。
(注:環境は2年半前のノートです。xp-Pro Core i7 Q720@1.60GHz 925MHz 2.99GB RAM GeForce GT240M)

 HydeさんがPC-9Mに装備して下さった着陸灯が、最初は作動せず首をひねりましたが、以前の掲示板を参照して、起動オプションに「/sim/rendering/rembrandt/enabled=true」と書き込まなくてはならないことを確認。いちいちコピペも面倒で、現在は「レンブラント」で単語登録しています。
 この着陸灯には十分実用性がありますので、世界一周中のPBYカタリナ「水薙」号にも使わせて頂くことにしまして、ライトコーンのacファイルと、一部xmlファイルの追加記述をお借りしました。すでに「投稿画像」でご紹介した通りです。PC-9Mでは、ギアを降ろす(着陸灯も降りる)と点灯する仕組みなのですが、カタリナでは着水時に困るので、翼端フロートを降ろした際に点くようにしました。
 可能なら「ギアまたは翼端フロートを降ろした場合」という「OR条件」で点灯させたかったのですが、試行錯誤しても「ギアもフロートも降りると点灯」という「AND条件」しか達成できなかったので断念し、翼端フロートだけで制御することにしました。実用的にはこれで満足です。ただし rembrandt 機能を使うと相当重くなるうえ、現時点ではご存じのように、色バランスもかなり不自然です。

 そこで着陸灯が必要になった場合にのみ、rembrandt 機能をオンに出来ないかと、internal properties を開いて、デフォルトの「/enabled=false」を「true」に書き換えてみました。すると機内と地形のテクスチャーが吹っ飛んで、青空以外は黄色や黄緑、オレンジ系のポップな色彩に塗りつぶされてしまい仰天。「投稿画像」に上げておきましたが、これじゃレンブラントならぬ「虹の画家」靉嘔(あいおう)さんの絵みたいです。当面、飛行中のオンオフは諦めて、今後の熟成を楽しみに待つことにしましょう。

●「ジャングル大帝」の舞台、グレートリフトバレー:
 グラフィック機能に関しては当面、動作を軽くする設定を心がけながら、旅を再開します。コースは以下の計2479nmで、数日に分けて翔破しました。

☆PORT BELL NDB270PB 00.17.44N-32.39.21E(この沖合数百mが離水地点)
◎エンテベ国際空港HUEN VOR117.5NN 00.03.10N-32.26.16E(航法の基点)
   ▼241.5度219nm
ルワンダのゴーマ
☆GOMA-NDB 336GS ★GOMA-VOR 116.5GOM 01.41.09S-29.14.00E ◎GISENYI空港FZNA
   ▼202.6度51nm
◎KAMEMBE空港 NDB321KB 02.27.50S-28.54.30E
   ▼155度58nm
ブルンジのブジュブラ ◎BUJUMBURA空港HBBA VOR112.3BJA 03.20.47S-29.19.19E
   ▼181度211nm
コンゴのカレミエ ◎KALEMIE空港FZRF VOR116.3KMI NDB261KMI 05.52.07S-29.15.00E
   ▼190.5度1399nm
南アフリカのキンバリー ◎KIMBERLEY空港(FAKM)VOR113.2KYV NDB365KM 28.47.59S-24.45.37E
   ▼214度436nm
△アガラス岬 34度50分00秒S-20度00分09.15秒
 (アフリカ最南端。インド洋と大西洋の境界。OVERBERG-VOR115.4-OBVから215度21nm NDB427-OB)
   ▼291度81nm
△ケープタウンの喜望峰  34度21分29秒S-18度28分19秒E
   ▼14度24nm
◎ケープタウン空港FACT VOR115.7CTV NDB462CB

 最初の航程では、ビクトリア湖のポートベルを離水後、西隣のルワンダにあるゴーマの街へ。すぐ南にキヴ湖という、ずっと小さな湖が見つかります。ここから南方へ110nmの地点にあるブジュブラから、南北に細長いタンガニーカ湖の上を、200nmあまり飛び続けることになります。この湖は、アフリカ東部を縦断する7000キロの巨大な谷間「グレートリフトバレー」(Great Rift Valley=大地溝帯)の一角に当たりますが、はるか北方にあるヨルダンの死海から、アラビアとアフリカを分ける細い紅海、そしてエジプトのナイル川流域も、実はみーんな、この巨大な谷間の一部です。とは言え規模が大きすぎて、機上から渓谷らしく見える機会はほとんどありません。強いて言えば、細長いタンガニーカ湖が、いかにもそれらしい景観です。

 思えば手塚治虫「ジャングル大帝」の舞台も、この大地溝帯のあたりでした。遠い小学生時代に、漫画雑誌で見た連載第一回(ただし1960年代のリライト版)の多色刷りページが懐かしく脳裏に浮かんで、自分の記憶が正しいかどうか確かめたくなり、数年ぶりに手塚治虫記念館(宝塚市)を訪ねました。

      「エジプトからローデシア地方にかけて、大アフリカを
               二つにわって北から南へ走る大きなみぞがある」

 図書コーナーで開いた「ジャングル大帝」の第1巻は、やはりこんな風に始まっていました。「みぞ」の上に点々と連なる巨大湖、両側にそびえる高峰群。変化に富んだ雄大な大陸規模の景観を、緊迫感のあるナレーションで説明しながら、親子3代にわたる白いライオンの物語は始まります…。
 グレートリフトバレーは現在、いわゆるプレート境界の一つであることが分かっていますが、驚くべきことに「ジャングル大帝」(初出は1951年連載)の中でも、すでにバレーの成因として、ウェゲナーの大陸移動説を紹介しています。当時はプレート運動のメカニズムが知られておらず、大陸移動説はキワモノ扱いを受けて、一時忘れられていた時代に当たりますので、手塚治虫の博識ぶりには驚かされます。

●シーナリー全部、ダウンロードやり直し:
 ポートベル港から100mのビクトリア湖上で、カタリナを始動。燃料満タン、航法計算を終えて離水滑走に移り、重い機体を持ち上げます。この日の航法は、ほぼすべてVORとNDBを使います。エンテベ空港から予定通りの針路を取って、広大な湖面に点在する島々を見ながら、快適に西へ。ところがビクトリア湖の西岸に差し掛かる手前で、いきなり画面処理が遅くなりました。1秒動いては数十秒止まり、また1秒動いてすぐ止まる、という繰り返しで、事実上フリーズしたようなものです。これは困った…。

 機体をピラタスPC-9M改に替えても、結果は同じです。しかし伊丹上空でテストしてみると、同じ機体で何ら問題は起きません。アフリカと伊丹は一体どこがちがうのか、と考えてみたら、関西地方はすでにv280用の最新シーナリーに替えていますが、アフリカから北米に掛けては、まだv260用のままだったのです。もしかすると、この旧版シーナリーのせいでしょうか?
 従来はFlightGearのバージョンが代わるたびに、シーナリーもこまめに新しくしていました。最新の実世界のデータを反映したり、オブジェクトが追加されていることを期待したためで、旧バージョンのまま放置すると障害が起きる、という認識はありませんでした。やむを得ず、休みを半日つぶしてアフリカ・アメリカ・日本のほぼ全域をDLし直し、せっせとAtlas地図用の画像も生成。大仕事でしたが、結果的にはこれでv280が、かなり安定して走るようになりました。日を改めて再発進。

 ボートベルから約1時間半飛んで、その間に買い物をして戻ったら、目の前に雪山(ルワンダ最高峰の火山、カリシンビ山4507m)が現れており、慌てて高度を上げたりしましたが、無事にキヴ湖へ着水。そのままギアを出し、ゴーマの市街地にビーチングしました。
 上陸地点の緯度経度を記録しておき、日を改めて再起動して更に南へ。ところがまたフレームレートが激減して、事実上のフリーズ状態に。ランダムツリーを切ったり、視界を70nmから50nmに縮めたり、はてはスクリーンセーバーを外してみたり、あれこれ手を打っているうちに、何となく直ったのでまた再開。v280はグラフィック機能が向上した割には、あまり重さを感じさせませんが、およそ1時間以上飛ぶと負荷が累積するのか、フレームレートが大きく低下する傾向があります。まだ十分確認できていませんが、Atlasを使わずに飛び始めて、フレームレートが30くらいまで下ってから初めてAtlasを起動すると、なぜか地図が表示された途端に、フレームレートが59までバリバリ回復する…というケースを2回体験しました。もし常に再現性があるとしますと、この現象は描画速度アップの裏技として使えるかも知れませんね。

 一方、着実に改良されている部分も。私は天体の動きが不正確になる「Time of Day」機能は使わず、時刻調整が必要ならパソコンのクロックを設定変更することにしていますが、v260ではこうすると、リアルウエザーONでFlightGearを起動した場合、METARデータに書き込まれている時刻と、クロックの時刻が矛盾を起こすのか、起動の最終段階で必ず異常終了していました。しかしv280では正常に起動し、単にMETARのダイアログに「NIL」が表示されます。目立たない改善点ですが、非常にありがたいです。(付記:しかし4日になって、こんどはMETARが全然受信できていないことに気付きました。何をしても復旧せず、困ったことになっております)
【9月6日の追記】
(その後、FlightGear Wizard の Defaults ボタンで起動環境をリセットしたら、うまく復旧しました。リセット後の再設定にはコツがあり、一度に行うとMETAR受信不能が再発しましたが、1項目ずつチェックマークを入れて、そのつど起動テストを重ねたところ、再発を回避できました。訳が分かりませんが、まずは一安心です)

●世界最大の「塩の砂漠」と、ダイヤモンド鉱山の穴:
 日を改めて再びゴーマから出発し、やっとタンガニーカ湖を飛翔。全長約700キロもある湖のうち、北側の約300キロを飛んだだけですが、まるで巨大なフィヨルドが平らになって、地の果てまで伸びたような光景をたっぷり味わいました。コンゴのカレミエというところで変針し、湖岸を離れて西の内陸部へ。ここからはザンビア、ジンバブエにかけて死ぬほど草原が続き、クタクタに飽きたころになって、森林や干上がった湖、集落などが時折、視界に入ります。
そのうちボツワナで、白い砂漠のような地帯に入り込みました。乾燥した塩湖でしょうね。あとで調べるとやはり、東西約170キロ、南北約110キロもある、広さ世界一の天然塩に覆われた低地でした。ネットでは「ソワ・パン」(ソワは塩という意味らしい)という地名が見つかりましたが、これは乾湖の東半分のみを指すようで、全体の名称は今のところ分かりません。

 「海鳥の旅」フライトでは、睡眠中にオートパイロットで距離を稼ぐため、100Kt前後の低速低空・超長時間フライトを試みてきましたが、今回は仮眠抜きの昼旅ですので、逆に速度を上げました。高度20000ftまで上がって、指示対気速度132KIAS(真大気速度150KTAS)にセットし、休日の朝からひたすら連続飛行。退屈な部分はオートパイロットに任せて、途中で雑用も片付けながら、ようやく宵闇が迫るころ、南ア共和国のキンバリーに接近しました。

 アフリカは、日本と昼夜が逆転します。クロックをずらして昼間にしている関係上、リアルウエザーは使えませんから、出発時点で確認したMETARの通り、快晴で北寄りの強風にセット。30ノットの追い風で飛び続けたのですが、どっかで何かのはずみに設定が動いてしまい、夕刻には弱い南風になっていました。明るいうちに楽勝ゴールのつもりだったので、rembrandt は設定しておらず、着陸灯は使えません。しかし向かい風にシフトしたお陰で、当初の予定より足が遅くなり、夜間着陸にずれ込む可能性が出てきました。いや、そもそもキンバリーに届くのでしょうか。燃料がちょっと、足りないかも。
 愛用させて頂いているPerformance Monitor は、残念ながら私のv280環境では、着陸後にShift+Ctrl+Nを押してもブレーキが解除されず、スロットルも開かなくなっています。リセットしたいのですが、もともと「閉じる」ボタン(Macならクローズボックス)を押しても終了しないので、今回はinternal properties から燃料の総残量や流量を読んで、割ったり掛けたりして、残る飛行時間と航続距離を概算したところ、高空巡航なら約30分のゆとりがあるが、降下タイミングを誤ったり、アプローチに手間取ると恐らくギリギリ、という答が出ました。
 さて非常事態。持っているものは全部動員しようと、チャート代わりのAtlas画面を飛行に連動させ、Map画面も開いて、最短の進入コースを決定。すっかり暗くなってきましたが、幸いキンバリーの滑走路にはちゃんと灯火があり、無事滑らかにタッチダウン。倍速モードは一切使わず、実時間で9時間27分に及んだ長いフライトでした。未確認ですが、或いはFlightGearにおける滞空時間の自己最長記録かも知れません。

 キンバリーという街は、ご存じダイヤモンド採掘で有名で、FlightGearのシーナリーでは、市街地の内外に廃坑の巨大なクレーターがボコボコ開いています。GoogleEarthで見る実景もまったくその通りで、実に異様な光景ですが、まずダイヤがマグマと共に噴出した鉱脈が見つかって、その採掘坑を取り囲んで、あとから都市が出来たわけですね。
 実世界では「人間が掘った穴の中で最大」とされる「ザ・ビッグホール」が、ちょうど市の中心にあり、直径465mで最盛期の深さは約1300mだったそうです。20世紀初頭に掘り尽くされてから崩壊して、今は215mまで浅くなり、底に水がたまっているのだとか。YouTubeで見ると、円筒形の絶壁がスポンと切り立って、噴火口サイズの古井戸みたいな光景。私は幸い、高所恐怖症も閉所恐怖症もありませんが…極端にでかくて深い物件を見下ろすのは、あまり好きではありません(^^;)。
 FlightGearの「ザ・ビッグホール」は、ごく平和なすり鉢型で、ほぼ正確な緯度経度にありますが、道路の配置は例によっていい加減なため、幹線道路が集まる交差点が穴の中にあって、ちょっと笑える光景です。操縦の楽なパイパーカブで、30分ほど飛び回って穴を見物しました。

●喜望峰「アフリカ最南端」説の謎:
 キンバリーからは、アフリカ最南端のアガラス岬を経由し、ケープタウンへ向かいます。
ケープタウン郊外の喜望峰は、昔からしばしば「アフリカ最南端の岬」と誤って呼ばれています。英文のウィキペディアにも同様の指摘があり、日本だけの現象ではありません。学生時代に愛読した「航海術〜海に挑む人間の歴史」(中公新書、残念ながら絶版)は、ナビゲーション技術の通史を要領よく概説した好著ですが、東京商船大名誉教授(当時)の執筆にも関わらず、やはり「アフリカ南端」としており、私もフライトシミュレーターに熱中するまで、長くこれを信じていました(^^;)。
 きょう書店に寄って、計7社の子供向け国語辞典で「喜望峰」を引いたら、2社は「アフリカの南のはし」と書いておりアウト。4社は掲載せず、学研だけが「南西のはし」と正しい記述でした。ネット上でも「アフリカ最南端」「アガラス岬」でググると2570件、「喜望峰」に入れ替えると4620件ヒットし、やはり喜望峰が優勢です。一体どうして、こうも誤った通説が広まったのか。南アフリカ南岸へ向けてのんびり巡航しながら、そればかり考えていました。

 VORを頼りに、アガラス岬から一番近い空港・OVERBERGの上空に到着。ここから215度へ21nm進めば「最南端」です。ビーチあり岬ありの海岸線を行き来して、あれがアガラス岬だなと見当を付け、せっせと画像を撮りました。しかしAtlasで確認すると、最初に撮った地点は間違っており、「どこだ、どこだ?」と少々慌てました。アガラス岬は、緩やかな弧を描く長大なケープ州南岸から、やや突き出た地点の一つに過ぎず、あまり目立つ場所ではないのです。
 一方、ここから30分ほど飛んで到着した喜望峰は、大西洋に向かってカギ型に張り出した、長さ約20キロの半島(ケープ岬)の先端近くにあり、絶対に見落とさない地形です。ただし半島の最先端ではなく、ちょっと手前の南西の角が喜望峰で、どうしてこの場所が歴史に残ったのか不思議でした。

 そこで私は最初、第一発見者のポルトガル人、バーソロミュー・ディアスが、ことによると磁気偏差にだまされて、ここをアフリカ南端と誤認したのかと疑いました。仮に偏差が20度以上の偏東だったら、コンパスの針が(真北ではなく)東寄りを指しますので、やや南東向きに延びる海岸線から、西寄りに突出したどこかの一点が「最南端」に見えてしまうはずです。喜望峰は、ちょうどそんな位置にあります。ただし今は偏西25度くらいですので、岬が発見された1488年当時から、偏差が50度前後も変化したかどうか、疑問もあります。
 そこで15世紀アフリカの地磁気の記録を探していたら、NYの写真家・作家、Vincent Mounier さんのHPに行き着きました。Mounier さんは自分の南ア旅行記に「ディアスはコンパスが真北を指したため、この岬をスペイン語で針を意味する Agulhas と名付けた」と書いています。事実なら当時の偏差は0度だったわけで、「偏差による誤認説」は成り立たないことになります。偏差の測定は割に簡単で、六分儀などの高度角測定具とコンパスがあれば可能ですので、ディアスが偏差の有無を勘違いするとは思えません。

 …さらにあれこれ調べると、アフリカ東岸を南下する暖流と西岸を北上する寒流が、アガラス岬ではなく喜望峰との間でぶつかることや、赤道から西岸を南下する帆船は、ケープを目印に東寄りに変針することから、船乗りにとっては、アフリカ最南端ではなくケープ周辺が「大西洋とインド洋の境界」であるとか、いろんな説があるらしいです。ただし私の英語力では、どうも判然としません。
 結局のところ、一般的には次のように考えるのが、無理のない理解のような気がします。

(1)アフリカ南岸はインド洋・東洋へ向かう通商路で、一攫千金が見込めた。
(2)しかし、大暴風地帯「吠える40度線」に近い難所で、避難・補給港が強く求められた。
(3)深い入り江がないアガラス岬周辺と違って、ケープタウン周辺は大小の湾に恵まれ、
   良港が得られる。貿易基地として最適と見なされ、南アフリカ初の植民地が設けられた。
(4)つまり、結局は地形の違いが、二つの岬のプレゼンスや歴史的な知名度、そして運命を分けた…。
さて、果たしていかがでしょうか。

     ●

 喜望峰から北上すると、ケープ岬の付け根に平野が広がって、ケープタウンの市街地と二つの空港が目に入ります。岬は特徴ある山々に恵まれ、市街の南岸には長く湾曲した砂浜が伸びて、とても風光明媚なところです。空港のターミナルと主滑走路は、ちょうど伊丹くらいの規模ですが、交差滑走路が1本あって、小さな軍用区画もあるため、敷地全体は2倍近くありそうです。南から進入して滑らかに着陸。南ア航空の旅客機が数機、エプロンにいるのが見えました。南緯34度で現地は冬。正午の気温は18度くらいです。

 大航海時代のお話に、少々のめり込んでしまって恐縮です。アフリカ南部のことはあまり知らず、航空史をめぐるエピソードも思いつかず、最初は旅のモチベーションを高めるのに、少々苦心しました(^^;)。しかし、どこまでも猛烈に平らな東欧・ロシア西部あたりに比べますと、アフリカ南部の大地は変化が多く、ワイルドな味わいもあって、目を楽しませてくれます。
 私の旅は、インド洋の沿岸を終えて大西洋沿岸に入りました。今回の世界一周はここが南限で、幾つか懸案の飛行テストや実験(新PC-9Mの試乗や、天文航法に関する試験観測など)を済ませたら、どんどこ北上するつもりです。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-10-4 13:20 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 前回、アフリカ南西端の喜望峰を訪れ、すぐそばのケープタウンに着陸してから、すでに1カ月経ちました。ケープでは、近づく大西洋横断飛行に備えて、航法やカタリナ飛行艇の欠点を、あれこれ洗い出しておりました。ある程度の成果が出ましたので、すっかり見慣れたテーブルマウンテンや、デビルズピークなどの風光明媚な山と海、市街に別れを告げて、ケープタウンから一気に赤道直下まで北上します。

 めざすは赤道(緯度ゼロ)とグリニッジ子午線(経度ゼロ)が交差する、大西洋上の一点。ここで自作の飛行艇支援船「オセアニック・ギア」号と、初の洋上会合を体験します。
 コースは次の通りです。

◎ケープタウン国際空港FACT VOR115.7CTVから194度24nm NDB462CB 33°58'25N-18°36'16E
   ▼309度6.9nm
◎ケープタウン北部の小空港・Ysterplaat空港FAYP 33°54'03S-18°29'54E
   ▼312度9nm
★ケープタウン沖合の島 Robben Island-VOR117.6RIV 33°47'58S-18°21'52E
   ▼349.3度1523.7nm
◎アンゴラの首都 Luanda空港FNLU VOR112.7VNA 08°50'43S-13°14'51E NDB258LU
   ▼324.8度677.2nm
◎赤道付近の孤島 サントメ・プリンシペ共和国 Sao Tome国際空港FPST
 VOR117.3STM NDB330SP 00°22'42N-06°43'01E
   ▼266.8度404nm
△支援船オセアニック・ギア 0°N-0°E
合計 2620.8nm

●飛行艇支援船とは?:
 早い話が、洋上のガソリンスタンドです。
水上機や飛行艇は、広い水面さえあればどこへでも進出可能です。私は仮に空港に行き着けない場合、いざというときは着水して、海岸沿いの都市か集落にビーチング(自力上陸)すれば、給油が可能である…という自主ルールに従って「海鳥の旅」を続けようと思っています。実際、水上機が多く使われた戦前は、新たな空路開拓などの長距離飛行をする際、中継地に選んだ孤島にガソリン缶を発送しておき、小さな港や天然の入り江を利用して、臨機応変に給油する例もありました。しかし大海原の真ん中で島もなく、どうしても航続力が足りない場合は一体、どうするか。
 かつて愛用したピラタスPC7改は、着艦フックはありませんが Nimitz に発着可能でした。しかしカタリナでは無理でしょうし、いつもアメリカの空母を頼るのも、なんだか気が引けます。そこで民間の船を手配して会合する、という手を考えました。空中給油機の海上版が理想ですが、私の技術では作れませんので、本当にただ洋上で、出逢うだけです(^^;)。が…せめて「宗谷」みたいなオレンジ塗装にしたり、ABN(飛行場灯台)を備えて飛行艇サポート専用船のムードを作り、ついでに手を振るポーズの誘導係でも立たせて、再会が楽しみな船にしたい。こんな発想で作ったのが、「投稿画像」でお目に掛けるオセアニック・ギア号です。

 昔の「宗谷」は、ロシア向けに建造された古い耐氷貨物船(のちに海軍特務艦、引き揚げ船、戦後は灯台補給船)を改造した砕氷船ですが、オセアニック・ギアも、/data/Models/Maritime に収録されている、老朽化した雰囲気のトロール漁船が原型です。中央にブリッジと機関室があるスリーアイランダー(三島型)で、ユニオンパーチェスという \‖/ ←こんな格好をしたデリック(起重機)のマストが立って、いかにも昭和時代の代物ですが、ブリッジも機関室も船尾に押し込めた最近の効率一辺倒の貨物船に比べますと、このほうが船らしく思えます。かつてユニオンパーチェスは貨物船のシンボルで、小学生が「汽船の絵」を描くと、マストは必ずこの形でしたが、今では英語でググらないと見つかりません。国内で見られるのは、「コクリコ坂から」の洋上シーンくらいでしょうか。

 オセアニック・ギア号は、AI機として出現しますから、レーダー(Map画面)に映ります。搭載したABNは一般的な「白・緑」ではなく、水上機飛行場を意味する「白・黄」に変更してあります。実を言えば、すでに3月中には出来上がって、神戸空港沖で試験を重ねていたのですが、やっと出番がやってきました。

●天測について:
 久しぶりに天文航法について、ちょっとだけ経過報告します。
本連載の前々回(海鳥の旅ァ砲任蓮▲咼トリア湖でショート・エンパイア飛行艇の気泡六分儀を試しましたが、既にご報告の通り、測位誤差が大きくて使い物になりませんでした。私の不慣れが主な原因だろうと思いますが、その後v280に切り替えたことで万一、何か不具合が生じていては困るので、念のため滑走路に静止した状態で、天測のテストを重ねました。近く行うはずの大西洋横断では、海の真ん中あたりで天文航法に頼る場面も出てきそうです。
 六分儀の代わりに、慣れたフライト・コードラントで星の高度を測定し、天測計算ソフト「Navigator」で緯度経度を出すと、結果は…

 伊丹:    太陽と金星を測定。緯度0.5nm、経度2nmの誤差。非常に優秀です。
 ケープタウン:アルデバランとリゲルを観測。誤差は緯度2.8nm、経度5nm。これまた十分実用範囲。
 エンテベ:  恒星を5個観測。測位誤差は緯度4nm、経度9nmで、ほぼ許容限界。
 カナダのレゾリュート・ベイ:
        落日寸前の太陽高度が0.6度、木星7.36度、金星4.5度と、非常に低い位置の
        天体しか見えず。条件が悪すぎたのか、測位結果は緯度9nm、経度19nmという
        大誤差。実用にはちょっと…ですが、何も無いよりずっとマシ。

 …となりまして、v280環境下でも従来の方法や道具で、基本的に問題ないことが確認できました。ただし飛行中は、さらに観測や計算が難しくなります。天体を利用して緯度経度を求めるには、計算の出発点として自機の推測位置を使いますが、ビクトリア湖で絶不調だった原因の一つは、この推測位置の出し方がまずかったのではないか、と私は考え始めました。

 推測位置は、飛行時間と速度と針路から、推測航法で算出するわけですが、最近利用しているNavigatorはこの点がちょっと不備で、出発地と目的地の緯度経度を入れると、途中通過点の緯度経度を最大100カ所、案分計算で出してくれるだけで、いきなり「ここはどこか」は分かりません。時計を見て、どの通過点の近くにいるか判断しなさいね、というわけです。実際にやってみますと極めて不便で、天測計算も、星座早見画面による索星もしばしば大混乱し、測定すべき星を何度も間違えてしまいました。
 結局私は推測位置のみ、以前自作した天測計算用ワークシートで出すことにしました。観測時刻を入力すると、そのつど風向・風速の補正まで行い、推測位置や残飛行距離・目標修正方位・所要時間などを返す仕組みで、手前ミソながら非常に使いやすく、航法の問題もひとまず道が開けました。

●ケープタウンを出発、軽く天測を試す:
 では2620nmを飛んで、オセアニック・ギア号に会いに行くことにしましょう。
UTCの1249時にケープタウンで起動。雲は2451ftに厚さ750ftのbroken。そして強い向かい風。5000ft以下315度27Kt、10000ft以下は320度27Kt。偏西風帯だから仕方ないかなと思いつつ、METARのサイトを調べると、ナミビアまで北上すれば追い風のようです。アンゴラの首都ルアンダも、西の風6Ktの予報。赤道直下のサントメ島は南南西の風6Ktと…おおむね西寄りなので、当面ケープの風向で針路の修正計算をしておきます。

 1304時エンジン始動。着陸時は夜ですから、レンブラントを使用して1308時離陸。
沖合の Robben Island-VOR上空を通過して、予定針路に定針。高度10000ft、100KIASにセットすると、真大気速度の針は118KTAS。プロペラのピッチを立てて、毎分2600回転から2150まで下げました。燃料流量はエンジン1基あたり62.1gph 372.8pph。ここから残存滞空時間を出すと、16時間5分。航続距離は思ったほど伸びず、1900nmしかありませんが、機体が軽くなれば少し改善されることでしょう。

 落ち着いたところで天測テスト。太陽を取ってみると、自機の推定位置から-5.5nmのところに、位置の線が出ました。悪くない精度です。しかし東方に見えたリゲルケント(恒星)を計ったところ、今度は-36.4nmと大きく外れてがっかり。東西方向に見える星は、どうも測定に誤差が出やすいです。天球は南北に傾いていますので、東や西に見える星は、刻々と高度が変化するからですね。しかし南北の空では、星はほぼ水平に移動していますから、かなり正確に高度角が測れる…ということが最近、分かってきました。
 1540時になって再び太陽高度を測定し、計3本の位置の線で緯度経度を出したら、正解からざっと緯度で13nm、経度で3nmほどのずれでした。まだ誤差が大きすぎますが、洋上飛行では「ないよりずっとマシ」なデータではあります。
 副操縦士のジョージくん(Georgeは本来、オートパイロットを指す米語)に任せて、お休みなさい。

●ルアンダで給油、一気に高速モードに:
 2139時にコクピットへ復帰。離陸後8時間ほど正常に飛んでいます。天測しようとしたら、頭上が雲に覆われてしまいました。以後は無線航法で、NDBやVOR局をモールスで聴き分けながら、さらに北へ。
 いずれ詳しくご報告しますが、カタリナ飛行艇の燃料系統には癖があり、タンクごとの燃料減少率がまちまちで、たまにスライダを再調整して均一化する必要があります。この時も数時間にわたって残量変化を気にしながら飛び続け、そのうち緯度経度ゼロ点まで行くには燃料不足と分かり、アンゴラの首都ルアンダに降りて給油することにしました。

 0244時、着陸灯を使って無事に着陸。滑走路中央から誘導路へ入り、エンジンを停止して満タンに。私も食事に出かけて…0503時に戻って起動したら、ルアンダはちょうど夜明けでした。もう着陸灯は要らないので、レンブラントを切って再起動。この方が色彩とフレームレートが良くなります。15000ftまで上昇し、0525時に空港上空で定針。
 ここからは燃料を惜しまず、ぶっ飛ばします。
130KIASにセットして真大気速度は164KTASをマーク。2710回転からプロペラピッチを立てて2400回転にしたところ、さらに170Ktに上がりました。それでも燃料流量から逆算すると、だいたい12時間、2000nm飛べそうです。更に20000ftに向けて上昇開始。プロペラピッチを戻すと、非力なカタリナでも上昇率800ft/min なら何とか可能です。高度を上げたのは効果てき面。レベルオフすると150KIASまで加速し、真大気速度は204KTASくらいでした。こんなにスピードが出せる飛行機だったとは。推測航法と無線航法で、さらに旅が続きます。

 0725時、サントメのVORが方位だけ入感。チャート代わりのAtlas画面上で、他局との方位線クロスベアリングを行い、現在地は03°09'S-10°06'Eあたりと判明。残りは300nmくらい、約1時間半です。

●サントメ島の思い出:
 0739時、雲の中に入りました。雲の高さや密度が変わると言うことは、METARデータが更新されているわけなので、ほぼ必ず風も変化しています。雲を見ては、マメに風向風速を確認して、針路の修正計算をやり直すのが洋上推測航法のコツです。
 パネルを拡大して計器をにらんでいたら、白くチカッと何度も機内が光りました。雲塊を断続的に通過していて、回りはほとんど見えませんが、やはり雷かな。機械翻訳でMETARが読めるサイト(以下にアドレスを再掲)で調べると、どうもサントメ方面は積乱雲が発生していますので、その電光なのでしょう。
 http://ja.allmetsat.com/metar-taf/index.html

 以後、めまぐるしく天候と風が変わって0845時、突然もやの中から島が現れました。すぐ足下に滑り込んできて、もう空港が目の前。平野や丘陵に広がる耕地に使われた、FlightGearのヨーロッパでよく見る、黄緑系の美しいテクスチャーが目に染みました。アフリカの巨大なギニア湾というより、アイリッシュ海あたりを飛んでいるような気分で、なんだかホッとします。これがサントメ・プリンシペ、赤道直下の火山島の共和国です。北岸の滑走路に向けて降下し、0854時に着陸。しかしオセアニック・ギア号との会合も、光線のいい時間帯に撮影したいので、残念でしたがすぐ離陸しました。

 …一瞬の出会いでしたが、感無量でした。ここは私にとって、「初めて見る追憶の島」です。
遠い昔、小学校の約半分を過ごしたスイスで、友達数人と「航空レースごっこ」に熱中したことがあります。1910年のロンドン=パリ間で、もしクラシック機の大レースが行われていたら…という、某映画の影響ですが、パソコンもマイコンもない時代、私たちの「レース」は、ヒコーキの模型を持って走るマラソン大会、といった趣向でした。道具立ては超簡単でも、イマジネーションは豊富だったので、せっせと世界地図にコースを描き、ざっと距離も計って「庭一周が1000キロ」などとルールを作り、結構熱い日々を送ったのです。

 最後にやったのは赤道一周レースで、スタート・ゴールがサントメ島。理由は、緯度ゼロ・経度ゼロを基点に世界一周がしたかったからで、割に近いサントメ島を「ゼロ点にあることにしてしまおう!」と、勝手に決めた次第です。実世界では、もちろん行ったことはなく。特に映像を見た記憶もありませんが、名前と位置だけは非常に懐かしい…という変な島。仮装現実にせよ、自分で操縦して自分の航法で、何十年も掛かったけれども、とうとうここへやって来たんだな、と思いました。

 島の北岸を飛びながら、何枚も画像を撮り。たおやかな耕地と峰、雲に彩られた海岸に見とれ、ほんの数分後に振り向くと、島はもやに吸い取られて、完璧に消え去っていました。あれは少年の日の幻影か? と思ったほど見事に。

●地球の原点で、オセアニック・ギア号と会合:
 どんどん加速。170KIAS/200KTASも出ましたが、回転計とマニフォルド吸気圧計が振動しています。実世界なら危なそうですが、多分どうということはないでしょう。支援船の会合地点まで1時間37分。
 以後、時間がゆっくり経つようでイライラ。あと30分の距離まで来ても、オセアニック・ギアはレーダーに映りません。どのVORもすでに圏外なので、Route Manager に「0,0」と打ち込んで、GPSで緯度経度ゼロ点へ定針。再びMap画面をつつき回していますと、あったあ!
 確かに「◇」マークと、「Oceanic-Gear」のコールサインが画面に見えました。ズーム4以上の拡大率でないと、Traffic 画像は映らないのですね。まだ50nmくらいありますが2500ftまで降りて、全開のまま167KIASで突進。

 しかし距離20nmを割っても、まだABNも船体も見えません。おっかしいなぁ、と気をもんでいたら、5.3nm先の真正面にやっとABNを視認。オセアニック・ギアです。近づくと、オレンジの船体とグリーンのデッキが、懐かしく目に入りました。赤道とグリニッジ子午線が交差する、地球の緯経度原点の真上に、ぴたりと停船しています。
 ぐるぐる旋回して写真を撮り、ローパスしすぎて危うく海に突っ込むところでしたが、無事着水。神戸沖で練習を重ねた通り、船尾から慎重にアプローチして、どうやら会合成功です。
(文貯さんがバービーちゃんに出逢ったときの気分も、かくや?)

 5.3nmでやっと見えた理由は分かりませんが、神戸沖でもこの程度まで近づかないと、視認不能でした。AI航空機の属性ですと、10000m以内でないと画面表示されないのかな、と想像しています。preferences.xml の設定変更で改善できないかと試しましたが、難しいようです。
 レーダー画像も、Map画面をZoom4以上アップにしないと映らないので、遠距離からワイド画面でサーチすることが出来ません。Zoom4ですと私のパソコンの場合、Map画面を液晶の上下最大幅まで広げても、最大で44nm先の目標しか映りません。せっかくの船が「遠くから見えない」というのは、ちょっと誤算でした。
 次回はさらにアフリカを西に進みます。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-10-13 3:36 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 私の世界一周「海鳥の旅」は前回、カタリナ飛行艇がアフリカ沖の赤道上で、支援船「オセアニック・ギア」号と会合したところまででした。今回は更に西進して、アフリカ最西端にあるセネガルの首都・ダカール空港(GOOY)まで進出します。ここは、大西洋を巡る航空史に何度も登場する場所です。

 かつてパリダカ・ラリーで有名になったこの街は、大西洋へ大きく張り出したアフリカ西岸の、小さな半島の先端にあります。対岸はブラジル東端のナタールで、大西洋が比較的狭い場所の一つですので、1920年代から大西洋横断の基地として、さまざまな記録的大飛行や新空路開拓への挑戦、やがては定期便の発着に利用されました。FlightGear用の機体を見ても、1927年に大西洋を渡ったサヴォイア・マルケッティ S.55双胴飛行艇や、サンテグジュペリの同僚ジャン・メルモーズが1933年、渡洋郵便飛行ルート開拓に使った長距離機、クージネ70「アルカンシエル」号が、この地を飛び立っています。そういえば世界一周の「ニッポン号」も、ナタールから国産機初の大西洋横断飛行に挑み、無事ダカールへ降りたのでした。

●リンドバーグ夫妻の、水上機旅日記:
 チャールズ・リンドバーグもまた、ダカールに縁があります。彼は1933年、副操縦士と通信士を務める奥さんのアンとともに、自家用のロッキード・シリウス水上機「ティングミッサートク」号で、グリーンランドから南米に至る広大な大西洋を3万キロ調査し、近い将来に定期航空路を開設する際のルートや中継地点を探しました。途中でダカールへの寄港も計画しましたが、たまたま黄熱病が発生したため断念し、やや南方のバサースト(当時の英領セネガル。現在はガンビアの首都バンジュル)を訪問。ここから南米を目指したものの、燃料満載で重い離水に何度も失敗を重ねています。
 度重なる想定外のトラブルと不安、そして冒険の歓喜が交差する、若い夫婦の空の旅日記を、アンが生き生きと小説風にまとめた「聞け!風が」(みすず書房)をこの春読んだことから、私も同じバサーストに今回立ち寄って、新たに燃料タンクを大幅に拡張したカタリナ飛行艇の、初の満タン離水テストをしてみることにしました。
 という次第で、今回の飛行コースは次の通りです。
△オセアニック・ギア号 0°N-0°E(赤道とグリニッジ子午線の交点)
   ▼1.6度338nm
◎ガーナの首都アクラ コトカ国際空港DGAAのVOR113.1ACC アクラNDB409AA 05°38'02N-00°09'19E。
   ▼295度1096.3nm
◎ガンビアの首都・バンジュル空港GBYD(戦前の英領セネガル、バサースト)VOR112.9BJ NDB256ND
13°20'17.59N-16°39'19.95W
   ▼330.5度97nm
★セネガルの首都・ダカール空港(GOOY)VOR113.1YF NDB323SDS 14°44'41N-17°28'29W

 …それではまずカタリナの、燃料タンクのお話から入ることに致しましょう。

●不思議なタンクの謎を解く:
 カタリナ飛行艇には妙な癖があります。計5基ある燃料タンクのうち1基は使用できず、スライダを動かしても正常に反応しません。残る4基も、実はそれぞれ異なる3種類の燃料減少率を持っており、均等には消費されません。おまけに、燃料が減って2基がカラになると、残る2基には残量があるのにエンストします。しかもなぜか、右エンジンだけが止まるのです。
 すでに「海鳥の旅・第1回」(今年6月20日)でご紹介しましたように、ルソン島北方のバシー海峡で実際にこれが発生して、からくも不時着水しました。カタリナのオートパイロットも(TatさんのYS-11と同様に)一応、片エンジンが停止した場合は、健全なエンジンの側にバンクを取ってバランスを保ちますが、カタリナのエンジンは空中で停止した場合、なぜかその後も不規則に数秒間ずつ吹き上がる癖があります。このため飛行状態によっては、オートパイロットが追従できず機体が暴れて姿勢を崩し、墜落する恐れもあります。「海鳥の旅」では、私は睡眠中にオートパイロットで距離を稼ぐケースも多いので、これは大問題でした。

 そこで長距離飛行中は1回か2回、スライダを再調整して、不均一に減った燃料タンクのレベルを揃えることにしました。実機でも洋上飛行となれば、航空機関士が盛んにこの種の調整を行うはずです(カタリナの主翼取り付けパイロン内には狭い座席がありますが、あれが機関士席)。しかし、数時間おきに調整が必要となりますと仮眠も出来なくなるため、各燃料タンクの残量から個別の燃料減少率を出し、それぞれ満タン容量に差をつけて、ほぼ同時に使い切るよう工夫しました。ところが前回、実際に長距離を飛ばしてみると、やっぱり残量にだんだん差が付いてきまして、謎は深まるばかりです。
 こりゃ燃料の供給系統に問題があるな、と思ってファイルを精査したところ。PBY-6-devel.xml に、空力・操縦関係のデータと共にエンジンに関する記述が見つかり、どのタンクから両エンジンに供給するかを示すfeedというタグが、左右エンジンで異なっていました。
左エンジンは
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で、右エンジンが
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となっています。つまり実際は使用できない(実は、ほぼ容量ゼロにしてある)4番タンクが、誤って右エンジンに接続されており、また0番タンクが、左右両エンジンに繋いであります。このため、

・0番タンクは、エンジン2台の共用なので急速に減る。
・1番と2番タンクは、いずれも右エンジンだけが使うので、減り方が同じである。
・3番と4番タンクは左エンジンだけが使うが、実際は4番は最初からカラなので、
 残る3番タンクの減少率は、1番と2番より多い。

…ということが分かりました。
 ここまで来れば、対策は簡単です。私は4番タンクを含む全タンクの容量を、デフォルトより一回り大きい4000Lbsに統一し、すべて両エンジンに繋ぎました。これで当初は12000Lbsだった満タン容量が20000Lbsまで拡大され、(もしこんな過負荷でも、離陸できるなら)念願の24時間を超す滞空も実現しそうです。最後に燃料消費量のテストをしたところ、全タンクが完全に均等に減っており、飛行中にスライダを再調整する必要も、片肺停止の恐れも無くなりました。この満足感は、なかなか大きかったです。
 ちょうどオセアニック・ギア号に出逢ったばかりですから、仮想世界では、支援船の力を借りて洋上で改修をした…という気分ですね。

●緯度経度ゼロ点から、バンジェルへ:
 さて離水。コース上は追い風です。さらばオセアニック・ギア、「世界の座標原点」を後にします。
あれはFlightGearの、過去のどのバージョンだったでしょうか…この、緯度経度ゼロ点に機体を出現させて真上を見ると、高度数千フィートの中空から無数の飛行機が、数秒間隔で出現しては東西南北へ飛び去るという、非常に面白い現象が見られました。私は猛烈に驚いて、ほんの数秒間だけですが、
    「なるほど、FlightGearのAI機は、全部ここで生成されて、世界中へ散っていたのか!」
と感心しました。もちろんそんなはずはなく、一種のジョーク・プログラムだったようですけれど、いずれにせよ「世界の座標原点」ならではの洒落ですね。当時の写真を探したけど、出てこなくて残念です(^^;)。

 燃料を半分だけ搭載し、ほぼエンジン全開で207KTASをマーク。燃料流量は738Lbs×2という恐ろしい量ですから、搭載量10000Lbsですと6時間40分くらいしか保ちません。それでも1200nmくらいは飛べるので、仮眠抜きの今回はずっと、こうした高速モードを使いました。
 VORでアクラを捕えて降下。海沿いの小さな都会です。せっかく飛行艇なのだからと、しばらく海岸に平行に飛んで着水場所を選び、降りてすぐ小さな入り江に乗り入れて、市街の外れにビーチングしました。

 背の低い、巨大な円形建築が幾つもあり、ヘリのローターみたいなものが回っています。もしかすると…浄水場でしょうか? タキシングの足が非常に重く、まともな地盤ではない模様で、GoogleEarthで調べても、沼みたいな所です。機体が何とか動くのを幸い、さっさと方向転換して海に飛び込み、一気に離水。迷わず空港へすっ飛んで着陸しました。しかしここも、滑走路脇に2機の輸送機が、カーゴドアを開いたまま、荒廃した雰囲気で放置されており、ゾウの墓場のように陰気です。街は結構きれいなんですが。余談ながらアクラは、野口英世が黄熱病で亡くなったところでしたっけ。

 日を改めてアクラから、今度は一転して95KIAS(110KTAS)でスローフライトを行い、燃料の食い延ばしを図りつつ1096nmを飛行。仮眠を挟んで約9時間ののち、ガンビアの首都・バンジュル空港GBYDへ到着しました。広大なアフリカ西部の南岸を進みながら、かなり快調にNDBの方位線をクロスさせて位置を出し、最後に現地の空港VORを拾って、滑走路方位にセットしたラジアルを頼りに夜間着陸。レンブラントを使っていたので、最後は着陸灯が滑走路を照す中で、快適なタッチダウンとなりました。

●「無限の滑走路」さえあれば、飛べるのか?
 この航程ではタンク改修後初めて、過去の満タン容積を超える15000Lbsまで燃料を搭載して飛行。アクラの滑走路を48秒も走ってやっと浮きましたが、燃料の減り方は全タンク完全に均一で、さらに消費して軽くなる分の燃費改善を計算に入れると、23時間くらいは飛べそうです。となると満タンの20000Lbsにした場合は、優に24時間を超えるわけですね。問題はそんな重量で、離陸或いは離水ができるかどうかです。

 航空史の逸話の宝庫である1930年代には、水上機や飛行艇が大活躍しました。その理由は昔から「海上なら、無限の距離を滑走できて便利だからだ」と言われてきました。そう言えば、そうなんですけれど…長距離飛行で燃料が重い時などは、本当に何キロも走ったのに、離水できなかった例もままあります。
 この場合は通常、燃料を少しずつ捨てて機体を軽くするのですが、それでもダメですと、風向きや波高が変わってから再挑戦したり、荷を減らすことになります。前述のリンドバーグ機の場合は、補助燃料タンクや係留用の錨、一部のスペアパーツ、防寒具など大量の装備を降ろして、やっと離水に成功しました。ニューヨーク港やグリーンランドでは気温が低く、空気密度が高くて問題なかったのに、赤道近くまで南下すると猛暑のため、エンジン出力も揚力も不足したのでしょう。
 もう一つ例を挙げれば。前述のメルモーズは1930年、単発の長距離郵便機/小型旅客機ラテコエール28型を水上機にした実験機「ヴォー伯爵号」(投稿画像は、よく似た29型を改造)を使って、ダカール北方にあるサン・ルイからブラジルのナタールまで、南大西洋横断の郵便飛行初テストに成功しました。しかし大量の燃料で過荷重となった機体を持ち上げるには、単発650馬力では非力で、やはり離水に苦労しました。ことに帰路は強風下でもなかなか離水に成功せず、場所や気象条件を変えながら、実に53回目の試みでやっと浮揚しています。水上で「滑走距離が無限」であることは、決して万能ではないのです。

●2万ポンドの燃料を積んで離水:
 FlightGearの機体は、いずれも離陸性能が良くて、かなり思い切った過荷重状態にセットしても、離陸できなかった記憶はほとんどありません。MSFS2000向けに作られた「セントルイス号」に、実物通りの満タン重量を与えてみたら、羽田の滑走路を使い切っても飛べなかった覚えがありますが、FlightGearではまず、そんなことは起きませんでした。しかしながら従来、満タンで12000Lbsだったカタリナの燃料搭載量を、今回は一気に20000Lbsまで増やしましたので、さすがに飛べるかどうか心配でした。そこでテストのため、バンジュル空港GBYDで起動。飛び上がってすぐ海に降りようと思ったのですが、機体は最初から海上に出現しました。水上機用のシーレーン(滑走帯)が、市街地のすぐ南の湾内に設定されており、強制的にそっちで起動してしまうようです。

 デフォルトの燃料搭載量10000Lbsで、軽く離発着を試みたあと。市街地の北に回って搭載量を15000Lbsに増やし、離水試験を実施。70Ktまでは加速しにくかったものの、滑走55秒で少々強引にローテーションを掛けたところ、あっさり飛び上がりました。さらに満タンの20000Lbsまで増量。46秒走ったのち、機体を空中に持ち上げることは出来ましたが、この時はいくら機首を上げても、海面すれすれの高度を維持したままで、翼端フロートが折りたたみ可能になる100ftまで上がることは出来ませんでした。グラウンド・エフェクトが発生する高度域にとどまったまま、上に出られない感じです。がっかりして着水し、燃料を18000Lbsに減らしました。

 改めて観察すると、海上には150度11Ktの風が吹いていました。さきほどは地形の関係で無理だったのですが、今の位置なら風上へ滑走が可能です。試してみると、38秒でちゃんと浮揚しました。スティックを抑えて速度を稼ぎ、だましだまし100ftを越え、80Kt強を維持しながらフロート収納。再び着水して燃料を19000Lbsまで増量してテストしたところ、またまた滑走29秒で浮いて、うまく上昇につなげることが出来ました。
 最終目標の満タン離水に再び挑戦しますと、今度は上昇が可能でした。要は風向きと風速と、慣れと操縦技術が問題だったようです。よしよし、これで20000Lbsの燃料を持ち運ぶことが可能になりました。

●ダカールへ:
 バンジュルから、次の目標ダカールに向かって離水。2時間弱の仮眠から目覚めると、80nmほど行き過ぎていましたので反転し、無事に主滑走路へ着陸してランプイン。
 ダカールは、西へ大きく張り出した岬の付け根にある都市です。一等地に巨大な空港が広がって、その周囲を取り巻く形で市街地が形成されており、門前町ならぬ「空港町」ですか。さすがは…かつてのフランス・南米航空路の一大拠点です。でもこの空港の、まとまりのなさは、なんなんだ? 2本の滑走路は相当離れているし、エプロンとの間を繋ぐ誘導路も、めったやたらと無計画に引かれた印象で、空港の全体像を一体どうしたかったのか、よく分かりません。昔は水上機基地も併設されていたはずですが、場所は不明です。

 ともかく、これで私のカタリナは「大西洋へのドア」に手を掛けました。さらにリンドバーグ夫妻の足跡を逆にたどって、350nmほど沖にあるカーボ・ヴェルデ諸島の首都、プライアに進出したかったのですが、すでに季節は10月です。アメリカ大陸到着後は大きく北上するつもりですので、うかうかしていると、今後利用できる日照時間はどんどん短くなります。もうあまり、寄り道は出来ません。さて次回はどうしよう…。

■追伸:日本シーナリーのトラブル■
 toshiさんのご報告で、東京にスカイツリーが加わったと知って先日、さっそくe130n30のシーナリーを更新。ところがUFOで見物しようとしたところ、日本列島の風景が途中で途切れてしまいました。

 詳しく言いますと。誤ってRJOOで起動してしまったので、そのまま超高速で羽田へ向かったところ、伊勢湾でシーナリーのタイルが途切れ、海も消えてしまい、前方はもやだけになりました。逆に羽田で起動して伊丹へ飛んでみても、やはり伊勢湾に近づいたあたりでシーナリーが途切れます。よく見るとモニター・ウィンドウにエラーが出ていて、私がダウンロードして追加した、セントレアRJGGに詳細な空港施設を追加するxmlファイルに書かれた、コメント文の「/*」マークが「読めない」と指摘されていました。v280では文法が少し変わったようですね。取りあえずコメント文をすべて削ると、東京=大阪間のシーナリーは、再び無事に繋がりました。同じトラブルをお持ちの方がおられましたら、参考になれば幸いです。
 この状態では、セントレアは航空機と支援車両、照明灯、タンク、無線塔などは見えたものの、ターミナルビルが消滅しています。スペインの作者さんのホームページにも、まだv280用の改良版がないようで、バーションアップが待たれます。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-10-17 1:20 | 最終変更
Hyde  長老 居住地: ジョージア  投稿数: 169
引用:
ターミナルビルが消滅しています

hideさん、Hydeです。
RJGG_hangars.xml、RJGG_Terminal.xml、RJGG_Tower.xml のコメント文がiso8859-1で書かれているため、oにアクセントのついた文字が読めなくなっているためです。 この文字をoに変更するか、hideさんのようにコメント文を削除するか、一旦iso8859-1で読み込んでUTF8でセーブすれば出てくるはずです。
ターミナルが出てこないのは、RJGG_Terminal.xmlの修正を忘れていませんか?

作者にも連絡して、直してもらったはずなのですが、まだそのままのようですね。 ラテン語圏の方は、マルチバイト言語に関しては疎いようです。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-10-17 3:32
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
Hydeさん、hideです。
 RJGGの件は、全くご指摘通りでした。大変ありがとうございました。
私の環境では、C:/FlightGear/data/Models/Airport-RJGG のなかのRJGG_hangars.xml、RJGG_Terminal.xml、RJGG_Tower.xml のコメント文を削除すると、空港は完全に表示されました。

 この/data/Models/Airport-RJGG フォルダは以前、空港単体を追加で登録したものです。現在は最新版の e130n30 シーナリーを入れてありますので、RJGG が事実上ダブってインストールされているものの、起動時はこの古い追加の /data/Models/Airport-RJGG フォルダの内容が優先的に読み込まれているものと判断し、試しにフォルダごと取り外してみました。すると空港の建物が読み込まれないエラーが再現されましたので、ご指摘通り e130n30 シーナリー内の空港は、まだ修正されていないと思います。
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なし 地中海の門・ジブラルタルに到着

msg# 1.4.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2012-12-11 18:53 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。長い間、ご無沙汰を致しました。
 私の飛行艇世界一周「海鳥の旅」は10月中旬、アフリカ西端・セネガルの首都ダカールに到着しましたが、この秋は何かと多忙で、その後は北大西洋のアゾレス諸島・サンミゲル島までノンストップ飛行をしたきり、しばらく停滞しておりました。さらに2回の飛行でリスボンを経由し、先日やっとジブラルタルに着いたところです。これらフライトのご紹介も、なかなか手を着けられませんでした。
 当初は、アゾレスから一気に約24時間飛んでニューヨークに進み、その後は未体験ゾーンのカナダ北極圏に広がる多島海を堪能して、アラスカ方面へ向かうルートを思い描きました。が、すでに冬至が近づき、このまま北極圏へ進んでも日照時間が短く、陰鬱な「たそがれの国」ばかり飛ぶことになりますので、取りあえずヨーロッパで越年することにしました。

 なかなか続編が書けなかったのは、以上のフライトと並行して取り組み中の、Excel航法計算シートの改良が、うまく進まなかったからでもあります。改良の焦点の一つは、コースから離れた位置にあるVOR局を使って、機体の正確な現在地を出すことです。
 従来のフライトは、VORを飛び石伝いに結ぶ飛び方が中心でした。区間ごとにDMEをにらんで「あと何nm」って感じですね。しかし「海鳥の旅」では、洋上に目的地まで一直線のコースを引いて、推測航法を行うケースが主体です。こういう場合、自機の位置は経過時間で推測するわけですが、緯度経度を確認したい時はどうするか。むろんGPSやAtlasを使えば一目瞭然です。が、敢えて使わないとなりますと、一つの手は以前からご紹介した天文航法。もっと簡単に済ますには、コースの近くにある任意のVORを受信して、方位とDME表示から幾何学的に、機体の緯度経度を算出する方法もあります。2008年11月に一度、Excelで実証試験をして有望だった記憶がありますので、これを改良して風による針路補正や、到着予想時刻の算出も自動でやってしまおう、と考えました。FMSによるRNAV(広域航法)を、手作業で行うようなものですね(^^;)。なかなかバグが潰れず苦心しましたが、少しずつ思い通りにワークシートが動くようになってきました。
 そのあたりは、いずれお話しするとして。今回は10月以来の、旅の足跡をご紹介させて頂きます。

●●一気に北大西洋へ:
 アフリカ西岸のダカールから先、どうやってニューヨーク方面に向かうか。航空史にはさまざまな大西洋横断ルートが登場し、どれを選ぼうかと迷っていました。
 .瀬ールから西南西に飛び、南アメリカ東端部のブラジル・ナタールへ直航する。
  洋上飛行の最短ルートだが、ブラジルからNYを目指すのはメチャクチャ遠い。
 ▲汽魯蘋彰澑茲い縫茵璽蹈奪僂慄名紊掘英国からグリーンランド経由でカナダへ。
  飛行自体は楽だが、変針点が多すぎて、睡眠時を含む超長時間の直線フライトが
  組めない。また英国から先は高緯度のため、真冬に飛ぶと暗くて不快。
 K迷臉祥里離櫂襯肇ル領・アゾレス諸島まで無着陸飛行し、さらにNYへ向かう。
  コース前半は約1450nm、後半は2230nmくらいあるが、天候を選べば可能。

 カタリナの満タン燃料は、本来7040Lbs(約1265gal)ですが、私の「水薙」(みずなぎ)号は20000Lbsまで拡張してあり、起動時に半分だけ入っています(これでも、大抵のフライトには多すぎますが)。満タンにすると重くて離水に苦労するのは、前回ご紹介した通りですが、わざわざこんな仕様にしたのは、まさに大西洋や太平洋を渡るため。また帆船時代から、大西洋横断の中継基地だったアゾレス諸島も、どんな風土かちょっと興味があります。よーし、このコースを行きましょう!!
◎セネガル首都・ダカール空港(GOOY) VOR113.1YF NDB323SDS 14°44'41N-17°28'29W
   ▼342.41度1446.99nm
◎ポルトガル自治領アゾレス諸島(サンミゲル島)首都ポンタ・デルガダ空港LPPD
 37°44'N-25°41'W
 実際のフライトに使うラームライン(念のため注)で、針路と距離を再計算すると、こんな数字になりました。コースの序盤3割くらいは、西アフリカ沿岸から徐々に離れつつ北上します。その後は、カナリア諸島やマディラ諸島のはるか西をどんどん進んで、一気にスペイン南部の緯度まで達し、北大西洋のど真ん中。やがて小さな島に到着…という直線コースです。
 ■注■:ラームライン(Rhumb line=ラムラインとも表記)は、針路を一定に保ったまま地球上を進んだときのコース。一般的なメルカトル図法の地図では直線、地球儀の上では(特に高緯度・長距離の場合)、わずかに赤道側へふくらみます。刻々と針路が変わる大圏コースに比べて保針が非常に楽なので、船でも航空機でもラームラインを描いて航行するのが航法の基本です。日本語では等角航路、あるいは航程線。

●●超過重状態でダカールを離水:
 なにしろ洋上の長距離飛行ですので、まずダカールで下記のMETAR情報サイトを閲覧して、天候と予報を確認しました。
 http://ja.allmetsat.com/metar-taf/japan.php
 出発地の風は北北西5Kt、今後の予報8Kt。西のカーボベルデ諸島と、はるか彼方の目的地・アゾレス諸島や周辺地域についても、現在と数時間後の天候を調査。いずれも微風か弱い風です。GoogleEarthで見ても、コース上にほとんど雲の画像なし。こりゃもう、行くしかないですね(^^)/。
 UTC1110時、ダカール空港で起動。アゾレス到着は夜になるため、着陸灯が使えるようにレンブラントを設定しました。リアルウエザーの天候は10000ftの風10度7.7kt、scatterdの雲800ft。風は5度7.5Ktですから、飛行速度が115KTASとして、航法ツール「virtual E6-B」で修正針路を計算すると343.5度、WCA(修正角)は1.5度右。対地速度は107.3Ktでした。当然これらのデータは、飛行中に何度も再計算が必要です。
 軽負荷のままいったん離陸し、空港北側の海に着水。1122時、市街地の外れに機体を寄せて給油し満タンに。2万ポンドも搭載すると、最初はとても高度が取れないので、5000ftの低空を飛ぶ予定です。

 1129時に離水。重い機体が65Ktを超えるのに1分半ほど掛かりました。70Ktで何とか水面を離れ、オートパイロットに切り替えたものの、どうも不安定に蛇行します。これはカタリナの悪癖ですね。やっと1500ftに達したところで、ありゃりゃ…機体が水平姿勢のまま、どんどん高度を喪失。こりゃ失速だ、すぐ機首を押し下げて100Ktあたりまで加速しましたが、まだ高度が落ちます。結局は水平姿勢のまま、バシャーン!!と海面に舞い戻ってしまいました。一種の「パンケーキ」ですかね、こりゃ。カタリナは例によってタフで、事故判定を食わなかったのが幸いです。
 ドキドキが収まってから再離水。気速計と高度計、海面をにらんでスティックを握り、マニュアル操舵で慎重に高度を稼ぎます。1143時まで掛かって、高度はやっと500ft。まるで重すぎた巨人飛行艇ドルニエDoXです。100KIASまで加速して機体が安定したので、プロペラピッチを少し立てて2300回転に落とし、燃料の流量を確認。毎時436ポンド×2くらいだから、23時間飛べる計算です。

 ダカールのVORが当分は使えると思っていたら、わずか30nm進出した1148時に、早くもDME表示が途切れ始めました。まあ、たったの高度500ftですから…30nmも離れたら、VOR局のアンテナがそろそろ地球の丸みの影に入るころでしょうね。FlightGearの地球は、機上からの視界ではテーブルみたいに平らですが、航法上はちゃんと球(もしくは回転楕円体)になっております。さて、高度をもっと上げなくては。上昇率はオートパイロット任せ(毎分500ft)だと過大で危ないので、高度保持を外して手動でエレベーターを操作し、少しずつ昇っていきました。(カタリナのAPは、上昇率保持モードが不調です)
 ■注■:パンケーキとは、地表すれすれで失速させて対地速度を殺し、機体を平らに落すこと。固定脚機による不時着水(海面に足を取られると、急激に機首を突っ込み危険)などに使う技。昔の飛行家の著書に出てくるほか、10年ばかり前に舞鶴で、元水偵乗りのおじいさんからも、この言葉を聞きました。

●●無線で測位を重ね、はるかなアゾレスへ:
 このフライトの初期段階は、アフリカ西岸沖を飛びます。沿岸や奥地に並ぶVORやNDBを利用して、機位を出してみることにしました。最初に試したのは、二つのNDBを受信して、チャートにそれぞれ方位線を記入し、交点が自機の位置…というやつ。Atlasはチャートの代用品として最高ですが、こういう時に、直接ものを書き込むことが出来ないのが残念です。そこで少し、工夫をします。

 以前ご紹介したフリーウェア「斜めものさし」に付いている、マウスポインタの方位・距離表示機能を使って、NDBの受信方位線の交点を探る方法を試しました。「斜めものさし」の目盛りの原点を、Atlas画面中心の赤い「+」マークに合わせておき、ポインタでAtlas画面上の任意の目標物を指すと、自機から目標物までの方位と距離(縮尺に合わせて設定自在)が表示されます。NDBを2局受信して、RMIの針が指した方位がそれぞれ45度と120度だったとしますと、Atlas画面上で局にポインタを合わせた時、45度と120度が表示されるようにAtlas画面をドラッグして「+」マークの位置を決め、Atlasのデータウィンドウから緯度経度を読み取る、という手順になります。
 ただしRMIの表示は磁気方位ですから、実際は現地の磁気偏差を調べて、真方位に換算する必要があります。一番簡単かつ確実な方法は、internal properties から/environment/magnetic-variation-deg= の数値を読むことです。例えば「−5」だったとしますと、磁気偏差は西偏(磁北極が西寄り)5度ですので、正しくはRMIの表示方位(磁気方位)からそれぞれ5を引いた40度と115度が、Atlas画面上で使うべき真方位です。(この換算が面倒でもあり、私は最近カタリナのRMIを真方位表示に改造してしまいました)

 以上のAtlasを使った測位テクニックを思いついた時は、いい気分でしたが…何度かやってみますと、2局を同時に探る作業には誤差が大きいことが分かって、VORを1局だけ使うことにしました。Atlas画面上のVORにポインタを当てた時、RMIとDMEが示す通りの方位・距離が表示されるように画面をドラッグし、「+」マーク位置の緯度経度を読むわけで、このほうが簡単かつ精度が高そうです。
 こうしてフィックス(自機の実測位置)が得られたら、そこから目的地の緯度経度への方位と距離を計算し直し、新たに正しい針路を決めます。次に風向風速を調べて、この針路を補正する必要があります。本来はチャート上に実測位置と、その時刻における予想位置を描き込んで線分で結び、長さを飛行時間で割ると、風向風速の平均値を示すベクトルが手に入るのですが、むろんAtlas画面上では、こうした作図は不可能です。また、私が長らく愛用している航法フリーウェア「virtual E6-B」でも、風向風速が分かっている場合に補正針路と対地速度を出すことはできますが、逆にフィックスと予定針路から風を求める機能はありません(これは数少ない欠点で、非常に残念です…本物のE6-B計算盤なら可能なのですが)。
 そこで私は、メニューの Environment/Weather から頻繁に風のデータを調べ、そのつどvirtual E6-Bで、WCAやGSを算出し、オートパイロットに新たな機首方位を入力しています(ただし現在開発中のワークシートでは、これらの計算も自動化しました)。以後、洋上を飛行中はこの一連の航法作業を繰り返すわけですが、VOR/NDB局の不感地帯でも、周囲の雲の高度や形が変化したら、ほぼ必ず風向風速が変化していますので、そのつど風をチェックするとベターです。

