マイルズ・モホーク製作記(2)
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居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです。マイルズ・モホーク製作記の第2回をお届け致します。
今回は外観がほぼ出来上がり、先日お目に掛けた投稿画像の状態に追いつきました。
●●エンストを解決、プロペラ回転表示を改善:
初の自作機モホークは、ひとまずスムーズな離着陸と定常飛行に成功しましたが、まだ加速や上昇率が悪く、操縦安定性もフワフワして節度を欠き、胴体は簡略でインテリアもない「仮建築」のまま。試しにToDoを書き出してみたところ、完成まで前途はまだまだ遠いようです。
飛ばしてみて気になったのが、頻繁にエンストすること。それと、プロペラ回転面をボカして描いた、いわゆるプロップディスクの出来が悪く、クルマ掃除の毛バタキ(笑)か何かに見えることでした。
まずエンストですが、スロットルをアイドルまで絞ると止まります。オートバイなら、スロットルストップ・スクリューをちょっと戻せばいいのですが、FlightGearでは初体験です。エンジンファイルを開いてみると、Aeromatic が自動設定したアイドリングは700回転。もっと下げた方が止まりにくくなることが分かりましたが、これだけではエンスト防止になりません。そこでファイル冒頭の、
<minmp unit="INHG"> 6 </minmp>
<maxmp unit="INHG"> 28.5 </maxmp>
という記述に注目。単位が水銀柱インチですから、これはキャブレターの最大・最小吸気圧ですね。最小値をあれこれ変更し、8.3にセットするとエンジンは無事、回転を続けるようになりました。
またプロップディスクは、Photoshopで濃淡2種の扇形を重ね描きしてぼかし、かなりマシなものをリメークしました。見た目が一段と薄い巡航用バージョンも作って、3Dプロペラ模型→濃い目のディスク→薄いディスク、の順で3段階に表示を切り替えたところ、満足できる見栄えになりました。まだ Rembrandt に対応していませんが、当面はこれで十分です。
●●本番の胴体と、エンジンを作る:
YouTubeで紹介されている機体工作例を見ると、胴体は長い円筒を加工し、徐々に絞りを掛けて流線型を表現するようですが、私は三面図に載っていた胴体断面を利用して、まず基本となる数個の輪切りフレーム(胴枠、或いは隔壁)を作っておき、ひたすらExtrude(押し出し。たぶんBlenderも共通)を重ねて胴体を成型しました。全体を一体とせずに、最前部のカウリングとエンジンマウント部分、コクピットのある中央部、ファストバック型の後部胴体…の3ピースに分けています。理由は、日本では珍しい直列空冷・倒立エンジンの模型を、ぜひ作って搭載したくなったからです。
日本機で空冷と言いますと、星形エンジンを思い浮かべますが、かつて欧米では練習機などに、しばしば直列の空冷エンジンが使われました。機首が尖ってカッコいい反面、オーバーヒートは大丈夫なのか気になりますけれども、例えばデハビランド社のジプシーエンジン(120馬力など各種)は、戦前・戦中の名機タイガーモス練習機などに使われ、「決して飛行中にエンストしない」と好評でした。
今回作ったマイルズ・モホークは、アメリカ製のメナスコB6Sバッカニア・エンジン(倒立6気筒、空冷8リッター200馬力)を搭載。冷却は三面図や写真によると、細い機首正面に空気取り入れ口があります。星形エンジンの零戦などに比べると、いささか開口面積が小さいのですが…モホークのカウル後方には、胴体との間に数センチの段差が全周に設けられ、このスリットからプロペラ後流を利用して、カウリング内の熱気を吸い出すようです。とは言え機首からスリットまでが長いので、あまり吸い出し効果は強くないはず。シリンダーごとに温度むらもあるでしょうから、直列空冷はせいぜい200馬力台までのエンジンにのみ、通用する技術ではないかと思います。
モホークのパネルにはシリンダ温度計があり、これを監視しながら、何らかのカウルフラップを操作して温度調節したはずですが、詳しい構造や方法は分かりませんでした。倒立エンジンとなると、潤滑システムも気になりますが…恐らく(冷却にも有利な)ドライサンプだろうと想像しています。
3Dオブジェクトの工作は、スピンナーからカウリングにつながる、流れるような曲線を出そうと、何度もやり直しました。ようやく仕上がってから、盾状の最前部カバーとアンダーカバー、そして両サイドを広く覆う左右カバーの4枚に分割。写真によりますと、左右カバー下部には大きな留め金があり、これを緩めるとガルウィング・ドア風にパックリ開くか、或いは取り外せるものと思われます。私は「投稿画像」でご紹介しましたように、ガルウィングドア説を採って、Ctrl+Bで開閉するようにしました。(カウルのドアはキャノピーと違い、デフォルトではinternal propertiesに作動項目として存在しませんし、私にはNasalを記述して新設する技術もありませんので、スピードブレーキの項目名を転用しました)
