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手探り航法・旅日記(その2)

  • このフォーラムに新しいトピックを立てることはできません
  • このフォーラムではゲスト投稿が禁止されています
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 .2 .3 | 投稿日時 2008-7-7 21:53
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 「手探り航法・旅日記」に追加を書こうとしましたところ、以下のようなエラーメッセージが出まして、
トピックが開きませんでした。
 Fatal error: Allowed memory size of 8388608 bytes exhausted (tried to allocate 19456 bytes) in
/home/flightgear/www/kernel/block.php on line 741

 これは何でしょうね。原因は分かりませんが、皆さんのパソコンからは、ちゃんと読めるのでしょうか?
書き込みの物理的なサイズが、少々大きくなり過ぎたのではないかと思い、トピック新設も解禁されました
ので、この際「その2」を開かせて頂くことにしました。どうぞ引き続き、よろしくお願い致します。

     ○

 今回は、新しい「ブロンコ改」を作ってみました。
南米に渡って以来、VORが正常に受信できない問題が多発しましたが、これはFlightGear1.0.0と、旧バージョン
のOV10(06年6月公開)をもとに作ったブロンコ改の、相性の問題も絡むようです。そこで昨年5月公開された
現行OV10のうち、航法計器が見やすいUSAFE仕様機を土台にして、後継機の開発・テストを始めました。

●より遠くへ、より高速で:
 私が欲しい飛行機は、「視界が良く、どの空港も降りられる小型機だが、なるべく高速で、航法計器はフルセ
ットあり、しかも見やすいデザイン。満タンでは、サンフランシスコ=ホノルル間(約2100nm)の太平洋横断が
可能。軽負荷では操縦が楽で、気軽に観光フライトができる」という、欲張ったものです(^^;)。
 旧ブロンコ改は、これらのほとんどを満たしましたが、航続距離は約1600nmしかありません。これでも大抵の
用は足りるのですが、西海岸=ハワイ間を飛ぶには、向かい風も考えるとスペック上、2400nmくらいの航続力が
必要です。また巡航速度(旧ブロンコ改は240Kt)は、もちろん速いほど楽ですから、出来れば270Ktくらい欲し
いと思いました。
 航続力と速度を伸ばすのは難しくありませんが、操縦・安定性にどう響くか心配です。また航法計器関係は、
新ブロンコで基本設計が変わりましたので、手探りでやり直すことになります。あれこれ工夫して、概ね以下の
ような改造を加えました。

【民間機への改装と、視界改良】
 ・機銃4挺と爆弾類、コクピットの照準器を撤去。
 ・パイロットの服装も変更。
 このあたりは、サクサクです。兵装を外したものの、搭載ラックは今回、補助タンク用に全部残しておきまし
た。また視界向上のため、風防のワイパーや、パネル上のダミー操作盤の一部を消そうとしましたら、風防正面
のピラー2本が、いっしょに消えてしまいました。これは想定外でしたが…非常にすっきりしたので、一体成形
の前面風防に取り替えたと想定して、このままとしました。
 現行バージョンから、コクピットにパイロット人形が乗りました。USAFE機の場合、飛行服はオリーブ色です
が、オレンジに変更して、明るい雰囲気にしました。

【飛行性能などの向上】
 ・起動時に、勝手にスモークが出るバグをフィックス。
 ・純正エンジンの推力1600Lbsを、2400Lbsに増強。(旧ブロンコ改は2000Lbsでした)
 ・機体を約600Lbs軽量化しました。

【燃料搭載量を大幅アップ】
 ・機内メインタンクを、純正の2000Lbsから、3000Lbsへ拡張。
 ・3000Lbs入り補助タンクを、最大で3本搭載。
 ・これに合わせて、燃料計を修正。また補助タンク専用の燃料計を増設。
 補助タンクには、あれこれ苦心しました。現行ブロンコには「OV10メニュー」が新設され、爆弾類や空挺隊員
の有無を選択できます。この機能を生かして、補助タンクの搭載本数を自由に選び、かつ補助タンク全体の燃料
総量を、専用の燃料計に表示したいと思いました。
 燃料計の増設は、パスや表示スケールの変更だけですから、簡単です。しかし私の知識では、複数の補助タン
クの容量を合算して、一つの燃料計に表示することは出来ません。このためプログラム上は、機体中央のタンク
1本に、9000Lbsの全量を詰め込んで、残る補助タンク2本はダミーとしました。いずれのタンクも、1本ずつ
捨てることができます。短距離を軽負荷で飛ぶ場合は、起動直後に補助タンクを外したり、搭載量を減らすこと
になります。

【航法装置の改良】
 ・BDHIを見やすい場所に移設し、デザインを改良。
 ・NAV1/ILS専用コース指示器を、NAV2用VOR指示器に設定変更。
 パネル下段中央のBDHI(HSIによく似た、コンパス兼VOR・NDB・TACAN指示器)を見やすくするため、最上部に
移して拡大しました。またDMEのデジタル表示は、BDHIの盤面上にあるため、しばしばVORやNDB指針と重なって、
非常に読みにくいのが欠点。さらにADF指針には、局方位を180度逆に表示するバグがあることが分かりました。
いずれの問題も、もし指針が画像ファイルでしたら、描き直せばいいのですが、あいにく指針の形状はacファイ
ルで定義されており、私には修正できません。
 そこでADFの逆転はそのままとして、DMEのデジタル数字部の白黒表示を反転し、各指針の透過率を半透明に
変更して、指針とDME表示が重なっても、はっきり読み取れるようにしました。

 本機には、ILS進入用のクロスポインタ指示器(ローカライザとグライドパスの指針が、十文字になる計器)
が独立して設けられていますが、これはNAV1のみに対応しており、一度に一つのVOR・ILSしか受信できません。
そこでこの指示器をNAV2に割り当てました。これで二つのVORを同時に受信したり、空港VORとILSを別々に受け
ることが可能になりました。(ILSはDMEに表示されないので、この機能は便利です)

 …さてテストを兼ねて、アルゼンチンのブエノスアイレスまで、約630nmの飛行に挑みます。

■新ブロンコ改で、ブエノスアイレスへ■
 フライトプランをお目に掛けます。

◎ITAIPU空港(SGIB)25.24.28S-54.37.09W
偏差=偏西14.6度
   ▼158度(磁気173度)21nm
◎CATARATAS DEL IGUAZ空港(SBFI、VOR112.10)25.44.15S-54.28.22W
(偏西14度)(FlightGear=14.65度)
   ▼219度(磁気233度)127nm
◎POSADAS空港(SARP、VOR-114.90)27.23.13S-55.58.15W
偏差:FlightGear=12.86度
   ▼208度(219度)276nm
◎NUEVA HESPERIDES国際空港(SUSO、VOR-117.90)31.26.18S-57.59.06W
偏差:FlightGear=9.43度
   ▼188度(磁気196度)205nm
◎Buenos Aires Minisitro Pistarini空港(SAEZ、VOR-115.50)34.49.21S-58.32.08W
偏差:FlightGear=7.18度

●高速ほど、燃費が良くなる機体:
 空母のように背の高い、ITAIPU空港の滑走路端で、出発準備に取り掛かります。
風は110度8Kt程度、雲は6346ftにスキャタード。燃料は機内メインタンクのみ、3000Lbsを満タンにしました。
 VORとeff.nasをセットし、1544時(世界時)にエンジンを始動、離陸。不気味な「ブロンコ大瀑布」を見下ろ
しながらぐんぐん上昇して、近くのCATARATAS DEL IGUAZ空港へ定針しました。(ブロンコ大瀑布は、いささか
ストレートな命名です。「イグノーベル賞」に倣って、偽物のイグアスという意味で「イグ・イグアスの滝」に
しようかとも、思いましたが…どんなもんでしょうかね)(^^;)

 エンジン全開のまま、5000ftで巡航を開始。最高速は267Ktです。以下、速度を変更しながら、eff.nasで瞬間
燃費を測定しました。

・267Kt。燃費1.6737nm/gal。残る航続力は854nm・滞空時間では2時間59分。
・260Kt。1.6555nm/gal。
・250Kt。1.5921nm/gal。
・240Kt。1.5296nm/gal。
・230Kt。1.466nm/gal。
 …ううむ、この飛行機は、速度を出すほど燃費がいいのですね。まるで「タービンエンジンは、全開時に熱効
率がいい」という原則を、馬鹿正直に守っているようで、ターボプロップというより、ターボジェットの感覚で
す。ここで高度を10000ftに上げてみましょう。毎分500ftで緩上昇中、全開速度は260Kt、燃費は1.6670nm/gal
くらいでした。以下は10000ftの水平飛行データです。

・260Kt(全開)。1.7352nm/gal。
・250Kt。1.7056nm/gal
・200Kt。1.3608nm/gal。
・150Kt。1.0245nm/gal
 …やはり高速のほうが、圧倒的に燃費がいいようです。長旅には、ありがたい特性です。低速でロイターする
場合には、どんな速度が最適解なのか、興味があるところです。
 【注:ロイターとは】
 エンジンを絞り、滞空時間を最大にするモード。低速なので航続距離は落ちる。哨戒機など多発機では、一部
のエンジンを止める場合もある。

●航法計器や操縦性をチェック:
 計器の改造は大成功で、針路もDMEも非常に見やすく快適です。ただし現行ブロンコは、オートパイロットの
設計に少し問題があります。まず、磁気方位を使った針路保持が利きません。またVORやILSに乗って飛ぶ、CDI
方位ロックも無効です。つまり自動進入は出来ないのですね。ウイングレベラーと、真方位モードを使った針路
保持は可能ですから、取りあえず不自由はありません。
 いっそのこと、フライトプランを真方位に統一すれば、非常に楽なのですが…あまりリアリティーがないし、
VORや滑走路の表示方位と一致しなくなるので、当面は考えないことにしました。

【針路に、顕著なドリフトが発生】
 VORを使って飛行中、針路が次第に右へそれてしまい、数分ごとに修正が必要でした。VORが示す針路は大圏コ
ースですが、コンパス針路は地球の丸みの影響で、もともと刻々と、VORからずれるものです。しかしこのずれは
計算上、数百nmの飛行では1度内外となります。今回は、相当ずれが大きいのですが、過去に何度も経験してい
ることですので、機体固有の現象ではなく、FlightGear内部の問題だと思われます。電波航法自体は特に問題は
なく、機体は淡々と、ジャングルのような地形の上を進んでいきました。

【高空では、オートパイロットに振動発生】
 150Ktからエンジン全開に戻し、さらに高度を20000ftまで上げてみます。
20000ftをマークしたとたん、高度保持モードでピッチングが始まりました。かなり長周期で、振幅は小さいので
すが、困ったことに段々ひどくなる、いわゆる発散性の振動です。ピッチ保持モードに切り替えて、仰角0.03度
で高度安定に成功。気をよくして、速度を4倍速まで上げてみたところ、今度は突然、強い短周期のローリング
が始まり、2倍速でやっと落ち着きました。

 高速で発生する、オートパイロットの自励振動によるローリングは、大抵の場合、ダッチロールのようにヨー
方向の振動とカップリングしています。従って防止には、ヨーダンパーが有効だと思います。あとで調べますと
現行ブロンコには、旧ブロンコ改にあったヨーダンパーがありません。これじゃ揺れるはずだと、少々腹を立て
てさらに調べると…元々ブロンコには、ヨーダンパーなんてものは、なかったのですね。旧ブロンコ改には、私
がB737を参考に、勝手にダンパーを書き加えていたらしいです。古いお話で、すっかり忘れておりました(^^;)。
このへんは後日、熟成する必要があります。

●海のような大河を越え、ブエノスアイレスに進入:
 計算上の針路と、VORが示す針路の間には、相変わらず20度くらいの誤差があります。受信VORを変えてみま
すと、方位も距離もそれらしくなったので、ことによると、周波数の入力ミスもあったかも。高度を次第に下げ
て、ブエノスアイレスをめざします。

 この日は靄がひどく、11000ftを割ったら眼下にいつの間にか、広大な農地が拡がっていました。その農地を
横切って、時折大きな川が流れています。地図によると、これらはみんな大河・ラプラタ川の、小規模な支流の
ようでした。
 そのうち機体は、大きな川が何本もうねる、広大な荒地に差し掛かりました。川がなければ、砂漠としか言い
ようがなく。たった10nm先に、ブエノスアイレスのVORがあるとは思えない光景に、首をかしげました。Atlasを
見ると、これはラプラタ川の下流部で、川幅はなんと30nmもあり、私は中州の一部分を見ていたのです。中州は
機体の左手で切れていて、その先は大西洋に見えますが…そうではなく。地図によれば、さらに90nmほど下流で
ようやく、巨大な河口(幅275キロ)が開き始めるのです。
 何と馬鹿でかくて、大ざっぱで、偉大な風景。これがアルゼンチンなんですねえ。やがて靄がふわりと晴れる
と、対岸に降ってわいたように、首都ブエノスアイレスの市街地が拡がりました。

 川岸近くの、サン・フレナンド空港を通過。都市圏に入ってみると、大阪くらいの規模がある街でした。何し
ろ空港が10個もあります。着陸地に選んだ、一番大きなミニストロ・ピスタリニ空港のATISを受信すると、聞き
取りにくいものの、発着滑走路はRWY-11だと指示しています。Atlasで滑走路進入点のNDBを選び、受信しながら
高度を下げて、ギアとフラップをダウン。1814時着陸。1819時ランプイン。
 約2時間半の飛行で、約2600Lbsの燃料を消費しました。現地時刻は1519時ですが、ここは南緯35度。冬至を
過ぎたばかりですので、やや太陽が傾いています。地上の気温は15度でした。

●追加した改造点:
 到着後、幾つか気になった点を修正しました。

【エンジン特性を調整】
 今回の飛行では、新ブロンコ改は減速しにくく、以前のモデルよりも少々、アプローチが難しくなったと感じ
ました。エンジン・ファイルを調べますと、tsfcという項目名に数値の変更を発見。これを以前のモデルと同じ
にしたところ、ブロンコの特色である、プロペラを利用したスピードブレーキの効きが回復し、操縦しやすくな
りました。ブロンコは、このブレーキ効果が高いため、うっかりフル・アイドルで進入しますと、低空で前触れ
もなく失速する癖があります。作者さんは、これを嫌って修正したのでしょうが、私は前の設定の方が、ずっと
操縦しやすいと感じています。
【デジタル時計を増設】
 飛行記録をメモしたり、午前・午後の勘違いを防ぐには、デジタルのほうが便利です。そこでB787の時計を、
パネル中央下段に移植し、デザインを少々簡略にしました。以前からあるアナログ時計は、出来ればローカル
タイムに設定したかったのですが、私には無理でした。

●外部燃料を満載…超過重状態で離陸テスト:
 今度のブロンコ改は、全タンクを満タンにすると、12000Lbsも燃料が積めます。計算上は、サンフランシスコ
湾岸からホノルルまで、楽勝でノンストップ飛行ができますが、正規の最大離陸重量を6000Lbsもオーバーします
ので、そもそも離陸できるかどうかが問題です。そこで、ミニストロ・ピスタリニ空港の3000m級の主滑走路を
使って、最大過荷重で離陸テストをしました。
 戦前の、冒険的な長距離記録飛行では、離陸失敗時の停止距離はあまり考えず、滑走路長をいっぱいに使って
機体を持ち上げました。では、浮き上がらない時は、どうするかと言いますと…ダンプバルブ(緊急投棄弁)で
大量の燃料を捨て、最後の瞬間に機体を軽くして離陸し、事故を回避したのです。現代の燃料放出弁は、時間を
掛けて燃料を捨てますが、昔の記録機のダンプバルブは、タンクの底板を一気に抜くような仕掛けだったようで、
燃料を捨てると機体が一瞬、ガソリンの雲に包まれたとも聞きます。(かなり物騒ですね)

 私は、もし機体が浮かなかったら、ダンプバルブの代りに、補助タンクを一気にブン投げることにしまして、
投下スイッチを入れ、スペースキー(引き金)に手を掛けて離陸しました。
 離陸条件は、ほぼ向かい風20Kt。フラップは全開です。さすがに加速には時間が掛かり、国際線のジャンボに
乗った時の、長い長い滑走を思い出しました。しかし結果的には滑走路の半分弱にあたる、約1300mを過ぎた時
点で、あっけらかんと機体が浮きました。速度は約125Ktでした。この搭載量では、少なくとも約2700nmは飛べ
ますが、この離陸ぶりから想像すると、さらに燃料が積めそうです。

●塗装も少し、気分転換を:
 機体の中身が大きく変わったので、塗装もやや変更しました。レジストレーション(機体記号)は、従来の
「J-HIDE」から「J-WIND」に。また現行バージョンから、垂直尾翼のテクスチャーが独立し、リペイントが可能
になりましたので、機体記号と「World Cruise」というロゴを入れてみました。

 国籍の「J」1文字+ローマ字4ケタの機番は、日本で戦前使われたもので、当時はローマ字1文字だけの国籍
表記には、「航空先進国」の香りがあったようです。戦後の「JA+数字4ケタ」より少々誇り高く、おしゃれに
見えますので、私は好んで使っています。現実世界でも幸い「J」1字の国籍表記はまだありません。ただ現行の
各国の国籍表記は、国名の発音と無関係なものが多いので、「JA」はずいぶん、いい割り当てだと思います。

 レジがローマ字ですと、語呂合わせも豊富ですね。コンコルド英国量産機には、当時のBOAC(英国海外航空)
にちなんで、「G-BOAC」とした例がありました。また日本の民間飛行学校には戦前、「J-BAKA」というアブロ
504K練習機が実在し、練習生に結構愛されていたと、何かで読んだ記憶があります。私の「WIND」は、いささか
こじつけですが、「World Instrumental Navigation & Discovery」の略のつもりです。

 では次回、またブエノスアイレスの滑走路で、お目に掛かりましょう。
投票数:62 平均点:4.84
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2008-7-8 4:54
Tat  長老   投稿数: 375
hide さん

php のエラーは、php に割り当てるメモリ 8M を使い切ったという意味です。
つまり php に使用するメモリを 16MB とかにしてやればよいです。
この辺は tetsu さんにお任せしましょう。もっともスレッドが大きくなったから
という話はありますね。

ちなみに、RSS フィードでは旅日記1の最近の書き込みが閲覧できます。hide さんによる HondaJet と滝探検レポートが見たい方はそちらを参照ください。

いずれにしても、「旅日記・その2」でも色んな話を楽しみにしています。

さて、その1の最後のレポートを拝見しました。HondaJet をお試し頂きありがとうございます。あの機体は私が作成し、3Dモデルを helijah に作り替えてもらいました。機体はかなり奇麗に仕上がっていますね。いやいやさすがです。ついでに T-4 の外観も作ってくれないかなぁ....

そんな話はさておき、HondaJet に関する話を少ししておきますね。

HondaJet (JSBSim) 版は開発初期段階ですので、これから熟成させていこうと思います。ただ、フライトモデルに関しては、技術論文をベースにしているため、揚力や抗力に関しては結構正確な値だと思います。ただし、正確な値を入れても実機と同じ挙動にならないのがシミュレータの悲しい差がであります。
エンジンスペックも技術論文やカタログから得られたデータですが、Mach と推力との関係は改善の余地があるでしょう。hide さんのレポートを基に修正し、近々コミットしておきます。

★ HondaJet 最高速度について
水平飛行時の最高速度に大きく影響を与える要因は推力とマッハ数による抗力(CDmach)でしょう。HondaJet の最大速度は 420kt TAS @ 30000ft です。残念ながら論文やカタログスペックから得られた値と推測値とだけでは 337kt TAS @ 30000ft 程度しかだせていないですね。Mach と推力との関係は適当ですので、この辺を変更すれば速度向上が期待できます。推力を少し大きくし、Mach-推力テーブルを修正すればよいでしょう。これで 400kt 程度にしておくといいですね。

そして、CDmach (マッハ数と抗力との関係)のテーブルデータを若干修正して 420kt 程度で頭打ちになるように調整してあげるという感じでしょうか。

なお、FlightGear の世界では 30,000 ft で -45°C(228.15K) です。TAS = 音速@0ft * マッハ数 * √(温度K/地上温度Ksl) ですので、420kt TAS になるには Mach が 0.714 である必要があります。

★ 離着陸距離について
重心位置によりどうとでもなりますね。今の HondaJet は若干後ろ気味な感じがします。燃料タンクの配置や重心設定位置、空力中心との関係を適切に設定すれば実機のデータに近づくと思います。ちなみにフラップは半開が離陸用、全開が着陸用となっています。

まずは最高速を400kt 〜 420kt 程度に修正したものを近々 cvs にコミットしておきますね。ちょっと技術的になってきました。これ以上の話は機体開発のスレッドで行った方が良さそうですね。


あと、ブロンコの ADF の向きですが、これは xml ファイルの修正で何とかなると思いますよ。今度見ておきますね。

では、また
投票数:59 平均点:4.41
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-7-9 19:04 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
Tatさん、いろいろご指摘をありがとうございました。

 その中の、phpとRSSフィールドですが。残念ながら、これらがそれぞれどこにあって、どんなもの
なのか、不勉強で分かりませんでした(^^;)。お時間のあるとき、ご教示を頂けましたら幸いです。

 名機HondaJetは、やはりTatさんの労作なのですね。今後の熟成を、楽しみにしています。ネット
で手に入る情報は、様々な開発段階のスペックが混在しているため、私が引用した速度などのデ
ータは、不正確だったようで済みません。

 FlightGearでは、30000ftの気温が-45°Cだとのご指摘ですが、これはいわゆる標準大気なの
でしょうね(手元に航空宇宙工学便覧がなくて、確認できませんが)。一方、T-4とブロンコの両機に
ついて、エンジン性能の大気密度テーブルを比較しますと、ほぼ同一の値ですが、CDmach値に関
しては、かなり異なった数値になっています。これは、いずれも基本的には、同じ標準データに準拠
しているものの、機体の性能を実機スペックに合わせるため、微調整を加えている、ということです
ね。またまた勉強になりました。(間違った理解でしたら、どうかご指摘下さい)
 となりますと、このテーブルを派手にいじると、ブロンコもコンコルド並みの超高空が飛べるわけで
すね…そんな改造は私も、さすがに気が引けますけれども。

 また離陸距離が、「重心位置次第で、どうにでもなる」というご指摘も、かなり目からウロコでした。
私はこれまでは、機体の総重量に対する揚力の大きさが、ダントツで大きなファクターになるものと
漠然と考えており。機首が上がらなければ、タブを巻けばいいか…と思っていましたが、機体設計を
されるお立場では、まず重心位置を考えるのですね。(確かに紙飛行機でも、翼を曲げる調整だけ
に頼ると揚抗比が悪化し、最後には、収拾がつかなくなってしまいます…)

 またも機体開発にシフトしたお話になりまして、申し訳ありません。Tatさんの「T-4 製作記」に加
えまして、私を含む初心者向けに、空力や操縦性、xmlファイルの読み方などのQ&Aや、雑談を
するトピックがあってもいいかなと、ふと考えています。
投票数:70 平均点:4.86
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-7-10 3:08
Tat  長老   投稿数: 375
hide さん

ご質問内容にわかる範囲で回答しますね。

★RSSについて
RSS はRDF Site Summary(RSS version 1.0) とか Really Simple Syndication(RSS version 2.0) の略です。バージョンによりなぜか頭文字の表す意味が違います。ざっくり言えばサイトの記事ダイジェストやブログの要約です。このフォーラムの RSS feed は、フォーラムページの最初の方に、「このフォーラムのRSSを取得する」とか「フォーラム全体のRSSを取得する」というリンクから取得できます。firefox では問題なく見れます。

★ PHP のエラーについて
このサイトはXOOPS Cubeですが、これは phpという言語で記述されたWeb構築システムです。php のプログラムを動作させるときには利用可能な最大メモリ量をサーバ側の設定ファイルで指定するのですが、このメモリ割り当で量が 8MB と小さいため、「手探り航法・旅日記」のスレッドを読み込む事ができなくなったということです。ちなみに、サーバのどこかにある php.ini というファイルの memory_limit = 8M という行を 16M とか 32M とかに増やせエラーが発生しなくなります。


★FlightGear の気温について
たしか何かのモデルに基づいた気温のはずですが、忘れました。ただ、季節が夏ならほぼ標準大気のはずです。近似計算式は

T = 海抜0での気温(15°C) - 6.5 * 高度(km)

です。30000 ft なら 15 - 6.5 * 30000/3280 ≒ -44.45 です。フライトギア上では -45°Cなので「ほぼ標準大気」です。

★エンジンテーブルとCDmach について
ある状態における最大推力は(ざっくり端折ると)エンジン性能の大気密度テーブルから気圧とマッハ数をキーにして得られた係数との乗算に、その状態でのアイドル推力を付加したものです。エンジン性能の大気密度テーブルやアイドル推力のテーブルは、JSBSim サイトにある Aeromatic というツールで自動生成されたものでして、標準的なジェットエンジンのテーブルです。従って意図的に変更しない限りT-4 でもブロンコでも同じになります。HondaJet は高効率エンジンを利用していますので、このテーブルを変更する必要があるでしょう。

CDmach は造波抗力(衝撃波や高速飛行時に生じる波による抵抗)ですから、機体の形によって変わってきます。


★離陸距離に関して
離陸距離を短くするには、失速速度を小さくすればよいので、揚力を大きくするとか翼面荷重を小さくするというのが重要ですね。実際の飛行機を設計するときは最高速度や離着陸時の安定性、燃費等、色々な事を考慮してこれらの値を決定するのだと思います。

ただ、離陸距離を決定するのはこれらだけではありません。重心位置が前にありすぎると縦方向の安定性が増しすぎるため機首上げをするのに時間が掛かり、なかなか離陸できません。飛行中も機首の上げ下げ難しくなります。これに対して、重心位置が後ろになりすぎると離陸距離は短くなりますが縦方向の安定性が低下し、エレベータ操作に機体が敏感に反応しすぎます。下手をするとひっくり返ってしまうかもしれません。紙飛行機の先端に重りを付けた場合と、真ん中に重りを付けた場合とを想像してみると分かりやすいでしょう。

ちなみに、フライトギア上で機体を設計する際には、揚力や翼面荷重、離陸距離は提示されていることがあります。HondaJet もそうでした。私の場合、重心位置は縦方向の安定性、操作性、燃料切れの時に尻餅しないかなどを先ず考えて調整します。この段階では重心位置は一意に決まらず、ある程度幅があります。その後、離陸距離を合わせるように微調整していきます。HondaJet の場合、まだ離陸距離は合わせてなかったのと、ちょっと重心が後ろすぎるかなとも思っていましたので、少し前に移動すればいいのではと思います。そういう意味で離陸距離は重心位置でどうにでもなるということです。ま、ちょっと言い過ぎでしたが。

引用:
私を含む初心者向けに、空力や操縦性、xmlファイルの読み方などのQ&Aや、雑談をするトピックがあってもいいかなと、ふと考えています。

私も航空力学や操作性は素人なんですが、機体開発を通してある程度は詳しくなりましたので、その辺を共有するのはいいことですね。ここに書き続けるとトピズレ甚だしいので、雑談か、機体開発にトピックを作るようにします。
投票数:68 平均点:4.85
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-7-20 21:22
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
 hideです。Tatさん、先日はRSSとPHP、エンジンテーブルなどについて、ていねいなご教示を大変あり
がとうございました。皆さん3連休は、いかがお過ごしでしょうか。
 私は、少しずつ仕事が入りまして、少々ウォームビズ(?)な気分の毎日です。あまり落ち着かない気分の
書き込みながら、今回は「Calleidas 160」という、風変わりなジェット機に試乗した後、新しいブロンコ改で、
ブエノスアイレスからアンデス山麓のメンドーサまで、アルゼンチンを横断します。

●1960年代の夢が詰まった、豪華な小型ジェット機:
 きょうご紹介しますCalleidas 160は、本サイトでお馴染みの、Helijahさんの「私の格納庫」からダウンロー
ドした新作です。1966年に公表された、リアエンジン3発の超高級ビジネスジェットで、なんと可変後退翼。
最大巡航速度はマッハ2です。
 はて、そんな飛行機あったっけ? とお思いでしょうが…済みません。これはベルギーを代表するマンガ
家、エルジェの長編「タンタンの冒険」シリーズ(1927年〜1976年連載)に登場する、架空機です(^^;)。

 この飛行機が、「タンタン」シリーズの「シドニー行き714便」という巻に登場した1966年というと、B747の
就航まであと6年。コンコルドやボーイング 2707、ロッキード L-2000など、SSTの開発が進められ、航空
の未来がまだ、夢多きバラ色に包まれていたころです。
 Calleidas 160の、作画の基礎になる図面を引いたのは一応、航空機の専門家だそうで、スロッテッド・フ
ラップと、ストレーキ部を含む前縁スラット付きですから、全体のスタイルともども、まだ新鋭機だったB727
をモデルにした感じがします(FlightGear版は単純フラップのみ)。3発エンジンのうち、中央の1発はインテ
ークがありませんが、サイドエンジンのダクトが、それぞれ内側に拡がっており、ここから抽気するようです。
(吸気効率は、かなり悪くなりそうですけれど)
 FlightGear版のパネルは、セスナの計器を拝借しており、大変簡素ですが、一応VORとILSが使えるよう
です。客室は、YS-11のシートなら15席は置けそうですが、8席に抑えたゆったり仕様。FlightGear版は座席
のみの再現で、「d」キーで客室ドアが開閉できます。原作では、カレイダスという大富豪が開発させた自家
用機という設定ですので、かなり大きなテーブルやギャレー、トイレなどもあるようです。

 ついでに…ちょっとだけ、「タンタンの冒険」シリーズのご紹介も。このマンガは大戦をはさんで連載され、
今もなお再販が続き、日本語版も福音館から約20冊出ており、フランス語圏を代表する、冒険コミックの
古典と言えそうです。主人公のタンタンは、中学生くらいの少年で、若いのに著名なフリーランス記者。しか
も車を運転し、飛行機を操縦し、射撃も結構うまいのは、冒険マンガならでは。作者も新聞社出身なので、
時代背景をストーリーにうまく取り入れ、昔のマンガにしては、考証がていねいです。
 タンタンは世界中を駆け回って事件に巻き込まれ、戦後の作品ではアポロより早く月にも訪れて、ギャグ
満載の華麗な冒険や、謎解きを繰り広げました。作中に各種の飛行機が登場しますが、作画はなかなか
リアルです。初期の作品は戦後、ファッションや乗り物などが、時代に合わせてリライトされたのも、今なお
人気が続く理由でしょう。
 エルジェは1938〜39年に、航空マンガも描いています。少年少女が高速長距離機「ストラトネフ H.22」を
操り、さまざまな妨害工作をかわしながら、パリ=ニューヨーク間の懸賞飛行に挑むお話で、いつか福音
館から翻訳が出ないかと、心待ちにしています。このストラトネフは、1934年のフランス製レーサー、コード
ロンC460を、やや大型にしたようなスタイルで、巡航速度は何と1000キロ。ですが、この時代なのでプロ
ペラ機(!)です。まぁアメリカ空軍も、戦後しばらくは、超音速ターボプロップ機の研究をしていましたから、
未来予測としては、デタラメでもありませんね…。

●簡単操作で超音速。ただし安定性が…:
 では、Calleidas 160を飛ばしてみましょう。ブエノスアイレスの、アントニオ・カルロス・ジョンビン空港(SB
GL)RWY-11で離陸準備。風は150度9Kt程度、燃料はデフォルト8000Lbs満タンです。空港VOR(116.50)を
入力し、4段作動のフラップを2段下げ。トリムは中立です。
 滑走を始めますと、定規で引いたような直進性。約16秒後、約230Ktに達したところで離陸。ここで、コン
パス表示が逆になっているバグを発見し、HUDとAtlasに頼る飛行に移行しました。上昇力は猛烈で、機首
を上げて速度を落とし、やっと計器速度250Kt(10000ft以下の制限速度)に合わせた時は、もう17000ftを
突破しており、上昇率毎分5850ft、対地速度321Kt、燃費0.345gal/nmでした。ここで高度保持を20000ftに
セットし、エンジン全開のまま真方位90度で定針。速度はどんどん上がり、約400Ktで自動的に主翼が作
動して、最大後退角(約60度)になります。
 さて、動力性能は素晴らしいのですが。FlightGearの機体は、オートパイロットの高速飛行では、しばしば
ピッチ方向に振動が発生しますね。本機も広いラプラタ川上空を、河口方面に向かったところ、540Ktまで
加速した時点、緩やかにピッチングが始まって、「あーあ、やっぱり!」という気分です。収束する場合もあ
るのですが、困ったことに今回は発散性の振動でして、途中からロールも交じって操縦不能になりました。
空中を、転げ落ちるような格好で高度を失い、こりゃいかん…と、パワーアイドルで200Kt以下に落として、
なんとか180Ktで安定。主翼は自動的に前進し、後退角約15度に戻っていました。
 JSBsimの機体は、降下すると機嫌を直す場合があるので、パワーアイドルのまま毎分6000ftで降下し、
高度10000ftまで下げて、速度をいったん220Ktにしてコースを変更。なおも加速を続けると、670Ktでまた
ピッチングが出ました。オートパイロットをピッチホールドに切り替え、取りあえず解決。最終的には、速度
872Kt、マッハ1.6を記録しましたが、燃費は0.2487nm/galと悪く、進路保持も不安定で、ぎくしゃくと左右に
旋回します。あげくの果てに、FlightGearが突然終了してしまって、さんざんでした。ちなみに、この機体は
超音速でも、かなりの急旋回が可能です。Gメーターも加速度限界も無いので、何とも言えませんが、Gは
すごい値になっていると思います(^^;)。

●YAsimでも、決して安定は良くないようで…:
 フライトモデルをYAsimに切り替えて、再度離陸。今度もピッチ方向が不安定でしたが、何とかピッチホー
ルドでだまして、30000ftで680Kt、マッハ1.7、燃費は0.3387nm/galをマーク。ラプラタ河口に近い、モンテビ
デオ上空まで進出した時点で、早くも燃料が半分に減ったので反転。今度は出力を50%に落としてみたと
ころ速度675Kt、マッハ1.05を維持して、燃費0.49nm/galを記録しました。この状態では5倍速でも安定する
ようですので、この機体はどうやら、低空で高速巡航するのが向いているようです。試しにパワーを25%ま
で落すと470Ktを維持して、燃費は0.95nm/galまで改善しました。しかし癖の強い機体で、このままでは、旅
に使う気分ではありません。
 テスト飛行も、そろそろ堪能しましたので、そのままAtlasに頼って、出発空港へ逆戻り。2000ftくらいで
ファイナルアプローチに入り、手動操作でパスに乗せます。慣れない機体ですので緊張気味です。
 フルフラップ、ギアダウン。正規の進入速度は150Ktですが、余裕を見てパワー25%前後で160Ktを保ち、
計器盤の上端ぎりぎりに滑走路を捉えながら、正規のパスよりやや低く入り、ほぼ完璧にタッチダウン。
燃料の残りは1500Lbsでした。
 最高速マッハ2は、やや大風呂敷ながら。コンコルドと比べると、極めて簡単な操作で超音速飛行ができ
ます。しかし売り物の高速を発揮しますと、航続力はせいぜい600nm程度ではないかと思われます。操縦
安定性にもかなり難があるので、さらに熟成が待たれるところです。まあ、1960年代の香り漂う「夢の飛行
機」を操縦できただけで、よしとしましょう。
 ここでブロンコに乗り換えまして、アンデス山麓の都市メンドーサへ向かいます。

■推測航法の訓練を兼ねて、アルゼンチン横断の旅■
以下はフライトプランです。
◎Buenos Aires Minisitro Pistarini空港(SAEZ、VOR-115.50)34.49.21S-58.32.08W
偏差:FlightGear=偏西6.4度
   ▼316度(磁気323度)161nm(35分)
◎ROSARIO空港(SAAR、VOR-117.30)32.54.14S-60.47.04W
偏差:FlightGear=偏西6.19度
   ▼271度(磁気278度)404nm(1時間30分)
◎PLUMERILLO空港(114.90)32.49.56S-68.47.34W
→南方2nmにMendoza空港(SAMQ)
偏差:FlightGear=偏東1.28度

●さび付いた航法に、少々磨きを掛ける:
 ブエノスアイレスは、350度の風11Kt程度。飛行距離は600nm弱です。搭載燃料にはかなり余裕をみて、
機内タンク4000Lbs、増槽はセンタータンクのみ1000Lbsの、計5000Lbsとしました。
 前回、かなり航法に誤差があったので、かつての推測航法の精度を取り戻そうと、コース計算や風力補
正を慎重に進めました。UTC(協定世界時)1558時、現地時間では正午ごろ離陸し、6nm先でターンして
空港VOR上空に戻り、改めて目的地へ定針する、いわゆるリバーサル・ディパーチュアを実施。風速から
対地速度を出し、中継地の到着予定時刻を算出してメモを取り、高度10000ftで燃料を補助タンクに切り
替えると、ようやくフライトを楽しむ気分になりました。燃費は1.5826nm/galと順調で、眼下はひたすら広大
な耕地が続きます。
 高度保持を掛けると、3倍速ではピッチングが出ますので、ピッチ保持にして、マイナス4.5度で安定。
針路保持は真方位モードですが、VORコースはちょっと右に偏向しています。これは、ラームライン(地図
上での直線・方位一定コース)と、VORが指す大圏コースの差ですので、そのままにして続航。やがて予定
より5分早く、ROSARIO空港の右アビーム(真横)を通過しました。DME測定の距離誤差は7nm。飛行距
離に対し、右に3%程度のずれが出たわけで、いささか大きい気がします。
 気象状況を確認すると、間違って低空の風速を入れたことが分かり、さっそく計算をやり直しました。
ROSARIO空港VORの上空で、再び涙滴型のターンを打って、正確に目的地・PLUMERILLO空港に向けて
定針。ここからは、約400nmの長い航程になります。

●ようやく、合格レベルの航法精度に:
 今使っている新ブロンコ改は、オートパイロット使用中に倍速モードに入れますと、短周期のローリング
が出る場合があります。ウィングレベラーを使うと抑えられますが、5分も飛ぶと、コースが右へ0.5度くら
い、ずれてくるようです。針路保持を真方位モードにして修正し、またレベラーを入れて、4倍速で距離を
稼ぐ…といったくり返しで、安定して飛べることが分かりました。
 VORを、目的地PLUMERILLO空港に切り替え。まだ175nmも離れていますが、断続的にDMEも入ります。
引き続き、計算上の推測航法コースとVORコースは一致しませんが、計算を信じて続航。機体は、コルド
バ南方に拡がる低い山脈を越え、さらに西へ向かいます。やがて補助タンク使用済みの警告灯が点き、
機内タンクに切り替え。燃料の消費に応じて、ピッチ角の調整も頻繁に必要ですので、淡々たる巡航にして
は、結構忙しいフライトです。というわけで、あまり景色も見ずに飛び続けましたが、眼下はひたすら平らな
耕地です。アルゼンチンは、領土面積世界8位の農業国だそうですが、思わず納得の眺めです。

 機内時計(UTC)で1802時、予定より11分早く、PLUMERILLO空港VORの、右アビーム7.7nm付近を
通過しました。推測航法による針路の左右誤差は、飛行距離に対して1.9%。もう一声、小さくできればとは
思いますが、これなら洋上を飛んでも天候が悪くない限り、無線標識のない孤島を狙っても、的を外すこと
のない航法精度です。ここんとこ、航法のタガが緩んでいましたが、ようやく、まずまずの結果が出ました。
 今回のフライトでは、PLUMERILLO空港は航法上の目標点で、実際の着陸地は南方2nmの小飛行場、
メンドーサ空港です。まずPLUMERILLO空港の滑走路に軸線を合わせ、ローアプローチを行った後、再び
増速してやや高度を上げ、メンドーサ空港上空を通過。風下のメンドーサ市街地で反転し、減速して着陸
態勢を整え、ファイナルに入ります。
 …この時、どうも機体が振り子のように、頼りなく動揺するのを感じました。まるで昔のJSBsimに戻った
みたいです。また滑走路に正対し接近を続けると、とても10Ktの横風とは思えないほど、強く機体が流され
ました。このままでは、正常な着陸は困難ですが、横風用滑走路はありません。本来ならダイバート(代替
空港への着陸)をするのでしょうが、そんな準備はしていませんので、無理やり降ろしたところ転覆してしま
い、かなり悔しい思いをしました。
 スイスでも同様の状況で一度しくじっているので、目的地の滑走路が1本の場合は、代替空港を考えてお
くべきなのでしょうね。しかし、ますますフライトプランが煩雑になるので、現実的にはAtlas画面で、最寄り
の空港を探すべきかなとも思います。また横風・強風下の離着陸訓練も、絶えず必要ですね。

 いささか、締まらない終わり方になりましたが…次回はアンデスを越えて、チリに向かいます。

 追伸:機体改造の幅を広げるため、近くAC3Dを購入しようと思っています。すでにダウンロードして試用
中ですが、料金の支払いは、どんな方法でやるのが便利かつ、安全でしょうか。どなたかアドバイスを頂け
ますと幸いです。
投票数:69 平均点:5.07

なし ac3d について

msg# 1.2.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-7-21 2:52
Tat  長老   投稿数: 375
hide さん

ac3d の購入は、www.invis.com からオンラインでカード購入しても大丈夫ですよ。
私もライセンスを購入しましたが、特に問題はありませんでした。

ただ、$79.95 と若干高めなので フリーの Blender も使ってみて、使いやすい方を選ぶ方がいいでしょうね。blender は www.blender.org からダウンロードできます。blender の場合は、ac3d ファイルをインポートして編集し、エキスポートすることになります。

私の場合、blender はあまり直感的な操作方法では無かったので ac3d を購入しました。慣れれば blender の方が面白そうではあるのですけどね。
投票数:69 平均点:4.64

なし Re: ac3d について

msg# 1.2.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-7-27 16:23
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
Tatさん。
 ac3dとblenderの件、大変ありがとうございました。
ac3dのサイトを見ますと、支払い方法は現在invisは見当たらず、PayPalなど二つの支払い手段が
書いてありました。PayPalは日本語で登録が可能ですので、取りあえずこちらに申し込んでみまし
た。ただしカード決済ができるようになるまで、若干時間が掛かりそうです。
 blenderもダウンロードしましたが、なぜかインポートがまだ、うまく行きません。また操作方法が、
いささか五里霧中です(^^;)。ac3dは、若干の日本語マニュアルが見つかりましたので、少しずつ
勉強してみようと思っています。

●「太陽コンパス」の夢:
 3Dオブジェクトが自在に作れるようになれば、あれこれ面白い道具が考えられそうです。
今、漠然と頭の中にあるのは…コンパスが使いにくい極点周辺の飛行に使う、「太陽コンパス」が
開発できないか、ということです。
 南北両極の付近では、磁南極と磁北極がすぐ近くにある関係で、磁気コンパスがうまく使えなくな
ります。また極点から見れば、全ての方角が「南」か「北」になってしまうことや、狭い範囲に経線が
放射状に集中して、方位や経度がコロコロ変わるため、実機でもフライトシムでも、かなりナビゲー
ションの難しい地域です。このためINSやGPSの普及以前、実際の北極越えの航空路では、グリッド
航法という技術が使われたそうです。
 これは北極点を中心とする航空図上に、実際の緯度経度から独立した、便宜上の直交座標(グ
リッド)を描き、この図上の、特定の方向を「北」として指すよう、特別に設定したジャイロコンパスを
使って航法を行うものです。FlightGearでは、こうした特殊なコンパスは使えませんが、実機の世界
では1950年代ごろ、日時計の原理で太陽の方向から針路を読む、太陽コンパスが考案されたこと
があり、これと似たようなものが作れないかと思っています。FlightGearでは影が落ちませんが、
物体の反射光は使えるので、多角柱に方位目盛りを打って、太陽に同期するよう回転させれば
いいのではないかと思いますが、パイロットの視点への入射角とか、あれこれ研究しなくてはなら
ないだろうと思います。
投票数:37 平均点:8.11
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-7-27 16:28 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
■アンデスの昼と夜(その1)■

hideです。
 …毎日暑いですね。今日から2回にわたり、冬を迎えているアンデス山脈を、複葉機
で横断するフライトをご紹介します。本来は雪景色にしたかったのですが、なぜか設定
がうまく行かず、空港の敷地と河川(凍結)だけが白くなってしまったので、元に戻しま
した。マイアルバムで涼をお届けするはずが、残念でした。

 コースは前回私が到着した、アルゼンチン西部のメンドーサから、大渓谷をジグザグ
に抜けて、南米最高峰・アコンカグア南方の峠(約13000ft)を越えてチリ領内に入り、
首都サンチャゴへ向かう167nmの道のりで、ほとんど3500ft以上の山岳地帯です。
 フランスの航空会社・アエロポスタル社は1930年、初のアンデス横断航空路を開設し
た際、この同じ経路を、メインの飛行ルートに選びました。かつては、ここに両国を結ぶ
「トランス・アンデス鉄道」が走っていましたので、勾配が比較的緩やかなうえ、線路に
沿って飛べばパイロットが迷いにくいことから、飛行ルートに選んだのでしょう。ただし
アンデスの自然は厳しく、空路を開拓したジャン・メルモーズや、定期運航の中心となっ
たアンリ・ギヨメら同社の名パイロットたちは、激変する天候や猛烈な上昇・下降気流、
無線アンテナへの落雷などに苦しめられました。ちなみにトランス・アンデス鉄道自体
も、頻繁な雪崩や崖崩れのため、現在は廃線になっているそうです。
 線路そのものは残っており、幸いFlightGearの画面上でも、細い白線で表示されま
すので、私たちもこれをたどれば比較的容易に、山脈をぬって飛ぶことができます。

●アンデスの昼と夜…まず使用機のお話:
 この横断ルート開かれた時代は、ちょうど単葉機と複葉機が入り交じって使われてい
たころですが、FlightGearの世界では、当時のラテコエール26型(単葉)や、ポテズ25型
(複葉)などはモデル化されていないため、1937年ベルギー製の複葉練習機・Stampe-
SV4で飛ぶことにします。しばらく前にご紹介しました、スペインとアフリカの郵便飛行再
現にも登場した飛行機です。私は2年半ほど前、FlightGear Ver.0.9.8でも、同じコー
スを通ったことがあり、その時はパイパーカブを使いました。
 スタンプSV4は、お馴染みHelijahさんのサイトからダウンロードしました。現バージョン
は、後席にパイロット人形が乗り、外観も以前の白から、鮮やかなブルーに変身してい
ます。尾輪式の機体に特有の、グラウンドループを起こす癖を持っていますが、一度空
中に上がれば、まことに操縦しやすい、楽しい飛行機です。
 メンドーサ=サンチャゴ間を飛ぶには、航続力がぎりぎりですので、タンク容積を純正
の142Lbsから、200Lbsに増加。また、なぜかコンパスがありませんので、ブロンコ用の
磁気コンパスを、パネル中央に増設しました。さらに時計も欲しくなり、787用のデジタル
時計を小さく作り替えて拝借。古典機にデジタルは少し変ですが…時刻をメモする時は
やはり便利です。

●地文航法:地図の作り方。
 コース最高地点の峠は、山域の中央部より、かなり西にあるため、アルゼンチン側から
西へ抜ける時は、長い「助走」をして高度を稼ぐことになり、上昇力の小さな複葉機でも、
比較的楽に横断が可能です。しかしチリ側から東へ戻るときは、急激に標高が上がりま
すので、復路は70nmほど南方にある、別の谷筋を使うことにします。
 最終的には、アンデスを夜間飛行で横断してみたいのですが、スタンプSV4にはVOR
なんて付いていません。そこで今回の一連の飛行は必然的に、昔の郵便機と同様に、
地図とコンパス、それに肉眼が頼りの「地文航法」を使うため、夜間にルートを見分ける
のは、かなり難しそうです。
 地文航法とは、あらかじめ地図に描いたコースのどこにいるかを、地形によって確認す
る飛び方ですので、カーナビ普及前のドライブや、バイクツーリングと感覚的によく似て
います。機械任せのナビゲーションではないため、とても楽しいのですが、少し気を緩め
ると快晴の昼間でさえ、すぐ現在地が分からなくなります。なにぶん、まず地図が必要で
すね。私は次のような方法で用意しました。

 FlightGearの航空図が欲しい場合は、Atlas画面を適当な倍率で印刷するのが手っ取
り早いですが、地文航法の場合は、Atlas上ではほとんど見えない、道路や線路の位置
情報も必要です。そこでAtlas画面に、一般的な地勢図のデータを重ね合わせることにし
ました。手順は以下の通りです。
(1)Atlasをフル画面表示で倍率調整し、両端をメンドーサとサンチャゴにする。
(2)これを画面コピーで保存しておく。
(3)お好みの世界地図サイト(MSNエンカルタなどお勧めです)で、このルートを
   3枚くらいに分けて拡大表示し、同様に保存する。
(4)Photoshopなどで、これらを重ねる。Atlasデータと地図データの、それぞれ
   同じ2点間の距離を計り、縮小率の比を算出して縮尺を合わせる。またレイ
   ヤーごとに、明度とコントラストを調整し、見やすい画質に整える。
(5)フリーウェア「斜めものさし」を起動し、縮尺を合わせ、距離スケールとして配置。
(6)以上を画面コピーして余白を切り、使いやすいサイズにプリントする。

●地文航法:フライトプランの作り方:
 次に、フライトプランの作り方もご説明します。
(1)飛行ルートを決める。機上から判別しやすいよう、道路や鉄道の分岐点、川の
   出合い、谷の入り口などを変針・中継点にするが、あまり多いと煩雑になる。
(2)鉛筆などで、各中継点を結ぶ線を引く。緩やかに屈曲した谷筋は、或る程度ま
   で直線で代用して構わない。
(3)各区間の距離と方位を出す。地図上に作った距離スケールと、定規、分度器で
   計ってもいいが、「斜めものさし」をAtlas画面上に表示し、カーソル位置の距離
   ・方位表示機能で測定すれば、きわめて簡単かつ正確。
   この時、現地の磁気偏差に合わせて、「斜めものさし」を傾けて測定すると、
   偏差の補正が同時に終了する。例えば…偏西5度なら、斜めものさしの角度
   表示が「005度」になるよう調節。偏東3度なら「357度」にする。
  (注:FlightGearの世界では実機同様、VORのコースや滑走路方位、パネル
   上にあるコンパスの表示はすべて磁気方位ですので、偏差を修正する必要
   があります。HUD最上部のコンパス表示だけは、真方位です)
(4)算出結果を、作成した航空図の折れ線コース上に記入する。
(5)実際のフライトでは、中継点を見落とす可能性が高いため、各区間の距離を
   巡航速度で割り、予想飛行時間も記入しておくとよい。
(6)風向風速の補正計算は省略してもよい。ただし巡航速度への影響は、大まかに
   頭に入れておく必要がある。
 …では飛行に移りましょう。フライトプランを、いつものスタイルで書き出したものを
お目に掛けます。

■メルモーズの拓いた道■(メンドーサ=サンチャゴ間・西向きアンデス越え)
単位は真方位。●印は、実際に使う磁気方位と、100Kt巡航とした場合の所要時間。
地名は、谷筋や平野にある集落などの名前です。
◎メンドーサ空港(SAMQ)偏差:FlightGear=マイナス1.28度(偏東)
   ▼200度8.6nm (●198度6分)
△Lujan de Cuyoの交差点
   ▼270度11nm (●268度8分)
△Cacheuta
   ▼314度7nm  (●312度5分)
△Portreillos
   ▼334度20nm (●332度15分)
△Estacion Uspallata(ここから鉄道は西へ。正面に道路)
   ▼297度6nm  (●295度5分)
△道路が西から南南西へ折れる地点。川と合流。
   ▼227度21nm  (●225度15分)
△Punta de Vacas(やや大きな川が2本合流。北からが手前)1525頃。
   ▼281度15nm  (●279度11分)
△Las Cuevas(国境の峠。道路は西側で激しく屈曲)
   ▼246度17nm  (●244度12分)
△Los Azures(鉄道と道路が、西南西から北西へ折れる地点。川は南へ)
(町から72度5nmに、小さなSan Rafael空港SCAN)
   ▼293度13nm  (●291度10分)
△Los Andes 道路分岐点。以後南西へ向かう道に沿って。
   ▼182度38nm  (●180度29分)
△サンチャゴ市 全航程147nm。

●複葉機の離陸のコツと、現在地の確認:
 40度の風約3Kt、雲のレイヤーは皆無という、めったに出会わない上天気。メンドーサ
空港で、スタンプSV4のエンジンを始動します。離陸はUTCの1635時、現地時間では正
午過ぎです。
 FlightGearの尾輪式機で離陸を試みると、すぐにグラウンドループを起こしてしまいます
が、以前どなたかが掲示板に書かれたように、上げ舵を取って、尾輪を滑走路面に押し
つけておくとよろしいですね。ただし、漫然と昇降舵を引いてもダメで、滑走前に最大舵
角にロックしてしまい、これを維持したまま走って、いつの間にか主車輪から先に浮いた
…といった状態にするのがいいようです。この主車輪を先に浮かせる離陸法を、大戦前
のドイツでは、なぜか「騎士の離陸」と呼んだそうです。
 さて、「騎士の離陸」でスタンプを宙に浮かべ、機首を南へ。ブロンコから頂いた磁気コ
ンパスは、大変良くできていて、実にリアルに、コンパスカード(目盛り盤)が揺れまして
少々読みにくいほどです。高度を取るにつれて眼下にメンドーサ市街地が拡がり、南へ
鉄道や道路が延びています。そのうちの1本をたどり、隣町にある鉄道の分岐点を通過。
ここから西へ旋回し、近くにそびえる山脈から、平野へ向けて開いた谷の入り口に飛び
込みました。
 FlightGearの地形と地図を見比べて、現在地を割り出すのは、慣れないうちは案外難し
い作業です。本番前の練習飛行では離陸後すぐ、誤って鉄道の支線を追いかけてしまい、
平野から狭い沢に入り込んで、さっそく迷子になってしまいました。また谷間を飛行中も、
無数に支流の谷や沢が口を開けており、慣れないうちは、どれも正しい道に思えます。
この飛行でも1653時ごろ、Portreillos村の付近で一度、眼下にあるはずの線路がないこ
とに気づき、慌てて反転しました。このコースでは、鉄道を見落とさなければ、まず迷いま
せんが、基本的には各区間の大まかな飛行方向と、変針点付近の地形や、途中で目印
になる谷や川などを、しっかり頭に入れる必要があります。これさえ出来れば、後は簡単
です。
 現実の登山では、霧の中で尾根歩きをしている最中、コンパスさえあれば、登山道と尾
根筋の位置・方位の関係から、現在地がよく分かりますね。これと同様、このフライトでも
谷の進行方向と経過時間、目標物、それが見える方角などから、かなり正確に現在地を
つかむことができます。
 V字に切れ込んだ快晴の大渓谷を、地形を観察しながら複葉機でゆっくり飛び続け、次
第に高度を稼いでいくフライトは、ふだんのFlightGearの操縦とは違う、ふんわりした浮遊
感に満ちて、楽しい飛行でした。まるでコンドルになったような気分です。本物のスタンプ
練習機は胴体幅が非常に狭いので、少し頭を振ったり、機体をバンクさせれば真下付近
も見えるでしょうが、FlightGearは視点の向きは変えられても、位置までは動かせないの
で、どうも下方視界が悪いですね。「シフト+X」キーでやや視界を広げた後、スタンプの
場合「D」キーを押すと、パイロットの両肩脇に小さなサイドドアが開きますので、多少は
下方視界を稼ぐことができます。

●世界最長の分水嶺を越え、サンチャゴへ:
 1715時ごろ、Punta de Vacas村の手前で天候を「サンダーストーム」にしてみましたが、
大した変化なし。雲のレイヤーを大量に出そうとも思ったのですが、リアルウエザー機能
がオンになっていると、設定変更が利かないようでした。1722時、プンタ・デ・バッカスを
通過。うっかり谷筋を間違えるところを、また鉄道線路に助けられました。昔は五里霧中
に近かったことを思うと、私の地文航法も進歩したものです。ここから山肌の眺めは、雪
交じりになります。1732時、ついに国境の峠越え。スタンプは約18000ftを維持し、右手
にアコンカグアを仰ぎながら、世界最長の山脈・アンデスの分水嶺を越え、「大西洋岸」
から「太平洋岸」に入りました。
 前方にチリの谷間が拡がる中、手づくり航空図を見て針路を再検討。目視に頼る地文
航法が、今回は非常にうまく行っているため、少しショートカットをして予定外の谷筋と峠
を越え、サンチャゴ市をめざすことにしました。燃料は、まだ3分の2あります。
 新たなルートへの入り口は、国境の峠から西へ約15nm進んだ、Los Azuresという集落
のあたりです。1740時にここへ到着し、慎重に旋回を重ねて地形を確認したあと、確かに
変針点だと確信が持てたので、南へ向かいました。約20分掛けて谷を詰め、稜線を一つ
越え、その先の谷筋を下ってゆくと、平野の彼方、地平線のもやの向こうから、まったく
不意打ちで、壮大なサンチャゴ市街地が姿を現しました。「約束の地」とでも呼びたくなる
ような、まことに劇的な出現ぶりでした。
 さあ、アンデス横断の往路は成功です。あとは、無事に降りなければ。サンチャゴ市最
大の空港、Arturo Merino Benitez Intl(SCEL)を探すと、かなり街の西部にあるようです
ね。高度を下げながら広い市街地を横断し、やっと滑走路を発見。SCELの周波数をチェ
ックしてATISを受信すると、「視界15nm、35度の風3Kt、発着滑走路はRWY-35」と言って
いました。右45度から風を受けますが、微風だから大丈夫。風下から滑走路に接近し、
1814時に着陸してエンジン停止。ガスの残りは104Lbsと、ほぼ半分ありました。
 1時間58分の飛行中、結局オートパイロットも倍速モードも使わずじまい。そのくらい、
楽しいフライトでした。着陸後、時間設定をいじって、入り日や夜景を試した後、ほんの数
分だけ夜間飛行を試みました。着陸も、PAPIを見ながら完璧に行ったのですが、実はこの
時初めて、スタンプの計器類には、ほとんど照明がないことに気が付きました。

●計器を夜光式に改造する:
 うかつでした。私が追加したデジタル時計は光りますが、残りは昇降計以外、夜はまっく
らです。夜間飛行には、もちろん計器照明が必要で、どうしても全計器を発光させたいと思
いました。この改造は当初、私にはまず無理と思ったのですが、acファイルに頻繁に登場
するemission という項目が、恐らくオブジェクトを発光させるパラメータだろうと見当を付け、
昇降計のプログラムを参考にして、他の計器のxmlファイルを書き換えてみました。かなり
の試行錯誤ののち、
<animation>
<type>material</type>
<emission>
<red>0.006</red>
<green>0.0032</green>
<blue>0.0014</blue>
<factor-prop>systems/electrical/outputs/instrument-lights</factor-prop>
</emission>
</animation>
 …という記述を、ファイル末尾にある</PropertyList>の直前に入れれば、取りあ
えず計器が光ることが分かりました。RGBの設定数値は、日中でもあまり不自然に見え
ない程度の発光量に抑えています。ただし、この簡略なプログラミングでは、指針と盤面
だけでなく、計器本体のハウジングや、調節ノブまで光ってしまう(笑)のですが、ともかく
夜間飛行が可能になりまして、私なりに、かなりの達成感を味わいました。

 次回は、今回のコースの南方約70nmにある、ディアマンテという火山湖を経由するバリ
エーション・ルートを通って、アルゼンチン側へ復路の横断をします。それがうまく行きまし
たら、最終目標である、アンデスの夜間横断飛行に挑みます。
投票数:14 平均点:5.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-8-10 12:17
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 引き続き、アンデス越え郵便飛行を再現するお話です。
今回はチリのサンチャゴから、アルゼンチンのメンドーサへ逆戻りしますが、前回飛んだ
トランス・アンデス鉄道沿いの谷ではなく、約70nm南の山中にあるディアマンテ湖を経由
するバリエーション・ルートを取ります。
 これは1930年冬、フランスのアエロポスタル社の郵便飛行士、アンリ・ギヨメが厳寒の
山中に不時着し、5日4晩掛かって、奇跡の生還を果たしたルートでもあります。彼の同
僚だったサンテグジュペリは、空の体験を集めた代表作「人間の土地」(新潮文庫あり)
の中で、この脱出行について紹介しています。

●「僕がやったことは、どんな動物にも不可能だよ」:
 1930年はアエロポスタル社の、栄光の年でした。南仏ツールーズを基点に、アフリカと
大西洋を経て、アンデスを越えチリに至る、世界にあまり例のない長距離郵便空路を5月
に開設。所要時間4日半は当時、驚異とされました。しかし航空機の上昇限度が低く電波
航法もない時代で、悪天候や乱気流は大敵でした。
 アンデス担当のギヨメは1カ月後の6月13日、悪天候をついてポテズ25複葉機(上昇限
度20000ft)でサンチャゴからメンドーサに向かい、消息を絶ちました。南半球は厳寒期
で、チリ陸軍は「生きて夜を越せない」と救助隊派遣に反対。サンテグジュペリらが5日
間捜索飛行をしましたが、遭難機は白塗りで雪に紛れ、当日ギヨメが新しいコースを取っ
たこともあって、見つかりませんでした。
 ギヨメは数日前、猟師に「ディアマンテ湖から、アルゼンチンに抜ける道がある」と聞い
ていました。この日は通常の空路が荒天で通れず、彼は20000ftへ上昇し、ディアマンテ
湖に向かいました。湖畔のマイポ火山(標高5323m)が、航法の絶好の目印になります。
しかし下降気流に捕まり、雲に飲み込まれ、操縦不能となって8000ft落下。不意にディア
マンテ湖(3250m)が見え、平衡感覚を取り戻して墜落を免れました。湖面を2時間旋回
しても晴れ間はなく、燃料切れで不時着転覆。2日後に暴風がおさまると、彼はアルゼン
チン山麓をめざして5日4晩歩きました。途中に標高4500mの峠越えもあり、最低気温は
マイナス40度でした。
 酷寒と高山病で力尽きて倒れ、彼はふと生命保険のことを思い出しました。行方不明の
場合、保険金が下りるのは4年後です。妻が生活に困る…こう思って彼は、雪解けで遺体
が流失しないよう、50m先の岩の上へ体を固定しようと考えました。しかし立ち上がると
また力が湧き、ついに下山して保護されました。知らせを聞いて駆けつけたサンテグジュ
ペリが彼を抱きしめた時、ギヨメが漏らしたのが、冒頭ご紹介した言葉でした。

■アンリ・ギヨメの道■(サンチャゴ=ディアマンテ湖=メンドーサ)
 ギヨメの飛行ルートを、スタンプ複葉機でたどります。
私は以前、ディアマンテ湖はトランス・アンデス鉄道の近くだと思っていました。6〜7年前
にMSFS2000で、初めて鉄道沿いコースを飛んだ際、南方にそれらしい湖を見たからで
す。しかし今回、海外版WikipediaやGoogle Earthで調べたところ、まったく別の場所だっ
たことが分かりました。
 以下のフライトプランは、実資料に基づくものではありませんが、当時の航法や機体性
能、地形を考えると、多分こんなコースだったのでしょう。中継点がやたらに多いのは、
道路の分岐点などを目印にしているからです。

◎サンチャゴ Arturo Merino Benitez国際空港(SCEL)
   ▼132度19nm
△セロ・ラス・ミニラス(谷の入り口)
   ▼70度4nm
△プーモス付近(谷の北端、すぐ先に北への川分岐点)
   ▼150度15nm
△サン・ガブリエル(川と道が東へ分岐する)
   ▼165度9nm
△川の西への分岐点
   ▼147度13nm
△アルファルファリトの南(川が東に向かい、南北へ分岐)
   ▼135度12nm
△川の源流点
   ▼80度9nm
△ディアマンテ湖南岸(西にマイポ火山:標高17464ft、5323m)
   ▼82度28nm
△ラス・アラミトス(南北の川と出会う)
   ▼27度11nm
△パレデタス(南北の道路に出会う)
   ▼8度21nm
△トゥヌヤン(大きな町。西へ道路分岐、南北の鉄道が西にある)
   ▼鉄道沿い・6度6nm
△ザプタ(鉄道分岐点)
   ▼鉄道沿い・16度35nm
◎メンドーサ空港(SAMQ)

●雪の渓谷をさかのぼる:
 …前回は、FlightGearを冬に出来ませんでしたが、これは Texturesと Textures.high
フォルダの中にそれぞれある、Terrain.winterフォルダを、両方ともTerrain にリネーム
しなくてはならないのを、間違って片方だけ変更したのが原因と分かりました。今回は、
すっかり雪景色になったサンチャゴを離陸します。
 風は320度約20Kt。やや難しい飛行条件にしようと、5000ftから雲のレイヤーを1000ft
ごとに4枚出し、雲量はいずれもBrokenとしました。

 ネット(MSNエンカルタ)で取得した拡大地図とコンパスを頼りに、広い市街地を横断し
て渓谷に入ります。勾配は緩やかで、白い鉄道線路は雪の中でも、かろうじて視認可能
です。並行して道路もあり、鉄道と道が別々の谷へ分かれるサン・ガブリエルで迷いやす
いものの、比較的分かりやすいルートでした。
 谷を詰めていくと、雲の層が次第に降りてきます。雲を破って上昇中、短時間でも視界
ゼロになるのは、嫌なものですね。山腹への衝突を避けるため、コンパスで慎重に狙い
を付け、旧式の水平儀を見ながら、「1秒でも早く上に出てくれ!」と祈りつつ突破。何層
か雲を抜けた後、史実通りに20000ftへ上がり、雲海の上でマイポ火山を探しました。

●80年前の写真とそっくり…ディアマンテ湖畔:
 雲上には幾つも高峰がありますが、富士山タイプの成層火山は他になく、すぐに針路
が確定できました。ううむ、ギヨメはなかなか、うまいコース取りをしたものです。
(と言えるところが、フライトシムの醍醐味ですね)
 ディアマンテ湖を発見し降下。実物は地熱のため不凍湖だそうですが、FlightGearでは
凍っています。湖畔からマイポ火山を振り返ると、サンテグジュペリの伝記に載っていた
写真と風景がそっくり。当たり前ですけれど、感無量でした。
 私もここに着陸して、徒歩の代りにFlightGear版のジープで、アルゼンチン山麓をめざ
そうかとも考えましたが…猛烈に時間が掛かりそうですね。マイポ山頂を訪れたのち、機
首を東へ。100Ktの鈍足機で20Ktの風を受けると、さすがに偏流が強烈で、右に流されて
いるのがよく分かりました。
 左へ約20度の修正角を取り、時計を見ながら推測航法で、山麓の中継点へ。地図で標
高を確認し、下は平地だと見極めて雲の層を突破します。さあ、アルゼンチンの平野です。
少し迷いましたが、何とか鉄道を見つけて北上。ひたすら地図と地上を突き合わせ、ゴー
ルのメンドーサ市街地を発見しました。
 3Dの雲が、あちこち地表を這っています。空港付近に運悪く、大きいのが二つ座り込ん
で困りましたが、滑走路との間に約0.5nmほど空間があって、何とか進入コースへ。かな
り横風がありましたが、ローアプローチ(模擬着陸)のつもりで降下し、何とかなりそうだと
思えたので、そのまま無事に降りました。
 …昼のアンデス往復は成功。いよいよ夜間飛行に挑戦です。

■夜のアンデス…夕日と山と星々と■(メンドーサ=サンチャゴ)
 最初の山越えでご紹介しました、鉄道沿い西向きルートを取りますので、フライトプラ
ンを再掲します。
◎メンドーサ空港(SAMQ)(偏東1.28度)
   ▼200度8.6nm (●198度6分)
△Lujan de Cuyoの交差点
   ▼270度11nm (●268度8分)
△Cacheuta
   ▼314度7nm  (●312度5分)
△Portreillos
   ▼334度20nm (●332度15分)
△Estacion Uspallata(ここから鉄道は西へ。正面に道路)
   ▼297度6nm  (●295度5分)
△道路が西から南南西へ折れる地点。川と合流。
   ▼227度21nm  (●225度15分)
△Punta de Vacas(やや大きな川が2本合流。北からが手前)1525頃。
   ▼281度15nm  (●279度11分)
△Las Cuevas(国境の峠。道路は西側で激しく屈曲)
   ▼246度17nm  (●244度12分)
△Los Azures(鉄道と道路が、西南西から北西へ折れる地点。川は南へ)
(町から72度5nmに、小さなSan Rafael空港SCAN)
   ▼293度13nm  (●291度10分)
△Los Andes 道路分岐点。以後南西へ向かう道に沿って。
   ▼182度38nm  (●180度29分)
△サンチャゴ市 全航程147nm。

 UTC(世界時)2145時、現地時間1845時。東の風20Ktのメンドーサ空港。
今回も雲のレイヤーを多数出し、10000ftから上は、最大限の乱気流にセットしました。
日没の滑走路を南へ離陸。渓谷の入り口へ向かいます。
 サンテグジュペリ作「夜間飛行」や、リンドバーグの「翼よ、あれがパリの灯だ」は
いずれも夕暮れのコクピットで物語が始まります。美しい落日と夜への緊張。パイロッ
トにとっては、印象深い時間帯なのでしょう。私のかなたの雪山も、夕映えに染まって
きれいですが、あれは数十分後、どんな脅威に姿を変えるのでしょうか…。

●ロストポジション!:
 谷間を北へ。頼みの鉄道は見分けにくくなり、ライトが点在する道路を見ると、ほっ
とします。2205時、谷を遡上しながら、6000ftにある雲を突破。ここで道路を見失って
反転し、もう一度雲の下に出て、位置を確認しました。夕焼けに交じって、星が輝いて
います。再び正しいコースに乗せたつもりでしたが、計器パネルが西日を受けて輝いた
ので不審に思い、ミスコースに気付きました。北西に向かうはずが、機首を東に向けて
いたのです。
 さて…迷い始めると、きりがありません。私は地図をにらんで、かなり北にある谷に
迷い込んだと判断しましたが、どうも辻褄が合いません。宵闇の中では、どの山のシル
エットも道路の灯も、ほぼ同じに見えます。2223時、完全にロストポジション。南向き
の谷を、道路沿いに飛んでいますが、これが地図上のどの谷か不明です。ともかく一度
平野に戻らなくては…。
 ようやく山脈を出ましたが、メンドーサ空港の位置が分かりません。地平線には時折
光のすじが輝き、そのつど「滑走路か?」と心を躍らせましたが、少し近づくと消えて
しまいました。遠い道路の灯が、距離の影響で密集して見えていたのです。

 1930年代、道に迷ったパイロットは、しばしば低空で駅名を読み取りました。不時着
して誰かに道を訊ねる手もあり、FlightGearでは「道路に降りてAtlas画面を開く」とい
うのが、これに相当しそうですね。完全に暗くなる前に実行しようと、私は風上に向か
う平坦な道路を物色し始めました。
 手頃なやつが見つかり、グラウンドループも起こさず完璧着陸。さてAtlasを開きます
と、なあんだ。私はずっとコース上の谷間にいて、開けた盆地の中をあらゆる方向へ、
のたうち回っていたのです。昼と夜で、こうも風景の印象が違い、感覚が狂うとは予想
しませんでした。
 エンジンを再始動すると、機体が路面を外れてスタックし、スタンプSV4の出力では
脱出不能でした。諦めてメンドーサ空港で、再起動します。設定は、最初のフライトと
同じにしました。2146時、日没の空に向けて離陸。

●所によりバラ色幻想世界、のち乱気流:
 私の飛行コース全体は、上下に押しつぶした「M」のような形です。右の縦棒に当る
北北西区間には2カ所、谷筋を間違いやすい盆地があります。再挑戦では鉄道や道路
にこだわらず、コンパスと時計を頼りに盆地を突破。ここさえ抜ければ、あとはおおむね
大丈夫です。
 「M」字の右肩にあたる、西方へ折れる渓谷の屈曲部を無事にクリアしたころ、いよ
いよ空は暮れ、本格的夜間飛行になってきました。あちこちの山腹が、不意にバラ色に
輝き始めたのは、その時です。山岳写真家が好む朝焼け…モルゲンロートのような光芒
が、そこかしこに見られました。
 FlightGearの冬景色には、視線の向きによって、テクスチャーがコロコロ切り替わる
欠点がありますね。また日の当る場所かどうかの判定が大ざっぱです。この結果、陽が
完全に沈んでからも、あちこちの斜面が輝いていましたが、これがなかなか神秘的、か
つ美しい光景で、すっかり見とれてしまいました。

 国境に向けて谷を進み、高度10000ftを越えると、乱気流との戦いが始まりました。
とにかく連続パンチを浴びまして、下手すると垂直近くまでロール。機首方位も大きく
振れ、機体は勝手に、予期せぬ谷へ飛び込もうと暴れます。とっさに切り返せないまま
360度旋回するに任せて、正しい針路に戻しますが、コンパスは左右50度以上踊り狂う
し、航法をしている暇がありません。
 鉄道を見失いましたが、谷が十文字に交差する、特徴ある川の合流点を覚えていた
ので現在地が分かり、2237時にはどうやら、国境の峠を越えました。アコンカグアが視界
内でしたが、見とれる余裕はありません。
 乱気流の合間に、次の中継地点 Los Azures(村?)までの所要時間を算出しました。
谷と道路を確認するため、機首を下げると高度もどんどん低下。V字谷の山腹にぶつか
らないかと、ひやひやします。あまりコンパスが揺れるので、一時は前方の星々を目標
に、谷沿いの針路を維持しました。振り回されている間に、目標の道路をロスト。暗算
でラフにコースを再設定し、西へ向かいます。
 やがて町の灯が目に入りましたが、これが Los Azures でしょう。振り向くと小空港が
見え、これは San Rafael空港(SCAN)以外あり得ないため、町はやはり Los Azures
です。やれやれ、位置が確認できました。高度は3500ft。もう平野に近く、激しい乱気流
はすっかり収まっていました。

●光の海へ:
 運動後のような、心地よい疲労を感じながら、サンチャゴへ機首を向けます。
ここで風速計算をして、推測航法に切り替えれば正確だったのですが、どれが正しい道
か分からないまま、適当に道路の灯を追って飛ぶうちに、予定より相当西の山岳地帯に
入りました。まぁいいか。燃料はありますし。
 ふと星が見たくなって雲を全部消し、夜空を仰ぎました。この日は新月に近かったの
で満天の星が光っています。南十字星は…どれでしょうね。サンチャゴ都市圏に近づい
ているらしく、暗い地表にも多数の灯が見えます。天の星々と地上の星。二つの輝きに
はさまれて飛び続け、思い切ってコースを東寄りに修正。これが正解で、やがて地平線
からサンチャゴ市の、光の海が近づきました。
 市街地の、もっとも明るい部分を基点に、国際空港の位置を推測し、なおも飛び続け
ますと2333時、エプロンの青い灯火を発見。ATISを受信しますと、滑走路は18Ktの横風
です。危険ですが、代替空港へ向かう元気もありませんので、滑走路に直交する誘導路
へ降りることにして、まずまずのタッチダウンをしました。

 ようやくアンデス山脈を、昼夜いずれも体験しました。夜間飛行の方は、前半に薄暮
状態が残りましたので、思い描いていた「暗闇に、一層黒い山塊が立ちはだかる」状態
ではありませんでしたが、完全に終始真っ暗ですと、果たして谷間を縫う有視界飛行が
可能か、自信はありません。いずれ満月の夜にでも、また試してみたいものです。

●地球の裏への旅、裏側からの旅:
 私の松山空港発・世界一周フライトは、今回のディアマンテ湖を南限として、以後は
北上に移ります。
 南米の先端からドレーク海峡を越え、わずか10度南下すると、南極半島の端があるの
ですが、この季節に南極大陸は闇の中ですので、この旅からは外します。それでも先日
ご紹介しましたラプラタ川河口が、ほぼ九州沖・東シナ海の対蹠点(地球の真裏)です
ので、思えば遠くに来たものです。しかしまだ「やっと半分」でもあります。

 …対蹠点と言えば。イギリス人はロンドン=シドニー間の長距離飛行を好み、戦前は
エアレースまで開きました。このコースが、旧英領を結ぶ「植民地ツアー」だということは
知っていましたが、地球儀で確認すると、これはロンドンから「地球の裏側」をめざして、
一直線に引いた空路だったことに、改めて気付きました。また今回触れた戦前フランス
の、ツールーズ発チリ行き航空路は、最終的に南米南端まで延びていたのですが、
これも地球儀で見ますと、中継地は見事に一直線に並びます。なんだか両国の航空
関係者の、心のベクトルと言いますか、「空を征服」する強い意志のありようを、改めて
感じました。
 コンコルドの商業初飛行は、確かBOACがロンドン=バーレーンで、エールフラン
スはパリ=リオデジャネイロでした。なぜこれを選んだのか、最初は分かりませんでし
たが、どちらも英仏両国にとっては、歴史ある「地球の裏への直線航空路」の一部だっ
たのですね。初の超音速機をこの空路で披露した、彼らの航空先進国としての、プライ
ドの大きさに圧倒されます。また航空史にちりばめられた、大小の謎を解く上で、フラ
イトシムは素晴らしい道具ですが、地球儀も必携だと思いました。
     ○
 次回は、南米を北へ向かうか、航法の研究をするか未定ですが、ここで少し夏休みを
頂くかもしれません。ではまた、サンチャゴの滑走路でお目に掛かりましょう。
投票数:13 平均点:4.62
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-10-5 16:06
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。長らくご無沙汰をしておりました。
 私の世界一周はアンデス横断後、チリの首都サンチャゴで一休み
しております。先日地図帳を眺めていましたら、ここから約400nm沖
の太平洋上に、「ロビンソン・クルーソー島」という、面白い名前
の孤島を見つけました。今回はこの島まで、初めて天文航法に頼って
往復飛行を試みようと、まず天測と計算の全面改良に取り組みます。

●天文航法を再構築し、ロビンソン島へ:
 この島は、元々はマス・ア・ティエラ島と呼ばれ、1704年にスコ
ットランドの航海士、アレキサンダー・セルカークが、船長とケン
カして置き去りにされ、独りで4年4カ月を生き延びました。この
セルカークをモデルに書かれたのが、例のダニエル・デフォー作の
ロビンソン物語です。島は1966年に、現在のように改名されまして、
実世界では人口約600人。空港がありますが、FlightGear上では
NDBしかありません。

 何年か前、日本の探検家がセルカークの居住地跡を突き止め、彼
のディバイダーの針を発掘したそうですね。金属の絶対年代測定は
困難なので、彼のものだと断定する根拠は、よく分かりませんが、
なかなかロマンあふれるお話です。こんな島が、わずか2時間弱の
飛行距離にあると思うと、もう、行ってみるしかありません。それ
もぜひ、航海に縁の深い天測を使って…と思い立った次第です。

 しかし私の天文航法は、これまでのところ、最小でも十数nm程度、
下手をすると数十〜数百nmの誤差が出ます。なぜかと言いますと、
天文航法の計算法を忠実に再現するには、球面三角法の知識や、天
体の動きを時刻や季節変化、経年変化で正確に補正する航海暦(年
鑑式の天文データ集。非常に膨大)などが必要です。取りあえず自
己流で、ごく簡略化した地球モデルを想定し、緯度経度の計算式を
立ててみたのですが、これはさほど、うまく行きませんでした。

●航海士さんの作った、Excelアドオン集が突破口に:
 そこで、天文航法計算のフリーウェアか何かが、簡単に手に入ら
ないか、執念深く探していましたところ、素晴らしいものが見つか
りました。本職の航海士さんが開発した、航法用Excelアドオン関数
集「Navigational Functions」です。DLはこちらから↓。
   http://www4.ocn.ne.jp/~happoone/hfsoft-1.htm

 本作品は計57の関数のセットで、私にとっては宝の山です。うれ
しいことに、航海暦なしには不可能と考えていた、「任意の年月日
時分秒、任意の緯度経度」における、太陽の赤緯やグリニッジ時角、
推測高度などを、いとも簡単に出してくれます。となりますと、もう
自己流の天文モデルは不要で、正攻法のプロ向け天測計算のうち、
私にも理解できるものを、試すばかりです。
 そのためには、以下の技術開発を進める必要があります。

 ・より正確な、天体高度角の測定法を編み出す。
 ・FlightGearで使う航法計算の構造を決め、手順を考える。
 ・すべての手順を、Excelのワークシートにする。

…ずいぶん時間が掛かりましたが、何とか機能するものができまし
た。以下に順次ご紹介しましょう。

●六分儀を使わず、高精度の測定を実現:
 まず、太陽高度角の測定です。以前ご紹介を頂いたFlightGear用
の気泡六分儀が使えれば、最高です。でもこれは残念ながら、現時
点ではVer1.0.0で使うのは無理、とのご指摘がありました。また旧
バージョンの六分儀の組み込みも試しましたが、結局は起動するこ
とが出来ませんでした。

 となると「ヘリコプター・ビュー」で、機体越しに太陽を見上げ
Internal Properties/sim/current-view/pitch-offset-deg で高度
角を読む、という方法に戻ることになります。ただしこの機外視野
を使う測定法は、機体そのものが邪魔になります。そこで少し改良
を加えました。
 まず測定前に/current-view/Z-offset-m を-10000に設定。tetsu
さんに教わった、機体を縮小して太陽を拡大し、太陽の中心を正確
に照準する方法ですが、tetsuさんのお薦め(カメラ位置500m後退)
よりも20倍、大きな数値にしています。

 これで太陽を煎餅サイズに拡大しても、機体は豆粒大になります。
しかしマウスの角分解能が追い付かず、HUD画面中央の◇マーク
を、正確に太陽の中心に合わせることは不可能です。FlightGear用
六分儀では、カーソル微動機能を組み込んで、この問題を解決して
いるようですね。これに代わる方法はないか…と頭をひねった末、
太陽の中心と◇マーク中心の高度角差を、お馴染みのフリーウェア
「斜めものさし」で、精密に計ることにしました。
 太陽の視直径は約31分ですので、これを基準に「斜めものさし」
の倍率を調節し、先の2点間の距離を分単位で出します。この数値
を pitch-offset-deg に足すか引くかすれば、分単位の約10分の1
あたりまで正確な、太陽高度角が分かります。

 ここで、ちょっと気が引けましたが…太陽の中心点が見分けやす
いよう、太陽のテクスチャーに淡いグレーで、細めの十字線を描い
てしまいました。これで測定精度はバッチリです。

●推測位置を駆使する「高度方位角法」:
 次に、航法計算の組み立て方を見直します。太陽を使う天文航法
には幾つかの考え方があります。一つは、太陽が南中する瞬間の高
度を測って、緯度を算出する方法ですが、チャンスが1日1回しか
なく、航空機向きではありません。
 もう一つは、天測を行う時刻に自機がどこにいるか、あらかじめ
針路と速度、経過時間から推測位置を出しておき、その地点の太陽
の計算高度角と、実測高度角の差を調べ、これを数回繰り返して真
の現在地を割り出す「高度方位角法」です。観測も計算も割に簡単
で、なかなか巧妙な方法ですので、以下に測定法と位置決定プロセ
スの概略をご紹介します。

 高度方位角法では、天測の予定時刻を決めておき、その時刻に
自機がどんな緯度経度にいるか、あらかじめ推測計算をしておきま
す。またその際、太陽がどんな方角に、どんな高度で見えるかも、
航海暦を元に、あらかじめ算出しておきます。

 いま、予定時刻が来て天測を行い、太陽の高度角を測ったところ、
事前計算の高度角より、例えば5分だけ、角度が大きかったとしま
す。(このような、天体の推測高度と実測高度の差を、天文航法で
はインターセプトと呼びます)
 高度角が、予想より大きいと言うことは…自機の実際の位置は、
事前計算で得た推定位置より、太陽に近い、ということですよね?
そこで、自機の推定位置から太陽の方位(これをアジマスと呼びま
す)に向けて直線を引きます。
 次にこの線の上に、インターセプトをプロットしましょう。今回
のインターセプトは、角度にして5分ですから、自機は地球の中心
角で5分に相当する距離だけ、推測位置からアジマス上を移動した
位置にいる、と言えます。地球の中心角で5分(赤道上の投影角5
分)と言えば、つまり距離の5nmと意味は同じですから、「自機は
推測位置よりも、太陽の方位へ5nm離れている」と言えます。

 ただし、ご注意ください。これでドンピシャリの現在地が出たわ
けでは、ないのです。いま太陽を使って実測したのは、あくまでも
「推測位置からのずれ」です。お手数ながら、今申し上げた「推測
位置よりも、太陽の方向へ5nm離れている」地点に、アジマスと直
角に交わる線を描き入れてください。自機はこの線上の、どこかに
います。
 つまり「高度方位角法」では、1回の天体観測で、1本の位置の
線が手に入るのです。夜間ですと、3つの天体の高度をほぼ同時に
測ることも可能で、3本の位置の線が同時に得られ、この交点(正
確には三角形になるので、その中心)が現在地となります。
(以上について、説明図があるといいですね。船舶の天測例でした
ら、下記のサイトに、分かりやすい説明と図があります↓)
 http://www.nexyzbb.ne.jp/~j_sunami76/fr_ichi_ten.html

 <注>「天測航法に挑む・後編」では、前記の「5nm離れている」
地点が、すなわち自機の現在地である…という趣旨のご説明をしま
した。これは誤りで、位置の線が出るだけでした。ごめんなさい。

●Navigational Functionsで、ワークシートを再設計:
 さて、この計算のワークシート化です。実際の関数を書いても、
アドオンを組み込まないと使えませんので、ここでは入力作業及び
演算手順をご説明します。☆印は、シートに入力する数値。★印は
返してくる数値です。

【出発点関係の演算】
☆出発点の緯度を入力。
☆同じく経度を入力。
☆出発時刻(UTC=世界時の年月日時分秒)を入力。
☆最終目的地の緯度を入力。
☆同じく経度を入力。
★すると、ラームライン(等角航路、航程線)を使った真方位の
 針路と、総飛行距離が返ってくる。

【観測予定点に関する演算】
☆観測予定点への真針路を入力。
☆同じく、対地飛行速度を入力。
 (針路は、すでに出た演算結果を使うが、風力補正計算が必要)
☆所要時間(出発後、何時間何分経ったら天測したいか)を入力。
 …すると、以下のデータが返ってくる。
★観測予定時刻(年月日時分秒)。
★観測予定地点の推定緯度。
★同じく経度。
★観測予定時刻の太陽赤緯。
★同じくグリニッジ時角(経度ゼロ点からの時差を示す数値)。
★予測される太陽高度(これら4項目から算出できる)。
★予測される太陽方位(同上。これをアジマスと呼ぶ)。

【実測値と、比較計算】
☆太陽高度角の実測値(pitch-offset-deg を正の値にして)入力。
☆「斜めものさし」高度補正値(単位:度)入力。
 …すると、以下のデータが返る。
★インターセプト(単位:度)。
★緯度の実測値、経度の実測値。
 …この緯度経度を新たな出発点として、以下のデータも出る。
★目的地への修正針路(真方位。風力補正計算が必要)。
★残り飛行距離。
★残り飛行時間(風力補正が必要)。
★目的地到着予定時刻(年月日時分秒)。

 …というわけです。ただし Navigational Functions は、緯度経
度の表示については、小数点以下2けたを60進数に、それ以下のけ
たは60進数の小数点以下を表す…という、「変型60進数」を使って
います。これは要するに、緯度経度を「○度○.○分」の形式で表す
と言うだけのことですが、Excelの標準的な関数とは混用できないた
め、ワークシートのあちこちで、通常の小数との相互コンバートが
必要です。この点、バグ取りに苦心しました。

●さまざまな緯度経度で、テストを重ねる:
 FlightGearを起動して、ブロンコ改を南北アメリカ大陸の数カ所
と、日本国内の空港に出現させ、実際に太陽を見上げて高度角を計
測しました。結果は前記ワークシートに入力しますが、ここで「観
測予定点への所要時間」にゼロを入力しておけば、現在地の緯度経
度が出ます。これとHUD画面に表示される、FlightGear上の「実
際の」緯度経度を比較すれば、天測及び計算の精度が判明します。

 初めのうちは少々、飛んでもない値も出ましたが…ワークシート
のバグが枯れますと、インターセプトが角度3分(誤差3nm)以内、
という測定結果が続出。ベスト記録は、高知空港における0.8nmで、
これは実に、プロの航海士の天測の腕前(誤差1nm以内)に匹敵する
精度です。FlightGearにおける私の天文航法は、滑走路が視界に入る
範囲(距離10nm)の誤差を許容するつもりでしたので、これで少なく
とも実験上は、十分に実用レベルに到達したことになります。

     ○

 このあと実際に、サンチャゴからロビンソン・クルーソー島へ、
天測のみに頼る往復飛行を試みました。うまく行った部分と、予想
外の課題が浮かび上がった点がありまして、実戦では精度面でも正
直まだ、改良の余地があります。この日は時間がなく、フライトは
取りあえず、片道を終えた時点でセーブしました。
 航法を改良すべき点は、ある程度見当が付いていますので、答を
出して復路のフライトを続け、まとめてご報告したかったのですが、
私は10日ほど前から入院してしまい、果たせずにいます。

 かなり体調が回復したので、今日はとりあえず、開発編のみ書か
せて頂きました。週明けに退院できそうですが、その後は1カ月ほ
ど仕事に追われますので、フライトのご紹介や改良編は、なおしば
らく先になってしまいそうです。

●新たな航法技術へ発展も:
 今回独習した天文航法計算は、さすがにプロ向けの計算式を使い、
内部に推測航法を取り込んでいることもあって、かなり広範囲に応
用が利くと感じます。
 例えば、今回のワークシートを改良すれば、偏流の補正計算を自
動化し、風向・風速を意識せずに、遠距離航法がこなせるようにす
るのは簡単です。また天体の高度角計算の代りに、VORの受信データ
を加えれば、最近エアラインが取り入れている「RNAV」(VOR直航の
既存航空路に依存しない「広域航法」)に近い飛び方も、実現でき
るであろうと期待しています。
投票数:14 平均点:2.14
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-11-16 11:58
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 ご無沙汰しています。少々身体を壊しましたが回復し、ついでに大幅な
軽量化に成功しました。近年は、体型が紫電改に近づいて、「10年後には
雷電か」と心配しておりましたが、晴れてゼロ戦並みのシルエットに戻り
ました。お陰で何かと快調です(^^;)。

●新しいExcel航法計算シート「F-NAV」:
 天文航法の報告を続けます。私は前回お話ししました「高度方位角法」
計算用のExcelシートを改良し、太陽の測定方法をやや変更したほか、天
測用アドオン関数を活用して、以下の機能を追加しました。
 (1)フリーVOR:
    任意の地点へ飛行中、コース近傍のVOR受信データから現在
    の緯度経度と、目的地への修正針路・修正到着予定時刻を算
    出する。
 (2)NDB測距:
    三角測量を応用して、NDB局への距離を測定。さらに現在の
    緯度経度と、目的地への修正針路を算出する。

 天文航法に加えて、これらの機能があれば、もはやVOR局間を直航する
必要はなく、コース設定の自由度が非常に大きくなります。私はこのシ
ートを、「Free NAVigation」の略で「F-NAV」(エフナビ)と呼んでいま
す。マイアルバムに画面写真をご紹介します。

■天測でロビンソンクルーソー島へ:
 今回のフライトでは天文航法を中心に、F-NAVの実証試験をします。ブ
ロンコ改でチリ・サンチャゴの国際空港を離陸、太平洋をほぼ真西に進み
天測でロビンソンクルーソー島へ。島の上空で反転し、復路はサンチャゴ
の北方約40nmある港湾都市、バルパライソの空港に向かいます。以下のフ
ライトプラン記載のコースはすべて真方位。カッコ内は緯度経度です。

◎サンチャゴ Arturo MerinoBenitez国際空港 SCEL
(S33.23.35-W70.47.10)RWY358-178
★空港VOR 117.20(33.24.53S-70.48.05W)
   ▼268度403.7nm
△ロビンソンクルーソー島の最高峰
(33.37.49S-78.51 03W)
☆NDB-293(33.37.00S-78.50.12W)
   ▼83.7度372nm
◎バルパライソのVina del Mar空港 SCVM
(32.56.58S-71.28.43W)RWY51-231=サンチャゴの307度43nm。
VOR 113.30 NDB 384(32.44.18S-71.29.46W)

参考VOR:(フリーVORテスト用)
★サントドミンゴVOR(33.39.56Sー71.37.09W)113.70
=サンチャゴの249度34nm(バルパライソからは190度44nm)

 UTC1400時(現地時間11時)、サンチャゴでエンジン始動。風は3000ft
まで300度10Kt、6000ftまで310度20Kt、9000ftまで320度30Kt。雲は5000
ft付近にスキャタード、高空に絹層雲が少々。燃料は余裕をみて、機内
3000Lbs満タン+補助タンク2000Lbsとしました。

 F-NAVに、サンチャゴ空港とロビンソンクルーソー島の緯度経度、巡航
速度(250Kt)を入力。これで針路と飛行距離が出ます。計算には地球を
楕円回転体と見なす「漸長緯度航法」の関数を使い、FlightGearの地球
モデルも楕円体なので、かなりよく数値が合うはずです。空港の緯度経度
は主滑走路の中央、ロビンソン島は最高峰を狙って、それぞれAtlasで測
定しました。
 横風気味の滑走路を、北へ離陸。風による針路補正計算は行わず、天測
結果をもとに針路修正する予定です。空港の東で5000ftまで旋回上昇し、
1406時(以下すべてUTC)に滑走路上空を横断。ここを基点にロビンソン
島へ定針します。離陸直後の燃費は1.4096nm/gal。残る航続力は1200nm
4時間42分。トリムを細かく調整し、昇降舵をきっちり中立にすると、わ
ずかながら燃費が良くなりました。

●油断ならない「時差」問題:
 滑走路上空の通過時刻を、「出発時刻」セルに年月日・時分の形式で入
力。これで自動的に到着予定時刻が出ます。天測は出発1時間後に行うつ
もりですので、「◆観測点への飛行」列の「所要時間」セルに「1」と入
力します。すると「◆観測点」列にある、「観測時刻」「推定緯度」「推
定経度」「太陽赤緯」「太陽G(グリニッジ)時角」や、観測時の推定太
陽高度、同じく太陽方位などのセルが、自動的に埋まります。

 この「出発時刻」は、なかなか曲者です。ある夜、シートの計算テスト
を進めていたところ、太陽正中時前後では3nm未満だった測位誤差が、突
然10nm以上に跳ね上がりました。
 最初は原因が分からず途方に暮れましたが、これは時差の見落としによ
る現象でした。天測計算にはUTC、つまりグリニッジ時間を使います。ま
たFlightGearの天体運行管理にも、UTCが使われています。私は出発時刻
の「年月日」を打ち込む際、パソコンのカレンダーを見たのですが、当然
これは日本時間。ちょうど夜中を過ぎて日付が変わったばかりでしたので
F-NAVとFlightGearの間に、丸1日の時差が生じてしまい、約10nmの測位
誤差を生んだわけです。

●初の洋上天測を行う:
 …11月の南半球は日差しが強まり、3D雲がきれいです。私と愛機は海
岸線を越えて、太平洋へ。
 3倍速で淡々と海上を進み、天測予定時刻が迫ります。機内の787用デジ
タル時計には、秒表示がありませんので、パネルに残しておいたアナログ
時計を今回、339PAN用の秒針付きに換えました。天測時刻が5秒狂うと、
1nmの測位誤差が生じます。予定時刻の瞬間には、かなり気合いを込めて
pouseを掛けました。
 視界をhelicopter viewに切り替え、カメラ位置を10000mバックさせた
後、太陽をDVDサイズに拡大。toshiさんに教えて頂いたマウス微動機能で、
慎重に中心を照準しました。Internal Properties/sim/current-viewを開
き、pitch-offset-degの数値-62.4294度を、F-NAV「高度角」セルに入力。
これでインターセプト(推測太陽高度角と実測値の差=推測地点と実測地
点間の距離)が求まります。

 ここで航空図に、太陽方位を示す線を引き、その上にインターセプトを
記入して、そこから太陽と直角の方向に線を引けば、今回の観測に基づく
「位置の線」が得られます。また数時間後に、第2の位置の線を求め、航
空図に2本の位置の線の交点を描けば、その時点の現在地が得られたこと
になります。
 精度を上げるため、この作図をせずに、いきなり緯度経度を算出したい
のですが、Excelで2元1次方程式を解くのは、かなり面倒だと分かりま
して、今のところ断念しています。また航空機の天測には、実はこれまで
お話ししていなかった、もっと大きな問題があるのです…。

●航空天文航法の、大きな「落とし穴」:
 この、航空図に描く2本の位置の線は、測位精度を考えますと、かなり
大角度で交差させなくてはなりません。ということは、2回目の天測は、
太陽に十分移動する時間を与えるため、出来れば3〜4時間待って行う必
要があります。でも、こんなに時間を置きますと、多くのフライトでは、
目的地を通り過ぎてしまいます。
 私は以前、日本人のフェリー・パイロット(機体空輸業を営むフリーラ
ンスの飛行士)が天測航法を使い、単発機で大西洋横断をした記録を読み
ましたが、この例でも天測は2回だけでした。沿岸でNDBを併用するとは
いえ、天測による緯度経度は飛行中、一度しか得られなかったわけです。
太陽を使う限り、これは宿命のようですね。(夜間でしたら、ほぼ同時に
複数の恒星を観測できるので、何度も緯度経度が出せますが)

 …この点を解決するため、F-NAVでは結局、Internal Propertiesから太
陽の方位角を読むことにしました。この方法ですと、1回の観測で現在地
が決まります。ただし現実の六分儀は、本質的には、天体の高度角を計る
分度器ですので、方位角を読むのは、天文航法の原理を踏み外した邪道だ
という気もします。悩ましいですね…。
 F-NAVでは、goal-heading-offset-deg をセルに入れると、太陽の方位が
出ます。今回の入力は205.9629度で、算出した現在地は、南緯33度32分19
秒、西経75度45分18秒。HUDの緯度経度(正解)と比べますと、南へ10nm、
東へ6nmずれていました。期待したより大きな誤差ですが、機上の視界で
は「目の前」と言えます。また当初目標の「誤差10nm以内」をほぼ達成し
ました。
 F-NAVは、算出した緯度経度をもとに、実針路や対地速度、偏流(横風で
流された角度)を算出し、これをもとに目的地までの残距離と飛行時間、
到着予定時刻を再計算します。以下、その表示のコピーと注釈です。
★目的地へ修正
新しい針路 267.9830408 (注:E6-Bによる検算では267.97度)
修正角 0
修正真針路 267.9830408
飛行距離 155.5640762 (注:同様に154.84nm)
実所要時間 0:37:20
到着予定 2008/11/13 15:08(注:計算違い。実際は15時43分)

 …風向風速の補正計算なしに飛んだので、修正角ゼロというのは、おか
しな話です。また到着予定時刻の足し算が変ですね。私はどうもExcelの
年月日・時分秒の計算が苦手で、このバグは着陸後に修正しました。針路
と距離はフリーウェア「Vertual E6-B」で行った検算結果と差があります
が、双方のアルゴリズムの違いで起き得る、許容可能な差の範囲とみて、
このままF-NAVの算出針路に従って飛ぶことにしました。

●セルカークの島:
 天測までに250nmを飛び、残りは約155nm。3倍速なら約10分でゴールで
す。時計と水平線を眺め、落ち着かないフライトが続きます。
 15時36分。コクピット・ビューを広角に引いたり、逆に望遠にしてスキ
ャンしていたら…見えた!! 機体の右約45度、細長い島が、まさに水平線
から滑り出したところでした。航海士セルカークが暮らした、ロビンソン
クルーソー島に間違いありません。
 はやる心を抑え、到着予定時刻まで、さらに7分前進します。島は真横
から、やや機尾の方向へ移動。距離は10nmもなさそうです。だがHUD表示
の「正解」緯度経度から計算すると、島の最高峰は、機体から29度方向に
19.02nm離れていました。数字上は大きな誤差が出て残念ですが、島は一応
「目の前」に見え、天測は孤島にたどり着く手段として、十分実用になる
と言えますので、私はわくわくしました。

     ○

 やや高度を下げ、島に近づきます。西端に付随する小さな無人島、サン
タ・クララ島の上空を過ぎ、実世界ではミニ空港がある、西部の低地を飛
行。次いで中央部から東部へ続く山岳地帯を、東に抜けます。途中に鞍部
がありますが、これが救助船を探し求めたという「セルカークの見張り台」
でしょうか…。北方に、ちょっとした湾と狭い海岸平野があり、実世界で
は島唯一の居住区域だそうです。FlightGearでは、ここにNDBがあります。
ここでF-NAVの「NDB測距」をテストする予定でしたが、残念ながら停波し
ているらしく、受信不能でした。
 諦めてF-NAVに、帰路の航法データを入力します。目的地にバルパライソ
の緯度経度を入れ、今回は比較のため、Vertual E6-Bで風向風速の補正計
算をしました。310度20Ktの風を受け、真方位83.7度を250Ktで飛ぶと、対
地速度は263.4Kt、修正コースは80.7度になります。また「フリーVOR」機
能のテストに備えてNAV1に、目的地バルパライソからはるか南方にある、
サントドミンゴVORの周波数を入れました。帰りも天測をしますが、時刻は
島を離れて1時間後(1649時)です。

●天測の誤差を、フリーVORで補う:
 東へ飛んでいると、1607時ごろ燃料警告灯が点き、補助タンクから機内
タンクに切り替えました。残りは2815Lbsで、燃費1.5156nm/gal、残る航続
力は751nm、2時間40分でした。バルパライソ到着後も、1時間は飛べる計
算です。
 間もなく第2の天測を実施。計算結果は、南緯32度55分23秒、西経73度
41分59秒で、「正解」から北へ9nm、西へ23nmずれました。特に経度方向
は、ばかに大きな誤差です。目的地への修正針路は90.57度と出ましたが、
右へ10度も変針することになり、修正角が大きすぎると感じました。これ
をどう分析し、今からどう飛ぶべきか、ちと悩みました。

 まず「正解」の緯度経度を使い、バルパライソへの針路を再計算。する
と93.24度85.53nmと出ました。F-NAVが算出した補正針路に近い数字です
ので、F-NAVの数値を使って続航することにしました。
 ここでふと思い出し、フリーVOR機能テスト用のサントドミンゴVORを受
信。方位と距離は115度85nmでした。後はVOR局とバルパライソの、緯度経
度を入力すれば、F-NAVが針路と方位を出してくれます。しかし、待てよ。
VORラジアルは磁気方位ですが、真方位から補正する機能を付けていませ
ん。それに私は、サントドミンゴの偏差を調べ忘れています。困ったな。
 Internal Properties/environment/magnetic-variation-deg で現在地
の偏差を見ると、偏東5.07度。サントドミンゴは44nm南ですから、ほぼ、
同じだろうと判断。この偏差で代用しました。F-NAVによる実測現在地の
緯度経度と「正解」、そして両方の差は、次の通りです。

実測33.1025S-73.1229W。
正解33.04 39.6S-73.09 31.2W。誤差6nm南、3nm西。
 この結果は天測より相当正確で、立派に実用性があることを確認しまし
た。フリーVORにも針路修正の機能があり、計算結果は次の通りです。
▼目的地へ修正 2008/11/13 16:50
新しい針路 80.93067384
修正角 -3.763599708
修正真針路 77.16707413
飛行距離 43.51163458
実所要時間 0:09:18
到着予定 2008/11/13 16:59
 …なかなかうまく、計算できているようです。この通りに飛行を続けた
ところ、バルパライソ市街地を右手に見て、陸に到達。予定時刻より10分
遅れで、機体のすぐ左下に滑走路を発見しました。

●ここって…どこ?:
 経度方向にかなり誤差が出ましたが、緯度は大変正確に思えましたので
私は一応ホッとしまして、慎重に旋回を重ね、横風の中を着陸しました。
しかしVina del Mar空港って、やけに小さいなあ。調布飛行場か、ブルッ
クランズに降りるみたいな緊張感です。
 …ILSもあるのに、なんでこんなに滑走路が、短いのか。一瞬疑問が浮か
んだのですが、私はそのまま、着陸の事後作業に取り掛かりました。燃料
残を記録し、Atlas画面を開いて仰天。私は Vina del Mar空港ではなく、
10nm近く北の Quintero飛行場に、誤着陸していたのです。やーれやれ。

 次回は多分、満タン離陸になりますが、この短い滑走路では無理。そこ
で少々バツの悪い思いをしながら、エンジンを再起動。Vina del Mar空港
へ移動しました。するとこの空港は、周囲の風景に紛れて、異様に発見し
にくいことが判明しました。
 のちの調査では、左至近にQuintero飛行場を発見した時、右アビームに
は偶然、Vina del Mar空港があり、距離は8nmでした。5度で代用した偏差
は、正しくは6度なのですが、1度の差による誤差は約1.5nmでした。なぜ
8nmも外れたかは、まだ分かりません。

 総じて今回は、「誤差は結構あるが、天測を含めて、たぶん原理は間違
っておらず、F-NAVは使える!」と感じました。今後北へ向かう旅の途中
で、天測結果と「正解」を突き合わせながら、少しずつ改良することにな
りそうです。天測の研究は手探りですが面白く、FlightGearと航法全般に
ついて、より深く知る手段になります。さらに新しい研究テーマも、すで
に心の中に浮かんでいます。
投票数:10 平均点:4.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2008-12-24 22:16
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。メリー・クリスマス!