●●確かに位置は出るのだが:
 こんな風に通算3回の測位を行い、風のチェックと針路修正計算も頻繁に繰り返して、到着予定時刻の関係で高度・速度を変えたりしながら、17時ごろまで飛んでいったん仮眠。0033時、目を覚ましてパソコンの前に戻ると、機長席の真っ正面に大きく、北斗七星が横たわっていました。
 おお、北半球に戻ったことを実感するなあ。と思っていましたら、地上にもたくさんの「星」があって、徐々に後方へ移動しています。おっと、もうアゾレス諸島なのかな? 他に陸地はないはずです。眠い頭で時計と速度と飛行計画を参照し、NAV-1を確認すると、西方22nmに目的地サンミゲル島の空港VORがありました。まさにビンゴで、私は東西に細い目的地の島を、南北に横切る瞬間に、ぴたりと目が覚めたのです(^^;)。
 睡眠中に約700nm飛んで22nmのずれは、約3%の誤差ですから、洋上推測航法としてはそんなに悪くないと思います。空港付近1800ftにfewの雲がありましたが、下に抜ければ視界は上々で、市街地とABN、そして滑走路をはっきり視認。ILSはありませんが不要で、夜のポンタ・デルガダ空港に難なく着陸しました。カタリナ改の燃料は45%も残っており、風次第では3000nm近く飛ぶことも、夢ではないかもしれません。

 後日カタリナで散歩してみますと、空港そばの小さな市街は、島で最大の港町のようです。1919年5月、アメリカ海軍のカーチスNC飛行艇(3発機で6人乗り)が4機で島伝いの大西洋横断を試み、NC-4号機だけが成功しました。NC-2は早い段階で部品取りのため解体され、NC-1は洋上不時着して機体放棄。NC-3も不時着水したものの、200nmを自力で滑走して、このポンタ・デルガダの港にたどり着きました。まさに「不屈の航海」ですが、複葉機と言っても非常に旧式の、巨大な箱凧みたいな壊れやすい構造でしたから、到着時は主翼も尾翼も失っていたそうです。
 サンミゲル島は小さな火山島で、西の端にあるセテ・シダデス山では、美しいカルデラ湖を見ました。1コマだけ、「投稿画像」にアップしておきます。

 ダカール=アゾレス諸島間のフライトは快調でしたが、後から調べると、Atlas画面上でVORを基点に測位する方法は、それなりに誤差がありました。VORからの距離が70nm程度ですと、緯度経度とも5分内外の誤差で済みますが、130nmくらいまで離れると、緯度で最大30分もずれた例もあることが判明。距離にすると30nmの大誤差です。遠い局を画面内に納めようとすると、Atlasの縮尺を大きくせざるを得ず、マウスによるプロットの誤差も大きくなります。また大縮尺になればなるほど、Atlas地図自体の歪みも目立ってくるはずで、雪だるま式に誤差が増えるのでしょう。かくなる上は、やはりExcelを使って、VOR局の緯度経度を基点に、地球を回転楕円体とみなして、航海用の関数で針路ベクトルの足し算をきっちり行い、機位を出すしかないと思いました。

●●リスボン到着、郊外には癒し系の田園風景が:
 そのための計算表をぼつぼつ試作し始めましたが、多忙で体調もあまり良くなく、休日にも作業が進まないまま日が経って、私はNY直航の計画を見直し始めました。ふと思い出したのが、tigerさんが投稿された「ビバ!イベリア半島」の画像です。
 私は2008年3月、西回り世界一周の途中で、サンテグジュペリが若いころ飛んだフランス=スペイン=アフリカ便の郵便飛行を味わおうと、ツールーズ=バルセロナ間のピレネー山脈越えコースをかなり詳細に再現して、スタンプSV-4複葉機で辿り、本連載でご報告しました。FlightGearのイベリア半島はあの時、南岸をちょっぴり飛んだだけで、スペインの内陸部もポルトガル領内も全く知りません。せっかく詳細なシーナリーがあるのなら、ちょっと見に行くかな。久しぶりにヨーロッパを飛びたかったしな。ついでに年明けごろまで過ごすかぁ…という次第で、私はアゾレスから急きょリスボンに向かうことにしたのでした。

◎ポルトガル自治領アゾレス諸島(サンミゲル島)首都ポンタ・デルガダ空港LPPD 37°44'N-25°41'W
 VOR114.5VMG NDB351PD(←無線局の種別・周波数・コールサインの順)
   ▼84.93度780.85nm
◎リスボン空港LPPT VOR114.8LIS 38°53'22"N-09°09'45"W
 UTCの1600時ごろ離陸し、定針後に仮眠。2540時(日本時間の11月1日午前10時40分、私は休み)に無事リスボンにILSを使って着陸しました。この時、任意のVORを基点とする測位も試したのですが、まだまだワークシートに問題が多くて、算出経度に大誤差が出たり、ラベルのセルには正常に「VORフィックス」と表示しているのに、データのセルには(経過時間と速度、風から自動算出した)推測位置が表示されたりして、散々でした。もう少し仕上がったら、またご報告しましょう。

 期待のイベリア半島シーナリーをインストールし、指定通りにプロパティの変更を行うと、風景のテクスチャーが少し変化しました。新しいファイルが加わったのではなく、割り当てが変更になったようで、特にcrop(耕地)の描写が詳細になりました。デフォルトでは、黄緑と濃緑色の組み合わせで新緑の感じがして、私は大好きなのですが、変更後はやや地味で色彩の種類が増え、あぜ道みたいな描写も加わって、ずいぶんリアルになりました。試みに、メニューから Random vegetation 機能をオンにしてレベル最大にすると、あぜ道や農家(?)の周囲に大きな針葉樹が生い茂って、気分はまるで洋風トトロの世界です。いいなぁ。こんな景色の中を複葉機で低空散歩したら、癒されますねぇ。残念ながら私の環境では、フレームレートが1桁まで落ちますので、常用するのは難しそうですけれども。この風景も「投稿画像」に載せておきます。

●●地中海への門・ジブラルタルへ
 リスボンから南下して、大西洋に出っ張ったサグレス岬を通過し、ジブラルタルを目指します。
◎リスボン空港LPPT 38°46.9'N-09°08.18W
 VORは38.88944400 -009.16277800(VORは小数点形式の緯度、経度。負は南緯と西経)
   ▼192度100.5nm
★SAGRES-VOR 37.08388900 -008.94638900 西がサン・ヴィセンテ岬、南がサグレス岬。
   ▼107度149nm
★VEJER-VOR 36.24718300 -005.97187200
   ▼98度30nm
◎ジブラルタル空港LXGB 36°09’04”N-05°20'59"W

 リスボン現地時間の0708時(UTC同じ)に起動、ここは水上機空港の設定があるらしく、カタリナは湾内にドボンと出現しました。雲なし。まだ夜は明けず朝焼けです。風は300度から10ノット。飛行距離が短いので、燃料は満タンの4分の1に当たる5000ポンドを搭載。0724時、広い湾内を東へ離水します。
 新しいワークシートによるVOR測位のテストをしながら南下。しかし、どうも変なフィックスが出ます。私が愛用するアドオン「航海士のためのExcel用関数集 Navigational Functions」では、船位の演算に「変則60進数」(緯度経度の整数部が度、小数点以下2桁が分、それ以下は分の小数)という特殊な数字表記法を使うのですが、VORの緯度経度を簡単かつ正確に入力しようと、nav.datのVOR/DME一覧表からコピペするようにしたため、ただの小数が混じってしまったのですね。すぐ変換用の関数を書き込んで修正しましたが、なお誤動作があれこれ続出しました。

 ランドマークを使って機位を確定するテストのため、真東へ変針していったん陸岸へ。大きく海に張り出した岬が目に入り、Atlasと照合すると1カ所しか該当なし。ネットで調べるとシネシュ岬というのだそうですが、これを目印に付近を調べると機首の前方に、やはり見間違えようのない河口がありました。そのほとりのノーヴァ・デミルフンテス村という集落の真上を飛んで、チャート(Atlas画面)から正確な緯度経度を得ましたが、これをワークシートのランドマーク専用入力欄に打ち込んでも、なぜかフィックス表示に反映せず、修正針路の計算過程にも移行しません。こりゃ…あかんわ。まだまだ改良が必要です。

 航法テストを断念し、単純なVORトラッキングに切り替えてサグレス岬を通過。0926時、そろそろジブラルタル海峡が目の前です。左に「ザ・ロック」と呼ばれるジブラルタルの岩山を、右手には対岸アフリカ(ポルトガル領セウタ)の山を遠望すると、両者がペアになって、海峡をはさんだ門柱のように見え、古代から「ヘラクレスの柱」と呼ばれています。この海峡はまさに、大西洋と大西洋を細く結ぶ、海のチョークポイントです。
 海峡北側のジブラルタルは1713年以来のイギリス領で、艦隊の根拠地でもあります。イギリス本国はもともと英仏海峡と北海に面しており、バルト海への艦船の出入りがコントロール可能。加えてジブラルタル海峡が支配下にあれば、ヨーロッパの表門と裏門のカギを300年間にわたって、握り締めているようなものですね。バーチャル世界であちこちを飛ぶと、天然の良港や軍事的要衝に都市を造るとか、そこに戦前から幾つも空港を配置しているとか、旧英領の開発の水際立った計画性に舌を巻きますが、当地もその流れの一環です。

 海峡ど真ん中を通過し、左旋回でジブラルタルの小半島に戻って、付け根にある空港上空をフライパス。ぐるりと一周して岩山の上空をすれすれに越え、左旋回降下で風に正対します。滑走路の東端近くを狙って着水するため、フォワードスリップで減速しながら高度を処理し、スムーズに海面をキャッチ。空港敷地内にビーチングして、エプロンでエンジンを停止。こうして水薙号は無事、地中海世界に入りました。
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なし 海鳥の旅新塗装でパリへ

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
 hideです。今年もどうぞよろしくお願い致します。
私の飛行艇世界一周「海鳥の旅」は、パリで新年を迎えました。今回は、地中海の入り口・ジブラルタルからスペインを経由しての旅日記と、新たに開発した航法用ワークシート「AIRNAV-STACK」のご紹介をさせて頂きましょう。

●●私の航法ワークシートの変遷:
まず表計算のお話を。以下が今回のルートです。

◎ジブラルタル空港LXGB 36°09'05N-05°20'59W
   ▼85.6度415nm
◎アルジェ・フアイ・ブメディエン空港DAAG ★VOR112.5ALR 36°41'26N-03°12'56W
   ▼37.4度336.6nm
◎レウス空港LERS ★VOR114.2RES RDB424RUS 41°08'51"N 1°10'02"E
   ▼287.6度104.6nm
◎サラゴサ空港LEZG ★VOR113.0ZAR 41°39'58"N 1°02'30"W
   ▼342.1度107 nm
◎サンセバスチャン空港LESO ★VOR117.9SSN 43°21'23"N 1°47'26"W
   ▼27.6度380nm
◎ル・ブールジェ空港LFPB ★VOR108.8BT 48°58'31N-02°27'21E

 以前はこうした方位・距離のメモをもとに、多機能の航法フリーウェア「virtual E6-B」で風向風速による針路・速度の修正値をいちいち算出していました。しかし2008年秋に天文航法の研究を始め、天測結果を処理するワークシートを試作したことから、次第に風の補正計算もワークシートで行うようになりました。
 計算に使うのは、以前ご紹介しました「Navigational Functions」というフリーの関数集です。本職の航海士さんが開発した、航法や船内実務に利用できる関数60種の集合体で、ナビゲーションに関わる関数の内訳は天文航法が16種、地文航法が7種です。(一応、DL先のアドレスを再掲します)
          http://www4.ocn.ne.jp/~happoone/

 ここで言う地文航法は、いわゆる「地図と景色を見比べて、機位を判断すること」よりも意味が広く、針路と距離、位置の相互関係を扱う幾何学的計算を指します。これらの関数を使うと、
「出発地の緯度経度と、目的地の緯度経度から、針路や距離を出す」
「出発地の緯度経度と、針路・距離から、目的地の緯度経度を出す」
といった計算ができます。これらを応用すると、空中航法の一番基礎である「風力三角形」の要素をすべて算出できます。早く言えば「どのくらい風に流されるか、どうすれば補正できるか」が分かるわけですね。

●●風力三角形の要素を、自動計算する:
 例えば、1時間に飛ぶ距離は真対気速度(TAS)と同義ですから、まず自機が現在の針路(TH)で1時間後に到達する緯度経度を算出しておき、次にここを基点として「現在の風向と風速で、風が1時間後に到達する緯度経度」を計算します。そして最初の出発点から、風の到達点までの距離を求めると、自機の動きに風の流れを足したことになりますので、対地速度(GS)が得られます。またこのベクトルの方位は、風で流されながら自機が飛んだ航跡の方位(Track:TR)であり、無風時のTHとの差が偏流角(風で流された角度=Drift Angle:DA)にあたります。
 では次に、風の影響を打ち消すための偏流修正角(Wind Correction Angle:WCA)を考えてみることにします。私は従来、WCAを機械的に「DAと角度は同じで、向きが反対」と解釈していました。風速があまり大きくない場合は、これでも実用上はけっこう役に立ちますが、厳密に言えば誤りです。(例えば、巡航速度と同じ風速を真横から受けた場合、機体が流される角度=DAは45度になりますが、風上側に45度のWCAを取っただけでは風は相殺できず、同時に対気速度を1.414倍に増速する必要があります。しかしこれは恐らく、出力や燃費の点でかなり困難です。増速しない場合の修正角の正解は、45度ならぬ「90度」で、機体は風上に機首を向けて空中停止することになります…)
 正しいWCAの求め方は、作図を使った方法(本物のE6-B航法計算盤も、この原理)がよく知られており、ご参考までに「投稿画像」に略図と説明文を上げておきます。むろん数値計算でも可能で、先日フリーウェア「virtual E6-B」のDLサイト(アドレスは下記)にあるリンクから、英語版Wikipediaの「E6-B」の項目へ飛んだところWCAの計算式が見つかり、さっそく私のワークシートに取り入れました。
          http://www.ivao.aero/training/knowledge/e6bcomputer.asp
 GSを出す計算式も見つかったのですが、Excel上ではどうしてもうまく動かず、どこで入力ミスをしているのかも不明のままで、ちょっと残念でした。しかし、先ほどご紹介しましたように、ある緯度経度を基点にベクトルを継ぎ足していく方法で算出できますので、問題はありません。

 という次第で…現在使っている新たなワークシートは、おおむね以下の機能を持っています。
(投稿画像の「新塗装でパリへ」に、サンプル画像を載せておきます)
・出発地と目的地の緯度経度を入れておき、任意の時刻(左端の赤字)を打ち込むと、
 その時刻の Assumed position(推測位置)や目的地への残距離、所要時間、到着予定
 時刻などを算出します。
・風向風速が入力してあれば、自動的に補正値を出して各項目に反映します。
・任意のVOR局の緯度経度、受信方位、DME値(画面右、切れています)を入力すると、
 フィックス(実測位置)の緯度経度を算出し、「Assumed position」の項目名表示を
 「●VOR-FIX」に書き換え、この地点を基点に、目的地への針路・距離を新たに再計算
 します。(自機がVORラジアルをトラッキングする必要はなく、受信さえできればOK)
・天文航法か地文航法で確定位置を得た場合は、専用セル(画面右外)に緯度経度を入力
 すると次行に転載し、項目名の表示を「★Selestial-FIX」または「■Landmark-FIX」
 に書き換えます。

●●よりシステマチックに、よりフレキシブルに:
 私の航法ワークシートは、最初に作った2008年の時点では、パソコン1画面分の広さにセルを配置し、1回の天測データを処理する機能しかありませんでした。しかしワークシートというものは、右へ右へと必要なだけ列を伸ばして、すべての機能を1行にまとめ、この1行を必要に応じて下へ下へとコピペして、幾らでもデータ量を拡張できなくては詰まらない…ということが次第に分かってきたので、2011年7月〜2012年1月にご紹介させて頂いた、グリニッジ=明石間「子午線の旅」フライトのころから、コピペで拡張可能な計算表に改良し、天測計算以外に区間飛行距離や針路の算出、風力補正なども出来るようにしました。このワークシートはかなり便利でしたので、今回の「海鳥の旅」フライトにも使ってきたのですが、前述のようにWCAの定義が不正確だったり、若干の問題点があって、少しずつ改良を加えてテストしていました。

 現在のものは、専用ソフトの導入で不要になった天測計算部分を外す一方で、新たに到着予定時刻が表示できるようになるなど、汎用航法計算のワークシートとして完成度を増しました。機能面だけでなく、ダミーの緯度経度をたくさん試験入力して、FlightGearの Route manager や virtual E6-B とコース計算の結果を比較し、計算式の一部を改良しました。具体的に言いますと、「Navigational Functions」は距離計算をする場合、1nm(ノーティカル・マイル=海里)の定義を「緯度の1分角」とするか「1852m」とするか、選択が可能になっています。1海里の元来の定義は1分角ですが、現実世界では現在「国際海里」(正確に1852m)でほぼ統一されているそうです。今回のテストでは、FlightGear Ver2.8 は1852mを、また virtual E6-B は1分角を採用していることが分かりましたので、Navigational Functions の計算式にも、1海里を1852mとするオプションを付けることにしました(デフォルトでは1分角です)。両者の差は、赤道から北極までの距離を計った場合でも10nm弱しかないのですが、同じワークシートを作るのでしたら、やはり正確な方に合わせたいものです。また今度のワークシートは、コピペ拡張も一層やりやすくなったことから、「幾らでも積み重ねられる航法計算表」という意味で、私は「AIRNAV-STACK」と呼んでいます。

 これで航法計算表は完成かと言いますと、まだまだそんなことはなく、改良が続きそうです。現在のワークシートは、「雲の形が変わった! ということは風が変化したな。針路を修正しよう」とか、「岬の真上を飛んで、位置が確定できた。目的地への針路を再計算しよう」といった場面には非常に便利で、素早くフレキシブルに対応できますが半面、特色の一つであるVORを使った測位機能にしても、いちいちVOR局の緯度経度を入れる必要があり、まだ各種の操作が面倒です。そのため現在は、FlightGearが持っている「nav.dat」データのうち、VOR-DME部分の約3700行を取り出して、テキストファイルの形でデスクトップに転がしておき、ここから必要な数字をコピペしていますが…理想を言えば、このデータを丸ごとワークシートに貼り付けてしまい、局名を打ち込んだら自動的に、必要なセルへ緯度と経度を転送したいところです(可能なら、空港についても同様に!)。

●●地中海西部を飛ぶ:
 では、旅日記に移ります。
ジブラルタルで、カタリナ飛行艇を起動。天候は800〜1500ftにfewとscatterd、brokenの雲。風は10000ftで110度6.4Ktでした。飛行距離が短いので、燃料は満タン3割の6000ポンド搭載とし、機体を軽くしました。

 UTCの0845時(現地は+1時間)に離陸。左旋回上昇で10000ftまで上がり、150KIAS(174KTAS)にセットして空港上空を0853時20秒に通過、予定針路に定針します。METARの定義では低空にしか雲がないのに、なぜかこの高さでも機体の上下に雲が散らばっており、天測は出来ないし、地文航法にも不便なスタートとなりました。ただしコース沿いにVORステーションがどっさりあるので、気にはなりません。新しいワークシートによると、最初の航程の所要時間は約2.47時間、アフリカ北岸・アルジェへの到着予定は、UTCの11時13分27秒と出ています。よしよし、なかなか便利です。次にinternal properties を開いて燃費を確認。最初は618Lbs/h(ポンド/毎時)×2でしたが、定針後しばらくしてプロペラピッチを最大にすると、533Lbs/h×2くらいまで減少しました。高速低空飛行なのに、3割燃料でまだ6時間も飛べるのは有り難いことです。

 間もなく推測位置の自動計算結果が、経度で11nmくらい狂っていることを発見。計算式をチェックしましたが合っており、少々焦ったものの、離陸時間を航法上の出発時間(空港上空通過時)と間違えて入力したためと判明し、やれやれです。ではVOR測位の練習を開始しましょう。
 0930時、スペイン南岸・アンダルシア州のアルメリアVORを取ってみました。モールス信号の「AMR」をヘッドホンで確認、受信方位は50.3度でDMEが56.7nmでした。これをワークシートに入力すると、計算結果は北緯36度13分42秒、西経3度9分42秒で、正解は北緯36度14分40秒、西経3度10分41.9秒だったから、それぞれ1nmのずれで済みました。実用レベルどころか、大満足の結果です。ただし2回目の試験測定では、推測位置が表示されなくなりました。のちに計算式のセル番地が、途中の行から間違っていたことが判明しましたが、飛行中はまだ原因不明だったので、いったんVOR測位テストを打ち切ることにしました。わざわざアフリカ北岸へ寄り道する元気も失せて、さっさとスペイン本土に上がろうと北へ変針し、レウスへの中間地点・アリカンテを目指しました。
 1108時、もやの中から不意に陸岸が見え、1分半後にアリカンテの空港を視認。Atlas画面(FlightGear非連動)の空港表示にカーソルを合わせて緯度経度を読み、ワークシートに打ち込むと、ちゃんと「■Landmark Fix」の画面表示が出ました。次の中継地レウスの緯度経度や風向風速を入れ、コースを表示させます。残距離183nmで、ETA(到着予定時刻)は12時25分。
 1219時に所用でポーズを掛けて、1422時に飛行を再開。やがて空港のぴったり中央をヒットしたうえ、着時間はETAの1分後という、なかなか素晴らしい成績でレウス上空へ。ぐるりと回って1242時着陸。燃料残は2000Lbsでした。

●●ピレネー山脈西方を、ビスケー湾へ:
 こうして着いたレウスは、カタルーニャ地方の中心都市・バルセロナのすぐ西にある街で、私のルートはここから内陸に入ってスペイン東部を横断し、ビスケー湾に向かいます。飛行に取り掛かる前に、今後のコースを新しいワークシートに入力し、架空の時刻や速度を打ち込む模擬試験を重ねて、若干のバグを修正しました。一通り機能をチェックし、さらに以前飛んだダカール=サンミゲル島間のコースデータでも、同様のダミーランを実施。従来は1区間で一つのワークシートを使ったのですが、ワークシートの途中行から目的地を書き換えても、計算に支障がないことが確認でき、更に航法が便利になりました。

 日を改めましてUTCの0857時、レウスでカタリナを起動。風は310度から16Kt、雲は5700ftにscatterdです。前回到着後、駐機場所を起動時のデフォルト位置に指定していたので(本人は忘れてましたが)、その通りにエプロンからスタートとなりました。航法の準備を整えて、風下の滑走路端へタキシング。普段はいきなり離陸位置に機体が出現しますが、エプロンから動き出した方が、「ウィンド・ソック(吹き流し)は、ああ…あれか。すると風下はあっちだな」と少々頭を使ったりする分、幾らかリアルで面白いですね。
 0906時に離陸し、VORを使ってリバーサル・ディパーチャーを実施。まず針路245度で空港を離れ、高度5000ftに達した4nm地点で反転。さらに空港の反対側へ6nm進出して再反転し、巡航高度の10000ftに達します。最後に空港VOR上空を通過した瞬間が、航法上の出発時刻…というわけです。ここまで快調でしたが、飛行高度を15000ftに変更したところ、カタリナのオートパイロットの悪癖の一つで、昇降舵トリムがずれたまま、うまく水平飛行状態に落ち着いてくれません。そっとスティックから手を放したら、機首を跳ね上げて失速し、左スピンで10000ftまで落下。やっと再上昇して定針したのは0927時で、離陸から約20分も経っていました。向かい風でGSが132Ktしか出ませんが、それでも1014時にはサラゴサに着く予定です。

●●地文航法、まことに快調:
 この日は雲だらけでしたが、時折ちらりと見えた地表が、何度も機位を教えてくれました。
0941時、機長席から左手に細長い湖を視認。周囲がたっぷり見えるように、左翼前縁に装備した天測用フライト・コードラント(自作の航空四分儀)に視界を切り替えて観察し、チャート(Atlas画面)と比較したところ、あっという間に位置が特定できました。私のコードラントは偏流計兼用で、カメラ視野を真下に振れば、並行グリッド入りの視界越しに地表も非常によく見えます。こいつを爆撃照準器みたいに使って、湖の特徴ある屈曲部を拡大表示し、直上通過の瞬間に時刻(0945時15秒)を記録。チャートのポインタを同じ地形に合わせて拡大し、正確な緯度経度を読んでワークシートに入力すると、すぐさま修正針路が表示されました。気分いいなぁ。
 戦前に北極初横断をしたソ連のANT-26長距離機や、戦後のツポレフ系旅客機の一部には、機首に爆撃手の照準席とそっくりの「航法士席」があって、地表がよく見えるのですが、わがコードラントは多分、あれと同じような視野を与えてくれているのでしょう。サラゴサは1022時着の予定。忘れていたプロペラピッチを調整します…。

 1011時、サラゴサ市街が視界に。雲が邪魔ですが空港も視認し、予定より8分早く上空通過。現在地データをアップデートし、VORをサンセバスチャンに切り替えます。着予定は1115時。視界は雲また雲で面白くなく、時折地表の耕作地が見える程度です。この、レウス=サラゴサ=サンセバスチャンというコースをフライトプランに組み入れたのは、リベリア半島詳細シーナリーのサイトに、この3都市の見本画像があるのを見て「いい出来映えだな、ぜひ見に行こう!」と思ったのがきっかけです。しかし私は最近、METAR受信不調のトラブルを直すため、起動HDDの内容をすべてバックアップから書き戻しており、せっかくインストールしてあった追加シーナリーが消えてしまったことを忘れていたため、結局詳細な景色は見えずじまいでした。ちょっと残念です(^^;)。

 その代わりといいますか、地文航法はますます快調。1034時57秒、雲の切れ間から、たまたま川の屈曲部を真下に見て、とっさにAtlasと照合し、正確なフィックスを得ました。エブロ川という、流量でスペイン一の川だそうです。風の影響も含め、さっそく約3度の針路修正。この結果、新たなサンセバスチャン着予定は11時5分となりました。1045時10秒、今度はパンプロナ空港のすぐ東を通過。また位置が分かり、もうバスク州に入っています。雲間から数秒だけ見た地上目標をもとに、現在地がポンポン特定できるのは非常に愉快で、VOR指針やDMEの数値を見守るフライトとは雰囲気が違い、いかにも「鳥のように」空を旅している気分になって来まして、すっかりゴキゲンです。
 途中で一度、対気速度を間違えて計算していたことに気付き、サンセバスチャン着予定を1059時と修正。そのままドンピシャリの時刻に空港の真上を通過しました。ここは、なんと三ツ目の空港…ABNが3基も並んで回っています。こんな代物は初めて見ますが、空港識別のためには、多種多様な発光方式のABNがあると便利でしょうね。昔の「航空灯台」は実際、モールス信号を点滅表示していたそうです。無線標識が完備しGPSも普及した現在、実用性は特にないのですが…私はそんなのも欲しいなぁ!

●●栄華を極めるパリ市街へ:
 大西洋に向かって海岸線を越えると、いきなりカーンと空が晴れました。ビスケー湾がきれいです。視界はメチャメチャ良くて、ボルドーの手前の空港ABNが視認できます。いったんはサンセバスチャンで降りて、精密なシーナリーをインストールし直そうかとも思いましたが、燃料は十分あるし航法も順調、気分はもうパリに飛んでいます。ワークシートを確認すると、予定では1329時に着くはず。FlightGearを「夏景色」にしているのが気になっていたのですが、ネットでパリの週間天気を見ると暖冬のようで、このフライト時はまだ最低気温が氷点下になっていなかったため、雪景色はお預けとしました。

 1130時、いつの間にか再び眼下は雲海。たまたま雲が切れる一瞬に海岸を通過中で、湾の形から、ボルドー市のすぐ西を通過中と分かりました。つくづく確定位置を得やすい日です。1138時には晴れて、ボルドー空港の至近を通過。市街地を貫いてビスケー湾に注ぐ、ジロンド川もよく見えます。
 1221時、330度にポワティエ・ビアール空港を視認。誘導路に特色があって、これまた一発で識別。おおむね正しいコース上にいるようです。ビスケー湾からこっち、都市を除く地表はすべて数種の耕地に覆われていて、空から見たフランスはやっぱり農業国なんだな、と実感。そう言えばしかし、少なくともFlightGearではドイツもオランダもそうですし、日本なんて森林だらけの国なんですけれどね。

 1315時、もやと薄雲を通して地平はるか、10個前後のABNがあちこちで点滅しているのを視認。首都の近さを感じます。程なくパリの都市圏が見えてきましたが、何と言っても、ビルの数に圧倒されました。昨年でしたか…何かのテストで一度パリ市内で起動してびっくりしたので、今回は最初から Random Object 機能をオフにして都心に近づいたのですが、シーナリー上に配置してあるビルだけで、ちょっと目には1000棟を軽く超えている様子。かつては市中心部の壮麗な旧市街が見どころでしたが、今やそこら中にモダンなビルもひしめき合っていて、私が知る限りではFlightGearの世界で唯一、本当に「首都」を感じさせる賑わいです。すでにご覧になった方が多いと思いますが、いやぁ…羨ましい出来映えですね。

 1322時、オルリー空港を通過。1333時、フランス最初の本格空港であり、かつてリンドバーグが降り立ち神風号が寄港した、ル・ブールジェ空港の東側に回り込んで着陸。1分ほどタキシングしてランプイン。1335時エンジン停止。3000ftと10000ftにbrokenの雲があり、昼過ぎですが日差しは弱く感じられ、さすが北緯49度だと思いました。気温は-1.4度でした。燃料残は1278.6Lbs×5=6393Lbs。離陸時に10000Lbsでしたから、半分も使わずに済んだことになります。その気になれば、楽にロンドンまで届いたことでしょう。

     ●

 日を改めて、久しぶりに軽快なピラタスPC-9M改を起動し、パリ上空の散歩を楽しみました。以前はクロアチア空軍アクロチーム機に酷似した塗色でしたが、08年の世界一周時に使用したPC7改とほぼ同じ、軽快な赤系統のhideオリジナル塗装に切り替えました。申し遅れましたがカタリナも、今回のフライトからグラデーション塗装をやめて放射状ストライプに変更しました。以後、少しだけキリリとした姿(?)で、飛行艇世界一周の後半戦に臨みます。
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なし 海鳥の旅番外編で、高解像度フランスの旅

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 今回は、フランス全土の高解像度シーナリーをインストールしてみました。
久しぶりにピラタスPC-9Mを駆って、パリを基点にデイフライトを楽しみます。アルプスの山岳飛行場や、南仏のお洒落な小飛行場を訪問してジュネーブへ到着。ハイレゾの副産物として、レマン湖の形がかなり正確になり、市街地に紛れ込んでいた名物の大噴水もちゃんと湖面に現れ、いい気分です(^^)/。
 楽しい旅になった半面、私の環境下では、このシーナリーを使うと、イギリス南部やベルギー西部、北イタリアなど周辺地域の一部で、市街地テクスチャーや道路・線路が消えてしまう問題も発生しました。今のところ対策が分かりませんので、試される方はどうぞご用心を。

 また「SkyVector」という、フライトプランナー付きの全世界VFR/IFR航空図サイトを見つけました。非常に便利ですので、のちほどご紹介します。

●●高画質で飛んでみたい:
 私の飛行艇世界一周「海鳥の旅」は、年明けにパリに着きましたが、日照時間が短く高緯度の旅に向かない真冬の間、何を勉強して(または遊んで)過ごそうかと迷っていました。
 過去何度も挫折した Blender の学習は、この冬も本を買ったものの宙に浮いておりますし(笑)、「風景の開発」フォーラムに投稿させていただいた、空港などシーナリーの改良問題もその後、やっとTerraGearGUIで地図データが読み込めたものの、Materials タグの段階でつまづいて、さっぱり前に進みません。なので「パリまで来たついでに、ジュネーブに寄ってレマン湖を再編集し、大噴水が正常に見えるようにする」という夢も、当分の間は妄想にとどまるかに見えました。
 一方、本サイトでは時々フォトシーナリーの話題が登場します。私も試してみたいのですが、インストールがやや難しそうです。そのうち、これは写真版の風景ではありませんが、米国の本家HP「NEWS」コーナーのバックナンバーの中から、Thorsten Renkさんによる「Mountain-flying in the French Alps」(2012年4月26日)という投稿を見つけました。
 これは、軽飛行機でフランス・アルプスの Altiport(山岳飛行場)を歴訪する企画で、FlightGear Wiki に紹介されている、高解像度の「Custom France Scenery」を使用します。飛行場によっては、滑走路など一部分がフォトシーナリーになっていたり、3Dの管制塔や軽飛行機が並んでいたりして、非常に面白そうです。インストールも、単にデータを重ね書きするだけらしいので、さっそくダウンロードしました。リンクは以下にあります。
     http://wiki.flightgear.org/Custom_France_Scenery

 さてシーナリーを解凍したものの、扱い方がよく分かりません。本家フォーラムを読んでみると、ファイルの構成が全然違うようです。おかしいなぁ…と思って、出来たファイルを秀丸エディタで強引に開いてみると、ReadMe文書の断片やバイナリデータ、xmlファイルの一部などが、ごちゃまぜになっているみたいに見えます。こりゃ1回解凍してもまだ「書庫」なんだ、とようやく思い当たり。右クリックで再度解凍しましたら、やっと緯度・経度別のフォルダが多数出現しました。あー恥ずかしいっ(^^;)。

 私の環境では最近、起動時にあれこれ3Dオブジェクトの読み込みエラーが出ます。ヒースロー空港なんかビルが1棟しか出現せず、何やらトラブルが起きている模様です。そこでまず、英仏周辺の正規シーナリーを再DLしてインストールし、ついでに最新の GlobalObjects.gz と SharedModels.gz も解凍して Models などに入れたうえで、前記の高解像度版をシーナリーフォルダ内に重ね書きしました。(ちなみに正規シーナリーは、1区画単位で結構まめにバージョンアップが行われ、オブジェクトが増えたりしていますね。私は従来、頑張って一気に大陸全体をDLしていましたが、こういう作業方法では比較的古いシーナリーばかり使うことになってしまいますので、考えものです)
 以上の手順を踏んでも、あいにく3Dオブジェクトの表示エラーは解決されませんでしたが、一応フランスのシーナリーは準備OK。さて航法計画を立てるとしましょう。

●●石碑やレストランのある小飛行場:
 今回の行き先は、まず前記の「Mountain-flying in the French Alps」で読んだ、クールシュヴェル山岳飛行場LFLJですが。もう一つ、フランス南東部の都市リヨンの南にある、サン・ランベール・ダルボンという、軽飛行機用の小空港を訪ねることにしました。滑走路は芝生のみです。
 なんでここを選んだかと言いますと。先日、flightgear.org/download.php サイトの中にある、「Static Model Browser」を開いて、最近登録された空港建築物を眺めていたところ、航空関係の記念碑らしい石碑が二つ、目に止まりました。他にも、ごく小さなレストランや、手書きの古びた看板類、丹念に作り込んだフェンスと門など、渋くマニアックな新作オブジェクトが並んでおり、どれも所在地は「LFLR」となっていました。フランスの空港ですが…どこだろうと検索してみると、今申し上げたサン・ランベールだった次第。今回訪れる山岳地帯から近いし、「質素ながらリアルに作り込んだ施設」というコンセプトが面白そうなので、目的地に加えました。その後はジュネーブに寄ってパリに戻る、とまあそんな旅程になりそうです。

 まずAtlas画面をチャート代わりに開き、こんな順序で周回しようと、ラフなコースを考えました。
◎パリのル・ブールジェ空港
   ▼
◎クールシュヴェル山岳飛行場LFLJ
   ▼
◎サン・ランベール・ダルボン空港LFLR
   ▼
◎ジュネーブのコワントラン空港
   ▼
◎パリのル・ブールジェ空港

 …クールシュヴェルとサン・ランベールには、トラッキング(もしくはホーミング)すべきVORもNDBもありません。GPSを使えば航法は簡単ですが、使わずにピンポイントで発見する工夫をした方が面白いので、ちょっと考えた末、手前にそれぞれ無線標識を挿入し、手頃なラジアルを選んで乗ることにしました。
 クールシュヴェル山岳飛行場に向かうには、西方のリヨン・サンテグジュペリ空港のVORが、またサン・ランベールを見つけるには、少し手前にあるグルノーブルNDBが役に立ちそうです。これで、今回の航法に関わる地点(出発地と中継地、目的地)は計7カ所に増えました。以下のような感じです。
(私独自のコース記号を復習しますと…◎=空港、★=VOR、☆=NDB、△=フィックス又は地形上の目印)

★パリのル・ブールジェ空港VOR 116.1BT(←無線標識の周波数+コールサイン。以下同じ)
   ▼
★リヨン・サンテグジュペリ空港VOR 114.75LSE
   ▼(ラジアル107度を使用)
◎クールシュヴェル山岳飛行場LFLJ(無線標識なし)
   ▼
☆グルノーブルNDB 291WS
   ▼(磁気方位245度へ飛行。たまたま真方位同じ)
◎サン・ランベール・ダルボン空港(無線標識なし)
   ▼
★ジュネーブのコワントラン空港VOR 115.75GVA
   ▼
★パリのル・ブールジェ空港VOR

●●変針の多い航法計画を、楽に作るには:
 最後に、これらの地点を辿るコースを計算するわけですが…従来はそれぞれの正確な緯度経度を調べて、航法フリーウェア「virtual E6-B」に打ち込み、相互の方位と距離を出していました。virtual E6-B は2地点間の計算しかできませんので、7地点を結ぶには次々と数字を差し替えて、計12回も緯度経度の入力が必要です。これが正直、割に面倒で間違いやすいのですね。前回ご紹介した私のExcel航法ワークシートなら、7回で済むので多少楽ですが、やっぱり億劫には違いありません(直線の大飛行には、最高の道具ですが)。
 むろんご存じのように、ICAOコードさえ入れれば、区間ごとに大圏コースの初期方位と距離を計算をしてくれるサイトもあります。以下にアドレスを挙げる「Great Circle Mapper」あたりが代表格でしょう。
     http://gc.kls2.com/
 大圏コースはGPS自動操縦向きですが、短距離ですとラームライン(等角航路。コンパスを見ながら、手動または針路保持モードで飛ぶ場合に使う)と差はないので、このサイトでもかなり多くのフライトに役立ちます。ただし、任意の地点(緯度経度)を入力することはできないのが不便です。

 あれこれ探したら、冒頭に挙げた「SkyVector」というフライトプランナー・サイトを見つけました。これも大圏コースですが、VFRとIFR(高々度・低高度)両用の全世界航空図を兼ねており、緯度経度による任意地点の入力も可能で、しかも操作はマウスのみ。以下がアドレスです。
     http://skyvector.com/
 「投稿画像」に、SkyVector のサンプル画面(今回の飛行コース)をご紹介しました。基本操作は、
・図上のカラフルな丸印は、METAR観測点。ポインタを当てると気象通報式を表示。
・図上の青で囲まれた領域は、その時点のSIGMET(悪天情報)空域。左クリックで内容表示。
・画面左上の「Flight Plan」ボタンで、フライトプラン機能が起動。
・図上の右クリックで、至近にある空港や無線標識、或いはその地点の緯度経度入力を選択。
 コースはマウスで編集可能。速度入力でETE(予定飛行時間)も表示。
・空港名を左クリックすると、施設の詳細を表示。米国内に限り、SID/STARチャートが閲覧可能。
・いったん作成したフライトプランは、1個に限り自動保存し、以後のアクセス時に再表示。
・チャート画面は電子画像だが、米国内のみ紙製の区分航空図の画像も閲覧可。
・燃料代の計算サービス(?)や独自フォーラムあり。
…という感じで、なかなかすごい内容。ILSに関するデータがないことが、数少ない欠点です。

 今回のフライトは基本的に、この SkyVector のみを使って行うことにしました。詳しい区間距離・方位は、投稿画像の SkyVector 画面を見て頂ければ幸いです。ちなみに総飛行距離は670.4nmでした。

●●高解像度のフランスをゆく:
 ル・ブールジェ空港で、ピラタスPC-9Mを起動。パリは建物オブジェクトが(たぶん)世界一多い上に、ハイレゾのシーナリーが重くて、フレームレートは1とか3を指しています。かなり読み込んで、やっと7。しばらく待ったらようやく20ちょいまで上がり、これなら飛べるだろうと、ホッとしました。
 Time of day 機能で morning を選択しており、機内時計はUTCの0920時。燃料を確認し、必要な周波数を打ち込んで出発準備OK。ところがPC-9MのRMIとDMEが、ル・ブールジェ空港のVORに反応してくれません。どうしたんだろう。
 ここんところ、古いカタリナばっかり操縦して、近代的な飛行機の飛ばし方を忘れちゃったかな…などと思いながら、念のためAtlasを起動して確認しますと、抽出した数カ所の無線標識のうちル・ブールジェのVORだけは、なんと「SkyVector」とAtlasで周波数が違っていました。むろんAtlasは、FlightGearの内蔵データをそのまま示しますから、SkyVectorの方の登録データが違っているわけですね。トラブルはこの1カ所だけでしたが、期待しているだけに、いささか残念です。

 西に向かって離陸。左上昇旋回を重ねながらパリの街を見下ろすと、道路も線路も河川も、(従来の折れ線の集合ではなくて)見事なカーブを描いています。高解像度の風景は、フォトシーナリーほどの衝撃はありませんが、さすがになかなか美しい。
 空港VORのアウトバウンド・ラジアルに乗って、高度14000ftでリヨンに向かいます。速度保持を230KIASにセットしたところ、真対気速度は(私の速度計の改造指針によると)277KTASくらいでしたので、SkyVectorのフライトプランナーに「277Kt」と入力。これで各区間ごと及びトータルのETE(予定飛行時間)を、自動で出してくれます。
 雲のレイヤーが機体の上下にあり、だんだん雲量が増えてくる感じで、この調子で山岳地帯に入るのはまずいなと、ちょっと気にしながら、NAV-1をリヨン・サンテグジュペリ空港VORに切り替え。ちゃんとモールスの「LSE」が入感しました。あとで使う予定のグルノーブルNDBからも「WS」の符号が聞こえています。前後左右を眺め回しながら、どんどん南下を続けました。

●●アルプス山中の「ジャンプ台」に発着:
 1034時、リヨン・サンテグジュペリ空港上空で、予定通り107°に変針。周囲の道路や線路が、またまたリアルで美しい眺めです。このシーナリーは、少し高空から見た方が実感が増すようです。
 CDIを新コースにセットし、機体をなるべく正確にラジアルに乗せて、アルプスの端っこに入り込んでいきます。今から行く山岳飛行場は、なぜかFlightGear内蔵の「Map」にも表示されません。当面はVOR/DMEの航法精度だけが頼りですので、まずは慎重に。
 山岳地帯に差し掛かると、精細シーナリーはますます本領を発揮しました。山々の鋭い稜線が、谷へ切れ込んでゆく山腹のひだが、明らかに標準よりずっと豊富な情報で構成され、テクスチャーの使い分けもきれいです。もっと負荷が軽いと…さらに素敵なのですが。
 SkyVectorのチャート画面と、眼下の谷や川などの景色を頻繁に照合しながら、ところどころで現在地を確認し、更に飛行を続けました。時々視界を雲に遮られるので、もう少し高度を下げて、じっくり地形を見たいところですが、図上に示された最大標高(MEF)をみると、雲に巻かれてコースを外したら衝突もあり得るので、このまま14000ftを維持することにしました。

 やがて、右手の山にABNを発見。どうやら目的地すぐ手前の山岳飛行場です。さらに峰を一つ飛び越えたところに予定通り、クールシュヴェル山岳飛行場が視認できました。こっちにはABNさえありませんので、山腹に食い込んだ短い滑走路を見逃したら、それっきりです。右旋回で近づくと、軽空母というか、ジャンプ台というか「あんな小さいところに、降りるのかぁ!」という感じです…投稿画像をご参照下さい(^^;)。
 本家サイトで見た画面とは違い、滑走路はフォトシーナリーではなく、簡易タワーや駐機中の軽飛行機も見えず、殺風景なのが残念ですが、原因も分からないし、今さら仕方ありません。
 旋回降下に入ります。複数のレイヤーに雲が散らばっていて、視界は万全ではありません。急旋回を重ねるうちに、さっと雪が舞い始めて、ひやりとしました。視程が短くなったら即アウト、高度を上げて逃げ出すしかありません。しかし雪は直ちに止んで、雲も次第に晴れて行く気配。おお、行けるかも。

 スロットルレバーを引いて、ぐんぐん旋回降下します。がオートスロットルを切り忘れていて、機体が減速してくれません。焦ってオートパイロットを操作し、やっと減速してみると…滑走路がない! 一瞬で見失ってしまいました。
 山腹はみんな同じように見え、どれがさっきのだったのか、迷い始めるときりがありません。落ち着け落ち着け。VORラジアルとDMEがある限り、遠くへ迷い出るはずはありません。まず、坂井三郎のように…迷ったときは高度を再現しよう。次は針路。進入時のコースから、さっきみたいに右へほぼ直角に折れてだな…。ぐるぐる旋回を続けていましたら、不意に再び滑走路が見えました。風向は、どんぴしゃり滑走路向かい風。風速は15Ktあります。決行するしかないですね。

 1055時ごろ、フルフラップ75Ktで接近して…思ったより機首が上がって邪魔なので…もっと操縦席を高く上げておけばよかったと思いながら、いったん増速して視野を稼ぎ、やや過速ながら無事に着陸停止。やった。空中からはスキージャンプ台に見えた空港も、降りてしまえばもっと大きいことが分かりました。とは言え、離陸時は強い追い風になりますから、出来る限り長い滑走距離を確保したいものです。ぎりぎり奥までタキシングして、機体をUターンさせました。
 エンジンを掛けたまま、しばし休憩。天候が悪化すると困るので、あまり長居は出来ません。1110時に離陸を決行、フラップ1段でフル加速したものの、滑走路末端付近の対気速度は、たった90ノットでした。少々早過ぎるローテーションを掛けて機首を上げたまま、文字通り断崖から身を躍らせて、重量超過の艦上機が発艦するみたいに、どーんと沈みながら山腹を離れました。

●●愛情たっぷりの力作、牧歌的な小飛行場:
 やがて上昇に転じ、再びアルプスの絶景が周囲に広がります。私は「ピラタスには、やっぱり山がよく似合う」なんて呟きながら、269度でグルノーブルNDBをホーミング。
 1127時。RMIの針がグルンと回って、グルノーブルNDB上空を告げました。計画通り269度へ変針。1133時ごろ、前方に多数の白色ストロボ光の列を発見。高圧線の鉄塔みたいですが、よく見ると丘陵地帯に並ぶ発電風車の群れでした。ヨーロッパではこの手の風車が今、どんどん普及しているのですね。「グスコーブドリの伝記」(宮沢賢治)の作中世界みたいな風景。私は大好きです…。
 やがてABNが視界に入り、小さな街の彼方に、サン・ランベール・ダルボン空港が見えてきました。

 まことに牧歌的な小飛行場です。芝生の滑走路に着陸して、田舎の小道みたいな、土のタキシーウェイを走っていくと、一見ボロっちい(ごめん!)小格納庫が幾つも並んでおり、これがなかなか傑作です。外壁にはモダンアートの見本のような、極太ゴシックのポップなロゴがちりばめられ、1910年代のクラシック飛行機のイラストも踊っていて、思わずにっこり。また空港の一角には、薔薇の咲き誇る小さなレストランがあり。近くに大昔の飛行家のレリーフを刻んだ石碑が建っていて、ちゃんと花まで生けてありました。

 碑文の人名と年号が読めたので、何とか石碑の由来が分かりました。1919年4月21日、Jules Vedrinesという飛行士が、航空機関士の Marcel Guillain とともに双発のコードロンC23に乗り、史上初のパリ=ローマ郵便飛行に挑戦。当地で着陸場所を探している最中、墜死したとのことです。この飛行場には、モンゴルフィエ兄弟の作品みたいな熱気球を描いた記念碑もあります。兄弟が最初の公開飛行実験をしたのは、アノネーという町で、この飛行場のたった10キロほど西なので、たぶん本当に兄弟の記念碑なのでしょう。
 これらのオブジェクトには、現地で撮影したらしい、精細な写真テクスチャーが貼ってあります。ある格納庫は内壁も写真テクスチャーで再現され、屋内に禁煙の(しかも手書きの)張り紙があったり、大きな工具箱が並んでいるのが、入り口から見えたりします。小規模で質素な建物ばかりですが、近所に住む航空ファンが取材を重ね、愛情をふんだんに注いで作り上げたという感じです。いいなあ! こういうの。

 給油スタンドの前に愛機を駐めて、エンジンを停止。燃料残は220Lbs、つまり33galでした。あと何分飛べたのかと、改めてヒヤリ。かつて私の改造機は、燃料警告灯が点いた時点で、全速で30分の燃料を残すように設定していましたが、デフォルトではずっと残量が多いため、つい点灯を無視しておりました。これはやっぱり私の場合、設定を変えておかなくては。

●●レマン湖が正しい形に:
 1440時。現実世界で食事の後、1000Lbsの燃料を積んでジュネーブへ。10度から25Ktもの強風が吹いていました。向かい風ですが、天気は時の運ですな。滑走路の風下端へタキシングして、1450分に離陸。
 20000ftまで上がり、212KIAS(真対気速度は280KTAS)で、ジュネーブ空港VORのラジアル042度をインターセプト。そのままドンドコ飛んで、無事にレマン湖が見えてきました。
 冒頭にご紹介しました通り、この精細シーナリーでは、レマン湖の形が正しくなっており。デフォルトのシーナリーよりもずっと深く、湖岸が市街地に切れ込んでいます。その結果、名物のジェ・ドー(高さ約140mの大噴水。実物は冬は休業)を先端に持つ突堤と、根元に付属するヨットハーバーが、すべて正常に湖の中に出現しています。やれやれ…ジュネーブに関する限り、地形を改造する必要はなくなりました(^^;)。
 また今回、あちこちで感じたことですが、鉄道や河川が地図通り正確な形をしていると、当然ですが機位を判断する材料になり、航法面で非常に役に立ちます。いずれFlightGearのシーナリーが世界全域で、少なくともこの程度の分解能を持つことを切望します。

 というわけで、大いに「Custom France Scenery」を楽しみましたが、着陸後にUFOでレマン湖沿いに東へ散歩したところ、都市テクスチャーと河川、道路、鉄道が消えてしまいました。スイスの中央部まで進むと、また正常に戻ります。北イタリアも同様で、モンブラン南方(対仏国境そば)のアオスタあたりは異常ですが、もっと南下するか、或いはコモ湖付近まで東進すると正常に戻ります。イギリスは、サウザンプトンなど本土南岸はもちろん、ブリストル海峡やロンドン全市まで被害が及んでおり、市街地やテムズ川が消滅。いちめん緑のテクスチャーの中に、ビッグベンや高層ビル、ドームなどの3Dオブジェクトだけが並び、まるでSFにありそうな「ジャングルに呑まれた近未来のロンドン」です。バーミンガムの南あたりまで北上すると、やっと正常に戻ります。
 もうすぐVer.2.10に切り替わりますが、またシーナリーも新しくなるのでしょうか? ならばどうせ全面的にインストールをやり直しますので、焦って手を付けずに、しばらく様子を見ることにします。

●●Atlas画面の謎:
 最後に一つ不思議なのは、Atlas11の振る舞いです。私はこの「Custom France Scenery」を入れてから、Atlas用のマップ画像を再生成していません。古い、デフォルトのシーナリーから作った地形画像をそのまま使っているのですが、Atlas画面のズーム倍率が100未満(表示上は「99.291」以下)になりますと、いきなり画面表示の地形解像度が急上昇し、黄色い都市の範囲が広がり、道路や線路のルートも明らかに変化して、精細モードのシーナリーをそのまま反映します。むろんジュネーブのレマン湖も同様で、ズーム倍率125以上では、Atlas画面が示す湖岸は以前の不正確な形のままですが、99倍以下ですと、フライト中に見る通りのほぼ正しい輪郭になり、湖の西端が市街地深く三角形に食い込んで、ローヌ川となります。
 となるとAtlasは、アップ画面ではシーナリーの地形データそれ自体を表示するのでしょうか。謎です。
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なし 細密シーナリー再び

msg# 1.4.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-4-2 1:42 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです、大変ご無沙汰いたしました。
 しばらく公私ともに落ち着かず、なかなかまとめて飛んだり書いたり出来ませんでした。今回は、以前ご紹介したフランス全土の細密シーナリーについて、簡単な続報をお届けします。

●●フランスの精細シーナリーを使いこなすには?
 前回までにご紹介しました custom-scenery-france-v1 のお陰で、山の輪郭などが一段と精密になり、道路や河川も滑らかなカーブで再現され、非常にリアリティーが増しました。
 その後、アルプスの山岳飛行場などを6カ所追加するシーナリーも追加で組み込んで、ますます磨きが掛かった風景に感心し、一時は半分ほどマジで「FlightGear上では、もうヨーロッパへ移り住んでしまおうか!」とまで舞い上がりかけたのですが(^^;)…これを使うと、イギリス南部やスペイン東部、ベルギーとスイスの西部、イタリア北部の地形がダメージを受け、都市部など各種のテクスチャーや道路が消えてしまう、と言う深刻な問題があるのも、既にお話しした通りです。またv2.10に移行後は、パリ中心市街地の古い石造りビル群やジュネーブの大噴水、南仏の軽飛行機用小空港 Saint-Rambert-d'Albon(LFLR)のポップアート入り格納庫など、特色ある一部のオブジェクトが消えていることが分かり、大変がっかりしました。これはぜひ、何とかしなければ。

 まず周辺国への影響を最小限にするため、DLデータを解凍して生成される「Scenery」および「Object」サブフォルダのうち、緯度経度から見て明らかに英国、ベルギー、イタリア、スペインの領内にあたる約150のサブフォルダを、重ね書きの対象から除外しました。これでイングランド南部やイタリアなどはセーフとなりましたが、この方法では緯度経度の1度単位でしかデータを除外できないため、残念ながらスイスは影響を受けたままです。具体的には、国土の南西端にあたるジュネーブから、レマン湖沿いに東へ向かうと、レマン湖東端からやや北の山岳地帯に、実際には存在しない大型の湖が現れ、周辺の道路が消えます。ご参考までに「投稿画像」に実例をアップしておきますので、細密シーナリーとデフォルトの解像度比較と併せてご覧下さい。湖にはなぜか貨物船まで走っていますが、水面があると自動的に配置される仕組みなのでしょうか。

 次に、ビルなどのオブジェクトが一部消える件ですが、これはデフォルトのシーナリーデータに、細密シーナリーの Object サブフォルダを重ね書きする際、各オブジェクトの緯度経度やパスを書き込んだstgファイルも書き換えられてしまうためと判断。そこで「細密版は Scenery データのみ使い、Object データは重ね書きしない!」という単純な手を使って、取りあえずは、ほとんどの物件を再登場させました。
 しかし、これでもv2.80で実現していた情報量には及びません。かつてはSaint-Rambert-d'Albon飛行場(LFLR)を利用すると、周辺の丘の発電風車に白色ストロボ光が点滅するのが見え、「フランスでは、こんな航空障害灯を使うのか」と旅情を感じたものですが、これも視認できないままでした。

●●Object データは定期的に更新を:
 解決の糸口は、意外なところで見つかりました。私のFlightGearは近年、起動のたびに「このオブジェクトがみつかりません」というエラーメッセージを大量に吐き出していて、対処法がよく分からないまま放置していたのですが、本来見えるべき物件が見えないのも惜しいので、これは本来data/Modelsフォルダに入るべき「OBJECT_SHARED」に、欠落したものがあるためだろうと見当を付けまして、FlightGear Scenery Static Model Browser から一個ずつ、該当の車両とか建物をダウンロードして組み込んでみました。
 すると思った通り、エラーメッセージの洪水は止まりましたが、こんなものをいちいち、ファイル名を突き止めて落とすのは大変です。一括で手に入れる方法はないかと探したら、ちゃんとありました。シーナリーDL用のftpミラーサイトに、「SharedModels.tgz」というファイルが用意されているではありませんか。どの程度の周期で更新されているのかは知りませんが、時々落として差し替えればいいわけですね。

 ならば。Modelsフォルダで共有されず、個別のシーナリーと共に入手する「OBJECT_STATIC」のほうも、まとめて落とす手はないかと調べたところ、さっきの「FlightGear Scenery Static Model Browser」のプルダウン・メニューの中に「Download latest scenery objects」というGUI地図画面が見つかり、ここからシーナリーデータと同様、緯度経度の10×10度単位で、地域ごとに圧縮ファイルが落とせるようになっていることを知りました。解凍した中身は、該当地域の Objects フォルダそのものですので、シーナリーを丸ごとDLするのに比べますと、フランスの場合は5分の1程度の容量で済むようで、非常に便利だと思いました。

 こんな次第で、STATICもSHAREDも比較的少ない手間で、好きなときに一新できるようになりました。以上を実際にシーナリーに重ね書きした後、数カ所の空港でUFOを起動してみたところ、オブジェクト起動関係のエラーメッセージは(なんとかかんとかno longer supported というのは出るけれども)ほぼゼロで、先ほどの発電風車の白色ストロボなどもばっちり描画され、いい気分です。もっと早く分かっていれば…。
 最近、見事な出来の姫路城が加わるなど、FlightGearの日本にもオブジェクトが増えてきました。嬉しいことに、新作が登場するペースが少し早くなってきたような気もします。時々データを更新して活用し、作者さんの苦心に応えたいものですね。

●●新バージョンの印象:
 v2.10につきましては、かなりの改良点があるようで期待していますが、まだ使いこなせていません。導入直後は、起動時に異常終了するトラブルが頻発し、原因がつかめず心配しました。私の環境では、どうもシーナリーを追加・削除したり、Objectフォルダの内容などに変更点があると、かなり高い頻度で起動に失敗(コクピット画面への移行前に異常終了)します。これらの変更時は、空港選択画面でこまめに Refresh ボタンを押すと次回起動に成功する確率が高く、もしダメな場合も、続いてパソコン本体を再起動すれば、ほぼうまく立ち上がってくれるようです。あまり確かなことが言えないため、これまでリポートする機会を見送る結果になってしまい、申し訳ありません。

     ●

 …と言う次第ですが、ようやく私のv2.10環境も安定しつつあり、しばしアルプスの山遊びを楽しんだ思い出を胸に、夏景色に切り替えたジュネーブをあとにして、ピラタスPC-9Mでパリへ帰還しました。
 久しぶりのクロスカントリー(野外飛行=飛んで降りるのではなく、よその空港への移動)に加えて、高度3000ft以上は到着時まで雲の中という悪条件のもと、短距離ながらミスの多いフライトを展開し、なんとかル・ブールジェ空港のILSをインターセプト。とは言え最終進入が滑らかに決まると、「やっぱり操縦は、楽しくてたまらんな(^^;)」と思いました。その後カタリナで、さらにイングランド南部まで足を伸ばしたのですが、いま取り組んでいる他のテーマと一緒に、また次回ご紹介します。
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なし 海鳥の旅飛行艇の整備基地

msg# 1.4.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-4-7 9:44 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 今回はAC3Dを使って試作中の、飛行艇整備基地をご紹介したいと思います。1930年代、イギリス南岸の主要港の一つ、サウサンプトンのハイス地区に実在したスーパーマリン社の工場がモデルです。この工場は当時、サウサンプトンを基点に南アフリカやオーストラリアなど、世界各地へ定期運航したインペリアル航空(BOACやBAの前身)の旅客飛行艇、ショート・エンパイアの整備を請け負っていました。

 地元の航空関係サイトによりますと、サウサンプトンにはかつて、主要各メーカーの工場地域や海軍・空軍の水上機基地などが計7カ所もありました。パン・アメリカンの飛行艇が乗り入れ、ドルニエDoxも飛来し、沖合の特設コースでは、かのシュナイダー杯レースが3回開かれ、1931年には栄光のスーパーマリンS-6Bが、最終的にトロフィーを獲得するという、まさにイギリスの海上航空活動の中枢みたいな場所だったのですね。私の飛行艇世界一周も、ぜひサウサンプトンに立ち寄って、自作の整備基地に機体を揚陸してみたい、とまぁこういうわけです。

●●飛行艇や水上機、飛ばないときはどうするの?
 整備基地に興味を持った理由の一つは、飛行艇や水上機は飛ばないとき、どうやって管理・保管されていたのか、以前から知りたいと思っていたからです。
 kozenigataさんから昨年6月、DHC-2 Beaver を接岸させる方法について、質問を頂いたのがきっかけでした。私自身、水上機や飛行艇の接岸には大いに興味があり、出来ればいつか、そのための設備を自作したかったのですが、考えてみると水上機はFRP漁船やヨットなどに比べますと、極端に壊れやすく、軽い割に大きくて風に翻弄されますし、小回りも利きません。なので陸岸近くでは極めて扱いにくかったことでしょう。さらに言うと…双フロート水上機は、波風が非常に穏やかな時なら、低い桟橋に横付けも可能でしょうが、単フロート機や飛行艇ですと翼端フロートが邪魔で、そもそも横付けという行為自体が困難です。要するに水上機や飛行艇は、かなり接岸が苦手な乗り物ですが、では戦前の全盛時代には一体、どうやっていたのでしょう。
 以後、思いつくたびに大阪の書店やネットで資料を探したところ、次のようなことが分かりました。

●●出来るだけ、こまめに陸揚げしてしまう:
(1)設備の整った水上機飛行場では原則、陸揚げする:
 水上機飛行場は、格納庫とエプロン、管制施設などを設けた「滑走路のない、海辺の飛行場」で、発進・収容時は、エプロンに設置したスリップウェイ(舗装傾斜路。別名ランプ)から、機体を海に上げ下ろしします。日本では、スリップの正式名称は「滑走台」ですが、海軍でも民間でも「スベリ」で通じました。多くの漁港にある、漁船の陸揚げ用スリップよりはずっと傾斜が緩やかで、表面も滑走路並みに平滑です。傾いた橋のように海中へ伸びる細長いタイプのほか、幅が200mくらいあって、人工海浜と呼びたいような大掛かりなものも造られました。いま国内で使われているのは、救難飛行艇US-1/US-2がいる岩国基地や、製造元の新明和工業甲南工場(神戸市)など、ごくわずかのようです。

 旧海軍の水上機訓練を描いた本や、YouTubeで見つかる海外のフィルムによると、水上機は台車に乗せて格納庫に保管され、エプロンでパイロットが搭乗すると、そのまま陸上でエンジン始動。台車の後部にワイヤーを取り付け、牽引車などで一定の張力を与えて暴走を防ぎつつ、そっとスリップから海中へ降ろします。最後に整備員が海中で台車を外し、いってらっしゃーい…という手順のようです。飛行艇の場合は、台車の代わりに着脱式(または引き込み式)のビーチングギアを使います。
 デリケートな機体を腐食から守るには、こまめに陸揚げするのが一番で、文林堂・世界の名機シリーズ「PS-1」「US-1」によりますと、海上自衛隊の飛行艇も飛ぶたびに岩国基地のスリップから上陸し、エプロンに埋め込まれた散水設備で機体を洗うようです。長時間の海上行動では、エンジンの圧縮機などにも塩分が堆積して出力が落ちるため、タービンエンジン内部もていねいに水洗し、最後に「乾燥運転」をして、やっと事後作業が終わるのだそうです。

 戦前の日本には、大日本航空などの国策会社があって、旧「満州帝国」や中国領内、信託統治領だった南太平洋の島々などに航空路を開き、毎日或いは週何便といったペースで、けっこう活発に定期便を飛ばしていました。この民間航空の活動のうち、かなり冒険的な洋上郵便飛行をテーマに作られた「南海の花束」(1942年東宝、特撮部分は円谷英二作)という映画があります。川西九七式大艇の実機を含め、戦前の国産水上機がふんだんに登場する作品で、日本の水上機飛行場のロケシーンが出てきますが、やはり大小ほぼ全機をエプロンに上げています。
 スリップに(横付けではなく)頭から機体を引き寄せ、係留する例もたまにありますが、天気が良くても、うっかりすると引き潮で機体が座り込み、台車を取り付けられなくなる恐れもありますので、あまり長時間は放置できないはずです。訓練で、頻繁に乗員が交代する場合などに限られるのではないでしょうか。