ダミーエンジンは、実物の写真を眺めながら、プラグや高圧コードを含めて楽しく工作。同系統のメナスコ・エンジンの側面写真が見つかったので、テクスチャーとして張り込んでいます。
●●不思議な「縦スライド式」風防:
以後、工夫を重ねながら中央部と後部胴体も成型したのですが、キャノピーを作るに当たって、予期せぬ難問が横たわっていました。最初この風防の開閉部は、一体どんな風に動くのか、まったく分からなかったのです。
零戦の風防は、大きく見れば3分割で、中央部が前後にスライドしますよね。タンデム複座のモホークの風防は前後4分割になっており、前席と後席の可動部が、それぞれ独立して開閉します。問題は、どの方向にどう動くかです。最初は三菱「神風号」風の横開き式か、零戦風の前後スライド式だろうと思ったのですが、前席を開放したまま飛んでいる写真があるので、横開きではなく。後方へスライドした可動部が写っていないので、スライド式でもないのです。一体何なんだぁ?これは。
数々の実機写真と図面をにらんでいるうちに、風防の可動部と固定部の間に段差がなく、どうやら可動部は窓枠ごと動くのではなくて、透明なガラス部分だけが上下に動くらしいことが分かりました。決め手になったのは、実機のコクピット内を上下180度+左右360度、オンラインでパイロット視点から見ることの出来るパノラマ映像です。これによると可動部のガラスは、てっぺんで2分割になっており、左右別々にガイドレール状の窓枠に沿って、コクピット内側へ引き下ろす構造のようです。1930年代半ばの風防ガラスは、かなり薄いアクリルで弾力があり、湾曲した窓枠の形に沿って上下動が出来るのでしょうが、こんな設計があったとは、今回始めて知りました。
さて…このガラスの動きを、どうモデル化したらいいのでしょう。窓枠のカーブ通りにスライドさせるとなると、例えばキャタピラのように、小さなオブジェクトに分割すべきでしょうか。しかし、一体どうプログラムしたらいいのか、想像も出来ません。
結局。左右2分割した可動部を、胴体から少し離した仮想の回転軸を中心に、大きな半径で17度だけ回転させると、ひいき目に見れば、さも上下にスライドしたように見えることが分かり、一安心。ガラス面のオブジェクトに、chrome シェーダーを指定して表面反射を与えると、すっかり風防らしくなりました。自作中つくづく感じたのですが、機体のモデル化は工作技術より、むしろデフォルメの能力がカギを握っているような気がします。FlightGear用の零戦など、あれほど見事に実機の雰囲気を再現しながら、acファイルを開いてみると、ピラタスPC-9Mなどよりシンプルですからね。デフォルメも、ここまで来れば芸術です。
●●タイヤには、ちょっと砂ぼこりを:
パネルなどコクピット内部の製作は、工数が多い一大事業ですので、後日に回します。ここまで来ますと、早く皆様に写真で製作発表を行いたいので、「飛んで、その辺を回って、降りられること」「いちおう外観が出来上がっていること」を優先しました。
塗装は、何枚もデジタルカラー写真が手に入るため、あまり問題がありません。テクスチャー張り込みに必須の全機展開図を描くのは初めてですが、張り込み用エディタの操作に多少習熟したため、思ったより簡単に、下絵となる線画を作ることが出来ました。唯一残念だったのは最初、登録記号を実機通りに、輪郭だけの文字にする方法が分からず、画像アップ時はただのゴシック体でごまかしたこと。現在は、もっと実機に近い書体になっております。
脚柱カバーとタイヤのスパッツを作ると、いよいよモホークらしくなってきました。本機のタイヤはせっかく回転させても、スパッツに隠れてよく分からないため、トレッド面にブラシツールで砂ぼこりを着色。また機首下面にある、バーテンダーさんのメジャーカップ(ラッパ型をした、ウィスキーなどの計量器)そっくりのベンチュリー管も再現。ピトー管のスタティック・ラインだと思いますが、なぜ二つもあるのかは謎です。併せて右翼下面のピトー管も作っておきました。これで機体の一期工事は一段落、あとは動力・空力性能などを煮詰めながら、パネルを始め残された工作を進めていくつもりです。
もう少し完成に近づいたら、何らかの形で機体データを公開したいのですが、例えば「JPオリジナルダウンロード」に登録するには、どうしたらよろしいのでしょうか。ご教示をよろしくお願い致します。
今回は外観がほぼ出来上がり、先日お目に掛けた投稿画像の状態に追いつきました。
●●エンストを解決、プロペラ回転表示を改善:
初の自作機モホークは、ひとまずスムーズな離着陸と定常飛行に成功しましたが、まだ加速や上昇率が悪く、操縦安定性もフワフワして節度を欠き、胴体は簡略でインテリアもない「仮建築」のまま。試しにToDoを書き出してみたところ、完成まで前途はまだまだ遠いようです。
飛ばしてみて気になったのが、頻繁にエンストすること。それと、プロペラ回転面をボカして描いた、いわゆるプロップディスクの出来が悪く、クルマ掃除の毛バタキ(笑)か何かに見えることでした。