 この1カ月あまり、先にご紹介しました天文航法を改善し、機能を充実し
つつ、測位精度を上げる試みを重ねてきました。色々と新たなことが分かり
ましたが、残念ながらまだ天測によって、推測航法を十分に上回る精度を、
安定して確立するには至りません。

 FlightGearの天文航法を究めることは事実上、プログラミングの知識なし
に、フライトシムの内部世界が、地球の形や天体の動きをどこまで正確に再
現しているのか、大気の光学的性質はどうなっているのかなどを、手探りで
解明するのに近く、まるで17〜19世紀の科学者か探検家になったような、試
行錯誤の日々です(^^;)。
 非常に面白いのですが、誤差原因について仮説を立て、これを立証して補
正法を確立しようとするたびに、私の仮定を裏切る結果が出まして、見えた
と思ったゴールが蜃気楼のように遠ざかる、底なし沼のような日々でもあり
ます。焦らず、のんびり進めることにしております。今回は、これまでの試
みについてご報告します。

 また実験の過程で、チリのバルパライソからアンデス沿いに北上し、ペル
ーの首都リマまで進出しましたので、簡単にご紹介します。途中でボリビア
の首都・ラパスに立ち寄りましたが、ここはFlightGearの空港では現在のと
ころ、世界最高の標高ではないかと思います。

●複雑極まる天測計算:
 それでは、天文航法のお話です。今回はF-NAV(Excel天測計算表)をかな
り改善しました。
 まず、前回はロビンソンクルーソー島からの帰路に、大きな測位誤差が出
ましたので、計算過程を精査したところ、インターセプトが負の値を取った
場合(機位が推測地点から、太陽と反対の方位にずれていた時)は、アドオ
ン関数が一部無効になってしまい、推測航法で得た緯度経度が、そのまま実
算値として表示されることが分かり、計算プロセスを変更しました。また風
向・風速と磁気偏差を入力すると、偏流補正済み針路が、真方位と磁気方位
で表示されるように改良し、使い勝手が向上しました。

 次に、この太陽の天測計算表をもとに、月と恒星の計算表を追加し、それ
ぞれに日の出と日没、月の出と月の入り、月齢の表示を入れました。特に恒
星の計算表づくりは、なかなか大変です。
 FlightGearのデータフォルダには、計3140個の恒星が納められていま
す。恒星の天球上の固有位置は、イェール大学天文台の2000年恒星カタ
ログに基づく赤経・赤緯(赤道座標)で登録され、解凍して開けばデータを
読むことができます。
 実際の航海術で使う恒星は約40個ですが、私はシリウスからフォーマルハ
ウトまで、特に明るい星16個を選び、Excelにプルダウンメニューで赤経・
赤緯を入力できるようにしました。赤緯とは、天球上の緯度に当るもので、
天体の高度角や方位角(地平座標系)を求めるアドオン関数で利用します。
しかし天球上の経度に当る赤経は、刻々と動く春分点を基準に決められた位
置なので、このままでは計算に使えず、いったんグリニッジ時角(グリニッ
ジ子午線を基準点とする、地球上の座標系)に変換する必要があります。
 太陽と月は、自分で天球上を移動するため、もっと計算が複雑になります
が、幸い専用アドオンを使って、任意時刻の赤緯とグリニッジ時角を求める
ことができます。

●「グリニッジ時角」との格闘:
 任意の恒星の、任意の時刻におけるグリニッジ時角を、ストレートに求め
る関数はないため、私は以下の入手方法を試みました。

(1)オンラインの計算サービスを使う。
(2)スタンドアローンで動く天測計算ツールを探す。
(3)春分点の動きから、自分で計算する。

 このうちオンライン計算サービスは、富山商船高専の「航海科学研究室」
HPが見つかりました。
   http://www.toyama-cmt.ac.jp/~mkawai/

 しかし天測のたびに、オンラインで数値を取るのは面倒です。このサービ
スはアプリとデータベースがDL可能で、自分のパソコンをサーバーとして
使えば、自宅で計算ができます。しかしサーバー化に必要な無料ツールが、
現在は一部見当たらず、この方法は断念しました。またフォートランで書か
れたアプリを、自分でコンパイルする手もあるのですが、私の知識ではとて
も無理だと分かりました。

 次にスタンドアローンの道具ですが、海外サイトを丁寧にサーチしたとこ
ろ、次のようなHPが見つかりました。
   http://www.tecepe.com.br/nav/default.htm

 実際の航海用天測計算ツール「Navigator」を売るサイトですが、簡単な
オンライン航海暦や、CDとプラスチックケースを利用した六分儀の自作法
などを公開しており、面白いHPです。ここでNavigatorのシェアウエア版
を入手したところ、無料お試し状態でも、以下のようなことが可能だと分か
りました。

 ・推測緯度経度と高度角から、位置の線を作図する。
 ・複数の位置の線から、現在地を計算。
  (お金を払えば、なんと海図まで表示)
 ・任意の緯度経度における、簡単な星図を表示。
 ・グリニッジ時角を含む、各種天体データを表示。
 ・期間制限がなく、確か2050年まで利用できる。

 …正直、これには狂喜乱舞しました。操作は、これまで勉強したお陰で、
マニュアルを読まなくても一目瞭然。これで計算表の自作とも、おさらばだ
と思いました。だが実際に使ってみますと、やはり数十nmの誤差が出ます。
となるとFlightGearの天文航法を、もっと自分なりに詰めた方がいいと思い
まして、私はまたF-NAVに舞い戻りました。

 最後に天文年鑑を熟読したところ、赤道座標系から地平座標系への変換式
を改良し、掲載されている「世界時ゼロ時のグリニッジ視恒星時」の日付別
データを代入して、さらにFlightGearの単位系に変換すれば、自分でもグリ
ニッジ時角を求めることが可能だと分かりました。そこで式を作り、取りあ
えず恒星と月の計算表が完成。これで一応、夜間の天測航法について、骨子
は出来上がったと思いました。

●誤差に次ぐ誤差、ラパスへの「イバラの道」:
 これを実際に、チリのバルパライソから、ボリビアの首都ラパスまでの飛
行で試してみました。以下はフライトプランです。

◎バルパライソのVina del Mar空港 SCVM 偏差=偏東3.54
(32.56.58S-71.28.43W)RWY51-231=サンチャゴの307度43nm。
★VOR 113.30 NDB 384(32.44.18S-71.29.46W)RWY 23/50
  ▼Rumb Line10.24度1002.13nm GC11.02度1002.11nm
◎La Paz JF Kennedy INTL空港SLLP 偏差=偏西6.15
(16.30.48S-68.11.35W)RWY 10R/28L 13351ft ILS=110.30(10度)
★VOR-115.70(空港西2.4nm=16.30.43S-68.14.00W)
☆NDB=330

補助目標:
★La Serena-VOR 116.50(29.54.55S-71.11.49W)偏東1.77
☆La Serena-NDB 305
★Antofagasta-VOR 114.90(23.28.02S-70.26.52W)偏西1.79
☆Antofagasta-NDB 305 セロ・モレノ国際空港SCFA
★Arica-VOR 116.80 (18.03.27S-70.16.36W)偏西3.89
☆Arika-NDB 305 ラパス南西約120nm。

 アンデス山脈のすぐ西を1002nmにわたり、ひたすら直線飛行する旅です。
文中、Rumb Lineとありますのは、ラームライン(コンパス方位一定の、い
わゆる等角航路、航程線)を飛ぶための針路、同じくGCは大圏コースの初期
針路で、今回は参考データです。
(私は、刻々とコンパス方位が変化する大圏コースでも、精密な推測航法を
したいと思っており、すでに専用の計算表を開発中で、内容は回を改めてご
紹介します)

 出発時の燃料搭載量は6000Lbs。東寄りの風をプリセットし、飛行高度は
当初10000ftとして、あとで徐々に高度を上げました。パソコンのカレンダ
ーを、月齢が満月に近い12日夜半前に設定し、バルパライソを離陸して北へ
向かいます。
 ところが、これが大失敗。まず月の天測を試みましたが、どこをどう間違
ったのか、あるはずの月が出ていません。次にオリオンを目印に、シリウス
を発見して天測しましたが、測位結果は「正解」の緯度経度よりも、北へ
68nm、東へ480nmもずれており、派手にバグがあるようです。F-NAVの「フリ
ーVOR」機能も試しましたが、こちらは西へ1nm、北へ0.2nmずれただけで、
完璧に働きました。

 この飛行は、途中でFlightGearが原因不明のまま終了し、後日再び挑戦し
ました。2回目は昼間に太陽を天測し、第1回の測位結果は、正解との誤差
が、直線距離(インターセプト)にして5.6nmとまずまず正確。しかし倍速
モードを使って飛びながら高度を上げ、第2回の観測をすると、東西は約10
nmの誤差ですが、南北(進行方向)は80nmくらい狂い、何か未知の誤差要因
が隠れている気配です。その後も南北の誤差は広がり、最終的に約180nmも
ずれました。

●「世界で一番高い?」空港:
 がっかりしながら、VORを使ってラパスに到着。ここは標高3650mで世界
一高所にある首都だそうです。
 険しい山腹にへばりつく都市を想像したのですが、実際は広大な高原の一
角から、ボコッと盆地が沈み込んだ地形で、その斜面に市街地が拡がってい
ます。変なたとえですが…洗面台のふちにゾウキンを引っかけて、底へ向か
って広げたような感じです。空気が希薄なため、お金持ちは下の方、貧しい
人ほど上に住んでいるそうで、いわば「山の手」と「下町」が逆転している
わけですね。
 空港は「洗面台のふち」にあり、標高4082m。観光HPには「世界で最も
高い商業空港」とする記述もありますが、正しくはチベット自治区のチャム
ドバンダ空港ZUBD(4334m)が最高のようです。FlightGearの世界ではチベ
ットに空港はないので、ラパス空港が事実上、世界で一番高いのではないで
しょうか。
 ブロンコの燃費は、高空でも予想より大幅に良好で、到着時には燃料が大
量に残っており、かなり過負荷でした。風下からファイナルに入ると、空気
の薄さと機体の慣性のため、パスの保持に困難を感じ、緊急投棄ボタンで増
槽を捨てて着陸しました。誘導路が見えるとホッとして、つい速度オーバー
のままカーブを切ったところ、ブロンコは見事に横転。つくづく、うまく行
かないフライトでした(^^;)。

 ボリビアでは戦前、のちに東京初空襲などで有名になる、米陸軍の名パイ
ロット、ジミー・ドゥーリットルが、カーチス社の依頼で戦闘機セールス旅
行を行い、酒の席と空中で、いかにも彼らしい、派手な武勇伝を残している
のですが…これは、またの機会にご紹介します。

●倍速モードの落とし穴:
 私の天文航法は、どうやって誤差の海を抜けたらいいのか、迷路に入り込
んだ感があります。
 まず、太陽の天測計算ですが、機体を滑走路に駐機させたまま、天測テス
トを重ねますと、ほぼゼロから十数nmまで、その都度ばらつきのある誤差が
出ます。また高々度を飛んだり、倍速モード使用時には、どうも誤差が大き
くなるような気がします。

 こうした、リニアでない誤差が生まれる原因は分かりませんが、或いは、
FlightGearの天球が半球型ではなく、多面体に設計されているためかも知れ
ません。となると、どう補正したらいいのでしょう。取りあえず私はF-NAV
に、ゼロ点更正機能を加えました。
 具体的には起動時に天測し、誤差がほぼ無くなるよう、赤緯とグリニッジ
時角に適当な修正値を加算するのです。この補正法ですと、天球の日周運動
に基づく累積誤差は出ないはずです。次に、倍速モードが誤差原因になって
いるかどうか確認するため、バルパライソでゼロ点修正後、1倍速のまま洋
上を1時間半巡航し、5回の天測を重ねました。
 誤差は1回目が東西・南北に各0.5nm程度、2回目が同5〜6nm、3回目
が同2〜3nm、4回目が南北23nm・東西2nm、5回目が南北18nm・東西
6nmで極端な誤差は出ませんでした。どうやら天測を伴う飛行では、倍速
モードを使ってはならないようです。

 次は飛行高度の影響調査です。航海用六分儀の場合は、水平線を基準とし
て天体高度角を計るため、必ず眼高補正をします。しかしFlightGearで
Internal Properties の数値を読む場合は、航空用の気泡六分儀と同様、眼
高による測定誤差は、基本的には出ないはずですので、私は眼高の補正式を
使っていません。また天体までの距離によっては、高度変化に基づき視差が
出る可能性が残りますが、UFOを使い様々な高度で太陽を測定しても、高度
角に差は認められませんでした。

 他に、飛行高度関係の誤差としては、大気差(空気の屈折率)が考えられ
ます。FlightGearが大気差を考慮しているかどうか分かりませんが、少なく
とも前述の「天球多面体」効果で、測定する高度角の大小によって、周期的
に誤差が見える可能性はありそうです。
 もしそうでしたら、その誤差は一定のはずです。そこで機体を地上に置い
たまま、シミュレーション時刻を調節して、太陽の高度角を15度間隔で増や
し、角度の秒単位で実測値と比較しました。結果をExcelに入れて散布グラ
フを描いたところ、まるで3次関数曲線の一部分のような、大変美しいグラ
フが得られました。私は一瞬、「勝った。これで完璧な補正ができる!」と
思いました。
 ところが…少し時間を置いて、データのすき間を補完する計測をしたとこ
ろ、ドットはグラフから大きく外れました。また、改めて天測テストをし
たところ、グラフとはかけ離れた誤差が続出し、「さっきのは一体、何だっ
たんだ?」と、首をひねる羽目になりました。謎は謎を生み、ますます迷路
が拡がるようです。

●旅路は続く:
 この後、ラパスからペルーの首都リマまで進出。ラパス北方のチチカカ湖
は、「汽船が航行可能な湖では、世界一の標高」だそうですが、大変広くて
対岸が見えず、高山地帯に突如、海が現われたような印象でした。
 インカの天空都市・マチュピチュもこの近所ですね。事前にUFOで詳細
に偵察したところ、少々それっぽい地形は目にしましたが、ネットで調べた
緯度経度とは一致せず、確定に至りませんでした。付近は、狭いが深い谷間
が縦横に走り、塔のような形の峰が連なって「なるほど、こんなところだっ
たのか」と、気分だけは味わいました。
 また以前、どなたかがご教示下さった、リアルウエザーを正確に反映させ
る変更を試してみたところ、アンデス越えの最中に、めまぐるしく風向風速
が変化しました。面白いけど…推測航法はメチャメチャに(^^;)。でもこれ
が、リアルなんですよね。

 引き続き、太陽を使って天測しましたが、やはり数nmから数十nmの測位誤
差が見られました。どうもこのあたりで、問題の探り方を変えなくてはなら
ないようです。
 これまでの経験では、FlightGearは針路に関する限り、非常に正確に飛行
を再現しますが、どうも前後方向の距離に関しては、対地速度(計器の示度
+風の影響)よりも、1〜2割速く飛んでいることが、しばしばあると感じ
ていますが、皆さんはいかがでしょうか。このへんをきちんと検証すると、
或いは突破口が見えてくるかも知れません。

     ○

 先の話ですが、天測の研究は、極地航法に応用できそうです。南北両極で
はVORが使えません。また磁気偏差が極端に大きい上、経線が極点に集中し
ているため、HUDの真方位表示を使っても、保持すべき針路が短時間に変化
し、GPSなしの航法はかなり厄介です。
 しかし天測計算の技術があれば、太陽を正確なコンパスとして使えます。
測位が目的なら、角度にして1分以内の精度が欲しいですが、方位を知るだ
けでしたら、1度以内の精度で大丈夫。その程度の技術でしたら、すでに
手中にしていますので、ぜひ研究してみたいものです。
 FlightGearの新バージョンは、DLしましたけど未実装。天文関係や地球モ
デルまでは、変化がないと思いますが、どうなっていますでしょう?
 長文にて失礼しました。
投票数:23 平均点:3.48
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-2-2 21:24 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 私の世界一周は昨秋以降、すっかり天文航法の研究にハマり、ひたすら太陽をにら
んで南米に座り込んだまま、年が暮れてしまいました(^^;)。
 この航法は未完成ですが、将来、西海岸からハワイへ向かうまでは、余り必要もな
いため、ひとまずベーシックなVOR航法に戻り、北米への航程を稼ぐことにします。

 FlightGearのVer.1.9.0では、使い慣れたブロンコ改が起動しなくなりました。残念
な反面、何年も同一機を使うと、フライトの世界が狭くなるとも思います。ブロンコ
は多用途で面白い飛行機ですが、角張った双胴機で空気抵抗が大きいためか、燃費は
相当悪い機体でした。積載量に任せて極端に大量の燃料を積み、航続力を確保したも
のの、同じ長距離を飛ぶなら、もっとこう…ほっそりした、低燃費かつ高速な機体で
スマートに巡航すべきではないか、という気もしていました。
 新たな常用機には、スイス製練習機・ピラタスPC7を選びました。まさに「ほっそり
して」かなり高速です。今回はテストと改造を進めつつ、ペルーの首都リマからブラ
ジル北部を横断し、南米北岸に浮かぶカリブ海の入り口・トリニダード島へ向かいま
す。途中、世界最大のテーブルマウンテン、アウヤンテプイ山を見物します。

●ピラタスPC7に着目:
 使用機を決めるに当っては、Ver1.9.0で数十機を起動し、視界の善し悪しや航法計
器の充実度を調べ、比較的良いものを飛行テストし、操縦が容易かどうか確認しまし
た。航続距離や性能を加味して総合的にみると、私の旅にはPC7がダントツで優秀と
思われました。
 ピラタス社のHPによりますと、PC7は1978年に初飛行し、21カ国に輸出しているそ
うです。FlightGearのモデルは、単発ながら3車輪のため滑走が容易で、戦闘機より
視界が良く、操縦性も非常に素直で、失速特性も良好です。簡単に連続宙返りができ
る機動性を持ち、最大約300Ktで巡航可能と、以前から印象的な機体でしたが、残念
ながら航法計器がコンパスしかなく、軽量化のため航続距離も100nm未満で、旅には
使えないと思っていました。
 しかし、昨年9月22日リリースの現行機は、パネルがよりリアルになり、VOR/DME
とILS、ADFを完備し、デフォルトで左右両翼に計2000Lbsの燃料を積み、優に1000nm
以上の航続力を持っています。ということは、改造すればカリフォルニア=ハワイ間
が飛べそうです。「よーし、これで決まりだ」と思いました。

●航続力を倍増、そしてリペイント:
 まず、燃料搭載量を増やします。デフォルトでは、燃料計フルスケールの半分しか
入らないため、タンク容量を目盛り通り、計4000Lbsまで拡張し、ついでにエンジン
推力を2割近く増強しました。
 次は塗装です。私はピラタス社に敬意を表し、マイアルバムでご覧頂けますように
もろにスイス風の塗装にしました。この配色には、西洋風の紋章が似合いそうです。
「紅の豚」原作コミックによると、ポルコ・ロッソは愛機サヴォイア飛行艇に、生ま
れ故郷・ジェノヴァの市章を描いていますので、私も真似してPC7に、昔ちょっと縁
のあった、ジュネーブ市の紋章を入れてみました。
 こうなると、日本風のレジストレーション(機体記号)では変ですので、スイス籍
のレジを記入。計器に若干不満はありますが、取りあえずテストを兼ねて、旅を再開
することにしました。以下に、フライトプランをお目に掛けます。約1800nmあります
ので、4回に分けて飛びましたが、途中は無給油です。

■リマから、トリニダード・トバゴ共和国への旅■
(文中、Magとあるのは磁気方位です)
◎ペルーの首都リマ ジョルジュ・シャヴェーズ空港SPIM
VOR113.80 12.00.30S-77.07.22W 偏西0.26
   ▼34.6度(Mag35度)265nm
★プカルパVOR116.70 08.22.33S-74.34.19W 偏西3.09
 空港SPCL ウカヤリ河岸
   ▼47.6度(Mag50.7度)374nm
★タバティンガVOR117.50 04.09.56S-69.56.10W 偏西7.46
 空港SBTT アマゾン河岸
   ▼36.3度(Mag37.5度)299nm
★ウアウペスVOR115.40 00.09.02S-66.59.06W 偏西10.22
 空港SBUA ウアウペス河岸
   ▼50.9度(Mag65度)460nm
★サンタエレナVOR117.70 04.41.32N-61.01.30W 偏西14.3
 空港SVSEは222°10nm RWY11-29
   ▼311.3度(Mag325度)113nm
△テーブルマウンテン アウヤンテプイ(エンジェルフォール)
 注・FlightGearでは05.56.09N-62.26.53W付近にある。
   ▼13度(Mag27.4度)279nm
◎小アンティル諸島トリニダードトバゴ共和国
 ポートオブスペインのトリニダード・ピアルコ空港TTPP
 VOR116.90 10.27.58N-61.23.28W 偏西14.4
 ILS109.70-RWY28 RWY10の入り口にNDB382

 最初の航程は、改造無しの計器で飛び、速度や燃費などを測定します。出発地リマ
の天候は、200度12Kt程度の風、1000ftにFew、17000ftにbrokenの雲がありました。
PC7は起動中、常にエンジンが回っており、始動や停止の操作ができないのが、少々
残念です。

●素晴らしい上昇力と巡航速度:
 UTCの1710時(地方時1210時)に、ジョルジュ・シャヴェーズ空港(ブレリオ機で
アルプス初横断に成功し墜死した、あのシャヴェーズにちなむ命名)を離陸。満タン
4000Lbsながら、18秒で130Ktに達しローテーション。思いのほか軽く地面を切り、上
昇率3000ft/minを維持して10000ftへ。中継地のプカルパVORに向けて定針します。プ
カルパって、どこにあるかって? ペルーのウカヤリ河岸の街…ですが、そう言われて
もよく分かりませんよね。
 アンデスを越えるため、引き続き高度を上げます。本機の上昇力は優秀で、いつの
間にか空が暗くなり、「おや、もう20000ft?」という感じでした。南回帰線の北を
飛んでいますので、太陽はモロ真上に輝いていますが、今日は天測しなくていいのだ
と思うと、ホッとします。
 PC7には、セスナと同タイプのDMEが付いており、VOR局を基準とした対地速度と、
到着までの予測所要時間が表示されます。ブロンコにはない装備で、使うのは久しぶ
りでしたが、便利なものですね。テストのため更に上昇し、高度別の飛行速度と燃費
をチェックしました。なかなかの快速で、プルカパをあっさり通過し、次の中継地に
向かいながら、以下の計測データを得ました。タービンエンジンは、全開でもかなり
熱効率が高いため、ここではスロットル全開時のデータを挙げました。なおGSには当
然ながら、風の影響が含まれていますが、今回の風速による誤差は数Ktなので、ここ
では無視しています。

※KIAS=指示対気速度(Kt)、GS=対地速度。
・高度 5000ft。306KIAS、GS343Kt、燃費3.21nm/gal
・高度15000ft。272KIAS、GS355Kt。燃費3.95nm/gal
・高度20000ft。245KIAS、GS345Kt、燃費3.86nm/gal
・高度25000ft。231KIAS、GS355Kt、燃費3.96nm/gal
・高度30000ft。210KIAS、GS352kt、燃費3.92nm/gal
 この計測は、順不同です。燃費だけ見ますと、15000ftと25000ftの2カ所が良好で
すけれど、15000ftの数値は、やや燃料が減ってからの測定なので、実際は25000ft
あたりが、一番経済的な飛行高度と思われます。また航続力は約2500nmとみられ、
要求を一応満たすことが分かりました。

●改めて、KIASとTASの差を痛感:
 飛行機の速度には、計り方がたくさんありますが、フライトシムでよく使われるの
は、主にKIAS(Kt表示の指示対気速度)とTAS(真対気速度)ですね。ご存じのよう
に、KIASはピトー管による動圧の測定値を、そのまま気速計に表示するので、操縦中
に失速速度など、空力関係の状況を知るのに適していますが、航法に使うには、大気
密度などを補正したTASを求めて、風の影響を加味する(これがGS=対地速度)必要
があります。
 私はここ1〜2年、もっぱらセスナ310やブロンコ改で、景色のいい5000ft程度の
低空を飛んでおり、コンコルドを操縦する場合を除くと、あまりKIASとTASの差を意
識しませんでした。そこで長らく航法も、KIASを基準に行っていたのですが、改めて
ここに挙げた数値を見ますと、5000ft程度の低空でも、KIASでは約1割の誤差が出ま
すので、これまでのナビゲーションは速度・飛行時間の管理面で、少々いい加減だっ
たと反省しております。
 そこで、KIASからTASへの換算表を作って画像化し、いつでも引っ張り出せるよう
にしましたが、これでは不便ですので、後でご紹介しますように、気速計にKIASと
GSの両方を、デジタル表示できるようにしました。
 初日の航程の終わりは、ジャングルの中をうねる大河・アマゾン河畔のタバティン
ガでした。まだ着陸に十分慣れておらず、ちょっと乱暴ながら無事に接地。この機体
は軽いためか、離着陸時に横風の影響を受けやすいようです。到着後は数日を掛け、
計器を改造しました。

●VOR局の方位を、一目で知りたい:
 PC7のVOR指示器は、セスナなどに多用されている、プリセットしたコース方位から
の逸脱角度を示すもので、コーストラッキングには便利ですが、任意のVOR局への
方位を直読できないため、「ここは一体、どこ?」という場合には不便です。これを
まず、何とかしたいと思いました。
 私は最近、ようやく各種計器のxmlファイルの構造が、少しだけ理解できました。
要するに property タグに Internal Properties のパスを書いて、必要な数値を呼び
出し、アナログ計器なら指針の画像を rotate で回し、デジタル計器ですと、そのま
まテキストで表示しているのですね。そうと分かれば、私も多少は、機能面の改造を
することができます。
 私が欲しいのは、いわゆるRMI(radio magnetic indicator)です。コンコルド
やブロンコに付いている計器で、外周の方位目盛りが回って、機首方位を磁気方位
で示し、指針がVOR局の方角を、機首を「真上」とする相対方位で示すヤツです。
最初は、取りあえずデジタル表示で、このような機能を作ることにしまして、HSI
(ジャイロコンパス兼VOR指示器)に付いている、デジタル式のベアリング(設定コ
ース)表示機能の構文を借り、HSIの頂点に機首方位(磁気方位)を、またその右に
赤い文字で、VOR局方位をデジタル表示しました。ついでにDMEの数値も、赤字で左側
に表示させます。これで多少、飛びやすくなりましたが、もっと直感的に読める計器
が欲しいものです。

●RMIを自作する:
 そこで、余り使わないADF指示器を改造して、RMIらしきものを作りました。外周の
方位目盛りが、磁気方位を指すようにすることは出来ましたが、VOR局方位を示す指
針を、機首からの相対方位にする方法が分からず、結局は、方位目盛りを「北が上」
のままとして、指針の方位角が読めるようにしました。
 これでは、まだVOR局の方位を、直感的につかむことは出来ません。あれこれ悩ん
だ末、ふと計器中央にある飛行機型のシンボルマークを、磁気方位に合わせて回転さ
せてしまえばいい、と言うことに気付きました。また方位目盛りのプロパティには、
/instrumentation/heading-indicator/offset-deg の値を代入しましたので、
ちゃんと偏差の分だけずれて、磁気方位を示すようになりました。ただしこのオフセ
ット値は、どうも時間経過に応じて(リアルにも)ジャイロ・ドリフトを起こすらし
く、しばらく経つとずれてしまい、OBS(方位目盛り調整つまみ)をクリックして、
補正しなくてはなりません。従って事前にやはり、飛行地域の偏差を調べておく必要
があります。この計器は、実際のものとは表示法が異なるため、邪道と言えば邪道な
んですが、使ってみると便利この上なく、現時点では十分満足です。

●気速計も改造、パイロットを乗せる:
 ついでに、気速計を改造しました。デフォルトではKIAS指針に加え、上段にマッハ
計、下段にKIASのデジタル表示があります。マッハ計は要らないので、これをKIAS
表示に変更。下段にはTASを出したいと思いましたが、どうしても適切なプロパティ
が見当たらず、ちょっとインチキですが、GSの値をグリーンの文字で表示しました。
これで航法はもう、バッチリです。なおPC7の着速は、90Ktがベストなようですので、
90の目盛り部分に、緑のマークを描き入れました。
 慣熟飛行を兼ねて、リマで計器関係の飛行テストを重ねましたが、PC7にはパイロ
ットがいないので、どうもスナップショットが面白くありません。そこでブロンコ改
のパイロット人形を借り、他機のxmlファイルを参考にして、models/pc7.xml に人形
acファイルのパスを書き加えたところ、うまく出現しました。座標の値を調整し、飛
行服の色などを整えて、ひとまず完成です。
 余談ながら、Ver1.9.0では、コクピット内で視線を動かすと、カメラ位置が左右に
ティルトしてくれますね。実機ではパイロットが、やはり無意識に頭を動かすと思い
ます。これで機外側面や後ろの下方視界が、少しですが改善され、かつ非常にリアル
になりました。

●計器改造の効果を確認:
 Ver1.9.0では、どうもうまくセーブが利きません。タバティンガでは、燃料を前回
の残量2847Lbsにセットして離陸し、旅を続けます。280度8Ktの風。1100と9000ftに
brokenの雲があります。
 UTCの1644時(ローカル1144時)に離陸。ぐんぐん急上昇し、気分はまさに大空の
ライト・スポーツカー。実に飛ぶのが楽しい機体です。北東へターンして、空港そば
のVOR上空に舞い戻り、今日の目的地・ウアウペスVORに向けて定針。いわゆるリバー
サル・ディパーチュアですが、新しく装備した「RMIらしきもの」のお陰で、非常に
飛びやすくなりました。南国の美しい空が、目に染みます。この日もひたすらジャン
グルの上を順調に飛び、ウアウペスに接近しました。
 さて、ここでちょっと問題が。30nmほど手前で高度を下げ、最下層の雲のレイヤー
の下に出ましたが、この日はシーリング(雲底高度)が、地上600ftくらいしかなく、
ILSもないため、少々危ないアプローチになりました。地図代わりにAtlasを眺めると
幸運にも、滑走路はコースにほぼ正対しています。しかし、わずか7Ktの横風が予想
より大きく作用し、機体は滑走路で少々偏向。転覆しては詰まらないので、逆らわず
にグリーンへ逸脱し、誘導路に乗り入れて止めました。やーれやれ。
 着陸時刻は、予定より4分遅いだけ。計器改造によって明らかに、速度に関する航法
精度が大幅に上がりました。あと56nm北上すれば、もう赤道です。

●「悪魔の山」上空を行く:
 ウアウペスのサンガブリエル空港から、次の航程へ。これまでは各種の計測をしな
がら、ずっとリアルタイムで飛んできたのですが、ここで初めて倍速モードを試しま
す。あいにくPC7は、磁気方位や真方位の保持中は、2倍速でも短周期の強いロールが
発生し、発散モードに入りそうです。ウイングレベラー使用ですと、4倍速程度でも
問題はありません。
 サンタエレナに着陸後、ベネズエラ・ボリバル共和国のギアナ高地にある、世界最
大のテーブルマウンテン、アウヤンテプイ(現地語で「悪魔の山」)を探します。実
世界では、この山には落差世界一(978m)の滝、エンジェルフォールがあり、あまり
にも落差が大きいため、水は拡散して滝壺がない、のだそうですね。FlightGearでは
無論、滝は見られませんが、この滝の位置をGoogle Earthで調べ、この緯度経度へ
コースを引きました。燃料を7割近く消費して機体は軽く、ますます上昇力が増して
快調です。
 さてアウヤンテプイ。なるほど、東京都23区並みの広さとあって、デカイです。
西部劇のテーブルマウンテンよりは、頂部がデコボコしていました。
 この山が世界に知られたのは、1937年になってからで、発見者はジミー・エンジェ
ルという米国のパイロットです。ベランカ単葉機に、妻と2人の地質学者を乗せ、金
鉱探しのフライト中に、この山を見つけました。4人は…いかにも、ありそうな話です
が…「着陸してみよう!」ということになり、クラッシュして離陸できなくなりまし
た。切り立った地形だけに、下山には11日も掛かったそうです。ベランカ機は1970年
に回収され、修理のうえ地元空港に展示されているとか。

●おお、カリブ海:
 アウヤンテプイを背に、北に向かいます。燃費を稼ぐため、高度を20000ftに上げて
トリニダードへ。オリノコ川の、広い河口デルタ地帯を横断し、ついに海が見えまし
た。これで南米大陸とも、お別れです。機上から振り返ると背後は一面、ジャングル
と蛇行する大河が横たわっていました。
 狭い海峡を飛び越えて、トリニダード島を横断。空港と、ポートオブスペインの街
を確認。東西に走る滑走路へ、西から進入。滑らかにタッチダウンし、エプロンに乗
り入れて駐機しました。燃料の残り309Lbs。深く青い空が印象的でした。
 PC7改は、素敵な飛行機です。次回からは、カリブ海の旅を楽しむ予定です。
投票数:11 平均点:5.45
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009-2-16 22:50
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 今回は、飛行艇で行くカリブの休日、といったお話です。
主にPBYカタリナ飛行艇で、カリブ海南端(南米北岸)のトリニダード島からキュ
ーバまで、ゆったり海上飛行を楽しみます。
 カタリナは、「本体の開発」フォーラム「wildfire」の項目で話題になりまし
たように、海上で水をタンクにくみ上げて、消火用に投下する機能がありますが、
あれこれ作り込まれた、割に完成度の高いモデルで、ぜひ多島海で観光に使ってみ
たいと思っていました。

●カタリナ飛行艇と、カリブ海について:
 本物のカタリナは1935年に初飛行。6年後に登場の川西・二式大艇に比べますと
最高速度が7割弱、航続距離は半分、爆弾搭載量も1割少なく、かなり見劣りします
が、途中から水陸両用機になり、通算4000機以上(二式大艇は167機)作られまし
た。頑丈な飛行機で、戦後は消防飛行艇に使われたほか、遊覧飛行にも最近、まだ
飛んでいるのをテレビで見ました。これは海上で使われる軍用機としては、驚異的
な耐久性ですね。
 FlightGearの機体は、よく見るとフランス籍で、プロヴァンス地方・民間防衛な
んとか隊所属のようです。日本で言えば「南仏広域消防組合」でしょうか?
機内の視野は、胴体中央窓や、後部スポンソンにも切り替え可能で、私はこのスポ
ンソンからの眺めが好きです。本来はもちろん銃座ですが、機体の乗降口にも使わ
れます。
 これまでFlightGearでは、あまり水上機を飛ばしたことがありませんでしたが、
滑走路にカタリナを出現させると、空港によっては、機体が最寄りの海にドボーン
と移動します。どうやらAtlas画面の、■□■という記号の位置に移るようです。
この記号は当初ヘリポートかと思いましたが、水上機の係留地点を意味するみたい
ですね。ただし、移動しないケースもありますが。
 カリブ海はかつてスペインを始め、英仏や米国が植民地獲得に走り、現在はその
多くが独立して、非常に国境線が複雑なところです。今回のフライトは多分、8カ
国の領空にまたがっていると思います。
 この海域は海賊で有名ですが、これも植民地争奪戦に関係がありそうです。英国
は、老大国・スペインに対抗するには艦隊が足りず、私掠船(敵船を略奪する許可
状を与えられた民間武装船)も活用しました。私掠船は、貴族や金持ちの共同出資
で仕立てられたのですが、一部は海賊稼業にも手を染めた(英国船も襲った)のだ
そうですね。逆に海賊から、貴族の称号を持つ海軍中将になった、フランシス・ド
レークのような例もありますが。
 …では、今回のフライトプランをご紹介します。

■PBYでカリブ海をゆく■(トリニダード〜グァンタナモ)
「偏西」は西寄りの磁気偏差。(●磁気○度)は磁気方位のコース。

◎トリニダード・ピアルコ空港TTPP
VOR116.90 10.27.58N-61.23.28W 偏西14.4
トリニダード・トバゴ共和国
   ▼346度95nm(●磁気0度)
★Gnd Point Salines空港VOR117.10 NDB 362
グレナダ 120006N-614706W TGPY 偏西14.2度
   ▼24度114nm(●磁気38度)
★Bne HewanorraVOR112.40 NDB305
セントルシア 134400N-605837W TLPL偏西14.4
   ▼357度51nm(●磁気11度)
★Fort de FranceVOR113.30 NDB329 Le Lamantan空港TFFF
仏領マルティニーク島 143526N-610121W 偏西14.2
   ▼343度105nm(●磁気357度)
★Point a PtreVOR112.90 NDB482
仏領グァドループ島161557N-613225W TFFR 偏西14.3
   ▼319度140nm(●磁気333度)
★ST Marteen Prinsess JulianaINTL空港VOR113.0 NDB284
蘭領シント・マールテン島(南半分)
(北半分は仏領サン・マルタン島)
180217N-630705W TNCM偏西13.6
   ▼278度165nm(●磁気291度)
★San JuanVOR114.0
プエルトリコ(米領ヴァージン諸島)182648N-655922W TJSJ偏西12.5
   ▼270度209nm(●磁気282度)
★LasAmericasINTL-VOR114.70 NDB220(北西)偏西10.5
ドミニカ サントドミンゴ182558N-694002W MDSD
   ▼286度324nm(●磁気295度)
◎米海軍グァンタナモ基地VOR114.50 MUGM偏西7.9
キューバ 195423N-750958W RWY東西方向
(計1203nm)

●カリブ海を楽しむ:
 トリニダード・ピアルコ空港で起動したカタリナは、約10nm西の海上に自動移動し
ました。天候は4000ftにbroken、1600ftにFewの雲。全高度で無風。本機はDMEが
無いので、Internal Properties/のDME項目を表示して、画面の隅に置いておき
ました。パネルには時計もありませんが、これも「Time Settings」のウインドウを
出しておくと、地方時まで分かって便利です。
 1617時(UTC。ローカルでは1217時)にエンジンを始動。燃料はデフォルトのまま
約10000Lbs搭載しています。海上では小回りが利きませんが、ラダーを左右に動かす
と、旋回の外側エンジンが増速し、内側エンジンが減速になって、旋回を助けるヨー
・モーメントを発生するあたり、芸が細かいですね。
 離水時は、「B」キーでアンカー(パーキングブレーキ)を解除しますが、海中に
ギアを突き出たままだと加速しませんので、忘れず格納しましょう。55Ktあたりから
艇体が浮き上がり、水上スキーのような「プレーニング」に移ります。離水は約90Kt
で可能ですが、早く引き起こし過ぎると失速して、海面上で実機同様に、ポーポイズ
(連続ジャンプ運動)を起こす傾向があります。これは一種の自励振動で、実機です
と危険だそうです。
 さあ、水面を離れました…「f」キーで翼端フロートを畳み、島の西端から機首を
磁気方位45度に向け、空港VORから北へ延びるアウトバウンド・ラジアルをインター
セプトし、3000ftまで上昇します。上昇中の燃費は0.65nm/galと劣悪ですが、航続
距離は残り1200nm、滞空時間約12時間をマーク。さすが哨戒機ですね。
 離水後14分。3000ftでVORに乗り、エンジン全開で173KIAS(指示対気速度)を
記録。燃費は1.24nm/galまで改善され、航続力は残り2171nmとなりました。実機より
かなり長距離が飛べそうですが、エンジンを絞ると速度はもちろん、航続力も大幅に
低下するので、レシプロエンジンとしては、非現実的な動力設定ですが、出力95%で
飛ぶことにしました。
 頭の中で、「紅の豚」に使われた久石譲さん作曲「Flying Boatmen」などを演奏
しながら、快調に巡航します。
 カタリナの長所は、オートパイロット使用中に倍速モードを使っても、振動しない
ことです。その反面、足が遅い上に、途中からVOR指示器が、コースを表示しなくなり
ました。低空で受信感度が鈍いためかと思いましたが、至近距離でも入らない場合が
あります。Atlasに頼って飛びましたが、以後ほとんど切れ目なしに、大小の島が視界
に入り、楽しいフライトになりました。現在はVer1.9.1を使っていますが、かなり
頻繁に船が見えます。コンテナ船が多いようで、時々は客船が交じり、まれに漁船も
走っています。
 離水から約1時間20分、ジャイロコンパスがずれているのに気付き、フライトプラ
ンで偏差を確認して、メニューの「Instrument Settings」で修正しました。
前回もご紹介しましたが、少なくともVer1.9.0以後は、顕著にジャイロ・ドリフトが
発生し、20分も放置すると、定針儀やHSIの方位がずれてきます。リアルですが少々
面倒臭いですね。手持ち資料で、偏差データをいちいち確認するのも面倒ですので、
PC7改のパネルには、磁気偏差を自動表示することも検討しています。
●フランシス・チチェスター再び:
 私は2006年4月の本連載で、セスナC310を使い、ニュージーランドからオーストラリ
アへのタスマニア海横断をご紹介しました。この時、私の好きなイギリスのアマチュ
ア飛行家(であり、後に世界的なヨットマンの)サー・フランシス・チチェスターが
1931年、水上機に改造した、デハビランド・ジプシーモス複葉練習機で、独自に工夫
した天文航法を使って、この海を初横断したお話もご紹介しています。
 チチェスターは最晩年の1971年、ヨット「ジプシーモスV世」号を駆って、帆船に
よる絶対速度記録樹立(4000nmを、たった20日間で航走)に挑み、大西洋とカリブ海
を縦横に航行しました。私は最近、この時の航海記「ロマンチック・チャレンジ」を
読み直して、この時の航路が今回の飛行コースを、2カ所で横切っていることを知り、
「またも、縁があったか」と感慨を覚えました。
 チチェスターはかつて、自伝「孤独の海と空」の中で、水上機は飛行場のない未開
発の島も訪れることができ、非常に魅力的だと語っています。私もなるほどと思いま
して、本機で着水して、ビーチング(上陸)を試みたら面白そうな場所を、探すこと
にしました。
●カリブの楽園・オランダ兼フランス領の島:
 出発から約3時間(3倍速も使用)後、オランダ領シント・マールテン島に到着し、
プリンス・ユリアナ空港に低空で接近したところ、あまりの美しい景色に見とれまし
た。海に張り出たビーチと、湾の配置の美しさ。また精密に作り込まれたターミナル
には、プールが二つもあるリゾートホテルが隣接し、巨大なヤシの木陰に、カフェテ
ラス風のテーブルや椅子がどっさり。右後部のスポンソンから撮った写真を、マイア
ルバムにアップしておきます。
 どこを見ても、あまりに素敵なので、空港着陸は後回しにして、いったん島の北岸
に着水し、砂浜へ上がってみることにしました。低空で小さな湾を抜けて外洋に出て、
数マイル沖を高度600ftでターンし、機首を海岸に向けてパワーを絞ります。着水後、
減速が遅れると陸岸が近づいて危ないので、基本的には、岸と並行に降りるべきだと
思いました。
 ビーチの数十m手前で、うまく20Kt程度に減速。海中にギアを下ろすと、水の抵抗
で更に減速します。つまりブレーキ代わりに使えますが、実機だと壊れる心配もあり
そうですね。本機のランディングギアは、当然ビーチングギア(自力上陸用の車輪)
としても使用可能です。二式大艇のビーチングギアは、整備員が海に入って取り付け
る形式なので、カタリナの方が進んでいます。
 約10Ktで砂浜にのし上げると、機体は大きく機首を持ち上げて上陸。いったん尻餅
をつきましたが、ブレーキを掛けて少々パワーを加えたら、水平姿勢になりました。
いざ上陸してみると、このビーチは奥行きが狭く、かなり勾配もあって、海に向けて
機体を反転できるか、ちょっと心配しました。幸い陸上では、左右エンジン差動のお
陰で一段と小回りが利いて、うまく回れ右に成功しました。
 エンジンを止め、焼きそばを食べながらネットで調べてみますと、この島は、私が
降りた北半分はフランス領になっており、正式名も「サン・マルタン島」というのだ
そうです。
 一服して離水し、再びオランダ領にある、プリンセス・ユリアナ国際空港に接近。
この空港は1943年、米軍基地として建設されたので、実際にカタリナが発着する機会
も多かったことでしょう。滑走路正面はマホ・ビーチと呼ばれ、飛行機のアプローチ
が間近に見えるので有名とか。ターミナルにはボーディング・ブリッジもあり、非常
にていねいに作られていますので、皆様もカリブ海にお立ち寄りの節は、ぜひ訪ねて
みてください。

●殺風景な牢獄・グァンタナモ基地:
 さて、カタリナは楽しいけれど、さすがに鈍足です。
ここからはPC7改に乗り換えて、距離を稼ぐことにします。燃料は、半分の2000Lbs
に抑えましたが、これでもキューバ南東のグァンタナモ湾まで行くには、十分過ぎる
ほどで、高空を飛べばフロリダまで届きそうです。
 風は地表で100度15Kt、9000ftでは19Ktでした。PC7改は小さいだけに風に敏感で、
ヨットで言う「ウエザーヘルム」(風上に回頭する傾向)を強く感じます。カタリナ
よりさすがに舵が軽く、スムーズに離陸して、極めて軽快に上昇。空港7nmの地点で
VORコースに乗り、離陸の11分後には、早くも20000ftで251KIAS、GS(対地速度)
で360Ktをマークして、空港から60nm離れていました。ほとんど、ジェット機の気分
ですね。
 VORをプエルトリコに切り替え、CDIによる針路保持を掛け、ウイングレベラーを
使って4倍速飛行。数分で針路がずれてくると、ジャイロドリフト補正とCDI保持で
修正し、また倍速飛行。雲上で、ひたすらこれを繰り返すフライトです。いささか
単調ですが、イスパニオラ島(ドミニカ共和国。西半分はハイチ)の高い山々だけ
は、雲ともやを通して、うっすら眼下に見えました。1時間45分後、グァンタナモ
湾の77nm手前で降下を開始。15分足らずで1500ftまで落とし、低い雲の下に出て、
細い湾口に滑走路を視認しました。

 昔のキューバを「米国の鼻先に浮かぶ不沈空母」だとしますと、グァンタナモ湾の
米軍基地はさしずめ、空母の船底に刺さった機雷でしょうか。基地は米西戦争後から
あったのですが、米軍は「キューバ危機」などをはさんだ冷戦中、よくここを維持で
きたものだと思っていました。しかし調べてみますと、100平方前幣紊發△覽霏腓
基地で、昔は周囲を地雷原や戦車で固めており、とてもキューバ軍が追い出せる代物
ではなかった模様です。ふーむ、こんな地形だったのか。
 雲が低いため旋回を避け、滑走路が長いのを幸い、風上から直線進入しましたが、
追い風が思ったより強く、着地と減速に手間取ってゴーアラウンドしました。着陸
後、広大なエプロンに乗り入れると、周囲は沼地みたいな、殺風景な平地でした。
最近は、イラク捕虜虐待のイメージも手伝い、どうも陰気な印象です。次回はここを
抜け出して、コロンブス初上陸の地とされる、サンサルバドル島を経由し、フロリダ
半島を目指します。
投票数:12 平均点:5.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-2-17 2:28 | 最終変更
toshi  長老   投稿数: 1143
hide さん

いつも楽しい読み物をありがとうございます。

引用:
一服して離水し、再びオランダ領にある、プリンセス・ユリアナ国際空港に接近。
この空港は1943年、米軍基地として建設されたので、実際にカタリナが発着する機会
も多かったことでしょう。滑走路正面はマホ・ビーチと呼ばれ、飛行機のアプローチ
が間近に見えるので有名とか。

私がこのプリンセス・ジュリアナ国際空港(TNCM)を知ったのはつい最近で、wiki の「訳)スクリーンショット」を書いていたときなのですが、写真や動画を調べてみて驚きました...
例えば、
http://www.ne.jp/asahi/tanaka/yasuaki/mahobeach.html
http://live.arukikata.co.jp/country/?area_id=19995

youtube にもたくさん動画が掲載されているようです。
投票数:8 平均点:2.50
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-2-18 20:17
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
toshiさん。
 とても美しい、迫力満点の画像をご紹介頂き、ありがとうございました。
改めて眺めると、「こ〜んなに近くて、低いのか!!」とびっくり。日本では考えら
れないような光景ですね。また、この空港のICAOコードを、うっかり書き忘れてい
ました(^^;)。追記して下さって感謝いたします。
投票数:5 平均点:6.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-3-11 15:46 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 私の世界一周は前回、南米北岸のトリニダード・トバゴから、カリブ海を小アン
ティル諸島沿いに北西へ進み、キューバ南東岸のグァンタナモ米海軍基地まで進出
したところで、一休みとなっていました。
 ここから米本土・フロリダ半島を目指すフライトプランを作ったのですが、なか
なかまとまった飛行時間が取れませんので、取りあえずは、途中にあるサンサルバ
ドル島(コロンブスが新大陸発見の途上、初めて上陸したとされる島)までの航程
を消化します。最初にまず、PC7改の追加改造についてお話ししましょう。

●さらに航法計器を改良する:
 前回までの改造では、ADFを基にして作ったRMIまがいの、NAV1-VOR局の方位
を直読する指針を持つ計器をPC7改に装備しましたが、今回はこれに、VOR2指針
も追加して、一層使いやすくしました。
 またHSIの周辺には、DME表示などをデジタルで出すようにしていましたが、何も
ないパネル上にバラバラと、デジタル数字が散在しているのは、いささかみっとも
ないと思いまして、計器より一回り大きな、黒く四角い背景を敷き込んで、この上
に数字を表示させ、液晶画面を持ったEHSI(電子化HSI)に見えるようにしたいと
思いました。HSIのxmlファイルを調べますと、計器の盤面や指針は、幾つかのレイ
ヤーになっていて、<layers>タグ内に記述された順番に、下から重なって表示さ
れるようですね。そこでGIMPを使って、black2.rgbという黒一色の画像を作成し、
レイヤーとして指定してみました。こんな具合です。

<layers>

<layer>
<name>panel back</name>
<texture>
<path>Aircraft/pc7/Instruments/Textures/black2.rgb</path>
</texture>
<w>185</w>
<h>185</h>
</layer>

 幸いうまく行きましたので、この黒い背景の上に、各デジタル表示の位置に合わ
せて、「DIST」(DME表示)や「CRS」(VOR1設定コース角度)などの、説明文字
を記入しました。PC7のパネルは明るくて、デジタル表示と盤面のコントラスト比が
小さく、ちょっと数字が読みづらいと感じていましたので、黒い背景は、この点を
改善する意味合いもあります。
 またオレンジ文字で「Var」とありますのは、マグネティック・ヴァリエーション
(磁気偏差)です。これがあると航法に大変便利ですので、Internal Properties
からパスを指定し、追加しました。
 これらのプログラミングは、まさに見よう見まねの素人細工でして、まだ熟成し
たい点は多々あるものの、何とかここまで出来たのは、私としては嬉しい成果だ
と言えます。(誰もほめてくれないので、自分でほめておきます)(^^;)
 では、サンサルバドル島へ向かいます。

■コロンブス初上陸の島へ■(グァンタナモ基地〜サンサルバドル島)

◎米海軍グァンタナモ基地VOR114.60 MUGM偏西7.9
キューバ南東部 195423N-750958W RWY東西方向
   ▼359度221nm(●磁気06度)
☆Stella Maris空港NDB526偏西7.5 MYLS
ドミニカ グレート・エグジュマ島233450N-751551W
   ▼54度49nm(●磁気62度)
◎サンサルバドル空港MYSM NDB281偏西9.1 
ドミニカ サンサルバドル島240340N-743204W

 グァンタナモ基地の滑走路で、UTC1709時(ローカル1209時)にPC7改を起動。
天候は、8000ftと6000ftにscatterdの雲。風は3000ft60度21Kt、6000ft70度
23Kt、9000ft25Ktです。燃料は満タンの半分、2000Lbsとしました。
 風が相当強いので、航法計算ツール Vintual E6-B を起動して、風力の補正計算
をします。330KTAS(ノット単位の真対気速度)で飛ぶとして、最初の区間の針路
補正値は4度、針路は磁気方位10度、対地速度は322Ktと算出しました。
 この機体は軽いので、横風成分が10Ktもあると、かなり離陸滑走が困難です。
ようやく持ち上げ、グァンタナモ基地VORのアウトバウンドラジアルに乗って北へ。
対地速度を稼ぐため、一気に29000ftまで上がりました。改造したHSIは、非常に
見やすく快適で、思わずうっとり。学生時代に、バイクに新しい計器を追加したり
自作のカウリングを取り付けたりすると、つい運転しながら「かっこいいなぁ!!」
と、見とれたものですが…あの感覚と、よく似ています(^^;)。

●やはり軽いと、燃費がいい:
 ひたすら雲上飛行を続けながら、高度を31000ft〜28000ftまで変化させ、燃費
を計ったところ、ベストは30000ftにおける4.08nm/galでした。以前、南米を飛ぶ
時にほぼ満タンで計測したところ、25000ftで3.96nm/galがベストでしたから、燃
料半分で機体が軽いと、当然ながら燃費そのものが向上し、またベスト燃費を記録
する高度も、より高くなっています。一般的には長距離飛行をする場合、燃料満載で
飛び上がった後、機体が軽くなるに従って、ステップ・バイ・ステップで高度を上げる
のが定石のようですが、PC7改でもこのような飛び方をした方が、より航続力が伸
びそうです。

 …高空を飛んでいるので、グァンタナモ基地のVORは200nm前後まで離れても、
途切れながらですが、何とか受信できます。VORを使って、オートパイロットのCDI
保持モードで定針している間に、実際の機首方位と予定コースを比較すると、偏流
角(つまり修正角)が一目瞭然ですので、これをメモしておきます。事前計算では、
修正角は4度でしたが、実際はオートパイロットは、7度修正していました。

 さて、グレート・エグジュマ島を通過。この島と、目的地サンサルバドル島には
いずれもNDBしかありません。ADFはVORと違い、コース逸脱度を示すCDI指針が
使えませんが、針路を決める際に、いま計った7度の補正値を当てはめれば、試行
錯誤をしなくても、かなり正確にコースをトラッキングすることができます。
 サンサルバドル島までは49nmしかないので、進路が決まったらすぐ降下を開始。
毎分4000ftの降下率で、ドンドコ高度を下げながら、もう一度風向を確認。サンサ
ルバドルの滑走路は、確かほぼ東西に走っているので、アプローチに必要なリード
距離を取るため、あらかじめ機体を西(風下)側に、あと4度変針しておきます。

 もう、島が見えるはずです…2000ftで水平飛行中、もやを破ってサンサルバドル
島が視界に飛び込みました。計画通り、風下から滑走路に接近。この島は南北に、
ずんぐりと長いのですが、内部にたくさんの大きな湖が点在し、ちょっと「骨組み
だけの島」という印象があります。標高も非常に低いようで、一種の珊瑚礁島でし
ょうか。コロンブスの旗艦・サンタマリア号の見張り員が、「島だ!島だ!」と
叫んだのは、かなり接近してからだったろうと想像しました。
 滑走路へのグライドパスに乗るあたりで、スロットルを絞ろうと、「3」キーを
使ったところ、FlightGearに異変が発生。タイムセッティングが勝手に動き、夕暮
れになってしまいました。幸い、滑走路には灯火があります。矢印キーでパワーを
絞り、期せずしてPC7改では初の薄暮着陸となりましたが、何も問題はなく安着し
ました。
 …ここにしばらく滞在し、先日から少々、PC7改の飛行特性をいじっていますの
で、そのご報告もさせていただきます。

●ピラタスPC7改の、機首下げモーメント対策:
 PC7改は、大変操縦しやすい飛行機ですが、1点だけ気になる点があります。
それは、推力の増減によるピッチ角の変動です。この機体のシルエットは、P-51に
ちょっと似ていて、プロペラ軸が高い位置にあるため、パワーオンでは機首が沈み、
オフでは浮きます。この特性は、ブロンコなどにもありますが、高翼のセスナや、
主翼下にエンジンを吊った旅客機とは、逆の特性になるわけで、あまり愉快な現象
ではありません。
 通常の飛行中は、気にはなりませんが、ファイナルアプローチで110〜120Kt
まで減速していると、かなり顕著に出ます。本機は失速特性が穏やかで、速度を落
とすと機首が下がり、本格的な失速にはまず入りませんが、アプローチ速度では、
この減速による機首下げを消すため、エレベーターを或る程度、アップ気味に使っ
て飛んでいます。ここでパスから下に逸脱した場合、修正のため推力を上げると、
更に機首下げモーメントが強く掛かり、エレベーターを上げ舵一杯に取っても修正
しきれなくなります。そこで最初私は、スロットルを一切使わない着陸法を考えま
した。

(1)1500ftを維持して空港に近づく。
(2)滑走路が見えたら、パワーアイドルにする。以後パワーは使わない。
(3)エレベーターで機首を吊り、130Ktに落としてギアとフラップダウン。
(4)滑走路端約2nmの位置から、通常より深い進入角(ピッチ角でマイナス5度)
   を取り、110Ktを維持して降下する。この方法では、ややオーバーシュート
   気味になる場合が多いが、下げ舵で機首を抑えても、機体が軽いため、ギア
   とフラップの空気抵抗で加速分は吸収できる。
(5)滑走路端でフレアを掛け、水平にする。あとは勝手に減速し、90Ktで機体が
   さらに沈んで、非常に滑らかに接地する。

 …これなら単純な操作で、安全確実に降りられますが、正規のグライドパスから
外れるので、一種ごまかしの操縦には違いなく、当然ながらILSにも乗れません。
取りあえずは、スロットル開度を50%に設定すると、正規のパスでも大体は、うま
く行くのですが、パワーの修正を加えると、上下にぶれる点は同じです。これを、
ぜひ何とかしたいと思いました。

●スラスト軸を調整する:
 まずエレベーターのアップ側、最大舵角を少し増やしましたが、まだ効果が足り
ないので、推力軸のアライメントをいじることにしました。
 エンジンの取り付け位置・角度は、pc7/pc7.xml ファイルに記述があります。
推力軸は、機体基準線から「36」の高さ(単位インチ?)にありますので、この数値
を試しに、半分にしてみました。すると確かに、加速時の機首下げモーメントが、
半分くらいになりました。もっと修正を加えれば、ほぼニュートラルにできるでし
ょうが、エンジンの取り付け位置を上下に動かすのは、実機ですと、機体の外観が
変わる大改造ですので、さすがに気が引けます。

 こういう場合、模型飛行機でしたら、エンジンマウントにワッシャをかまして、
スラスト軸の角度を上下に調整しますよね。私もそれで行くことにして、まずピラ
タス社のサイトで、PC7(現行のMark競皀妊襦砲裡殻命泙鮗蠅貌れ、プロペラの
傾斜を計ってみたところ、約2度のダウンスラストが掛けてありました。ついでに
P-51の資料を調べますと、こちらは1度45分ダウンでした。実機の場合は、推力軸
の高さによる影響よりも、急加速時の揚力増加による、機首上げの方が問題で、
これを抑制する設定なのでしょう。FlightGearのPC7では逆に、アップスラストを
掛ければいいわけです。
 まず2.0度アップにしたところ、パワーオン・オフによる機首の上下動が、かなり
大幅に減りました。正直、スラスト角調整が、これほど利くとは思っていませんで
した。しかし、2度と言う角度は小さいものの、アップスラストが発生するエネル
ギーは、タンジェント2度に比例して、推力の約3.5%となるわけで。プロペラ効率
を仮に80%としますと、全開なら約38馬力。これだけの力が、機首に加わるわけ
ですから…まあ、効果があるのは当然ですね。
 サンサルバドル島の、場周経路を飛んで離着陸を重ね、調整を煮詰めたところ、
アップスラスト3.6度で、パワーに対する反応は、ほぼニュートラルとなり、非常に
操縦しやすくなりました。恐らく他機でも、同様の問題に悩まれている方は、これ
が応用できると思います。pc7/pc7.xml ファイルの修正点を書いておきます。

<engine file="PT6A-68"> ←冒頭から129行目。
<location unit="IN">
<x> 36 </x>   ←これは推力軸の高さ。
<y> 0 </y>
<z> 0 </z>
</location>
<orient unit="DEG">
<roll> 0.0 </roll>
<pitch> 3.6 </pitch> ←推力軸ピッチ角? 初期値ゼロ。
<yaw> 0 </yaw>
</orient>
<feed>0</feed>
<feed>1</feed>
<thruster file="direct">
<location unit="IN">
<x> 36 </x>
<y> 0 </y>
<z> 0 </z>
</location>
<orient unit="DEG">
<roll> 0.0 </roll>
<pitch> 3.6 </pitch> ←これもピッチ角? 同時に変更。
<yaw> 0.0 </yaw>
</orient>
</thruster>
</engine>

 …というわけで、次はいよいよ、フロリダ半島方面を目指したいと思います。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-4-2 17:47
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 今回は、ピラタスPC7改に再び手を加えて、エンジンの始動・停止ができるように
しました。
 PC7は、常にエンジンが回りっぱなしで、外観上も、プロペラ回転面を描いた円盤
が、常時ゆるゆる回る仕組みです。回したり止めたりできる、3Dオブジェクトの
プロペラはありません。これでは面白くありませんので、新たに3枚羽根のプロペ
ラを自作し、始動やアイドリング、停止の表示を実現しました。以下のリポートが
私と同様に、手探りで改造を楽しんでおられる方々の、ご参考になりましたら幸い
です。
 改造後はPC7改で、カリブ海のドミニカ・サンサルバドル島から、バハマのキャッ
トアイランドにある、アーサーズ・タウン空港へ進出します。

 またその後、同空港からパイパーカブJ3と、ロッキードの4発プロペラ旅客機・
スーパーコンステレーションを乗り継いで、フロリダ半島・マイアミ南方のホーム
ステッド空軍基地へ向かいます。
 なぜ、わざわざ旅客機で空軍基地に降りるかと言いますと、後でご説明しますよ
うに、これは実は、ある航空小説のストーリーを、FlightGearで再現する試み
なのです。長くなりますので、今回は前編として、導入部のみご紹介します。
 では、PC7改造のお話に進みましょう。

●プロペラを回転させる仕組み:
 まず、他機のプログラムを研究し、プロペラを回転させる仕組みを調べました。
詳しい方はご存じの通り、FlightGearのプロペラ機は、低速では3Dのプロペラを
エンジン回転数に比例させて回し、高回転になると、回転面のみの表示に切り替え
ています。
 私はまだ、3Dのプロペラが作れませんので、最初は他機のプロペラを借りよう
と思いました。しかしサイズの近い、PC6ターボ・ボーターのものでも、ブレードが
14センチ長く、あまり適当な物が見つかりません。少しでも直径が違うと、回転面
の画像に切り替えた時に、不自然に見えそうです。

●PC7に、疑似3Dプロペラを追加する:
 そこで今回は、ピッチ角を付けるのは諦めて、プロペラを平面として製作するこ
とにしました。幸い単発機では、ペラは普通後ろから見るのですから、あまりボロ
は出ないと思った次第です(^^;)。
 まずGIMPでオリジナルの propeller.rgb(回転面の画像)を開き、レイヤー
を追加して寸法を取り、実機のPC7の写真を参考に、静止した3枚羽根プロペラの
を描いて、fixedpropeller.rgb という名前で保存。次に機体3Dファイル
pc7.ac をテキストとして開き、"prop_disk"(プロペラ回転面の円盤)を
探して"fixedprop_disk"の名で複製しました。これにfixedpropeller.rgb を
張り付ければいいわけです。
 それには、Aircraft/pc7/Models/pc7.xml に fixedprop_disk を書き
足せばOK。PC7のアイドリングは、タービン回転数で65%ですので、自作の静止
プロペラ画像を、回転数ゼロから70%まで表示させるようにしました。ただしパソ
コン画面のリフレッシュレートと同期し、ペラが止まって見えるのを防ぐため、回
転数は実際通りにはしていません。
 一方プロペラ回転面の画像は、70%から出現するように設定しましたので、回転
を上げて行くと、一時的に両者がダブって表示され、自然に高回転に移行するよう
に見えます。以下にプロペラ関係の、全てのアニメーションを転載します。

<animation>  ●静止プロペラを、75%以下で選択●
<type>select</type>
<object-name>fixedprop_disk</object-name>
<condition>
<less-than>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<value>75</value>
</less-than>
</condition>
</animation>

<animation> ●プロペラ回転面を、70%以上で選択●
<type>select</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<condition>
<greater-than>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<value>70</value>
</greater-than>
</condition>
</animation>

<animation> ●静止プロペラを、右回りにタービンの7倍速で回転●
<type>spin</type>
<object-name>fixedprop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>-7</factor>
<center>
<x-m>-0.48</x-m>
<y-m>0.0</y-m>
<z-m>0.59</z-m>
</center>
<axis>
<x>1.0</x>
<y>0.0</y>
<z>0.0</z>
</axis>
</animation>

<animation> ●プロペラ回転面を、半透明にする●
<type>blend</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>0.01</factor>
<min>0.3</min>
</animation>

<animation> ●プロペラ回転面を、右回り0.079倍速で回転させる●
<type>spin</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>-0.079</factor>
<center>
<x-m>-0.48</x-m>
<y-m>0.0</y-m>
<z-m>0.59</z-m>
</center>
<axis>
<x>1.0</x>
<y>0.0</y>
<z>0.0</z>
</axis>
</animation>

●エンジンの始動・停止シーケンスを追加:
 最後に pc7/pc7.xml を開き、OV-10ブロンコのプログラムを参考に、始動と
停止の機能を書き加えました。エンジン関係の記述は、次のようになりました。

<engines> ●起動時には、エンジンは停止状態●
<engine n="0">
<running>false</running>
<rpm>0</rpm>
</engine>
</engines>

<input> ●シフト+rキーで、燃焼をON-OFF●
<keyboard>
<key n="82">
<name>R</name>
<desc>Toggle cutoff on Selected Engine(s)</desc>
<binding>
<condition>
<property>/sim/input/selected/engine[0]</property>
</condition>
<command>property-toggle</command>
<property>/controls/engines/engine[0]/cutoff</property>
</binding>
</key>

<key n="83"> ●シフト+sキーで、スターター作動●
<name>S</name>
<desc>Fire Starter on Selected Engine(s)</desc>
<binding>
<condition>
<property>/sim/input/selected/engine[0]</property>
</condition>
<command>property-assign</command>
<property>/controls/engines/engine[0]/starter</property>
<value type="bool">true</value>
</binding>
</key>
</keyboard>
</input>

 サンサルバドル島でテストを重ねた後、小説再現飛行の出発地点に選んだ、アー
サーズ・タウン空港まで、カリブ海を飛んでみました。以下フライトプランです。

ドミニカ サンサルバドル島240340N-743204W
   ▼277度42nm(●286度)
△バハマ キャットアイランド・南東端 240837N-751743W
   ▼320度13nm(329度)
◎ニュー・バイト空港 241854N-752706W
   ▼327度22nm(●336度)
◎アーサーズ・タウン空港 243745N-754024W MYCA

 エンジンの始動法は、Sでペラがゆっくり回り始め、N2=25%で安定。Rを押すと
燃焼開始し、排気温度や流量計が上がり、65%でパラパラとアイドリングします。
ここでスロットルを全開すると、ブンブン回転が上がり、間もなく回転面の画像に
切り替わりつつ機体が前屈し、気分はもう最高です(^^)。ブレーキを放して突進。
解放感あふれる、楽しい離陸でした。
 約180度の風3nm。サンサルバドル空港上空3000ftから、磁気方位286度に定針。
航法施設のない小飛行場ばかり中継しますので、コンパスに頼る推測航法ですが、
微風のため、PC7改の速度なら、針路補正は無用と判断しました。
 晴れた空を快調に飛び続け、途中で多くの船に出会いました。航法も概ね正確で
キャットアイランド南東端の岬に、2nmの誤差で到着。リボンのように細長い島影
を見下ろしながら、アーサーズ・タウン空港に到着。前回のスラスト軸調整のお陰
で、非常に滑らかなアプローチでした。

●冒険小説「航空救難隊」の世界:
 PC7の改造記が長くなりましたが…ここで、小説シーンの再現飛行に移ります。
 ネタ本は、学生時代に古本で読んだ、米作家ジョン・ボール作の「航空救難隊」
(ハヤカワ。原題 Rescue Mission 1966年)です。
 アメリカの映画や小説には、よく「満席の大型旅客機を、素人が着陸させる羽目
になった!」というストーリーがありますが、本書はこの先駆けとも言える傑作。
スリル満点の物語と、操縦や航法、交信の詳細を極めた描写、ヒコーキを愛してや
まない登場人物の、細やかな心理や会話などに感心しました。この本はかなり昔、
紛失してしまいましたが、フライトシムでぜひ一度、飛行を再現してみたいと思っ
ていました。

 絶版になって久しいので、あらすじをご紹介します。
時は1960年ごろ、舞台はカリブ海。主人公は、CAP(民間航空巡察隊)パイロット
の、シルヴェスター大尉とエド・チャン中尉。CAPは実在する組織で、民間人がボ
ランティアで小型機に乗り、海難捜索飛行などをする団体です。
 2人はこの日、プロペラ単発観測機に乗って、巨大ハリケーンが接近中のカリブ
海を捜索飛行中、向かい風で燃料が欠乏し、架空のリゾートアイランド、トレス・
サントスへ島へ給油に着陸。島のローカル航空会社員たちは、すでに米本土へ避難
し、ターミナルは無人でした。ところがエプロンには、プロペラ時代の最後を飾る
4発旅客機、ロッキード・スーパーコンステレーション(愛称コニー)が1機、
満タンのまま放置されていました。
 間もなく暴風雨で破壊されるのに、なぜ? と2人は首をかしげます。

 この島には、急患2人を含む約80人の島民がいて、米空軍が輸送機で全員を救出
する手はずでしたが、風速が強まり、まもなく発着不能になりそうです。2人は島
の神父に懇願され、コニーで全島民を米本土へ運ぶはめに。機内の運航規定(操縦
マニュアル)を読み、エンジン始動と暖機、タキシングに成功しましたが、離陸時
に操縦桿を引いても、エレベーターは動きませんでした。とっさのトリムタブ操作
でコニーは危うく機首を上げ、荒れ模様の大空へ。
 実はこの機体、直前にエレベーターの油圧シリンダーが壊れて、パワー制御とト
リム操作だけで、本拠地の空港に緊急着陸したばかり。乗員らは応急修理の手段も
ないまま、せめて突風から守るバラスト代わりにと満タンにして、後ろ髪を引かれ
る思いで置き去りにしたのでした。ちなみにコニーは、米旅客機としては初めて、
油圧操舵を全面採用した機体だそうです。さて…約80人の運命はいかに?

 といったお話です。そこで私の計画は…
(1)カリブ海のそれらしき場所に、トレス・サントス空港に見立てた
   空港を設定する。
(2)荒天下、小型観測機でこの空港に着陸し、コニーに乗り換える。
(3)事前に、FlightGearのコニー(Lockheed1049)に手を加え、
   エレベーターを作動不能にしておく。
(4)小説通りにフロリダへ向かい、パワー制御とトリム操作だけで、
   ホームステッド空軍基地に降りられるかどうか、実験する。
…というものです。

 長くなりますので、実際のフライトは、近く後編でご紹介します。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-4-6 18:56
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回ご紹介しました、アメリカ作家・ジョン・ボール作「航空救難隊」再現フラ
イトの、本番をお送りします。

●おさらいと、追加情報:
 物語は、1960年代前半のカリブ海が舞台です。主人公の、シルヴェスター大尉と
チャン中尉は、CAP(Civil Air Patrol)の隊員。CAPは米国に実在する団体で、
メンバーは現在7万人弱。民間パイロットがボランティアとして、遭難した船や航
空機の捜索などに当たるという、いかにも航空大国・アメリカらしい組織。空軍に
似た階級制度を持っています。
 2人はカリブ海を捜索飛行中、燃料不足のため、巨大ハリケーンの迫るトレス・
サントス島に着陸したところ、空港に放置された4発旅客機、ロッキード・スーパ
ーコンステレーションに、急患を含む島民約80人を乗せ、マイアミ国際空港まで
避難させる羽目に陥りました。何とか離陸したものの、この機体はエレベーターの
油圧装置が壊れており、着陸には高度な技術が必要…という物語です。
 今回は、FlightGear版・コンステレーションの操舵機能に手を加え、この飛行
の再現を試みます。

 実機のコンステレーション(愛称コニー)は、1943年初飛行。流麗な胴体と3枚
の垂直尾翼が特色で、1958年まで生産され、ダグラスDC-6などと共に、プロペラ機
の最後を飾る高速旅客機として活躍しました。当時としては高度なメカニズムを持
ち、操縦はそれなりに複雑だったようです。主人公2人は、軽飛行機のVFR操縦資格
しか持たず、ADFの使用経験さえありませんが、多くの人命が危険にさらされたと
あって「男気」を発揮し、敢えて操縦を引き受けたのでした。

 スーパー・コンステレーションは、一連のモデルの後期・長距離型で、両翼に
チップタンクがあり、機首も細長くて、非常にスマートです。しかし今回使う
FlightGearのLockheed1049 は、名称こそ「スーパー」が付いていますが、
機首が丸くチップタンクもなく、実際は初期型ではないかと思います。
 このLockheed1049 は、操縦に少し癖があり、ロール安定が相当悪く、放置す
ると大きくバンクします。上反角の効きが不足ですが、垂直尾翼の効きも(3枚も
あるくせに!)やはり悪いようで、緩やかなダッチロールを起こします。周期は
遅く、十分制御できますが、機体が重い分、力まかせに押さえ込む感じです。そ
の一方、アプローチは比較的素直で、難しくありません。

●飛行コースと、使用機のリペイント:
 まず物語を基に、架空のトレス・サントス島の位置を推定し、現地の風向風速を
決めることにしました。
 私は、彼らがキューバの近くを飛んだこと、ナッソー経由でフロリダに向かおう
としたことや、米本土からトレス・サントスへの捜索飛行では、逆風だったことか
ら、この島はバハマ諸島の、恐らく中央付近にあり、現地の風向は東寄りと判断し
ました。北半球ですので、ハリケーンは台風と同じ「左巻き」。中心はかなり南方
にあり、貿易風に乗って西進中とみられます。私は地図を見て、トレス・サントス
空港の代役に、エリューセラ島のガバナーズハーバー空港を選びました。

 主人公たちが、トレス・サントス島へ着陸した機体は、プロペラ単発の観測機
です。形式名は忘れましたが、FlightGearのパイパーカブJ3(軍用名L-4観測
機)を使うことにしました。
 デフォルトの黄色塗装では面白くないので、CAPの公式サイトで、1950〜60年代
の代表的な塗色を調べ、それらしくリペイントしました。コニーも塗り直したかっ
たのですが、作中では架空の航空会社の所属ですので、今回はTWA塗装のままとし
ました。(以上、マイアルバムをご覧頂ければ幸いです)

 FlightGearのJ3は航続力が短く、実際にフロリダから進出するのは無理ですし、
時間も掛かります。再現飛行では、近くのキャットアイランドにある、アーサーズ
・タウン空港まで、PC7改で進出していますので、ここからL-4でエリューセラ島
へ向かいます。コースは次の通りです。

◎アーサーズ・タウン空港 243745N-754024W MYCA
   ▼300度32nm(●308度)
◎バハマ・エリューセラ島・ロックサウンド空港 245329N-761038W
   ▼341度24nm(●349度)
◎ガバナーズハーバー空港MYEM NDB224偏西8.1度
エリューセラ島 251548N-761857W)

●「空飛ぶバイク」L-4で海を渡る。
 …アーサーズ・タウン空港の天候を手動で設定します。3000ft以上と8000ft
以上に、厚さ3000ftもある雲を、Brokenの雲量で出し、90度の風20Ktとして乱気
流を混ぜ、ハリケーンの前触れに見立てました。
 L-4に乗り込んでドアを閉め、満タンに。この機体には磁気コンパスしかありま
せんので、ナビ役のチャン中尉がやった通り、E-6B航法計算盤で風力補正計算を
行い、推測航法をします。お馴染みのフリーウェア「Vertual E-6B」に風向・
風速を入れて、各区間の針路を算出し、荒れ模様の空へ向かって離陸。

 L-4は、大変軽い羽布張りの高翼機で、タンデム2人乗り。言わば空飛ぶバイク
です。30Ktくらいでフワリと浮き、全開のまま1000ftでコースを設定しました。
約60Ktしか出ませんので、右後方から20Ktの風を受けると、12度も偏流角が生じ、
ほとんど「ソッポを向いて飛ぶ」感じです。
 戦前の荒天飛行には、「目測で、偏流角を正確に判定した」という話がよく出て
来ますが、こんなに大きな角度なら、慣れれば難しくなさそうです。乱気流にガブ
られながら、いよいよ海岸線を越えると、「こんな頼りない飛行機で、本当に海に
出ていいのか?」という気分になりました。

 FlightGearのL-4(J3)は、実機にないオートパイロットのバランスが良く、倍速
モードでも安定しています。ただしウイングレベラーにバグがあり、うっかり使う
と右横転してスピンに入り、肝を冷やします(^^;)。
 肝心の航法は、今回6度も誤差が生じ、島は見つかったけれど中継点の空港が見当
たらず、島の縦断道路沿いに進んで、ようやく発見。あとは地図を頼りに、目的地
のガバナーズハーバー空港へ。
 強い横風を受けて、尾輪式の機体を降ろすのは困難です。わざとではありません
が、小説通りにグラウンドループを起こし、ようやく停止しました。

●コニーの昇降舵を「故障」させる:
 いよいよ、コンステレーションの出番です。
 ピッチ方向の操縦は、小説同様にトリムタブを使いますが、キーボード操作では
舵面の反応が遅すぎます。トリムはマウス・ホイールにも、割り当てられており、
私が使うタッチパッド操作ですと、パッド右端のスクロールエリアがこれに当りま
す。設定を工夫したところ、操舵の反応が早くなり、何とか操縦できそうでした。
上がって降りる、ショートフライトを試みたところ、滑走は安定し、アップトリム
を掛けるとスムーズに離陸しました。まずはよし。
 しかしタッチパッド操作では、しばしばエレベーターも動くので、これはやはり
エレベーターをロックするしかない、と思いました。そこで、空力系のファイルを
開いて、エレベーターの作動範囲を上下ともゼロに変更。もう一度テスト飛行をし
ましたが、これは実に…大変なフライトでした。

●ダッチロール+フゴイド運動の「地獄」:
 ほぼ無風の滑走路を直進し、無事に離陸しましたが、間もなく機首が大きく持ち
上がり、トリムタブで懸命に下げ舵を当てても、まったく抑えられませんでした。
気速がどんどん下がり、失速寸前…という場面で、今度は機首が落下に転じます。
さあ、アップを掛けなくては。必死でパッドを撫でますが、ぐんぐん大地が迫り、
あわやと言う低空へ。次いでまた猛烈な上昇に転じます。いわゆるフゴイド運動、
それも猛烈なやつです。波状飛行の頂点は高度約5000ft、下限は500ftくらい、
上昇・下降の周期は、だいたい40秒前後でしょうか。

 この、ジェットコースター的なフゴイド・モードに、ダッチロールが重なると、
空中をのたうち回る感じで、ちょっとした地獄です。xmlファイルにある操縦特性
の記述を見ますと、ピッチ・ヨー・ロール3軸の空力特性は、相互に関連している
ようですが、そのためかエレベーターをロックすると、ダッチロールもひどくなっ
たような気がします。こりゃ、とても制御できないと思いまして、私は飛行を打ち
切りかけました。だが…待てよ。
 この飛行状態は、あの85年夏の、尾巣鷹山墜落事故に似ています。日航123便の
運航乗員たちは、530人を乗せた重圧下で、大部分の操舵機能を失いながら、推力
操作で40分も操縦を継続しました。その難しさは、こんなものではなかったはずで
すが、彼らは「上昇時はフルパワー、下降時はアイドルで失速と過速を防ぎつつ、
フゴイド・モードの収束を待つ」という常識を破り、上昇の終了前にパワーを絞る
新たな操縦法を工夫して、一時は機体の安定を取り戻したと記憶しています。とな
りますと、エレベーターを止めたくらいで、飛行を放棄するのは、申し訳ないよう
な気がしました。…くそっ、何とかしてやるぞ。

●鎮魂歌:
 機体は、右に左に傾きながら、上昇降下を繰り返します。ピッチとロールの両方
向に目を奪われては、何も出来ませんので、これを分けて考えることにしました。
まず操縦可能なロール軸を、短時間でもいいから水平にしよう…。
 激しい上昇降下で、前方視界は、青一色になったかと思うと、低い山地が迫り、
また青空に。その周期のすきを狙い、大きくエルロンを使って、深いバンクを戻し
ます。また次の周期を狙って、今度は西に変針し、取りあえず機体を洋上に出しま
した。これで地上には墜ちずに済みますが、滑走路へ向かうのは、まず無理です。
…ならば、着水できないか?
 次はフゴイド運動を、何とかしなくては。この上下動は、位置エネルギーと運動
エネルギーの相互変換ですから、エネルギーの源泉は結局のところ、エンジン推力
です。思い切ってパワーアイドルまで絞り、ギアとフラップも出し、必死にトリム
操作を続けました。すると、次第にフゴイド運動の振幅が、小さくなったのを感じ
ました。これは、行けるかも。
 アイドルのまま、上下動の周期に合わせて、フラップを出し入れしながら降下。
トリムも取り続けます。やがて海面が迫り、機首の上下動は続いていますが、構わ
ず降下。最後に思い切りアップトリムを掛け、いよいよ海面。ここで操縦は事実上
終わり、運が取って代わります。ドーンとバウンドして、ブラックアウトを起こし
さらに大バウンドを数回。しかし墜落判定は、回避できた模様です。減速。そして
海面に静止。とうとう、ディッチング(不時着水)に成功しました。

 正直、かなり感動しました。そして心から、123便も着水できれば良かったのに、
と思いました。また、尾巣鷹山事故のかなり後になって、全米操縦士協会が123便の
運航乗員を表彰した、という古いニュースを思い出しました。墜落は回避できなか
ったものの、諦めず長時間にわたり、卓抜な操縦技量を発揮した、というのが受賞
理由だったと思います。全乗員乗客に、合掌。

●エレベーターを再調整し、フロリダへ:
 お話が脱線しましたが、再び小説の再現飛行に戻ります。
エレベーターをロックすると、飛べないことが分かりましたので、最大舵角を上げ
舵8度、下げ舵3度に再調整し、原作通り燃料満タンとして、本番飛行に取り掛かり
ます。さきほどのL-4の飛行と、ほぼ同じ天候にセット。風速は5Kt増しの、25Ktに
しました。フライトプランをご覧に入れます。

◎ガバナーズハーバー空港MYEM NDB224偏西8.1度
バハマ エリューセラ島 251548N-761857W
   ▼257度63nm(●磁気265度)
★ナッソー空港VOR112.70 NDB251偏西7.4
バハマ首都250133N-772647W
   ▼292度108nm(●磁気299度)
★サウスビミニVOR116.70偏西6.2
バハマ サウスビミニ島254224N-791748W
   ▼275度57nm(●磁気281度)
★ヴァージニアキーVOR117.10偏西5.3度
マイアミ国際空港の手前、254507N-800916W
   ▼218度21nm(●磁気223度)
◎ホームステッド空軍基地KHST RWY5/21 ILS109.90
マイアミ市街南部 252919N-802301W 偏西5度

 UTC2111時(現地時間1611時)に、ガバナーズハーバー空港を離陸。
今度も機首が持ち上がりましたが、さすが正規の昇降舵。無事に抑えが利いて、
オートパイロットを入れ、8000ftで265度に定針。針路と高度保持は正常ですが、
なぜか速度保持は何度セットしても、すぐ外れてしまいます。やむを得ずパワー
制御は手動とし、スロットル約60%で250Ktまで加速しました。より効率的な高度
と速度があるでしょうが、あまりエレベーターを使いたくないので、ひたすら高度
一定、速度一定で、そっと飛び続けます…。

●小説中では、危機また危機:
 シルヴェスター大尉とチャン中尉は離陸後、間もなく米空軍戦闘機のスクランブ
ルを受け、仰天することになりました。理由は、以下の通りです。

 ・無資格、かつ故障機による飛行なので、フライトプランを出していない。
 ・レーダー・トランスポンダのスイッチを入れ忘れ、国籍不明機に見えた。
 ・おまけにキューバの近くだったので、アメリカへの軍事的挑発行為では
  ないかと警戒された(ちょうど「キューバ危機」のころのお話です)

 …迎撃機は、コニーの機体記号(つまりコールサイン)を読み取って通報し、間
もなくマイアミ航空交通管制部が、コニーと交信を確立。2人は緊急飛行の事情を
説明しました。コニーの所属が確認され、また空軍救難機が遅れてトレス・サント
スに到着し、空挺隊員を降下させて、すでに島民が全員脱出している…と報告して
いたため、2人の話は事実と判明。管制部は、バハマの首都・ナッソー経由でマイア
ミへ向かうATCクリアランスを与えました。(もっとも、計器飛行の資格を持たな
い2人は、クリアランスを理解できませんでした)
 2人の経験不足と、エレベーター故障を重視した管制部の連絡で、ホームステッド
空軍基地では、非番のC-121(コニーの軍用輸送機名)ベテラン機長が呼び出され、
T-33ジェット練習機の後席に乗って、コニー誘導に出発。以後ベテラン機長の詳細
な指示を受け、2人は機関士を含む3役を忙しく務めつつ、ホームステッド基地に機
首を向けました。
 日没を迎えましたが、2人は夜間着陸の経験がありません。コニーに寄り添い低速
飛行するT-33は、燃料がぎりぎり。着陸のチャンスは、1回だけです…。

●DMEのないコニー:
 FlightGearでは、道案内のT-33はいませんが、VORがあるので航法は楽勝です。
私は意気揚々と、第一中継点のナッソーへ。ところがよく見ると、本機にはDMEがあ
りません。不便ですが、ナッソー通過はVOR指針で判定しました。
 次の区間から、真面目に飛行距離を計算。この時の指示対気速度は254KIASです。
真対気速度は、低空では1000ftにつき約2%増えるので、実際は295KTAS出ているは
ず。さらに風向風速の補正計算をして、対地速度を出しました。機体の前後2カ所の
VORを受信していますから、RMIの指針2本が、前後一直線に並ぶよう針路を取れば、
ぴったりオンコースです。
 以後、頻繁にスロットルを調整して速度を一定に保ち、対地速度から到着予定時
刻を出し、VOR指針を常に一本に保ったまま、かなり上出来の航法精度を維持して、
快調に進みました。PC7の飛行より計算作業が増え、計器監視とパワー制御の仕事も
増えましたが、かえって操縦が楽しめたと思います。

 2148時、サウスビニミVORの左アビームを通過。予定時刻のわずか1分遅れで、
航法精度は上々。ご機嫌です。最後の中継点となる、バージニアキーVORへ定針し、
降下を始めました。大型機を飛ばすときは、高度処理が間に合うかどうか、いつも
気になります。ホームステッドまで、あと70nmもありません。

 2155時、3000ftでスロットル25%、235KIASを維持して飛行中、不意に正面に、
細長い島が見えました。その向こう、細い水道を挟んだ彼方に陸が拡がって、もや
に霞んだビルが並んでいます。マイアミ市街地です。バージニアキーVORの寸前と
判断し、左旋回し磁気方位223度へ。これでホームステッド基地に向かうはずです。
 高度1500ftに下げ、パワーアイドルで190KIASに減速。さあ、忙しくなります。

●もやの彼方の滑走路:
 2201時、正面のもやの中に、やや斜めになった滑走路を視認。もう10nmもありま
せん。完全手動操縦に切り替えてILS受信。パネル中央付近にある、正体不明のスク
リーンは、ILS指示器だったと分かりました。ほぼグライドパス上ですが、ローカラ
イザはずれています。滑走路の軸線が、左に15度ほどずれているので、左旋回して
右に切り返し、緩いS字飛行で着地点に向けなくてはなりません。この操作が少々
遅れており、気になります。
 フラップ最大、ギアダウン。145KIASまで減速。パワーを10〜50%で上下させ、エ
レベーターに頼らず、スロットルで降下経路を制御。滑走路が近づきます。S字旋回
後半の右旋回を、接地点の寸前まで続ける、ちょっと苦しい進入ですが、降下角は
合っています…最終段階は、エレベーターで軽くフレアを掛け、ちょっとバウンド
しましたが、まあスムーズに接地しました。滑走路に静止しフラップを納め、エン
ジンを停止。こんにちは、アメリカ合衆国!!

 計54分間の飛行でした。本来は原作通り、着陸時は宵闇にしたかったのですが、
操縦に夢中で、すっかり忘れていました。到着後、フライトのあれこれを思い出し
ながら機体を眺めると、機首に Star of the Rhone(ローヌ川の星)という、ロマ
ンチックな愛称が書かれていることに、初めて気付きました。

 大長文となって済みません。次回から、また新しい大陸の旅が始まります。
さあこれから、広いアメリカを、どんなコースで飛びましょうか…。
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なし 空の夢、星の夢

msg# 1.3.1.1.1.1.1
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 長い中南米の旅が終わりまして、これからたっぷり、北米の空を楽しみます。
今回は手始めに、ケネディ宇宙センターと、ノースカロライナ州・キティーホーク
の海岸を訪れて、擬似的な宇宙飛行や、「本場で乗るライト・フライヤー1号機」
を味わうことにしましょう。

●空港がウジャウジャ…航空大国アメリカ:
 まずはPC7改で、マイアミ郊外のホームステッド基地を出発し、ケネディ宇宙セ
ンターへ向かいます。

◎フロリダ・ホームステッド空軍基地KHST 偏西6度
   ▼29度21nm(35度)
☆マイアミ・MI Keys NDB248
   ▼6度53nm(12度)
★Palm Beach VORTAC115.70
   ▼341度64nm(347度)
★Vero Beach VORTAC117.30
   ▼343度27nm(348度)
★Melbourna VOR110.00
   ▼354度31nm(359度)
◎ケネディ宇宙センター 偏西5度

 上天気、微風のホームステッド基地を離陸。搭載燃料を600Lbsに抑えましたの
で、滑走わずか10秒でひらりと離陸。3000ftで景色を眺め、VORを使って中継地を
たどります。2本のVOR指針がぴったり重なり、航法は快調です。

 まず驚いたのは、空港の多さです。離陸後17分で、たぶん8カ所の空港の真上を
通過。さすがはアメリカです。長く伸びるビーチを見下ろすと、湘南海岸の藤沢あ
たりを飛んでいる気分ですが、はるかに大規模です。
 この区間は、初めて TerraSync を使いましたが、かなり負荷を感じ、数分おき
に画面がコマ送りになって、そのつど大揺れしました。またケネディ宇宙センター
到着の際、マップと機体の位置がずれて、HUD高度計が60ftのまま接地し、ブレー
キを掛けると、空中に停止しました。TerraSync は素晴らしいですが、あらかじめ
中継地でデータをロードし、飛び直した方が無難なようです。

●T-38で滑空着陸:
 ケネディ宇宙センターには、出来ればシャトルで着陸してみたいものです。あい
にくシャトルはないので、NASA御用達のT-38を起動し、天候偵察をする宇宙飛行士
の気分で、軽く発着を試みました。
(注:NASAでは打ち上げ前、同僚の宇宙飛行士が、わざわざジェット機を操縦して
天候を確認する習わしです。そんなの、地上と衛星の観測で分かるって? もちろ
んです。でも初期の宇宙飛行士は、テストパイロット出身で誇り高く、「飛ぶのは
俺たちだ。パイロット仲間がOKを出すまでは、本当のOKではない」という気風が色
濃くあって、これが伝統になったのでしょう)

 FlightGearのT-38は以前、操縦性に大変問題がありましたが、1代前のバージョ
ンから、かなり扱いやすくなりました。飛んでみると結構快適でしたので、次は本
格的に高度を上げ、シャトル同様の滑空着陸をめざします。さて開始高度は、どの
くらいにしようかな。
 向井万起男さんの「君について行こう 女房は宇宙をめざした」によると、シャ
トルはダウンウインド・レグ45000ftで、手動操縦に切り替えるそうです。私も
同じ高度を狙いましたが、T-38は40000ftが上昇限度のようでした。
 38300ftでアイドルに絞って、滑空で滑走路右7nmの、ダウンウインド・レグに
着けましたが、高度を処理する余裕がないので右ターン。Atlasを頼りに17nm沖ま
で出て、涙滴型の左ベースターンを描き、滑走路の北方を目指しました。後は終始
250Ktくらいで滑空し、かなりあっさり着陸に成功しました。

●T-38最新版で、無重力弾道飛行:
 「本家」サイトを調べたところ、最新版は待望の3Dパネルが装備され、しかも
VORとNDBが使えます。これをNASA塗装にして、再び滑空着陸に挑みましたが、相当
困難でした。現行機は着陸時のクラッシュ判定が、やたらにシビアなのです。フラ
ップを出さず、200Ktで突っ込むのが一番安全でした。
 飛行テスト中、ふと思いついて、宇宙飛行士の無重力訓練に使う、ゼロG飛行を
試しました。20000ftの水平飛行から、徐々に下げ舵を取って、加速度計をゼロに
保ちます。古くはマーキュリー計画の飛行士たちが、F100Fの後席に同僚(或いは
チンパンジー)を乗せて実施し、最近では727-200改がNASAで使われているとか。
FlightGearでは案外簡単で、10000ftまで降下中、20秒以上にわたり、ほぼゼロG
を維持できました。

●X-15並みの推力で、超高空へ:
 こんなフライトを重ねながら、トム・ウルフの「ザ・ライトスタッフ」を読み返
していましたら、ぜひ宇宙を飛びたくなりました。FlightGearは、軌道飛行を想定
していませんが、なにも軌道上だけが「宇宙」ではありません。マーキュリー計画
だって、最初は弾道飛行でした。これならFlightGearでも出来そうです。

 有翼機の弾道飛行は、最大でマッハ7近くを出したX-15の、一連の飛行実験が参
考になりそうです。同機は1950年代に、弾道飛行で高度10万mを超えており、やが
ては大型ブースターを付けて衛星軌道に到達し、手動操縦で滑空・帰還する飛行を
めざしていました。いわばシャトルの原型の一つですね。
 ただしFlightGearのX-15は出来が悪いので、T-38の推力を同レベルまで上げるこ
とにしました。X-15は当初、X-1のエンジンを2台束ねた、通称リトル・エンジンを
使ったので、私もT-38の推力(デフォルト2050Lbs)を、これと同じ16000Lbsに
書き換えました。
 パワーが巨大過ぎるので、地上で全開にすると、コントロールを失いそうです。
2割に抑えて離陸し、垂直近くまで機首を上げ、後は全開で急上昇しました。空は
みるみる黒ずみ、振り返れば水平線が、徐々に丸くなっていきます。(実際は多角
形ですが、気分はマルです!)
 この推力では78860ftが上昇限度で、エンジンを切って自由落下に入りました。
まだ宇宙とは呼べないものの、超高空から「青い地球」を堪能することができまし
た。ここまで来るとぜひとも、宇宙の始まりとされる高度(諸説あり)100キロ=
約330000ftを超えたくなります。

●UFOぶっちぎりの高速で「宇宙」に王手:
 X-15は、のちに57000lbsの XLR-99(通称ビッグ・エンジン)で高度107.96kmを
記録しましたので、私もT-38を同じ推力にしました。ビッグ・エンジンの飛行は
2回実験し、いずれも成功しました。2回目を簡単にご紹介します。

 天候は、最近私がオフラインのデフォルトにしている、190度の風約4Kt、雲量は
4000ftでscattered、20000ftでcirrusです。パワーは強烈で、アイドリングでもブ
レーキを振り切って走り出します。翼の揚力に依存しないロケットは、いかに猛烈
な推力を使うか、改めて実感しました。
 ストップウォッチをオン。推力1割弱で離陸。機首を上げ、いよいよ全開にする
と、HUDの高度計が、読めない速さでスクロールして行きました。高速のため操舵は
やや不自由で、いったん機首が天頂を行き過ぎて修正、ピッチ角約70度で安定しま
した。軽いロールが、なかなか納まらず、正面では真昼の太陽が、暗黒に近い空を
バックに、ゆっくり円を描きます。
 離陸後1分。高度103200ft、速度383KIAS、仰角70度、針路220度。その後の経過
時間と到達高度、速度の垂直成分は、次の通りです。

1分10秒:141600ft。
1分20秒:177200ft(上記との差35600ft、垂直速度11672m/s)
1分30秒:210180ft(同32980ft、同10813m/s)
1分40秒:238000ft(同27820ft、同9121m/s)

 というわけで、この時点で第1宇宙速度(衛星となる最低速度=秒速約8キロ)
を超えていました。ただし重力と釣り合う遠心力を発生しないので、衛星にはなれ
ません。ちなみにUFOモードの最高速は、この4分の1くらいです。

●FlightGearの天球を、ぶち破る:
 1分50秒、26万2730ftで異変が起こりました。
背後の丸い地球が、まるで展開図のようにバラバラに開き、12角形をした、黒い
お盆になりました。その外側と頭上は薄曇り色の空で、宇宙と地球が入れ替わっ
た印象です。機体の真下には、黒く四角い地表マップが見えており、その周囲に
白い水平線と黒い空を映した、長方形の壁6枚がストーンヘンジのように並び、
幻想的な光景でした。
 要するにこれは、FlightGearに設けられた(恐らく半径250000ftの)天球を、
突破してしまったのだろうと思います。25万フィートと言えば、定義によっては
大気圏の最上部ですから、これをもって「宇宙に達した」とみてよさそうです。
 離陸後2分で SHIFT+Qキーを押し、エンジンを停止。機体は弾道飛行に移行し
惰性で上昇を続けました。
 3分12秒で、弾道の頂点に到達。HUDの高度計では355130ft、速度は55KIAS、仰角
10度でした。気速計が動き、舵も効きますから、「空気はある」ようですね。しか
しパネル上の高度計は、約100000ftでロックしていました。機体は落下を始めま
したが、過速による制御不能を予防するため、早めにスピードブレーキを出してお
きました。

●「地球」への帰還:
 200KIAS程度で、長い長い急降下。真対気速度は、ちょっと見当が付きません。
次第に加速したため、飛行時間5分でブレーキに加えてフラップを使い、引き起こし
に掛かります。ブラックアウトしましたが、ここでコントロールを確立しないと、
今度は天球ならぬ、地球をぶち抜くことになりそうです。構わず大Gをかけ続け、
水平飛行に移行。間もなく100000ftを割りました。
 上昇と降下に気を奪われている間に、ケネディ宇宙センターから南西へ70nm近く
離れています。利きにくい舵を一杯使い、約3分掛けて反転。帰還目標のNDBに機首
を向けました。
 残念ながら、ケネディ宇宙センターには、ちょっと届きそうにありません。飛行
15分、高度約18000ftでエンジンを再始動し、飛行機らしい飛び方に戻りました。
すぐ下には、もくもくと雲が湧いています。生き物のように懐かしくて、「ああ、
バイオスフィアに再突入した」と実感しました。
 目標NDB上空で、南方へ鋭角のターン。すぐ滑走路を視認し、数マイルのリード
を取ってから、右ベースターンを描いてファイナルへ。遠くから慎重にアプローチ
して接地点に向かい、接地前にエンジンを切って、うまく降りました。最高の気分
でした。(本機は翼面加重が高いので、少しだけパワーを残した方が、スムーズに
降りられると思います)

●「聖地」キティーホークへ:
 同じT-38(ただし、ノーマルエンジン)で、東海岸を北上します。

◎ケネディ宇宙センター 偏西5度
 NASA Shuttle Landing Facility KTTS 283648N-804136W
   ▼332度47nm
★Ormond Beach VOR112.60 291812N-810645W
 デイトナ・ビーチのそば
   ▼14度222nm
★チャールストン空軍基地KCHS VORTAC113.50 325342N-800216W
   ▼57度201nm
☆Michael J Smith FLD NDB269 344352N-763943W
   ▼60度60nm
◎Billy Michel KHSE 351358N-753702W
 ハッテラス岬のそば
   ▼355度41nm
◎Dare Co RGNL KMQI VOR 111.60 355513N-754148W RWY-04-22
   ▼12度6nm
◎First Flight KFFA 360108N-754015W 偏西10.8度
 ライト兄弟初飛行の地点のそば。ここまで計577nm。

 燃料満タン、天候データは同じ設定で離陸。高度別の燃費やオートパイロットの
特性(揺れなど)を確認しながら飛び続けます。燃費はかなり悪く、実機の航続力
750nmはとても無理で、せいぜい400nmでしょう。推力を60%くらいまで落とせば、
かなり改善されるものの、これじゃまるでプロペラ機。PC7改の方がずっと快適で、
しかも高速です。T-38にも愛着は湧いてきましたが、あまり長距離を飛ぶ飛行機で
はなさそうです。
 燃費が不安なので50%まで絞り、何とかMichael J Smith FLDまで飛んで、ここ
でPC7改に乗り換えようと思いましたが、滑走路が短くて、200Kt進入のT-38では
着陸は危険です。北西15nmにある、チェリーポイント空港KNKT VOR-108.90に着陸
地を変更し、ベースターンを決めて降りました。

 ここからはPC7改で、海上はるか沖合にリボン状に伸びた、細い陸地の上を飛び
続けます。外洋と内海が、幅1nm足らずの土地で仕切られており、まるで丹後地方の
「天橋立」が約170nm続いているような、不思議な眺めです。どうやったら、こんな
地形ができるのでしょうね。
 そのリボンが、大きく大西洋に張り出した、「く」の字型の突端がハッテラス岬
です。北米の地図を見ると、フロリダとニューヨークを結ぶ線の中点で、この線上
では、もっとも大西洋に張り出しており、昔から航海上の参照点です。キティーホ
ークは、この岬の40nmほど北、やはり「リボン」の一部ですから、大西洋の風や波
をまともに受ける位置です。ライト兄弟がグライダー実験のため、「年間を通じ、
安定した強風が吹く土地」として選んだ理由が、よく分かりました。

●フライヤー1号機、海をわたる:
 兄弟初飛行の地には、その名も First Flight という小空港があり、南北に走る
滑走路の北端に接して、非常に短くて狭い、第2の滑走路があります。なんでこん
なものを作ったのかと Google Earthで観察し、はたと気付きました。これこそが、
最初の飛行の、離陸用レールを敷設した場所だったのですね。

 FlightGearのライト・フライヤー1号は、ご存じのように、極めてピッチ安定が
悪く、エレベーターが過敏で、パワーは低く、ロール・コントロールの重い飛行機
です。どうせ十数秒しか飛べまいと思いつつ、私は大事を取って、メインの滑走路
から離陸しました。ところがこれが、よく飛ぶのですねぇ。

 Ver.1.9.1bになってから、今回初めて操縦しましたが、機体自体は古いままなの
に、FlightGear本体のフライトモデルが改善されたのか、かなり飛ばしやすくなっ
ように感じました。操縦のコツは、
 ・離陸から着陸までエンジン全開。25Ktくらいで離陸する。
 ・注意力の9割をピッチ制御に注ぎ、20〜30Ktを維持する。
 ・上昇力がないため、障害物を早めに避けること。

…この3点に尽きます。何分飛べるかは、集中力と根気次第です。
私は最初のトライで10分を超え、かなり驚きました。2回目は、思い切って西側の
内海に出て、隣の島まで約4nmの海を越え、直線で約7nm南南西の、DARE CO RGNL
空港に降りました。滞空24分20秒、旋回を重ねたので、飛行距離はたぶん23nmくら
い、最高高度は200ftでした。
 私は最初、フライヤー1を改造し、馬力と前後のモーメント・アームを、ライト
兄弟の最高傑作とされた「A型」と同じにして、何分間でも飛べるようにしてみた
かったのですが、改造の必要は、まったくないようです。

 今回は、超高速から超低速まで、ずいぶん充実感のある空の旅でした。さて次は
どこへ行こうかな?
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なし グラウンド・ゼロ

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 今回は、ライト兄弟の初飛行の地・キティーホークから、米海軍が飛行テスト
に使うパタクセント・リバー基地や、ワシントンDCを経由して、ニューヨーク
へ向かいます。
 まず、全航程のフライトプランをお目に掛けましょう。

■キティーホークからNYへ■
◎First Flight KFFA 360108N-754015W 偏西10.8度
   ▼335度59nm
★ノーフォーク国際空港(KORF)VOR-109.10 365417N-761114W
   ▼353度84nm
★パタクセント・リバー海軍基地(KNHK)VORTAC-117.60
 381716N-762358W 偏西11度
   ▼325度38nm
★アンドリュース空軍基地(KADW)VORTAC-113.10 384826N-765158W
   ▼287度8nm
◎ワシントン・ナショナル空港KDCA
VOR-111.00 513422N-770210W 偏西16度
   ▼41度26nm
★ボルチモア・ワシントン空港(KBWI)VOR-115.10 391015N-763940W
   ▼57度78nm
★フィラデルフィア空港(KPHL)DME-ILS-108.95
 395235N-751309W 偏西12度
   ▼55度81nm
◎ケネディ国際空港KJFK VOR-115.90 403758N-734616W 偏西13度
計375nm

●ライト兄弟の記念碑を発見:
 キティーホークのFirst Flight空港で、UTCの1714時(現地1314時)にPC7改を
起動。リアルウエザーでは完全な快晴で、風は220度約12Ktと絶好の飛行日和で
す。燃料はタンク半分の2000Lbsとしました。
 離陸後、しばらく低空で旋回し、フライヤー1号機初飛行の地に名残を惜しん
でいましたら、滑走路のすぐ近くに、小さな建物のようなものを発見しました。
降下してみると、石造りのモニュメントで、木村秀政さんのエッセイ集「わが心
のキティーホーク」(光人社NF文庫)を参照したところ、やはりライト兄弟の初
飛行記念碑でした。滑走路の東側、ごく低い丘の上にあり、キル・デビル・ヒル
と呼ばれる場所だそうです。儲けものをした気分になりました。

 キティーホークから、洋上を北北西に延びる、細い砂州の上を飛び続けます。
右は大西洋、左はパムリコ湾と呼ばれる広い内海。幅1マイル前後しかない陸橋
のような地形が、100キロ以上伸びているのは、不思議な光景です。

●パックスリバーで海軍機を試す:
 この「陸橋」が本土に接するあたりが、海軍基地で有名なノーフォーク市で、
ここから北へ約200キロにわたり、チェサピーク湾が伸びています。湾の西岸北端
近くから約30キロ内陸に、首都ワシントンがあります。日本で言いますと、チェ
サピーク湾が東京湾、ノーフォークは横須賀に当たりそうですね。ノーフォーク
のすぐ北には、パタクセント・リバー海軍基地(通称、パックスリバー)があり、
昔から米海軍の航空機実験場として知られ、テストパイロット学校もあります。
 第1期の宇宙飛行士に選ばれた、ピート・コンラッドらも、ここでテスト飛行
に従事していたようです。ちょっと立ち寄って、何か海軍機を飛ばしてみること
にしました。

 結論から言えば、どうもうまく行きませんでした。まずF14を試したのですが、
最新バージョンは、一段とシステムが複雑になり、手の込んだオートスロットル
の扱い方が分からず、最終進入でパワーを上げることが出来ないまま、大アンダ
ーシュートしました。
 ふと振り返ると、左翼が見当たりません。勝手に最大後退角になったのか、と
思いましたが、地面にヒットして、根元からもぎ取られたようです。メニューバ
ーには「リペア」という項目があり、半信半疑で操作したら、無くなった翼が復
元されました。変わった仕掛けですね。完全に乗りこなせたら、面白い機体だと
思うのですが、操作が分かりにくく残念です。
 次にF4Uを起動。この機体も、主翼の折りたたみやキャノピー開閉など、ギミ
ックの多い力作です。実機通り、吸気圧を監視しながらスロットルを開かないと
エンジンが壊れる仕組みで、なかなかリアルなのですが、どういうわけか極端に
安定が悪く、10回近く試しても、離陸に成功しませんでした。よく作り込まれて
いるだけに残念で、今後の改良に期待します。

 ちなみにチャールズ・リンドバーグは、太平洋戦争中に現役復帰し、南太平洋
でP38を飛ばして、燃費改善の指導などに当たったのは有名ですが、実はF4Uにも
搭乗し、地上攻撃などの実戦に参加しています。
 彼はF4Uで、ゼロ戦とみられる日本機を、1機だけ撃墜しています。この時は
双方発砲しつつ、真正面からのすれ違いとなり、からくも衝突を避けた直後、日
本機がコントロールを失って海面に落ちたそうです。相打ちにならなかったのは
幸運で、あまり上手な空戦とは言えない印象を受けます。

●ワシントンDCで、ドラゴンフライに試乗:
 パックスリバーから、再びPC7改を駆ってワシントンDCへ。地平線のもやから
堂々たる市街地が姿を現しました。中心街の南東にある、アンドリュース空軍基
地の上空を通過。当方は、政府専用機ではありませんので、着陸は遠慮してロナ
ルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港へ。すぐ北のペンタゴンは、なか
なか精密に作られています。

 アメリカの旅では、なるべく多くの機体を飛ばしてみようと思っていますが、
ワシントンでは、ウルトラライトプレーンの「ドラゴンフライ」を初めて操縦し
ました。
 この機体は、バナーを曳航して飛べるのが最大の特徴です。デフォルトでは、
バナーにアメリカの本家HPのロゴが入っています。今回は、日本語HPのT4入り
ロゴを使わせて頂き、余白にはFlightGearにふさわしく、平和のメッセージ
を書き込みました。
 バナーを使う際は、あらかじめ地上に設置して、タッチアンドゴーでピックア
ップするようになっています。この仕組みが難解で、私はどうしても、バナーを
出現させることが出来ませんでした。となると、最初から機体に装備するしかあ
りません。Dragonfly-set.xmlを開くと、42行目に

   <banner-on-hook type="bool">falce</banner-on-hook>

という記述があり、このfalceをtrueにリライトすると、バナーを機体に取り付
けた状態で起動できました。また飛行中にo(オー)キーを押しますと、バナー
を切り離して、好きなときに落下させることができます。

 ドラゴンフライの操縦は、極めて簡単です。エンジンは常に全開、20Ktで上げ
舵にして離陸し、後は20Ktを割らないように注意すること。着陸はアイドリング
で降下し、通常の引き起こしを掛けます。
 ピッチ方向にはやや過敏で、軽い上下動を起こした場合、うまく修正操舵でき
ず、波状飛行に入る場合があります。実物のウルトラライト機でも、しばしば起
こることのようで、以前観たNHKの特集番組によると、不慣れなパイロットです
と高速の動力急降下に入って、墜落するケースもままあるそうです。一種のPIO
(Pilot Induced Oscillation=操縦操作に起因する自励振動)ですので、
この場合はいったん、手を離してしまう方が無難です。

 さて、市内見物です。ドラゴンフライで、ナショナル空港を離陸。ポトマック
川を渡ります。あと1カ月くらい早ければ、川岸に桜が満開になって…いるのが
見えると素敵ですが、これは無理。残念ですね。
 中央のモール街は、ホワイトハウスなし、議事堂なし、スミソニアン博物館も
リンカーン・メモリアルもなしで、少々寂しいものの、ワシントン・モニュメン
トのオベリスクは建っています。少し東には、なぜか金色のオベリスクもあり、
これは議事堂の位置にあたるようです。さらに東には、かなり細かく作り込まれ
た、ロバート・F・ケネディ・スタジアムがあって、一見の価値ありです。

●ボルチモア沖で、マッキMC72を楽しむ:
 日を改めて、PC7改でワシントンを出発、今度はお隣のボルチモア・ナショナ
ル空港に着陸します。雲量はあいにくovercast、雲底高度はわずか600ftと
難しい条件。ILSを使うべきですが、何本もの滑走路にILSがあり、どれが正し
い周波数か分からず、そのままVORで進入を強行しました。ボルチモアの空港は
各誘導路の入り口にちゃんと標識があり、ボーディング・ブリッジの手すりなど
も非常に見事で、しばらく見とれてしまいました。

 ここの沖のチェサピーク湾では1925年、水上機のシュナイダー・トロフィー・
レースが開催され、米陸軍のカーチスR3Cが優勝しました。操縦者は、のちに空
母ホーネットから陸軍のB25を発艦させ、真珠湾攻撃の4カ月後に東京を奇襲攻
撃した、あのジミー・ドゥーリットルです。
 彼が飛んだR3Cは、あいにくFlightGearには再現機がないようで、12年後の
イタリア製レーサー、マッキMC72を飛ばしました。ちょっと目には単発機ですが
ご存じのようにタンデム双発エンジンを積み、同軸の反転プロペラを回すしかけ
です。翼面やフロート表面にそこら中、平面式のラジエーターとオイルクーラー
を張ったため、まるで膏薬まみれのお相撲さん、といった雰囲気ですね。

 本機はさすがに高速で、超低空で簡単に395Ktをマーク。空飛ぶF1という雰囲
気です。パイロンを回るレーサーだけあって、思ったより小回りが利きますが、
エンジンを絞ってもさっぱり減速せず、さりとて高速で突っ込むとクラッシュに
なるので、かなり時間を掛けて70Ktまで落とし、そっと着水。フラップのない時
代、レーサーとはこんなもんだったのでしょうか。機体は静止後も波に揺れて、
なかなかリアルでした。
 実際のMC72も、かなり操縦が難しかったようです。宿敵イギリス打倒をめざす
究極のレーサーとして計5機作られ、優れたパイロットが搭乗しましたが、3人
(2人の説もあり)が墜死。同機は1931年のレースに初出場したものの、エンジ
ントラブルに泣き、イギリスが3回連続優勝を果たして、トロフィーを最終獲得
し、1913年から続いたレースに終止符を打ちました。MC72は悲運のレーサーで
したが、その後平均速度709キロのレシプロ水上機速度記録を樹立し、今も破ら
れていません。

●ライバル・S6Bで軽くスタントを:
 イギリスの最終優勝機、スーパーマリンS6BもDLして試乗。まだ計器がなく
(といっても、実機のパネルも大変簡素ですが)、塗装も青一色で、未完成の感
があります。胴体は非常に小さくて、パイロットは「乗る」というより「着る」
感じで開放座席に沈み、完全にエンジンの背後に潜って操縦します。写真で見る
と、非常に飛ばしにくそうですが、いざ操縦席に「座り」ますと、機首が細く、
キャノピーも絞り込まれて斜め前が見え、シリンダーのVバンクが邪魔ではあり
ますが、意外に前方視界がよくて驚きました。フライトシムならではの発見で、
楽しい思いをしました。
 FlightGearのモデルは、舵は重いものの操縦性に大きな癖がなく、宙返り
とエルロンロールが可能。減速もスムーズで、あっさり着水しました。しかし
最高速度が120Ktというのは…なんかの間違いでしょう?という感じです。ちな
みに実機は、スピットファイアを設計した鬼才、レジナード・ミッチェルの作品
です。そう思えば胴体の側面図などよく似ていますね。
 なおFlightGearのMC72とS6Bは、フロートが半分以上、水面に出ています
が、これは間違いだと思います。この時期のシュナイダー・レーサーは、空気抵
抗を切りつめるため、機体重量に対して、フロートの体積をかなり縮小していま
して、予備浮力は1割ちょっとしかなく、ほぼ全没していたはずです。

●グラウンド・ゼロ:
 PC7改で、ボルチモアからニューヨークへ。途中、フィラデルフィアを低空飛
行しましたが、MSFS2000で再現されていた、インディペンデンス・ホール
(独立宣言を採択した建物)は、さすがにありませんでした。
 離陸後約30分で、ニューヨークに到達。燃料がぎりぎりで、遊んでいるひまは
なく、さっさとロングアイランドのジョン・F・ケネディ空港に着陸しました。
燃料残はわずか178Lbsで、本来なら手前の、ニューアークに降りるべきだったで
しょう。後日改めて、燃料500Lbsで機体を軽くして、マンハッタン上空のスタ
ントを楽しみました。自由の女神の場所には、なぜかワシントンにもあった金色
のオベリスクが建っていました。(あれは、著名建築物のマークですかね)