(2)専用桟橋を使う:
 サウサンプトン港中心部には、戦後まで「飛行艇ドック」が幾つかありました。ドックといっても水を抜いて使う整備施設ではなく、旅客の乗降用です。陸岸から直角に、飛行艇の胴体幅に合わせた間隔で2本の桟橋が突き出ており、先端のウインチ2台から係留索を伸ばして、飛行艇をバックで引き込む仕掛けです。自作してみたかったのですが、プッシュバックを改造するとかして、機体を引き込む機能まで再現しないと、単なるオブジェに終わるため面白くなくて、残念ですが見送りました。

 この施設は、凝った構造のわりに1機だけしか係留できませんが、なぜもっと長い桟橋に何機も駐めないのかと言うと。飛行艇の場合、桟橋を胴体/翼端フロート間の主翼下にくぐらせる形で接岸するしかないので、奥に駐めた機体が出せなくなるからだろうと思います。(「紅の豚」の冒頭付近、ホテル・アドリアーノの桟橋シーンを思い出します。もし、ポルコとカーチスの到着時刻並びに駐機場所が逆で、かつカーチスが長居をしたと仮定しますと…ポルコが先に帰りたくなっても離岸は不可能で、一悶着起きたかも)(^^;)

(3)ブイに係留する:
 インペリアル航空の飛行艇は、専用施設のない海外の中継地(大抵はイギリス植民地)では、岸から少し離れたブイに係留しました。陸岸との間に交通艇が必要ですが、機体は常に風下に回って機首から雨風や波を受けるので、多少は風速が上がっても、比較的安全に思えます。FlightGear用のエンパイア飛行艇も、起動するとゆるゆる自転し、ブイ係留の雰囲気を再現するようになっていますね。

(4)小型桟橋に横付け、またはビーチに縦付け(?)する:
 カナダかどっかの大河で、カヌーが使うような低い桟橋に双フロート機が横付けして、物資を降ろしている動画を見たことがあります。川や湖ですと風さえ弱ければ波も低く、横付けは比較的楽でしょう。いっぽう大戦中、南方の島に進出した旧海軍の二式水戦が、砂浜の波打ち際にフロート後端を浅く着けて係留されている写真を、何度か見た覚えがあります。即時待機スタイルですが、荒天の場合や、潮位の変化にどう対応するのか、多少気になるところではあります。

●●スリップを作ってみる:
 …私は以前、最初の世界一周中に、旅客機の低空進入で有名な、例のカリブ海のサン・マルタン島(読み方によってはセント・マーチン、或いはシント・マールテン島)に寄って、初めてカタリナを操縦しました。海上でギアを出し、きれいに作り込まれた砂浜に上陸を試みたところ、記憶によればノーズギアがリアルに地面を捉えて機首が持ち上がり、かなり自然な動きで、そのまま陸に登っていきました。「水陸両用飛行艇って、どこにでも自由に進出できる、ロマン溢れる乗り物だなあ」と感心した覚えがあります。
 ところが現在のFlightGear環境では、カタリナでビーチングを試みると、海上と同じ喫水を維持したまま陸岸に食い込んでしまい、メインギアまで地中に入った時点で、いきなり機体がぴょこんと跳ね上がって、やっとタイヤが地表を捉えます。この不自然さは面白くなく、出来ることなら以前の記憶どおりに、リアルなビーチングを果たしたいのですが、一体どうしたらいいのでしょうね。
 一つの可能性として、陸岸から海中へスリップを伸ばしたらどうなるだろうか、と思いました。確か今は原則として、すべてのオブジェクトが「ソリッド」ですから、ことによるとギアが路面を捉えてくれるのでは。(残念ながらこの予想は、甘い考えだったことがあとで分かりました)

 しかし、スリップの製作に取り掛かる前に、まず3Dモデリングソフトの勉強をし直す必要を感じました。過去にお見せしたJR大阪駅などから、すでにバレバレだと思いますが…私はこの時点で、まだ物体表面にテクスチャーを張る方法さえ知りませんでした。AC3Dは操作が比較的易しいので、ネットで見つけた古いバージョン用の簡略な説明文(日本語)を見ただけで、多少は使えるようになり、英語のマニュアルを読んでいなかったのです。なので、例えばパーツ同士を結合するにも、常にフリーハンドで位置を調節しており、拡大すると非常にボロの出る作品しか作れませんでした。これでは、いつか機体を作るなど夢のまた夢です。そこで最近、初めてAC3Dのマニュアルをほぼ通読しまして、分からない点は幾つかありますが、知らなかった機能をかなり覚えることが出来ました。

 では、スリップを作ってみましょう。ネット上で旧海軍水上機基地の遺構写真を幾つか発見し、代表的なスリップは幅が使用機体と同じくらい、長さはエプロンの標高(海面からせいぜい1〜3m)次第で、恐らく厚さ80僂離灰鵐リート・スラブ(鉄筋入りの精密な厚板)で出来ており、傾斜角は4度と判断しました。手元の「日本傑作機開発ドキュメント・設計者の証言(下)」(別冊航空情報、1994年)に載っている、菊原静男氏(九七式及び二式大艇の設計者)の手記を参照すると、スリップの勾配は普通13対1だそうです。計算では約4.4度となり、写真を使った測定はだいたい合っていることが分かりました。
 まず長方形のエプロン(東西180m、南北100m、高さ5m)を製作。次いで長さ90m×幅20m×厚さ80僂離好螢奪廚鮑遒辰董■甘找鹽召気擦討らエプロンに接合し、1m角の杭を多数作って下面にずらりと並べました。これは海に細く突き出した桟橋タイプのスリップですが、もう一つ幅が90mもある、盛り土式のスリップも設けました。実景の空中写真では、この部分は不規則な土の堆積もあって、本当にスリップなのか自然の汀線なのか、今ひとつよく分からないのですが…桟橋タイプのスリップが狭すぎて、機体を揚陸しにくい場合の用心も兼ね、作っておくことにしました。

 さてFlightGearのテクスチャー・フォルダに入っている、コンクリート誘導路の絵を張り込んでみると…おおっ、なんとリアルな質感。サウサンプトン空港でUFOを起動して、このエプロン+スリップを、実際のスーパーマリン工場があったとみられる岸辺に配置しました。

●●スリップに沈み込む飛行艇:
 カタリナを起動し、スリップが面している海面(サウサンプトン水道=2本の川が合流した、比較的大きくて長い河口)に着水。エプロンまで滑走してギアを出し、勇んで上陸を試みました。ところが…。

 …これは想定外! スリップに乗り上げると確かに機首が上がり、そのまま路面を登っていきますが、機体はコンクリート路面に、通常の喫水線の高さまで沈んでいます。前進を続けて、機体がエプロンの下にある汀線を超えて「地上の上空」に移ってからも、エプロンのコンクリート面に艇体が半分沈み込んだ状態を保ち、いっこうにピョコンと浮上して、タイヤで立ち上がってはくれないのです。脚を出し入れしても同じです。結局のところ、いったんエプロン背後の地表に降りると初めてタイヤが有効になり、陸側から再びエプロンに登った場合にのみ、まともにエプロン及びスリップの上を、タキシングできることが分かりました。

 以前は確かに正常にビーチングできたのに、FlightGearが変わったのか、カタリナがどうかしてしまったのか。試しに伊丹空港で、自分で設置した格納庫の屋根が、v2.10でも本当に「ソリッド」なのかどうか、接地テストをしてみました。
 まず、手慣れたピラタスPC-9Mで離陸し、フルフラップで低速進入。格納庫を狙って精密に降下を続け、うまくタイヤを屋根にタッチ。結果は正常なバウンドで、さらに反転してターミナルビル(外国空港の借り物)屋上にフルストップ着陸を試みたところ、こちらも滑らかに成功しました。カタリナで同じテストをしたところ、まったく同一の結果で、屋根やギアがおかしいわけではなさそうです。
 納得できないので、さらにサン・マルタン島でもカタリナを起動し、かつてビーチングに成功した浜辺に再挑戦。ところが…伊丹の屋上とは違って、上陸を試みると今回のスリップ路面と同様に、機体が喫水線まで沈んだままビーチに突っ込んでしまい、主車輪まで完全に陸岸に入った時点で、初めてピョコンと飛び上がってタイヤで立ちました。やはり最近、何かが変わったのです。

●●されど建設は続く:
 このトラブルを解決する当てはないものの、更地のエプロンのままでは寂しいので、ともかくスーパーマリンの工場を建ててみることにしました。ハンプシャー地方一帯の航空史をまとめた、なかなか面白い写真満載の英語サイトが見つかっており、頭の中では工場の構造イメージや工作アイディアが数日来、ブンブン音を立てて回っていて、ともかく手を動かしてみないと、収まりがつかない気分なのですね。

 この英語サイトで見つかった2、3枚の写真には、工場内やエプロンにいるエンパイア飛行艇が写っており、大きさの比較から工場各部のサイズが、大ざっぱながら分かります。屋根の形式は、かつて工場建築の代名詞であった「ノコギリ屋根」。垂直面と斜面を交互に並べた、ギザギザのアレです。垂直(またはそれに近い急斜面)の面は総ガラス張りで、極めて採光性に優れているのが最大の特色です。
 この採光窓は当然、南向きだろうと思っていたのですが、資料によると北を向いています。不審に思って建築関係のサイトを調べたところ、意外なことが分かりました。ノコギリ屋根は、産業革命時の製糸・紡績工場が起源ですが、染色の出来不出来を確認するには、光量の日変化が少ないことが望ましく、そのためわざわざ北向きに窓を設けるようになったのだとか。へぇぇぇと感心しました。

 さらに写真から、ノコギリ部分の高低差や間隔、側壁の高さ、間口の長さ、表と裏の開口部を覆う大型スライド・ドアのサイズなどを決めていき、大ざっぱな構造と材質を考えます。
 写真によれば、内部の骨組みは鉄骨トラス構造ですが、これは省略するつもり。屋根は波形スレートのようです。スレートは実際に断面を波形にすると、飛んでもないファイルサイズになるでしょうから、濃淡2階調グレーの細かな縞模様を描いてPhotoshopでぼかしたところ、それらしいテクスチャーが得られました。側壁は鉄骨にスレートか、鉄筋コンクリートで壁自体が重量を支えるのか、よく分かりませんでしたが、ここもスレートに決定。窓は結構面倒で、特に天井の採光部は試行錯誤を重ねました。しかし窓にしろドアにせよ、一度パーツを作ってしまえば、コピペと平行ドラッグを繰り返せば良く、敷居にふすまを入れてはスライドさせるような感じで、快適に作業が進みました。本当は、実物の形鋼とか各種部材同様、自分なりに規格化してライブラリを作ってしまえばいいのですが。

●●知るために作る:
 工場が一応完成後、妻に見せたところ「この窓ガラスは…雲と空が描いてあるの?」と言われ。「いや、反射の映り込み(のつもり)なんだけど…本当は、建物内部からは見えないよね」と、ドギマギしました。しかし大筋では、感心してもらえたので少々調子に乗り、最初は省略していた、天井部分を支えるトラス構造も作ってしまうことにしました。文貯さんのサイトで先日、ワーゲンバス製作記を拝読したところ、見えないシャーシやサスまで丁寧に作り込んであり「モデリングとは、こういうことか」と感心したのもきっかけです。AC3Dの公式サイトにある航空機などの作例も、やはり表から見えないストラクチャーを徹底的に作り込んである作品が多く、こういう作者さんは「完成」させるためというより、むしろ「知る」ために作っているように思えてきて、非常に興味を感じました。
 私も建築の知識はありませんが、あれこれの資料を参考にしながら、この時代の工場の骨組みは、どんな形鋼を使って、どんなトラスの組み方を選んだのか、どの部材が圧縮力を受け、どの部材が張力を受け持つのか、どれがより太くなくてはならないのか、などをじっくり考えつつ作業を進めました。この結果ノコギリ屋根は、個別の梁やトラスに支えられているわけではなく、全体が一つの立体的な梁であることや、力学的には複葉機の主翼構造とよく似ていることなど、多くのことが分かって楽しい思いをしました。細部の具体的構造や部材の太さなどは、写真ではろくに見えないため、建築関係資料と推理に基づく私の創作です。また工場の正面に掲げた「VICKERS SUPERMARINE WORKS」の看板は、ちょうどこんな雰囲気に見えるのですが、元資料がモノクロ写真ですので、正しい地色は分かりませんでした。青地にしたのは言わば趣味です。

 建物造りと並行して、整備工場内にぜひ展示したいエンパイア飛行艇のビーチングギアも、写真を参考に作ってみました。またスーパーマリンの水上機系工場となれば、やっぱりS-6Bレーサーを、さりげなく隅っこに飾りたいという欲望には勝てず、台車の形式をネットで調べて、ラフですが製作しました。

●●パリからカタリナを回航:
 前回ご紹介した「Skyvector」でコースを計算し、VOR航法を使いました。ル・ブールジェ空港から、北部海岸のディエップを経て英仏海峡を横断し、イングランド南岸のシーフォードで西へ変針。サウサンプトン水道を外海から守るように横たわる、ワイト島のベンブリッジVORを経てハイス地区に向かい、工場そばに着水しました。

★BT LE BOURGET (108.80 BT )317°
   ▼(316°T)76.6nm31.2min 修正320.6度・GS146.4Kt
★DSA DIEPPE ST.AUBIN (351.000 DSA )
   ▼326°(325°T)64.4nm26.3min 修正329.8度
★SFD SEAFORD (117.000 SFD )
   ▼265°(264°T)47.2nm19.3min
★EGHJ BEMBRIDGE
   ▼319°(317°T)16.3nm6.6min
△GPSN50°52.57' W1°24.08'
Total204.5nm1h23.5m

 スリップから正常に揚陸できないことが分かっているので、最初はサウサンプトン空港を目指すつもりだったのですが、いざ工場を視認してしまうと、降りずにはいられません。海上をタキシングしてスリップに正対し、直前1メートルでシフト+Bを使って係留。あとで遠回りに上陸し直して工場内に乗り入れ、カタリナがスリップから海へ降りてゆくシーンを何度か撮影しました。FlightGearの英国に、ささやかな「別荘」が出来た気分です。投稿画像でご覧頂けましたら幸いです。
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なし 海鳥の旅ピラタス下駄を履く

msg# 1.4.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-4-28 2:13 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 以前から夢見ていた、ピラタスPC-9Mの水上機バージョンを、とうとう作ってしまいました。

 はるばる伊丹からPBYカタリナで、英国サウサンプトン港まで飛んでくる旅は楽しかったし、FlightGearの海は強風でも物理的な波は立たないため、事実上いつどこでも着水可能で、水陸両用機ってこんなに便利なのかと感心しました。しかし一方では、飛行艇の鈍足と鈍重な操縦性は正直、どうにかならないものかと、うんざり気味でもあります。そこで1月ごろから、高速かつ軽快なPC-9Mを水陸両用機に改造する夢想にふけっておりましたが、私の知識と技術ではまず無理と諦めていました。しかし前回ご紹介しました飛行艇整備工場づくりの経験から、何とかフロートの3Dオブジェクトが作れるような気がして来ましたので、思い切って実行に移した次第です。

 カタリナやショート・エンパイア飛行艇のプログラムをよく見ると、水上でどんな風に振る舞うか、空力ファイルと似た形式で、3軸それぞれの力学が記述してありますが、私にはとても現時点では、あんな精巧・複雑なものを理解して移植することは出来ません。従ってPC-9M水上機版(いちおう水陸両用)では、フロートのグラウンド・リアクションなどを様々に調整して、ある程度まで水上機っぽい動きになるよう工夫しました。では、飛び方や設計についてご説明しましょう。

●●海上のインプレッション:
 現在はテスト中のため、自作のスーパーマリン工場を機体起動位置にしています。フロアでエンジンを掛け、エプロン東側に設けた、幅の広いスリップから海中へ。本機の数少ない欠点の一つとして、地上用ギアを出した状態ですと、海中に入っても喫水線まで沈まず、タイヤのまま海面を走ってしまいますので、波打ち際まで来たら何食わぬ顔をして、Gキーでギアを格納することにしています…(^^;)。ただし、カタリナみたいにギアを出したままスリップやエプロンに沈むトラブルがなく、正常にタキシング出来るのは嬉しいですね。

 フロートのグラウンド・リアクション(事実上、見えない固定脚)は、かなりスプリングレートを弱め、ダンピングレートもふわふわにしてありますので、地上用のギアを納めると、機体はずぶりと沈んで白い飛沫(パーティクルを使った spray)を巻き上げ、いったんフロートが大きく沈み、次いで浮き上がって少し揺れ、ようやく安定します。あとで詳述しますが、燃料タンクが空っぽならフロート体積の半分弱が、満タンなら1割強くらいが水面に出るよう、各種設定を行っています。

 スロットルを開いて前進に移ると、間もなく(対地速度10Kt以上で)spray をたっぷり引きながら、速度を上げます。急激に全開すると、エンジン推力による機首下げモーメントが強く出て、フロートが大きく潜ってペラが水面を叩く(むろん実害はありません)ので、スロットルは慎重に開く必要があります。
 双フロート機はラダーの利きが悪く、水中舵が必要だそうですが、工作が大変なので、3Dモデルとしては省略しました。しかし水上の操向は、フロートの前後両方で行うように設定し、後部では操舵角度をマイナスにして逆位相としましたので、少々テールを振る旋回になります。spray で描く航跡との比較では、機体が外滑りを起こしながら旋回しているように見えまして、なかなかリアルです。
 しかし逆位相操舵の欠点として、速度が上がってくると舵の利きが低下し、強風時は垂直尾翼の風見効果が過大となって、風下への回頭が大変困難になります。実機でも、とかく水上機は扱いにくいものらしいですから、これはこれでリアルなんだと考えて、あまり修正せずにいます。操縦のコツとしては、ヨー・コントロールが不足したら一度エンジンを絞ることと、エルロンを一杯に切って旋回内側のフロートを沈め、抵抗を増すと回頭の助けになります(本機の場合、水自体の抵抗はありませんが、フロートのグラウンド・リアクションの転がり抵抗を、通常の車輪の20倍にしているので、荷重を掛けると多少ブレーキになります)。

 この機体は、満タンでなくてもパワーオン時にフロートが全没しやすいので、離水滑走は上げ舵いっぱいで開始します。フラップは1段目です。資料によれば実機でも同様で、フロート前端を持ち上げて凌波性を良くするとともに、後端の水中舵を深く突っ込んで舵効を確保する目的で、やっぱり最初は上げ舵を最大に取るそうです。フロートが浮いてくるのに合わせて、舵を中立に近づけ、そっとローテーション。spray が、ふっと途絶えて空中に浮く気分は、また格別です。
 一般に水上機は、燃料やペイロードを大量に積んだ過負荷状態では、かなり波が立たないと離水が出来ないそうですね。このPC-9Mも、出来れば満タン(私の設定では、かなり過重状態)の場合は、ある程度強い向かい風がないと離水困難にしたかったのですが、実現できていません。

 着水時は、空港への着陸と同様にフラップを全開し、より滑らかにタッチダウンするよう操作します。気を抜いてラフに降ろすと、フロートがドブンと全没し、次いで機体が空中に放り上げられ、翼端から渦流を引いて失速寸前のフラフラ状態で、第2バウンドに入ります。実はこういう特性が欲しくて、かなり念入りに調整したのですが、ある程度は水上機の気分が出たかな、と思っています。昔の水偵乗りの手記などを読みますと、波が高いときはベテランが操縦しても、着水は大バウンドの連続になるようです。

●●フロートの設計:
 ピラタスPC-9Mは、翼面荷重はさほど大きくないものの、ターボプロップ機ですので、長距離を飛ぶ場合は高空を高速で巡航することになります。本来はどうもフロートを付ける飛行機ではなさそうに思えますので、最初は零戦改造の二式水戦とか、地上軍近接支援や空戦もこなした零式観測機みたいな、前面投影面積の少ない単フロート機を思い描いていました。
 しかし水陸両用が前提ですから、単フロートですとメインギアの格納が厄介です。一番簡単なのは、PS-1みたいに両サイドに脚柱を設けて後方に引き込む方式ですが、左右タイヤの間隔が非常に狭く、背も高くなるので不安定で、風のある日はタキシングできそうにありません。車輪を上下に出し入れすると同時に、左右に突き出したいのですが、そんな複雑なリンク機構のアニメーションは書けませんし、実物ですと重量が増えそうで、あまりリアルでもありません。あれこれ考えて結局、双フロートに落ち着きました。
 DHC-3オッターのフロートでも流用してしまえば、話は簡単なんですが…「借り暮らし」ばかり続けていると、いつまで経っても私は、取りあえずの最終目標である機体自作は出来そうにありません。将来への習作のつもりで、ここはやっぱり自作しなくては。

 さて、フロートの寸法を決めます。これは、どの程度の排水量が必要かによりますね。私のPC-9Mは、タンク容量を(燃料計フルスケールの)1400Lbs×2槽に拡大してあり、満タン時の機体グロスウェイトはメートル法に換算すると2887圈これが排水量の最低線ですが、そのままではフロート全没ですから、当然なにがしかの予備浮力が必要になります。
 あれこれ調べますと、水上機の予備浮力として、以下のような例が見つかりました。
  各種ラジコン機  :100%か、もうちょい(フロート体積の半分くらいが水上に出る)
  三菱・零式観測機 :空虚重量で57%、全備重量で51%
  愛知・零式3座水偵: 同   53%  同   40%
  速度競技機    :シュナイダー・トロフィー・レースの末期で離水時15%くらい

 …これらを参考に、燃料タンク空っぽで予備浮力50%程度、滅多に使わない満タン時は、20%くらいでもよかろうと考えました。ただしフロートを自作した場合、体積を正確に計算する方法を思いつかないので、寸法を理論的に決めるには限界があります。予備浮力はあとで検証することにして、さまざまな資料を参考に、とにかくフロートを作ってみることにしました。一応満足できるものが出来ましたが、成型にやや難があったので後日作り直し、ついでにサイズもわずかに大きくして、最終的に次のようなスペックになりました。
 最大高    1m
 最大幅    1m
 全 長    8m
 自 重    50圈滷
 最大断面積  0.744平方
 排水量    2.38邸滷暇棔並審冀譴剖瓩い里如∈蚤臙婆明僉瀋垢機0.4で推定)
 ステップ位置 フロート先端から約54%、機体重心の直後

 フロート外形は、どうか投稿画像をご覧下さい。私は性能重視で、零式水偵や潜水艦搭載攻撃機「晴嵐」のフロートをイメージしてラインを決め、支柱も大胆に流線型断面の1本物としましたが、耐久性とか、搭乗時の足場にしやすいとか色々考えますと、オッターの角張ったフロートの方が実用的でしょうね。

 機体を浮かべるためだけに、こんな大きな物をぶら下げて飛ぶのも悲しいので、内部に補助燃料タンクを付けることにしました。目標は8時間以上巡航することですが、現行のFlightGear版PC-9MのPT6エンジンは高度20000ft以上ですと、スロットルを開こうが絞ろうが、毎時495Lbsの燃料を消費することが分かっています。となると4000Lbs以上搭載すればいいわけで、最終的には機内メインタンクの計2800Lbsに加えて、新たに左右フロート内に各850Lbsずつ計1700Lbsのタンクを増設し、最大4500Lbsとしました(かなり大胆)。フロートタンクはふだん空っぽで、必要なときだけメニューから、スライダー操作で燃料を入れます。

●●各種の工作とプログラミング:
 先日、マニュアルを良く読んで、サウサンプトンに工場をぶっ建てたお陰で、AC3Dの基本操作が以前より頭に入りまして、フロートの製作は比較的快調でした。直径1mの球体を引き延ばして流線型を作っておき、上半分だけにして、切ったり繋いだりしてステップを作るなどさまざまに加工し、フロートの上部・側面が完成。この下に折れ線でキール(船で言えば竜骨)を描き、側面との間に三角の面を多数張って、V字断面の底部を作ります。
 凝った機体ですと、V字底がさらに湾曲したり、チャイン(側面と底面を繋ぐサイドエッジ)の部分だけ底部が平たくなっていたり、飛沫を押さえる工夫がみられますが、あんな難しいものはとても作れません。ひたすら参考図面を見ながら、根気よく多数の頂点を動かして成型しました。フロート支柱は、デフォルトの脚柱を包む位置に取り付けましたので、強度的にもリアルだと思います。デフォルトのタイヤはもちろん外してしまいましたが、基本的にはこのタイヤの高さが、フロート喫水線の基準となります。

 フロート内に引き込むビーチングギア(ランディングギア兼用)も別途、必要ですね。メインギアのオブジェクトは、潰れた円と四角を描いて回転体に加工し、直径40センチ・扁平率50%のタイヤとホイールを一気に作って、ダブルタイヤの中央に支柱を立てたりして完成。前輪は半分に縮小しました。
 前輪と後輪、計4脚をそれぞれ後方へ引き上げて格納しますが、引き込み脚のアニメーションは初めてですので、最初は座標原点を勘違いして、ギア全体が地中に大きな円を描き、慌てて修正しました。精密な脚ドアを作ったり、開閉させるのはまだ無理で、一見ドアみたいなダミーの板を、タイヤ両脇にぶら下げて一緒に動かすだけで我慢しました。ついでに、フロートのグラウンド・リアクションも作っておきます。
 フロートが付くと側面積が増え、垂直尾翼が相対的に小さくなり、利きが悪化するはずですので、もっともらしく見えるよう、機尾にベントラル・フィンを追加しました。こうすると垂直尾翼がやたら大きく見え、練習機なのでキャノピーはもともと特大でもあり、全体のプロポーションは妙にかわいらしく寸詰まり。どことなく3頭身の、SDガンダムに近づいたような気もします。

 これで外観は完成し、喫水線とギアの高さもラフな調節ができましたが、前述のグラウンド・リアクションが未調整で、フロートは言わば単なる固定脚ですので、機体はスポーツカーのように水面をしっかりグリップして、ただ走り回っております。航跡などのエフェクトもありませんので、この時点では本機は「水上歩行をする、何やら怪しいメカ」といった感じです(そういえば、空中浮揚もするしなぁ…って、違うか)。
ここはどうしても、白い水しぶきを上げるようにしたいと思いました。

●●飛沫を上げて走りたい:
 カタリナその他の機体ファイルの中から、wake(航跡)とか spray(飛沫)などの文字を探し、後方へパーティクルを引いて滑走する方法を探りましたが、想像以上に複雑で、移植を試みても作動しませんでした。しかし、これがないと水上機には見えません。困ったな、と思いながらサウサンプトン水道を低空で東進し、ワイト島との間のソレント海峡に出るころ…かつてRAFの水上機基地があったカルショット地区の沖で、旋回する微細な点を見つけました。ロールを打って急降下すると、先日シーナリーに追加した、OBJECT_SHARED の救命艇「アトランティック21」(船外機付きゴムボート)が目に入りました。
 大抵の船舶オブジェクトは静止していますが、これは円を描いて走り、白い飛沫を上げます。ファイルを開くと航空機に比べれば超簡単で、ただパーティクルを垂れ流し続ける仕組みです。これはいい! さっそく拝借して、PC-9M/Models/PC-9M.xml に書き加えると、大成功。機体中央からむくむくと、白い泡のようなものが湧き出して、タキシング中は後方に流れます。海上を走ると確かに飛沫に見えて、大感激でした。

 問題はこれを、どうやって水上滑走中だけ、出すかと言うこと。かつてPC-7改にプロペラのオブジェクトを追加して回転させたことがあるので、ごく簡単な条件分岐のアニメなら私にも書けますが、どうやって水上にいることを機体に教えたらいいのか、かなり悩みました。
 グラウンド・リアクションの調整を進めていたら、陸上姿勢と水上姿勢では当然ながら、地表からの高度(AGL)が違うことに気が付きました。プロパティを確認すると、脚出しで高度3.95ft、脚入れでは1.47ftです。ということは、このAGLの数値(position/altitude-agl-ft)が2.0以上かどうか、「greater than」文で分岐を掛ければいいわけですね。さらに「and」文も噛まして、対地速度が10Kt以上の場合のみ、パーティクルが出るように分岐を追加しました。かくして、ギアを格納してフロートで浮いているとき、しかも滑走中のみ、白い飛沫が出るようになった次第です。非常に単純なお話ですが、私にとっては貴重な勝利でした。さらに飛沫を2本に増やして発生位置も調整し、とうとう見かけだけは、水上機の完成です!
 かつての海軍機に倣い、フロートの先端部分に、プロペラ回転面を示す赤い警告マークを描き込むと、ちょっといい気分になりました。

●●フロートの、空力性能への影響:
 重量や空力面から言えば、フロートは単に性能を食ってしまう邪魔物です。一応、もっともらしい性能低下をプログラムしなくてはいけませんね。
 フロートの単体重量は、果たしてどのくらいでしょうか。あまり資料がありませんが、光人社の「日本の水上機」(野原茂著)によりますと、零観のメインフロート(排水量4420圈砲165.8圈⇔躰或緜紂頁喊緡7300圈砲2本で327圓任后G喊緡味鵜鼎△燭衒振40キロくらいの重量なので、今回のPC-9Mのフロートに当てはめると230キロくらいになりますが、現代日本のカーボン素材でも使えば、半分以下に抑えるのも夢ではなかろうと思い、フロート自重を100キロ(220.46Lbs)として、機体空虚重量に加えておきました。
 フロートの重量は当然、重心位置にも影響を与えます。モーメントを計算すると、機体の重心は24.25インチ下がることが分かり、そのように設定変更しました。

 次は空気抵抗(有害抵抗)の増加ですが、算出方法も調整法も分からず、全くの手探りとなりました。スピードブレーキの効き目を調整して、出したまま飛ぶとか、あれこれ考えましたが妙案なし。胴体もフロートも翼断面も流線型ですから、例えばフロートを追加したことによって、前面投影面積がどれだけ増えたか計算すれば、ある程度の見積もりは出るのではないかと思いましたが、それを実際に飛行モデルに反映する方法が、まったく分かりませんでした。
 空力ファイルの DRAG 軸を見て、Drag_at_zero_lift という項目が有害抵抗のことかな、と見当を付けましたが、value はないので調整できません。プロパティとして「aero/qbar-psf」と「metrics/Sw-sqft」が挙げてあり、JSBsimの解説文を探して読んでみると…前者はたぶん飛行速度によって生じる動圧、後者は主翼面積のようですね。切羽詰まって、試しに主翼面積を増やしてみることにしました。

●●思い切って、主翼面積を増やす:
 これをやると、揚力も操縦性も一斉に変化してしまうので、かなり不適切なのですが…フロートによる前面投影面積増加分と同じ割合で Sw-sqft を増やせば、少なくとも摩擦抵抗分は増やせそうです。AC3Dでは正面図の投影面積計算は難しそうで、画面のマス目を使って概算したところ、デフォルトの陸上版は4.005平方辰任靴拭私のフロートは2本で計1.32平方辰任垢里如△海譴魏辰┐襪般明僂1.3296倍。この増加率に基づいて主翼面積をデフォルトの175平方フィートから、232.66平方フィートに増やしました。

 飛行テストをしたところ、以前よりフンワリ楽に浮き上がり、明らかに離水性能が良くなったことが体感され、「うーん、やっぱり揚力が増えちゃったよ」と苦笑い。でもケガの功名で飛ばしやすくなりました。肝心の飛行速度への影響ですが、高度1000ft、5000ft、10000ft、15000ft、20000ftの全開テストでは、真対気速度がそれぞれ8〜9%低下しました。二式水戦の最高速は、原型機・零戦一一型との比較で18%低下していますから、私の改造機の性能低下は少なすぎるかも知れませんが、取りあえずこれで行くつもりです。

 そのほかの性能面への影響ですが、フロートによる重心位置低下は、機内燃料だけ使う分には体感できませんでした。さすがにフロートタンクを満タンにすると、機体中心軸から相当離れたところに、850Lbsの質量点が二つも出来ますから、ロール運動に変化が現れます。低空で210Ktから左エルロンロールに入れると、舵一杯で2.5秒掛かって1周しますが、フロート満タンでは所要時間が約1秒長くなりました。またバンク中の手放し飛行では、弱いがはっきりと、勝手に水平に復元する傾向が確認できました。
 …まだまだ試行錯誤の段階ですが、水上機版を作ってみたことによって、FlightGearの楽しみが、技術面でも操縦面でも、大きく広がりつつある気がします。

●●謎の爆発炎上事故、対策を発見。
 水上機への改造の副産物として、以前からピラタスPC-9Mにあった、一大欠点を直すことが出来ました。この機体は、水上機用スリップからエプロンへの継ぎ目や、大傾斜した山岳飛行場の滑走路からエプロンに入る部分など、勾配の変動がある部位(山型の突起)を通過する際、ゆっくり走ると、機体が激しく跳ね上がる癖があります。15Ktも出ていれば、あまり揺れませんが、5Kt未満では最悪の場合、棒立ちになって機尾を地面に沈み込ませ、オレンジ色の炎に包まれて爆発炎上します。
 通常の空港は平らなので、陸上機のままですと、あまり問題にはなりませんが、水上機版はサウサンプトンで発着するたびにスリップを利用するため、何度も爆発して不愉快でたまらず、何とかしたかったものの、原因が全く分かりませんでした。

 今回、グラウンド・リアクションをいじっていて、やっと理由が分かりました。通常の機体でしたら、ギアのほかに「ストラクチャー」という項目があって、ノーズとテールの先端および両翼端の位置を定義し、これらが地面をヒットした場合の反発力などを記述してあります。PC-9Mのストラクチャー項目は、なぜかテールの記述がないので、勾配の継ぎ目部分を踏むなどして傾き、機尾が下がった時も、力学的に地上に接触して支える部位が存在せず、そのまま棒立ちになったり仰向けに転覆して、火災判定を招くようです。

 私は、あっと叫んで<contact type="STRUCTURE" name="TAIL"> という項目を追加し、ベントラル・フィンの座標を書き込みました。すると…果たして、機体は完全におとなしくなり、竿立ちになるどころか、どんな微速前進でも、継ぎ目の上でまったく暴れなくなったのです。とうとう、飼い慣らしたぞ!
 分かってみれば、これも単純なお話ですが、ひとまず独力で解決できたことに、大きな満足を味わいました。それでは皆様、よい連休を!!
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なし 六分儀超える分解能

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-6-23 6:40 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。ご無沙汰しております。
 ここ1カ月半ほど、自作のフライト・コードラント(航空四分儀)の改良に取り組んでいました。某有名メーカーの六分儀は、最小目盛りが0.2分角(12秒角)だそうですが、私の新しいコードラントは最小0.1分角または1秒角まで(好きな方の単位で)、太陽や惑星、恒星などの高度角が読めます。フライトシミュレーターの世界で、実世界の六分儀を1けた上回る分解能が実現できたわけで、いささかワクワクしております。

 使いやすさの面でも、高度角の「度」「分」の整数部は、全部の目盛りに添えた数字で直読でき、非常に観測が楽になって、ミス防止に繋がりそうです。改良のカギは、高度角目盛りの示度を60倍に拡大するメカニズムを、ふと思いついたことでした。以下に若干、経緯をご報告いたします。「投稿画像」の写真と併せてご覧頂けましたら幸いです。

●●「分度器」にカーソルを取り付ける:
 これまでのフライト・コードラントは、平たく言いますと、方位盤付き精密分度器でした。機体の動きに縛られず、方位盤は常に北向き水平に、天体の高度を測る分度器は常に垂直を保ちますが、あとは中心に設けたビューで太陽や星を拡大し、目盛りごしに高度角を読む、というだけのことです。
 これでも十分実用になるのは、過去の「旅日記」でご報告した通りですが、正直言いますと、決して使いやすくはありませんでした。以前のコードラントは(私のAC3Dの扱い方に問題があって)ファイルサイズがやたらに重くなる傾向があり、あまり目盛りの数を増やせませんでした。そのため四分儀の生命線である、水平線から天頂までの90度を正確に計る高度角の最小目盛りが、0.1度(6分角)単位にしか出来なかったのは、誠に残念でした。ここは、もし可能でしたら1分角(緯度経度の計算で言えば、1nmに対応する精度)が欲しいところです。
 そこで使用時は思い切り画面を拡大し、最小目盛りの10分の1レベルの目測を交えて、天体高度を0.01度まで読んでいましたが、拡大状態では逆に「いま整数部は何度か」は全く分からす、いちいち画面をワイドに戻して、「度」表記の数字を確認する必要がありました。この数字はファイルサイズ節約のため、10度に1カ所しか設けていなかったので、なかなか視野に入って来ず、扱いにくい代物でした。
 また、私が使う天測計算ソフト「Navigator」は、高度角を「度・分」形式で、分の小数点以下1けたまで入力する仕様です。なので、例えば測定結果が「60.24度」ですと、いちいち「60度14.4分」に換算しなくてはならないのですが、この計算をしている最中に、正確な観測時刻(秒単位まで必要です)をメモし忘れていることに気付いて…「クソッ、やり直しっ!」と叫ぶとか、機上では色々とトラブルがありました。

 六分儀やノギスのような、精密アナログ計測器には普通、カーソルというものがありますね。いったん対象物を照準すれば、手を放そうが少々時間が経とうが、カーソルが目盛り上の一点に停止しているので、後で数値をじっくり読むことが出来るわけです。わがコードラントにも、水平に伸びる線状の高度角(仰角)カーソルを新設し、視野の上下動を自動追尾させて、画面中央で交差する高度角目盛りを読む仕組みにしたいと思いました。
 こうすると、マウスポインタを「⇔」マークに切り替えて、好きなだけ画面を拡大して太陽や星を照準した後、そっとマウスから手を放して画面表示をワイドに変更すれば、落ち着いて正確に数値が読み取れます。「観測時刻も角度も、一瞬で確実に読み取ってメモしなければ!」という緊張からは解き放たれるし、ミスも起こりにくいわけです。またカーソル上に、短いが細密な補助目盛り(一種の副尺)を設ければ、メインの目盛りが粗くても、一けた程度は高い角分解能が簡単に得られます。
 というわけで、自動的に上下動をして視野中央を指す高度角カーソルが欲しかったのですが、カーソルを動かすプログラムの書き方が分かりませんでした。仰角を扱うには、機体のピッチとロールの2軸に分けて考えないといけないのかな…でも私の能力じゃ無理だよな、などと迷走したのが、取りあえずの敗因でした。

 何のはずみでしたか、人工水平儀の球体文字盤の制御プログラムや、フライト・コードラントの高度角目盛りを水平に回転させるアニメーションの応用で、
 (1)まず機体のピッチとロール角を相殺し、カーソルを水平にする。
 (2)sim/current-view/heading-offset-deg の角度だけ、水平面で回転させる。
    これでカーソルの正面を視野の方向に一致させることが出来るので、あとは、
 (3)sim/current-view/pitch-offset-deg の角度だけ、ピッチ方向に回せばいい。
ということに気付きました。これで高度角カーソルは常に、コードラント視野の上下パンを自動追尾してくれます。例によって「分かってみれば簡単」なのでした。

●●カーソルの角分解能を増幅する:
 ここでふと私は、回転アニメーションのvalue(係数と呼べばいいのでしょうか)を変えたら、何が起こるだろうか…と考えました。例えば、フルスケール90度の高度角目盛りの隣に、フルスケール360度のリング状の回転目盛りを新設するとします。このリングを前記(1)〜(3)の方法で回転させたあと、かなり大きな負のvalue値を与えた状態で、もう一度 sim/current-view/pitch-offset-deg を指定し、追加の回転をさせたらどうなるか。例えば、value値が「-360」だったらどうなるか。
 回転目盛りは当然、コードラントのビューが1度上を向く(高度角カーソルも、常に同期して1度上に移動する)たびに、逆方向へまるまる1回転します。つまり高度角カーソルの角分解能を『360倍に増幅』することが出来るわけで、これは重要な発見だと思いました。では仮に value 値が「-60」なら? その時は高度角カーソルの移動量1度に対し、精密目盛りリングは逆方向へ60度余分に動きます。つまり度単位の目盛りに対し、ちょうど60倍の感度増幅が行われます。ということは、このリング上に「0〜59」の角度目盛りを順次6組書き込んでおけば、「度単位の目盛りと等間隔かつ同期して動く、分単位のスクロール目盛り」として機能するわけですよね。こりゃ素晴らしい!

 実際にやってみると、このプログラムは一発で動き、私は「分」直読の専用目盛りを得ました。「投稿画像」にアップしましたが、赤い垂直目盛りが高度角の「度」で、オレンジ色が「分」目盛りです。すべての目盛りに「度」「分」直読の数字を入れたところ、測定結果が極めて読み取りやすくなりました。
 またご覧の通り、高度角カーソルに一種の副尺(小規模な細密目盛り)を付属させ、「分」目盛りのバーと同じ位置に来た副尺を読むことによって、0.1分角および1秒角も読み取れるようにしました。
 (付記:副尺と言いましても、単に主目盛りの間隔をさらに10分の1とか、60分の1に縮小しているだけです。FlightGearの画面は相当極端な拡大表示が利きますので、こういう単純な仕組みでOKです。実世界の計測器ですと、もともと主目盛り自体が「これ以上、細かくは描けない」というレベルで作ってありますので、もう一けた測定精度を上げたければ、ノギスのバーニアスケールのように、例えば主目盛りの0.9倍の間隔で補助目盛りを切って、目盛り同士の間隔の最小公倍数を利用して(たぶん。この解釈自信なし)、ひとけた小さな数値まで読み取り可能にする…といった、高級な仕組みが必要になってきます。私の「副尺」は、拡大機能と言うよりは、主目盛りの数を極端に節約して、コードラントのファイルサイズを抑える工夫であることをお断りしておきます)

 といった次第で、とうとう…本物の六分儀をしのぐ分解能を持った計測器が、出来上がりました。以上の顛末は恐らく、自分で計器を設計される方には、ごく初歩的な常識に過ぎないであろうと想像します。しかしこれらを、独力で(再)発見した私にとっては、やっぱりそれ相応に嬉しい体験でした。

●●精度を上げる闘い:
 私のコードラントは、6個のオブジェクト(アセンブリ部品)を独立ファイルとして作り、ひとつにマージして組み立てていますが、今回の新型は、うち4個を完全に設計し直しました。いまお話しした「分」直読の専用目盛りリングを装備する方法に加えて、最重要部である高度角目盛りそのものに、分単位直読の精密目盛りを組み込んでみるとか、色々な試みをしました。
 この分単位直読の精密目盛りは、水平線から天頂まで微細なバー(スケールサイズで長さ0.5ミリ)が、計5400本も並んで壮観ですが、実際にコードラントに組み込んでみたところ、機能的には大失敗でした。視野を上下左右にパンすると、目盛りが画面内で幾つかに分断されまして、一部の破片は、本来の2倍の角速度で画面上を移動する始末。極端に目盛りの多いオブジェクトを作ると、重すぎるためでしょうか、以前から各種の誤動作が起きています。今回は目盛りを大幅に減らした対策部品に差し替え後も、古いパーツの一部分が「ゴミ」として画面に残るケースが何度か見られました。いったん全オブジェクトを消し、acファイルをカラにしてから、対策済みの部品を始め全オブジェクトを再マージすると、問題なく回復します。

 負荷を軽くし誤動作を避けるには、オブジェクトのグルーピング操作を、極力回避するのも効果的なようです。グルーピングは、特に重複して実施した場合、個々のポリゴンや頂点の位置などを再調整できなくなったり、コードラントの水平ジンバル機能が効かず大傾斜を起こすなど、私の環境では過去に不具合が生じています。今回はどうしても必要な場合、作業の終わりに1回だけ実行するよう留意しました。
 目盛り類を作る際の精度は、もっとも気を遣うところで、累積誤差が発生しないよう、角度計算の方法や目盛り配置の作業手順などに気を配りました。「精度を上げる闘い」は面白いテーマですが、手間も掛かります。私はAC3Dのオブジェクト回転ウィンドウに、小数点以下16桁の数字を果てしなく入力しながら、「ジョン・ハリソン(生涯を費やして、精度の極限を極める時計=航海用クロノメーター1号機を完成させた人)という男の才能と忍耐は、やっぱり凄い」などと、しきりに考えていました…。

     ○

 いよいよ、新型コードラントが誕生。ピラタスPC-9M水上機に搭載し、サウサンプトン空港で、はくちょう座のデネブと、カシオペア座のシェダルを天測してみました。高度角の読みやすさは抜群で、測位計算の結果、緯度は正解より約1.2nm北、経度は約2.5nm西に出ました。テストを始めたばかりですが、FlightGearの旅に使う分には、今回の試験結果は十分に高精度です。
 実世界における天測の実用精度は、私の印象では1nmくらいかな、と思っています。六分儀が商船で毎日使われていた時代に船会社で聞いたところ、「達人だと誤差100mも可能」とのことでした。FlightGearにおける天文航法の精度は、当然ながらシミュレーター側の天体の表示精度など、さまざまな要因が絡みますので、コードラント単体の測定精度が劇的に上がっても、それだけで達人の域に近づけるわけではありませんが、一つの条件ではあろうと思います。

●●わがフロートに水中舵を:
 最近の成果をもう一つ。PC-9M水上機のフロートに、ラダー連動の水中舵を付けてみました。断面はテーパー状で、釣り合い舵面もあり、よく見ると円筒形のヒンジが付いているとか、一応は舵らしく見えるように楽しんで作りました。プログラムは他機の引用に過ぎませんが、考えてみるとこれは、私が作った初めての動翼でして、そう思えばまぁ、ちょっとは可愛いです(^^;)。
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なし Ver.2.12で風景が進化

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-9-30 1:16 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです、どうも大変ご無沙汰致しました。Ver.2.12 正式リリースおめでとうございます。
 さっそくインストールし、イギリスからピラタスPC-9M水上機で旅を再開して、アイスランドまで足を伸ばしました。今後グリーンランドを経由して、過去ほとんど飛んだことのない、カナダ北極圏の群島地帯をめざすつもりです。
 以下に取りあえずの2.12感想と、旅日記をご紹介致します。関連の画像は一足早く、9月26日にアップロードさせていただきました。

●●地域性が配慮され、氷山も出現:
 多忙やら体調イマイチやらで、今年はあまりモチベーションが上がらず、水上機の世界一周「水鳥の旅」も、イギリス南岸・サウサンプトン港に整備工場を建てたきり、思い掛けず長期の滞在となりました。モチベーション低下の理由の一つは、FlightGearのシーナリー設計には地域差が乏しく、どこへ行っても似たテクスチャーが使われ、気候風土の違いが味わいにくいことです。要するに…FlightGearの地球を、何年かタテヨコに飛び回っていますと正直、飽きちゃうのですな。
 最近はテクスチャーの種類が増え、2.10でも150種を超える基本的な絵柄(Ver.2.12はやや多い)を持っていながら、実際はごく一部しか活用されていません。例えば黄緑系の耕地テクスチャーは、イギリスもスイスも兵庫県も同じもので、樹木の立体オブジェクトとなると、さらに極端に種類が少なく、何年か前のバージョンでは、サンテグジュペリになったつもりでサハラ砂漠西岸の飛行場に降りたところ、滑走路脇にはヒマラヤ杉の森林が広がっていて、がっかりした覚えがあります(^^;)。
 アフリカの湖では、ぜひフラミンゴが見たい、とまでは申しません。しかし、もう少し細かく気候風土に合わせたテクスチャーを貼り、3Dの木々に南方系の植物も加えて、せめて緯度や気候区、出来ればお国柄の違いまで出して欲しい、というのが年来の願いでした。

 先月、本家で Changelog 2.12(正式リリース前のドラフト版)を斜め読みしていたら、嬉しいことに本バージョンでは、シーナリー表示が部分的に強化されたことが分かりました。特に目に付いた改良情報は、
 ・北極海に氷山が出現する。
 ・緯度が上がると雪線の標高が下がる。また雪線より上では、樹が落葉する。
 ・「詳細な気象モデル」を使うと、雲はよりリアルになる。
 ・インドネシア、中東、イギリス、北大西洋諸島、グリーンランド、マダガス
  カルでは、地域固有の立体モデルやテクスチャーが表示される。
…などです。幸運にも私の旅は、これからグリーンランド方面へ進みますので、まさにおあつらえ向きの展開となってきました。

 まず2.10でUFOを起動し、サウサンプトン周辺やグリーンランド、マダガスカル島など数カ所の風景を記録したあと、2.12のバグ出し用評価版をインストールして比較したところ、確かに印象が変わりました。新バージョンは地域ごとに色遣いが変化し、全体にややカラフルで、特にマダガスカルなんて、以前は温帯と同じテクスチャーが貼られていたのに、一転していかにも暑い景色になっていて、こう来なくっちゃ! とワクワクしました。マダガスカル沿岸の都市テクスチャー部分(とはいえ、建物の間隔が広く緑地帯どっさり)に降りてみると、おおっ…ついに熱帯樹が出現しましたね、椰子ありバナナあり、感動的です(^^)/。
 シーナリーのデータ自体は、この比較テストの段階では2.10と共通ですので、FlightGear側で緯度経度を見分けて、地域ごとにテクスチャーの割り当て方法を変えているのでしょう。今後のシーナリー関係の進化が、引き続きすごく楽しみです。

 グリーンランド沿岸では、氷山も確認できました。不定形をした一つの3Dモデルを、タテヨコに回転させて数種類の氷山に見せかけており、なかなか巧みな設計です。ただし季節を Winter に切り替えると、なぜか出現しなくなります。この辺は不思議ですね。また出現個数や表示サイズが変えられると、もっと楽しそうです。(メニューに、一部それらしきスライダーもあるのですが、アクティブになっていません)

●●アイスランドへ出発:
 北極圏の旅は、実世界では8月末くらいまでが勝負のようです。すでに秋分を過ぎてしまい、気持ちが焦りますが、FlightGearでは氷の状態は関係ないので、本当に暗くなり始めるまで、まだしばらくは大丈夫。以下の飛行計画は、サウサンプトン=レイキャビク間ですが、実際はグリーランドの少し先まで一気に作ったため、VORの乏しい地方ではGPS使用を想定し、全体を大圏コースで表記しました(私は推測航法が中心ですので、普段は一定針路をとり続けるラームライン=航程線ルートを使います)。距離や方位の測定は、以前ご紹介した航法サイト「SkyVector」で行いました。
 以下、各区間は磁気方位(カッコ内真方位)。末尾の数字は、対地速度290Ktで飛んだ場合の所要時間です。
SOUTHAMPTON VOR(113.350 SAM )
   ▼206° (204°T)5.2nm1.1min
GPSポジション N50°52.54' W1°24.13'(私の整備工場の位置)
   ▼094° (093°T)24.6nm5.1min
GOODWOOD VOR(114.750 GWC )
   ▼047° (046°T)41.4nm8.6min
BIGGIN VOR(115.100 BIG )(ロンドン南方、ビギンヒル空港)
   ▼008° (007°T)10.5nm2.2min
LONDON CITY VOR(322.000 LCY )(ロンドンシティ空港VOR)
   ▼242° (240°T)2.9nm0.6min
GPSポジション N51°28.80' E0°0.03'(ロンドン・グリニッジ公園。経度ゼロ子午線付近)
   ▼273° (272°T)17.5nm3.6min
LONDON VOR(113.600 LON )(ヒースロー空港のVOR)
   ▼322° (321°T)75.2nm15.6min
BIRMINGHAM VOR(406.000 BHX )
   ▼327° (323°T)66.2nm13.7min
EGGPLIVERPOOL リバプール・ジョン・レノン空港
   ▼349° (346°T)27.2nm5.6min
BLACKPOOL NDB(318.000 BPL )
   ▼009° (005°T)35.5nm7.4min
GPSポジションN54°21.69' W2°56.12'(湖水地方のウィンダミア湖)
   ▼010° (007°T)178.7nm37.0min
ABERDEEN VOR(114.300 ADN )
   ▼352° (349°T)101.2nm20.9min
KIRKWALL VOR(108.600 KWL )(オークニー諸島スカパフローのVOR)
   ▼312° (307°T)639.4nm2h12.3m
KEFLAVIK VOR(112.000 KEF )(アイスランド西岸)
   ▼073° (057°T)18.3nm3.8min
REYKJAVIK NDB(355.000 RK )アイスランド首都・レイキャビク空港の進入NDB
   ▼135° (119°T)2.7nm0.5min
BIRKREYKJAVIK レイキャビク空港
約1241マイル

 0705時、サウサンプトンで Ver.2.12 正規版を起動。無風。4200ftにfewの雲はあるが、上天気です。
日本時間では朝ですが、イギリスは前夜の10時。そこでパソコンをUTC表示に合わせたまま、実際の時刻設定はJSTにしました。こうすると、天測計算ソフトを使う場合に操作が楽なのです。(しかしMETARが受信できなくなることを失念し、以後は自動的にデフォルトの快晴に固定されましたが、私はなかなか気が付きませんでした…長いブランクのせいですな)

 0737時、サウサンプトン空港を離陸して海へ。間もなくワイト島の北岸にある、自作のスーパーマリン工場前の海面に着水、スリップ(滑走台)から機体を揚陸してエンジン停止。フロートタンクを含む全タンク4500Lbsを満杯にして再始動したのち、すぐ工場を出発しました。
 サウサンプトン水道を東に向かって滑走し、1分3秒掛かってようやく離水。久しぶりの旅なので、しばらくジョイスティックを握って手動操縦を楽しみます。アイスランドまではVOR航法の予定で、まずサウサンプトン東方のグッドウッドVORを経由して、ロンドン南部のビギンヒル空港へ。ここはかつて天文航法や、ABN改造の研究に使った関係で、私には懐かしい「イギリスの定宿」の一つです。

●●経度ゼロの子午線から、はるかなる日本へ:
 まだ機体が重く、7000ftで対地240Ktしか出ません。機体も重いけど、パソコンもめちゃ重い。ロンドンが近づいて画面表示の負荷が増えると、数回にわたって1分近く、画像処理が止まってしまいました。たびたび停止するので、航空図にしていた「SkyVector」のホームページを閉じ、高度を下げながらビギンヒル通過。ここからロンドンシティ空港を目印に、テムズ川の真上を低空で西へ向かいました。
 FlightGearのロンドンは、かつては殺風景なビルの海。最近は18世紀風の、赤い屋根瓦に覆われたテクスチャーで、逆に古風すぎると思っていたのですが、今回のバージョンアップで、ふんだんに緑地帯を抱え込んだ都市風景に変わりました。いささか田園風で緑が多すぎるのでは、とも思ったのですが、GoogleEarthでロンドンを拡大してみると、これほどではないにせよ、確かに公園や植え込み、街路樹などが氾濫しています。

 愛機はグリニッジ地区を低空でフライパス。これで東から西へ、経度ゼロの本初子午線を横切りました。2011年8月〜2012年1月にご紹介させていただいた、グリニッジ=明石間の長距離フライトでは、天文航法を交えて東回りに、経度135度に及ぶユーラシアの旅を行いましたが、今度は西回りに225度分の子午線を、どっさりと越えてゆくことになります。
 西に向かいながら20000ftを目指して、ゆっくり上昇。0822時、ヒースロー上空を12000ftくらいで通過。105KIASしか出ないので翼端から渦流を引いており、ちょっと失速が気になりますが、淡々とVOR航法+オートパイロットの磁気針路保持モードで飛び続け、バーミンガムやリバプールを無事通過。北方の湖水地方に機首を向けました。

●●ランサム・サーガの世界:
 湖水地方というのは、縦横100キロ弱の山地に大小無数の湖が散在する、イングランド北西部の有名な景勝地です。最近、子供のころに読みそびれた英国作家、アーサー・ランサムの児童文学シリーズを7巻ほど読んだのですが、第1巻「ツバメ号とアマゾン号」などの舞台は、この湖水地方のウィンダミア湖がモデルとか。両親からみっちり、小型ヨットやアウトドア生活の訓練を受けた子供たちが、湖上の無人島キャンプなど、冒険に満ちた長期休暇を思い切り楽しむ連作で、ヨットマンである作者の実体験が土台だけに、帆船の詳細極まる操り方を始め、キャンプや登山などの技術がふんだんに書き込んであり、読み始めると止まりません。1930年代が舞台の古い作品集ですが、イギリス人は戦前から伸び伸びと、豊かなグリーンツーリズムを楽しんでいたことがよく分かり、ちょっとうらやましく思いました。

 さて、Ver.2.12のウィンダミア湖を見に行くことにします。リバプール北方にある、ブラックプールNDBを進入開始点に選んだのですが、さっぱり受信できません。パソコンの負荷を気にしながら、航空図代わりにAtlasを起動。問題のNDBを確認しますと…なぁんだ! 今回も SkyVector に掲載された周波数が間違っていたのです。GPSによるコース作成には大変重宝ですが、私のようにVOR/NDBと推測航法・地文航法がメインで、たまに天文航法というバーチャル飛行家には、どうも不向きです。
 南北に細長いウィンダミア湖は、両岸に広がるパッチワークのような耕地と、あちこち黄緑がかった丘陵の印象が、画像で見る実景とよく似た雰囲気で、なかなかいいムードでした。水上機の特権で着水し、湖上の風景を楽しんで離水。まだ搭載燃料が3480Lbsと重くて、湖の北端にある低い山を越える際、ヒヤリとしました。

●●スカパフローを経て、レイキャビクへ:
 1014時、スコットランドのアバディーンを通過。燃料がやっと3000Lbsまで減り、少し飛びやすくなったので、真対気速度を稼ぐため25000ftへ上昇。やがて北海に出て、1037時にオークニー諸島のスカパフローで変針し、いよいよアイスランドに機首を向けます。
 スカパフローは幾つもの島に囲まれた入り江で、かつてイギリス本国艦隊の根拠地でした。第一次大戦では2隻のUボートが潜入を企て撃沈されましたが、第二次大戦では開戦劈頭にU-47が深夜、水上航行で突入し、戦艦ロイヤルオークを沈め、脱出に成功したエピソードはよく知られていますね。快晴のもと、「あのへんがギュンター・プリーン艦長が通った、カーク水道か」と、しばし見下ろします。

 この時点で対気速度は、198KIAS(274KTAS)ですから、アイスランドまでは風力補正無しで2時間20分掛かる計算。つまり1257時ごろ着くわけですが、HSIを眺めていると、左へ10度くらい偏流補正しないと真っ直ぐ飛べません。ウェザー・メニューを確認すると、西寄り35Ktくらいの強風を食らっていることが分かったので、到着はもっと遅れそうです。現実世界の私は1時間ほど後で、妻と昼食に出かけてしまいましたが、パソコンの前に戻ってみると、愛機は既にアイスランド西岸を通り過ぎ、その先の洋上に出ている模様でした。
 KEFLAVIK VORが受信できているのに、DMEは全く反応しません。となるとすでに150〜200nmくらい離れている可能性が高く、いっそグリーンランドに向かうべきかも知れません。しかし離席時間から推定すると、そこまでKEFLAVIK VORが遠いようにも思えません。やはり引き返して計画通り、レイキャビク空港を目指すべきでしょうか。ともかく早いところ、もっと正確な機位を出さなくては。

 VOR受信方位によると、機体はKEFLAVIK の西南西にいます。同時にレイキャビクのNDBも受かっており、これも方位は同じですから、両局は一直線上にあるわけで、これが取るべき針路に間違いなく、さっそく機首を向けました。さらにアイスランドのVORとNDBを数カ所受信し、相対方位からAtlas画面で大ざっぱな位置を出してみると、やはりKEFLAVIKにどんどん近づいているようです。なのにDMEは反応しません。
 1343時、真正面に陸を視認。降下を開始します。いよいよVORが近くなってから、やっと「KEF」のモールス信号が聴取でき、DMEも作動しました。やれやれ…。改めてAtlas画面を見ると、KEFLAVIK VOR のコンパスローズ(航空図上の方位盤)は極めて小さく、滑走路のILSが判別できるまで倍率を上げても、まだすぐには表示されないサイズです。Atlas画面では、コンパスローズの大小は無線局の出力を示しているので、このVORはコンパスロケーター(ミドルマーカーの位置に設けたNDB)のように低出力で、最終進入専用と思われます。珍しいものを体験しました。アイスランド南岸には別途、INGO VOR という大出力の局があり、今回も早めに受信できていました。本来はこの局を基点として、レイキャビクに向けて中間アプローチをすべきだったのでしょう。

 東西に長い湾を越え、東方にあるレイキャビク空港に接近。地表は暗めの色調の草原と森林、そして明るい黄緑系の森が交差して、V2.10までよりもカラフルです。地表近くから見ると、森はシェーダー効果でデコボコに作ってあり、以前よりリアルに見えます。着陸やタキシングができる草原ではない、ということも一目瞭然ですので、これはいい工夫ですね。
 レイキャビク周辺は、緑の大地も市街地も空港にも、大小の断雲が接地して走り回っていましたので、雲が唯一掛かっていない横風用滑走路に進入。30Ktくらいの猛烈な向かい風で、ややアンダーシュートしましたが、比較的スムーズに降ろすことができました。1404時、着陸。2分後にランプインしてエンジンを停止。燃料残は1126Lbsと、搭載量の約4分の1でした。

     ○

 アイスランドは日本同様に火山国で、富士山をごく平らに押しつぶしたような丘が連なっています。たぶん日本より、溶岩の粘度が低いのでしょう。日本とは逆に、海洋プレートが上昇してくる地点に当たり、湧き出し口は「ギャオ」と呼ばれる裂け目になっているそうです。ギャオは非常にたくさんあるので、分布図を見つけてUFOで丹念に探しましたが、1本1本は小さな川くらいのものらしく、FlightGearの地形には再現されていないようでした。しかし、美しく優しい寂しさ、とでも言うような独特の景色が堪能できました。音楽で言えば、エンヤの歌みたいな雰囲気でしょうか。

●●各種の設定および、天測の際のマウス感度問題:
 レイキャビクは、とても小さな市街地です。なのにアーバン・エフェクトの影響が過大に出たのか、フレームレートが一けたまで落ちてしまい、植物の発生密度を最低線まで落としたり、シェーディングを粗くしたりして、何とか20〜40程度まで持ち上げました。ご参考までに、私の環境は以下の通りです。
 2010年春購入の、マウスコンピュータ製ゲームノート
 Win-xp Pro SP3
 Intel Core i7 Q720@1.60GHz
 925MHz 2.99GB RAM
 GeForce GT240M

 …次に気になったのが、シーナリーの展開面積の狭さです。視界100nmに設定したのですが、実際に見えているタイルの端までは30nm程度に過ぎず、高度20000ftでも、部屋の床を見下ろしているような風景になってしまい、残念でした。以前、Ver.2.0.0の環境では、大阪上空から日本海と太平洋が一度に見えたものですが、ああいう夢のような視野が再現できないものか、しばらく考えました。
 結局、メニューにある Ajust LOD file の「bare」(最遠景に使う、一番粗いシーナリー表示)設定を、デフォルトの30000mから1200000mに変更したところ、はっきり実効視界が広がりました。少々重くなりましたが、確かに最大では60nmくらい見えている気がします。レイキャビクと大阪で飛行テストをしまして、いずれも特に問題なし。PC-9Mに積んだ天測用フライト・コードラントも、ちゃんと作動しています。

 実は、そのフライト・コードラントで大問題が発生しました。この装置を使うには、マウスの移動速度を最低で10分の1、出来れば40分の1くらいに低下させて、角分解能を上げる必要があります。以前、toshiさんからご提供いただいた改造データを利用して、これまではうまく mice.xml を書き換えることが出来たのですが、Ver.2.12では仕様が変わったのか、私が追加情報の書き込み位置を間違えたのか、同じ方法を使ったところAltキーを押した状態では、まったく視野を動かすことが出来なくなりました。残念無念! デフォルト状態ですと、画面のティルト角度は、最小単位が10分角ですから、このまま天測すると10〜20nmくらいの測位誤差が出てしまい、使い物になりません。せっかく高精度の改良コードラントを作ったのに、困った困ったと頭を抱えました。

 何とか自分の力で出口が見つからないかと、数日にわたり mice.xml をいじりまして、取りあえずマウスの移動速度を、常にX軸方向は10分の1、天体の高度測定に使うY軸方向は、常にデフォルトの40分の1に固定してしまいました。factorの変更だけなら私にも可能ですから、これで一応天体を照準することができます。視野を縦横にパンする際は遅くて不便ですが、ジョイスティックのハットスイッチで粗動を行い、マウスを微動専門とすれば、これでも何とか実用になります。しかし、もし可能でしたら、いずれお時間のあるときにでも、Ver.2.12向けの対処法をご教示いただけましたら望外の幸せです。
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なし グリーンランド縦断

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013-10-11 10:33 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 今回はアイスランドのレイキャビクを出発し、「世界最大の島」グリーンランドを縦断して、北西端に近いチューレ米空軍基地へ進出します。FlightGear Ver.2.12から、グリーンランドのシーナリーは独自の配色になり、なかなか寒そうな雰囲気が出ていました。

 このフライトは当初、珍しくもGPSを使いまして、チューレからそのまま一気にバフィン湾も飛び越え、カナダ北方に広がる、北極諸島の真ん中付近にあるレゾリュートベイまで、約8時間の無着陸飛行を行いました。秋の北極地方は日照がどんどん短くなるので、先を急いだのです。
 しかし前回の書き込みで、六分儀代わりの自作フライト・コードラントに必要な、マウスの分解能を向上させる改造について相談させて頂いたところ、「FlightGear用の気泡六分儀」の掲示板でご覧のように、さっそくtoshiさんからていねいな技術援助を頂きました。お陰様でVer.2.12でも引き続き、天文航法が可能になりましたので、これを使わない手はありません! またこの飛行と相前後して、植村直己さんの北極圏犬ぞり旅行の本を何冊か読み返していたら、何の苦労もせずに飛べるGPSに甘えては申し訳ない…という殊勝な気分がムクムク湧いて、抑えることが出来なくなってきました。

 そこでもう一回休みをつぶして、無線標識の少ない大雪原や氷の海を推測航法で越え、天文航法でバックアップし、使える場所だけVORやNDBを利用してゴールするという、私の好きな伝統的スタイルのナビゲーションで、もう一度(カナダ進出は次に回して、チューレまでですが)飛び直すことにしました。今回は、その二度目のフライトのご紹介です。

●●操縦が簡単な、近似的大圏コースを作る:
 GPSを使わずに、高緯度地方の長距離フライトをするには、少々準備が必要です。緯度が上がるほど、経線は極に向かって集中度を増すため、特に東西方向のフライトは、航法の基本であるラームライン(等角航路。メルカトル地図上は直線)でコースを引くと、南へ丸く張り出した緯度の線に沿って飛ぶことになり、コースが歪んで遠回りになります。かといって歪みのない大圏コースを選ぶと、コンパス上で針路を刻々と変えなくてはならず、オートパイロットの針路保持機能では飛べません。こういう場合、大圏コースを幾つかに割って、折れ線状のラームラインに置き換え、近似的に歪みを解消するのが古くからのやり方です。

 今回は、出発点アイスランドのレイキャビクから、まずグリーンランド南東岸のクルスク(小空港とNDBあり)まで進出し、ここを起点として縦断コースをたどり、一気に北西部のチューレに向かいます。以前お話ししたコース計算サイト「SkyVector」を使って、まず画面上にクルスク=チューレ間の大圏コースを描きました。次に、この線上に数カ所の中継点(変針点)を設けますが、今回は南北寄りの方向に飛ぶため、高緯度の影響によるコース歪み(遠回り)が少ないことから、中継点は2カ所のみとして、画面から緯度経度を読み取りました。あとは普段の長距離フライト通り、各地点の緯度経度を航法フリーウェア「virtual E6-B」に打ち込めば、地点間の距離と針路が出ます。これで大圏コースは、クルスク→中継点A→中継点B→チューレという、針路一定のラームラインを使った近似的な分割コースに置き換えられたわけです。

(注:NDBとVORの後の数字と記号は、周波数とコールサイン)
◎レイキャビク空港BIRK 64°07'48N-21°56'30W(64.1300-21.9415) VOR112.0KEF
   ▼282.5deg 398.63nm(397.66deg 289.36nm)
☆クルスクNDB377DA 65°34'14N-37°12'25W
   ▼326.97度 377.85nm
△中継点A(グリーンランド山中)70°51'N-46°30'W
   ▼318.75度265.14nm
△中継点B(グリーンランド西岸)74°10.37N-56°13.48W
   ▼308.02deg 230.81nm
★チューレ空軍基地(BGTL)VOR 76°32'32N-68°14'23W 空港は5nm西
 VOR111.0THT ILS109.5-08T(132Mag)←Tは真方位、Magは磁気方位。

 以上の全航程は1272.43nm。うちグリーンランド縦断のクルスク=チューレ間は、3区間の合計が873.80nmです。両地点間の飛行距離を、使用する航法別に比較すると、次のようになります。
正規の大圏コース:872.77nm
近似的分割コース:873.80nm
ラームライン直航:882.31nm

 わずか2カ所を変針点とした近似コースでも、滑らかに変針を続けながら飛ぶ正規の大圏コースと比較して、たった1.2nm(0.14%)のロスで済み、この方法の正しさが改めて裏付けられました。

●●真方位か磁方位か:
 実際にフライトをするには当然ながら、次のような作業が必要です。
・まず偏流修正。真方位の針路に、virtual E6-B などで風向風速のベクトルを加え、修正針路と
 対地速度を算出。ついでに、次の中継点までの予定時間を出しておく。
・次に、各飛行区間の中点の地磁気偏差を調べ、真方位の針路に足し引きして、磁針路を出す。
・実機ではさらに、自差=機体磁気によるコンパス誤差も要修正(幸い、FlightGearでは不要)。
・離陸前に、ディレクショナル・ジャイロやHSIを、正しい磁方位に調整し、コースバグがあれば
 コンパス針路に合わせておく。
…やっと、1区間の針路が決まりました。短距離のフライトでしたら、これで出発ですね。しかし長距離の場合は、変針点を通過したり、「おおっ、雲の高度と形が変わった。ということは、風向風速が変化したな!」と気付くたびに、上記の偏流修正から順にやり直すことになります。結果、航法計算に費やす時間と労力が非常に大きくなるため、これまで私は多くの場合、不本意ながら真方位を使って飛んでいました。

 ご存じのようにFlightGearでは、HUD最上部のコンパスは真方位ですので、これとデフォルトのオートパイロットに設けられた「True Heading」モードがあれば、どこにでも行けます。また2010〜11年の北極越え「オーロラ・フライト」の際は、極地向けに人工的な「南北」を設定するグリッド航法を近似的に再現しましたので、極周辺のややこしい磁方位で悩まずに済みました。とは言え、シミュレーションを面白くするためにGPSの利用を避けるのなら、磁北極が近くて計算が困難であればこそ、やはり本来はきちんとディレクショナル・ジャイロを更正しながら、磁方位で飛ぶべきなんでしょうね。よりリアルにやる方が面白いのですが、それではちっとも飛行距離が伸びない! このあたりは私の航法のジレンマです。

 今回も一応、磁方位でグリーンランドが縦断できそうか検討しました。航法精度上の不安は当面二つです。縦断コースは経差11度、距離にして800nm近くあり、飛行中に偏差が約15度も動きます。たった2カ所の中継点で磁方位を計算したのでは、恐らく精度が粗すぎるでしょう。この問題はまあ、中継点を増やせばいいのですが。第2に、使用する磁気偏差をどうやって正確に求めるか。近年、磁北極の移動速度はどんどん速くなっているのだそうで、手元の古いデータでは大丈夫かな?
 そこで、米国NGA(National Geospatial-Intelligence Agency=国家地球空間情報局)から、新たに地磁気偏差図をダウンロードしてみました。最初の問題については、偏差の勾配がほぼ均等だと分かったので、もう少し中継点を増やせば、粗い案分計算でも大丈夫と思われました。入手した図は2000年版ですが、偏差の経年変化の年率分布も曲線で描いてあるので、今年の偏差が計算できます。これで第2の問題もクリアしたと思いました。ところが…試しにチューレで機体を起動して internal properties の磁気偏差を読み、NGAの偏差図から試算した値と照合したところ、約1度ずれており、あまり精巧なものではないようです。

 もちろんFlightGear内部の偏差処理法を十分勉強すれば、何か手はあるはずですが、今回そこまで時間とエネルギーを費やすかどうか。結局、完全にリアルな磁気方位による高緯度飛行は先の楽しみとして、当面は引き続き真方位ベースで旅をすることにしました。

●●灰色と暗緑色の大地:
 UTC(協定世界時=GMTと同じ)の朝、日本時間で言えば午後に、レイキャビク空港で FlightGearを起動。使用機は引き続き、ピラタスPC-9M改水上機です。
 現在のピラタスPC-9Mには、Hydeさんが開発された高性能のオートパイロットが載っており、英国からのフライトでは、高度や上昇率、磁方位の針路(SkyVectorでコースを描くと、区間ごとに自動計算)を打ち込みながら、ごく快適に飛んできました。一方、デフォルトのオートパイロットも操作が超簡単で、真方位でも針路が入力できるうえ、「Ctrl+W」さえ押せば、ウィングレベラーによる簡略な針路保持も可能、といった長所があります。私はHydeさん版とデフォルト版、それぞれのオートパイロットを組み込んだPC-9M水上機を用意しており、以後しばらくは真方位の方がずっと楽ですので、デフォルト版の出番となりそうです。

 例によって、燃料をフロートタンクまで4500Lbsの満タンに。エンジンを始動し、無線標識の周波数や方位をセットします。これまでの経験によると、わがピラタスPC-9M改水上機は満タン時、陸上では2000mクラスの滑走路が必要ですが、レイキャビク空港の最長滑走路は1500m級。そこで今回も海から出発することにしました。誘導路を移動し、RWY-19の南端西側に見つけておいた、天然の水上機用スリップウェイと言いますか、なだらかな傾斜をゆっくりタキシングして、穏やかな海面へ。
 シミュレーション時刻のUTC-0940時ごろ、約1分間の滑走をして離水。約20nm西にある KEFLAVIK 空港VORのアウトバウンド・ラジアルをインターセプトし、西北西へ向かいながら、ゆっくり高度を稼ぎます。かなり上昇率を抑えても、機体が重くて減速が続くため、途中で2回ほどレベルオフして再加速し、また上昇。1000時ごろ、なんとか18000ftに着けました。55度9Ktの風を受けているので、対地速度は266Ktも出ている計算です。クルスク通過は1100時ごろでしょうか。

 太陽とほぼ直角の方向に、昼間の星が見えます。これはありがたい! 天文航法には複数の星の観測が必要ですが、星を視認する方位の狭角が大きいほど、正確な測位計算が可能です。天測計算ソフト「Navigator」の索星図(星座早見の電子版)を開いてみると、どうやら金星のようでした。
 1024時、金星と太陽の天測を試みました。さきごろ徹底改良したフライト・コードラントは、高精度かつ非常に使いやすくなり、toshiさんのお陰で拡大・微動操作も小気味よく決まって、素早く高度角と時刻が得られ大満足です。ここで飛行時間と方位から、チャート代わりのAtlas画面上で、おおざっぱな推測位置も出し、測位計算の出発点としました。
 算出した位置は北緯64度42分、西経28度26分で、このときのインターセプト(推測位置と、実測で得た「位置の線」の距離。これを基に実測緯度経度を算出する)は金星が約4nm、太陽も約13nmにとどまっており、計算ミスや大きな測定誤差はありません(何か間違っていれば、100nm以上ずれるものです)。かくして最初の天測はスパッと決まり、第1中継点クルスクまで、ちょうど半分ほど来たことが分かりました。

 やがて右前方に、直線的な海岸線を発見。Atlas画面と各種資料によれば、陸岸ではなくて流氷帯の端の部分です。しかしテクスチャーは緑っぽく、なかなか氷には見えません。また岸辺のあたりには、白いアイスキューブのようなものが十数個、点在しているのが見えました。現バージョンから登場した、お待ちかねの氷山です。
 そのうち流氷ならぬ、本当の陸岸や島々が見えてきて、NDBを受信しながらクルスク空港上空を通過。はるかなるチューレに向かって定針しました。リアス式の海岸を越え、緩やかな丘の広がる内陸へ。湖が点在する灰緑色の土地と濃い緑の森林が、独特のまだら模様を描いて入り交じり、印象的な眺めでした。

●●大雪原:
 濃緑色の森林の彼方に、明るい灰色の大雪原が見えてきました。森林との境界は、不思議な細かいボツボツ模様になっており、初めて見る光景です。今度のFlightGearは、METARの気温データと緯度情報をもとに、雪線の標高を自動計算しています。なので、起動するたびにその日の気温を反映して、積雪範囲が微妙に異なるのですが、森林部分のテクスチャーはシェーダー効果によりデコボコに見えますので、ちょうど積雪が始まる標高では、森の緑と雪の白が入り交じって、無数のドットを形成するのだろうと思います。くっきりした境界線ではないため、上空から見ると、なかなか自然な感じがします。

 1135時ごろ、このボツボツに見える森林境界を越えて、広大なグリーンランドの大部分を平たく占める、内陸の大雪原に入りました。何分か飛び続けると森林は見えなくなり、明るい太陽のもと、ひたすら地平線まで360度の雪景色が広がります。シミュレーションとはいえ、なかなか圧倒的な光景でした。以前飛んだ北極海は冬、つまり夜でしたので、氷原なんてあんまり見なかったし。緩やかな丘陵もあるシベリアのツンドラとも違って、ここは本当に地平線まで白くて平らです。「Ajust LOD file」の設定を調整し、大視界が得られるようにしておいて良かったと思いました。
 現実のグリーンランドは、ほぼ内陸全域にわたる大雪原が巨大な氷床で出来ており、一番厚い部分は3000mくらいあるそうです。その下の岩盤は沈んで一部は海面下になっており、厚みも構造も南極大陸によく似ています。大氷床に覆われた内陸は、沿岸や北極海よりも寒冷で、人は住んでいません。植村直己さんはオーストラリア縦断に匹敵する距離の酷寒地獄3000キロ、それもほぼ前人未踏のコースを、よくまあ一人で犬ぞり旅行したものだと、改めてつくづく感心しました。
 そろそろもう一度、天測をしましょう。

●●天測計算をめぐる「画期的な」アイディア:
 2度目の天測では、今回初めての試みとして、航法計画にある「中継点A」の座標を、そのまま推測位置(位置計算の基点)として利用することにしました。

 どういうことかと言いますと…天文航法では理論上、三つの天体の高度角と時刻が分かれば、自分の緯度経度が算出できます。ただし複雑な三角関数の連立方程式になるので、コンピューターが現れるまでは、数学者でない限り、船上で素早く解を出すのは困難だったと思います。
 ならば、作図で現在地を出したらいいのでは? 実はこれもダメです。特定の天体を、測定結果通りの高度角で見上げる場所は理論上無数にあり、これらを結んだ線は直径数千キロの円になります。現在地を出すには、こうした円を三つ描いて交点を求める必要がありますが、そんな大きな円は地図上で歪みますので、使い物になりません。じゃあ地球儀に円を描いたらどうか。ごめんなさい、これも「ブー」です。最低でも1マイル=1ミリ相当の縮尺が必要ですけれども、これでは地球儀の直径が、約7mになってしまうのです。

 現実の天文航法では、逆の発想をします。まず、とにかく仮の推測位置を出しておきます。緯度経度さえ決めれば、あらかじめ用意された数表(天測暦)を使って「この地点ではいま、あの星は高度角XX度XX.X分に見えるはず」という理論値を、比較的簡単に求めることができます。この理論値を実測高度角と比較して、実測値が大きければ、自分の立ち位置は推測位置より天体に近いし、小さければ遠くにいます。この「遠い近い」の数値を、線分の形でチャートに記入したものを「位置の線」と呼び、天体1個の観測で1本が得られます。従って二つ以上の天体を計り、チャート上に複数の線を描いて交差させると、自分の緯度経度が出ます。

 以上、説明が長くなって申し訳ありませんが(^^;)…要するに、あまり正確でなくてもいいから、推測位置がどうしても必要です。ところが飛行中、推測位置を任意のタイミングで用意するのは、案外おっくうなものです。適当な縮尺の紙製チャートがあれば、飛行コースを直線で記入して、時計を見て暗算で距離を案分し、鉛筆で推測位置を入れて、緯度経度を読み取るのは簡単でしょう。しかし、チャート代用のAtlas画面には何も書き込めないので、推測位置はそのつど、数値解として算出するしかなさそうでした。
 では、いちいち緯度経度を出すのはやめて、ずっと同じ値(例えばコース中点の緯度経度)を使って天測計算をしたら? 推測位置は単なる計算上の出発点ですので、案外一定の精度が得られるのでは? こう思いついたのは7月中でした。さっそくVer.2.10 のイングランド西岸地方で、太陽とアークトゥルスを天測し、機体の実際の緯度経度を「推測位置」と見なして測位計算したところ、誤差3nm程度という、一応実用になる精度で緯度経度を得ました。次に、このとき使った推測位置のデータを、緯度経度方向にそれぞれ1〜5度および10度の範囲で変化させながら、計15通りの値で現在地を再計算したところ、

 ・緯度方向には5度以下の変化まで許容可能。
     (測位結果は、東西はほぼ正確。南北は1nm以内の誤差)
 ・経度方向には3度以下の変化まで許容可能。
     (測位結果は、東西はほぼ正確。南北は4nm以内の誤差)
 ・緯度経度を同時に動かす場合、緯度は3度、経度は2度の変化まで許容可能。
     (測位結果は、東西は5nm以内、南北は3nm以内の誤差)
…という結果が出ました。

 このことから、天測計算に使う推測位置は、特に緯度方向には最大で180nm程度ずれていても、これを基に算出した実測位置は十分に有意な数値になる、ということが分かりました。そこで…やっとお話が元に戻りますが、推測航法で中継点A・Bを越えて進む場合、実際に通過する緯度経度は、計画から180nmも外れるとは思えません。なので、この2点の座標はそのまま天測計算の推測位置として使っても、問題はないはずです。これで航法作業がずいぶん楽になるはずですので、初の実証試験をしようと思った次第です。

     ○

 ところが。今回の(自画自賛によれば画期的な)実験は、非常にみっともない理由で、お流れとなりました。飛行中に、どうもA点までの所要時間が長すぎるような気がして、検算してみたところ…なんとAとBの緯度経度を取り違えていたことが判明。あわてて計算に次ぐ計算を重ね、航法計画表を作り直しました(本稿でご紹介したのは、もちろん正しい方です)。

 第2変針点のA点は、少し前に通り過ぎたばかりのようです。A点の位置は再計算で動いたものの、そこまでの推測航法は一定の針路を飛んでいますので、チャートをにらんで目分量の現在位置を出し、そこからB点へ暫定コースの方位角を計算しました。次は…ともかく天測しなくてはと、まず金星を観測。インターセプトは約15nmと、十分信頼できる位置の線が得られました。ところが太陽で取った線は、何と200nmくらいの誤差を示しています。慌てているときの常で、何度見直しても、どこが間違っているのか分かりません。

 幸い、機体がそろそろ中央高地を外れて西岸に出るタイミングでした。海岸線にたどり着けば、幾つもNDBがあります。1300時ごろ、ウペルナビクNDB399UPがほぼ正面に取れまして、同時にマルモリリックNDB322MARが機首左手45度に入感。Atlas上でおおざっぱに両局からの方位線を(描けないけれども)思い浮かべ、現在の機位は北緯71度03分、西経49度59分くらいと判断しました。ここを暫定的にC点と呼んで、チューレへの方位・距離を virtual E6-B で再計算。1435時到着と見当を付けて、何とか航法を立て直しました。

●●磁石も下を向く、北緯76度の滑走路:
 最終段階は、チューレ基地東方のVORをトラッキング。この局のハイステーションから左旋回し、ダウンウインドレグを下ってILSを受信。ていねいに周回してファイナルに入りましたが、どうもグライドパスは上下に振れるし、ローカライザはCDIが外れっ放しだし、変な感じです。着陸後、機体のMap ウィンドウで確認したら、ビームが120度くらいずれた欠陥品と分かり、本当に視界が悪かったら困るところでした。

 1445時、ランプインしてエンジン停止。残燃料は1852.6Lbsと、まるまる4割ありました。ここはアメリカ軍が大戦中、気象観測用に設けた基地だそうで、冷戦中に拡張されて、ソ連との最短コース・北極をにらむ早期警戒/反撃網の一翼を担い、戦略爆撃機が常駐していたとか。現在も、ミサイル警戒と人工衛星の追跡管制が任務だそうです。
 ご当地の磁気偏差は-47度、磁気俯角は何と85度。地方時の正午少し前なのに、太陽高度は9度しかありません。「地の果て」の印象がある北緯76度…ここはもう、北極圏の入り口なのでした。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-10-12 1:24 | 最終変更
toshi  長老   投稿数: 1077
hideさん、こんばんは。
toshiです。

視点方向に関するマウス分解能の修正方法がお役に立ったようで、なによりです。

今回は、FlightGearの磁気モデルについてフォローします。

FlightGearは、World Magnetic Model(WMM)の近似式を使って、任意の緯度・経度・高度における、任意の日付の磁気偏角を計算しています。
FlightGear v1.0.0〜v2.12.0, および現時点での開発版 FlightGear で使用しているモデルはWMM2005です。
詳細は、以下の記事をご参照ください。

・2010-5-21 2:37 「Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
・2011-5-9 2:13 「Re: 羽田新滑走路オープンに伴う改修

記事中に、モデルを提供しているアメリカ海洋大気庁(NOAA)のWebページのURLをいくつか記載していますが、米予算不成立の影響を受けて、現時点ではアクセスできません。

他のサイトに、WMM2005モデルを計算できるページがありましたので、気になっている地点の緯度、経度を入力して、FlightGearの磁気偏角(/environment/magnetic-variation-deg)と伏角(/environment/magnetic-dip-deg)がWMM2005モデルと一致するかを検証していただくと良いのではないかと思います。

Geomagnetic Field Calculator
http://williams.best.vwh.net/magvar.html
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
toshiさん、hideです。こんにちは。
 FlightGearの地磁気モデルについて、ていねいなご返事をありがとうございました。私はすでに、3年半前にもこの件でご教示を頂いていたのですね。すっかり失念して、お手間をお掛けいたしました。
(余談ながら、アメリカの予算不成立が、意外なところで身近に感じられました)

 さっそく、ご案内のサイトで Geomagnetic Field Calculator V1.03 を試してみました。アイスランドのレイキャビク空港、グリーンランド南西岸ゴッドホーブのヌーク空港、北西岸チューレ基地の3カ所の緯度経度を使い、FlightGear が表示した internal properties と、Calculator の計算結果を比較したところ、
         FlightGear  計算値
レイキャビク  75.53   The magnetic dip angle is 75.51 degrees down
         -14.83   The magnetic variation is 14.98 degrees W

…と、最初は微妙なずれが認められましたが、誤ってデフォルトの VMM2010 を選択したためで、WMM2005に切り替えたところ、数値は完全に一致しました。ヌークとチューレも同様です。

ヌーク空港  78.432   The magnetic dip angle is 78.43 degrees down
         -28.062   The magnetic variation is 28.06 degrees W
チューレ空港 85.355   The magnetic dip angle is 85.36 degrees down
         -47.310   The magnetic variation is 47.31 degrees W

 これで緯度経度と観測日時さえ分かっていれば、FlightGear世界の磁気偏差を事前に知ることができ、フライトプラン作成へ応用の道が開けたのは、非常に有り難いことです(^^)。

 この結果を見ていたら、現在のFlightGearの磁北極を探したくなりました。ピラタスPC-9Mで探検するのは結構手間が掛かりそうですが、UFOなら簡単です。まずチューレ基地から北へ飛び、次に真西へ飛び、さらに東西と南北に交互に詰めて、internal properties/environment/magnetic-dip-deg の数値が最大になる地点を探すという、潜水艦の位置を探知するのに似た(パッシブソナーや磁気探知機の感度など、一次元の情報のゲインに頼る)やり方で調べたところ、30分と経たないうちに磁気俯角が89.993度、偏差が偏東145.622度となる地点を発見。位置は北緯86度03分11.3秒、西経149度05分13.8秒で、アラスカのはるか北、氷原の上空です。この高緯度ではすでに太陽は沈み、長い極夜へ続く「北半球の夕焼け」が訪れていました。

 手元の地図帳には、2006年の磁北極の位置が載っていますが、今回確認した地点は、当時よりも北へ200nm以上寄っていて、漠然と予想していた場所よりずっと北でした。私がよく参照する航法の本にも、磁北極は「北緯71度、西経96度のカナダ領」などとあり、相当古い資料を鵜呑みにして書いた(あるいは、版を重ねても修正しなかった)ことがバレバレで、ちょっとおかしくなりました(失礼!)。
 ここでアプリを終了しても良かったのですが、帰りのフライトも実施。HUDの緯度経度表示を確認しながら飛んで、かなりあっさりとチューレのABNを確認。数年ぶりに、UFOによる簡易版の探検を楽しみました。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-10-17 3:46 | 最終変更
toshi  長老   投稿数: 1077
hideさん、こんばんは。
toshiです。

ほとんど雑談ベースになりますが、磁北極に関してまた色々調べて見ました。

引用:
30分と経たないうちに磁気俯角が89.993度、偏差が偏東145.622度となる地点を発見。位置は北緯86度03分11.3秒、西経149度05分13.8秒で、アラスカのはるか北、氷原の上空です。

hideさんの投稿を読んで、online calculatorのWMM2005モデルでその地点を計算してみました。

=============
Geomagnetic Field Calculator
http://williams.best.vwh.net/magvar.html

86:03:11.3 N
149:05:13.8 W
0.0 km <-- WGS84楕円体に基づく高度
10/13/13 <- hideさんの前記事の投稿日(2013.10.13)に合わせました
WMM2005
---
Using the WMM2005 model, the magnetic field at 86.053139 N, 149.087167 W at an altitude of 0 km on 10/13/13 is:

Bx = -8 nTesla (N)

By = -0 nTesla (E)

Bz = 57446 nTesla (down)

The magnetic dip angle is 89.99 degrees down

The magnetic variation is 179.72 degrees W
=============

By=0ですが、Bx=-8 nTesla (N) となってますので、もうチョイ南に磁北極がありそうです。
# BxとByについては後述します。
緯度、経度をもう少し追い込むと、以下の値が得られました。

=============
86:01:45 N
148:51:00 W
0.0 km
10/13/13
WMM2005
---
Using the WMM2005 model, the magnetic field at 86.029167 N, 148.850000 W at an altitude of 0 km on 10/13/13 is:

Bx = -0 nTesla (N)

By = 0 nTesla (E)

Bz = 57446 nTesla (down)

The magnetic dip angle is 90 degrees down

The magnetic variation is 139.29 degrees E
=============

次の私の興味の対象となったのは、実際の磁北極の位置と、WMM2005磁気モデル上の磁北極の位置の関係です。

京大地磁気センターのページに、IGRF-11に基づく1900〜2015年 (2011年以降は予測)の磁北極の緯度経度の表が掲載されていました。
磁北極の位置の情報以外にも、目から鱗の話が盛りだくさんですので、読み物としてもお勧めです。
# 日本から見て、北磁極の方向は東にずれているのに、なぜ方位磁針のN極は西にずれるかなんて、全く考えたことありませんでした!

磁石の北と地磁気極と磁極
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/poles/polesexp-j.html
#「北緯71度、西経96度のカナダ領」は1900年ごろの磁北極の位置ですね!

この京大のIGRF-11の表と、WMM2005、加えてWMM2010、IGRF-11の北磁極計算値(date=2013.10.13, Elevation=0kmでBx=By=0となる緯度経度)を比較してみました。
計算には以下のonline calculatorを利用しました。
WMM2005 http://williams.best.vwh.net/magvar.html
WMM2010 http://geomag.org/models/wmm-field.html
IGRF11 http://geomag.org/models/igrfplus-field.html

=============
IGRF-11表(2013年): 85.9N(85°54'00'') 148.0W(148°00'00'')
IGRF-11表(2014年): 85.9N(85°54'00'') 149.0W(149°00'00'')
WMM2005計算(2013.10.13): 86°01'45''N 148°51'00''W
WMM2010計算(2013.10.13): 85°49'59''N 146°40'00''W
IGRF-11計算(2013.10.13): 85°53'21''N 147°51'10''W
=============
以上の比較から、磁気モデルによって1°程度の差異はある、ということになりそうです。

online計算において、Bx=By=0を探すことにした理由は、地磁気要素の解説
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/element/eleexp-j.html
の図から、伏角が90°となる磁北極ではx成分とy成分が0になるであることと、緯度の微調整でx成分を、経度の微調整でy成分を0にすることが比較的容易であるためです。

そのほかに、磁極の移動に関して次の2つはちょっと興味深かったので簡単にご紹介しておきます。

中心核の磁性変動で磁北が東へ移動 - ナショナルジオグラフィック
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=85193376&expand
「2007年には年間55〜60キロの速さでシベリアに向かって移動中であることが確認された」そうです。

International Geomagnetic Reference Field: the eleventh generation - Geophysical Journal International
http://digitalcommons.unl.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1260&context=usdeptcommercepub
IGRF-11の大本の論文、だと思います。
京大地磁気センターのページにある予測位置の地図よりも、こちらの論文のFigure. 4の方が見やすくて、北磁極が近年ぐんぐん移動速度を増している様子が良く分かります。

実のところ、モデル上の磁北極位置を厳密に求めることに注力するよりも、機体姿勢に応じて機内の磁気コンパスがどのような誤差を示すのか、といったような現実世界で磁気方位を正確に測る上での難しさを調べる方が、航法を極める上で大事なのだろうと思うのですが、そちらの知識はまだ全然足りてません...
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-10-18 2:47
toshi  長老   投稿数: 1077
toshiです。

先の私の投稿(タイトル変えました)は、1つ矛盾した点があることを言い忘れていました。

磁北極の緯度経度について、IGRF-11の表(2013年と2013年の欄)と、IGRF-11 online calculatorで私が計算結果とが一致していない点です。

同じIGRF-11磁気モデルなのに一致しないのはおかしいので、たとえばElevation=0kmで計算したためであるとか、WGS84楕円体のxy平面でBx=By=0であっても、実際の地表面では水平成分が0にならないとか、何か原因があるはずですが、まだ分かりません。

ただ直感的には、ご紹介したIGRF-11の論文にも表の緯度経度が掲載されていることから、私の計算よりも、IGRF-11の表のほうが実際の位置を良く表しているに違いない、と思っています。

あと、WMMとIGRFのモデルの違いについても、モデルの有効期間が異なることは分かっているのですが、それ以上のこと(向き、不向きなど)はよく分かってません。
NOAAのサイトが復活したようなので、また暇な時にちょろちょろ見てみようと思います。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-10-19 17:29
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
toshiさん、hideです。
 地磁気に関しまして、豊富な追加情報のご案内を、どうもありがとうございました。
磁気モデルというものは、ずいぶんたくさんあるのですね。地磁気の原動力にあたる、中心核の部分の状態は直接観測できないので、将来の地磁気パターンは結局のところ、過去の地球表面の磁場の変化を分析して、現在のトレンドが将来も続くものと仮定し、外挿法で予測するしかない、という印象を受けました。となると高精度の予想は、今後もなかなか難しそうですね。

 京大を中心に、ご紹介いただいたサイトに目を通しましたが、おもしろいコンテンツがどっさり。ナショナルジオグラフィックの公式日本語版ページには、磁北移動の関連記事で「世界各地のウシやシカたちは、地球の磁場に沿った方向を向く傾向がある」という研究成果も紹介されていて、びっくりしました。渡り鳥に地磁気センサーがある、という話は読んだことがありますが、草食動物も地域や時代によっては過去、渡りに似た行動をしていても、不思議はないような気もします。

 少々お話は変わりますが。私は何年か前、ある集落の遺跡の現地説明会に行って、多数の建物の痕跡がいずれも南北方向にほぼ正確に並んでおり、しかもその向きが、地層=時代によって若干変化していることに気付きました。解説の学芸員に「古代日本で、すでに原始的な方位磁石が使われた可能性はありませんか。この方位のずれは、磁気偏差の経年変化のようにも見えるのですが」と質問しました。そんな定説はまだなさそうですけれども、相手はにっこり笑い、小声で「私も実は同意見です」と答えました。磁北極の移動について考えていたら、ふとこんなことを思い出しました。
 それにしても、FlightGearは高精度で磁場を再現しているのですね。地球のほぼ全域で、現実とほぼ同じコンパス示度を得ようとすると結局、こうなってしまうのでしょうが、綿密な「地球シミュレーター」ぶりに、改めて感心します。
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なし 北西航路を行く

msg# 1.6.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-10-20 3:11 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 水上機による「海鳥の旅」は今回、グリーンランド北西部のチューレから海を渡り、カナダ領・北極諸島のど真ん中にある、コーンウォリス島南岸のレゾリュートに向かいます。後述します通り、このコースは北極探検史に名高い「北西航路」の一部分です。

 この一帯は磁気偏差の変化率が大きく、真方位でないと航法は困難だろうと思っていました。最近気付いたのですが、チューレとレゾリュート、さらに南方のビクトリア島・ケンブリッジベイのVORは、なんとラジアルが真方位になっています。私の知る限りでは、磁気方位を使わないVORなんて、このへんだけです。磁北極に近いため、磁力の水平分力が小さすぎて、磁気コンパスの方位カードがうまく回らず、実機はジャイロを真方位に合わせて飛んでいるのでしょう。
 ならば私も、真方位で飛んでしまえば楽…と思ったのですが、toshiさんのお陰で先日、FlightGearの磁気偏差を、事前に精密に求めることが可能になりました。手間を惜しまなければ磁気方位でも、それなりに正確な推測航法が出来そうです。天測と測位計算の技術も向上したため、もし推測航法が破綻し、かつVORやNDBのエリア外であっても、かなり自信を持って天文航法で位置を出すことができます。
 よーし。では面倒な磁気方位を使って、面倒な北極地帯を飛んでみることにしましょう。

●●ジオマグ・メーターを装備:
 今回は水上機版のピラタスPC-9Mに、新しい計器を搭載しました。真方位、磁気方位、磁気偏差、磁気俯角をデジタル表示するパネルで、2010年秋にピラタスPC7改で北極を横断した際、同様の装置を積んで便利だったので、再現しようとしたのですが、これがなかなか大変でした。

 PC7の時代は、バーチャルコクピットのパネルに2Dの計器類が並んでおり、デジタル表示盤を作りたければ、パネル上に一種のレイヤーを置くような感じで、internal properties から引用した数値を、テキスト表示すればOKでした。テキストですと、フォントサイズや色彩、整数部・小数部けた数を簡単に設定可能で、負の値を取る場合は(確か)勝手にマイナス記号が付いて、非常に便利でした。ところが、現在のVer.2.12環境下でテキスト表示をやろうと思うと、計器が3D化され、位置指定の方法も違うため、表示盤専用のサブパネルを作るしかなさそうです。その方針でプログラムを書いたところ、どこが間違っているのか、或いはアプリ側の設計が変わったのか、まったく出現しませんでした。そこで、3D仕様の計器の表面に、テキストを表示させようと思ったのですが、これも書き方が分からなくて失敗。

 最後の手段として、kx165(VOR/com操作盤)を改造して、周波数表示部の液晶4組を、真方位、磁気方位、磁気偏差、磁気俯角の表示盤に転用しました。一応作動したのですが、偏差の値が負(偏西)の時は、各桁の表示すべてが、正しい数値をゼロから引いた数(?)に化けて、使い物になりません。そんなの、factor を負にすれば大丈夫、正にするか負にするかは、偏差の値がゼロ以上か未満かで、分岐を掛ければ簡単じゃないか…と思ったのですが、実際は負にしても変な数字になります。さじを投げるのはいやなので、専用の方位リングを回して、偏差をアナログ表示するという、強引なメカも作ってみましたが、回転アニメーションに関する理解が不完全とみえて、これもうまく行きませんでした。
 3D式の計器上にプロパティの数値をテキスト表示する、簡単な方法はないものでしょうか。

 今回の装置自体は、いちいちHSIを拡大表示しなくても、一目で正確な磁気方位が読み取れるなど、非常に便利でして、作って良かったと思っています。ジオマグ(地磁気)メーターと名付けた装置の写真は、「投稿画像」でご覧頂くことができます。

●●偏西47度から26度まで変わる偏差:
 さて、フライトプランです。出発地チューレの偏差は偏西47度。ここからバフィン湾を横断してカナダ・北極諸島へ。一番北の大きな島・エルズミア島南部を通過し、すぐ南のデヴォン島にあるグリースフィヨルドNDBを通ります。この地点は偏西44度で、チューレと偏差が3度しか違いません。しかしレゾリュートに至る次の約200nmは、約20度も偏差が変化します。そこでチューレ=グリースフィヨルドNDB間は、コースを2分割し、さらにレゾリュートまでは3分割して、toshiさんに教わった Geomagnetic Field Calculator を使い、それぞれ中継点の偏差を調べて各区間の平均値を出し、コンパスにセットすることにしました。
 各地の緯度経度、偏差の抽出とコース計算は、予想通り面倒でしたが、本田航空の「AIR NAVIGATION 航法計画書の作り方と飛行の仕方」にも、「航法計画が1時間以内にできることが、自家用操縦士の目標」などと書いてありますから、やはりそれ相応に、手間は掛かるもののようです。

◎チューレ空軍基地BGTL 76°32'32N-68°14'23W(76.5422-68.2398)
 VOR111.0THT ILS109.5-08T(132Mag)
   The magnetic dip angle is 85.31 degrees down <以下WMM2005の計算値>
   The magnetic variation is 47.17 degrees W
   ▼268.01度101.66nm偏西47.68度
△変針点A 76°29'N-75°30'W
   The magnetic dip angle is 86.02 degrees down
   The magnetic variation is 48.19 degrees W
   ▼268.01度103.88nm偏西47.38度
☆グリースフィヨルドNDB365YGZ 76°25'24N-82°53'12W
   The magnetic dip angle is 86.74 degrees down
   The magnetic variation is 46.56 degrees
   ▼239.19度67.17nm偏西44.32度
△変針点B 75°51'N-86°54'W
   The magnetic dip angle is 87.01 degrees down
   The magnetic variation is 42.08 degrees W
   ▼239度69.87nm偏西38.65度
△変針点C 75°15'N-90°54'W
   The magnetic dip angle is 87.23 degrees down
   The magnetic variation is 35.21 degrees W
   ▼243.39度69.91nm偏西30.68度
★レゾリュートベイVOR112.1YRB 74°43'41N-94°55'21W
   The magnetic dip angle is 87.38 degrees down
   The magnetic variation is 26.14 degrees W
 (西へ0.7nmでレゾリュートベイ空港CYRB NDB350RB → RWY171T
                     NDB391RU → RWY351T)

●●ひたすら計算、ひたすら巡航:
 では、ようやく飛行編です(^^;)。
チューレで水上機版ピラタスPC-9Mを起動。太陽高度の関係で、いつもUTC時刻にセットしているパソコンのクロックを、さらに16時間遅らせて、現地時間の午前10時くらいになるように調整しました。

 現地はほぼ快晴。風は18000ftで135度6.5ktと、弱い追い風気味です。補正が要らないくらいですが、いちおう風力補正計算をしたところ、真対気速度260KTASの場合、対地で264.7Kt、WCA(風力修正角)1.1度左で針路266.9度。これに磁気偏差を加え、コンパス針路は314.58度となりました。めんどくさいなーっ(^^;)。
 次に、メニューの Equipment から「Instrument settings」を開き、「HI offset」の値をチューレの磁気偏差(-47.17度)に合わせて、HSIを磁気方位表示にします。この数値は常に、飛んでいる地域の偏差に合わせ直す必要があり、でないとHSIは正しい磁気方位を指しません(もしゼロに合わせると、HSIは真方位を指します)。最後に、ヘディング・バグを磁気針路の315度にセットして、やっと方位関係の設定はおしまいです。いや…まだVORのセットがありましたっけ。
 ご当地のVORはせっかく真方位なので、HSIのオフセットはゼロに合わせる方が正しいのですが…今回はあえて磁方位にしておき、コース設定ノブを使って、CDI指針を磁針路に相当する角度に向けました。
 燃料は、フロートタンクについては半分にして、計3680Lbs(満タンの8割)を搭載。この基地は3000m級滑走路なので、仮に満タンでも十分に離陸可能。というわけで、陸からのテイクオフになります。

 1423時にエンジン始動、1424時離陸。左旋回で、ラフなトラフィックパターンを描きながら上昇。燃料を少し減らしているため、快調に昇って15000ftでレベルオフ。1439時、空港上空を通過し予定コースに定針。速度は215KIAS(263KTAS)出ております。その後、不意に速度が40ノットも低下して、首をひねった末、フラップのボタンに触れてしまったことが分かった以外、ほぼ順調に巡航を続けました。
 1450時、ADFをグリースフィヨルドNDBに合わせると、感度あり。ただし針は4度ばかり左を指していますので、HSIのつまみをクリックして、針路を2倍角の8度左に調整し、オンコース時点で4度に戻すなど、きめ細かい飛行を継続。変針点Aを通過したころ、コンパスの偏差設定を計画通り、0.3度だけ調整しました。

●●天測も快調、太陽と編隊飛行でレゾリュートへ:
 1524時、グリースフィヨルドNDBを通過。また偏差設定を変更し、計画通り磁気方位282度へ変針。約15分で変針点Bに着くはずです。
 1531時。「このタイルでは、リアルな天気は使えません」とか言う、黄色い文字のエラーメッセージが何度か出ました。北極諸島は、気象情報が少ないと言うことでしょうか。FlightGearの天気モードを「ベーシック」に切り替えたところ、もやが消えて一気に水平線近くまで視界が広がり、左手にデヴォン島が見えて、もう迷いっこなくなりました。
 気持にゆとりが出て1539時、コードラントで太陽と木星の高度角を観測。天測計算ソフトにこれらのデータと、推測位置(測位計算の基点)として使う変針点Aの緯度経度、それに自機の真針路と対地速度を入力しました。最後の針路と速度は、太陽を測定してから木星を計るまでの短い間に、機体がどの方向にどのくらい移動したかを補正する、航海術で言う「RUNの改正」に必要な数値です。

 天測計算ソフトがはじいた現在地は、北緯76度09.4分、西経87度07.7分。太陽のインターセプト(計算の基点となる仮の推定位置と、実測値の距離差)は-18.2nm、木星は-3.5nmと小さいので、観測と計算に誤りはないはずです。Atlas画面とデヴォン島を見比べて判断した位置ともぴたりで、まずは大成功。全所要時間も8分と短く、私の天文航法は最近、安定してきたようです(^^)/。
 このフィックス(確定位置)を使って、すぐさま変針点Cへの方位と距離を算出。現在の風向風速を確認して補正計算し、さらにこの区間の偏差を加えて磁気針路に換算し…ともかく、ひたすら計算。ひたすら巡航。やがて正面にコーンウォリス島が現れ、デヴォン島を離れてウェリントン海峡に差し掛かりました。レゾリュートのNDBも入感しており、ゴールはもうすぐです。

 空港を視認し、1609時に降下開始。レゾリュートはチューレより2度近く南ですが、降雪地帯がほぼ海岸に迫っており、すでにチューレ到着の時点よりも、かなり気温が下がっていることが分かりました。FlightGearが再現する地球環境が、だんだんリアルになっていくのは実に楽しいですね。
 ブレーキとフラップを使って降下を続け、4000ft付近のbrokenの雲を突破して、ベースレグを通過。シェーダー効果でデコボコの雪原に、たくさん針葉樹が生えて、いかにもという景色です。1617時ごろ、スムーズにタッチダウンして、滑走路の片側に機体を寄せ、エンジン停止。路面は土の色ですが、実際のレゾリュートベイ空港の滑走路には、砂利を敷き詰めてあるそうです。
 燃料残は2651Lbsとたっぷり。極地の磁気方位飛行は初めてで、飛行中は予想通り多忙でしたが、天気は上々で風も終始一定、かつ穏やかだったことから計算処理が間に合って、破綻せずに航法を継続でき、全般に大変楽しいフライトでした。ジオマグメーターで真方位も表示しましたが、実際は終始、磁気方位だけを見て飛ぶことが出来ました。(というか、計算の対象外なので、見る暇もなかったのですが)(^^;)

 飛行中、天測していないときも時々コードラントを使って、ざっと太陽の方角を確認したところ、2時間弱のフライト中、太陽の位置は常に真方位で150度前後でした。地上にいれば当然、太陽は2時間で30度動きますが、この高緯度ですと、わずか対地260Kt程度の飛行速度で、日周運動に付いていくことが出来るのです。いわば太陽との編隊飛行で、非常に面白い体験でした。もっと北に上がれば、コンコルドでなくても「西から昇る太陽」を拝むことも可能なわけですね。

●●「北西航路」とレゾリュート:
 最後に、今回到着したレゾリュートと、いわゆる北西航路について、調べたことをお話しします。
現実世界では、ここは人口わずか200人の集落ですが、レゾリュートベイ空港CYRBがあって、北極圏の重要な航空中継地の一つです。植村さんら探検家の空輸・補給で有名なケンボレック航空も、ここに本拠を置いて、スキーを付けたツインオッターを運用しています。地理的には北極諸島を東西にぶち抜く「海の大通り」バロー海峡に面しており、いわゆる「北西航路」の中央付近に当たります。

 北西航路とは何か。ヨーロッパでは長い間、アフリカや南米を回らずに、アジアへ出られる交易ルートを求めて、北極海の探検を続けてきました。ユーラシア大陸北岸沿いにベーリング海峡を目指す「北東航路」と、迷路のようなカナダ領の北極諸島を抜け、北米大陸沿いにアラスカを回り太平洋に出る「北西航路」の二つです。初めて北東航路を通過したのは、ノルウェーの探検家ナンセンのフラム号。船体断面が丸みを帯び、周囲の海が氷結しても押しつぶされず、氷の上に押し上げられる構造で、無補給のまま2度も越冬しながらの壮挙でした。また北西航路を初めて通ったのは、彼の弟子のアムンゼンで、同様の構造を持つ探検船ユア号(翻訳者によってはイエア号)を使い、これまた3年がかりで達成しました。かつて多くの探検隊を呑み込んだ北極海ですが、最近は温暖化のため氷が開け、夏場なら何とか耐氷貨物船が通れるようです。

 北西航路は、日本人にも少々縁のあるコースで、植村直己さんが全航程1万2000キロを犬ぞりで踏破し、堀江謙一さんもヨット縦回り世界一周の途上、アムンゼン並みに3シーズンを費やし突破に成功しています。こうした物語を読むと、どうしても一度は飛んでみたくなる地域です。
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なし 北西航路を行く

msg# 1.6.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-10-23 11:39 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
 hideです。グリーンランドからアラスカ方面へ、北極圏を抜ける「北西航路」フライトの第2回をお送り致します。今回はカナダ領・北極諸島のど真ん中、レゾリュートから400nmばかり南下し、かつてアムンゼンの探検船が越冬したジョアヘブンを通過。西にコースを転じて、カナダ北極圏南部のケンブリッジベイへ向かいます。磁気偏差が25度も変化し、ナビゲーションの上でも深く「極地」を味わう旅となりました。

●●北極圏の巨大迷路:
 私は小学生のころ、世界地図を見て「フィリピンの子は、大変だなぁ」と、つくづく思ったものです。国土が大小無数の島々だからで、地図を描きなさいと言われた場合、日本ですと北海道は菱形、本州はバナナ…と大胆なデフォルメも可能ですが、フィリピンではどうすればいいのか。カナダも同様で、本土から北に伸び、グリーンランドと渾然一体となる「北極諸島」の雄大な広がりは、手に負えない気がします。

 前回ご紹介した、ヨーロッパから極東へ北極海を近道する「北西航路」は、このカナダ北方の多島海をジグザグに縫って進むのですが、イギリスその他の国々が300年あまり探検を続けた結果、この巨大迷路を通過する正解ルートは、ほぼ1本しかないことが分かってきました。北極海の氷は、粗い写真では一枚の氷原に見えますが、実際は海流と卓越風によって絶えず動いているので、氷の密度は地域的に大きな濃淡があります。広い海峡であっても常に氷に覆われていたり、逆に狭い水道でも、年によっては真夏に開水面が生じ、帆船で通るチャンスがあったりするわけです。

 このルートは簡単に言いますと、次のように西→南→西と進む、クランク型のコースです。
(西へ)グリーンランドから、ほぼ真西へ進む。北極諸島を東西に貫く大海峡
    (東部はランカスター海峡、中央付近はバロー海峡)に出会うので、
    真ん中まで西進すると、コーンウォリス島のレゾリュートベイに着く。
(南へ)レゾリュートからは、ほぼ真南に延びるピール海峡を南下する。
    やがて正面にほぼ三角形の、キングウィリアム島が見える。この島の
    西には広い海峡が、東には狭い海峡がある。船で通過する際は、ここで
    必ず東の海峡に回り込み、南東岸のユアヘブンで一休み(昔は越冬した)。
    (西の広い海峡は、迷い込むと氷に閉ざされる)
(西へ)ユアヘブンからまた西へ。カナダ本土とキングウィリアム島の間にある
    ほんの2nm幅(しかも島あり)のシンプソン海峡を通過して、さらに
    多島海を西へ。やがてビクトリア島ケンブリッジベイに到着する。
    これで最難関はおしまい。さらにカナダ北岸沿いの通称ボフォート海を
    西に進んで、アラスカに至る。

…私は今年、この航路を船で初めて完走したアムンゼンや、犬ぞりで踏破した植村直己さん、まだ地理がよく分からなかった1840年代に探検中、船2隻と隊員129人が全滅した英国フランクリン隊などの記録を読みました。不思議なもので、手に負えないと思えた巨大迷路も、内部にあれこれコースを思い描くと、少しずつですが島や海峡の名前が頭に入ってきます。白紙に地図を描いてみろ、と言われたら絶対無理ですが、今ではごく粗い世界地図を見ても、レゾリュートやピール海峡、アムンゼンが越冬したユアヘブンなどの位置が、すぐ分かるようになりました。フライトシミュレーターによる「地球遊び」は、単にフライトばかりでなく、こういう部分も楽しいです。

●●巨大迷路のフライトプラン:
 今回の航程は、以下の通りです。
★レゾリュートベイVOR112.1YRB 74°43'41N-94°55'21W(74.7280-94.9226)
   The magnetic dip angle is 87.38 degrees down
   The magnetic variation is 26.14 degrees W
 (西へ0.7nmでレゾリュートベイ空港CYRB NDB350RB → RWY171T
                     NDB391RU → RWY351T)
   ▼194.87度104.17nm偏西21.61度
△ピール海峡プレスコット島東岸 73°03'N-96°31'46W
   The magnetic dip angle is 87.02 degrees down
   The magnetic variation is 17.08 degrees W
   ▼180.87度106nm偏西14.69度
△ブーシア半島西岸タスマニア諸島 71°17'N-96°37'W
   The magnetic dip angle is 86.47 degrees down
   The magnetic variation is 12.29 degrees W
   ▼174.42度160.19nm偏西10.53度
☆ジョアヘブン(GJOA HEAVEN CYHK)空港NDB 236THK 68°37'34N-95°51'31W
   The magnetic dip angle is 85.49 degrees down
   The magnetic variation is 8.76 degrees W
   ▼279.49度99.7nm偏西4.84度
△ロイヤル・ジオグラフィカル・ソサエティ島(王立地理学会島)68°54'N-100°23'W
   The magnetic dip angle is 85.58 degrees down
   The magnetic variation is 0.92 degrees W
   ▼277.23度103.76nm偏東3.06度
★ビクトリア島ケンブリッジ・ベイ空港(CYCB)VOR 112.7YCB → RWY131T
   69°07'04N-105°10'21W
   The magnetic dip angle is 85.45 degrees down
   The magnetic variation is 7.04 degrees E

…煩雑で済みません。最近、私が使っている記号の凡例を書いていませんが…★はVOR局、☆はNDB局、△は任意に設けた変針点です(航空図上のフィックスを示す場合にも使っていますが、今回はなし)。
 変針点は普通、長い航程をほぼ等距離に区切って設けますが、今回はコンパス針路をなるべく正確にするため、区間によって偏差の勾配がほぼ均等になるよう留意しました。偏差が激しく変動する極地を、磁気方位で飛ぼうとすると、計算がたくさんある、ということだけでも実感して頂けましたら幸いです(^^;)。

●●推測航法で、南へ駆ける:
 では、フライトです。
休みの夜中過ぎ、たまたま飛行に好都合な時刻に目が覚めたので、UTC1600時(現地1000時)にレゾリュート空港で、ピラタスPC-9M水上機を起動しました。
 予定の高度18000ftは195度10Ktの向かい風。悪くない条件ですが、3000ftにovercastの雲、500ftにfewと天候は少々悪く、景色が見えません。低空を這っていくと天測が出来ませんし、上り下りするのは大変。迷っていたら1618時、かなり雪が降り始めたので諦めて、いったん寝てしまいました(^^;)。

 午後もういちどトライ。現地時間を、ようやく明るくなる午前10時ごろにするため、パソコンのクロックを9時間遅らせました。METARが無視されて上天気になってしまいますが、なぜか風は変化していて、18000ftでは320度の風30Ktでした。幸い追い風気味です。5000ftでは300度10Kt、10000ftで310度20Kt。よし決行だと、前回並みに満タンから少し減らした、燃料3680Lbsを搭載しました。
 HSIのオフセットを、きょう最初の航程の偏西21.61度にセット。風力計算は、10000ftで巡航250KTASと仮定すると、対地速度は257.8Ktとなり、修正針路は199.1度(WCA4.1度右)。偏差を加えたコンパス針路は220.71度となりました。ヘディングバグを221度にセット、VORも同様の方位でレゾリュートにセット。1601時にエンジン始動にこぎ着けました。排気煙が透明になるのを待って、キャノピーを閉じます。

 地上の気温が14度もあるので、到着時の雪景色が消えてしまい、いちめんの森林と草原で夏みたいです。ただし海には氷山が浮いており、GoogleEarthで見た実景とよく似ていました。(注:Ver.2.12では緯度と気温次第で、勝手に雪景色になりますので、私は夏テクスチャーのまま飛んでいます)
 1604時離陸、約1900mしかない滑走路ぎりぎりで浮揚。旋回上昇を続けて1615時30秒、空港真上10000ftを250ノットで通過してオンコース。バロー海峡を飛び越え、東のサマセット島と西のプリンスオブウェールズ島の間の、ピール海峡へ進撃します。実世界は、5月でも乱氷帯に覆われているらしいですが、FlightGearでは青い海が広がって、氷山がちょっぴり散在するのみ。太陽高度は2度半と暗いものの、好天なので気分は明るいです。

 燃料をやや軽くした分、出力に余裕があるので、高度を稼いでおくことにしました。目標値20000ftに向けて巡航速度を落とさないよう、毎分500ftでゆっくり上昇。オートパイロットの速度保持(指示対気速度)を順次切り下げて、真対気速度は常に250KTASを維持するよう、デリケートに調整を続けます。最寄りの変針点・プレスコット島までは25分の予定。1640時着のはずです。

●●ドンピシャリの推測航法:
 高度を稼いだら、プレスコット島から少々加速することにします。真対気で265Ktはいけるかな。
通過時に慌てたくないので、少し前から20000ftの風向風速を確認し、補正計算に着手。対地速度は287Kt、真針路185.2度でWCA4.2度右、偏差を加えた磁気方位は199.89度と確認。さらに次の変針点までの所要時間も出しておきます。1639時、予定より1分早くプレスコット島上空に着き、コンパス針路200度へ変針。ちょうど計算が間に合ってホッと一息。ここで20000ftに届いているつもりでしたが、上昇が間に合わず18500ftでレベルオフ。速度は指示速度203KIAS設定にして、真対気速度265KTASを確保。フルスロットルとなりましたが、この高度では燃費は一番いいはずです。気温が高いので眼下の島々はほとんど雪なし。濃淡さまざまな、くすんだグリーンと若干の褐色に覆われています。風が一定なので、ぴたり予定コースを快翔。
 1701時、ブーシア半島西岸にあるタスマニア諸島(オーストラリアとは無関係)を通過。時刻は予定より2分早く、位置は予定より1nm弱東でした。推測航法で106nm飛んだ後ですから、エラー1%弱はなかなか凄い精度で、幸先がよろしいです。例によって、さっさと次のレグの航法計算を進めます。

 現実世界のピール海峡は、少なくとも1980年ごろまでは、8月末でも完全に氷に閉ざされて真っ白、という年も珍しくなかったようです。今年あたりから日露中が、盛んに商業航路開拓を計画していますが、本当に可能だとすると、温暖化がどんどん進んでいるわけで、怖いお話だと思います。
 FlightGearの世界では、すでに年間を通じて青い海が広がってますが…どんどん南下すると、やがて正面に見えてくるのがキングウィリアム島。もっと北のコーンウォリス島レゾリュートや、さきほどのプレスコット島に積雪がないのに、このキングウィリアム島では地表のほとんどが雪に覆われていました。METARデータは多分受信できていないので、なぜ雪線(つまり積雪範囲)が変化したのか、ちょっと疑問。後でよく見たら、この島は地表の大部分に、アイスパック(海水の氷)のテクスチャーが使ってあり、年間を通じてこんな景色なのでした。
 推測航法は引き続き、高精度で当たっておりまして、1724時にジョアヘブンのNDBを取ってみたら、ほぼ完全に真正面に入感しました。

●●フランクリン隊の悲劇:
 ジョアヘブンは、アムンゼンが気に入って探検船ユア号の越冬地に選んだ場所で、本来は「ユア号の天国」といった意味だそうです。地図にある「ジョアヘブン」は、たぶん英語読みでしょう。アムンゼンはのちに、イギリスのスコット隊と南極点へのマッチレースを演じた際は、重い食料が減るに従い、そりを引く大量のイヌの余剰分を殺して、計画的に食料に回すなど、スピード最優先の旅をしましたが、ユア号の北西航路探検では学術的な観測を続け、エスキモーともじっくり交流を重ねています。まあ、3年にわたる無補給の越冬航海ですから、やることがないと正気が保てないのでしょう…。
 ジョアヘブンがどんなところか興味があり、本日はここでストップのつもりだったのですが、フライトが快調なので距離を稼いでおきたくなり、ケンブリッジベイまで続航決定。ドタバタ航法計算を再開し、西に機首を転じてシンプソン海峡に向かいました。

 シンプソン海峡は、グリーンランドからアラスカに至る長大な北西航路のなかで、一番狭い通過地点です。アムンゼンによる、初の北西航路全域走破より70年近く前、2隻の極地探検船に分乗したフランクリン隊は、ピール海峡を南下してこの島にぶつかったとき、西にかわして大きな海峡を抜けようと試み、氷に閉ざされて船を放棄せざるを得なくなりました。以後は絶望的な氷上行進に移って、ついに129人全員がカナダ北極圏で落命し、北西航路探検史上では最悪の悲劇と呼ばれました。
 正解は、西の大きな海峡を選ぶのではなく「東の細い海峡へ迂回し、南に回り込んでシンプソン海峡を西に進む」だったのですが、当時まだシンプソン海峡は発見されておらず、地図にはキングウィリアム島が半島として描かれていたため、東の海峡に進んでも袋小路としか思えず、フランクリン隊は当然のこととして島の西に回り、魔の氷海に捕まったのでした。
 ここに、海峡があると分かっていたら…と思いを馳せつつ、愛機は西へ向かいます。

●●氷山と対面、ケンブリッジベイ:
 盛んに計算をしながら1759時、ロイヤル・ジオグラフィカル・ソサエティ島(王立地理学会島=偏差は偏西0.92度)を通過。ジョアヘブンからここまでは、コンパス針路を288度にセットしましたが、ここからケンブリッジベイは278度とします。実質的には同じ方位なのですが、飛行区間の偏差が10度変化するため、数字の上では「変針点」となります。
 コンパスのオフセットを調整した直後、ジオマグメーター(自作のデジタル地磁気・針路計)の偏差表示が「000」度を示し、同時に真方位と磁気方位の数字が同じになりました。ぴったりゼロの等偏差線を通過したのです。愛機はこれよりしばらく、偏差が「偏東」のゾーンを飛ぶわけで、バグを抱えたジオマグメーターも、正しい磁気偏差を示してくれることになります(^^;)。

 引き続き多島海を西へ。広大なビクトリア島が視界に入ってきました。多数の湖や池が散在する、沼沢地のような低地が広がる島で、北極諸島の多くの島々同様、非常に標高が低くて平らです。少し先の南岸にある、ケンブリッジベイ空港のNDBが入感。ほぼ正面です。
 1819時、はるか前方にケンブリッジベイの空港を視認。高度を下げ始めます。

 ABN以外何もない、へんぴな未舗装の空港に降りてみても、あまり面白くなさそうなので、湾内に着水することにしました。空港のすぐ手前に、集落テクスチャーがあります。あそこへビーチングするかな。
 ほぼ無風の湾口をぐるりと旋回して、一番奥の氷山に向かってパスを決め、慎重に着水。氷山はぜひ至近距離から見たかったので、10mほど近くまで、慎重に近づいて記念撮影。機外ビューの視野を下に振り、海中をすかして眺めたところ、氷山の巨大な水中部分が見えて、ちょっとドキリ。「9割は海中」を忠実に再現しているわけですが、飛行機より相当巨大な塊が、虚無のような水中に、ぽっかり浮かんでいるのは不気味な光景で、幾ばくかの不安を本能的に感じました。(氷山って本来、相当怖いものでしょう?)

     ○

 氷山から、そっと機体を離して周囲を眺めると、空港の東の集落テクスチャーが見えた場所に、1軒だけ家がありました。周囲は幸い森ではなく、タキシング可能な草原でしたので、ギアを突き出して無事にビーチング成功。一軒家の勝手口の前(あとで調べると、玄関は反対側)に駐機させてもらいました。1848時、エンジンを停止。燃料残は2212Lbs。
 出発地レゾリュートに比べると、ここは緯度差にして5度40分あまり南。太陽は9度半くらいの高度に見えました。日を追って日照時間が短くなるのが、ともかく気掛かりで急ぎ旅をしましたが、どうやら「明るいうち」に、カナダ本土のすぐそばまで降りてきました。

 次回は…引き続き、西へ西へ。グリーンランドから、だいぶ飛んできたような気がしますが、なお緯度的にはれっきとした北極圏。まだやっと西経105度。ベーリング海峡はもちろん、アラスカ北端のバロー岬までだって、総飛行距離でも半分来ていない感じです。まあ、焦らずに…。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-11-12 23:05 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 私の水上機世界一周「海鳥の旅」シリーズは今回、ヨーロッパから極東へ抜ける「北西航路を行く」フライトの第3回をお届けします。カナダ北極諸島・ケンブリッジベイからひたすら西へ進み、アラスカ最北端のバロー岬が目的地。地図ではベーリング海峡まであと少しですが、距離にするとまだ400nmは残っています。
 ところで今回は、パソコンの環境面で、ささやかなイノベーションを果たしました。まずはそのお話から…。

●●32インチの大画面で飛ぶ:
 実家の整理に行ったついでに、余っていた液晶テレビを持ち帰りました。と言っても、自室に閉じこもってテレビを見る趣味はない(家族と見た方が、ずっと楽しい)ので、FlightGearのディスプレーに使ってやろうというコンタンです。
 フライトシミュレーターの画面は、大きいほど楽しいですね。しかしディスプレーは、買ったら高い。そこで大昔、Mac兇25インチかそこらのテレビに繋いで、マイクロソフト・フライトシミュレータ Ver.4を起動したことがありますが、当時の525本の走査線では非常に画像が粗く、まったく使い物になりませんでした。やがて液晶・地デジ化で画素数が増え、接続も簡単になりましたので、試しにこの夏、HDMIケーブル(1000円ちょい)を買って、40インチの液晶テレビにパソコンを繋ぎ、FlightGearを起動してみました。
 いやぁ…素敵でした。
ル・ブールジェ空港からパリ中心市街に出たのですが、画面が視野の多くを占めるのは、なんと楽しいことでしょう。シミュレーション世界への没入度が、ビデオと映画鑑賞ほど違う…といったら大げさでしょうか。ロールでも打って世界をブン回そうものなら、逆にこっちの体がフワリと動くような気さえして、臨場感のレベルが違います。課題はパソコンの負荷で、額面通りの画素数に設定すると重すぎるため、従来の1024×768にしておき、画面ウィンドウの「最大化」ボックスを使って、見かけだけのフル画面にしました。画質的にはインチキですが、内容的には十分という感じです。
 あれはモンマルトルの丘、こっちは凱旋門…と見とれるうちに、妻が帰宅したので解説しようと思ったら
          「また低いとこ飛んで、危ないことやってる!」
と言い捨てたきり、姿を消してしまいました。ううう、別に危ないことは、していないのになぁ…(^^;)。

 前回はリビングで短時間のテストでしたが、今回入手したテレビは思う存分、一人で使い放題ですから、パソコンラックの奥にきちんと据え付けて、あれこれ設定を変更しました。最初は画質が相当粗く感じられ、長時間使うと目が疲れそうでした。そこで画素数を1ランク上げて1280×1024にしたところ、サンフランシスコ上空のフレームレートは12〜15程度に低下。いささかシビアですが、背に腹は代えられません。さらにメニューをいじっていたら、さまざまな映像モードを発見しました。まずゲームモードを選ぶと、テレビモードよりは画質が改善されましたが、カラーバランスがなかなか決まらず苦労しました。やがてパソコンモードを見つけて、シャープネスを強めにセットしたところ、一応文句なしの状態に。パソコン専用ディスプレーほど、細かいフォントがくっきり結像しないので、文章を書いたりするには問題がありますが、フライトシミュレーター用なら十分だと思います。

 大画面を使うと、計器の読み取りも非常に楽になります。機体にもよりますが、ノートパソコン画面のコクピットビューでは正直、計器の小窓にあるデジタル数字や小さな目盛りは、見づらいです。かといって、いちいち画面をアップにするのも面倒なので、次第にHUD表示に頼るわけですが、こうなると操縦操作も航法もだんだんズボラになって来て、リアリティーが低下します。例えば、HUDのコンパス表示は真方位ですから、ついでに航法も楽な真方位ベースでいいや、という感じですね。
 画面が大きくて、例えばピラタスPC-9Mの高度計が、小窓のデジタル数値まで常にはっきり読めると、上昇率の変化に敏感になりまして、気が付くと絶えずトリムを取っています。離着陸時も、針が変な値を指していると我慢できませんので、ちゃんと現在の気圧をセットしますし、不要になったHUDを消して飛ぶと自然に、主要計器のスキャンだって励行するようになります。結果、全般的にリアリティーの底上げに繋がり、シミュレーション・フライトの質がよくなるように思えます。機会があればぜひ、中型以上のテレビ接続をお試し下さい。少しだけ、しかし確実に、FlightGearの世界が変わります。

●●カナダ北岸を西へ…ツインオッターの挫折:
 ビクトリア島・ケンブリッジベイに着いたのは先月。以来、現地では連日のように、強めの風と雪が続いていました。今月初めに一度は止んだのですが、またすぐ雪模様が復活。悪天候も面白いじゃないかと、吹雪をついて飛ぶ気分になったのですが…本フォーラム「コクピット視界の降雨・降雪」でご紹介しました通り、ピラタスPC-9Mは、コクピット視界ですと降雪や雨が表示されません。
 これでは詰まらないので、ちゃんと雪が見えるDH6ツインオッターを使うことにしまして、極地フライトで有名な、ケンボレック航空の塗色にリペイントしました。巡航160KIASは遅いですが、たった1日だけ使うのですから問題なし。満タンでも上昇力が強く、燃費も比較的良さそうで、いい印象を持ちました。さっそく燃料を確認し、コンパス偏差や高度計の気圧、無線類をセットして、出発準備を進めます。
 ツインオッターのパネルには、UTCと地方時が切り替え可能になった時計があります。この日、ケンブリッジベイの日の出は現地時間で0949時、日没は1538時と、秋も深まっていよいよ、昼間が6時間を切りました。旅を急がねばと、このあとお目に掛けるフライトプランに従って、離陸しようとして…思わず絶句。オートパイロットが、メニュー上でアクティブになっておらず、従って Autopilot Settings 画面を起動することができないのです!