 JFK空港に帰着後、マンハッタン南端近くのNew York Skysports Inc空港
(?)で、ドラゴンフライを起動します。なぜか滑走路がなくて、単なる市街地
でしたが…ウルトラライトの離陸に支障はありません。ウォール街あたりを通過
し、昔は世界貿易センターがそびえていた、9・11テロの「グラウンド・ゼロ」
に向かいます。
 「PEACE」と書いたバナーに日が当たるよう、時間設定を変更したところ、行
き過ぎて夕暮れになってしまいましたが、宵闇が非常に美しかったので、何枚か
写真を撮りました。私は最近、ノー・レタッチで画像をお目に掛けていますが、
この場面だけは、バナーと機体が見えにくかったため、少々コントラストを調整
しました。

 鎮魂の花輪を投下する気分で、バナーを切り離して撮影し、珍しく妻に画像を
見せたところ、「グラウンド・ゼロに、ものを落とすなんて…」と、かなり冷や
やかな反応であったので、マイアルバムには、曳航中の画像をアップしておきま
すね(^^;)。
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なし リンドバーグの視界

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-6-6 17:10 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 私の世界一周は、やっとニューヨークまで来ました。リンドバーグがパリに
向けて飛び立った場所でもあり、今回はまずライアンNYP スピリット・オブ・
セントルイスに試乗します。その後、戦前のエアレースで名高い、エリー湖畔
のクリーブランドを経て、ライト兄弟の故郷デイトンにある、ライト・パター
ソン空軍基地まで進出することにしました。

 セントルイス号はご存じの通り、胴体内に巨大なタンクを積み、コクピット
をその後ろに納めた「フロントグラスのない飛行機」ですが、これが実際問題
として、どの程度飛ばしにくかったのか、じっくり味わうことができました。
今回のサブテーマは「古典機の視界」です。

●左の窓から前を見る:
 FlightGearのセントルイス号は、エマニュエル・バランジェさん作で、
スマートな機体形状を、かなり巧みに再現しています。コクピット右のドアは
開閉式で、外から機内をのぞくと、スミソニアン博物館と同じ角度でパネルが
ちらりと見えて、なかなか感動的です。滑走中は、サスが激しく上下動を見せ
てくれまして、機尾には、整備員が機体の向きを変える取っ手まで再現され、
コクピット左側面には、ちゃんとペリスコープが突き出しています。(ダミー
なので使えず、伸縮しないのは残念です)
 このペリスコープは視界が狭いため、リンドバーグはあまり使わず、離着陸
時には左側面窓から、斜め前を見ていますので、私もパイロット視点を、左の
窓枠まで移動させてみました。
 あれこれファイルを調べたところ、Ryan-SoSL/nas/views.xmlの26行目に、
    <x-offset-m archive="y"> 0.0 </x-offset-m>
 という記述がありました。中央の数値はパイロットの頭の左右位置で、私の
場合は-0.460として、左に寄せています。

 バランジェさんも、側面窓から外を見ることを想定したようで、この行には
<!-- Right "0.803" -->というコメントが付いています。この通りに数値を
書き換えると、右窓から大きく顔を出した視点になります。
 セントルイス号のパネルは、現在の標準配置と違って、主要計器が右寄りに
付いています。また左側は、ペリスコープが出たままで、やや邪魔になります
から、確かにFlightGearでは右から見る方が合理的です。ただし実機では
右に体を寄せると肩が苦しくて、操縦桿が操作しにくいと思いますので、私は
史実通りに左窓を使いました。
 コクピットからの視界は、「世界が左半分だけ見える」といった印象です。

●真っ直ぐ飛べるようにする:
 さてテスト飛行です。リンドバーグが飛び立った、ロングアイランドのルー
ズベルト飛行場は1951年に廃止され、今はショッピングセンターになっており
マップ上には再現されていません。そこで西南西約8nmにある、ジョン・F・ケ
ネディ空港を使うことにしました。
 ところがこの機体、なかなか真っ直ぐ走ってくれません。私はジョイスティ
ックを持っておらず、独立したラダー操作が出来ないため、もともと3車輪で
ないと操縦しにくいのですが、機体も少々、グラウンド・ループの傾向が激し
いようです。そこでryan-sosl-yasim.xmlを調べたところ、主車輪と尾輪
の抵抗係数が同一になっていました。

 これには異論ありです。セントルイス号は第一次大戦機と同様、テール・ド
ラッガー(尾輪の代りにソリがある機体)で、ソリの抵抗を地上ブレーキとし
て使っています。従って抵抗係数は、もう少し大きくていいと思い、主車輪の
4倍にしてみました。これで機体は、ぐっと直進性を増しました。
 離陸してみると、また新たな問題が発生。何度試しても左へ大バンクして、
必ず墜落してしまうのです。調べてみますと上反角はゼロですが、これはセン
トルイス号の三面図を「直訳」したもので、異論があります。高翼機は上反角
がなくても、バンクしてサイドスリップすると、胴体に気流が当たり、主翼下
面の風圧が増えて復元力を生みます。yasim はこれを再現しないようですの
で、若干の上反角を付けるのが正しいと思います。
 試しに上反角を3度与えると、わずかに安定性が発生しました。まだロール
方向に暴れるので、5度まで増やしたところ、ようやくまともに飛べるように
なりました。

●ロングアイランド上空を散策:
 やっと、JFK空港を離陸。満タンに近い燃料が入っており、機体は過荷重で
なかなか浮かず、ドンドコ過ぎゆく滑走路を見ていると、リンドバーグの出発
時の不安が、少し分かる気がします。重い機体をだましだまし上昇させ、高度
を稼いで緩やかに旋回。ロングアイランド南岸の景色を楽しみました。
 マイアルバムに広角気味の、コクピット視界のスナップをアップロードして
おきます。セントルイス号のキャビンは幅94センチ、前後81センチですので、
実際はもっと、パネルが近く感じられるはずですが、まあ大体こんな感じだっ
たのでしょう。
 着陸時は燃料を減らしましたが、外部視界に切り替えるまでもなく、無事に
降りることが出来ました。何度か発着を練習して、かなり慣れたものの、仮に
実機で飛ぶなら、この視界の悪さは相当、気になると思います。
 リンドバーグの成功から45日後、実は毎日新聞社が、同型機を発注していま
す。これはライアン社が作った、29機目の同型機だったそうで、J−BACC
の機体記号を取得。長距離通信機(連絡機のこと)に使う目的でしたが、視界
の悪さに音を上げて、本州一周の無着陸飛行を試した後、前方に操縦席のある
3座機に改造したそうです。

 ニューヨークの航空史は、掘り出せばたくさんありそうですが、あと1つだ
け。ルーズベルト飛行場のすぐ南隣には、陸軍のミッチェル飛行場があったの
ですが、ここでジミー・ドゥーリットルは1929年、コンソリデーテッドNY-2
複葉機の操縦席に、外が見えないカバーを掛け、誘導電波を使って、世界初の
計器離着陸に成功しています。最大の課題は高度の測定精度ですが、NY-2は
鈍足のうえ頑丈で、脚をかなり強化してあり、フレアを掛けず接地しても大丈
夫だったそうです。この実験のため、ドゥーリットルのアイディアを出発点と
して、旋回計の発明者エルマー・スペリーが、初の精巧な人工水平儀とジャイ
ロ定針儀を開発しました。
(FlightGearのセスナ172も、700ftくらいの降下率を保ったまま、安全に
接地できます。この飛行を再現したいのですが、フロントグラスの視界を塞ぐ
うまい手を思いつきません)

 さて私はセントルイス号で、クリーブランドまで、クロスカントリーをやっ
てみたいと思いました。次のようなコースです。

■NYからクリーブランドへ:
◎ケネディ国際空港KJFK VOR-115.90 403758N-734616W 偏西13度
   ▼288度302nm
◎エリー・トム・リッジ空港KERI 420451N-801033W
   ▼243度76nm
◎バーク・レークフロント空港KBKL 413106N-814100W
   ▼230度10nm
◎クリーブランド・ホプキンズ国際空港KCLE 412448N-815059W

 最初の中継地の、エリー・トム・リッジ空港は、エリー湖南岸の、ちょうど
中央付近にあります。セントルイス号はVORもNDBも使えませんし、視界が悪い
上、このコースは大半が平たい山地で、地文航法は困難です。残る手は推測航
法ですが、鈍足のため風の影響が大で、かなりの誤差が予想されます。そこで
エリー湖にぶち当たって西に変針し、湖岸に沿って飛べば迷いっこない…とい
う作戦を立てました。

●「わき見禁止」の赤いヴェガ:
 残念なことにセントルイス号は、オートパイロットが全く使えないことが判
明。ウイングレベラーさえ利かず、これで長距離は大変と思いまして、今回は
1930年に開発された、ロッキード・ヴェガを選びました。鬼才ジョン・ノース
ロップ設計の高速軽旅客機で、今ならさしずめビジネスジェットですね。長距
離レーサーの顔も持ち、ウィリー・ポストの単独早回り世界一周と高々度実験
飛行、アメリア・イアハートの大西洋横断などに使われ、当時の民間機には
珍しく、100機以上造られました。FlightGear用の機体は真っ赤で、ドア
以外の客席窓がすべて塞いであり、イアハート機のようです。

 さて、ヴェガの視界ですが。主翼の前縁部にコクピットがあり、イアハート
の実機を見学した際も別段、視界が悪そうには見えませんでした。しかし飛ば
してみると、意外な落とし穴がありました。
 これも、マイアルバムをご参照頂きたいのですが、実はパイロットの側面、
ちょうど目の高さに、主翼前縁の断面が位置しており、真横が全然見えないの
です。ベースレグからファイナル・アプローチに入る時など、滑走路がまった
く見えません。側面下方にわずかな視野がありますが、役立たずです。まるで
わき見防止の目隠しを付けた、馬車馬になった気分で、しばらく飛ばしている
とストレスが溜まってきます。
 ヴェガもテール・ドラッガーですので、独立ラダーが使えない私は、滑走に
手間取ります。そこでまた少々、テールスキッドの抵抗を増しました。
(ついでにバラしますと、主車輪のトレッドも若干拡張しました。この機体は
地上で結構、派手にロールするのです)

 JFK空港で現地時間1302時、UTC1702時に始動。風は250度9Kt。broken
とscattered の雲が4層ありました。
 燃料を1000Lbs積んで西向きに離陸。薄雲越しにぼんやり見える、マンハ
ッタンのビル群を振り返りながら、エリー・トム・リッジ空港へ。約130Kt
しか出ませんので、風速9Ktでも、かなり偏流(横風成分)を食いそうです。
きっちり風力補正計算をして、左に3度修正。そろそろニューアーク空港が
真横すぐ下にあるはずですが、「側面目隠し飛行機」ですので見えません。

●アパラチア山脈を越えて:
 やがて街と平野が切れ、眼下は森林一色に。この機体の長所は、オートパイ
ロットで倍速飛行時に、大変安定していることです。低く拡がったアパラチア
山脈と、それに続くアレゲニー台地の上を、4倍速でひたすら飛び続けます。
やがて山地がせり上がり、私は5000ftへ上昇しました。
 そろそろペンシルベニア州かな、と思いますが、景色はまったく同じ。なん
だか非常に大きな、どこまで食べても同じ味の淡泊なパンを、ひたすらかじり
続けている気分です。アメリカは、広いですね。

 やっと山々の標高が下がってきました。すぐエリー湖が見えるはず。1912時、
ハーフスロットルにして、3000ftに向けて降下。1914時、前方に水面が拡がり
まして、やれやれエリー湖です。
 左には都会が…エリー市ですね。Atlasで確認すると、コースは計画より右
に8nmずれていますが、まぁよしとします。1920時にエリー・トム・リッジ空
港の上空をフライパス。到着時刻はドンピシャリでした。針路を変更し、風力
補正計算をすると、ほぼ修正角はゼロ。さあクリーブランドへ、ヨーソロ(直
進)と行きましょう。
 湖岸に沿って飛び続けると、やがて大都会が出現。ビルと共に、太い煙突や
送電線の鉄塔が見え、いかにも工業都市です。湖岸に沿って横たわる、バーク
・レークフロント空港の上空を通過。変針して10nm飛び、クリーブランド・ホ
プキンズ国際空港を発見。風下へフライパスして反転し、かなり上手く降りた
つもりでしたが、大きなタイヤがポンポン跳ねて、パルーニング気味となり、
ちょっとグラウンド・ループしたのが残念でした。

●赤と白のクマンバチ:
 クリーブランドは、五大湖の工業地帯にあり、早くから航空も盛んで、確か
1930年ごろ、全米初の管制塔が設けられました。1929年にクリーブランド・ナ
ショナル・エアレース(数十競技の総合大会)が始まり、1931年には同レース
に有名な、周回競技のトンプソン杯レースが加わりました。
 ドゥーリットルは、1931年に大陸横断のベンディックス杯レースに優勝後、
トンプソン杯も狙いましたが、直前に愛機の脚故障で胴体着陸。出場を断念し
かけますが、ここでグランビル・ブラザース・エアクラフトが、自社GeeBee
・R1型レーサーを提供しました。例のクマンバチみたいな、巨大な空冷エンジ
ンを包む短い胴体に、ごく小さな翼が付いた飛行機で、操縦・安定性は悪く、
このシリーズは死亡事故が相次いだようですね。
 著名な女性レーサー、ジャクリーン・コクランは、本機のストレッチ型(航
法士が同乗)で、なんとロンドン=シドニー間レースに出ていますが、ルーマ
ニアでリタイア。「この飛行機に失速速度はない。どんな速度でも失速する」
と自伝で語っています。ドゥーリットルが試乗した際は、勝手に2回、スナッ
プロールしたそうですが、何とか乗りこなし、トンプソン杯を得ました。

 せっかくクリーブランドに来たのですから、GeeBeeに乗らない手はありま
せん。まず視界ですが、目の前と左右はよく見えます。キャノピーが大変小さ
いため、頭の近くに死角がないのですね。ただ機首は太く長いので、地上では
前方が、空中では下方が大きく塞がります。
 視野をやや広角気味に引くと、何とか滑走路の側線が見えますが、直進性は
不良。苦心して滑走し、滑走路の末端に近い、接地点標識のあたりで離陸しま
した。上がってしまえば癖は少なく、パワーは十分。低空で220Ktを発揮し、
連続宙返りが可能です。
 エルロンロールも出来ますが、背面付近では機首が振れやすく、修正の舵も
敏感なので、ブラックアウトやレッドアウトを食って視界を奪われ、いま墜ち
るか、もうダメかと、かなり焦りましたが、何とかリカバーしました。

●GeeBeeでデイトンへ:
 全開の燃費は2mn/gal、ハーフスロットルで3nm/gal程度ですが、タンクには
13.2gal(約50Lbs)しか積めません。クリーブランド・ホプキンズ空港から、
市の反対側の、レークフロント空港まで往復したら燃料が尽き、ホプキンズに
デッドスティック・ランディング(滑空着陸)しました。全開ですと、たった25nm
くらいしか飛べません。
 着陸は110Kt進入、80Kt程度で接地。蛇行するけれど、尾輪がステアします
ので、修正できなくはありません。「癖はあるが、飛ばせないことはないな」
と思いまして、ちょっと可愛くなり。デフォルトの燃料79Lbsを1500Lbsに
拡張して、デイトンのライト・パターソン空軍基地まで、クロスカントリーを
試みました。以下がフライトプランです。

■クリーブランド=デイトン:
◎クリーブランド・ホプキンズ国際空港KCLE 412448N-815059W
   ▼224度131nm
★スプリングフィールド・バークレー(KSGH)VOR 113.20 395013N-835041W
   ▼264度10nm
◎ライト・パターソン空軍基地KFFO 394935N-840251W

 約190度4Ktの風。220Kt出すと仮定し、針路を計算します。1度左、4Kt減
の補正値を得て1735時、上げ舵を一杯に引いて離陸し、南東へ。眼下には優し
い色合いをした、田園地帯が拡がります。小都市と小空港がたくさん点在し、
心なごむ風景です。
 5000ftを、計画より少し遅い207KIAS前後で飛びましたので、TASは230Kt
くらいでしょう。1810時に、スプリングフィールド・バークレー着予定とみて
巡航を続けます。1802時に燃費を計ると2.98nm/gal。燃料残は1300Lbsです。
1813時、そろそろ高度を下げて3000ftへ。1815時、左に都市を発見しましたが
デイトンにしては小さいなあ…。
 適当なランドマークがないため、Atlasを参照し、中継地のスプリングフィ
ールドを北へ外したものの、ライト・パターソン空軍基地に、ぴたりと向かっ
ていることを確認。そのままストレートに着陸しました。

 GeeBeeは、適度にじゃじゃ馬で面白いですが、またも着陸でグラウンド・
ループ気味になったのは残念です。私は空戦はしないものの、スタント時の
操舵や、テール・ドラッガーとヘリの操縦を考えると、やはりラダー軸独立
のジョイスティックが欲しくなってきます。
 どなたかお勧め製品、及び注文先がありましたら、どうかご教示下さい。
或いは手持ちのMSサイドワインダーの、ゲームポート用コネクタを、USBに変
換する方法が見つかれば、XPでも使えそうで、それでもOKなのですが。
投票数:5 平均点:0.00

なし ILS自動着陸に挑む

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回はオハイオ州デイトンの、ライト・パターソン空軍基地に到着しました。ラ
イト兄弟は初飛行翌年の1904年、ここに土地を借りて100回以上の飛行実験を行い、
また1917年には、近くにアメリカ陸軍の訓練基地や、初期の飛行テストセンターと
なったマックック飛行場など、計3飛行場が建設され、これらが統合や拡張を続け
て、現在の基地になったそうです。
 この基地は約3800mの滑走路を持ち、今も米軍の主要な開発・テストセンターの
一つですので、私もここで何か研究をしてみたくなりました。

 テーマに選んだのは、ILS利用のオート・ランディングです。自動的なスロット
ル・オフや、オート・ブレーキングまでやるのは無理ですが、手動のフレア(引き
起こし)を行わず、オートパイロットを使用して降りてみたいのです。

●フレアなしでも、降りられる?:
 私は長い間、FlightGearのオートパイロットでは、自動着陸は出来ないと諦めて
いました。ILSで針路保持と降下経路の保持は可能ですが、自動的にフレアを掛け
る仕組みがないため、これまでは接地寸前に必ずオートパイロットを切り、手動で
フレアと軸線の再調整を行って着陸していました。皆さんも多分、同じではないか
と思います。

 しかし実機では、フレアは必ずしも着陸の絶対条件ではなく、機種によってはア
プローチ態勢のまま降りてきて、グラウンド・エフェクト(地面効果)を利用して
降下率を抑え、安全に着陸できるそうです。例えば777は本来、フレア操作が不要
ですが、パイロットが不安を感じるため、エアライン納入開始前にマニュアルを修
正し、フレアを取り入れたと聞きます。747もフレアなしで着陸可能だそうです。
 またYS-11や川崎C-1の、テストパイロットを務めた長谷川栄三氏は、著書「戦後
国産機開発の苦闘と教訓 パイロットの証言」(別冊航空情報)の中で、特にSTOL
機は滑走距離短縮のため、着地時と同じ約5度のピッチアップ姿勢で進入するよう
に設計し、フレア操作を不要にしなければダメだ、とまで断言しています。これは
私にとって相当、目からウロコでした。

 FlightGearには多分、地面効果は存在しないと思いますが、多くの機種は脚の
衝撃吸収能力に余裕があり、少々乱暴に降りても、事故判定は食いません。とする
と案外、ILS自動アプローチのまま接地しても、問題ないのではないかと思い、実
験を試みました。

●セスナ172で、ドシンと降りてみる:
 思えば私はここ数カ月、さっぱりILS進入をやっていません。そこで練習を兼ね
て、まず速度が遅くて、操縦の楽なセスナ172で、ライト・パターソン空軍基地に
ILS進入を試みました。
 残念なことに、この基地のILSには問題があって、自動進入ではオートパイロッ
トのローカライザ保持(CDI Course)モードが誤作動し、機体が勝手に回れ右し
てしまうことが判明しました。これは滑走路両端のILS周波数が、同一になってい
るためかも知れません。そこで手動操縦で、耐衝撃試験のみ行うことにして、まず
約60Ktで進入し、フレアを掛けずに接地を待ちました。結果は、バウンドしたもの
の、無事に降りることができました。降下率は約300ft/minです。

 続いて降下率を400ft、600ftと増やし、最終的には1000ft/minで、機体を地面
に叩き付けるように降りてみました。実機ですと、立派な墜落と言えそうですが、
3回ほど大バウンドしたものの、墜落判定をまぬがれました。ともかく、フレアな
しの着陸は可能である…という概念実証試験には、なったと思います。

●PC7改に、地面効果を与えるには?:
 次に私の常用機、ピラタスPC7改で実験します。この機体の公称失速速度は、着
陸形態で65Ktくらいですが、実際は100Ktを割ると、高度が下がり始めますので、
これまでは110Ktくらいで進入していました。降下角3度の標準的なグライドパス
では、進入速度と降下率の間に、概算で次の関係が成立します。

      進入速度(KIAS)×5=降下率(ft/min)

 つまり60Ktなら降下率300ft/minですが、110Ktですと550ft/minとなりまして、
毎秒3m(一説には、一般的な脚の設計限界値)以上で落ちることになります。何
とか地表寸前で、降下率を落とす手はないだろうかと思いました。一番いいのは、
もちろんプログラムに、地面効果を書き加えることです。
 航空宇宙工学便覧には、式がたくさん書いてありますが、グラフをざっと見た限
りでは、地面効果は、高度がウイング・スパンの半分まで減ったところで始まり、
スパンの4分の1まで降下すると、揚力係数が約1割増しになり、スパンの8分の1で
は約2割増しになります。
 そこで例えば、地表からの高度で条件分岐を掛けて、段階的に揚力係数を増やす
手がありそうです。技術のある方でしたら、そう難しくはないでしょう。しかし私
は、現状ではこんな作業は不可能です。もっと簡単で、効果的な手はないか…。

●「見えないサス」を取り付けてしまう:
 揚力で吊るのがダメなら、下から支えたらどうでしょうか。
 つまり機体の下面に、ウイング・スパンの半分か、3分の1くらいの長さがある、
極端に柔らかい、サスペンションを設けるのです。ギアの接地寸前に、まずこれが
地面と接触して縮み、降下率をいくらか吸収して、地面効果の代役を務めるという
寸法です。揚力増大と比べると、技術的にはいささか野蛮ですが、この方法なら私
にも、プログラムが書けそうです。

 FlightGearの機体の空力プログラム(機名.xml)には、ground_reactions と
いうタグがありますよね。脚や、主翼などのストラクチャーが、地面に触れた時の
反発力などを記述している部分ですが、ここにサス(実態は、一種の固定脚)を書
き足せばよさそうです。抵抗ゼロで、ブレーキ機能はなし。バネの反発力は、接地
後に邪魔になるので極めて弱くして、適度なダンピング特性を与えれば、うまく行
くんじゃないか、と思いました。このサスは言うまでもなく、着陸以外の飛行特性
には影響を与えず、目にも見えません。
 脚が簡単に、追加できるかどうかが課題だと思いましたが、5本足の747のファ
イルを調べたところ、1本ずつ名称を変えれば問題なさそうでした。

 そこでPC7改に、「見えない固定脚」を3本追加しました。長さは、正規のギアよ
り120インチ長くしました。つまり地上約3m、高度10ftあたりから利き始めるわけ
です。名称はそれぞれ「ノーズ地面効果サス」「メイン地面効果サス」と、仮に呼
ぶことにします。
 安定性を確保するため、ノーズは本来のギアよりやや前に出し、メイン2本は前
後位置を正規ギアと同一とし、左右のトレッド幅は2倍にしました。スプリングレ
ートは取りあえず、正規のギアの10分の1に、ダンピングレートは正規のギア通り
に、スプリングレートの3分の1としてみました。
 以上の設定値は、まったくの手探りですので、最初は残念ながら起動した途端、
機体が派手にバック転を起こし、裏返しになりました。試行錯誤を重ね、取りあえ
ずノーズ地面効果サスの全長を、かなり短くすると同時に、スプリングレートを正
規ノーズギアの1389.1に対し30と大幅に小さくし、ダンピングレートも23に変更。
メイン地面効果は、正規ギアのスプリングレート4630.5に対し210、ダンピングレ
ートは70としたところ、地上姿勢が一応安定して、飛行可能になりました。

●フラップを改修する:
 テスト飛行は、ILSに問題のあるライト・パターソン基地ではまずいので、東隣
の、スプリングフィールド・バークレー空港に移動しました。ここは2900mクラス
の滑走路があり、ILSとVORがあります。
 まずフライトシム用の空港案内サイト、http://www.fscharts.com/ から空港
マップを取得します。ここは便利なHPで、滑走路や周波数、磁気偏差なども記載さ
れています。このマップを基に、メモ用紙に場周経路の磁気方位図を殴り書きし、
ILS周波数なども描き入れます。これで準備OK。

 天候は概ね晴れ。190度の風4Ktという穏やかな条件で、軽い横風の進入を行いま
す。離陸してオートパイロットでぐるりと回り、ダウン・ウインドレグで、フラッ
プダウン時の低速飛行を実験します。
 デフォルトの燃料搭載量(満タンの約7割)では、フルフラップでも90Ktの水平
飛行維持がやっとです。(信じがたいことに、私は今の今まで、PC7は2段フラップ
だと思っていました。実際は3段目があり、100Ktではなく90Ktまで落とせました…
馬鹿みたいです)
 燃料を満タン4分の1の1000Lbsまで減らすと、さらに進入速度を下げることが出
来ました。ダウン・ウインドレグと、ファイナルアプローチを飛びながら、様々な
速度で機体の迎角を確認し、先ほどご紹介した長谷川パイロットの言う、機首上げ
5度を確保しようとしたのですが、今回はテスト中の記録メモが混乱していますの
で、このあたりのご報告は省略します。
 ともかく、地面効果サスを装備して、フレアなしのILS自動着陸を試すと、1回
のバウンドで安全に着地しました。サスの効果は出ましたが、加速度計を見ると、
瞬間的にプラス2.5Gが掛かっており、まるで空母への着艦です。出来ればもっと、
ソフトに降りたいものです。

 そこで降下率低減のため、フラップ揚力を増やして、着陸速度を下げることにし
ました。主翼自体の揚力係数をいじるのは、実機ですと大改修になってしまいます
が、フラップなら少々面積を増したり、翼型変更や、ヒンジ部分の空気の流れ方を
変えたりして、比較的簡単に改修が可能とみられます。pc7.xmlの揚力係数の記述
を調べますと、フラップのvalueは0.01でしたので、これを取りあえず0.05に増や
してみました。
 効果は顕著に現れて、燃料1000Lbsでは、ぎりぎりの最小飛行速度は、公称失速
速度より低い58Ktまで可能でした。しかし結果的には、このフラップ揚力係数は過
大で、改造後は機体の空力バランスがやや壊れ、エンジンを絞って機首も下げてい
るのに、異常な上昇をするケースが見られました。
 そこでフラップ揚力のvalue を0.025に半減し、この問題を解決しました。ただ
し、せっかく下がった進入速度が80Ktまで増加しましたので、自動着陸を実施する
と軽くバウンドが残り、着地ショックも2Gくらい出ていました。そこで地面効果サ
スの設定を、さらに煮詰めることにしました。

●地面効果サス、ついに成功:
 まず、ノーズ地面効果サスの全長を見直します。地上姿勢でバック転を避けるた
め、かなり短くしていたのですが、計画当初の長さ(正規ギア+120インチ)に戻
しました。また取り付け位置も後方に下げ、正規ノーズギアと同位置にしました。

 次にスプリングレートを、さらに弱めます。地面効果サスを装備後は、スプリン
グの反力で、機体が空中に押し上げられるとみえて、離陸性能が大幅に「改善」さ
れてしまい、正規より30〜40Kt少ない速度で、離陸してしまう例がありました。そ
こで、すべての地面効果サスのスプリングレートを、さらに大幅に減らすと同時に
ダンピングレートを強化しました。結果的には、次のような設定としました。

  ・ノーズ地面効果サス スプリングレート10.1(正規ギアの約0.7%)
             ダンピングレート20.0(正規ギアの約4.3%)

  ・メイン地面効果サス スプリングレート75.0(正規ギアの約1.6%)
             ダンピングレート100 (正規ギアの約11%)

 特にスプリングはスカスカで、正規の値に比べれば無に等しく、ダンパーの値も
ごく小さいのですが、はっきりと効果がありました。

 飛行テストを再開。80Ktで進入し、ついにノーバウンド着陸に成功しました。た
だし機外視点で観察しますと、地上10ft程度で地面効果が利いた時、やや機体が前
傾する傾向があって、正規ノーズギアがメインより先に接地してしまい、着地ショ
ックが大きくなっている感じがしました。
 メイン地面効果サスは、正規のメインギアと前後位置が同じですので、重心位置
より後方にあります。このためピッチ5度前後の機首上げ姿勢で、メイン地面効果
サスがノーズより先に利き始めた場合、重心まわりに機首下げモーメントが発生す
るのでしょう。そこでメイン地面効果サスの位置を、重心まで前進させました。

 これが大成功で、自動着陸しますと、高度10ft前後で自動的にフレアが発生し、
降下率が減少。この時点で、2〜3ft跳ね上がる傾向はありますが、その後は静か
に沈んで、軽いショックでノーバウンド着陸しました。やれやれ、取りあえず成功
です。
 この方式による着陸は、

  ・必ずしもまだ100点満点の、スムーズな着陸ではない。
  ・機体重量(燃料の分量)の大小によっては、現在の設定は
   まだベストではない。
  ・風が強いと正直、どうなるか分からない。
  ・手動着陸では、かえって地面効果が邪魔な場合もあるかも
   知れない。

 …といった課題はありますが、ひとまず、ご報告できる状態になりました。

●PC7改に、待望のRMIを装備する:
 出来れば大小のジェット機でも、ILS自動着陸を試したいと思いまして、現行モ
デルのサイテーション・ブラヴォーと、777を飛ばしてみました。しかし残念なが
ら、いずれも改良を経て素晴らしい機体になっているものの、オートパイロットが
複雑で、すぐには飛ばし方が分からず、この日は断念せざるを得ませんでした。同
様に747も試しましたが、操縦は簡単なものの、ダウン・ウインドレグをオートパ
イロットで飛行中、原因不明の失速・墜落を起こし、がっかりしました。

 しかし一つ、ラッキーな発見が。現行バージョンの747には、私が欲しくてたま
らなかったRMIが付いており、うまくPC7改に移植できたのです。
 RMIとは、ジャイロコンパスの盤面に2本の指針があり、それぞれNAV-1、NAV-2
のVOR方位を、機首からの相対方位で指してくれる計器です(ADFとVORを組み合わ
せたタイプもあります)。セスナに付いているような、CDIタイプのVOR指示器のみ
ですと、コーストラッキングには便利でも、「VOR局は一体どこ? 右か左か?」と
いう場合には非常に不便ですので、ぜひこれが欲しかったのです。以前から装備し
ていた、苦心の自作計器「MRIまがい」は、これでめでたくお払い箱です。

●濃霧のオートランディング:
 このRMIは、ILSにも反応しますので、軍用基地のように、ILSはあるがVORもNDB
もない(実際はTACANがあるはずですが、FlightGearでは使えない)空港に降りる
場合、ILSをNDBのように利用できて、非常に便利です。
 例えばこの日PC7改で、スプリングフィールド・バークレー空港から、すぐ近く
のジェームス・M・コックス・デイトン国際空港へ移動した、ショートフライトを
ご紹介しましょう。

 私は自動着陸の仕上げとして、Zキーで濃霧を出しました。最初はライト・パタ
ーソン空軍基地に降りるつもりだったのですが、今回もやはりILSが異常反応した
ため、基地北西のデイトン国際空港にダイバートすることにしました。
 デイトン空港の滑走路は、ほぼ東西方向です。ILS周波数をNAV-1に入力して、
パターソン基地からいったん北上し、RMIの針がゆっくり西へ回転するのを待ちま
す。ADFによる進入と同じ要領で、指針が滑走路方位と同じ238度を指すタイミング
を待ち構え、左に旋回。これで滑走路に正対します。見やすくて単純明快、まさに
便利の一言です。
 オートパイロットをILS保持にセットして、減速しながらギアとフラップを降ろ
し、横風ぎみの微風の中、80Ktで降下を続けます。やがて地面効果サスが利き、
私は大きな満足感とともに、ほぼ視界ゼロの滑走路センターライン上へ、自動着
陸を果たしたのでした。
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なし ILS自動着陸を洗練する

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-6-27 20:28
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回ご紹介しました、自作の「地面効果サス」を使った、ILS自動着陸のお話の中で、「FlightGearには多分、地面効果は存在しないと思います」と書きましたが、これは大間違いで、この機能はちゃんとありました。申し訳ありません。

 今回はピラタスPC7改に、この空力的な地面効果を付け加えて、ふんわり自動着陸できるように改善しました。またこの実験の関連で、747-200でもフレア無しのILS自動着陸に成功しましたので、のちほどご報告します。最後にPC7改で、ライト兄弟の故郷・オハイオ州デイトンから、リンドバーグゆかりの地・ミズーリ州セントルイスまで前進します。

●PC7改に、空力的な地面効果を加える。
 私が前回試作した「地面効果サス」は、3車輪式でしたのでやや不安定で、その後の追試では、しりもち事故が発生しました。そこで機体の前後左右に4本、さらにショックを和らげるために上下2段、計8本を装備しまして、一応は安定して降りられるようになりました。

 747-200にも、同様の「地面効果サス」を付けてみましたが、この機体はもともと、微動もしないファイナル・アプローチを行っても、接地直前に必ず機首を下げる癖があります。デフォルト燃料搭載量(最大着陸重量)では、この傾向が比較的小さいので、何とかILS自動着陸に成功しましたが、軽負荷の試験では、ノーズギアから先に滑走路にヒットし、クラッシュやハードランディングを重ねました。
 条件を変えて20回ほど試しても成功せず、少々嫌気が差しまして、ぼんやり747-200.xmlファイルを眺めていましたら、「lift_due_to_ground_effect」という文字列が、目に飛び込んで来ました。
 これは、うかつでした…747-200には、もともと地面効果による、揚力補正機能があったのですね。以下に転載します。

</flight_control>
<aerodynamics>
<documentation>
created :
- help takeoff.
- smooth landing.
</documentation>
<function name="aero/function/kCLge">
<description>Change_in_lift_due_to_ground_effect</description>
<product>
<table>
<independentVar>aero/h_b-mac-ft</independentVar>
<tableData>
0.0000 1.2000
0.1000 1.1500
0.1500 1.0900
0.2000 1.0200
1.1000 1.0000
</tableData>
</table>
</product>
</function>

 航空宇宙工学便覧の説明と照合すると、テーブル左の数値群は、主翼スパンを1.0とした場合の対地高度で、右の数値群はその高度における、揚力係数の補正値だと分かりました。つまり地上(0.0000)では、揚力が20%増し(1.2000)になるのですね。
 Aircraftフォルダに入れている機体に、due_to_ground_effectで検索を掛けたところ、さらに幾つもの機種に、同様の記述があることが分かりました。内容はどれもほぼ同じですが、c172の場合は揚力に加えて、以下のような記述もありました。

<function name="aero/function/kCDge">
<description>Change_in_drag_due_to_ground_effect</description>
<product>
<table>
<independentVar>aero/h_b-mac-ft</independentVar>
<tableData>
0.0000 0.0480
0.1000 0.5150
0.1500 0.6290
0.2000 0.7090
0.3000 0.8150
0.4000 0.8820
0.5000 0.9280
0.6000 0.9620
0.7000 0.9880
0.8000 1.0000
0.9000 1.0000
1.0000 1.0000
1.1000 1.0000
</tableData>
</table>
</product>
</function>

 つまりc172は、地面効果によって、空気抵抗も減らしています。
ネットや本で調べますと、地面効果は単純に「主翼と地面の間に、空気がサンドイッチになって、機体を押し上げる」わけではなくて…翼端から発生する渦流(誘導抵抗の原因)が、地面の接近によって抑制されるために起こるようです。従って、抵抗減少と揚力増大が同時に起きるのですね。(余談ながら、戦前のドイツ郵便機は、大西洋横断時に燃費を稼ぐため、海面すれすれを飛んで、地面効果を利用した例があるそうです。塩分で機体が傷みそうですが)
 また地面効果は水平尾翼にも作用して、ピッチダウンを起こすそうで、これが先程お話しした、747が地上寸前で起こす機首下げの原因と思われます。ただし、プログラムのどの部分でこれを行っているか、今回は確認できませんでした。

 また揚力係数の補正値は、ほとんどの機体が、高度ゼロで1.2倍としていますが、例外もありました。339PANのテーブルデータを転載します。

<tableData>
0.0000 1.4000
0.1000 1.3500
0.1500 1.2950
0.2000 1.2400
0.3000 1.1730
0.4000 1.1030
0.5000 1.0340
0.6000 1.0460
0.7000 1.0190
0.8000 1.0100
0.9000 1.0050
1.0000 1.0000
1.1000 1.0000
</tableData>

 339PANは景気よく、揚力補正を1.4倍としています。これは背の低い機体ですが、PC7改も同様に低翼で脚が短いので、この地面効果プログラムは相性が良いだろうと思いまして、拝借することにしました。これがうまくいけば…竹馬的な「地面効果サス」とは、おさらばです。

●重心を調整。さまざまな機体重量で、自動着陸に成功:
 飛行テストはVORとILS、そして長い滑走路のある、ジェームス・M・コックス・デイトン国際空港(KDAY)で実施しました。滑走路方位は磁気238度。軽い横風着陸とするため、風は190度4Ktとしました。PC7改は満タン4000Lbsですが、燃料搭載量を変えて、様々な重量条件でテストしました。
 飛行パターンは、離陸後反転して高度3000ft(標高が高いので、地上約2000ft)まで上昇。150Ktで5nmほど進出して、グライドパスと出会ったところで反転し、ILSをセット。100Ktに減速して脚とフラップを出して、パスを維持できる最低速度を探って機首を出来るだけピッチアップし、滑走路に向かいます。

 PC7はもともと、非常に「機首が重い」機体です。公称失速速度は、進入態勢で65Ktですが、実際は100Ktを割ると機首が下がり、高度が落ちてパスを維持できませんでした。そこで私はフラップの揚力係数を調整し、デフォルトの0.001を、この時点では0.0025としていました。
 これで進入速度を、80Kt前後まで落とせますが、フレア操作無しのILS自動着陸を行うには降下中、約5〜9度のピッチアップを保たなくてはなりません。が、PC7改はそこまで機首が上ってくれず、これは重心位置が間違っていると思えまして、微調整を掛けました。以下に、テスト結果をまとめます。

○重心位置を、デフォルトの164.16から166.16に修正。
 燃料70%搭載。
 →結果は、2段フラップで77Ktまで減速可能。ピッチアップ5度、見事に自動着陸。
○重心位置を、さらに167.16に修正。
 燃料70%搭載。
 →結果は、3段フラップ90Kt、ピッチアップ9度で、完璧な自動着陸。
 (ただし9度では、着地点が機首に隠れます。そこで…)
○フラップ揚力計数を、従来の0.0025から0.0015に減少。
 燃料を25%に減少。
 →結果は、3段フラップ73Kt、ピッチアップ9度。機首が高すぎるが、
 快調な着陸。もう少し増速すれば、視界も確保されるはず。
○燃料搭載量を100%に増加。
 →結果は、3段フラップ90Kt。機体が重いので、増速にもかかわらず
 ピッチアップは8度あった。さらに減速可能だが、ピッチが増えて前
 が見えなくなる。この時は本能的にフレアを掛けてしまい、テスト
 にならず。
 やり直したところ、軽い衝撃はあったものの、安全な自動着陸に成功。

 満タン時の接地だけは、若干の衝撃を伴いますが、実際はこの状態で降りる場面は、ほとんど無いでしょう。PC7改のノーフレア・ILS自動着陸は、取りあえず完成です。重心位置の調整が、大きな効果を上げたのが特に印象的でした。

●747-200でも、ノーフレアILS自動着陸に成功:
 ILS自動着陸が本当に便利なのは、取り回しの難しい大型機です。747-200はもともと、揚力2割り増しの地面効果を持っていますが、これをPC7改と同様に、4割り増しのテーブルデータに差し替えてみました。
 ところが、これは大失敗でした。先ほどお話しした、地表寸前でピッチダウンする傾向が強まりまして、墜落はまぬがれても、スリル満点の着陸復航シーンになってしまいます。そこで逆転の発想で、地面効果を削除してみました。
 すると、デフォルト燃料搭載量(最大着陸重量)では160Kt、ピッチアップ5度程度を維持して進入し、終盤でも機首を下げずに、かなりあっさり着陸しました。次にミニマムの燃料で再テストすると、145Ktで進入可能で、これも成功しました。各車輪が軽くバウンドしたものの、まずは危なげのない着陸です。私が手動で降ろすよりも正直、うまいと思いました。ただ、機体が大きいからそう見えるので、お客が乗っていたら怒るかも知れませんが…(^^;)。
 まだまだ実験回数が少ないし、改善の余地は多々ありそうですが、747級の大型機でも一応、ILS任せの自動着陸が可能だと分かりました。

 下手な私が言うのは気が引けますが、ILS自動着陸で747をうまく降ろすコツは、ファイナル・アプローチに入る際の、リード距離を十分に取ることです。ノーフレアによる自動着陸は、機体が接地寸前に、完全に安定しなくては危険です。オートパイロットの、コース修正動作に伴う動揺は、PC7改なら5nmも飛べば収束しますが、慣性質量の大きい747では、もっと距離を使わないと不安でした。高度5000ftでダウン・ウインドレグを飛び、10nmほど進出しますと、ちょうどグライドスロープと会合しますので、これを目印にして反転すると快調でした。

 747-200は自動着陸後、ILS保持を掛けたまま滑走しても、あまり機体が暴れません。仮に滑走路上で偏向し、修正が重なって蛇行しても、速度さえ落とせば、自分で勝手にセンターラインに戻ってくれます。ヨー方向の、オートパイロット感度設定が良好なのでしょう。ありがたい特性です。

●「アメリカ西部への門」をくぐる:
 自動着陸実験は、どうやら最初のヤマを乗り越えましたので、ここでPC7改を使って、デイトンからセントルイスへ旅を続けます。

◎ジェームス・M・コックス・デイトン国際空港(KDAY)
   ▼97度18nm
◎スプリングフィールド・バークレー空港(KSGH)
VOR 113.20 395013N-835041W 1055ft
   ▼258度309nm
◎ランバート・セントルイス国際空港(KSTL)
VOR 116.45 384509N-902139W RWY30 ILS-111.30

 一連の飛行テストは、スプリングフィールド・バークレー空港で行ったのですが、前回連載の終了時に、デイトン国際空港へ降りていましたので、ここからまずスプリングフィールドに向かいます。
 燃料は、半分の2000Lbs搭載。リアルウエザーは、340度9Ktの風、高度4000ft付近にovercastの雲があり、厚さは1000ftありました。PC7改は横風に弱く、右から9Ktは厳しい条件です。尾翼に風を受けて右に偏向し、ラダーではとても修正しきれず、左ブレーキを連打しながら離陸滑走して、ようやくエアボーン。

 スプリングフィールドに降りる時も、右60度の風を受けて、少々危ないと思いましたが、構わずILS自動着陸をテストしました。機体は、右に8度も修正角を掛けながら、ドリフトして進入します。ここでコクピット視界を左に振り、パイロットの視野を滑走路に正対させ、機首が右を向く状態にしました。実機では、パイロットが本能的に視線を動かしますので、こうするのが自然だと感じました。またフライトシム上でも、これで多少は操縦しやすくなります。(マイアルバムに画像を入れておきます)

 スリルを感じながら、地上100ftでオートスロットルを解除し、接地寸前にILSを切ってパワーアイドルに。フレアは掛けず、機体任せで接地し、主脚が付くと同時にラダー操作で、機首をセンターラインに向けました。この修正は成功し、その後ブレーキングの影響で蛇行しましたが、無事にフルストップしました。
 メモを取って、直ちに離陸。針路をセントルイスに向けます。VOR航法で300nm余りを飛び、ランバート・セントルイス国際空港、RWY-30RのILSを受信。ここも横風ですが、偏流角は先ほどより少なく、自信を持って降りることが出来ました。

     ○

 1927年当時、ここはランバート飛行場と呼ばれ、ロバートソン航空という小さな郵便飛行会社があって、シカゴとの間にDH-4複葉機を飛ばしていました。たった3人のパイロットの主任を務めていたのが、無名時代のリンドバーグでした。そう思うと、ちょっと感慨があります。
 日を改めて、燃料を500Lbsの軽負荷にして、ミシシッピー川が蛇行する街を見物。街の中心から東に飛んで、川岸を探していると…ビル街のそばに、探していたものが、ちゃんとありました。銀色をした、高さ192mのウエスト・ポート ゲートウェイ・アーチ(西部開拓記念碑)です。セントルイスから先は、いわゆる「西部」なのですね。低空に降りて、このアーチをくぐったことは、言うまでもありません。

 この日は30度の風12Kt。300度の滑走路に向かうと、横風成分は10.4ktとなり、PC7改にとっては、かなりギリギリの条件です。ILSに手動で乗ると、右に10度くらいの修正角になり、さすがに自動着陸する気にはなれません。
 フラップ3段、75Ktで手動操縦を続け、PAPIの示すパスにぴたり乗って、そっとタッチダウン。ノーズギアを着けると、すぐブレーキ連打が必要でした。ブレーキボタンを左右押し間違えて、ヒヤリとしましたが無事に停止。ここしばらくテストの連続で、たぶん30回近い発着を重ねましたが、お陰でパスを正確に守る習慣が付き、少しだけ腕を上げた気分です。
 さて次回からは、広大なアメリカ西部の空が待っています…。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-7-21 11:10 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 今回はミズーリ州セントルイスで、Tatさんが発表して下さった、素晴らしいYS-11の操縦を練習し、各地を経由して、アリゾナ州フェニックスまで進みます。このうちセントルイス=カンザス=デンヴァー間は、奇しくも1966年にYS-11初の海外宣伝飛行として行われた、全米デモフライトの一部分をたどる旅となります(飛行方向は逆ですが)。
 では以下に、フライトプランをご紹介しておきましょう。

◎ランバート・セントルイス国際空港(KSTL)Var1.9
VOR 116.45 384509N-902139W RWY30 ILS-111.30
   ▼279度206nm
◎カンザスシティー国際空港(KMCI)Var5.3
VOR 113.25 391827N-944326W
   ▼274度459nm
◎デンヴァー国際空港(KDEN)Var10.7
VOR 114.70 395340N-1043728W
   ▼223度525nm
◎フェニックス・スカイハーバー国際空港(KPHX)Var11.5
VOR 115.60 332626N-1120034W

 文中、Varとあるのは磁気偏差(ヴァリエーション、プラスは偏東、マイナスですと偏西)です。また最近私は、緯度経度の度・分・秒を省略し、続けて6ケタ数字で書いています。数字末尾のNは北緯、Wは西経です。分かりにくくて、ごめんなさい。

●YS-11の栄光と悲劇:
 フライトに入る前に、ちょっとYS-11について、振り返っておきます。
 6月18日付の本連載で、私は別冊航空情報「戦後国産機開発の苦闘と教訓 テストパイロットの証言」(長谷川栄三著)という本をご紹介しました。テストパイロットの立場から、航空機開発の全容を描いた面白い本で、何機もの開発経過が紹介されていますが、一番読み応えを感じたのは、やはり戦後日本の「プロジェクトX」的な苦労話に満ちた、YS-11の物語でした。

 この本でもっとも強く感じたのは、設計者とパイロットの視点の違いです。YS-11の設計陣には、軍用機を設計したエンジニアも多数いましたが、陸軍を経て戦後は米軍の訓練を受け、空自の輸送機で飛び回った著者とは、中型旅客機のあるべき姿について、大きなイメージの違いがあったようです。特に印象的だったのは、ロール方向の操縦・安定性を巡る考え方の違いでした。
 YS-11は1200mの滑走路で運用するため、或る程度STOL(短距離離着陸)性能を狙いましたので、フラップのスパンは大きく、その分エルロンが小さい機体です。設計陣は上反角を小さく抑え、ロール復元力を少なくしておけば、小さなエルロンで十分に操縦可能、という説でした。軍用機の場合は復元力が小さい方が、一度与えたバンク角を保持しやすく、機関銃の命中率がよい、という設計体験が尾を引いた判断のようにも思えます。
 これに対し、長谷川氏らパイロットの意見は正反対で、エルロンの小さな機体は、横安定(ここでは、バンク角を一定に保つ性質)を「ふらふら」にしておき、逆に復元力は大きくする必要がある、というものでした。結果的にはパイロット側の指摘が正しく、YS-11の試作機は操縦桿を手放すとロールから自動復元せず、ことに右旋回では、バンク復元には非常に強い操舵力を必要とすることが分かりました。

 YS-11のプロペラは左回転ですので、トルクとPファクター(迎角がある場合、プロペラ回転面の左右で推力差が生じ、ヨーを起こす現象)や、プロペラ後流内では主翼の揚力が非対称になる…などの現象により、機体には右ロール・右ヨーが出やすい傾向があります。そのため右エンジンが万一止まると、左エンジン停止時に比べ、スピンに入る可能性がより高く、右側をクリティカル・エンジン(停止すると危ないエンジン)と呼びます。YS-11は離陸性能向上(と、恐らくは燃費改善)を狙って、直径が4m以上もあるプロペラを付けていますから、こうした影響が大きいようです。
 クリティカル・エンジン停止時の最低操縦可能速度(Vmc)を調べるのは、重要なテスト項目ですが、あまり高空では失速速度より低くなってしまい、実施できないと聞きます。YS-11試作機のVmcテストも、恐らく3000ftくらいで行ったのでしょうが、操縦・安定性をあまり改修せずに試したところ、110Ktまで減速した時点で左エルロンを使い切り、さらに機首を上げて減速したところ右スピンに入り、からくも1旋転半でリカバリーしたそうです。耐空証明を取得するには大改造を加え、当初の設計では4度15分だった上反角を、6度15分に増やさざるを得ませんでした。
 またYS-11試験機は初期段階で、ピトー管の静圧検出口を、機首のかなり上に付けていたため、長谷川氏らが「雨が入ります」と指摘したところ、設計者は「ここが空力的にベスト。魚の目が付いている場所と同じです」と取り合いませんでしたが、果たして雨中の飛行テストでは浸水し、気速計と高度計が、デタラメな数値を指して焦ったとか…本書には結構怖い、興味深いエピソードがいっぱいです。

 と言っても、これは設計者がダメだった、というわけではなく。本格的な旅客機を初めて設計・製造するのはいかに難しいか、また設計者とパイロットはいかに立場が異なり、従ってどちらの意見も重要か、という例だと思います。
 やがて熟成を終えたYS-11は、北米でデモフライトを実施。極めて優れた安定性が、航空関係者に強い印象を与えたそうで、サンフランシスコではボーイングの首脳陣を乗せ、会心のVmcフライトを披露。失速寸前の85Ktで3舵のトリムを取り、操縦桿から手を離して見せると、「こんなの、見たことない!」と称賛の声が上がった…というくだりは感動的です。
 それだけに。赤字の末に製造を中止して後継機も造らず、貴重なノウハウが散逸したのは、大きな悲劇と感じられます。エアバスだって、大赤字を20年間持ちこたえて、ようやく世界にシェアを確保したのですから。

●セントルイスで、YS-11とDC-3に試乗:
 前置きが長くなりましたが、この本の余韻にひたっている間に、TatさんのYS-11に巡り会えたのは、私にとって非常に嬉しいことでした。
 「旅日記」で前回到着したセントルイスは、先程お話しした、全米デモ飛行12カ所の寄港地に入っています。さっそくTatさんのYS-11で、ランバート国際空港を離陸。燃料半分でフラップ1段下げ、130Ktで浮きました。約40年前の、貧乏で自信のなかった日本をしのびながら、操縦のカンをつかみます。
 最高速度は5000ftで287KIAS、10000ftでは288KIASと予想以上に俊足。旅客機としては旋回操作が容易で、6倍速でも安定して飛び、この速度のままオートパイロットで旋回しても、安定した変針が可能です。着陸は120Ktで行い、これも比較的易しいと感じました。ざっと燃費を計ると、1800nmくらいは飛べそうで、クロスカントリーが楽しみになりました。

 YS-11が就航したころは、まだ戦前の名機・ダグラスDC-3が世界のあちこちで、たくさん飛んでいました。幸いFlightGearにはDC-3があるので、比較のために試乗してみることにしました。
 古い尾輪式の機体だけに、地上姿勢では視界が悪いですが、空中では、なかなか快適に操縦できます。燃料搭載量を半分で試したところ、10秒も走らないうちに80Ktで離陸。上昇力は100Ktで毎分2000ft、5000ft通過時には毎分1500ftでした。現代機より少ない数値ですが、予想よりはぐんぐん上昇します。舵は軽く効いて、操縦はごく容易な印象です。(YS-11も悪くありませんが、ピッチとヨー方向では、しばしば舵を、最大舵角まで使い切ってしまい、あと2割程度の余裕が欲しいと感じました。ただしこれは、リアリティーとの兼ね合いの問題ですので、改善して下さいという意味ではありません)
 FlightGearのDC-3は、プロペラピッチとミクスチャーが調整可能で、10000ftでピッチ最大とし、ミクスチャーをリーン側に半分引くと、燃費が2.46nm/galまで改善されました。調整操作は面倒ですが、また楽しくもあります。というわけで気分よく飛んだのですが、アプローチでは前が見えにくく、着地はちょっと緊張気味。うまく行ったと思った途端、グラウンドループ気味に機首を振って、グリーンに出てしまったのは残念でした。いい機体ですが、古いし遅いという総合印象です。

●YS-11でカンザスへ:
 では、YS-11で旅をします。初めての機体ですので操縦しやすいように、天候はリアルウエザーを切って、190度の風4Kt、雲量は4100ftにscattered、20000ftにcirrusとしました(これは最近、私がリアルウエザーを使わない時の定番です)。この航程は約200nmしかないので、搭載燃料は半分です。
 UTC1805時にエアボーン、一度タッチアンドゴーを試した後、計画通りのコースに定針。微風では離着陸時にまったく偏向せず、非常に楽でした。1816時、10000ftで250Ktを出すとスロットル開度は65%くらい。燃費は0.86nm/gal。毎分2000ftで上昇すると、15000ft通過時は全開で202Ktまで減速して、燃費は0.64nm/galを記録。1824時、20000ftに達しました。
 ここでカンザスのVOR周波数をセットして、オートパイロットでCDIの針路保持を掛けます。ショートカット・キーでプロペラピッチを動かしたら、ちゃんと燃費が急激に好転したので、嬉しくなった途端、FlightGearが勝手に終了してしまいました。場所はちょうどコースの半分。原因は不明です。

 エルトン・ヘンスレー・マンという空港の真上でしたので、同空港から離陸し直し、高度10000ftを巡航。以後プロペラピッチには触らずに、ひたすら平らなミズーリ州を飛び続けました。広大な農地に川がゆったりうねり、まことに平和な景色です。カンザスシティー空港の北約10nmの湖上で、オートパイロットを使ってグライドパスに乗り、間もなくローカライザにもうまく乗りました。このYS-11は、マイナス3度くらいのピッチ角で降下するので、実機の降下姿勢とよく似た印象です。ほぼ完璧な接地をしたと思ったら、機体が地面に沈んでしまいました。ギアは出ていたのに、まったく残念。原因不明ですが、マップのバグと考えています。
 カンザス到着後、YS-11のライバルだったフォッカー・フレンドシップの代りに、後継機のF27も飛ばしてみましたが、この機体はピッチ方向の安定が非常に悪く、オートパイロットでILS保持を掛けると、勝手に竿立ちになって失速し、私にはとても乗れないと思いました。

●YS-11新バージョン登場、Vmc飛行に成功:
 カンザスまで飛んできた時点で、TatさんがYS-11の新バージョンを発表されました。プロペラの回転方向が修正され、実機同様に右がクリティカル・エンジンとなり、やや回転数も上がって、少し低すぎた爆音が高音寄りに修正されました。またフラップや脚のアニメーションなど、外観やパネルも整備が進んでいます。どうも、ありがとうございました。
 新しい機体で短時間、慣熟飛行を行います。
燃料を4分の1に減らし、180度12Ktの風の中、方位100度で離陸滑走。初めてまともに横風を受けたのですが、本機はかなり敏感に、風上に機首を振る性質が感じられます。ラダー修正ではとても足りないので、左ブレーキを連打したところ、今度は速度が上がらないジレンマに直面。何とか100Ktに達して離陸しましたが、機体を軽くしておいて、よかったです。

 新バージョンでは片肺飛行が可能になりましたので、YS-11試作機が苦労したVmcフライトを試しました。この飛行は、ギアもフラップも格納した状態で行います。3000ftまで上がって、まず危険の少ない左エンジンを停止。様子を見ましたが、何も問題はなかったので再起動し、続いて少し緊張しながら、クリティカル・エンジン(右側)を止めました。
 オートパイロットが、すかさず機体を2〜3度左バンクさせてバランスを取り、ピッチアップして高度を維持。私は5Kt刻みで減速し、実機が記録したのと同じ85Ktまで減速しましたが、この状態でも8〜10・5度くらいのピッチを保って、見事に安定して飛んでくれており、嬉しくなりました。マイアルバムに画像をアップしておきます。ただし、片エンジン全開では高度が維持できず、次第に2000ftまで降りたのでテストを中止。約30分の飛行後に無事着陸しました。Vmcは飽くまでも「最低コントロール速度」ですので、高度が下がるのは、まあいいんじゃないか…と思いました。では、デンヴァーへ向かいます。

●日の丸旅客機、デンヴァーへ:
 燃料を7割に増やし、リアルウエザー環境で、カンザスシティー空港から離陸を試みましたが、今回も横風の影響が強く出て、ブレーキで調整すると加速しきれず、滑走路端でいったん停止。燃料を6割に減らしてリアルウエザーを切り、最初の飛行と同じ、190度4Ktの風にして再離陸しました。
 125Ktでローテーション。快調な飛行ぶりですが、Tatさんがどこか調整されたのか、新バージョンは何となく、アンダーパワーな感じがします。(この方が実機に近いのだろうと思います)
 オートパイロットをセットし、ミズーリ川を越えてカンザス州へ(注:カンザスシティー空港は、実はミズーリ州の西端にあります)。ひたすら広大な農地が続き、いかにもオズの魔法使いと竜巻の国。FlightGear Ver1.9.1が描き出す、なかなか表情豊かな雲に見とれながら上昇し、トップへ出て10000ftで巡航。本機はまだVORが使えないので、コンパスでコースを決めたら、後はAtlasが頼りとなります。YS-11は4倍速でマップの継ぎ目(?)を超えるときも、ピラタスPC7改などと違って、ほとんど動揺がありません。これは嬉しいことですね。エンジン全開、235Ktで飛び続けます。

 1時間も経つと、少し山がちになって、そろそろコロラド州。風が弱いので、非常にラフな推測航法をしてきましたが、ほぼデンヴァー空港に的中する気配です。アプローチのリードを取るため、10度あまり変針。標高が上がったため、雲が地表を這い始め、空港も雲の中かと心配しましたが、無事に滑走路が視界に入りました。デンヴァーは標高約1600mもあり、空港も標高5000ftを超えます。そのためファイナル・アプローチに入っても、高度計が7000ftくらいを示し、妙な気分でした。またここは、全米でもっとも発着便数の多い空港で、滑走路が6本もあります。将来足りなくなれば、あと6本増設する計画だそうで、さすがに日本とはスケールが違います。

 ここまでは順調だったのですが、オートパイロットがILSをつかんでくれません。6本の滑走路のうち、南北に走る4本の周波数をすべて試しましたが、ダメでした。幸い視界がいいので、そのまま目視着陸しましたが、またも機体が地中に潜ってしまい、がっかりしました。このトラブルは現在のところ、他の空港へ向かうクロスカントリーのみで発生し、ラウンド・ロビン(出発地に舞い戻る飛行)では起きない模様です。
 面白くないので、カンザスとの中間点にあるMC Cook空港(KMCK)まで戻ってみたところ、正常に着陸できましたので、やはりデンヴァー空港のマップデータのバグと思われます。なおデンヴァー空港は、滑走路の両端で同じILS周波数を使っていますが、FlightGearはこの場合、オートパイロットが誤動作したり、反応しないケースが多いような気がします。

●これって、バックサイド領域ですか?:
 YS-11で旅を続けます。デンヴァーからロッキー山脈を越え、アリゾナ州の州都フェニックスに向かいます。デンヴァー市街地を抜けると、すぐ山ですので気持ちが焦り、離陸後は少々強引に、ピッチアップして上昇に移行したのですが、この時に少々変わった体験をしました。
 エンジン全開、ギアもフラップも納めたのに、高度も速度も、ちっとも上がりません。YS-11は広い市街地の上を、いつまでも約100Ktで低空飛行しています。今回は満タンで少々重いのですが、それにしても異常です。あれこれ点検すると、機体は約12度もピッチアップして飛んでいます。ははあ、原因はこれですね。
 オートパイロットを掛けたまま下げ舵を取り、いったん機首を水平に。するとYS-11は生き返ったように加速し、エレベーターを緩めると上昇に転じました。やはり過大なピッチアップが原因だったようです。離陸直後に、十分加速せず機首を上げた時、「速度を落とすほど、必要パワーが増える」という、いわゆる飛行特性の「バックサイド領域」に踏み込んだのではないかと想像しています。
 新明和PS-1飛行艇などが、このような飛行特性を持っていることは知っていましたが、フライトシム上でそれらしい体験をしたのは、今回が初めてでした。

●天測しながらフェニックスへ:
 今回の一連のフライトでは、かなり飛行距離を稼ぎました。そろそろ気分は半分、西海岸に飛んでおります。その先には太平洋横断飛行が待っており、VORは沿岸でしか使えませんので、このあたりから本気で、長距離洋上航法の研究を始める必要があります。

 実機なら現在はGPSやINSを使い、何の問題もないのですが、フライトシム上では最初から「正解」が約束されてしまい、航法の面白味が無くなる、と私は思っています。コンコルドのように、INS(GPS)モード以外では事実上航法が困難な超高速機や、六分儀が絶対に似合わない747などは別にしまして、私はVORのない場所で小型機を飛ばすなら、やはり推測航法に天文航法など、新しい工夫を組み合わせて、自分の技術やアイディアを試したい気持ちが強いです。というわけで、デンヴァー=フェニックス間の525nmでは、久しぶりに天測のテストをしました。海保や海自仕様のYS-11でしたら、潜望鏡式六分儀の取り付け穴が、天井にあるのではないでしょうか…。

 この飛行では2回天測を行い、自作の航法ワークシートで緯度経度を計算しました。離陸後1時間目は、誤差が南へ9nm、西へ7nmで十分に合格点。しかしフェニックス付近で行った、2時間後の測位結果は、南へ43nm、東へ19nmもずれまして、時間経過が増えると急激に誤差が増す傾向は、以前のままです。フリーウェアの天測計算ツールも試しましたが、これも使い物にならず。FlightGear Ver1.9.1では、天体関係の改良は特にアナウンスされていませんので、ダメ元のつもりだったのですが、やはりがっかりしました。
 天文航法はすでに昨年から、膨大な時間とエネルギーを使って試行錯誤を重ねていますので、正直これ以上は、あまり改善策を思いつきません。どういじっても、今回の世界一周の太平洋横断には、間に合わない気がしています。長距離洋上航法の熟成は、今後の宿題です。

 …いささか気落ちしながら、フェニックスに到着。スムーズにYS-11を降ろしました。今度は滑走路が正常に機能し、地下に潜り込まずに済みました。次回はたぶんピラタスPC7改を使って、コロラド高原を散策します。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-7-28 0:25
Tat  長老   投稿数: 375
hide さん。

いつも楽しく読ませてもらっています。
さて、YS-11 のテスト飛行をして頂き、ありがとうございました。
いくつか気になった点がおありのようですので、判る範囲でお答えします。

1. YS-11 のピッチ方向の陀の問題
現在のYS-11の設定では、しばしばエレベータを最大にしないと、十分な上昇力が得られません。これは実機に近づける為に調整したエンジン、プロペラ、アプローチ設定がうまくマッチしていないためと考えられます(おそらくアンダーパワーになっているのでしょう)。また、縦方向の安定性が若干強すぎるのかもしれません。この辺は折りを見て再調整してみます。

ちなみに、YS-11 の上昇速度は 冬場で2000ft/分程度、夏場で1000-1200ft/分だそうです。1000ft/分となるとさすがに辛く、10,000ft で通過すべきポイントでも 8,000ft 程度にしか達しなかったというパイロットの方の証言もあるようです。この機体を操縦するのはかなりの苦労があるのですね。


2. YS-11 の離陸速度について
手元にある書籍によると、YS-11 の離陸速度は100kt 付近ですね。ですから130kt はちょっと速すぎです。通常は燃料を8割程度入れてテストしているのですが、100kt 付近で浮上しました。ただ、ピッチ方向の陀の問題もありますので、かなり操縦桿を引かないと離陸しません。その辺が離陸速度を速くしてしまっているのかもしれませんね。

3. 片肺での飛行
確実にアンダーパワーになります。Vmc でなくても高度が下がる傾向にあるでしょう。やはりエンジン設定とアプローチ設定を見直してみることにします。

ある程度良くなったら YS-11 のスレッドで報告するようにしますので、テストの程、お願い致します。
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なし Re: YS−11でアメリカ中西部を行く

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-7-28 19:44
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
Tatさん。
 YS-11の舵やパワー、また離陸速度などに関しまして、さっそく丁寧なご教示を頂き、大変ありがとうございました。正規の離陸速度は100Kt付近だったのですね、確かに前回の飛行でも、約100Ktで離陸したケースがあり、私の不勉強でした。

 最初はYS-11のスレッドに、感想をご報告させて頂こうと思ったのですが、楽しく操縦するうちに、どんどん旅がはかどってしまい、結局「旅日記」の1回分としてご紹介致しました。次の機会には改めて、YS-11のスレッドにもお邪魔します。どうぞよろしくお願い致します。

     ○

 昨日テレビで、初の英仏海峡横断100周年を記念して、ブレリオXI号機の同型機がフランスから海を渡り、ドーバーの崖の上へ着陸するシーンを見ました。1930年代に作られたレプリカだそうですが、感動的でした。
 重航空機の歴史1世紀のうち、前半50年の進歩はすごいですね。後半の半世紀は、飛行機の外観や最高速度は、さほど変わっていませんが、目立たないながら、安全性や輸送力、経済性などは飛躍的に伸びました。YS-11から約40年、そのうち国産リージョナル・ジェットが飛びますが、どう成長していくのか楽しみですね。
(就航までに、FlightGear用の機体を作って下さると、大変幸せです)(^^)/
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なし Re: YS−11でアメリカ中西部を行く

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-7-29 12:23
Tat  長老   投稿数: 375
hide さん

返信有難うございます。
昨夜エンジン周りの調整を行ったのですが、正規のエンジン出力と Yasim の計算がどうも合わないので、かなりエンジン出力を高めに設定しないといけないようですね。Yasim でのエンジン調整は実は結構時間がかかるので、JSBSim モデルも作っている所です。近いうちにJSBSim版もリリースしようと思いますので、その時はテストをお願いします。

さて、国産リージョナルジェットの MRJ ですが、密かにFlightGear 上での機体制作計画が進められております。現在はデータ収集の段階ですが、3面図は手に入ったので、そのうち3Dモデルが作成されるでしょう。今年中にテスト版がリリースできればいいかなと思っています。ただ、計器はほとんどグラスコクピットですのでパネル周りの開発はかなり困難を極めると思います。
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なし Re: YS−11でアメリカ中西部を行く

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-7-29 18:14
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
Tatさん。
 YS-11にまつわる、最新の情報をありがとうございました。
新たにJSBSim版も加わるとのことで、すごい開発力ですね。ますますの熟成がとても楽しみです。

 リージョナル・ジェットにつきましては、「やっぱり、プロジェクトがあったのか!」とわくわくしております。私はどうも、古典機に目が行く癖があり、気が付けば航法の内容も、すっかりクラシックですが、思いっきり新しい概念の機体も、ぜひ体験してみたいと思います。開発にかなり期間が掛かっても、気長に待ちますよ(^^)!!
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なし 新開発の航法でバリンジャー隕石孔へ

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-7-29 18:20 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 「旅日記」の前回は、YS-11でアリゾナの州都・フェニックスに到着し、「日本への太平洋横断が、だんだん近づいてきたが、出来ればGPSは使いたくないし、かといって天文航法は相変わらずダメで、困った」というお話で終わりました。

 VORの届かない洋上では、推測航法がベースになります。出発地・目的地の緯度経度から針路・距離を計算し、風向・風速の補正計算をして機首方位を決め、後はコンパスと時計で現在地を推測する…これは航法の基本ですね。
 アメリカ西海岸からホノルルへ行くだけでしたら、まあ大丈夫です。ハワイ諸島は東西300nm、南北180nmにわたって拡がり、主要な島々にはVORやNDBがあるので、これらの受信エリアのどこかには、必ず引っ掛かるでしょう。しかしその先、ピラタスPC7改で日本へ帰るには、ウェーク島あたりで最低1回は給油が必要です。ウェークや南鳥島は、非常に小さな孤島で、到達までの飛行距離も極めて長いため、そこそこ正確な私の推測航法でも、島を視界内に捉えるのは相当難しく、それどころかVORの受信圏まで外してしまう恐れも、ゼロとは言えません。ですので何とか、天文航法に代わる測位手段が欲しいのです。

 そこで先日来、「FlightGearには、何か未利用の航法リソースはないか」「目的地を通る『位置の線』が、1本でいいからぜひ欲しい」と頭を振り絞りまして、とうとう新しい航法を考案しました。これはFlightGearが持つ地磁気データの、微細な分布変化を徹底的に活用するもので、孤島でも誤差1nm未満の高精度で、ヒットする目処が立ちました。
 今回は、この新技術の実証試験を行いながら、コロラド高原の有名なクレーター、バリンジャー隕石孔を探検し、グランドキャニオンを飛んで、ラスベガスまで旅を続けます。

●ヒントは、17世紀の航海術:
 私がまず目を付けたのは、磁気偏差です。以前買った航海術の歴史書によると、17世紀に大西洋を行き来した航海者は、まだクロノメーター(精密な航海時計)を持たなかったため、天測では正確な経度が得られませんでした。そこで経度の推定に使えそうな、あらゆる天文現象や気象海象を、それこそ血まなこで調べ、メキシコ湾流の海水温度分布まで計ったそうですが、この中で比較的うまく役立ったのが、磁気偏差の分布だそうです。

 ご存じの通り、磁気コンパスは真北を指しません。この、磁針が真北からずれる角度を「偏差」(真方位と磁気方位の差)と呼び、場所によって違うわけですが、大西洋横断の場合は、例えばロンドンでは、コンパスが真北から約3度西を指します(これを偏西3度と言います)。洋上を進むにつれて偏差は増え、アメリカ東岸のノヴァ・スコシア半島付近では、偏西約20度です。ついでながら、アメリカ西海岸は偏東約20度ですので、北米横断飛行をすると、磁気コンパスの示度は東西両岸で、約40度も変化することになります。

 偏差の分布は、天気図の等圧線のような「等偏差線」として地図化され、経年変化があるので、時々新しいバージョンが出ます。全世界の分布図を見ると、等偏差線には天気図の高気圧や低気圧のような、不規則な場所があちこちにありますが、北大西洋などでは、等間隔に近い分布を示します。また偏差は、太陽高度の測定と、磁気コンパスによる太陽方位の観測だけで、比較的簡単に求められるので、17世紀の計測技術でも、大まかながら経度を推定する参考になったわけです。

 私は、真方位と磁気方位を簡単に換算するため、すでにピラタスPC7改のパネルに、偏差の整数部をデジタル表示しています。この表示精度を上げれば、単にコンパスを較正するだけでなく、積極的に航法に使えそうだと思いました。

●俯角に注目する:
 さっそく、2005年版の世界偏差マップを調べてみました。残念なことにハワイ諸島は、偏差の分布が相当不規則な場所で、南北約1800nmにわたって等偏差線が空白になっていました。この海域は広範囲に偏西約10度を保っており、目立った変化がないのですね。なんと運が悪いことかと、がっかりしました。
 念のため、精密に計ることにしまして、ホノルル国際空港でUFOを起動。Internal Properties に表示された偏差(/environment/magnetic-variation-deg)を読み取り、さらに南北に100nmほど離れた洋上の、2点の計測値と比較してみますと、有意な連続変化がみられました。ただし変化量は小さいので、航法には不便です。

 ここで幸い、もう一つ大きな発見がありました。Internal Properties/environment/の中には、magnetic-dip-degという項目も見つかったのです。ははあ…これは地磁気の俯角だな、FlightGearにもちゃんとあるのだな、と思いました。
 俯角とは磁力線が、場所により上下に傾く角度のことです。地球の磁力線は南北両磁極から真上に伸び、赤道に向けて次第に傾斜して繋がっていますから、水平に回転軸を付けた磁針(俯角計)を作ると、赤道付近では針が水平になり、磁南極や磁北極では、ほぼ垂直に立つはずです。ちなみに東京の俯角は、2005年現在で50度弱です。これでは磁針がおじぎをして、方位盤に当たって困るので、国内出荷用の方位磁石は、針のS極側を重くして、バランスを取っているそうです。
 俯角の大きさは、緯度に比例はしませんが、かなり規則的に緯度と相関します。変化量は0〜90度の範囲ですから、世界地図に「等俯角線」を描くと、等偏差線の分布より、ずっと高密度になります。等俯角線の世界分布図を入手したところ、偏差ほど分布に乱れがなく、おまけに低緯度では、ほぼ赤道と並行に東西に伸びていることが分かりました。これは偏差より、ずっと航法に役立ちそうです。

●磁気偏差計と、磁気俯角計を装備する:
 さっそく、これらを測定する計器を作ることにして、ピラタスPC7改のHSIに、偏差と俯角を小数点以下2桁まで、デジタル表示する機能を加えました。magnetic-dip-deg のデータは小数点以下8桁ありますが、あまり増やしても読みにくくなりますし、リアリティーが損なわれると思いました。
 実世界では近年、各種の電子コンパスがあり、磁気方位と俯角が簡単、かつ精密に測れます。しかしこれは恐らく測量用三脚の上に、正確に水平に置いて使うのでしょう。傾斜する機上で、偏差・俯角を0.01度単位で表示するには、電子コンパスの測定値を、何らかの手段で精密に較正する必要がありそうです。
 原理的には、ジャイロから信号を取ればいいのですが、軽飛行機クラスの水平儀や、定針儀の精度で可能かどうかは不明で、実世界でこの種の機上測定器を作ると、大変高価になる恐れもあります。FlightGearでは、Internal Properties を読み取るだけで済むのは、ありがたい話ですね。

 HSIにはこのほか、GS(対地速度)と真方位の針路表示を追加し、これまで気速計に設けていたGS表示は廃止して、本来のマッハ計に復元。またN1回転計の上に、スロットル開度のデジタル表示盤を追加しました。ターボプロップの出力管理は本来、回転計で行うべきでしょうが、私はスロットル開度で記録を取るのに慣れており、リアリティーの点でやや問題ありですが、こんな計器が欲しかったので作ってみました。

●等俯角線を、「位置の線」として使う:
 さて磁気データを使って、どう航法を組み立てるか、お話しします。
等偏差線は粗く、かなり分布が乱れていますが、全地球では、多くの地域で南北寄りに走っています。また等俯角線は密で、比較的安定して東西方向に伸びています。両者を半透明なレイヤーにして重ねると、一種の座標軸のように見えます。
 となると、機上で得た偏差・俯角を、現実の精密な計測データと比較しますと、現在地の緯度経度が出るはずです。しかし、FlightGearが何年度のデータを使っているか、またどの程度リアルに、磁気分布を再現しているかが大問題です。この手法では天文航法と同様、「考え方は正しいはずだが、誤差が大きい!!」と、悩む可能性が大です。事実、私が使用中のオンライン・空港データベースの偏差と、FlightGearが示す偏差には、場所により大小のずれがあります。

 この問題を回避するため、私は等俯角線を、単純に「位置の線」として使うことにしました。無数にある等俯角線のうち、目標空港を通過する1本を選んで、洋上でキャッチし、後はこれに沿って飛び続ければ、正確にゴールできるはずです。つまり等偏差線を、長さ数十nm(或いはもっと…数百nmも)ある、天然の誘導ビームとして使うのです。具体的な手順は以下の通りです。

(1)事前に目標空港で機体を起動し、俯角を計る。
   この測定結果を、仮にA度とする。
(2)俯角の世界分布地図を使い、目標の空港上では
   等俯角線が、何度の方向に走っているかを計る。
   この結果をB度とする。
(3)出発空港から、推測航法で目標に向かう。この
   とき、航法誤差を見込んで針路を故意に外す。
   例えば目標の、100nmくらい東をめざす。
(4)するとある時点で必ず、俯角計がA度を指す。
   つまりA度の等俯角線をインターセプト(待ち
   受けて捕捉)したことになる。
(5)ここから針路B度で飛べば、目標空港に着く。

…という仕組みです。VORの方位ラジアルをインターセプトして、空港へアプローチするのと、感覚的には同じです。

●コロラド高原で、この航法を試す:
 さっそくPC7改を飛ばして、概念実証試験をします。取りあえず、通常の表記によるフライトプランをお目に掛けます。実際は以下のコース通りではなく、さきほど書いたように、針路をわざと目的地から外して飛び、等俯角線をインターセプトします。文中のVarは空港で事前に計った偏差。Dipは俯角です。

◎フェニックス・スカイハーバー国際空港(KPHX)
VOR 115.60 332626N-1120034W
   ▼34度114nm
◎ウインスロー・リンドバーグ空港(KINW)Var10.97 Dip61.40
350111N-1104335W 305度4.4nmにVORTAC 112.60 350342N-1104742W
バリンジャー隕石孔は、空港VORから11.2nm 264度。等俯角線傾斜16度
   ▼309度89nm
◎グランドキャニオン・ナショナルパーク空港(KGCN)Var11.60 Dip61.94
355712N-1120844W VOR113.10
   ▼273度146nm
◎ラスベガス空港(KLAS)360435N-1150843W VOR116.90

 最初の目的地は、バリンジャー隕石孔の近くにある、ウインスロー・リンドバーグ空港です。事前測定では、この空港の偏差は偏西10.97度、俯角は61.40度でした。また分布図を調べると、この地点の等俯角線の傾斜は、赤道を基準にして16度でした。つまり286度←→106度方向に走っているわけです。
 私はインターセプトのための針路を、等俯角線の傾斜角と同じ、真方位16度としました。こうすると、目的の等俯角線に、直角に接近することになりますので、出発地空港のDMEを使えば、等俯角線の間隔を測定することができます。またこの針路で飛ぶと、ウインスロー・リンドバーグ空港の35nm西で、61.40度の等俯角線を捕捉するはずです。

●真っ正面の、ど真ん中に命中:
 風向風速は例によって、190度の風4Ktの微風としました。PC7改に1500Lbsの燃料を積み、1930時(ローカル1230時)にエンジン始動。VORをラジアル5度(磁気方位。偏差が偏西約11度のため、真方位の16度から11度を引く)にセットして離陸。空港VOR上空で、このコースに機首を向けました。
 オートパイロットでCDI針路保持を使い、ラジアル5度に乗ります。高度5000ft、指示対気速度250Ktで、禿げ山風の高原台地を飛び続け、北へ。やがて地形はゴツゴツした山地に変化し、高度を10000ftに変更。途中で7回、空港からの距離と偏差・俯角を測定しました。主な測定結果を以下にご紹介します。

距離50nm:俯角60.49度、偏差11.16度。
距離100nm:俯角61.27度、偏差11.20度。
 以上の結果から、
等俯角線1度の間隔は64.1nm。最小表示単位の0.01度では0.64nm。
等偏差線1度の間隔は125nm。最小表示単位の0.01度では1.25nm。

…となり、俯角を使うとわずか0.7nm程度の誤差で、目的地に着ける計算です。これは偏差を使った場合と比べ、2倍の測位精度です。ハワイ諸島では、この精度差はさらにずっと大きくなります。

 やがて計画通り、磁気俯角計の示度が61.40度に近づきました。0.05度手前から右旋回を始め、ぴったり61.40度でロールアウトして、機首を真方位106度に向けます。また対地速度から、目的地への到着時刻を2009時と算出しました。この7分間の長かったこと。自分の航法が正確かどうか、ハラハラします。
 あと2分…まだ何も見えないな、もしかしてダメかな、ダメだと困るな…と思った途端、真っ正面のど真ん中に、空港が見えました。Atlasで確認しますと誤差は、ほぼ理論通り0.7nmでした。上空到着時刻も秒単位のずれでした。もう最高の気分です(^^)/。
 この方法を今後、「磁気俯角・偏差航法」と呼ばせて頂きます。

●「磁気俯角・偏差航法」の、長所と短所:
 同じ方法で、さらにグランドキャニオン・ナショナルパーク空港まで飛びました。今度は主滑走路の中心点付近を通過して、ほぼ誤差ゼロでした。またミッドウェーとグァムでも、洋上へ100nm前後の進出テストをして、うまく等偏差線に乗れることを確認しました。場所により05年の現実の俯角とは、小数点以下の違いがありますが、総じて分布パターンの形は、かなり正しく再現しているようです。もう少しテストが必要ですが、これでどうやら長距離洋上航法に向けて、大きく道が開けました。
 この航法の長所と短所を、以下にまとめておきます。

○長所○
・現在のところ、目標空港の真上に、必ず到達できる精度を持つ。
・原理的に、誤差が極めて少ない。
・コースをトラッキングしやすい。計器を見るだけで、左右へ
 外れてもすぐ分かり、精密な針路修正が可能。
 (鉄道線路などの目標物は、一度見失ったらおしまいですが、
 俯角は連続変化する量なので、機体が左右どっちへどの程度
 外れたか常に把握できて、非常に便利です)
・天測と違って、複雑な計測や計算を、一切必要としない。
・等俯角線がまばらになる極地では、逆に等偏差線の密度が
 増すので、ほぼ地球全域で使える可能性がある。
○短所○
・事前に目標空港で、必ず磁気データを取得する必要がある。
・「位置の線」としては優秀だが、現在地の緯度経度を求める
 ことは困難。
・目標空港には、特定の方位から接近しなくてはならない。

●FlightGearにもあった、巨大隕石孔:
 ここでお話を少し戻して、ウインスロー・リンドバーグ空港から、バリンジャー隕石孔を探しに行った際の、ご報告をしておきましょう。

 このクレーターは約5万年前、まだコロラド高原にマンモスがいたころ、鉄を主成分とする直径約50mの隕石が、時速約4万キロで激突して出来たそうです。衝撃でマグニチュード5.5の地震と、巨大な火の玉が発生して、約10キロ圏内を焼き尽くし、さらに衝撃波が、20キロ前後の圏内を荒野に変えたとされます。地質学者ダニエル・モロー・バリンジャーが1902年から研究し、これが隕石由来の大型クレーターであることが、史上初めて地質学的に確認され、有名になりました。
 クレーターは砂漠のような平地にあり、直径は約1.2キロ、深さ170m。平原からの外輪山の高さ30m。この規模ならFlightGear上にも、再現されているだろうと期待しました。出来れば底に着陸したいので、ヘリコプターを使います。
 私はもともと、ヘリの操縦が苦手です。また現状ではジョイスティックがないので、無理だと思ったのですが、TatさんのKawasaki OH-1 Ninjaには安定増強装置が付いていて、少し試したところ、エルロン・ラダーのコーディネーションを使っても、何とか飛べそうでした。クレーターの位置は緯度経度を基に、ウインスロー・リンドバーグ空港VORから約11nm西と計算して離陸。Atlasを頼りに進みます。

●メーヴェに乗った気分で、荒野をゆく:
 …緯度経度からみて、この辺なのだが、と探すこと数分。ふと視界を左へ振ったところ、ごく至近に大きなクレーターが見えていて、驚きました。直径は確かに1キロ程度ですし、深さは(HUDの高度計と電波高度計を見比べると)約500ftありました。間違いありません、これです。
 でっかくて、ゴツゴツしたボウルのような感じで、どことなく不気味です。底の中央には、驚くべきことに村落(の四角いテクスチャー)があり、自動生成された3Dの教会堂と、ホテルのような建物が見えました。現実には、ここには村なんかありませんので、一種のバグと思われます。さて着陸を試みましたが、やはり私はヘタクソで、斜面に接触してクラッシュしてしまい残念でした。いずれもっと、ヘリの腕を磨くことにします。空港から超軽量機のドラゴンフライで、再びクレーターへ。

 超低空で観察すると、クレーターの底には結構デコボコがありまして、いくら失速速度20Ktのドラゴンフライでも、着陸は危険と判断。あれこれ撮影をした後、徐々に高度を稼いで外輪山を超えました。ようやく高原の上に戻ると、周囲に空がたっぷり広がって、ほっと一息。さらに高度を上げて、空港へ機首を向けました。
 地平線まで続く平らな荒野には、大小の白い雲が、地面に裾を引きながら流れています。そんな広大な景色の中を、メーヴェさながらの超軽量機で、そっと飛んでいくと、頭の中には「風の谷のナウシカ」のテーマ曲が、フルオーケストラで鳴り始めまして、なかなか味わい深いフライトでした。

 この後ピラタスPC7改で、グランドキャニオンの西半分を駆け抜けて、ラスベガスに無事到着。次回はさらに西へ向かいます。(大長文で、大変失礼しました)
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-8-17 0:56
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回の「旅日記」は、新開発の長距離洋上飛行用「磁気俯角・偏差航法」を使って、ラスベガスに到着したところまででした。
 その後、この航法に使う針路計算ワークシートを作り、長らく懸案だった、飛行中の風向風速測定・計算法も考案して、これらのテストを行いながら、モハベ砂漠にある、世界最大級の飛行実験センター・エドワーズ空軍基地に進出しました。
 これは想像を大幅に超える巨大施設で、面白いフライトでした。例によってマイアルバムにも画像をお届けします。

●磁気俯角・偏差航法の計算ツール「まぐなび」:
 まず、航法のお話から行きます。この磁気俯角・偏差航法は、簡単におさらいしますと次のようなものです。

(1)あらかじめ、目的地空港の磁気俯角を計っておく。
(2)俯角の世界分布図で、目的地を通る「等俯角線」が、
   どんな角度で走っているか調べる=仮に285度としましょう。
(2)推測航法の誤差を見込んで、目的地からやや東西に離れた、
   洋上の仮想の変針点に向かって飛ぶ。
(4)HSIに設けた俯角計を監視していると、どこかで針路が目標の
   等俯角線と交差したことが分かる。
(5)ここで285度に変針すれば、1nm弱の精度で目的地にヒットする。
…というわけです。

 飛行の準備としては、ほかに、
・出発地と目的地の緯度経度を調べる。
・変針点を、目的地から何nmくらい外すか決めて、この緯度経度を出す。
・出発地から変針点、変針点から目的地までの、方位と距離を出す。

…という作業が必要です。私は当初、航法計算ツール「Vertual E6-B」を使って計算しましたが、結構面倒でしたので、航海用アドオンを使ってワークシートを作り、出発地と目的地の緯度経度、等俯角線の傾斜角、目的地から変針点までの距離を入力すれば、必要な諸元が手に入るようにしました。磁気を使った航法にちなんで、このワークシートを「まぐなび」という愛称で呼んでいます。

●洋上で、風向風速を求める方法を確立:
 実は私の環境では、リアルウエザーの設定がいい加減で、よく調べてみると、天候の変化が反映されていませんでした。以前気付いて修正したのですが、その後の再インストールなどで元に戻っており、これまではほぼ常に、出発時の風向・風速を維持して飛んでいたわけです。これじゃ私の推測航法が正確なのは、当たり前ですよね(^^;)。
 そこで今回、改めて FlightGear jp Wikiにご紹介頂いている「現実の気象の反映方法」を参照し、ちゃんと天候がリフレッシュされるよう、再調整しました。となると今後の太平洋横断では、定期的に何らかの方法で風向風速を測定し、そのつど針路補正計算を修正しなくてはなりません。
 むろん風のデータは、メニューバーから確認できます。いわば無線で、気象通報を受けるようなものですが、出来れば飛行中に実測したいものです。昔の実機では、洋上飛行中に変針して、2種類の針路の偏流角(機体が風に流される角度。ドリフト・アングル)を測定し、ここから風向風速を算出する「ダブル・ドリフト」という手法が使われていました。しかしこの計算をExcelでやろうとすると、想像以上に困難でした。
 現実的には、紙の上に2本のベクトルを作図して、この2本の頂点を結ぶベクトルの、長さと角度を計るのが簡単なので、有名なE6-B航法計算盤も、複雑な目盛り盤の上に鉛筆で印を付けて、一種のベクトル作図をする仕組みのようです。私は2年前にご報告しましたように、Excelのグラフ機能を使って、ほぼ同様の作図ができるようにしましたが、正直あまり便利でも、正確でもありませんでした。

 そこで今回は、攻め方を変えました。
天文航法の研究中に手に入れた、航海用Excelアドオン集を使いますと、出発地と目的地の緯度経度、針路・方位の相互関係が、簡単に計算できます。つまりExcelで地球楕円体上の、ベクトルの足し算・引き算が出来るわけです。であれば…

(1)飛行中にAtlas画面上でツールを使い、偏流角を実測する。
(2)TAS(真対気速度)とGS(対地速度)を求め、この2本の
   ベクトルが底辺と斜辺、偏流角が頂角となる三角形を考える。
(3)残る1辺の長さと向きが、すなわち風のベクトルである。

…となるはずです。
 幸いGSの数値は、Internal Properties の中で発見し、すでにピラタスPC7改のパネルにデジタル表示しています。あとはTASがあればOKです。これもやっと発見しまして、速度計のデジタル窓に表示しました。
 ただ一つ、問題がありました。なぜかTASの表示はゼロのままで、動いてくれないのです。さんざん調べた結果、pc7-set.xmlの中に、この機能をオンにする記述が必要だと分かり、以下のスクリプトを加えて解決しました。

<instrumentation>
<tas-indicator>
<serviceable type="bool" archive="y">true</serviceable>
<indicated-speed-fps alias="/fdm/jsbsim/velocities/vt-fps"/>
</tas-indicator>
</instrumentation>

 TASが手に入れば、こっちのものです。さっそく「まぐなび」に、TASとGSの値、真方位による針路、偏流角を打ち込めば、風向風速が出る機能を追加しました。いやぁ、これでやっと、2年越しの宿題が解けました(^^)/。
 ただ。注意深い方はお気づきと思いますが、この方法はリアリティーの面で、実は問題があります。GSは本来、この計算手順とは逆に、風向風速から算出するものです。GSを直接測定するには、DMEやGPSを使わない場合、ドップラー・レーダーが必要ですが、PC7クラスの初等練習機は、まず積まないでしょう。ですので、この方法は飽くまでも、先に述べたダブル・ドリフト計算の代用である…とご理解頂けましたら幸いです(^^;)。
 ともかく、これでやっと、太平洋横断の基本航法ツールが整いました。

●エドワーズ空軍基地へ:
 これらの実証試験を兼ねて、ピラタスPC7改を使って、ラスベガスからエドワーズ空軍基地に向かいます。「まぐなび」で算出した、磁気俯角・偏差航法によるコースは以下の通りです。文中Dipは磁気の俯角、Varは偏差です。いったん南西に飛んで、59.77度の等俯角線をインターセプトし、エドワーズへ直航する計画です。

◎ラスベガス
   ▼233.2度130nm
△変針点344612N-1171657W
   ▼287度30nm
◎エドワーズRWY22(現地で計ったDip=59.77 Var=12.89)

 ショートコースですので、燃料は満タン4分の1、1000Lbsを搭載。頭上は雲量ゼロの快晴です。風向風速はあえて調べず、離陸後に実測することにします。
 1939時(ローカル1239時)にエンジン始動。1946時、空港VOR上空で所定のコースに乗りました。今回はバックアップにVORを併用します。10000ftに達し、270KIAS(318KTAS)に加速したところで、大失敗を発見。基本的なミスながら、真方位と磁気方位を間違えていました。航法精度を測るのが目的ですのでUターンして、1952時に空港上空からやり直し、片道15nmの損をしました。まあ、急ぎ旅ではないし…。

 定針後、すぐ偏流角を測定。Atlas画面を拡大して、トラック(航跡)にカーソルを当て、フリーウェア「斜めものさし」で角度を読み、180度引いて反方位に換算すると、実針路は246.8度。コンパス針路と比較すると、偏流角は0.7度。これをもとに「Virtual E6-B」で計算すると、風向風速は234度12Ktと出ました。メニューバーから確認した「正解」は250度12Kt。まぁ大体…合ってるじゃん!と安心しました。
 この測定値で風力修正計算をすると、修正針路と対地速度は、233度306Ktと出ました。コースは無修正でよく、対地速度はTAS計器と1Kt違うだけ。到着予定時刻を計算しますと、変針点までの飛行時間は26分、到着予定は2018時と出ました。

 ドタバタ計算をしている間に景色が変わり、山岳地帯の上空です。まだまだ変針点は遠いのですが一応、1958時に俯角計をチェックすると60.99度でした。これが59.77度になったら、ピタリ変針点です。磁気俯角・偏差航法で飛行中は、この俯角計を忘れず点検する必要があります。またTAS計とGS計も頻繁に監視し、GSが変化していれば、風が変わったと判断して、すぐにAtlas画面で偏流を計ることになります。まあ今回は、VORも見ていますので、偏流角が変わればすぐ分かります…これで万事よし。「自分が持つスキルを、総動員して航法をしている」という満足感の中、快調に飛び続けます。

●くるくる変わる、山岳地帯の風向風速:
 2003時、対地速度が2Kt変化しました。「それっ!」と偏流を測定。航跡の角度は51.8度、つまり真針路は反方位の231.8度。偏流角は1.4度。計算表で風を求めると、203度15Ktになっています。メニューバーから確認した「正解」は260度15Kt。方位の誤差が相当大きいのですが、これをどう考えるかですね。
 2年前の私の検証では、FlightGearはもともと、風による飛行経路の変化を、必ずしも正しく再現しません。まあここは、測定値通りに再計算することにして、GSは305Kt、真針路は231.6度、修正値1.4度左と出ました。コンパス針路は真方位で231.8度。到着予定時刻はそのままにして、コースだけ修正します。
 2006時。あれれ…風向が229度に変化し、対地速度は308Ktになっています。どうせあと10分で変針点。面倒なので、放っておくことにしました。山岳地帯では風がクルクル変化しまして、推測飛行をきちんとやると多忙を極めます。太平洋上ではまさか、こんなに風が変化しないでしょうけれど、ちょっと心配になってきました。

 2009時、GSが317Ktに変化。航跡の角度は45.5度なので、真針路は225.5度。くそぉ忙しいぞ。偏流角は-5.6度。風向風速を計算すると…321度31Ktって、本当かな?
 本当でした。「正解」は320度38Ktで、めったにない強風の中にいます。また計算をやり直して、コンパス真針路を240度に修正。その後も風は1Kt程度変わりましたが、もうすぐ変針点。ほっておくことにします。以下、煩雑になるので略しますが、変針点には計画の4nmという僅差で到着し、エドワーズに機首を向けました。後は俯角計を確認していれば、そのままゴールですが、さらに風力計算を続けました。
 (測定があんまり煩雑なので、その後「斜めものさし」の角度基準点を180度変更し、トラックから真針路が直読できるよう修正しました)

 2020時、真針路283度、317KIAS、GS287Kt。計算上は315度37Ktの強風です。これでは着陸に困りますが、メニューバーから確認した「正解」は320度37Ktで、残念ながら非常によく合っています。またまた修正計算。
 さて2023時には、エドワーズに着くはずなんですが。あと30秒というのに、前方は砂漠ばかりで気配なし。毎度のことながら、だんだん心配になってきます。

●飛行テストの聖地:
 …見えた! 不意に地平線のもやの中から、肌色の大地…ロジャース乾湖が姿を現しました。続いて数秒後、これまでに目にしたことのない、広くて長大な滑走路が、厳かに視界に入りました。エドワーズです!!! 初の音速突破や数々の新型機開発、シャトルの初着陸など、ここの話題は無数にありますが、皆さんもよくご存じですね。

 なんという、すごい飛行場でしょう。総計13本もの巨大滑走路が、そこかしこで激しく交差しています。最長のものはスペースシャトルが着陸可能で、全長約12キロ。滑走路やエプロンが南北約20キロに拡がる、東京・山手線の内側より大きな飛行場です。安全面と保安上の理由から、基地の敷地(立入り禁止区域)は更に広大で、ゲートから主要施設までは50キロもあるとか。ひたすら感心しました。
 一つの滑走路交差点そばの地表に、これまた巨大な、円形・放射状のマーキングがあります。直径約1キロの方位盤、通称「世界最大のコンパスローズ」です。何のための施設なのか、よく分かりませんが…Google Earthでも同じものが見え、100m以上ありそうな文字で、磁気方位が書き込んであります。着陸に必要とは思えませんし、中央で発煙筒でも焚いて「世界最大の風向風力計」に使うのかと思いましたが、無線で風を知らせれば済むので、これも変。多分、ジャイロコンパスか何かの較正用でしょう。

 2024時、計画から2分遅れ、左右誤差は1nmで、予定点の滑走路端をフライパス。「まぐなび」を使った航法は、取りあえず大成功です。コンパスローズの真上へ行って、ビクトリー・ロールと宙返りを打ちました。
 320度21Ktの強風ですが、何しろ滑走路はたくさんあります。ほぼピタリの方位を選んで南から進入。本来はATISを聴取すべきですが、滑走路方位をアナウンスされても、これではどれがどれやら分かりません。私が選んだのは2番目に長い滑走路で、強い向かい風はあったものの、全長のわずか1割を使っただけで停止しました。着陸は2033時。その後Uターンして強風の中、ブレーキで方向制御しながらタキシーウェイを走り、エプロンの一角に入れて、2039時にエンジン停止。燃料は半分残っていました。

●鈍足のじゃじゃ馬、X-3を飛ばす:
 ここへ来たからには、やはり高速実験機を飛ばさなくては、面白くありません。
最初はX-15を、グランドキャニオン上空あたりで空中発進させ、速度記録を試してから滑空着陸するつもりでした。しかしFlightGearのX-15は正直、あまりいい出来ではありませんので、X-3スティレットに変更しました。その名の通り、細身の剣のような精悍な姿をしており、プラモデルもあるようです。

 これはダグラス社のテスト機で、ジェットとロケットエンジンを併用する機体です。ダグラスはこの直前、海軍と共同で、同じくジェット・ロケットを併用する、D558スカイロケット実験機を作りました。スカイロケットはベルX-1と競い合い、ロケット専用に改造された後で、X-1シリーズより早く、史上初のマッハ2を記録しています。ロケットだけでは滞空時間が短いので、X-3では再びジェット併用として、出来れば操縦性も、スカイロケットより大幅に改善したい…といった狙いの飛行機だったようです。
 しかしジェットエンジンの開発がうまく行かず、予定より小出力のエンジンを積んだ結果、ダイブしてやっと音速を超える、という失敗作に終わりました。それって…チェイサー(観察・誘導用の追跡機)役を勤めたF-86と、ほぼ同じ速度ですよね。

 FlightGear版のX-3も、かなり見事に「駄っ作機」でありまして、まず地上のロール安定が悪く、すぐ横転して翼端を引きずりながら疾走します。やっと離陸し、どうやら20000ftまで持ち上げましたが、水平で300Kt台という鈍足ぶり。燃料が半分に減るとようやく身軽になり、何とか30000ftまで上がって500Ktを超えました。操縦性は悪いし、あまり楽しい飛行機ではありません。シャトル滑走路に降ろしたところ、またも横転して傾いたまま突っ走り、事故だけは免れて、滑走路外で停止しました。
 あえて長所を挙げますと、Dキーを押すと、実物通りに射出座席がエレベーターになって降下し、搭乗位置の機体下方に現れる、という一発芸が楽しめます。なんだか「サンダーバード」のテーマ曲でも、聞こえてきそうな眺めです。

 私は先日来、この広大なエドワーズで、TatさんのYS-11やMRJの試乗を楽しんでおりますが、結果は関連スレッドにご紹介しましたので、ここでは省略します。さて次回は…西海岸に進出するか、もう少し各種の飛行テストを試みるか、今のところ未定です。仕事が忙しくなってきましたので、月明けになるかも知れません。ではまた、エドワーズでお目に掛かりましょう。

追伸:tigerさんが、マイアルバムでご紹介下さった「新しい夏バージョンのTexture」はなかなかきれいですね。さっそくダウンロードしましたが、このデータ集では乾湖が普通の湖になるようで、残念ながらエドワーズの滑走路やエプロンは、見事に水中に沈んでしまいました。滑走路まで水色になった理由は分かりませんが、また他の地方で試してみることにします。ありがとうございました。
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なし ウインド・スターで風向・風速を測定

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-11-11 10:48
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。大変ご無沙汰しました。
 私事ながら大阪へ転勤し、まだ何かと慌ただしい日々が続いていますが、ようやく「旅日記」の世界に復帰できました。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私の世界一周は前回、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地に着いて、MRJなどのテスト飛行を楽しんだところまででした。今回はピラタスPC7改による、ハワイ経由の太平洋横断に備えて、エドワーズ周辺で燃費や航法のテストを進めます。

●太平洋横断を巡る、あれこれの課題:
 洋上飛行に備えて、これまでに「磁気俯角・偏差航法」を開発し、ナビゲーションについては目途が立ちましたが、まだ次のような宿題が残っています。

★PC7改は一体、ハワイに届くのか?:
 KSFOからホノルル国際空港(PHNL)までは、計算法にもよりますが、大圏コースで2082nm、ラームライン(針路一定の「航程線」=メルカトル図上で直線)ですと2090nmです。また「磁気俯角・偏差航法」では、航法誤差を吸収するため、わざと少し針路を外しますので、試算では2122nmになります。 PC7改の航続力は、たぶん2500nm程度ですので、一応ゴールに届くはずですが、強い向かい風に出会うと不安です。高度別、搭載燃料の重量別に燃費を徹底テストして、航続力が最大となる飛び方を探す必要があります。

★飛行中に風を計測するには?:
 VORの届かない洋上を推測航法で渡るには、風向・風速のデータが必須です。対地速度と偏流角(風に流される角度)が分かれば、風向・風速は簡単に算出できますので、私は少し前から、PC7改のパネルに対地速度(GS)をデジタル表示し、これをもとに風向・風速を算出するExcelシートも作りました。しかしDMEやGPSなしにGSを直読する仕掛けはリアリティーを損なうため、やはり気になりまして、廃止することにしました。今後は洋上で、真対気速度(TAS)と偏流角だけを使って風を算出する技術を確立することにします。
 従来の環境ではあまり長時間、高速回線が使えませんでした。そこで長距離飛行は多くの場合、風向・風速を出発時のまま固定して行い、従って航法計算も簡単かつ正確でした。今回ようやく自宅に光ケーブルを引いたため、常時リアルウエザーが使用可能となり、うれしい限りですが…半面、どうしても洋上で、風向・風速を測定する方法が必要になった次第です。

★出来れば、天気図も見たい:
 洋上では地形の影響がなく、山岳フライトみたいに、コロコロと風向風速が変わる心配はないでしょうが、風は気圧配置によって変化します。もし太平洋上の実況天気図と予報図を、高度別に得られれば最高です。

●高度・速度別に燃費を計る:
 以上の課題のうち、まず燃費の測定に取り組みました。エドワーズ基地からデスバレーの間を往復し、高度を5000〜35000ftまで18種類、燃料を満タン(4000Lbs)から4分の1(1000Lbs)まで4種類変化させ、燃費(nm/gal)、ノット単位の指示対気速度(KIAS)、真対気速度(KTAS)、残存飛行時間、残存航続距離などを調べて、Excelの表にまとめました。エンジン出力も一部変化させ、全部で約70回測定しましたが、PC7改は全開時がほぼベスト燃費で、少々パワーを絞ってもさほど改善はなく、場合によっては悪化することが分かりました。データの要点は、次の通りです。

高度 KIAS TAS POWER 燃料残 nm/gal 距離残 時間残
10000 287 340 100 1936 3.6994 2419 7:07
10000 285 338 100 1505 3.6357 1848 5:28
10000 282 334 100 1005 3.5308 1199 3:35
10000 279 330 100 493 3.3646 561 1:43

20000 247 341 100 1975 3.8067 2540 7:26

25000 241 356 100 1970 3.8251 2545 7:25

27500 232 359 100 1500 4.0808 2068 5:39

29000 218 351 100 1980 3.849 2574 7:27

30000 213 344 100 1973 4.0161 2677 7:26

35000 172 305 100 1944 3.3172 2178 7:19

 …これにより、
(1)高度30000ft前後で、一番燃費がいい。
(2)最大で約2700nm、約7時間半飛べそうである。
(3)燃料が減って機体が軽くなっても、燃費は必ずしも改善しない。
 といったことが分かりました。
 燃費が最良の高度は、上記のデータでは二つピークがありますが、これは計測中、速度と高度が周期的に変動する、長周期のフゴイド運動がなかなか収まらず、誤差が入ったものと思います。また(3)はかなり意外で、本番では燃料消費につれて高度を上げるつもりだったのですが、特にこだわらないことにしました。それより気象情報を手に入れて、向かい風成分が最小となる高度を選んだ方が、航続距離が伸びると思います。
 いずれにせよ、ハワイまでは燃料に約20%のゆとりがあり、落下式の増槽を開発しなくて済むことが分かりました。

●飛行中に風向・風速を計測する:
 航空機が、外部の情報に頼らずに風向・風速を知るには、基本的には次のような方法があると思います。
★フィックス(実測位置)と推測位置を照合する。
 風向・風速が分からない場合は、とりあえず風を無視して、飛行コースを航空図に描き込み続け、ベクトルを伸ばしていきます。この作業を「エア・プロット」と呼びます。そのうち、地上目標が見えたり天測に成功したり、無線航法の圏内に入ったりして、現在位置が確定したら、その地点を航空図に記入し、最新の推測位置と比較すれば、両者を結ぶベクトルの方位から平均風向が、ベクトルの長さから(飛行時間で割れば)平均風速が得られます。これで針路補正と対地速度の再計算をして目的地に向うわけです。

★大きく変針し、偏流角の変化から風を算出する。
 飛行中に変針すると、風の影響が当然、変化します。変針の前後に機首方位とトラック(実際の航跡。FlightGearではAtlas画面で測定する)の角度を計って「風力三角形」を描くと、風のベクトル(つまり風向・風速)が得られます。この方法は「マイアルバム」に図示しておきます。

 私は3年前、この作図を自動化するワークシート、「hideの風見盤」を開発しました(2006年8月13日の「旅日記」「マイアルバム」ご参照)。このツールは、巡航速度(真対気速度)を半径とする円の上に、Excelのグラフ機能で風力三角形を描き、円の中央から航跡の線同士の交点までの長さと角度が、風のベクトルを示すようになっていますが、作図の基準となる真対気速度ベクトルに比べ、風のベクトルが非常に小さく、たった数ミリの画面表示となるため、これを分度器ツールなどで計っても、まともな精度は出ないと思い、長らく放置していました。
 この計算は、Excelで数値的に行うのは非常に難しいので、有名な「E-6B」航法計算盤を買おうかと思いましたが、これの作動原理を調べてみますと、特別な目盛盤の上に方位リングやカーソルを使って、単に風力三角形を作図する仕組みだと分かりました。でしたら「hideの風見盤」と基本的には同じです。久しぶりに風見盤を起動し、少し手直しの上、Excelの表示を最大倍率にセットし、お馴染みのフリーウェア「斜めものさし」を使って、丹念にグラフ交点の位置を計ってみたら、何とか使えそうな気がしてきました。そこで以下のように、実証試験を行いました。

●ウインド・スターを描いて、風を計る:
 偏流を利用して風向・風速を求めるには、最低1回、大きな角度で変針する必要があります。大洋横断飛行のように、単に真っ直ぐ飛んでいる場合は、三角形の2辺を規則正しく描いて旋回し、すぐに元のコースに戻ります。飛行経路が「☆」型の一部に見えるため、以前ご紹介しましたように、これをウインド・スターと呼ぶそうです。
 最近買った「空中航法読本」(鳳文書林)という教科書によりますと、ウインド・スター測風法には、左右交互に60度→120度→60度の旋回を行う「60度法」と、45度→90度→45度の旋回をする「45度法」があり、いずれも1辺を2分間、或いは3分間飛行して偏流角を測定します。60度法は正三角形のため、1辺を飛ぶのと同じ時間だけ、計測によるロスタイムが生じます。また45度法では、1辺2分飛行の場合は1分間、1辺3分飛行の場合は2分間のロスタイムになるそうです。
(旋回に要する時間を含め、本当にこうなるのか、方眼紙を買って作図してみましたが、秒の単位を四捨五入すると、確かにこの通りになりました)

 私はPC7改で砂漠を往復しながら、60度法と45度法のウインド・スターを、風速4Ktと10Ktでそれぞれ数回ずつ描いてみました。各辺2分の飛行で、針路と航跡の方位を記録し、数値を「hideの風見盤」に入れましたが、最初は風向が最大50度狂い、風速も2割程度の誤差が出て、とても実用になりそうにありませんでした。
 首をひねっていると、ふと機体が約4度、左にバンクして飛んでいることに気付きました。私は先月来、初めてFlightGearでジョイスティックを使っていますが、まだデッドゾーン(舵の中立時の遊び)調整を済ませていなかったので、方向舵が軽く利いたままとなり、機体が横滑りしていたのです。これでは計算が、狂うわけですね。
(余談ながら…戦前の日本海軍で、ベテラン下士官パイロットが、兵学校を出たての士官の偵察員に威張り散らされて腹を立て、偏流測定中にこっそり機体を滑らせ、航法計算をメチャメチャにしてやった…というエピソードを思い出しました。訓練中なので危険はないものの、着陸後に士官様は、みっちり叱られるわけです)(^^;)。

 ジョイスティックの調整を終え、再テスト。この方法は、280KTAS前後のベクトルを数本使って、わずか4Ktの風力ベクトルを正確に検出するのですから、思えばシビアなお話です。90度法より60度法の精度がやや高く、結果は風向で6度前後、風速で1割程度の誤差でした。最後に風速を10Ktに上げて試したところ、風向は誤差ゼロ、風速は誤差1Ktで、非常に満足できる結果となりました。以上の結果、FlightGearでもウインド・スターは、十分に実用になることが分かりました。
★お詫びと訂正★
 なお、風力三角形から風向・風速を求める作図法は、2006年8月4日付の本連載とマイアルバムの説明図に詳述しましたが、当時の説明図を改めて見直すと、ベクトルの向きなどに誤りが見つかりました。ごめんなさい。修正版をアップしましたので、ご覧頂けましたら幸いです。