 困ったなぁ、どうしてこんな設計をするのでしょう。
北極圏にはVORやNDBが少なく、私の場合は(GPS任せでは航法を楽しむ余地がないので)推測航法+地文航法が中心です。となると風が変化するたびに、針路の補正計算をやり直すわけですが、virtual E6-B(航法計算機)であれこれ数字をいじりながら、片手でジョイスティックを操るのは正直、とても困難です。
 実機でしたら当然、副操縦士と作業を分担するのですが、FlightGearでは一部のマルチプレーヤー対応機を除いて、独りで操縦するしかありません。なので、たとえ実機にオートパイロットが装備されていない機種であっても、複座以上の飛行機であれば、副操縦士代わりのオートパイロットは必需品。これを外されてしまうと、もう「飛び上がって、一周して降りる」フライトしか出来なくなります。

 呆然とした私は、それでも諦めきれずに離陸し、華麗に舞う雪を見ながら高度を取りました。つくづく素晴らしい上昇力だなぁ。水陸両用だし、スキー付きバージョンもあるし。ピラタスPC-6ターボ・ポーターが進化して、操縦が難しくなっちゃった今、こういう探検向きのSTOL機って貴重なんだがな。磁気コンパスにはちゃんと、自差修正表が貼ってあったりして、お洒落じゃん。しかし…ていねいにトリムを取っても、やっぱり独りで操縦と航法は無理だよ。まてよ、オートパイロットを無効にしたプログラムを無効にできないか?
 私は急いで着陸し、しばらくファイルをいじったのですが、オートパイロットをアクティブにする方法はみつかりませんでした。くっそーっ!
 いっぽう、この日雪が降っているのは高度7000ft以下と分かったので、巡航中は関係ありません。ファイナルアプローチで吹雪に遭う、といった緊迫の場面は期待できなくなってしまいますが、しょうがない。PC-9Mで先を急ぐことにしました。

●●リンドバーグ夫妻の針路をたどる:
 ようやく今回の、フライトプランの出番です。
              【大カッコ内は、飛行中に算出した針路修正値です】

★ビクトリア島ケンブリッジ・ベイ空港(CYCB)VOR 112.7YCB
   69°07'04N-105°10'21W
   The magnetic dip angle is 85.45 degrees down
   The magnetic variation is 7.04 degrees E
   ▼257.41度179.26nm  【風力修正針路254.3 平均偏差12.34E 磁針路243.66】
△ビクトリア島レディー・フランクリン岬 68°28'N-113°14'W
   The magnetic dip angle is 84.42 degrees down
   The magnetic variation is 17.28 degrees E
   ▼282.76度239.97nm  【風力修正針路282 平均偏差20.48E 磁針路262.5】
☆カナダ北岸パウラトック空港NDB276YPC 69°21'N-124°04'28W
   The magnetic dip angle is 83.49 degrees down
   The magnetic variation is 23.68 degrees E
   ▼254.15度246.83nm  【風力修正針路253 平均偏差23.8E 磁針路229】
☆アクラヴィク空港NDB208YKD 68°13'35N-135°00'52W
   The magnetic dip angle is 81.3 degrees down
   The magnetic variation is 23.9 degrees E
   ▼310.64度120.02nm  【平均偏差23.8E 磁針路287.4】
△マッケンジー湾 69°31'45N-139°13'40W
   The magnetic dip angle is 81.54 degrees down
   The magnetic variation is 23.62 degrees E
   ▼291.55度98.22nm   【平均偏差23.1E 磁針路268.5】
☆バーター・アイランド空港NDB308BTI 70°07'50N-143°38'38W シンプソン・ラグーン
   The magnetic dip angle is 81.38 degrees down
   The magnetic variation is 22.62 degrees E
   ▼284.74度269.43nm  【風力修正値284.4度 平均偏差19E 磁針路265.4】
★バロー岬VOR116.2BRW ワイリーポスト・ウィルロジャース記念空港PABR
   71°16'23N-156°47'18W
   The magnetic dip angle is 80.78 degrees down
   The magnetic variation is 17.49 degrees E

 以上、長いので要点をまとめますと、
(1)出発地はカナダ・北極諸島南部にある、ビクトリア島のケンブリッジベイ。
(2)西へ飛んで、同じビクトリア島西端のレディー・フランクリン岬を通過。
(3)カナダ本土の北岸に渡り、以後も海沿いに西北西へ飛び続けてアラスカへ。
(4)アラスカ州最北端、バロー岬のすぐそばにある、ワイリーポスト・ウィル
   ロジャース記念空港に着陸する。
…という段取りで、(2)以降に通過する計6地点は、1931年夏にチャールズ・リンドバーグとアン夫人が、自家用のロッキード・シリウス水上機でたどった、北西航路の調査飛行ルートを再現したものです。
 シリウスはご存じのように、リンドバーグがTWAやパンナムの新空路開拓調査のため、ジャック・ノースロップとジェラード・ヴァルティーの名コンビに設計して貰った、低翼の高速連絡機です。夫妻は1930年に、この機体で大陸横断の速度記録を作った後、水上機に改造して翌年夏にニューヨークを発ち、カナダの北極諸島や日本列島を経由して、中国に至る大圏コースを翔破しました。

 私がこのコースを一部再現しようと思ったのは、航法上の大きな理由がありました。磁気偏差が劇的に変化する北極地方で、正確な推測航法を行うには、コースの中継点(変針点)を何マイルおきに設けたらいいのか、よく分からなかったのです。これまでのフライトプランでは取りあえず、磁気偏差が1区間の始点と終点で10度未満の差に、ほぼ収まるよう計画しました。飛んでみると幸い、誤差は数マイルと言ったところで、まったく問題になりませんでしたが、果たして実世界では慣性航法やGPSが普及する前、こうした磁気偏差の勾配をどの程度まで許容して、推測航法をプラニングしていたのか、ぜひ知りたいと思いました。

 幸運にもアン夫人の旅行記「翼よ、北に」(みすず書房)が手元にあり、リンドバーグ本人が描いたニューヨーク=東京=中国・漢口間のコース図20枚が載っていて、Atlas画面やSkyvector、GoogleEarthなどと付き合わせると、全航程がよく分かりました。これによると、推測航法の名手リンドバーグも私と同様、1区間の両端における磁気偏差が、ほぼ10度差以内に収まるようコースを設定しており、これで十分に許容範囲なのだと確認できました。
 もう一つ、とても印象的なのは、リンドバーグが選んだ中継点(変針点)が、いずれも間違いなく、付近の海岸線で一番目立つ地形だったことです。飛んでみるとよく分かるのですが、必ず海側に突出した地点を選んでいるうえ、他のどの場所とも似ていません。例えばマッケンジー湾は巨大なカギ型だし、次のシンプソン・ラグーン(現在のバーター・アイランド空港付近)も、長い砂嘴(さし=低い砂浜の半島)が独特に折れ曲がった地形で、間違いっこありません。しかもラグーンは外洋の波から守られ、水上機の不時着にも適しており一石二鳥と、あちこちに熟慮を感じます。彼がここを飛んだ時代は、アメリカ本国でも中波ビーコンの設置はこれからで、定期航空路でさえ航空灯台くらいしかなかったのですから、推測航法や地文航法は文字通り、真剣勝負だったのですね。

●●凍った河と湖と:
 やっと、出発にこぎ着けました。
水上機版ピラタスPC-9Mを、ケンブリッジベイで起動。今回は天測しませんので、普通に Time Settings を使い、現地時間の10時39分にセット(これを使うと天体の日周運動に、最大で1分程度の誤差が発生して測位が台無しになることも)。燃料は、機内のみ満タン(フロートタンクは空)の2800Lbsとしました。今回は地形の関係で海へタキシングせず、このまま空港から離陸する予定です。滑走路長はたった5000ft、風も5Ktしかないので少々心配になり、大事を取って燃料を2100Lbsまで減らしました。飛行距離400nmなら、航続力は相当おつりが来るはずです。本番では不安なく離陸に成功し、無事に上昇に移りました。

 真対気速度を250Ktとして、最初の中継地レディー・フランクリン岬までの針路を計算。風は18000ftで165度5.2Ktなので…航法ツールによると、真方位256度と出ました。対地速度は横風なのでほぼ同じ。偏差を加えて磁気方位は243.66度。予定飛行時間は42分。エンジンを始動し、高度計に気圧をセットします。
 UTCの1656時(地方時1056時、ただし任意設定で日本時間と無関係)に離陸、約15分で18000ftまで上昇し、HSIのヘディング・バグを244度にセットします。カナダ本土・ケント半島とビクトリア島の間の、ディーズ海峡を西南西に進んでいます。高度の選び方がまずかったか、時々雲に突っ込んでしまいますが、眼下のビクトリア島を見失うほどではなく、このぶんですと地図との対比で、絶えず機位が確認できそうです。

 自作ジオマグメーターのデジタル表示を見ると、飛ぶにつれて磁方位と偏差はどんどん変化し、改めて磁北極の近さを感じます。いっぽうコンパス針路は一定ですから、Atlas画面上に航跡を記録したら、かすかに湾曲した経路を描いたことでしょう。ただし私は今度もAtlasをチャートとして使っているので、FlightGearとは連動させていません(完全にロストポジションした場合は、レーダー誘導を要請したつもりで、たぶん連動にしますが)。やがて、ケント半島の先端が左翼アビーム(真横)に差し掛かり、さらにビクトリア島南岸にある、小さいけれど目立つエディンバラ島が視認できました。
 第一の中継地、レディー・フランクリン岬を、ほぼピンポイントでヒット。以後カナダ本土に渡って、次の通過点パウラトック空港も、かなりいい精度でアビーム通過。眼下の平野には、小さな湖と無数の川が点在していました。アン・モロー・リンドバーグが、シリウス水上機から見下ろした通りの光景です…。

 …おおっと、中継点通過時に必要な、磁気偏差の設定変更を忘れていました。さっそく Instrument Settings から HI offset を開き、次の飛行区間の平均偏差を打ち込んで一安心。もし変更を忘れてもHSIの表示が狂うだけで、オートパイロットにセットした磁気方位の数値は影響を受けないのですが、仮に私が何年も前にブロンコでやっていたように、HSIの目盛りを見て手動操舵で針路を合わせ、ウィングレベラーで保針していたら、8度くらい南へコースを外してしまうところでした。

 その後も、ランドマークで順調に機位を確認しながら西に進み、やがて巨大なマッケンジー川のデルタに差し掛かります。河口から70nm近く南、凍った川や湖が重なる中、ヘアピンみたいな川の屈曲部に未舗装の滑走路が見え、慎重に接近して無事着陸。アクラヴィク空港です。かつてリンドバーグ夫妻は、カナダ東部のハドソン湾に近いベーカーレークという集落から、夏の白夜を12時間以上飛び続け、ここの川面に着水しました。当時は小さな開拓地で、折しも年に一度の補給船が到着する日とあって、お祭り騒ぎだったそうです。私は飛行距離が半分しかない上、高度20000ftでも260KTASは出ますから、晩秋の正午前後の貴重な日中を、2時間半も飛べば十分でした。しかし景色はwinterを選択して、薄暗い空の下は氷だらけで憂鬱でしたから、夫妻が味わった明るい夏の光景を、ちょっと知りたいところです。

●●バロー岬・夢幻の光景:
 本日はここまでにしようかとも思ったのですが、天気も悪くないので休憩後、バロー岬まで続航決定。出発時と同じ2100Lbsまで燃料を補給し、風や気圧を確かめて、計算を終え出発。
 まもなく国境を越えてアラスカ州に入り、後はおおむね西北西へ、ひたすら延びる海岸線に沿って進みます。細かいお話は省きますが、アメリカ領に入ってから空港が増えたようで、特に舗装滑走路を備えた立派なやつが、場所によっては10nmくらいの間隔で幾つもあって、「これでも北極圏の荒れ地か?」とびっくり。調べてみると、北極油田地帯の基地なのだそうです。

 西へ進む太陽を追っかけて、やや長めの「昼」の恩恵を受けつつ約500nmを消化し、ついにバロー岬を視認。ここは以前からぜひ一度、FlightGearで飛来したかった場所です。
 2010年夏、私はロンドンから北極経由で日本へ抜ける「オーロラ・フライト」を試みるにあたり、FlightGearの北極にはちゃんと氷に覆われた海があるのか、氷上には着陸可能か、などが心配でした。現地へ偵察に入ることにして、ワイリーポスト・ウィルロジャース記念空港PABRで、当時のピラタスPC7改を起動し、北へ機首を向けました。約70nm飛んだ後、眼下にはちゃんと氷原が広がり、着陸にも成功。一安心してGPSを頼りに陸岸へ戻ると、岬の周辺は上天気でしたが、地表付近だけ霧に覆われていました。
 圧巻は、近くの集落にランダムに現れた色とりどりの住宅群で、まるで高山の霧にかすむ花々のように、幻想的に見えました。私は飽きずに旋回して見とれ、ふと見失ってはまた霧の中に発見し、やがて後ろ髪を引かれるように空港へ帰投。着陸して振り返ると家々は霧の中に消え、夢でも見たような気分でした。それ以来「いつかは、ちゃんと日本から飛んできて、再びあの光景を見よう」と心に決めていたのです。

 あれから3年。バロー岬そのものを、じっくり見るのは今回が初めてです。細長い砂嘴が北極海に伸び、くの字型に折れた北端部分が岬で、米ノースカロライナ州にあるアウターバンクス(キティーホーク海岸があるところ)の先端・ハッテラス岬と、地形の感じがよく似ています。どちらも砂嘴で、しかも孤独な地の果てムード。風や潮流が強そうなところなんかもね。
 岬に見とれつつ沖合を通過して、ワイリーポスト・ウィルロジャース記念空港PABRに向かって旋回。岬と空港の間に、いくつか集落が見えました。3年前に霧の中で見たのは一体、どれだったのかな。今回はどの集落にも教会1軒、住宅1軒程度しかオブジェクトが見あたらず、住宅のデザインも、昔みたいにカラフルではなくなっており、わが幻想の光景は結局、夢のままで終わりました。
 いっぽう、今回初めて見ることができた景色もあります。昔よりグラフィック性能が大幅に上がり、視界を100nmに設定しているため、はるか北極点まで伸びる氷原の南端が、約70nm離れたバロー岬上空からも視認できるのです。いかにもアラスカ北端の気分で、なかなか素敵です。

 西の海上から滑走路に滑り込み、誘導路に入れてエンジン停止。北極圏の太陽は、昼前後でもいよいよ低くなってきました。まだコースを詰めていませんが、次回はドンドコ南下したいものです。

 ■おまけ■ ワイリーポストって誰?
 1930年代に、さまざまな仕様のロッキード・ヴェガを駆って、オートパイロット装備の単独世界一周から、潜水服のような加圧スーツによる高々度飛行まで、幅広く挑戦を重ねた冒険飛行家です。伝記が読みたいのですが、まだ見つけていません。彼は飛行機好きの俳優ウィル・ロジャースと飛行中、この近くで墜死したことから、空港に両人の名前が付きました。日本の表記は「ウィリー・ポスト」「ワイリー・ポスト」とまちまちですが、PABRのATIS(チャート表記だとCATF周波数)を聴いたら「ジスイズ・ワイリーポスト」と発音していましたので、今回はこれに従うことにします。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-11-14 1:19 | 最終変更
sambar  長老 居住地: 岡山  投稿数: 484
こんばんは、sambarです。
私も今年春に27インチディスプレイを導入しましたが、やっぱり大画面だと迫力が違いますね。32インチとは羨ましいです。

引用:

オートパイロットが、メニュー上でアクティブになっておらず、従って Autopilot Settings 画面を起動することができないのです!

 困ったなぁ、どうしてこんな設計をするのでしょう。

とりあえずオートパイロットのメニューをアクティブにするには、dhc6-base.xmlの392行辺りの<autopilot>タグを削除するか、コメントアウトしてやれば良いんですが、「コメント中のコメント」はmismatched tagエラーが起きますので、<!-- AP is disabled -->の一節を削除した上でコメントアウトしてみてください。

以下は$fgdataからのdiffです。
引用:
--- a/Aircraft/dhc6/dhc6-base.xml
+++ b/Aircraft/dhc6/dhc6-base.xml
@@ -389,13 +389,14 @@ Jan 2008 Syd Adams
</engine>
</engines>

+<!--
<autopilot>
- <hide-menu type="bool">true</hide-menu> <!-- AP is disabled -->
+ <hide-menu type="bool">true</hide-menu>
<locks>
<passive-mode type="bool">true</passive-mode>
</locks>
</autopilot>
-
+-->
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-11-14 10:18
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
こんにちはsambarさん、hideです。
 オートパイロットの件で、さっそく貴重なアドバイスを頂きまして、大変ありがとうございました。
なるほど、文中にちゃんと disabled という表記があったのですね、気が付きませんでした。この部分をコメントアウトしたところ、お陰様でメニューからオートパイロットが選択可能になりました。

 まずは大成功…と思ったのですが、残念ながらこの状態ではまだ、Autopilot Settings に高度、速度、方位の値とチェックマークを入れても、作動しませんでした。HUDを表示すると、オートパイロットの各種機能がアクティブになった画面表示は出ます。例えばCTRL+Wを押すと、HUDに「ROLL」の文字が出て、ウィングレベラーが起動したことを示していますが、実際に機能はしないのです。
 調べてみたところ、Aircraft/dhc6/systems フォルダの中に autopilot.xml がありまして、内容は

<?xml version="1.0"?>
<PropertyList>
<!-- autopilot disabled -->
</PropertyList>

…と非常にシンプルです。これが機能を止める仕掛けかな、と想像して、待避フォルダを作ってファイルを移してみたのですが、効果がありませんでした。一つの階層上の Aircraft/dhc6 にも、別の autopilot.xml が見つかったので、試しにこちらも待避したのですが、やはりオートパイロットは作動しませんでした。
 という次第で大変恐縮ですが、さらにお知恵を拝借できますと幸いです。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-11-14 22:17
sambar  長老 居住地: 岡山  投稿数: 484
こんばんは、hideさん。
引用:

hideさんは書きました:
こんにちはsambarさん、hideです。
 オートパイロットの件で、さっそく貴重なアドバイスを頂きまして、大変ありがとうございました。
なるほど、文中にちゃんと disabled という表記があったのですね、気が付きませんでした。この部分をコメントアウトしたところ、お陰様でメニューからオートパイロットが選択可能になりました。

 まずは大成功…と思ったのですが、残念ながらこの状態ではまだ、Autopilot Settings に高度、速度、方位の値とチェックマークを入れても、作動しませんでした。HUDを表示すると、オートパイロットの各種機能がアクティブになった画面表示は出ます。例えばCTRL+Wを押すと、HUDに「ROLL」の文字が出て、ウィングレベラーが起動したことを示していますが、実際に機能はしないのです。

 調べてみたところ、Aircraft/dhc6/systems フォルダの中に autopilot.xml がありまして、内容は

<?xml version="1.0"?>
<PropertyList>
<!-- autopilot disabled -->
</PropertyList>

…と非常にシンプルです。
私も「中身が空のautopilot.xmlだったら自動でgenericのを読みに行くのかな」と思って昨晩は実際の飛行まではやってませんでした。

そこで、とりあえず「Aircraft/dhc6/autopilot.xml」「Aircraft/dhc6/autopilot.xml」それから「Aircraft/Generic/generic-autopilot.xml(汎用的なオートパイロット)」の違いを確かめてみよう、ということで、126行辺りの<autopilot>タグでオートパイロットの設定ファイルの指定を色々変えてみました。

以下にその部分を抜粋します。
引用:
<systems>
<electrical>
<path></path>
</electrical>
<autopilot>
<path>Aircraft/dhc6/systems/autopilot.xml</path>
</autopilot>
</systems>


結果をまとめますと、このようになりました。
・Aircraft/dhc6/systems/autopilot.xml
内容が空で、hideさんの報告通り何も動作しない

・Aircraft/dhc6/autopilot.xml
オートスロットル以外はうまく動作している。定速プロペラとスロットルの両方をうまく制御するのが難しいのかもしれない。
バンクとピッチはエルロンとエレベータで制御。

・Aircraft/Generic/generic-autopilot.xml
一応全部動作はするものの相性が悪いようで、放置するとバランスを崩して墜落する。
バンクとピッチはエルロントリムとエレベータトリムで制御。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-11-15 1:56
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
こんばんはsambarさん、hideです。お手数お掛けします。
 色々とお調べ頂きまして、大変ありがとうございました。お陰様で取りあえず、ツインオッターの高度・磁針路保持が可能になり、フロントグラス越しに舞う雪を眺めて、ホッとしております(^^)。

 FlightGearの汎用オートパイロット・プログラムは、アプリケーション本体にバイナリで書き込まれているのかと、漠然と考えていたのですが、実際は Aircraft/Generic フォルダの中にあったのですね。勉強になりました。参考として一応試しましたが、最初は高度・磁方位保持が有効だったものの、なぜか途中から利かなくなってしまい、使えそうにありませんでした。

 いっぽう Aircraft/dhc6/autopilot.xml は、私の環境でも速度保持は無反応ながら、高度・磁針路の保持は、けっこう精度も高い印象で、ほぼ問題ありませんでした。針路保持については、真方位モードが使えませんが、睡眠中も一晩飛び続ける(飛行距離が長く、磁気偏差が変化する)ような使い方をしない限り、磁方位で十分です。また、アプローチを想定して90Kt付近まで減速したところ、ロール方向に自励振動を起こし、次第に激しく蛇行しましたが、巡航さえ出来ればいいので、これも問題ありません(もしかすると、かなり旋回角速度が大きいのが原因でしょうか)
 ともかくこれで、ツインオッターの実戦投入が可能になりました。重ねてお礼申し上げます。
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なし 北西航路を行くだ弔ざ、緑の海

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-11-23 0:28
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 グリーンランドから、カナダ北方に広がる「北極諸島」を抜けて太平洋に至る、「北西航路」の旅もそろそろ最終段階。今回は、正午も陽が昇らなくなったアラスカ最北端・バロー岬から南下して、明るいベーリング海に面した港町ノームへ進みます。離着陸は吹雪の中でしたが、ようやく北極圏から脱出を果たし、比較的短いフライトながら印象深い旅になりました。

 北極圏とは何か。定義は一つではないようですが、基本的には、北緯66度33分から北のこと。地球の自転軸は公転面に対して約23度26分傾いているため、これ以上北へ行くと、太陽がまったく昇らない「極夜」と、太陽がまったく沈まない「白夜」が、年に最低1日は発生します。そういう場所が北極圏です(ただし、太陽の視半径や大気の屈折率、観測者の眼高を補正してないので、この緯度は厳密なものではありません)。

 前回のフライトで着陸した、バロー岬近くのワイリーポスト・ウィルロジャース記念空港は、北緯71度16分で、れっきとした北極圏です。到着時は十分明るかったのに、その後何度かFlightGearを起動して、現地の日の出・日の入り時刻をチェックしていたところ、中間の「昼」がどんどん短くなり、先日ついに正午でも、太陽が昇らなくなりました。この緯度では、もう極夜が始まったのですね。飛行に支障はありませんが、景色が暗いと気分も晴れず、私はこの季節が嫌いです。陽の差す地域まで、さっさと南下しなくては。
 (余談ながら、天文学における日の出・日の入りは、「太陽の上辺が地平線に一致したとき」を指します。いっぽう月と星々の出入りは「中心が地平線に一致したとき」です。FlightGearでは単純化して、日の出日の入りも「中心が地平線に一致したとき」に統一しているようです。理由の一つは恐らく、太陽の視直径が現実世界とは異なるからでしょう)

●●雪の中を南へ:
 sambarさんのお陰で、ツインオッターのオートパイロットが使えるようになり、コクピット視界で正常に雪が降るフライトが可能になったので、どうせ飛ぶなら雪の日にと、何日かチャンスを狙っていました。人工的に雪を降らせてもいいんですが、出来るならリアルウェザーの方が、気分がいいですね。

 先日、午前5時過ぎ(日本時間。UTCは20時過ぎ)に目が覚めまして、FlightGearを起動。アラスカ時間は午前11時過ぎでしたが、ワイリーポスト・ウィルロジャース記念空港は、ほぼ真っ暗です。気になる天候は、しめしめ…ばんばん雪が降っております。雲量は1800ftがscatterd、6000ftだとbroken。地平線付近は空が見え、右の地平に満月が掛かり、左の地平はほのかな黎明に染まって、風は低空から成層圏まで325度20Kt、地表は15Kt。多少風が強いですが、今回は悪天候がテーマってことで、よし決行!
 以下がフライトプランです。■は離陸前及び飛行中に計算した、風力修正済みの磁気針路です。

★バロー岬VOR116.2BRW ワイリーポスト・ウィルロジャース記念空港PABR
   71°16'23N-156°47'18W
   The magnetic dip angle is 80.78 degrees down
   The magnetic variation is 17.49 degrees E
   ▼239.77度116.84nm 平均偏差16.1E ■230.2度MAG
△Icy Cape Afs空港(2AK8) 70°17'34N-161°54'05W
   The magnetic dip angle is 79.65 degrees down
   The magnetic variation is 14.72 degrees E
   ▼200.81度258.96nm 平均偏差13.3E ■191.2度MAG
☆シシュマレフ空港NDB365SHH 66°15'30N-166°03'18W
   The magnetic dip angle is 76.23 degrees down
   The magnetic variation is 12 degrees E
   ▼227.02度62.33nm 平均偏差11.5E 風力修正232.5度→■221度MAG
☆TINCITY-NDB347TNC(65度33N-167度55W)
   The magnetic dip angle is 75.52 degrees down
   The magnetic variation is 10.93 degrees E
   ▼133.45度92.95nm 平均偏差11.5E 風力修正131.8度→■120.3度MAG GS226kt
◎ノーム空港PAOM VOR115.0 OME 64°29'05N-165°15'12W
 RWY28 ILS108.7 278Mag
   The magnetic dip angle is 74.88 degrees down
   The magnetic variation is 12.19 degrees E

 暗い滑走路で、燃料を満タン2583Lbsにセット。この機体は軽輸送機なので、デフォルトで貨物を1800ポンド余り積んでいるのですが、上昇力を稼ぐため、スライダーをゼロにします。QNHは30.14inHgで、さっそく高度計をセット。最初の航程は、平均磁気偏差が偏東16.1度ですので、HI offset をマイナス16.1に合わせました。ツインオッターの巡航速度は約165KIASと記憶していますが、真対気速度だと、常用高度の20000ft前後ではどのくらい出るのか、なかなかピンと来ません。むかし速度換算表を作った気もするのですが、見つからないので…控えめに180KTASと仮定し、風向風速から修正針路を算出して磁方位に変換。答は230.2度と出ました。次の変針点までのETE(予想飛行時間)は、ざっと39分というところです。
 この時点でやっと気付いたのですが、パネルにはVOR指示器が1台しかなく、DMEも付いていません。RMIもなくADFのみで、結構不便な飛行機ですが、まあ何とかなるでしょう。UTC2052時(現地1152時)に離陸。暗い滑走路を突っ走って、ふわりと吹雪の空に浮かびました。

●●薄明からオレンジの空へ:
 空港を見下ろしながら、左旋回で高度を上げていきます。昇降計のフルスケール2000ft/min を簡単に振り切って、減速の気配も見せずぐんぐん上昇。これが本機のいいとこですね。8000ftで雪が止み、10000ftを超えたころ、水平線下にいた太陽が姿を現して、空はオレンジ色に染まりました。鳥と機上の人だけに見える、高度がもたらした「朝」…地表は暗いけど、機体は陽光を浴びて、とても快適です。
 離陸9分後、高度20000ftでレベルオフして、空港真上を通過しながら所定の針路にセット。真対気速度は予想を超えて207KTASも出たため、航法計算をやり直す必要がありました。ありがたいことです。

 ようやく落ち着いて、きちんと巡航態勢を整える気分になり、プロペラピッチをいじってみましたが、どうやら逆効果。レバーをどこに合わせても減速するため、離昇位置のまま(言わばローギア)としました。雲が結構じゃまで、地表の目標は見えたり隠れたりですが、最近は慣れてきて、チャート代わりのAtlas画面を地形と照合すると、かなりうまく機位を決定することが出来ます。
 2123時、さっそく眼下に二つの空港が見え、フィックス(確定位置)が手に入りました。同時に、風が変わっていないことも分かったので、次の航程の針路計算を進めます。やがて最初の中継地 Icy Cape Afs空港が近づき、そろそろ海岸線に沿って、細長いラグーン(砂州に囲まれた浅瀬、湖沼地帯)が見えるはずなんですが、窓外には岬とオレンジ色の雲ばかり。
 おかしい、おかしいと思っているうちに…ああ、分かった! FlightGearでは、ラグーンは(海水なのに)湖や川と同じ内水面(淡水の領域)扱いなので、冬景色を選択すると凍ってしまい、地表と区別がつきにくいのです。そう思って眺めると…眼下の風景はチャートとうまく一致し、航法はほとんどぴたり、合っていました。Icy Cape とは、氷だらけの岬ってことですかね。FlightGearの世界には、氷山がちょっぴり出るだけですが、実世界では真夏を除いて、このあたりの海は氷に閉ざされているはずです。

 目標の空港を過ぎ、次の中継点シシュマレフへ変針。忘れがちなコンパスの偏差も、再調整しておきます。引き続き、あちこちの空港NDBを受信。カナダからアラスカ州に入ってからは空港が多くて、迷う暇がありません。これだけNDBが受かるなら、チャート上に複数の受信方位線を記入して交点を求める、いわゆるクロスベアリングで、簡単に正確な機位が求められそうです。
 あいにくAtlas画面上には、何も記入できないので、まず画面上に自機の予定直線コースを思い浮かべ、特定のNDBのアビーム(真横)を通過した時点で、NDB局から自機コースに伸びた直角の線を想定し、交点にあたる場所にAtlasのポインタを置いて、緯度経度を読む方法を実験してみました。過去何度か、似たような方法を試しているのですが、あまりちゃんと精度を検証したことはありません。
 今回はNDBがアビームに来た瞬間、HUDの緯度経度表示をキャプチャーしておき、自分で求めた位置と比較しました。すると、緯度は約5分角(約5nm)の誤差で済んだものの、経度は残念ながら37分もずれました。距離にすると20nmかそこらでしょうか、これではとても実用になりません。残念だなぁ…恐らく高緯度のため、経度方向は地図が派手に歪んでいるのでしょうね。

●●雲と雪の向こうは、アジア:
 その後もNDBをあれこれ受信して2219時、海岸にある小飛行場の一つ、キヴァリナ空港の真上を通過。やはり完全に予定コース上です。ここまでは前回に引き続き、ほぼリンドバーグ夫妻のロッキード・シリウス水上機と同じコースを進んできたわけですが、以後は寄り道を計画しました。
 間もなく到着するシシュマレフから先は、予定のノーム直航はやめて、西方のプリンス・オブ・ウェールズ岬(北アメリカ最西端)に向かい、ベーリング海峡の最狭部を眺めたいのです。うまく行けば85キロ先のアジア大陸、チュコト半島のデジニョフ岬が見えるかも。ダメでも中間のダイオミード諸島は見えるかな。プリンス・オブ・ウェールズ岬には、ティン・シティー空港とホエールズ空港があり、前者にはNDBがあって迷いっこありません。新針路を計算し、ADFをティン・シティーに合わせます。
 余談ながら、カナダやアメリカ領の北極圏には、いかにも開拓地らしい、素朴な地名が目につきます。ティン・シティー(スズの街)や、コパーマイン(銅山)など採掘系、イエロー・ナイフは道具系。レッド・ドッグにデッド・ホースといった家畜系があり、ポーラーベアにベルーガ(チョウザメ)となると、言わば獲物系でしょうか。もっと南下すると、なぜかウラニウム・シティなんて、物騒なのもあります…。

 2241時、中継点のシシュマレフ空港が視界に入り、間もなくティン・シティー空港に向けて変針。2256時、薄雲をついて空港が見えました。水平線への視界を稼ぐため、降下を始めましたが、雲はだんだん厚くなる様子です。また7000ft以下では降雪が続いており、視界はさらに悪化。3000ftでやっと雲を抜けましたが、雪のお陰でろくに景色は見えません。眼を皿のようにして機外を見つめ、チャートと照らし合わせ、ようやく2313時ごろ岬に到着。残念ながら、あいにくの雪と雲で、とてもロシアの岬を見るどころではありません。

 雪が、無数の白い弾丸になって空中を埋め、広く機体を包み、ときどき平衡感覚がおかしくなります。ブリザードの中を運転すると、風向きが変わった瞬間、地を這う雪がザッと一斉に向きを変えて、車が横滑りや急加速・減速をした錯覚に襲われますが、あれとちょっと似ています。ツインオッターはYasimですので、ピッチ方向に一定以上の操舵力を掛けると、いきなりガクッと機首が踊って、レッドアウトを起こしたりしますが、雪で平衡感覚が怪しくなった時に、これが起きると一瞬、姿勢が分からなくなります。墜落しそうな不安も感じ、しばらく水平儀と気速計、高度計をしっかり確認して操縦しました。
 アジアの切れっ端が見えなかったのは残念至極ですが、たまにはこういうスリリングな目にも遭ってみたくて、わざわざ雪の日を選んだのですから、よしとしましょう。

●●青い空、緑の海:
 機首を巡らしてノームに進路を取り、上昇に移ります。
吹雪を通して、陽光を浴びたベーリング海が、ちらりと目に入り、鮮やかなグリーンが印象的です。どんどん上昇していくと、今度は空がいつの間にか、これまた鮮やかなブルーに染まっています。上の方は藍色に近くて実に美しい。近くの山地の標高が気になりますので、そのまま10000ftまで昇り、チャートをにらみながら東へ。やがて大きく湾曲した砂嘴が現れ、先端にはポート・クラレンスという小空港があって、なかなか風流な景色でしたが、視界が悪く風も強い中、ノームへの最終進入方法を考えていると、あまり見とれる気分ではありません。

 現在、ノームのVORを受信中。VOR局は私から見て空港の向こう側、東の進入路に設けられたアウターマーカーの近くにありますが、ローカライザのコースからは、少々ずれています。4nmほど内側にNDBもあるけれど、これもコースからずれていて、コンパスロケーターとしては使いにくそうです。
 行く手にILSがあるので、悪天候でも着陸は楽勝だと思いましたが、思えば私はここ数カ月、ILSを使っていません。アメリカでは確か、何カ月か計器進入をしないと、セーフティ・パイロット同乗で再訓練を義務付けられるそうです。FlightGearも、ブランクがあると技量が落ちる点は全く同じですから、パスに乗るまでは案外苦心するかも。最悪の場合、着水して市街地まで滑走するかな。しかし断雲が海面に足を引きずっており、海上の視界も悪そうです。やっぱり正攻法で…最初から滑走路を狙うべきでしょう。

 2334時、オートパイロットを全部切って降下開始。雲だけでも困るのですが、7000ftを割ると再び雪が舞い、それもひどい降り。ですが4000ftまで降りると、視界は少しましになりました。落ち着け落ち着け。こういう時は、出来るだけシステマチックに飛ぶのだぞ…と身構えて、計器でグライドパスの高さを確認しながら空港をフライパス。NDBのハイステーションを基点に、オーソドックスなベースターンを描いて最終進入するコースを、頭の中に描きます。海岸から少し沖を(DMEがないので)ざっと10nm近く、東に進んでから左旋回。大きく涙滴形に反転し、雪の彼方の滑走路に正対しました。コースも高度もいい感じ。
 クロスポインタ指示器は滑らかにセンターに寄り、ILSは正常に受かっている模様です。グライドパスにぴったり着けると、ひとしきり雪がひどくなりましたが、滑走路は何とか視認できます。やがて高度300ftでスッと視界が開け、空の青さと海の緑が、再び目に飛び込んで…そのまま無事にタッチダウン。2357時、誘導路に機体を駐めてエンジンを、ついで電源を切りました。燃料残は1309Lbs、約半分使った計算です。

 ノームでは、都市テクスチャーのアーバンエフェクトにも再会して、懐かしかったです。最後にビル群を見たのはアイスランドのレイキャビクで、考えてみると1カ月前。その後はもっぱら、雪と氷と荒れ地、灰色の海を眺めていました。ノームは北緯64度30分、ついに北極圏脱出です。もう、陽の出ない日はありません。
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なし 世界一周「海鳥の旅」ゴールイン

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013-12-9 10:03 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 お陰様をもちまして、水上機/飛行艇による西回り世界一周「海鳥の旅」が、やっと伊丹空港RJOOへゴールしました。皆様のご支援並びにご愛読を、心より感謝申し上げます(^^)。(済みません、以下大長文です)

 先月到着したアラスカのノームから千島列島をたどり、一気に北海道・釧路空港に到着。日を改めて列島を半日で縦断し、伊丹へ帰還しました。
 最終航程のうち、アラスカ=北海道の区間は例によって、リンドバーグ夫妻がニューヨーク=日本=中国を飛んだ、空の「北西航路」開拓飛行(1931年)のコース再現をめざしました。以下のように、ベーリング海を越えてシベリア東端近くへ渡り、カムチャツカ半島を経て千島列島へ抜けます。

◎アラスカ州ノーム空港PAOM VOR115.0 OME 64°29'05N-165°15'12W
 RWY28 ILS108.7 278Mag
   The magnetic dip angle is 74.88 degrees down
   The magnetic variation is 12.19 degrees E
   ▼256.05度174.87nm 平均偏差10.48E
☆アラスカ州セントローレンス島・ガムベルNDB369GAM 63°46′55N-171°44′13W
   The magnetic dip angle is 73.82 degrees down
   The magnetic variation is 8.76 degrees E
   ▼259.43度244.87nm 平均偏差6.31E
☆ロシア・チュコト自治管区・ベリンゴフスキーNDB640BE 63°2′00N-179°18′00E
 (西はコリャック山地)
   The magnetic dip angle is 72.79 degrees down
   The magnetic variation is 3.86 degrees E
   ▼241.4度509.33nm 平均偏差
△カラギンスキー島北西岸の集落 58°58′12N-163°54′06E
 (カムチャツカ半島の付け根・パラポリスキー地峡の南)
   The magnetic dip angle is 69.46 degrees down
   The magnetic variation is 4.19 degrees W
   ▼193.33度169.40nm
☆ウスチ・カムチャツスクNDB410UK 56°13′22N-162°41′11E
   The magnetic dip angle is 67.13 degrees down
   The magnetic variation is 4.45 degrees W
   ▼214.97度235.96nm 1313.5nm
☆カラクティルカNDB685HY 53°00′N-158° 47′31E
   The magnetic dip angle is 64.51 degrees down
   The magnetic variation is 5.75 degrees W
   ▼302.8度12.53nm 1326nm
◎ペトロパブロフスク・カムチャツキーのエリゾヴォ空港UHPPコンパスロケーター535PR。
   RWY34R MAG341°ILS110.3 53°06′48N-158°30′E
   The magnetic dip angle is 64.64 degrees down
   The magnetic variation is 5.9 degrees W
   ▼206.79度150.79nm
△カムチャツカ半島南端・ロバートカ岬 50°52′12N-156°39′35E
   The magnetic dip angle is 62.75 degrees down
   The magnetic variation is 6.25 degrees W
   ▼217.88度282.12nm
△新知島の武魯頓湾入り口 47°09′32N-152°15′17E
 (北東に計吐夷島=ケトイ島)
   The magnetic dip angle is 59.69 degrees down
   The magnetic variation is 7.09 degrees W
   ▼235.17度340.58nm
△国後島の東沸湖 43°55′N-145°36′E
   The magnetic dip angle is 57.32 degrees down
   The magnetic variation is 8.27 degrees W
   ▼182.30度36.03nm
△根室市 43°19′N-145°34′E
   The magnetic dip angle is 56.7 degrees down
   The magnetic variation is 8.1 degrees W
   総飛行距離:2135.5nm

 …以上のうち、ペトロパブロフスクと根室がリンドバーグ機の給油・宿泊地点で、ほかに悪天候のため、千島列島の中間点付近にある新知(しむしる)島の武魯頓(ブロトン)湾と、国後島の東沸湖に立ち寄っています。私も、根室までノンストップは航続力ぎりぎりで、向かい風になれば燃料が欠乏するとみて、当初はペトロパブロフスクと武魯頓湾に降りようと思っていました。しかし、飛んでみるとなかなか好調で…北海道まで足が届きそうに思えてきまして、結局は後述のように計画を変更し、一気に宵闇の釧路空港に滑り込むことになったのです。では、旅日記に進みましょう。

●●シベリアからカムチャツカ半島へ:
 ノームでUTC-2308時にピラタスPC-9Mを起動。低い太陽。現地の正午を30分ほど過ぎています。
千島列島をどこまで飛べるか。バロー岬までは、487nm飛んで燃料を1100ポンド使いました。私のPC-9Mは満タンにすると、フロートの予備タンクまで含めて4500Lbsなので、2000nm飛べるかどうかは微妙なところ。風は地表で360度7Kt、上空はほぼ全高度で30度10Kt。一応は追い風です。
 雲はscatterdが3400ftと4500ft、brokenが6500ft。気圧29.96inHg。最初の区間の針路計算を済ませ、2325時からタキシング。ノームの最長滑走路は1800m程度しかなく、風も弱いので少々不足気味。なので誘導路の端から草地を越えて海に入りました。満タンの機体は重く、フロートがほとんど水に浸かります。1分18秒も走ってやっと浮揚。ゆっくりと、ぶどう色の薄暗い空へ上昇していきます。

 離水後すぐ、雲の表示がリアルな Detailed weather を選択しますと、強いタービュランスに揉まれました。先日から32インチのテレビ画面を使っていますので、少々気分が悪くなりそうです。8500ftくらいからやっと静かになり、青空が目に染みて「世界って…美しい!」という気分に。眼下は土色に近い、のっぺりした雲海で、事実上何も見えませんが、しばらくはアメリカ領のVORが使えるので、特に不安はありません。

 ロシアに入ると一転、航法援助無線はNDBだけになります。不便ですが、時々海岸線が見えるようになったので、地形から正確な針路を維持していることを確認。あとは各NDB局のアビーム(真横)を通り過ぎるたびに進出距離が確認できますので、常に機位がつかめていました。

 しかし…雲が何層も広がっているため、コクピットから細かい地形や小空港を視認するのが結構大変です。やむを得ず機外視点も使いましたが、どうも何か真下を見る道具が欲しくなってきます。
 古い航空小説で、原因不明の振動を起こした旅客機のクルーが、偏流計で機体下面の脚カバーや点検ドア類がちゃんと閉まっているか、点検するシーンを読んだことがあります。オーソドックスな偏流計は、ただ真下を見る望遠鏡的な機械ですが、逆さにした潜望鏡みたいに、床下から色々な方角を見ることが出来るタイプもあるようです。いずれ調査研究・開発をしなければと、頭の中のToDoリストに書き込んで続航。途中でフライト・コードラントを使って太陽を天測し、位置の線を1本だけ取りました。太陽はほぼ正面にあり、位置の線は天体と直角の方向に描かれますので、この線から進出距離を確認することができます。

 コース前半の圧巻は、0343時に通過した、カムチャツカ半島中部のクリュチェフスカヤ山(4750m)です。活火山としてはユーラシア大陸で最高峰だそうで、富士山が3姉妹になったみたいな、きれいな連山の真ん中の峰でした。80nmほど南にも、とても見事な円錐形をした独立峰があり、こっちも印象的でした。写真を撮ろうとしましたが、どかっと雲が湧いて手遅れに。こりゃ風が変わったな…調べると25度の6.3Kt。まだ追い風ですが、だいぶ弱まってきました。

 0405時、燃料の残りは2070Lbs(全体の46%)です。間もなく通過する、カムチャツカ半島の要港・ペトロパブロフスクに降りるかどうか迷いました。ここで足を止めるより、さっさと千島列島の武魯頓(ブロトン)湾へ向かいたいのですが、ここはGoogleEarthで拡大しても、旧原潜基地の廃墟ばかりで人の気配が見えず、給油地としてあまりリアルではありません。しかしカルデラ湾で天然の良港になっており、降りてみたい地形ではあります。ううむ、自作の支援船オセアニック・ギア号を、配置しておけばよかったなぁ…。
 計算では北海道まで燃料が保ちそうですが、向かい風にならなければの話。一抹の不安を感じたまま、いよいよカムチャツカ半島南端のロバートカ岬から、オホーツク海へ。

●●火山の飛び石・千島列島:
 ロバートカ岬で印象的だったのは、たった4nmほどの海峡を隔てて、すぐ目の前に旧日本領の占守(シュムシュ)島があったことです。以後、国後島まで約1000舛砲錣燭蝓⊂さな島が飛び石状に切れ目なく並んでいて、飛行中は前にも後ろにも2、3の島影が見えました。今さら仕方ないことですが、昔は全部日本のものだったのですね。今で言えば沖縄を含め、南西諸島をすっかり取られちゃうようなもので、つくづく馬鹿な戦争をしたものです。

 FlightGearの千島列島には、択捉(エトロフ)島の単冠(ヒトカップ)湾に一つだけ小空港があるものの、約500nmもの間、VORやNDBは1カ所もありません。従って、天文航法が大活躍するだろうと楽しみにしていたのですが、実際は雲の切れ目から時々ちらりと島が見え、十分に機位が分かりました。私が地文航法に慣れたせいもありますが、火山列島ですので、多くの島に地獄の一丁目みたいなクレーターや、カルデラ湖など特徴があり、判別が容易なのです。低空まで overcast の雲や霧に覆われない限り、迷子にならないことが分かりました。
 それで思い出したのですが…敗戦の時、千島列島のどこかに駐屯していた海軍の搭乗員たち(確か艦爆か艦攻乗り)が、命令を待たずチャート類を持ち出して、ぼんぼん燃やしてしまった、という話を読んだことがあります。気の立った搭乗員たちは「こんなもん無くても、北海道くらい帰ってみせる!」と息巻いて、指揮官の制止を聞きませんでした。実際彼らはチャート無しで、1機も欠けずに撤収フライトに成功したそうで、私は大いに感心しましたが、現地の地形を見て納得しました。終戦時は夏ですから霧も少ないでしょうし、視界さえあれば迷いようがない。こう実感できるのも、フライトシミュレーターの楽しさの一つですね。

 残念だったのは、途中からますます雲が増え、ちょうど武魯頓湾に差し掛かるころ、地形がよく見えなかったこと。リンドバーグゆかりのカルデラ湾に降りたら面白そうでしたが、撮影すら困難でした。0558時、ちらりと新知島の一部が見え、ほんの1、2分前に武魯頓湾を飛び越えたことが判明。だんだん地文航法が難しくなってきます。雲のレイヤーが非常に厚く、37000ftにいても頭上にモヤが掛かるため、天測も精度が出ません。最後は北海道のVORとNDBが頼りになってきそうです。

 私はカムチャツカ半島のNDBが、なるべく遠くまで受信できるよう、出来るだけ大出力の局を選んでおきました。Atlas画面に表示されるVORやNDBは、周囲に描かれたコンパスローズ(方位盤)や、放射状マークの直径が大きいほど出力が大きく、遠くから受信できます。この時点で実際、ペトロパブロフスク付近のカラクティルカNDB685HYが、まだ受かっていました。日本側で一番強力なのは釧路NDB194KSなので、そろそろ受信を試みます。紋別VORも強力そうなのでチューニングしましたが、まだいずれも受かりません。
 前方には時々、微かにウルップ島が見えます。機体の前後を見比べて、新知島とウルップの中間付近にいると判断し、根室までの距離を再計算。1619時、日没が近づいてきました。世界はオレンジ色と青に染まって美しいが、雲に囲まれて天測も出来ず、下界もいよいよ見えにくい…。
 …と突然、釧路NDBが入感! 紋別VORも中標津VORも入感。これで航法の問題は消えました。1634時、DMEが束の間、中標津から186nmの距離を示してくれました。これで位置が確定し、まだウルップ島の西の端です。が、ともかく日本が近づきました。燃料あと824Lbs。毎時495Lbsの流量なので、残り1時間40分。1815時くらいまで飛行可能で、このまま計算上470nmくらい行けそうです。さて、どこに着けましょうか。

●●あれが、中標津の灯だ…:
 当初の目的地は、リンドバーグ機が着水した根室港でした。しかし北海道到着は確実に夜になるので、目印のない根室沖に降りて、手探りで陸岸まで滑走してビーチングするよりも、きちんとした航法を継続し、釧路空港にILS進入するほうが、質の高いフライトに思えます。ここはもう北極圏ではなく、文明国を飛んでいるのですからね(^^;)。

 0651時、いま択捉島の南岸沖、あと105nmで中標津。相変わらず上にも周囲にも雲があり、ついに雪か雨か見分けの付かないパーティクルが、前方から水平に降ってきました。日没前後の数分は、オレンジ色の雲が波状的に機体を包んで輝き、次の瞬間グレーに変わり、死んでは生まれ変わる炎のようでした。やがて全てがおき火のように、暗い灰色に沈んでしまい。世界ではっきり見えるのは、次第に操縦席の灯だけになっていきます。
 さあ、作戦を決めよう。
チャート代わりのAtlas画面をにらんで、中標津VORを基点に釧路空港へ降りるプランを考えました。
 釧路空港からは、北にILS進入コースが伸びています。コースの端には阿寒NDBがあって、ファイナルアプローチの開始点を示す、コンパスロケーターの役割を担っています。では、中標津VORから阿寒NDBに中間アプローチを行うには、どんな針路を取ればいいか。飛行経路上のMEF(地形の最高標高)は何フィートか。

               MEF 5300ft
               中標津から阿寒ロケーター 磁方位241度 36nm
               RWY-17 2500m 標高300ft
               磁気方位167度 
               ILS108.9
               ロケーターAKAN221KOから 距離5nm

 航法援助施設や空港の緯度経度をもとに、必要な針路と距離を算出し、磁気方位に換算して、慌ただしくメモを打ち終わると0706時。100nm手前から降下を始めたかったのに、DMEはもう中標津の30nm手前を指しています。時間がない! 急いで5000ft目指して降下を開始。22000ftで雲から出た途端、眼下に広がる灯火が目に飛び込んできました。中標津の街の灯だ、空港の灯だ、日本の灯だ。嬉しかったです。

 7000ftで中標津VORのハイステーションを通過。阿寒NDBへ定針して振り向くと、中標津空港の滑走路灯や、湾を挟んで根室市街地、また国後島西岸の灯まで一望できました。この「国境の海」一帯をじっくり味わうため、やっぱり根室か中標津に降りるかな、とも一瞬思ったのですが、せっかく釧路へのルートを決めたことですし、続航して日没過ぎに計画通り、釧路の滑走路に接近しました。
 着陸時、ILSのゴースト信号にたぶらかされましたが、滑走路が視認できたのですぐ修正。ファイナルはオートパイロットにアラインして貰って、着地直前に手動に戻し、機体が軽いのでほとんどグラウンド・エフェクトでフレアを行い、実にフンワリと着地しました。0738時、ランプインしてエンジン停止。燃料残は298.2Lbsしかなかったので、全開飛行なら48分相当であり、もしものダイバートや予備燃料を考えると…実世界ではちょっとやはり、まずい分量のような気がします(^^;)。
 こうしてアラスカのノームから、何とか一発で国内に帰ってきました。飛行時間8時間9分は、ピラタスPC-9Mとしては自己最長記録だろうと思います。以下にこの日の、ほかのデータも挙げておきます。
  ノームからの総飛行距離は2140.5nm。区間平均GS262.6Kt。
  使用燃料4500Lbs-298.2Lbs=4202Lbs(離陸とタキシー、アイドリング含む)。
  燃費は毎時525Lbs、1nm当たり1.963Lbs(同)

●●東から西へ、135度の子午線を通過:
 日を改めて行った伊丹への帰還飛行は、次のようなコースでした。私にとって実質的な空の冒険は、すでに釧路到着で終わっているとも言え、「海鳥の旅」の最終区間は、Skyvector で調べた大圏コースをルートマネージャーに打ち込み、珍しくもGPSを使ったフライトになりました。
KSE
KUSHIRO (112.50 KSE )222° (213°T)78.9nm16.9min
   ▼223.3度 対地286Kt
GPS
N41°55.44' E143°14.92'215° (206°T)136.8nm29.3min
   ▼
MQE
MIYAKO (116.600 MQE )205° (197°T)152.9nm32.8min
   ▼
GPS
飛行禁止区域(半径3キロ5000ft以下) N37°25′18″ E141°1'56″ 213° (206°T)92.8nm19.9min
   ▼
TLE
AMI (116.000 TLE )235° (228°T)29.6nm6.3min
   ▼
GPS
東京都心にある池 N35°41.19' E139°45.55'186° (179°T)7.4nm1.6min
   ▼
HME
TOKYO HANEDA (112.200 HME )248° (241°T)42.8nm9.2min
   ▼
GPS
N35°12.87' E138°59.95'261° (254°T)105.2nm22.5min
   ▼
XMC
KOWA (113.500 XMC )274° (268°T)85.7nm18.4min
   ▼
KCE
KOBE (111.250 KCE )284° (277°T)11.4nm2.4min
   ▼
GPS
N34°39.18' E134°59.97'079° (072°T)23.5nm5.0min
   ▼
OWE
OSAKA (113.900 OWE )
Total767.2nm2h44.4m

 上記の表で、飛行禁止区域(半径3キロ5000ft以下) とあるのは福島第一原発のことです。ここを通らないと良かれ悪しかれ、「日本に帰った」気がしないように思えました。飛行は順調で、HUDを起動してMapとAtlas、ルートマネージャーを広げておくと、区間ごとの残距離も、ETEもクロストラック・エラーも苦もなく表示され、航法は私の手を離れた感がありました。レーダーを頼りに自機とすれ違うANA機を見つけたり、すっかり乗客気分で列島の景色を堪能しまして、いつの間にか大阪平野。自作のJR大阪駅が懐かしいです。
 オートパイロットをディスエンゲージし、明石海峡に向かって降下。以前作った明石市立天文科学館がなかなか見つからず、90Ktで3回くらいフライパス。手違いで表示されないのか、するとこの最終フライトは台無しじゃないか…と焦るなか、やっとアーバン・エフェクトのビルに埋もれて建つ、天文科学館を発見しました。わがゴールラインはこの、東経135度線上の時計台。とうとう通過しました。

  もとより伊丹発=伊丹着約2万8000nmの世界一周ではありますが、途中イギリスに半年も滞在し、この9月に出発する際、ロンドンに寄ってわざわざ世界時のシンボル・グリニッジ子午線を通過していますので、帰国フライトのゴールにも、日本標準時子午線を選んだ次第です。かつてご紹介した「GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅」(2011年7月〜2012年1月)では、グリニッジ子午線をスタート後、東回りで明石へゴールしましたが、今回は同じゴールラインを当時と逆向き、つまり東から西に向けて越えました。これで経度ゼロから東経135度までの旅を、天文航法を一部使いつつ、西回りと東回りの両方で達成したことになります。今回は経度差が225度もあったので、冬ですが思い切って高緯度のコースを選びました。

 伊丹に向けて神戸市沖を飛行中、イギリスで作ったフロートを、ちょっとだけ大阪湾に降ろしたくなりました。神戸空港の東あたりに着水して停止し、すぐまた離水。実世界では、新明和工業甲南工場(US-1飛行艇の製造所)の近所かな。六甲山の東のシッポを飛び越えて伊丹に向かい、ILSを受信しながら主滑走路に着陸。これで本当にゴールインです。ゆっくりタキシングして、自分の格納庫にピラタスPC-9Mを納めました。
  アラスカ出発時は74.88度だった磁気俯角計も、伊丹着陸時は48.47度まで戻っていました。改めて北極地方の緯度の高さを感じます。

●●気分はブルー・スカイ派:
 私のFlightGear世界一周は、UFOを半分ほど使った南北両極縦回り「プロジェクト・南十字星」(2005年10月?〜2006年11月)と、完全に飛行機で西回りした「プロジェクト・ハイフライト」(2007年8月〜2010年2月)に続いて3回目です。前2回は、いずれも航法や飛行法の基礎研究に一大観光旅行がドッキングしたような、各着陸地にゆっくり滞在するフライトでした。外洋ヨットを楽しむ人々は、速度を競うオーシャン・レース派と、タイムとは無関係に長距離航海と寄港を楽しむ「ブルー・ウォーター派」に分かれるそうですが、私はさしずめ後者に近い、バーチャル「ブルー・スカイ派」かな? とよく考えたものです。

 とは言え、世界一周のたびに2、3年掛かるのは大変ですので、旅の期間を劇的に短縮する方法を探しました。そして思いついたのが、過去にご紹介して来ました通り、睡眠中もオートパイロットで飛び続ける、という手です。距離稼ぎと航法の楽しみを両立させるのが目的ですから、GPSは使わず一定針路を保持しておき、目が覚めたらVORやNDB、はたまた天文航法で必死に機位を計り、なんとか中継地にたどり着いて給油する…といったイメージです。使用機はカタリナ飛行艇を改造し、足は遅いが一晩飛べるようにしまして、早ければ3カ月程度、遅くとも半年くらいで世界一周を達成するつもりでした。
 実際は、昨年6月にRJOOを出発して以来、すでに1年半も経っています(^^;)。時期ごとのフライト進捗状況をまとめると、次のようになりました。
 ■伊丹=ナイロビ   (2012年6月15日〜7月2日)5区間6695nm 65時間58分 平均101.5Kt
 ■ナイロビ=ケープタウン(7月21日〜8月31日) 5区間2762nm 19時間51分 平均139.1Kt
 ■ケープタウン=パリ  (9月19日〜12月25日) 9区間8001nm 68時間09分 平均117.4Kt
 ■パリ〜英サウサンプトン(2013年3月26日)   1区間204.5nm 1時間38分 平均237Kt
 ■英サウサンプトン〜伊丹(9月21日〜12月3日) 9区間10344nm 43時間39分 平均143.1Kt
---------------------------------------------------------------------------------------
                      計 29区間27802nm 197時間37分 平均140.7Kt
(サウサンプトン〜伊丹間が特に速いのは、カタリナの代わりにピラタスPC-9M水上機を使用したため)

 第1期のナイロビまでは非常に順調でしたが、アフリカをゆく第2期以降は、過去のフライトに比べて、さほど速いとも言えません。飛んで寝て起きて働いて、帰宅後また離陸して…式の強行軍は、最初は実人生と仮想飛行と、二つの並行世界を同時に生きているようで面白かったのですが、ずっと続けるには、いささか地球は大き過ぎました。やはり趣味ですから、たっぷり無駄に見える時間を取って、下調べをしたり寝たり夢見たり、工夫を重ねながら仮想の旅をしたいものです。というわけで、パリから後はごく普通に、睡眠時間でないときに飛行しています。

 フライトの中身を申し上げれば、今回は初めてアフリカを広範囲に飛び回り、喜望峰が「アフリカ最南端」ではないことを確認し、ケニアのグレート・リフト・バレーやキリマンジャロ、タンガニーカ湖などを満喫して、私の中でアフリカは以前よりも近い国になりました。イギリスからアイスランド、グリーンランド、カナダ北極圏を経て日本へ向かう「北西航路」の空の旅は、一部区間が数年前からの懸案でもあり、大いに達成感がありました。
 技術的な面で特筆したいのは、これまでは面倒で避けることが多かった、磁気方位によるナビゲーションを、アイスランドのレイキャビク出発時から全面的に使用し、航法と操縦をよりリアルにしたことです。またAC3Dを勉強し直して、サウサンプトンに水上機整備工場を建て、夢だったピラタスPC-9Mの水上機版を作ったり、天文航法用のフライト・コードラントを大改修して、計測精度や使い勝手を大幅に改善したのも、私としては嬉しい成果でした。
 5期にわたる飛行の間には、長短それぞれ休止期間がありますが、ヨーロッパに着いてから、特にフランスの精細シーナリーを組み込んで飛び回った、パリからリヨンとフランス・アルプス、スイスのジュネーブ方面の旅は、実に楽しい休暇でしたし、このほか航法ワークシートの改良や水上機に関する資料探しを進めるなど、けっこう実り多い時間でした。

        ○

 さて、FlightGearの新シーナリーが登場しましたね。来春リリースされるVer.3.0も、多くの改良点がありそうで楽しみです。環境が変わるといずれ、また新たな目で「FlightGearの全世界」を見に行きたくなってしまうのはほぼ確実で、困ったものです(笑)。何とかもっと、時間的にも体力的にも楽な方法で、しかも充実した仮想世界の旅をする方法はないものか、引き続き考えていきたいと思います。同時に多分…自分が作り上げてきたバーチャルフライトの世界に、閉じこめられてもいけない。自分の飛び方以外、受け付けなくなっても面白くありませんので、どうやって、どの部分を壊すか。こういう視点もまた重要だろうと思います。
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なし Ver3.0とWindows7で気分一新、ヘリに挑戦

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2014-3-5 22:58 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
 hideです。水上機世界一周「海鳥の旅」のゴールイン以来、すっかりご無沙汰をしました。最近は少し目先を変えて、苦手なヘリの操縦練習をしています。基礎の基礎であるホバリングが、まだまだうまく行きませんが、何とか上がったり降りたり、たまにビルの屋上に飛び乗ったりして、ちょっぴり新しい世界が開けた気分です。
 遅くなりましたが、Ver3.0の正式リリースおめでとうございます。私はインストールに先立ち、まずサポート停止が近づいたxpをWindows7へアップグレードしました。今回は、そのご報告から…。

●●やっとWindows7を使う:
 Windowsを自分で入れ替えるのは初めてです。年明けから、手探りでデータのバックアップなど準備に取り掛かったのですが、最初は「Windows7の出荷が終わった。早く買わないと!」と焦り、続いて「そう言えば、今のATOKやExcelは、7未対応だったな」「ドライバも全部集め直さなくちゃ」「パーティションを切り直さないと、そもそも入らないぞ」と、次第に大仕事であることが分かって、心配になってきました。
 幸い、マイクロソフトのマニュアル「アップグレード徹底ガイド」と、メールアカウントや各種ソフトの設定を移植する「Windows転送ツール」が役に立ちまして、長い作業リストや組み込み予定アプリの一覧表を作ったあと、先月中旬にようやく7をインストール。5日ほど掛けて、ひとまず満足できる環境に仕上げました。まぁ正直、これほど手間が掛かるとは思いませんでした。
 Windows7はxpに似ていますので、私にはスマホ的な8より扱いやすく、かつ機能もさすがにxpより進化していて「たまにはOSを変えてみるもんだな」と、満足しています。現用機を買って4年近く経ちますが、元々Windows7仕様だったのを、購入時にxpへダウングレードしたため、改めて7を入れても特に重く感じませんでした。年末にsambarさんからご教示頂いた通りで、貴重なヒントをありがとうございました(^^)。

●●FlightGear3.0の正式版を入れる:
 1月末からRC版を使わせて貰いましたので、FlightGear自体について戸惑う点はなかったのですが、Windowsを入れ替えたため、ナビゲーション関連の各種ツールなどが正常に動作するかどうか、心配しました。もしこれらの道具類が全滅しますと、推測航法のスリルや天文航法のロマンともお別れです。
 結果的にはうまく行きまして、航法計算フリーウェア「virtual E6-B」や、ブラジル製の天文航法アプリ「Navigator」(英語版)など、いずれも作動を確認。最初は新しいExcelに、昔ネットで入手した航海用アドインをうまく組み込めず、これまでに開発した航法ワークシートが全部パーになるかとハラハラしましたが、こちらも何とか解決しました。天測に必須となる、マウス感度を数十分の一に落とす改造も、本サイトの掲示板で復習してクリア。ピラタスPC-9M水上機やカタリナ飛行艇に積んで六分儀の代わりをする、自作のフライト・コードラントも正常に動いていますので、新たな環境でも引き続き、太陽や恒星の観測と測位計算が可能になりました…これは、そう頻繁に使うわけではありませんが。愛着のある研究成果ですので、心からホッとしています。

 UFOで羽田から離陸。「海の描写が、凝ってるなぁ!」というのがVer3.0の第一印象でした。Shader effects をカスタムにして、Waterのスライダを最強か2番目にすると、水深が海の色に反映され、海岸沿いはブラウンウォーター、その向こうはエメラルドグリーン、沖合はもっと青く染まって、なかなか美しいですね。好天ですと、どうも冬の東京湾というより、真夏の南仏やイタリアに見える色ですが、楽しい新展開です。
 他のShaderは弱めにしています。特にUrban effectは、あまり強く効かせると、建物が跳び箱型に変形してしまいます。オフの1段手前にセットするのがコツですね。他に「Advanced…」のRendering設定で、アンチエイリアスを最強にして、水平線のギザギザを抑えています。以前より効きがよくなった気がしますが、どうでしょうか。
 続いて伊丹RJOOでもUFOを起動。借り物格納庫や自作の大阪城公園・梅田JR駅ビル界隈の表示を確認し、六甲を飛び越えて明石市へ。東経135度線上に設置した「天文科学館」の時計塔は(当然ですが)ちゃんと正しいJSTを指しており、何だがホッと安心。天気がよかったので、久しぶりにFlightGearの地形を、しみじみ美しいと感じました。

●●シーナリー2.0はダメ、Atlasにも問題が:
 新しいシーナリー2.0は、相変わらず使用不能です。V2.12環境では、進路前方に景色が生成されないものの、起動自体は一応可能だったのですが、3.0はRCでも正式版でも起動後1分弱で異常終了し、離陸するひまもありません。やむを得ず、引き続き古いシーナリー(Ver2.10用)を使っています。
 何か情報はないかと、本家の Release candidates フォーラムを眺めていましたら、あるユーザーのTerrasyncを巡る書き込みに対し、Thorsten 氏が次のような返事を寄せているのを見つけました。

Re: Isn't scenery 2.0 meant to come with FG 3.0?
Postby Thorsten ≫ Sun Feb 16, 2014 7:09 am

* The current scenery distribution policy is:

- new scenery 2.0 via terrasync
- old scenery 1.0 via web download

so that users have a choice - new scenery might be problematic on weaker graphics cards and/or 32bit systems due to memory limits (後略)

 …これは「強力なグラフィックカードや64ビット環境が無い場合、新シーナリーはトラブルも予想されますが、その時は旧バージョンをお使いくださいね」という意味に読めますけれど、いかがでしょうか。結局はパソコン買い換えが必須のようで、改めて残念です。(では買い換えたら無事に走るのか、という疑問も残ります。以前からあるフランス限定の詳細シーナリーは、2.0と同レベルの解像度ながら、サクサク動くのになぁ)

 もう一つ困ったのは、Atlas-11の地図画面から、あらゆる空港が消えてしまったこと。空港と滑走路のシンボルマーク、空港名とICAOコード、周波数などがそっくり表示されなくなったのです。VORやILSとエプロンの輪郭は見えるので、大空港の所在は分かりますが、私は機体の位置情報は消しておき、もっぱら全世界をカバーするVFRチャートとして利用する場面が多いので、空港データが見えないのは困ります。
 モニタ画面には「data/apt.dat.gzのバージョンが違って読めない」とのメッセージが表示されました。Ver3.0に対応した新Atlasが欲しいところですが、Atlasの改良は数年スパンの「ゆっくり/まれに」ペースですから、当分は無理でしょう。そこで旧バージョンのdata/apt.dat.gzで代用することにして、単体でDLできないか試したのですが、ftpにはそれらしきデータは見当たらないようです。結局、FlightGearのVer2.12.1をインストールし直して必要なファイルを手に入れ、その後再びVer3.0環境に戻し、古いdata/apt.dat.gzのパスをAtlasの起動バッチファイルに設定。これでやっと、空港の記号と名称、滑走路のデータなどが正常に表示されました。データの自動更新はされませんが、当分は何とか役に立つと思います。

●●東京上空、ヘリを楽しむ:
 そろそろ、フライトのお話に進みましょう。
自慢じゃありませんが…私はヘリの操縦が、昔から苦手です。特にFlightGearの機体は、かつてのマイクロソフトFSシリーズ収録機に比べますと、かなり操縦反応が過敏に思えました。例えば黄色いユーロコプターbo105は、インストーラに標準添付されていますので当然、初心者向けだろうと思って何度か挑戦したんですが、離陸すら不可能でした。いくら修正操舵を掛けてもドーンと横転を繰り返し、そのうちだんだん、1人で柔道の受け身を練習している気分になって来たものです(^^;)。
 FlightGearでまともにヘリを飛ばしたのは2009年7月、最初の西回り世界一周の途中に、コロラド州のバリンジャー隕石口を観察するため、TatさんのKawasaki OH-1 Ninjaを使ったのが、ほぼ唯一の例ではなかったかと思います。Ninjaには強力なSASが付いており、私にも離陸と巡航が可能でした。ただしクレーター内への着陸には失敗し、以後ヘリに縁はないものと諦めていたのです。

 私のホームポートはここ数年、伊丹ですけれども、この冬はシーナリー2.0のテストを主に首都圏で行いました。2.0は道路や線路の表示が精密なため、交通網の密度が高い東京を選んだのですが、羽田から都心へ出ると、今や屋上にヘリポートを備えた美しいビルが、何と多いことでしょう…。あそこへちょっと、降りてみようか。
 というわけで小型ヘリ約10機を試したところ、朝鮮戦争時代のシコルスキーS51、ベトナム戦争と重なって見えるUH-1、そして卵形の軽自動車みたいなロビンソンR44の3機が、何とか私でも離着陸可能でした。と言いましても、突風に舞いあげられる葉っぱみたいに飛び上がり、かなり高速でアプローチして、地面にスキッドを叩き付けて滑るような降り方しか、出来なかったのですけれども。
 中でもSAS/CAS装備のR44は非常に扱いやすく、もし今後の練習でホバリングが出来るようになるとしたら、本機が最短コースでしょう。R44は実機に乗せてもらったことがありますが、小型軽量でエンジン出力も小さいため、普通の声で機長と話せるほど静かで驚きました。陸自や海自の重いヘリでは、とてもこうは行きません…。

 練習機のめどが立ったら、次は教科書が欲しくなります。本棚を探したら、以前買った「ヘリコプターは面白い」(宮田晋也、大河出版)が出てきました。著者はアメリカで働く日本人パイロットで、ヘリの歴史と原理や操縦入門編と、多彩なエピソードを並べたフライト体験談が、バランスよく混在した本です。
 もう一冊、「ヘリコプター操縦のABC」(イカロスMOOK)を購入。少し硬派の入門書で、免許制度から機体の点検、始動、操縦法、緊急時の操作などを解説し、最後に八尾空港から舞洲ヘリポートまで、大阪市内のクロスカントリー飛行を、グラビアで詳しく紹介した読み応えのある本。最初の難関のホバリングに関しても、具体的なコツや飛行練習法を書き込んであり、参考になります。これらを読んでから、FlightGearであれこれ試すと、改めて以下のことが分かりました。

 ・実機のコントロール類は超敏感。しばしばミリ単位で操作する。
  FlightGearでも、徹底的にデリケートな操作を。
 ・風見安定を配慮して、離着陸やホバリング練習は原則、向かい風
  で行うこと。
 ・水平姿勢の目標物を決めておき、離陸やホバリングの際、絶えず
  確認する。
 ・FlightGearのヘリは、トランスレーショナル・リフト(前進中の
  揚力増加)や地面効果、振り子作用を再現している。くせを呑み
  込んでおくこと。
 ・Vne(超過禁止速度)は絶対厳守。後退側ローターブレードが失速
  する。FlightGearのUH-1やS51では、機首上げと振動発生に続いて
  回復不能のロールに入る。
 ・最終進入角は約10度。低空でフレアして減速。いったん高度3ftで
  ホバリング。静止してから着地する(…のは、まだ無理!)。
 ・R44はCAS使用中、対気速度がゼロに近づくと、ヨーの挙動が不自然
  になり、しばしば激しい自転を起こす。CASに頼らないこと。

 羽田で毎日のように飛んだり転んだり、1カ月にわたって練習を重ねた結果、不動のホバリングはとても無理ながら、以前よりアプローチ中の機体が安定し、狙った地点へある程度正確に、微速で接近できるようになりました。ビル屋上のヘリポートに降りるのは、長らくただの夢でしたが、今は焦らず時間を掛ければ可能です。先日は羽田のJAL格納庫内に進入し、内部で向きを変えて、ちゃんと出てくることに成功しました(投稿画像をご参照ください)。
 この調子なら、もしやと思ってユーロコプターbo105を起動したところ、おおっ…初めて横転せず離陸に成功。都庁や横浜ランドマークタワーの屋上に、何とか降りることが出来ました。従来はまったく制御出来なかったR22(R44の前身、2人乗り)でも、暴れながらではありますが離着陸を体験。少しずつ、スキルが上がっているようです。

 現在は、これまで飛ばしたことがなかったユーロコプターEC135が、外観・内装と性能、操縦性のいずれも高レベルにあることを知って、今後のヘリ常用機にしようと練習や改造の最中です。このあたりは、また回を改めまして。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2014-3-20 12:31 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。苦手なヘリコプターへの挑戦、第2回をお届けします。今回はホバリングやアプローチ訓練の目標物が欲しくなり、羽田空港にヘリポートを設けました。また、ユーロコプターEC135の操縦しやすさや高性能に感心し、ただいまGIT版のEC135p2に手を加え、より飛ばしやすく楽しい常用機に仕上げようと奮闘中。合間に高層ビルを訪れて「軟着陸成功、所により事故」みたいな日々です。

●●「テニスコート6面分」のホバリング:
 まず、ヘリポートのお話です。ヘリの操縦は、一にも二にもホバリングが基本。何か目印が必要で、最初はエプロンのコンクリート路面にある、油のシミ(?)を利用していたのですが、やはり「丸にH印」のヘリポートが欲しくなってきます。taxidraw で配置する技術はありませんので、3Dの土台を作って「丸にH印」のテクスチャーを貼り、地表に置くことにしました。テクスチャーは、data/Textures/Runway の中に、アスファルトとコンクリ路面の2種類が入っています。

 ヘリが降りる、滑走路に当たる場所は「着陸帯」、中心の「丸にH印」を「着陸点」と呼ぶようですね。サイズを調べると使用機の大小によって、次のような数字が見つかりました。
   ←小型 OH-6など UH-1など UH-60など CH-47など 大型→
着陸帯(一辺) 30m    36m     45m    100m
着陸点(直径)  5m     6m     15m     20m
 試みにGoogleEarthで、都内高層ビルにある着陸点マークの直径を計りますと、六本木ヒルズは9m、アークヒルズは13m、都庁は8mとバラバラですが、だいたい中型ヘリを想定していることが分かりました。私も小型〜中型を使うので、自作の着陸点マークは直径10mとしました。これをエプロンなどに置けば一応、ヘリポートとして用が足りますが、最初のうちは円内に精密着陸したり、円からはみ出さずにホバリングするのは、まず無理でしょう。そこで円の外側に、ずっと甘い目標として、一辺50mの四角い着陸帯を描くことにしました。とりあえず、この四角から飛び出さないようにホバリング練習を行うわけです。

 一辺50mという練習空間はメチャクチャ広く思えますが、案外そうでもないのです。前回お話しした「ヘリコプターは面白い」(宮田晋也、大河出版)によりますと、一度もヘリを操縦したことのないエアライン・パイロットの友人(飛行経験は2000時間)に、筆者がホバリングの難しさを語ったところ、「そんなの簡単だろう」と一笑に付されました。そこでR22練習機を使って、ヘリの教官資格を持つ筆者の同乗のもと、友人のエアライン氏がホバリングに初挑戦。テニスコート約6面分の広さから、はみ出さずに1分間以上飛べるかどうか賭をした結果、エアライン氏はわずか15秒ではみ出して、特大ステーキをおごる羽目になったそうです。これは面白い。私もFlightGearでは、まず「テニスコート6面分の広さ」でホバリングができることを、最初の目標にするとしましょう。

 ところで6面分って、タテヨコ何メートル? テニスクラブのコート総面積を数カ所、グーグルで調べて6面分に換算し、平方根を求めたら一辺60m強と出ました。あまりに大きいので、もうちょい削って一辺50mに決定。AC3Dでこのサイズの土台を作ってコンクリ舗装のテクスチャーを貼り、さらに「丸にH」マークを貼った一辺10mの正方形オブジェクトを、中央に埋め込んで着陸帯の完成です。現実の羽田空港のヘリポートは、モノレールの「整備場駅」に近い、新聞各社の格納庫などが並ぶ一角にありますが、FlightGearのシーナリーでは空港の北西端にある、だだっぴろい三角形の空き地の端っこに当たります。実景通りの場所では、端に寄り過ぎて落ち着かないので、少しずらした位置に、地表から2センチ飛び出す高さで設置しました。本来はこの地点を、滑走路またはスポットとして認識させたいのですが、当面は起動オプションに緯度経度を入れ、自動的に機体が出現するよう設定してあります。
 発着やホバリングには、風向風速を知る必要があります。最寄りの吹き流しはC滑走路端にあって遠いので、着陸帯の脇に北イタリア・アオスタ空港LIMWから借りたハンガーを建て、てっぺんに吹き流しを新設しました。これはなかなか重宝しています。

●●名機ユーロコプターEC135p2に出逢う:
 さまざまな機体で、羽田から都心へ往復するショートフライトを試したところ、ユーロコプターEC135の操縦しやすさと高性能にすっかり感心し、ヘリの常用機にしようと思いました。EC135は双発タービン機で、救急ヘリなどに多用されたbo105の発展型。FlightGearの機体は、Tatさんが作られた安定性抜群の Kawasaki OH-1 Ninja の操縦システムを受け継いでおり、飛ばしやすさも納得です。
 現在、当サイト経由でダウンロードできるのは ec135_0.6.zip(小文字ご注意)で、操縦性はNinjaよりずっと敏感ですが、不用意な動きがなくコントローラブルと言えます。そこでいきなり、少々難易度の高い六本木ヒルズの屋上ヘリポートを狙ったところ、アプローチ終末の減速時に暴れ出したものの、何とか押さえ込んで初回から着陸に成功しました。Vne(超過禁止速度)は155Ktと余裕があり、うっかり超えても激しいロールには入らず、振動を感じた時点ですぐ減速すればOK。ペイロードが大きいため、必要なら燃料タンク増設も出来そうです。パネル以外、あまり細部は作り込まれていないものの、3Dモデルは優れた出来映えでエンジン始動も超簡単。「これはいい機体だ!」という印象を受けました。

 何度も練習飛行をするうちに、「航法計器がほとんど作動しない」「ドアが開くと楽しいのに」などと欲が出て、もっと進んだGIT版がないか探したところ、EC135p2という力作が見つかりました。今年1月28日リリースの最新版は、前席の左右ドアや後席スライドドア、テールゲートがすべて開閉可能で、計器の一部はグラス・コクピット化されて実働し、エンジン始動も凝った手順になりました。
 外装は医療機関用から警察ヘリまで18種もあります。単なる塗装変更ではなく、スキッドは高さが3種類用意され、サーチライトやスピーカ−、ウィンチなど装備もさまざまで、ひたすら感心します。内装はドクターヘリ仕様で、後席を一部外してストレッチャーを備え、そこら中に医療用の資機材を積んでおり、壁には全身麻酔に使われる、笑気ガスのコネクタまであります。どうやらこれは、ADAC(ドイツ自動車連盟)が運用する黄色いドクターヘリの1機を丹念に機内撮影し、エンジン始動時のコクピット・サウンドも録音して、かなりの手間を掛けてモデル化した作品のようです。(余談ながら…ADACは「JAFにあたる組織」と言われますが、活動内容は比較にならないほど充実し、日本には存在しない車種別事故統計を独自調査で作ったり、機内で手当を開始するドクターヘリを世界に先駆けて全国展開しました)

 惚れ惚れする出来のGIT版ですが、欠点としては…まずオンライン・マニュアルに誤りがあるようで、エンジンが始動できません。あれこれ試して一度だけ掛かったのですが、手順をメモしそびれて残念でした。もう少し古い、例えば昨年12月15日付のバージョンは、同じ高水準の内装・外装を持ちながら、幸いエンジンの始動法は単純なままで、「シフト+}」キーだけでオートスタートします。ただし操縦性は公式リリースのVer0.6より相当過敏で、ホバリングを試みると振り子運動が強く出て、私には非常に飛ばしにくくなっており、残念でした。

●●EC135p2を改造、ホバリングは佳境へ:
 ならば、飛ばしやすく改造は出来ないだろうか、と思いまして。現行のVer0.6の操縦システムを、エンジン始動可能なGIT版にそっくり移植する荒療治を試みたところ、まんまと成功。最初は機体の地上高が、不整地向けのハイ・スキッドに合っていて、ローやミッドポジションのスキッドを付けた機体は、宙に浮いてしまいましたが、これもスキッドに関する記述を追加コピペすることで解決し、私は夢のように贅沢な仕様の機体で、練習が出来ることになりました。
 こうなると操縦性を、さらにもうちょい初心者向きにできないか、と欲が出ます。幸いEC135p2の操縦システムは、一番飛ばしやすいロビンソンR44と同様、基本的にはTatさんのプログラムですので、R44を参考にパラメータをあちこち微調整し、数日がかりで多少甘口に作り替えることが出来ました。

 ヘリの飛行は、短時間に集中して練習や研究ができるのが魅力ですね。最近ほぼ毎日のように、ほんの5分間でも、羽田の自作ヘリポートでホバリング練習をすることにしています。時間のある日は、都心の高層ビルを訪れて着陸し、パッセンジャーの体重分だけ機体重量を増減させたりして遊んでいますが、まだ時々事故を起こします。ビル屋上のヘリポートは、ヨーロッパ・アルプスに時々見られる、文字通り槍状に尖った頂のようなもので、ピンポイントで狙うのが難しいうえ、アプローチの最終段階で急に減速すると、トランスレーショナル・リフト(前進揚力)が失われ、機体がビルの脇にどんどん降下します。狭い屋上を外すと、急に地面効果も無くなる理屈で、これも高度喪失の一因かもしれませんが…屋上で地面効果を再現しているかどうかは未確認です。

 高層ビルへの着陸対策としまして、ヘリポートのすぐそばに、精密アプローチ専用の訓練施設があると便利だと思い、羽田のターミナルビル屋上に3カ所、「丸にH」マークだけの超小型ヘリパッド(着陸帯)を設けました。一つは広い屋上に埋め込みましたが、残り二つは狭い塔屋の上に置いたので、アプローチにはかなり技術が必要です。
 ヘリは真下が見えないため、基本的には垂直降下によるアプローチはせず、ご存じのように飛行機よりやや急な角度で、グライドパスを滑り降りるように接近します。小さい着陸地点は、慣れないうちは通り過ぎて機体の陰になり、見失いがちです。これは減速が遅れるか、降下角度が深すぎるためですので、正しい進入角(8〜10度)を守れば解決します。
 と言っても、最初は10度を目測することが出来ず、機体を側面から見て、パイロットの目の位置に「斜めものさし」(分度器機能付きデスクトップツール)を当てながら、どう目標を取ったらいいか研究しました。降下角そのものは読み取れなくても、着陸点を常に同じ相対位置に見て接近すればいいわけで、EC135p2の場合は、グレアシールドのすぐ上にヘリパッドを固定する感じで、じわじわ減速・降下することになります。最終的には前進速度と降下率をゼロ、つまり一度ホバリングに入れてから、そっと降ろすわけですが、うまく行かない場合は代替手段として接地寸前に、ヘリの水平面の動きをほぼ止めておいて、一瞬だけ強くコレクティブ・ピッチを掛けて「逆噴射」すると、軟着陸に持ち込むことが出来ます。

 ここ2週間近く、操縦システムを微調整してはみっちりテストを重ね、少しずつですが以前よりもヘリコプターが言うことを聞くようになって来ました。どこまでが微調整の効果で、どこからが練習の成果か分からないのですが…先日、EC135p2の操縦に疲れて、口直しにもっと易しいR44を飛ばしたところ、嘘のように機体が安定しているのに気がつきました。直径10mの小さな円内にとどまったまま、初めて1分を超えるホバリングに成功。何とか「コート6面分」のレベルは卒業したようで、非常にうれしかったです。
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なし ヘリで曲技とオートローテーションを試す

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2014-4-7 14:03 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。FlightGearの羽田空港にも、強い南風が吹いて春本番となりました。ヘリの「手探り訓練日記」(?)第3回をお届けします。
 ホバリング訓練とビルの屋上訪問ばかりでは面白くありませんので、今回はオートローテーションに取り組みました。私としてはフライトシミュレーターを始めて以来初の試みで、対気速度とローター回転数を絶えず調整しながら滑空し、一発勝負で「逆噴射」を掛けて軟着陸するのは、とてもエキサイティングです。また宙返りや横転などを試みましたが、ヘリの360度ロールも今回が初でした。新たにデザインしたEC135p2の塗装とともに、スナップを投稿画像にアップさせていただきます。

●●オートローテーションの操縦法:
 ご存じのようにオートローテーションは、主にエンジン故障の際に使う、実機では必須の滑空技術です。降下に伴って前下方から吹き上げる、相対風のエネルギーでローターを空転させて揚力を保ち、狙った地点に不時着するわけですが、ヘリコプターの入門書を参考に、FlightGearでも可能かどうか試してみました。実機の手順は機種によって違うそうですが、おおむね次の通りです。
(1)高度は500ft以上必要。原則風上に向かい、巡航速度で水平直線飛行する。
   (巡航速度はR44が100Kt、EC135p2が137Kt)
(2)実機の訓練では、エンジンを掛けたまま、コレクティブ・ピッチを一杯に下げる。
   FlightGearでは実際に{キー(シフト+カギカッコ開く)でエンジンを止めてよい。
   コレクティブ・ピッチを下げると、トルク減の反動で機首が左を向くので、アンチ
   トルクペダル(ラダー軸)を操作し修正する。
(3)サイクリック・ピッチを調節し、60〜80Kt程度(機種による)を維持する。速すぎ
   ても遅すぎても、滑空距離が短くなる。
(4)コレクティブ・ピッチを調節し、ローター回転数を100%に保つ。速すぎればピッチ
   を少し増やして抵抗を与え、遅すぎれば減らす。こうして、対気速度とローター回
   転数を保ちながら滑空を続け、着陸予定地点へ向かう。
(5)地上100ftからフレアを掛け、速度と降下率を減少させる。
(6)接地寸前にコレクティブ・ピッチを使い、ローターに蓄えられた回転エネルギーを
   利用して一時的に揚力を増やし、降下速度をほぼゼロにして着地する。
…という感じです。状況によってはフレアをせず、前進速度を保ったまま強行着陸し、スキッドで滑りながら止まるという方法もあるそうです。
 これまでにロビンソンR44と、ユーロコプターのEC135p2およびbo105で着陸に成功しました。ただしR44はエンジンを停止すると、ほぼ直ちにローターも止まって、手の打ちようがないまま落っこちますので、あらかじめコレクティブ・ピッチを最小にしてから、エンジンを止める必要があります({キーでエンジンを止めると、ちゃんとクラッチも切れているので、ローターが止まるのは少々不思議です)。この一点を除けば、FlightGearの機体はヘリ操縦の入門書に紹介された通りに反応し、オートローテーションを再現することが出来ます。

 オートローテーション中の滑空比は未確認ですが、「開始時の高度と、せいぜい同じ距離しか飛べない」というのが実感です。羽田で練習する場合は、いったん風下に飛んでUターン。高度2500fを巡航速度で空港に接近して、敷地の端が前下方45度あたりに見える位置から開始すると、空港の中央より少し手前に降りられます。ただし向かい風が強いと、かなりアンダーシュートします。現時点では、私設ヘリポートの着陸帯(50m四方)を無理に狙わず、空港北西部に広がる平坦な区画内へ安全に降ろせればよし、ダメな場合も滑走路は一応避けよう、という方針です。

 滑空中は降下率が大きく、R44で2000ft/min近く出てしまいます(実機はR22で1000ft/min強)。速度と回転数の制御が忙しいので、スクリーンショットを取ったりすると地表が迫り、慌ててフレアに入る場合もあります。フレア段階まで来たら、着陸地点の精度にはこだわらず、減速と降下率減少に専念しましょう。接地時はコレクティブ・ピッチを使って尻上がりに揚力を増やし、確実に軟着陸させます。コレクティブの操作が早すぎると着地前に、ローターの回転エネルギーを使い切ってしまいますのでご用心。また誤って、風上からオートローテーションに入った場合も要注意です。追い風で降りたり旋回が遅れると、スキッドが地表でつまずいて、最後の瞬間に横転することも…。

     ●

 オートローテーションの操縦法は、FlightGear-Wikiの「Howto:Fly a helicopter」という項目にも、具体的な数値入りで解説があります。アドレスは以下の通りです。
 http://wiki.flightgear.org/Howto:Fly_a_helicopter

 ところでFlightGearでは、実際に危機回避のために、オートローテーションを利用する機会はあるのでしょうか。現在のところ、答えはたぶんNo!です。幸いFlightGearのエンジンはご存じの通り、基本的には飛行中に停止しません。例外は燃料切れと、レシプロエンジンのミクスチャーを、高空でリーンにしたまま戻し忘れて低空に降りた時だけです。R44はレシプロ単発ですが、ミクスチャー自体が機能していないので、エンストは無いと思います。どっちみち本当に止まったが最後、先にご紹介しましたように、慌ててコレクティブを倒しても間に合わず、必ず墜落しますので同じことですが…(^^;)。
 またオートローテーションは、セットリング・ウィズ・パワー(注)からの脱出手段としても知られますが、上記WikiによりますとFlightGearのヘリには現在、セットリングを発生する機能はないそうです。少々詰まらないやらホッとするやら、というところですね。
 【注】セットリング・ウィズ・パワー:主ローターまたはテールローターの回転面に、翼端を回り込む形でドーナツ状の循環流が発生し、推力が急に失われる現象。別名ボルテックス・リング・ステート。

●●なぜローターが風圧で回るのか:
 数回の練習で、一応オートローテーションが出来るようになりましたが、「なぜローターは降下中、下からの相対風で回るのか」という疑問に取り憑かれました。通常のエンジン駆動中ですと、ローターは上から空気を吸い込んで下へ吹き出します。オートローテーションでは逆に、下からの風が上に抜けます。もし逆ピッチに切り替えるのでしたら、風車と同じ仕組みですから話は簡単です。が、なぜ正ピッチのままで、ちゃんと順方向に回り続けるのでしょう。

 子供のころ持っていた、竹とんぼと同じ原理のヘリ模型には、ローターの回転力=遠心力が落ちると、輪ゴムの力で3本のブレードを中央に引きつけ、ハブに切ったネジ状の溝で、ピッチ角をマイナスに切り替える装置が付いていました。単純で巧妙な可変ピッチ機構です。これで降下中、自動的にオートローテーションに入って、滞空時間を引き延ばすわけですね。なので、実機がエンジン停止時にオートローテーションを行うと知ったとき、「模型同様、逆ピッチにするんだな」と勝手に納得し、ごく最近までそう信じていました。米国本家フォーラムにも、「オートローテーションには、ネガティブ・ピッチが使われますか?」という問いがあるので、私以外にも似た発想の人がいるようです(^^;)。私の英語力では、書き込みは幾らも読めませんでしたが、「正のピッチで、ちゃんと回る」という結論のようでした。しかし一体…どうやって?

 ヘリ操縦の入門書や、加藤寛一郎さん(東大教授の前は、川崎重工とボーイングでヘリを研究)の本をひっくり返しても、必ず「コレクティブ・ピッチを最小にする」という表現になっており、ピッチ角がマイナスになるという記述は皆無でした。オートローテーションに成功したFlightGearの機体ファイルを調べても、コレクティブ・ピッチは次のような値で、最小ピッチが負になる例は見当たりませんでした。
 EC135p2 bo105:最大15.8度、最小0.2度
 EC130    :最大16度、最小0.5度
 R44     :最大13度、最小0.3度

 さらに調べた末、ようやくヘリコプターのポータルサイト(英文)で、ローターブレードに働く揚力・抗力の分布説明図を見つけました。同様の図が画像検索で複数見つかりますので、これが正解のようです。(あとで分かったのですが、実は手元にある操縦入門書にも、よく見ると簡単ながら同じ図がありました)
 解説を読んだ結果、ローターのピッチ角がゼロに近い場合、下から気流が当たったローター回転面の一部には、揚力ベクトルおよび抗力ベクトルの合力によって、ブレードが加速される領域が出来ることが分かりました。オートジャイロのローターも同じ原理なのですが、私はあれも逆ピッチだろうと思っていたものですから、なかなか新鮮な驚きでした。説明図と解説のアドレスは次の通りです。
   http://www.copters.com/aero/autorotation.html
 簡単に言いますと、空気を上から吸い込むエンジン駆動中は、揚力と抗力の合力ベクトルが、ローターの回転軸に対して後ろに傾いており、常に抵抗を生んでいます。しかしオートローテーション中は、逆に下から上に気流が抜けて迎え角(ピッチではなく、相対風とブレードのコードラインの角度)の分布が異なるため、ローター回転面の一部分に、揚力と抗力の合力ベクトルが前に傾いて、ブレードを前方に引っ張る領域が、かなり幅広く現れるのだそうです。

 この場合、ブレードの先端付近は空気抵抗が比較的強いので「被駆動領域」と呼ばれ、中央部付近は逆にブレードを加速する力の方が強いため「駆動領域」、ブレードの根本は気流が剥離して抵抗のみ発生するため「失速領域」と呼ばれます。この「駆動領域」が、ローターを回す原動力です。
 前方から風を受けて前方へ加速するなんて変だ、とお考えの向きもありましょうが、帆船がタックする(浅く帆を開いて、斜め前からの風を使って走る=日本語では「間切る」。ジグザグに風上へ帆走できる)のと同じだ、という説明も米国の一部サイトにありました。また機体が前進している場合の影響ですが、基本的な変化はないものの、駆動領域と失速領域の位置が、後退ブレード側に寄るそうです。
 
 余談ですが、オートローテーションは意外にも、機体が軽すぎると危険だとか。直感的には逆みたいな気がしますが、降下率のブレーキに使うローターの回転力は、元を辿ればヘリコプターの位置エネルギーですから、開始時に高度が低すぎる場合だけでなく、機体が軽すぎても問題があり、機種ごとに安全な最小重量が決められているのだそうです。ヘリコプターには常識を覆す、ミステリアスな要素が多いですね。

●●簡単な曲技にトライ:
 現代のヘリは、ローターにリジット・ヒンジを採用する例が増え、機種によってはかなりの曲技が可能になっています。R44でオートローテーションの方法を探る過程で、あまり深く考えずに降下してループを試みたところ、あっさりうまく行きました。しかし2回目以降はパワー不足で、常に機首を横に振ってしまい、なかなか再現できなくて不思議でした。どうやらパワーを稼ごうとして、コレクティブ・ピッチを最大にしたのが逆効果だったようです。ブレードが立つと空気抵抗が大きいのでしょう、最小ピッチで降下姿勢に入れて加速し、そのままVneの少し下で一気に引き起こすと成功します。

 EC135p2では、360度ロールも可能です。ロールでは高度や速度をあまり喪失しませんので、初速は多少遅くても成功します。ローター回転の影響か、左ロールは比較的容易ですが、右ロールは角速度が遅くて少々ハラハラしました。操縦法は固定翼機のエルロンロールと同じで、軽く機首を持ち上げておいて、サイクリック操作でクルリと回り、背面でサイクリックを少し前に突いて、機首下がりを防止すればOK。背面付近でロールスピードが遅く感じ、固定翼の癖で無意識のうちに、ラダー軸をロールと同じ方向に利かせましたが、こうすると一気にクルンと回るところも、固定翼機と同じです。固定翼の場合、この反応は上反角の影響でしょうが、ヘリではどういう力学が働いているのか、見当が付きません。
 ループとロールが出来る以上、スプリットSもラクラク。ついでに大昔、航空ショーで見たハンマーヘッドを思い出して、それらしい運動をしようとしましたが、パワーとテールローターの推力不足か、そもそも理にかなう操舵をしていないのか、まったく無理でした。例えばメインローターのピッチを大きく動かし、操作の反動方向にヨーを掛けるのでしょうか。
 ヘリの操縦は、コレクティブとサイクリック、ラダー軸操作の微妙な相互作用にすべてが掛かっており、力づくではダメですね。最近、ホバリング旋回の練習を始めましたが、風見効果で機首が思った方角に回らないときなど、隠し味として、わずかにコレクティブを増減してローターの反動を誘い、ヨー運動のきっかけにするとか、ちょっとコツが分かりかけてきました。もっとうまくなったら、ラジコンヘリのスタント解説書でも漁ってみようかな。(ヘリの世界は、文献が極めて少ないのが悩みです)

●●EC135p2をオリジナル配色に:
 EC135p2のフォルダに自分用liveryを追加して、塗装などをいじっています。結果はアップさせて頂いた画像の通りで、昨年末ゴールインした私の水上機世界一周「海鳥の旅」に使った、ピラタスPC-9M改に少しだけイメージが重なるデザインです。ユーロコプターの機体は現在、ドイツで作られているようですので敬意を表し、ドイツ風に「D」で始まる機体記号を描いておきました。
 xmlファイル内の様々なタグにある、trueやfalse、1と0をあれこれ差し替え、多種多様な装備を取り替えて遊んでいます。ほとんどの外部装備はダミーですが、スキッドは高さの異なるものを選ぶと、実際に衝撃吸収力が変化することを知って感心しました。現在は、3種類ある中で一番タフなハイスキッドを付けており、かなり乱暴な着地にも耐えるようになりました。まだまだヘリをいじり回す日々が続きそうです。
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なし Re: ヘリで曲技とオートローテーションを試す

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
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sambar  長老 居住地: 岡山  投稿数: 484
引用:

hideさんは書きました:
 ところでFlightGearでは、実際に危機回避のために、オートローテーションを利用する機会はあるのでしょうか。現在のところ、答えはたぶんNo!です。幸いFlightGearのエンジンはご存じの通り、基本的には飛行中に停止しません。例外は燃料切れと、レシプロエンジンのミクスチャーを、高空でリーンにしたまま戻し忘れて低空に降りた時だけです。R44はレシプロ単発ですが、ミクスチャー自体が機能していないので、エンストは無いと思います。どっちみち本当に止まったが最後、先にご紹介しましたように、慌ててコレクティブを倒しても間に合わず、必ず墜落しますので同じことですが…(^^;)。

少々補足致しますと、一部の航空機を除いてメニューの[Equipment]→[System Failures]でエンジンを含め、様々な故障をさせる事ができます。(チェックを外すと「故障中」、チェックを入れた上でMTBF=平均故障間隔を設定する事もできます。)
また、R44でも姿勢表示器以外の計器は[Instrument Failures]でちゃんと故障させることが出来ます。
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なし Re: ヘリで曲技とオートローテーションを試す

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです…うううううむっ、これはすごい機能ですね。
 以前からバキュームやスタティック・プレッシャーなど、主に計器関係のトラブルを起こす機能はあったと思いますが、ついにエンジンを含む広範囲に及んだのですね。平均故障間隔を設定できる、というのが何ともお洒落ですね。
 さっそくユーロコプターEC135p2で、エンジンを故障させてみたのですが、最初の数回は見事に墜落しました。開始時の気速が十分でも、即座にコレクティブを最小にしても、なぜか機首が下がって垂直の急降下に入り、引き起こし不能になってしまうのです。計器を十分確認していませんが、挙動から見てローターがほぼ止まっていたと思います。従って「System Failures を使ってエンジンを止めた場合は、残念ながらオートローテーションには入りません」というご返事を書くつもりでした。

 しかし…ダメ元で5000ft近く上昇し、Vneの少し下まで加速して、もう一度やってみたところ、どんどん機首が下がった時点で、まったく新しい操縦法が頭にひらめきました。サイクリック・ピッチレバー(つまりジョイスティック)を思い切り前に突いて、強いマイナスGを掛けてレッドアウトを食いながら、背面飛行に入れたのです。数秒間、意識的に背面を維持したと思います。そして、このままではどうしようもないと思い、必死でロールを掛けて水平飛行に戻しました。いわば背面スプリットSです。
 結果的にこれで十分なローター速度を得て、非常に快調なオートローテーションに移行しました。羽田空港に戻るには高度が足りず、西側の市街に強行着陸かと思いましたが、対気速度とローター回転数にゆとりを感じて粘りに粘り、高度50ftくらいで空港の境界越えに成功。Bラン南西端付近か、あるいは誘導路に降りるものと思ったのですが、コレクティブを軽く利かせると、相当強い揚力が出まして、空港北西部の広大な三角空き地の一角に滑り込み、まんまと軟着陸に成功しました。

 ヤケクソの操舵でしたが、結果的には、いわばローターを裏返しにすることによって、事実上の逆ピッチに入れたと言いますか、普通のオートローテーションより有利な条件(風の通る向きと迎え角)で強引にローターを増速し、失速を止めたことになるのでしょうか。誠に不思議な、おもしろい体験でした。ただしマイナスGが強かったし、ローターが派手に過回転を起こしていたと思いますので、万一実機でやったら、ローターマストやブレードが破断してしまうかも知れません。
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なし 距離計付き偏流計

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2014-5-4 6:45
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。いい連休をお過ごしでしょうか。
 ヘリコプター挑戦シリーズの第4回は、ようやくナビゲーションのお話に入ります。今回は、機体の偏流角(風による横滑り)を簡単に検出・補正する光学装置「ドリフト・ディレクター」を考案し、ユーロコプターEC135p2に搭載しました。実世界では偏流計に相当しますが、なぜそんなものが必要か…というお話から始めましょう。

●●課題がどっさり、ヘリの航法:
 2カ月ほど前、私はホバリング練習の合間に、GIT版のEC135p2(wiki.flightgearでDLし改造)で、初めて簡単な航法のテストを行いました。羽田→木更津→厚木→羽田の三角形周回コースです。
 ヘリは元来、長距離フライト向きの航空機ではありませんが、FlightGearの機体もクロスカントリ−(野外飛行=他空港への移動)はあまり想定していないようで、VORなどの航法計器は、仮にパネルにあっても 大半が作動しません。GPSは多くの機体で機能しますが、EC135p2の場合はメニューの「Autopilot」が無効にしてあるため、Route manager によるコースの一括入力が出来ず、GPS Settings から1区間ごとに目的地を指定するしかありません。
 FlightGearはVer.3.0から、HUDにあったGPS針路を示す矢印が消えて不便ですが、GPS Settings 画面の下部に設けられた「NAVI1 Slave」にチェックを入れれば、HSIが針路を指してくれます。ただしコースからの逸脱度と残距離は表示されませんので、HUDで確認する必要があります。
 このフライトでは、晴れた東京湾を横断して快適な旅を楽しみましたが、わずか47.6nmを周回するのに小一時間も掛かりました。GPSに次の区間を入力するため、中継地の空港にいちいち着陸する必要があったからです。ヘリのクロスカントリ−には結構、課題が多いことが分かりました。以下にまとめます。

(1)燃費が非常に悪い。満タン1120Lbsのうち517Lbsも消費しており、航続力は100nmしかない。
  (消費率は、ピラタスPC-9Mの倍以上。固定翌機は主翼の揚抗比が約10対1ですから、自重の
   1割の推力で高度が維持できますが、ヘリは自重と同じ推力が必要で、必然的にドカ食い)
(2)安定が悪くてスティックから手が離せないため、飛行中にウェイポイントを入力したり、
   時刻や燃料消費などの記録をタイプするのが、非常に難しい。(→今回も中継地に着陸)
(3)ローターのトルクなどの影響で、機体は大なり小なり、横滑りしながら飛んでいる場面が
   多い。つまり、コンパスが指す通りの向きには進まない。
(4)低速のため、偏流角(横風に流される角度)が大きい。従って、風上側へ大きな修正角を
   取って飛ばなくてはならないが、オートパイロットが使えないと速度が安定しないため、
   実際の飛行経路は不安定になる。また飛行中に風向・風速が変化しても、針路の修正計算
   をやり直すゆとりはない。つまり、航法計画通りの針路を正確にたどるのは難しい。
…といった具合です。
 今回は、上記の(3)と(4)の解決を目指すお話です。

●●「消失点」に向かって飛べ:
 ここでGPSやVORと連動したオートパイロットに依存せずに、横風に対する修正角を自分で求める方法を、ちょっと復習しておきましょう。
(1)計画通りの針路を維持して、コースの第1区間を飛び、最初のチェックポイントで自機の
   位置を確認する。チャートに記入して風に流された角度(偏流角)を求め、次の区間から
   風上側に針路を修正する。
  (詳しく言えば…まず第1区間と同じ飛行時間、2倍の修正角で飛んで元のコースに戻る。
   以後は修正角を1倍に戻して続航し、正しいコースを維持する)
(2)偏流計と呼ばれる道具で、機体の真下に見える地面が、どの方向にどれだけ流されている
   か観察して、同じ角度だけ風上側に針路を修正する。(対地速度を実測する機能もある)
(3)自機の針路・速度、風向・風速を、航法計算盤などに入力して、修正角を計算する。

…(1)は当然 FlightGearでも可能。(3)は私も固定翼機でさんざん実行してきましたが、いずれもヘリの場合、飛行中には困難ですね。(2)の偏流計は、かつて同じ原理のものを作ってみましたが、当時は高速で飛んでいて風の影響が少なく、かつ高空を巡航していたので、地面がどっちに流れているのかよく分からず、あまり実用になりませんでした。ヘリのように低空を100Kt前後で飛ぶなら、けっこう正確な測定が可能なはずですが、不安定な機体を操縦しながら視野を真下に向けて、カーソル越しに地面の動きを精密に計るのは、ちょっと無理。気の散る計算も避けたいです。うまい手はないものでしょうか…。

 そこで思いついたのは、真下ではなく正面を見ながら、偏流角ではなく針路修正角を、一発で出してしまう方法です。これは戦前、ある英国の飛行家が目測で行った偏流修正テクニックに、ヒントを得ているのですが…操縦しながら前を見ると、地表はどういう風に流れているでしょうか。水平線上の一点から手前に向かって、放射状に湧き出すように見えますよね。この「地表が湧き出す点」は、一点透視図法で言う消失点に当たり、機体が実際に進んでいる方角です。
 ということは逆に、放射状のカーソルを作って、あらかじめ飛びたい方位にセットしておき、地表がここから、絶えずカーソルに沿って湧き出して見えるように操舵すれば、自動的に風の影響が修正され、狙った方位へ巡航できるはずです。精密な計測も計算も一切不要、これは素晴らしい!!

 私はさっそく、3Dオブジェクトの装置を作り始めました。六分儀代わりに開発した「フライト・コードラント」がベースです。まず、方位を示すリングの作動方式を、天測用の真方位からジャイロコンパス用の磁気方位へ変更。次に放射状の針路カーソルを作り、HSIのヘディング・バグに連動させました。従ってパネルから、OBSノブで目標方位の設定が可能です。手動操縦では、GPS使用時にも偏流修正が必要ですので、ウェイポイント方位に連動する針路カーソルも、色違いで作っておきました。
 装置を使う時は、中心に新設したカメラビューで、これらのカーソル越しに前方を眺める仕組みです。また方位目盛りリング上を浮動して、実際の機首方位を示す▼形マークも取り付けました。

 装置の名称は「ドリフト(偏流)・ディレクター」としました。EC135p2の機首に搭載して、飛行テストを行い動作を確認。この装置で得た修正針路の実測値と、風向風速から算出した理論値を比べたところ、(手動操縦なので)1度未満の誤差はあるものの、概ねよく一致することが分かりました。このあと、機首にレドームを取り付けて装置を格納しましたが、内部から見ると透明ですから、支障はありません。

●●同心円状の距離計:
 これで「消失点航法」装置は大筋で完成ですが、もう一つ欲しいものがあります。ドリフト・ディレクターの視野内に、地表の風景と重なって見える、距離目盛りを設けたいのです。
 昨年の水上機による世界一周「海鳥の旅」では、カナダ北極圏や千島列島なども飛びました。こうした航法援助無線の少ない地域では、特色ある島影や岬が見えて位置が確認できると、大変嬉しいものです。しかし本当に航法計算に生かすには、地上目標から自機の緯度経度を逆算する必要があります。複数の目標からチャート上に方位線を引き、交点の緯度経度を読む「クロスベアリング」を行うのが定石ですが…Atlas画面上で試みると残念ながら、かなりの誤差が出ることが分かっています。

 目標物の方位だけではなく、距離も測定可能なら話は別で、ランドマークの緯度経度をもとに、自機の位置やゴールへの修正針路を正確に算出できます。そこで例えば、自機を中心とした1マイル間隔の同心円が地上にあって、常に自機にシンクロして移動していたら、絶好の距離目盛りになりますよね。代わりに、縮小した同心円状のカーソルを、ドリフト・ディレクターに組み込んで、自動的に上下に動かして自機の高度変化を修正したら、やはり距離目盛りとして機能するはずです。これで行くべし、と思いました。

 FlightGearの各ビューに設けられたカメラは、デフォルトでは10儖米發諒体を無視しますが、toshiさんのお陰でこの制限が外れたのは、本フォーラム「viewカメラの直近を見る方法は?」でご報告した通りです。しかし、カメラから5世如岼豈安全」と書いたのは私の勘違いで、実際は5冖にで画像が乱れ始めることが分かりましたので、同心円状の距離リングは、半径5〜12僉丙蚤臙佑魯疋螢侫函Ε妊レクターの半径)の範囲で作ることにしました。

●●距離表示リングとの格闘:
 距離計は一応完成したものの、テストの結果は問題山積。まず、リングの上下動の計算が間違っていて、うまく同心円に見えませんでした(詳細は略しますが、収容寸法の関係で、30本のリングを別々に上下動させようとしました)。もっと深刻なのは、方位リングに設けた目盛り数字が、定位置から外れてダンスを踊り出したことです。機体の姿勢変化につれて、単独あるいは列を作って、なめらかに流れたり回転したり。フィギュアスケートみたいに華やかで、谷内六郎のメルヘン絵画のように詩的でもあり、しばらく見とれてしまったのですが…これじゃ使い物になりません!!

 この種の表示異常は、装置のファイルサイズが過大な場合に起きるようです。過去にもフライト・コードラントに、細かい目盛りを5400本ほど取り付けたところ、パーツの一部が勝手に動き回って困ったことがあります(お陰で、もっといいメカニズムを思いつきましたが)。今回のドリフト・ディレクターはずっとファイルサイズが小さく、原因不明です。リングの上下動アニメーションのfactor(縮尺に当たる定数)が小数点以下8桁もあった(4桁まではゼロだった)ため、少々計算量が多すぎたのかも知れませんが、それで果たして異常が起きるのかどうか。

 結局、超小型の同心円(地形の2万分の1程度)を組み込む代わりに、まことに変則的ですが、機外に縮尺100分の1の巨大な同心円を出現させました。factor の桁数が半減したためか、方位リングの数字は踊らなくなりました。こんな、リアリティーぶちこわしの代物を付けるのは、もちろん残念至極です。せめてドリフト・ディレクターのビュー以外からは、見えないようにしたかったのですが、私の技術ではとても無理。そこでメニューバーから選択した場合のみ、画面表示するようにしました。
 リングの表示間隔は、10nmまでは1nm単位、それ以上は最大計測距離の30nmまで5nm単位です。遠景を粗くしたのは、低空ではリングが重なり合って見えてしまい、視界をふさぐからです。高度を上げた場合に備え、10〜20nmおよび20〜30nmの範囲でも、1nm単位のリング表示が選択可能です。あれこれ不満はありますが、盛り込みたかった機能はひとまず実現しました。

●●オートパイロットについて:
 EC135p2に残る課題は、メニューバーに「Autopilot」を表示できないことです。internal properties から「true」を指定すると表示され、Route Manager も使えますので、起動時に「Advanced…」を使い
      --prop:/sim/menubar/default/menu[3]/enabled=true
とコマンドを入れてみましたが、しっかり間違っているらしく、効き目がないのが残念です。

 ところで。FlightGearのヘリは全部、オートパイロットが使えないのかと思ったら、そんなことはなくて、かなり多くの機体で少なくとも、針路保持が可能だと分かりました。ただし、固定翼機とは飛行特性が異なるためか、速度保持が有効になるのは「Speed with pitch」モードだけですし、高度保持まで可能なのはR44だけでした。私が試した10例について、自動操縦の可否や航法計器の装備状況を挙げておきます。

機名   オートパイロット     航法計器
Bell222x 針路保持のみ。       全計器なし。
EC130  非表示          VORがあるが不作動
EC135p2 非表示(強制表示しても不作動)
                  VORがあるが不作動
M-XE   速度・針路保持のみ。   航法計器なし。
OH-1   速度・針路保持のみ。   航法計器なし。
R44   速度・針路・高度保持可能。VORがあるが不作動
R22   表示可能だが不作動。   VOR使用可能、DMEなし。
S51   針路保持のみ。      航法計器なし、HUD起動せず。
UH-1   針路保持のみ。      クロスポインタ指示器があるが不作動。
WG13   速度・針路保持のみ。   全計器なし。HUD起動せず。
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なし シーナリー2.0でも、何とか飛行可能に

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2014-6-13 4:21 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。私のパソコンでも何とか一応、シーナリー2.0が機能するようになりました。

 これまではFlightGear2.12ですと、機体が進んでも新たな風景が展開されず、FlightGear3.0では起動後約50秒で必ず異常終了し、飛行自体が不可能でした。
 グラフィックボードの限界かと諦めていたのですが、Windows7とFlightGearを64ビットに切り替え、メモリーもOSに合わせて8GBまで拡張したところ、シーナリー2.0でも継続的な飛行が可能になりました。ただし画面表示が非常に重く、これで2.0が「実用になった」と胸を張るわけには行きませんが、久しぶりにパソコンの内部をいじって、なかなか面白いひとときを過ごしました。メモリーを増やす程度のことは、多くの方がとっくに経験済みと思いますが、何かのご参考になればと思い経緯をご報告します。

●●メモリーを増設する:
 現用機は以前ご紹介しました通り、4年前のマウスコンピューター製ゲームノートで、Officeを入れて税込み15万円弱でした。CPUがCore-i7 Q720 1.6GHz、グラフィックはGeeforce GT240Mです。仕事用のツール類をインストールする必要上、Windows xpの32ビット版を選んだため、メモリーは購入時に4GBしか積まず、実際に認識するのは2.99GBでした。最近は概ね職場の端末で仕事をしており、私物ノートを仕事環境に保つ必要は薄らいだので、ようやく64ビット化が検討可能になってきました。
 シーナリー2.0のトラブル原因は、グラフィックの能力不足だけなのかどうか、先日試しにvisibility(視程)を5nmまで下げてみました。普段は80nmくらいの設定ですから、これで地形の最大表示面積は256分の1となり、負荷は激減するはずです。しかしFlightGear3.0は以前とまったく同様、50秒で異常終了しました。つまりグラフィック以外にも、どっかウィークポイントがあるわけですね。
 すぐ思いつくのはメモリー不足です。異常終了時のメモリー使用率は88%で、アプリが止まるほどの不足かどうか判断が付きませんが、十分とは言えないと思います。マウスコンピューターのFAQによりますと、このパソコンのメモリー最大搭載量は8GBで、現状の2倍に過ぎませんが、メモリー容量には「収穫逓減の法則」が当てはまり、むやみに増やしても効果が比例するわけではないのだと、昔どこかで(たぶん日経パソコンか何かで)読んだ記憶があります。あまりお金も掛からないので、取りあえず拡張作業をやってみることにしました。

 まずマウスコンピューターのサイトで、必要なメモリーカードの規格を確認。スロットは2枚分しかありませんから、これまで入っていた2GB×2枚を、4GB×2枚に差し替えることになります。メモリーの増設作業は過去一度だけ経験しましたが、前回はMacIIでしたから、大昔のお話です。購入時の実装8MB(大笑)を限界いっぱいの12MBに拡張したのですが、この時はスロットに垂直に差し込まれたメモリーカードが、非常に固く食い込んでいて、抜き取るには確かラジペンが必要でした。同じ時期に使っていたNEC PC-9801も、FM音源ボードやHDDインターフェースカードを抜き差しするには、かなり腕力を使った記憶があります…。
 パソコン内部を事前偵察したところ、現在のノート用メモリーはスリムで、マザーボードに張り付くように平らに装着され、うっかり触ったら壊れそうでした。これを、どうやって着脱するのでしょう。ネットで調べても今ひとつ実感が湧かないので、量販店でバルク品のメモリーを購入する際、店員さんにコツを教えて貰い、つい「ペンチとか要りますか?」と聞いたところ、すっかり笑われてしまいました。

 帰宅後。ランニングにパンツ1枚という、静電気がほぼ絶対起きそうにないコスチュームに変身。念を入れて窓のアルミサッシなんぞにも触っておき、いよいよ作業に掛かります。
 20年以上前のMacや98と比べ、一段と集積度が増した精緻な部品の、なんと美しいことでしょう。太い銅の棒がのたうち回っているのは、こりゃ何だ…大きなチップと冷却ファンを繋いでいるので、たぶんヒートシンクですね。しばらく見とれてカメラを取りに行き、何枚か接写してから交換に着手。メモリーカードの両側に見える固定ピンをずらし、指先でカードを軽く手前に引くと、約30度ピンと跳ね起きて、抵抗なく抜き差しできる状態になりました。新しいメモリーカードを、スロット(と言うか、薄いガイドレール状の部品)にそっと差して押し倒すと、パチンと水平位置に戻りました。昔のような馬鹿力は要らず、パーツにストレスも掛かりません。「今どきのスロットは、進歩したなぁ!」と、つくづく感心しました。

 この時点では32ビットOSのままですから、起動しても認識されるメモリーサイズは同じです。Windows7の「パフォーマンスの情報とツール」でエクスペリエンス・インデックスを取得しても、交換前とまったくスコアに変化はありません。次はいよいよ64ビットのシステムに入れ替えですが、またもWindows7の新規インストールをするのか、と思うと少々おっくうです。

●●Windows7を64ビット版に:
 xpからWindows7に移る際は、メールアカウントなど、たくさんの設定を自動的に移植する「Windows転送ツール」が使えて、非常に便利でした。同じことが、Windows7の32ビット版と64ビット版の間でも可能かどうか、ちょっと心配だったのですが…調べたところWindows転送ツールは、そもそもWindows7の標準機能で、問題なく使えるんですね。知らなかったなぁ(^^;)!
 ちなみに64ビット版を新規インストール後、待避してあった旧環境の設定を新環境に書き込む作業は、アプリケーションの個別インストールの前に行います。Windows Live メールのパスワードなどを含め、各アプリの設定事項はそれぞれ転送先で保護されるらしく、アプリを後から入れても、上書きによって消える心配はありません。

 今回の64ビット化で一番心配したのは、
・10年愛用した Photoshop CS2 は、果たして今後も使えるか?
・同じく10年物の EPSON PM-950C プリンターには、64ビット版ドライバがない。どうしよう。
…という2点でした。マイクロソフトの診断ツールでは以前、どっちもWindows7だと使えないと判定されましたが、32ビット環境ではいずれも大丈夫でした。64ビットの場合も、ネットでは「CS2は動きます」「PM-950Cのプリンタドライバは、PM-920C用で代用可能」といった指摘が見つかります。ただし環境によっては、同様の代用ドライバが組み込めなかった実例も見ていますので、このへんは賭だと思いました。

 結果を言えば、私の環境ではどちらも64ビットで動きました。Photoshop CS2 は古いため、すでにアドビのサイトがアクティベーションを受け付けませんが、どうしても使えないと困るユーザー向けに、アクティベーション不要のインストーラがDL可能です(ただしお手元に、製品版のシリアルナンバーは必要)。ごく基本的な編集機能を試しましたが、一応正常に動くようです。また EPSON PM-950C も、無事に PM-920C 用ドライバで作動しました。インク残量が正常に表示されませんが、カートリッジの交換サインはちゃんと出るので、十分実用になりそうです。

●●動いた、飛んだ…しかし重いなぁ:
 それでは、待望の飛行テストに移りましょう。
羽田整備場の私設ヘリポートで、まずUFOを起動。整備場敷地の外周に、旧版シーナリーでは存在しなかった土手が現れ、地形解像度がやや向上したことが分かりました。緊張しながら1分待ち、FlightGear3.0が異常終了しないことを確認。よーし、第一関門は通過です。
 そのままUFOで大阪・伊丹まで試験飛行。シーナリーが針路前方に次々と生成され、取りあえず「どこまでも」飛行が可能です。ロビンソンR44や、ユーロコプターEC135p2(GIT改)を起動して、ホバリングや都心部のショートフライトも試しました。羽田にD滑走路があると、やっぱり気分がいいですね。
 ヘリパッドに駐機中のフレームレートは20くらい(旧シーナリーでは約30)ですが、画面表示がかなりの頻度で一瞬止まるので、体感速度はもっと遅く、ホバリングの操縦が以前より難しくなった気がします。都心上空のフレームレートは、ひとケタまで低下しました(旧シーナリーは20以上)。また64ビットで2.0使用時は、Atlas11が正常に動かない問題も発見。地図のズーム倍率を、デフォルトの「125」より拡大した場合、必ずハングアップするのです。原因も対策も見当が付きませんが、さらに飛行テストを進めます…。

 EC135p2を使って、以下の三角周回コースで短いクロスカントリー(野外飛行)を試みることにしました。この機体はVORやNDBが使えませんので、GPSと推測航法、地文航法を適宜併用することになります。
◎羽田RJOO(すべて磁気方位)
  ▼307度14nm
◎調布RJTF
  ▼203度34nm
◎厚木RJTA
  ▼78度17.3nm
◎羽田RJOO
 エンジン始動後、パネルにあるOBSボタンを長押しして、コンパスのバグ(針路マーク)を最初のレグ方位307度にセット。ヘリの操縦中、いちいちOBSで針路を再設定するのは難しいので、調布から厚木への第2レグはGPSを使うつもりで、あらかじめ厚木基地を目的地に登録しました。このテストコースは1周65nmくらいしかないので、無給油でおつりが来るはずですが、念のため厚木に降りて給油する予定です。羽田へ帰る最終レグの針路はその際、改めてコンパスかGPSに設定することにしました。

 最近の東京はすっかり梅雨模様。この日も雨天でシーリングは約2000ft、視程は約5nmでした。羽田を出発し、多摩川を見下ろしながら偏流計(私が考案したドリフト・ディレクター)のビューに切り替えて、放射状の針路カーソルに沿って地表の景色が流れるよう、機首方位を修正。この日は右へ9度ばかり修正角を取れば、まっすぐ調布飛行場を目指すようでした。
 このまま、ただカーソル越しに地表の流れを見て操縦すれば、かなり正確に目的地へ向かって推測航法が出来るわけですが、いったん修正角を数値としてつかめば、もちろん風向風速が変わらない限り、視野をコクピットビューに戻して、コンパス表示に修正角を足し引きするリアルな方法で操縦しても構いません。メニューから起動できる苦心の同心円距離計も、十分に便利なことを確認しましたが、リアリティーの点では邪魔でもありますから、測定を終え次第こまめに切ることにしています。
 やがてコース前方から少し右に離れた場所に、雨と霧をついて、うっすら黒い点を発見。黒点はまもなく赤に変わり、更に近づくと白い灯火に変身しました。方位と時間からみて、調布飛行場のPAPIに間違いありません。とすると、わがドリフト・ディレクターの示す針路はなかなか正確です。それはいいのですが、このあたりから画面表示が頻繁に、一時停止を起こし始めました。数秒間、ひどい時は1分以上フリーズし、このシーナリー環境は使い物になるのか、かなり疑問に思えてきました。ちなみにアーバン・エフェクトは使わず、カラー表示も16ビットに落としています。

 もう一つ気になったのは、風景表示の乱れです。先ほど見つけたPAPIの周囲では、テクスチャーの絵柄がメチャメチャに引きつっており、地表から不規則に尖った突起も出ている様子です。滑走路やエプロンはどこにも見えず、もしやコクピットから死角になっているのかと、360度のクリアリング・ターンを行いましたが、派手に崩れた地形しかありませんでした。今回は調布に着陸する必要は無いのですが、どうもシーナリー2.0は、結構高い頻度で問題が見つかるようですね。
 画面表示の一時停止も一層ひどくなったため、私はだんだん楽しくなくなってモチベーションを失い、ついに飛行テストを打ち切ることにしました。とは言えいったん離陸したら、みだりにFlightGearを終了せず、とにかくどこかへ機体を着陸させる主義ですので、コンパスで反方位を取って羽田へ直航。帰路はシーナリーのデータにキャッシュが効くのか、表示の一時停止はやや緩和した感じです。やがて真正面に幾つもPAPIが見えてきて、雨の羽田に無事着陸しましたが、64ビットでも結局、シーナリー2.0はとても実用にならないぞ、というのが実感で、相当がっかりしました。

 後日、東京地方が晴れたので、念のためほぼ同じコース(羽田から立川基地)を再び飛んでみたところ、フレームレートが9〜12と、ごくわずかに向上。まだ操縦しにくいものの、画面表示の一時停止はほとんど解消しました。雨天はパーティクル表示のため、かなりパソコンの負荷が高くなるのですね。
 かといって、リアルウエザーを切って年中快晴の空を飛ぶと、操縦に飽きてしまうことは目に見えています。シミュレーションとはいえ、想定外の雲に突っ込んだり、突然雨が降って視界が低下したりすると、そのたびに心のどこかが、山歩きでもしたように一瞬、キリッと洗われます。たとえ東京や大阪の上空を飛んでいても「都会の空だって、大自然の一部なんだなぁ!」などと感じて、ちょっぴりうれしくなりますね。こういう瞬間を、私は失いたくないのです。