●NOAAの気象データを活用する:
 最後に、洋上の天気図と予報図ですが。これは米国のNOAA(国立海洋大気圏局)のサイトに、各種の膨大なデータがあることが分かりました。膨大すぎて、まだあまり見当が付きませんが、ともかく…
 ・北米全域の上層天気図。地表から48000ftまで12種の
  高度レイヤー別に、72時間先までの風向風速がカラー
  表示される。ハワイまでのコースのほぼ前半を含む。
 http://adds.aviationweather.gov/winds/
 ・太平洋や大西洋の、過去数日の天気図や24〜96時間予
  報図。地表と500療圧面(標準大気で約18000ft相当)
  のデータが見られる。
 http://www.opc.ncep.noaa.gov/Loops/#Unified_Surface_Analysis_Products
…などが見つかりました。これで気象データの収集も、何とかなりそうです。

 この後、私はすぐ南方のロサンジェルスへ出まして、さらにリンドバーグと「スピリット・オブ・セントルイス」号ゆかりの地、サンディエゴまで移動したのですが、近いうちに改めてご報告いたします。
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なし セントルイス号の「ふるさと」訪問

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 今回ご紹介するのはカリフォルニアの、太平洋岸の旅です。エドワーズ空軍基地を離れてロサンジェルス沖の島々を巡り、サンディエゴに進みます。ここからロス経由で、「ウインド・スター測風法」の航法訓練を行いながら、サンフランシスコ(KSFO)を目指します。しかし残念ながらこの日は、時間と燃料の都合でKSFOには届かず、200nmほど南のベーカーズフィールドという街にある、メドウズ・フィールド(KBFL)に降りてしまいました。カリフォルニア州中央を南北に走る、広大なセントラルバレー南端付近の空港で、ANAの訓練施設があるそうです。

 サンディエゴはかつて、リンドバーグのスピリット・オブ・セントルイス号が造られた土地ですが、同機が初飛行した飛行場の位置などを、今回初めて突き止めました。またロス沖では大昔に、私が実世界の太平洋横断で船から目撃した、懐かしい島影も確認できました。

 まずサンディエゴまでの、フライトプランをお目に掛けましょう。

◎エドワーズ空軍基地(KEDW)北緯34度54分、西経117度52分。
   ▼210度22nm
★パームデール(KPMD)VOR 114.50 343750N-1180349W
   ▼238度58nm
★ヴァントゥーラVOR108.20(340654N-1190258W)
   ▼266度70nm
△チャネル諸島・サンミゲル島西端(340206N-1202658W)
   (その東にサンタローザ島、サンタクルーズ島、アナカパ島)
   ▼93度101nm
★ロサンジェルス空港VOR 113.50(113.60)335600N-1182556W
   ▼134度92nm
★ミッションベイVOR 117.80 324657N-1171331W
 ここからは…
 ・約60度20nmでミラマー海軍航空基地(KNKX)
 ・約140度10nmでサンディエゴ国際空港(KSAN)NDB245
 ・さらに湾をはさんで、南がノースアイランド海軍航空基地(KNZY)
…となります。
 以上の記載事項には、以前あった「偏東」「偏西」の磁気偏差がありませんが、現在のPC7改では計器盤に偏差を表示するため省略し、飛行中に計算することにしました。

●追憶の島を求めて:
 明け方のエドワーズ空軍基地で、ピラタスPC7改を起動。さすがはカリフォルニアの砂漠、この日も雲量ゼロの上天気です。ただし風は強く、地表で330度21Kt吹いていました。燃料は満タンの4分の1(1000Lbs)として、UTCの1430時(現地6時半)に離陸しました。

 ここしばらく、操縦のブランクがありましたので、リフレッシュ訓練のつもりでオーソドックスに、VORに頼ってフライトを組み立てます。高度7500ftで指示対気速度250KIASを保ち、離陸12分後には、砂漠の南にあるパームデールVORを通過。ここでHSIのノブをクリックして、VORラジアルを変更し、ロサンジェルス市街地の西方・ヴァントゥーラVORへ変針しました。
 ヴァントゥーラへの予定針路は238度(真方位)ですが、VORラジアルは磁気方位ですので、偏差(偏東約13度)を引いて、ラジアル225度にセット。オートパイロットでCDIコース保持を掛け、機体が安定後にコンパスを見ると、機首方位は(磁気で)233度でしたので、強風のため8度もの偏流が生じていることになります…。
 …などと計算を重ねて、だんだん操縦の勘を取り戻しながら、約5000ftの丘陵地帯を越えると、早くもロサンジェルス郊外に差し掛かりました。エドワーズとロスは、航空機の速度で考えますと、意外にも「すぐそば」なんですね。納得しながら左後ろを見ると、ちょうど朝日が昇るところでした。

 ここからサンディエゴへは、沿岸を南下する旅になりますが…私はここで回り道をしまして、いったんコースを西に定め、ロス沖に横たわる、チャネル諸島を目指しました。
 3年近く前の1月に、私は本連載の第3回で、学生時代に大阪の堺港からロサンジェルスまで、貨物船に便乗して太平洋を横断したお話をしました。この航海で最初に目にしたアメリカ領は、ロスの沖合に浮かぶ島々なのですが、果たしてどこだったのか、正確な記憶がありません。当時は乗組員から、チャネル諸島南部のサンタ・カタリナ島だと聞いたような気もしますが、記憶が曖昧です。私が乗った船は北緯30度線上を東進し、途中で東北東に変針してロスへ直進したので、ロス中心市街地南方のカタリナを見たとするのは、多少不自然な気もします。もっと北寄りに並ぶサンミゲル島、サンタローザ島、サンタクルーズ島、アナカパ島のいずれかではないかと考えると、より自然ですので、ぜひFlightGearで地形を確かめようと、この4島に沿って東西に往復してみることにしました。

 海上の視界は、あいにく5nm程度で、薄い島影が次々と、左翼の眼下を流れて行きます。離陸後30分で、一番西のサンミゲル島を左アビーム(真横)に確認。ここで南に変針し、高度を600ftまで下げました。私は昔、東に向う船上から、確か左舷に島を見たので、同じ向きから見ようと4島の南側に出て、低空でロサンジェルス空港VORを目指すことにしました。ロスはまだ受信圏外ですので、しばらくは推測航法になります。必要な最新の風向・風速を得るために、60度のウインド・スターを描いて測風しました。

 最初は風速の計算値が50Ktと出ましたが、明らかに過大で測定ミスです。偏流角を計り直し、「hideの風見盤」に打ち込むと、2度目は風向8.6度風速17Ktと出ました。正解を調べると10度17.3Ktでしたので、まずは上出来。これを基に、ロサンジェルス空港VORまでの補正針路を計算しておき、じっくり4つの島を観察しました。しかし…どうも今ひとつ、「大昔、船からこれを見た」と確信できる場所は見つかりません。残念です。
 諦めて高度を上げ、ロスを目指したところ、はるか南方、サンディエゴのミッションベイVORが先に入感したので、そっちへ直航することにしました。(余談ながら、ここでトラブルを一つ発見。私は離陸以来、フラップを1段下げたまま飛んでいたようです。渡洋飛行でこんなことがあると、ガス欠もあり得ますので、後でフラップ開度計を作りました)

●セントルイス号の「ふるさと」訪問;
 1600時、サンディエゴ上空に到着。古くから海軍根拠地の一つで、大小の湾に恵まれて、いかにも良港に見えます。薄いovercastの雲を通して、ミラマー基地の滑走路を視認。以前は、ここに有名な海軍航空兵器学校(トップガン)があったのですが、現在はネバダ州へ移転しているそうです。映画のトム・クルーズを思い出しながら、滑走路上空でロールを打ち、南のサンディエゴ国際空港へ。滑走路に西から進入すると、途中で処理が異様に重くなり、大事を取って負荷の軽そうな海側へ反転しましたが、幸いパソコンは落ちなかったので、再度向きを変えてファイナルに入り、あっさり着陸しました。

 サンディエゴと言えば、セントルイス号誕生の地。私は小学生のころから、セントルイス号が初飛行と各種テストを行った、ダッチ・フラッツという小飛行場がどこにあったのか、ぜひ知りたいと思っていました。
  http://www.charleslindbergh.com/
 あれこれ調べた末、上記のHP(セントルイス号の複製機で、パリ飛行を再現しようというグループ)の奥の方で、製造工場と飛行場の位置を示した地図が見つかりました。昔のダッチ・フラッツは、サンディエゴ国際空港の、東西に延びる滑走路西端の北側あたりと判明。またライアン社の工場は、滑走路東端南側の海岸にあったそうです。
 当時のライアン航空は従業員35人。リンドバーグが訪ねた際、「魚の匂いのする」海沿いの工場はかなり老朽化していたものの、スタッフは優秀で、セントルイス号の設計・製造を約束通り60日でこなし、歴史に残る名機を生んだのは、ご存知の通りです。私の見るところ、設計の基礎になった同社の郵便機M−2がすでに、かなり優れた機体のようです。M−2は密閉キャビンの高翼単葉機で、前年の1926年完成ですが、この時代にしては大変スマートな機体。タンデムの乗員席からの視界も極めて広そうで、まるで1940年代の観測機や練習機に見えるほどです。胴体構造と、翼や脚の支柱などからは、まさにセントルイス号に通じるDNAを感じます。

 セントルイス号は、軽負荷ですとパワーがあり余って、初飛行の滑走はたったの8秒、約30メートルで離陸したそうです。リンドバーグは離陸後、直ちに湾(というか水路)を横断し、すぐ南に横たわるノースアイランド島の海軍飛行場をめざしていますが、これは恐らく「慣らし」前の新品エンジンが、万が一にも止まる場合に備えたものと思います。最初の基本的なテストの後、海軍のホーク戦闘機が様子を見に接近したため、かつてジェニー複葉機で空戦訓練を受けたリンドバーグは、「おびき寄せて戦う」姿勢を取って、しばし模擬空戦を楽しんでいます。
 私も空戦はともかく、同じ空域を飛んでみようと、サンディエゴ国際空港でセントルイス号を起動し、久しぶりに、前方視界のない操縦席を使って離陸しました。思いきり燃料を減らし、8秒は無理ながら十数秒で離陸しました。かつてのダッチ・フラッツ飛行場上空を旋回し、ライアン社の工場跡地を飛び、ノースアイランドの海軍基地上空へ。若き日のリンドバーグも、真新しいセントルイス号の、極めて視界の悪い操縦席から、これとほぼ同じ光景を眺めて、自分の夢がいよいよ、実現段階に移ったことを実感し、文字通り「天に昇る心地」を味わったのでしょうね。
 私はノースアイランド上空でスタントを試みましたが、FlightGearのセントルイス号は実機同様、主翼スパンが長い割にエルロンが短く、ロールは苦手ですが、宙返りは想像したより容易でした。

●地図の整備や、測風の練習を進める:
 サンディエゴ到着後、私は太平洋横断に使う航空図を、あれこれ検討しました。本来は、風向・風速の測定結果や修正針路を作図できるように、推測航法用のプロッティング・チャートを作りたいのですが、有意な精度を出すには小縮尺のメルカトル図が多数必要で、これは断念。代りに「磁気俯角・偏差航法」を能率よく進めるため、ネットで見つけた磁気俯角と偏差の世界分布図から、太平洋地域をそれぞれ切り取って、半透明なレイヤーにして重ね合わせ、等偏差線と等俯角線が一度に読める図を作りました。
 元にした世界地図はかなり粗いので、実はこの図では、寄港予定地のオワフ島とウェーク島、硫黄島の位置が正確には分かりません。そこでハワイ諸島については、Atlas画面の映像を張り付け、ウェークと硫黄島は、緯度経度をもとに「+」マークを描き入れました。これで各島の位置と、そこを通過する等俯角線の方位角(=アプローチ針路)が、一目で分かる図が完成しました。あとは出発・目的地の緯度経度と、目的地を通る等俯角線の方位角を、自作ワークシート「まぐなび」に打ち込めば、すぐフライトプランが出来上がります。

 …ここまで済ませておいて、サンディエゴからロサンジェルスを経由し、サンフランシスコに向かうコースを飛んで、少し本格的に「ウインド・スター測風法」を練習しました。以下がフライトプランです。
◎サンディエゴ国際空港(KSAN)
   ▼320度10nm
★ミッションベイVOR 117.80 324657N-1171331W
   ▼314度92nm
★ロサンジェルス空港(KLAX)VOR113.50-113.60。335559N-1182555W
   ▼340.6度99nm
★シャフターVOR115.40(セントラルバレー南部)352905N-1190549W
   ▼309.5度178nm
★サンノゼ空港VOR114.10 372228N-1215640W
   ▼305.7度25nm
◎サンフランシスコ国際空港(KSFO)。VOR115.80 373710N-1222225W

●測定の実際と、コースの修正方法について:
 ここで疑問が生じました。ウインド・スターで得た風向・風速の実測値を、どのタイミングで、針路補正に反映させるべきか…という問題です。
 推測航法では、何らかの手段でフィックス(現在地点の実測値)を手に入れた場合、推測位置との比較によって、どの程度風に流されていたか(つまり風向・風速ベクトル)が分かります。もし30分の飛行中、左に3度流されたとしますと、フィックスを得た時点で右に3度修正すれば、以後は誤差の拡大を防ぐことが出来ます。これを針路の「適量修正」と呼びます。また3度ではなく6度修正して飛べば、30分後には本来のコース上に戻ることができますが、この飛び方を「倍量修正」と呼びます。風がしばらく一定と仮定すると、元のコースに戻った時点で適量修正に切り替えれば、正しい針路をたどれるはずです。

 このフィックスによる測風では、過去30分間の風の影響の平均値が得られますので、針路修正はそれなりに精度が出るはずです。しかしウインド・スター測風法では、その時点の瞬間的な風向・風速しか得られませんので、いつ風が変わったと見なすべきか…倍量補正を使うとすれば、どのタイミングで適量補正に移るべきか、さっぱり分かりません。恐らく、航程の中間地点で風が変わったと見なして、出発地(または直前のフィックス)で得た風の情報と、ウインド・スター測定値の平均を取って倍量修正すれば、比較的精度が高いのでしょうが、この計算はとても煩雑です。
 磁気俯角・偏差航法では原理的に、非常に大きな誤差も吸収できるのですから、ここまでの推測航法精度は必要ないと判断し、取りあえず、
 ・風向風速は、測定の瞬間に変化したものと
  見なし、過去にさかのぼる修正はしない。
 ・誤差が累積するのは承知で、適量修正だけ行う。
…ということに決めました。

 前記のフライトプランに従って飛びながら、実際に10分間隔で測風して、針路修正を行いました。区間距離が短いので、ある程度の飛行時間を確保するため、今回に限り200KTAS(真対気速度200Kt)に減速します。高度10000ftを選んだので、200KTASは計算上、約167KIAS(指示対気速度167Kt)となり、この通りオートパイロットを設定。最初のミッションベイVOR=ロサンジェルスVOR間の92nmでは2回測風し、目標地点付近に到着した時点の航法誤差は、距離にして約12nm、飛行時間で6分でした。
 FlightGearにおける12nmは、ほぼ快晴時の最大視程に当たりますので、たった92nmの飛行で、ここまで狂うのはショックです。そこで次の、シャフターVORまでの99nm区間では、面倒でも倍量修正をしようと思いました。同様に2回測風したのですが、幸か不幸か、風速が約5Ktに落ち、倍量修正するほどの偏流は生じませんでした。到着時の誤差は、DME測定でわずか1.8nm。高度による影響を差し引くと、誤差1nm未満のピンポイント到着となり、飛行時間の誤差は、ウインド・スターを描いた遅延時間を差し引くと、ほぼゼロでした。
 非常に嬉しい結果ですが、最初の大誤差の原因が、よく分析できていないので、ちょっと困っています(^^;)。まあいずれにせよ、私の太平洋横断の航法は、次第に固まってきました。

●メドウズ・フィールド着陸。追憶の島ふたたび:
 ここで燃料計を見ると、低空・低速飛行のため予想より燃料を消費し、KSFOにはわずかに届かないようです。地図代わりにAtlas画面を調べますと、シャフターVORのすぐ南に、メドウズ・フィールドという空港を発見。滑走路はVORに正対しており、ここに降りることに決定し、直ちに進入。滑走路に並行して幹線道路がまっすぐ伸びており、これが絶好の目標となって、アプローチは非常に楽でした。
 到着後に調べますと、ここには先にご紹介しました通りANAの訓練基地があり、日本との縁を感じて、ちょっと嬉しい気分でした。次回も恐らく航法の訓練と研究を行い、うまく行けばKSFOに到達して、私の世界一周は新たな区切りを迎えます。

 さて…ロサンジェルス沖で私が昔、目撃した島ですが。先ほどは近くまで行かなかったサンタ・カタリナ島を、改めて各種の地図で調べますと、やはり地形上は、有力候補として残る気がしました。最初は航路がもっと北寄りだったかと想像しましたが、ロサンジェルス市は広いので、仮に南部のサンペドロあたりに向けて航行したと考えますと、カタリナの近くを通る可能性も依然、かなり大きいのです。
 若かりしころの私が、「陸が見える!」と聞いて甲板に飛び出し、最初に見た島はかなり小さくて、手前に薄茶色の、岩礁のようなものがありました。しばらくすると、さらに大きな島が視界に入り、これは背骨がシャープに盛り上がった岬を持つ、緩いピラミッド状のシルエットでした。
 Google Earthの斜め視野機能を使って、船舶並みの超低空からサンタ・カタリナ島を観察しますと…西の端の尖った岬は、この淡い記憶の中の「シャープに盛り上がった」岬と印象がよく似ています。また直前に見た小さな島は恐らく、西にあるサンタバーバラ島で、私が「岩礁のようなもの」とみたのは、この島の南側に浮かぶ赤茶けた岩のかたまり・スーティル島に酷似しており。Google Earthの視点を海面すれすれまで下げてみて…「ああ、これだ!」と思いました。
 世界一周フライトの流れからは外れますが、メドウズ到着後、ロサンジェルス国際空港でSV-4複葉機を起動し、これらの島を訪ねてみました。FlightGearのマップデータには、スーティル島はありませんが、サンタ・カタリナ島の西の岬を低空で回ると、どうやらこれが、やはり「ピラミッド状」に見えた地形のようです。長年の疑問に答えが出ました。FlightGearと、インターネットに深く感謝しております(^^)/
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なし FlightGearの原点・KSFOに到着

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
すっかりご無沙汰しました。
 私の世界一周は今回、カリフォルニア南部のメドウズ・フィールド(KBFL)からサンフランシスコへ北上し、ようやくお馴染みのKSFOに到着しました。

 この航程では、太平洋横断に備えた最終段階の航法テストを進めましたが、ナビゲーション研究にばかり、閉じこもっていても進歩がないと思いまして、KSFOに到着後は、これまで試さなかったDEMOモードを使い、空母発着やグライダー曳航を楽しみました。今さらながら「FlightGearには、こんな面白いこともあったのか」という気分です(^^;)。
 また掲示板では最近皆さんが、AI機の駐機を巡ってホットな書き込みを重ねておいでですが、私も2010年はAI関係のファイルも勉強して、もう少し自分が出来ることを増やしたいものです…。

●新たな航法計算表を試しながら、KSFOへ:
 まず、サンフランシスコへの移動です。以前ご紹介しました、磁気俯角・偏差航法用ワークシート「まぐなび」に、風向・風速を測定する「ウインド・スター測風法」のデータ計算表を新たに加え、実地テストしました。
 この表は、最大7時間半の滞空時間中、20分に1回ずつ最大25回、マメに測風したと仮定しまして、そのつど風向・風速のデータから、修正針路と残距離・残時間などを積算するための道具です。これと、以前からある風向・風速ベクトル自動作図ツール「hideの風見盤」があれば、推測航法の風計算は万全です。
飛行コースは、以下の通りです。

◎メドウズ・フィールド(KBFL)
   ▼328度3.6nm
★シャフターVOR115.40(セントラルバレー南部)352905N-1190549W
   ▼309.5度178nm
★サンノゼ空港VOR114.10 372228N-1215640W
   ▼305.7度25nm
◎サンフランシスコ空港(KSFO)。VOR115.80 373710N-1222225W

 まずシャフターVORを航法の基点と見なして、改良版「まぐなび」ワークシートに、このVORと到着地KSFOの緯度経度などを入力し、飛行区間の針路や距離を出しました。私の「磁気俯角・偏差航法」は、航法誤差を吸収するため、洋上に1カ所だけ変針点を設定しますが、陸上を飛ぶ今回は、洋上変針点の代りにサンノゼ空港VORを中継します。

 UTC1632時(現地時間0632時)、メドウズ・フィールドの滑走路上で、日の出を迎えました。冬は南国カリフォルニアでも結構、夜明けが遅いです。ピラタスPC7改に1000Lbsだけ燃料を入れ、エンジンを始動。雲量は4700ftにbroken、起動時の風は9000ftで320度4.4Ktでした。
 間もなく離陸し、太平洋横断の予定巡航高度30000ftまで上昇。滑走路のすぐ前にあるシャフターVORを基点に、ホールディング・パターンを描きながら上昇しましたが、昇るにつれて対気速度が上がるため、うまく楕円が描けませんでした。水平飛行なら何の問題もありませんが、高度が変化する中で、正しいパターンを飛ぶのは、かなり難しいものなのですね。
 やがて30000ftに達し1648時、シャフターVORを基点に航法開始。この時点の気速(224Kt=350KTAS)や、離陸前に得た風向・風速データを、新たに「まぐなび」に追加した測風用の計算表に入力したところ、風を補正した針路は真方位309.07度、対地速度は347.6Kt、サンノゼVORへのETE(予定飛行時間)は0.51時間(30分36秒)と出ました。従ってETA(予定到着時刻)は1714時10秒なのですが、さて計算は合っているかな? ともかく、針路をセットします。
 コクピットから全周を眺めると、ほぼ真後ろに太陽、左翼やや前方に月が見えていました。静まりかえった高空を、順調に飛び続けます。

     ○

 1652時、ウインド・スターを使った測風を実施。まず、現在のコースでトラック(Atlas画面上の航跡方位)を測定すると308.4度で、予定針路からすでに1度左にそれています。ここから、ウインド・スターの正三角形を描くための針路は…約250度、10度、309度です。1653時から旋回を始めて、各レグを1分間ずつ飛行し、それぞれの真針路とトラック方位を測定して、「まぐなび」に入力。計算結果は、ほぼ風速ゼロとなりましたが、メニューバーから確認した正解もゼロでした(もちろん、本番では正解は見ません)。以後の新しい針路は308.85度と表示され、オートパイロットを修正。新たな到着予定時刻は1719時となりました。

 …以上の説明でお分かり頂けますように、今回改良した「まぐなび」計算シートを使いますと、従来のようにいちいち「Virtual E6-B」ツールを起動して計算しなくても、各種の航法諸元が自動的に得られます。自宅にブロードバンドを引いて以来、リアルウエザーで絶えず風力が変化するため、極めて長距離の推測航法を行う太平洋横断では、計算が大変でミスも増えると思い、こうしたツールの必要性を感じたのですが、非常に便利になりました。
 ここでVOR指示器を確認すると、PC7改はシャフターVORからの予定針路ラジアルに、ぴたりと乗っています。「素晴らしい!!」と自画自賛しつつ続航。

 以後、ほぼ快調に飛び続けまして、1721時12秒にサンノゼVORを左アビーム(真横)に受信。コース誤差はわずか約0.9nm、飛行時間誤差は2分遅れでした。いい結果ですけれど、なにぶん飛行距離がたった200nmですし、風も終始弱かったので、この程度の精度は当然でしょう。
 さあ、KSFOまで25nmです。スロットルレバーを引き戻し、高度保持を外して降下に入ると、空港のVORが入感。正面に針を合わせて急降下。2分後に雲を破ってサンフランシスコ湾と、湾をまたぐサン・マテオ橋が、いきなり視界に飛び込んできました。「うわっ、本当に地球を回って、ここまで来たんだなぁ!」と、しみじみ思いながらATISを受信し、滑走路01を指定されて山側から進入、無事に着陸。1734時ランプイン。とうとう、サンフランシスコです。

●まるで「竜の巣」…積乱雲の中へ:
 ベイブリッジや、ゴールデンゲートブリッジ、アルカトラズ島など、お馴染みのランドマークを改めて訪問したのち、さっそくKSFOとその周辺を舞台とした、様々なDEMOモードを試してみることにしました。
 まずbigstorm_demoを選択しました。PC7改を起動したところ、ちっともstormではなく、さんさんと日が照っていますので、首をひねりながら、ともかく悪天候にしようかと、天候メニューでsunderstormを起動。どっと雲が出ましたが、肝心のbigstormはどこにあって、どんな現象なのかな?
 真上を見上げると、あった…何やら高空に、巨大な白いものが浮いています。まるで角張ったUFO、それも小さな村ぐらいあるヤツです。離陸してよく眺めると、ようやくオブジェクトの全体像が見えました。高さ38000ftに及ぶ円筒状の雲で、クリスマスの長靴を逆さにしたみたいに、てっぺんが平ら。これは「かなとこ雲」ですね。巨大な積乱雲が上へ上へと成長し、頂部が圏界面(対流圏の上端、成層圏に接する境界)にぶつかって、水平に拡がったものです。

 派手な大きさに見とれながら、円筒形の外周に沿って上昇してゆくと、「天空の城ラピュタ」で、飛行船タイガーモス号が、ラピュタを隠した暴風雨「竜の巣」に飛び込むシーンを思い出して、結構わくわくしました。以前、戦前フランスの郵便飛行のお話をだいぶ書きましたが、サンテグジュペリやメルモーズが1930年代に大西洋横断空路を開拓した際、洋上で出会った、「黒壺」と呼ばれる大暴風雨も、こんなのを非常に大きくしたものだったのでしょうか。
 中に飛び込んでみると、静かでがっかりしましたが、これはsunderstormを同時起動したため、動作がおかしかったようで、間もなく異常終了してしまいました。再起動後、空母発着のためダウンロードしたseahawkを使って、もう一度突入してみたところ、今度は乱気流が吹き荒れており、機体は勝手にロールして、レッドアウトを起こしたままスピンに入ってしまい、市街地寸前まで転げ落ちて、少々焦りました。「長靴」の真下は雨が降り、雲全体が移動する仕組みで、なかなか良くできていると思いました。

 往年の撃墜王、坂井三郎氏の「続・大空のサムライ」には、氏が終戦前に硫黄島から特攻を命ぜられ、米機動部隊が発見できないまま、洋上で米軍機の迎撃を受け、何とか生き延びたものの現在地が分からなくなり、帰路の航法に悩む有名なシーンがありますね。どう針路を決めるべきか、迷う間にも刻々と燃料は減ります。私がつくづく感心したのは、氏がここで冷静に「まず、攻撃を受けた際の高度、3000mを再現してみよう」と判断したことです。
 高度だけ再現しても、航法には無関係です。しかし「手始めに、出来ることから取り掛かる」ことで、心が落ち着いたとみえて、坂井氏は硫黄島からの進撃中、正面に大きな積乱雲が見えたことを思い出しました。高度2000mまで昇ると、雨雲の上に出て視界が広がり、さっきの積乱雲を発見。これを帰りの航法の基点と定め、コンパスで往路の反方位を取って、硫黄島へ向かいました。風向・風速は不明でしたが、細かい修正計算は避けて、わざと針路を左へ少し外すことにより、針路の誤差を吸収。日没後にも関わらず、うまく絶海の孤島・硫黄島を見つけました。幸運にも恵まれたのでしょうが、とっさの工夫と冷静な判断は、航法のお手本です。
 bigstorm_demoを基にすれば、このエピソードをFlightGearで再現することもできそうですが、硫黄島への航法に、成功・失敗いずれもあり得るというゲーム性を持たせるのは、なかなか難しそうです。

●seahawkとPC7改で、空母に着艦:
 次は、空母発着艦に挑みます。nimitz_demo.xml を開いてみると、この空母はデフォルトでは北緯37.8度、西経122.6度にいて、seahawkのTACANチャンネルを029Yに合わせれば、会合できそうだと分かりました。なるほど…ふだん使い道のないTACAN機能は、空母のためにあったのですね。
 KSFOからのコースは、計算すると315度15nmです。このへんの偏差は偏東14度なので、磁気方位で言えば301度。KSFOから飛んでいくつもりで、carrer-demoを起動しましたが、機体はすぐ艦上に出現して、手間が省けました。待機中のカタパルトから、蒸気が漏れている描写など、芸が細かいですね。
 見たところseahawkは、すでに発進位置にいるようなので、そのままシフト+Lで、機体をカタパルトに繋いで、エンジン全開。フラップ1段下げ、上げ舵いっぱいでシフト+Cを押して機体を射出し、かなり容易に初の発艦に成功しました。通常の飛行場の要領で、トラフィックパターンを一周し、着艦コースに乗ったものの、赤い「ミートボール」(着艦誘導灯)に付属した、降下パスを示す緑色バーが、期待したほど遠くからは見えません。パス維持にてこずった上、あと3秒で飛行甲板…というあたりで、着艦フックを出し忘れたことに気付き、ボルター(復航)しました。無念です。

 2回目。落ち着いて120Kt1100ftにセットし、空母のウェーキ(航跡)を目標に、アングルドデッキの角度も思い浮かべて、慎重に艦尾をめざします。着艦を伴うゲーム(Mac版のヘルキャットとF-18)を最後にやったのは、10年以上前のことですが…「滑走路と違い、空母は前へ逃げる。だからアンダーシュートする」ことだけは覚えていました。そこでひたすら「高めに!高めに!」と呟きながら、機首を吊り気味に保ち、風防の下限ぎりぎりに艦影を捉えて接近。(こんな場面で、機首の下をのぞき込もうと、思わず背伸びをしてしまうのは、私だけでしょうか)(笑)
 アングルドデッキが、通常の着陸時の滑走路と同様、理想的な「台形」に見えて来ました。ミートボールを一瞬確認しても、パスは正確。seahawkは座りのいい機体で、姿勢が乱れません。成功を確信した途端、うまくワイヤーを捉えて無事に初着艦しました。やれやれ。

 この時は、エレベーターの使い方が分かりませんでしたが、後日再び練習した折に、toshiさんが今年9月の「Re: 航空母艦の表示方法について」に、「メニューバー[ATC/AI] > [Options] にある「Operate Deck Elevators」にチェックを入れると上がり、チェックを外すと下がる」と、紹介しておられるのを発見しました。
 確かにこれで動くのですが、若干の不具合も出ました。最初に試した時は、チェックを入れた途端、空母がまったく見えなくなり、宙に浮いた機体だけが、約20Ktで航走を続けてびっくり。ただし、この書き込みのためメモを取っている間に、空母は勝手に復活しました。不調はこの1回だけで、エレベーターも正常に作動し、フェリーの車両甲板みたいなハンガーデッキへ、主翼を畳んだseahawkを乗り入れることが出来ました。

 ものはついでです。着艦フックはないが滑走距離の短い、ピラタスPC7改で空母発着は可能か、燃料450Lbsの軽負荷で試してみました。カタパルトには、もちろん非対応ですので、デフォルト位置からUターンして、制動索のあたりから滑走を開始。難なく発艦し、着艦も非常にあっさり成功しました。次に燃料を3000Lbs(満タンなら4000Lbs)まで増やしてみましたが、これも発艦・着艦とも問題なし。飛行甲板の後端にうまく降ろすと、4番索の少し手前で止まるほどです。向かい風があると、こうも離発着性能が上がるのかと感心しました。

●ウインチと曳航機による、グライダー発進:
 日を改めて、今度はグライダーの離陸に挑みました。幸い「マルチプレイ打ち合わせ&雑談」フォーラムに、toshiさんが書かれた「Re: グライダー(ask21)の飛ばせ方教えてください」(2008-2-10)が見つかり、機体操作からサーマルの捕え方まで、非常によく分かりました。ありがとうございます。

 ask21をダウンロードし、まずKSFOでウインチ離陸。これは簡単でした。このグライダーは、スロットルレバーで開閉するスポイラーの効きがよく、減速・高度処理がかなり容易で、安心して飛べます。
 続いてレイド・ヒルビュー・オブ・サンタクララ空港(KRHV)を選択し、パイパーカブJ3で飛行機曳航を試しました。KRHV_towing_demoを起動しますが、このデモの説明文にあるRWY-31Lは誤りで、toshiさんのご紹介通り「31R」を使わなくては飛べません。私は最初気付かず、31Lで待っていて…「なぜ隣で、カブが飛んでいるんだろう」と思いました(^^;)。31Rで待機し、カブが前に出たらCtrl+Oで索を繋ぐと、そのまま簡単に離陸できますが、離陸直後のカブはやたらと低空を飛び、また速度も遅いので、追い付かないよう適度にスポイラーを立て、機体の間隔を保つ必要があります。
 その後、右旋回でトラフィック・パターンに入りますが、最初のトライでは、なぜか第一旋回点付近で「索が切れた」とのダイアログが出て、早々に着陸しました。2度目は無事に、ダウン・ウインドレグまで連れて行ってもらい、高度約1100ftへ上昇。ここでカブは2〜3回、右へ寄って針路を譲るような動作をしますが、曖昧な動きなので、「曳航索を放せ」の合図かどうか、大いに迷いました。
 学生時代、ハワイの同乗飛行では、曳航機が機首を上げ、続いて下げたらリリースの合図でしたが、ネットで少々調べると「バンクする」というのもあり、よく分かりません。結局FlightGearのカブは1700ftまで上昇し、ここではっきり降下に移ったため、索を切り離しました。ともあれ、飛行機による曳航はウインチと比較にならない高度が取れますし、いよいよリリースした時の解放感は楽しいですね。今回は少しスタントを交えたにも関わらず、16分も飛べて驚きました。
 しかし…グライダーって、なんでこんなに、美しいのでしょう。思わず機外視点に切り替えて、見とれてしまいます。

●サーマルを、つかむ:
 滑空が面白くなったので、サーマル・ソアリングに進みます。
thermal_demoを選択し、KSFOをウインチ発進して、サーマル(太陽熱による上昇気流管)があるという、管制塔付近を目指します。1回目は届かずに、エプロンに降りてしまいましたが、2度目は何とか、ターミナルビルに近づいた時点で上昇に転じ、オーディオ・バリオメーター(音響式の滑空用昇降計)のビープが、連続音から断続音に変化しました。私は紙飛行機に熱中した昔、機体がサーマルに乗ると、何とも言えない高揚感に包まれて追いかけましたが、シミュレーターでも、サーマルをつかんだぞ、と思うと心躍るのは同じですね。
 バリオを頼りに旋回を重ねるうち、とうとう高度5900ftまで上昇。この時、真上に小さな断雲のオブジェクトが、看板みたいに出ていましたが、toshiさんのご紹介によると、これがサーマルの位置を示すサインなのですね。見慣れると、同じシルエットの雲がサンフランシスコ湾周辺に、数マイルおきにあり、これをたどれば長距離飛行もできる仕組みのようです。
 取りあえず、一つ隣の雲にたどり着き、ふたたび5900ftまで上昇。さらに南方、サン・マテオ橋付近の雲に近づきましたが、残念ながらそろそろ出勤時間。最寄りのサンカルロス空港(KSQL)に着陸しました。思えば、空港をグライダーで離陸して、他の空港までクロスカントリー飛行をしたのは初めてで、感激しました。
 のちほど、data/AI/thermal_demo.xmlを開いてみると、嬉しいことに、サーマルと下降気流の緯度経度、強度、直径、最大高などの記載が見つかり、これを参考にすれば、好きなところに配置できそうで楽しみです。

 今回は遅まきながら、FlightGearの楽しみが拡がりました。この後は、日程と天候をにらみつつ、カリフォルニア=ハワイ飛行の最終準備を進めます。
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なし KSFOからホノルルへ太平洋横断

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
 いよいよ、太平洋横断に取り掛かりました。今回はベイエリア東岸のオークランド・メトロポリタン国際空港(KOAK)を離陸し、サンフランシスコ国際空港(KSFO)経由で洋上を飛んで、ホノルル国際空港(PHNL)に到達しました。

 取りあえず、東太平洋を横断したわけですが、満を持した航法に予想外のミスがありまして、最後はVORに頼って到着しました。またホノルル上空では、パソコンの負荷が非常に大きくなり、着陸前にフリーズしてしまいまして、飛行中にエディターで打った記録メモも消失。自作航法ツール「まぐなび」に、同時に打ち込んでいた、測風データなどのナビゲーション・ログだけが、からくもExcelのオートセーブ機能に救われました。
 年明け早々、散々な目に遭いましたが、懸命に原因を調べて、直ちにフライトをやり直し、改めてホノルルをヒット。パールハーバーの北にある、米陸軍のホイーラー飛行場(PHHI)に、予定通り着陸しました。今回は、このスッタモンダをご報告させて頂きましょう。以下がフライトプランです。

【離陸地点】
◎オークランド(KOAK)VOR116.80 37.43.33N-122.13.23W
   ▼228度9.6nm
【航法上の出発点】
★サンフランシスコ(KSFO)VOR115.80 37.37.10N-122.22.25W
   ▼242.2度2098nm
△変針点OP(Ocean Point)北緯21度18分 西経157度58分。
   ▼277度100nm
【航法上の目的地】
★ホノルル国際空港(PHNL)VORTAC114.80 21.18.30N-157.55.48W
   ▼
【着陸地点】
◎ホイーラー飛行場(PHHI)NDB373 21.28.41N-158.02.01W

●太平洋横断のパイオニアをしのぶ:
 フライトに先立ち、アメリカ本土=ハワイ間の、無着陸飛行の歴史を調べてみました。最初に成功したのは、米陸軍のフォード3発機「バード・オブ・パラダイス」号で、1927年6月28〜29日のことです。わずか2カ月後の8月11日、早くも初の太平洋横断レース「ドール・エア・ダービー」(別名、トランスパック・レース)が開かれました。このレースには計15機もエントリーがあり、最終的に8機がスタートしたものの、当時の航法技術では、ハワイ諸島を正確に狙うのは相当難しく、ゴールしたのはわずか2機。4機がリタイヤし2機が行方不明、死者10人という、アメリカ航空史に残る悲劇となりました。
 思えば無茶な催しですが、この年は5月20日に、リンドバーグがニューヨーク=パリ間無着陸飛行(史上初の大西洋単独横断)に成功したばかりで、全米が空前の航空熱に沸いており、「次は太平洋だ!」というムードだったのでしょう。
 これらの太平洋横断飛行は、いずれもオークランドが出発地です。また少なくともドール・エア・ダービーは、ホイーラー飛行場がゴール地点です。熱い冒険飛行の時代をしのび、私もこの2地点を、離着陸地に選びました。ただしFlightGearのシンボル空港・KSFOと、ハワイの表玄関PHNLも捨てがたく、共に「航法上の」出発地と目的地、ということにしました。

●飛行コースの説明図:
 先のフライトプランは、マイアルバムにアップしました説明図「図解・ホノルルへ」とともに、ご覧頂けますと幸いです。
 ここで使う、磁気俯角・偏差航法につきましては、すでに昨年の7月29日と8月17日付本連載でご説明しましたが、図を使いまして、改めて要点に触れます。

 サンフランシスコ=ホノルル間を、GPSに頼らず飛ぼうとすると、航程の大部分は推測航法を使い、最終段階で目的地のVORを受信して、ゴールすることになります。今回の場合、VORが確実に受信可能な範囲は恐らく、説明図に黒線で示した、ホノルルを中心とする半径100nmの円内でしょう。全航程は2000nm以上ありますので、この100nm圏をヒットするには、精密に風向・風速を計り、絶えずコースを修正しなくてはなりませんが、それでもかなり誤差が出る恐れがあります。
 誤差は、「前後」方向と「左右」方向の両軸に出ますから、せめてまず、どちらか一方を解消してしまいたいものです。仮に、目的地を通過する非常に長い誘導ビームが、飛行コースと直角に(または大きな角度で交差して)洋上に伸びていれば、飛行機が予定コースからそれても、この誘導ビームに、どこかで必ず交差しますので、あとはビームに乗りさえすれば、ゴールできます。この場合は「前後方向の誤差」は、ほとんど問題にならないわけですね。
 私の磁気俯角・偏差航法では、以前ご紹介しましたように、地磁気の等俯角線を、誘導ビームの代用品にします。説明図をご覧頂きますと、天気図の等圧線のような、緩やかなラインが多数ありますが、間隔が広くて大きく湾曲しているのが等偏差線で、今回は使いません。逆に間隔が密で直線に近く、ほぼ赤道に平行に走る線が、今回使う等俯角線です。飛行前に、あらかじめホノルルでピラタスPC7改を起動し、パネルに設けた「俯角計」(Internal Propertiesを見てもよい)で現地の磁気俯角を計りますと、37.98度でした。説明図に黒い直線で示したのが、この37.98度の等俯角線で、これが誘導ビームの役割を果たします。

●わざと、コースを逸脱する:
 次に、左右方向の誤差です。ここで真に重要な情報は「どの程度、それたか」ではなくて、「左右、どちらの方向にそれたか」です。これが分からないと、目的地が見つからず、引き返して反対側へ向かった場合、捜索用の燃料が3倍必要になります。こうした場合、しばしば航法に使われるのが「左右いずれかに、わざとコースを逸らして誤差を吸収し、左右片側だけ捜索する」というテクニックです。説明図では、ホノルルの東100nmの地点に、「変針点OP」を設けており、サンフランシスコからここに向けて推測航法を行います。(この100nmの逸脱のことを、私は「リード距離」と呼んでおり、長いほど安全ですが、遠回りになります)
 もし推測航法が正確でしたら、37.98度の等俯角線にたどり着いた(パネルの俯角計が37.98度を示した)時点で、機体はちょうど変針点OPにいて、ホノルルVORが受信でき、DMEが100nmを表示するはずです。また、この時点でVORが受信できなかった場合は、機体が変針点OPよりも、さらに東にいると見なして、37.98度線ぞいに西へ進めばいいことになります。
 リード距離を決め、ビーム代わりになる37.98度線の方位角を、図上の等俯角線を基に分度器で測定したら、これらの数値とサンフランシスコ及びホノルルの緯度・経度を、自作の計算表「まぐなび」に入力します。これで変針点OPの緯度経度と、その前後で飛ぶ区間の針路・距離が出ます。説明図の下に表示したのが、「まぐなび」の最新版です。

●大洋横断には、正確な推測方法の併用も必要:
 …以上に見るように、磁気俯角・偏差航法は、航法誤差を吸収してくれます。ただし、この方法にも限界はありまして…誤差が万一、最初に設定したリード距離を上回ってしまった場合は、迷子になる恐れがあります。
 仮に真対気速度300Ktで飛行中、コース真横から30Ktの風が吹いており、これに気付かず補正もしなかったとしますと、全航程100nmのショートフライトでは10nmの誤差で済みますが、洋上を2000nm以上飛ぶと200nmの誤差が生じ、VOR受信圏を逸脱してしまいます。また太平洋上の高空では、60Ktくらいの強風もあり得るのですが、かといって無制限にリード距離を伸ばすと、航続力が足りなくなります。従ってサンフランシスコから変針点OPまでのフライトでは、どうしても風向・風速を定期的に測定して補正する、推測航法を行う必要があるのです。現在の「まぐなび」には、以前お話ししましたように、風向・風速の測定結果から、補正針路や変針点OPまでの残距離、到着予定時刻などを算出する表が付けてあります。

●「ボルト締めの増槽」を付ける:
 離陸の前に、燃料の問題にも触れておきます。
 ハワイ経由の太平洋横断ルートは緯度的に、東寄りの卓越風が期待できる「貿易風帯」を通っており、うまく行けば小笠原あたりまで、追い風気味だと踏んでいました。秋以降、NOAAの高層天気図を見ても、ほぼそんな傾向でした。
 PC7改のベスト燃費は、高度30000ft付近で約4nm/galで、満タンですと航続力は計算上2600nmを超え、オークランド=ホノルル間では400nm程度のゆとりがあります。実際は低空や上昇時に燃費が落ちますが、追い風か無風、横風でしたら楽勝です。ところが12月後半に入ると、太平洋の高空は広範囲に逆風が吹き、日によっては50〜60Kt(!)のアゲインストも見られ、航法ミスをしたら即、ガス欠の恐れが出て来ました。天候待ちをする手もありますが、時間に縛られるサラリーマンとしましては、これでは不便です。結局、あまり風向に左右されないよう、当初は不要だと思った補助タンクを付けることにしました。

 実物のPC7には兵装ラックが付けられるので、droptank-demoを利用し、seahawkの785Lbs入り落下増槽などを吊り下げるのが、リアルで手っ取り早いと思います。この増槽を出現させ、位置を合わせるのは簡単でしたが、私の力では残念ながら現時点では、実際に燃料をフィードしたり、投下することは出来ませんでした。
 ならば当面…投下装置のない、ボルトオンの固定式タンクと見なすしかありません。取りあえず、機内タンクの容積を増槽の大きさだけ増やし、燃料計のフルスケールを超える分の目盛りはレッドゾーンに塗って、自称「コック自動切り替え式の増槽」が完成。安直なやり方ですが、これで燃料の問題は解決し、愛機をKSFOから離陸地オークランド空港へ移しました。
 また本番で万一、ホノルル国際空港VORがうまく受信できない場合や、風向の関係で、ホイーラーとホノルルのいずれにも着陸が困難な場合に備え、代替VORや空港を選択し、「まぐなび」の余白に記入しておきました。

●PC7改、世界最大の海へ向かう:
 先日、やっと十分な自由時間が確保でき、夜明けのオークランド空港でピラタスPC7改を起動。ちなみに実世界でも、ちょうど夜明けでした。
 この時点でホノルルは、9000ftで270度の風10.2ktと逆風です。オークランドも高空は西の風。ただし8Ktなので決行できると判断し、PC7改の燃料タンクを、増槽を含めて一杯にしました。「まぐなび」に航法諸元を入力中、変針点OPからホノルルへのコース・ベクトルの向きが、逆に表示されていることに気付き、とっさに修正。しかしこれが後々、困った事態を引き起こすことには、気付きませんでした…。
 エンジンを始動し、フラップを1段下げます。

 日の出を背に、たっぷり30秒の離陸滑走。重い機体がやっと浮きました。上昇力は小さく、KSFOに向かって湾を1往復半しても、ようやく20000ftです。出来れば巡航高度の30000ftまで昇ってから、航法スタート地点のKSFO・VORを越えたいのですが、時間が掛かるので断念。1541時(現地7時41分)にKSFOから太平洋に機首を向け、さらに上昇を続けました。以後ハワイ諸島まで、視界は青い天球と雲とモヤだけ。しかし計測や計算が目白押しで、退屈するヒマはありません。

 1616時、最初の測風。「まぐなび」の表示で、正三角形のウインド・スター経路を飛ぶための機首方位を確認。左に60度旋回して1分直進し、Atlas上で航跡の角度を測り、コンパス針路と共に、「まぐなび」の測風計算表に記入。ただちに右120度旋回して、同じ操作を行い、最初の針路に戻った上で、四つの方位測定値を「hideの風見盤」に入力して、風向・風速ベクトルを算出。これを再び「まぐなび」の測風計算表に入力すると、新しい航法諸元が算出されますので、慎重に針路を変更。また航空日誌代わりのテキストに、新たな到着予定時刻や感想などを打ち込みます。
 煩雑な記載になりまして、恐縮ですが(^^;)。風の変化を折り込んだ推測航法では、こういう作業を…ただひたすら繰り返すわけです。
 最初の1時間は20分間隔で測風。その後は30分間隔とし、北米大陸を離れるにつれて風の変動が減ったので、3時間目以降は1時間間隔に伸ばし、計8回実施しました。測風時以外は倍速モード巡航ですが、航法に時間が掛かるため、たびたびポーズを掛けており、実世界でも半日を費やすフライトになりました。

 洋上で測風する技術を編み出し、自己完結した推測航法を行うことは、数年来の夢であり、実現できて非常に嬉しく、ゲームとしても奥が深いと思います。ですが、これだけ回数をこなしますと、さすがに手間が大変で、改良したくなります(^^;)。あるフェリーパイロットが、「夜中に飛び続ける俺たちは、まるで忍者だ。それも、下忍だ。不眠不休でひたすら計算し、操縦し、またひたすら計算する」という趣旨のことを書いていたのを思い出し、僭越ながら、ちょっと共感しました。

●失敗、そして原因を探る:
 数時間の苦闘を経て。いよいよ俯角計の表示が、目標の37.98度に近づきます。そろそろVORが使えるかと、ホノルルの周波数を入れたところ、DMEは予定通り約100nmを示しました。ところがRMIの指針は、前方右寄りを指すはずが、なんと左寄りを示しています。説明図で言いますと、赤字の「VOR測定点」からホノルルを見た状態です。コースが西へ極端に外れましたが、一体なぜだろう…?
 ハワイ諸島には、他に同じVOR周波数はなく、計器の表示を疑う余地はありません。ホノルルには確実に到着できますが、航法では何か大間違いをしたわけです。うれしさも半分…といった気分で、私はホノルルに機首を向けました。高度を下げて行くと、本来はダイヤモンドヘッドが見えるはずでしたが、実際はオアフ島の北岸が出現。やがてホイーラー飛行場を通過し、真珠湾のフォード島に差し掛かりました。これじゃまるで1941年冬、南雲機動部隊が放った攻撃隊の針路です。
 ホノルル市街地が見えると、FlightGearの画面処理が、異様に重くなってきました。スナップ写真を撮って保存中、とうとうパソコンがフリーズ。貴重な休みの半日を掛けて、やっと目的地上空に来たのに、着陸不能となって記録メモまで消えるとは、まったく残念無念です。

 全身から力が抜け、最初は「もういいや、とにかく着いたのだから」と思いましたが、せめて着陸だけでも、やり直したいと思い。先ほどの「VOR測定点」で機体を空中起動して、ホノルルへの進入を再現しました。ところがオアフ島東岸のココヘッド岬付近で、またもパソコンが重くなり、画面がコマ送り状態を起こし、操縦不能となって海に墜落。もう、踏んだり蹴ったり…というヤツですな。意地でもこのままには出来ず、もう一度やり直して、何とかホイーラー飛行場に降りました。

 しかしこれでは、何の解決にもなっていません。まず、正常に動いていたソフトが、なぜ重くなったのか。起動ウイザードのAdavancedを開いて設定を見直したところ、気になるものが一点見つかりました。私は以前、画面表示オプションを少し変更したのですが、機能を十分理解しないまま、RenderingメニューでTexture filteringを最高レベルに上げ、そのまま忘れていました。改めて調べると、これはテクスチャーの「異方性フィルタリング」を調節し、細部の画質を良好かつ均一に保つ機能で、レベルを上げると処理が重くなるのですね。これを最小値に落とすと、動作が安定しました。

 次は、航法ミスの分析です。オートセーブされた「まぐなび」を調べますと、大変なことが分かりました。私は離陸直前に慌てて、変針点OP=目的地間の方位ベクトルの向きを修正しましたが、バグは表示のみの問題で、その後の計算は合っていたのです。ところが安易なフィックスを試みたため、他の計算式が影響を受けて、変針点OPが本来の位置より200nmも西に移動したことが分かりました。マイアルバムの説明図に赤で示した、「誤った変針点OP」がそれです。
 航法の世界では文字通り、数字一つ、小数点一個のミスで、目標地点や現在値が大バケしてしまいます。これは航法計算の宿命的な怖さで、「ツールを一部でも変更したら、綿密なテストなしには、絶対に使ってはならない」としか、言いようがありません。ちなみに、サンフランシスコから変針点OPまでの推測方法自体は、なかなか高精度だったのですが…こう書いても、ちょっと空しい気がします。

●再挑戦、陽光輝くホイーラーへ降りる:
 「まぐなび」の欠陥を修正した後、再度カリフォルニアとハワイの天候を調べますと、オアフ島は270度19Ktの強い逆風でしたが、オークランド空港は無風。ならば、天候が変わらないうちに、もう一度、飛ぶかぁ!

 という次第で、わが過去最長のフライト全体を、やり直しました。さすがに疲れて、最初から測風を1時間1回に減らしたところ、航法誤差が大きくなり。ハワイ本島まで来たと判断してVORをセットすると、機体はもうオアフ島上空にいて、ホノルルのわずか9nm手前でした。この時のコースは、説明図の黄色い線に当たります。
 ともかく今度こそ、米本土からハワイへ、トランスパシフィックに成功しました。ホノルル市街地やパールハーバー上空でも、特に異常な負荷は感じられず、晴れ晴れした気分です。ホノルル空港のATISを受信して風を確認後、南国の日差しが差すホイーラー飛行場へアプローチ。滑走路がやや短いため、75Ktまで減速してショートランディングの態勢を取り、ふんわりタッチダウン。ランプインしてエンジンを切ると、さすがに達成感がこみ上げて、周囲の風景が非常に美しく見えました。

 最終的には、ほぼ目的地へ直航したので、せっかくの磁気俯角・偏差航法は、厳密に言いますと、あまり出番がありませんでした。しかしこれをきっかけに、「もっと積極的に地磁気を活用し、よりダイレクトに目的地を狙う改善策はないのか?」という思いも沸いており、研究課題となりそうです。ハワイでしばらく過ごした後、ウェーク島と小笠原の硫黄島を経由して、日本に向かう予定です。
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なし オアフ島でAI機研究

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回は、カリフォルニアから太平洋を横断し、ハワイ・オアフ島のホイーラー飛行場に着陸したところまででした。今回は島を少し観光した後、北西岸のディリンガム飛行場に移動して、AI機のフライトプランの書き方を少々勉強し、軽飛行機やグライダーをエプロンに並べたり、グライダー曳航機の制御を試みることにします。

●追憶のオアフ島:
 まずホイーラー飛行場から、フォード島の海軍基地に移って、ここを拠点に低速のドラゴンフライで真珠湾を見物し、アリゾナ・メモリアルセンターの上空をフライパスしました。ハワイはリゾートであると同時にまた「戦跡」でもあるので、せっかくアリゾナ記念館の3Dオブジェクトを作るなら、出来ればすぐ近くに保存されている、戦艦ミズーリも欲しいところですね。
 余談ながら…私はだいぶ昔、実世界のアリゾナ記念館を訪れた折りに、非常にKYな日本人グループに出会い、身が凍る思いをしました。彼らは船上で空襲の解説が行われている間、「奇襲作戦が、いかに見事だったか」の話で盛り上がっておりまして。荘重なアナウンスと音楽、爆撃の効果音に続いて、花輪を流すセレモニーが始まる中、「あっちから、攻撃隊が入ってきたんですよっ!」「でね、真珠湾は浅いでしょう。こ〜んな風に低空で酸素魚雷を…」と、だんだん大声に。不幸にも身振り手振り入りなので、当時をしのんで泣いている米国人観光客にも、日本語の意味がよく分かるのです。「くそジャップが!」と、うめき声が上がりましたが、こりゃ当然。もしアメリカ人が原爆ドームの前で、同じような振る舞いに及んだら、我々だってボコボコにしたくなるでしょう。

 日を改めてFlightGear上でPC7改を起動し、フォード島からディリンガム・エアフィールドへ。実世界のここで大昔、私はグライダーに同乗しましたが、非常にアットホームな雰囲気の飛行場でした。アロハにテンガロンハット、ゴムサンダル履きのオッサンが、ふらりと現れて軽飛行機に飛び乗り、トラックの車庫入れみたいにドアを開いたまま、タキシングさせて曳航位置へ。グライダーのパイロットもGパンにTシャツ姿、大学生くらいの気さくな女の子で、短時間ながら楽しいフライトでした。ソアラーの着座姿勢は仰向けに近いですが、あの超流線型の胴体にぴったりと潜り込んで、細く鋭利な翼が「自分の両肩から」生えた気分は…まったく、最高ですね。
 なので、この飛行場はFlightGearでもぜひ、訪れてみたかったのです。

 この日のリアルウエザー環境は、3000ft以下に3層も雲があって、フォード島を離陸後間もなく最下層の断雲が迫ってきました。機首を抑えて雲の下にコースを取り、昔タクシーで通ったはずの、島の北岸へ向かう幹線道路を探します。それらしい道は幸い一本しかなく、私は約600ftまで舞い降り、300Kt以上に加速して、道路沿いに爽快な低空飛行に入りました。左手には、いかにもハワイらしい、低いが険しい山々が連なり、そこかしこに農地(実世界ではたぶん、パイナップル畑)が、穏やかに拡がっています。島の北岸付近から西へ変針すると、やがて浜辺沿いの道路に沿って、細い滑走路が視界に入ってきました。これがディリンガムで、グライダーや観光フライトの基地です。超低空のままパワーを絞ってダイレクト進入を決め、あっさり着陸しました。
 この飛行場は過去、複数のフライトシムで体験しましたが、現行FlightGearの景色は特に、現地の雰囲気に近く感じられます。南から山が迫り、北にビーチが拡がる細長い地形は懐かしく、シミュレーションの中にいることを一瞬忘れる気分で、誘導路に駐機すると、「早く機体の外に、出てみよう!」と思ったほどでした。
 私は先日、KRHV_towing_demoを使って、カリフォルニアで初めてグライダーの曳航をしましたが、今回は自分でAIフライトプランを作る前段階として、まずAI機の駐機に挑戦することにしました。

●ディリンガム飛行場に、AI機を並べる:
 エプロンに好みの機体を並べるのは、実はMSFSを使っていた昔からの夢ですが、これまでは手も足も出ませんでした。幸いzero1962さんとvirtflyさんが、「AI機の脚出し駐機方法について」のトピックで、活発に情報交換をしておられたのを読みまして、何とか私にも出来るような気がしました。
 私が時々お邪魔する、virtflyさんのサイト「仮想飛行」には、機体配置の基本的な例文が、非常に分かりやすい解説入りで示されています。全面的に拝借し、FlightGear/data/AIフォルダ内に、dillingham-parking.xmlのファイル名で保存。この中に複数のentryタグを設ければ、複数の機体が表示できることが分かりました。

 まず手始めにFlightGear/data/AIフォルダから、塗色の異なるAIセスナ2機を選択。またAircraftフォルダから、通常機の例としてask21グライダーを選んで、それぞれパスを指定。次に、Internal Properties/positionを開いて、ピラタスPC7改を駐機した地点の、正確な緯度経度と標高を確認。これをask21の位置情報に使い、少しだけ緯度をずらして、誘導路の外側に機体を置くことにしました。機首方位も調整し、機体を誘導路と直角にします。
 ここで使う緯度経度は、普段見慣れた「度・分・秒」ではなくて、度単位の小数点方式なので、数値を10000分の1度動かすと、機体は11メートルくらい移動します。これを目安に、目分量でセスナ2機の位置も決定。また例文には<roll>タグがあり、機体のバンク角を指定できるので、グライダーを右に7度傾けて駐機姿勢にしてみましたが、これは自分でも気に入っています。
 うまく表示されたかどうか、確認には移動の簡単なジープを利用。FlightGearウイザードでjeepを選び、Scenariosからdillingham-parkingを選択して起動し、邪魔なフロントグラスを倒してエプロン方面を見ると、3機は見事に表示されていました。

 次に、引き込み脚タイプの通常機をAI機として使った場合に、どうやって脚を出すかですが、これも「仮想飛行」に詳細な説明があって、機体の速度によって条件分岐し、脚出し・脚上げの選択が出来ると分かりました。その通りに実行したところ、あっさりとc310u3aの表示に成功。ペイントデータは自作のものに取り替えて、かつて2005年12月から2006年11月にかけて、ニュージーランド=松山空港間のフライトに使った、オレンジ色の塗装を再現しました。ついでに現在の愛機ピラタスPC7改にも、同様の脚出し処理をしたAI用ファイルを用意し、エプロンに並んでもらいました。いっぽうAIセスナは、プロペラが回りっぱなしですが、プロペラの回転/停止の表示切り替えも、脚の出し入れと同様の方法で解決できるらしいので、いずれ調整したいと思います。

●尾輪よ、下がれっ!:
 最後の目標は、尾輪式機の機尾を下げて、正しい三点姿勢で表示することですが、実に難関でした。苦し紛れに、FlightGear/Aircraft/pc7/Models/pc7.xmlを見たところ、冒頭に以下の記述を発見しまして、急に道が開けました。

<?xml version="1.0"?>
<PropertyList>
 <path>pc7.ac</path>
 <offsets>
  <pitch-deg>-4</pitch-deg>
 </offsets>

 …これだ!と思いましたね。試しにpitch-degをゼロにしたところ、それまでは全速時の「やや前のめり姿勢」で現れていたPC7改が、水平姿勢でエプロンに出現しました。j3cubのファイルの同じ位置には、このoffsetsタグがなかったので新設し、ピッチ角にプラス13度を指定したところ、見事に3点姿勢を取ってくれまして、非常に嬉しい思いをしました。
 このタグで扱っているピッチ角は、恐らく機体の標準的な姿勢(迎え角?)を定義しているのでしょうから、下手にいじると飛行中の姿勢が変わってしまうだろうと思い、カブの設定ファイルをj3cub-ground.xmlとリネームして、駐機専用にしました。同じテクニックで、ついでにスタンプSV-4複葉機も追加。またこれらを含む、dillingham-parkingを、dataフォルダにあるprefarencesファイル内のAIタグに書き加えたところ、nimitz-demoと同様、FlightGearの起動時に、自動的に有効になることを確認しました。
 ピッチ調整には、もっと洗練されたテクニックがあるのだろうと想像しますが、ひとまずこれで、当初の目的は達しました。結局、エプロンへの機体表示は1日で解決しましたが、もとより独力では絶対に無理な話であり、数々の情報を公開して下さった関係の皆様へ、心よりお礼を申し上げます。

 合計7機が並ぶエプロンの壮観に、しばらく飽きもせず見とれたのは、言うまでもありませんが。ふとカメラを遠景に引いて、列線の中央を行くジープを眺めると…まるで観閲式のパロディーみたいな光景で、思わず笑い出してしまいました。バトル・オブ・ブリテンを描いた往年の名画「空軍大戦略」の冒頭には、これとそっくりのシーンがありましたっけ。爆撃隊基地に専用機(ju-52)で飛来したヘルマン・ゲーリングが、「英国なんざぁ、ひとひねりだ!」といった表情で、メルセデスのオープンカーにふんぞり返り、麾下のハインケル111部隊を閲兵する場面です。余談ながら、私はあのシーンで流れる、荘重にして華麗なドイツ空軍のテーマ曲が好きで、今回ネットで曲名を調べたところ、「素晴らしきヒコーキ野郎」や「荒鷲の要塞」「633爆撃隊」なども手がけた、ロン・グッドウィルの「エース・ハイ・マーチ」だと分かりました。検索すると、作中の全曲を45秒ずつ試聴できるサイトもありますので、お好きな方は、ぜひ。

●結構難しい、曳航機のフライトプラン:
 AI機は、飾っておくだけでは、確かに記念碑や文鎮と同じであって。やはり飛ばしてみたくなりますね。そこでディリンガムからのグライダー曳航離陸をめざして、フライトプランづくりに取り掛かりました。
 なにぶん初めての経験ですが、手始めに、KRHV_J3_towing_31L.xmlを開いたところ、記載データが半端な数字になっているので、これは「フライトデータの記録と再生」で取得した数字だろうと見当を付けました。ログを取る方法はすぐ分かりましたので、場周経路にカブを飛ばしてデータを採取。
 後はKRHV_J3_towing_31L.xmlをコピーして、Dillingham_J3_towing_08.xmlという新たなファイルを作り、ウェイポイントなどを書き換えるだけです。原文にはウェイポイントが30くらいあって、それぞれの名称には、logging開始時以降の経過秒数が使われているようで、私も同じ方法を取りました。
 しかしこれは、いざ取り組んでみると、なかなか手間が掛かりました。取得したカブのログには、速度の項目がないため、経過時間や高度を手掛かりに、KRHVの作例と見比べながら数値を決める必要があります。また例文は、離陸滑走時の加速過程を数ノット刻みで細かく記述していて、いささかうんざりしますが、あまり勝手に省略すると、急な速度変動を起こして、曳航索が切れるのではないかと不安でもあり。やっと高度50ftへ上昇するくだりまで書き進めました。どこか致命的に間違っていたら、手間がパーになりますので、ここで最初の飛行テストを試みることにします。

 フライトプラン自体は、特にエラーを出さずに走り始めました。取りあえずホッとしましたが、書き方にはかなり問題が残るようです。
 まず、曳航機の開始位置は、グライダーと干渉しないように、20mかそこら前方に出したつもりでしたが、なぜか2機のコクピットがモロに重なって、同一空間を占めながら混在し、奇怪なSF映画のようでした。カブは出現後、片足を軸にグルグルと自転(ヨーイング)運動を起こし、続いてモジモジ、ゆさゆさと機体を揺するなど、toshiさんが命名された「カブダンス」を繰り広げますので、こちらのコクピット視界には、そのつどカブの前後席や計器盤、操縦桿の根元など、切れ切れの立体が割り込んで踊り、その気持ち悪さは、尋常ではありません(^^;)。
 さらに離陸後は、いったん上昇しかけながら低空に戻ってしまい、しばらく地表付近を這うように進みますので、曳航される方はハラハラします。これはKRHVで飛んでも同じですので、例文に問題がある可能性があります。いっぽう、飛行経路は滑走路方位を大きく左に外れ、どんどん海に出てしまいましたが、これは何か私の書き間違いでしょう。ただし原因は分かっていません。

 海上に連れ出された私は、とっさに曳航索の許す限り上昇して、約200ftまで稼いでリリースし、急いで海岸に向け反転。高度を失うのが恐くて、つい上げ舵を引き続けました。しかし、これでは目一杯減速することになり、滞空時間は最長モードになるものの、逆に飛行距離は伸びないと思われます。そこで、敢えて本能に逆らって機首を下げ、最大滑空比の得られる約100/hまで加速。これは正解で、何とかビーチを飛び越え、滑走路まで機体を持ち込み、無事に着陸しました。見事な判断だったと、ここは自画自賛しておきます(^^;)。
 曳航用フライトプランは、このままでは不満ですが、苦心して仕上げても、緯度経度や標高の関係で、他の空港に転用は難しそうですので、AI機の研究はそのうち、帰国して新たな母港を決めてから続けるつもりです(私は転勤してしまったので、世界一周のゴール後は、松山空港を撤退する予定です)。

 今回はいささか、コンパクトな書き込みですが、取りあえずAI機関係のご報告をお届け致しました。ではまた、バーチャルハワイでお目に掛かりましょう。
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なし レーダーで航法を

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-1-18 12:52 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回は、ハワイ・オアフ島のディリンガム飛行場で、AI機の扱い方の勉強を始め、取りあえず駐機に成功したお話などをお届けしました。

 その時に、ふと思いついたのですが…AI機は地上であれ空中であれ、地球上のあらゆる所に、緯度・経度を使って正確に位置を定義し、好きなように配置可能です。また、かなり離れたところからレーダーで見ることができます。ということは、一種の航法標識としても利用可能ではないかと思いました。私はこれまで、レーダーにはちっとも興味がなかったのですが、自分でもAIを飛ばすことができるようになり、大好きな航法も絡むとなりますと、話は別です。今回は苦心を重ねてピラタスPC7改にレーダーを装備し、実際にAI機を探知して、画面表示法などを改良しました。

 もう一点。先日の、カリフォルニア=ハワイ間の推測航法では、やっと実用化したウインド・スター測風法を針路補正に使いましたが、実際に使ってみると、まだまだ煩雑でした。同時に、有意な精度を得るには、かなり頻繁に測定と計算が必要なことが分かりましたので、もっと簡略に保針する方法を考えました。今回はディリンガム飛行場から、ハワイ島のマウナケア山頂まで往復約380nmを飛んで、これらレーダーや航法の実証試験を行うことにしました。

●航法にAI機を役立てるには:
 AI機を航法に使うには、大まかに二通りの方法がありそうです。
最初に思いついたのは、大戦中に英空軍が使ったパスファインダー(夜間電子航法専門の爆撃隊誘導機)のように、先導機として使う方法でした。私も皆さんも普段は大抵、VORを使って飛ぶことが多いと思いますが、VORの覆域外ではどのように航法をされるでしょうか。一般的にはGPSを使えばいいのですが、FlightGearのGPSは、空港や無線標識、フィックスしか目標地点に選べず、任意の地点へ行くことは出来ません。これに対しAI機は、空港ならぬ富士山頂だろうが、VOR/DMEのないモンゴル高原の一点だろうが、自在に目的地を選べます。長距離飛行の先導に使うと、例えば…
     「チベット・ウイグル自治区で、巨大地震が発生した。
      ○○村へ輸送機で急行し、医療班を空挺降下させる」
…といった想定のフライトも、可能になることでしょう。
 ただし、肉眼より視界変更に手間取るFlightGearで、手動操縦によってAI機と長時間編隊を組むのは、非常に大変だと思います。たぶん前後に大きく距離を開けて、AI機を追尾することになりますが、AI機がセスナや零戦サイズの場合、空中で視認すること自体が結構難しいので、離陸後はAI機との会合そのものが一苦労です。こう考えますと、どうしてもレーダーが必要だと思いました。

 AI機活用のもう一つの手は、地上に置いたり定点旋回させて、いわば固定のレーダー・リフレクターとして使い、目的地や中継地の位置を示す標識に利用することです。わざわざ標識役の機体を飛ばすことはリアリティー上、少々疑問もありますが、実機ではウェザーレーダーで地形を見て、航法の補助手段に使うのですから、AI機を特徴ある地形の代用品と考えれば、別に荒唐無稽ではないと思います。

●まず、ブロンコのレーダー移植を試みる:
 次に、ピラタスPC7改に搭載できそうなレーダーを探しました。一部の戦闘機や旅客機には、かなり多機能らしいレーダーが付いていますが、その分だけ作業が複雑になることと、パネル上に占める面積も大きいことから断念しました。最終的に目を付けたのは、OV-10ブロンコNASA仕様機の640nmレーダーと、もっと簡易型の40nmレーダーです。ブロンコは一時、Ver.1.9.1の環境下では起動できなくなっていましたが、現在は対応版がアップロードされています。
 ブロンコのレーダーを調べてみますと、3Dのハウジングに収まったスクリーンを持ち、2.5nm〜640nmの間で広範囲に、2倍ステップでレンジを調節できます。また北を上とする絶対方位と、機首方向を上とする相対方位を使い分け、ターゲットごとに高度データを表示するなど、なかなか使いやすそうです。これを頂こうと思いました。

 あれこれ調べた上、まず Aircraft/OV10/Models/NASA/Instruments/EHSI/の中身を、そっくりコピー。次いで OV10_NASA-set.xmlの内部で見つけたレーダー関連の記述を、PC7改の関係ファイルにペーストしました。最初は、3Dオブジェクトのレーダースクリーンを、どうやって2Dオブジェクト計器を並べたパネルに配置すべきか迷いましたが、先日やはり3Dハウジング付きの磁気コンパスを、他機からPC7改に追加する際、Models/pc7.xmlにある<!-- sub models -->の後へ、3次元座標の入ったパスを書き込んだことを思い出し、同様に処理。非常に手間を掛けて、ホットスポットを合わせるなどの作業を行い、何とかパネル上にスクリーンを出現させましたが、1日半に及ぶ試行錯誤も空しく、ついに映像を出すことはできませんでした。

●T38の簡易レーダーが、突破口となる:
 次に挑戦したのが、3Dハウジングやマルチレンジ切り替え機能を持たない、簡易型のレーダーです。これはノースロップT38タロンなどに付いており、有効距離・レンジ選択も少なくて、20nmと40nmのトグルのみです。不便ですが、多少は改善できると踏みました。また1000ft単位で高度表示も可能ですので、ミニマムの機能は備えていると言うべきでしょう。
 それと。この簡易レーダーは、受信可能範囲内であれば、ターゲットが空中にあろうが地上にいようが、自機の姿勢やターゲットとの高度差に関わらず、常に画面に表示します。航法に利用するレーダーとしては、極めて便利な特性で、ぜひ使いたいと思いました。
 (ディリンガム上空に、AIのセスナや747などを飛ばして、ブロンコのレーダーを様々にテストした結果、自機の姿勢などによっては、近くの目標でも探知できない場合があることが判明しました。T38の簡易レーダーよりも手の込んだ、リアルな設計であろうと思いますが、見方を変えれば航法に使う場合、あまり当てにならないとも言えます)

 簡易型の40nmレーダーは、実は最初からピラタスPC7にも設定されているのですが、なぜか必要な記述の一部が設定ファイルから欠落しており、そのままでは起動できません。最初は正直、こんなものがあるとは知らずに、T38から丸ごと移植しようとして作業中、ようやく存在に気付いた次第です。
 長時間にわたり試行錯誤しましたが、結局は pc7-set.xmlファイルに、以下の部分を書き加えるだけで、取りあえず動いた…と思います(少し記憶が曖昧ですが)。この簡易レーダーは、スクリーン右上の「最小化ボタン」を押すと閉じて、「Radar」という小さなボタンに化けます。このボタンをクリックすると再び出現する仕組みで、以下のスクリプトはこの機能を起動時に初期化すると同時に、レンジを20nmにセットしているのでしょうね。
<instrumentation>
<radar>
<range type="int" archive="y">20</range>
<minimized type="bool" archive="y">false</minimized>
</radar>
</instrumentation>

 ただしこのままでは、スクリーンはT38と同様にパネルの右端へ出現し、空中に浮いたような、不自然な形になります。そこで以下のように panel.xmlの座標を修正して、エンジン計器の下あたりにスクリーンを配置しました。ここでは30行近く引用しますが、文中に各2カ所ある<X><Y>タグの内容のみが実際の変更点です。
<instrument include="../../Instruments/radar.xml">
<name>Radar</name>
<condition>
<equals>
<property>instrumentation/radar/minimized</property>
<value>false</value>
</equals>
</condition>
<x>650</x>
<y>-100</y>
<w>160</w>
<h>160</h>
</instrument>

<instrument include="../../Instruments/radar-minimized.xml">
<name>Radar-minimized</name>
<condition>
<equals>
<property>instrumentation/radar/minimized</property>
<value>true</value>
</equals>
</condition>
<x>650</x>
<y>-100</y>
<w>44</w>
<h>16</h>
</instrument>

 …最初は、これでもレーダーは動きませんでした。原因が全く分からなかったので、まず無改造新品のピラタスPC7を用意し、同じ作者の手によるレーダー実装機・T38のプログラムと比較して相違点を調べ、先程お話しした修正を加えて、レーダーを起動できるようにしました。次いで、現行のPC7改へ進化させるため、改造点を1ステップずつ再現し、そのつどレーダー起動試験を行って問題点を突き止めました。前記の<instrumentation>タグは、同一のset.xmlファイル中には、一つしか存在してはならないのですね。以前、PC7改の気速計にTAS表示機能を追加する際、コンコルドのファイルを丸写しする形で、この<instrumentation>タグを使って、TASを取り扱えるようにする記述をset.xmlに追加しており、今回は同じタグが二つ並んでしまったのです。これを1個に統合したところ、無事にレーダーが起動しました。

●簡易レーダーを、航法用に改造する:
 ここまでやっておいてから、実証試験のフライトに出かけましたが、全体の流れを分かりやすくするため、飛行テストのお話は後回しにして、その結果行った改良点をご紹介します。

 まず、スクリーンの表示レンジを変更しました。レーダーを航法に使うには、目的別に、
 ・長距離洋上飛行の推測航法補正:160nmレンジかそれ以上
 ・目標空港へのアプローチ   :20nmレンジ
 ・AI機との空中会合      :2.5〜5nmレンジ
…の3種類あたりが、それぞれ見やすくて適当だろうと思います。しかし簡易レーダーは、デフォルトでは20nm/40nmの2段階切り替え式で、いかにも不便です。本当はNASAブロンコ並みに、2倍多段ステップのレンジ切り替えが欲しいのですが、ここまでの改造は私の手に余るので、次善の策として長い方のレンジを160nmに改造しました。方法は、/Aircraft/Instruments/radar.xmlのバックアップを取っておき、以下のように変更します。
 ・range 40という記述を、すべてrange 160に置換。
 ・<value>40</value>の記述を、すべて<value>160</value>に置換。
 ・<scale>2.55</scale>の記述を、すべて<scale>0.6375</scale>に置換。
…これで大丈夫。スクリーン上の同心円に表示される距離数値も、同時に変更されます。

 またデフォルトのスクリーン画面は、自機からの距離を示す同心円が2本しかなく、方位を示す中心からの放射状の直線も、まったくありません。これではターゲットの位置が読めないので、Aircraft/Instruments/Textures/radar_background.rgb を開いて、クモの巣状の目盛りラインを描き入れました。モロに「デジタル化以前」の時代の…いささかクラシックなレーダースコープに見えますが、これで20nmレンジの場合、ターゲットまでの距離は1目盛り1nm(160nmレンジの場合は1目盛り8nm)で、自機からの相対方位は10度単位で読み取れるようになりました。
 航法計器には、較正が必要です。約180nm先のターゲットを使って、この目盛りの精度を検証したところ、方位はドンピシャリですが、距離は2nmほど誤差を発見。そこで先ほどの radar_background.rgb の解像度(画面サイズ)をわずかに調整して、ほぼピッタリに修正。これでどうやら、自機とターゲットの相対位置測定に使えそうなものが出来上がりました。スクリーンの外観を、マイアルバムでご覧に入れます。ご参照下さいましたら幸いです。

●レーダー航法を、飛行テストする:
 実証試験のフライトコースは、次のようなものです。
◎ディリンガム飛行場21.34.45N-158.11.46W
  0.53▼124.4度186nm
△ハワイ島マウナケア山・すばる望遠鏡194932N-1552834W
  0.18▼332.67度63nm
△マウイ島・ハナ地区 204525N-1555911W
  0.38▼291.6度134nm
◎ディリンガム飛行場
計383nm。(▼左側の数字は、飛行時間です=時間単位)

 マウナケア山は標高4000m以上あって大気の影響が少なく、晴天率も極めて高いため、世界最先端の天体望遠鏡12基が集中的に設けられ、いわば21世紀天文学の最前線です。以前知り合った先生が時々、ここですばるを使って遠方銀河の観測を行い、ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果と組み合わせて、ダークマター(全宇宙の質量のかなり多くを占める、謎の暗黒物質)の立体分布図を作ったりしていましたので、どんな場所なのか興味があり、目標地点に選びました。またマウイ島のハナ地区は、リンドバーグが最晩年を過ごした別荘のあった所で、実はお墓もここにあります。ディリンガムから、この2カ所を経由して往復飛行を行い、以下のテストを行いました。
 ・すばる望遠鏡の位置、高度13000ftにAIセスナを旋回させ、
  レーダーへの映り方と、目標物に使えるかどうかを確認。
 ・ハナ地区に、AI操縦のセントルイス号を旋回させ、同様に
  検証する。
 ・往復の巡航には推測航法を使うが、ウインド・スター測風を
  行わない代りに、Atlas画面で継続的に偏流角を測定して、
  絶えず針路補正を行う。針路の左右方向については、これで
  ウインド・スター測風法よりも精度が上がり、また作業が
  非常に簡単になる。
 ・偏流角の測定のみでは、針路の前後方向の誤差が測定できな
  いが、レーダーを搭載した以上は、つねに対地速度を自動計
  算できるものと見なして、パネル上のHSIに対地速度のデジタ
  ル表示を復活。これで到着予想時刻の計算を行う。

 …当日の天気は快晴、ディリンガム上空6000ftの風は、340度12Kt。これをもとに、補正針路と到着予定時刻の初期値を出し、ピラタスPC7改で離陸します。短距離フライトですから、燃費を気にする必要はなく。景色も見たいので、高度は17500ftと低めにしました。
 数分ごとに、Atlas画面の航跡にマウスポインタを当て、フリーウェア「斜めものさし」のポインタ位置測定機能を使って、こまめに偏流を測定しましたが、測定のための変針は不要で、計算もほとんどなく、ただオートパイロットを微調整するだけですから、非常に楽なフライトです。リアルウエザーで刻々変化する風をちゃんと補正しつつ、186nmを巡航してマウナケア山頂に着いてみると、誤差は左右に1nm未満、時間にして1分未満と、飛んでもない高精度が得られました。風向・風速があまり変化しなかったためですが、風の測定法を単純化したことと、対地速度を直読できる仕組みを復活したことも、当然大きいと思います。
 ちなみにFlightGearのマウナケア山頂は緑に覆われ、こんもりとした風景でしたが、Google Earthで実像を確認すると、何しろ火山の火口付近ですので、草木は非常に少なく、さながら地獄の一丁目です。マウイ島のハナ地区は、誠に穏やかな海岸と山が拡がって、ごく小さな空港があり、なかなか落ち着く場所に思えました。

 またレーダーの機能ですが、マウナケアのAIセスナは、160nmレンジ一杯の距離から、快調にとらえることができました。スクリーン上の目盛りで位置を計るだけに、VORより誤差は大きいですが、それなりに代用品として使えると思います。ただし高度設定が不適切だったので、AIセスナの機影はぎりぎりで地中に潜り込んでしまい、実際に空中で目視することはできませんでした。またセントルイス号は、なぜかレーダーに映らず、肉眼でも発見できず。後日、ディリンガムで追試した際も、セントルイス号は目視できたものの、レーダーには反応しませんでした。機種によってこのような違いが生じる理由は、まだ分かっていません。
 しかしともかく、マウイ島のハナ上空で160nmレンジを使いますと、マウナケア旋回中のセスナとディリンガムに駐機するAI機群が同時に見え、それぞれ距離と方位を直感的に知ることができました。非常に貧しい情報ながら、言わばある種の「地図」が得られたわけで、レーダーはすごい道具だと、改めて思いました。
 ハナからディリンガムへの帰路は、マウイ島北岸とモロカイ島上空でコロコロと風向・風速が変わった影響か、ちょっと誤差が大きくなり、到着時は位置が数nmずれたと思います。正確な記憶が吹っ飛んでいるのは…なぜかアプローチ時にスロットルが全開のまま動かなくなり、ダウン・ウインド・レグを飛行中に、オートパイロットで「速度ゼロ」を指定して、強制的にアイドルに下げたところ、今度は加速不能になって…少々慌てたからです。幸いこの1週間、さんざん離発着した飛行場だけに、例え動力が言うことを聞かなくても、問題なく降りることができました。
 ともかく、レーダーを手に入れたお陰で、FlightGearの楽しみが、また大きく拡がりました。今後、さまざまな活用方法を思いつきそうです(^^)/。
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なし 空の巨船と零戦に導かれ…ハワイから硫黄島へ

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 私の西回り世界一周も、ようやく松山空港へのゴールが近づいてきました。今回はハワイを出発し、はるか西方の孤島・ウェーク島に進出。さらに小笠原の硫黄島まで、推測航法にレーダーを併用して、ひたすら太平洋を飛び続けます。まず、コースをご覧に入れましょう。

◎オアフ島・ディリンガム飛行場(PHDH)21.34.45N-158.11.46W
    ▼135度21nm
◎ホノルル国際空港(PHNL) 21.19.31N-157.55.30W ★VORTAC114.80
    ▼266.5度1004.8nm
△レーダー標的と会合(コースの中点=20.18.16N-175.42.10Wか、その近く)
    ▼266.5度1004.8nm
◎ウェーク島空港(PWAK)19.16.56N-166.38.16E ★VOR113.50
(南北3nm、東西4nm。その外に環礁。滑走路標高20ft、南にエプロン)
偏東5.69度、俯角25.97度。
    ▼283.2度1445.4nm
◎硫黄島空港(RJAW)24.47.03N-141.19.24E ☆NDB360
(南北4nm、東西4nm)偏西2.87度、俯角32.97度

 太平洋は、やはりムチャクチャに広い海です。この世界一周で過去に体験した、ノンストップの飛行距離は、コンコルドによる大西洋横断(1612nm)が最長記録でした。プロペラ小型機では、ブロンコ改のヒマラヤ・チベット高原横断(1081nm)がベストだと思います。しかし先日ご紹介しました、カリフォルニア=ホノルル飛行(2220nm)はこれらを軽く超え、今回ご紹介するフライトも、1区間が1500〜2000nmに及びます。
 こうした長丁場をピラタスPC7改で飛ぶのは、倍速モードを活用しても半日仕事で、航法があまり複雑ではクタクタになりますし、逆にヒマすぎても苦痛で、旅を続けるモチベーションが低下します。いかに難易度のバランスを取り、より正確な航法を行うか、なかなか悩ましいところですね。

●いま一度、「磁気俯角・偏差航法」について考える:
 当初は新開発の「磁気俯角・偏差航法」を、さらに改良して使うつもりでした。カリフォルニア=ホノルル飛行では、推測航法の補正手段として位置づけましたが、俯角と偏差をもっと積極的に活用すれば、ピンポイントで目的地を狙うことも出来そうです。
 マイアルバムにアップした日米間の地図をご覧頂きますと、ハワイ諸島周辺では、磁気偏差の分布を示す等偏差線が「ハの字」に大きく拡がって、ほとんど変化しない(航法には使えない)ことが分かります。しかしウェーク島付近ではご覧のように、等偏差線はかなり密になり、赤道に対してほぼ平行に走る等俯角線と、深い角度で交差します。つまりこの海域では、等俯角線と等偏差線を一種の交差座標軸と見なして、位置の割り出しに使える可能性があるわけですね。そこで私は、次のようなワークシートを構想しました。
◎航法A:
 (1)出発地と目的地の緯度・経度および、偏差と俯角を入力する。
    すると、目的地への針路と距離が出る。また、偏差と俯角の
    変化量1度あたりの距離も、自動的に算出する。
 (2)飛行中に任意の時点で、自機パネルに表示される偏差と俯角を
    入力すると、先の1度あたり距離を使った案分計算によって、
    現在地の緯度と経度、そして目的地への針路と距離が出る。
…これは、便利そうですよね。
 しかしこの方法では、等偏差線と等俯角線がそれぞれ、コースの全域にわたってほぼ等間隔で分布していないと、大きな誤差が出てしまいます。これを防ぐには、FlightGearが持っている偏差・俯角の分布データを、何らかの方法で分析できればいいのですが、私の手には余ります。そこで例えば、コース途中の数カ所でUFOを空中起動して、あらかじめ現地の偏差・俯角を実測し、案分計算の精度を上げる手もありますが、そこまで事前準備を必要とする航法など、およそリアルでも、実用的でもありませんよね。そこでもう一つ、はるかに簡単な方法も考えてみましょう。
◎航法B:
 (1)事前に目的地で一度だけ、偏差と俯角を実測しておく。
 (2)離陸して目的地へ向かう。針路は目分量で十分。
 (3)パネルに設けた偏差計と俯角計を監視する。
    どちらかの数値が、目的地の実測値と同じになったら、
    その数値を保つように針路を取り、もう片方の数値も
    実測値と同じになるまで飛び続ける。
…たったこれだけです。すごく単純でしょう?

●推測航法+レーダーに、方針変更する:
 この航法Bは、16世紀末〜19世紀の帆船が盛んに利用した、「まず目的地と同じ緯度に到達し、次いで東西方向に走る」という、いわゆる「距等圏航法」に、極めて近い飛び方です。私は3年ほど前に、初めてFlightGearを入手したころ、この距等圏航法を使って、UFOで地球を半周ほど飛び回りました。本連載の第3回でもご紹介しましたが、必要な道具はHUDの緯度・経度表示のみ。初期針路は世界地図をにらんで、目測すれば十分という、或る意味では究極の(?)イージー・ナビゲーションです。
 しかし、出たとこ勝負で誤差を踏み倒すような飛び方ですから、欠点も多く。予定のコースを正確にたどることは不可能なこと、かなり遠回りになること、厳密には有視界飛行とも計器飛行とも言い切れず、ちっともリアリティーがないこと、従って熱中すると飽きて、フライトシムそのものまで面白くなくなってしまうこと…などが問題です。
 磁気俯角・偏差航法は、「緯度経度に代わる、第2の座標系を発見した」という点が、ユニークな着眼だったと自画自賛しておりますけれど、現状ではその座標系を十分に使いこなせていません。また仮に使いこなしますと、飛行中にHUDで緯度・経度を直読するのと、非常によく似た状態になります。フライトシムの航法の魅力は、「仮想の機上で得た測定結果を、現実世界の計算式やデータにあてはめると、本当に正しい現在地と針路が算出できる」ことだと思いますが、この面白さから少々外れて、私があまり好んでいない、GPS的な「原理的に正解で、迷子になり得ない」世界に転がり込む恐れを感じます。
 私は、もう少しナマの身体感覚に近い「コクピットから、風を読む。目を皿のようにして、目標を発見する」という感性を大事にして、はらはらドキドキと航法を楽しみたいのです。そこで今回から思い切って磁気俯角・偏差航法を離れ、前回お話しした、マウイ島往復の飛行テストで試した、誤差をていねいに修正する推測航法と、レーダーを併用することにしました。

●レーダーのターゲットに、どんな機体を使うか:
 今回の飛行距離は長いので、レーダーのターゲット(となる、何らかの航空機)を、目的地だけでなく、コースの中点付近にも置いて、空中で会合を楽しむことにします。太平洋の真ん中にセスナが旋回している…のでは、いかにも不自然ですし、かといって旅客機を高速で直進させても位置決めに不便ですので、今回は飛行船をホバリングさせることにしました。(では、なぜそんなとこに飛行船がいるか、ですって? さあ…海洋観測でしょうか)(^^;)
 さっそく、当サイトの「機体データのサイト集」にご紹介のある
          http://www.gidenstam.org/FlightGear/JSBSim-LTA/
へ行きまして、空気より軽い機体を片っ端からダウンロード。まず現代版・ハイテク飛行船の「ZLT-NT」を使ってみましたが、私の環境では残念ながら、AI機としては起動できませんでした。試行錯誤の末、試しにディリンガム飛行場の上空に、元祖ツェッペリン硬式飛行船のうち、最後に建造されて史上最大のサイズとなった「LZ 129」ヒンデンブルグ号を出現させ、レーダーに映ることを確認しました。

 ついでながら、同時にダウンロードした成層圏気球「Excelsior」を、ディリンガムでちょっとだけ、飛ばしてみました。なかなか、面白かったですよ。実機は1960年に高度10万フィートを超え、ここから乗員がパラシュート降下に成功。降下開始高度や、「乗り物を使わない最大大気中速度」などの世界記録を作ったそうです。
 FlightGearの機体は、起動すると開放型ゴンドラに、高度計と昇降計、時計、無線パネルがあり、操作はもちろんバラスト投下とガス放出のみ。外観を見ると、地上ではまだエンベロープ(ガス袋)が縮んで、ナスビ型をしておりまして、高々度に昇るとガスが膨張し、初めて球状に膨らむようです。リアルですね。
 飛行機と違って、自力では前進せずに高度だけ上がり、雲を間近からじっくり見る感覚は新鮮で、微風に乗って15分ほどの間に1〜2nm移動しました。浮力調整は相当難しく、最後はかなり乱暴に、ディリンガム飛行場の裏山に降り(落ち?)ました。バラストやガスはそれなりの微調整が可能で、地上では浮力と重量のバランスを測定する機能もあるため、熟練すれば、非常にデリケートな操縦も出来そうです。風を自在に読んでクロスカントリー飛行ができたら、さぞ楽しいでしょうね。もちろんヨットと同様、無風ではどこにも行きませんので、短気な人には、絶対に向かない航空機ではありますが…(^^;)。

●遙かなるウェーク島へ:
 様々な実験を楽しんだ、ハワイのディリンガム飛行場を出発します。駐機場に並べた、多くの飛行機に別れを惜しみ、ホノルル国際空港へ移動。このショートフライト中、はるか東方の高度13000ftにレーダー反応があり、前回の飛行で設定した、マウナケア山頂を旋回するセスナだと分かって懐かしく、見送られているような気分になりました。これらの機体を記述したシナリオは、以後フライトの負荷を軽くするため、この時点をもってお蔵入り。またハワイに来たら、ぜひ使いたいものです…。
 ホノルル国際空港では、いったんドラゴンフライを起動。ろくに見る暇がなかった、ワイキキビーチとダイヤモンドヘッド、アラモアナ・ショッピングセンター周辺を、慌ただしく見物してきました。空港に戻るとピラタスPC7改に増槽を取り付け、夜明けを選んで起動し、出発準備に掛かります。
 NOAAのサイトを確認しますと、あまり天気が良くありません。特に500mb等圧高度(標準大気で約18000ft相当)の実況天気図は、向かい風がばんばん吹いています。24時間予報図では、どうも前線が通過する気配。高々度飛行に支障はないでしょうが、途中で大きく風が変わって、慌ただしい航法になるかも。しかしホノルルとウェークの、シミュレーター内の天候を確認すると、わずかながら追い風成分が勝っています。よーし、行こう!!
 燃料満タン、やや後ろに傾いて沈み込んだ機体を始動し、1712時(現地0712時)に離陸。愛機はさすがに重く、上昇率は1200ft/分がやっとです。がんばって高度30000ftへ。

●「東経」の世界へ帰還し、空の巨船と遭遇:
 左後方に太陽が昇る中、ひたすら偏流の修正を続け、速度や燃費を確認しながら巡航。長い道中が、少々しんどくなってきた1948時ごろ、レーダースクリーンの真正面、同高度に感度がありました。コース中点を基点に、50Ktでウェーク島に向かう、航法ターゲットのヒンデンブルグ号です。
 当方は針路を維持したまま進み、2022時に飛行船の左アビームを追い越しました。レーダー測定では、PC7改との横間隔は5.6nmです。飛行船の速度と時刻から、ここまでの総飛行距離を1220nmと確定し、推測航法の左右誤差を計算したところ0.4%で、我ながらすごい精度だと思いました。飛行中に0.2度単位で、綿密な針路修正を重ねた成果が出たようです。実機の航法の許容誤差は、古い「航空宇宙工学便覧」によりますと、クロストラック(左右方向)で2%。大戦中の日本海軍機の推測航法では5%だったと思います。実機では精密な偏流測定や保針が、パソコン上に比べて格段に難しいためで、私が本職よりうまいわけではありません。

 ともかく今回は、レーダーによるAI機探知が、位置確認手段として非常に有効であり、また面白いことが分かりました。驚いたのは、飛行船との会合の難しさです。ぜひ近くで見たかったのですが、いったん旋回中に見失うと、機外視野でワイドに引いても見つからず、とうとう間近には行けませんでした。あんなに大きなものが、しかもレーダーにも映っているのに、なぜ見えなくなるのか。私の探し方がよほど間抜けなのか(大いにありそうですが)、或いは何かシステム上の理由で消えたのかと、しばし考え込んでしまいました。
 諦めて先を急ぎ、天気予報通りに風向・風速の変化をかいくぐって飛び続けたところ、2117時ごろAtlas画面に、実際の航跡に加えて、画面を左右に横切る、架空の航跡が現れました。西経から東経に移行したため、地球を半周するノイズが発生したのでしょう。ついに、東半球に帰ってきました。
 2256時、再びレーダーに感度がありました。ウェーク島のエプロンに駐めた、ターゲット用セスナのエコーです。測定によると、この時点の航法誤差は1.4%に拡がりましたが、これは長距離飛行の際、後半戦に入ると疲れてきて、つい(針路が少々ずれるのに)ウイングレベラーに切り替えて、倍速モードを使いまくる癖のためです。やがてVORも入感し、針路保持をCDIロックに切り替えて空港へ。高度を下げ、風を知ろうとATIS周波数を探しましたが、ここには無線が全然ないことが分かりました。吹き流しを確認すると、ちょいと嫌な横風です。幸い最終進入を行う時点では、向かい風に振ってくれました。2328時に着陸。

 ウェーク島は、珊瑚礁の上に空港が乗っかっているだけの、それこそなーんにもない小島です。19世紀は海底電線の、20世紀には飛行機の中継地として注目され、大戦中は日本が占領しました。戦後もしばらく、太平洋を横断する軍民の航空機の給油地でしたが、長距離ジェット機の普及に加え、ベトナム戦争や冷戦が終結したため、基地としては衰退しました。もっと北にあるミッドウェー島も事情は似ており、戦後長らく重要な米軍基地の一つで、なかなか民間機には着陸許可が下りなかったようですが、10年ほど前に米軍が撤退し、今はウェーク島よりも人口が少ないと聞くと、いささか驚きです。
 洋上では、ヒンデンブルグ号をじっくり眺められなかったのが残念で、着陸後に改めて空港上空に出現・旋回させて、至近距離を飛んで見物しました。私が実世界で飛ぶのを見たのは、グッドイヤー社の軟式飛行船だけですが、ヒンデンブルグ号は同じ飛行船と言っても、まったく別の印象を受けました。非現実的なほど巨大で、威風堂々としてしており、どんな角度から見ても、不思議な感動を覚えました。大阪の海遊館で、初めてジンベエザメを見たときの印象と似ています。さすがに現代に通用する乗り物だとは思いませんが、ある種のロストワールドからやってきた生き物みたいな「恐竜的なオーラ」を感じます。

●ついに日本領へ…零戦の出迎えを受ける:
 日を改めて、小笠原の硫黄島に向け、夜明けのウェーク島を出発します。
高度6000ftは110度20.5Ktの風。結構なことに追い風です。この航程は1445nmしかない(とはいえ、遠い!)ので、増槽を一応付けているものの、燃料は機内タンクだけに入れました。これまでの実績では、この距離で航法が大きく外れる不安はありませんので、今回は中間地点のレーダー・ターゲットAI機は省略です。
 1926時(現地0726時)に始動。正面の空がオレンジに染まる中を離陸し、反転して硫黄島へ機首を向けました。さすがに機体が軽く、パワーが余っている感じで、快調に上昇します。前日と同様の航法で、ひたすら針路修正と、記録メモの打ち込みを進めながら航行。2117時には、南鳥島のNDBを受信しました。太平洋戦争の古戦場・サイパンも遠くはありません。
 風向が時々変化する中、さらに航法を続けて飛ぶうちに、HSIに組み込んだ偏差計の表示が、偏東から偏西に切り替わって、ますます日本が近く感じられました。
 2257時、硫黄島の周波数に合わせたADFが、いつの間にか正面を指しています。その4分後、レーダーに待望のエコーを発見。160nm先を旋回する、誘導役のターゲット機です。機影は正面から左1度くらい逸れていますが、ちょうど左に機首を向けているためで、おおむね予定通りの位置に出現したと言えます。約30分掛けて接近し、同高度を取って、目を皿のようにして捜索しますと、かすかな黒点が移動するのが見え、旋回方向の頭を抑えるように操舵。私は減速してフラップを1段降ろし、ゆっくり左後方から誘導機に接近しました。

 機種は零戦です。ちゃんとプロペラも回してあります(笑)。硫黄島上空で出迎えてもらうなら、やはりこの飛行機しかありません。
 私は編隊飛行が極端に苦手ですが、ディリンガム飛行場で重ねた練習が実って、何とか一緒に緩旋回を続け、あれこれツーショットを撮影しました。少しでも気を抜くと、零戦はスルリと身をかわして、浮いたり沈んだり、はるか遠くへ離れたり。もちろん私が、フラフラしているだけなんですが(笑)、まるでAI機にもパイロットがいて、機体のわずかな挙動で、あいさつを送っているような気分がして、擬似的な「親近感」さえ覚えたほどです。そんな錯覚が起こりうるほど、フライトシムの大空は孤独だ、と言うことでしょうか…(^^;)。いずれにせよ、仮想の空にも「他機」が存在するのは、とても楽しいものですね。
 2345時着陸。勾配の大きな滑走路で、東から着地すると、かなりの登りでした。滑走路は1本しかなく、島の全長の約4分の1を占めています。大戦中は島内に3カ所も飛行場があったのですから、当時と比べると現代の滑走路が、いかに大規模になったか分かります。

 次回は小笠原諸島伝いに、取りあえず羽田を目指すことになりそうです。
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なし 帰還…富士山と松山に再会

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-2-1 12:59
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 今回は硫黄島から羽田を経由して、松山空港へ向かいます。長らく続いた私の西回り世界一周「プロジェクト・ハイフライト」は、やっとゴールを迎えます。

 北米大陸や太平洋で、もう少し遊んでみたい気もしましたが、新たに挑戦したい探検フライトや、勉強してみたいテーマがあり。加えて、実世界で昨秋に関西へ引っ越しましたので、フライトシムの母港も、松山空港から京阪神のどこかへ移したいと思い、いったん帰ることにしました。さらに…FlightGearの新バージョン公開も秒読みのようで、リリース後はあれこれ新機能を試したいし、また過去の例ですと、現行の機体が使えなくなる、などのケースも考えられなくはありませんので、「ともかく一度、ゴールしてしまおう!」と、最後はいささか馬力を掛けた次第です。

●賑わいを増したTOKYOへ:
 羽田へのコースは、こんな具合。使用機はゴールまでピラタスPC7改です。

◎硫黄島空港(RJAW)24.47.03N-141.19.24E ☆NDB360
    ▼351度506nm
★八丈島(RJTH)VOR116.65 ☆NDB340 33.06.51N-139.47.18E
    ▼331度120nm
★三宅島VOR109.0
    ▼26度53nm
★館山VOR112.50
    ▼1度37nm
★木更津VOR114.50
    ▼327度(Mag333度)11nm
◎羽田空港(RJTT)VOR112.20

 硫黄島から八丈島までは、このフライト最後の長距離洋上区間です。かなりの向かい風の中を、ハワイ以後の航程で改良と練習を重ねた、休みなく針路補正を行う方式の推測航法で、ドンドコ距離を稼ぎます。
 離陸後50分足らずで、八丈のVORとNDBを受信。ここまで来れば、あとは無線標識を、飛び石伝いに消化していくだけです。やがて視界に入った八丈島は、ヒョウタンを縦に割って寝かしたような地形で、空港は確か島の中央部、二つの山の間にあったはずです。この島は以前、何種類ものフライトシムで飛来していますので、記憶に頼って西海岸から回り込み、空港を見つけて無事に降りました。低い南の山腹から裾野に掛けて、小さな市街地のテクスチャーが拡がっており、いかにも穏やかな離島の風景です。
 一休みして離陸。
 順調にVORをたどり、房総半島へ。館山、木更津から羽田空港の34Rへダイレクト進入する、オーソドックスなアプローチです。羽田は実に久しぶりで、ターミナルの整備が進んでいてびっくり。到着後に改めて離陸し、都内を見物しましたが、レインボーブリッジや、ますます充実した新宿方面のビル群などに、大いに感激しました。

●霧の四国へ:
 日を改めて、羽田を出発します。
冠雪した富士山が見たいので、久しぶりに冬景色を使用。にわかに大雪となった羽田上空は、4000ftに雲量few、6000ftに30度の風8.8Ktと、まずまずの飛行日和です。
◎羽田空港(RJTT)VOR112.20
    ▼磁気265度53nm
△富士山
    ▼磁気240度63nm
★浜松空港VOR110
    ▼磁気266度76nm
★信太VOR111.8
    ▼磁気263度73nm
★香川VOR
    ▼磁気257度69nm
◎松山空港(RJOM)33.49.38N-132.41.59E ★VOR116.3 ILS109.3
RWY-14/32
 …以上のような予定を立てましたが、国内は区分航空図がそろっているので、少々フレキシブルに飛ぶつもりです。
 燃料搭載は、満タン4割弱の1500Lbsにとどめ、羽田を0250時(現地1150時)に離陸。もう一度都内を散歩してから、富士山へ針路を取りました。やがて厚木基地を確認し、コンパスをにらむのを中断しまして、東名高速に沿って西へ進みます。厚木小田原道路と246号線が絡んで、ちょっと迷いましたが、そのまま御殿場方面へ。途中から北寄りに変針し、離陸後18分で富士山頂付近に到着。火口の上でビクトリー・ロールを打って“日本"を実感しました。
 以後、高度11000ftで関西へ。冬景色を選択しますと、川も池も内水面は全て凍ってしまうので、浜名湖も当然、氷のテクスチャーに覆われておりました。FlightGearの日本は、とっくに寒冷期に移行したみたいですね(^^;)。

 淡路島から、ちょっと予定より南を飛び、鳴門で四国へ渡ります。瀬戸内側に北上して、愛媛県の四国中央市あたりまで来たら、にわかにモヤが深くなってきました。松山自動車道に沿って進み続けると、西条市から松山市へ高縄半島を横断する峠越え(あそこは「桜三里」と言うのですが)のあたりで、ますます視界が悪くなりました。モヤというよりは霧で、実世界でもこの辺は、冬になるとしばしば霧が出ますけれど、以前はリアルウエザーの設定もまだベストではなく、FlightGearで体験するのは初めてです。
 幸いVOR/DMEと航空図が使え、土地鑑もありますので、DMEで平野部に出たことを確認後、雲の下を這って視野を開こうと1500ftまで降下。なお霧の立ちこめる、東温市から松山市南部の平野を、快調に空港へ向かいます。この時はなぜかATIS音声のSN比が悪く、よく聴き取れませんでしたが、視程が2nmで、RWY32を使うことは分かりました。もっとも、これだけ聞こえれば十分です…この霧ではどっちみち、風は弱いでしょう。滑走路の方位を思い浮かべながら針路修正して、ファイナルアプローチの開始点に着きました。

 出来ることなら、松山市街地をあちこち旋回して、大旅行達成の感慨に浸りたかったのですが…難しい条件のもと、うまく滑走路に正対できた以上は、さっさと降りてしまうのが無難でしょう。すでに数マイル手前から、減速に掛かっていましたので、フラップと脚を出し、80Kt弱まで落として、非常にふんわりと滑走路面を捉えました。
 …え、もう着いたの? こんなにあっさり終わったの? という気分で、滑走路の中央通路から誘導路へ。0419時、出発時に以前の愛機・ブロンコ改がいたあたりに、ピラタスPC7改「エーデルワイス号」を駐め、エンジンを停止。燃料残は530Lbs。記念撮影をしていたら、空がやや晴れてきました。ともかく、やっと終わりました。ごく簡略ながら、主なデータをご紹介します。
・実施期間:2007年8月から、約2年5カ月間。
・着陸地点:65カ所
・飛行距離:3万8408nm(7万1131辧
・飛行時間:記録が不備ですが、ロンドンまでは推定約45時間
      でしたので、通算150時間前後でしょうか。
・使用機体:計14機。まだあるかも…。
     (OV-10ブロンコ改、ピラタスPC7改、コンコルド、トランプSV4複葉機、
      YS-11、カタリナ飛行艇、ホンダジェット、ブレリオXI号機、T38改、
      GeeBeeレーサー、パイパーカブJ3、ロッキード・ヴェガ、ロッキード
      ・コンステレーション、ドラゴンフライ)
 またライト・フライヤー1からセントルイス号、MRJまで23機種に試乗しました。

●西回り世界一周を終えて:
 地球は非常に、でっかい!!! ということ、また非常に多様であることを、改めて骨身にしみて痛感しました。よく耳にする「世界は狭くなった」などという言葉は、私の場合、全く当てはまりませんでした。
 もとより、フライトシミュレーターで世界一周をされた方は、無数におられることと思います。私の場合は通算4回の挑戦をしたものの、MSFS時代に試みた2回は、航程の7割方を終えた時点で、長らく頼ったGPS自動操縦に飽きるなどの理由で、モチベーションが尽きて挫折しています。また以前ご報告しましたFlightGearの、南北両極を含む「縦周り世界一周」は、松山市スタートから南極通過までは、概ねUFOモードを使っており、ちゃんと空力的に飛行機を操縦したのは、ニュージーランド以降でしたので、今回が初の「完全な」世界一周となりました。ささやかな挑戦ですが、やっと達成できて嬉しく思っています。
 最後までエネルギーが切れず、非常に楽しく旅が続けられた理由としましては、絶えず航法を研究・改良したことや、歴史的なフライトの再現などを多数織り込んだことが挙げられますが、何より大きい励みは、やはり皆さんに、この連載をお読み頂いたことでした。私の夢は、「小さな自家用機で、世界を旅して回り、航空に関するエッセイを書いて暮す」ことですが、思えばFlightGearのバーチャル世界では、お陰様で既にこの夢を、数年にわたって実現中で、心から感謝しております。

●FlightGearには、なぜ磁気俯角が存在するのか?:
 末筆ながら、今回の一連のフライトの関連で、表記のような疑問を持ちましたので、遅ればせながらご報告しておきます。
 磁気俯角とは、緯度が上がるにつれて、コンパス・カード(磁気コンパスの回転方位盤)に張り付けられた磁針が、地中の南北磁極に引っ張られ、下へ向く角度のことです。磁気「偏差」の方でしたら、機上のあらゆる方位表示装置に反映しますので、まともなシミュレーターには必ず再現されています。しかし俯角は通常、航法には直接の関わりを持っていませんので、なぜFlightGearにわざわざ備えられているのか謎でした。

 あれこれ考えて、一つだけ思いついたのは、これは磁気コンパスの「北旋誤差」を再現するためのデータではないか、ということです。北旋誤差とは、(図解なしにご説明するのは多少厄介ですが)以下のような現象です。
 飛行中の磁気コンパスの磁針は、3次元空間の中で磁北極や磁南極を向きますが、この力は水平分力と垂直分力の二つに分かれます。磁気コンパスは水平分力だけを使って、カード(回転式の方位目盛盤)を回すように設計されていますが、機体が旋回のためバンクすると、傾きに応じて垂直分力もまた、コンパスカードを回転させようとします。すなわち、磁北に向かって飛んでいる機体が、東西方向に旋回する場合は、コンパスの指針は、磁北極に引っぱられて、実際の方位変化よりも遅れて動きます。逆に東西から北へ旋回する場合は、実際の方位よりも早く北を向きます。
 ではFlightGearは、このような現象を起こすのでしょうか。ハワイのディリンガム飛行場(俯角38.25度)で実験しました。磁気方位0度から、オートパイロットで磁気方位110度を狙って、東へ旋回します。飛行速度は250KIASです。

実際の磁気方位 磁気コンパス示度 表示の遅れ
15度        5度      10度
30度        17度      13度
45度        33度      12度
60度        50度      10度
75度        70度      05度
90度        91度  マイナス01度
 …確かに遅れますが、北へ引っ張られると言うよりは、まるでダンパーが利いたような動きです。引き続き東から北へ、機首を戻してみました。

75度        82度      07度
60度        70度      10度
45度        58度      13度
30度        47度      17度
15度        33度      18度
00度        20度      20度
 …これも不思議で、北へ振るときの方が誤差が大くなっています。緯度を変えて、ニューヨークのJFK空港(俯角67.16度)でも同様に実験しました。

磁気方位 コンパス方位 遅れ
15度   340度    35度
30度   342度    48度
45度   349度    56度
60度    02度    58度
75度    18度    47度
90度    67度    23度

次に、やはり北へ戻します。
磁気方位 コンパス方位 遅れ
75度   85度    10度
60度   77度    17度
45度   69度    24度
30度   61度    31度
15度   52度    37度
00度   43度    43度

 …緯度の高いニューヨークの方が、カードの遅れは大きいので、やはり何らかの形で、磁気俯角をコンパス表示に利用しているようです。これはすごいことだと思います。ただし、北へ戻る際には実方位より示度が進むはずなのに、逆に遅れていますので、これは北旋誤差とは呼べません。俯角の影響をプログラミングする際に、ベクトルの符号を間違えたとか何か、バグが潜んでいる可能性があります。しかし Aircraft/Instruments-3d/mag-compass.xml では、コンパスの癖まで定義しておらず、FlightGearの内部で行っているようですので、私には分かりませんでした。

 いずれにせよ、ここまでリアルにコンパス表示を再現しよう、という姿勢には脱帽します。私も今度の世界一周中、アンデスを横断する際、このタイプの磁気コンパスが乱気流で踊り狂い、苦し紛れに前方の星々を定針儀として利用したことがあります。フライトシミュレーターは、もともとが操縦訓練装置なのですから、本来はこうした工夫をとっさに誘うような、示度のリアリティーが必要なのだと思います。
 …ではまた近く、次の旅や実験フライトでお目に掛かります!
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なし Re: 帰還…富士山と松山に再会

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-2-1 23:32 | 最終変更
toshi  長老   投稿数: 1143
hideさん、お帰りなさい!
無事の帰国、なによりです。

FlightGearでの世界一周は、実際に試した人はごく僅かなのではないでしょうか。
地球の大きさを実感できるというのは、フライトシミュでの世界一周ならではですよね。

航法に関するこれまでの創意工夫もお見事でした。
Anders Gidenstam の Bubble sextant (気泡六分儀) も現バージョンでは原理的には使えるはずですので、次回天文航法をする際には是非トライして頂けますと幸いです。
# 機体に組み込む際にトラぶった場合は、出来る限りお手伝いします。

マルチプレイヤー用サーバに接続して世界一周、というのも面白いかもしれませんね。
マルチプレイヤー環境で長時間フライトをするのは安定性に若干の不安はありますけど、飛行ログが残りますし、他のMP機が世界一周中のhideさんの応援に駆けつけるなんてこともあるかもしれません。
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なし Re: 帰還…富士山と松山に再会

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-2-2 8:32
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
toshiさん、どうもありがとうございます!!

 その節は気泡六分儀などについて、貴重なご教示をいただき、非常に助かりました。天文航法はロマンあふれる宿題として、いずれは成功させたいと思っています。
 太陽の天測は、toshiさんにお知恵を頂いたカーソルの微動テクニックで、取りあえず可能となり、測位計算ワークシートの開発も進んで、FlightGearの起動直後でしたら1マイルを割るような誤差で、現在地が出るところまで来ました。
 しかし起動後1時間くらい経ちますと、現状では、誤差が大きくふくれ上がってしまいます。この問題の突破口が見つかりましたら、気泡六分儀を使って、非常にリアルな観測環境を手に入れ、更に大きく前進できるのですが…またぜひご相談させてください。

>マルチプレイヤー用サーバに接続して世界一周、というのも面白いかもしれませんね。
 …これは、なるほど、面白い着眼点ですね(^^)。私はまだ、マルチプレイヤー環境に手を伸ばせずにいますが、いずれ勉強しなくては。複数のプレーヤーが役割分担して、地球規模で技術的な実験をするとか、まだまだ無限の可能性があるでしょうね。
 以下は幻想ですが…フライトシミュレーターが仮に将来、地理や地球物理、気象学などあらゆる面で一段とリアルな「地球シミュレーター」として発展しますと、最終的にはサーバーに膨大なリソースを置いておき、ユーザーはオンラインで利用するのが標準形態になる、という予感がします。極論すれば仮想の世界各地から、現実の教育・文化・歴史などの専門サイトへ飛ぶ、一種のポータルサイト機能が併設されてもいい、とさえ思います。仮にこうなると、いわば現実の地球と同様に、無数の人に常時共有される可能性があり、AI機を使って賑やかにする必要性は、減ってくるかも知れません。(願わくば、戦争や紛争までシームレスに持ち込まれ、誤射されることがありませんように!)

●訂正●
 前回、2月1日付「帰還…富士山と松山に再会」の記事中、「FlightGearには、なぜ磁気俯角が存在するのか?」との書き込みの中で、「磁気俯角とは、緯度が上がるにつれて、コンパス・カード(磁気コンパスの回転方位盤)に張り付けられた磁針が、地中の南北磁極に引っ張られ、下へ向く角度のことです」と書きましたが、これは明確に誤りでした。航空用コンパスの磁針とカードは、基本的に左右に動くように作られ、機体に対して「下」を向くことはないと思います。また仮に下を向いたとしても、それは磁気俯角そのものではありません。
 ここは「磁気俯角とは、南北両磁極を結ぶ磁力線が、両極に近づくほど下を向く角度のことです」とすべきでした。磁気俯角は、あくまでも機体が左右へバンクした場合に、コンパスの回転方向に影響を与えて、表示の誤差を生むのです。慌てて書いたら間違いました。おわびのうえ、訂正いたします。
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なし hide式大阪空港に「巣箱」を設置

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-2-14 6:32 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 お陰様で世界一周も一段落。懐かしい日本の空の下、私は昨秋の関西への引っ越しを、やっと仮想空間上でも追いかける運びとなり、松山空港から京阪神方面へ、フライトの根拠地を移しました。

 関西には伊丹(大阪国際空港=RJOO)、関空(RJBB)、神戸(RJBE)それに八尾(RJOY)の4空港がひしめいておりますが、さてどこを新しい「母港」にするか。ワクワク気分で発着を重ねて、最終的に伊丹を選択しました。
 伊丹では、大昔からぜひやってみたかった、ターミナルビルや格納庫など地上施設の3Dオブジェクト配置を、初めて試みました。まだブツを自作できませんので、今回は全部借り物ですけれど、まるで鉄道模型のレイアウトでも作っているようで、なるほど…フライトシムにはこんな楽しみもあったんだな、と嬉しくなりました。

●瀬戸内をVFRで関西へ:
 まず松山から関西へ、ピラタスPC7改でクロスカントリー飛行をします。VORを追う計器飛行ではなく、ここはランドマークを見下ろしながら、ゆったり有視界の地文航法で行くことにしましょう。
 次に瀬戸内海の、南北どちら側を飛ぶか。出来れば「しまなみ海道」の7橋沿いに、広島方面へ抜けかったのですが、FlightGearに本四架橋がないのは残念です。実世界で走り慣れた松山自動車道を目印に、四国の北岸を東進して、そのまま4空港を巡ることにします。コースは以下の通りです。

(以下磁気方位)
◎松山空港(RJOM)33.49.38N-132.41.59E ★VOR116.3 ILS109.3
    ▼77度69nm
★香川VOR108.4
    ▼42度22nm(30度10nmに屋島)
★小豆VOR114.4(=ショウド島。アズキではない)
    ▼87度36nm
△MAYKO(神戸空港ILS入り口付近)
    ▼92度11nm
◎神戸空港(RJBE)VOR111.25 ATIS128.075 TWR118.5
    ▼185度12nm
◎関西国際空港(RJBB)VOR111.8 RWY058-238 ATIS127.85
    ▼76度11nm
★信太VOR112.3
    ▼56度10nm
◎八尾空港(RJOY)VOR114.6 TWR124.35 RWY9/27 13/31
    ▼345度5nm
☆大阪NDB 340
    ▼322度8nm(ILS110.10)
◎大阪国際空港(RJOO)VOR113.9 ATIS128.
計184nm

●六甲の沖に浮かぶ、神戸空港へ:
 松山空港は330度16Ktの風、3000ftに雲量fewの天気。PC7改では強風に当たりますが、ほぼ真正面の向かい風ですので、離陸には全く支障ありません。UTCの0313時(日本時間1213時)に離陸して、松山市内のそこかしこに別れを惜しんだ後、松山自動車道の川内インター付近へ。高速を目印に低空を行くと、右に四国山脈、左に瀬戸内海を眺めながら、楽しい旅になりました。新居浜から西条市に掛けては、あまり高くない四国山脈が、結構りりしく見える一帯なのですが、これも実景通りのムードです。
 香川VORを通過すると、まもなく源平合戦で有名な、屋島が目に飛び込んできます。てっぺんが平らな、妙に人工的な感じのする独特な山ですが、地質学的にはメサ(テーブルマウンテン)の一種だそうです。現在は海岸にありますが、太古には名前の通り、島だったようですね。四国よしばし、さようなら…。

 初めて小豆島の上を飛び、やがて淡路島を見ながら、神戸空港のVORを受信。ほぼ滑走路に正対しているのを確認し、ILSを受信してファイナルに入ります。ローカライザには、まれにバグがあって、反対方向を指したりしますので、母港選びの際は要チェックです。ここしばらくILS進入をしていませんので、この空港巡りは格好の再訓練になりました。
 CDIコース保持で進入しながら、ふと久しぶりに、完全自動着陸をやってみようと思いました。昨年の初夏に、オハイオ州で実験して以来です。北寄りの季節風を受けて、機首が左に約5度ソッポを向いており、そのまま車輪を着けては危険そうですが、なにごとも実験と思いまして、ついATISで風速も確かめずに決行。後から調べると12Ktの横風だったのですが、なぜか接地寸前に、機首が大きく下がる…という、非常にまずい展開になりまして、PC7改はノーズギアからドンと降り、大バウンドとグラウンドループを伴ってエプロンへ暴れ込んで、肝を冷やしました。
 私のフルオート・ランディングは、他機から移植した地面効果だけに頼ってフレアを行っており、姿勢制御に関するフィードバックは特にありません。クラッシュせず停止したものの、やはり実験室的な、ごく静穏な環境でないと危ないですね。

 さて神戸空港ですが。実世界では、近未来的な人工島・ポートアイランドと橋で結ばれ、その向こうは神戸の中心街・三ノ宮という、リッチなロケーション。FlightGearでも、間近に六甲山と市街が拡がって、なかなか素敵な眺めです。その一方、海上に道路として描かれた連絡橋が、途中で切れているのは残念です。
 Google Earthで調べますと、FlightGearのマップでは、ポートアイランドが実際より極端に小さく描かれています。しかし橋の長さだけは現実通りとしたため、寸法が足りなくなったのでしょう。このマップはどうも、海岸線の調査が少し甘い気がします。松山空港も広大な埋め立て地が無視された結果、エプロンやターミナルの敷地が全然なくて不自然ですが、神戸もやや事情が似ており、惜しまれます。国内ユーザーが手分けして、全空港の平面形と近傍の海岸線を、点検・修正できるといいのですけれど。むろん地形というものは、観察の解像力を上げると、盛り込むべき情報量が無限に増えますので、修正の適用範囲と精度を、厳密に決めておく必要がありますが…。

●関空から八尾、伊丹へ:
 大阪湾を南下して、関空を訪ねます。改めて眺めますと、なるほど広大な、立派な空港ですね。さっそく南からILS進入しましたが、最初はローカライザの保持に失敗。ふと思いついて南北の周波数を入れ替えると、今度はうまく行きました。バグのようですが、或いは私の勘違いかも。周波数を除けば、ILSの作動は2方向とも正常です。北側からの進入時は、PAPIが白いまま変化しないようでしたが、パスが高すぎたのかも知れません。
 FlightGearでは第二期工事の進展が遅く、成田と並ぶ日本最長のB滑走路(4000m)はまだ供用されていませんが、現行のA滑走路でも長さは3500mあって、ILSを両端に装備しており、素晴らしい着陸環境です。これなら着速の速いコンコルドでも、不安なく運用できるでしょう。私には少々広すぎて、降りると身の置き場がない雰囲気ではありますが、各種のテストには時々飛来したいと思いました。FlightGearにシェーダー効果が加わりますと、海の表情が豊かになって、海上空港は今後さらに魅力を増しそうです。

 一服後、信太VORを経て八尾空港へ。関西のジェネラル・エビエーションの拠点で、東京なら調布飛行場に当たるでしょうか。滑走路は調布より長く、しかも交差して2本あります。自家用機の発着空港としては、相当恵まれた環境ではないかと思いました。この空港で実機の訓練を想定して、セスナで厳密に基礎練習を重ねたら、それなりに充実したフライトになりそうです。なおILSはなく、PAPIも片方の滑走路にしかありませんが、通常の進入では特に不便を感じません。
 滑走路は大空港よりずっと短いものの、小型プロペラ機にはジャストフィットで、むしろ操縦に気合いが入ります。周辺は市街地で、相当ゴチャゴチャして見えますが、JR大和路線や数本の国道などが走っており、慣れれば進入の目印として便利かも。実景の写真を見ますと、本格的なターミナルはなく、管制塔付き空港事務所みたいな小型ビルと、中小の格納庫がぎっしり並んでいて、エアラインの空港とは一味違います。これらをリアルに作り込むのも、きっと楽しいでしょう。小さい空港なりの面白さを、色々な意味で感じました。
 …最後の候補地、伊丹の大阪国際空港に向かいます。

 伊丹のATISを受信すると、RWY-32を指定されました。長短2本の平行滑走路があり、左右どちらを選んでもいいので、長くてILSのある32L(3000m)に着陸。追い風気味の横風でしたが、微風のため問題はありません。滑走路の中央付近でいったん停止したところ、エプロンがまだ非常に遠く、タキシングの代りに再離陸したくなるほどで、以後はターミナルに近い32R(1800m)を使うことにしました。それでもピラタスPC7改ですと、滑走路の中間点付近にタッチダウンしてもいいくらいです。
 この空港にはILSが1方向しかありませんが、VORに加えて南北にコンパス・ロケーター的なNDBもあり、かなり便利です。デフォルトでは地上施設は皆無ですが、敷地の面積や形は正確。前方に六甲や箕面の山々、背後にビルがニョキニョキ並ぶ大阪市街地や、そのかなたの奈良県境・生駒山を遠望する、変化に飛んだ景色も魅力です。子供のころ大阪に一時住んで、伊丹へ飛行機を見に来たこともあり、個人的には心理的な意味でも「最寄りの空港」と言えます。私はいつの間にか「専用格納庫を、このあたりに建てよう」などと考えており。空港選びは、伊丹で決まりだと思いました。

●待望の「マイ格納庫」を設置:
 空港施設の整備に取り掛かります。「いよいよ、3Dモデリングソフトを勉強しないとダメかな?」と焦りも感じますが、取りあえずは http://scenemodels.flightgear.org/ からダウンロードした借り物で、地上への並べ方を学ぶことにしました。当初は、ハワイのディリンガム飛行場で覚えたAI駐機を応用するつもりでしたが、シナリオを書くのが煩雑な上、置いたもの全部が恐らく、レーダーに反応してしまいますので、UFOを使って直接、マップ上に設置する方法を初めて試みました。UFO起動後、配置すべきオブジェクトのパス指定法が分かりにくかったのですが、「l」(小文字エル)キーを何度も使って、1ステップずつディレクトリを変更していけば、たどり着けることが分かりました。

 現状を、マイアルバムにアップしておきます。エプロン左手に伸びる搭乗ゲートの通路は窓が透明ですので、UFOでカメラ視点を持ち込むと、搭乗客と同じ眼高で駐機場が見えて非常に楽しく、しばらく見とれてしまいました。また、奥の方の巨大ビルに使ったボーディング・ブリッジは、単体でダウンロードしましたが、蛇腹やスチールの階段など、細部が良くできていて、ひたすら感心。こうした小物を見つける楽しさは、ホビーショップで軍艦模型などの、精巧な別売り「ディテールアップ・パーツ」を眺めるのと、よく似ていますね。何を今さら…と思われるでしょうが、ひたすら地球を飛び回っていた私には、結構新鮮な発見でした。

 次に空港北西端近くに、念願の「自分の」格納庫を設けました。後で地図を調べますと、実物の大阪空港ではヘリポートのある一角で、府警と新聞3紙の格納庫が並んでおり、私が選んだ地点は、朝日新聞のお隣のようです。適当に風化して味のある、小さな建物が欲しくて、モンタナ州の市営空港のものを借りましたが、いざ置いてみると、想像よりは大きな物件でした。
 「紅の豚」のBGMを頭の中で鳴らしながら、せっせと看板を書き換え、シトロエン2CVを駐めたりしまして、結構居心地のいい「愛機の巣箱」の雰囲気に。現在はInitial Position機能を使い、常に機体が格納庫内で起動するようにしていますが、これでは他空港で起動するにも支障がありますので、可能でしたらWizardで空港を選択する際、この格納庫がParkingリストに出現するようにしたいものです。
 格納庫と言えば…これを住み家にしている、やや風変わりなヒーローを思い出します。クライブ・カッスラーの海洋冒険小説に登場する、ダーク・ピットがその人で、ワシントンの空港内に古い格納庫を借り、中二階に居住区を設けて、クラシックカーのコレクションや、数々の作品中で冒険を共にした乗り物(船外機付きの浴槽や、クラシック機)などと同居している…という、なかなか羨ましい人物です。私も「巣箱」に気に入った飛行機を並べ、いずれはミニ・ミュージアム風にしたいのですが、やたらに重くなっても困りますから、AI機をシナリオで配置し、起動メニューからその都度「展示バージョン」を選択した方がいいのかな、などと思案中です。

 空港をいじりながら、大阪を飛び回って進入テストや撮影を重ねると、この大都市にはランドマークがないことが気になりました。以前の東京みたいに、市街地テクスチャーが拡がっているだけなのは寂しく、またどこを飛んでいるやら分からず、不便でもあります。そこで手始めに、JR大阪駅の北に「梅田スカイビル」を再現しました。これは、ツインビルを平屋根で繋いで「空中庭園」にした高層ビルで、大阪のデートスポットの一つです。自作はまだ無理ですが、幸いパリのデファンス地区にある新・凱旋門が、けっこう似ていますので即、拝借。ついでに、約10棟の高層ビルの集合体も配置しました。伊丹方面から眺めますと、モヤの彼方にビルの群れが浮き上がり、けっこう梅田方面らしく見えまして、ますます楽しくなってきました。

●今後の課題など:
 …以上のような次第で、私はここ数日、一種の巣作りといいますか、空港版「マイホーム主義」を、せっせと楽しんでおります。今後の課題としましては、もう少し空港の機能面を理解して、手を加えてみたいと思っています。
(1)新設の格納庫内に、起動時に選べるパーキング地点を設けたい。
(2)任意の滑走路にILSを追加したい。
などを想定しておりまして、apt.dat.gz とnav.dat.gz を書き換えてみましたが、目下まったくダメです。

 最後になりましたが、UFOを使ったオブジェクト配置につきましては、「風景の開発」フォーラムの「Re: 主なランドマークと位置について」や、vertflyさんのサイト「仮想飛行」に丁寧なご紹介があり、非常に参考になりました。ありがとうございます。
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なし 試験衛星「一番星」

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-3-3 14:57 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 今回は、いつか航法に使えればと人工衛星を試作しまして、軌道に乗せようと実験を重ねました。
 これを実行するには、懸案だった3Dオブジェクトを作る技術が必要となり、モデリングソフトにAC3Dを選んで、初めて本格的に取り組みました。またAI機のコントロールに慣れようと、空港付近を飛ぶ離発着機のフライトプランを試作。様々な条件で衛星の飛行テストを行っていたところ、FlightGearのVer2.0が公開されて、同時並行で対応を開始し、慌ただしい2週間でした。衛星は多くの課題を抱え、静止軌道に置いたものの地球周回には至りませんが、ともかくご紹介致します。

 なおVer2.0では、残念ながらNVIDIA環境でも、画面のコントラスト表示などに若干の異常が発生しましたので、最初にこのあたりのご報告を申し上げます。

●祝Ver2.0登場:
 FlightGearのVer2.0公式リリース、おめでとうございます。
新バージョンには、多くの改良点があって素晴らしいですが、特に目立つのはShader effects関連でしょうか。最初に起動した時、一段とリアリティーを増した3D雲に、「このレベルまで来たか」と感激しました。しかしまた、処理の重さにも音を上げました。私の環境は、
 ・Core2Duo T7500 2.2Ghz
 ・GeForce 8400M G
 ・WinXP SP2
…というノートですが、Ver2.0でKSFOを選びますと、C172ではフレームレートが2〜10、ピラタスPC7改で5〜6となって、操縦困難でした。Shaderを切れば50台に跳ね上がりますが、あの素晴らしい雲を突っ切って飛べないなんて、やはり残念無念です。
 試行錯誤の末、3D雲のdencityとrangeのスライダー調整が劇的に効き、これらをデフォルトの半分に抑えると、少なくとも大阪都市圏上空では、フレームレート20台が確保できることが分かりました。Shaderには、機能チェックマークが3カ所ありますが、water reflectionのオンオフでは、20台の前半と後半程度の変化が出るものの、Crop textureとLandmass effectsは、いずれも特にオンオフによるフレームレートの変化はありませんでした。
 従来の機体の互換性が心配でしたが、果たしてピラタスPC7改のエンジンが、始動できなくなりました。起動時から、エンジンのrunningタグをtrueにして誤魔化しましたが、逆に停止できなくなったので、近く何とかしたいものです。また燃料計が動かないトラブルも発生。Internal Properties のパスが一部変更されたためのようで、すぐ改修しましたが、似たような事例は多くの機体で起きたのでしょうね。本家の機体DLコーナーは、大量の手直し作業が進みつつあるようで、ずっとダウンロード機能が止まっていましたが、私の好きな727が加わるなど、機種も増えて再開が楽しみです。

●残念ながら、白い機体がグレーに見える:
 Ver2.0では、白い機体や物体が、やたらに黒みがかって見える、という問題を発見しました。最初にKSFOの駐機群を見たときは、展示専用の新たな黒っぽい機体が出来たのかと思ったほどで、白い旅客機の多くが中・近景でも灰色に、遠景ではB52のような真っ黒に見えました。逆光ないし半逆光気味の場合に顕著ですが、順光でもしっかり起きています。よく言えばハードで男らしく、悪く言えばアンバランスで陰気な光景です。
 マイアルバムに、自作ロケットの写真をアップロードしました。Ver1.9.1bでは、ちゃんと赤と純白のカラーに見えていますが、初期の(パッチ当て無し)Ver2.0をインストールしたところ、同じロケットが順光でもグレーに見えました。ピラタスPC7改の場合は、やはり水平尾翼が逆光で不自然な真っ黒に見えますが、その一方で胴体や主翼は、少々明度が落ちるだけです。RJOOに駐機中の機体は、747が相当黒くなりますが、MRJは大きな影響がありません。機体やパーツによって見え方が違うのは、3Dモデルの表面処理の違いによるものだろうと思い、AC3Dでロケット表面のAmbientを約80%、Emmisiveを10〜20%くらいに調整したところ、反射に少し不自然さはありますが、明度はほぼ正常になりました。しかし、パッチ処理済みの公式版Ver2.0に入れ替えたところ、ロケットは再びグレーになってしまいました。また透明オブジェクトの色彩表現が一部変化し、RJOOで使用している空港ゲート通路の窓が、本来は青いガラスなのですが、透明に変化しています。いずれも致命的な問題ではありませんが、視覚面に力を入れているバージョンだけに、残念なことです。

●「レーダー航法衛星」開発の試み:
 では、人工衛星のお話に進みます。衛星を思いついたのは、西回り世界一周の最後にたまたま、太平洋のウェーク島に立ち寄ったのがきっかけでした。
 出来れば年内に、南北両極点をそれぞれ(UFOモードならぬ、空力の作用する航空機で)飛んでみたいと思っているのですが、ウェーク島で経度を確認しましたら、この島は偶然にも、極点に向かう際に南極大陸唯一の中継飛行場となるマクマード基地と、ほぼ完全に同経度だと分かりました。仮にウェーク島から、燃料不要のAI機を真南へ飛ばしますと、その飛翔体は、マクマード基地から極点への直航ルートをたどるため、本番の探検フライトでは航法用レーダーのターゲットとして使えそうです。
 FlightGearの南極点には、アムンゼン・スコット基地(SOUTH POLE STATION空港=NZSP)があったはずだと思い、Atlas画面を調べたのですが、この時は探し方が不十分だったらしくて見つからず、私は同基地が現行のマップデータから、いつの間にか撤去されたものと思いました。となると南極点は、目印もない氷原の一点となってしまい、この「レーダー航法衛星」は、極点到達を容易にする素晴らしいアイディアだと思われました。(今回、改めてdata/Airports/apt.datを解凍してみましたら、ちゃんとNZSPは実在しました。ただし、Atlas画面の全方位から見えるわけではなく、捜索中の経度によっては、見つかりにくい場合があります。また無線航法施設はありません)

 極地飛行では、ほとんど磁気コンパスが使えない(偏差が極めて大きい上、実世界では北を指す力も弱い)ことに加え、狭く放射状に分布する経線上を飛ぶため、飛行中は方位が劇的に変化し、航法が困難です。このため現実のフライトでは、極点を中央とする心射図法の地図に、緯線・経線と関係のない、便宜的な直交座標(グリッド)を重ね書きした地図を使います。これをグリッド航法と呼びますが、この地図では経度ゼロ(グリニッジ子午線)を「仮の北」として扱い、グリッド・ノースと呼んで、常にこの方向を指すよう特殊な調整をしたジャイロコンパスを使います。機体が北極点を超えようが超えまいが、グリッド・ノースは変わりませんので、「北極点では全方向が南」という、やっかいな問題を回避できるわけですね。
 出来ればFlightGearでも、このグリッド航法に近い便宜的な測地系が欲しいと思い、以下のような方法を思いつきました。
(1)極点に向かって南北へ飛ぶコースから、経度が90度ずれた赤道上
   にGPSのウェイポイントを新設し、ここからの距離表示が常に一定
   になるように飛ぶ。
(2)極軌道を飛ぶ衛星を多数打ち上げ、数分ごとに頭上を飛ぶように
   設定して、レーダーで追跡する。軌道経度を90度ずらした衛星群
   も用意すれば、二つの軌道が交差する地点が極点である。

 このうち(1)は、少なくともVer1.9.1の環境下では、GPSがオートパイロットから独立して作動せず、おまけに任意の緯度経度の目標地点を設定できないので、実現困難に思えました。また(2)は、冷静に考えれば測位精度を上げるのが難しそうですが、「衛星を飛ばす」というだけでも面白いので、実証テストをしてみることにしました。単なるレーダー・ターゲットを、あえて航法衛星と呼ぶのは大げさですが…1960年に登場した、史上初の「エコー」通信衛星(アメリカ)もまた、金属を蒸着した気球のような物体(展張時の直径100ft)で、単にマイクロ波を反射する仕組みでしたので、まぁよかろうと思います。

●FlightGearの世界で、人工衛星らしきものは可能か:
 ここで、衛星はどんな軌道を描くのか、FlightGearと関連しそうな点をおさらいします。
(1)衛星の軌道速度は、引力が強い低空ほど速い。
   高度ゼロでは計算上、秒速約7.9キロ。周期は約84分となる。
   地球の自転と同期する静止軌道では、高度約3万4000キロを秒速約
   3キロ、周期24時間で飛ぶ。
(2)衛星は、地球の重心の回りを周回する。
   つまり大円(地表から見ると大圏コース)を描く。従って例えば
   赤道以外の緯線に沿って飛ぶことは出来ない。
  (仮に、日本から真東に打ち上げても、真東へ飛び続けるわけでは
   なく、引力の影響で南へ向かい、赤道に対して傾いた大円を描く。
   地図に投影すると、赤道をはさんで南北に振動する曲線となる)
(3)地球が自転するため、衛星は南北両極を結ぶ極軌道に投入しても、
   経線に沿って飛ぶわけではない。
…といったところでしょうか。
 まず(1)の条件を満たす飛び方が、AI機に可能かどうかですが。少なくとも低空で短距離なら大丈夫です。試しにウェーク島滞在中、飛行船ヒンデンブルグ号を、宇宙の入り口と言える高度約30万ftに置くシナリオを書き、秒速約8キロの初速を与えたところ、20nmレンジのレーダースコープから3秒で飛び出し、160nmレンジでは約20秒間見え、その際の表示高度は正確でした。(3)については、今さらどうしようもなく、無視することにします。軌道を地表に投影すると、徐々に東西にずれたり、赤道をはさんで8の字を描いたりするわけですが、こうした動きを正確に再現するのは恐らく無理でしょう。

●関連技術を研究…まず3D制作から:
 衛星を作って飛ばすには、さまざまな関連技術を用意しなくてはなりません。
 ○衛星本体づくり:
 FlightGearの公開オブジェクト集から、衛星に見えそうな何か(例えば、球形のガスタンク)を流用する手も考えましたが、いつかは私も航空機も作ってみたいし、acファイルを自作できるに越したことはありません。そこでPayPalを使って、懸案になっていたAC3Dのライセンス購入を済ませ、過去に公開された旧バージョンのマニュアル日本語訳と、英語版の正規オンライン・マニュアルを見比べながら、ごく初歩的な操作を覚えました。これは学習しやすいソフトですね。ついでに参考書が欲しいと思い、大阪・兵庫の大型書店やパソコン店5〜6軒を当たりましたが、残念ながら見つかりませんでした。(Blenderの本は2冊買いましたが、独特な操作系が苦手です)
 私の立体オブジェクト処女作は、格納庫のアクセサリーにするドラム缶です。ネットでドラム缶の標準サイズを調べ、どなたかご指摘下さった「1m=100ピクセル」との情報に従い、円筒形を作って加工。「火気厳禁」のテクスチャー貼り付けが、うまく行きませんでしたが、一応それらしいものができました。次に、まだ飛ばす当てはないものの、ロケットを試作。旧NASDA(宇宙開発事業団)のN-1を思い浮かべて全長約30mの輪郭を描き、回転体に加工したところ、思ったより簡単にできてしまいました。同じ手法でノズルとSOB(補助ロケット)も作りました。
 打ち上げ時の炎と噴煙も、欲しいところです。炎はMe262のacファイルを借用し、ロケットのファイルとマージして拡大した上、ノズルの部分にくっつけました。噴煙は将来、可能ならパーティクルで実現したいのもです。
 ○フライトプランの記述を研究:
 これまでに行ったAI駐機や旋回は、いずれもフライトプランを省略し、高度・速度・バンク角をいきなりシナリオに記述しましたが、この方法で衛星を飛ばすのは難しそうなので、AIフライトプランの書き方を学ぶため、大阪空港の場周経路で777を飛ばしました。
 第1〜第4旋回点の緯度経度を決めるのが面倒ですので、どんな空港でも、滑走路の方位や基準点の座標、レグの長さなどを入力すれば、必要諸元を自動計算してくれるワークシートを作成。これを使って、demoモードを参考にフライトプランを書きました。ところが、高度や速度などをどう調整しても、機体は第4旋回点の手前で消えてしまいます。コンソールにも特にエラーメッセージが出ないため原因が分からず、場周経路を回って降ろすのは諦め、次善の策として「滑走路から離陸し、消滅。次いでファイナルアプローチを開始し、着陸後に消滅」という動作をリピートさせようとしましたが、ファイナル開始時に機体を出現させると、空中に静止したまま振動を起こし、うまく行きませんでした。がっかりですが、離陸シーンだけを繰り返すことには成功し、この機能を常駐させています。自分の母港で、全日空機が絶えず離陸するのが見えると、日常的な光景に心が和む…という効果はあります(^^;)。
 ○東経から西経へ、南緯から北緯へ:
 衛星が、赤道や日付変更線(またはグリニッジ子午線)や南北両極を、果たしてAI制御で飛び越えることが出来るのか、という検証も必要です。シナリオファイルで初速だけを与えた場合と、フライトプランで座標を指定した場合の両方についてテストを重ね、UFOモードのピラタスPC7改を飛ばして、目視とレーダーで観察しました。まずシナリオのみの場合、赤道上で東経から西経へ日付変更線を横断すると、衛星は視認可能ですが、レーダーからは消滅することが判明。フライトプランを使っても同じ結果で、これでは航法には役立ちません。残る可能性は、地球を南北に回る極軌道か静止軌道だけです。
 極軌道を試したところ、極点を越えると逆に、レーダーでは機影が確認できるが視覚的には消えてしまうという問題が発生。また赤道の近くで衛星が前後方向に激しく振動し、赤道を越えられない例もあって、地球周回はかなり難しそうに思えました。時間の制約もあり、全てのケースを順列組み合わせ的に確認したわけではありませんので、ともかく一度、実際に地球一周を試みることにしました。シナリオで座標と初速を与えただけの衛星と、フライトプラン付きの衛星を2機ずつ計4機、同時に種子島から南北へ経度の線に沿って、第一宇宙速度(秒速約7.9キロ)にあたる1562.37Ktで放つ計画です。高度は26万フィートを基準に、レーダーで各機の見分けが付くよう1000ft単位で4通りにプログラムしておきます。

●種子島へ出張し、4機の衛星を飛ばす:
 日本で衛星を打つなら、やっぱり種子島でなくては、気分が出ません(^^)/。
まず、大阪からの移動ですが…アメリカの宇宙飛行士はご存知の通り、全米に点在する研究施設の間をT38タロンで飛び回っていますが、日本のFlightGearユーザーとしましては、ここはやはりT-4の出番だと思います。同機がまだVORやDMEを持たないことに加え、楽に効率よく移動したいので、私としては少々珍しいですが、GPS航法を使うことにしました。
◎大阪国際空港RJOO VOR113.90(OWE) 以下磁気方位。
    ▼185度17nm
★信太VOR 112.3(SKE)
    ▼213度39nm
★御坊VOR 116.9(GBE)
    ▼244度126nm
★清水VOR 115.2(SUC)
    ▼225度165nm
◎種子島空港RJFG 中種子VOR115.4(TGE)ILS/DME108.95-309度
計347nm

 大阪空港は10度6Ktの風、30000ftと10000ftに雲がちょっと。文句ないコンディションです。燃料満タン4000Lbsとし、中継地をGPSに入力して、UTCの0307時に離陸しました。
 RJOOのルール通り、離陸後500ftまで直進、以後左旋回して南へ。毎分30000ftで上昇したところ、10000ftまで500KIASをほぼ維持。さすが高等ジェット練習機です。信太VORを過ぎてなお上昇、0317時に高知沖の25000ftでレベルオフ。TASを計算しますと約600Ktで、Internal Propertiesによれば、マッハ数は0.955です。離陸後たった22分で土佐清水市を通過し、あとわずか16分で種子島…と、見事な巡航速度でした。
 それにしても、操縦しやすい飛行機ですね。舵の味がしっとり上質で、安定性にも優れ、いったん舵角が決まると姿勢がぶれず、まことに快適です。前席の視界が計器盤に少々遮られるのは残念ですが、デフォルトのコクピット画角67度を、試しに77度に変更するとかなり見やすくなりました。頭の位置を上げれば最高ですが、今回はそのまま後席で操縦しました。
 高度処理の「3対1ルール」に従い、約80nm手前から降下開始。150Ktで滑走路に向かい、120Ktで最終アプローチを試み、ふんわりタッチダウン。あまりの快適さに、ほとんど倍速を使わず、Atlasも起動しないまま種子島に着いてしまいました。
 タクシー代わりのUFOで南種子町へ移動し、まず大崎射場の位置に発射台を設置して、先ほどの噴流付きロケットを据え付け、打ち上げシーンを撮影しました。実世界では若いころ、種子島と内之浦で何度も衛星や探査機の打ち上げに立ち会ったので懐かしいです。今回は、PC7改のレーダーで衛星を追跡しますので、大崎から発射する(衛星の飛行の基点とする)わけにいかず、再び中種子町の種子島空港に戻ってプログラムを準備し、PC7改を起動しました。瞬時にポーズを掛けてスコープを見ると、4機の衛星が2機ずつ重なり合い、すでに南北約7nm先を懸命に飛んでいました。よーし、行ってこい!
 待つこと1時間22分。残念ながら、1機も帰ってきませんでした。まだAI機の制御を十分理解したとは言えず、現在のFlightGearの仕様で、こういうことが可能なのかどうか分からないままなので、ちょっと無理かなと思いましたが、やはり現時点では無理でした。
 取りあえず、赤道上なら静止衛星という手があり、置くだけで済みますので、今回は静止状態の技術試験衛星1型「一番星」の画像をUFOで撮りに行って、アップしました。本来は高度34000キロでないと、地球の自転に同期/静止しませんが、FlightGearの天球は26万ftちょっとで終わりますので、今回はこの高度ぎりぎりに投入しています。こうした疑似「静止」衛星は、レーダーの航法ターゲットとして利用可能なほか、将来VORかTACAN局でも搭載すれば、さらに航法衛星らしくなりますが、敢えて開発したとしてもレンジが短いため、GPSに比べると相当不便でしょう。今回はひとまず、衛星の実験そのものを楽しんだ…というご報告で、一段落としておきます。

●追伸:フライトデータの、セーブとロードについて。
 私はVer1.9.1bに移行後、実はセーブしたデータの再ロードに必ず失敗して、首をかしげていました。掲示板で話題になりませんので、バグとは思えず。またあまりに初歩的なお話ですので、皆さんにご相談するのも気が引けました。
 たまたま気付いたのですが、私は FlightGear Wizard の「Advanced…」にある initial Position を使う際、パラメータを元に戻し忘れたとみえて、幾つかの欄にゼロの値が入っていました。ここは、空白でなくてはダメだったんですね(^^;)。修正した現在は、ちゃんと保存データのロードが可能となりまして、例えばスポット機能の代りにして、愛機を格納庫内で起動する、といった使い方を楽しんでいます。
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なし 南極点をめざす

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 衛星開発のお話の中で少し触れましたが、今回から南極点をめざす飛行「ペンギン・プロジェクト」に挑戦します。南極はすでに、短い秋(1月中旬〜2月中旬)を終えて初冬に入り、遠からず半年に及ぶ夜が迫るため、下手をすると半年以上延期かな、と心配したのですが…どうやら航法や装備の準備が終わって、「陽のあるうちに」間に合いそうです。
 私が前回、FlightGearの南極を飛んだのは2005年の終わりで、まだVer0.9.8のころでした。当時は航続力の長い機体が限られ、私も操縦下手に加えて、改造能力がまったくなく、おまけにFlightGearの極地自体が不出来で、とても満足のいく飛行は出来ませんでした。さて最新のVer2.0環境では、どんな南極大陸が出迎えてくれるでしょうか…。

●数々の準備…地形と空港を調べる:
 このプロジェクトの最初の作業は、FlightGearの南極大陸にある飛行場を確認することです。改めてAtlas地図を精査したところ、現在のマップデータでも幸い、極点を含む8カ所に飛行場がありました。ただし、古くから探検が行われた地域に偏っており、実際に極点への中継地として使えるものは、ごくわずかです。
 南極大陸はご存知のように、概ね半径1000nmちょっとの円盤で、大規模な半島と二つの巨大な湾を持っています。FlightGearでは、まず南米に向けて突き出た「南極半島」の先端付近に、飛行場(観測基地)が4カ所あって、そのうちアルゼンチンのマランビオ基地など2カ所にVORがあります。またオーストラリア南方には、南極内陸部へ分け入るロス海という湾があり、大半が広大な「ロス氷棚」に覆われていて、その西端の海岸にアメリカのマクマード基地があります。ここは飛行場が3カ所ある巨大基地で、うち1カ所はVORを持っています。ロス氷棚は、極点に比較的近い上陸地点となるため、20世紀初頭に展開された極点到達レースでは、各隊がベースキャンプを設けました。いっぽう極点には、米国アムンゼン・スコット基地の滑走路があり、Ver.0.9.*の時代はTACANを備えましたが、今は航法無線はありません。
 またロス海の後背地から極点付近を経て、南極半島の付け根付近まで、4000m級の高山を含む南極横断山地が走っていますが、特に飛行の障害にはならないでしょう。今回のフライトはVORのあるマランビオ基地と、マクマード基地のいずれかで給油を行い、極点到達後に残る片方を目指すのがよさそうです。

●極点への航法:
 GPSやTACANがなかった時代、実世界の極地航法には、多くの困難があったとみられます。果たしてどんな風に飛んだのか、少し調べてみました。
 戦前の極地飛行の代表は、多分アメリカ海軍のリチャード・バードでしょう。彼は1926年に初の北極点飛行に成功し、翌年の大西洋無着陸横断(リンドバーグに1カ月遅れ)を経て、1929年に初の南極点飛行を果たしました。このうち北極飛行については、当時のナショナル・ジオグラフィック誌の図表などを引用して、彼の航法を検証した論文を、米国の地理学関係のサイトで発見しました。これによると、バードは太陽コンパスを使って飛び、15時間の飛行中に7回天測して、航空図に位置の線を描き入れ、推測航法のデータを刻々と補正するという、ごくオーソドックスな天文航法で極点を割り出しました。旧ソ連でも盛んに極地飛行が行われ、1930年代にはANT-25長距離機が、極点横断の無着陸で米ソ間を結びましたが、こちらも確か太陽コンパスと天測による航法でした。
 私も天測を使いたいところですが、未完成です。太陽コンパス用の天文計算は多分、かなりの精度で可能ですが、FlightGearで実際に機能する日時計式のコンパス装置を作るには、高精度の方位を持つ影が欲しいところでして、今回はGPSに頼るしかなさそうです。

 FlightGearのGPSには、これまで大きな欠点が二つありました。第1に、基本的にはオートパイロットと連動しており、単独では針路情報を表示しないこと。例えばマニュアル操縦で細かく寄り道しながら、GPSの針路計算結果を、参考データとして参照することは出来ませんでした。また第2は、任意の地点(例えば極点)を緯度経度で入力できないことです。これらを回避する手はないかと、FlightGearのVer.1.9.1bで大阪周辺を飛び、Internal Properties をあれこれ調べました。すると以下のパスから、次のようなデータが読めることが判明しました。
 ・Internal Properties/sim/autopilot/route-manager/Wp
   目標への距離とETA(予定到着時刻)、現在選択されている
   WP(ウェイポイント)のID。
 ・route-manager/route/wp
   目標の緯度経度など。
 ・autopilot/internal/true-heading-error-deg
   WPに向かう針路のずれ。
…試しにこれらのプロパティを、画面上に開いたまま飛んでみると、さすがに便利でした。パネルを少し改造してデジタル表示すれば、先ほどの「大きな欠点」の第1が解決します。これは素晴らしい発見をした、と思いました。さらに理想を言えばGPSに、計器盤上にあるHSIのCDI指針を連動させたいところです。

 ところが。Ver.2.0をインストールしましたところ、HUD上に常時、目標への方位とコース誤差などを表示するように改善され、特にWPを入力しない場合は、デフォルトで出発空港のIDと方位、距離が出るようになりました。さらに「GPS Settings」の「NAV Slave」にチェックを入れると、CDI指針がGPSコースにセットされ、目的地への針路とコースからの逸脱距離を表示します。おまけにOBSノブで、目的地への針路は自在に(VORラジアルと同様に)選択可能です。またGPSのオートパイロット常時連動も解除され、マニュアルで飛ぶことが出来ます。オートパイロットを使いたければ、True Headingモードを選択して、針路保持にチェックを入れればOK。つまりGPSがほぼ完全に、VOR-1と同じ感覚で使えるのです。これは、私が欲しかった機能そのままで、大感激すると同時に…出来れば及ばずながら、似た機能を作りたいと思ったので、先を越されて少々残念でした。
 また第2の欠点については、飛行中の緯度経度入力は無理としましても、事前に新規のFIXを設定して、FlightGearが持つデータベース(FlightGear/data/Naviaids/fix.dat.gz)に書き込んでしまえばいいわけですね。fix.dat.gzを解凍してみると、すでに北極点は「NPOLE」の名称で登録がありました。同じ書式で南極点を「SPOLE」と書き込み、元通り圧縮したところ、このFIXはちゃんとWPとして認識されました。ばんざいっ!! これで必要に応じ、さまざまな地点を登録することが出来ます。

●スキー履きの、南極仕様機を作る:
 次に、使用機を用意します。西回り世界一周の後半に活躍したピラタスPC7改は、操縦しやすく高速で、航続距離もたっぷり。バードのように極点上空まで往復するだけなら、このままで大丈夫です。しかし、どうせ行くなら着陸してみたいものです。FlightGearでは南極大陸の滑走路を、通常通りアスファルトや土として描いていますが、実際の路面は雪や氷ですので、ぜひスキーを装備したいと思いました。
 米軍が使う極地仕様のC130輸送機は、スキーを胴体に引き込む仕組みですが、PC7改をそんな風に改造する腕はありませんので、出しっぱなしの脚にスキーを付けて飛ぶことになります。試しに脚を降ろしたまま、高度別に全開飛行の速度と燃費を計りますと、以下のようでした。
・10000ft:
 222KIAS、255KTAS、1.8231nm/gal
・17500ft:
 196KIAS、254KTAS、2.0742nm/gal
・20000ft:
 185KIAS、250KTAS、2.6981nm/gal
(■注:脚入れでは、247KIAS、340KTAS、3.7975nm/gal)
・25000ft
 177KIAS、260KTAS、2.4709nm/gal
・30000ft:
 169KIAS、272KTAS、2.6641nm/gal
…脚出し状態ですと、ガロン当たりの飛行距離は、最良の高度20000ftでも、脚入れ状態の71%に過ぎず、しかもこの時の速度はC130輸送機以下です。この結果、機内タンクでは約1620nmしか飛べませんが、seahawkの785Lbs入り増槽を2個付けますと、航続力は2330nmくらいになる計算ですので、何とか使いものになりそうです。
 そこでAC3Dを使って、PC7改のacファイルを開き、ノーズギアと車輪庫ドアを外して、メインギア2本に自作のスキーを付けました。本来は固定装置として、タイヤをつかむクランプと何らかのステーが必要ですが、今回は棒状のステー1本で済ませ、新たにパイロンを追加した増槽も装備。塗色は、赤かオレンジが極地探検の定番ですので、私も赤一色に塗り替えました。しかし実世界では、必ずしも赤系統が常に見えやすいとは言えないようで、原色を派手に組み合わせた機体もあります。(ご参考:競技用の紙飛行機が、空をバックにした場合、視界没すれすれの遠距離で一番目立つ色は、実は黒です)
 スキー付きの機体を、雪のない場所から飛ばしていくのも変ですので、南極まではC130輸送機で運ぶことにしました。PC7改から主翼を外して胴体と並べ、カーゴスペースに収まるようにした「荷造り版」のacファイルを作成し、C130のファイルとマージしたところ、あっさりと機内積み込みに成功。ランプドアを開いて眺めますと、いかにも「探検に出るぞ!」というムードが盛り上がり、楽しい思いをしました(^^)。
 C130の機内寸法は、前後方向に余裕がありますが、左右はあまり余地は残りません。特にPC7改の尾翼は寸法ギリギリで、C130は案外狭いというか、PC7は見かけよりも大きいなと思いました。

●「本線・支線方式」で、飛行計画を立てる:
 南極飛行で大きな問題の一つは、現地が日本から非常に遠いことです。外洋ヨットの世界は、分秒を争って航海するレース派と、マイペースで長旅を楽しむ「ブルーウォーター派」に分かれるそうですが、これに倣って言えば…私はマイペースの「バーチャル・ブルースカイ派」で、はるばる南極まで行くと、往復に1年くらい掛かりそうです。せっかく整備を楽しんでいる、母港・伊丹周辺で過ごす時間も無くなりますので、以前から考えていた「本線・支線方式」を、思い切って取り入れることにしました。
 これは、過去に行った西回り世界一周と縦周り地球半周(以上が本線)の各着陸地を、新たな探検フライト(支線)の便宜的な出発点と見なして、日本からの長いアプローチを省略してしまう、という手です。自称ブルースカイ派としましては、一種の「キセル行為」みたいで残念ですが…南極への往復に「しらせ」の2倍以上掛かるのも問題で、やむを得ないだろうな、と思います。
 今回は、大阪国際空港(以下、伊丹)を出発する場面も味わいたいので、まず羽田まで飛んでおき、その後は西回り世界一周の南限となった、チリのサンチャゴにワープして、ここから南極半島のマランビオ基地へ南下することにしました。以下は取りあえず、南極点までの飛行計画です(文中いずれも真方位)。

◎大阪国際空港→羽田。以後の移動経路は短縮。
    ▼
◎チリ・サンチャゴARTURO MERINO BENITEZ 国際空港SCEL
33° 23' 34.71" S 070° 47' 08.89" W
    ▼192度495nm
◎チリ・プエルトモントのEL TEPUAL国際空港SCTE
 VOR115.70 412538S-730538W
    ▼173度700nm
◎チリ・プンタアレナスのCARLOS IBANEZ DEL CAMPO INTL空港SCCI
 VOR114.1 530013S-705113W RWY-07/25にはILS109.90
    ▼135.35度162nm
◎フエゴ島のGuardiamarina Zanartu空港SCGZ
 VOR114.90 545544S-673713W
    ▼149.29度649nm
◎南極半島Maranbio基地SAWB VOR117.0 NDB345 
641405S-563712W 6/24 1260m 100/130
(以下、南極半島のバックアップ空港:
 ・Teniente Rodolfo Marsh Martin基地SCRM RWY11/29 1292m
   VOR113.30 1nm南東にNDB360 621126S-585856W
 ・Petrel基地SA47 632844S-561351W 航法施設なし
 ・Palmer Station基地NZ12 644629S-640315W 航法施設なし)
    ▼180度1545.9nm
◎極点基地 South Pole Station NZSP 航法施設なし(実物はTACANあり)
 RWY-02/20 3658m(12000ft)

●あれこれ、テスト飛行する:
 いよいよ飛行編です。ここでやっと思い出したのですが…私は衛星のテストをしたまま大阪に戻るのを忘れ、まだ「種子島空港にいる」のでした(^^;)。慌ててT-4を起動し、GPSの使用訓練を兼ねて、前回の逆ルートで伊丹へ飛行。快調でしたが、WP通過時のリードターンが出来ていないので、帰着後にピラタスPC7改とC130に advroutemgr.nas を組み込んでおきました。またVer.2.0では、ffe.nas の残飛行時間・残飛行距離の表示が出なくなってしまい、非常に残念でした。幸い燃費(nm/gal)は表示されますので、大変な手間を掛けて測定・算出する苦労はありません。
 次に伊丹で、今回使うC130の操縦練習をしました。かなり鈍重な飛行機で、アプローチ中は機体の慣性を強く感じ、修正操舵への当て舵が決まりにくい傾向があります。機体重量の割に横風には弱く、アビーム20Ktくらいで着地すると、地上で偏向するわ、バンクはするわで、気が抜けません。下手をするとロール方向に、どすこい! どすこい!…と、シコを踏んでしまうのですね。半面、上昇力と高空性能はジェット機並みに良く、上昇につれて燃費が改善し、41000ft(0.37nm/gal)では約2600nmの巡航が可能。倍速モードでも非常に安定しています。離陸性能は抜群で、燃料満載でも10秒で地面を切るあたり、さすが戦術輸送機です。空中給油や受油、空挺降下の機能もあるようで、将来は楽しみです。
 伊丹のhide格納庫前にC130を駐め、ランプドアを開いて、南極仕様機の積み込みシーンを撮影。終わったところで羽田へのルートをGPSに入力中、いきなりFlightGearが原因不明の異常終了をしました。取りあえず羽田への移動を省略し、直接サンチャゴから南下することに変更。あとで分かったのですが、Route Manager にWPを打ち込んだ直後に「Activate」ボタンを押すと、異常終了するようです。Ver.2.0のGPSは、出発空港を最初のWPとして認識します。ここでリバーサル・ディパーチュアを行えば、ターゲットが自動的に次のWPへ切り替わりますが、そうでない場合はRoute Managerのリストから次のWPを選択して、Activateボタンで確定する、という操作が必要なのだと思います。このボタンを誤って先押しすると、問題が生じるようです。

●サンチャゴからマゼラン海峡へ:
 チリの首都・サンチャゴの国際空港を、C130で出発します。ここは2008年夏、複葉機によるアンデス横断飛行で何度か利用した、懐かしい場所です。今回のフライトでは、約500nm南にあるプエルトモントという都市を経由し、さらに航海の難所・マゼラン海峡に面した都市、プンタアレナスへ向かいます。
 このフライトはGPSオートでしたので、高度別の速度や燃費を調べたり、機体の倍速モードへの反応などを一通り確認後、席を立って別の用事をしていました。しばらくして戻ると、なんと機体は勝手に変針して北上、かつまた降下中。アンデスの尾根が迫っており、あと数分放置すれば激突でした。再設定して所用に戻り、プンタアレナスをちょっぴり通り過ぎてしまったあたりで、慌ててパソコンの前に戻りますと、今度は機体が…なんと海面を航行しておりました。色々と再現実験をした結果、
 ・GPSオートで、WPや目的地を通過すると、なぜか高度設定が
  ゼロになる。
 ・その結果、機体は降下して海面まで降りるが、ここでオート
  パイロットがレベルオフするため、自動的にフレアが利いて
  不時着水するらしい。(これは、自動着陸に生かせそう)
 ・目的地を通過してしまった場合は、まだ実験例が少ないが、
  大変針して根拠不明の針路を取り、直進することがある。
…といったことが判明しました。なお海面でギアを突き出し、フルパワーで強引に上げ舵を取ったところ、再離水に成功しました。C130は緊急時には、短か過ぎる滑走路に胴体着陸してしまい、荷物を降ろして身軽になった後で、ギアを出して再離陸が可能だそうですが、これと似たテクニックですね。(ギアがスポンソンから真下に出る設計なので、車輪庫のドアをぶち壊す覚悟があれば、こんな荒技も可能なのです)
 この他にも巡航中、「GPSは何を基準に、この機首方位を選んで、どこに向かっているのか?」と不思議に思って再設定したケースもあり、どうもまだ、扱い方がよく分かりません。ともかくサンチャゴから飛行をやり直し、高度保持が外れるたびに手動で再設定して、ようやくの思いでプンタアレナスに到着。
 ここはサンテグジュペリの「人間の土地」に、メチャクチャな突風が吹く、荒涼とした裸の大地として描かれています。彼は1920年代、当時の遅い飛行機で沖合に飛ばされ、数夘上の陸岸へ戻るのに1時間以上、ほぼ空中に停止して、突風と格闘しました。やっと着陸後、機体を格納庫へ入れるには、何十人もの兵士が必要だったそうです。戦前の現地写真(並びにMSFS2000のマップ)では、なるほど「地の果て」風の景色ですが、FlightGearの地形データでは、入り組んだ海岸線に都市のテクスチャーも加わり、割に風光明媚な街に変貌しています。

●静穏無風の、南極半島へ:
 日を改めて、ついにピラタスPC7改・南極仕様の出番です。南極半島のマランビオ基地までは約800nmですので、機内燃料のみ満タン。固定式の増槽は、軽量化のためカラにしました。スキーを使う関係上、ここからは冬景色とします。
 UTCの1201時(ローカル0901時)に離陸。南半球には「吠える40度線」「うなる50度線」「絶叫の60度線」などという言葉(訳語は異説あり)が存在し、プンタアレナスは南緯53度なんですが、この日の地上風は358度14Kt、9000ftで8.7度16.1Ktで、向かい風なら離陸可能でした。8139ftと2139ftにはscatteredの雲。まずまずの上天気です。
 GPSの振る舞いが不安で、この区間はVORを使うことにして、離陸後にリバーサル・ディパーチュアを行って定針。ここで高度保持を掛けたところ、いきなり宙返りに入って仰天しました。下げ舵を取ってもダメで、そのまま2周目のループに突入。タブを巻こうとしても動かないため、これはと思って、すぐオートパイロットを確認。なんと高度設定値を、間違えてAOA欄に入れたことが分かりました。機体は忠実に、最大限の迎角を掛け続けたわけですね。気まずい思いで設定を修正し、マニュアルでタブを再調整しました。
 荒涼としたマゼラン海峡も、海面に太陽が反射すると、素晴らしい景色です。フエゴ島を南下し、南極との間に拡がるドレーク海峡に向かいます。VOR圏外に出た後、あれこれGPSの操作や推測航法を試していて、ふと偏流がない(つまり風が止んだ)ことに気が付きました。メニューバーから確認すると、全高度で完全無風です。以後、GPSを見るだけの洋上飛行中、あれこれ高度を変えて無風を確認しつつ、燃費の傾向などを調べました。

 やがて…ADFの針が目覚めて、むっくり起き上がり。真正面にマランビオ基地を指しました。離陸から3時間20分後、うっすらと南極半島の海岸線を視認。これを飛び越えるとすぐ、基地のあるセイマー島です。天気もよく、ごくあっさりと着陸。
 依然として完全無風です。FlightGearのリアルウエザーは、この緯度まで来ると、観測データがないのかも。やったね…南極全域で、かなり航法が簡単になります。もちろん、リアリティーがないのは、すっごく残念(ウソ!)ですけれどね、うっふっふ。
 しかしこれは、大誤解だということが、のちに分かりました。
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なし 極点・転がる太陽

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回に続き、南極半島のマランビオ基地から、スキー付きピラタスPC7改で極点をめざします。

 4年あまり前、FlightGear Ver.0.9.*で訪れた極点は、霧に包まれた空っぽの空間で、「地球内部空洞説」を地でいく感じでしたが…今度はちゃんと地表があり、高度計や3D雲の異常表示も起きず、かなりまともになっておりました。地形は少々現実と違い、内陸部の山脈も、ロス海の広大な氷棚もなく、Atlas画面に表示される極点基地(NZSP)も実際は存在しなくて、お陰で燃料切れに直面するなど、あれこれ不満やトラブルはありましたが、極点では太陽が現実通り、一定の高度を保って日周運動することを確認したときは、なかなか感動しました。「転がる太陽」などと呼ばれる現象で、マイアルバムに画像をアップさせていただきます。
 ではまずマランビオ基地の、突風のお話から…。

●酷寒が生み出す、48Ktの風:
 前回、南極大陸に近づくと風が収まり、全高度レイヤーで風速ゼロが続いたため、FlightGearの極地には風がないのかと思ったのですが、さにあらず。マランビオ基地に着いた翌日に起動しますと、西寄りの風が42Ktで吹き荒れていました。何日か様子を見ると、40Kt台と20Kt台がほぼ交互に来て、たまに非常に弱くなるようです。これが噂の「カタバ風」か、と思いました。
 南極大陸の氷床の厚さはアルプス並みで、平均で2キロ、最大で約4キロもあり、世界の氷の総量の実に9割を占めます。南極の大気はこの氷で冷えて重くなり、内陸の高地から低い外周部に向けて緩斜面を駆け下りますが、これをカタバ風(katabatic wind=斜面下降風)と呼ぶのだとか。急に始まって突然止むのが特色といい、風速は場所により最大100m(175Kt)で、私が見たのは48Ktが一番強い風でした。FlightGearのリアルウエザー機能は、この風をある程度まで再現できているようです。

 となりますと問題は、10Kt以上の横風では離着陸が困難なピラタスPC7改を、どうやって発着させるか。また南寄りの風が多いので、航続力がどの程度落ちるかです。まず離陸ですが、マランビオ基地の滑走路周辺には障害物がないので、「路外へ飛び出さないよう、ラダーで修正する」という常識を捨てることにしました。離陸実験では、右20度から40Ktの風を受け、風見効果で機首が右を向いても放置したところ、滑走路わきのグリーン・ゾーン(冬景色では白色)の範囲にとどまりながら、あっさり離陸しました。着陸は、風下寄りから斜めに滑走したところ、うまく滑走路上に停止。向かい風成分が強いと前後の狙いが狂いやすく、空母着艦みたいにアンダーシュート気味になりますが、ともかく真横に近い風向でなければ、何とか運航できそうです。航続力の不安につきましては、カタバ風は対流現象ですので、高々度に昇れば弱まるはずです。実験では高度20000ftで約10Ktまで低下し、この考え方が正しいことが分かりました。

●極点への航法:
 南極点に電波航法施設はなく、天測や衛星も現状では実用にならないため、頼りはGPSだけです。極点基地(NZSP)は空港リストに見当たらず、GPSのウェイポイントに使えない(どころか多分、空港自体が存在しない)ことが分かって、前回fix.dat.gzに追加しておいた極点FIX「SPOLE」が、さっそく役立つことになりました。コースは、マランビオ基地からまっすぐ南下し、極点を確認して可能なら着陸。極のほぼ反対側に抜けて、ロス氷棚西端付近のマクマード基地を目指します。
 もし極点基地で給油が無理となると、航続力が足りません。本来はあらかじめ(リチャード・バードの極点飛行みたいに)帰りのコースに燃料を貯蔵すべきですが、シミュレーターの場合はガス欠が起きてから、必要な場所に救援機を派遣したのでも、別に問題はないでしょう。
 ここで探検史を振り返りますと、よく知られる通り、1911年暮れから12年初めにかけて、英国スコット隊がロス氷棚西部に取りつき、ノルウェーのアムンゼン隊が同じ氷棚東端の「クジラ湾」に上陸して、極点へのマッチレースを展開し、アムンゼンが一番乗りを果たしました。遅れて極点に着いたスコット隊は、失意も加わって帰路に全員遭難死しました。ちなみに両隊が天測で求めた南極点は、わずか数百メートルしかずれていなかったそうで、困難な条件のもと、よく正確に観測したものだと感心します。
 同時期にクジラ湾に上陸し、やはり極点を目指したのが、ごぞんじ日本の白瀬隊。ロス氷棚上の南緯80度5分で南進を断念し、周辺を「大和雪原」と命名して、日の丸を残して引き上げたわけですが…資金・装備・経験やノーハウに大きなハンディを負う中、極点レースでは「着外」だったものの、他の先進国を尻目に、よくやったものです。今回のフライトでは、帰路にロス氷棚の東部に寄り道して、大和雪原とクジラ湾を飛びたいと思い、両地点にも特設FIXを作りました。
 では、飛行計画です。

◎Maranbio基地SAWB VOR117.0 NDB345 
641405S-563712W 6/24 1260m 100/130
    ▼180度1545.9nm
◎極点基地 South Pole Station NZSP 航法無線なし(実物はTACANあり)
 RWY-02/20 3658m
    ▼0度595nm
△大和雪原 8005S-15637W (YAMATでFIX登録)
    ▼317.89度128.6nm
△クジラ湾 7830S-16420W (WHALBでFIX登録)
    ▼276.17度353nm
◎マクマード基地(以下の3飛行場あり。いずれも航法無線なし)
 Mucmard Station NZWD 775201S-1670324E
 Mucmard Station Ice Runway NZIR 775113S-1662806E
 Mucmard Station Pagasus Field NZPG 775748S-1663134E

●トラブル相次ぐGPSを横目に、内陸へ:
 UTC(協定世界時)1158時、現地時間0758時。朝のマランビオ基地で、ピラタスPC7改を増槽まで満タンにします。286度42Ktの猛烈な風が、右斜めから吹き付けていましたが、事前のテスト通り風に逆らわず滑走して、大変スムーズに離陸しました。
 実はこれ以降、私のメモにはVer.2.0のGPSに関する疑問点やトラブルが、延々と書き込まれています。前回も少し触れましたが、新しいGPSは操作手順によっては、FlightGearを異常終了させる問題があり、今回もWP入力中に、何度も発生してイライラさせられました。まだ完成形とは言えないようですが、一方で機能は以前よりも充実して、空中航法の多くの要素を盛り込み、単なる「らくちんナビ」を脱した観があって、かなり面白くなったかなと期待しています。
 今回は残念ながら、この新型GPSの扱い方がよく分からなかったため、極めて大きな磁気偏差に強風が加わる、南極特有のややこしい条件のもとで、「この機能は何だ?」「なぜ今ナビは、こういう針路を表示しているのか?」と首をかしげる場面も、少なからずありました。前回ご紹介しました機能や操作、異常終了の回避法などのお話も、必ずしも正確ではなかったかとも感じていますが、今後じっくり勉強して、分かったことを改めてご紹介したいと考えています。

 …南極半島を出発したPC7改は、ほぼ600nmにわたって、大陸の内陸へ切れ込むウェッデル海を飛び続けました。スキーを装備した(脚出し状態になった)関係で、高度26000ftの飛行速度は159KIAS(真対気速度では240KTAS)と鈍足になり、燃費も2.27nm/galと、以前のベスト記録の約半分に落ちてしまいました。幸い風速は、この高度ですと10〜12Kt程度で、少なくとも極点までは十分に燃料が保ちます。道中、倍速モードをあれこれ活用しましたが、GPSで針路保持した場合は6倍速で震動が始まり、4倍速に戻すと収束。ウイングレベラーで固めてしまえば、8倍速も可能なようです。
 シミュレーション時間で離陸後約4時間、やっと海を脱して氷原へ。後はひたすら残距離と残時間、また風速をなどを計りながら、氷河パターンのテクスチャーの上を飛び続けます。実世界の内陸部には大きな山脈がありますが、FlightGearでは海面高度の氷原が、どこまでも続いています。振り返ると太陽が、青空に低く掛かって見えました。遠からず夕景に移行して、半年に及ぶ極地の夜が近づくのでしょう。

●白いモヤと黒い海面、そして極点:
 南緯87度。地表のテクスチャーが、つなぎ目部分からビリビリ震えるのを目撃。世界の果てには、あれこれ計算上のストレスが掛かるのでしょうか。南緯89度、いよいよ何が起きても、おかしくないぞと思っていますと、はるか前方の下界を覆う白いモヤに、巨大な四角い穴が開いているのが見えました。接近してみると、なぜか氷原は終わって、ここから先は暗い海。現在の極点と周辺は、海面テクスチャーに覆われているのです。
 離陸後約7時間で、この「海」の上空に進出しましたが、周囲にはモヤで出来た、階段状に見える広大な四角錐の穴が形成されており、最上部は一辺が10nm以上ありそうで、壮大な眺めです。モヤの最下部には暗い海面が、奈落のように拡がっていますが、ちゃんと電波高度計に反応し、実体のある表面のようです。そこで着陸のため降下を開始しましたが、かなり不気味な眺めでした。
 GPSを頼りに、中心にある極点へ。低い太陽とモヤによって、「海」は異様にドス黒いのですが、旋回しながら目をこらすと、それぞれ向きの違う4枚の海面テクスチャーが、南緯90度の一点で寄せ木細工のように集まっていました。まるで海洋プレート同士が衝突したようですね。テクスチャーの継ぎ目には、見る角度によって白い線が入ったり、瞬間的に氷原のテクスチャーが現れます。この一帯は氷原として設計されながら、バグによってうまく表示されず、海に見えているのだろうと判断しました。フラップを開き、さらに降下します。
 「海」は暗すぎて、距離感が皆無です。実世界なら、あんな薄気味悪い代物に、絶対に車輪を着けたいと思いませんが…ほぼ電波高度計だけを頼りに、そっとタッチダウン。機体は沈んだりフリーズしたりせず、ちゃんと着地しました。HUDの緯度・経度表示を見てタキシングし、旋回を重ねて南極点の10メートルほど手前、南緯89度59分57.91秒に停止。Atlas画面上では、機体は極点FIXと、極点基地の滑走路を何度も踏んでいましたが、実画面に滑走路は見えませんでした。ともかく、南極です…ばんざいっ!!

●ついに極点。転がる太陽:
 色んな角度から機体の写真を撮り、次いで同一アングルの太陽入り画像を、時刻を30分ずつ変更しながら7枚キャプチャしました。後でレイヤーを重ねると、南極の写真集で時折見かける、「転がる太陽の連続写真」の出来上がりです=マイアルバム参照。昭和基地で撮影したものは、緯度の関係で太陽が弧を描いていますが、こっちは極点ですので直線になります。FlightGearの太陽は、地球に対してほぼリアルな相対運動をしていることが、この写真から裏付けられました。
 さて、計画していた唯一の「科学的観測」が終了しましたので、これにて帰還の途に就きますが、どこかで給油用のC130と会合する必要があります。航法は、C130側からレーダーでPC7改を発見するのが簡単ですが、C130のパネルは書式の勝手が違い、私の技術ではレーダースコープを組み込めません。むろんGPSで緯度経度を確認すればいいのですが、少しでも分かりやすいよう、海岸線を不時着地に選ぶことにしました。
 極点から最短距離にある海岸は、ロス氷棚のクジラ湾。ここを当面の目的地に選びました。奇しくも私はアムンゼンや、バードの極点飛行の帰路と、同じコースをたどることになります。そこで、クジラ湾の自作FIX「WHALB」を、Route Managerに入力したところ…こんな時にまたしても、異常終了です。ガックリ来ましたが、幸い極点到着時に飛行データをセーブしてあったので、すぐに再起動。保存データをリロードしますと、なぜかもとの出発地・マランビオ基地で起動してしまいました。起動時のオプションで強引に極点(ではダメだったので、正確には南緯89度59分)を指定して再びリロード。何とか同じ燃料残量で、極点起動に成功しました。

●エンジン停止、氷上へ降りる:
 燃料の残は1480Lbsで、無風なら約500nm飛べるはずですが、計ってみるとまだクジラ湾には届きません。またウェッデル海には氷棚がなく、単なる海面でしたので、クジラ湾のあるロス氷棚が存在するかどうかも、かなり怪しくなって来ました。ともかく北上し、最寄りの海岸へ出ることに。
 地表は50度の風、36Kt。行きも帰りも逆風とは、運の悪い旅です。東経164度線に沿って北上を開始し、刻々と減る燃料が惜しいので、さっさと高度に投資して26000ftへ。さらに30000ftまで上げて燃費を稼ぎ、約1時間15分の飛行でロス海の岸辺に出ました。やはり、ここにも氷棚はありません。
 ということは…FlightGearの南極には、白瀬隊がやってきた開南湾も大隈湾も、日の丸を立てた大和雪原も、アムンゼンがベースキャンプ「フライハイム」を設け、バードが「リトルアメリカ」を設営したクジラ湾も、ないことになります。これは残念なお話ですね。私は機首を北西に転じ、海岸沿いに燃料が続く限り進んで、少しでもマクマード基地に近づくことにしました。

 離陸後、約2時間40分でエンジンが停止。高度30000ftから滑空でさらに北西へ。PC7改のベスト滑空速度は分かりませんが、オートパイロットの速度保持を120Ktに設定し、Speed with pitchモードに入れてトリムを自動化したところ、割に調子よく距離を稼ぎました。さらに90Ktに減速し、少しでも長い間追い風を受けながら、着陸地を探します。
 海岸が少し張り出した地形を見つけ、フラップ1段で降下し、最後の高度300ftを使って風上へターンして、ふんわりと着陸に成功。機体が非常に軽かったのでスローフライトが利き、接地寸前の滑空速度は公称失速速度の65Ktを割って、たった58Ktでした。降りてみると、すぐそばの海上に貨物船3隻、漁船とヨット各1隻が見えて、実世界でしたらすぐ救助されそうな雰囲気です。

●救難機出動…見つからない不時着機:
 さっそく、PC7改に給油する準備に掛かります。
まずUFOを使って、PC7改を不時着地点のマップ上に配置し、ついでにAC3Dで作った赤と黄の小型テントを、機体のそばに置きました。この座標などを、マップデータのstgファイルに書き込んた後、UFOで最終的な位置確認を試みたところ、なぜか氷上には機体もテントも見つかりませんでした。何度となく書式やデータを確認し、新たなファイルを作り、AI機としても駐機しましたが、ダメでした。
 散々悩んだ末に、不時着現場の緯度経度を、改めて秒単位の精度でたどり直すと、ある場所に3機ものPC7改が折り重なっているのが、やっと見つかりました。配置に失敗したのではなく、単に機体が氷河パターンのテクスチャーに紛れたのです。赤い機影は十分に目立つと思い、2〜3nmの距離を置いて探したのですが、実際は私の環境では1.5nm程度まで近づかなくては見えず、それも空中より地上の方が見えやすく、かなり意外な結果となりました。
 続いてfix.dat.gzに、不時着地点(十進法の緯度経度では、-80.10972 160.15722)をFIX登録しました。名称はSOSSPで「SOS、サウスポール」の略です。救難機が出発するマクマード基地は、3カ所に飛行場を持っていますが、うち2カ所はなぜか滑走路の交差点に無線施設が建っており、安心して使えるのは残る1カ所だけです。コースは次の通りです。

◎Mucmard Station Pagasus Field NZPG 775748S-1663134E 無線なし
     ▼206.34度147.69nm(大圏)、209.36度147.76nm(航程線)
△SOSSP 800635S-1600926E

 極めて高緯度にもかかわらず距離が短いため、GPSオートに使う大圏コースと、より一般的な航法用のラームライン(航程線=メルカトル地図で直線)による距離の差は、わずか約130mでした。針路は真方位で206度ですが、コンパス上は磁気方位62度と、まったく違う数字になるあたりは、偏差の大きな南極らしいお話です。HUDに現れるGPSの各種諸元も、あまりピンと来ない数値になるため不安で、別途確認の航法計算をしました。
 マクマード基地は171度6Ktの風。素晴らしい飛行日和に恵まれ、C130で離陸し不時着現場へ。無事に到着したものの、なかなか氷上のPC7改が見えません。GPSを使って0.2nmの至近距離を、1000ftくらいの低空で通過しながら、真っ赤な軽飛行機が簡単には見えず、焦りました。さんざん苦心の末、着陸して地上から探したところ、ようやく1.1nmの距離から赤い機影を発見し、ホッと安心しました。

 これで思い出したのが、故植村直己さんです。世界初の犬ゾリ単独北極点到達(1978年)に成功したころ、「食料を空中投下してもらい、衛星に案内させれば、誰にだって出来る」という声がありました。むろん、飛んでもない誤解で、空中投下には犬ぞり旅行(実体はかなり徒歩に近い)自体の危険や苦痛を減らす効果はなく、一人で運べる物資の少なさを補って、旅の「航続力」を延伸する手段に過ぎません。植村さんが極地探検家・登山者としてのスキルを持っていたからこそ、生きて旅が出来たのですね。さて空中補給の成否は、航空機が植村さんを見つけられるかどうかに掛かっています。氷原は必ずしも平らでなく、天候も一様ではありません。もし機上と地上でそれぞれ天測して位置を出すと、相互の測位誤差は数マイルに及びそうで、機上から目視で「たった1人+犬ぞり1台」を発見することは多分、極めて困難です。その意味で植村さんのGPSは、決して冒険の価値を下げるものではなく、エベレスト初登頂時代の酸素吸入器と同様に、従来は不可能だったことを可能にした技術とみるべきでしょう。今回のささやかな「機体探し」体験で、ますますそう感じました。

 PC7改を再起動。風は205度8Ktで、依然として穏やかです。燃料は1500Lbsもあれば十分でしょうが、極地では何があるか分からない、ということが分かったので満タンに。GPSにマクマード基地・NZPGを入れて離陸し、氷上に残した自機のオブジェクト(まるで幽霊ですね)の上をかすめて上昇。ごく細い月を見ながら快適に飛び続け、無事に目的地へ。燃料を約5000Lbsも残したため機体が重く、90Ktに減速をとどめてアプローチしても、やや揚力不足を感じました。
 次回は恐らくニュージーランドへ抜けますが、以前訪れたインヴァーカーギルの空港で南極フライトを完了とするのか、もう少し周辺で何かやるのか、まだ決めかねています。
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なし Ver.2.0のGPSをめぐる研究

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-3-26 9:26 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回は南極飛行で極点に到達し、ロス海のマクマード基地まで引き揚げましたが、この時に使用したVer.2.0のGPSについて、トラブルや疑問点が多々ありました。そこで今回はニュージーランド方面への帰還飛行を順延し、このGPSの使い方を調べました。バージョンアップの直後でもあり、もし皆様のお役に立てば幸いです。

●素晴らしい高機能…ただし、不安定も同居:
 すでに詳しい方には、以下は「何を今さら」というお話になりますが。米国本家サイトのFlightGear Wiki にある「GPS」と「Route Manager」の両項目を読んだところ、Ver.2.0のGPSは私が想像していたより、はるかに多機能に設計されており、正直、驚きの連続でした。
 例えば…ウェイポイントの入力は、空港や無線施設、FIXを選択することに加え、これらを基点に磁気方位と距離を指定して、任意のベクトル(FlightGearの名称では「オフセット」)として定義したり、私の夢だった緯度・経度の直接入力もできます。各ウェイポイントは通過時の高度指定が可能で、近い将来に速度制御なども加えて、より高度なフライト・マネジメント・システムへ進化することを、明確に指向しています。どうも英語の敷居が高くて、これまで本家Wikiを利用したことはなかったのですが、読んでみて大変よかったと思います。
 しかしまた同時に、Ver.2.0のGPSは熟成への途上にあり、まだまだ設計通りに動かない部分もあることを痛感しました。(これが商品なら腹を立てるところですが、FlightGearの場合は無料かつオープンソースの条件下、「数々のアイディアを、取りあえずここまで、形にしてみた!」という意気込みが伝わってきますので…当然ながら「できるものなら、改良に協力したいが、せめて応援したい」と思うばかりです)

 本来は、モデルコースのフライトご紹介すべきですが、私の環境下では、多数のウェイポイントからなるルートを入力してアクティブ化しても、なぜか順番通り実行されません。かなり試行錯誤を重ねましたが、現段階では残念ながら、ウェイポイントを一つずつ入力するのが最も確実な操作法ですので、モデルコースは無意味と考え、現時点で分かっている基本操作と幾つかの留意点、そして先に述べた英文Wiki2項目の拙訳をご紹介することにしました。

●基本的な使い方:
(1)ウェイポイントを入力:
 機体を起動して、メニューバーからRoute Managerを開くと、Depature欄にデフォルトで出発空港のIDが入っており、ウェイポイントとして自動的にアクティブ化されています。HUDを開くと帰投方位と距離が常に一目瞭然で、「ちょっとそのへんを一周」フライトには、非常に便利ですね。
 Route Managerにウェイポイントを入力する場合、現バージョンでは高度を同時に入力しないと、ウェイポイント通過時にオートパイロットの高度指定がゼロになり、気付かぬうちにどんどん降下しますので、ご注意ください。高度の書式はID@ftです。例えば大阪国際空港を3000ftで通過するなら、「RJOO@3000」と打ち込みます。この機能は恐らく、空港周辺のFIXをたどってSID/STARを利用するためにあるのでしょう。目的地の空港は別途「Arrival:」欄からも入力可能です。

(2)ルートをアクティブ化する:
 入力が終わった時点で、hキーを押してHUDを開きますと、出発地のIDがウェイポイントに選択されたままで、まだルートが読み込まれていません。航法を始めるためには、Route Manager最下段の「Activate」ボタンを押さなくてはなりませんが、いきなり操作しますと、FlightGearが非常に高い確率で異常終了します。必ず最初に、上段の「X」ボタンをクリックしてください。(これは出発空港の滑走路を、自動的に選択・登録するためのボタンのようです)

 出発空港のウェイポイントは、そのまま離陸して直線上昇したり、リバーサル・ディパーチュアを行って空港上空を通過すると消え、次のウェイポイントが繰り上がるはずです。ダメでしたらPop Waypointで消します。
 Ver.2.0のRoute Managerでは、わざわざPop Waypointで消さない限り、すべてのウェイポイントが飛行終了時までリストに残ります。途中で、いずれかのウェイポイントに逆戻りしたい場合は、リストから再選択してActivateボタンを押すと、再びアクティブ化することができます。
 ただし、これまでに述べた流れは、必ずしもうまく行きません。私の環境ではルートをアクティブ化すると、ほとんどの場合、到着地の空港が最初からウェイポイントに指定されてしまい、中継地をすっ飛ばしてしまいます。Route Managerにあるウェイポイントのリストから、中継したい地点を選択しなおしても正常にアクティブ化できないケースが、大部分のようです。

(3)画面表示及び計器との連動:
 GPSを使用中、HUDには以下のような表示が出ます。
hdg=   機首方位(注意、これだけは真方位。他はすべて磁気方位)。
WPT    現在アクティブなウェイポイント。
BRG    そのウェイポイントへのベアリング(方位)と距離。
GPS TRK  GPSが測定した、現在のトラック=航跡(対地針路)。
XTRK   クロス・トラック・エラー(トラックが正しいコースから
     どれだけ離れているか)。nm単位の距離で表し、機体から
     見た左右の別は、<>記号を矢印代わりにして示す。
     例:XTRK:<10.05nm 正しいコースは機体の真左10.05nmにある。
注:GPS Settings画面の下段にある「NAV Slave」にチェックを入れるとGPSにHSIが連動し、CDI指針を使ってコースからの逸脱度を知ることも可能。この場合、CDI指針の目盛り1ドットは1nmを示していますが、表示には1割ほど誤差があります。
 …以上に登場する各種の方位は、お互いに矛盾して見える場合がありますが、機体は常に風に流されており、GPSが風力を自動補正して進路を決めているためで、問題ありません。

(4)作動モード:
 Ver.2.0のGPSは3種類の作動モードを持ち、GPS Settings下段のボタンで選択できます。それぞれの機能は別記Wiki翻訳をご覧下さい。起動時はOBSモードになっています。また複数のウェイポイントを入力し、ルートをアクティブ化した後は、基本状態であるLEGモードになります。計3モードは飛行中、自由に切り替えられる設計ですが、実際は非常に高い頻度で、途中から操作を受け付けなくなります。取りあえず解決するには、
 ・GPS Settingsの空港検索機能を使った後、再び選択ボタンを押す。
 ・それでも回復しなければ、登録済みウェイポイントをクリアして、
  すぐ必要な1カ所だけ入力し、アクティブ化し直す…という方法が、あるにはあります。

 以上3モードのうち、OBSモード使用時にHSIをスレーブ化(GPSに連動)して、さらにオートパイロットの針路保持機能でNAVI1 CDI Courseモードを選択している場合は、OBS(進路選択つまみ)を回転させてコース方位を変更することにより、まるでVORラジアルを変更したときのように、機体の飛行経路を変化させて、所定のコースへ滑らかに合流させることができます。
 ただし、オートパイロットでVORラジアルやILSをトラッキングする場合のような、タイトなS字機動は行ってくれず、じわじわとコースに寄っていく感じです。目標のウェイポイントが至近距離にあり、かつ針路が大きくそれた状態では、GPSは直ちにコースへ合流することを諦めて、むしろ遠ざかる方向へいったん機首を向け、ウェイポイントを通過後(!)に、コースに合流しようとします。
 またLEGモードにも、問題があります。目的地に設定したウェイポイントを、うっかりそのまま通過してしまうと、GPSは根拠不明な針路を勝手に算出して大変針し、高度保持もゼロになります。総じてGPSの振る舞いは、Atlas画面で常時監視した方が良さそうです。

●英文Wikiの拙訳:
 以下、英文Wikiの翻訳です。なるべく逐語訳を目指しましたが、若干の意訳が混じっています。また付随的な記述の一部は省略し、(以下略)などと表記しました。では、本文です。

<GPS>
 このページは、FlightGearがサポートするGPS一般について論じたもので、実世界におけるデバイスや操作法の詳細については述べていません。とは言うものの、(実物のGPSと)かなり似ています。また読者が、電波航法と基本的な計器飛行の知識があるものとしています。GPSの使用法そのものについては以下のページをご覧下さい。
http://wiki.flightgear.org/index.php/Avionics_Development_Resources#GPS
 このGPSは書きかけ項目です(以下略)。

★基本的な情報:
 GPSは位置や方位、速度の情報を、FlightGearの他の計器類から独立して−−例えば高度は高度計に依存せず−−計算します。GPSが計算した値は、他の計器とは誤差や精度が異なっています。(FlightGearのGPSは、あまりにも正確すぎます。将来は何かオプション・モデルが付け加えられるでしょう)
 これらの情報には、(対気速度ならぬ)真対地速度と(機首方位とは異なる)グラウンド・トラック(hide注:航跡。風の影響を受けた対地針路)が含まれています。別の言い方をすれば、飛行経路と運動の方向(の基準)は地面から得ています。

★アクティブなウェイポイント:
 GPSは、空港やVOR、NDB、FIXまたは様々な方法によるユーザー定義のアクティブ・ウェイポイントを追跡し、目標への方位(bearing)、距離(range)、到着までの時間などを提供します。

★各種モード:
・OBS
OBSモードは、ウェイポイントにチューニングされた航法無線機のように振る舞います。希望するラジアル(原注:無線ダイアログから選択)を選ぶと、GPSはto/fromフラッグとコースからの誤差を、VOR受信機のように示します。NDBやFIXについても無線受信なしに働き、受信範囲外であるとかサービス時間外、などと言うことはありません。OBSラジアル方位は、いつでも調節することができます。(念のためhide注:OBSはオムニ・ベアリング・セレクタ=ラジアル選択ノブ。飛びたい針路をセットするつまみ)
・LEG
LEGモードはたいてい、(ルートマネージャで定義された)アクティブ・ルートに利用されます。(この場合の)アクティブ・ウェイポイントは、現在のルート上にある次のウェイポイントで、GPSは直前のウェイポイントとアクティブ・ウェイポイント間の直線飛行コースの誤差を計算します。GPSはアクティブ・ウェイポイントに到達すると、もし次のウェイポイントがあれば、自動的に切り替えます。
・DTO
このモードは、あるウェイポイントへ直航するのに使われます。DTOモードに入れると、コース中央に向けて誤差が修正され、リクエストされたアクティブ・ウェイポイントへの針路が計算されます。
ウェイポイント上に到達すると、GPSはインバウンド・ベアリングを飛び続けます。★ただし★、アクティブ・ウェイポイントが、アクティブ・ルートの一部になっている場合は、GPSは自動的にLEGモードに切り替わり、ウェイポイント・シーケンスを再開します。

★ウェイポイントを見つける:
 ウェイポイントは次のように選びます。
・IDか名称で探す。全部の綴りか最初の一部を入力して検索すると、それに近い順に、ウェイポイントが次々と表示されます。
・最も近いウェイポイントを選ぶ。最も接近した10のウェイポイントがロードされ、検索されます。
・アクティブ・ルートからウェイポイントをロードする(フライトプラン)

★見越し旋回:
 まだ実現していませんが…もうすぐ。(hide注:残念ながらVer.2.0では、advroutemgr.nasは効果がないようです)

★航法援助施設を参照:
 GPSコードは自動的に、航法援助施設を参照します。もし一つが近くに見つかると、位置と方位、距離および周波数を提供し、この周波数に航法無線機を同調します。これはパイロットが、GPSの表示した位置を、航法援助施設の参照によりチェックできるよう想定したものです。

★一般的な手続き:
・ATCのダイレクト進入許可を実行する:(hide注:この項目の訳は自信ありません)
ATCは一般的に、エリア内のウェイポイントへ出入りする航空機を排除します。特に出発に関しては、SIDの様々なウェイポイントをスキップします。この場合、単にアクティブ・ウェイポイントをロードし、前方のウェイポイントを探して、DTOボタンを押します。GPSはウェイポイントに向けてダイレクトに飛び、必要に応じてLEGモードを再開する前に、いかなるウェイポイントもスキップします。
・進入復航:
 現在のGPSコードには、アプローチ・サポートがありませんが、進入復航点をアクティブ・ウェイポイントにセットすることには価値があります。復航する場合は、直航(Direct to=DTOモード)を実行します。あなたの唯一の心配は、いつ進入をミスするか(進入復航するか)だけです。

<Route Manager>
★序論:(略)
★コンセプト:
ルート・マネージャーはフライトプランを管理し、出発地、目的地、代替空港、そしてウェイポイントのリストなど巡航情報から成り立っています。全ての情報は今のところ選択可能で、リアルではないが便利です。ルート・マネージャーのウェイポイントは、航法援助施設のIDか、明確な緯度経度、または航法援助施設からの(方位と距離による)オフセットで登録されます。それぞれのウェイポイントはVNAV(バーティカル・ナビゲーションモード)で使われる、関連の高度(情報)を持っています。将来は特に速度制限など、他のデータもウェイポイントに関わるでしょう。
 ルート・マネージャーは、HUDにデフォルトで現れるGPSダイアログに示された(潜在的にはコクピットのコクピットにも表示可能な)、現在選択中のウェイポイントを管理します。一般にルート・マネージャーは現在選択中のウェイポイントを通過すると、次のウェイポイントに自動的に移動しますが、アクティブ・ウェイポイントはマニュアル選択される必要があります。
 二つのウェイポイントを結ぶ「レグ(区間)」は、重要な専門用語です。多くの実世界の装置はレグを最初に取り扱います。FlightGearのルート・マネージャーでは、「アクティブ・レグ」とは、前のウェイポイントから現在のウェイポイント(今向かっているウェイポイント)のことです。

★ルートを定義する:
 もっとも簡単なルートの定義法は、ウェイポイントのIDを一つずつ入れることです。航法援助施設のIDはそれぞれ固有のものではないので、ルート・マネージャーは出発空港か直前に定義されたウェイポイントを基点に使ってIDを探します。実際問題、重複する名前の航法援助施設は十分に離れており、これで自動的にうまくいきます。
 以下の方法でオフセット・ウェイポイントを作ることにより、自分で出発から到着までの手順をサポートできます。ルートは単純なXMLフォーマットで読み込んだり保存できるので、手で入力するよりテキストエディターで作った方がいいでしょう。フライトプランを作るツールも計画されており、興味があるなら開発者リストにコンタクトしてください。将来は航空路を使った自動ルーティングや、VOR-VORルーティングも加えられるでしょう。
 ウェイポイント定義の例:
KJFK
  空港ID。
UW
  航法援助施設(NDB、VORまたはFIX)ID。
TLA/210/35
  航法援助施設を基準とした場合の位置(=オフセットという)。
  この例では、TLA VORから磁気方位210度35nm先。
WOBAD@18000
  WOBADのFIX上空1万8000ft。
SPL/050/12.3@2000
  SPL VORから磁気方位50度ラジアル12.3nm地点の上空2000ft。

★ルートをアクティブ化する:
 ルートをアクティベートすると、幾つかのチェックが実行され、選択された出発地と到着地情報に基づき、最初と最後のウェイポイントが作られます。取りあえず、出発滑走路が(最初の)ウェイポイント・ゼロですが、将来は(出発プロシージャーがサポートされれば)よりふさわしいプロシージャー・ウェイポイントが作られるでしょう。
 これはまた、将来は上昇の頂点や下降への頂点のような、巡航情報を計算する基点となります。また他の装置(特にGPS/FMS)は、ルートのアクティベートに基づき、最初のレグのシーケンスに入るとか、(プログラム内部の)カウンターやタイマーをリセットする、などの変更を発動します。

★ルートを飛行する:
 ルートがアクティベートされると、GPSシステムは「レグモード」に入り、(すべての)ウェイポイントを飛び切ってしまうまで、自動シーケンスに入ります。こんなシステムを持っていなかった(歴史的な)航空機を含め、すべての航空機がルートマネージャーとGPSを使えることにご留意下さい。これはカジュアルなユーザーや、テストなどに便利でしょう。
 特に、GPSは一般的なオートパイロットのプロパティを操作します。True Headingモードでは、ルートマネージャーのルートを使って飛ぶことができます。
 HUD(Hキーで起動)はデフォルトで画面左上に、選択中のウェイポイントのIDと到達までの距離や時間、現在のグラウンド・トラック(対地針路)、ウェイポイントへの磁気方位、そしてレグからのずれ(マイル単位)を含む、ウェイポイントとレグ(区間)情報を表示します。(以下2行略)

★滑走路にぴったり合わせる:
 ルートマネージャーは、個々の位置への誘導を提供するだけなので、滑走路やILSローカライザに機首を合わせるには、幾つものウェイポイントを使う必要があります。全てのILSアプローチは事実上、そのために作られた高度制限を伴うフィックスで定義されています。例えば、 KPHX 08 approach(hide注、原文にはアプローチ・チャートへのリンクあり)では、進入開始点から20nmの間にALLIS、SARTE、HIKID、ILIKE、JAMILとWAZUPが定義されています。(以下、チャートの説明は省略)

★プロパティ:
 ルートがアクティブになっていると、ルートマネージャーは、航空機の現在位置/速度と、ルートをどこまで進んだかに基づき、幾つかの情報を提供します。これらの値は、現実のシステムでは航法コンピューターで計算されますが、FlightGearでは便宜上、ルートマネージャーで行われます。記録される値は、離陸時間、予定飛行時間(ETE)、残りの飛行距離などです。どんなものが得られるか、プロパティ・ツリーをご覧下さい。

★もっと読むには:
 詳細については Route manager internals をご覧下さい。
http://wiki.flightgear.org/index.php/Route_manager_internals

 =訳文、以上です=
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なし 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-5-20 2:33 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
 hideです。実はパソコンがぶっ壊れまして、思わぬ長いご無沙汰を致しました(^^;)。

 前回までの「旅日記」は、3月末に南極点へ到達して、ロス海に面したマクマード基地まで北上し、次に新型GPSの扱い方に関して、若干のご報告をしたところまででした(toshiさん、ご紹介下さいましてありがとうございます)。その後、南極大陸からニュージーランドの首都ウェリントンに到着し、一連の南極フライトを終えたのですが、この最終航程をご紹介しようと思った4月の始めに、突然パソコンの画面表示に異常が現れ、結局買い換える羽目になりました。今回は、このお話から始めましょう。

●初めて、マウスコンピューター製品を購入:
 今回発生したトラブルは、デスクトップ画面が6分割で表示され、解像度も極端に落ちる…というもので、起動ドライブのバックアップ書き戻しなど、あれこれ手を打ちましたが効果がなく、ハードの故障と見なして購入系列店へ修理に出しました。「たぶんグラフィックボードの問題。交換に2〜3週間」と説明を受けましたが、その後さっぱり音沙汰がなく。不便この上ないため、修理完了を待たずに先日、新しいノートを購入しました。(故障機について本日確認したところ、台湾からの部品取り寄せに1カ月掛かるそうです。結局マザーボード交換が必要となり、3年保証を付けておいたのは大正解でした)
 新たなパソコンの候補は、グラフィックボード内蔵のBTOノートに絞りました。壊れたマシンもパソコン工房のGeForce内蔵ノートで、「余計な機能やソフトは無し。ただし基本性能は、同価格帯の大手家電メーカー品より上」という方向性が大変気に入りまして、今回も踏襲した次第です。ただ購入時点では、パソコン工房は在庫が非常に少なく、またRadeon搭載機しかなかったので諦め、雑誌で知った「マウスコンピューター」の大阪直営店(日本橋電気街)を見に行きました。余談ながら、パソコンを使わずにパソコン選びをするのは、なかなか手間が掛かるものですね(^^;)。

 購入したのは15.6インチ(1366x768)ノートで、次のようなスペックです。
 ・Intel Core i7-720QM 1.60GHz 2.99GB
 ・GeForce GT240M 1GB
 ・Windows-XP SP3(Win7も同梱、Officeと3年保証付き)
 以前のCPUはCore2Duoでしたので、2気筒からV8エンジンに乗り換えた気分です。また今回のグラフィックボードは、現在のGeForceの中ではエントリーモデルだと思いますが、店頭では派手なバトル系ゲームが、40fps前後でサクサク動いていましたので、恐らく不自由はないものと判断しました。
 購入後さっそく、次の環境でFlightGear Ver.2.0.0を動かしてみました。
 ・表示サイズ:1024x768
 ・場所:KSFO上空5000ft
 ・描画設定:FeaturesとRenderingオプションを、ほぼ全項目オン。いずれも最大負荷状態。
 ・雲量:3D表示で、4000ftにScatterd、19500ftにCirrus。
これでフレームレートは22〜40fpsくらい。十分に快適です。飛行エリアを、ややオブジェクトの少ない大阪上空に移しますと、ほぼコンスタントに50fps台後半の快速を保ちまして、まさに夢のようです。

●視界100nmに挑戦、日本海・瀬戸内海・太平洋を一望する:
 フレームレートはさほど高望みしませんので、グラフィックの余力を利用して、従来より大規模な視野を楽しむことにしました。すでに、それなりの画像処理環境をお持ちの方には、当たり前のお話だと思いますけれど、私には初めての経験で、かなり感激しました。少し詳しくご報告させて頂きましょう。

 パソコンの負荷を軽くするため、私は長らく Advanced Optionsの Visibility設定を、12nmくらいに抑えていました。特に携帯ノートばかり使っていたころは、チップ内蔵式のグラフィック・アクセラレータでしたので、パワーもメモリー容量も十分とは言えず、FlightGearの異常終了を少しでも回避するには、こうするしかありませんでした。
 この設定では当然、約20nm四方のマップデータしか生成されません。坂井三郎氏は「続・大空のサムライ」の中で、「五千メートル以上に上がると、大阪付近なら太平洋、瀬戸内海、日本海が同時に見える」と語りましたが、こんな雄大な景観は、夢のまた夢です。FlightGearが描く20nm四方の大地は、坂井氏の挙げた例に近い高度20000ftを飛んでいる場合、せいぜい8畳間の中央に立って、カーペットを見下ろす画角に過ぎないからです。この場合、地平線からカーペットまでの間には空白が生じます。以前のMSFSやYSFSはこうした空白を大地の緑や茶色、或い海を示すブルーで、取りあえず一色に塗りつぶす仕掛けでした。いっぽうFlightGearの場合は、自動的に空白へモヤを発生させてボロ隠しをします。少ない情報量でリアルな風景が得られる巧みな設計ですけれども、Visibilityを短く設定していると、中東の砂漠を飛ぼうが快晴に設定しようが、ごく低空飛行を除いて、ほぼ常に下界は白いモヤに覆われてしまい、強いフラストレーションが溜まります。私はOV-10ブロンコ改を愛用していた昔、これが嫌いで、もっぱら低空を飛んでいました。

 グラフィックボード搭載機に換えてからも、つい12nm程度のVisibility設定を使っていましたが、今回初めて70nmに変更して、国内外の空港数カ所で飛行テストをしたところ、まことに劇的な効果が得られました。例えば都心上空では、房総半島がスッポリと銚子まで視野に入り、振り向けば伊豆半島の大部分と、富士山が輝いていました。なんたる解放感! 高みに昇れば昇るほど、予想を超えた遠くが見えて、びっくりです…「飛ぶ」とは本来、そういうものですよね。
 続いて、さらにVisibilityを100nmに拡張しました。マシンが描くマップの面積は、70nm時の約2倍ですので、少々設定を変更します。Enhanced runway lightingとSpecular highlightを切って、Advanced OptionsのShadingをSmoothからFlatに落とし、負荷に余裕を作って、再び飛行テストをしました。関東平野やカリフォルニアでは、上昇につれてスムーズに視野が広がっていくのですが、伊丹の大阪空港を離陸した場合は、なぜか最初はマップ面積が小さく固定され、しばらくは神戸空港くらいしか見えませんでした。しかし高度20000ftを超えたあたりから、バリバリと視野が拡がり、琵琶湖と日本海、四国の一部と太平洋などが描き出されました。これはまさに、坂井氏が戦前、戦闘機から味わった視界ではありませんか。感動しました。

 京都府・長岡京市の上空で、約40000ftへ上昇したところ、北は若狭湾全域と福井の越前岬、西は姫路市や徳島県鳴門付近、南は紀伊半島南部、東は名古屋市街地と木曽川、渥美半島が見え、最大で220キロくらいの視界が得られました。雲を消したテストでは、さらにパソコンの負荷が減り、同じ地点から浜名湖まで視認可能でした。地球の曲率の関係上、高度40000ftでは水平線は約400キロ先になるため、実際は能登半島や伊豆半島、富士山も見えるはずですが…そこまで行かなくても十分に、「無限の広がりを持つ大空」の気分は味わえます。また気象状態さえ上々なら、仮に洋上で数十nmのミスコースをしたとしても、余裕で目的地の孤島が見えてしまうわけで、長大な視界は航法上も、非常に大きな意味を持っています。出来ればこの「目」を使って、世界一周をしたかったと、つくづく思いました。
 例え10nmの視界でも、もちろんFlightGearは十二分に楽しめます。しかし出来ることなら、やはりグラフィック機能は強力なほうが嬉しいですね。このへんの事情は「真に音楽を楽しむために、果たして高性能のオーディオ機器は必要か?」という問いと、よく似ています。例え片耳イヤホンで聴いても、もちろんベートーベンはベートーベン。とは言うものの、かなり味は違う…というわけですね。
 最後に一応、Visibility設定144nmも試しましたが、そろそろハードの限界に達したと見えまして、実際の視界は100nmの時と同じでした。

●ニュージーランドへの道:
 次に、本題(?)であったはずの、南極からの帰路についても、ご報告しましょう。
なにぶん1カ月前のお話で、正直ちょっと記憶と気合いが低下しておりますし、飛行中の画像やメモの一部はバックアップを取りそびれたまま、古いパソコンとともに、手元を離れています。同じルートを飛び直すことも考えましたが、南極大陸のマップはバックアップがなく、再ダウンロードは大変ですし、すでに春分を過ぎて、現地の日照時間が短くなったこともあり、断念しました。あるだけの資料でお話を進めます。
 まずコースです。先の飛行で到着したマクマード基地は、海を隔ててニュージーランドに面しています。南端のインヴァーカーギル市は数年前、すでに「縦周り世界一周」で訪れていますので、日本までの飛行は省略し、ここを今回のゴールに定めました。マクマード基地から直行してもいいのですが、地図を見ますと実世界では基地の西方に、地磁気の南極点にあたる「南磁極」があります。FlightGearでもこれが正しい位置にあるかどうか、ぜひ立ち寄って確認したいと思いました。以下が飛行計画です。

◎Mucmard Station Pagasus Field NZPG
緯度経度=77.57.48S-166.31.34E 航法援助無線なし
    ▼326度964nm(RL=ラームライン)311度955nm(GC=大圏コース)
△南磁極(6432S-13752E付近)
    ▼42度1486nm(RL)57度1474nm(CG)
◎インヴァーカーギル空港NZNV
 VOR116.80 46.24.41S-168.19.03E
計2429nm

●支援用の空母を準備する:
 使用機は、今回もピラタスPC7改。増槽付きで赤い「南極仕様機」ですが、ニュージーランドでは舗装滑走路に降りるのですし、航続距離延伸のため空気抵抗を減らそうと、スキーを外して引き込み脚に戻しました。離陸時は、氷上滑走路をタイヤで走るわけですが、これは目をつぶることにします…。
 少々気になるのが、南極および周辺海域特有の、猛烈な突風です。離陸の際は広い氷上ですので、横風を食って少々滑走路をそれても、問題ありませんが、洋上で向かい風に遭うと、ニュージーランド南島に届かない恐れもあります。そこで今回は試験的に、燃料切れに備えて飛行コース上に、空母Nimitzを配置することにしました。思えば贅沢なお話ですが、実際の航空史でも、ブレリオの英仏海峡横断なんか、不時着に備えてフランス海軍が駆逐艦を出してくれたのですから、まるっきり荒唐無稽でもない…でしょう?