●●FlightGearとシーナリーの将来は 求められるパソコンは:
 問題もある2.0ですが、例えば山岳地帯の地形情報量は、明らかに増えています。従来のシーナリーではナイフエッジそのものだった稜線が、ところどころに平坦な部分も含んだ、実景に近い形になっていたりします。もし山岳救助などを想定し、ヘリで任意の尾根への強行着陸や、強風下のホバリングを試みるなら、やはり2.0が使えるとうれしいですね。
 が、それにはパソコンの負荷を一段と下げなくては無理で、残る手段はFlightGearそのものを旧バージョンに戻すくらいしか思いつきません。試しに2.12を再インストール(64ビット版を選択)したのですが、期待ほどは軽くならず、フレームレートで数コマ程度の差しかありませんでした。結局のところ、FlightGearは3.0に戻し、シーナリーも古い2.10を使っています。これだとさすがに快適で、先ほどの三角形の飛行テストコースも、高度を変えて全行程を2回飛び、燃費など若干のデータを得ました。

 ところでシーナリー2.0は、順調に普及しているのでしょうか。地形に異常が見られる部分の改良が、どの程度のペースで進んでいるのか知りたくて先日、各地のデータの最新タイムスタンプを見ようと思ったのですが、以前はDLできた Torrent でも、2.0のファイルは見当たりませんでした。terrasync では2.0がDLできるそうですが、データの展開が遅いので、あれは苦手だという人が私の他にもいそうです。となると実質的にはまだ当分、古いシーナリー2.10の時代が続くのでしょうか。米国の本家サイトによると、すでにシーナリー3.0の開発計画がスタートしたそうですが、まだまだToDoのかたまりで、実際にリリースされるには何年か掛かりそうな雰囲気です。

 シーナリーやFlightGear本体の行く先が見えないと、いつまでにどの程度の能力のパソコンが必要になるのか、そのパソコンが何年使えるのかも分からず、どうも落ち着きません。
 何年か前までは、ごく軽い携帯ノートでもFlightGearが走ったものですから、泊まり勤務の晩など、さっさと仕事を終えて長距離フライトや各種の実験飛行を楽しみ、明け方近くまで「旅日記」を書くとか、フレキシブルに遊ぶこともできました。日夜仕事にこき使うマシンでしたから、だんだん処理が重くなってくると「こんなんじゃ使い物になるもんか、新しいパソコン買うぞ!」とカンパク宣言しても、比較的簡単に「関係方面の理解と支持」が得られたものです(^^;)。
 その後、FlightGearの性能向上=負荷増大に合わせてゲームノートを買いましたが、遠からずまたパソコンを更新せざるを得なくなった時、果たして次回もゲームノートでいいのか、その時はどんなレベルの機種を選ぶべきか。或いは(持ち歩けず不便ですが)デスクトップに転向し、数年おきにグラフィックボードを買い換えるなど「近代化改修」をするのがベターか、もしくはいっそ(私にはたぶん困難ですが)自作に走るとか…今後どんな選択をすべきかなのか、さっぱり分からず困っています。
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なし 2.0世界に江の島を

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 前回は、パソコンを64ビット化したものの、FlightGear3.0でシーナリー2.0を使うと、重くてたまらない…というお話をしました。今後の負荷増も気掛かりで「将来が見えない。どんなパソコンを買えばいいのか」とため息をついた次第ですが、そう感じるのは私だけではないようですね。Hydeさんの777操縦システムの開発も、最近は負荷軽減が重要なテーマのようですし、先日は virt_flyさんがご自身のブログで、私のぼやきに賛同して下さいました。恐縮です(^^;)。

 出来ることならやはり2.0が使いたくて、その後もあれこれ負荷を軽くする設定変更を試み、多少の効果がありました。思い切って visivility(視程)を縮め、Sound機能も止めちゃうとか、それなりの犠牲を払ったうえで、という条件付きですが。一度にほんの20nmばかり、低空で短時間ずつ飛ぶのでしたら…フレームレート30程度を確保して、かなり滑らかな飛行も可能です。
 しかし飛行距離や滞空時間が伸びますと、画面表示が瞬間的に遅れて引っかかる「カクカク現象」がどんどん増え、画面が1秒〜1分以上フリーズする「一時停止現象」も発生。1時間を超す飛行ではスワップが止まらず、リソースモニターを起動しようと悪戦苦闘しているうちに、FlightGearが勝手に終了した例も1件だけありました。古いモバイル用GPUの性能不足に加え、メモリーも計8GBではまだ十分ではない、ということに尽きるようですが、のちほどご参考までに、「軽くする工夫」をまとめてご報告します。

 もう一つお話を。簡略ながら3Dオブジェクトで、江の島らしきものを試作しました。最近、羽田から厚木周辺、小田原あたりまで飛行テストエリアを広げたのですが、こうなると湘南海岸の代表的ランドマークである江の島を、何としても再現したくなりました。「投稿画像」でご覧頂けましたら幸いです。

●●さまざまに遅延する、パソコン内部の時間:
 シーナリー2.0があんまり重いので、いったんは FlightGear2.10用の旧シーナリー(正しくはVer1.0?)に戻してしまいました。確かに起動も飛行も劇的に軽くなりますが、情報量の多い2.0を見慣れてしまったためか、どうも面白くありません。バーチャル世界を何年も飛び回って、旧版の風景を少々見飽きたこともありまして、NHKの朝ドラ風に言えば「パルピテーション」(ときめき)を感じないのです。そこでもう少し努力してみようと、再度シーナリー2.0に変更しました。(新旧両シーナリーとも、外付けHDDに全世界分を展開済みですので、切り替え自体は簡単です)
 FlightGear自体を、旧バージョンに戻して負荷を軽くする、という手も考えられますが、ほとんど効果がありませんでした(ご参考:もしバージョン変更後、正常に起動しなくなった場合は、設定をデフォルトに戻すボタンを試してください)。Ver2.12に戻してダメだったお話は書きましたが、今回新たにVer2.80の64ビット版を入れてみたところ、「カクカク現象」がVer3.0よりひどくなりました。ということは、最新バージョンは機能強化だけでなく、スムーズに走らせる工夫もしていたのですね…お見それしました。

 こうなると平凡ながら、あとは(パソコン自体を買い直すのでなければ)各種の画面表示設定などを見直すくらいしか、手がありません。
 前回、羽田=調布=厚木の三角コースを飛んだ際、重すぎて羽田へ引き返した主な原因は、悪天候の雨粒で負荷が掛かったからですが、調べるともう一つ、Rendering Optionsの「Atmospheric light scattering」(光を散乱させ、空をリアルに見せる機能)がオンのままで、かなり負荷を生んでいました。
 そこで手始めに、
 ・Atmospheric light scattering と、3Dクラウドをオフにする。
 ・visivility も従来の80nmから、半分近い50nmに落とす。
…という設定変更を行い、UFOで羽田から箱根まで飛んでみました。フレームレートやメモリ使用率をざっと計ったところ、確かに軽くなったようです。次にEC135p2を使い、同じ設定で羽田=調布=厚木の三角周回コースに再挑戦。ところがこれは、散々な結果に終わりました。
 画面表示が非常に重く、それでも何とか羽田まで一周して飛行時間を計ったところ、FlightGear内蔵のストップウォッチは23分37秒を示したのに、現実世界の腕時計では1時間あまり過ぎていました。確かに「カクカク現象」も「一時停止」もひどかったのですが、時間経過が3倍近く引き延ばされるとは驚きでした。改めてストップウォッチの0.1秒ケタを観察しますと、負荷が大きい状態では頻繁に数字が引っかかり、画面上で「1秒経つ」には、実時間では2秒くらい要するようです。この時は燃費を改善しようと高度を上げたため、視野が広がった分、グラフィックの負荷が急増したのではないかと思います。

 FlightGearに大きな負荷が掛かった場合の時間遅延は、けっこう複雑な現象のようです。まだ数例のテストデータしか得ていませんが、区間ごとの飛行時間を、FlightGear内蔵のストップウォッチと、パソコンのクロック表示、そして腕時計--の3通りの手段で計ったところ、数値はバラバラでした。
 つまり、FlightGear内部で起きる遅延のほかに、パソコンのクロック自体も、大負荷のもとではどんどん遅れることが分かりました。これは(不思議ではない現象かも知れませんが)完全に想定外でした。私は最近、天文航法を使うチャンスがありませんが、FlightGearとパソコンのクロック(および、それに同期して天体の位置を出す天測計算ソフト)がバラバラに遅れると、測位計算にもすぐ敏感に影響が出るはずで、このあたりは将来の研究課題です。

●●飛行中の負荷を少なくするには?:
 高度を上げると重すぎて飛べないのなら、低空飛行をしたらどうでしょう。羽田から湘南の辻堂まで、EC135p2で高度を600ft以下に保って飛んだところ、フレームレートが改善して30〜40をマークしました。「カクカク現象」も減って、秒単位の「画面一時停止」は起きませんでした。シーナリー2.0の負荷対策をまとめて書くと、次のようになります。

 ■設定の工夫:
 ・visivilityを40〜20nmに落とす。
 ・カラー深度を16bppに落とす。
 ・Advanced options/Features の多くをオフにする。特にサウンド機能を切ると効果大。
 ・Shader options は比較的負荷の少ない、以下の機能のみ使う。
   Generic オン:雨天の滑走路やエプロンに空が映る。
   Crop  オン:耕地のテクスチャーを表現。切るとただの原野になる。
   Model  オン:機体の表面反射をリアルにする。切るとEC135p2は風防に異常が出る。
   Water 4段目:海の色に水深が反映され、結構リアルな色合いに。
 ■飛び方の工夫:
 ・雨や雪の日は飛ばないか、Precipitation(降水)をオフに。
 ・地表から1000ft未満の低空飛行をする。
 ・飛行時間は、たぶん短いほどいい。
     (都内では、UFOを空中に駐めて20分ばかり放置しただけでも「カクカク現象」
      がひどくなる場合がある。しかしメモリーの使用率は、必ずしも増えない。
      起動後の経過時間と画面表示の重さの関係は、まだまだ詳細不明)
 ・出来れば山岳地帯は避ける。
     (例えば富士山以北・以西の山地が視界に入ると、ただちに重くなる。逆に
      羽田=下総=成田の平原コースでは、1時間ほど飛んでも負荷が増えない)
 ・飛行中に重くなった時は、メニューバーから Debug/Reload Scenery を使う手がある。
        (ごく一時的に軽くなる。ただしメモリー不足だと異常終了の心配も)

 これでは、もちろん以前のような長距離飛行は出来ません。世界一周や極地探検は高高度を長時間飛ぶし、VORやNDBの局名をモールス符号で確認するため、サウンド機能も必要です。FlightGearがやたらに重くなってしまうと、確かに遊び方は限られてきますね。やりたい事を、さっさとやっておいて良かったと、喜ぶべきなのでしょうか。

●●懐かしすぎる海が見えたら♪…FlightGearにも江の島を:
 ここんとこ、シーナリーの重さばかり気にしながら梅雨空を飛んでおりましたので、何かもっと楽しいことがしたくなりました。そこで、かねがね湘南地方のランドマークとして欲しかった江の島を、3Dオブジェクトで作ってみました。使用ツールは以前から愛用の AC3D 7.0.11です。

 最初は航法の目印に、適当な「借り物」を置こうと思い、 FlightGear Scenery Static Model Browser で建物などのオブジェクトを物色したのが、そもそもの始まりです。灯台が乗った手頃な岩礁を見つけて、UFOで江の島の地点に置いたのですが、小さくて上空からはよく見えませんでした。
 そこで岩礁を東西1.2キロ、南北600mの江の島サイズに拡大してみたのですが、もともとブロックみたいに角張った作品ですので、平らに引き延ばしてみると軍艦島か、はたまた迷彩塗装した要塞か、という風情。ううん、まったく江の島には似ていないなあ、とがっかりしました。これならいっそ、ただの半球形ドームを作って、アンパンのように少し押しつぶし、てっぺんに短いタバコのような灯台を建てた方が、それらしいシルエットになりそうです。

 GoogleEarth でしばらく江の島を眺めていたら、あの複雑な地形も、幾つかの単純な立体に分解することができることに気付きました。アンパン1個ではなくて大小3個を、それぞれ斜めに引き延ばして、ちょっと重なり合うように並べたらどうか。島の西半分の丘陵地帯に見えそうです。あちこちに複雑な岩場がありますが、大胆に省略。ただしアンパンの裾野をベージュ系に着色し、岩場っぽく見せることにします。島の東側は平らに整地され、大駐車場やヨットハーバーが広がっていますが、全部まとめて1枚の、複雑な形に切り抜いたコンクリート板と見なせそうです。こんなデフォルメを加えたら、私にも作れるのでは。

 実際にやってみると、非常に楽しい作業でした。精密に作り込む技術はありませんが、灯台二つをざっと成型し、南側の防波堤やヨットハウスなどは、単純な四角いハコで表現。投稿画像では見えませんが防波堤の陰には、南岸の目立つ岩礁も1カ所配置しました。丘陵部分には、FlightGearの純正テクスチャーを貼ってあります。ハーバーにはヘリで降りてみたくなるでしょうから、こっちも表面にコンクリート舗装のテクスチャーを貼っておきました(グレーの着色だけでは距離感が生まれず、着地はかなり困難です)。当然、吹き流しも必要ですので、ヨットハウスの屋上に立てておきました。

 ヨットハーバーには、やはり外洋クルーザーが欲しいですね。FlightGear/data/Models から帆を下ろしたクルーザー2種を拝借して、30隻あまり並べました。ここまで作って妻に「どこだと思う?」と、上空からの視点で見せたら、昔一度しか行ったことがないのに即、江の島と正答。私は「一応、似てるんだな」と安心して、本土から伸びる砂州と自動車橋も、ごく簡単ですが作っておきました。
 学生時代に乗っていたオートバイも再現し、こっそりどっかに駐車しておこうか…なんて一瞬思いましたが、いささか感傷的な発想で、これはヤメヤメ(^^;)。
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なし 新旧のシーナリーを併用する

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。引き続き、グラフィックの負荷が高いシーナリー2.0を、何とか活用する道を探ります。
 前回は FlightGearの設定をあれこれ変えるお話でした。簡単で一定の効果はあるのですが、もっと劇的に効く手はないか。あれこれ考えたら、ありました! 前回の方法では困難だった、こんな飛行も出来ます。
 (1)羽田のD滑走路を離陸。
 (2)どんどん上昇し、数十マイルの視界を楽しみながら、西へ。
 (3)小田原で高度を下げ、箱根新道と旧街道、ターンパイクが複雑にもつれ合う谷を抜けて、
 (4)芦ノ湖から富士山を遠望する。
…結構重そうな地形条件のフライトですが、わが4年前のノートでも、一応サクサク可能なのです。

 タネを明かしますと、「FlightGear2.10用の軽い旧シーナリーに戻し、詳細な地形が欲しい部分だけ、スポット的にシーナリー2.0のデータに差し替えたら、軽さと画質が両立するのでは」という虫のいいアイディアが浮かびまして、試してみたところ大成功でした。詳しいお話をご紹介します。

 ところで…わがユーロコプターEC135p2は大食いです。箱根まで行動圏が広がると、給油地が欲しくなりました。最寄りの空港は東が厚木、西は美保。ヘリの足では遠いので、ネットで見つけた観光用の「芦ノ湖ヘリポート」を、芦ノ湖スカイライン脇に再現しました。投稿画像でご覧頂けましたら幸いです。

●●シーナリーの構造を調べる:
 手始めに、新旧それぞれのシーナリーを展開したフォルダを見比べて、ファイルの構成を勉強することにしました。シーナリーを Install Uninstall Scenery で解凍・展開しますと、まずお馴染みの「e130n30」など緯度経度10度単位の地形フォルダが誕生。その下に「e139n35」のような、1度単位のフォルダが多数現れますね。この中身を初めてじっくり眺めまして、バイナリデータの「btg.gz」ファイルと、テキストの「stg」ファイルがペアになり、地形の最小単位を構成していることが分かりました。以下、この最小単位を「タイル」と呼ぶことにします。
 同じフォルダ内には、このほか「RJTT.btg.gz」のように、空港を付けたファイルがありますが、これは滑走路などの地形データのようですね。試しに旧シーナリーのRJTT.btg.gzを外して、同名のシーナリー2.0用に置き換えてみたところ、D滑走路付きの羽田空港が、いとも簡単に出現しました。これは面白い! こうなると、他の地形データも差し替えてみたくなります。

 緯度経度1度サイズのフォルダ内には、タイルのファイルが最大で32組あり、それぞれの「btg.gz」ファイルと「stg」ファイルに、共通した7ケタ数字の名称がついています。上4ケタは、同一フォルダ内では全て同じですが、下3ケタは飛び飛びの数列ですので、ファイルが「行」と「列」のマトリクスに並んで、地図の一部を構成していることが分かります。数字は明らかに座標ですが、残念ながらベタな緯度・経度ではないので、どこを基点にどう並んでいるのか、どれがどの地点かを特定することは出来ません。
 そこで、試しに一つのファイルを待避させて、超高空からUFOで広域を観察し、四角い空白が発生した場所を特定するという方法で、それぞれの位置と並び順を調べました。2種類のファイルを両方とも外す必要は無く、バイナリのbtg.gzだけ待避させればOKです。

 最初は、タイルを着脱するたびにFlightGearを再起動しましたが、メニューから「Reload Scenery」を選ぶと、地形だけリフレッシュ出来ることが分かって、効率が劇的に上がりました。低空なら Reload に数十秒掛かりますが、地面から25万ftくらい離れますと地形表示が粗く、ほんの数秒で済みます。
(余談ながら。ジョイスティックの電源を入れ忘れた時も再起動は不要で、「Reload input」を選択すればいいのですね。最近やっと知りました)(^^;)
 東京や箱根を含む「e139n35」フォルダに入っているbtg.gzファイルを、この方法で地形順に並べ直すと、以下のようになりました。基点(最小数字)は左下(南西端)で、幾つか欠落した場所があります。

  ■e139n35 フォルダの中身:      北
  5234552.btg.gz 5234553.btg.gz 5234554.btg.gz 5234555.btg.gz
  5234544.btg.gz 5234545.btg.gz 5234546.btg.gz 5234547.btg.gz
  5234536.btg.gz 5234537.btg.gz 5234538.btg.gz 5234539.btg.gz
西5234528.btg.gz 5234529.btg.gz 5234530.btg.gz 5234531.btg.gz東
  5234520.btg.gz 5234521.btg.gz 5234522.btg.gz 5234523.btg.gz
  5234512.btg.gz 5234513.btg.gz 5234514.btg.gz 5234515.btg.gz
  5234504.btg.gz←芦ノ湖を含む    5234506.btg.gz 5234507.btg.gz
  5234496.btg.gz             南      ↑      5234499.btg.gz
                                三浦半島

 UFOで調べると、5234504.btg.gz には芦ノ湖が含まれています。5234506.btg.gz は三浦半島南端ですね。このことから、南側のマス目が3カ所欠落しているのは海で、相模湾に当たることや、南西端の 5234496.btg.gz は伊豆半島、南東端の 5234499.btg.gz は房総半島のそれぞれ一部であることなどが分かりました。ここまで来ますと、同じフォルダ内なら苦労せず、目的のタイルが見つかります。

 西隣に当たる e138n35 フォルダも調べたところ、こっちはファイル名がすべて5218番台になっていました。フォルダを東西方向に(Excel風に言えば)1行分移動すると、ファイル名は3、4ケタ目が17ずつ変化するのですね。いっぽう南北方向の移動でも、上4ケタが変化します。e139(東経139度)列のフォルダを緯度別に多数参照しますと、ファイル名の冒頭部分はいずれも次のようになっていました。
 n80:5237
 n70:5236
 n60:5236
 n50:5235
 n40:5235
 n30:5234
 n20:欠落(海上)
 n10:5232
 s10:5231
 s20:5231
  中略
 s90:5227。
 …以上、確かに緯度に対応していますが、数字の命名法則自体はナゾのまま。従ってファイル名だけを見て、地球規模で自分が欲しい場所のタイルを見つけることは、まだ無理です。命名の法則をご存じの方は、どうか教えてください。
 しかし、ともかく手間さえ掛ければ、目的のタイルを突き止めることが可能になりました。該当するファイルを待避し、代わりに同名のシーナリー2.0用ファイルを入れれば、そこだけ2.0の精細な地形になります。等高線データの密度や内容が違うので、新旧両シーナリーの継ぎ目では、少々段差が見えてしまう場合が多いですが、同一シーナリー内のデータ間でも、たまに継ぎ目は見えるので、まあよしとしましょう。

●●シーナリー「部分差し替え」方式の功罪:
 現在のところ旧シーナリーをベースとして、芦ノ湖とその西隣、さらに富士山付近の計3タイルのみ、シーナリー2.0に入れ替えています。タイルのサイズを実測すると、南北が緯度で15分、東西が経度で7分30秒です。それぞれの実際の長さを(現地の緯度に当てはめて)航法ツール「virtual E6-B」で計算しますと南北が15nm、東西が6.1nmとなりました。この二つを掛けたタイル1枚の面積は、ざっと90平方nmです。
 ここで、視程を40nmにセットした時のシーナリー表示面積を、かなり単純に80nm×80nm=6400平方nmと仮定しますと、シーナリー2.0のデータが占めるのはタイル3枚分=270平方nmで、全体の4.2%に過ぎません。これなら、グラフィックの負荷は幾らも増えませんね。
 ちなみに e139n35フォルダの容量は、旧シーナリーが5.15MBなのに、シーナリー2.0は69.5MBもあります。近隣の他フォルダを見ても、やはり新旧で十数倍の差があります。なので、この地形タイルの「部分差し替え」方式を使えば、かなり多くのパソコン環境で、目に見えて負荷が減ると思います。

 もちろん、あまり多くの地域を(特に連続して)2.0に差し替えたら、また重くなってしまうでしょうし、事前準備にも手間取るので、世界中を旅するようなフライトには向きません。しかしヘリのように飛行距離が短かく、しかも当面の行動範囲がおおむね決まっている場合は、非常に効果的です。
 他に現時点で目につく短所は、Atlas11が使いにくいこと。例え一部でも、シーナリー2.0のファイルを使用していると、Atlas画面のズーム比をデフォルトの「125」より拡大側に変更した場合、必ずハングアップします(注:Atlas11は、拡大側ではサムネイルを使わず、展開中の地形データそのものを読みます)。トラック(航跡)表示中も、単にチャートとして広げる場合も同じで、大変残念です。

●●箱根にヘリポートを:
 今回作った「芦ノ湖ヘリポート」は、芦ノ湖スカイラインの山伏峠付近にあります。ネットで調べますと、レストハウスの駐車場に面した土地を80m×60mばかり整地し、セメント張りのヘリパッドや歩道、ドラム缶を並べた燃料デポ、ごく背の低い吹き流し(たぶんアプローチの邪魔にならないため)などが設けてあります。
 ジェネラルエビエーションの会社が、観光シーズンのみ年何回か数日ずつ、5分間1人4000円の芦ノ湖遊覧フライトに使っているそうです。なので本来は、よそ者が給油できる場所ではなさそうですが、このへんに公共ヘリポートはありませんし、架空の施設を作っても面白くないし、風光明媚な絶好のポジションにありますので、モデル化させて頂くことにしました。
(余談ながら。5分で4000円は高いようですが、私も九州で同様のフライトを楽しんだことがあります。ヘリ搭乗自体が非日常的で面白く、コースも煙を吐く阿蘇・中岳の火口を真上から見下ろすもので、おおいに満足しました。1920年代のバーンストーマー(地方巡業の曲技飛行士)に、10分間10ドルという高値を払って、複葉機に乗ったお客のワクワク感が、ようやく少し分かったような気がしました)

 前回の江の島よりずっと工作は簡単ですが、現地は緩い斜面で若干の凹凸もあり、むしろ完成してから地形にフィットさせるのに手間取りました。シーナリー2.0の道路は、地形との相対位置がかなり正確なようで、お陰でヘリポートを実景通り道路に沿わせて配置し、ヘリパッドの中心の緯度経度も、ほぼ秒単位まで実物に合わせることが出来ました。

 あれこれ微調整の結果、シーナリー内のヘリポートは、敷地全体が東西方向に1度、南北方向に4度傾斜しているのですが、これが少々問題を起こしました。着陸後の機体が、どうも谷側へ微妙に動くように見えるのですね。10分ほど掛けて測ったところ、本当に分速79僂妊好螢奪廚靴討い泙靴拭5‖里呂い困貮瀉呂涼爾ら落っこちて、その場でクラッシュするか、山腹を派手に滑り落ちることになるので、あまり長時間は駐めておけません。
 ヘリパッドの周囲に、土俵みたいなリング状の突起を付けたらどうでしょう。ヘリポート奥の駐車場部分に引いてある白線は、実は高さ数センチの突起になっています。スキッドが当たると止まってくれないかと期待して、試しに機体を駐車場に移したのですが、そのくらいの突起物では、じわじわ乗り越えてしまうことが分かりました。かといって、あまり高い突起は接地時につまづくと危険です。なかなかうまい手を思いつきませんが、当面は着陸後20分以内にさっさと退散するか、ポーズでも掛けておくべきでしょうね。

     ●

 さて試験飛行。愛機EC135p2を駆って、小田原=芦ノ湖ヘリポート間を谷沿いに、低空で往復。「箱根の山は天下の険」と謳われた複雑な地形を、やっとシーナリー2.0で滑らかに飛べるようになり、なかなか感無量でした。つい先日、まだ世界全体をシーナリー2.0にしたまま、ロビンソンR44で同じ谷筋を上昇した時は、1分超の画面停止が盛んに発生して、どうしようもなかったので、私としては大満足です。

 このほか。芦ノ湖ヘリポートまで上昇しますと、ローターの発生する揚力がはっきり低下するなど、高所ならではの新発見もありましたが、いずれ改めまして。
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なし 富士山頂へ

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。今回は富士山頂へのヘリコプター往復フライトをご紹介します。
 羽田を出発して江の島で変針し、芦ノ湖ヘリポートで給油。最高地点「剣が峰」にある富士山測候所(かつて気象レーダーがあったところ。3Dで自作)を訪れ、火口のふちに短時間着陸しました。

 現在ダウンロードできる、FlightGear2.10または2.12用の旧シーナリーは解像度が粗く、富士山の火口周囲の稜線は切り立ったナイフエッジになっており、建物を設けたり着陸できる場所はありません。試しに剣が峰付近の緯度経度に、強引に小型ヘリパッドを置いてみたのですが、びょうぶの上に危うくお盆をのせたような状態で、およそリアルではありませんでした。
 しかし山頂付近をシーナリー2.0に差し替えれば、投稿画像でご覧戴けますように、火口周辺はあちこち平らに近い場所もある、起伏に富んだリアルな風景に生まれ変わります。これなら実景通りに測候所の模型を置いたり、その近くに着陸地点を探すことも出来ます。と言うわけで今回は、私のヘリにまつわる「研究成果」を片っ端から実地に活用する、短いけれど印象的な空の旅になりました。

●●箱根のヘリポートを、アタックキャンプに:
 ヘリは鈍足のうえ操縦感覚が神経質で、長距離飛行はあまり楽しくありませんが、ビル屋上や高山にも降りられる、なかなか探検向きの乗り物ですね。都内の屋上ヘリポート巡りを盛んに楽しみつつ、私はかなり前から漠然と、富士山頂へのフライトを構想していました。
 実物のEC135の上昇限度は、仕様や搭載量によって大きく変わるでしょうが、20000ftとする資料が多いようです。FlightGearのEC135p2も、デフォルト搭載量(燃料9割、貨物623Lbs。かなり重い状態)でテストしたところ、都内で一応10000ftをクリアしました。多少ゆとりがあったので、富士山頂並みの12000ft超も夢では無さそうでした。本当に届くかどうかは、本番のお楽しみに取っておきましたが、仮にダメでも、知恵を絞って機体を軽量化する楽しみが残されています。(実機の山岳救助や物資運搬でも、必要な場合は燃料をギリギリに抑え、外せる部品は取り外すそうです)

 一つの問題は航続力で、実機の342nmに対しFlightGearのEC135p2は、満タンで100nmに届くかどうか。しかしキャビン内外に増槽を付け、大量の燃料を積んだりすれば、重くなって上昇限度が下がります。そこでタンクの追加や、あまりリアルでないエンジンの出力増大は避けて、運用面で工夫することにしました。以前お話しした通り、箱根の芦ノ湖スカイライン沿いにヘリポートを確保しましたので、ここで満タンにして富士山頂を全力でアタック。帰路も厚木基地で給油し、不安なく羽田をめざす予定です。

 コースは以下の通り。お馴染みのフライトプランナー・サイト「Skyvector」で作りました。
区間ごとのETE(予定飛行時間)は、対地速度を130ktと仮定しています。
(表記は磁気方位。Tの部分のみ真方位)
◎羽田空港ヘリポート GPS N35°33.63' E139°45.27'
   ▼228°(221°T)20.5nm 9.5min
△江の島 GPS N35°18.08' E139°28.83'
   ▼263°(256°T)24.5nm 11.3min
◎芦ノ湖ヘリポート GPS N35°11.96' E138°59.87'
   ▼314°(306°T)16.5nm 7.6min
△富士山頂剣が峰・富士山測候所 GPS N35°21.78' E138°43.63'
   ▼088°(081°T)35.9nm 16.6min
◎厚木基地RJTA
   ▼074°(066°T)16.2nm 7.5min
◎羽田空港ヘリポート GPS N35°33.73' E139°45.19'
Total 113.6nm 52.4min

●●どうやって高所に降りるか:
 どうせ行くなら山頂(富士では、火口のふち全周を言うらしい)に降りてみたいものです。そこで山岳地帯の操縦法について調べました。
 単純化すると、ポイントは二つです。まず空気密度の低下で揚力が減り、離着陸に必要なホバリングが出来ないケースがあること。EC135p2のホバリング限界高度は、条件によって変わるでしょうが、ネットで調べると10000ft程度のようです。同じ10000ftでも、資料によってIGE(地表すれすれで地面効果あり)だったり、OGE(地面効果がない正味の性能)だったりしますが、要は12000ftを超す富士山頂でホバリングするのは、なかなか厳しい…と言うことですね。
 もし十分な向かい風があれば、トランスレーショナル・リフト(前進飛行でローター面を通過する空気が増え、余分に得られる揚力)を利用して、限界高度を多少超えてもホバリングが可能になり、従って正常に離着陸もできることになります。問題は風速が足りない場合ですが、実は滑走して相対風を補い、揚力を稼いで離着陸する手があります。ただしタイヤを装備しない小型ヘリは、強引にスキッドで滑ることになりますので、一種の非常手段と言えそうです。
 滑走着陸のコツは、風下から標準より浅い進入を行い、十分に減速すること。最大でも15〜20Ktで接地するのだそうです。離陸時は、風上に向かって最大出力でコレクティブ・ピッチをゆっくり上げ、機首はかすかに下げて、スキッドを引きずって前進。トランスレーショナル・リフトが効き始めると、わずかな引き起こしで機体が浮くのだとか。もし山頂の条件が良ければ、これを試してみることにします。

 シーナリー2.0を使っても、火口のふちにはどこも大小の傾斜があります。そこで第二の課題は、斜面へどうやって安全に降りるかです。ヘリ操縦の入門書によると、テールローターを地面に近づけないよう、機体を等高線と平行にして斜面に接近し、水平姿勢のまま、必ず山側のスキッドを先に接地させます。ここでサイクリック・ピッチレバーを山側に傾け、スキッドを斜面に押しつける感じで安定させておき、コレクティブ・ピッチを緩めて谷側のスキッドも接地。機体が滑らないことを確認してエンジンを止めます。
 斜面ではスリップの危険に加え、ダイナミック・ロールオーバー(谷側への横転事故)も要注意。傾斜角が大き過ぎる場合や、山側から吹き降ろす横風が事故原因となりますが、テールローターによる横方向の推力も危険因子だそうです。つまりEC135p2のように、メインローターが左回転する機体では、テールローターは左へ風を吹き出しますから、機体右側面を谷へ傾けると倒れやすいわけです。
 結局のところ、実機が安全に降りられる傾斜角は、最大でもわずか5度だそうです。さてFlightGearのヘリは、何度の傾斜まで降りられるのでしょう。

 私は3度から最大18度まで、6種類の傾斜角を持った試験台を作り、羽田に設置して着陸の実験と練習を行いました。アップル社のマークみたいに6色に塗り分けたので、「虹の階段」と呼んでいます(^^)。
 前回お話ししましたように、FlightGearのヘリは斜面に降りると、例え傾斜が緩くても、谷側へ非常にゆっくりとスリップを続けます。この動きを止められるかどうか、試しに「虹の階段」の表面に、レール状のストッパーを3本設けました。太さは上から順に5儚僉10儚僉15儚僂任后
 いざ実験してみますと、斜面への着陸は思ったより容易で、前記の「片足ずつ着陸」を守れば、最大傾斜の18度でも一度も横転しませんでした。ただし、緩慢なスリップは最小の3度でも発生し、レール状の滑り止めがあっても、スキッドが一度だけピョコンと揺れたあと、じわじわ通り抜けてしまうことが分かりました。高山には、条件さえよければ着陸可能ですが、長居は出来ないわけですね。もし富士山のてっぺんから、あの大斜面を豪快に滑り落ちてしまったら…と思うとヒヤヒヤします。

●●相模湾を、西へ:
 さてフライト本番。張り切ってFlightGearを起動したら、たまたま東京は雨でした。Ver3.0.0は雨滴が舞うと負荷が重いため、残念ですがリアルウエザーの使用を断念。メニューから「Fair weather」を選択しました。ほぼ無風でscatterdの雲。さっそく燃料を満タンにします。
 以前はすぐエンジンを掛けましたが、最近はまずバッテリーをオン。頭上のスイッチを順次入れて、衝突防止灯やストロボを先に点灯し「本機は危険、これより始動」のサインとします。誰が見ているわけでもありませんが、私なりのささやかな進歩ですな(^^;)。回転計を眺めながら、最初の区間の方位をコンパスにセット。と言っても富士山頂までは、地形さえ見えれば飛べそうですけれども。
 ホバリングに移ると、残念ながら画面表示が派手にカクカク引っかかります。とてもクロスカントリーに出る状態ではないので、一度パソコンを再起動し、ついでに視程も20nmまで短縮しました。

 改めて離陸準備を終え、シミュレーション上はUTCの2305時(JSTで午前8時5分)にエアボーン。短時間ホバリングした後、異常がないので機首を湘南海岸に向け、加速と上昇を開始しました。最初の航程は、羽田空港=横浜ランドマークタワー=江の島がほぼ一直線に並び、とても航法が楽です。
 EC135p2はオートパイロットが使えませんが、1時間程度なら手動操縦も悪くありません。高度を約1000ftに保ち、コレクティブ・ピッチを7割ちょっとにセットして、後はサイクリックの微調整で140Ktをホールド。この速度はEC135p2ですと、Vne(超過禁止速度)までやや余裕があって振動が起きず、気速計の針もぴたり水平で視認しやすいため、巡航にはもってこいです。
 2317時に、江の島を通過。燃料の残りは1239Lbs(約83%)です。小田原に向けて変針し、相模湾を西へ。ここでトリムを調整したところ、速度維持が少し楽になりましたが、ヘリには操縦の安定点がないため、かなり念入りに調整しても、やはり手放し飛行は無理。「スティックを操作する力が少なくて済む」くらいの効果しかないのは残念ですね。

●●箱根で給油、燃費悪いなぁ:
 2324時、離陸から19分で小田原市中心部に到達。燃料残は1086Lbsです。後で計算してみると、ここまで約37nmの飛行に399Lbs使用しており、燃費は1nmあたり10.8Lbsでした。昨年世界一周に使った、ピラタスPC-9M改水上機の5倍近い消費量です。ヘリコプターの場合、水平飛行の必要パワーは同重量の固定翼機の約10倍だそうですから、まあ納得ですけれども、シビアなものですね。無駄な上昇降下や加速減速を避けて、なるべくコレクティブ・ピッチを絞って飛んだのになぁ…。
 さて箱根が目前です。山岳地帯に近づくと、ややパソコンが重くなってきました。離陸以来感じなかった軽いカクカク感がつきまといます。一度だけ、画面表示が約2秒止まってヒヤリとしましたが、それ以上は悪化しませんでした。
 コレクティブ・ピッチを約90%に上げ、地形に合わせるように上昇。この日は箱根新道と旧道が絡む谷間を避け、南側の尾根上空をターンパイク沿いに芦ノ湖へ。手動選択の「Fair weather」にはscatterdの雲があり、ちょうどシーリング(雲底高度)が外輪山に掛かっていて、邪魔になるのは計算外でしたが、これも山岳飛行の味わいのうちです(実機では航空法上、かなり制限がありますが)。これまでにも芦ノ湖ヘリポートを起点に、道路や登山鉄道を目印にして谷筋を縫い、箱根山系の主要部を周回する練習飛行を重ねていたので、雲があっても簡単にヘリポートの位置が分かりました。

 眼下の芦ノ湖スカイラインには、実世界ならバイクも走っていることでしょう。道路にダウンウォッシュを当てないよう、ヘリポートの南西側へ迂回して慎重にアプローチ。標高はせいぜい3000ftですが、平地に比べて明らかにローター推力が落ちており、コレクティブ・ピッチを絞ると機体が早めに沈んで、なかなか降下の慣性が止まりません。コレクティブは必要に応じて大胆に使い、サイクリックのコントロールはあくまで繊細に。直径23mのヘリパッドを狙って、そっと機体を降ろしました。目の前はレストハウスに駐車場、すでに見慣れた自作の風景です。
 ここは傾斜が4度あります。分速約70僂乃‖里滑りますから、タービンとローターが止まるのを待って、さっさと給油しましょう。燃料残は939Lbs(メインタンク51%、サプライタンクを加えると合計63%)で消費量は546Lbs。出発以来の平均燃費は12.1Lbs/nmで、当然ながら平地を飛び続けた場合よりも、上昇分だけ消費が増えています。

 以下余談ながら。GoogleEarthによりますと、実景ではヘリパッドから北へ250mほどの場所に、芦ノ湖スカイラインをはさんでもう1軒、レストハウスが建っています。私がバイクで箱根を走り回ったのは太古?のお話で、実際にこの建物を目にした記憶はありませんが、ついでに付属の駐車場ごと追加制作しました。苦手だったテクスチャーの張り込みも、先日AC3Dマニュアルの必要部分を和訳・再読しましたので、お蕎麦の看板などは以前の作例より、ちょっとはマシになったかなと自己満足しております(^^;)。

●●いよいよ山頂へ:
 給油を終えてエンジン再始動。富士山頂に向け、コンパスの針路マークを314度にセットしました。
少々雲があっても、富士は目の前に見えており、剣が峰へ行くのにコンパスは要りません。しかし上昇力不足で積み荷を降ろすとか、想定外の燃料欠乏などを考えると、付近で唯一の「空港」である芦ノ湖ヘリポートへの撤退路を、常に確保しておくのがパイロットというものでしょう。
 過去UFOによる偵察では、お恥ずかしい話ですが雲で箱根を見失い、別の山域へ迷い込むケースが実際にありました。コンパスさえ設定しておけば、機械的に反方位を取れば帰れます。

 箱根外輪山を離れて、御殿場を通過。リアルに蛇行する富士山スカイラインを目印に、いよいよ巨大なお山に取り付きました。新旧のシーナリーを混用している関係で、私のFlightGear世界の富士には、色違いのテクスチャーの継ぎ目があって、まるでブラックジャックの顔みたいです…。
 コレクティブ・ピッチは当然最大。しばらくは1000ft/min程度の上昇率が維持できましたが、徐々に前進速度を落としていき、そのぶん推力を上昇に振り向ける操縦になりました。宝永山の突起と、その脇のくぼみを眺めつつ、次第に山腹に機体を寄せながら上昇を継続。富士山は幾何学的な形をしているためか、あまり近寄ると抽象的・非現実的な巨大物体に見えてきて、けっこう不気味です。

 やがて高度10000ftで、いったん上昇が止まりました。押しても引いても推力が足りない感じで、しばらく昇降計の針が落っこちます。徐々に減速を重ねて、この時の対気速度はゼロに近く、FlightGearでもこれがホバリング限界なんだな、と実感しました。となりますと、果たして山頂まで上がれるのか。また上がっても着陸は出来るのか、不安が膨らんできました。芦ノ湖へ反転帰投し、積み荷(623Lbs。たぶん機内の医療資機材分)を降ろそうかと思いましたが…ここまで来たのですからダメ元で、出来る限りトランスレーショナル・リフトを使ってみましょう。
 ほんの少し機首を下げ、じわじわ気速を稼いだところ、40Ktから機体がわずかに上昇に転じました。なるほど空気力学は正直ですね。しかしこの低速では、操縦はホバリング並みに不安定。また空気が薄いので、テールローターの抑えが効かなくなる恐れもあります(最近R44で芦ノ湖付近を飛行中、激しい自転に入ってやむを得ずエンジンを止め、オートローテーションで逃げた経験があります)。富士に向けた機首をそっと東に方向転換し、円錐形の山体を左巻きになめるように、じわじわ螺旋上昇を続けました。

 行けるところまで行こう、ダメなら降りようと淡々と粘り続けたら、お鉢の北側で視界が開け、とうとう山頂の一角に到達。静かに機体をコントロールしながら2354時、富士山測候所の上空を通過しました。燃料残を確認すると1055Lbsで、わずか16nm先の芦ノ湖から8000ftほど上昇する間に、満タンの3割近い燃料が消えたため、だんだん上昇が楽になったようです。何度も旋回して測候所に近づきましたが、さすがにホバリングは難しく、ちょっと気を抜くと機体がスッと高度を失います。火口稜線をよく見て、外側へ避けていないと危険です。

 しかし、多少広いところなら降りられるかも。UFOで測候所を置く際に偵察を重ね、北へ約300mの地点に比較的平らな着陸候補地を見つけていました。傾斜は5度あるかないかです。西側からごく慎重に接近して2357時、わざと若干の対地速度を残したまま、思い切ってスキッドを接地。機体は火口の崖に向けて滑走し、私は思わずジョイスティックのトリガー(固定翼機のブレーキ)を何度も引きました。もちろん効きませんが、10mばかり余裕を残して何とか停止。やった、ここがFlightGear世界の日本最高点…のすぐそばです。HUDの高度計は約12170ftを指していました。

●●厚木への長い「下り坂」:
 エンジンを掛けたまま記念写真を撮った後、再離陸のため機体を火口の外(西側)向きに反転。こうすると、離陸滑走はわずかな下り坂になります。機体の方向転換は数分掛けて慎重に、右回りで行いました。テールローターの推力低下を見込んで、メインローターの反動を利用するためです。
 さて、安全な離陸のために、機体を軽くすべきでしょうか。貨物(医療装備分の重量)を捨てるのは抵抗を感じるし、燃料を一部捨てるのも、自然公園法違反みたいでイヤですね。何とかなるさと腹をくくり、離陸に掛かりました。コレクティブをゆっくり引き起こし、サイクリックでやや機首を下げ。スキッドを気合いで引きずる感じで前進し、わずかにスティックを緩めたら、浮きました。
 山頂から離れて旋回を重ね、記念撮影(画像キャプチャ)を続けます。燃料は刻々と減り、わずかながら上昇力も一層増した感じですので、思い切って西から東へ、速度を上げて火口上空を横断しました。あまり気持ちのいい体験ではなく、東の稜線を越えて緩やかな降下に移ると、心からホッとしました。

 GPSで厚木基地を狙い、長い長い滑空的な降下に入ります。コレクティブ・ピッチを半分近くまで絞り、富士山頂の高度を少しずつ、厚木への距離に置き換えて、燃料の食い延ばしを計っていく感じです。左下方に山中湖を見て、延々と緑の足柄地方を東進。金太郎のふるさとは、なかなか深い山なのですね。やっと関東平野に出る直前、左手に何となく見覚えのある山を視認。あれって大山かな。とすると中学か高校で、ハイキングに行ったはずです…。

 厚木で給油する予定でしたが、もしかするとノンストップで、羽田まで飛べてしまうのではないかと思い直し。GPSの目標を羽田に切り替えて距離を見ながら、internal propertiesを開いて、正確な残燃料を確認しました。リアルウエザーではないので、風向風速の変化はあり得ず、このまま行けば2割前後の燃料を残して、羽田に帰着できそうです。
 厚木基地を飛び越えながら、降りるかどうか少々迷いましたが、計算を信じてそのまま続航。羽田に着陸時のメインタンク残量は11.9Lbs、2分半後にローターが止まった時は0.6Lbsでした。ただし、両エンジンのサプライタンク2基に、それぞれ182.3Lbsが手つかずで残っています。これは満タン総量の4分の1近くにあたりますので、他空港へのダイバートも一応可能であり、そう無茶な判断ではなかったと思います。

 という次第でまずは大成功、楽しい旅になりました。パソコンの負荷も箱根を過ぎ、実際に富士山の登りに掛かるとむしろ改善されましたし、羽田への帰路は快適でした。新旧シーナリーの混用に加え、離陸前のパソコン再起動と、視程を落としたのが効いたのでしょうか。お陰で羽田に帰着後、ヘリパッドから改めて富士山を遠望できなかったことだけが、わずかに心残りでした。
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なし 富士山頂にレドームを(上)

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです、残暑お見舞い申し上げます。今回のフライトも富士山頂が舞台です。
 気象庁は半世紀前、台風から列島を守るため、富士山に世界一高い(従って世界一遠くが見える)気象レーダーを建設しました。難工事の一つの山場となったのが、大きなレドームをヘリコプターで山頂へ空輸する作業でした。
 以下は、ちょうど50年前の1964年8月15日に行われたフライトを、不完全ながらFlightGearで再現する試みです。恐縮ですが長文のため、上下2回に分けてお届けします。投稿画像も併せてご覧下さい。

 FlightGearの世界では残念ながらまだ、地上に置いたオブジェクトに近づいて吊り上げ、任意の場所に運んで再び切り離すようなヘリコプターに出会っていません。また私の技術では、既存のモデルをこのように改造することも出来ません。
 しかし3Dオブジェクトのレドームを自作し、ヘリから鉛直にぶら下げて飛ぶだけでしたら可能ですし、レドームも出しっぱなしではなく、メニューから表示をオンオフすることは出来ます。同時にメニューの「Fuel & Payload」を使って、ドームの分だけ搭載重量を増減すれば、搭載している時と降ろした時の性能変化も再現できます。こう考えるとFlightGearでも、空気の希薄な山頂まで重いレドームを持ち上げる苦労や、設置地点へピンポイントで運ぶ難しさを、ある程度リアルに味わうことが出来るかも知れない…と思いました。

 やってみると想像以上に難しく、またチャレンジングでした。技術上不明な点も多く、私のFlightGearライフの中でも、これほど多くの事前調査が必要だったフライトはありませんが、さまざまな事実関係を調べること自体が楽しく、たくさんの勉強をさせてもらいました。

●●台風を迎え撃つ砦:
 まず、歴史的背景のお話を少々。富士山レーダー建設のきっかけは、1959年9月の台風15号(伊勢湾台風)で5000人を超す犠牲者が出たことでした。まだ気象衛星はなく、地上の観測網も貧弱で、気象レーダーの視程は最大で300Km。台風の正確な位置や針路は、上陸の数時間前まで分からなかったそうです。
 レーダー波が届く範囲は、基本的には地平線より手前ですから、高い所に置くほど遠くが見えます。仮に3776mの高みに大出力のレーダーを設ければ、観測範囲は一気に800Kmまで広がります。「ぜひ富士山頂にレーダーを。台風から列島を守る砦を」というのが気象関係者の悲願でした。
 伊勢湾台風から4年後、予算を獲得して建設開始。出力は国内初の2000Kwとなりました。東京スカイツリーの送信電力は、関東広域圏向け放送でも10Kwですから、いかに強力だったか分かります。電子装置とパラボラアンテナ、レドームは三菱電機、建物は大成建設が担当。完成は東京オリンピックの直前でした。YS-11が飛び始め、東海道新幹線も開業寸前という、日本経済の快進撃が始まった時代のお話です。

 レーダーと工事の全容を知るため、取りあえず小説「富士山頂」(新田次郎)を読みました。新田氏(本名・藤原寛人)は当時気象庁観測部の官僚で、建設計画を中枢で進める測器課長でした。なので小説は、激しい受注合戦を演じるメーカーをどうあしらったとか、役人的な自慢話がいささか目立ちますが、工事全般にわたる技術面の創意工夫や、山頂の過酷な自然がふんだんに書き込まれ、スリリングな読み物です。新田氏自身、富士山頂の観測経験を持つだけに、暴風にめった打ちにされるレドーム内では、耳に激痛が走って一瞬気が遠くなる描写や、作業員宿舎が吹っ飛ぶシーンなどは圧巻です。このほか、ネットからも多くの情報を得ました。

●●どんなフライトだったか:
 建設工事の最大の敵は積雪で、完全に消える7〜8月のうち、好天はわずか40日。予定の2年で建設を終えるには、500トンに及ぶ建設資材をいかに荷揚げするかが、勝負の分かれ目です。従来からの馬と人力では間に合わず、ブルドーザーとヘリが主役に躍り出ました。
 富士山は戦前から、乱気流で知られた山。資材空輸を請け負った朝日ヘリコプター(現・朝日航洋)は、5センチ大に切った大量の紙片を繰り返し散布して、詳細な気流図を作りました。その結果「火口上空に立ち入らなければ飛行可能。ただし安全圏の境界線はシャープで、10僂呂濬个討盍躙院廚犯縦蝓4屬發覆始まった空輸作業では、安全のため風速22mを限界としましたが、これは42.7Ktに当たりますから、無事故で山頂へ輸送を続けたパイロット達に脱帽します。

 秒速100mの烈風からパラボラアンテナを守る、直径9mのレドームを山頂へ運ぶのもヘリの仕事でした。「ジオデシックドーム」と呼ばれるモノコック構造の多面体で、まずアルミ合金の骨組みを運び上げ、表面に多数のFRP製三角パネルを張る仕組みです。骨組みは強度を保つため一体構造で、あまり細いと強風でつぶれますが、太過ぎると電波の透過率が落ち、重くて空輸もできなくなります。使用するシコルスキーS62のペイロードは最大600Kgと聞き、三菱電機はレドーム骨格を何とか620Kgに収めました。
 ところがこれが大失敗。ペイロード600Kgは海面高度のお話で、空気の薄い富士山頂では420Kgがホバリングの限界だったのです。S62からキャビンドアや副操縦士席、消火器が取り外され、搭載燃料も30分の飛行分としました。富士宮市に仮設したヘリポートから山頂へは13分掛かりますので、設置作業のため山頂に滞空できるのは、わずか数分に限られます。

 本番では、S62の神田真三機長(元海軍パイロット)は、午前7時55分に富士宮を出発。レドーム骨格を吊って富士山頂に向かい、誘導係の合図で慎重にレーダー台座へ接近しました。腹ばいになった副操縦士が乗降口から肩まで乗り出し、ドームと台座の位置関係を確認。8人の作業員が素早くドームに飛びつき、押したり引いたりして定位置へ。「離脱!」の合図で、ヘリは無事に索を切り離しました。

●●謎の「置き逃げ」操縦法:
 決行の時点でも、機体はなお80埆杜鳴恐瓩靴討り、ホバリングを伴わずに設置作業をする、特殊な飛行方法が考案されました。新田氏は小説の中で「置き逃げ(エスケープ)」と呼んでいますが、具体的にどんな飛び方をしたのか、何度読んでも細部が目に浮かびませんでした。
 小説によると、朝日ヘリコプターは富士宮ヘリポートに台座の実物大模型を作り、S62を飛ばして「置き逃げ」のリハーサルを繰り返しました。ヘリが近づいて、レドーム骨格が台座の真上に来ると、2人のベテラン作業員が取り付いて、骨格に付けた目印の赤リボンと、台座に付けた合わせマークが一致するよう、素早く位置決めをするのだそうです。
 しかし幾ら低速飛行とは言え、620圓離譽鼻璽犢格は大きな慣性を持っています。たった2人で移動中のレドームをつかんで一瞬のうちに、果たして正確な位置合わせが出来るものでしょうか。取り付けボルト穴を合わせるため、求められる精度は1冖にだそうです。

 本番フライトの記述では、さらに疑問が深まります。
決行の際の理想的天候は、快晴・風速5〜10m。ヘリはご存じの通り、相対風を受けるとローター面の吸い込み空気量が増え、揚力が増します。これがトランスレーショナルリフトで、風に逆らってホバリングしたり前進飛行をすると発生します。S62は重量オーバーですから、ぜひ適度な風が吹いて欲しいのですが、本番では無風になってしまいました。ここで新田氏は再び「置き逃げ」の説明をします。

 「建物の上端にほとんどすれすれの高さで静かに近づいていって、鳥籠(レドーム骨格のこと)の赤いリボンが、十六面円筒の上端の赤いマークの上にきたとき、鳥籠と機を切り離さねばならなかった。空中停止(ホバーリング)ではないが見かけ上は空中停止(ホバーリング)と同じであった」
 …これは混乱した記述です。小説は「ホバリングは不可能だ」と繰り返し強調していますので、前段のセンテンスは、ヘリは前進飛行を続けて定位置に来た瞬間にレドームを切り落とす、と読めます。ところが後段は「見かけ上は空中停止」だと言う。しかし重量超過のうえ無風ですと「見かけ上」も何もあったものではなく、空中停止は無理。ところが1ページ後には、いよいよ目標に近づいたパイロットの心理描写として「転移揚力には自信があった」と書いています。えっ! 転移揚力ってトランスレーショナルリフトのことでしょう、無風かつ「見かけ上は空中停止」なのに、どうやったら発生するのですか?

 ネットを探したら、まさにこのドーム設置フライトを記録した、モノクロ映像がありました。何度見直しても、ヘリは台座の真上に少なくとも連続20秒、ほぼ静止しています。つまり瞬時に位置決めをして「逃げた」わけではなく、しばらくホバリングしています。しかし映像の別の部分では、神田機長は「山頂に着いたら無風だった」と証言していますし、バックに聞こえる無線交信の音声も、風速は「北西0.5m」としているので、確かに事実上無風だったのでしょう。となるとトランスレーショナルリフトは効きませんので、なぜホバリングが出来たのか不明。「置き逃げ」とはどんな飛び方か、謎は深まるばかりでした。

●●レドームを作ってぶら下げる:
 ともかくレドームの骨組みを作って、ヘリに吊してみることにしましょう。
富士山のレドームは、前述の通りジオデシックドームと呼ばれる多面体。ジオデシックとは、幾何学で言う「測地線」(大円=大圏コースと同じ)のことで、ドーム表面のあちこちから、三角パネルの継ぎ目が直線となって数方向に、大円を描いて伸びて見えるため、こう呼ばれるのでしょう。
 この方式のドームを実際に作る人のため、各部の寸法を計算してくれるサイトを見つけたのですが、私の数学の知識では、モデリングソフト(AC3D)で正確に作るのは無理なようでした。やむを得ず、実際に富士山レーダーに使われたドームより、やや面の数が少ないタイプを選び、更に一部の辺の長さを多少ごまかしています。多面体さえ作れば、骨組みはAC3Dで生成可能でしたので、最後にヘリから吊すためのステーを作って出来上がり。

 これをヘリから鉛直にぶら下げるには、例えばEC135p2であれば、Models/ec135.xml ファイルを開き、ドーム骨組みのファイル名をパス指定した上で、吊り下げフックの位置座標を指定。ヘリのピッチおよびロールバンク角を、常に打ち消す方向に傾くように、アニメーションのrotateタグを使ってプログラムします。私は自分のフライト・コードラント(航空四分儀)やドリフト・ディレクター(偏流計)で使った、ジンバル機能のスクリプトを転用しましたが、本質的には、A-10の姿勢計の球体を水平に保つ記述と同じです。吊したドームが完全に鉛直では不自然なので、今回は factor を少しいじって、機体と反対方向に少し傾くようにしました。また画面表示をオンオフするため、
<animation>
<type>select</type>
<object-name>group_dome</object-name>       ←ドームの部品名称
<condition>
<property>sim/group_dome-visible</property> ←それをプロパティに登録
</condition>
</animation>
という一文を付け加え、さらに ec135_set.xml を開いて、
<item>
<label>Show/hide RADARdome</label> ←メニューに表示される文字列
<binding>
<command>property-toggle</command>
<property>sim/group_dome-visible</property>
</binding>
</item>
と書きました。これでメニューにドーム表示のトグルスイッチが出ます。デフォルトでは非表示です。
 あとは…レドームがまったく見えない機長席から、どうやって台座に精密な接近飛行をするかが課題です。実機ですと副操縦士や地上員が誘導してくれますが、私にはこうした支援がありませんから、ある種の照準器か何かが必要になりそうです。

●●佐貫亦男さんの風向風速計:
 次はフライトのターゲットとなる、富士山測候所の自作モデルを改良します。前回お目に掛けた画像は、勝手に吹き流しを立てるなど、かなりラフな出来でしたので、もう少し実物に近づけるべく、ネットで資料を探してあれこれ手を加えました。
 一番面白かった資料は大成建設の、元工事責任者のインタビューです。これによると、100mの風に耐える建物は設計が難しく、苦し紛れに潜水艦の船体を利用したいと思ったそうですが、重くて論外。ならば飛行機の胴体はどうか。これも特許の関係で断念。最後に「新幹線を参考にしよう! 強風に耐えているし軽い」となって、実際にゼロ系の車両を作っていた工場で、アルミ合金の庁舎が建造されました。なるほどカマボコ型の屋根は新幹線的ですし、製造中の内部写真を見ると、航空機によく似たモノコック構造です。窓は小さくて数も少なく、出入り口は小さい中間室を挟んだ二重ドア。いかにも気密性が高そうで、南極基地みたいな造りです。強風でも内圧が上がらず、屋根が飛ぶ心配のない設計ですね。

 …ここで唐突ながら。昔の気象庁測器課長には、新田氏以外にもう一人、面白い人がいたことを思い出しました。珠玉の航空エッセイを多数遺した、あの佐貫亦男さんです。佐貫さんは在職中、確か風向風速計を設計していたはず。ちゃんと風を受けて回るようにモデル化して、私の富士山測候所に備え付けたら、楽しいだろうなと思いました。
 調べてみると記憶通り、佐貫さんの風向風速計は退職後に制式採用され、まだ多数使われているとのこと。スマートな流線型胴体に後退角付きの垂直尾翼を立てて、4枚ブレードのプロペラが回る、海上保安部の屋上などでよく見かけるアレです。子供のころ「ヒコーキみたいだ!」と眺めた記憶があります。

 佐貫さんの著書によれば、垂直尾翼の断面は対称翼のNACA0012で、胴体も同じ翼型の回転体。NACAの00番台と言えば昔、Uコン曲技機のスタントリブによく使われまして、私も中学時代に設計した機体に0018や0020を使ったので懐かしく、さっそくネットで0012の画像を手に入れました(なんと便利な時代!)。
 AC3Dに下絵として読み込み、リブを大小2枚作成。それぞれの頂点同士を結んで翼面を成型し、回転体にして胴体も作りました。ブレードも同じ0012をコード方向にずんぐり圧縮し、押し出して板状部品に仕上げました。風速計のブレードは断面を翼型にすると、気流が乱れた場合に測定精度が落ちるそうで、佐貫さん自身は風洞実験の結果、断面を台形にしたそうです。
 この風向風速計、本当は尾翼の後端下部をえぐってカッコ良くカーブを付け、シッポには電球を仕込んで飛行機の尾灯に見立てるつもりでしたが、実現できず残念だったとか。敗戦でプロペラ設計者の道を絶たれ、せめて気象の世界に少しでも「航空」を取り込もうとの思いが伝わる、熱くて切ないお話です。

 私の模型は製造メーカーのサイトにあった、1枚の写真とイラストを参考に作り、簡単なxmlスクリプトを添えて、常に風上を向いて回るようにしました。全長40僂△泙蠅靴ないので、アプローチ中の機上からはほとんど見えず、およそ吹き流しの代用品にはなりませんが、まあ「気は心」ということで(^^;)。スクリプトの要点は次の通りです。
<animation>
<type>rotate</type>
<object-name>group_prop</object-name> ←これはプロペラ部品。
<object-name>group_airframe</object-name> ←こっちは胴体。
<property>/environment/wind-from-heading-deg</property> ←ここから風向の記述。
<offset-deg>0</offset-deg>
<factor>-1</factor>
   …ここに座標情報…
</animation>

<animation>
<type>spin</type>
<object-name>group_prop</object-name> ←プロペラの部品。
<property>/environment/wind-speed-kt</property> ←ここから風速の記述。
<factor>-10</factor> ←プロペラピッチの関係で、回転方向を負の値に。
<axis>
   …ここに座標情報…
</animation>

 …わが富士山測候所に設置してみると、微風ではゆっくり、強風ではいかにも懸命に、小さなプロペラが回ります。まるで命あるもののようで、自分で作ったくせに、ちょっぴり感動しました(^^;)。
 準備編はここまで。続編でいよいよフライトのお話をお届けします。
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なし 富士山頂にレドームを(下)

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
 hideです。富士山レーダーのレドームを山頂へ運ぶ、50年前の歴史再現フライト完結編をお届け致します。前回はユーロコプターEC135p2に自作のレドーム骨格を吊り下げて、一応それらしく飛べるようにしましたが、今回はいよいよ大荷物を抱えて山頂へ向かいます。

●●「空飛ぶクレーン」をテスト:
 レドームの骨格は出来たものの、まだ機体にその分の重量を加えていません。なにぶん620圈1367Lbs)もありますから、よほど機体を軽くしなければ、山頂まで上昇できそうにありません。
 そこで発想を変え、もっとペイロードが大きくて、しかも操縦しやすいヘリコプターを探しました。目に付いたのがシコルスキー S-64 エアクレーンでした。巨大な草食恐竜の骨格模型が、おなかに大荷物を吊り下げて飛ぶような、アレです。多用途の大量空輸を狙った機体で、朝は乗客ポッド(スカイラウンジというバス)を吊って大都市の通勤客を運び、日中は貨物コンテナを空輸。夕方は再び乗客ポッドで帰宅客を運ぶ…という構想だったのですが、このサンダーバード2号みたいなアイディアは、あまりニーズが無くて実現しなかったそうです。
(アメリカの大都市では1960年代、大型ヘリを空港リムジンバスのように使う試みがありましたが、どれも採算が取れず失敗しました。1977年、ニューヨークのパンナムビル屋上で定期便が復活したものの、離陸直前のシコルスキーS61が金属疲労で脚を折り横転。ローターブレードが数人を殺し、ビル街に降り注いだ大量のガラス片や、4ブロック先まで飛んだブレードの断片でも死傷者が出て、事業は打ち切られました)

 …エアクレーンをダウンロードしてみますと、大型で適度に動きが鈍く、SASがよく効いて飛ばしやすいです。パネルは素っ気ないものの外観はよくできていて、EC135p2と同様にブレードの挙動なんか相当リアルです。非常に力持ちの機体で、ペイロードは実に2万Lbs(!)。半分の1万Lbsを積んで東京上空でテストしたところ、余裕で高度12000ftを超えました。これならレドーム空輸は問題ありません。
 副操縦士席と背中合わせにクレーン(ウインチ?)操作席があり、専用ビューで積み荷の方向を見ることが出来ます。レドーム台座への接近に便利かなと思いましたが、後ろを向いての操縦は、ラジコンヘリの難関「対面ホバリング」と同じで私には到底無理。そこでイレギュラーながら、レドーム底部の中央から1.5m上に空輸専用のビューを新設しました。誰かがレドーム骨格の中に入って、誘導するような視野です。

 …しかし。羽田の私設ヘリポートで、着陸帯の円形マークを目標に接近訓練を重ねたところ、エアクレーンの意外な短所が分かりました。まず、ラダー軸によるヨー・コントロールの利きが非常に悪いこと。前進飛行中は、サイクリックのロール操作で旋回するため気にならないのですが、ホバリングに入ると機首を左右に振るのが困難です。次いで機体の慣性重量が大きいため、狙った一点で思うように止まらず、精密なアプローチは難しいことが分かりました。姿勢の制御は楽ですが、位置の制御は困難。いわゆる「操縦性はいいが、運動性は悪い」飛行特性です。結局、エアクレーンの使用は断念しました。

●●最初の試み:
 となると、飛ばし慣れたEC135p2が頼りです。まず機体のacファイルをいじって医療装備を外しました。デフォルトの貨物搭載量623Lbsを、この分の重さと見なしましたが、ドームを吊すと更に700Lbsくらい負荷が加わります。サーチライトなどダミーの外部装備も取り外し、両側のスライドドアを撤去。これで20圈別130Lbs)稼いだことにしましたが、まだとても足りません。後は燃料を減らすのみです。