 さっそく、マクマード基地の沖合にNimizを浮かべましたが、この艦はPC7改のレーダーに映らず、TACANでも装備しない限り、広い洋上では会合が困難と判明。Aircraftモードの物体ならレーダー・ターゲットになりますので、上空1000ftにヘリを出し、空母と同じ緯度経度を起点に、同じ針路、速度で航行させることにしました。次は発着艦の再訓練。左斜め後方から40Ktの風を受けるという猛烈な悪条件でしたが、ごくあっさり着艦に成功しました。極地の風をさんざん体験したおかげで、私は強風下のマニューバーが、少しうまくなったようです。
 この時は、艦橋よりかなり前に停止したのですが、あえてそのまま発艦テストに挑戦。フルフラップのまま再加速し、思いきって艦首から「落っこちた」ところ、わずか60Ktの気速でしたが、ちゃんと浮揚しました。離陸時のフラップ角度は、半分以下が普通ですが、PC7改やブロンコ改の場合は、フラップの抵抗による加速力低下よりも、失速速度(=離陸速度)低減のメリットの方が大きいようで、裏技としては有効です。(一般的には、まあ無茶でしょうね。重量超過状態の軍用輸送機が、離陸直後にフルフラップを使い、建物への衝突を緊急回避した話を読んだことがありますが、滑走中から最大角度にしたわけではありません)
 最後に、南磁極とインヴァーカーギルの中間点に空母を配置し、走らせるxmlファイルを書いて、飛行準備はおしまいです。

●FlightGearの「地球」は丸いが、「地面」は平ら:
 ところで、先ほど見た一辺100nmの視界に広がる大地は、果たして球体の一部でしょうか、或いはシンプルな平面として作られているのでしょうか。まぁ見た感じは平面のようで、特に丸く作る必要もなさそうですが、答えを出すためのヒントが、南極にもちゃんと転がっていました。
 マクマード基地から6nm沖の海上には、ヨットが1隻浮いています。海面と同じ高さの滑走路に駐機したPC7改のコクピット視点から、この艇を目一杯にズームアップしてみたところ、船体は完全に喫水線まで見えていました。機上の私の眼高は、わずか海抜2mくらいですので、実世界なら6nm(11キロ)も離れると、地球の丸みの関係で、ヨットはもう少し、沈んで見えなくてはおかしいのです。海抜Hメートルの眼高から、海抜hメートルの目標物を見ることの出来る最大距離M(nm=マイル)は、以下の式で求められます。
      M=(√H+√h)×2.083
 つまり6nm離れていますと、目標は高さ2.2mまで、水平線下に隠れます。FlightGearのヨットは30ftかそこらのクルーザーで、このクラスの艇の乾舷(喫水から甲板までの高さ)は1mちょっとだそうですから、本来はキャビンの屋根まで海に隠れ、水平線からは多分、マストや帆だけが見えているはずです。
 FlightGearの世界では、航法と天文学に使う計算上のマクロな地球は、ちゃんと「丸い」ものの、視覚上の地面は単なる平面として設計されていることが、このことからも分かります。なおFlightGearのヨットは、広い洋上でも目立たせるため、実際の倍くらいの大きさになるよう、縮尺を誤魔化してあります。そういえば、たまに見るホルスタイン種の牛も、近づいてみますと、ゾウくらいのサイズがありますね(笑)。

●南磁極の位置を確定:
 Wikipedeiaによると、南磁極は2005年に南緯64度32分、西経137度52分(南極大陸のウィルクス・ランドと呼ばれる地域の沖)にあり、毎年約10kmずつ、北または北西に移動しているそうです。1914年のデータでは、現在より約600nmも離れた陸上にあったそうで、ずいぶん派手に動くものですね。南磁極へ到達するには、偏差は関係なく、ひたすら磁気コンパスが指す「南」に向かえばいいので、簡単そうに思えますが…実際は磁極に近づくほど、磁力はコンパスの針を下に引っ張る向きに費やされ、方角を指す水平分力はゼロに近づくので、コンパスだけで精密に磁極の位置を割り出すのは、ほぼ不可能です。昔の研究者は、苦労して磁極の周辺を移動しながら、地磁気観測と天測を繰り返し、計算と作図で位置を決定したと思われます。
 幸い、FlightGearの磁場は強度が一定ですし、PC7改には「磁気俯角・偏差航法」のために開発した、デジタル偏差計と俯角計があります。磁極を中心に放射状に広がる「等偏差線」のどれかに乗って飛び、同心円状に広がる「等俯角線」がゼロを指せば、そこがゴール。あとはGPSで位置を計るだけです。またFlightGearにおける各地の偏差・俯角の分布は、私が知る限りでは緯度・経度にして1度程度の誤差で、05年の観測データ地図と一致していますので、磁極の位置もおおむね正しいはずです。

 …以上の仮定のもとに、主にGPSを使って南磁極の予想点へ向かい、磁気測定で精密に位置を詰めたところ、だいたい予想通りの地点に磁極を発見しました。この書き込みのため、今日改めてUFOを飛ばして、等偏差線をたどり、俯角を測定して位置を出し直しましたが、Internal propertiesの俯角が89.992度を示す(つまり、方位磁石の針が垂直に立つ)海上の一点で、UFOのHUDが表示した正確な緯度経度は、
           南緯64度26分02.2秒、東経137度26分38.4秒
…でした。05年の実際の位置を基準に計算すると、真方位で298度の方向に約12.5nmずれていましたが、フライトシムの地球環境再現データとしては、驚くべき高精度と言ってよろしいでしょう。改めて「ハンパじゃないソフトだなあ」と感心しました。
 なお、PC7改によるフライトでは、旋回半径が大きく、あまり減速できないため、ここまで数値を正確に詰めることは出来ませんでした。余談ながら、本件のような探検フライトには、本当はbluebird(UFOモードで飛ぶ、ワンボックス・カーみたいなホバークラフト)が最適だろうと思います。超高速や超低速で飛べて、ホバリングも簡単。広い計器盤を改造して、地磁気関係の計器やもっと多機能なレーダー、TACANなど、思いつく限りの装備をしたら便利でしょうね。疲れたら景色のいいところに降りて、あらゆるドアやハッチを開き、キャンピングカー気分で休憩…なんてのも、楽しそうです。

●消えた救難空母:
 いっぽう、ガソリンスタンド代わりのNimitzですが、残念ながら、洋上で発見することは出来ませんでした。レーダーには映ったため降下して、試験的に会合しようとしたのですが、2000ftくらいまで降りても、艦もヘリも、ついに見えませんでした。燃料が足りたのは幸いです。
 以前お話ししました航海衛星の実験では、AIオブジェクトである衛星を、ある出発点から一定の方角へ走らせた場合、非常に長距離を進んだ後では、レーダーに映るがオブジェクトを視認できないとか、逆に視認は出来るがレーダー反応がない、という問題が起きました。今度も同様のケースであったようです。先日の極点飛行では、帰路に燃料切れを起こしつつも、不時着地点まで輸送機を飛ばし、燃料を空輸したと想定してPC7改に給油しましたが、さらにAI空母との会合が可能になれば、地球上に小型機で到達できない地点は、ほぼ無くなるだろうと期待されます。今回は実証試験を兼ねていたのですが、残念でした。

●ビル街変じて「発掘現場」に:
 やっとの思いで、ニュージーランド到着です。実は飛行中に用事が出来て中座し、パソコンの前に戻ってきましたら、機体はインヴァーカーギルをとっくに過ぎ、南島を縦断中。よく燃料が持ったものですが…そのまま北島にある首都ウェリントンを目指しました。既に夜ですが、最近は夜間のILS進入を全く練習していませんので、GPSを使っているのに、グライドパスを捕まえるには、思わぬ苦労をしまして、ちょっと無理な機動をしたところ、危うく湾に突っ込みかけました。ううむ、落ち着かねば。
 ILSに乗り、最後の最後になって、今度は滑走路灯の見え方が不自然なことを発見。どうも右半分が、見えたり隠れたりするのですね。タッチダウン直前の闇の中、不意に事態がピンと来まして、とっさに左へ回避。あろうことか、滑走路端の右半分をふさぐ格好で、8階建てのビルが建っていたのです(まさか、ジョークではないでしょうね)。またランプイン後に燃料残量を調べますと、確か数十ガロンならぬ、わずか数十ポンドでした。まあこんな調子で、この日は幸運に次ぐ幸運に恵まれ。別の言い方をすれば、ミスや、およそヒロイックではない危険な場面が相次いだものですから、いささかすっきりしない気分で着陸しましたが、総体としては、一連の南極飛行は大変充実したフライトでした。

 到着後、昼間の光のもとで、バックアップHDDにデータが残っていた、スキー付きの南極仕様機(スキー無しは手元になし)を使って、けしからんビルの写真を撮り直しました。また3月にtigerさんがマイアルバムでご紹介下さいました urban Shader機能を、さっそく新しいパソコンに組んでみました。すでに従来のマシンで試していますが、市街地テクスチャーの上に、本当に3次元の家が立ち並ぶ光景には驚きました。陽光を反射すると、乾燥気味で暑苦しい「空から見たビル街」の雰囲気がリアルに再現され、見飽きません。
 すっかり気に入ってしまったのですが、非常に残念なことに、今度買ったパソコンとは相性が悪いようです。マイアルバムでご覧に入れました通り、ビルの凹凸が上下逆に表現された上、テクスチャーの色合いも赤茶色に化けてしまいまして、まるで…チョコレートの空き箱か、考古学の発掘現場を見下ろしているようで、非常にがっかりしました。もしも解決法が分かりましたら幸いです。

 私事ながら、4月から職場を移りまして、タスクの中身も拘束時間も、非常にハードになりました。以前のように、せっせと長距離を飛んでは、どっさり書くのは相当難しく、最近は伊丹周辺のショートフライトで、技量保持をはかる日が多いのですが、書き込みの間隔や量は多少変化しましても、今後もさらにテーマを開拓しながら、のんびり「旅日記」を続けさせて頂ければ、と思っています。
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なし Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還

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toshi  長老   投稿数: 1143
hideさん、こんばんは。
toshiです。

ご復活、おめでとうございます。
PCトラブルとのこと、大変でしたね。
今後の旅日記も楽しみにしています。

さて、FlightGearでの地磁気の取り扱いについてちょっと調べてみました。

訳)バージョン履歴 - FlightGear JP Wiki」にちらっと書かれているのですが、2007年12月17日のv1.0.0リリースで
「World Magnetic Model 2005 WMM2005) にアップデート (磁気コンパス等の機能向上)」
とうたわれています。

WMM2005に関するFlightGear内のソースコードを探ってみたところ、SimGearに含まれるcoremag.cxxに行きあたりました。

simgear/magvar/coremag.cxx
http://gitorious.org/fg/simgear/blobs/next/simgear/magvar/coremag.cxx

ざっと眺めると、緯度・経度、高度、日付における局所的な磁気ベクトルを計算するプログラムのようです。
また、世界の磁気モデルに対して位置座標をどのように変換するか、誤差がどの程度であるか、といったことについてもコメント行の中に解説されています。

このことから、FlightGear内での磁気方位は、磁場ベクトルの局所的な磁気変動や時間変動を考慮したモデルに基づいているものと考えられます。

なお、WMMは5年ごとに更新され、現在はWMM2010が公開されています。
World Magnetic Model - Home Page
http://www.ngdc.noaa.gov/geomag/WMM/DoDWMM.shtml

それから、地平線の彼方の見え方についてですが、ちゃんと調べたわけではないのですが、「The FlightGear Manual Chapter 3」には、
--enable-horizon-effect, --disable-horizon-effect
Enable (default), disable celestial body growth illusion near the horizon.
と書かれており、何か関係がありそうな感じがしますので、有効/無効にした状態で比較すると違いが見えるかもしれません。

ちなみに、$FG_ROOT\preferences.xml を見る限りでは、デフォルト設定は「無効」になっていると思います。
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なし Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 toshiさん、地磁気に関して詳しくご教示を頂きまして、ありがとうございます。
さっそくWMMのサイトから、新しい偏差と俯角のチャートをダウンロードしました。2010年版が出ていることには気付きませんでした。なるほど、5年おきに更新されるのですね。ざっと05年のデータと見比べますと、日本付近の等偏差線は、ほぼ無変化ですが、ブラジル沖の南大西洋などは、それと分かるずれが起きていました。
 またcoremag.cxxに関するご紹介によりますと、FlightGearの磁気データは、経年変化を織り込んであるのですね。これは驚きでした。南磁極の位置は、北ないし北西方向にずれつつあるのだそうですが、今回実測した位置は確かに、05年の公称緯度経度よりも北西側にあったので、「もしや、補正が掛かっているのかな?」という考えもアタマをかすめましたが、正直まさかと思っていました。サイトによっては、任意の緯度経度を入れると、最新の偏差の値を返すオンライン計算機を公開していますが、あれも一応使える、というわけですね。磁気コンパスの振る舞いを、いかにリアルに再現するか、この執念は実に凄いと思います。日本ではフライトシムは、圧倒的大多数のユーザーにとって、残念ながら高度なゲームの一種に近い感覚だと思いますが、アメリカなどでは、まさに「操縦を学ぶための、仮想現実」としての役割も色濃いのでしょうね。

 いっぽう、水平線の見え方についてですが。horizon-effectのオンオフでは、それと分かる変化はありませんでした。これは多分、日の出と日の入りに、太陽が大きく見える現象を再現する機能なのでしょう。(写真に撮っても視直径は変わらないので、あれは屈折のせいではなくて、水平線や付近の事物と大きさを比較することによる、錯覚だそうです)
 水平線の見え方自体を制御するのは、Renderingの中にある Sky Blendのようです。デフォルトでは確かオンですが、オフにしますと天球から雲とモヤが消え、ペンキで塗ったような青一色となり、ちゃんとモヤが描かれている地表との間は、くっきりと不自然に、不連続となります。同じページにあるfogをdisabledにしますと、モヤが完全に消えるのかと思いましたが、そうではありませんね。Wizardの機能は、分かったようでいて、よくつかめていない部分があります…。
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なし 大坂城とJR大阪駅

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 ここんところ、母港の伊丹(RJOO)を飛び立って大阪市内を一周、というショートフライトが多いので、今回は大阪を舞台に、ランドマークに使える建物作りを始めました。簡略ながら、大坂城とJR大阪駅(実物は改築中、来春完成)などが出来ましたので、マイアルバムで紹介させていただきます。

 これまでは FlightGear Scenery Databaseから、適当なビルや格納庫をダウンロードして、UFOを使って並べていました。こうした既成オブジェクトは良くできていて楽しいですが、所詮は「借り物」であって、配置したい現地の建物とあまり似ていません。またサイズによりますが、調子に乗って多数配置しますと、起動に何分も掛かってしまう場合もあります。そこで、テクスチャーの張り込みを含む精密なモデリングは諦め、遠くから見ることを前提とした、ごく簡略な工作法で軽く作り、しかも「ああ、あの建物か」と分かる程度に特徴を捉えたオブジェクトは自作できないかと思い、習作第1号として大坂城を造ってみることにしました。

●天守閣と公園などを造る:
 おおまかな設計方針は、上に述べたとおりですが、付け加えるに、
(1)大いに手を抜くが、建物の各部位で、手抜きのレベルをそろえる。
(2)建物全体の長さや高さは、なるべく正確に。しかし各主要部の寸法は、
   相互にバランスが取れていれば大ざっぱでよい。5%程度の誤差は許容する。
(3)出来れば複数の建物で、基本パーツの使い回しをする。
…などを念頭に置きました。

・複雑極まる城の構造:
 検索では、大坂城の詳しい寸法や三面図は、なかなか見つかりませんでした。しかしGoogleEarthに、非常に精巧な3Dの大坂城が配置されていましたので、フリーウェア「斜めものさし」を当てたり、GoogleEarthの標高測定や物差し機能を使って、各部を採寸することができました。この寸法メモをもとに、AC3Dの画面に1m=100ピクセルの縮尺で、フロアや屋根を描いていくことになります。
 採寸する前は、「まず石垣を作る。その上に1階の壁。さらに上に屋根があり、次に2階の壁…」という風に、下から順番に整然と層を作っているのだと想像していました。しかし、もし私がこのように造っていたら、多分お城ならぬ、「5階建ての犬小屋」が出来上がったはずです(^^;)。
 実際の天守閣は、はるかに複雑な構造物でした。各階の屋根と壁(および部屋部分の空間)は、単純に積み上がるのではなく、相互に融合しています。例えば1階の大屋根は、2階の壁(部屋)をすっぽり串刺しにして飲み込み、さらに3階の屋根の基礎まで届いており、各層・各階が、相互に食い込み合っているのですね。こうした、上下に圧縮したような構造を可能にするため、各層の棟(屋根の稜線)は1層ごとに90度向きを変えてあり、屋根の末端の大きな破風(白い漆喰の三角壁部分)が、上下階同士でぶつからないよう配慮されています。この結果、どの方角から見てもやたらに破風が目立つ、お城独特の外観が出来るわけです。強度や長さの限られた木材を使って、大きな内部空間を確保する大建築を造るには、おそらくは荷重分散のため、こうやって壁面を細かな三角形に分割するしか手がなかったのでしょう。
 実物の天守閣は、非常に細分化された構造材から出来上がっているので、設計図を引いて実際に建てるのは、死ぬほど面倒だったろうと思います。江戸時代にはすでに積分など高度な和算が存在しましたが、構造物の強度計算をする発想はなかったのか、興味を覚えます。

 いっぽう、パソコン上で扱う3Dのパーツは、お互い同士を自在に貫通しますから、いったん相互の位置関係を理解してしまえば、モデリングソフトの上で、箱状の部品(階)や三角柱(屋根)をドラッグして、天守閣全体を大まかにブロックの集合体として造形するのは、案外簡単です。また、例えば下層階の屋根をコピペして寸法を変え、上層に使い回せば能率も上がります。私は簡略化のため、各層を切妻屋根(単純なテント状の、いわゆる屋根型)で造りましたが、本当の城や神社仏閣は入母屋造り(側面だけでなく、破風の側にもひさしがある、凝った屋根)です。これを比較的簡単に作るには、各層の切妻屋根の基部にもう1枚、平たいピラミッド状の屋根を敷き込めばよさそうですが、今回は見送りました。
 最後に、最上階の棟に金のシャチホコをつけて出来上がりです。あれはカシューナッツみたいな形ですが、造形方法を思いつかなかったので、小さなドーナツ型を作って半分に切り分け、金色に仕上げました。天守閣単体のファイルサイズは75kbしかないのですが、実にそのうち63kbが、このシャチホコのデータ量でした。リング状の構造が、多数の面に自動分割されたためと思われます。

・ついでに、大阪城公園を作る:
 せっかく造った天守閣を、ただ市街地に放り出すのも残念ですので、GoogleEarthで大阪城公園の輪郭を調べ、同寸の巨大な緑色の板を造って、お堀の形に青い模様を描き入れ、しかるべき場所に天守閣をマージし、UFOを使ってマップ上に置きました。位置は、公園北側の寝屋川と大川を基準に調整しましたが、FlightGearはもともと道路や線路、河川の配置がいい加減ですので、実際の天守閣の緯度経度を基準に計算しますと、東北東に約150mずれたことが分かりました。しかしこれは、十分に我慢できる誤差です。公園の北東隣には、実景では「大阪ビジネスパーク」のモダンな超高層ビルが並び、クラシックな天守閣との対比が面白いので、代表的なビルを3〜4基、きわめてラフに(ほぼ直方体で)再現しておきました。
 こうして完成した大坂城+公園+ビルは、何しろ大きいので、非常によく目立ちまして、天気のいい日は起動時に伊丹の滑走路上から、また悪天候でも、視程いっぱいの距離から判別可能です。出来は不細工ながら、ランドマークとしては十分に役立ち、満足しています。まあ「犬小屋」は何とか回避して、「土産物屋にある、天守閣型の貯金箱」くらいの出来映えでしょうか…。
 ついでながら、この公園には飛行機が着陸できることを確認しました。Ver.2.0.0からは、立体オブジェクトが衝突判定の対象になっているからですが、今後は好きな場所に、かなり簡単に、着陸施設を自作できるわけですね。空港のエプロン位置などが誤っているケースの修正はもちろん、地下トンネル式滑走路とか、飛行船改造の空中空母なんかを作ってもいいわけで、無限の可能性がありそうです。

●近未来的なドーム…JR大阪駅を再開発:
 難関と思われたお城が、首尾よく半日程度で出来てしまったので、この勢いで大阪・梅田界隈にもランドマークの整備を進めることにしました。
 梅田は、私の感覚では一応「大阪の中心」(関西ネイティブの方は、ご意見が違うかも)で、伊丹へのILS進入コースにも比較的近いので、以前から目印として梅田スカイビル(パリの新凱旋門を転用)や、約10軒の高層ビル集合体をダウンロードして配置し、伊丹へ帰還する目印にしていました。しかしこのビル集合体は、複数のオブジェクトを1個にマージしてある影響か、あるいは地味な配色のためか、少し距離を開けるとモヤに紛れて消えてしまい、目標物としては非常に不便でした。そこで超簡単な白や黒、グレーの直方体でいいから、遠くから目立つビルをポコポコ置きたいと思いました。でも、どうせ作るなら、何か面白いものがいいですね。そこで思いついたのが、大改修中のJR大阪駅です。
 私はよく大阪駅を利用しますが、ホームから数十メートル上の空中に、さまざまな巨大構造物が建設されつつあり、ちょっぴり近未来的なムードが漂っていて、何が出来るのか楽しみでした。現地を歩いてパンフレットをもらったり、ネットで調べた結果、計画の全容が分かりましたが、線路の北側にデパートやオフィスの入る駅ビル別館の建設が進んでおり、これと従来からある南側の駅ビルを結ぶ形で橋上駅を建設し、さらにその上を、一辺100m余りある斜め大屋根(JRの表現ではドーム)で覆う構想です。来春開業だそうですが、一足早く造ってみることにしました。

・サンドイッチ構造のビル:
 さきの大坂城は、大まかに言えば、四角いボックスと屋根型5面体を多数組み合わせただけですが、今度の駅ビルはどうすべきか。ディテールは極力省略しますが、ビルがただのハコではなく各階に分かれ、外壁がガラス張りであることは、表現したいと思いました。
 壁に多数の窓を開け、後で改めてガラスを張るのは、いかにも大変です。そこでまず、縮尺で3m相当の厚みを持った板状の色つき透明ブロックと、厚さ1mの不透明な板状ブロックを造り、重ねてコピペで増殖させ、ガラス張り窓と床・天井部からなる、数十階に及ぶビルの基本構造を造りました。このお手軽な積層式成型法を、私は「サンドイッチ構造」と呼んでいますが、表面に壁のパーツを少し追加しますと、ごくわずかな手間で、かなりビルらしいオブジェクトが出来上がります。マイアルバムにアップした大阪駅の、左側の白いビル(大丸などが入っている「アクティ大阪」)は、こんな風にして完成しました。

 同じ写真の右手には、高層タワーを持つ長いビル(東急ハンズなどが入る予定の「ノースゲートビル」)がありますが、これも基本は同じ作りです。ビル中央部に、橋上駅が貫通する吹き抜け空間を設けるため、東西2棟に分割してサンドイッチ構造を作り、屋上ブロックでつなぐと骨格は完成。でも先ほどのアクティ大阪に比べますと、ガラス開口部の面積が大きく、見る角度によっては、反対側まで素通しになってしまうので、井桁を組み合わせたセパレーターを作って、ビルの上から下まで突き刺し、間仕切りにしました。
 二つのビルを結ぶ橋上駅は、ビル2フロア分のサンドイッチ構造をコピーし、ドラッグで寸法を整えて転用。また大屋根は、航空機の翼みたいな断面形に見えたので、適当な線画を側面図に描いておき、押し出し機能で立体に整形しました。このあたり、3次元モデリングの面白いところですね。かくして、細部は余りリアルではないのですが、JR大阪駅の出来上がりです。大屋根の下をセスナでくぐってポーズを掛け、視野を超ワイドレンズに引いて、さまざまなアングルを試してみますと、面白くてなかなか飽きません。
 マイアルバムの画像を撮影後、JR駅ビルに隣接する「阪急うめだ本店」と阪神百貨店梅田本店、駅の南西にある背の高い「ブリーゼタワー」の3棟を、もう一ランク簡略な作りで配置し、取りあえず「梅田再開発」は一段落しました。テクスチャーの無いビルが並びますと、まるで10年以上前のフライトシムのようで、単なるハコとして作った阪急などは、さすがにちょっと見劣りがしますが、サンドイッチ構造のビルは、自己評価によれば、そう悪くない気がします。「美は細部に宿る」などと言うと、あまりに大げさですが、手をかけて作り込んだものほど、やはりマシになるようですね。

     ○

 私は現在、起動Wizardのデフォルト位置に、伊丹に設置した格納庫内を指定しています。おもむろにピラタスPC7改のエンジンを始動し、格納庫の入り口越しに梅田方面を眺めると、天候によって、これらの自作ビルが見えたり見えなかったりして、なかなかリアルな気分になります。
 FlightGearを実時刻で走らせている場合は、伊丹から、飛行機ですとあっという間の拙宅まで飛んで低空に降り、梅田方面のビル街の見え方や雲量、近くの山々への日照の角度などを、ディスプレー内と窓外で見比べて、「ほとんど、そっくりだ!」と単純に感心したりするのも、また楽し。これまでは日本を遠く離れて、ひたすら地球を縦横に駆けめぐるフライトが多かった次第ですが、ごく身近な日常世界で、仮想と現実の境界線をなで回して遊ぶのも、それなりに面白いものだと思いました。
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なし 極北へ・霧の英国

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 暑中お見舞い申し上げます。virtflyさんが打ち上げておられる花火を、マイアルバムで拝見しました。夏至はつい先日のような気がしますが、いつの間にか夏本番ですね。
 北半球の高緯度では、せっかく日照時間が長いのに、何もしないのは惜しいような気がしまして、今回から北極と周辺部を訪ねるプロジェクト「オーロラ・フライト2010」を始めることにしました。私はこの地域は、まだUFOでしか訪れたことがありません。
 日本からのアクセスはショートカットしまして、春の南極飛行と同様に、過去に寄港した場所をコースの起点とします。これまでの私の北限は、ニューヨークかロンドンだと思いますが、スカンジナビア半島やグリーンランド方面を飛んでみたいので、今回はロンドンから北へ上ってゆくことにしました。

 寒い地方を飛ぶなら、本当に面白い季節は、たぶん真冬です。私はかつて舞鶴に赴任中、厳寒期に植村直己さんの本を読みあさりましたが、これはちょっとした贅沢でした。積雪が80センチを超え、シャベルなしには車に乗れず、水道も凍る寒さの中で「北極点グリーンランド単独行」などの犬ぞり旅行記を読むと、雪と氷との闘いに、生き生きと感情移入できるのです。その意味では、クソ暑い季節に北極圏をバーチャルフライトするのは、かなりミスマッチなのですが…せめて使用機の外観だけでも涼しくしようと、今回のピラタスPC7改・北極用塗装は、ブルーを多めに使ってみました。(マイアルバムをご覧下さい)
 第1回は、2007年11月に世界一周で訪れた、ロンドン近郊のブルックランズ飛行場(世界最古の本格的サーキット。のちに航空機のテスト基地。今は廃港して自動車・航空博物館)を起点に、イギリス国内の観光を楽しんだあと、北海を渡ってノルウェーに進出します。以下がコースです。航法は、基本的にGPSを使います。

◎ロンドン ブルックランズ飛行場(EG11)
   ▼3度8nm
◎ヒースロー空港(EGLL)
   ▼325度66nm 
◎コヴェントリー空港(EGBE)
   ▼319度76nm 
◎リバプール・ジョン・レノン空港(EGGP)
   ▼306度78nm
◎マン島ロナルズウェイ空港(EGNS)
   ▼22度205nm
◎アバディーン・ダイス空港(EGPD)
   ▼48度297nm
◎ノルウェーのフレスランド・ベルゲン空港(ENBR)

●じゃじゃ馬レーサーと、ハコフグ輸送機:
 ブルックランズの滑走路は非常に短いので、あまり長距離飛行の起点には向きません。そこで燃料を減らした軽い機体で飛び上がり、ロンドン見物をかねて「空の玄関」ヒースローまで移動し、本当のスタート…という段取りにしました。
 ロンドン中心部を飛ぶショートフライトには、ぜひ英国の機体を使いたいものです。が、スピットファイアやハリケーンには、いつか回を改めて、別の出番もあるでしょうから、今回は1934年にロンドン=メルボルン間の、マックロバートソン国際エアレースに優勝した、デハビランドDH88 コメットを選びました。デハビランド社が戦後作った、史上初のジェット旅客機と同名ですが、こっちのコメットは木製モノコック双発の2人乗りレーサーです。さっそく起動してみました。
 コメットのエンジンは、デハビランドの自社製「ジプシー」です。もともとが、タイガーモスなどの練習機用ですので、目一杯チューニングしても223馬力。これで競争相手のダグラスDC-2(700馬力双発)などに勝つには、機体設計で空力的洗練を極める必要がありました。
 従ってコメットのデザインは、小さく、力強く鋭く、流麗です。車輪庫兼用のエンジンナセルが2基、細くて薄い、ツバメのような主翼の前縁にぶらさがり、胴体はパイロットぎりぎりの細さ。コクピットは低く沈んで、前方視界はほとんど計器盤のみ。エンジンは死角となり、プロペラさえ先端しか見えません。また空気抵抗を極端に減らした結果、実機は失速特性が非常に悪く、油断も隙もない飛行機だったとか。
 今回の機体も、こうした特性をある程度モデリングしています。約70Ktの離陸は容易ですが、アプローチで140Kt以下に減速すると急激にロール安定が悪くなり、FlightGearの航空機には珍しく、翼端失速を起こして派手に自転し、機首を下げてスピンに入ってしまいます。そのまま落下して気速が上がっても、なかなか回復操作が効きません。私は少し視界がましな後席で操縦し、3回墜落して、4回目に110Ktでむりやり着陸しましたが、さすがにこの機体では、短距離といえども、クロスカントリーをする気になりませんでした。

 続いて試したのは、1960年代に登場したSTOL軽輸送機/コミューターの、ショート・スカイバン。あらゆる点でコメットとは対照的です。胴体も主翼も四角四面、ハコフグ的なターボプロップ双発機で、航空評論家の故・佐貫亦男氏は、本機のデザインを「下駄箱」と酷評しました。FlightGear版の機体設計者も、さすがにカッコいいと思わなかったらしく、デフォルトではダボハゼ的な、ピンクのジョーク塗装になっていますね。しかし佐貫氏も、搭載力や速度性能などを激賞しているように、非常に優れた飛行機です。
 まず視界が抜群。名前の通り、ワンボックスのライトバンそのもので、前下方まで見渡せます。操縦には癖がなく、自慢の短距離離着陸性能で、満タンでも85Ktで軽くテイクオフ。すぐに200KIASを発揮します。舵は少々鈍いタッチですが、エルロンロールや宙返りも可能で、「お見それしました」という印象。30分飛び回っても燃料は幾らも減らず、航続力が期待できそうです。
 ロンドンは、夏だというのに霧が出て、視界は約4nmでした。私は快適に中心街を飛び回り、Atlasを使って機首をヒースローに向け、霧を破って視界いっぱいに広がった、豪華な大空港を堪能しました。500ftくらいの低空で、空港を半分ほど行き過ぎましたが、操縦性がいいので、このまま降りてみようと急に思い立ち、フルフラップで70Ktまで減速。蛇行を重ねて降下距離を稼ぎつつ、ヘリのアプローチみたいな急角度で高度処理をして、そのままポンと降りて急停止しました。さすがに失速ぎりぎりでしたが、結構すごい能力を秘めた機体です。気になる塗装も幸い何種類か、お代わりが用意されています。

●燃料計を修理し、イングランド南部を行く:
 では、いよいよ旅を始めます。1200時(UTC=協定世界時)に、ヒースロー空港のA1111ランプでピラタスPC7改を起動。燃料を満タン75%の3000Lbsにセットしました。
 忘れないうちに、ご報告しておきますが。FlightGearがVer.2.0.0になった時点で、PC7改は燃料計が作動しなくなりました。バージョンアップに起因するトラブル解決は、私には無理と思い、簡単なデジタル燃料計の自作を考えました。しかし念のため、作業前に燃料計xmlファイルの内容と、Internal Propertiesの内容を突き合わせたところ、Ver.2.0.0では変数名が、一部変更されたことが分かりました。以前は
        <property>consumables/fuel/tank[1]/level-lb</property>
という記述で燃料タンク容量を表しましたが、現在は「level-lb」の代わりに「level-lbs」と、Sを付けないとダメなのです。問題点が一目で分かり、すぐ修正できたのは幸いでした。

 さてヒースローの天候は、5600ftにscatterdの雲。風は293度12Ktで、向かい風ながら好条件です。エンジンを始動。1207時、RWY-27Rの中央部までタキシーして左折し、離陸。GPSを使って西へ向かいます。

 1221時、早くもコヴェントリー上空を通過。市街地テクスチャーが5nm四方しかない、ごく小さな地方都市ですが、現実の街は、19世紀末から自動車工業の中心地だそうで、そのため大戦中は、1940年11月14日を皮切りに2回の大空襲を受け、1000人を超える犠牲者を出しました。英国は、真空管式デジタル計算機「コロッサス」を使って、難関だったドイツのエニグマ暗号を解き、この空襲を予知していましたが、チャーチルの判断で解読の事実を隠すため、非情にも迎撃態勢を取らなかったそうです。
 コヴェントリーの姉妹都市・ドイツのドレスデンも、ご存じのように、英米の爆撃によって記録的な数の死者を出しました。先日買った岩波新書「空爆の歴史」によりますと、一般市民も標的にする戦略爆撃は、イタリアのドゥーエという将軍が1921年に書いた、「空の支配」という本が思想的源流だそうです。彼は敵の市民に恐怖を与え、戦意を破壊し、早く戦争を終わらせる手段として無差別爆撃を推奨し、列強の空軍指導者に強い影響を与えたわけですが、現実にはスペインでも中国でも、英国でもドイツでも日本でも、爆撃は膨大な人命を奪いましたが、標的となった国家や市民の戦意は、簡単には破壊されませんでした。しかし各国は、なぜかドゥーエの理論が間違っているとは思わず、空爆をエスカレートさせたのですね。こうして広島や長崎、ベトナムやイラク、さらには9.11マンハッタンに繋がってゆく、死のサイクルが回転を続けました。
 …ふと、そんなことを考えながら、コヴェントリー上空を旋回。街の中心部には、大きな教会のオブジェクトが見えますが、実際に大聖堂があって空襲で破壊され、今は廃墟を大切に保存したまま、モダンな新しい教会が隣接して建っているそうです。そういえばベルリンの中心街にも、同様の教会がありますね。
 私は19000ftまで上昇し、リバプールへ向かって巡航を始めました。

●霧のマン島・低空ツーリング:
 FlightGearのリバプールは、一面の田園風景に、市街地が霜降り肉のように入り交じる、住み心地の良さそうな都会です。9000ftで海に出て、次の中継地・マン島へ。294KIAS(真大気速度332KTAS、軽風で対地速度311Kt)を保って巡航を続け、約30分で到着しました。
 伝統の2輪ロードレースで有名なマン島は、アイリッシュ海に浮かぶ「緑の宝石」です。Ver.2.0でお目見えした、鮮やかな黄緑系のCrop texture(耕地)に覆われた、なだらかな丘陵が連なって、どことなく信州か富良野あたりを思わせる景色でありまして、バイクでカッ飛んだら、非常に楽しそうです。今回初めて知ったのですが、この島は法的には大英帝国の一部でも、イギリス連邦の加盟国でもなく、自治権を持った「王室属領」だそうで、独自の通貨を持っており、ついでに道路は速度無制限だとか。
 高度を下げ、ちょっと減速して地形に追随して飛び、しばしツーリング気分を堪能。この日はシーリング(雲底高度)が低く、どっちみち2000ftくらいまで降りないと、前が見えなかったのですが…さらに雲が下がって、次第に私は霧の中に吸い込まれていきました。周囲の木々が霧に紛れ、山の稜線に白いシルエットを描き出し、非常に幻想的な眺めです。FlightGearでは、もやに包まれた遠くの山が白く見えますが、木々が樹氷のように見えたのは、これが初めてでした。
 霧はどんどん濃くなり、視界もそのうち400mかそこら、飛行時間にして3秒分くらいまで悪化。Atlasを起動していなかったし、もし霧から山が飛び出してきますと、回避に余裕はありません。この辺が限界かなと思い、スティックを斜めに引いて旋回上昇。3400ftでスポンと雲の上に出て、やれやれと一安心。はるか北のアバディーンに向かって、GPSをセットしました。

 初めて気付いたのですが、実は倍速モードを使って飛ぶ際に、時間経過が加速されていませんでした。パソコンが新しくなって以来、大阪周辺の散歩ばかりだったので、うっかりしていました。これでは飛行記録や推測航法が、めちゃめちゃになってしまいます。さっそくTatさんの daytime.nasを再インストール。早く手が打てたのは幸いでした。
 北海東岸のアバディーン空港へ到着。着地寸前に、前方の誘導路に737を1機発見し、滑走路に出てくるのではないかとヒヤヒヤしましたが、これはAI機ならぬ飾りのようで、終始じっとしていました。

●ブレリオ機で北海沿岸を舞う:
 アバディーンでは、対岸のノルウェーまで、どうやって北海を渡るか、あれこれ考えました。この海を初めて飛行機が横断したのは、1914年7月30日のこと。パイロットは、ノルウェーの極地探検家・作家でもあったトリグヴェ・グランです。第一次大戦勃発のため、英国ではこの日、グランの着陸から50分後にすべての民間機が飛行禁止となってしまい、彼のフライトは間一髪のタイミングで成功したのだそうです。
 使用機は、50馬力のブレリオ機です。有名なブレリオXI号機(25馬力)が原型で、1909年にドーバー海峡の初横断に成功して量産に移り、50〜140馬力にパワーアップして、第一次大戦初期まで使われました。グランの50馬力は、かなり初期の量産型と思われます。私は07年11月にXI号機で、ブレリオのドーバー海峡初横断とシャヴェーズのアルプス越え初飛行を再現し、本連載でご紹介させて頂きましたので、できれば北海横断もやってみたいと思い、あれこれ調べました。

 グランの出発地は、アバディーンから23マイル北にある、クルードン・ベイという村。着陸地はノルウェー南西端のジャーレンで、FlightGearのマップでは、SOLA空港(ENZV)の近くと思われます。
 今回はアバディーン沖を海上飛行して、取りあえず燃費を測定しましたが、ベストとみられる高度3000ftでは15.8nm/galと好記録を出すものの、満タンがわずか12gal(72Lbs)ですので、せいぜい190nmしか飛べません。史実では、グランは全行程465キロを4時間10分(一説には530キロを約5時間)かけて飛んだのですが、航続力がぎりぎりのため、上着やズボン、ブーツまで脱ぎ捨てて軽量化に努め、ガソリンを10リッター余分に積みました。真夏とはいえ北緯58度。低空とはいえ時速100キロ。軽装で吹きっさらしの古典機に乗り、海上を半日も飛ぶのは、さぞ体力を消耗したことでしょう。
 私の場合…パソコンの前でズボンを脱いでも、ガソリンは増えませんので、エンジン出力と燃料タンク容積増加の改造を試みましたが、本機のファイルは勝手がよく分からず、手を加えると起動しなくなってしまい、断念しました。どのみち飛行速度が35KIASでは、北海はいささか広すぎます。残念でしたが、今回の北海横断には通常通り、PC7改を使うことにしました。

●ネッシーの、不気味なふるさとへ:
 北欧へ渡る前に、一つだけ見物したいところがありました。恐竜伝説で有名な、あのネス湖です。確かスコットランドの北部ですから、すぐそばまで来ているのでは…。
 果たしてググってみますと、かなり近くです。アバディーンから西へ63nmのところにある、インヴァネス空港(EGPE)から、目前にあるネス川の河口に入って南下すると、山に挟まれた細長い湖があって、これがネス湖なのでした。
◎アバディーン・ダイス空港(EGPD)
   ▼289度63nm
◎インヴァネス空港(EGPE)
   ▼ネス湖
◎インヴァネス空港(EGPE)Aeroprakt A24 Viking
   ▼109度63nm
◎アバディーン・ダイス空港(EGPD)

 湖へ遊びに行くなら、やはり水陸両用機が面白いでしょうね。Aeroprakt A24 Vikingをダウンロードして、初めて飛ばしてみました。ロシアの軽飛行機で、前席2人+後席1人乗りのキャビンは非常に狭く、計器盤も小さく簡素で、大昔の360cc軽自動車みたいです。操縦は容易で、フラップを下げて滑走に移ると、何もしなくてもまっすぐ加速して、数秒で尾翼が持ち上がり、思わずスティックを引くと、50Ktくらいで離陸します。ギアはキャビンの両サイドに、水平よりやや上向きに引き上げられます。胴体に格納するわけではないので、脚上げしても速度変化はありません。巡航速度は、全開でも80Ktと鈍足です。

 アバディーンを離陸し、空港上空でターンして289度へ。濃霧が出ていて風は弱いので、風力修正計算を省略して針路を決め、倍速モードに入りました。鈍足をいいことに、Atlas頼りのラフな飛び方をしましたが、たまに霧に紛れて山が迫り、ひやりとします。やがて耕地混じりの高原が開けて、箱庭的な美しい景色が続きました。ふうむ、これがハイランド(スコットランドの高地)なんですね。訳もなく、スコッチウイスキーが飲みたくなってきます。
 この機体には、燃料計がありません。internal propertiesを見ると、タンク容量はわずか9.3galで、現在の残量はたった8gal。燃費は上昇中が8.8nm/galくらい、3000ftの水平飛行では9.3nm/galくらいでした。30分で燃料は半分以下に減り、心配になったころ、やっと小さなインヴァネス空港が見えました。Atlasがなければ見逃したでしょう。毎分1500ftで降下しましたが、ノーフラップでも70Ktしか出ず、空気抵抗が大きい分、減速がよく効いて操縦はラクでした。55Ktで最終進入、45Ktくらいで接地。燃料残は2.2galでした。つくづくタンクの小さい飛行機です。直ちに給油。
 1257時に離陸して、入り江と市街地を過ぎ、鉄道に沿ってネス川の河口へ向かいます。まもなく前方に、フィヨルドのように細長くのびるネス湖を発見。全長35キロ、最大幅2キロだそうで、特に西岸は断崖が連なっているため、荒涼として不気味に見え、恐竜伝説を生むのも無理はないと思いました。
 湖面に降りてみましたが、妙に寒々とした気分で、まったく落ち着かず、離水するとほっとしました。ここで誤って数字キーに触れたため、一挙に夜明けになってしまいましたが、お陰でかえって、いい写真が撮れました。朝日は東方ではなく、真夏なのに40度くらいの方角に見え、いかにも高緯度を感じさせます。帰路もインヴァネスで給油して、ひたすら燃料を気にしながら飛び続けました。
 山岳地帯で天候が激変し、大揺れを味わったあと。アバディーンの4nm手前で低空に降りたところ、雲量ゼロなのに地表がまったく見えず、世界が上下左右とも、霧一色に化けました。何かのバグかと思いましたが、よく観察すると、実は単なる濃霧と判明。次はこの機体にVOR指示器がなく、ILSが使えないことに思い当たり、どうやって空港に降りたものか、真剣に悩みました。Atlasを使って非精密進入しましたが、視界ゼロの超低空を計器飛行する機体は、いつのまにか蛇行して大揺れし、大変危なっかしいフライトになっています。いかんいかん、もっとシステマティックに操縦しなくては。

 フリーウェアの「斜めものさし」を起動して、Atlas画面で滑走路方位を計り直し。GPSのベアリング表示を使って精密に軸線を合わせて、HUDの電波高度計を使いながら、「前方に、必ず滑走路がある」と念じて最終進入し、何とか無事にタッチダウンしました。尾輪式のため最後に少々、路面に翼端フロートをこすっていますが、これはまぁ「無事」のうちに、入るでしょう(^^;)?
 静止してイグニッションを切ると、燃料の残りは実に0.187gal、1.12Lbsでした。あと数秒、迷っていたら完全にガス欠でした。困ったことに、この機体は重心がやや前寄りのため、アイドルで減速し過ぎると、上げ舵を使い切ってしまいます。少しパワーを残して降りるか、接地寸前に一発吹かさないと、機首から乱暴に落ちる癖があるのです。とは言え、やはり旅に出ると意外な出来事の連続で、楽しいです。

●ノルウェーの森と海:
 日を改めて、ピラタスPC7改で英国アバディーンを出発し、ノルウェーのベルゲンへ向かいます。
 わずか1時間弱の飛行ですので、燃料は1500Lbsあればいいでしょう。今回は乗り慣れた愛機で、ILSが使えますから、悪天候になっても大丈夫です。UTCの1209時(ローカル1309時)にエンジン始動し、滑走路で出発準備をしていたら、ちょっぴり機体が揺れました。不意に風が変わったのですが、今度も191度の28Ktと相変わらずの強風。ただし追い風気味なのは幸いです。では、出発!

 離陸後、すぐにGPSでベルゲンを目指しましたが、正しい空港コード「ENBR」を入れているのに、なぜかオートパイロットのTRUE方位モードが、本来のベアリング51度を表示せず、見当違いの344度になっており。どこで勘違いをしたのか、原因不明でした。これでは自動操舵が効きませんが、NAVをGPS-SLAVEモードに切り替えれば、HSIを見て操縦し、進路をウィングレベラーで固定することは出来ます。
 私は実のところ、「GPSの仕事は、位置や航法計算結果の表示のみ。針路設定は別途、パイロットがする」という飛び方の方が好きです。高度30000ftで、そういう体制に入りまして、224KIAS(358KTAS、対地383Kt)で燃費4.27nm/galをマークしつつ、快適に飛び続けました。1246時、目的地へ100nm弱の地点で降下開始。燃料はまだ720nm分残っています。ウィングレベラーで定針したため、今回はGPSお任せの大圏コースではなく、ラームライン(針路一定コース。高緯度では、わずかに遠回り)上を飛んでおり、GPSの計算針路から2nmだけ外れていますが、もちろん問題はありません。降下を続けます。
 1256時、あと35nm。高度12000ftで、STARに掲載されていた空港NDBを捉えました。まもなくILSを受信し、全自動のアプローチに移ります。緑の島がたくさん点在する、複雑な形をした入り江の上を、愛機は滑るように降下しまして、海辺の空港へ。着陸時の風は154度18Ktで、左18度くらいのアングルですから、まずまずの好条件。雲も5000ftにFewでした。最終段階でマニュアル操縦にして、そっと着陸。この日はAtlasさえ起動しないまま、まことに快適に飛びました。1312時にランプインしたところ、燃料残は両翼タンクで447Lbs×2(67.8gal×2)でした。
 空港の周囲は、深い森。さて次回は、ノルウェーをどんどん北上するつもりです。
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なし 北欧神話「巨人の国」

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。まだまだ暑い関西から、北極圏へゆく「オーロラ・フライト2010」の第2回・ノルウェーの旅日記をお届け致します。

 今回は、ノルウェーを最北端まで駆け上ります。森と湖、大小のフィヨルド、そして雪に覆われた荒れ野を、プロペラ単発のSTOL軽輸送機で渡ってゆくフライトになり、ブッシュ・パイロット(どこにでも降りる腕を持つ辺境飛行士)みたいな気分を味わいました。
 使用機は、ピラタスPC-6ターボ・ポーターと、デハビランドDHC3オッターです。PC-6は、私が常用機にしているPC7改の兄貴分に当たる、スイス・ピラタス社の出世作で、ヒマラヤの氷河から砂漠、極地などで輸送や救難飛行などに長年活躍している名機。またDHC3は、私が小学生のころ愛読した、ノルウェーの航空冒険小説「オッター32号機SOS」に登場する飛行機で、当時からどんな機体か大いに関心があったのですが、せいぜい外観写真しか見る機会がありませんでした。FlightGearのお陰で、今回初めて、コクピットのデザインや操縦時の視界などを、言わばパイロットの視点で味わうことが出来ました。また小説の舞台となったノルウェーの最果てを、仮想飛行することができたのは嬉しい限りです。
 では、コースをご紹介しましょう。

◎フレスランド・ベルゲン空港(ENBR)
   ▼15度96nm
◎サンデーン空港(ENSD)
   ▼0度44nm
◎ヴィグラ空港(ENAL)
   ▼32度353nm
◎Bodo Main Air Station(ENBO)
   ▼39度143nm
◎バルドフォス空港(ENDU)偏東6度。
   ▼88度97nm
◎コートケイノ空港(ENKA)
   ▼6度56nm
◎アルタ空港(ENAT)
 …以上、あまり馴染みのない地名ばかりで、申し訳ありません(^^;)。
出発地のベルゲン空港は、前回の旅日記でたどり着いた、ノルウェー南部の西の端に近い、大きな港町・観光都市の空港です。ここから先はしばらく、フィヨルドと山の旅になります。中継地のサンデーンというのは、山の中でフィヨルド2本が合流する、とても風光明媚な場所にある小飛行場です。その後、多島海に面したヴィグラを経て、ノルウェー空軍最大の基地Bodo(正しい読みは「ボーデ」らしい)までPC-6を使います。ここからはDHC3で飛び、さらに北のバルドフォスを経由して、前述の小説通りに、スカンジナビア最北端のフィンマルク地方を横断します。

●世界最大のフィヨルドをゆく:
 スカンジナビア半島というところは、西側のノルウェー領はフィヨルドが連なり、東側のスウェーデンやフィンランドは、湖や沼が非常にたくさんある地形だそうです。そのフィヨルドの中でも、ノルウェー最大にして世界2番目の規模のソグネ・フィヨルドを、まず訪問することにしました。
 旅の前半に使用したPC-6(以下ターボ・ポーター)のアウトラインを、ここでご紹介しておきます。
 【実機】
 1959年、レシプロ機として初飛行。その後550馬力のターボプロップに。全長10.9mとF6Fヘルキャット並みの規模ながら、貨物ですと1.2トン、旅客なら10人を運べます。主翼と尾翼は長方形、胴体断面も四角。広く踏ん張った脚に大きな低圧タイヤを履いた、頑丈が売りの機体です。このデザインを「醜い」と言う人もいますが、シンプルなシルエットと、とがった機首の組み合わせはなかなか精悍で、私は本機の造形を「四角い流線型」と呼びたいです。
 翼幅は15.9mあり、戦後の機体としては胴体に比べてかなり長く、いかにも翼面荷重が小さそうです。巡航速度は最大125Ktと遅いものの、STOL性能と高空性能に優れ、山岳機として活躍しました。ピラタス社のテストパイロットで、エベレスト飛行家のエミール・ウィックは1960年、本機でヒマラヤ・ダウラギリの氷河に登山支援のため42回着陸し、43回目に事故ったが徒歩で生還。標高19200ftの着陸高度世界記録も作りました。本機は米フェアチャイルド社のライセンス生産を含め900機以上が作られ、日本にも輸入されて昭和基地で活躍しています。ピラタス社のHPでは、患者輸送やスカイダイビング、測量用撮影・レーザー観測などのプラットフォームにも最適…と多機能ぶりをPR。最新モデルはグラス・コクピットで、美しい液晶画面を持っています。
 【FlightGearの機体】
 現行モデル(PC-6_20090930.zip)のパネルは、古びた丸形計器が並んでおり、それなりに味がありますが、航法計器はVOR-1とADFのみ。DMEが無いため事実上、VOR航法が出来ないのは残念です。一方で操縦性はよく熟成され、しっとりと安定して、飛ばしやすい機体です。またHelpに説明はありませんが、「walker」という機能があり、「o」キーで機長と同じ人形が機体前方に出現して、「w」キーで前進、「d」で右移動、「a」で左移動をします。マーシャラー(誘導員)ではなさそうで、用途が分かりませんが、面白いギミックです。ただし勝手なキーアサインのお陰で、本機は「a/A」キーによる倍速モードが使えません。私は長距離飛行に備えて、直ちにファイルから、aキーに関する記述を消してしまいました。

 UTC(協定世界時)の1136時、ベルゲンでターボ・ポーターを起動します。
燃料は1020Lbs(170gal)の満タン、エンジンはデフォルトで始動済み。プロペラはフル・フェザーのままアイドルしており、いかにも現代のターボプロップ機です。尾輪機ですので用心のため、上げ舵を取って滑走し、70Ktで安定したテイクオフ。この機体は、コクピット左右席とキャビンの左右カーゴドアを、メニュー操作で個別に取り外すことが出来るので、今回は全て外して飛んでみました。実際にこの状態で飛べるのかどうかは不明ですが、胴体の一部が素通しになり、空撮などには重宝しそうです。
 出発後は低空で、川の多い海岸平野を北へ40nmほど進んで、小高い丘を飛び越えたところ、眼下に大河の河口部のような、大きな細長い湾が姿を現しました。これが、ソグネ・フィヨルドです。
 フィヨルドは、氷河に削られたU字谷ですから、周囲の山々はアルプス並みに険しいと想像していました。ところが、意外に低くて険しくもなく、大きなリアス式海岸みたいです。ただし、リアス式はすぐ行き止まりになりますが、このフィヨルドは極めて奥深く、幅5キロくらいの湾が、大渓谷のように軽く蛇行しながら、約200キロ(一説には240キロ)も伸びており、非常に雄大な地形です。私は稜線とほぼ同じ2000ftの低空で、奥へ奥へと進み続けました。
 湾は次第に狭くなり、両脇の山々も険しさを増して、大河を遡る気分になりますが、水面は川ではなく、海水の湾ですので、当然どこまで行っても標高ゼロメートルのまま。なかなか風変わりな感覚でした。

●「巨人の国」ヨツンヘイム:
 …フィヨルドは、やがてどん詰まりとなり。谷川が始まって、これをさらに上流へ。谷は分岐と蛇行を重ねて約30nm北東へ伸び、ついにスカンジナビア半島最高峰の、ガルフピッゲン山に着きました。
 標高は2469mしかなくて、「栃木県の最高峰」白根山より少し低く、アルプスほどには険しくありません。とは言え北緯61度ですので、山肌のテクスチャーには雪が交じり、キリリと清澄なムードを漂わせています。地図によると、一帯はヨートゥンハイメン山地と呼ばれるそうで、日本でもお馴染みの北欧神話に登場する、巨人の国「ヨツンヘイム」って、ここなのかと感動しました。神話と実際の地名と、どちらが先なのか確認できませんが、神話のヨツンヘイムも、「高い山々と、あやしい谷々に覆われ」ているそうですので、語源は同じとみていいでしょう。
 山地の上空13000ftで、燃料の残量を調べると712Lbs(118gal)でした。燃費は3.1nm/galと好調で、まだ300nmは楽に飛べます。ここでGPSを参照し、針路を282度に取って、67nm先のサンデーンへ定針。1337時に上空へ到着しました。まだまだ飛べるので、さらに20分後ヴィクラ上空に到着。ここも美しい景色で、フィヨルドが山と海を織り交ぜた景観を作り、沖には平らな島々がたくさん散在して、中でも大きな細長い島に市街が広がっています。空港も島の一つにあり、風下へ旋回しながら、素晴らしい風景に見とれました。

 ターボ・ポーターは降下時、フラップなしでも空気抵抗が大きく、パワーアイドルで機首を20度下げても、気速が70ノットを超えません。プロペラ自体のブレーキ効果によるものだそうで、うかつにエンジンを絞りすぎないよう、確かHelpにも注意書きがありました。慣れればこの特性は便利で、アプローチ中の速度管理が容易です。63Ktで進入し、55Ktで接地して、うまくいくと50m程度で止まる着陸性能は、さすがにSTOL機。ただし機首が長い上に、尾輪式の割に地上姿勢が水平に近いので、ブレーキを掛け過ぎると、しばしば簡単にノーズオーバー(機首を接地する逆立ち)しますし、グラウンドループも発生します。普段はあまり、ピンポイントの接地や短距離停止にこだわらず、おおらかに操縦した方が、うまくいくようです。
 1143時、満タンにしてヴィクラを出発。GPS航法でBodo(以下ボーデ)へ。

 今度の航程は350nmくらいあるので、30000ftまで上昇。燃費は一気に7.17nm/galと、2倍以上に改善されまして、満タンの航続力は1200nmに届く勢いです。指示対気速度は88KIASに落ちていますが、真大気速度ですと150KTASくらいでしょう。Aキーで10倍速くらいにしても安定性がよく、オートパイロットで針路保持が可能です(機種によっては、ウイングレベラーを使わないと、自励振動を起こして、しばしば墜落するのですが)。
 ボーデには14時半ごろ到着。岬の先にある市街のそばに、1本だけ滑走路が見えます。3000m級ですが、空港としては小さい印象で、これが国内最大の空軍基地かと、ちょっと戸惑いました。主要施設は地下にあるのだそうですが。1435時、理想的な進入で接地。そして…軽いグラウンドループで停止(笑)。あちこち不満はありますが、今回はターボ・ポーターに慣れて、結構好きになりました。

●冷戦「スパイ機」の最前線基地:
 ボーデは冷戦中、NATO軍最北の空軍基地で、CIAが運用する高々度戦略偵察機・ロッキードU-2型機の、発着地の一つでした。U-2はトルコなどを離陸し、旧ソ連領の中枢部を撮影して、北欧へ脱出するわけです。本機が初めて撃墜されたのは、1960年5月1日のこと。有名なフランシス・ゲリー・パワーズ少佐が、パキスタンのペシャワールを離陸し、宇宙基地があるカザフスタン共和国・チュラタムなどを偵察し、ウラル工業地帯のスベルドロフスク付近で撃たれましたが、この飛行もボーデが着陸予定地だったそうです。
 U-2は非常にユニークな機体です。初飛行は1955年8月で、高度7万ftを1万キロ近く飛ぶために、胴体長15mに対して主翼は24mあって非常に細長く、いわばジェットエンジンの高々度モーターグライダーでした。開発者の1人であるベン・リッチが書いた「ステルス戦闘機 スカンク・ワークスの秘密」(講談社)によると、ソ連の迎撃機も対空ミサイルも、まだこの高度には届かず、U-2は約5年間にわたってソ連領内を自在に撮影。眼下にはしばしば、上昇しきれず失速する、多数のミグが見えたそうです。
 しかし、上昇限度ぎりぎりを巡航するのは非常に難しく、旋回中に内翼は速度が低すぎて失速し、外翼は過速で高速バフェット(異常振動)を起こす場面もあり、いずれも振動の性質が同じで判別が難しく、対応を間違えれば空中分解もあり得る、やっかいな飛行機でした。着陸時の事故なども、結構あったようです。

 アメリカは当時、U-2はあと1年は無事とみていたそうですが、ソ連のミサイル開発は思ったより早く、パワーズはこの日、ソ連防空部隊の待ち伏せに遭って、最新型のSA-2対空ミサイルを24発も「散弾銃のように」撃たれました。うち1発が、近くに迫ったミグに命中し、爆風でU-2の尾翼も吹っ飛んで、墜落に至ったのだそうです。迎撃機がいるのにミサイルを撃つとは、ソ連もよほど焦っていたのでしょう。(パワーズがパラシュートを目撃しており、ミグのパイロットも脱出できたようです)
 パワーズ撃墜には異説もあり、NHKが1974年8月11日(東京地域)に放映した、アメリカ製のドキュメンタリー番組は、「当時のソ連はU-2を撃墜できるミサイルを完成しておらず、ソ連スパイが基地に潜入して仕掛けた、時限爆弾で破壊された」と主張しました。しかし冷戦が終結し、多くの情報が公開されている現在、爆弾説はネットでも見あたりませんので、やはりSA-2ミサイルによる撃墜が真相だと思います。
 …現在のボーデは、ノルウェー空軍の主力機・F16の基地です。FlightGearのマップ上では、波乱の歴史をよそに、ここもベルゲンやヴィグラ同様、美しい海岸線を持つ、平和な一空港に過ぎません。

●「オッター32号機SOS」:
 ボーデからはDHC3に乗って、ノルウェーの最北部へ向かいます。ここでDHC3オッターと、冒頭に少しお話ししました小説「オッター32号機SOS」について、簡単にご紹介しましょう。
【実機】
 DHC3は、レシプロ600馬力。1953年に初飛行したデハビランド・カナダのSTOL多用途機で、北米などで僻地の旅客・貨物輸送に活躍しました。全長12.8m、全幅17.7mと、かなり大きな単発機で、実用上昇限界高度は17900ftしかありませんが、最高速は140Kt(諸説あり)でターボ・ポーターを少し上回ります。軽旅客機としては最大14席程度のようです。
【FlightGearの機体】
 最新版(dhc3_20091229.zip)は、ターボ・ポーターよりさらに操縦しやすく、50Ktで離陸し、パワーに応じて滑らかに機首を上下します。失速特性は良好で、クリーン状態では45Ktで機首が下がり、エレベータでは持ち上げられなくなりますが、少し機首が下がると直ちに回復し、失速と呼べるほどの挙動は起こしません。フルフラップでは、さらに減速しても機首が保持できますが、調子に乗ると40Ktあたりで翼端失速を起こし、自転します。ただし、すぐパワーを入れればリカバリー可能です。
 着陸も容易で、接地後に急ブレーキを掛けてもノーズオーバーせず、ラダーの利きがいいため、グラウンドループは、たいてい回避できます。車輪のほかフロートやスキー仕様、水陸両用型があり、後者は事実上「4車輪式」ですので、地上では一段と直進性に優れます。ロールスピードが遅いので、エルロンロールは苦手ですが不可能ではなく、宙返りも一応できます。8段階に動くフラップを操作すると、エルロンもやや少ない角度で一緒に降りる仕組みで、いかにもSTOL機ですね。
 コクピット視界は、星形空冷単発で機首が丸いため、計器盤中央が盛り上がっている分、正面が少し見にくいですが、サイド寄りはかなり良好です。機長席から振り向くと、キャビンには8席の客席があり、副操縦士と客席の視界も用意されています。副操縦士席は、機長より高めに視点が設定され、視界抜群で操縦しやすく、細かな気配りを感じます。飛ばしやすさと完成度は、ターボ・ポーターよりもやや上と感じます。航法計器がVOR-1とADFしかないのは同じで、パネル上部に小さなGPS液晶画面があり、なにやらモード表示が出ますが、まだ使い方が分かりません。操縦席とキャビンのドアは開閉可能です。

 「オッター32号機SOS」は、ノルウェー空軍の教官だったレイフ・ハムレが1957年に発表した、少年向けの雪上サバイバル教科書みたいな小説です。
 機長のゲイルは、ちょいと気むずかしい職人タイプ。副操縦士は、初めてオッターに乗るぺーテルという若者です。二人は急患を空輸するため、ノルウェー北東端のキルケネスという町へ向かいますが、北極圏(北緯66.6度以北)に属するフィンマルク地方の荒野を飛行中、エンジントラブルに遭い、パラシュート降下します。二人はブリザードの中、バラバラに着地してぺーテルは負傷。ゲイルは苦心してぺーテルを発見し、パラシュートの布とショックコード、ナイフ、レスキューキットのゴムボートとオール、付近の灌木を活用して、応急手当と小屋がけを行い、さらに非常食や固形燃料が尽きると「食用になるトナカイゴケ」を見つけ、墜落機から回収したエンジンオイルや空き缶で、ランプ兼調理用コンロを自作。やがて二人はライチョウを捕まえるわなや、凍った湖で魚を捕る網まで作り、深夜キャンプを包囲するオオカミからは、たき火で身を守り。やがて捜索機に発見され、救難ヘリがやってくる…という、まことに盛りだくさんな内容でした。
 専門家が書いた本だけに、小学生の私は、交信の手順やパラシュート降下中の感覚、着地の際の注意点などの、真に迫った記述にわくわくしました。いま思えば「正しいノウハウを知れば、不可能はない」「仲間は君を、絶対に見捨てない」というあたりがテーマでしょうが、最初はギクシャクしていた二人の人間関係が次第に変わっていく様子とか、小説的な要素も書き込まれていて、なかなか読ませる本でした。

●黄色いオッターを駆って、北へ:
 二人が出発した空軍基地がどこなのか、残念ながら忘れましたが、取りあえず作中で捜索の司令部になったボーデを離陸し、二人が給油したバルドフォスへ向かうことにします。
 この航程では水陸両用のオッターを選び、1059時(ローカル1259時)にエンジン始動。129度28Ktと強風が吹きまくっており、8000ftにscatterd、3000ftにFewの雲があり、ちょっと緊張気味です。しかしオッターの操縦席は、計器のデザインといい、Y字型の可動支柱の両側に設けられた操縦ハンドルといい、レトロな雰囲気のためか、最初から妙に居心地がいい感じでした。
 一応GPSをバルドフォスにセットしておいて、実際はADFを使い、ボーデのNDBのアウトバウンド方位を使って北上し、15分後に9000ftまで上昇。レシプロエンジンなので、混合比やピッチを調整すべきですが、この程度の高度では、あまりマニフォルド圧が変化しません。地図版Atlas(私はFlightGearに連動しないバッチファイルも用意して、Atlasを単なる航空図代わりにも使えるようにしています)で最寄りのNDBを調べながら、1224時ごろバルドフォス上空に到着。ほぼ予想通りの所要時間でした。
 フロート付きの機体は、いささか挙動が重いですが、空気抵抗が大きい分、エンジンを絞ると敏感に減速・降下し、アプローチが楽です。フロートからギアを出し、フルフラップで滑走路の風下を通過。右へ270度旋回して、着地点を目指します。降下速度も、旋回角速度も遅いので、コクピット・ビューのカメラ角度を、実際に首を回すように、ゆっくりと移動させ、リアルな視界を楽しんでアプローチしました。

 バルドフォスは軍民共用の空港で、8000ft滑走路が小さな盆地に、すっぽり収まったような地形です。ここからは、マップデータを冬景色に切り替え、機体もスキー仕様を選択。小説のオッターはキルケネスまで行かず、途中で墜落しているので、私も中間あたりにある、コートケイノという小飛行場で変針して、ほぼ真北にあるノルウェー北岸のアルタ空港へ向かいます。小説中では、この空港の管制塔がゲイルのメイデイに応答したのですが、かなり有名らしいアルタ・フィヨルドも見たくて、ここを目的地としました。

 風が291度8Ktと微風になり、スキー仕様機は、スティックを引きつけた状態で、50Ktでふんわり離陸。比較的平らな、ちょっとだけ丘陵混じりの平らな大地が続き、どこまでも湖が、たくさん点在しています。まさに小説の通りで、「なーるほど、これがフィンマルク地方なのか」とつぶやきながら、厚い雲が切れ切れに立ちこめる中を9000ftで巡航。機長席と副操席の視点を切り替えながら、小説中のゲイルやぺーテルの視界を想像しました。ふと思いついて、コクピットのドアを開けて外を見ると、操縦席から後方に翼下面の支柱が見え、実機でベイルアウトする際には、これに体をぶつけないか、気になるだろうと思いました。
 そうか! 小説では最初にぺーテルが、副操縦席側のドアを投棄して降下するのですが、このシーンには、「ゲイルは機体を少し右に傾けて、ぺーテルが脱出しやすいようにした」という描写があったのを、数十年ぶりに思い出しました。これはたぶん、支柱を避けるためだったのですね。フライトシムで、この種の「現場検証」が可能になったのは、まったく嬉しいことです。
 コートケイノで変針し、一路アルタへ。計器は110KIASですが強い追い風となり、internal propertiesで対地速度を調べると、145Ktをマークしていました。

●ティルピッツを監視せよ!:
 低空に降りて山地を越えてゆくと、もやの中に突然、海面が広がり。入り江の向こうにはさらに、雪をかぶった尾根が見えます。スカンジナビア半島もそろそろ北端に近い一角に、ヒトデのような形の、縦横30nm近くある湾が広がっていまして、これがアルタ・フィヨルドです。
 ここは大戦中、連合軍に追われて活躍の場を失った、ドイツ戦艦ティルピッツが、英空軍の目を逃れるため転々と居場所を変えたあげく、最後に潜伏して撃沈された場所です。その空爆作戦には、さほど興味はなかったのですが、小学生時代に(子供向けバージョンを)愛読した、トール・ヘイエルダール博士の「コン・ティキ号探検記」の完全版(ちくま文庫)を読み返したところ、乗組員の1人が大戦中、このアルタ・フィヨルドで活躍したことが分かり、興味を持ちました。

 博士が「ポリネシア人の祖先は南米人」という仮説を証明するため、大戦直後の1947年、古代のイカダを復元し、ペルーからマルケサス諸島へ南太平洋を横断した実験航海は、皆さんもご存じのことと思います。前述の「探検記」は、若い情熱と創意工夫、上質なユーモアを満載した読み物ですが、航海には素人だった6人の乗組員が、自動装置に一切頼らず、いかに自分たちの頭脳と筋力を、見事に活用して海を渡ったか、つくづく感心します。波をかぶりながら重い梶棒を押して操舵し、六分儀の天測と手計算で位置を出し、そして通信は、乾電池で真空管を作動させる、出力わずか6ワットの電信機が頼りでした。
 無線電信は、モールス符号の習得が大変ですが、原理的にはデジタル通信ですから、極めてノイズに強く、アンテナとオペレーターが優秀なら、すごい威力を発揮します。コン・ティキ号の無線係、クヌート・ハウグランドとトルステイン・ロービーは、低出力の送信機を上手に使い、電波状態のいい時は、地球の裏のノルウェーとも交信しました。二人は実は本職で、大戦中は通信隊に従軍し、ヘイエルダール博士の戦友でした。3人は特殊作戦のための訓練を受け、クヌートは重水製造阻止作戦に参加。トルステインはアルタ・フィヨルドに潜伏して、10カ月にわたってティルピッツを観察し、ドイツ軍のアンテナに夜間、こっそり自分の送信機を接続するという、大胆不敵な方法で詳細な報告を続け、撃沈に寄与したそうです。さすがはバイキングの子孫…とでも言うほかないですね。
 放射状に入り江が広がるアルタ・フィヨルドには、両側の山が比較的高く適度に狭い、戦艦が隠れたくなりそうな入り江が2、3本ありますが、戦時中の写真と比べても、位置を特定するには至りませんでした。しかし、荒涼とした凍て付く景色の中に、無線機と拳銃、そして熱い心をしっかり抱いて、潜伏していた若者のシルエットが、何となく想像できまして。私は満足して、黄色いオッターをアルタに降ろしました。

 ノルウェーはどこを飛んでも美しく、この国が生んだ音楽家・グリーグの「ピアノ協奏曲1番」の華やかで清澄なメロディーが、いつも頭の中で鳴っているような気分でした。少々ブックレビューみたいな「旅日記」になりましが、次回はいよいよ北極圏の航法について考えたり、実験ができればと思っております。
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なし 極地の「グリッド航法」を再現

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-9-17 7:06 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです、大変ご無沙汰しました。
 8月中に連載をもう一回、と思ったのですが、殺人的な猛暑もあって、とても果たせませんでした(^^;)。北極圏を飛ぶ「オーロラ・フライト2010」の第3回を、ようやくお届けします。

 かつての極地フライトには、様々な航法上の難問があり、これを克服するために、戦前から1950年代ごろに掛けて、「太陽コンパス」や「グリッド航法」など、様々な技術が生まれました。今回は、特殊な緯度経度の座標系を、特殊な設定のコンパスによって利用する「グリッド航法」の再現に挑戦し、1カ月あまり掛かって、何とか基盤技術の開発に成功しましたので、ご報告させていただきます。

●グリッド航法とは:
 冷戦時代には、西側のエアラインは旧ソ連領に乗り入れが困難で、極東からヨーロッパに向かうには、中東・インド方面へ大迂回する「南回り」を飛んでいました。そこでソ連の北側をショートカットしようと、1957年にスカンジナビア航空が、初めて北極航空路を開設し、間もなくエールフランスやJALがまねをして、探検や軍事目的でしか飛ばなかった北極圏を、盛んに旅客機が行き来するようになりました。これがいわゆる「北回り」のルートで、ほぼ10時間の節約が可能になったそうです。
 GPSやINS(慣性航法装置)がなく、まだ六分儀による天測が使われていた時代、北極航路の航法は、かなり難度の高いものでした。「北極点では、どっちを向いても南」と、よく言われますが…仮に極点を通らなくても、極地では方位の基準となる経度の線(いわゆる子午線)が、赤道付近のようにほぼ平行ではなく、極点から放射状に伸びていますので、単にまっすぐ飛ぶだけでも、コンパスが示す針路が刻々と変化します。また一般的な地図では歪みが大きく、正確な距離さえ計れません。さらに、航空機のナビゲーションは一般的に、針路もVORラジアルも磁気方位で表しますが、北極圏では、実際の北極のかなり近くに磁北極があるため、機体の位置によっては、「北に向かっているのに、コンパスは南を指す」といった、非常に厄介なことも起こります。要するに、パイロットとナビゲーターが、極めて混乱しやすい世界なのですね。

 そこで…たぶん。誰かが、「緯度と経度の線が、北極でも赤道付近みたいに、碁盤目になっていたら便利だろうなぁ。んで、単純に『地図の上が北』だったらなぁ!」と、つぶやいたのではないでしょうか。そして、緯度・経度の線を便宜上、碁盤目(グリッド)に変更した、特殊な地図が実際に作られました。
 マイアルバムの画像「グリッド航法」をご覧下さい。左上にあるのが、グリッド航法に使われる、ポーラー・ステレオグラフィック・チャート(北極中心の正軸平射平面投影図)の概念図です。この図法ですと、北緯70度以北では、おおむね方位も距離も正しく表示されるそうで、タテヨコに引いた青い直線が、便宜上の緯度・経度の線(この図では、間隔が15度)になっています。図上のどの場所でも、常に「上」が便宜上の「真北」で、この仮想方位を「グリッドノース」と呼びます。

●仮想の「北」を使い、大圏コースを直線にする:
 グリッドノースをゼロ度とした方位(以下「グリッド方位」)を利用するには、特殊な設定のジャイロコンパスを使います。実機では、出発地でジャイロを起動する際、通常は磁気方位の北に向けるところを、グリッドノースを指すように調整します。ここでマイアルバム左上図のA点をご覧下さい。北極の方角とグリッドノースの方角(真上)の間には、45度の開きがありますね。この角度を「コンバージェンス」と呼びまして、その地点の経度とほぼ等しくなります。例えばA点はご覧の通り東経45度にありますが、これは図上では、コンバージェンスと等しい角度です(実際は、極から離れるほど、誤差が生じると思います)。
 ついでながら、一般的な航法には磁気方位が使われますから、航空機が北極圏に入ってグリッド航法に切り替える時や、逆に通常の航法に戻る場合、方位の変換計算を行うには、コンバージェンスだけでなく、磁気偏差(真方位と磁気方位の差)も加える必要があります。通常の航空図には、例えば日本国内でしたら「7°W」(偏西7度)といった具合に、必ず偏差が等高線のように描いてありますが、グリッド航法専用の航空図には、先ほどのコンバージェンスに、その地域の偏差(ヴァリエーション)を足し引きした、「グリヴェーション」(グリッド+ヴァリエーション)という補正値のラインが描かれているそうです。

 グリッド方位自体は、磁気偏差を含まない真方位ですので、飛行中に通常の航法との切り替えをせず、単にグリッド航法で飛ぶだけでしたら、やっかいな偏差関係の計算は不要です。またマイアルバムの図に、B点からC点への赤い直線で示した通り、ポーラー・ステレオグラフィック・チャートでは、大圏コースが直線で示されます。このコースの針路を、通常の緯度経度座標で表現しますと、図でご覧になるとおり、B地点出発時は315度ですが、コースの中点では270度になり、C地点ゴール時は225度に変化します。通常の方位を使って大圏コースを精密に飛ぶには、一般的には、オートパイロットに自動計算してもらって連続的に変針するしかありません。しかしグリッドノースですと、専用コンパス上で一定針路を保つだけで、いとも簡単に大圏コースが飛べます。なんとすごい航法でしょう。
 もっとも、課題は幾つかあります。グリッド方位コンパスの基礎原理は分かりましたが、FlightGearでこのまま試すと、アース・レートと言いまして、地球の自転に伴って、次第に方位表示がずれるはずです。飛行中、定期的に調節ノブをクリックして調整すればいいのですが…4分間に1.0度ずつ、忘れず補正するのは大変で、倍速モードの飛行も使えなくなり、実用的とは思えません。実機のグリッド方位コンパスは当然、アースレートを自動補正していたでしょうが、プログラム能力のない私が、この点をどう回避するかは今回、最大の難問でした。

●グリッドノースの「極点」は、地球のどこにあるのか:
 北極の地図と地球儀を思い浮かべ、必死に考えていたら、ヒントが見えました。通常の緯度経度座標では、北は言わば「北極星の方向」ですよね。仮に天球を、地球の表面に投影すると、北極星は(実際は誤差がありますが)北極点に投影されます。では、グリッドノースを地球の表面に投影すると、どこになるのでしょう。これが分かれば、FlightGearのGPSで、その地点を指して表示することができます。
 グリッド地図上では、大圏コースは直線で示されます。上下方向に平行線を描く、グリッド地図の子午線(経度の線)も直線ですから、やはり大圏コース(別名は大円。いずれも、英語で言うグレート・サークル)であり、これを切り口にして地球を輪切りにすると、切断面は必ず地球の中心点を通るはずです。ということは、グリッド地図上のあらゆる子午線は、地球上のどこか2点で、必ず相互に交差しているはずで、その2点がすなわち「グリッド北極点」と「グリッド南極点」に当たるはずです。その地点は一体、どこに?

 マイアルバム「グリッド航法」説明図の、左中図をご覧下さい。北極右側に描いた子午線(グリッド座標では東経15度線)と、左側の子午線(グリッド西経15度線)を、それぞれ無限に延長してみますと、アフリカ沖赤道上の緯度ゼロ・経度ゼロ点および、地球の裏側の緯度ゼロ・経度180度点で交差することが分かります。つまりグリッドノースの「北極」は、日付変更線と赤道の交点にあるのです。別の言い方をしますと、グリッド航法の緯度経度座標系は、通常の緯度経度座標系(もしくは地軸)を、日付変更線に沿って、太平洋側へ90度倒したものだと思われます。これは思いもよらぬ発見で、私は大変わくわくしました。
 従ってFlightGearのGPSに、通常の座標で「北緯0度・東経180度」を入力すれば、GPSは「グリッド北極」の方角を表示し、距離も示してくれます。HUD上の「GPS BRG」表示がこれで、メニューからGPS Settingsを開いて、NAV Slaveモードをオンにすると、HSIの針がグリッドノースを指してくれます。私はGPSが使用するFIXのデータベースに、新たにグリッドノースを意味する「GRIDN」(北緯0度・東経180度)という点を追加し、これを入力すると、実際にHSI指針がグリッドノースを指すことを確認しました。
 ただし、このままでは「通常の方位を使って、グリッド北極の方角を表示している」に過ぎません。私がやりたいのは「グリッド方位を使って、機首方位を表示する」という、一種の座標変換です。そのためには、例えばHSIのローカライザ・バー(コース設定指針)を外して、代わりに360度方位目盛りの画像を貼り付ける手があります。

●グリッド方位コンパスを作る:
 実際に、HSIのコンパスカード(方位盤)を加工して、少し小さい直径のものを作り、本来の目盛りに内接させて、ローカライザ・バーの代わりに組み込んでみました。GPSに、新設の「GRIDN」フィクスをセットし、NAV Slaveモードで使ってみると、ちゃんとコンパスカードがグリッド機首方位を指します。しかし、この方位盤はあまりにも小さく、最小目盛りが5度単位と荒すぎて不便です。おまけに画像を貼り付ける際、画像の一辺のサイズが偶数ピクセル数だった関係で、うまくセンタリングできず、回転むらが生じてしまい、2〜3度の誤差は当たり前でした。これでは到底、今回の北極飛行には、使えません。
 そこで一辺がオリジナルの約2倍、511ピクセルの特大コンパスカードを自作し、1度単位の目盛りを打ちました。ピクセル数を奇数としたのは、正確にセンタリングを行うためです。このカードの上に透明なレイヤーを1枚重ねて、最小幅1ピクセルのLubber Line(機首方位マーク)を描き込み、目測では0.1度単位の精密な読み取りも出来るようにしました。あとはHSIのプログラムを参考に、カードを回転させるxmlファイルを書いて、出来上がりです。
 このコンパスカードは、まともにピラタスPC7改のパネルに設置すると、直径がトラックのハンドルくらいある、巨大な邪魔物ですので…パネルの奥に隠して設置し、最上部の目盛りだけが上に飛び出るようにしました。これがなかなか大変で、最初はコンパスを機体の前後方向に動かす方法が分からず、苦心しました。結局新たなサブパネルを設けることにしましたが、うまく認識されず悪戦苦闘。Models/pc7.xmlファイル内に、パネルの3次元位置情報の記述を見つけて、サブパネル分も新たに定義し、一部の属性も変更して、ようやく表示可能になりました。離陸して動作を試すと、旋回につれて滑らかにカードが回転し、ばっちりとグリッド機首方位を表示してくれまして、非常に嬉しい思いをしました。
 しかし、方位盤をHUD指針として駆動すると、実は起動時しか正確なグリッドノースを指さないことが分かり、internal propertiesから、GPSの目標方位データである、/instrumentation/gps/wp/wp[1]/bearing-true-degを直読するように変更しました。

●コンバージェンスとグリヴェーションの表示器も開発:
 グリッド航法の針路計算には、先にご紹介した、コンバージェンスやグリヴェーションを知る必要があります。これも簡単で、GPSにセットした目標(この場合はグリッド北極)方位角を、真方位で示したものがコンバージェンスであり、磁気方位で表したのがグリヴェーションです。従ってコンバージェンスは、先ほどと同様にinternal propertiesから
<property>/instrumentation/gps/wp/wp[1]/bearing-true-deg</property>
という引用を行い、またヴァリエーションは、
<property>/instrumentation/gps/wp/wp[1]/bearing-mag-deg</property>
を引用して、それぞれ数値表示を行うことにより、デジタル式の「GPS-Grivation計」が完成。これには距離データも併記しておきました。この計器は本質的に、HUD上の「GPS BRG」表示と同じものですので、通常のGPS使用時も、目的地への方位・距離計として重宝しそうです。

●グリッド航法における、飛行計画の立て方:
 ここまで読んでくださった方は、「グリッド航法では、緯度経度をどう表すのか。グリッド座標を使うのか、それとも一般的な極軸の座標系か?」と、疑問を持たれたことと思います。結論から言いますと、手元にある空中航法の教科書には、そこまで書いてありませんでした。しかしよく考えてみますと、一般的な座標系によって、手慣れた計算方法で、精密にコースの距離・方位を出しておき、最後に針路だけ、コンバージェンスを使ってグリッド座標系に置き換えれば、わざわざ新規の座標系を併用しなくても、十分に高精度で飛行することができます。従って、実際のグリッド航法ではどうやったか、現時点では分かりませんが、私の試みでは機体の位置は、従来の緯度経度座標で取り扱います。
 次にグリッド航法のための、飛行計画の立て方を考えます。ここではベーシックな推測航法で、2地点間を飛ぶ場合を想定しました。
(1)出発地と目的地の正確な緯度経度を、従来の座標系で調べる。
(2)緯度経度の数値から、コースの針路と距離を算出する。
(3)コンバージェンスを使って、これをグリッド方位に書き換える。
(4)風向風速を加味して、コンパス針路を算出する。

●ノルウェー北部で実証フライト:
 実際にこの手順を使って、グリッド航法によるショートフライトを試みます。コースは次の通りです。
◎アルタ空港(ENAT)(69°58'34"N 23°22'18"E)、
    ▼Great Circle Mapper 7度43nm
     vertual E6-B    7.95度(●GH=マイナス6.95度=353度)42.64nm
     FlightGear GPS -01(359.16)度42.6(42.59)nm
◎ハンメルフェスト空港(ENHF)(70°40'47"N 23°40'08"E)
    ▼Great Circle Mapper 143度45nm
     vertual E6-B    143.73度(●GH= 度)45.1nm
◎バナック(ENNA)(70°04'08"N 24°58'25"E)
    ▼Great Circle Mapper 261度33nm
     vertual E6-B    261.13度(●GH= 度)33.31nm
◎アルタ空港(ENAT)

 …グリッド航法特有の用語も混じっていますので、これでは何のことか、分かりませんね。ごめんなさい。お読み下さる皆さんの中には、或いは「フライトシミュレーターで世界一周したい」といった方もおられるかと思いまして、以下に少々詳しく解説させて頂くことにします。

(1)出発地と目的地の緯度経度:
空港名のICAOの国際コードの後ろにそれぞれ、カッコ書きで緯度経度を入れました。FlightGearでこれを調べるには、Atlas画面を起動して、カーソルを出発地や目的地の主滑走路の中央に合わせて、画面に表示された緯度経度をメモするのが、もっとも簡単です。VORを併用する場合は、滑走路を目標にせず、空港に設けられたVORを目標として緯度経度を測ると、より正確です。またFlightGearの空港選択画面に「ICAO id」(空港別の国際識別記号)がありますが、この4桁コードを、次のサイトの検索画面に入れますと、緯度経度を含む詳しい空港情報が得られます。
 http://worldaerodata.com/
また次のサイトでは、滑走路やILSの配置図も表示されます。
 http://www.fscharts.com/

(2)緯度経度から、針路と距離を算出:
 今回のフライトは、ノルウェー北端に近い高緯度地方ですので、前記の飛行計画は、計算上の誤差を調べるため、針路と距離を二つの方法で算出し、結果を比較しています。Great Circle Mapperというのは、オンラインの計算サービスです。またvertual E6-Bは、私が愛用するフリーウェアで、いずれもほぼ同一の計算結果が出ています。船舶ナビゲーション用のExcelアドオンで計算しても、ほぼ一致しますので、いずれの計算手段も地球を回転楕円体と見なして、ちゃんと計算している模様です。
 フライト・シミュレーターのナビゲーションを、基礎から身に付けたい方には、フリーウェア「Virtual E6-B Flight Computer」(ve6b.zip)を入手されることを、強くお勧め致します。出発地と目的地の緯度経度を入れると、Great Circle(大圏コース)とRhumb Line(ラームライン=航程線。通常の航法はこっち)の両方で、距離と方位が表示されますが、他にも針路データに風向・風速を加えて補正したり、重心位置の計算や度量衡の変換など、ほとんどあらゆる操縦・航法計算をこなす、バーチャルフライトの必須アイテムです。フライトシムのナビゲーションを、実機に近いレベルで、基礎からわかりやすく解説したサイト「Flight Simulator Navigation」(英文)の「Dounloads」コーナーで、現在も公開中。同サイトのトップページのアドレスは、以下の通りです。
 http://www.navfltsm.addr.com/index.htm
 Virtual E6-Bの操作は簡単で、一通りヘルプが付いていますが、本連載でもかなり前、ほとんどの機能をご紹介したことがあります。2006年1月17日付けですが、現在連載中の「その2」スレッドではなくて、最初の「手探り航法・旅日記」スレッドですので、フォーラムメニュー「各種設定について」の過去ログの、かなり奥の方を見る必要があります…ごめんなさい(^^;)。
 いっぽう、Great Circle Mapperというサイトは、任意の2空港のICAOコードか名称を入力すると、針路・距離を出してくれますが、大圏コースだけです。従って表示針路は、出発の瞬間のコンパス方位であって、北極圏のような高緯度で長距離を飛ぶと、コースを外れます。しかし今回のテスト飛行では、飛行距離が40nmくらいしかないので、誤差がありません。Great Circle Mapperのアドレスは、以下の通りです。
 http://gc.kls2.com/

(3)コンバージェンスを使って、コンパス針路を出す:
 ご紹介した針路計算手段は、いずれも真方位とノーティカル・マイル(海里=表記はnm)で計算結果を返します。例えば、アルタ空港からハンメルフェスト空港へ向かう第1レグは、7.9度42.6nmです。真方位の針路をグリッド方位に変換するには、
        グリッド針路=真方位-コンバージェンス
 となります。今回のご説明では、コンバージェンスは大ざっぱに言って、その土地の経度と同じ数値になるとお話ししましたが、この方法は緯度が下がるにつれて、かなり誤差が出ます。北極圏で12カ所のサンプル地点を選んで実測したところ、北緯70度線上では、コンバージェンスの実測値は、その土地の経度から1.6度以内のずれを見せました。また北緯80度線上では、誤差は0.3度以内でした。アルタ空港の場合、滑走路の東端の緯度は69度58分、経度は東経22度23分ですが、新設の「GPS-Grivation計」が表示する、コンバージェンス(赤道上の経度ゼロ点への真方位針路)の実算値は24.7度です。実際の航法計算には、むろん後者を使います。そこでグリッド針路は、
        7.9度-24.7度=-16.8度 となりますが、360度形式の方位へ換算が必要ですから、
       -16.8度+360度=343.2度
 としまして、これが答です。今回は概念実証試験ですので、飛行テストは無風で行います。従ってアルタを離陸し、新しく装備したグリッド方位コンパスで343.2度を狙い、そのまま飛び続ければ、正確にゴールするはずです。いざゆかん!
 実際に試してみますと…最初は、ものの見事に失敗しました。目的地から10度くらい、針路がずれてしまうのですね。原因が分からなくて、まずジョイスティックのキャリブレーション・ミスによる、飛行コースのドリフトを疑い、次いであれこれ再計算し、最後にどうも偏差(アルタでは偏東9.8度)の分だけ、針路が狂っていることを突き止めました。本稿では最初から「グリッド航法は真方位を使い、偏差が関係しない」と明記しましたが、実は飛行テスト段階では、私は針路計算には、(真方位の)コンバージェンスではなく、てっきり(偏差を含む)グリヴェーションを使うものと誤解しておりました。分かってみれば簡単だが、なかなかトラブルの出口が分からない、というのが素人の悲しさだと、毎度ながら痛感します。

 数回の飛行試験を経て、グリッド航法仕様に生まれ変わった愛機・ピラタスPC7改は、アルタ=ハンメルフェスト=バナック=アルタ…の三角コースを、各レグとも、左右誤差0.5nm未満程度の高精度で飛びました。約40分を費やした最終フライトでは、出発時にアルタ空港の滑走路中央に残したAtlas画面の航跡を、ゴール時にはほぼ正確に横切る形となり、非常に嬉しかったです。
 とは言え、これは無風状態の概念実証試験ですので、ピンポイントでヒットして当たり前。次回はいよいよリアルウエザー・モードで、グリッド航法を試します。でなければ、シミュレーションであっても「北極圏を飛んだ」とは、とても言えないでしょうし…ね。

 ■蛇足■ グリッド航法を現在も訓練しているのは、国内ではJALとNCA(日本貨物航空)だけだそうで、今回は天文航法の時と同様、資料探しと勉強に、かなり苦心しました。すでに過去の技術では、あるのでしょうね。しかしアメリカには現在もなお、間違いやすいグリッド航法の針路計算を、略図によって整理する方法の解説ビデオを、シリーズで公開しているサイトさえあって、衝撃を受けました。アメリカ人は「テクノロジーは、わが歴史だ、文化だ」とはっきり自覚し、その上で「先人が、苦心して考案した技が忘れられてしまうなんて、耐えられない!」という強い思いを持って、いまだにグリッド航法とか六分儀、或いはT型フォードを、きちんと大切にするのでしょう。日本だって、テクノロジーが生命線で、一応は「近代化遺産」という文化概念も持っていますが、厚みの点ではまだまだかなと、ちょっと残念に思います。
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なし グリッド航法を使って、極北の島・スピッツベルゲンへ

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-10-31 12:02 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。あっという間に、1カ月余りのご無沙汰となり、申し訳ありません。
私事ながら、10月にまた仕事の担当が変わりました。ますます激務になって正直、頭を抱えております。しかし、ここに書かせて頂くことは、私のささやかな活力源でもあり、今後とも何とか、月1回は続けたいと思っております。

 さて北極圏「オーロラ・フライト2010」の4回目です。前回は、1950〜60年代の北極空路で盛んに使われた「グリッド航法」の仕組みを研究し、仮想の方位「グリッドノース」を指す専用コンパスを開発して、実用化へのめどを立てました。今回はこのグリッド航法を実際に使って、さきごろ到着したノルウェー北部のアルタ空港から、北極海に浮かぶスバールバル諸島・スピッツベルゲン島まで、ピラタスPC7改でクロスカントリー飛行を試みます。

 スピッツベルゲンは、スカンジナビア半島の北方はるか、北緯80度付近に浮かぶ島。アンデルセンの童話では「雪の女王」の宮殿があるとされ、島内のニーオーレスンは、人が定住する町としては世界最北だそうです。このオーロラに彩られた酷寒の島は、古くは19世紀の気球の時代から、北極探検飛行の基地となって、数々の旅行記や探検家の伝記に登場し、栄光と悲劇の舞台となりました。
 私は10年ほど前、マイクロソフト・フライトシミュレーター2000を使って、ゲイツ・リアジェットで北極経由の羽田=アラスカ=北欧飛行をした際に、高度37000ftからこの島を遠望し、またFlightGearのUFOでは数年前に、日本から北極を越えてたどり着いたことがありますが、普通の航空機で着陸を目指すのは、今回が初となります。
 風変わりな航法を使うことでもあり、内容的には前回と少々重なりますが、計画段階の計算から実際のフライトまで、ナビゲーションの全手順を逐一ご紹介しますので、お付き合い下さいましたら幸いです。

●針路と距離を求める:
 ます、出発地と目的地の空港を確認します。
◎出発地 ノルウェー北部の港町・アルタ
  ▼
◎目的地 スピッツベルゲン島の中心地・ロングイェールビェン

 出発地と目的地にある空港の名称と、ICAOコードを調べます。私はたいてい、Atlas画面をスクロールして空港を探します。アルタ空港のICAOコードは「ENAT」で、ロングイェールビェンには、ロングイヤー空港というのがありまして、コードは「ENSB」だと分かりました。
 次に両空港のICAOコードを「Great Circle Mapper」(大圏コース作図サービス)というサイトの入力欄に、ハイフンでつないで半角で打ち込みます。「ENAT-ENSB」という具合です。画面には、距離の表示単位の選択メニューがありますので、忘れずに「nm」(ノーティカル・マイル=航空機で常用する「海里」)を選択しておきます。サイトのアドレスは、前回もご紹介しましたが、以下の通りです。
    http://gc.kls2.com/
 入力を終えて「Display Map」ボタンをクリックすると、コースの地図と、以下のような針路・距離の計算結果が真方位で示されます。
     From            To         Initial Heading Distance
ENAT (69°58'34"N 23°22'18"E) ENSB (78°14'46"N 15°27'56"E) 349°(N)   514 nm
 実画面では、ICAOコードをクリックすると、空港の滑走路長なども出ます。

 この表示に「イニシャル・ヘディング」とあるのは、出発時の針路のことです。大圏コースはご存じのように、特に高緯度地域では、スタートからゴールまでコンパス針路が刻々と変わり、メルカトル図法の地図上では少し弓なりに湾曲して描かれます。北半球では、機首方位は出発時にやや北寄りで、中間点で赤道と平行になり、ゴール時は反対に南寄りになる、あの形ですが…このイニシャル・ヘディングというのは、メルカトル図法で言いますと、出発地点における飛行コースの接線の方位に当たります。厳密には、出発の瞬間にしか正しくない方位ですので、通常の航法では、この数値自体を使って飛ぶことはありません(大圏コースの任意の一点における、機首方位を算出する材料にはなります)。しかし北極を中心としたグリッド航法の地図上では、大圏コースは常に直線で、しかも常に「上が北」(グリッドノース)ですので、出発からゴールまで、常にグリッドノース専用コンパス上で、一定の針路を維持して飛ぶことになります。
 この「一定の針路」は、イニシャル・ヘディングにコンバージェンス(通常方位とグリッド方位の差)を足し引きすることで計算できます。コンバージェンスは、機体の現在地によって刻々と変わるため、ウイングレベラーを使って、一定針路を維持して飛んでいるつもりでも、コンパスは徐々に目標方位からずれてきて、何分かに1回は修正が必要です。このずれこそが、メルカトル図法でお馴染みの、大圏コースの湾曲に当たるわけです。

 コースの針路と距離は、航法用フリーウェア「virtual E6-B」に、出発地と目的地の緯度経度を入力して、自分で算出することも出来ます。緯度経度は、先ほどのGreat Circle Mapperの画面表示にありますし、それぞれの空港をAtlas画面で探して拡大表示し、画面中央の飛行機カーソルを主滑走路の中心に当てれば簡単に測定できます。(もしVOR航法を併用する場合は、滑走路中央ではなく、空港VORの中心点で計っておくと、自分の航法とVOR測定結果が一致しやすくなります)
 前回も少し触れましたが、以下にvirtual E6-Bの操作法を一部ご紹介します。初期画面(メニュー)から「Lat/Long」(緯度/経度)を選び、出発地と目的地の緯度経度を入力し、「Compute!」ボタンをクリックすると、大圏コース(最短距離だが、多くの地図上ではカーブ)と、ラームライン(航程線=一定の針路を維持するコース)の双方で答が出ます。実際にアルタ空港とロングイヤー空港の緯度経度を使って計算すると、次のような数字になります。

    Great Circle(大圏コース) 距離511.80nm 真方位349.11度
    Rhumb line(ラームライン) 距離512.17nm 真方位345.65度
 北緯80度近い北極圏ですので、さすがに大圏コース(の出発針路)とラームラインでは、方位が約3.5度違いますが、飛行距離はたったの0.37nm(685m)しか差が出ません。これは、ほぼ北へ向かうコースだからで、もし東西方向へのフライトでしたら、もっと大きな差が出ることでしょう。

 グリッド航法は単に、極地で使いやすく工夫した地図とコンパスを提供する手段であって、GPSのように、機位(機体の現在の位置)や目的地を、ダイレクトに示してくれるわけではありません。飛行そのものは、あくまでも飛行方位と速度/経過時間に基づく、ベーシックな推測航法を土台にして行います。従って必ず誤差が出ますので、目的地へゴールする補助手段として、航法援助無線も調べておくことにします。FlightGearのロングイヤー空港にはVORがありませんが、NDBとILSがあるので、周波数などを調べます。ILSを使うには滑走路方位が必要ですが、これは磁気方位表示ですので、真方位を知っておきたい場合は、その土地の磁気偏差を足し引きします。残念ながら偏差は、Great Circle Mapperにはないので、フライトシミュレーター向けの空港情報サイトなどで調べます。私が常用しているサイトのアドレスは、下記の通りです。
    http://www.fscharts.com/
 ロングイヤー空港の偏差は、このサイトには「Mag dev -0.8 Degrees」と出ています。「Mag」はもちろん「磁気」の略で、「dev」は「deviation」の略です。このdeviationは、航空用語では磁気コンパスの誤差の一種「自差」(機体および計器の個体差)ですが、地理用語では、まれに偏差(普通はvariation)の意味で使うこともあり、非常に紛らわしいです。数値のマイナスは「磁北極が真北より西にある=偏西」という意味で、プラスなら同様に「偏東」です。幸いご当地ではコンマ以下なので、飛行中は忘れてしまっても、あまり心配はなさそうです。以上のデータを書き添えて、次のようなフライトプラン(正しくは、ナビゲーション・ログ=航法計画書)が出来ました。

●簡単な、航法計画の表を作る:
緯度経度は、先ほどのサイトからのコピペです。

◎アルタ空港(ENAT)(69°58'34"N 23°22'18"E) VOR117.40
    ▼349.11度(■ 度)512.17nm
◎ロングイヤー空港(ENSB)(78°14'46"N 15°27'56"E) 偏差=偏西0.8度
 NDB=LON 350 ADVENT 326
 RWY-10(104度)ILS=110.30
 RWY-28(284度)ILS=109.50

 コースの349.11度は、通常の緯度経度座標の真方位ですから、コンバージェンス(真方位とグリッド方位の差)を使って、飛行中に専用コンパスで参照するグリッド方位(表では、■マークの空欄部分)に換算する必要があります。計算式は、
・自機が東経にいる場合は、
            グリッド方位=真方位-コンバージェンス
・自機が西経にいる場合は、
            グリッド方位=真方位+コンバージェンス
です。答が360度表示になるよう、もし計算結果がマイナスになったら、360度を足してください。コンバージェンスの値は、大まかには自機の(通常の座標系における)経度と同じですが、かなり誤差が出ますので、私は前回お話ししましたように、GPSを使って計算してパネルにデジタル表示する「GPS-Grivation計」を作りました。皆さんがこの航法を試される場合は、GPSのRoute ManagerのWaypoint欄に「180,0」(東経180度、北緯0度)と入力してアクティベートしますと、GPSがグリッドノースを指します。
 この状態でinternal propertiesから instrumentation/gps/wp/wp[1]/bearing-true-degを読み取ると、それがコンバージェンスの数値です。アルタ空港でピラタスPC7改を起動し、GPSにグリッドノースをセットしてコンバージェンスを見ると24.7度ですので、今回の飛行コースのグリッド方位は
           349.1度-24.7度=324.4度
となります。この換算値を先ほどの航法計画表に書き入れますが、通常の真方位と混同すると大変ですので、私は数値のアタマに■印を付けることにしました。

●風を読みながら、北へ:
 グリッド航法は、先ほども触れましたように、本質的には推測航法の一種ですので、実際のフライトでは、さらに風の影響を加味して、針路と到着予定時刻を補正します。予定時刻のほうは、シミュレーションの場合、いつ着いても構いませんので…針路だけ補正してもOKです。この計算にも、先ほどのvirtual E6-Bが大活躍します。ではフライトに移りましょう。すでに秋分を過ぎてしまったので、北極圏は正午でも太陽が非常に低く、陽の出ている時間が、どんどん短くなりつつあります。

 アルタ空港で、離陸準備に掛かります。飛行距離が500nmちょっとありますので、燃費のよい30000ftまで上がる予定です。燃料はピラタスPC7改のデフォルト状態(機内タンクのみ1500Lbs搭載)とし、GPSにグリッドノースの自作フィクス「GRIDN」をセットして、グリッド方位コンパスとGPS-Grivation計が、所定の値を示すことを確認。雲量は2500ftでfew、3500でscatterdのみ。視界は25キロです。
 エンジンを始動し、UTCの1025時(ローカル1225時)に離陸。空港VORの周波数をNAV1受信機に入力し、VOR2指示器で方位と距離を確認しつつ、いったん南へ向かって高度30000ftまで上昇し反転。1038時、アルタ空港の真上まで戻り、200KIAS(320KTAS)で航法を開始します。

 ここでメニューバーから風向風速を調べると、310度15Ktでした。風の影響を知るため、virtual E6-Bの初期画面から「Winds」を選択し、以下のように入力します。
Wind Direction(真方位の風向)=310(度)
Wind Speed=15(Kt)
True Course=コース針路349(度)(注:ここはグリッド方位ではなく、通常の真方位!)
True Airspeed=現在の真大気速度320KTAS
…ここで「Compute!」をクリックすると、以下のように答えが出ます。
Ground Speed 308.2kt
True Heading 347.3(度)
WCA(ウインド・コレクション・アングル=風力修正角)=1.7(度)Left

 これらの数値をもとに、
グリッド方位コンパス針路=324.4-1.7=322.7度
予定飛行時間=512.17nm÷308.2Kt=1.66時間
予定到着時刻=1218時(UTC=協定世界時)
と計算できます。

 もし風向風速が固定ならば、このままで相当正確にゴールできます。しかしリアルウエザーを使うと当然、風向風速が不定期に変化します。GPSやVOR航法ですと、計器が勝手に風力を補正してくれるので、風が変わろうが止もうが、あまり関係はなく。パイロットはVOR指示器の機首方位を見て、結果的に偏流角(風に流される角度)および修正角を知るだけですが、グリッド航法を含む推測航法の場合は、どうしても風が変わるたびに、針路補正計算をやり直す必要があります。
 問題はこの風の変化を、飛行中どうやって知るかですね。電波航法に一切依存しない方法としては、世界一周の折に、アメリカ西海岸沖でリポートさせて頂きましたように、ウインドスター測風法という手が、あるにはあります。巡航中、三角形に変針して各レグで偏流角を計り、作図または、簡易作図具である本物のE6-B計算盤を使って、風向風速を出す方法です。が実際に20分置きにやってみますと、死ぬほど面倒ですので、フライトシミュレーターの長距離航法に、これを常用される方は、世界中探してもいないでしょう(^^;)。
 また、私はAtlas画面の航跡から正確に偏流角を実測しますが、実機ですと肉眼または偏流計ごしに、地形や海面の波の流れ方を視認して測定するので、実際はピラタスPC7改で飛ぶような高々度からは、もやが邪魔をして、偏流を測れないことも多いはずです。その意味で、偏流測定による風力計算は、基本的にはレシプロエンジン時代の技術だろうなぁと感じています。
 そうした、あれこれの理由から最近は、いささか簡略ですが、何らかの手段で気象情報を得たとの想定で、時々メニューバーを開いて、風向風速のデータを読んでしまうことにしました。はっきり変化があれば、そのつど修正計算をします。コンパスや速度計の動揺に目を配っていると、風が変わった気配がしますので、再計算するタイミングの目安になります。また複雑な地形の上空では、風が頻繁に変化することが多いので、チェックの頻度を上げるべきです…これがまた結構、煩雑なのですけれども(^^;)。

●ついに、極北の島へ:
 1058時。満月に近い月が正面に見え、わが孤独な空の旅を彩ります。まだ受信可能なVORによれば、私はアルタから107nmの海上におり、風が260度11Ktに変わっていることを発見。前回と同様に計算すると、GS(対地速度)は319.6Kt、TH(真方位)が347.0度、WCA2.0度…とのデータが得られました。自作グリヴェーション計で読んだCV(コンバージェンス角。現在地により刻々変わる)は23.7度でしたので、これからGH(グリッド機首方位)を求めると、323.4度。わずかに変針。あと1.267時間、1213時ごろ到着予定です。

 1116時、機体が不意にドカンと揺れて、針路が0.3度ほど狂いました。風が310度20Ktに振れており、もっと低い中高度域では、実に45Ktを記録しています。やはり極地の天気ですねぇ。風はさらに314度17Kt、18Ktと細かく変化。310度20Ktで安定したため、さっそく再計算。GS304.2Kt、TH346.7、WCA2.3LEFT…の値を得た結果、取るべき針路は真方位346.8-CV22.4=GH324.4度、という解になりまして、また変針。以後この調子で、倍速モード飛行の合間に、さらに2回の再計算を行いました。コンバージェンスの変化とともに、コースも段々ずれてくるので、この修正もあり、500nmの長旅は、結構あわただしい展開です。
 忙しく過ごす間に、いつのまにか月が、機首の左から右へ通り過ぎたことに気付いて、ふと「月距法」という、古い天文航法技術を思い出しました。極地の空で「位置の線」を得る、新たな手段の一つになるかもしれませんが、私の天文や数学の知識では、とても計算式を組み立てられないのは残念です。

 1208時。もやを通して、ついに眼下に陸地を視認。ちょうどスピッツベルゲンの、南岸に到着するところでした。ADFをロングイヤー空港にセットすると、正面付近に反応があり、左にずれていきます。
 1220時32秒。最新の計算による到着予定時刻から2分半遅れて、空港NDBを左アビーム(真横)に捉えました。しかしAtlas画面測定では、コースは右に20nmも外れています。主観的には、かなり手際よく針路修正を重ねて、うまく飛べたと思ったのですが、飛行距離に対する左右誤差は3.9%とかなり大きく、しかも原因がはっきりせず残念でした。しかしまぁ、グリッド航法で初めて海を渡って、島を発見することには成功したわけですね。空港の東にある、進入用NDBに周波数を切り替えて、降下。
 雲を破ると、大きなフィヨルドが目に飛び込んできました。アルタに似た景色ですが、ずっと雪の分量が増えまして、「雪よ、岩よ」という例の、雪山賛歌の歌詞みたいな光景です。きりりとストイックで、なかなか美しい。私は空港北方のフィヨルド上空で進路を変え、小さい山脈を一つ越えて、滑走路へ東から最終進入し、滑らかに着陸しました。1234時、エプロンに入ってエンジンを停止。燃料残は292.8Lbs。搭載量の5分の1くらいですが、飛行時間にすると30分ちょっとしかなく、新航法の本番テストにしては、ゆとりが少なすぎたかと反省しました。

 ここで島内のショート・フライトを交えて、スピッツベルゲンにまつわるお話を…と思ったのですが、グリッド航法実証試験のご紹介が長くなったこともあり、次回に譲ります。
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なし 北緯78°飛行船の島

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-11-14 22:40 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。北極「オーロラ・フライト2010」の5回目をお届けします。
 前回は、極地用のグリッド航法を使って、ノルウェー北端付近のアルタを出発し、北極海に浮かぶスバールバル諸島・スピッツベルゲン島の中心地、ロングイェールビェンの空港(ロングイヤー空港 ENSB)へ進出したところまででした。
 ここスピッツベルゲンから北極点までは、わずか600nmです。大昔から北極探検の最前線で、航空機の出現後は、極点への最終発進基地としても、盛んに利用されました。格納庫や飛行船係留塔などが造られたのは、西岸のキングス湾という場所で、あれこれ調べたところ、FlightGearのマップにある、ニーオーレスン飛行場(ENAS)の一帯だと分かりました。ロングイヤーからニーオーレスンは、ほんの60nmほど。今回はこの区間を古典機でショートフライトし、また飛行船に試乗して、空の北極探検史の一部を振り返ります。

●空から「地球の頂上」へ:
 まず、歴史のお話を。スピッツベルゲンから、初めて北極を目指して飛んだ探検家は、恐らくスウェーデンのサロモン・アンドレーでしょう。1897年7月11日、彼は仲間2人とともに、水素気球「エルネン(鷲)」号でキングス湾を出発。この気球は、言うなれば帆走式でした。
 気球は風に乗ると、空気との相対速度がゼロになりますから、帆や舵では操縦できません。そこでエルネン号は、イギリスで発明された「ガイドロープ」(地面に垂らして、重量を浮力と釣り合わせ、一定の高度を保つためのロープ)を氷上に引きずってブレーキに使い、風より少し遅く飛んで、帆の操作で針路をある程度、制御する仕組みでした。うまいアイディアですが、本番ではガイドロープが離陸直後に外れてしまい、ただの気球となって北上。数日後に通信用の伝書バトを放った後、消息を絶ちました。33年後の1930年、アンドレーらの遺体と日記、未現像フィルムなどが発見され、3人は氷結による重量増のため不時着し、徒歩で帰還中、ホッキョクグマの生肉を食べ、寄生虫によって死亡したと判明。痛ましい結末ですが、彼らは北緯83度まで飛行しており、これは2000年に記録が破られるまでの約1世紀間、気球が到達した北限だったそうです。

 キングス湾は、多くの探検家を引きつけました。航空関係では1906年と09年、アメリカのウェルマンが気球で北極探検を試み失敗(幸い生還)。また南極探検で有名なノルウェーのアムンゼンは1925年に、水陸両用のドルニエ・ワール飛行艇で当地から極点を目指し、9時間後に不時着して失敗しましたが、極地でも飛行機が使えることを実証しました。アムンゼンは翌1926年、イタリア陸軍のウンベルト・ノビレ大佐(当時)が開発した半硬式飛行船を買い取り、ノルゲ号と命名して再来。5月11日、ノビレを交えた計16人でキングス湾を出発し、無事に北極点を通過して、アラスカに到着しました。
 空からの北極点一番乗りは、実はわずか2日前、同じキングス湾から、アメリカ海軍のリチャード・バード中佐(のちに大西洋横断や南極点初飛行。米国を代表する極地探検家)が成功しています。彼はフォッカー3発機「ジョセフィン・フォード」号を駆り、往復15時間の飛行後に帰還しました。
 翌1927年は、あのリンドバーグが大西洋を横断した年ですが、北極の空にも新たな航跡が刻まれました。オーストラリアの探検家、ヒューバート・ウィルキンスが、デビューしたばかりの名機ロッキード・ヴェガで、アラスカ北端バーロー岬からスピッツベルゲンへ北極海横断に成功。猛吹雪で目的地の8匱蠢阿防垰着し、5日後にようやく再離陸してゴールする、苦難の旅でした。
(ちなみにウィルキンスは1931年、史上初の潜水艦による北極点到達に挑戦。ツェッペリン飛行船開発の中心人物、ヒューゴー・エッケナー博士に「極点で会いましょう」と同時探検を持ちかけ、潜水艦のほうは失敗したものの、この提案によって、後にご紹介する「グラフ・ツェッペリン」号の北極飛行が実現しました)

●氷原の赤いテント…飛行船「イタリア」号の悲劇:
 ここで再び、アムンゼンとノビレが登場します。ノビレ(帰国後、少将に昇進)は、設計者/船長としての自分の功績が、世間に十分評価されなかったとして不満を抱き、1928年5月に再び北極探検を企て、ほぼ同型の新造飛行船「イタリア」号(全長82m、最大速度120/h、16人乗り組み)を指揮し、またもキングス湾から北極点を目指しました。
 イタリア号はグリーンランド北端を経由し、北極点に到達しましたが、帰路は悪天候の中で操縦の自由を失い、氷原に激突。ノビレら10人が乗る操縦ゴンドラは、衝撃で船体から分離。軽くなった船体は、残る6人の乗員を乗せたまま上昇しました。船体側に残された乗員らは、とっさの判断で多くの積み荷を投げ落とし、これらの物資がその後、ノビレら9人(墜落時1人死亡)の氷上サバイバルを支えました。しかし空中の6人は、そのまま船体と共に風に流され、消息を絶ちました。
 9人の生存者は、氷上にテントを張り、目立つよう赤く染めました。無線電信機を修理して救助を求めたところ、アマチュア無線家に受信され、ロシアの砕氷船クラッシン号や、北欧3国など計5カ国のパイロットが捜索飛行を展開。約50日後、生存していた全員が救助されました。航空技術が未熟な1920年代、極地の救難活動は非常に危険を伴うもので、かのアムンゼンも、この捜索飛行で命を落としました。
 ノビレは重傷を負っており、悪天候をついて最初に強行着陸した、スウェーデンの軽飛行機に救出されました。しかし帰国後は「部下を氷上に見捨て、真っ先に帰ってきた」と非難を浴び、追放同然に国を出て、米ソで飛行船開発の指導などを行い、波乱の後半生を送りました。イタリア号を巡るドラマは戦後、ソ連・イタリア合作の「赤いテント」という映画になっています。

 イタリア号遭難の年、硬式飛行船の先進地ドイツでは、ツェッペリン飛行船約130隻の歴史の中で、もっとも輝かしい成功を収めた、LZ-127「グラフ・ツェッペリン」号が完成しました。同船は大西洋航路を定期運航し、1929年の世界一周飛行では日本にも寄港。1931年にはイタリア号に続き、飛行船史上3例目の北極点到達に成功しました。当時、ドイツの飛行船技術と経験は極めて豊かで、ツェッペリン伯爵の後継者・エッケナー博士は、この北極飛行を自ら指揮するにあたって、絶大な自信を持っており。ノビレが「極地の専門家」として同乗と助言を申し出た際も、習うべきことはないと判断し、あっさり断っています。

●FlightGearの飛行船:
 スピッツベルゲンをめぐる、熱い物語を振り返ると、いつかはシミュレーターで北極をじっくり飛び、これら飛行船の探検の再現をしてみたい…という思いが沸いてきます。しかしながら数年にわたり、仮想地球を何万キロも飛び続けていますと、セスナの着陸速度より遅い飛行船で、広い北極海を横断するのは、並大抵の苦行ではないとも、ひしひし感じました(^^;)。
 そこで今回、キングス湾の位置が確認できたのを機会に、せめて前回到着したロングイヤー空港から、キングス湾に面したニーオーレスン飛行場まで、飛行船で飛ぼうと考えました。以下がコースです。
◎ロングイヤー空港(ENSB)
   ▼真方位315度59nm
◎ニーオーレスン飛行場(ENAS)
 余談ながら。ENSBがあるロングイェールビェンは、他の街と「世界最北の都市」の座を争っています。「都市」の定義は様々ですが、例えば英国風に言うと「大聖堂と、大学があること」が条件だとか。現地には少なくとも教会と、学生数350人の大学があって、地球環境などを研究しています。近くの永久凍土層には「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」が設けられ、遺伝子を組み換えていない穀物など、植物20万種の種子が貯蔵され、核戦争や温暖化から種の多様性を守る、現代版「ノアの方舟」の役目を担っています。

 使用機体ですが、今回は米国「本家」サイトの機体ダウンロード・リストにある、2隻のツェッペリン飛行船を用意しました。このうちLZ-129ヒンデンブルグ号は、戦前の硬式飛行船の技術的最高峰、かつ最大級の機体で全長247m。船舶で言えば、10万トン級タンカーくらいのボリュームでしょうか。この偉容は、飛行船の大いなる魅力でありますが、同時に強風に弱いという、最大の欠点にも繋がります。
 実物のヒンデンブルグ号は、ご存じのように、完成後わずか1年で有名な爆発炎上事故を起こし、全飛行船の商業運航にとどめを刺しましたが、飛行船の歴史全体を見れば、水素火災よりも悪天候で遭難した船の方が、圧倒的に多いようです。戦闘機を積んで「空中空母」と呼ばれた「アクロン」号と「メイコン」号など、ヘリウムを使ったアメリカの大型飛行船も、突風に起因する事故のため、すべて就役2年未満で失われました。このあたりは、ドイツとの経験の差でもあります。
 ヒンデンブルグと対照的なのが、もう1隻のFlightGear船「NT07」で、同じツェッペリンの名を持ちながらも、構造や操縦法が大きく異なる、軽快な現代のハイテク船です。いずれも私は伊丹空港などで「上がって降りて、係留した」ことはありますが、ごく短時間のフライトでした。

 今回は何度か練習飛行を重ねた後、ヒンデンブルグ号で島の分水嶺をすれすれに越え、キングス湾(ニーオーレスン)に向かったのですが、超鈍足に加え、仕事後の未明フライトのため疲労困憊し、途中で仮眠したら寝過ごしまして、目覚めると飛行船はガス欠のためエンストし、雲間を漂っておりました(^^;)。これら数回のミニフライトで、以下の重大な問題が判明しました。
   ・ヒンデンブルグ:一部タンクの燃料しかエンジンに回らず、航続力わずか約100nm。
   ・NT07     :オートパイロットが使えない。
   ・両船とも    :Aキーがバラスト投下に割り当てられ、倍速モードは使用不能。
これでは北極海横断どころか、今回のたった59nmを飛ぶにも、実時間通りに丸々2時間くらい掛かってしまいます。非常に残念ですけれども、要するにどちらの機体も、今後研究して改造しない限り、長距離飛行には使えそうにありません。取りあえずニーオーレスンへの飛行には、何か北極に縁のある歴史的飛行機を使い、飛行船は到着後の体験飛行だけに使うことにしました。

●「ブリキのガチョウ」を駆って:
 使用機に選んだのは、リチャード・バード中佐が1929年、前述の北極飛行に続いて、史上初の南極点往復飛行に使用した、フォード・トライモーターです。幸いちゃんと、FlightGear版があります(^^)/。
 この3発機は1926年、ヘンリー・フォードが作った唯一の旅客機。前年に発売されてベストセラーになった名旅客機・フォッカー3発機(バード北極飛行以外にも、多くの記録に挑戦)に酷似しており、木材と布のフォッカーを、全金属製に変えただけの模倣作…という、かなり辛口の評価を受けています。しかし性能は良好で、屋外係留でも木製機より腐食に強く、戦前としては多い200機を製造し、世界中で使われました。ただし近代的なダグラスDC-2などが出現すると、すぐ消える運命ではありました。ユンカースによく似た、波形トタン風の金属外板を張り巡らした姿は、さすがに古めかしく、「ブリキのガチョウ(Tin Goose)」のニックネームが、しっくりとなじみます…。さっそく、飛ばしてみましょう。

 ロングイヤー空港の、フィヨルドに面した滑走路で起動すると、北極圏もすでに11月。1000時(現地正午)だというのに、太陽は沈みっぱなしで、地表は夕焼けそっくりの残照に包まれ、あかね雲が浮いています。いかにも極地探検らしい光景ですが、どっちを向いても薄暗く、おまけに101度から34Ktの強風が吹き荒れており、いささか意気の上がらないスタートになりました。
 ガチョウさんのタンクは小さくて、左右合計で402Lbs(67gal)しか入りません。燃費不明なので、取りあえず2倍の容量に改造しておきました。機体の外観は精巧で、3舵を操作すると、キャビン両サイドの外壁に再現された操縦索や、昇降舵ベルクランクが実際に動き、なかなかすてきです。
 フラップはありませんが、たった50Ktで機尾が上がり。強風で機首が風上へ偏向したものの、滑走路にとどまりながら70Ktで離陸。尾輪式にしては、とても素直な操縦性で、非常に鈍重ながら飛ばしやすい機体です。また視界の良さは特筆もので、単発尾輪機と同様、機首にエンジンがあるにも関わらず、コクピットが高くて前下方に視界が開け、側面も(ベースレグに入るには重要な)斜め後ろ45度の視野まで、たっぷり確保。頭上も全部ガラス張りで、操縦席から六分儀で天測できそうです。当然、旋回の行き先(バンク中は、左右上方)もよく見えますからアプローチは楽で、DC-3なんかより、ずっとマシ。なんと先進的な機体でしょう。風防ガラスに、反射効果を再現しているのは邪魔ですが、まあリアルです。FlightGear機は10席で、実機の15〜17席よりスペース的には豪華ながら、客室視点やドア開閉の機能はありません。
 1200ftでレベルオフ、全開で130KIASをマーク。燃費は非常に悪くて0.79nm/galでした。1021時、315度でウイングレベラーを使って定針し、高度保持を3000ftにセットしてから、100KIASに減速。オートパイロットは使えますが、保針の操舵力とダンパーレートが弱いので、機首をしばらく左右に振るのは不満です。

●憧れのキングス湾へ:
 短距離フライトですが、一応は航法もしようと、ざっと偏流計算をしましたら、WCAは約10度と出ました。計算前に維持していた機首方位も勘案し、目分量で補正を加えて、針路を327度に変更。対地速度は約125Ktなので、28分で目的地に着くはずです。機外視点から確認すると、機体は右へ大きくラダーを取り、斜めに飛んでいます。なにしろ鈍足ですから、強風の影響が大きく出るのですね。申し遅れましたが、今回は計器の関係でグリッド航法を使いませんでした。
 対気速度100KIASでは、回転計は65%くらい。燃料も1028時に300Lbs×2タンク分残っていて、十分足りるはずです。ミクスチャーを薄めにして、プロペラピッチも高速寄りに引いたところ、すぐ燃費が1.7nm/galまで改善しました。ただしシリンダー温度計はないから、ガスを薄め過ぎても分からず、エンストの恐れがありますので要注意。1033時、断雲に紛れて、島中央付近の分水嶺が接近したため、4000ftへ上昇。いつのまにか針路がずれており修正。ウイングレベラーによる定針は、当てにならないようですが、仮に高緯度地域に特有の、未知の誤差があるとしても、この程度の短距離飛行で現れるとは思えず、原因が分かりません。地表に目を落とすと、テクスチャーの設計が変で、山中に森林と混じって、パックアイス(海水が凍った氷)が広がっています。おかげでどこが海なのか、いまいち地形が分かりません…。

 1044時、断雲の前方に本物の海が見えました。もうキングス湾かな? 雲の下に出なければ。1046時、低空でキョロキョロしていたら、眼下すぐ右前1.5nmの至近に、ニーオーレスン飛行場が見えました。日陰の小さな滑走路で、照明もPAPIもなく、路面の明度が周囲の地表と似ているため、非常に見分けにくいのですが、ほとんどピンポイントで到着しました。近いし、一応は航法計算したから、当たり前ですけれど…山も越えたのに、よく風が大きく変わらなかったなと、嬉しい思いをしました。
 1047時、空港の南1nmを通過。褐色の海、凍て付いた台地。氷河テクスチャーに覆われた低い山々が、太陽の残照でバラ色に燃える雲と、青空の下に広がっています。そして突風。これが、スピッツベルゲンのキングス湾か。北極飛行の聖地か。実世界では同じ風景を、バードが、アムンゼンが、ノビレが、アンドレが見たのか…などと感激している間に、目立たない滑走路を見失ってしまい、慌てました。
 風が強い。ガストも強い。また滑走路は、低空に降りるとますます見にくくなります。いったん湾に出てターンし海岸に引き返したけれど、どうしても視認できません。でもバードらは、もっと悪い条件でも降りたはず。海岸線の特徴を頼りに、やっと薄暗がりに滑走路を発見。いよいよ接近してから…私の悪癖ですが…ミクスチャーとピッチを高空・高速設定のまま、戻し忘れたことに気付いて、とっさに手放し操縦で解除。これをやっておかないと、いざという時、ゴーアラウンドが出来ません。左15度から30Ktの風を食いつつも、どうやら無事に、波形トタンのガチョウを降ろしました。
 1055時、エンジン停止。燃料の残量は210.5Lbs(35.1gal)×2でした。搭載量を倍増したのに、240nm程度しか飛べない計算ですが、改造は簡単ですので問題ありません。今回はショートフライトながら、ちょっとだけ技術を使い、スリルもあり、とても面白かったです。

●雄大にして荘重…かつ厄介な「空の巨船」:
 日を改めて、また2隻の飛行船に試乗しましたので、インプレッションをお話しします。
ヒンデンブルグ号は、起動すると滑走路端に係留塔が現れ、船首をつないだ姿で登場します。起動直後は船体が軽く、船尾が上がる感じでバウンドしますが、船体のバランスを調べる「w」キーを押すと、デフォルトでは同じ体積の空気より11トンほど重いようです。ここで大文字「W」キーを何度か押すと自動調整され、次第に重量の超過分が小さくなります。
 デフォルトの視点は、船首下方の操縦ゴンドラ前方右寄りに立つ、船長の位置になっていますが、その左に立つ舵手、左後方にいる昇降舵手にも切り替わります。他に、ゴンドラ中央のチャートルーム、その後ろの航法室、船体上部の天測用見張り台(バブル・セクスタントを使うオプションもあるが不作動)、さらに前後左右4カ所のエンジン・ゴンドラ内にも視点があり、面白いです。
 エンジン・ゴンドラには計器盤があり、前後に開口部を持つ小型機関室という感じです。前方からラジエーター越しに冷却風が入り、プロペラで吸い出される仕組みになっています。実物の操縦ゴンドラには船舶と同じエンジン・テレグラフ(出力を指令する表示器)がありますので、エンジン・ゴンドラには機関士が詰めて、運転操作やメンテナンス、そして必要なら修理をするのでしょう。大型飛行船は数日間飛び続けるので、こうした設計になっているのですね。
 なお飛行船のゴンドラは「カー」と呼ばれることがありますが、四角い窓が並ぶ操縦ゴンドラは、なるほど客車みたいです。

 さて出発します。前部バラストは、「a」キー1発で0.1%投下。大文字「A」キーなら1%投下。同様に「d」と「D」で後部バラストが落ちます。離陸時はわずかに船体を軽くし、係留索をリリースしますと、ごく静かに船体が地面を離れ、垂直に浮いて行きます。比重は空気とほぼ同じですが、船体のマスは極めて大きいので、10Kt以上の風が吹いていても、流され始めるまでには時間があります。200ftほど上がってから、落ち着いてエンジンを始動しましょう。
 これがスタンダードな離陸法ですが、この船は若干ガス漏れがあるのか、少しずつ船体が重くなります。浮力と重量の複雑なバランスに悩むよりは、起動直後に大きくバウンドしている数秒間に、さっさと係留策を外して一気に浮いてしまうのが、一番簡単です。これは、現代の小型飛行船の離陸法の一つ「アップ・シップ」に似ています。アップ・シップとは「地上で約10人がゴンドラのハンドレールをつかみ、『せーの!』で船体を持ち上げ、次いで引き下ろして地面に叩き付ける。するとランディングギアの反動で、船体が空中に跳ね上がるから、ある程度高度が上がった時点で、動力を使って上昇に移る」というテクニックです。

 ヒンデンブルグの加速は非常に遅く、何分も掛けて30Ktを少し超えます。舵の利きも鈍く、180度回頭に最大3分ほど掛かりました。旋回を止める時は慣性も働きますし、旋回半径は1nm近くありそうです。昇降舵で船首を上げ下げすると、船体に気流が当たって、ダイナミック・リフト(動揚力)が発生します。速度と燃費は当然悪化しますが、重量をいじると、上昇や降下がすぐには止まらなくなる恐れがあるので、バラストやガス放出は最低限にとどめ、なるべくダイナミック・リフトで操船するべきでしょう。また、むやみに上昇してしまうと降下が大変ですので、可能なら5000ft以下の飛行がお勧めです。

●一つ間違えば、地上で大暴れ:
 空港進入は風下から低速で。数nm手前で、前部と後部のガス弁を開きます。浮力が急速に減りますので、弁は10秒で閉鎖し、係留塔の手前を狙ってゆっくり降下します。なかなか行き足が止まりませんので、必要ならいったんエンジンを止め、大文字「R」キーで逆転にしてブレーキを掛けますが、簡単には効きません。(実機もカムシャフトをスライドさせ、バルブタイミングを切り替えて、エンジンを逆転させました)

 係留塔前で地面近くに降ろし、大文字「U」キーを押すと、1500ft以内なら係留索が掛かり、小文字「u」キーでウインチを巻けば係留完了です。ただしアプローチの対地速度は、非常に小さくないとダメです。今回は8Ktでもまだ速すぎ、索を引っかけてから反動で船体が水平に反転して、慣性でしばらく大暴れしました。これを防ぐには係留塔の寸前で、向かい風と行き足を釣り合わせて一度停止し、最微速で近づくべきです。また係留後、後進全開で船体を引っ張って安定させようとすると、かえって係留塔を軸に、水平面で振り子運動のような暴れ方をすることがあります。風が絡んだ一種の振動ですが、主なエネルギー源は後進推力そのものらしく、エンジンを止めるとあっさり収束しました。
 アメリカの古いニュース映画には、大型硬式飛行船「ロサンゼルス」が1928年に強風にあおられ、係留塔の真上に85度まで逆立ちする場面があって、まれにテレビで放映されますね。また船名は忘れましたが、やはり硬式飛行船が強風のため、数百人の地上要員を振り切って地上を離れてしまい、勇敢にも最後までヨーライン(着陸索)にしがみついた数人が、空中高く吊り上げられて墜死するシーンも記録されており。これはアニメ「魔女の宅急便」の作中、飛行船「自由の冒険号」の遭難場面に引用されましたが、ヒンデンブルグが地上で暴れると、これらの恐ろしい映像が、にわかに実感を伴って心に迫ってきます。
 ヒンデンブルグの操船は、以上のようになかなか骨でして、あっという間に1時間程度は経ち、くたくたになります。しかし、まさに大きな船舶を動かしたみたいで、達成感のほうも特大でした。

●大空を自在に…新時代の「カッ飛びクジラくん」:
 これに対し、ハイテクで武装した現代のツェッペリンNT07飛行船は、まるでスポーツカーです。
戦後の飛行船と言えば、1980年ごろまでは、大戦中にグッドイヤー社が対潜哨戒用として量産した軟式飛行船が、宣伝や観光にゆったり飛んでいましたけれど、その後はエンジンを上下にティルト(回転)させて推力の向きを変え、ダイナミック・リフトや操縦モーメントに能動的に使って、極めて高い操縦性を発揮する、新しいタイプの小型飛行船が現れました。NT07はその代表例です。
 この船は、一般的な軟式船と同様、船体内部の前後に各一個のバロネット(膨張・収縮する空気室)を持っていて、どちらかを膨らますことによりヘリウムガスを移動して、大幅にトリムを変えます。また船体内部には、かつての硬式船よりずっと簡素ながら、軽金属の骨組みを持っており、軟式船や半硬式船よりも頑丈です。軟式船ですと、エンジンは操縦ゴンドラに付けるしかありませんが、NT07は骨組みを土台にして、3基のエンジンを船体中央両舷と船尾に、かなり離して取り付けています。こうすると、重心からのモーメントアームが大きくなり、エンジンをティルトさせた場合に、在来船よりも操縦の利きが良くなるのでしょう。

 FlightGearのNT07は、もちろんティルトとバロネット操作が可能で、基本的には浮力や重量を変更する必要は薄く、ジョイスティックで自在に操縦できます。気球の仲間と言うよりは、極めて低速の飛行機か、ティルトスクリューを3軸に装備した、軽快な小型潜水艇のような感じです。
 今回の試乗では、1103時(現地1203時)にニーオーレスン飛行場で起動。風は300度10Kt、雲は4000ftにscatterd、20000ft付近にcirrusという好条件でした。
 まず、係留索を付けたまま、両舷エンジンを垂直にティルトさせて始動。ちょっと回転を上げると、船体がじわりと地面から浮きます。少し待つと、船体が風見効果で係留塔の風下側に回って、完全に風に正対し、安定します。この方法はマニュアルには書いてありませんが、ユーチューブで同型船の離陸を観察すると、こうやっていました。
 向きが安定したら、いったんエンジンを絞ってから係留を解き、ティルトを掛けたままハーフスロットルまで出力を上げると、船体はエレベーターに乗ったような感じで、真上に上昇を開始しました。視界が十分に開けたら、エンジンを水平にして全開。昇降舵で目一杯アップトリムを掛けますと、仰角40度で急上昇しつつ40Ktまで加速して、起動後4分で高度5000ftを突破。さらに30秒後には、30Ktに落ちたものの6700ftを通過。起動後9分に8000ftに達し、さすがにこの辺で上昇力は頭打ちとなり、速力も鈍ってきました。
 ヨー方向の操縦は、ラダーと、リアエンジンから独立して設けられている、ヘリコプターのテールローターそっくりの装置を併用します。エルロン軸の操作でラダーが、またラダー軸の操作でテールローターのピッチが変わります。テールローターを使えば、たとえ地上付近に降りて静止寸前であっても、非常にアクティブに回頭します。急旋回の角速度は、もうセスナに近い印象ですね。航法計器付きのグラス・コクピットは持っているし、これはまったく、すごい船です。

 8000ftまで上昇したところ、なぜか船首が上がりっぱなしになり、失速警報が鳴りました。どうやら…プログラム上は飛行機に近いらしいですね(^^;)。リア・バロネットをしぼませて、フロントをふくらませたつもりでしたが、なかなか機首が下がりません。この辺の操作は、もっと調べなくては。
 そこでリアエンジンをティルトして、強制的に機首下げモーメントを発生。これで制御しやすくなり、40〜55Ktで降下を続けました。ファイナルアプローチでは最初、係留マストを通過してしまいましたが、こんな場面こそ、テールローターの出番です。アクセルターンさながら、その場で反転して軽く接地し、歩くような速度でマストに近づいて、あっさりと係留に成功。計29分間のフライトでした。なおNT07は運動性が高いため、マストの至近(100ft)まで寄らないと、係留操作が有効になりません。(ヒンデンブルグは1500ftです)

 ヒンデンブルグのような大型硬式飛行船は、着陸と係留時に、300人くらいの地上支援員がロープを引っ張りました。小型のグッドイヤー軟式飛行船(懐かしのキドカラー号やレインボー号)は、支援員が1割以下で済んだようです。そしてNT07になりますと、たったの3人。劇的な操縦性の良さに加え、係留塔をトラックに積んで移動式にするなど、作業を機械化したのも理由の一つでしょう。FlightGearの機体にも、このトラック式係留塔が使われており、機上からの操作で、任意の着陸地に新設することもできます。車体の前に吹き流しを持ったオジサンがたたずんでいるのが、なかなか楽しいですね。このあたりは、マイアルバムの画像をご覧頂けましたら幸いです。

     ○

 久しぶりに大長文となり、申し訳ありません。さて…北極の旅は、さらに続きますが。そろそろ冬が来てしまい、間もなく極地は真っ暗になりそうで、困っています(^^;)。
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なし 世界最北の空港…植村直己さんをしのんで

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 北極圏「オーロラ・フライト2010」第6回をお届けします。先日到着したスピッツベルゲン島(施政権はノルウェー)のニーオーレスンから、ピラタスPC7改でグリーンランド北端付近を越え、隣接するカナダ領・北極諸島の北東端、エルズミア島のアラート空港(北緯82度31分)へ向かいます。ここは「世界最北の空港」として知られ、Atlas画面をくまなくスクロールしても、なるほどマップデータには、これより北に空港はありません。極点までは約450nmを残すのみです。

 アラートは1978年に、探検家の故・植村直己さんが、北極点往復とグリーンランド縦断旅行のベースキャンプにした場所です。植村さんはここから、特注の犬ぞり「オーロラ号」と17頭の犬を、チャーター機のDH6ツインオッターに積んで、西へ74nm離れた、同じエルズミア島のコロンビア岬に運び、約2カ月に及ぶ単独行を経て極点に立ちました。ソリの搭載能力は約500キロしかなく、常に「燃料」にあたる犬の餌を始め、物資の不足に悩まされる旅ですから、ツインオッターによる空中補給は、この前人未踏の大冒険を実現する必須条件ですけれども、それを支えたのは正確な衛星航法でした。
 今回は、犬ぞりとテント付きの「ナオミくん人形」を氷上に置き、FlightGearのツインオッターで捜索する実験も行いました。マイアルバムに画像をアップしておきますので、併せてご覧頂けましたら幸いです。それではまず、アラートへの旅をお話ししましょう。

●氷海を越えて、世界最北の空港へ:
 出発地のニーオーレスンとゴールのアラートは、いずれも小さな飛行場で、NDBはありますが、ILSはもちろんなく、滑走路の照明もありません。この緯度ではすでに、正午でも夕焼けがほぼ終わって、宵闇に入りかけているので、灯火のない飛行場に降りるのは相当困難です。近く極点横断に向けてアラートを離陸する時は、それほど問題はないと思いますが、やはり到着時は滑走路が見えないと困ります。従って今回は、オーロラ・フライト唯一の例外として、あえてパソコンのクロックを日照時間の長い季節まで巻き戻し、日中に飛ぶことにしました。コースは以下の通りです。
◎ニーオーレスン(ENAS)(78°55'39"N-11°52'27"E) NDB414。
   ▼321度695nm(大圏コース)
◎アラート(CYLT)(82°31'04"N-62°16'50"W) 偏差=偏西061度
 5500ft滑走路(048T/228T) NDB305。

 このフライトを実施したのは11月22日ですが、まるまる2カ月巻き戻しましたので、ほぼ秋分に匹敵する環境となりました。ニーオーレスン飛行場は、暗い夕焼けの残照から一転、青い空のもと、緑あふれる風景が広がりまして、こんなに美しいところだったのかと、しばらく見とれました。
 風は3000ft以下300度10Kt、9000ft以上は320度30Kt。雲量は19500ftにcirrus、4000ftにscatterdでした。この数値は、ごく見慣れたもので、私の環境では…実はFlightGearのデフォルトです。クロックを過去の日付に変更してしまうと、どうやらリアルウエザー機能が無効になるようですね。

 0936時(現地1136時)にエンジン始動。燃料は機内タンクに半分の2000Lbsとしておきます。
真方位の針路は321度で、これに風力補正を掛けます。幸いほとんど正確に向かい風なので、対地速度が30Kt減るだけと考えていいでしょう。いっぽうGPSにGRIDN(グリッド方位の「北極点」=赤道上の経度180度を意味するフィックス)をセットすると、自作の計器が示したコンバージェンス(真方位とグリッド方位の差)は12.1度と判明。ここは東経なので、321度引く12.1度イコール308.9度で、グリッド針路が算出できました。数値を丸めて309度とし、針路が決まりました。離陸して巡航高度まで上昇し、巡航速度で落ち着いたところで、空港NDBの真上に舞い戻り、航法を開始します。
 0953時、ニーオーレスン上空28000ftを227KIAS(指示対気速度。真大気速度は348KTAS)で通過しつつ、燃費を測定すると3.5971nm/galと好調でした。針路をグリッド方位309度にセット。気速は間もなく230KIAS(353KTAS)あたりで落ち着きました。GS(対地速度)は323Ktなので2.15時間後、すなわち1202時ごろには、アラートに着くはずです…もし本当に、風が変わらなければ。1004時、4倍速に加速。
 1008時、ニーオーレスンNDBにセットしておいたADFの指針が、早くも揺れています。よほど送信出力が小さいのでしょうね。1013時、スピッツベルゲン島が背後の水平線下に沈み、正面には広大な氷原が見え始めました。いよいよ本格的な「北極」の始まりです。

 1023時、とうとう氷原に差し掛かりました。白い地色に濃淡を描いたテクスチャーですが、高々度から見下ろすと、滑り止めの凹凸を付けたコンクリートの敷石を、一面に張り巡らした広場のようにも見えます。ウイングレベラーで維持しているコースが、0.3度ほど右にずれたので修正。ちなみに計器を見ると、コンバージェンスはいつのまにか358.5度になっていました。極地では経度の線が放射状に走っているため、現在地が移動するにつれて「正しい針路」は刻々と変わりますが、これにコンバージェンスを加えたグリッド方位は、常に309度で一定です。今回、どうやら風向は変化しませんので、グリッド航法専用コンパスで、ひたすら309度を維持すればOKです。(注:この理解は、正しくありませんでした。あとでご説明します)

●地図を巡るトラブル:
 1050時、機首の左に小さな島が幾つか見えました。グリーンランドの端っこかな。まもなく正面に低くて大きい陸岸が登場。やはりグリーンランドです。燃料は4割消費して、残量は600Lbs×2まで減りました。軽くなった分、速度はいつのまにか228KIAS、350KTASに上がっています。陸上には多数の凍った湖が現れ、海岸には無数の湾が、凍った海には島々が、どこまでも広がる地域に突入。フィヨルドではなく、陸地はすべて平らな低地です。青い空のもと、久しぶりに見る壮大な風景で、じっくり「北極圏」を楽しみました。
 1154時、前方の広い湾で氷が切れ、開水面が現れました。山もあります。協定世界時では1203時で、ほぼちょうどアラートへの到着予定時刻です。今回はリアルウエザー機能が働かず、もやが少ないだけに、視界はドカーンと何十nmも開けているのですが、空港はどこにも見あたりません。
 Atlas画面を開けばすぐ「正解」が見えますが、それでは詰まらないので、背後で動いていたAtlasをいったん終了。地形から現在地を知る地文航法で行こうと思い、機体と連動しないバッチファイルを使って、Atlasの地図だけを起動しました。

 ところが、これがまずかったのです。デフォルトでは、たまたま地図をシベリアで起動するようにしており、はるばるグリーンランドまでスクロールしたら、さすがに負荷が重く、肝心のFlightGearがハングアップしました。馬鹿みたいですな…(^^;)。直前に保存した画像から、機体はアラートを約30マイル左に外して、北緯80度50分、西経63度付近にいたことが分かりました。私が見た開水面は湾ではなく、グリーンランドとエルズミア島を隔てるネアズ海峡でした。位置が分かればOKと、Initial Position機能を使った空中起動で、ほぼ同じポジションからリスタート。しかしまあ、ひどい目に遭いました。推測航法の場合、やっぱり地図は飛行前にきちんと展開しておくか、プリントアウトすべきでした。
 再起動後も、見覚えのある地形がありません。ひとつ隣の開水面を飛んでいたらしく、アラートのNDBをネットで確認し、ADFを動かして、やっと空港が見つかりました。慎重に接近し、難なく着陸。滑走路は未舗装で土に見えるテクスチャーでしたが、資料ではgravel(砂利)となっています。
 Atlasでは氷上に空港が見えますが、これは誤表示で、実際はちゃんと正しい位置…海岸にありました。地図上にはないDME(VORなし)も、現実通りに存在し、ちゃんと受信できます。吹き流しと進入角表示灯、航空灯台も作り込まれ、思ったほどひどくありません。しかし現地の衛星写真を見ると、深い雪の中に、土色をした滑走路がぼんやり埋まって見えるだけで、およそ楽しくなさそうな飛行場です。

 それはそうと、コースを30nmも外れた原因は、風の計算ミスでした。私は最初に補正計算をしたまま、風向きが変わらないとみて、以後は放置していました。針路一定のラームラインを使う、通常の航法でしたら、これで問題ありませんが、グリッド航法の場合は大圏コースを飛びますので、通常の緯度経度座標で考えれば、機首方位はどんどん変化します。機上ではこの変化する機首方位に、これまた変化するコンバージェンスを足して変化を相殺し、グリッド航法専用コンパスでは見かけ上「針路は一定」です。けれど風向は、通常の緯度経度座標で定義されていますから、「風向きが一定」であっても、機体との相対方位は、どんどん変化しているのです。今回の場合で言えば、「320度の風」は、最初ほぼ真正面から吹き、ついで右回りに位置を変え、機体を南に押し流したのです。グリッド航法では、無風でない限り、定期的に風力補正計算をやり直す必要があるのです…ちゃんと考えれば、当たり前なんですけれどね。勉強になりました。

●ナオミくんを探せ!:
 到着後、これまで使っていた夏のテクスチャーを、遅ればせながら冬モードに変更。冒頭お話ししましたように、次は植村直己さんをモデルにした「ナオミくん人形」の捜索フライトに移ります。
 植村さんの1978年の遠征は、恐らく衛星航法による犬ぞり探検の先駆けでしょう。本連載では以前、植村さんがGPSを使ったと書きましたが、時代的にも間違いで、実際はNASA提供のDCPという無線機が使われました。ごめんなさい。これは気温などを自動計測し、気象衛星ニンバス6号へ送信する装置で、NASAがデータを解析して現在位置を算出し、約1日遅れで通報してくれる仕組みでした。GPSに比べると非常に不便ですが、天候などに左右されず、正確な位置が分かることは、やはり画期的であったと思われます。
 限られた量しか運べない単独行で、長距離を移動するには、空中補給が必須です。しかし氷原は平らではなく、気象条件もさまざまですから、よほどピンポイントの測地手段を持たないと、空から発見してもらえません。私は南極飛行(本連載では今年3月13日〜5月20日)の折りに、C-130を使って、燃料切れで氷上に不時着した、赤いピラタスPC7改を捜索したところ、GPSで至近距離まで近づきながら、なかなか目視できなくてショックを受けました。そこで、もっと小さい犬ぞりクラスの目標は、どのくらい見えにくいのか、ぜひ試してみたいと思った次第です。

●そりと人形を作る:
 マイアルバムでお目に掛けた「ナオミくん人形」は6月ごろ、この北極飛行のプランを練りながら、AC3Dで遊んでいる間に、サクサクと出来てしまいました。犬ぞりは植村さんのオーロラ号がモデルで、さほど大きな間違いはないと思いますが、犬は正直、時間があれば作り直したかったです。
 これが犬に見えるかどうかは、さておき(笑)。実はサイズをうっかり、普段見慣れている愛玩犬並みにしてしまったのです。実際のそり犬は体重約40キロで、後足で立つと人の肩くらいはあり。また私は犬を2列縦隊に並べましたが、これは欧米や日本の探検隊でお馴染みの、カナダ・エスキモーのスタイルです。植村さん自身は、グリーンランド西岸のチューレで犬ぞりを学んでおり、全部の犬を扇形に繋ぐ方法がメインでした。引き綱の描き方も極めていい加減ですが、どうか目をつぶって下さい…(^^;)。
 そりと人形は、UFOを使って配置することも可能ですが、氷上の位置や見え方が事前に分かってしまうので、航空機を駐機させるのと同じ方法を使い、緯度経度で位置決めをしました。最近は、すっかりやり方を忘れてしまいましたので、同じ境遇の方のお役に立てばと思い、以下に方法を書いておきます。
 まず…次のようなシナリオを書き、naomi.xmlという名称で保存。ぶっつけ本番で飛んで、氷上にそりがなかったら困るので、最初はニーオーレスンで実験しました。

<?xml version="1.0"?>
<PropertyList>
<scenario>
<description>
</description>

<entry>
<type>aircraft</type> ←■タイプを航空機とすると、レーダーに映る。
<model>/Aircraft/naomi-aurora/Models/naomi-aurora.xml</model> ←■注■
<latitude>83.100000</latitude> ←■植村さんの著書にある、コロンビア岬の緯度経度。
<longitude>-71.033333</longitude>
<altitude>0</altitude> ←■凍った海の上では、標高ゼロとする。
<speed>0</speed>
<roll>0</roll>
<!-- <latitude>78.925</latitude> ←■テストに使ったニーオーレスンの緯度経度。
<longitude>11.8916</longitude>
<altitude>70</altitude> ←■滑走路の標高。
<speed>0</speed>
<roll>0</roll> -->
<heading>270</heading>
</entry>

</scenario>
</PropertyList>

 これをFlightGear/data/AIに置きます。このフォルダ内に、さらにAircraft/naomi-aurora/Modelsというフォルダを作り、naomi-aurora.ac(3D犬ぞり・ナオミくん人形)を置きました。
 上記シナリオの■注■にあるModels/naomi-aurora.xmlは、本来はAI航空機の飛行性能を記述するファイルだと思いますが、今回は飛ばさないので、単にナオミくんのacファイル名を定義しています。これを省略して前記シナリオで、いきなりacファイルを定義することも可能で、より簡単に思えます。ただし、FlightGear起動時にウイザードからシナリオを呼び出す際、この方法でも、ちゃんとメニュー欄に表示されるのかどうか、といった細かい部分は未確認です。ちなみにnaomi-aurora.xmlの内容は、以下の通りです。
<?xml version="1.0"?>
<PropertyList>
<description>naomi-aurora</description>
<author>hide</author>
<path>Models/naomi-aurora.ac</path>
</PropertyList>

●ケンボレック航空のツインオッターを飛ばす:
 では、コロンビア岬へ出発します。コースは次の通りです。
注:CGは大圏コース、RLはラームラインの針路と距離。今回は短距離なのでRLを使用。
◎アラート(CYLT)(82°31'04"N-62°16'50"W)
   ▼GC=302.3°74.32nm RL=298°74.4nm
△エルズミア島コロンビア岬(83°06'N-71°02'W)
   ▼RL=118°74.4nm
◎アラート(CYLT)

 FlightGearのDHC-6ツインオッターは、車輪かフロート、またはスキーが選択可能です。機種選択画面では、濃いめのオレンジと白に塗られた機体が登場しますが、あれこれ調べたところ、これはまさに、植村さんがグリーンランドで利用した、Kenn Borek Air Ltd.社の塗装だと分かりました…嬉しいなあ! カナダのレゾリュートに本社があり、北極圏で活動する小型チャーター機の航空会社としては、かなりの技術と信用を持っているようです。本機には当然、グリッド航法用コンパスはありませんし、距離も近いので、航法にはGPSを使うことにしました。小さな犬そりを発見するのは難しいので、これでちょうどいいはずです。帰路には、アラートのNDBとDMEも使えます。
 今回も地図代わりに、スタンド・アローン設定のAtlasを使いますが、ハングアップしては困るので、最初から起動して表示範囲や倍率をセットしておきます。Atlas上のコロンビア岬は、先端部分がちょうど緯度の線に沿って切断されたように見え、少々バグの気配を感じます。そりとナオミくんが、無事に配置できるのかどうか不安です。場合によっては、地中に潜ったりするかもしれません。
 1355時(現地10時55分)、ツインオッターを起動。燃料は満タン1200Lbsです。さっそくケンボレック航空の塗装に切り替え、エンジンを始動。7000ftまで上がる予定で、航法計算をしておきます。310度20Ktの風を受けて、仮に120KTASで飛んだとすると、WCA(針路補正値)は2度右となり、針路は真方位で300度です。計8段階に下がる、フルスパンのフラップ(エルロンも同期して動く)を3段目にセットして離陸。上昇旋回を経て1408時(現地1108時)、雲を抜けた7000ftでレベルオフして、目的地に機首を向けました。ここでちょっと問題を発見。DHC-6のオートパイロットは、高度保持は効きますが、なぜか真方位保持モードがGPSに対応していません。やむを得ず、GPSの指す356度にウイングレベラーで定針しました。
 久しぶりにGPSを使ったので、HUDのベアリング(目標への針路)表示が、真方位ではなく磁気方位だということを、うっかり忘れておりました。パネルのジャイロコンパス(当然、磁気方位)で機首方位を決め、旅を続けます。出力を90%まで絞り、燃費を計ると1.94nm/galをマーク。まあまあというところでしょうか。

 過去に、ごく短時間飛ばした限りでは、ツインオッターの印象はさほど良くありませんでした。スマートな機体なのに割と鈍足で、かつ失速特性がシビアに調整され、FlightGearの機体には珍しく翼端から失速して自転し、スピンに入ろうとします。しかし、例えばブロンコのように…予告もなく失速し、機体の姿勢すら変えずフラットに落下して、しかもリカバリーが困難…といった変な癖はなく。ていねいに扱えば十分安全な飛行機です。気になっていた速度も、このくらい(7000ft)の高度では全開で168Kt出ており、同時代のライバル機ショート・スカイバンより遅いですが、単発オッターやピラタス・ポーターに比べれば、数十ノットも優速です。モデリングはなかなか精密で、Y字型支柱の左右にそれぞれハンドルが付いた、戦前のユンカース旅客機みたいにレトロな操縦桿や、天井から下がった二式大艇さながらのスロットルなど、機体の味を生かした工作が光ります。後部のカーゴドアを開けたり、ワイパーを動かしたり、グライダー曳航も可能な設計で、それなりに名機ではあろうと思います。

 …さてコロンビア岬に到着、やはり岬の先端が、断ち切られたような風景です。実景の画像はネットで見つからず、GoogleEarthも解像度が低く、実際はどうなっているのか、よく分かりません。ともかくGPSのベアリング表示を見ながら、約1000ftに降下して、そりがいるはずの地点に機首を向け、必死で氷上を探しました。南極では、もっと大きな飛行機を探すのに苦労しましたので、今回は「正確に狙い、その付近だけ見る」ことに留意しましたが、これは正解でした。

●コロンビア岬にて:
 1440時。目標地点付近をフライパスし、視線を左に振ったら、氷原の模様とは違う、細長い黒点が見えました。あっと思って減速、旋回降下し、低い太陽を背にしたら、黒点はそりになりました。おおっ、ナオミ君が万歳しています。赤い服と、赤いテントが陽光を受け、ひときわ鮮やかです。なんだかもう、感動的です。ナオミくんは、実は前後対称に作ってあるので、どっちから近づいても必ず、こっちに顔を向けて万歳してくれるのですけれども…ともかく、やった。一発で捉えました!
 フルフラップにして着陸。氷上はプログラム上、不整地と見なされるようで、降りてからが大変でした。スキー付き前輪やラダーを曲げようが、ブレーキを片利きさせようが、思うように地上旋回しません。最初はスルスル向きを変えても、デコボコに邪魔されて機首が反対に振れたり、頑固に直進したり…かなり手を焼きました。やっとソリの真後ろに駐機して、画像をキャプチャーします。機体を背に陽光を浴びるナオミ君と、反対から見た逆光の、荒々しいコロンビア岬を背にしたシルエット。どれも大満足の光景です。余談ながら、1909年に初めて北極点に到達したアメリカのピアリーも、この場所から出発しています。
 FlightGearの世界では、あっさり着陸できる氷原ですが、植村さんの出発時は、海岸から沖合に掛けて数キロに及ぶ、大変な乱氷帯が広がっていたそうです。あらゆるサイズ(多くは数メートル大)の氷塊が、無秩序に重なり合い、最初はそり1台が通れるすき間も見あたらず、数十分を費やして氷を割り、そりを通し、すぐまた氷に阻まれ…という繰り返しだったとか。氷の割れ目にそりや犬が落ちかけ、たった一人で命がけのリカバリーをしたり、犬の食糧を獲る猟の失敗やシロクマの襲撃、飛行機が着陸可能な広い平地を探すなど、あらゆる苦労を重ねての前進でした。数年ぶりに手記を拾い読みしましたが、すごい旅です。

 私は数十分滞在し、名残を惜みながら離陸。高度保持を6000ftにセットし、アラートに機首を向けました。磁気方位でほぼ真南、真方位ですと約130度。間もなくアラートNDBが受かり、正面に指針を置いてコンパスを見ると真方位117度となっていて、ほぼピタリ往路の反方位ですので、間違いなく帰れます。もちろん風も変化しておらず、帰路は追い風になって、少し速いはずです。約170KIASに加速し、6倍速でガンガン帰投。せっかくのDMEは、パネルに指示器がなくて使えないのですが、コロンビア岬にセットしたままのGPS距離表示から逆算でき、不便はありません。順調に滑走路が視界に入り、ベースレグから右旋回で最終進入へ。
 接地寸前に約70Ktまで減速したところ、機体が勝手に左ロールを始めました。とっさに失速開始と判断し、スロットルを開いて約10Kt増速。無事にタッチダウン。あとで分かったのですが、フラップ全開のつもりで操作を誤り、完全に格納してしまって減速したため、翼端失速で自転に入りかけたのです。お粗末な話で、非常に危ないところでしたが、わずかな増速がしっかりと効き、コントロールを失わずに済みました。操縦性を巡る本機のプログラムは、なかなかデリケートに熟成されていると思います。
 ちなみに、実機もすごいです。あとでユーチューブを探したら、ケンボレック航空のスキー付き同型機が、どこの山でしょうか…雪の積もったクレーターの底に強行着陸して、外輪山ぎりぎりに停止し、すぐ反転・離陸してSTOL性能をデモするシーンが見つかりました。いかにも「これが、ブッシュパイロットだ!」という飛び方で、改めて感心しました。
投票数:3 平均点:0.00

なし 「初飛行」満100年!!

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。仕事に追われて、危うく大変な記念日を逃してしまうところでした。
 きょう19日は、明治43年12月19日に東京・代々木練兵場(現・代々木公園)で、徳川好敏大尉操縦のファルマン複葉機が、日本最初の公式動力飛行に成功してから、満100年です。
 半年くらい前に、筑波大の先生で航空史に詳しい、村岡正明さんという人の「初飛行」(光人社NF文庫)を読んで、この飛行の詳細な経緯を、初めて知ることができました。また同書には、代々木練兵場の初飛行時の見取り図と、徳川大尉の飛行経路を現代の地図に重ねた図面もあり、これを見ればFlightGearのシーナリー上に、明治43年当時の練兵場を作り込んで、世紀の飛行を再現することができそうでした。
 まだ幾らでも時間がある…と思っていましたが、ふと気がつけば記念日の数日前。もとより私には、等高線に合わせた練兵場の精密なモデリングは無理ですが、敷地の平面形と仮設格納庫などのテント群、飛行経路を再現した、簡略な立体模式図(?)みたいなオブジェクトでしたら、作ることができます。取りあえず昨夜、マイアルバムに画像をアップさせていただきました。遅くなりましたが、以下に簡単なご紹介を…。

●代々木練兵場を作る:
 本に掲載された図を参考に、練兵場の下絵を作成して、AC3Dの平面図ウインドウに読み込ませ、敷地の平面形と飛行経路を描きました。ついでに格納庫やトイレ、救護所、記者席など計11棟のテントも作っておきます。史実では、飛行経路の外側に十数本の旗が立てられ、ロープを張ってその外周を一般見学者に開放したのですが、このへんは省略しました。
 敷地の東端に見える黄緑色の球は、練兵場正面入り口の「水無橋」の位置を示しており、ここから敷地の西端に見える紫色の球を結んだ線が、現在の井の頭通りに当たります。二つの球は、実はオブジェクトの縮尺と位置決めのための基準点です。2点の距離を、GoogleEarthの物差し機能で計ったところ950mで、これをもとに画素数の倍率を出しました。また黄緑の球は、平面図の座標原点にありますので、GoogleEarth上で実際の水無橋の正確な緯度経度を求め、ここへUFOを飛ばして、オブジェクトを設置すればいいわけです。
 実際にやってみたところ、残念ながら…どうも様子が変です。水無橋は、南北に直進する山手線をまたいでいるのですが、UFOから眼下に見える線路は、途中から西に折れており。私は原宿上空ではなく、西に約1キロずれた、小田急の代々木八幡駅付近にいることが分かりました。ご承知のようにFlightGearのマップデータは、等高線に関してはそこそこ正確ですが、道路や線路は直線的な略図ですので、位置には相当の誤差があります。しかし都市にオブジェクトを置く場合は、たとえ不正確でも、道路や線路、河川を無視するわけにはいきませんよね。やむを得ず、シーナリー上の山手線を基準に東西位置を決めましたが、南北の位置は幸い、新宿副都心を基準に見ると、ほぼ合っているようです。

 UFOを使ったオブジェクト配置は、しばらくやっていないので、すっかり忘れました(^^;)。蛇足ながら、以下に簡単にご紹介しておきます。
(1)UFOでオブジェクトを置く現場に行き、精密に緯度経度を合わせ、低空に降りる。
(2)小文字のLキーを押す。配置オブジェクトを選択するウインドウが開く。任意の
   パスをたどってファイルを選択し、「Load Model」ボタンで確定。
(3)オブジェクトを配置したい地上の一点にカーソルを当てて、クリックする。
   するとオブジェクトが現れる。ただし、地面に半分潜ったりしているかも知れない。
(4)そこで位置の微調整をする。Tabキーで「Ajust model」ウインドウが開くので、
   オブジェクトの位置や高度、向きをボタンとスライダーで選択する。この作業は、
   UFOにポーズを掛けたままでも可能。
(5)位置決めが終わったら、dキーを押す。コンソール画面に配置データが出るので記録する。
(6)ダンプしたデータ冒頭に書かれた、シーナリーのフォルダを開き、stgファイルをエディタで
   開く。「OBJECT_SHARED」で始まる、配置オブジェクト名のパスと位置座標を書いた行を
   正確に追記する。以後FlightGearを起動するたびに、このオブジェクトが出現する。

●飛行の史実について:
 徳川大尉の飛行は約3分間、高度70m、距離3000m(異説あり)で、一般に日本初飛行とされています。しかし5日前に僚友の日野熊蔵大尉が、ドイツ製のグラーデ単葉機で距離約70mを飛んでいるものの、公式には初飛行として認められませんでした。一体なぜなのか、大きな疑問でした。
 「あれはジャンプ飛行に過ぎない」という説があります。しかし「ジャンプ飛行」とは、非常に曖昧な概念です。例えば19世紀の「飛べない」設計の機体が、たまたま地面のデコボコを拾って宙に浮くことを言いますが、同時に零戦の初飛行のように、滑走路すれすれに数秒ずつ飛んで舵の利きなどを確かめ、徐々に飛行距離を伸ばしていく場合も、ジャンプ飛行と呼びました。後者はパイロットの制御下で定常飛行をしているのですから、立派な「飛行」でしょう。また飛行距離70mでは、初飛行と呼ぶには短か過ぎるとの声もありますが、これも少々変。オービル・ライトの史上初の動力飛行は、半分の36mしか飛んでいないのですからね。
 代々木練兵場のフライトは、国が陸海軍の将校や物理学者らを集めて作った「臨時軍用気球研究会」のプロジェクトですが、14日は地上滑走の予定日だったため、形式にうるさい軍が、日野大尉が飛んだのは「誤って離陸した」ことにしてしまった…という説も昔から目にします。昭和ならぬ明治の軍隊が、そこまで杓子定規だったかどうかは知りませんが、まあ、ありそうな気はします。また、名家の出身である徳川大尉が、航空先進国だったフランスに派遣されたのに比べ、日野大尉はドイツに行かされるなど、ことごとく冷遇されていたのではないか…という説もあって、真相が分かりませんでした。

 「初飛行」を読むと、これらの疑問が初めて氷解しました。
これから読む方に申し訳ないので、詳しいことは書きませんが、整備技術に大きな問題があり、約1週間の公開テスト期間中、ファルマン機は最初、ほとんどエンジンが掛かりませんでした。グラーデ機も最後まで、定格出力が出ませんでした。そのため数日にわたり、ファルマン機はおおむね沈黙し、グラーデ機も練兵場を駆け回るが飛べず、という事態が続き。連日の大群衆と取材陣を前にした二人は、次第に焦りを強め、ついにパワー不足のまま、何度も乱暴に離陸を試みては、事故を重ねています。
 日野大尉の「非公式の初飛行」もこの延長線上にあり、完全に機体をコントロール下に置いていたとは言い難いようで、機体を小破しています。従って「地上滑走の予定日だったから、公式飛行にならなかった」は俗説で、「日本最初の公式飛行」は内容的にみても、19日早朝の徳川大尉のフライトになるようです。ただし同日午後には、日野大尉も改めて1000mを飛んでおり、「日本の初飛行」の名誉はやはり、いずれか一人ではなく、二人のものだと思います。

●時代の風に乗って:
 なお、日野熊蔵が軍に冷遇されていたかというと、まったく違うことも分かりました。
彼は少年時代から英語と数学が得意で、鉄管を使った鉄砲や火薬を自作。陸軍士官学校を受験するころには、すでに独自の自動拳銃の設計原案を持っており、任官後に実際に制作して、特許を取っています。若くして陸軍技術審査部員に抜擢され、ロケット砲や空気砲を考案。新型の歩兵砲や手榴弾、三輪自動車を作ってしまう天才肌の発明家でした。これに対し徳川好敏は、旧水戸藩主の孫。伯爵だった父は事業に失敗して金銭スキャンダルを起こし、爵位を返上しました。好敏は「お家再興」を果たすのが悲願で陸軍へ。日露戦争中は参謀部で諜報活動をした、頭の切れる将校でした。しかし手柄を立てる前に戦争は終わり、このままでは爵位復活も無理と判断。大活躍の場を求めて、出来たばかりの気球隊に転属したという、少し変わった動機で航空界に入った人だそうです。
 初期の飛行研究の中枢だった「臨時軍用気球研究会」には、日野大尉と徳川大尉、海軍で飛行機の研究を始めていた相原四郎大尉、日本初の風洞を作った、東京帝国大学教授の田中舘愛橘博士らが集まりました。同じころ、東京ではフランス人の駐在武官、ル・プリウール大尉が独学でグライダーを制作しており、彼は明治42年11月(徳川大尉の公式飛行の1年前)に、上野・不忍池のほとりで自動車曳航により、日本初の滑空飛行に成功していますが、開発と飛行を全面的に支援したのが、先ほどの田中舘教授と相原大尉でした。多くの才能が運命的に出会い、時代の風に向かって「離陸滑走」を始めた…とでも言いたい光景ですね。
 日野大尉は、すでに2サイクルエンジンと機体の開発に着手しており、これらメンバーの中でも異彩を放っていました。彼の「日野式一号機」は、気球研究会の事業として明治43年3月に完成しますが、飛行には失敗。研究会は取りあえず、外国機を導入することに方針転換します。こうして翌4月、さっそく日野大尉と徳川大尉がシベリア鉄道に乗り、パリを目指すことになったわけです。

 ライト兄弟の初飛行から、わずか6年半。しかしヨーロッパの航空界は、すでにライト機の性能を大きく抜き去り、大躍進に入っていました。二人はさっそく飛行学校に入りますが、初期の名飛行家、アンリ・ファルマンが経営する学校だけで3校もありました。徳川大尉は堅実に訓練を重ね、フランス飛行クラブ発行の操縦免許(当時は恐らく、世界唯一の公的なライセンス)を取得しましたが、通算289人目だったそうで、いかに飛行家が増えつつあったか分かります。
 いっぽう日野大尉は、ライセンス取得には興味がなかったようで、フランスの学校をやめて単身ドイツへ向かい、グラーデ単葉機とライトA型(ドイツで生産された車輪付き)を購入しますが、「なぜ時代遅れのライト機を?」という気もします。総じて日野大尉は、才能の塊ですが功を焦るタイプのようで、自分のみを信じて、操縦ばかりか、エンジンも機体も設計し、さらに航空機製造の事業化まで視野に入れていたようですが、資金繰りにも無理を重ねたあげく、どれも十分に果たせないまま、航空界を去って行きました。かたや徳川大尉は、着実に後輩パイロット育成の任務をこなし、気球研究会の名称を取った「会式」複葉機を設計し、やがて完成した所沢飛行場から、初の「首都訪問飛行」へ飛び立つことになります…ただの御曹司では、なかったわけですね。

●FlightGearで、明治を飛ぶ:
 では簡単に、フライトのご紹介を致しましょう。完成した練兵場オブジェクトを配置したら、ぜひ日野大尉のグラーデ機を置きたくなりました。FlightGearにはないので、見かけが似ているサントス・デュモンのドモアゼル単葉機を、UFOを使って格納庫前に配置。この座標データを参考に、ファルマン機を起動する地点の緯度経度、高度などをプリセットしました。
 リアルウエザー機能は切って、史実通りに北西の微風とし、時刻は午前7時50分ごろに。雲量がよく分かりませんが、数日来の悪い天気が終わって、当日は朝日が差したようです。エンジンを始動し、実際の離陸地点の近くから飛び立ったところ、あっという間に練兵場西側の境界が迫って急旋回となり、「こんなに、狭かったのか?」と焦りまくりました。HUDを見ると100Ktも出ていますが、これはFlightGear機の設定がオーバーパワーなので、現実のファルマン機なら、到底あり得ないお話です。
 スロットル開度を10〜15%まで絞り、飛行経路の直線部を約30Ktで飛び、コーナーでは失速防止のため、少しだけパワーを増すと、ちょうどいいようです。こんな低速飛行はライト・フライヤーIか、ウルトラライト機の「ドラゴンフライ」でしか味わったことがありませんが、ここまで減速しますと、なるほど練兵場に描いた円形コースにぴったりです。失速を常に意識しながらの操舵も新鮮で、タッチはフワフワながら、まことにスリリングです。無心にコースを回り続けていると、次第にFlightGearの東京のここだけが、明治時代のような気分になってきました。フライトシミュレーターは、タイムマシンでもありますね。
 ご紹介した「初飛行」には、同じ明治43年、アメリカの飛行家の公開飛行を見物する、数百人の大阪市民の群像写真が掲載されていますが、魂を奪われたように、一心に天空を見つめる無数の顔、また顔の群れは、とても感動的で、改めて「空を飛ぶって、すごいことだったんだなぁ」と思います。また巻末に近く、石川啄木が26歳で病死する前、最後に作った「飛行機」という詩が紹介されており。短いながら鮮烈な作品で、明治という時代に生きた人たちの熱い感性を、改めて想像します。ちなみに「飛行機」という日本語を考案したのは、羽ばたき機の研究にも興味を持っていた陸軍軍医、かの文豪・森鴎外であったそうです。
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なし 極光に導かれ極点へ そしてシベリアへ

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
「オーロラ・フライト2010」も第7回。マゴマゴしているうちに、もう2011年になってしまいましたが…今回は、カナダ領エルズミア島・アラート空港から北極点を越え、シベリアのティクシ空港に向かいます。使用機は引き続きピラタスPC7改。まず、コースをご紹介しましょう。

◎アラート(CYLT)(82°31'04"N-62°16'50"W) 偏差=偏西061度
 5500ft滑走路(048T/228T) NDB305。
   ▼360°449nm
△北極点(90°N)
   ▼180°1099nm
◎ティクシ(UEST)(71°41'52"N-128°54'20"E)偏差=偏西017度
 9845ft滑走路(008T/188T) NDB320
 改めてご紹介しますと、エルズミア島はカナダ北方に無数にある島々のうち、もっとも北かつ東にある比較的大きな島で、グリーンランドの最北端に隣接しています。またアラート空港は、世界最北の飛行場として知られます。いっぽう目的地に選んだティクシは、韓国・釜山から真北へ約4000劼離轡戰螢∨夢澆砲△蝓1933年に北極航路を開くため建設された港町の一つだとか。空港は空軍基地で、冷戦時代にはTu-95戦略爆撃機が並んでいたそうです。日本列島付近の北方で、できるだけ北極に近く滑走路が長い空港を探したら、ここになりました。

●PC7改に灯火を装備する:
 真冬の北極ですので当然、全航程が夜間飛行です。愛機は計器盤にしか照明がありませんが、FlightGearを使い始めて以来、最も長く困難な夜の旅が無灯火ドライブでは、いささか面白くありません。そこでピラタスPC7改に、長らく懸案だった航空灯と衝突防止灯を付けることにしました。
 航空灯(ナビゲーション・ライト)はご存じ、船舶の航海灯と同様に左が赤、右が緑、それに尾灯が白ですね。AC3Dの球体を作るモードを使って、長さ10センチ、直径5センチ程度のレモン型を作り、少し上下につぶしたうえで機体ファイルにマージし、翼端に埋め込みました。尾灯は少し細長く、発光ダイオードか米粒球みたいな形にしました。ピラタスPC7はF4Uと同様、昇降舵が大きく後ろに突き出ていますので、この先端に尾灯を仕込みかったのですが、舵面といっしょに灯器を動かす方法が分からなかったので、胴体テールコーンの先端に差し込みました。角度によっては昇降舵に隠れますが、零戦とそっくりな位置ですので、これはこれでカッコイイと思います。プラモデルに熱した針金で穴を開け、発光体を埋め込むような感覚で、細かい作業を楽しく進めました。
 垂直安定板の頂点と胴体下には、赤い衝突防止灯を設置。これは点滅させる必要がありますが、virtflyさんのサイト「仮想飛行」に例文があり、いつもながら大変助かりました。同サイトを参考に、Models/pc7.xmlファイルの末尾に、以下の記述を追加しました。
<animation>
  <type>timed</type>
  <object-name>light-onoff</object-name>
  <object-name>light-onoff2</object-name>
  <duration-sec>1.0</duration-sec>
</animation>
 これで赤灯が交互に点滅しますが、消灯時はランプのオブジェクト自体が消滅するので、昼間は少し不自然に見えます。また出来れば、2灯を同時に点滅させたいと思い、grouplightという名称でグループ化してみました。このオブジェクト名を、単独で前記のスクリプトに記述すると、なぜか常時点灯になってしまうので、胴体内の見えない位置に「dummylight」という真っ黒な球を作って、
  <object-name>grouplight</object-name>
  <object-name>dummylight</object-name>
としたところ、赤灯二つが同時点滅しました。ならば、消灯状態のグループも作って、発光グループと交互表示させればよかろうと思い、grouplightを同位置に複製してgrouplight2と名付け、発光(Emmisive)のカラー属性を外して、消灯中のレンズ風に暗い赤にしたところ、以下の記述でうまく作動しました。
<animation>
  <type>timed</type>
  <object-name>grouplight</object-name>
  <object-name>grouplight2</object-name>
  <duration-sec>1.0</duration-sec>
</animation>
 最近の旅客機は、赤い衝突防止灯の他に、翼端と胴体上下に白色のストロボを装備し、にぎやかに一斉発光させていますね。あれもやってみたかったのですが、一部旅客機やデハビランド・オッターのファイルに、それらしい記述があったものの複雑すぎて、私にはとてもまねできませんでした。まあ、そのうちに…。

●極点への航法:
 いよいよナビゲーションのお話です。アラートでPC7改を起動しますと、この緯度ではリアルウエザー機能が効かないようでして、天候と風は、私の環境のデフォルトである、
    雲量
     19500ft cirrus
      4000ft scatterd
    風向風速
     6000ftより上では320度30Kt
という状態に固定されていました。リアリティー上は残念ですけれども、航法はかなり簡単になります。

 もちろん今回も、極地用のグリッド航法を使います。アラートの滑走路で、例によってGPSに自作のウェイポイント「GRIDN」(グリッド航法の仮想北極=赤道上の東経または西経180度)を入力しますと、自作のグリッド方位コンパスがぐるりと回転し、グリッドノースを指します。パネルに設けた「GPS-Grivation計」(正体は、現在アクティベートされているウェイポイントへの、磁気方位・真方位と距離の表示器)を使い、自機から「GRIDN」への真方位を読みますと297.6度でした。これは、通常の真方位表示とグリッドノースの差を表す数値である「コンバージェンス」と等価であり、
     目標への真方位−コンバージェンス=目標へのグリッド方位
     (360度方位表示の場合は、出発地が東経でも西経でも引き算)
ですので、北極点の方角である360度から297.6度を引いた62.4度が、この区間のグリッド方位です。
 風力の補正計算もやっておきましょう。先ほどお話ししましたように、風は320度30Ktで一定ですので、お馴染みの航法ツール「virtual E6-B」を起動し、「Winds」のボタンで風力補正画面にして、
     Wind Direction 320(度)
     Wind Speed 30(Kt)
     True Course(真方位)360(度)
     True Airspeed 320(Kt。PC7改は28000ftでこの程度)
を打ち込みますと、計算結果は
     GS(対地速度)296.5Kt
     TH(真方位)356.5°
     WCA(ウィンド・コレクション・アングル=風による針路修正角)3.5°LEFT
と出ました。そこで、先ほど算出したGH(グリッド方位)62.4度から3.5度を引いた58.9度を、グリッド方位コンパスで維持して飛べばいいことになります。

●極点からティクシへの航法:
極点からは、どこへ行くにも「真南」になるわけですが、目的地のティクシは東経128度54分20秒にあるので、この経線に乗って南下することになります。グリッドノースは真方位で180度の方角であり、またコンバージェンスは、北極点を基点とする場合に限っては、目的地の経度と等しくなりますので、ティクシに向かうグリッド方位は、
      180度−128度54分20秒
      =51度05分40秒
      ≒51.1度
となります。
 また風力補正は、先ほどと同じ320度30Ktの風が吹くと仮定して計算しますと、
     GS 342.5Kt
     TH 183.4度
     WCA 3.4°RIGHT
となりました。そこでグリッド方位のコンパス針路は、先ほど算出したGH=51.1度に3.4度を足して、54.5°を維持して飛べばいいわけです。
 ティクシには、最も明るい正午ごろに着きたいものです。仮に総飛行距離1548nmを、平均対地速度320Ktで飛ぶとしますと、所要時間は約4.8時間。まあ5時間として、出発時刻は正午マイナス5時間で、ティクシが午前7時のころと考えればいいでしょう。出発地アラートは西経62度付近にありますので、天文学的な時差は(東経約129度+西経62度)÷15度=約12.7時間となり、従ってアラート出発時刻は、現地時間の午後6時ごろでよかろうと思いました。
 では、飛びます。
以上の計算結果をナビゲーション・ログに書き加え、再掲しておきます。針路はグリッド方位です。
◎アラート(CYLT)(82°31'04"N-62°16'50"W)
   ▼TH360°(GH62.4度)●風補正58.9度 449nm(320Ktで1.4時間)
△北極点(90°N)
   ▼TH180°(GH51.1度)●風補正54.5度 1099nm(320Ktで3.4時間)
◎ティクシ(UEST)(71°41'52"N-128°54'20"E)

●ほのかな残照を受けて:
 アラートで機体を起動。「日没の時刻」ですが、今の季節は完全に夜、満天の星です。現地時刻を午後6時付近に合わせようと、時間を早送りしましたが、星々が高速の日周運動を起こして、地平線付近を水平に走ってゆくのが、なかなかきれいでした。(見とれている間に勘違いして、時刻を午後ならぬ、午前6時前に合わせてしまったのですが、そのまま何時間も気付きませんでした)。
 燃料は増槽を含め、満タンの2785Lbs×2(422gal×2)。航法計器をセットし、エンジンを始動。ジョイスティックを全4軸、端から端まで動かして、キャリブレーションを行います。舵が中立を外れた状態で離陸してしまうと、機体が横滑りして航法計算が狂うため、この作業は欠かせません。
 0958時、離陸滑走を開始。満タンの機体は重く、140Ktでやっと浮揚。スタートからちょうど30秒かかり、滑走路末端の赤いラインが迫っていました。この空港には当初、滑走路照明がないと思っていましたが、その後ますます暗くなったところ、自然に灯火が点灯しました。やれやれ。
 離陸後、そっと脚上げ、フラップ上げ。この空港にVORはありませんが、DMEが単独で設けられており。これとグリッド方位コンパスを頼りに、5nmだけ南に進出して反転し、高度を稼ぎます。1003時、空港上空に戻って10000ftで通過、グリッド方位(以下同)58.9度でウイングレベラー定針。高度保持の目標値に28000ftを入力し、毎分500ftの緩上昇をしながら加速します。

 1008時、12000ftを突破。空港から15nm北で速度は276KIAS(328KTAS)。燃費は3.04nm/galで、万事まずまず好調です。離陸後しばらく、機体下面に白い光が、かすかに照り返していました。FlightGearの世界では、機体や地形を照らすのは、日光か月光に限られるみたいですね。これらグローバルな光源は、建物の壁や山脈、また大地そのものを貫いて、オブジェクトを照明する模様です。機体を白く照らしたのは、恐らく地平線下の月光でしょう。これが間もなく消えると、機首下面に赤い光が差し始めました。やはり地平線の下に姿を隠した太陽のしわざで、振り返ると東の地平が、ほのかに赤みを帯びています。
 今回の北極遠征では、スピッツベルゲン島やエルズミア島といった高緯度地域で、かなり長期間の待機と、短いテスト飛行をしましたが、ここで気が付いたのは、極地では毎日、非常に長時間にわたって、朝焼け或いは夕焼けが続く、ということでした。冬が深まって本当に暗くなっても、高々度ではまだ南の地平が赤く燃え続け、100nmかそこら北上しても、ほとんど赤みが変化しません。いわゆる「天文学的黎明」や「天文学的薄暮」の見える地理的範囲が、非常に広いのですね。これは極地では太陽が、非常に浅い角度で日周運動をしているためです。いよいよ極点に近づきますと、季節によっては終日、あかね色の空が続きます。実際に高緯度をたっぷり体験するまで、北極圏ではこんなに長い期間、長時間かつ広範囲にわたって、薄暮や黎明が続くとは想像しませんでした。ここで私は、「ははぁ、そうだったのか!」と、あることに思い当たりました。

 以前、グリッド航法に関連して、北極越えの「北回り」航空路のお話を書きましたが、スカンジナビア航空やJALが北極航路を開いた1950年代、グリッド航法に使われた特殊計器の中に、「コルスマン・スカイ・コンパス」という装置がありました。これは偏光を利用し、地平線下の太陽の位置を計る光学器械です。ハトやミツバチは、太陽コンパスを体内時計で補正して航法に使いますが、偏光を見分ける視力も持っていて、曇天でも太陽の位置が分かる、と聞いたことがあります。スカイ・コンパスは、いわばこれと似たことをする装置ですね。別名トワイライト・コンパスとも呼ばれたそうです。最初は、何のためにわざわざ、いったん沈んだ太陽を測定する装置を作ったのか、あまりピンと来ませんでしたが、極地では太陽が沈む冬の数カ月間も、極めて広範囲で非常に長時間の黎明・薄暮があるとなれば、まだGPSやINSがない時代、地平線下の太陽方位が特定できる偏光装置は、常にジャイロコンパスをバックアップし正確な方位を知る手段として、大いに役に立ったことでしょう。あるいは…自機の位置を知る天文航法にも応用が利いたのではないかと、想像は広がります(そのころの航法技術は、一体どこで知ることが出来るのでしょうか。たった数十年前の技術なのに、分からないことだらけです)。
 FlightGearの世界には偏光はありませんが、太陽が地平線の下からでも機体を照らすという、独特の現象を利用すれば、スカイ・コンパスと似た航法装置や技術が開発できそうで、ちょっと興味を引かれます。

●オーロラに導かれ、極点へ:
 愛機は、なお上昇しつつ北へ。1040時、高度28000ftでレベルオフ。気速は173KIAS(299KTAS)で、燃費は3.03nm/galです。すでにADFは針が踊って役に立ちませんが、DMEはアラート空港から210nmを超えても、まだ使えます。満天の星が美しく、後ろに北斗七星、左にはオリオンとプレアデス。レーダーには150nmほど先に、北極点を示すオーロラのエコーが映っています。
 今回使っているグリッド航法は、推測航法の一つの手段で、GPSやVORと違い、それ自体では位置が決定できません。別途何らかの手段で、フィックス(確定位置)を手に入れる必要があります。北極海には無線標識も地理目標もないので、最初は例の犬ぞりを従えた「ナオミくん人形」に、コーナー・リフレクター(レーダー反射器)を持たせ、極点に立ってもらおうと思っていました。しかし計画が半年延びて、真っ暗な冬になってしまい、極点の氷上で犬ぞりと会合するのは、いくら何でも変。次善の策として、オーロラをAircraftの属性でマップ上に配置し、レーダー・ターゲットとして利用した次第です。(本当のオーロラは、あまり極点には出ないようですが)

 極点の数十nm手前から見上げた自作オーロラの画像を、マイアルバムにアップさせて頂きました。変な形をしていますが、実は真上から見下ろすと、ひらがなの「ひで」を、一筆書きにした形になっております。非常に暗くて淡いですが、大昔にコペンハーゲンから羽田に帰る北極便で、一度だけ見た実物は概ね、この程度のものでした。テレビやネット静止画のオーロラは、ずっと明るくて派手ですが、露光時間や感度の設定によって写り方は変わります。写真の適正露出を、数秒から30秒程度とするサイトがありますので、明るい方は何とか「新聞が読める程度」で、暗い方は巨大彗星の尻尾くらいの光量かな、と想像しています。
 「彗星の尾の明るさ」では、分かりにくいですが…(^^;)、96年1月に有名になった、百武彗星をご記憶でしたら、大体同じくらいです。あの彗星も相当暗く、和歌山県に住んでいた私は深夜、灯火が一切ない熊野古道の谷間に出かけ、ようやくじっくり撮影することができました。巨大な天文現象は、しばしばロマンチックと言うより不気味ですが、百武彗星もまるで、天空に長い羽衣を架け渡して飛ぶ魔女(イメージは松本零士さんの絵)のような姿。差し向かいになって、声にならない対話をした気分でしたが、次の回帰は15000年(一説には72000年)後ですから、まるでメーテルに「遠く時の輪の接するところで…まためぐり会いましょう」と言われたようなものでした。そのとき人類は、生きているのでしょうか?

 さて、FlightGearの北極です。1128時ごろ北緯89度30分に到達。高度は28000ftを保っているのに、HUDの対地高度計が、なぜかスクロールダウンを始めました。ほぼ同時に、前方の視界に自作のオーロラが出現。やれやれと思ったころ、眼下では極点を中心に、半径数十nmにわたってもやが消え、その中心部ではシーナリーのタイル表示が四角く欠落し、氷原の代わりに星空と太陽が見えました。残念ながら、南極とほぼ同じ種類のバグがあるようです。けれど地表の見え方の異常を除けば、こちらもちゃんと極点まで、正常な飛行が可能でした。極の東側は、地平がうっすら陽光に赤く染まり、西側はミッドナイトブルー。そして頭上には幅300劼傍擇屐△錣オーロラが広がっているという、思えばなかなか迫力満点の夜景です。
 1134時、HUDのコンパスがブン回って、極点通過を告げました。1135時、極から5nmの地点で計算通り約4度左へ変針し、ティクシに向けて定針。燃料は、増槽からメインタンクに切り替わったばかりで、どっさり残っており不安もなし。左前にオリオンを見ながら、倍速モードでどんどん足を伸ばします。

●四国より広い、野鳥の楽園:
 1354時、ティクシNDBにセットしていたADFの針が振れ、前方を指しました。指針が安定するまで少し待って針路を微調整し、NDBを真正面に捉えます。これでもう、安心です。
 1419時、ふと気が付くと機体の下を、たくさんの明かりが走っており、高空から見下ろすと、まるで大都市です。どうしたことかと、Atlas画面やGoogleEarthで調べますと、長さ世界10番目の大河・レナ川のデルタ地帯の上を通過中でした。デルタは全体が無数の河川・湖に覆われ、四国の1.5倍という巨大な沼沢地になっており、いびつな楕円を形成してラプテフ海(北極海の一部)に張り出しています。実物は北極圏指折りのガンカモ類生息地で、極めて動植物が豊富とか。人家も結構あるようですが、それにしても灯が多いですな。
 予定では現地時間の正午ごろ、デルタに隣接する空港に着くはずでしたが、残念ながら計算を間違えて15時過ぎになってしまい、あたりは真っ暗です。ここで、内容は忘れましたが操作ミスをし、つい癖でCTRL+Zキーを連打したところ、FlightGearが異常終了しまして、ただもう呆然としました。幸い位置は北緯72度39分29秒、東経129度02分15秒と分かっており、直ちに空中再起動しました。

 今度は時刻を、現地時間の正午にセット。あかね雲の浮かぶなか、沼沢地や美しい砂嘴、道路と灯火などを見下ろしながら、ティクシ空港へアプローチ。沼沢地の中には、町村を示す四角いテクスチャーも見えましたので結構、人が住んでいるのですね。また航法については、Atlas画面で航跡を確認しましたら、当初のコースのまま推測航法を継続したとしても、せいぜい5、6nm東にそれるだけで、かなり正確に空港へ着いたとみられます。
 そっと着陸し、誘導路に機体を入れてエンジン停止。色々トラブルもありましたが、ともかく新機軸のグリッド航法で極点を越え、シベリアに到着し、アジアに戻ってきました。オーロラに加え、極点通過とレナ川デルタ、ティクシ到着の画像はマイアルバムに掲示しましたので、よろしければご覧頂けますと幸いです。
 末筆になりましたが、今年も皆様の Happy Landing をお祈りいたします。
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なし 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-2-13 17:06 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。北極圏「オーロラ・フライト2010」の最終回をお届けします。
 前回はカナダのはてから、暗夜(真冬)の北極をグリッド航法で飛び越え、シベリア北岸の港町・ティクシに着いたところまででした。今回は早春の朝日に輝くツンドラを、まっしぐらに約2300nm南下して、一気に伊丹空港へ…という作戦ですが、地形データが生成されず空白が生じ、FlightGearが異常終了するトラブルが続出。調査の過程で、FlightGearの地形データには、世界地図にはない幅30nmの巨大渓谷が、北緯61度線に沿って東西に伸びていることが分かりました。

 北半球全域のAtlas画像をお持ちの方は、すでにご存じと思いますが、この渓谷は北半球の陸域を、完全に一周していることが判明しました。アフリカ東部を縦断する大地溝帯「グレート・リフト・バレー」(正体はプレートの境界線)に似ていますが、規模はずっと大きく、私はこれを「グレート・サークル・バレー」(環状の大地溝帯)と呼ぶことにしました。無事に上空を飛べる地域と、異常終了が起きる地域があります。マイアルバムに組み写真を入れておきますので、ご覧頂けましたら幸いです。
 FlightGearを使い始めて5年ほど経ちますが、まだこんな「地理上の大発見」があるとは驚きでした。まずティクシから南下の途中、どうやってこの地溝帯に出くわしたかを、ご紹介致しましょう。

●巨大ターボプロップ機で、シベリアを南下:
当初の予定では、飛行ルートは次のようなものでした。
◎ティクシ空港(UEST)(71°41'52"N-128°54'20"E)偏差=偏西017度
   ▼177°579nm
◎ヤクーツク空港(UEEE)(62°05'36"N 129°46'14"E)偏西015°
           VOR112.30 NDB171、334、685 RWY15R/23L 北向きILS111.70
   ▼164°836nm
◎ハバロフスク、NOVY空港(UHHH)(48°31'41"N 135°11'18"E)偏西11°
           VOR112.30 NDB469、528 RWY05R=110.90/23L=110.30
   ▼203°333nm
◎ウラジオストク、KNEVICHI空港(UHWW)(43°23'56"N 132°08'53"E)偏西10°
           NDB400 ILS109.70S RWY07L=ILS110.90/25R=110.30
   ▼GC162.8°RL163.8°494.8nm
★宮津VOR(35°28'50"N-135°08'13"E)112.60 関西は以下偏西7°予定高度22000ft
   ▼129.5°43.7nm
★大津VOR(35°01'01"N-135°49'33"E)171.00 予定高度10000ft
   ▼214.3°24nm
☆大阪NDB(34°41'11"N-135°33'03"E)340 予定高度2500ft
   ▼317.6°7.3nm
★大阪VOR(34°46'33"N-135°27'05"E)113.90
◎大阪国際空港(RJOO)32L ILS110.10
---------
計2318nm

 これは北極圏から日本へ、シベリアを降りてくるコースです。使用機もロシア製にしたくなって、航続距離の長そうなツポレフTu-114を選びました。
【実機について】
 ご存じ、戦略爆撃機Tu-95「ベア」の旅客機版です。大きな後退角と若干の下反角がある細長い主翼と、大直径の二重反転プロペラ、これが地面に当たらないよう、コンコルド並みに長い脚を持つ、ちょっと変わったプロポーションの飛行機です。原型のベアは1952年に初飛行し、1956年に運用開始。ライバルだったB-52は同時期に初飛行し、運用開始は1年早いですから、プロペラ付きのベアは、いかにも古く見えます。むろん燃費のいいターボファンがなかった時代ですので、水爆を積んで大陸間を往復したければ、ターボジェットの改良を進めて効率を上げるか、或いはターボプロップを使うことになります。B-52も初期の設計案では、ターボプロップ4〜6発を検討したそうです。プロペラは一般に、大直径でゆっくり回すほど推進効率がよく、ベアの場合は直径約5.6mもあります。YS-11のプロペラが約4.5m、大戦中の日本機は約3.2mが主流だったのに比べて相当大きく、そのうえ複雑な二重反転としたのですから、高空・高速で大距離を飛ぶ、執念のようなものを感じます。
 ここまで苦心しても、実用機のスペックを後期型同士で比べますと、Tu-95は航続距離こそB-52と似ていますが、ペイロードは半分、上昇限度や上昇率は大差が開き、最高速度も遅く、およそ互角とは言えません。まあ両国の技術や設計思想の違いを思えば、よく健闘したと言うべきでしょう。
 いっぽう旅客機版のTu-114の出来は、どうだったのでしょう。Wikipediaは、60年代初期のジェット旅客機をしのぐ航続力と座席数を高く評価していますが、乗り心地などは不明です。また爆弾と乗客ではペイロードとしての性質が大きく異なるため、「爆撃機上がりの旅客機」というのは、いかにもありそうで、実はなかなかありません。B-17ベースのボーイング307「ストラトライナー」は10機で終わったし、B-29から派生した同377「ストラトクルーザー」も、専用設計の太い胴体を使ったものの、経済性や信頼性でDC-6に勝てず、56機の製造でおしまい。Tu-114も実はわずか31機で打ち止めになっており、アエロフロートで一応活躍はしたものの、さほどの名機では無かったように想像されます。
【FlightGearの機体】
 私が初めて飛ばしたのは、FlightGear(Ver.0.9.8)を最初に入手した2005年の暮れごろで、客席どころかパネルもなく、全開でも200Kt少々という低速に、がっかりしました。当時は一応まともに操縦できて、かつ南極大陸が横断できる機体は、他にほとんど無かったものですから、この飛行機で南極半島から、極点を経てニュージーランド南端まで、事故や空中再起動を重ねながら、何とかたどり着いた覚えがあります。
 今回ダウンロードした現行機にも、残念ながらパネルはありません。しかし空力性能は改良され、高速で長距離が飛べて、かなり操縦しやすくなったのはありがたいです。また機首にガラス張りの航法士席があり、実際に視点を切り替えて、外を見ることが出来るのは面白いですね。これは古いソ連長距離機の特色で、地文航法や偏流測定には使い勝手が良さそうです。

●北極圏の「朝日」:
 冷戦中はTu-95が配備されていたティクシで、Tu-114を起動します。
燃料は24000Lbs(4000gal)×5が満タン。現地時間は正午過ぎ(UTC=0325時)で、滑走路正面には太陽が見えて、高緯度地方も夜明けの気分です。なぜか北極圏に来てから、リアルウエザー機能が効かなくなってしまい、今回も高空は320度の風30Ktで固定です。7段式のフラップを3段目にセット。計器盤の代わりに、シフト+sキーでミニパネルが表示できるはずですが、出ませんのでHUDで飛ぶことにしましょう。
 中継地のヤクーツクをGPSに入れると、ベアリング(目的地への方位)は194度と表示されました。これは磁気方位ですので、偏差を引いて真方位を出すと177度となり、事前の航法計算に一致します。よし、行けそうだと0328時に滑走開始。満タンの機体は重く、40秒あまり掛かって3000mの滑走路を使い切りテイクオフ。コースは真方位177度、目標高度を36000ftにセット。速度はデフォルトの320KIASにしました。5000ft通過時点で320KIASをマーク、ターボプロップとしては非常に速い飛行機です。GPSのXTRK(コース逸脱度)表示が右に3nm近く出たので、コースを修正して快調に上昇。機首の航法士席に視野を切り替えてみると、一面のツンドラが、動くカーペットのように押し寄せてきます。
 0403時、高度36000ftに到達。ヤクーツクまで318nm34分です。燃料は20230Lbs×5(8割)も残っており、降りずにこのままハバロフスクへ向かうことにします。燃費は0.1394nm/galと大食いですが、まだ2343nm(4時間8分)も飛べます。指示対気速度320KIAS、マッハ0.943を維持し、対地では実に564.9Ktを発揮。スロットル開度は約80%で、まだゆとりがあります。これがなんとプロペラ機ですから、驚くじゃありませんか…(^^)。

●シーナリーが空白に:
 0426時、北緯63度55分、東経129度41分。そろそろヤクーツクが見えるあたりで、何の手違いか地形データが展開されなくなり、大地が途切れて、前方は白いもやだけです。いやだなぁ、以前はこのトラブルが頻繁に発生し、構わず飛び続けると、やがてFlightGearが異常終了したものです。GeForce搭載パソコンを使うようになって、この現象はほぼ無くなりましたが、また起きてしまったか。
 0438時、Atlas画面上はヤクーツクの滑走路上空を通過。Install & Uninstall Sceneryで確認しても、シーナリーはインストール済みで、原因が分かりません。着陸も出来ないので、いったんFlightGearを切ってしまいました。TerraSyncによるシーナリー自動取得に切り替えて、ヤクーツクで再起動。燃料をほぼ同じ残量にセットし、無事に離陸しました。ところが離陸後数分、空港から15nm南のレナ川上空で、またFlightGearが勝手に終了。以前からTerraSync作動時は不安定でしたが、さて困ったものです。

 結局、普通のInstall & Uninstall Sceneryベースで動かすことにしますが、あまりにたくさんのシーナリーを詰め込みすぎたのでしょうか。調べると最近は、100を超えるエリアが入っています。最低限必要な18カ所を残し、89カ所を消してもう一回、ヤクーツクで起動。今回も離陸後数分で、やはり異常終了しました。ピラタスPC7改で飛んでみると、ハングせずに北緯59度まで進むことが出来ましたが、やはりこの時点で地形のタイルが途切れました。
 データが壊れているのかと、ヤクーツク周辺のシーナリー(e120n60)をダウンロードし直し、再インストール。改めてAtlasを眺めますと、北緯60度30分と61度線に挟まれた地域が、長く東西に、定規で引いたように直線的に、細い平野を形成していることが分かりました。平野は山脈もぶち抜いて伸び、FlightGearではもっとも標高の低い、薄緑の色分けになっています。この直線の地形は、Atlasで地図データを生成する際に、ちらりとモニター画面で見え、以前から少々不自然だと思っていました。やはりここでデータが壊れているのだろうと、シベリア一帯のシーナリー入れ替えを計画しました。
 まず、Atlas画面データの保存フォルダから、直線の平野があるタイル100枚を選択・除去して保管し、該当箇所のシーナリーをアンインストールして、保存フォルダからも消去。念のため、地形関係のデータを全て保管しているDドライブに、チェックディスクを掛けました。幸いバッドセクターはありません。
 次にe120n60 e130n60 e140n60 e150n60を再ダウンロードしてインストール。Atlas用の地図画像も生成し、Atlas画面で眺めますと、やっぱり…東経120度から同159度まで、北緯60度〜60度59分を埋めるタイル(サイズは東西南北1度)計40枚について、すべて北半分(幅は緯度30分=距離にして30nm)がベルト状に、標高ゼロメートルの平野になっています。これは一体、なんでしょう?

 この時点では、私はまだ飛行中にベルト状の平野自体は目撃しておらず、Atlas画面のみの存在なのか、或いは実際に地形があって、その上を飛ぶことも出来るのか、まったく確信がありませんでした。試しにヤクーツクの西にある、Mirny空港(UERR)でピラタスPC7改を起動し、南下してみたところ、Atlas画面に映るベルト状平野の約20nm手前で異常終了しました。これを越えることが出来るのか不安で、私はベルト状平野を「シベリアの長城」などと呼び始めました。こうなったら思い切って、調査範囲を広げた方が良さそうです。

●北半球全域の、北緯61度線を調べる:
 北緯61度線が含まれる、全てのシーナリーをダウンロードし、Atlas地図を生成してみました。すると驚くべきことに、このベルト状平野は、ユーラシア大陸から北欧、カナダ、グリーンランド南端に至る、北半球の陸域すべてを横断していることが分かりました(マイアルバムをご参照下さい)。いったいなぜ、こんなものがあるのか、いつからあるのか、疑問は尽きません。私は以前、UFOモードを交えて、縦周りの世界一周をやっていますし、今回もロンドンから北極へ向かいましたので、過去にはどこかで北緯61度線を越えているはずです。飛べる場所と飛べない場所があるようで、取りあえず数カ所のサンプリングを行って調査しました。以下のアルファベット地点名は、マイアルバムに掲載した地球儀の図と対応しています。
(A)シベリアのヤクーツク南方:ここは前述の通り、飛行できない。
(B)北欧南部:今回の「オーロラ・フライト2010」で、ノルウェー西部を通過しており、飛行可能。
(C)グリーンランド南端、ナルサースアク空港BGBW付近:
   離陸時は、地形タイルが狭い範囲しかなかったが、間もなく正常に展開し、飛行に問題なし。
(D)カナダ西部ユーコン準州、ブルワッシュ空港CYDB付近:これも飛行可能。
(E)アラスカ西端フーパーベイ空港PAHP付近:
   99nm先のCFKへ行こうと思い、離陸直後に空港上空7000ftでGPSをセットしたとたん、異常終了。
   GPSを使わずに再度飛んでみたところ、正常にシーナリーが展開し、問題のベルト状平野を越え、
   CFKに無事着陸。そこでGPSを使わずヤクーツクから南下してみたところ、ベルト状平野の向こう
   まで地形データが展開したが、さらに接近すると、平野の手前でFlightGearが異常終了した。
(F)カムチャツカ半島の付け根付近:
   半島一帯に、起動可能な空港がない(空港リストに出ない)ので、北緯61.1度、東経165度、高度
   10000ftで空中起動。数十秒後にシーナリーのタイルが成長して、何十nmも先まで正常に見えた。
   ベルト状平野を無事横断し、西に変針して平野内部を探検飛行。ヤクーツク東方で異常終了。
…という次第で、飛べる場所もあるものの、どこが飛べるのか、法則性は見えません。過去の経験では、どうも冬景色の方が負荷が高く、やや不安定な気がしますので、夏景色に切り替えて、ヤクーツク南方を飛んでみました。地形データの展開は、幾らかスムーズでしたが、やはり異常終了。シベリア南部には、なにやら魔物が住み着いている様子です。

●カムチャツカ半島から間宮海峡、そして…:
 ともかく、カムチャツカ半島へ迂回すれば、ベルト状平野の横断が可能で、何とか日本へ帰れそうです。半島の根っこにあるマガダンNDBを最初の中継地に選び、以下のように飛行コースを書き直しました。トラブルの多いヤクーツク周辺を避けるため、何nmくらい北上すればいいか分かりませんので、北極海のほとりのティクシからやり直します。以下、CGとあるのは大圏コースの初期針路、RLとあるのはラームライン(一定方位を維持する「航程線」)針路です。GPS航法では自動的に大圏コースとなりますが、念のため、推測航法に使うラームライン針路も算出しました。何が起こるか分からないので、3000m級滑走路が必要なTu-114はやめ、使い慣れたピラタスPC7改を使用します。
◎ティクシ空港(UEST)(71°41'52"N-128°54'20"E)偏差=偏西017度
   ▼132°880nm
☆マガダンNDB(空港はUHMM=Atlasにあるが、空港リストには出ない)(59°54'40"N 150°43'13"E)
       周波数は375と765。北方約35nmにベルト状平野の南端がある。
   ▼GC217°553nm(RL213.38°554nm)
△間宮海峡(52°12'N-141°35'E)小数点では52.2°と141.58°
   ▼GC230°329nm
◎ハバロフスク、NOVY空港(UHHH)(48°31'41"N 135°11'18"E)偏西11°
           VOR112.30 NDB469、528 RWY05R=110.90/23L=110.30
   ▼203°333nm
◎ウラジオストク、KNEVICHI空港(UHWW)(43°23'56"N 132°08'53"E)偏西10°
           NDB400 ILS109.70S RWY07L=ILS110.90/25R=110.30
   ▼GC162.8°RL163.8°494.8nm
★宮津VOR(35°28'50"N-135°08'13"E)112.60 関西は以下偏西7°22000ft
   ▼129.5°43.7nm
★大津VOR(35°01'01"N-135°49'33"E)171.00 10000ft
   ▼214.3°24nm
☆大阪NDB(34°41'11"N-135°33'03"E)340 2500ft
   ▼317.6°7.3nm
★大阪VOR(34°46'33"N-135°27'05"E)113.90
◎大阪国際空港(RJOO)32L ILS110.10

 ティクシで現地の正午に起動。最初の挑戦から10日ほど経ったので、太陽は地平線から直径の3倍の高さまで昇っています。時刻を夜明け(現地10時、UTCは0100時)に変更し、満タンで離陸。ほぼ平らなツンドラを倍速モードでガンガン翔破し、シベリア東部の山岳地帯を越え、0319時にベルト状平野に差し掛かりました。無事にマップが形成され、ハングアップは免れました。
 それまで25000ft台だった電波高度計が、スルスル動いて斜面があることを示し、標高ゼロに落ちました。冬景色でよく分かりませんが、地表は森林や草原など、かなり多彩なテクスチャーが張ってある模様です。知らずに通ったら、単に標高が低いなと思うだけで、異様な地形だとは気付かないでしょう。0325時、問題の平野を渡り切ったものの、まだ危機を脱した気はせず、緊張が解けません。
 0340時、本来ならマガダン空港が視界に入るはずですが、マップのタイルが欠落しています。地形の空白域に踏み込むのは、いかにも危ないので変針し、目標をすぐ手前のBALAGANNOYE NDBに変更。0343時に同NDBを通過しました。燃料の残りは2025Lbs×2で、なおメインタンクの半分あります。間宮海峡の緯度経度を入力して定針し、シベリアに別れを告げました。
 オホーツク海に入りましたが、意外にも広い海で、0450時になって、やっと樺太が視界に入りました。北端付近を斜めに越え、0512時に間宮海峡を通過。間宮林蔵という人は、よくまあ江戸時代に、こんなところまで来たものですね。この海峡は、大河アムール川の河口に面していて、上流域へ進むとハバロフスクです。0530時、離陸から4時間半を費やし、あと227nmでハバロフスク、というところまで行ったのですが。無情にもここで、地形データの生成が止まってしまいました。困ったことに、付近にはほとんど空港がありません。ポーズを掛けてちょっと考え、すぐ戻したところ、眼下の地形データが全て消滅し、雲ともやだけになってしまいました。海面さえありません。こうなってくると、操縦だの航法だのを少々越えた世界で、さすがの私も、ちょっと腹が立ってきましたが、ハングしなかったのは幸いと、一応ハバロフスクへ向けて続航。
 0619時、ハバロフスクがあるはずの位置に到着。燃料がたっぷりあるのでウラジオストクに向かい、0710時に到達。あと350nmは飛べますが、伊丹には届きませんし、函館当たりに向かったとしても、降りられなければ意味もありません。Atlas画面のウラジオストク空港へ引き返して脚を出し、高度計だけを頼りに着陸操作を試みました。地殻がないため、高度ゼロでも機体は沈むだけで、面白くありません。無線標識は生きているので、再び反転してグライドパスに乗り、少々大きな降下率で高度を下げたら、電波高度計がゼロを割ってからクラッシュ判定があり、機体が停止しました。非常にくだらないフライトでしたが、ともかく、降りられた…のかな?

●伊丹空港着。ところで、大地溝帯の成因は?:
 61度線突破に成功した場合も、アプリの動作はなお不安定です。ならば、例えば最初から61度線以南の空港を選択し、イニシャルポジション機能を使って、61度線以北に空中起動したら、どうなるでしょう。ウラジオストクを選択して樺太上空、異常発生直前の緯度経度にセットしましたが、これは起動不能でした。そこでハバロフスクで起動後、メニューバーの「Location」から「Position Aircraft(in air)」を選び、同様に樺太上空で再起動してみると、画面が真っ暗になり、コンソール画面上を「Warinig::Picked up error inTriangleIntersect」という文字列と数字が暴走しました。Atlas画面は真っ白で、位置ウィンドウの北緯が245806064度0分0秒、経度が正常で、高度はマイナス2147483648ft、速度ゼロでした。伊丹で起動して、樺太上空で再起動すると、しばらくは飛行可能でしたが、ハバロフスクの60nm手前で異常終了しました。やれやれ、もうこれ以上、大地溝帯の周辺を飛ぶのは嫌です。
 最後の帰国の試みとして、さっき墜落(?)したウラジオストク空港から通常通りに起動し、離陸しました。ロシア沿海州にはマップ異常がないようで、離陸後30分かそこらで、日本海のど真ん中、北緯40度あたりで宮津VORを受信。やがて陸地が現れ若狭湾、次いで丹後半島、舞鶴北方の冠島などが視界に入りました。琵琶湖が全面凍結していたのは、なかなかの見ものです。あとはGPSで帰って、梅田の手前で伊丹の滑走路に正対し、着陸。今回はうっかり、燃料搭載量を軽めの3000Lbsのままで出発したため、日本海で燃料切れが気になって、スロットルを少々絞りました。おかげで燃費は3.9nm/galくらいまで改善され、増槽付きでは、うまくいくと3000nm近く飛べることが分かったのは収穫です。

 環状の大地溝帯(ベルト状平野)を発見したことと、場所によっては正常に飛べることが確認できたのは嬉しいですが、ロシアのシベリア方面は、どうもFlightGearが不安定で、日本から北極航路を頻繁に利用するのは難しそうなのが残念です。もう一つ、なぜこんな環状地溝帯が存在するかですが、偶然生じたバグでしたら、山地から平野に移行する部分が、ナイフで切ったように一律な壁になるはずです。実際は、山地の端はかなりデコボコがあり、手間を掛けて人為的に成形された様子で、一応は自然な地形に見えるようになっています。シーナリーの元になった地図は、緯度によって異なる図法で制作されていると思いますが、どんな図法でも端に行くほど歪みが大きくなります。中緯度と高緯度のつなぎ目で歪みが累積し、つじつま合わせのため、シーナリーの設計者が平野を設けて誤差を吸収したのではないかと、私は想像しています。

●リアルウエザー機能が不作動に:
 最初の方でもお話ししましたが、今回はリアルウエザー機能が、まったく働きませんでした。前回の北極横断時も不作動で、NOAAにデータがないのかと思いましたが、そんなはずはないですよね。伊丹やKSFOでも作動せず、チェックを入れたり切ったり、パソコンを再起動したり、本サイトトップの「現実の気象の反映方法」にご紹介いただいた、preferences.xmlの設定変更も試しましたが、やはりダメです。最後の手段として起動ドライブの内容を、リアルウエザーが確実に機能していた、昨年9月のバックアップに置き換えましたが、これでも動きませんでした。取りあえず、風向風速をランダムに設定しましたが、これでは起動後に風が変化しないでしょうね。となりますと今後、あまり航法は面白くないわけで、正直困っております。
 米国本家サイトで「real weather fetch」を検索すると、フォーラムに不作動の質問と回答が見つかり、プロクシ・サーバーの設定方法が書いてありました。そこで --proxy=168.216.38.209:8080 という起動オプションを付けましたが、やはり作動しませんでした。また起動時には、コンソール画面に
Nasal runtime error: nil used in numeric context
at C:/FlightGear/data/Nasal/startup.nas, line 12
called from: C:/FlightGear/data/Nasal/startup.nas, line 29
というメッセージが出ています。いずれのラインも、METARの風関連ですので、トラブルに関係がありそうな気がします。何かお気づきの方がおられましたら、どうかご教示を下さいますよう、お願い申し上げます。

 私の環境:
【CPU】
   Intel Core i7 Q720 1.60GHz
【メモリ】
   2.99GB
【グラフィック】
   NVIDIA GeForce GT240M
【OS のバージョン】
   Windows−XP Professional Ver 2002 SP3
【FlightGear のバージョン】
   Ver.2.0.0
【FlightGear の起動時オプション(機種、空港、その他)】
   ピラタスPC7改、RJOOほか(いずれの機体、空港、空域でも発生)
【問題が発生するタイミング、再現性】
   現在は常に発生。必ず再現されます。
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なし Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-2-16 22:03
sambar  長老 居住地: 岡山  投稿数: 484
hideさん、お久しぶりです。
sambarです。

引用:

hideさんは書きました:

Nasal runtime error: nil used in numeric context
at C:/FlightGear/data/Nasal/startup.nas, line 12
called from: C:/FlightGear/data/Nasal/startup.nas, line 29

startup.nasを今読んでみたんですが、どうやら「プロパティツリーの、「/sim/signals/nasal-dir-initialized」が変更されたとき(起動時・リセット時)に滑走路を指定していない場合、自動で滑走路の向きを変更する」物のようです。

で、startup.nasの12行目のエラーですが、「/environment/metar/base-wind-speed-kt」の値が取得出来なかったのが原因だと思います。
#ちなみに、リアルウエザー機能が無効な場合はこのエラーは出ないはずです。

次期バージョンではstartup.nasその物が無くなるようです。そして、気象の設定もより細かくできるようになってます。

余談ですが、「現実の気象の反映方法」の文書は、FlightGearのバージョン1.0.0の頃に書かれた物のようです。
次期バージョンがリリースされたら、「この文書はFlightGear 1.0.0向けの古い文書です」と付け加えたいと思います。
#ちなみに、METARのデータの寿命に関する設定は、$FG_data\Environment\environment.xml の280行あたりに移ってます…が、Fedora14環境(BIOS時間:JST) では問題が起きてないようです。
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なし Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-2-17 23:26
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
sambarさん、さっそくご返事を頂きまして、ありがとうございます。
 なるほど、startup.nasは、そういうことをやっていたのですね、勉強になりました。
リアルウエザーが機能しない原因は、その後も分かりませんが、当面は次期バージョンに期待することにします。現行2.0版のリリースから、そろそろ1年。米国本家サイトを少しのぞいてみましたら、次はVer.2.2.0になるのだそうですね。改良点が分かりませんが…特に処理が重くなるわけではない、といった書き込みがあり、ちょっと安心しました。気象関係の改善を含め、楽しみです。
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なし 子午線への挑戦(1)

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-3-9 23:34 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 冬の北極から戻り、さんさんと陽が注ぐ伊丹空港の周辺で、ショートフライトを重ねていましたら、久しぶりに太陽を相手に、天文航法を研究したくなってきました。今回は新たに、六分儀ならぬ「子午儀」という装置を試作しましたので、ご報告させていただきます。マイアルバムに、写真もあります。

●子午線の上で、太陽を捕える:
 本連載で最初に天文航法に挑戦しましたのは、08年の秋でした。昼間の天文航法は元来、太陽が正午に南中する(もっとも高く昇る)瞬間の高度角を計り、緯度のみ算出するのが基本でしたが、19世紀ごろまでに技術が進歩し、「任意の時刻に測定し、緯度も経度も算出する」ことが可能になりました。私も前回は、本物の航海用Excel関数をたっぷり使い、このレベルの天測計算をほぼ再現しました。「ほぼ」と書きましたのは、本物の天文航法は、太陽を数時間おきに複数回測定し、やっと緯度経度が1回出せますが、私は高度角だけでなく方位角も同時に計って、1回の天測で緯度経度が出るようにアレンジしたからです。(六分儀には方位を測定する機能はないので、他の道具なしに、実世界で同じことをするのは困難です)
 この結果、FlightGearの起動直後なら、うまくいけば1nm内外の誤差で位置が出ましたが、天測というものは長時間飛んで、自分の推測位置に自信が持てなくなった段階で、初めて真価を発揮するものです。残念ながら一連の私の実験では、起動後1〜2時間経ちますと、誤差が急速に数十nmまでふくらんで、とても実用になりませんでした。

 そこで今回は作戦を変更し、「1日1回、太陽の南中時だけ天測する」という、大航海時代さながらの、一番初歩的な方法を試すことにしました。実世界では六分儀を使い、太陽がもっとも高く登り詰め、下降に移る一瞬を見極めて、高度角と時刻を記録します。しかしフライトシミュレーターでは、こんな手間の掛かる作業は大変ですので、発想を転換して「南中とは、太陽が子午線(真南)を通過する瞬間である」と考えることにします。このときの時刻をUTC(協定世界時=グリニッジ標準時と同じ)で計れば、グリニッジの正午との時差から、容易に経度が算出できるはずです。また南中時の高度角も計っておけば、比較的簡単な計算で緯度も出せるはずです。この計算法は「子午線高度緯度法」と呼ばれますが、じっくり勉強しようと思い、海文堂(神戸・元町にある海事専門書店。出版も多数)の「天文航法」という教科書を買ってきました。
【注】
 「子午線」という言葉が登場しましたので、簡単におさらいをしておきます。
子午線とは、中国語で「南北の線」くらいの意味だそうで、ある場所を通る経度の線のことを指しますが、このほかに天文学では、「天の子午線」という言い方があり、いま観測者がいる場所を通る子午線=経線を、天球に投影した仮想の大円を指します。この天の子午線は、真南の地平線から直角に立ち上がり、観測者の頭上=天頂を通過して、天の北極へ伸びています。
 従って、星々が南中する(最も高く昇る)瞬間には、必ずこの線を横切ります。もし南中するのが太陽でしたら、その一瞬が、その土地における天文学的な「正午」です。

●「天の子午線」を自作して、愛機に搭載する:
 天の子午線は目に見えませんが、代わりに天体観測や測量では、子午儀という装置を使います。精密な分度器の付いた、上下に角度を変えられる望遠鏡を、真南に向けて据えたもので、クロノメーター(天測用の精密時計)とセットで使い、天体通過の瞬間を捉えます。子午儀を使うには、角度にして秒単位の精度で真南に向ける必要があり、動揺する船や航空機に搭載するには不向きですが、幸いにしてフライトシミュレーターの世界では、簡単に高精度を出すことができます。
 私にも作れそうなFlightGear用の子午儀として、ふと思い浮かべたのは、一種の透明なドームです。
仮に飛行機の周囲に、直径数十メートルのドームをかぶせてみたと想像しましょう。もしドームの真南から頂部に掛けて赤いラインが引いてあり、ドーム全体がコンパスのように、自動的に南北を向くのなら…このラインは、南中する天体を照準するカーソルとして使えそうですね。もちろん、こんなプラネタリウムのような代物をかぶって飛ぶのは、はななだリアリティーを損ねますので、できれば装置全体を、直径数十僂泙脳型化したいものです。これらが実現すれば…可搬式の「天の子午線」、つまり機上用の子午儀が作れるはずです。
 装置の制作に向けて、解決すべき課題をまとめてみたら、次のようになりました。
(1)カーソル付きドームの中心に、観測用カメラにあたる「ビュー」(視界)を新設する。
(2)ドームを自動的に真南に向け、かつ機体の運動と無関係に、水平に保つ方法を考える。
(3)試験観測をして、ドームの中心とカメラビューの位置を精密に合致させる。
(4)ドームとカーソルを、なるべく小型化する。
(5)可能なら、カーソルに緯度測定用の目盛りを付ける。
(6)緯度と経度の算出方法を研究して、Excelの計算表を作る。

○まず、カメラビューを新設:
他機の副操縦席などを参考に、pc7-set.xmlに次の記述を加えたところ、ピラタスPC7改の後席に、テスト用のビューを設けることが出来ました。視点切り替え操作をした瞬間、ビューの名称「Navigator」が画面表示されたときは正直、非常にわくわくしました。
<!-- Navi View -->
<view n="100">
<name>Navigator</name>
<internal archive="y">true</internal>
<type>lookfrom</type>
<config>
<from-model type="bool">true</from-model>
<pitch-offset-deg>-10.0</pitch-offset-deg>
<x-offset-m archive="y">0.0</x-offset-m>
<y-offset-m archive="y">1.33</y-offset-m>
<z-offset-m archive="y">1.01</z-offset-m>
</config>
</view>
 文中、lookfromとあるのは、カメラ位置から外部を見るタイプの視点で、ここをlookatとしますと、外部から機体を見る視点になります。直前の行を含む、この部分の計2行を書き落とすと、空も大地もない、星空だけの無の世界になってしまいます。x-offset-m以下の部分は、カメラ位置を定義しています。
 なお、ドーム中心に設けるカメラビューは、子午儀の英語である「transit」という名称にしました。測量に使うトランシット(こちらは「子午線」儀)とは、少し構造が違いますが、同じ語源です。
○ドームを制作:
 次にモデリングソフト(私のはAC3D)で、装置本体をacファイル形式の3Dデータとして作ります。カーソル1本が装置の全てではサマになりませんので、スケールサイズで直径30僂痢半透明の球体をまず作り、半分に割って縦にスリット部を設けて、ここにカーソルを付け、バケツ型のケースにはめ込みました。カーソルの形状は、水平線から天頂まで測定できる、中心角90度の弧があればいいのですが、南半球で北天を観測することなども想定し、全周にわたる円形にしました。色は赤で、夜間観測に備えて発光式です。
 ドームを自動的に水平に保ち、かつ南北に向けるプログラムは、同じく球形をしたOV-10の人工水平儀を参考にしまして、Models/pc7.xmlの内部に書き加えました。internal propertiesの中から orientation/pitch-degとorientation/roll-deg、さらにorientation/heading-degを引用し、rotateタグで回転させる仕組みです。長いので転載は省きますが、OV-10の計器の記述がほぼそのまま使えて、思ったより簡単でした。ただしpitch-degにつきましては、factorを-1に変更し、回転方向を計器と逆にする必要があります。
○角を生やして微調整:
 問題は、ドームとカメラの取り付け位置調整です。装置本体は、先ほどのプログラムの冒頭に、オフセット(機体の基準点からのずれ)寸法を書いておくだけで出現してくれますが、pc7-set.xmlファイルの中に、カメラビューについても同じ数値を使って位置決めをしたところ、なぜか両者の位置が数十僂發困譴討靴泙い泙靴拭カーソル円の中心と、子午儀用カメラビューの設定位置は、完全に同じでなくてはダメです。カーソルの半径は、スケールサイズで30僂靴ないので、もしカメラ位置が1ミリ狂ったとしますと、観測した天体の位置は約0.2度ずれます。すると現在位置は東西方向に、最大で12nmもずれてしまうのです。
 そこで、マイアルバムにご紹介しましたように、子午儀のドームからXYZ軸方向にそれぞれ照準器として、長さ12mの線分を伸ばし、いずれも中心のカメラ視点から、ほぼ1点に見えるよう調整を重ねました。また精度比較のため、非常に直径の大きなカーソル円を増設。マイアルバムでご紹介した写真では、ドーム内のカーソル(黄色)は直径30僉機外のカーソルは赤が直径50m、緑が直径5キロになっています。カメラ位置から見て、これらが1本の線となるよう、十数回の調整を行ったところ、最大と最小のカーソルは、極端に拡大した画面上では、かろうじて見分けられるものの、位置の差は太陽の1秒当たりの移動距離より小さくなり、必要とする精度が得られました。
○高度角測定ビューを追加:
 あとはカーソルに、高度角測定用の目盛りを入れれば完璧です。しかし水平から天頂までの90度だけに入れるとしても、角度の1分を最小目盛りとしますと、合計540本もの線分を設けなくてはなりません。制作および精度検証の手間と、カメラビューをズームアウトした際に、目盛りの線分同士が重なってつぶれ、カーソル全体が太い棒に化けてしまうことなどを考えると、どうも気乗りがしません。
 そこで高度角は従来通り、太陽をHUDの◇マークで狙い、internal propertiesからpitch-offset-degを読むことにしました。08年にtoshiさんがマイアルバムで公開された測定法で、これには、水平線を基準にする座標軸を持つビューが必要です。Helicopter-viewがそうですが、測定時に自分の機影が邪魔になりますので、私はlookfromタイプのビューを新設し、FlightGear/data/preferences.xml内にある、Helicopter-viewに関する記述を借りて、カメラが水平線に沿って回転するようにしました。ドーム内のビューを、この目的に兼用できれば理想的なのですが…水平線を基準に設定変更した場合、機体が傾斜すると、カメラ視点がデフォルトのドーム中心からずれて、方位測定機能が台無しになってしまうため、独立したビューにしました。

●見事に作動、見事に大外れ:
 こうして、ともかく子午儀の試作第1号が完成。愛機ピラタスPC7改は、坊主頭のドラム缶を後部座席に積んだみたいな姿で、伊丹空港から青空へ駆け上がりました。機体を上下左右に振り回してみますと、ちゃんと坊主頭は回転し、水平を保ったまま、しっかり南北を指向しています。Xウイングの後席に乗ったR2-D2みたいで、とてもかわいい。えらい。ほめてあげたい…と、盛んに独りで大満足しました。見ようによっては、第二次大戦冒頭でボロ負けした英国機、デファイアント複座戦の球形機銃座みたいでもありますが。
 さっそくFlightGearを「正午」にセットし、カーソルで太陽を捉え、子午線通過時刻を測定してみます。専用ビューを設けたため操作が簡単で、非常に快適です。鼻歌気分でUTC時刻を記録し、グリニッジとの時差から東経を算出してみると、どうも様子が変です。東経131度って…ありゃりゃ。正解から4度も離れているではないですか。カーソルを大直径に変えたり、機体の向きを変更したり、あれこれやり直しましたが、やはり133度とか、変な答しか出ません。この時の正解は、東経135度25分くらいだったのですが。
 試しに伊丹から、日本標準時の子午線が通る明石市へ飛びまして。市街地の北、丘陵地帯を走る道路に着陸し、東経135度の経線上にピタリと駐機しました。メニューバーからNoonをクリックして、シミュレーション時刻を再び正午に調整。すると時刻表示は、UTCで0304時00秒(ローカル1204時00秒)となりました。なぜ0300時(ローカル1200時)ちょうどにならないのか、謎です。またこの時、太陽は南中しているはずなのに、直径3個分くらい東に寄っていて、真南を向いたカーソルには合ってくれません。試しにTimeWarp機能で、UTCを強制的に0300時ちょうどに合わせたところ、太陽は、わずかに東へ寄っただけで、やはり南中しませんでした。どうもFlightGear内の天文学的時間は、おかしな流れ方をしているように見えます。

 こうなったら本家本元のグリニッジを通過している、本初子午線(ザ・プライム・メリディアン=経度ゼロの線)へ行って調べてやろう、というわけで…ロンドン・シティ空港で再起動しました。
 都心へ機首を向けると、間もなくテムズ川南岸にドーム型スタジアムが見えました。この北岸がちょうど、グリニッジのあたりですね。実世界では旧グリニッジ天文台があり、中庭の旧館の壁に、本初子午線を示す赤線が、誇らしげに描かれているのだそうです。経度ゼロラインを追って南下し、ロンドン郊外の牧草地に降りて、機体をグリニッジ子午線に乗せて駐機。さて計測に入ろうとしたところ、肝心のカーソル線が、きちんと鉛直になっていないような気がしてきました。直径100mの機外カーソルを付けていたのですが、どうも角度にして数度、機首方向へ傾斜しているようです。プログラム上は、水平線に対して直角に立つはずなのに、困ったなぁ。
 で、必死に考えること数分。
一つだけ思い当たることがありました。Models/pc7.xmlの冒頭付近には、<pitch-deg>-4</pitch-deg>というオフセット表示があります。恐らくFlightGearは、完全な水平姿勢の代わりに、全速飛行時の前傾トリム状態を、機体の標準姿勢として扱っているのでしょう。そういえば、起動ウィザードの機体選択画面でも、ピラタスPC7は水平ではなく、約4度機首下げで表示されます。しかし子午儀の座標軸は、ピラタスPC7のacファイルに描かれた、設計図的な機体データをもとに位置決めをしましたので、FlightGearが判断する「水平姿勢」からは4度ずれるわけです。かといって、この-4度の記述をゼロに変更しますと、今度は機首を4度上げて飛ぶことになり、着陸時に滑走路が機首に隠れたりします。結局、同じModels/pc7.xmlの末尾近く、子午儀の姿勢を記述した場所に、新たに<pitch-deg>4</pitch-deg>というオフセットを書き加え、必要な前傾姿勢はそのまま保持しつつ、カーソルへの悪影響を中和することに成功しました。やれやれ。

●太陽時には、「均時差」という伏兵がいた:
 再び天測してみますと、太陽はUTCの正午にグリニッジ子午線上で南中する、との予想は外れ、実際は12時10分13秒くらいでした。なぜ10分もずれるのか、見当が付きませんでしたが、ネットで調べたところ、「グリニッジ子午線における太陽時」と「グリニッジ標準時」は、実は全く別物であることが分かりました。
 地球の公転軌道が楕円であることと、自転軸が傾いていることの影響で、太陽の南中から次の南中までの「視太陽日」の長さは、毎日変化するのです。視太陽日は、グリニッジ標準時の基になった「平均太陽日」より最短で22秒短く、最長では29秒長くなるそうです。この差は累積するため、平均太陽時と視太陽時には、年間で最大17分の差が生じます。言われてみれば当たり前のお話で、不明を恥じるばかりです(^^;)。
 この差は、先ほど書きましたように、公転軌道と自転軸の二つの要素が絡むため、変動周期をグラフにしますと、2本のサインカーブを合成した、多少複雑なデコボコになります。従って、夏と冬で誤差がシンメトリーになるとか、春分には誤差ゼロになる…といった、うまい話は期待できず。天文用の暦を手に入れない限り、両者の換算値(これを均時差という)を知るのは難しそうで、さっそく今年の理科年表を購入しました。また、sun.pngファイルに描かれた日輪の中心部に、薄いグレーで小さな+印を描き込み、カーソルを合わせやすく改造しました(ちょっとインチキのようで、気がとがめます)。