 となると…発進基地にしようと考えていた芦ノ湖ヘリポートは遠すぎて、とても富士山頂まで往復できそうにありません。もっと近い、例えば御殿場の富士スピードウェイにはヘリポートがあるので、一応正確な位置を調べましたが、できることなら史実通り、三菱電機が仮設ヘリポートを設けた富士宮市から発進したいものです。正確な地名は不明ながら、場所は同市北部の朝霧高原だったことが確認できたので、羽田と同じヘリパッドを高原台地の中央付近、県道沿いの一角に設置して吹き流しを立てました。給油が可能な地点のサインとして、飾りのドラム缶も並べておくことにします。
 ここから9合目あたりまで2回上昇テストを行い、一応は富士山頂まで昇れる自信が湧いてきました。この機体にも、レドームの内部から周囲を見る空輸専用ビューが設けてあります。

 本番への準備が整ったところで、今春以来ヘリ訓練の拠点にしている羽田から、改めて富士宮ヘリポートまでEC135p2を回航しました。前回の江の島ルートとは趣向を変え、東名沿いに厚木、御殿場、三島、富士宮市街地を経由して、朝霧高原へ向かう77nmのコースを設定。41分で翔破しました。
(余談ながら。東名上空を三島へ緩降下中、大昔にホンダVT250Fで、九州目指して同じ場所を走ったことを思い出しました。100/h強の気流を切り裂いて進む、オートバイの夜旅は孤独です。右肩越しに一瞬振り返ると、夕焼けの最後の残照を背に、冷たく壮大な、影絵の富士がのしかかっていました。美しくも恐ろしい光景で、何度も振り返った覚えがあります。…ジョイスティックのハットスイッチで振り返ると、当時と同じ角度で富士が見えて、すごく懐かしい思いをしました)

 今回のコースは、毎度お馴染みの書式では次のようになります。
◎羽田N35°33.45' E139°45.35'
   ▼255° (248°T)16.2nm7.5min
◎厚木基地RJTA
   ▼254° (246°T)16.5nm7.6min
△松田N35°20.66' E139°8.52'
   ▼269° (262°T)9.1nm4.2min
△御殿場N35°19.42' E138°57.48'
   ▼199° (192°T)12.1nm5.6min
△三島N35°7.57' E138°54.39'
   ▼299° (292°T)15.1nm6.9min
△富士宮N35°13.16' E138°37.33'
   ▼349° (342°T)8nm3.7min
◎朝霧高原・富士宮ヘリポートN35°20.79' E138°34.32'
Total 77nm35.5min

 広大な富士の裾野で、無線標識もないヘリポートを発見するのは大変かと思いましたが、富士宮市街地を起点に、計画通り磁気方位349度へ4分飛ぶと、案外簡単にヒットしました。地形さえ頭に入れておけば、割に見当が付けやすい場所です。あとの区間は大部分、地上目標さえ見ていれば中継点をたどることが出来ます。
 富士宮ヘリポートに着いて吹き流しを確認し、県道を避けて北から進入。着陸後、かなり画面処理が重くなっていましたので、いったんパソコンを再起動。いよいよ富士山頂への空輸フライトに挑みます。

 燃料はゆとりを見て約920Lbs(満タンの6割強)搭載。さらに貨物重量とパッセンジャー体重のアジャスターを使って、レドーム骨格分の1367Lbsを追加しました。あいにく天候が悪く、リアルウエザー使用は諦めて快晴を選択し、エンジンを掛けて離陸。短時間ホバリングの後、メニューでレドーム骨格を出現させ、FlightGearのローカル時刻を史実通り、午前7時55分に合わせました。さあ上昇です。
 季節と天気、そして時刻と地形。いずれも実際と同じですから、私が眺めている景色は光線の具合を含めて、本番で朝日ヘリコプターの神田真三機長が目にした光景とよく似ているはずです。

 …山頂に向けて直進し、途中から山体の南へ回って上昇を続け、山腹に見えてきた宝永山第1火口あたりで西向きに反転。このあたりから事前のテスト通り、左ラダー軸の利きがひどく低下しました。空気が薄いことと高負荷によるエンジン出力低下のため、テールローターのトルクも落ちているものと思われます。史実の空輸飛行では、15000ftまで上昇してから剣が峰に近づいたのですが、とてもそんな余力はありません。しかし剣が峰までの所要時間は、史実通り約13分でした。

 さて特設ビューに切り替えて、微速でレーダー台座に近づきますが、揚力はギリギリいっぱいで、高度変更も前進や停止も、思うに任せません。5回のアプローチを重ねて、ようやくレドーム骨格を台座から高さ・距離ともに数辰泙廼瓩鼎韻泙靴燭、現状ではこれ以上は無理と思われました。
 一応画像を撮ったあと燃料残を素早く確認し、もう一度だけアプローチしようと思って、撮影用の外部視界のまま姿勢を立て直しかけたら…ああやっぱり私は、コクピット視界以外では飛べませんね…想定外の大傾斜を起こし、何かがどっかに接触して、あっという間に墜落判定。しばらくは息も出来ないほど、がっかりしました。とっさにポーズを掛けて、視界を切り替えればよかったのですが。

 気を取り直して再挑戦。副操縦士を降ろして燃料も815Lbsまで減らすと、少しだけ操縦が楽になりました。が、まだまだ台座の至近距離に寄るのは困難です。2回の接近後、早くも燃料が285ポンドまで減ってしまい、限界と判断して帰投。前回よりは台座に近づいた画像が撮れたので、ひとまずレドーム設置が成功したことにしようかと、画面表示と搭載重量の両方を「空荷」状態にしました。しかし、頂上を離脱してヘリポートに機首を向け、降下を開始すると「これじゃレドームを投げ捨てて、逃げ帰るのと同じだ」という苦い思いが、どっとわき上がりました。何とかリターンマッチをしなくては。

●●揚力と操縦性の改善:
 2回の挑戦を振り返って、問題点を整理しました。
.┘鵐献鵑僚侘呂足りず、揚力も左向きヨーコントロールも顕著に不足。
▲譽鼻璽牴蔀爾瞭胆潺咼紂爾鮖箸辰独瑤屬函△Δ泙目標地点で行き足が
 止まらない。幾ら機首を上げても、機体が前進し続ける傾向を感じる。

 …まず,梁从として、フライトコントロールのnasファイルを調べ、手探りでヨーの操縦ゲインを増しました。テストしたところ、これで平地のホバリングは操縦性が大きく向上しました。しかし高空で左ヨー操縦の利きが悪くなるのは、明らかにパワー不足が原因ですから、単に制御則をいじっただけでは、また上空で苦労しそうです。本来はテールローターの操縦設定を詰め直さないといけないのでしょうが、揚力不足の対策もかねて、まずは少しパワーを上げたいところです。
 EC135p2.xml ファイルをじっくり調べたところ、ギアボックスの項目の中に、やっとエンジン出力の記述が見つかりました。
<rotorgear
max-power-engine="616"       ←実機よりエンジン出力が不足。
max-power-rotor-brake="100"
rotorgear-friction="1.4"
engine-prop-factor="0.005"
engine-accel-limit="4"
yasimdragfactor="60"
yasimliftfactor="12"
>
 デフォルトは616でしたが、実機は667軸馬力なので、遠慮なく667に変更。燃料搭載量はデフォルト、副操縦士は搭乗、レドーム骨格も搭載…という高負荷状態にして、富士宮ヘリポートでホバリング旋回テストを試みました。デフォルト出力では、左360度ヨー旋回の途中で機体が一息ついて、止まってしまう場面があり、一周するのに16〜30秒も掛かったのですが、パワー増強後は16秒コンスタントに改善。試しに副操縦士を降ろして(その分の重量を減らして)、メインタンクの燃料も1/3に減らしたところ、12〜14秒に短縮されました。たった8%のパワーアップですが、十分に有意な変化が見られました。

●●特殊な照準器を考案する:
 △砲弔い討蓮▲蹇璽拭鴫鹽昭瓦水平飛行を考慮して、5度前傾していることを計算に入れていなかったのが原因です。そこでレドームの吊り下げ軸も5度傾け、併せて特設ビューのカメラ位置も修正。また特設ビューの画角と俯角を、コクピット視野とまったく同じにしました。こうすれば目標の直前で、コクピットビューのまま機体を安定ホバリングさせたあと、精密接近のため特設ビューに切り替えても何一つ違和感がなく、機体の姿勢が崩れません。

 特設ビューで正しいホバリング姿勢が確認できるよう、何らかの照準器が必要だと感じ、レドームの底部に出現する、大きな8角形のわくを制作しました。レドーム骨格自体は絶えず揺れて鉛直を保ちますが、この照準器はレドームとは無関係に、機体と一体になってカメラ下1.5mの相対位置を守ります。台座に接近飛行をする時は、この照準器をスキッドのように、台座にふんわり接触させるつもりで操縦すると、ほぼピタリのはず。こんなものを付けるとリアリティーが台無しですが、副操縦士や地上誘導員の代わりですから、やむを得ないところです。例によって必要な時だけ、メニューから表示する仕掛けとしました。

 これでひとまず、思いつく限りの対策は施しました。ヘリパッド上で何度も接近練習を繰り返し、燃費も測定して3回目の挑戦に備えます。

●●「置き逃げ」の謎が解ける:
 そうこうするうち、ネットで意外な情報が見つかりました。NHK「プロジェクトX 挑戦者たち」のファンの方が、このレドーム空輸飛行を取り上げた放映第1話の内容を、詳しく紹介していたのです。20KB以上ある文章は基本的に、放送のナレーション文と同じ構成らしく見えます。録画から起こして関係者のスタジオインタビューの内容を付け加え、編集し直したものでしょうか。
 この新資料は情報の宝庫で、まず三菱電機が仮設した「富士宮ヘリポート」は、井出という場所にあったことが判明。Google地図には今も富士宮市上井出という地名があり、私の選んだ場所のすぐ隣と分かって、悪くない選択だったなと安心しました。

 謎の「置き逃げ」飛行についても、小説より詳しい説明がありました。置き逃げとは…無風の時に目標の真上で、まずホバリングに入れます。高所ですと揚力不足で機体が沈みますが、ここで「沈んだと同時に、レドームを台枠にポンと置き、直ちにロープをカットして、パワーを上げてそこから逃げ出すという方法」だそうです。そうかぁ。さすがはNHK、簡潔で明快です。新田次郎の小説「富士山頂」では、微速で飛ぶヘリが台座上を通過する瞬間、レドーム骨格を切り落とすように読めましたが、実際は機体を沈むに任せて、吊り下げたレドーム骨格をいったん台座に接触させるのですね。ならば確かに、ホバリングが可能になります。

 もう一度YouTubeの動画を見ますと、機体はやはり20秒程度ホバリングして見えます。ロングに引いた構図がないため、何が起きたか分かりにくいのですが、要するに「レドームを台枠にポンと置く」操縦によって、まずレドーム下端が台座に接触。この時点ではレドーム骨格が傾いているため、下端のふちの一部しか当たっていないのですが、それでも重量620圓琉貮分を、台座が負担することになります。
 これでヘリの負荷が軽くなるため、ホバリングが継続できて、この間に作業員8人が力を合わせ、正確に位置決めをしたもののようです。映像では、レドーム骨格はしばらくあちこちへ傾いたり、ちょっと浮いたり、いろんな動きをしています。
 となりますと、S62はレドームを「ポンと」置いて「直ちにロープをカット」したわけではありませんから、置き逃げという呼び方には少々抵抗を感じます。新田氏も「ホバーリングではないが、見かけ上はホバーリングと同じ」などと、あいまい極まる書き方をせず、もっと端的に「吊り下げたドーム重量の一部を台座に委ねる、変則的なホバリング」とでも書いてくれれば、苦労せずに済んだのですが…。
 ちなみに「置き逃げ」または英語の escape は、一般的なヘリ操縦用語ではないようで、この富士山レーダーの話題以外では、ネットで具体的用例は見つかりませんでした。

 ついでに言いますと。レドーム骨格の吊り下げワイヤーを切り離すには、小説では機長が「レバーを左足で踏んだ」ことになっていますが、大変疑問に思います。ヘリは速度を落とすと、機体の風見効果が失われて直進しにくくなり、アンチトルクペダル(ラダー軸)の使用頻度が増えます。S52のメインローターは左回転ですから、特に左ペダルはトルク反動を打ち消す側にあたり、死活的に重要です。地上すれすれに浮かぶ危険な瞬間に、左ペダルから足を離すことを強要する設計は、非常に不自然です。新資料では「操縦桿にあるカットスイッチ」を操作したとありますから、恐らくこちらが正しいでしょう。

●●最後の試み:
 3回目の山頂アタックは、リアルウエザーで快晴・西の微風。素晴らしいコンディションになりました。
燃料搭載量は史実通り半時間分で、メインタンクの3分の1、サプライタンクは左右満タンの合計757Lbsとしました。今回は副操縦士も史実通り乗せます(体重分を搭載重量に加えます)。ただしデフォルトでは1人の体重が180Lbsと日本人離れしているので、正副パイロットとも121Lbsにしました。以上で機体のグロス重量は4141Lbs、レドームを足して5508Lbsです。

 離陸後約12分で測候所に到着し、台座へアプローチを開始。揚力とヨーコントロールは改善してホバリングがやや楽になり、特設ビューも使いやすく、照準器の具合もよろしいです。3回トライしましたが、あとちょっとの出来映え。ガス欠が迫って反転離脱し、ドーム重量を積んだまま富士宮に帰着。停止時の燃料残は182Lbsでした。まだ台座までかなりクリアランスがあり、さらに近づけたいところです。

 史実の燃料半時間分は、やはり非常に厳しい条件と分かりましたので、燃料を約4分の1増しの961Lbsにして4回目の挑戦。富士宮を離陸してから16分32秒後、最初のアプローチを開始しました。これまでよりレドーム下端が台座に寄って、多少サマになる絵が撮れました。燃料残は560Lbsもあったため、さらに2回アプローチ。3回目の接近は歩く程度の微速で、フレアを掛けてさらに減速。レドームが少し後ろへ傾き、台座へ最接近して…まさに、そっと置くような形に誘導できました。万歳っ! 
 理想を言えば、ここで完全静止させたいところですが、実際にドームを台座の上に置くことは(接触判定がないし、あっても吊り下げワイヤーのたるみが再現できないので)どっちみち不可能ですから、最微速のどんぴしゃりフライパスで、もう十分に「ドーム設置成功」の気分を実感。ここでポーズを掛けて静止画を撮りました。やれやれと安心して帰還準備に掛かります。レドーム骨格搭分の重量と3Dオブジェクト表示を消すと、機体は急に身軽になりました。

 十分に山頂を離れ、コレクティブ・ピッチをいっぱいに絞って、真西へ降下を開始。回転計が針割れしてローターのみ増速し、オートローテーション気味に降下を続けます。ヘリポートは5nmくらいまで接近しないと見えませんが、位置は把握しており、安心して凱旋気分で降りていくことが出来ます。ふとビクトリー・ロールを打とうかと思いましたが、ここで事故っては馬鹿丸出しです。7000ftまで来たら、いきなり雲がどっさり出て雲海に近い風景に。切れ目を縫って降下を継続します。ずっと天気が保ったのは幸運でした。

 離陸から27分、富士宮ヘリポートに安着。エンジンを切るとさらにシーリングが下がり、雲が裾野一面を這って、あっという間に富士の全身が隠れ、まるで芝居の幕が下りたようでした。1カ月ばかり費やした私の挑戦は高揚感とともに終わり、頭の中では中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」が、ひたすら鳴っておりました。

○付記○
 富士山レーダーは35年間活躍し、気象衛星や後継レーダーに道を譲って1999年退役。翌2000年には「電気・電子技術やその関連分野における歴史的偉業」の一つに数えられ、米国電気電子学会から「IEEEマイルストーン」の認定を受けました。レーダーとドームは富士吉田市で永久保存し公開中。
 長い歴史を持つ富士山測候所は、今も剣が峰にありますが、2004年から無人観測に移行しました。写真で見るレーダー台座や庁舎は、半世紀に及ぶ風雪に耐えて貫禄十分。私の模型も、壁面は風化した感じにしました。願わくば未来の日本が、さらに素晴らしい技術遺産を残せますように。
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なし 「地球は丸かった」…準軌道飛行の眺め

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです、どうも大変長らくご無沙汰しました。
 「手探り航法・旅日記」に書かせて戴くのは昨年9月、富士山頂にヘリでレドーム骨格を空輸して以来ですね。FlightGearがv3.2に移行してからも、幾つか新しい試みを思いついたのですが、残念ながら多くは技術の壁に突き当たり、成果をお見せできませんでした。
 しかし、仮想世界を飛んでいないわけではありませんので、ここ数カ月のメモを読み返して、比較的うまく行った事例を拾い出し、久しぶりに近況報告をさせて戴こうと思います。

●●天に矢を放つ…NF104Aで高高度へ:
 もうすぐv3.4が出るというのに、今ごろv3.2のお話も恥ずかしいですが(^^;)、このバージョンになってから新たに、Earthview orbital rendering という機能が加わりましたね。ほぼ宇宙空間の高さから、非常に広範囲の地表が見える仕掛けで、FlightGearとしては初の、大地を球体として画面表示する機能です(ふだん見えている地表は平面)。すでにUFOで試された方も多いことでしょう。画像が粗くてボケボケではありますが、高度によっては日本列島の大部分を含む巨大視野が得られ、しかもグラフィックの負荷が、比較的軽いのはありがたいです(v3.2は全般的に、画面表示が多少は軽くなった気がします)。天球が壊れたり大地が白くなったりせずに、世界が正常に表示される最大高度は100キロ(約30万ft)です。

 高度100キロは、FAIの定義では大気圏と宇宙空間を分ける仮想の境界線で、「カーマン・ライン」と呼ぶそうです。トム・ウルフの名著「ザ・ライト・スタッフ」では、宇宙空間の定義を高度80キロ以上としており、従来のFlightGearでも80キロが、正常な天球表示の限界だったことから、すっかり80キロ説を信じていたのですが、実際は高度100キロが正しかったのですね(^^;)。いずれにせよ、この巨大視野はUFOから眺めるだけでは面白くありません。まともな航空機で、宇宙とまでは行かなくても…せめて半分程度の高さまで、久しぶりに上がってみたくなりました。

 まずX-15を起動しましたが、私の環境ではコクピットが表示されず断念。お馴染みの、helijahさんの格納庫サイトから NF-104A をダウンロードしました。本機は、F-104の垂直尾翼付け根に推力6000ポンドの液体燃料ロケットを追加し、主翼をやや延長して、高度12万5000ftを狙った実験機です。翼端や機首などに宇宙船並みの過酸化水素スラスターを12基設け、舵の利かない超高空で姿勢制御する仕組みでした。アメリカは一時期、X-15など有翼ロケット機による軌道飛行を計画しており、NF104Aはスラスターの実証試験と、パイロットの訓練用だったようです。
 「ザ・ライト・スタッフ」によりますと、あのチャック・イェーガーも、本機で高度世界記録に挑戦しています。しかし予備テスト中に、弾道飛行の頂点(10万4000ft)で機首を下げようとしたところ、スラスターがうまく利かず、機首上げ姿勢のまま落下してフラットスピンに入りました。主エンジンはすでに上昇中、過熱のため止めており、再点火するには機首を下げて、風圧で回転を上げる必要があります。しかし水平尾翼が上昇トリムのまま固着しており、機首は下がりません。機首を下げるには、まずエンジンを回して油圧を上げ、水平尾翼を動かす必要があります…。
 …手詰まり状態でスピンが続き、2万1000ftまで落下。イェーガーはドラグシュートを開いて機首を下げましたが、エンジンは再始動できず、万策尽きてベイルアウトしました。降下中に大やけどを負った場面は、確か映画の「ライトスタッフ」にも、簡略ながら描かれていました。

●●癖の強い操縦性:
 FlightGearのNF-104AはYASim機で、パネルのスイッチで補助ロケットのオンオフが可能です。ジェットエンジンと併用して上昇すると、離陸後たった数分で高度6万ftを超えますが、この辺が上昇の限界で、実機の半分くらいの性能しかありません。また操縦性が難物で、舵の動きにタイムラグが作ってあり、操舵時も中立に戻す時も、常に遅れてジワリと舵面が動きます。たぶん実機もそうなのでしょうね。
 特にヨー軸の制御が困難で、うっかり大バンクを掛けると、水平に戻すのが大変です。空気の希薄な高空では一層、ヨー方向の安定が失われ、不規則なロールが止められず、機首も下がって一時操縦不能になる癖があります。昔のロケット実験機は、超高空でしばしばイナーシャー・カップリング(3軸すべてが絡む複雑な自転)を起こし、文字通り空中を転げ回ったそうですので、リアルと言えばリアルなのかも。スピードブレーキが省略されているのも不便で、私は最初のテストで羽田へ戻る際、高度と速度の処理に苦労して、とうとう東京湾を一周してしまいました。
 B滑走路上空を行って戻って、まだグライドパスよりずっと高いので、私は苛立ってバレルロールで減速・降下しましたが、今度はロールが止まらなくなってしまい、滑走路寸前にハードランディング…と言いますか、要するに墜落。まことに残念無念です。

 同じロッキードのSR-71(YASim版の方)も試しましたが、こちらもよく似た操縦性で、3万ftくらいまで上がるとロールが制御困難になって高度を失います。いっぽう、同じSR-71でも akakim さんが言及されていた JSBsim 版の方は、なかなか見事な出来映えですね。今回の書き込みのため、初めて飛ばしてみました。本機の上昇力は3万4000ft付近で、いったん頭打ちとなります。helpによりますと、ここからは30000ftまで降下して加速し、抵抗の大きい遷音速域を乗り越えて、超音速で上昇を再開することになっています。非常に面白い飛び方ですが、私は何度試しても音速突破に手間取り、結局は推力を2割増やしたうえで、8万3600ftまで上昇することが出来ました。

●●JSBsimのF104を、NF104に仕立て直す:
 お話を104に戻しますが…当サイトの「機体データV3.0.0」コーナーには、「NF104A」の他にも「NF104」と表記された機体がもう一機あり、実は中身は普通のF104です。こちらはJSBsim機で操縦性はずっと良好。コクピットもはるかに丁寧に作り込まれています。そこで、この機体に補助ロケットエンジンを追加して、NF104風に改造してみることにしました。

 まず、JSBsim機の3Dデータから、標準の短い主翼とチップタンク、空中給油プローブを取り去り、NF104の長い主翼とロケットエンジンの外形を移植。軽く飛行テストを行うと、アプローチ時にかなり機首下げの癖があったので、重心位置を微調整。地面にお尻を着かないよう、タイヤの接地位置も調整して、ひとまず快調に飛べるようになりました。
 いよいよエンジン関係のファイルを改造しようと思ったのですが、私の手には負えませんでした。X-15を参考にしたところ、JSBのロケット推力に関する記述はなかなか本格的で、比推力とノズル断面積、ノズル圧を決めて間接的に定義するようになっています。つまり、推力欄に「6000Lbs」と記入するだけじゃダメなのです。
 このあたりの計算は、今から少々勉強しても追いつかないと思い、代用品としてジェットエンジンを1基増やすことにしました。気圧変化を再現するテーブル数値を、1グループまるごと1.0000に書き換えたので、高空でも推力が低下せず、ロケット的に振る舞ってくれるはずです。
 キー操作で任意にエンジンをオンオフするのは、残念ながら無理でした。何とかスターターを回すところまでは行きましたが、点火できませんでした。やむを得ず現在は、起動時からロケットエンジンを作動させておき、フルスロットルで何分か使うと、専用タンクが空になって停止し、あとは正規のジェットエンジンだけで帰還する方式です。この作戦は一応うまく行きました。

 私はこの改造機で、最終的には高度10万ftを少し超え、Earthview orbital rendering のお陰で日本海と太平洋、琵琶湖に大阪湾などを一望する視界を楽しみ、大いに満足しました。
 ただし本機は高高度への上昇時に、仰角を60度以上くらいに取っておかないと、加速に従って機首が下がり続け、引き起こし不能になる癖があります。スロットルを閉じてもブレーキを掛けても、真っ逆さまに加速を続け、気速計が700KIASを越えて仰天しましたが、チャック・イェーガーの故事を思い出してドラグシュートを開いたところ、幸い急減速に成功。300KIASでドラグシュートを捨てて機首を引き起こした時は、まことにホッとしました。

●●成層圏のトンビ、U-2と出会う:
 NF104改は、まさに天を射る矢のような飛行機です。推力さえ増やせば、宇宙空間とされる高度に軽く届くでしょう(2009年4月25日の『手探り航法・旅日記(その2)』では、すでにT-38改造機による35万5130ft達成をご報告しました)。しかしFlightGearでは、第一宇宙速度(軌道に乗る最低速度=7.9km/s=約1万5400Kt)の数倍までUFOを水平加速しても、軌道飛行はしない(経度で120度近く飛んでも、地球の裏の遠地点に向けて上昇する気配がまったくない)ので、ロケット機がどんな高速で上昇しても、結局は弾道飛行をするだけで、あまり意味がない気もします。
 そこで趣向を変えて、超高空をふんわり長時間・長距離飛行できる機体はないかと探し、昨年の暮れごろにU-2に行き着きました。ご存じ冷戦のさなかに、7万ftの超高空を巡航した戦略偵察機で、ロッキードP38やエレクトラ、コンステレーション、F104などを設計した鬼才、ケリー・ジョンソンの作品。1955年に初飛行し、翌1956年にはソ連偵察を開始しています。

 7万ftは、当時としては撃墜不能の高度で、ロッキード社とCIAはソ連のミサイルが届くようになるまで、少なくとも2年は大丈夫と踏んでいました。実際は、1960年5月にゲリー・パワーズが初めて撃墜されるまで、本機はたっぷり4年間、ソ連主要部を自在に飛び回りました。ジョンソンの後継者、ベン・リッチが書いた「ステルス戦闘機―スカンク・ワークスの秘密」(講談社、1997年)には、U-2開発の苦心談や、パイロットたちの手記が紹介されています。ソ連の新たな核実験場を見つけて真上を飛んだら、たまたま原爆の起爆寸前で肝を冷やしたり、単機で飛ぶU-2のはるか下から数十機のミグが追いすがり、必死にズーム上昇を掛けては失速して墜ちていくエピソードなど、まさに体験者でなくては語れない、迫真の物語を堪能しました。

 U-2は低い翼面荷重(1sqftあたり4Lbs=通常の旅客機の3分の1)を持った、一種のジェット版モーターグライダーで、低空では極めて失速しにくく、実機は滑走テスト中、わずか70KIASで勝手に離陸したそうです。ただし空気が非常に薄い作戦高度では、フライト・エンベロープ(縦軸に高度、横軸に速度を取った、飛行可能範囲を示すグラフ)の狭い頂点へスッポリ入って飛ぶことになりますので、これ以上加速できないが、わずかでも減速すれば失速するという、難しいフライトが当たり前でした。うかつに旋回すると内側の翼は失速してバフェット(振動)を起こし、同時に外側の翼は高速バフェットを起こしたそうです。

     ○

 FlightGearの機体も大変軽く、満タンでも60Kt未満で離陸してしまいます。翼幅が非常に大きいため、舵の反応は鈍いですが素直で、失速特性もよく、操縦性は優秀。もちろん滑走距離は短いです。離陸時に両翼の補助輪を自動的に切り捨てて飛行し、着陸後は不安定なタンデム2輪となりますが、練習を重ねると完全停止するまで、対気速度がせいぜい10Kt近くあれば、ちゃんとエルロンで水平を保つことが出来ます。このあたり、機体を風に正対させてバランスを取る、グライダーの初級訓練みたいですね。ちなみにフラップは4段、スポイラー連動のスピードブレーキは5段階に作動し、いずれも利きは十分です。

 最大の欠点は、前後輪とも向きが固定されており、ラダーだけでは地上でうまく向きを変えられず、滑走路から飛び出すこと。一時は、似通った胴体を持つF104(U-2試作機は実際に、XF104の機首を転用)から脚を移植しようかと思いましたが、これもなかなか面倒です。そこでデフォルト車輪の改造に取り組んで試行錯誤の末、後輪より前輪をステアした方が利きがいいことが分かりました。車輪の抵抗を調整すると、一応曲がるのですが、舵を切ると機首がつんのめって地面を打ちますので、主タイヤの接地点を1.5mだけ前にずらしています。これでようやく、誘導路のセンターライン上を、思い通り走れるようになりました。飛行機って不思議なもので、苦心していじっていると、毎度ながらだんだん可愛くなります…。

 FlightGearのU-2も実機同様、ゆとりを持って7万ftを超えることが出来ますが、もう少し下の高度を取ると極めて燃費が良く、オートパイロットの作動も良好ですので、実際に長距離機として大きな可能性を秘めていると思います。計器が三つしか無いなど未完成ですが、肝心な部分は良くできています。両翼と背中の電子偵察ポッドや、30個近いアンテナ類は、いかにも「スパイ機」じみて陰気なので取り外し、ただいま少しずつ、改造プランを温めています。いずれ固まりましたら、またご紹介させて戴くつもりです。

●●謎の空中衝突…高度100ftの罠:
 NF104やU-2で羽田=伊丹間を何度か飛んでいる間に、奇妙な現象に出会いました。伊丹の32Rに進入したところ、スレッシホールドの真上付近で突然、機体が空中停止したのです。v3.0では画像処理が非常に重く、かなり頻繁に数秒から1分あまり、画面が停止していたので、今度もそれかと思ってしばらく待っていました。しかしABNは正常に回り続けており、なんだか様子が変です。まるで何かに衝突し、事故判定を食らったみたいに見えますが、空中には何もない…。
 日を改めて34Lに降りたところ、同様に「空中停止」が発生。同じ場所でヘリを飛ばすと、高度約100ftでローターが激しく振動を始め、慌てて不時着しました。これも何かに接触した時の現象です。さらにピラタスPC-9M改で、32L南東端の高度100ftをゆっくり通過したところ、ドカーンと空中で炎上。やっぱり見えない障害物があります。困ったことになりました。
 伊丹空港は数年来、FlightGearの母港に使っています。昨年からはヘリ操縦練習の関係で、ヘリポートがどっさりある東京に移っていますけれど、「本宅」の伊丹が使えなくなってしまうのは、やはり残念です。ある日、軽飛行機で羽田のD滑走路から離陸し、故障を想定してエンジンをアイドルまで絞り、A滑走路へ緊急着陸を試みたところ、ターミナルビル横を通過中、やはり何かに衝突しました。ちょうどABNの真横です。もしや…ABNのライトコーン(円錐形の光ビーム)では!?

、ライトコーンに飛行機が衝突する問題は、以前もありました。調べてみますと2011年6月15日、toshiさんからファイルの書き換え方を教えて戴き、いったんは解決しました。私のABNは現在も、このときの改造方法を適用済みです。
 しかし。v3.2からは、確か「海面がハードではなくなった。着陸すると長くは浮いていられない」と、チェンジログか何かに書いてありました。ひょっとするとv3.2から、ライトコーンは逆に「ハードになった」のでしょうか。結局ABNの各種ファイルから、ライトコーンに関する部分をすべて削除しました。もともと昼間に見えては不自然ですし、夜だって霧がなければほとんど見えないのですから、最近は透明にしていたくらいです。しつこく飛行テストをしましたが、これで「空中の罠」は完全に消え去りました。ささやかですが、勝利の味は格別です(^^)。

●●木々の樹高を調整する:
 お話は変わりますが、FlightGearがランダムに発生する樹木が最近、かなり改良されました。以前は世界中どこへ行っても(たぶん)同じ針葉樹ばかりで、サハラ砂漠の滑走路脇にも、巨大なヒマラヤ杉(?)が密生していて、がっかりしたものです。現在は高木から低木、草むらまで、熱帯樹を含む数十種の植物がモデル化されており、木々が風にそよぐ機能も加わって、箱根あたりでボーッと森を眺めていると、つくづくきれいだなと思います。

 ただ残念なのは、ランダムに生えてくる樹木が、やたらに大きく見えること。アルプスなら巨木も結構ですが、東京や大阪の市街地に紛れて、小型のビルより高い木が生えていたり、羽田の滑走路脇に樹高100ftくらいの鬱蒼とした森が現れたりすると、正直かなり違和感があります。伊丹の近くにランドマークを増やそうと思って、私は宝塚歌劇場の位置に代用品のホテルを置いているのですが…樹木の密度を中程度(4.0)にセットしたら即、大森林に埋もれて消えました。しかも樹木の方が建物より、極端に背が高いのです。こりゃ少々発育が良すぎますね。
 機上からはっきり木々を見るのは、たいてい空港の近く、つまり都市近郊の場合が多いのですから、本当は街路樹くらいの大きさの方が、よく似合うのではないでしょうか。そこで乱暴ながら、試しに最大樹高を12m程度に抑える改造を行いました。

 フォルダを調べると、FlightGear 3.2.0/data/Models/Treesの中に、各種の木々のacファイルやテクスチャー、視認距離などを定義したxmlファイルが見つかりました。一部の高すぎる木のacファイルを、3Dモデリングソフトで縮小すれば楽勝と思ったのですが、この方法では効果が無く。試行錯誤の末、FlightGear 3.2.0/data/Materials/default/materials.xml の中に、木のサイズが多数書き込まれているのを発見しました。樹高の種類と記載頻度は、次の通りです。
  25m 11例
  20m 16例
  15m 2例
  8m 1例
  2m 2例
 …FlightGearが自動生成する樹木は、やはり圧倒的に背の高い木が多いのです。
ランダム樹木の発生機能は、先ほどのModels フォルダのデータではなく、実際は data/Textures.high/Treesにある8枚の画像から、樹木64種×四季分のテクスチャーを読んでいるようです。そこでmaterials.xmlを編集し、樹高20m以上の木だけを選んで、高さ設定を半分にしてみました。これで絶対当たりだと思ったのに、また効果がなくてがっかり。data/Materials/dds フォルダの中にも materials.xml があるので、同じ加工を行ったのですが、それでもダメでした。

 …意気消沈していたところ、起動画面の「advanced..」ボタンからRenderingオプションを開いて、ふと右下のMaterials file という欄を見たとたん、霊感が湧きました。
 ここに「Materials/default/materials.xml」というパスを書き込んでみたら、大正解。先ほどのファイル書き換えが初めて有効になりまして、大森林が一気に「日本の里山」の雰囲気に変わりました。うれしいです! もちろんカナダやシベリア、アンデス山脈などのフライトをする時は、設定を戻した方が良さそうですけれども…。それではまた。
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なし 無着陸で1万卞庸

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2015-3-8 13:11 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
hideです。
 ロッキードU-2Sで先日、周回航続距離の記録飛行に挑戦しました。東京=高知間に設定した1周1000nmの8の字コースを、無着陸で15時間33分掛けて5周半飛び、5514.1nm(1万212.11辧砲鮹成。飛行距離、滞空時間ともに自己新記録です。

 U-2Sは外観を少々改造し、大幅に計器を追加したものの、エンジン推力と燃料搭載量、機体の空力関係や自重はデフォルトのまま。にも関わらず記録達成時に、燃料はなお3分の2も残っていました。順調に周回を続ければ、更に途方もない記録が出たはずなのですが、何度試みてもFlightGearが十数時間で停止してしまい、パソコンの能力の限界に突き当たっている模様です。残念無念ですが、以下に経緯をご報告します。
(久しぶりに大長文になりましたことを、あらかじめお詫び致します)

●●「現代の航研機」をめざして:
 私は前回、Earthview orbital rendering で衛星軌道並みの広い視界を楽しんでいるうちに、U-2Sの燃料消費量が異様に少ないことに気付きました。高度7万ft台の高高度飛行ですと、伊丹から羽田まで1時間半も掛けて帰ってきて、まだ燃料は9割以上残っています。こんなジェット機は初めてです。うまく使いこなしたら、ことによると無給油で地球半周、いや大改造すれば一周も夢ではないのでは…。

 などと考えながらU-2Sの平面図を眺めると、今更ながら「単座にしては、でっかい飛行機だなあ」と感心します。長大な主翼は約30mもあり、B-17やYS-11とほぼ同じ。主翼のアスペクト比が高く、強めのテーパーが付いている点や、細く短い胴体との組み合わせは、いかにも長距離機のプロポーションで、戦前に東大航空研究所が作った実験機「航研機」の平面形に、意外なほどよく似ています。航研機はご存じの通り、1938年に関東平野の特設コースを29周し、約62時間かけて周回航続距離1万1651.011劼魑録しました。国産機が、FAI公認記録の中で最も値打ちのある「世界記録」を作ったのは、後にも先にもこれ1回です。
 同じころ、米ソ間の北極横断に初めて成功したANT-25(ツポレフ設計)も、平面形が航研機と非常によく似ており。不時着時に目立つよう、主翼を真っ赤に塗っていた点もそっくりです。試しにU-2Sから電子偵察ポッドとアンテナ群を外して、航研機風の赤い主翼とベアメタルの胴体に塗り替えたところ、これがなかなか似合うのです。黒一色の「成層圏の忍者」スタイルもそれなりに精悍ですが、いかにも平和な赤い翼の方が、やはり私は好きです。よーし、この機体で久しぶりに、大飛行に挑戦してみよう。

 しかしFlightGearのU-2Sは、計器がろくに付いていないなど、未完成でもあります。あれこれ改造を加えることになるので、当面は海外へ飛び出したりせず、航研機と同様に周回コースを飛んで、じっくり各種のテストを兼ねて記録に挑むのがベターだろうと思いました。そこでフライトプラン作成サイト「SkyVector」を使って、以下のコースを作りました。実機では地上に計時員を配置する必要もあり、一般的には三角コースにするようですが、私は全長をキリのいい1000ノーティカル・マイル(nm)にしたかったので、試行錯誤の末に、以下のような8の字コースにしました。(針路は磁気方位。どうか投稿画像もご覧下さい)
RJTT羽田空港 
   ▼315度171.8nm
RJNW能登空港
   ▼215度167.5nm
RJOO伊丹空港 
   ▼233度172.3nm
SUC清水VOR
   ▼009度164.4nm
RJOH美保飛行場(米子空港)
   ▼103度185.8nm
NG愛知NDB
   ▼086度138.8nm
RJTT羽田空港
--------------------
   合計 1000.5nm

●●どんな飛び方をするか:
 FlightGearのU-2Sの燃料搭載量は、満タンで3520Lbs(ポンド)つまり586.7gal(ガロン)です。ジェット機の巡航高度は地上との気温差が大きく、燃料が膨張・収縮するため、本来は容積ではなく重量で搭載量を計るべきなのですが、本機の internal properties では なぜかポンド/毎時の流量表示が機能せず、ガロン/毎時しか得られないため、以下の燃料計算に関しては、すべてガロンを使います。
 試しに地上で燃料流量を計ってみると、毎時234galも消費しており、満タンで1時間半保たない計算です。実際の飛行結果と合わないので、取りあえず高度別にエンジン全開時の流量を計ってみました。
  海面高度 234gal/h
  10000ft 175gal/h
  20000ft 130gal/h
  30000ft 87.19gal/h
  40000ft 54.8823Lbs/h
  50000ft 35.195gal/h
  55000ft 29.1989gal/h
  60000ft 22.3851gal/h
  65000ft 16.8085gal/h
  70000ft 13.4700gal/h
  75000ft 10.7006gal/h
…というわけで、高度を上げると劇的に流量が減り、7万5000ftでは地上の4.6%になります。酸素濃度が下がった分、燃やせる燃料が減るからでしょうね。internal properties で計ってみると、高度7万7000ftの推力は701Lbsで、定格推力1万9000Lbsの3.7%しか出ていませんでした(初期の実機も7%だったそうです)。ただし高空では、推力減少による指示対気速度の低下より、空気抵抗の減少による真対気速度の増加の方がかなり多いので、やはり出来るだけ高度を上げて飛んだ方が良さそうです。(後の話ですが、最終的には燃料搭載量が100〜75%程度の場合、高度7万7000ftから7万7500ftあたりがベストに思えました)
 本機の性能ファイルを開いてみますと、エンジンの項目に「tsfc="0.073"」と書いてあります。これは1時間あたりの燃料消費量(kg/h)を推力(kgf)で割った燃料消費率(と言ってもマイレージではなく、エンジン単体のエネルギー効率)を表す数値で、FlightGearの他機と比べますと次の通りです。
・軍用機
  F-104 0.95
  F-14 0.55
  U-2S 0.073■
・旅客機
  707 0.7〜0.8
  CRJ700 0.394
  A380  0.2
 機体の用途や開発時期によって、ジェットエンジンの効率には大きな差がありますが、U-2Sの驚異的な航続力の一番の要因は、エンジンの性能と考えてもよさそうです。

 航続力を最大にするには、本当は高度と迎角(速度)別の揚抗比について十分理解しなくてはならないようですが、大づかみには燃料消費に従って高度を上げると、距離が伸びるとされます。そこでRoute Manager とエディタを使って、先ほどの1000nm周回コースを1周するたびに3000ftずつ高度を上げる、10周分のフライトプランを書きました。地球半周に近い距離のため、当然GPS航法で自動操縦になりますが、1周ごとに高度が変われば周回数を間違う恐れもなく、我ながらいいアイディアだと思いました。
 ところが、このスクリプトにはウェイポイントが63個もあり、サイズは17KB(449行)です。FlightGearにロードすると異常終了してしまうため、結局は高度固定で4周分に変更しました。これでも12時間近くノータッチで飛べますから、寝たり起きたり働いたりの合間に、「Jump to」機能を使って出発地点近くのウェイポイントに目標を設定変更すれば、連続して何周でも飛べるはずです。

●●長距離実験機に改造する:
 機体の改造にも着手し、まず後席を設けて副操縦士を乗せました。昔はひたすら「単独飛行が偉い!」と思っていましたが、ちと心境が変化しまして、近年はボイジャー号のディック・ルータンとジーナ・イェーガーや、ロッキード・シリウス水上機のリンドバーグ夫妻のように、長距離は交代で操縦した方が自然だし楽しかろう、と思うようになった次第です。
 書店で見つけた「航空ファン」の一昨年5月号に、アメリカ空軍が5機保有する複座練習機TU-2Sが紹介されていました。正規のコクピットの直後に、ラクダのコブみたいに1段高くなった教官席を設けた、極めて視界が良さそうな構造です。最初はこれを真似たのですが、胴体の成型が相当やっかいなのと、かなり抵抗が大きく見えるスタイルですので、途中から後席を胴体埋め込み式に変更しました。これも開閉式風防の改造などに手間取りましたが、機体工作のノウハウを学ぶ貴重なチャンスになりました。

 続いて計器類を追加します。デフォルトでは姿勢・速度・高度の3個しかありませんので、ピラタスPC-9M改をベースに、航法計器やエンジン関係、無線パネル、ギアやフラップ指示器などを大幅に移植。このうち姿勢計に組み込まれたグライドパス指針は、なぜかU-2Sでは作動しませんでしたので、新たにクロスポインタ指示器(針が十文字に付いている、旧式のILS指示器)を設けました。
 苦心したのはデジタル計器類です。以前から使っているセスナ172用DMEは3ケタですので、本来、近距離では小数点以下1ケタまで表示し、100nmを超すと整数部のみに切り替わるはずですが、FlightGearのものは浮動小数点ではなく、単に100nmのケタが非表示のため、例えば123nmと23nmの区別が付かず、極めて不便でした。今回は懸案の4ケタ表示への改造に成功した上、ホットスポット(クリッカブル・ポイント)の作り方も分かったため、無効になっていたチャンネル切り替え機能を復活し、ぐっと実用的になりました。さらに計器盤の頂点に、無線パネルの液晶表示部を流用したデジタル表示部を設け、トータライザ(燃料総量計)と燃料流量計、磁気方位並びに真方位のコンパスとして利用。これも非常に便利です。

 細かいところでは、フラップ指示器を改造してスポイラー指示器も新設。U-2Sは空気抵抗が小さく、アプローチ中はフラップとスポイラーを細かく調節する必要がありますが、作動段数が多いこともあって、今どういう状態なのか時々分からなくなるため、常に監視できるようにしました。3車輪用のギアポジション表示器も、タンデム2輪式に合わせて改造。これら補助的な機器を含め、計器類は視点の移動操作なしに確認できるよう、すべてデフォルトのコクピット正面視界内に配置してあります。つまりジョイスティックのグリップ中央ボタン(視界中央に設定)を親指で押せば、いつでも瞬時に全計器が見えるわけです。

●●天測にも対応し、「信天翁」号は準備万端:
 最後の最後に、機首に半透明のドームを設けてフライト・コードラント(自作の航空四分儀。現在は偏流計機能も合体)を搭載し、toshiさんに教わったカーソル微動用のmice.xmlを組み込みました。これでいざとなれば天文航法も可能です。まぁ使う機会は正直、あまり無いかも知れませんが…初期のU-2実機だって偏流計と六分儀を装備して、せっせと天測していたんですから、私が搭載しない手はありません(^^;)。

 あとは電子偵察ポッドを外した分、自重を若干減らすべきかと思いましたが、これは後回し。一応長距離が飛べる機体になったので、熟成テストを兼ねた周回記録飛行に取り掛かることにしました。しかしその前に…夜間着陸に備えて着陸灯を強化すべきかな。せめて、ILS進入のリフレッシュ訓練をやっておかないと。まてよ、シーナリー2.0のデータを混在させて以来、チャート代わりのAtlasは、標準倍率以上にズームアップ出来ないんだった。ILS周波数や滑走路の方位は読めないから、Atlas画面表示専用に、完全デフォルトの旧版シーナリーフォルダも全世界分、複写して作り直さなきゃ。
 …などと思わぬ雑用がドタバタ降り掛かった末、ようやくフライトの運びになりました。ご紹介を忘れておりましたが、改造U-2Sの機首には「信天翁」という愛称を記入しました。この機体は、偉大なる航続力と上昇力を持っていますが、地上に戻った時は両翼のポゴ(補助輪)が外れているため、タキシングは非常に不器用です。かの長大な翼を持つアホウドリもまた、偉大なる海洋飛行家であると同時に地上滑走が下手くそで、どことなく本機に似ていることから、ご尊名を(ただし漢字で)拝借することにしました。

●●未知の滞空時間と航続距離に挑む:
 この時点でv3.4が出ましたので、慌ただしくインストールして動作確認。3.2に比べても、ますます軽くなった感があり、ありがたい限りです。さっそく羽田でU-2S改の簡単なテスト飛行。オートパイロットはスムーズに作動し、久しぶりのILS進入もうまく行きまして、強い西風の中を34Lに着陸。すぐ右折してJAL格納庫前に停めました。この機体は60ノット前後で接地するため、ごく短距離で停止します。まずは快調です。

 最初の挑戦は休日前夜の夜中に、リアルタイム設定で雨の羽田を出発しました。燃料は満タン3520Lbs、つまり586.7galを搭載。地表190度16ノットの風、30000ftは225度22ノットです。
 フライトプランをロードしてエンジン始動。JSTの0143時に離陸し、いったん空港から6nm南下して反転して飛行コースに乗り、手動操縦のままぐんぐん上昇に移ります。U-2Sの上昇力は強力で、昇降計に感度4分の1の自作指針を追加したのですが、低空では短時間ならフルスケール(1万6000ft/min)を振り切るほどです。2万2000ftからオートパイロットを使い、毎分5000ftで上昇を続けました。
 この上昇率のままうっかり放置したところ、離陸から9分経った時点で高度4万4000ftを通過中、緩やかに失速を起こしましたが、ごくわずかに機首を下げて再加速しました。ウィングスパンが長いためでしょうか、実にありがたい飛行特性です。さっそく上昇率を2000ftに落としておきました。0151時、離陸後13分で早くも5万ft突破。燃料消費率は毎時38galまで低下し、残量は567.2gal。ただいま149KIAS(358KTAS)で快翔しており、第一旋回点・能登半島への半分まで来ました。外は星空です…。

 …こんな調子で順調に1周目を終了。この日使っていたフライトプランは、高度指定が7万2000ftだったのですが、手動で7万7000ftまで上昇すると目に見えて燃料流量が改善したため、新たに7万7000ft指定のフライトプランを書き、2周目に入る地点で切り替えました。ところが大事件発生。ロードしたとたん画面が真っ暗になり、FlightGearが異常終了したのです。3時間9分のフライトが水の泡、茫然自失でした。

●●再挑戦・再失敗・でも新記録:
 クソッと思って、直ちに7万7000ftのフライトプランを読み込み、やり直し。現実世界の0521時に、暗い羽田から再離陸して、仮眠を交えながら正午過ぎまで快調に列島を周回飛行。3周目に能登半島の第一旋回点を通過する時、あと何分か経てば、航続距離の自己記録を更新することに気が付きました。あれは2010年1月、西回り世界一周の終盤で、カリフォルニア州オークランド=ホノルル間の2208nmを、ピラタスPC7改に増槽を追加して飛んだ時のこと。速度は遅く上昇力も少なく、パソコンも不安定でしたが、自分で編み出した地磁気俯角航法を使った挑戦は、ロマンたっぷりでした。しかし今回も、ここに来てちょっとパソコンが重い感じです…なぜだろう。
 夕刻、離陸から順調に12時間が経過。4周目の米子空港の手前で、重大決心をしました。そろそろ準備した全ウェイポイントを使い切るため、フライトプランの「巻き戻し」が必要です。具体的には「Jump to」キーを使って、針路ターゲットを1周目の同じウェイポイントに戻してやるのです。前日の異常終了が頭にあるのでハラハラしましたが、見事に成功。よかったよかった!

 しかし5周目に、思わぬ異常を発見。Cドライブには少なくとも、まだ20GBは空きがあったはずなのに、「残りわずか」の警告が出ました。残量グラフが赤に変わり、いつの間にか1.5GBまで減っています。さらに6周目の20時過ぎ、今度はメモリー不足の警告が出たため、残念ですがAtlasを停止。FlightGearの設定も変えて負荷を減らし、外付け画面にしている32インチテレビを消して、内蔵液晶のみに切り替えました。何が起きているのか分からないまま、ともかく続航。2054時、土佐清水のVORを通過時に念のため、燃料残量や速度その他、詳しい記録を取っておき、食事のため小一時間席を空けたところ、その間にFlightGearは異常終了してしまいました。ああ、絶句!!

 少なくとも、羽田〜6周目の土佐清水までの15時間33分に5514.1nm飛んだ、と言うことだけは確認できました。最低目標だった、戦前の航研機のレコードにも及びませんでしたが、一方ではともかく航続1万劼鯑庸砲靴董飛行時間でも過去の経験を超えたわけです。悔しくてたまりませんが、さほど空しくはなく。ちょっと胸を張れる気もする、複雑な気分でした。このままでは、終わらないぞ…。

●●いったい何が、メモリーを食っているのか:
 toshiさんのご指摘により、FlightGearがtempファイル設定なしで起動可能になり、しかもログファイル一新で非常に軽くなったので、3度目の周回飛行に挑戦しました。しかしこの時は、なぜか Route Managerにフライトプランをロード、或いはセーブしようとすると異常終了したため、やむを得ず全コースを4周分、手動入力して離陸。Atlasもリアルウエザーも使わずメモリー節約に努め、しばらくは快調でした。
 ところが、離陸20分後には物理メモリー使用45%、コミットチャージ30%だったのに、2時間後の松山上空では、物理メモリー使用72%、コミットチャージ46%くらいまで悪化。Cドライブの容量もいつの間にか、テンポラリー・ファイルか何かに7GBも食われていました。これでは距離が伸びないと判断し、計画を放棄して広島に緊急着陸。大容量の外付けHDDに、tempファイルを作るよう設定しました。ところが実験してみると、tempは起動ドライブ以外には置くことが出来ませんでした。残念です。
 こうなるとCドライブ自体を大きくするしか、方法はなさそうです。幸いDドライブには、シーナリー2.0の全世界展開済みバックアップ(!)が置いてあったので、さっそく消して80GBあまり確保し、残るコンテンツを一度、すべて外付けHDDに待避。パーティションを変更して、Cドライブを約160GBに設定しました。これで空きスペースは一気に100GB程度まで増えたことになります。

 それにしても一体どんなデータが、大量のメモリーやHDDを食っているのでしょう。飛行ログでしょうか。しかし設定を調べたところ、フライトリコーダーは全項目でオフになっています。ただしInstant Replay は有効ですので、FlightGearが勝手に一定の記録を取っており、飛行時間が長くなるとともに、常識外れのサイズを持った一時ファイルに成長している、とも考えることが出来ます。もしそうであるなら、私は動画を再生することはほとんど無く、画面コピーと自分のメモがあれば十分ですので、記録の書き込みを停止したいところですが、方法が分かりません。
 あれこれ調べた末、C:/FlightGear 3.4.0/data/Aircraft/Generic/flightrecorder というフォルダを発見したので、思い切って無効にしようと思いリネームしましたが、果たして結果は!?

 3回目の挑戦では、Route Managerのロード/セーブ機能が正常に戻っており、幸先がいいなと思ったのも空しく、結論から言えばやはり異常終了をしました。またHDDやメモリーの使用量も減りませんでした。
 夜半に離陸して高度を取ってから仮眠し、翌日午前中に様子を見ると、最初は物理メモリーがほぼ満杯で非常に重かったのですが、画面表示を保存(私は常にプリントスクリーン機能を使用)したところ、スワップが利いたようでHDDが動き、物理メモリー使用量が80%まで減って、正常に操作できるようになりました。メモリーは再び減り続けましたが、どうやらパソコンに操作を加えるたびにスワップが利くようです。しかし長時間放置したままですと、果たしてどうなるのでしょうか。
 各種の記録を取って、フライトプランの「書き戻し」も無事に終え、仕事に出かけた時は、かなり希望が持てると思いました。しかし夜中に帰宅してみると、何とパソコンが休止状態になっており仰天。スイッチを入れると、一応は飛行中のFlightGear画面を再現しましたが、やはりメモリー不足の警告が出ていて、操作不能のまま間もなく異常終了してしまいました。Cドライブの空き領域は今回、92.7GBも残されており、オートパイロット任せで放置した場合は、うまくスワップに利用されないようです。ちなみに私のパソコンの仕様では、確かメモリー搭載量は現在の8GBが最大値です。
     ●
 とまあ、こういう次第なのですが。長時間飛行に伴い、メモリーが一杯になる危機をクリアする方法は無いものでしょうか。もし解決法が見つかれば、U-2S改の滞空時間が伸びるだけでなく、ボイジャーやグローバルフライヤーの数日に及ぶ飛行を再現したり、成層圏気球を使いジェット気流に乗って太平洋横断を企てるなど、FlightGearの持つ潜在的な可能性が、ますます大きく広がると思うのです。
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なし Re: 新旧のシーナリーを併用する

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toshi  長老   投稿数: 1077
hideさん、こんばんは。
toshiです。

5234531.stgや5234531.btg.gzといったタイルファイルのインデックス番号(tile index または bucket indexと呼ばれます)についての話題です。

引用:
  ■e139n35 フォルダの中身:      北
  5234552.btg.gz 5234553.btg.gz 5234554.btg.gz 5234555.btg.gz
  5234544.btg.gz 5234545.btg.gz 5234546.btg.gz 5234547.btg.gz
  5234536.btg.gz 5234537.btg.gz 5234538.btg.gz 5234539.btg.gz
西5234528.btg.gz 5234529.btg.gz 5234530.btg.gz 5234531.btg.gz東
  5234520.btg.gz 5234521.btg.gz 5234522.btg.gz 5234523.btg.gz
  5234512.btg.gz 5234513.btg.gz 5234514.btg.gz 5234515.btg.gz
  5234504.btg.gz←芦ノ湖を含む    5234506.btg.gz 5234507.btg.gz
  5234496.btg.gz             南      ↑      5234499.btg.gz
                                三浦半島

ある場所のtile indexを確認したい場合には、mapserverの地図を使うのが便利で簡単です。

SDSU / OSGeo / FlightGear Landcover Database Mapserver
http://mapserver.flightgear.org/

1. 画面上半分の地図をクリックして見たい場所に移動するか、下半分の表の1行目または2行目に見たい場所の情報を入力します。
たとえば、RJTTなら
Airport code - OpenLayers: ICAO: RJTT
と入力して[ICAO]ボタンをクリックします。

2. ブラウザ全体に地図が表示されるので、画面右側の+をクリックし、下から2番目の
FG Scenery buckets
にチェックを入れます。

引用:
数字の命名法則自体はナゾのまま。従ってファイル名だけを見て、地球規模で自分が欲しい場所のタイルを見つけることは、まだ無理です。命名の法則をご存じの方は、どうか教えてください。

Tile indexの命名規則を調べてみましたところ、英語wikiの
http://wiki.flightgear.org/Tile_Index_Scheme
および、SimGearのソースコード
http://sourceforge.net/p/flightgear/simgear/ci/next/tree/simgear/bucket/newbucket.cxx
の2つの情報でほぼ理解できました。

隣り合うタイルのindexが飛び飛びに見えるのは、緯度経度を2進数にして、さらに10進数に戻していることに起因しています。

以下、RJTTを具体例として、タイルのindexが5234531になることを計算で求めます。
※南半球の場合や西経の場合はマイナスの緯度経度で表すのですが、ちょっと計算方法が異なるところがあるため、説明は割愛します。

先ほどのmapserverの地図でも分かるように、1つのタイルは横長の長方形になっていて、日本のような中緯度の地域のタイルの大きさは、
縦(緯度方向) 0.125度
横(経度方向) 0.25度
です。

横幅については、wikiに表があって、緯度に応じて0.125〜360度の間で離散的に変化します。

また、長方形の左下の緯度と経度をタイルの基準点とし、基準点に基づいてindexを計算します。
RJTT(N35.549、E139.788)を含むタイルの基準点は
緯度35.500、経度139.750
になります。

さらに、基準点の緯度経度を整数部分と小数部分に分け、小数部分をタイルの大きさで割り算をします。
lat=35
y=0.500/0.125=4 (yは0〜7の整数)
lon=139
x=0.750/0.25=3 (xは0〜3の整数、低緯度では0〜7の整数)

最後に、次の計算をするとindexが求まります。

tile index = (lon+180)*2^14 + (lat+90)*2^6 + y*2^3 + x
=(139+180)*16384 + (35+90)*64 + 4*8 + 3
= 5234531

計算は以上ですが、2進数を使って書き下してみると、上の式の2のべき乗の意味合いが明瞭になります。
10進数と2進数の変換は、windows標準添付の電卓(関数電卓表示)でも簡単にできます。

      10進数, 2進数
lon+180: 319, 100111111 (9bit)
lat+90:  125, 01111101 (8bit)
y:         4, 100 (3bit)
x:         3, 011 (3bit)

lon+180(9bit)、lat+90(8bit)、y(3bit)、x(3bit)の順に2進数を並べると
100111111 01111101 100 011

これを10進数に変換すると
5234531
となり、tile indexが得られていることが分かります。

tile indexから緯度経度を逆算する場合は、2進数で考えた方が分かりやすいと思います。
左右のtile indexが1つずつ増えるのに対し、上下のtile indexが8つずつ増えるのも、このためです。

長くなりましたが、以上です。
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なし Re: 新旧のシーナリーを併用する

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2015-3-23 1:32 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
toshiさん、こんばんは。hideです。
 タイルファイルのインデックス番号について、ご教示をありがとうございました。ヘリの操縦に熱中していた昨年7月、一体どういう表記ルールになっているのだろう、という疑問を書かせて頂いて以来、まったく見当が付きませんでしたので、とうとう命名法則が分かる日が来たことに感銘を受けています(^^)。

 番号の生成は非常に手の込んだ方法ですので、なぜここまで手間を掛けるのか、とても不思議に思いました。以下の推論が正しいかどうか自信はありませんが…取りあえず、次のように考えています。
 地球の表面を緯度経度でそれぞれ、ご指摘の最小8分の1度(7.5分角)まで分割すると、最大で180×360×8^2個のタイルを区別する命名法が必要になりますね。その場合、タイルの個数は7ケタ(10進法)の数になりますが、通常の「北緯南緯・東経西経」を並べる表記法では、小数点を省略したり、南緯や西経のマイナス記号の代わりに360度表記を使っても、数値は12ケタになってしまいます。しかしご案内の方法ですと、緯度と経度の両方を、必要とする精度を維持した上で1個の数字にまとめ、サイズを7ケタに収めることが出来ます。考えてみると、これはものすごい圧縮効果ですね。

 なぜこんな劇的な圧縮が可能になるのか、済みません…私はきちんと原理を理解していません。が、多分タイルの横幅が「緯度に応じて0.125〜360度の間で離散的に変化」することと、緯度経度の「小数部分をタイルの大きさで割り算」すること、あたりがキモかなと思っています。いずれにしましても、FlightGearの開発が始まった当時は、パソコンの性能限界か何かの理由により、インデックス番号をファイル管理上、8ケタ以内に抑えたい切実な事情があって、こういう計算法・表記法を選んだのだろうと想像しています。

 ユーザーの立場からは、あるインデックス番号がどこなのか、或いはその逆が迅速に知りたいわけですが、今回 mapserver 地図の利用法を教えて頂き、非常に助かりました。現状では軽い旧シーナリーを常用し、必要に応じて一部分だけ、高精細なシーナリー2.0のタイルに差し替えるのがベターではないかと思いますが、これまでは目的のタイルを特定するため、インデックス番号の一覧表を4列のマトリクスに書き出したり、実際に1枚待避させてはUFOで確認するなど、結構苦労しました。お陰様で、それも過去のお話です(^^)/。
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なし Re: Re: 新旧のシーナリーを併用する

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2015-6-29 22:27
toshi  長老   投稿数: 1077
hideさん、こんばんは。
toshiです。

すみません。
hideさんが数日前に投稿した削除依頼の記事を、消してしまいました。

その親投稿のspam記事を削除したら、hideさんの削除依頼の記事も一緒に消えてしまったようです。

今後は、spamを削除する際には、投稿ツリーも注意するようにしますので、何卒ご容赦下さい。。
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なし Re: Re: 新旧のシーナリーを併用する

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2015-7-1 0:33
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 568
toshiさん、hideです。どうもお手数をお掛けしました。
 外国のサイトに誘導するのが目的らしいスパム投稿(2015-6-26 23:34 付)に、さっそくご対応頂き大変ありがとうございます。子投稿が消える可能性ですが、削除などのお願いは、独立した書き込みにする方がベターかも知れませんね。勉強になりました。
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なし Re: Re: Re: 新旧のシーナリーを併用する

msg# 1.6.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.2.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2017-3-1 23:40 | 最終変更
toshi  長老   投稿数: 1077
hideさん、皆さん、こんばんは。
toshiです。

2015-3-21付の投稿記事「Re: 新旧のシーナリーを併用する」で5234531.stgや5234531.btg.gzといったタイルファイルのインデックス番号を調べるにはmapserverの地図を使うのが便利で簡単です、と書きました。

当時紹介した
http://mapserver.flightgear.org/
は、その後サービスを休止してアクセスできない状態になってしまったのですが、他の代替手段を2つご紹介します。

1. http://mapserver.mgras.net/
旧mapsererのバックアップサーバとして今も稼働しています。
帯域制限があるそうですが[1]、2015-3-21付の投稿記事「Re: 新旧のシーナリーを併用する」でご紹介した方法でインデックス番号を地図上で確認することもできますし、vmap0やcsなどのshapefileも
http://mapserver.mgras.net/shpdl/
から入手できるので、旧mapserverにアクセスできなくて困っていたシーナリー開発者の方には大変有用なのではないかと思います。

2. https://scenery.flightgear.org/map/?z=10&lat=35.5&lon=140
インデックス番号を地図上で単に確認する使い方であれば、こちらのURLの方が軽くて良いでしょう。
FlightGear Scenery Website https://scenery.flightgear.org/ トップページから Statistics > Coverage をたどるとブラウザ画面内に表示される地図に、RJTT羽田空港付近が表示されるように緯度経度とズームを付加したURLになります。
マウスカーソルを移動すると、画面左下に表示されている#5234531といったタイル番号と経度と緯度が変化するのが確認できると思います
1つのタイルファイルが一画面に収まらない程度までさらに拡大すると、TerraSyncと同期した最新のオブジェクトの位置が地図上に表示され、さらにオブジェクトの記号をクリックするとそのオブジェクトの詳細な情報を調べることもできます。

参考
[1] 2016-11-08 13:19:43
Re: [Flightgear-devel] FSWeekend Discussion Minutes
https://sourceforge.net/p/flightgear/mailman/message/35478539/
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