 これで経度測定が万事OKなら、めでたいのですが。あいにく、ことはそう簡単ではなく。均時差を加味して再試算したところ、なお20nmちょっとの誤差が出ました。仮に10nm以内の誤差でしたら正直、目をつぶってもいいのですが。20nmとなると、目的地の空港をロストする可能性が大です。おまけに南中時刻の測定誤差は、アプリ内部の時刻設定とは無関係に、パソコン自体のクロック時刻に依存して、同じ1日のなかで規則的に変化するらしいことが分かりました。さらに調べて、いずれご紹介できればと思います。
 また緯度も試験的に出してみました。ネットで調べると、以下の関係式が見つかりました。文中の「視赤緯」とは、天球上で天体の位置を表現するための、緯度のようなものです。
南中高度=90度-緯度+視赤緯
 これを変形すると、
緯度=90度-南中高度+視赤緯
 となります。また高度角の測定結果は50.9434度、理科年表によると、この日の視赤緯は−4度43分4秒なので、これらをもとに計算しますと、
緯度=39度3分23秒-4度43分4秒
  =34度20分19秒
という答が得られました。正解の北緯34度46分20秒よりも26nm南を指していますが、最初のトライとしては悪くない数値で、あれこれ工夫すれば、さらに精度が上がるかも知れません。また08年の試みに比べますと、今回は天測手段も計算も原理的に単純ですので、誤差自体はゼロに出来なくても、何らかの方法で機械的に補正値を設定して、誤差をかなり圧縮することなら可能ではないか、と期待しています。いつ完成するか未定ですが、まあ、焦らずに進めるつもりです。
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なし 「フライト・コードラント」(航空四分儀)を完成

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
大変長らく、ご無沙汰を致しました。
 私事で恐縮ながらここ1年ほど、深夜を中心に約12時間、食事にも立てず端末の前でサンドイッチを食べるのがやっと、というハードな職場におりました。最近は震災の影響も加わり、正直こりゃ倒れてしまうと心配した矢先、幸い今月から希望の持ち場へ異動になって、心からホッとしました。晴れて本連載へ、復帰させていただきます。

 3月以来、長距離を飛んだり書いたりは無理でしたが、その間に少しずつ、前回お話しました天文航法用の「子午儀」を改良して機能を拡張し、すっきりと小型化しました。3月9日にアップロードした「子午線への挑戦」の画像と、今回お目に掛ける装置を比べていただけますと幸いです(^^;)。
具体的な改良点は、以下の通りです。
(1)垂直カーソルに精密目盛りを設け、天体の高度角を直読できるようにした。
(2)このカーソルは従来、常に真南を指して、天体の南中を示す仕組みだったが、
   マウス操作による視点移動を自動追尾し、常にビューの中心を指すようにした。
(3)新たに方位目盛りリングを新設。常に真方位を指すため、垂直カーソルとの
   交点を見れば、天体方位が直読できる。
(4)従来の子午儀は直径が60僂發△辰燭、新装置は24僂泙脳型化。
   (あまり小さくすると、ビュー機能の視界制限により、カーソルが写らなくなる)
 …こうして新型の天測装置は、internal propertiesを開くことなく、天体の高度角・方位角を一発で読めるようになり、使い心地が極めてよくなりました。
 最小目盛りはそれぞれ0.1度ですが、ズーム機能でどアップにして、理科実験の常識通りに「目盛りの10分の1まで目測」しますと、internal propertiesのデータと比較して、100分の1度の単位が少し怪しいかな、というくらいの精度が出ます。ほぼ1分角(60分の1度)の分解能を実現しており、今も売られている上質な六分儀のスペック(国産TAMAYA製は、マイクロメーターの副尺を使うと0.2分角)に比べますと、さすがに少し見劣りするものの、以前ご紹介いただいた、FlightGear用のバブル・セクスタント(結局まだ使い方が分からず残念)とは同レベルで、距離に置き換えると1マイル以内の誤差ですから、フライトシミュレーターでは、十二分に役立つと思われます。

 この装置は、四分円(quadrant=国内表記は「コードラント」が主流?)の高度角目盛りを持ち、大航海時代に使われた「四分儀」と原理的にそっくりです。蛇足ながら…四分儀は、のちに可動式と固定式の鏡を付けて、測定角度を2倍に拡大してファインダーに導くよう改良され、八分円(オクタント)の形になり、八分儀と呼ばれました。さらに最大角度120度まで測れるよう、六分円(セクスタント)とした改良型が作られて、六分儀となった次第です。こうした歴史にちなんで、私はこの改良計器を「フライト・コードラント」(航空四分儀)と呼ぶことにしました。以下に少々、改良の経緯などをご紹介します。

●FlightGearの太陽が、正午にジャンプした:
 先ごろご紹介しました「子午儀」は、簡単に言いますと、天体が真南を通る(南中する)瞬間を捉え、グリニッジ標準時で時刻を計って経度を算出しよう、という装置です。自動的に水平を保ち、カーソルも自動で真南に向くのが、ささやかな工夫点でした。自分では気に入っていたのですが、大阪上空で何度か太陽観測テストをしたところ、厄介な現象を発見しました。
 太陽が南中する時刻は、季節によって変化します。たまたま4月に大阪湾上空でテスト中、日本標準時の正午ほぼピタリに南中したのですが、1159時59秒が1200時になったとたん、子午儀のカーソルに重なっていた太陽が、東から西にピョンとジャンプして、肝をつぶしました。距離にすれば、視直径のわずか4分の1程度ですし、南中の瞬間をどアップで観察するユーザーは、ほとんどいらっしゃらないでしょうから、あまり知られていない現象かも知れません。数時間後にテストしたところ、再現性がありました。青空に紛れている星も同様にジャンプしますので、太陽単独ではなく、天球が動いています。1日に何度も起こるのかと思いましたが、シミュレーション上の真夜中にテストしたところ、発生しませんでした。以上のことからFlightGearは、日周運動の誤差を補正するため、ローカル時間の正午に、一種の「うるう秒」を設けているのではないかと想像しています。しかし、これを書くためにいま、KSFOで現地時間の1200時に太陽を観察したところ、ジャンプは起きませんでしたので、恐らく幾つもの条件を満たす必要があるのでしょう。
 …ともかく。まれにせよ、南中の瞬間か寸前、または直後に、太陽がポンと移動することがあり得るのでは、子午儀という観測装置は成立しなくなってしまいます。天体の子午線通過を待ち受けても、その一瞬を確実に観測できる保証がないなら、こっちから積極的にカーソルを動かして天体を照準し、その時の方位を読み取るのでなくてはダメ、ということですね。さてカーソルを能動的に、任意の方角に回転させるには、どうすればいいのでしょうか…?
 最初に考えたのは、ジャイロコンパスに付いている、ヘディング・バグ(赤い針路目印)の設定値に、カーソル方位を連動させることです。実はピラタスPC7のオートパイロットは、磁気方位による針路保持機能が壊れていて、ヘディング・バグではコース設定ができないので、遊んでいるなら転用してしまえ、というわけです。カーソル方位を決めるrotateタグのなかで、方位を
   <property>autopilot/settings/heading-bug-deg</property>
と記述してみたところ、OBSつまみをクリックしたり、オートパイロットメニューから磁気針路設定をすると、カーソルの向きが変わることを確認しました。しかし太陽を照準するような、細かな動作は到底困難です。爆撃機の動力銃座が参考にならないかと、B-17などをダウンロードして調べましたが、実際に銃座が旋回する作例はみつかりませんでした。さんざん考えた末、
   <property>sim/current-view/heading-offset-deg</property>
とすれば、マウスでビュー方向をパンする動きを、カーソルが正確に追尾することに気がつきました。あとはカーソルが実際に指向した方位を、正確に読み取る機能が欲しいです。高度角の表示装置も必要ですね。
(注:以前お話ししましたように、実際の天文航法では通常、高度角のみを計って位置を算出します。この方法は原理的に複数回の測定が必要ですが、そのほかに、太陽方位や高度角観測結果を作図するため、該当地域の海図・航空図か、代用品となる位置記入用紙を手に入れなくてはなりません。これの使い方と売っている場所がまだ分かりませんので、当面はリアリティーを若干損ないますが、3年前に試みたように、太陽の高度角と同時に方位も計っておき、計算法を少しアレンジして、一発で緯度経度を算出することになりそうです)

●「忍」の一字で、精密目盛りを制作:
 さて、高度角や方位を読み取る方法ですが。最初はHUDを改造できないかと思いました。天体高度角と方位を測定する、一番簡単で正確な方法は、カメラ位置が水平で安定するヘリコプタービューを選択し、HUD中央の◇マークを太陽や星に指向して照準を決め、internal propertiesから、pitch-offset-degとheading-offset-degを読み取ることですね。パスをたどるのが面倒ですが、もし画面の一部分に、これらの数値が常にデジタル表示されたら、恐ろしく便利になると思います。さっそく、
(1)HUDの機能定義ファイルを見つけて改造する。
(2)燃費計算ツールのffe.nasを参考に、小さなウィンドウを開く。
(3)フレームレートの表示機能を参考に、ドラッグ可能な数字を表示する。
(4)カーソルと一体の小型計器盤を作り、デジタル角度表示器とカーソル旋回ボタンを組み込む。
(5)internal properties/sim/time/sun-angle-rad という太陽角度のデータを転用する。
などのアプローチを検討しました。
 しかし(1)〜(3)は、私の技術ではとても無理と判明。(4)は思考実験だけで、かなり面倒に思えて断念。(5)のデータは、90度から高度角を引いた、天文学で言う「頂距」(天頂から目標の天体までの角度)をラジアンで表したものと分かりましたが、他の測定方法と比較したところ、0.2%も誤差があって、とても航法には使えません。そういえば…FlightGearでは、ビルの色彩を夜間照明タイプに切り替えるための引き金として、この変数が使われていますね。ともかく、いずれの方法もダメとなりますと、あとは馬鹿正直に精密な目盛りを作って、組み込むしかあるまいと腹をくくりました。

○精度を設計する:
 目盛りの作り方ですが。工作精度がすべてを決定しますので、仕様や作業手順を、できるだけ丁寧かつシステマティックに決めようと思いました。
 まず、最小目盛りの単位を決めます。
私の天文航法の目標精度は、初挑戦した3年前は10nmでした。これは、目的地の空港滑走路を機上から視認できる最大距離、というつもりです。FlightGear自体の天体運動の精度が、果たしてどの程度か、いまでもよく分からずにいますが…かつて最良のケースでは誤差1nmを少し割ったこともあり、今年は思い切って、コンスタントに1nmを目指したいところです。ただし実現できるかどうか、現時点ではまったくわかりません。
 ちなみに実世界の天測精度は、観測する人によって大きく異なるようで、訓練段階では優に数十nmずれることもあるそうです。若き日の石原慎太郎氏も、1963年に参加した太平洋横断ヨットレースを小説化した「星と舵」の中で、「一度相模灘で計った位置が、山梨県の甲府近い山の中に出た」と、苦笑混じりにつぶやいています。その一方で、私の大学時代、一緒に貨物船に乗った船会社員は「名人なら誤差は100mだ」と話していました。
 距離の誤差1nmは、天測誤差では1分角に当たります。従って最小目盛りもそれ以下がベターで、少なくとも1分角が欲しいです。しかしその場合は水平線から天頂までの90度に、90×60=5400本もの目盛りを打たなくてはなりません。3Dのファイルサイズは、基本的には図形の頂点(vertex)の総数で決まるでしょうが、5400本の線分を引くには10800個の頂点が必要で、「重すぎて飛べない」事態が予想されます(^^;)。なので、最小目盛りは10分の1度(6分角)にとどめ。その代わりに測定時は、どアップにして目盛りの10分の1(つまり100分の1度)まで目測することにしました。
 ところで。パネルの計器類は通常、目盛りを画像データとして持っています。私は使用可能な画像の最大サイズが、256ピクセル角だと勘違いしていたため、解像度が絶対的に足りないと思って、目盛りの画像化はまったく検討しませんでした。現実には2048ピクセル角のデータも存在しますが、やはり今回の用途には、大幅に解像力が不足しそうです。また目盛りを3Dの線分で作っておくと大幅な拡大縮小が可能で、何かとフレキシブルなため、将来にわたっても使い回しが利くと思われます。
 実際の使用場面では、3Dの目盛りはどこまでもどアップにでき、どんなサイズで画面表示しても、常に幅が1ピクセルです。まるでロジックで作られた、仮想のひも状単分子、とでもいいますか。実世界なら、太さゼロの物体なんて見えるはずはないのに、パソコン上ではちゃんと着色して使用可能。数学の世界とコンピューターの内部だけに存在しうる、誠に奇妙かつ便利なものですね。ちょっと感動しました。
 次は、目盛りの寸法と比率を決めます。
当面は恐らく太陽ばかり観測するので、高度角1度の目盛りの長さを、太陽の視直径と同じにすることにしました。理科年表(国立天文台発行)によると、太陽の視直径は約32分で、つまり0.53度。そのサインは0.009308。つまり半径30僂離ーソル上に、長さ0.279僂量楡垢蠅鮹屬韻弌太陽と同じ大きさに見えます。また目盛りは単位ごとに長さを変えて、一目で区別できないとダメです。5度は視直径の2倍、10度は視直径の4倍と決定。また角度の「分」単位は、10分目盛りが視直径の半分、5分目盛りは視直径の4分の1、1分目盛りは視直径の8分の1に決めました。制作中に多少の拡大・縮小を加えたため、実際の寸法はもう少し大きいのですが、各目盛りの長さの比はこの通りで、非常に見やすいと感じています。既存の物差しの目盛りも、こうした「倍々ゲーム」の寸法比が目立ちますが、これは一種のフラクタル図形とも考えられますね。

○ひたすら、コピペを繰り返す:
 続いて、実際にモデリングソフトを使って、どうオブジェクトを作るかです。
当初の想像では、例えば1度分の目盛りを作っておいて、これを2倍にコピペし、続いて4倍に再コピペ…という具合に、ほぼ倍々ゲームで作れると思いました。しかし実際に試してみると、これでは演算誤差が累積してしまうようで、かなり目盛りがずれました。電子回路で増幅率を上げると、S/N比が低下する(ノイズも増える)のと、ちょっと似た雰囲気の現象ですね。そこで、起点となるゼロ度の目盛りを自分自身の場所にコピペして、角度にして1度だけ回転させておき。次に同じゼロ度目盛りを、同様に2度だけ回転させ…という具合に、すべての目盛りの線分について、原点からそのつど回転計算を実行しました。同じことを、10分の1度目盛りについても行いましたが、45度や90度、180度の集団回転コピペの場合は、特に誤差が発生しない模様で、45度分の目盛り(総計270本)を作ってしまえば、あとはまとめてコピペで大丈夫でした。
 こうして作った高度角目盛りに、10度ごとに数字を入れました。続いて2倍にコピペし、横倒しにして180度の方位目盛りを作成。こっちも数字を入れ掛けましたが、モデリングソフトが異様に重くなり、方位目盛りの数字は解像度を最低まで落とした上、30度間隔にしました。本当は10度ごとが使いやすいのですが、やむを得ません。なお、フライト・コードラント単体のacファイルサイズは、約21MBありまして、エディタで開いてみたところ、総行数は134万9846行でした。なんだか大きすぎて、ピンと来ない数字ではあります。

○カメラ位置を、再調整:
 最後に、直径60僂△辰織ーソルと回転ドームを縮小し、直径24僂坊萃蠅靴泙靴拭L楡垢蠅寮催戮世韻鮓世┐弌直径15僂任盻淑いけそうでしたが、FlightGearのビューのカメラは、あまり近くのオブジェクトを写しません。パイロット人形の頭部やゴーグルなどが、コクピット・ビューの視界を塞がないように、距離制限が掛けてあるものと思います。従って現実には、こうしたドーム型観測装置のサイズは、24僂らいが限度で、もっと小さくすると、肝心の目盛りカーソルが見えなくなります。
 本体のサイズを変更したところ、中央にある観測用ビューのカメラ位置が合わなくなり、調整をやり直しました。回転ドーム内部に作ってある調整用のXYZ軸を、いったん全長100mに拡大し、これが一点に収れんして消えるまで、カメラの上下・前後位置を調整するわけです。最初は機体をいちいち再起動し、気が遠くなるような手間を掛けましたが、ふと馬鹿げたことをしているのに気付きまして。以後は internal propertiesの数値変更機能を使って、カメラ位置を自在に動かし、10分程度の作業で誤差を100分の1ミリ以下に追い込みました。

●取りあえずの、テストと評価:
 こんな調子で「フライト・コードラント」が完成。大阪湾上空で、internal propertiesによる高度角・方位測定結果と、目盛りで計った数値を比較してみますと、誤差は最小0.006度、最大0.02度(1.2分)の範囲に収まり、目標とした1分角をほぼ満たしました。誤差原因は、ほとんどが最小目盛り以下の目測ミスと思われますので、慣れればもう少し、精度が上がるはずです。これほど手の込んだFlightGear用の装置を作ったのは初めてですが、うまく作動して非常に嬉しいです。
 また気になるファイルサイズというか重さですが、さすがに観測用ビューで目盛りを表示しますと、フレームレートが10くらいまで落ちます。しかし、なくても差し支えのないHorizon effectとSpecular highlightを切ったところ、目盛りが見えなくなるコクピット・ビューでは、最大で60フレームを維持し、満足しています。さてこれで、計測装置は手に入りました。天測計算の勉強にも一層、力が入りそうです…。
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なし 駐機場で起動する

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 天文航法の研究は、新開発のフライト・コードラント(航空四分儀)を使って、太陽の観測テストを重ねています。そのうち続報をお届けできると思います。このテストの最中に、空港内に駐機ポジションを新設する方法を発見しましたので、簡単にご報告いたします。

 現行のVer.2.0.0から、FlightGear WizardのSelect a location画面右下に、新たにParkingというコーナーが設けられ、滑走路の末端以外に、エプロンなどからも機体の起動が可能になりました。ただし、これが可能なのはKSFOなど、デフォルトで駐機ポジションが設定されている、一部の空港に限られます。私は以前から伊丹の大阪国際空港(RJOO)に、借り物の建物を並べて楽しんでいますが、もし可能ならぜひ、自分で配置した格納庫の内部などを自在に選択し、機体を起動してみたいと思っていました。
 やり方は簡単で、FlightGear/data/AI/Airportsフォルダの下にRJOOフォルダを設け、この中にparking.xmlを作るだけです。

●あれれ、ヒコーキが屋根の上に…:
KSFOなどの事例を参考に、試行錯誤の末、次のようなparking.xmlを作りました。これで「HIDE」と「FGFS」(いずれも格納庫)と「787A」(787の機体サイズに合わせて設けた、ボーディングブリッジ付きゲート)の3カ所の駐機ポジションが、メニューから選択できます。基本的には、使用機を好みの場所に駐機して、緯度経度と機首方位を確認し、数字や地点名を差し替えれば、多くの空港に適用できると思います。

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" ?>
- <groundnet>
<frequencies />
- <parkingList>
<Parking index="0" type="ga" name="HIDE" number="" lat="N34 47.6966" lon="E135 25.985" heading="143" radius="7" airlineCodes="" />
<Parking index="1" type="ga" name="FGFS" number="" lat="N34 47.8" lon="E135 26.115" heading="227" radius="20" airlineCodes="" />
<Parking index="2" type="ga" name="787A" number="" lat="N34 47.5302654" lon="E135 26.305998" heading="7.6" radius="20" airlineCodes="" />
</parkingList>
- <!-- <TaxiNodes> 34 47 48.0N-135 26 06.9E 787-34 47 31.8N 135 26 18.4E 34.79217109 135.4384333
<node index="" lat="" lon="" isOnRunway="1" holdPointType="none"/>
</TaxiNodes>
<TaxiWaySegments>
<arc begin="" end="" isPushBackRoute="" name=""/>
</TaxiWaySegments>
-->
</groundnet>
 文中、type=という項目はすべて「ga」となっており、意味が分かりませんが、このままでも別に不都合は感じられません。空港によってはここに「gate」や「cargo」の記載があり、それぞれ旅客搭乗ゲートと、貨物機用駐機場のことだと思われます。またname=には、任意の語句を当てることができますが、「HIDE's Hangar」のようにアポストロフィーを使ったりすると、エラーになります。
 緯度経度の記入は、「度」+「分の小数点表示」の書式にする必要があります。方法は、internal properties/positionから、度単位の小数点表記で書かれた緯度経度を見つけて、小数点以下だけを取り出して60で割り、それに整数部を加えればOKです。
 起動テストでは最初、機体が格納庫の屋根の上に出現(マイアルバムご参照)しまして、小学生のころに何度も、
          「ヒコーキが屋根に引っかかって、取れなくなったよ〜っ!」
と焦りまくった気分を、久しぶりに思い出しました(^^;)。
 これはVer.2.0.0から、基本的にすべての立体オブジェクトが衝突判定(および着陸)の対象になったためですが、今のところ回避の方法を思いつきません。取りあえずはマイアルバムのように、機体の位置を前に出して、しっぽだけ格納庫内にとどまるように設定変更しました。ちょっとがっかりですが、これでも「わが格納庫で、出発準備」の気分は出ます。また787のプッシュバック機能を初めて使ってみましたが、おもむろにトーイングカーを呼んで、ボーディングブリッジを離れる気分は格別です。

●絢爛豪華な「航空史月間」:
 最近いつのまにか、本サイトの「今日は 何の日?」が充実してきまして、楽しく拝見しております。5月は、リンドバーグがサンディエゴでセントルイス号を完成し、10日間でテストとニューヨーク回航を済ませ、21日にはパリに到着した歴史的な月ですけれど…お陰様で、このほかにもコメット(初のジェット旅客機のほう)就航、ヒンデンブルグ号火災、バードの北極点初飛行、航研機による日本唯一の航空世界記録樹立など、燦然と輝く記念日が目白押しだと確認できて、改めて感心しています。

 個人的には、21日の「1937 初の北極点付近着陸」に、目が吸い寄せられました。旧ソ連では1920年ごろから、熱心に北極圏で航空機を調査・探検などに利用し、大きな成果を上げています。私が小学生のころ、確か岩波書店の子供向け全集に収録されていた「北極冒険飛行」には、このころの苦労話が多数納められていました。著者は当時、ソ連の極地飛行家として有名だったウォドピャーノフです。
 この本には、ベーリング海峡からヨーロッパへ抜ける新航路を開こうとして、北極海で沈没した砕氷船「チェリースキン号」の全乗組員を氷上から見事救出するフライトや、吹雪で不時着した場合はエンジンの凍結を防ぐため、天候回復までアイドリングを続けるしかない…といったエピソードに続いて、経歴のハイライトとして紹介されるのが、くだんの北極点近傍への初着陸です。スキーを着けた大型機4機で観測隊員を運ぶお話でしたが、途中でツポレフANT-6「アヴィア・アルクティカ」号のラジエーター不凍液がナセル内に漏れ、放っておくとエンジンが一発止まるため、機関士が翼内に入って高温の液をボロ切れで吸い取り、間断なくラジエーターに戻して飛行を継続したとか、なかなかタフなストーリーでした。

 日本では戦前、原本が「北極飛行」の題名で出版され、「青空文庫」によりますと、作家の宮本百合子が一読して感動し、盛んにエッセイや書簡に引用していますが、現代では忘れられた人のようです。私も「北極冒険飛行」を除けば、1970年代に新潮社から刊行された「リンドバーグ第二次大戦日記」(上下2巻)のなかで、リンドバーグがソ連訪問飛行をした際に、パーティーでウォドピャーノフとさんざん北極飛行の話をした…という記述くらいしか知りませんでした。しかし「今日は 何の日?」にあった「アヴィア・アルクティカ」の機名を手がかりに、「Avia Arctica USSR」でググったところ、幾つもの英語文献にたどり着きまして、この北極探検機の三面図も、初めて見つけることができました。tetsuさん、ありがとうございます。
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なし 太陽の誤差を追う

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。天文航法の続きをお届け致します。
ついに…FlightGearの太陽の動きに隠された、誤差のパターンを発見しました。まだまだ全部ではないでしょうけれど、何とかシッポを捕まえました。

 現行のVer.2.0.0は、機体を起動する際、パソコンのクロックが指している時刻や、その設定がUTC(世界時=GMT)かJSTかによって、仮装の太陽の南中時刻や位置が微妙に変化します。本来は、FlightGearを午前中に使おうが夜中に起動しようが、シミュレーションの太陽の南中時刻は当然、常に一定で、今年の天測暦や理科年表に載っているデータから割り出した値と、正確に一致しないといけません。でも実際は最悪の場合、時刻にして約2分も狂うのです。南中時刻が2分も狂うと、これをもとに行った位置計算は、経度にして約30分(日本の緯度ですと、距離にして20nm弱)も狂います。さらに言えば、太陽の南中時の高度角も、パソコンを使用する時間帯によって1日1回、不連続に変化します。これはFlightGearが、ある時刻まで前日の「均時差」(天文学的データの一種。太陽の実際の南中時刻と、平均太陽時の正午との差)を引きずってしまうからですが、当日のデータに切り替わる時間帯は、経度などによって変化します。過去の天測計算に、時々大きな誤差が出たのは、主にこれらが原因だったようです。

 約3年前の挑戦では、世界各地で、異なった季節・時刻に何十回天測を重ねても、誤差のパターンがまったく読めませんでした。これは、従来の天測と計算の方法が、かなり複雑だったことも原因の一つです。そこで前回までにお話ししましたように、今年はもっとも基礎的な、太陽が南中する瞬間の高度と時刻を計る「子午線高度緯度法」を研究することにしました。最初は、できるだけ観測条件と計算方法を単純化するため、観測地もそのものずばり、グリニッジ子午線(経度ゼロの線)の真上とし、ついでにパソコンのクロックも、UTC(協定世界時=GMTと同一)に合わせてしまうことにしました。
 予備実験では、FlightGearが天体のデフォルト位置を計算するのは、FlightGear自体の起動時ではなく、機体の起動時であることが分かりましたので、パソコンのクロック設定時刻を3時間間隔で変化させながら、シミュレーション上の「noon」に機体を起動し、太陽の正確な南中時刻と高度角を測定しました。するとデータ分布に一定の傾向が感じられましたので有望と思い、クロックをJST(日本標準時)に再設定して同じ観測を行い、さらにJSTの子午線(明石市の東経135度線)を新たな観測地に選んで、同様に観測を重ねました。
 これらのデータをExcelに入力して緯度経度と誤差を計算し、グラフで比較したところ、いずれの場合もグラフはほぼ同一の、Z字型に近いパターンを描きました。どうやら…「ビンゴ」ですね(^^)/。
 誤差のパターンさえつかんだら、補正できる可能性が生まれます。誤差曲線を、完全にフラットにすることは困難でしょうが、実用上、あまり支障のない程度に抑えることは、十分に可能だと思います。

 皆さんもご存じのように、フライトシミュレーターで天文航法(別名・天測航法)を行う試みは以前からあり、すでにFlightGear用の六分儀が開発されています。英空軍のMk9気泡六分儀(バブル・セクスタント=水平線の代わりに水準器を使う型)をモデル化したもので、現在はショート・エンパイア飛行艇をダウンロードすれば、副操縦士席から起動できます(しかしダイヤル類の正しいクリックポイントが分からず、うまく操作できないので、私は自分で開発した「フライト・コードラント」だけを使っています)。
 この六分儀の作者さんは、ReadMeのなかで、Alkaid と Alioth(ともに恒星名)を使って2本の位置の線を求め、その交点から緯度経度を出したところ、実際の値に対し約40キロの誤差が生じたと述べています。これは約20nmにあたりますので、私の限られた観測結果からみても、ほぼ日中にパソコンを使った場合の、誤差の範囲内に含まれると思われ、十分に納得できる数値です。私の場合、誤差の補正テストはこれからですが、例えば5月や6月の季節ですと、「パソコンのクロックを、23時ごろにセットしてから機体を起動する」という工夫をするだけでも、恐らく経度計算の誤差を、Mk9六分儀の作者さんの半分以下に出来るのではないか、と考えています。
 では以下に、少し詳しいお話をさせていただきます。

●RAFビギンヒル基地…すべては、この丘から始まった:
 正午の太陽の観測地を、経度ゼロのグリニッジ子午線上と決めましたが、フライト・コードラント(航空四分儀)を装備したピラタスPC7改をどこに駐機するか、しばし考えました。いっそのこと、グリニッジ天文台の位置ではどうでしょう。ロンドン・シティ空港(EGLC)で起動すると、グリニッジはすぐ西です。しかしロンドン都心部に向かって、都市テクスチャーの上をタキシングするのも、リアリティーを欠いて味気ないので、南方約10nm(ノーティカル・マイル=海里。たまに定義を書くことにします)にある、英国空軍のビギンヒル基地(EGKB)を起動地点に選びました。1nmほど西にグリニッジ子午線が走っており、そこいら中が牧草地や農地ですので、上がってすぐ降りて、子午線上に機体を駐めることができます。
 余談ながら。ここはバトル・オブ・ブリテンの間、ロンドン防衛の最前線でした。猛爆に遭い「地獄のビギン」と呼ばれましたが、ここやマンストン、タングメア基地などに布陣した戦闘機集団が、数では圧倒的に優勢なドイツ空軍を、海峡の向こうに押し戻したわけですね。なので私も、ご挨拶代わりにまず、スピットファイア2型で発着を試みました。
 エンジンのかけ方が少し複雑ですが、よく分かるチュートリアルがあります。この機体は、火薬カートリッジでロールスロイス・マーリンを始動することを、初めて知りました。いったん止めて再始動する場合は、パネル右下のレバーをクリックすると、2発目のカートリッジが装てんされる仕組みです。尾輪式にしては離陸が簡単、空に上がると軽快な飛行機で、機体の迷彩によく似た大地を背にクルクル回っていると、「空軍大戦略」の勇壮なマーチが聞こえてくるような気分。アプローチではなかなか減速せず、脚が狭いので接地時の安定も悪く、うわさ通り着陸は難しいですが、ハイになれる楽しい機体です。

 本題に戻りますが…太陽の観測テストは、次のようにスタートしました。
まず、ピラタスPC7改でビギンヒルを離陸し、すぐそばの経度ゼロ線上の農地に降りて、機体を真北に向けました。経線はテクスチャーの継ぎ目で、かすかに勾配があって機体が傾きますが、搭載したフライト・コードラントは自動的に水平を保ちますから、特に問題はありません。今後は観測のため、正確に同じ場所で数十回の起動を行いますので、緯度経度を詳しく記録し、さっそくビギンヒル基地に「PrimeMeridian」(本初子午線=経度の原点を意味する、グリニッジ子午線)という名称で、parking(機体起動)地点を新設しました。以後は起動ウィザードから、一発でここへ来られます。(設定方法は、5月15日付の本連載をご参照下さい)
 また同様に、明石市北部の低い丘陵にある道路にも着陸し、東経135度0分0.0秒に機体を駐めて位置を記録して、我が母港・伊丹空港に「JstMeridian」(日本標準時の子午線)という Parkingを設けました。

●カギを握る「均時差」:
 太陽の南中時刻と高度角の測定は、できれば通年にわたって均等に、例えば毎週分のデータを取って整理したいのですが、とても無理なので、当面は観測対象を、今年の5月21日とその前後、また6月15日、10月1日など数日に絞りました。なぜこれらの日付なのかといいますと…マイアルバムにアップロードさせていただいた、「太陽の誤差を捕捉」の説明図をご覧下さい。右下に、ピンクのラインで「均時差」のグラフを入れてあります。
 均時差とは、教科書的に言いますと「視時(太陽が示す時刻。毎日異なる)から、平時(年平均を取った標準時刻)を引いた値」です。分かりやすく言いますと…地球から見た、太陽の動く速さは周期的に変化しているため、グリニッジで太陽が南中するのは、グリニッジ標準時の12時ちょうどではありません。どのくらい前後にずれているのかを、年間を通じて示したのが、均時差(標準時に対する観測値の進み遅れ)です。この値をどの程度、フライトシミュレーターが正確に再現できているかが、フライトシムの上で天文航法を行う際、経度の計算精度を、決定的に左右する要因となるはずです。
 先ほどのグラフをご覧頂けばお分かりの通り、均時差はちょっとだけ複雑な二次曲線を描いており、年間を通じて最大値と最小値のほかに、小さなピークと谷が1カ所ずつあります。今年の場合ですと、
  最大値 :11月4日の+11分26秒
  最小値 :2月12日の−14分13.3秒
  小ピーク:5月15日の+3分38.9秒
  小さな谷:7月27日の−6分32.9秒
となっています。これら最大値や最小値、ピークや谷の部分或いはその周辺では、FlightGearが示す南中時間などのデータに、それと分かる特色が出るのではないかと期待しました。データがどう変化するか、或いはしないかが分かれば、おのずと誤差を修正する方法が見えてくるはずですので、そうした狙いで、先ほどお話しした観測日を決めたわけです。

 均時差は、理科年表(ポケット版1400円、机上版2800円)に、1年分が毎日に分かれて載っています。ただし収録しているのは、UTC午前0時の値だけです。均時差は1日当たり十数秒変化するので、実世界で精密に天文航法をする場合は、観測時刻を分単位まで特定して補正計算しますが、FlightGearではアプリ固有の誤差の方が格段に大きいので、このままでも一応は役に立ちます。
(ご参考:実世界の天測では均時差の代わりに、計算に便利なように12時間を足した「E値」というデータを使います。天文航法のデータブック「天測暦」(海上保安庁が毎年発行)には、このE値とd値(デクリネーション=視赤緯:天球上の緯度に当たる値)が年間の毎日分、2時間おきに細かく収録してあります。また、さらに細かい時刻補正をするため、案分計算のテーブルも付属しており、これらを眺めていると天測計算が、いかに面倒であったか、よく分かります。六分儀による天測と位置計算は現在、消滅したわけではありませんが、すでに専用のプログラム電卓があり、ずっと簡単になっています)

●計測の実際:
 一例を挙げますと…まずWin-XPのカレンダーを開いて、タイムゾーンをUTC、日付を5月21日、時刻を午前0時にセットし、FlightGearを起動。空港にビギンヒル、Parking地点に PrimeMeridian を選び、経度ゼロの畑の真ん中に機体が出現します。
 続いて、ビューをコクピットからフライト・コードラントに切り替えて、太陽が見えるまでカメラをパンアップ。メニューバーから「Time」を起動し、太陽がカーソル(観測のため、再び真南の位置に固定としました)の直前に来るまで、時間を巻き戻し。ここでXキーを使って、カメラの画角が「FOV=3.6」になるまでズームアップ。Timeの加速を使って、太陽をカーソルに近づけ、1倍速に落とし…太陽の中心点がカーソルに重なった瞬間、ポーズを掛けてUTC時刻表示を読み、カーソルの目盛りで高度角も記録します。
 もし太陽が、UTC時刻の正午(グリニッジ子午線上の場合。明石なら午前3時)の手前で南中した場合は、いったんポーズを外し、Time操作で時間を調節して、シミュレーション時刻をUTC1159時59秒にセット。再びポーズを掛けて、マウスポインタを正確に太陽の中央に合わせます。なぜかというと…FlightGearのシミュレーション時刻が、現地ローカルの12時になった瞬間、太陽がほぼ真南から西へ、方位にして約1度、瞬時にジャンプすることがあるからです。マウスポインタを画面に置いておけば、太陽の移動距離を物差しで測り、計算で方位角に置き換えて、正確な位置を記録できます。

 5月にもご紹介しましたこのジャンプは、FlightGear内部の天体の動きの誤差を1日1回、ローカル時刻の正午にまとめて或る程度、修正するための手段だと思います。後でお話ししますように、FlightGearの経度の誤差は、正午に不連続な大変化をしますので、間違いないでしょう。
 問題は、このジャンプが真南をはさんで起こるケースです。私は「子午線ジャンプ」と呼んでいますが…太陽がカーソルの左側から右側に一瞬で飛んでしまい、南中の瞬間が計測できません。この場合は、太陽が11時59分59秒にカーソルの何ミリ左にあるか計っておいて、仮にジャンプが起きなかったら何時何分何秒に南中したかを計算すれば、実際の南中時刻の代わりに使えることが分かりました。

 ややこしいお話が続きましたが、ざっとこんな手順を経て、次に一部分をご覧に入れるような、観測メモが出来上がります。煩雑な説明は省略しますが、おおよその雰囲気は、お察し頂けるかと思います。マイアルバムにアップした誤差グラフは、すべて3時間間隔でデータをプロットしていますが、実際の観測と計算では、不連続な誤差変化が、いつ起きているか…などを調べるため、数分おきに計っている部分もあります。

▼5月21日ビギンヒル・GMT設定。
均時差は+3分27.5秒、d値は+20度4分8秒。再起動は、FlightGear本体と機体の両方で。
(その後実験して、機体の起動時間に行えばよいと判明)
clock 南中時刻    高度角 ジャンプ時刻 距離(弌傍動時太陽は通り過ぎてる。1204頃。
0時  115831時     58.62  1200時    710.94度 ローカル13時
0時07分115831時     58.83▼ここで高度角変化
0時10分115830時     58.83▼この辺で南中時刻変化
3時  115802時     58.83  1200時    67.5mm0.94度
6時  115732時     58.83  1200時    86.50.94度
9時  115702時     58.83  1200     67.5mm0.94度
1159時115634時     58.83▼子午線ジャンプはこれ以降。
12時 59秒左100.14度 58.83  1200UTC   67.5mm0.94度 子午線ジャンプ
(ジャンプがなければ、33.6秒後の120032時に南中)
    案分による12時のd値は20度10分14秒
    案分による12時の均時差は、3分25.6秒
15時 1159秒左20.02度 58.83  1200     67.5mm0.94度 子午線ジャンプ
(ジャンプがなければ、4.8秒後の120003.8時に南中)
1501時 1159秒左0.02度   58.83 子午線ジャンプ
1530時 115959時     58.83  これ以降子午線ジャンプは起きない。
18時 115934時     58.83  1200     67.5mm0.94度
21時 115904時     58.83  1200     67.5mm0.94度
2345時 115838時    58.83  1200     67.5mm0.94度

▼同じく5月21日ビギンヒル、今度はクロック設定のみJST。観測時刻はもちろんGMT。
clock 南中時刻    高度角 ジャンプ時刻 距離(弌
0時  115600時    58.62  なし(59秒でカーソル左67mm)ローカル12時にも13時にもなし。
3時  115530時    58.62  なし
6時  115501時    58.62  なし
9時  115430時    58.62  なし
9時15 115428時    58.83  なし▼9時過ぎには当日の高度角になる。
12時  115802時    58.83  なし
15時  115732時    58.83  なし
18時  115702時    58.83  なし
21時  115633時    58.83  なし
23時45 115606時    58.83  なし

●データを集計し、グラフ化する:
 約1カ月間に、ビギンヒルと明石で総計70回ほど天測しました。海文堂出版の教科書「天文航法」を頼りに、太陽の高度角から緯度を出す「子午線高度緯度法」の計算式と、太陽の南中時刻に均時差を加味して経度を出す式、それに緯度経度の誤差を算出してグラフ化する仕組みを、Excelのワークシートにまとめ。これを使って、取りあえず5月21日の観測分(クロック日付を修正し、後日計ったものが中心)のデータを、ビギンヒルと明石、それぞれUTCとJSTの合計4通りについて整理したところ、以下のような原則が見えてきました。

  (1)緯度の誤差は、起動時刻が異なっても基本的には変化しない。
     ただし午前0時から一定時間は、誤って前日の均時差が適用さ
     れるという問題があり、かなり大きい誤差が出る。
     緯度の誤差は、1日1回だけ不連続な変化を起こし、以後同じ
     値が終日続く。クロックがUTC設定の場合と、JST設定の場合
     を比較すると、不連続な変化が起きる時刻が、両者の時差の
     9時間分だけずれる。
  (2)経度の誤差は、午前0時が最小で、以後正午までプラスの値
     を取り直線的に増加する。正午に不連続な変化を起こし、誤差
     の値がマイナスに転じて極小値を取り、以後は夜半まで直線的
     に増加する。午前0時前には再び、誤差がほぼ最小に戻る。
  (3)均時差が、大きな変化率で減少中の6月15日や、年間最大値の
     直前となる10月1日でも、グラフの形は、これとほぼ同じにな
     る。ただし、経度の誤差の値は変化する。また緯度の不連続な
     変化の量と、発生する時刻も変化する。

…こんな次第で、まだ年間を通じ、未確認の季節変化や観測地点による変化が多々ありそうですが、基本的には非常にリニアな形で、誤差のパターンが見えてきました。

●ようやく、実用テストが目前に:
 本連載を長くお読み下さった方はご存じのように、私は08年の秋、FlightGearによる世界一周フライトで南米を通過中、初めて天文航法に挑戦しました。当時は、かなり正確に位置が出た直後、いきなり大きな誤差が飛び出して、途方に暮れました。誤差の構造が全く見えず、いくら仮説を立てても検証するたびに覆り、まるで蜃気楼を追いかけているような気がしたものです。
 今回は意識的にアプローチを変え、かなりマシなところまで来れたようです。とは言え、実用化までには、まだ何が起きるか分かりませんが…(^^;)。この調子で天文航法が、或る程度リアルに再現できますと、GPSの不便(かつロマンチック)な代用品にはとどまらず、フライトシミュレーターの、より奥深い味わいを発見する、新たな手段になりそうな予感がします。
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なし 飛行場灯台を改造する

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 FlightGearでは、地域によっては空港が地形テクスチャーに紛れて、大変判別しにくい場合があります。数年前に「縦回り世界一周」で立ち寄った、カンボジアのプノンペンなんか特にそうで、ほぼ真上に来ているはずなのに、数分旋回してもなかなか滑走路が見えず、非常にイライラしたものです。私は今後も推測航法や地文航法、また可能なら天文航法もしばしば使うと思われ、となるとファイナル・アプローチは有視界ですから、空港が見えにくいままでは、かなり困ったことになりそうです。

 かつて使ったMSFS2000は、計器の目盛りや空港灯火類のコントラストを、思い切って上げることで、大幅に視認性を稼いでいました。確かに見やすいのですが結構どぎつくて、見た目の美しさはFlightGearに軍配が上がると思います。それはいいとして、どこをどう改良したものでしょうか…。
 折しもいま、Hydeさんやtoshiさんが「各種ライティングの設定について」で、灯台の視程などのお話を展開されています。これに触発される形で、今回はABN(飛行場灯台)に手を加えて、大幅に視距離を伸ばしてみることにしました。あちらではちょうど、着陸灯の話題が佳境に入りつつありますので、こっちに書かせていただくことにします。

●どうやって明るく見せるか:
 本物の灯台は、もちろん光量を上げれば視距離が伸びます。ただしフライトシミュレーターでは、液晶画面の真っ白な画素以上に明度を上げられませんので、灯火の視認性を上げるには、発光を示す画像の面積を大きくするか、コントラストを上げるしか、基本的には手がありません。FlightGearの飛行場灯台は、デフォルトでは次のようになっています。
 発光を表す円盤:名称はFlash。直径20m(視程1000m以下)と50m(同16000m以下)の切り替え式。
 光の回転コーン:名称はHalo。全長100m。視程は0〜750mのみ。
 その他、近距離でHead(回転灯器)やMast(塔)を表示。

 手始めに、FrightGear/data/Models/Airport/rot-bcn-2.rgb(Flashのテクスチャー)をGIMPで開いて、薄ぼんやりした白い光の像を、ブラシツールで濃く大きく加工し、周囲の透明部に、不透明度33%の黒い隈取りを描き添えて、コントラストを上げました。ロンドン郊外・ビギンヒル空軍基地でテストしましたが、たったこれだけの改造でも、かなり視認性が改善されます。
 コントラスト強調後は、3nm以下ですと、隈取りまで見えてしまい、くどいくらい鮮やかです。4nm離れると快適に感じられ、6nm離れると小さすぎて、空港の場所を知らないと見つけにくい感じでした。
 最適な距離と感じられた4nm(約7400m)では、直径50mのFlash画像が使われているので、Flash直径の約150倍の視距離が適正らしいと分かりました。となると、ひとまず最大で40キロ(20nmあまり)の視距離を目標としましたので、Flashの最大直径は250m必要です。これは非常にでかいので、デフォルトのFlash2段階切り替え式を、4段階にした方がいいと判断。デフォルト部品をコピペして、新たに120mと250mのFlash円盤を作り、3Dオブジェクトに追加しました。次にbeacon.xmlを書き換え、視距離に応じてFlashのサイズを次のように切り替えるよう設定。なおFlash円盤は当然、緑と白の2種類があります。
1000mまで :直径20m(既成のFlashを改造)
7000mまで :直径50m(同上)
18000mまで:直径120m(新たに作ったFlash)
40000mまで:直径250m(同上)
 …4段切り替え式は、なかなかいいアイディアだと思ったのですが、記述ミスがあるらしく、新しいFlashのうち、白い方が発光しませんでした。結局はFlashを当初の2枚に戻してしまいましたが、直径は120mと250mに大型化し、20000mで切り替えています。わくわく気分で、テストに移りました。

●光のコーンは、衝突するし風も起こす:
 戦前の英空軍の、タイガーモス練習機によく似た、スタンプSV4複葉機でビギンヒル空軍基地を飛び立ち、2nmほど都心寄りを9000ftで飛びながら、機首をあちこちに向けて、ロンドン近郊の空港灯台を探します。テスト結果は非常に良好で、ロンドンシティ空港も、はるか彼方のヒースローも、ガトウィックもレッドヒルも、ばんばん見えてしまいました。ただし…至近距離で見るFlash円盤は巨大すぎて、とくに白い発光の場合は、ドイツ軍の爆弾が70年ぶりに、ビギンヒルに落ちたような眺めです(笑)。
 そこで0〜5000mではFlash円盤を作動させず、Halo(コーン型の光芒。回転ビーム)のみ表示することにしました。もちろん実際は、黄砂か霧がない限り、真っ昼間にHaloが見えたりしませんが、バクダンよりマシです。これで完成と喜んでいたら、不思議な現象に出会いました。離陸後まもなく、機体が滑走路上空、高度100ftかそこらで、不意に空中停止してしまうのです。
 最初は、FlightGear本体かパソコンのトラブルと思い、頭を抱えましたが、あれこれ調べているうちに、機体が灯台の光(Halo)に接触して、衝突判定を食ったことが分かりました。私はHaloを全長1000mに拡大しましたが、これによって滑走路の真上は、ブンブン回転する「長さ1キロの棍棒」に脅かされることになったわけです。また滑走路端に駐機中、Haloが頭上を通過すると、ウチワであおがれたライトプレーンみたいに、機体がぐらぐら揺れまして、機首方位も段々ずれてきます。FlightGearの世界では、巨大なオブジェクトが運動する場合、風圧効果が生じるのですね…知らなかったなぁ!

 一部の機体には、同じく円錐形の着陸灯の光が付いており、これが滑走路表面に接触しても、何も起きないのですから、Haloの場合も衝突判定を解除する方法があるはずです。が、私には見つけることができませんので、Haloが表示される距離を1030m〜5000mに再設定しました。なぜ全長の1000mに30mを加えたかと言いますと、灯台までの距離を測る機体側の基準点が、機首の先端なのか、或いは機体内部にあるXYZ軸の原点となるのか分からなかったので、安全マージンを見込んだ次第です。

 マイアルバムに簡単な説明図と、灯台の見え方をアップロードしておきます。実際の飛行場灯台は、もっとピンポイントで鋭く光るのではないかと想像しますが、現在できるのは、こんなところです。これまでは、着陸して初めて灯台に気付くことが多く、事実上単なるアクセサリーでしたが…ようやくこれで、実用的なレベルになってきたかと思われ、今後のフライトが楽しみです。

●飛行場灯台の視認距離について:
 もう一点、忘れていました。実世界では飛行場灯台は、どの程度遠くから視認できるか、ですが。
「Aerodrome beam light」などでググったところ、米国サクラメントのFlight Lightという会社のHPがヒットし、製品一覧が出ていました。どれも規格は Visibility 40 miles, 400,000 candlepowerです。40nmの視程は夜だけなのか昼間もそうなのか、これだけでは分かりませんが、ずいぶんよく届くものですね。ちなみにキャンドルパワーという明るさの単位は、かつて使われた「燭光」のことで、現在の「カンデラ」と事実上(小数点以下2けたまで)同じです。
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なし GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 今回から、久しぶりに旅を始めます。
ロンドン南方のビギンヒル空港を離陸し、東欧からロシア方面を越えて、大阪の伊丹空港に帰着する予定です。主に天文航法や地文航法の実験・研究をしながら飛ぶつもりですので、コースの正式な起点は、世界の経度の原点となった、ロンドン・グリニッジ公園内の旧王立天文台上空。ゴールは、東経135度の日本標準時子午線が通る、兵庫県明石市上空です。従って名称も、
        「GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅」
としました。総飛行距離はたぶん、以前行った世界一周フライトの3割くらいでしょう。

 天測に使う、六分儀代わりの自作フライト・コードラント(航空四分儀)は改良を加え、南北両半球の任意の天体はもちろん、地上目標の方位や仰角と俯角も、簡単に計れるようにしました。これを使えば天文航法だけでなく、島や灯台などの方位を計って、複数の「位置の線」を地図に描き入れ、交点を自分の位置とする「クロスベアリング」などが可能になるはずです。このクロスベアリングは、船舶で使う複雑で本格的な地文航法の、基礎技術でもあります。
 フライトシミュレーターの地文航法は、平たく言えば「地図と地形を照合しながら飛ぶ」技術ですから、カーナビ普及以前のドライブや二輪ツーリングと感覚的に似ており、FlightGearで実施可能な各種のナビゲーションの中でも、特に楽しいものの一つです。先日、Hydeさんやtoshiさんと進めたABN(飛行場灯台)の改造が大成功で、非常に遠距離からの視認が可能になりましたので、地文航法を使った有視界飛行は今後、大きく前進しそうです。

 さて使用機ですが、この種の航法にはあまり高速機は似合いませんし、不便でもあります。そこで今回は、扱い慣れたピラタスPC7改に加えて、私の好きな戦前の練習機であるスタンプSV4複葉機にも、新たにフライト・コードラントを装備しました。今回の旅は、古典的なナビゲーション技術だけに特化するわけではありませんが、取りあえずはこの両機で、ヨーロッパ地域の旅を開始します。
 以下に初回のナビゲーション・ログを挙げておきます。飛行コースの設定は、各空港・中継地の緯度経度を調べて、航法フリーウェア「vertual E6-B」で方位と距離を出すのが、もっとも正確な方法ですが…今回はAtlas画面を開いて、出発地に本連載の定番フリーウェア「斜めものさし」の原点を置き、次の中継地にカーソルを合わせて、飛行ベクトルの方位と長さを直読するという、お馴染みの簡略な方法を使いました。これでもそこそこの精度が出ます。
◎ビギンヒル空港EGKB
   ▼353度9nm
△グリニッジ天文台上空
   ▼112度20nm
◎ロチェスター空港EGTB
   ▼約125度28nm
△フォークストン市。東隣がドーバー。
   ▼93度94nm
◎フランス・ダンケルク市。すぐ東にベルギー領KOKSIJDE空港EBFN(読みは「コクスアイデ」)
   ▼112度35nm
◎ベルギー・コルトレイクのWEVELGEM空港EBKT
   ▼84度49nm
◎ブリュッセル国際空港EBBR


●出発直前まで、天測とリアルウエザーのトラブル:
 さてロンドンのすぐ南、ケント州のビギンヒル空港で、スタンプSV4を起動します。(本連載では以前、ここを「英空軍基地」と表現しましたが、現在は基地ではなく、すでに民間企業が運営するジェネラル・エビエーションの飛行場になっていますので、謹んで「空港」と訂正させていただきます)
 出発に先立ち、解決すべきトラブルが2件ありました。
まず、ピラタスPC7改から急いで移植した、フライト・コードラントの調子が悪くて、太陽の高度角から割り出した緯度が、約2度も狂ってしまうこと。さんざん調べましたが原因不明で、一時はスタンプの使用を諦めかけましたが、応急措置として internal properties の pitch-offset-degを使って、太陽の高度角を計ることにしました。専用のビューを一つ、リアコクピットの少し後上方に新設し、南中時の太陽を狙って計算したところ、緯度経度とも、わずか2nm程度の誤差に収まりました。やれやれ!

 次いでもう一つ、リアルウエザーが効かない、という切実なトラブルも。
これはすでに、半年ほど続いていまして悩みの種です。FlightGear Ver.2.0はこの冬を境に、私の環境(Win-XP SP-3、Geforce GT240M)では、実際の天候を反映しなくなりました。たまたま北極飛行の最中だったもので、サービスエリア外かと思って、気付くのが遅れましたが、その後ずっと不作動のままです。最初は、Cドライブの丸ごとバックアップを使って、リアルウエザーが確実に動作していた、昨年9月時点の起動環境を再現したのですが、全く効果なし。常に、
        Error: connect() failed in make client_socket()
        SG_IO_OUT socket creation failed
というメッセージが、繰り返し出現します。そこで、
        http://wiki.flightgear.org/Howto:_Fetch_live_aloft_data
        http://www.flightgear.org/forums/viewtopic.php?f=27&p=118176
…上記のWikiや本家フォーラムを参照して、Advanced OptionsのInput/Outputに設定を追加したり、Networkのproxy設定に「58.17.71.121:8080」と書き込んだうえ、Windowsのファイアーウォールに「8080」の例外設定を設けたりしてみましたが、見当はずれらしく、さっぱりダメでした。最後の望みを新バージョンに託し、取りあえずは試験的にv20110530をインストールしたものの、ほぼ同じメッセージが出ます。

 METARが自動受信できないなら、手動でデータを入れるという応急手段もあります。しかしEnvironmentメニューのWeater Scenario欄は、コピペを受け付けない設計になっており、NOAAで見たデータを全文タイプしなければならず、いささか煩雑に思われました。となると最低限、せめて風と雲の状態だけ、メニューからの選択で設定する手が残されます。これも、いざMETARの通報式を毎回読もうとすると、結構知らない略語だらけで、自分の不勉強を思い知らされました。
 あれこれ探していたら、非常に便利な情報サイトを発見。以下がアドレスです。
        http://ja.allmetsat.com/airports/index.html
 これは最新のMETARとTAF(予報)が、日本語訳で読めてしまう…という、素敵なホームページです。「天気予報」のタグを選択し、世界地図を順次クリックして、出発地や中継地の空港ボタンにたどり着けばOKです。全世界4000以上の空港が対象で、むろん機械翻訳ですが、書式と用語が定型ですので、ほぼ誤訳の心配はないでしょう。飛行経路に沿って時々、新しいデータを参照すれば…天候の激変には対応できないものの、取りあえず「現在の天気」を追って飛べそうです。やれやれ、これでやっと、旅ができることになりました。

●グリニッジ子午線を越えて…遙かなる明石へ:
 さっそく滑走路上で、上記サイトからビギンヒルを選択し、天候を確かめると…西の風8Kt、高度2000ftに雲量fewの好条件。燃料は満タン。一番最初の計画ではヒースローから離陸するつもりだったのですが、グリニッジから結構遠く、鈍足のスタンプSV4で今さら、そこまで回り道をする気にはなれません。えーーい、このまま行ってしまえ!!
 私は最初の天測を、ベルギー海岸の少し手前、ダンケルク沖あたりの北海上空で行うつもりでしたので、出発時間は正午から逆算して、UTCの1040時(地方時は1140時)にしました。勇躍ビギンヒルを離陸し、高度1900ftで北へ10nm進みますと、テムズ川が「ひ」の字型にカーブして、南へ大きく張り出した地形に差し掛かります。カーブの北岸が、17世紀に拓けた「ドック地区」(造船・港湾・海軍施設ゾーン)で、南岸がグリニッジ地区です。実世界ではここに1675年、航海術の研究のため王立天文台が設けられ、初代台長が観測に使った小さな旧館を通過する経線が、のちに世界の経度原点である「本初子午線」になりました。
 離陸後10分弱で、グリニッジ公園を示す緑のテクスチャーの上空に達しまして、HUDで経度ゼロのラインを確認。さあ東経135度…遙かなる明石へフライト開始。東へ変針し、川岸のロンドン・シティ空港を通過して、20nmかなたのロチェスター空港に機首を向けます。私の環境では今回から、全空港がABN(飛行場灯台)を点灯していますので、一発で位置が分かります。なんて便利なんだろう…と、しばし自画自賛(^^;)。

 さて。わざわざグリニッジ上空を飛んでみたのは、今年の春に「経度への挑戦」(デーヴァ・ソベル、角川文庫、590円)という、実にエキサイティングな本を読んだからです。この本は、18世紀に独学で時計作りを学んだ天才職人、ジョン・ハリソンが40年を費やして完成した、世界初のクロノメーター(月差10秒で、初期のクォーツ腕時計並み!)の開発物語です。言うまでもなく、経度を正確に計算するには、一般的には非常に正確な時計が欠かせません。
 ハリソンはこの時計のため、現在の精密機械にも必要不可欠なボールベアリングを発明し、酷寒や暑熱にさらされる部品の熱膨張を補正するバイメタルを考案するなど、大変な努力を重ねたのですが、本書はこうしたディテールを詳細に追うだけでなく、同時期の他の研究や時代背景について、たっぷり紹介しているのも魅力です。ハリソンの航海時計の最大のライバルは、月などの天体観測によって経度を算出する「月距法」で、精度不足のために結局、実用化はされなかったのですが…ガリレオ・ガリレイやカッシーニ、アイザック・ニュートン、そして彗星の回帰計算で名高いエドモンド・ハレーら、実にそうそうたるメンバーが、月距法の研究に参加していたのは驚きでした。そういえば、チャールズ・バベッジが19世紀に歯車式コンピューターを設計したのも、天測暦の計算ミスを無くすのが動機だったそうですね。イギリスの学術研究は、必ずしもアカデミックな好奇心だけが推進力ではなく、ずいぶん多くの部分で、国家の生命線だった航海術と深い関わりを持っていたんだなと、改めて思いました。

●北海上空をベルギーへ向かう:
 1100時、ロチェスターの空港上空を通過。振り返ると、ロンドンと周辺に広がる十数カ所の飛行場灯台が、わずかなタイムラグを挟んで、呼び交わすように明滅しています。「貴機の航行安全なるを祈る」と、出発を祝っているようにも見え、久しぶりの長旅に、我ながら相当舞い上がっていることが分かりました(^^;)。
 針路は約130度。出発前になって、スタンプSV4の計器類の不備を思い出し、あわてて磁気コンパスを取り付けたうえ、計器を発光式に改造したのですが、このコンパスは飛行中に方位カードが盛んに動揺し、なかなかリアルですが読み取りにくいため、ときどきHUDで真方位を確認しました。
 眼下には高速と鉄道が、南東のフォークストンやドーバー方面へ延びており、基本的には、これに沿って飛べば楽勝です。なんだかバイクで東京から、第三京浜や横浜新道を使って、湘南海岸に抜けるような気分ですね。気になる燃費は10.8nm/galくらい。タンクには約20galしか入らないので、200nm程度しか飛べない計算です。90Ktに減速しても2000回転で10,95nm/galと、あまり改善されません。タンクの容量増が必要かも知れませんが、ヨーロッパは着陸地が多いので、当面このまま行くことにします。

 1116時、英仏海峡に面したフォークストンの上空に到着。ここでMRTARを参照して、イングランド東端に近いマンストン空港EGMHの天候を見ると、雲高が3000ftまで上がっていました。私も雲のレイヤーを調整し、ついでに雲底のすぐ下まで上昇して、隣町のドーバーへ向かいます。
 1121時、ドーバーの無線塔を通過。私がFlightGearで、最初にドーバー海峡を越えたのは2007年の11月で、世界一周の途中、ブレリオの海峡初横断を再現する試みでした。当時は携帯ノートのためグラフィック能力が低く、視界を10nmくらいに落としていたため、海の中に乗り出すと陸岸は見えず、真後ろに昇るコンパス代わりの朝日を振り返りながらのフライトでした。現在は約100nm先まで見えて、フランス突端のグリネ岬も視野に入っており、同じ海峡がずっと狭く感じられます。
 1123時、ドーバー市街から、フランス東北端のダンケルクに定針し、いよいよ海峡上空へ。コースは真方位で93度。せっかく追い風を7Ktもらっているので、対気速度を75KIASに落とし、燃費が11.24nm/galまで改善されました。というわけで北海の上に出ましたが、左にイギリス、右手にフランスがたっぷり見えているので、緊張感はありません。カレー・ダンケルク空港の灯台も視界内です。1130時、マンストンとダンケルクの灯台を結ぶ直線上を東へ通過。さっそくAtlas画面をFlightGear非連動で起動し、地図代わりにして現在地を確認しました。20nm以上離れた、マンストンの飛行場灯台がまだ明瞭に見えます。これなら天候さえ許せば、鈍足かつ航続距離の短い複葉機でも、空港密度の高いヨーロッパは、地文航法だけで飛べてしまいそうです。

●フライト・コードラントと灯台を使って、位置の線を出す:
 1150時、ダンケルク市が右アビーム(真横)に見え、コースを65度に変更。ここは第二次大戦冒頭、敗走を重ねた連合軍がドイツ軍に追いつめられ、英海軍の艦艇はもちろん、民間の遊覧船やボランティアのヨットまで参加して、必死に英本国へ兵士をピストン輸送した、あの有名な「ダンケルク撤退」の舞台です。機上からイギリスを振り返ると、まだマンストンやドーバーが見え、なるほど近いですけれども、ドイツ空軍が一番元気な時期に、潮流の速い外海を片道40nm近く航行するのですから、小さな船艇にとっては、楽な航海ではなかったことでしょう。
 1153時、ベルギー領内の飛行場灯台が二つ、はっきり見えるので、フライト・コードラントでそれぞれ方位を測定。オーステンデ空港EBOSが79度、コクスアイデ空港EBFNが120度に見えました。本来は航空図に記された両空港から、それぞれ測定した角度の反方位にあたる直線を引くと、その交点が現在位置です。いわゆるクロスベアリングですが、私の場合はAtlas画面の中心にフリーウェア「斜めものさし」を置き、両空港を交互にカーソルで指して、「斜めものさし」の示すベクトル方位が、それぞれ79度と120度になる機体位置を探りました。こうするとAtlas画面中心の+マークが、先ほど申し上げた「交点」にあたる位置にプロットされますので、Atlasのデータウィンドウから、緯度経度を直読することができます。結果は北緯51度9分4秒、東経2度29分5秒で、HUDで確認した正解と比べますと、南へ約0.5nm、東へ約0.3nmずれただけでした。想像以上に高い精度で、これは使える!と思いました。

 お次は天測です。
1201時02秒、太陽が南中。高度角はカーソル目盛りで62.40度、pitch-offset-degでは62.253度。南中の数秒前から薄雲が太陽の前を走り始め、「えーっ、嘘だろ!?」と、ハラハラしながらの観測になりました。地文航法のため高度を下げていましたが、天測前には雲の上に出るべきだったですな。
 うまく太陽は見えましたが、緯度経度の計算値は、北緯51度13分33.4秒-東経2度43分47.7秒で、正解と比べますと緯度は約20nm、経度は恐るべし約50nmもずれています。離陸前のテストは好調だったのに、どうして本番で大ハズレをしたのか、今のところ謎です。パソコンのクロックが飛行中に0時を越えて翌日になったため、念を入れて翌日分の天文データでも再計算しましたが、わずかに誤差が縮んだだけでした。まったく天文航法は、一筋縄ではいきません。

●「アトミウム」を飛び越え、ブリュッセル空港へ:
 1205時、北海からベルギーの陸岸に入り込んで、オーステンデ空港上空を通過。ここのMETARを調べると、西北西の風5Kt、雲は4000ftにfewで、相変わらず上天気が続いています。眼下は見渡す限り平らな農地で、豊かな楽園といった感じ。なるほどこれが、フランドル地方ですか。地図代わりのAtlas画面上でコースを計り直すと、きょうの目的地・ブリュッセルの中心までは111度60nm。到着予定は1250時ごろと分かりました。今日初めての風力補正計算をして、コースを右に2度修正しておきます。

 1217時。南東への旅を続けて、ブラッケフェルト空港EBULの南を通過しましたが、ここだけは飛行場灯台がありません。また緑の四角い巨大ビルがあって、どうも様子が変です。好奇心に負けて低空で近づくと、緑の巨大オブジェクトは、どうやらビルではなくて森のつもりみたいです。GoogleEarthで調べると、ここは森を切り開いて作った小飛行場で、滑走路と誘導路の間に森林が残してあります。誘導路は短く枝分かれして、明らかに軍用飛行場。滑走路には着陸禁止を示す×マークが見え、すでに廃港なので灯台がないのだと分かりました。反転して1224時、ほぼもとのコースに復帰。
 飛行コースに戻ってから、ブリュッセルへ延びる道路を第一の位置の線、振り返ってブラッケフェルト空港が見える方位340度を第二の位置の線として、地図上でだいたいの機位を出し、さらに続航。平野のあちこちに、発電用の風車が散在しておりまして、FlightGearのヨーロッパでも、再生可能エネルギーは注目を集めておる様子です。1237時、かなたにうっすらとブリュッセル空港の灯が見えました。

 1248時、ブリュッセル市街地の外れにある「アトミウム」上空を通過。9個の球体(直径18m)をパイプ構造の通路でつなぎ合わせた、高さ約100mの銀色に輝くオブジェクト…というか、展望台やレストランのある建物で、1958年万博のパビリオンです。小学生のころ、ちらりと写真を見ましたが、一体どこの何なのか、ずっと疑問でした。ブリュッセルのシンボルの一つで、実は鉄の結晶構造を1650億倍に拡大した模型でもある、とは今回初めて知った次第です。大阪の「太陽の塔」と趣旨は同じですが、岡本太郎的な野性のエネルギーはありません。(ただし、ずっと知的で上品かも)
 アトミウムの先に空港が見えており、またまたMETARで天気を確認すると、風が方向不定の2Ktに低下しており、雲はfewで4000ftのまま。天気には実に恵まれた日でした。鼻歌気分でファイナルアプローチに入りましたが、速度と高度がなかなか処理できません。ふと気付くと、スロットルがほぼ全開のまま戻らなくなっていました。このトラブルは、ブロンコとピラタスPC7改でも1、2回起きていますが、いつなぜ起きるかは不明です。とっさにオートパイロットの速度設定を変え、パワーを自動で約20%まで絞り、何とか滑走路にたどり着いて、またも速度設定でエンジンをアイドルに落とし、しっかり減速して機首を上げ、ほぼ完全な三点着陸に成功。そのまま惰性で誘導路に滑り込み、エプロンに駐機しました。エンジンが止まらないので、燃料をカットして強制停止し(この場合、再起動は不能)、無事に飛行計画終了。燃料残は26.4Lbs(4.4gal)と、ややギリギリでしたが、天測不調と最後のスロットル故障を除けば、充実感のある、いいフライトでした。

●ようやく、グラウンド・ループを克服:
 私は以前から尾輪式の機体が苦手で、着陸時にはほとんど、大なり小なりグラウンド・ループを起こしておりましたが…今回、かくも鮮やかに降りられたのは、飛行場灯台のテストに尾輪式の機体を使って、結果的に相当な回数の発着訓練を重ねたからです。数機をダウンロードしてテストしたところ、操縦性の鈍いフォッケウルフ44複葉練習機とボーイング・ステアマン複葉機が比較的、グラウンド・ループを起こしにくいことが分かりました。
 両機で自信を付けたあと、好きなスタンプSV4に戻ったところ、私はもうほとんど、グラウンド・ループを起こさなくなっていました。コツは、しっかり減速して機首を高く上げ、尾輪から先に降ろすつもりで接地することです。上げ舵を使い切る場合は、重心位置をやや後退させるとよいようです。なお単葉機では、v20110530に同梱されている新しいパイパーカブJ3が、非常に直進性を高めてあって、とても操縦しやすくなりました。
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なし Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-7-14 1:09 | 最終変更
toshi  長老   投稿数: 1143
hideさん、こんばんは。
toshiです。

引用:

…上記のWikiや本家フォーラムを参照して、Advanced OptionsのInput/Outputに設定を追加したり、Networkのproxy設定に「58.17.71.121:8080」と書き込んだうえ、Windowsのファイアーウォールに「8080」の例外設定を設けたりしてみましたが、見当はずれらしく、さっぱりダメでした。最後の望みを新バージョンに託し、取りあえずは試験的にv20110530をインストールしたものの、ほぼ同じメッセージが出ます。

hideさんの投稿を読んで初めて、METARの更新が出来なくなっていることを知りました。

まず、pingを打っても反応しなくなったproxyサーバは使用できないようです。
>ping 58.17.71.121

Pinging 58.17.71.121 with 32 bytes of data:

Request timed out.
Request timed out.
Request timed out.
Request timed out.

Ping statistics for 58.17.71.121:
    Packets: Sent = 4, Received = 0, Lost = 4 (100% loss),

http://www.emmerich-j.de/FGFS/METAR-fix.html
を参考にして、
--proxy=118.97.208.186:8080
としたところ、FlightGear v2.0.0 on Windows XP で正常にMETARを受信できました。

なお、私の環境では、Windows ファイアウォールの設定は特に変更する必要はありませんでした。

以上、ご参考まで。

参考記事
http://wiki.flightgear.org/FlightGear_Newsletter_November_2010#Known_problems
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なし Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅

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hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
toshiさん、こんにちは。
 hideです。METARの更新について、ご教示を大変ありがとうございました。ご案内のサーバを選択したところ直ちに解決し、ちゃんとベルギーの「ナマの風」(?)が吹くようになりました。
 この問題は、半年あまり出口が見つからなかったので、とてもホッとしています。天候データは、しばしばフライト中の地域の風土を感じさせてくれますし、昨年3月に本連載でご報告した、南極大陸の「カタバ風」(カタバティック・ウインド=厚い氷床で冷やされた大気が起こす、大陸規模の斜面下降風)のような、特殊な気象現象も部分的には再現しますので、METAR自動更新は、仮想の旅の味わいを増してくれる、捨てがたい機能と言えそうですね。

 英独2カ国語で書いてある「METAR-FIX」のHPは、以前一度参考にしたことがありますが、内容が古くなっていたようで、その時点では役に立ちませんでした。またFlightGear Newsletterのご案内も、ありがとうございます。これによると確かに、以前から問題があったようで、本家フォーラムに相談の書き込みが散見されたのも納得です。
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なし オランダ天測の旅

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-7-24 11:35 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 前回はロンドンから、スタンプSV4複葉機を駆って日本への旅に出発し、ベルギーの首都ブリュッセルに到着したところまででした。私が旅の間に実用化をめざしている天文航法は、最初の航程では大きな誤差が出てがっかり。しかし、必死に頭を振り絞ったところ、FlightGearの「時間」に関する設定のなかに、過去5年半に一度も使ったことのない機能が、一つあることに気付きました。さっそく試したところ…なんと、緯度経度の計算精度が劇的に改善され、実用的なナビゲーションに使えるレベルまで、一気に手が届いたのです。

 このまま精度が安定するのかどうか、まだ分かりませんが、今回はブリュッセルからアントワープを経由し、オランダの首都アムステルダムへ向かうフライトを通じて、この「天文航法、大躍進!」のご報告をさせていただきます。ちなみにアムステルダムのスキポール空港は、FlightGear世界でも指折りの素晴らしい出来映えで、とても感心しました。(マイアルバムもご参照ください)
 では、旅日記を始めましょう。

●天文航法に漂う、手詰まり感:
 ブリュッセルでは出発前、天測結果が比較的安定している、ピラタスPC7改を主に使って、地上や空中で、太陽の観測と計算テストを重ねました。緯度の誤差は+1分30秒くらい(距離にして1.5nm内外)の場合が多く、ほぼ実用レベルと呼んで良さそうです。ただ経度は相変わらず不安定で、しばしば数十分の誤差が出ました。
 以前お話ししましたように、私がFlightGearで太陽の南中高度と時刻を計る場合、機体起動時にパソコンのクロックが何時を指しているかによって、機位の計算誤差が大きく変化する…という、不思議な現象が起きていました。しかし緯度経度の誤差をグラフ化すると、常に同じパターンに収束したため、仮に誤差の原因が突き止められなくても、機械的に実験を重ねて適切な修正値を得れば、ほぼ実用レベルの精度が得られるだろう、と考えていました。例えば私の環境では、FlightGearの太陽はしばしば、南中の直前や直後に西へ約1度、瞬間的に移動(ジャンプ)しましたが、これは24時間の太陽の動きの累積誤差を、まとめて調整する機能ではないかと考えて、試しに太陽の飛んだ距離(約1度)を2で割って経度の計算結果に足すよう、Excelの天測計算シートを改良してみたところ、5月〜7月半ばのカレンダーから数日を選んで日付と時刻を合わせるサンプルデータテストでは、かなりうまく緯度・経度計算が合いました。しかしその後もテストを重ねたところ、次第にこれが見せかけの安定であったことが分かり、特に経度計算には大きなエラーが不規則に発生して、まだ何か本質的な誤差要因を、見落としていると思われました。

 正直、手詰まり感が出てきたので、気分転換にまず、フライト・コードラントの細かな改良に手を付けました。ついでに天体観測のカーソルや、方位目盛りなどの部品を体系的にグループ化し直し、グループ名と同じファイル名で個別に保存して、全部品をアッセンブリー化しました。
 オブジェクトを改造する場合は、まず3Dモデリングソフトでファイルを開き、操作を加えるべきパーツを、マウスで選択することになります。が、これが細かい作業でして…最初は、うっかり部品の位置をずらしたり、壊したりしたものです。しかし、個々のオブジェクト名やグループ名がきちんと管理してあれば、名称の入力で一発選択できます。或いはコードラントをどんどん分解して、改造する部分以外を消去してしまってから、残った部品に手を加えるのでも構いません。そして改造を終えたパーツに、保存してあったアッセンブリー部品をどんどんマージしていけば、そのつど新品のコードラントが組み上がり、作業に起因する新たな誤差や欠陥を含まない完動品が、間違いなく手に入る…という次第です。これで改良作業は非常にシステマチックになり、我ながらいいアイディアだと思いました。(開発に慣れた方々には、この種の用心はもちろん常識でしょうけれど)
 こんなことをしている間に、かなり元気が出ましたので、さっそく旅を再開。天測の誤差解明も、そのうち手がかりが見つかるだろうと思い、ともかく気分を前進モードにします。

●スタンプSV4のふるさとへ:
 例によって、航法計画からご覧に入れます。
◎ブリュッセル国際空港EBBR 偏差ゼロ
   ▼355度17nm
◎アントワープ空港EBAW 偏差ゼロ
   ▼344度17nm
◎Woensdrecht空港EHWO 偏差ゼロ
   ▼7度30nm
◎ロッテルダム空港EHRD 偏差ゼロ
   ▼30度25nm
◎アムステルダム・スキポール空港EHAM 偏差ゼロ

 このコースの特色は、たまたま磁気偏差が存在しないこと。つまり磁気コンパスで読んだ針路が、換算なしに、そのまんま真方位になるという、実にありがた〜い区間です(^^;)。
 toshiさんのお陰で先日、晴れてリアルウエザー機能が復活しまして、この日は風向不定の2Kt微風、雲なしという上天気。スタンプSV4を満タンにしてUTC-1100時に離陸。ぐるりと旋回し、ブリュッセルをあとにします。ABN(飛行場灯台)が周囲に10カ所くらい見え、改めてヨーロッパの空港の多さに感心しました。長期にわたり「先進国」であり続けた社会の、インフラの厚みを感じます。
 ブリュッセルは、戦前から60年代まで続いた長編マンガ「タンタンの冒険」シリーズの、発祥の地。実際に訪れたことはありませんが、小学生時代と大人になってからと、このマンガに二度惚れした私としては、軽い親近感を覚える街です。タンタンは、高校1年くらいの気さくな少年で、職業はジャーナリスト。愛犬と世界中(や月世界)を旅して回るのですが、さんざん冒険や謎解きを楽しむ一方で、ほとんど記事を書いた気配がないのは、うらやましい限りです。(そういえば「美味しんぼ」の山岡士郎記者も、「ご飯を食べるだけで、ご飯が食べられる」という特技の持ち主ですね)(^^;)

 …広く平らな、美しい耕作地の上を、のんびり3000ftでたどります。Atlas画面を、フライト非連動で地図代わりに広げ、あちこちの街やABNを目印に、ラフな地文航法を続けまして、間もなくアントワープに到着しました。大きな川の河口にひらけた、風光明媚な小都会です。
 ご存じ「フランダースの犬」の舞台ですけれども、私にとっては、どちらかと言えば…旅の相棒・SV4の製造元「スタンプ・エ・ヴェルトンゲン」社があったところかな。実世界の空港には、同社の博物館があって、HPも開かれています。
 到着時には、まだ燃料がたっぷりあったのですが、飛行中にinternal propertiesのウィンドウが開かなくなってしまい、いったん降りて再起動することにしました。機首を高く上げ、2本ある滑走路のうち芝生の方へ、純白の愛機をふんわり降ろし、北西端の小さなエプロンに入って、エンジンを停止。

 アントワープでは、日を改めて天測テストを重ねましたが、相変わらず誤差が大きいため、太陽は諦めて夜空の星を狙おうかとか、あれこれ考えました。恒星には太陽や月のような固有運動はなく、天球に事実上張り付いたままです。天球上の星の位置を示す赤経・赤緯の数値も、FlightGearでは、プラネタリウム設計のリファレンスなどにも使用されている、Yale大学天文台の恒星カタログの最新版を使い、計3140の星について小数点以下6けた(わがコードラントの、最大分解能の1万倍)まで再現しています。これらの星は天球ごと、毎年5月21日の0時に位置をリセットされ、1年に1回転するだけのようですから、太陽より正確に位置が出るかも知れません。
 しかし逆に言えば、FlightGearがそこまで高品位のデータを使っているのに、なぜ太陽の天測で1分角やそこらの測位精度が出せないのでしょう。例えば、距離や方位計算の基礎となる地球楕円体は、GPSに採用されているモデルで、海図製作用の「世界測地系」が使うものより、新しい規格のようです。地磁気データだって、非常に本格的なものを(私くらいしか航法に使いそうもない、磁気俯角に至るまで)備えています。フライトシミュレーターの設計者は、これら演算の基礎となる各種データの有効数字を、多分同じレベルに揃えるでしょうから、太陽の動きだけ不正確というのは、どうも不自然です。ならば、私の天測や計算は一体…どこが、どう間違っているのか? 計測工学とか精度管理の知識はないものの、2〜3日にわたって、そんなことを考えていました。

●解決のカギは「Time match real」:
 空間的な座標系に、大きな誤差要因がないとすれば、残る要素は「時間」でしょうか。そういえば、一つだけ忘れていた選択肢がありました。FlightGearを、実世界の時刻で動かすことです。
 私はこれまで常に、FlightGearのAdvanced Options のTime設定を「Time of day」にセットしていました。休日や空き時間に、現実世界の時刻に縛られることなく、任意の時間帯を選んで飛びたいからですが、未知の理由により、或いはこれが天体の動きを不正確にしているのかも知れません。Time設定欄の一番上にある「Time match real」を、一度くらい試すべきではないのか…。
 その場合、仮に帰宅後の夜中に起動すれば、もちろん日本の空港は真っ暗ですし、こっちが朝でも「旅先」のヨーロッパは夜半、といった不都合が起きます。しかし、パソコン側でクロック設定を変えれば、起動時刻を任意に選んだり、起動後に機内の時刻を調整することも可能ですから、実際はフライトには、何の不都合もないはずです。そして結果的には、これが大当たりでした。

 まずピラタスPC7改で「Time match real」に設定し、起動後のクロック修正で、アントワープを正午付近の時刻にして、地上で太陽の南中観測テストをしたら、緯度経度とも5nm以内の誤差になりました。「ジャンプ」現象は特に見られないので、ジャンプを前提に設けた修正値もゼロにして、非常にすっきり計算がまとまりました。
 緯度経度の計算には、観測した太陽の高度角と南中時刻に加えて、太陽の均時差(日周運動と標準時の時間差)および視赤緯(天球における緯度)の値が必要で、これは以前ご紹介しましたように、理科年表から拾っています。理科年表にはUTCの0時の数値しか載っていませんが、「Time of day」モードのフライトでは、0時の数値だけで一応計算が成立したので、多少疑問に思いながらも放置していました。いっぽう、本物の「天測暦」(海上保安庁発行)には、観測時刻ごとの数値が得られるように、案分計算のテーブルが付いています。そこで私のExcel計算表にも、翌日のUTC-0時の均時差と視赤緯を入力して、クロックの現在時刻で案分する機能を加えました。これで最終的な緯度経度の計算値が、さらに正確になるはずです。
 もうひとつ…フライト・コードラントを使って、太陽を機体の横に見て天測するとき、できるだけ機体が水平になる方が、正確に観測しやすい(視点を自動追尾する高度角目盛りカーソルが、より正確に画面中央を指す)ので、オートパイロットで飛行中に、適切なトリム設定となる速度を求めました。すると高度8000ftでは219KIAS、10000ftでは218KIASになることが分かりました。20000ftおよび30000ftでも、ほぼ同一の数値ですが、いずれも指示対気速度なので、もちろん高空に行くほど、真大気(つまり対地)速度は上がります。

●ついに、道が開ける。
 …これらの手段を利用し、ピラタスPC7改のコードラントを使って、飛行中に試験天測したところ、緯度経度計算のベスト記録は、
   実測値=北緯51度6分32秒-東経3度10分48秒
   正 解=北緯51度6分30.4秒-東経3度3分47.8秒
   誤 差=緯度は+1.6秒角(距離にして49m)。経度は約7分角(この緯度では5.4nm)
…でした。私としては驚異的な結果で、特に緯度は天文航法への挑戦を始めて以来、まったく類例のない、ほとんど10年前の携帯GPS機に迫る精度となり、2年10カ月の苦労が報われたと思いました。

 次は、スタンプSV4の番です。同様に飛行テストしたところ…ダメだぁ、経度は2度も狂いました。まったく同じ計測器をコピーして使っているのに、どうしてでしょうね。特に根拠はありませんが、SV4のコードラントは上翼中央の燃料タンク上にあって、機体の中心軸よりもかなり高いことが原因かと思いまして、取り付け位置をパイロットの頭の直後に変更し、後部胴体に半分沈む形にしました。
 高度4000ftを84KIASで飛びながら太陽を追い、南中時刻を記録。高度角はコードラント内蔵のカーソル目盛りで59.89度、pitch-offset-degでは59.879度となりました。ほぼ同じなので、カーソル目盛りのデータを使って位置計算をしたところ、誤差は緯度が+1分5秒、経度が+1分39.9秒と、距離にして約1nm程度のずれという、大満足の測位精度を達成。天測の誤差を、秒単位まで書く日が来るとは、感動しっぱなしです。コードラントの位置変更は、大成功でした。(ピラタスPC7改でも試しましたが、逆に誤差が急増し、すぐ元に戻しました。原因は不明です)
 ピラタスPC7改とスタンプSV4には、取り付けステーの関係で、これまで別々のコードラントを積んでいたのですが、スタンプSV4の搭載位置を変更したため、部品が100%共通となりました。これをきっかけに、スタンプ側のパスをピラタスPC7改と同一に変更し、ブツ自体を完全に共有しましたので、改造のたびに両機の間で同期を取る必要がなくなり、非常にすっきりしました。

 両機でさらに何度か天測テストを重ねたところ、ばらつきはありますが、大外れは起きなくなっており、太陽の「ジャンプ現象」も確認されず、従ってこれに伴う、あまり根拠が定かでない大きな補正値を用意する、といった不自然もなくなりました。一定の自信を得ましたので、SV4で旅を再開します。

●天測結果を利用し、アムステルダムへ:
 アントワープ空港で、スタンプSV4を起動してびっくり。こりゃ、濃霧です。
視界は50メートルか、或いは100メートルか。なんで7月下旬のヨーロッパで、それも昼ひなか、海岸平野で濃い霧が出るの?と、しばらく仰天しておりました。
 METARの内容を、翻訳つきのHPで確認しますと、1010hpaで雲なし、2Ktの風、天気は霧で視程400m。気温が11度と寒いので、ははぁと思い当たりました。こっちは休日の昼過ぎに離陸準備をしていますが、現地はまだ夜中なのです。不慣れな「Time match real」の落とし穴ですね。予報を見ると、やがて視程が10キロ以上に回復するそうですが、何時間も待つ手はないので、METAR非連動で再起動し、快晴に設定しました。1114時(現地1314時)に離陸。左手を、外港に向かって蛇行する川がきれいです。
 前方にはABNが3つ。一番遠いのが次の変針点ですが、少々到着が早すぎて、その後の天測に困るかも知れません。全開100Ktからスロットルを絞り、80KIASに落とします。

 眼下にはメルヘン風の、美しい田園地帯が続きます。途中で1回、シーナリーの描画異常が起きて大地が消えましたが、幸いにも復帰しました。やがてライン川の河口地帯に差し掛かり、一番北寄りの支流の両側が、ぎっしりビル街で覆われているのを視認。ロッテルダムです。世界屈指の港湾都市ですが、周囲にすぐ田園地帯が広がっているのは、うらやましい。さて、Excelの計算表を起動し、きょうとあすの太陽視赤緯と均時差を入力。コードラントを南天へ回して、天測の準備を進めました。
 …太陽の南中時刻は、1147時49秒。高度角は58.54度。機位を計算すると、北緯51度56分14秒、東経4度38分50秒と出ました。HUDを点灯し、正解の緯度経度表示を見ないように気をつけながら、画面をキャプチャーしておきます。
 Atlas画面(航空図の代用で、今回は終始フライト非連動)を起動し、算出した緯度経度に+マークを合わせ、ここにフリーウェア「斜めものさし」のゼロ点を置き、マウスポインタをスキポール空港の滑走路交差点に合わせます。「斜めものさし」が持っている、マウスポインタの位置表示機能によって、空港への針路と距離(縮尺は設定自在)が簡単に直読できる…という、私のフライトではお馴染みの光景。答は8.3度23nmでしたが、これまでの試験観測によると、SV4のフライト・コードラントを使った場合は、東へ約10分の経度誤差が出る公算が大です。
 誤差というものは、コンスタントであれば、補正は簡単です。算出した機位を、機械的に西へ10分ずらしてコースを引き直すと、新たな答は21.7度25nmでした。実は機体のすぐ左前下方に、空港が一つ見えており、この位置から判断しても、いま得た修正値はほぼ正しいと思われます。さっそく変針し、所要時間を計算すると18分45秒。アムステルダム到着は、1206時になりそうです。

●スキポール空港、ばんざい:
 1151時、不意に大きな衝撃を受けて機体が蛇行。お馴染みの「地形データの継ぎ目」現象かな。ちょっとドキドキしながら視線を前方に戻すと、左前方の北海沿いに、巨大な砂浜が見えてきました。九十九里浜みたいな雰囲気です。内陸には、平らな農地に小さな湖が点在して、箱庭のような風景。真正面にはドンピシャリ、スキポールのABNが点滅しています。
 1205時41秒、予定より30秒くらい早く、狙った滑走路交点の左アビーム(真横)を通過。あとで調べたら、1.5nmの誤差で済んでおり、コクピットから右下を見た印象は「まさに、目の前」でした。なにぶん飛行距離が短いので、的中して当たり前ですが(^^;)…とうとうフライトシミュレーターで、天測を頼りに引いたコースが、ちゃんと当たったかと思うと、非常に嬉しいです。

 スキポールは、FlightGearのヨーロッパでも指折りの、詳細に作り込まれた空港で、つくづく出来映えに感心しました。セントレアもすごいけど、ここは非常に広い敷地に、多彩な施設が並んでいて、独特の迫力と実感があります。廃物旅客機を転用したらしい、消火訓練施設まで見つかって驚きました。極めて多数の機体が駐機しているのも、特色の一つです。さすがにKLMが中心ですが、機種も会社もかなり種類があって色とりどり。非常に楽しい空港です。
 1217時、KLMジャンボの鼻先にある、ボーディングブリッジにすり寄って駐機。燃料残は92.3Lbs(15.4gal)で、満タンの142Lbs(27gal)のうち57%が残っていました。たった72nmしか飛んでいないのですから、当然ですね。なにぶんSV4は鈍足で、他機とは諸事、感覚が違います(^^;)。ちなみに燃費は6.2nm/galでした。あまりよくありませんが、スキポールに降りてからのタキシングが非常に長かったのも、原因の一つでしょう。
 着陸後、ロッテルダム上空で行った天測の誤差を出したところ、緯度が+23.7秒、経度が+11分24秒でした。経度誤差を+10分と見なして機械的に修正し、最終的に経度誤差を1分24秒に圧縮したのは、正しい判断だったわけです。船の航法でも、例えば「器差」(六分儀の固有誤差)は、ミラーを再調整したりしない限り等しいので、観測のたびに一定の修正値を足し引きします。ともあれ今回は、なかなか感慨深いフライトになりました。

■追伸■ またMETAR受信のproxy環境が変化したようです。現在は、下記の状態でうまく受信中です。
     58.19.176.201:8080
投票数:1 平均点:10.00

なし ライン川を遡航、PC7改故郷に帰る

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2011-8-27 16:45 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。
 v2.4.0の正式リリース、おめでとうございます。
さっそくインストールしました。今回は、かなり大幅な機能向上が盛り込まれたようで、まだ分からない部分が多いものの、今後のフライトと、半年ごとに予告されているバージョンアップが楽しみです。

 ただいま進めているロンドン=明石フライトは、当初の予定では今ごろ、ベルリンを通過してモスクワへ向かっているつもりでしたが、新バージョンが出たことで、手持ち機体の動作確認や調整が続き、しばらくは対応に追われそうです。特に今回はv2.4.0の機体リストに、愛機ピラタスPC7改の発展型にあたる、PC-9Mが新たに加わりました。これは以前から欲しかった機体の一つで、「ホントかっ!?」と、さっそくダウンロードして、現用機からの乗り換え準備に入りつつあります。見たところ非常に出来がよろしいので、あまり大改造はしないつもりですが、どっちみち
 (1)天文航法用のフライト・コードラントを搭載
 (2)軍用トレーナー塗装から、民間スポーツ機にリペイント
 (3)視界や操縦性など、細かなチューニング
…は必要です。せっかくヨーロッパを飛んでいるので、遠回りにはなりますが、ピラタス社の本拠地へ行って作業することにしました。調べてみますと、スイス中央部の Buochs Stans(ブオクス・シュタンス)空港LSMUに、ピラタスの本社工場があります。ここは軍民両用の空港で、FlightGearのシーナリーでは、空軍基地のほうのICAOコード(LSZC)で登録されています。すぐそばには観光地・ピラトゥス山(2182m)があって、これがピラタス社の名前の由来です。

 というわけで今回は、突然で恐縮ですが、前回到着したアムステルダムから、ライン川流域の大部分をさかのぼって、スイスへ向かう旅をご紹介します。ルートは以下の通りです。
◎アムステルダム・スキポール空港EHAM
   ▼128度97nm
◎デュッセルドルフ空港EDDL(ここからドイツ領)
   ▼150度29nm
◎ケルン・ボン空港EDDK
   ▼155度36nm
◎コブレンツEDRK(渓谷)
   ▼131度32nm
◎マインツ空港EDFZ(渓谷の出口の東。10nm手前の屈曲部がローレライの岩)
   ▼77度16nm
◎フランクフルト・アム・マイン空港EDDF
   ▼181度33nm
◎マンハイム空港EDFM(東にハイデルベルグNDB292)
   ▼202度45nm
◎カールスルーエ・バーデン・バーデン空港EDSB
   ▼197度75nm
◎バーゼル空港LFSB(ここからスイス領)
   ▼99度42nm
◎チューリヒ空港LSZH
   ▼191度30nm
◎Buochs Stans空港LSMU。磁気偏差=偏東1度 標高1475ft。
計435nm
 大ざっぱに言いますと、初め3分の1が北海へ開けたオランダ・ドイツの平野、真ん中3分の1は川下り観光で有名な渓谷地帯、残りがスイスの山や谷、そして湖…といった世界になります。幸いヨーロッパは、まだ夏の上天気が続いていますので、基本的にはFlightGear非連動のAtlas画面を航空図に使い、景色と見比べて現在値を割り出しつつ進む、地文航法で飛びます。もちろん天文航法のテストも続けます。

●インストールと最初の感想、灯台の動作確認:
 v2.0.0のアンインストール後、2.4.0を入れましたが、そのままでは起動しませんでした。私はあちこちに「待避」というサブフォルダを設けて、改造前のオリジナルファイルなどを入れていますが、Nasalフォルダ内に設けた「待避」フォルダがエラーを招いて、削除したところ解決しました。
 起動後は、リアルウエザーが正常に働いたものの、
Error: connect() failed in make_client_socket()
SG_IO_OUT socket creation failed
NoaaMetarRealWxController::MetarLoadthread::requestMetar() more than 10 outstanding METAR reuests,dropping EHAM
と、繰り返し表示されました。これは旧バージョンのプロキシ設定が残っていたためで、記述を消したところ解決しました。他にあまり問題はなく、Saitekのジョイスティックも完全自動認識しています。

 最初に、尾輪機としては操縦が非常に易しくなった(そして機体内外のディテールが、とてもリアルになった)パイパーカブを起動。アムステルダム空港EHAMから上がって、一回りして降りてみましたが、取りあえず感じたのは、以下の諸点です。
 (1)AIトラフィックが目立って活発に。デフォルト滑走路でエンジン始動中、対向機が
    離陸したり、着陸機が頭上をかすめることも多い(^^;)。
 (2)METAR受信が安定した。
 (3)色彩設計が変更され、特に逆光の物体が、やたらに黒っぽくなる不自然さが消えた。
    v1.9.1によく似た、自然で鮮やかな発色に戻った。
 (4)天球のライティングと色遣いが変わり、夕焼け・夕暮れの色彩変化が豊富になった。
    いっぽう、薄暮・黎明が、ほぼ空の全周に広がったので、太陽を直接視認しない限り、
    デフォルトでは方角が分からなくなった。
    ただし、新しく設定されたSkydome Scattering機能のスライダを操作すると、天球の
    明度や色調、明るさの分布とコントラストが調節可能で、太陽の位置も分かる。
    今のところ、どこに合わせてもやや不自然だが
    Mie factor=0.002 Rayleigh factor=0.0004 Density factor=0.6
    あたりがベターか。
    (ちなみに、Rendering optionの設定は、どうすれば保存されるのでしょう?)
 (5)Shader関係が一層充実。私の環境では誤表示を起こしていた、Urban effectsが正常に
    働くようになり、市街地テクスチャーのビルがそのまま立体化された。やや簡略な専用
    パターンを使っていた前バージョンより、一段とリアルになった。
    (私の環境では、チェックマークを入れるだけでは作動しませんでした。少し下にある
    Performance vs Qualityスライダを動かす必要があります)

 …ざっと印象をつかんだ後、まず地文航法を楽にするため、ABN(飛行場灯台)関係のファイルを改造品に取り替えて、遠くからでも視認可能に変更しました。
 ところが、どういじってもなかなか、改造結果が反映されません。私は従来通り、Data/Models/Airport 内のファイルを操作したのですが、Ver.2.4.0ではどうやら、Terrasyncフォルダのパス内にもあるbeacon.xmlを、優先的に使っているようです。これが判明するまで、惨憺たる試行錯誤を重ねましたが、あとは簡単で、なぜか不透明になっていたHalo(光芒)を透過率9割の白い円錐形にして、調整完了です。これでやっと、スイスへ向かうことが出来ます…。

●新バージョンでも、天測に成功:
 フライトシミュレーターの天文航法は引き続き、私の大きなテーマですので、v2.4.0でも太陽の天測に問題はないか、非常に気になっていました。
 ピラタスPC7改を使って、アムステルダムのスキポール空港で地上テストをしたところ、正午の太陽高度角と南中時刻を計る、ベーシックな「子午線高度緯度法」で求めた緯度経度の誤差は、緯度が+9秒とGPS並み、経度は+8分45秒と出ました。緯度は相変わらず驚異的精度で、経度も「10分角だけ過大に出るので、機械的に修正すべし」という経験則を当てはめると、マイナス1分15秒(=1.15nm)の狂いにとどまり、たぶん航海実習生並みの精度はクリアしたと思われまして、大変満足しました。

 ただし、非常に残念なことに…これは、倍速モードを使ったときに、時計と天体の動きや燃料消費もシンクロして加速してくれる、daytime.nas(Tatさん作)を外した場合の誤差なのです。かつて、経度の測定誤差が縮まらないため、試行錯誤で daytime.nas を外してみたところ、大幅に精度が上がりました。きちんとした比較実験ではなかったので、ご報告しませんでしたが、今回改めて組み込んだ上、同条件で地上に機体を置いて天測テストをしたところ、緯度の誤差は+9秒と、引き続きすごい精度ながら、経度は-1度9分40秒(距離にして69.6nm)と、v2.0.0使用時とよく似た傾向の、大きな誤差が現れました。
 恐らく日周運動に何らかの影響が出ているものと思いますが、天測は起動直後に行い、倍速モード自体は使用していないので、なぜこうなるのか腑に落ちません。飛行距離が500マイルを超える長距離フライトでは通常、倍速モードの使用が欠かせず、従ってdaytime.nasは、非常に強力な味方なのですが、天文航法に限って問題が出るのは、とても残念です。ただしv2.4.0は、デフォルト状態でも倍速モードの使用中、単位時間あたりの燃料消費量は、何倍速であるかに比例しますので、航続力だけはリアルに再現されます。飛行時間のほうはメチャメチャになりますが、これも倍速モードの使用時間をざっと計っておき、あとで修正計算をすれば、おおむね解決します。以後は取りあえず、この方法で行こうかと思っています。

 最終的にはもちろん、FlightGearの側で設計ドクトリンを変更し、飛行時間と天体の動きを、倍速モードにシンクロさせてくれたらベストです。しかしこれまでのところ、設計者のお考えでは、倍速モードはあくまでも「飛行速度を加速する機能」のようです。私は「時間経過を加速する機能」と捉えた方が、ずっと合理的だと思うのですが、いかがでしょうか。

●灯台の群れを見下ろして:
 いよいよ、v2.4.0の旅の始まりです。
スキポール空港でピラタスPC7改を起動し、燃料を半分の2000Lbs搭載。UTCの1115時(現地1315時)にエンジンを始動しました。雲量は4000ftにscatterd、20000ftにfew。風は南から約5Ktと、ほぼ航法計算上は無視できるレベルでした。南に向かって離陸し、高度5000ftで250KIASにセットして、ライン川を確認。雲がまばらなので、あちこちにABNが点滅するのがよく見え、チャート代わりのAtlas画面(フライト非連動)と照らし合わせると、面白いように現在位置が確認できます。こりゃ、ゴキゲンだぜ〜っ(^^)/

 正面に、デュッセルドルフの大市街地が見えてきました。間もなく周辺の3空港を視認。TerraSyncを使っているためか、フレームレートは22程度と、かなり遅いのですけれど、実用上は十分です。v2.0.0までは、私の環境ではTerraSyncを使いますと安定が悪く、画面の動きが途切れたり、ひどい時にはFlightGear自体が落ちてしまいました。新バージョンでは、今のところ安定していて非常に助かります。このまま問題がなければ、シーナリーのダウンロードをすっかりお任せし、常に最新の地上オブジェクトを見たいものです。(TerraSyncモードのアムステルダム市街は、海側に約40基の発電風車が並んで壮観でした)
 空と大地に見とれている間に、もうお昼です。六分儀代わりのフライト・コードラントを、あわてて真南に回したら、太陽の南中までわずか十数秒でした。高度角は50.29度、時刻は1136時(ローカル1336時)25秒。計算上の位置は北緯51度30分12秒、東経6度38分14秒と出ました。過去のデータにより、東経は10分修正して6度28分と判断。テスト中なので直ちに正解を確認したところ、北緯51度30分50秒(誤差38秒)、東経6度29分1秒(誤差1分1秒)で、またまたゴキゲンな精度です。これがv2.4.0で最初の空中天測テストとなりましたが、射撃で言えば、標的中央の黒点に入るか、その外周をかすったようなレベル…でしょうか。

●おお、ライン川:
 HUDをつけて飛んでいる場合、現バージョンでは画面中央やや上に、オートパイロットの設定データが表示されるようになりました。GPSのFIX方位を示す画面矢印と同様、文句なしに便利です。
 1140時、デュッセルドルフ空港EDDJアビーム(真横通過)。コードラントで計った灯台の俯角は19.3度、電波高度計の数値は9725ftなので、
           距離d=高度h×cot俯角θ
の式に当てはめますと、距離は4.6nm程度と分かりました。こんな計算は、飛行中には面倒ですので、手元にある軽飛行機の操縦教科書では、以下の大ざっぱな数値を当てはめて暗算することを勧めています。
  俯角 距離
  45度  h
  27度 2h
  17度 3h
  14度 4h

 デュッセルドルフ空港EDDLを通過し、ケルン・ボン空港に向けてコースを150度に修正。蛇行するライン川を右手に見下ろしながら、快適な巡航が続きます。1143時、ケルン市街地へ急降下してみましたが、あいにく有名な大聖堂は見あたりませんでした。コブレンツに向けて変針。
 平野を走っていたライン川が、ごく浅い渓谷の様相を見せ始め、降下して真上を這う態勢に。グランドキャニオン以来の、楽しい川下り…じゃなくて遡上の旅です。両側の山々には、実世界では非常にたくさんお城が並んでいて、これは行き交う船から税金を取るためだったとか。速度を200Ktに、次いで150Ktに減速して、川の蛇行に沿って急旋回を重ねながら、さらに降下。最低で川面の上100ftくらいまで降ろしてみましたが、なかなかスリルがあります。
 1210時、あらかじめGoogleEarthなどで調べておいた、ローレライの岩を発見。ここはライン川がもっとも狭くなる地点で、左90度コーナーのクリッピングポイントに、高さ100mあまりの断崖がありますが、これがご存じの伝説の…絶世の美女だか魔女だかが座って歌い、耳を傾けた船乗りは死んでしまう、という岩なのでした。なにぶんタイトコーナーですので、慎重に機翼を傾け、かなりGを掛けながら無事通過。

 狭い渓谷巡りも、ここで大体おしまいです。ほっとして加速し上昇を始めると、すぐ正面の地平線にフランクフルト市街地が見えてきました。着陸してみると、ここも結構ていねいに作り込まれた大空港です。ルフトハンザのハブ空港らしく、巨大な整備工場があって「大艦隊」が駐機しており、圧倒されます。空港ビルの狭間を、何かかぶっ飛んで行ったので、じっくり眺めていると、モノレールみたいな交通システムの車両だと分かりました。新幹線が数秒おきに、1両だけ通るような感じです。
 1225時、ランプインしてエンジン停止。燃料残は1412Lbs(112gal)。楽しいフライトでした。

●アウトバーン上空を南へ:
 日を改めて、同じ分量の燃料を設定し、旅を再開します。
この日も4000ftにscatterd、20000ftはfewといった雲量で、風はおおむね180度から5Ktと、いかにもヨーロッパのバカンス・シーズンらしい好条件で安定していました。1104時、離陸。視界を確保するため、シーリング(雲底高度)ぎりぎりの4000ftで南へ。
 フランクフルトからスイス国境までは、ライン川の堆積で出来たらしい幅数十キロの平野が、おおむね南へ延びており、「道なりに飛べば」スイスです。引き続きABNと、所々にあるライン川の屈曲部を地図と照合すれば、正確な位置がすぐに確認できます。離陸後、簡単な推測航法を併用して、支流ネッカー川との合流点を見つけ出しました。そのすぐ近く、平野の東端にある山々に開いた谷に入り口に、ちょっとした丘があって、小都市が張り付いています。ヨーロッパ最古の大学所在地として知られる、ハイデルベルグです。私も観光に来たことがあり、谷に入ってローパスしました。特にオブジェクトはありませんが、実世界にあった立派な古城が思い出されます。
 …ここから南は、はるか大昔、父の車でアウトバーンをぶっ飛んだコースです。当時は路面が荒れていてロードノイズがひどく、約160km/hで巡航中は大声を出さないと、前後席で話が出来ないほどでした。試しに路面近くまで降下してみますと、小さな森を幾つも突き抜けてゆく感じが、当時のドライブとちょっと似ていました。このルートは、フランス作家ピエール・ド・マンディアルグの幻想小説「オートバイ」にも登場。スイスに住むヒロインが、真っ黒なハーレーの燃料タンクに伏せて、ドイツの恋人の元へ、フルスロットルで北上するシーンが思い出されます。まぁそのくらい…ひたすら、まっすぐな道であります。
 カールスルーエから、バーデンバーデンを過ぎて、どんどこ南へ。左手に、黒い帯状の森が広がりました。これはv2.4.0で登場した Rendering option のShader effectsにある Transition effectsをオンにしていたためで、一部の森林テクスチャーが、すごく黒っぽく見えます。v2.0.0ですと、どうってことない、淡い緑だったはずですが、このエフェクトのお陰で、シュヴァルツヴァルトらしく見えました。

 ドイツの景色の特色として、あちこちの山のてっぺんに時々、のっぽビルが1棟だけ建っています。近づいてみると実はビルではなく、グレーの墓石のようなものでした。たぶん、お城のドンジョン(天守閣というか、城の中心の望楼。地下牢などを示す「ダンジョン」の語源だが、別の意味)を簡略に示したオブジェクトだろうと思います。天と地の間に立ち、じっと孤独に耐えているような雰囲気が、いかにも西洋の城塞らしくて、なかなかよろしいです…。

●ピラタスPC7改、故郷に帰る:
 1148時、チューリヒ空港の灯台真上に到着。この区間では、すっかり天測を忘れていました。あわててクロックを15分ばかり巻き戻し、太陽を南中直前にして水平飛行を続け、高度角と時刻を観測。計算してみると今回に限って、なぜか緯度も10nm余りの誤差が出ました。原因が分からず、面白くありません。
 1143時、バーゼル空港を通過。南へ旋回すると前方に、いかにもスイスっぽい山々が、どっさり広がりまして、もうたまらん。一転してハイな気分です。Atlas地図を見ながら慎重にコースを探し、いったんは谷筋を西に一本、間違えてしまいましたが、1150時に本日のゴール、Buochs Stans空港を発見しました。東西7nm、南北3nmほどの盆地で、東西は高い山、南北に低い丘があり、盆地中央の少し南に滑走路2本の小空港が横たわって、その東が小さな湖といった地形です。これが名機ピラタス・シリーズを開発した場所か、とわくわくしましたが。しかしまぁ、えらく狭いところにある空港だなぁ…と、ため息も半分。ここをテスト基地とする飛行機は、いやでも一定レベル以上の上昇力と、小さな旋回半径、そしてSTOL性能を要求されます。ピラタス社が、アルプスやヒマラヤの高所に発着可能な「山岳機」PC-6ターボポーターを生んだのは、まさに必然だったわけですね。

 さてその滑走路に着陸を、きれいに決めようとしたところ。スロットルが開度47%で固着していることが判明しました。まれに起きることですが、よりによってこんな、難しい場面でなぁ…。
 盆地の西に連なるカール谷へ入って、約6nm離れた隣の小飛行場まで行き、ピラタス社の命名の元になった「ピラトゥス山」ギリギリに旋回して反転。この機動でやや速度が落ちたのを幸い、高度を下げ、フルフラップでギアを出し、空気抵抗で何とか100Ktまで落としました。接地寸前に、燃料タンクのチェックマークを外したのですが、エンジンは止まりません。やむを得ずゴーアラウンドして、Buochs Stans空港の東にある湖の上空で反転し、今度は東から再進入。こうなると燃料の残量スライダーをゼロまで動かして、強制的にエンジンを止めるしかなさそうです。
 その通りにして、ちょっとアンダーシュート気味に着地し、惰性で走ってエプロンに進入。うっかり南側の軍用らしい区画に入れましたが、本当は敷地の北西端がピラタス社の本社工場です。時計はちょうど1200ごろでした。やれやれ、わがPC7改は、ようやく「生まれ故郷」に到着です。

●新たな訓練地、新たな機体…:
 日を改め、いよいよBuochs Stans空港で、次の主な常用機となる、ピラタスPC-6Mの慣熟飛行を始めようと思ったのですが、思わぬ問題が持ち上がりました。この空港は、なぜか起動ウィザードの空港リストに出現せず、従ってここで機体を起動することは出来ないのです。
 シベリアでは、同じ問題を何度か体験しましたが、まさか西欧のど真ん中で起きるとは。焦っても後の祭りで、訓練基地を移すことにしました。60nmほど東北東にある、コンスタンツ湖畔のSt.Gallen-Altenrhein(ザンクトガレン=アルテンルハイン)空港LSZRにも、ピラタス社の施設があります。ここは幸い、大きな湖(ドイツ風に言うとボーデン湖)に面していて、滑走路の前後も平野だし、ILSはあるし、開発や練習には向いていそうです。そこで近隣の空港で機体を起動し、いちおうBuochs Stans空港へ移動して、ここを出発する体裁を取って、ボーデン湖方面へ出ることにしました。
 このショートフライトには、ピラタスPC-6ターボポーターを選んだのですが、使った機体は下記の、
   http://www.jpcheney.org/article.php3?id_article=298
…から入手したもので、かなりディテールアップされています。着陸灯を使って真下を照らすことが出来たり、タービンを壊さないよう常にトルク計を監視する必要があるなど、ていねいに作り込まれた面白い機体です。ただし、尾輪式だからと言って、スティックを引いたまま離陸をすると、あっという間に翼端失速を起こして自転・墜落したり、うっかり強めのGを掛けると壊れるなど、なかなか難しい飛行機でもあります。結局のところ、St.Gallen-Altenrhein空港には、再びPC7改を使って移動しました。

 こうして、わがPC7改「エーデルワイス」号は…かつて世界一周フライトの途中、2009年2月に南米で本連載にデビューして以来、2年半にわたり、地球を半周し、南極点と北極点をきわめ、いま母国スイスに帰ってきました。長旅の主役としては、恐らく今回がラスト・フライトですけれども、私の大事な「相棒」であることに変わりはなく。また本連載やマイアルバムに登場する機会もあるでしょう。
 では次回から、PC-9Mの訓練と改造に入ります。
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