まずエンストですが、スロットルをアイドルまで絞ると止まります。オートバイなら、スロットルストップ・スクリューをちょっと戻せばいいのですが、FlightGearでは初体験です。エンジンファイルを開いてみると、Aeromatic が自動設定したアイドリングは700回転。もっと下げた方が止まりにくくなることが分かりましたが、これだけではエンスト防止になりません。そこでファイル冒頭の、
<minmp unit="INHG"> 6 </minmp>
<maxmp unit="INHG"> 28.5 </maxmp>
という記述に注目。単位が水銀柱インチですから、これはキャブレターの最大・最小吸気圧ですね。最小値をあれこれ変更し、8.3にセットするとエンジンは無事、回転を続けるようになりました。
またプロップディスクは、Photoshopで濃淡2種の扇形を重ね描きしてぼかし、かなりマシなものをリメークしました。見た目が一段と薄い巡航用バージョンも作って、3Dプロペラ模型→濃い目のディスク→薄いディスク、の順で3段階に表示を切り替えたところ、満足できる見栄えになりました。まだ Rembrandt に対応していませんが、当面はこれで十分です。
●●本番の胴体と、エンジンを作る:
YouTubeで紹介されている機体工作例を見ると、胴体は長い円筒を加工し、徐々に絞りを掛けて流線型を表現するようですが、私は三面図に載っていた胴体断面を利用して、まず基本となる数個の輪切りフレーム(胴枠、或いは隔壁)を作っておき、ひたすらExtrude(押し出し。たぶんBlenderも共通)を重ねて胴体を成型しました。全体を一体とせずに、最前部のカウリングとエンジンマウント部分、コクピットのある中央部、ファストバック型の後部胴体…の3ピースに分けています。理由は、日本では珍しい直列空冷・倒立エンジンの模型を、ぜひ作って搭載したくなったからです。
日本機で空冷と言いますと、星形エンジンを思い浮かべますが、かつて欧米では練習機などに、しばしば直列の空冷エンジンが使われました。機首が尖ってカッコいい反面、オーバーヒートは大丈夫なのか気になりますけれども、例えばデハビランド社のジプシーエンジン(120馬力など各種)は、戦前・戦中の名機タイガーモス練習機などに使われ、「決して飛行中にエンストしない」と好評でした。
今回作ったマイルズ・モホークは、アメリカ製のメナスコB6Sバッカニア・エンジン(倒立6気筒、空冷8リッター200馬力)を搭載。冷却は三面図や写真によると、細い機首正面に空気取り入れ口があります。星形エンジンの零戦などに比べると、いささか開口面積が小さいのですが…モホークのカウル後方には、胴体との間に数センチの段差が全周に設けられ、このスリットからプロペラ後流を利用して、カウリング内の熱気を吸い出すようです。とは言え機首からスリットまでが長いので、あまり吸い出し効果は強くないはず。シリンダーごとに温度むらもあるでしょうから、直列空冷はせいぜい200馬力台までのエンジンにのみ、通用する技術ではないかと思います。
モホークのパネルにはシリンダ温度計があり、これを監視しながら、何らかのカウルフラップを操作して温度調節したはずですが、詳しい構造や方法は分かりませんでした。倒立エンジンとなると、潤滑システムも気になりますが…恐らく(冷却にも有利な)ドライサンプだろうと想像しています。
3Dオブジェクトの工作は、スピンナーからカウリングにつながる、流れるような曲線を出そうと、何度もやり直しました。ようやく仕上がってから、盾状の最前部カバーとアンダーカバー、そして両サイドを広く覆う左右カバーの4枚に分割。写真によりますと、左右カバー下部には大きな留め金があり、これを緩めるとガルウィング・ドア風にパックリ開くか、或いは取り外せるものと思われます。私は「投稿画像」でご紹介しましたように、ガルウィングドア説を採って、Ctrl+Bで開閉するようにしました。(カウルのドアはキャノピーと違い、デフォルトではinternal propertiesに作動項目として存在しませんし、私にはNasalを記述して新設する技術もありませんので、スピードブレーキの項目名を転用しました)
ダミーエンジンは、実物の写真を眺めながら、プラグや高圧コードを含めて楽しく工作。同系統のメナスコ・エンジンの側面写真が見つかったので、テクスチャーとして張り込んでいます。
●●不思議な「縦スライド式」風防:
以後、工夫を重ねながら中央部と後部胴体も成型したのですが、キャノピーを作るに当たって、予期せぬ難問が横たわっていました。最初この風防の開閉部は、一体どんな風に動くのか、まったく分からなかったのです。
零戦の風防は、大きく見れば3分割で、中央部が前後にスライドしますよね。タンデム複座のモホークの風防は前後4分割になっており、前席と後席の可動部が、それぞれ独立して開閉します。問題は、どの方向にどう動くかです。最初は三菱「神風号」風の横開き式か、零戦風の前後スライド式だろうと思ったのですが、前席を開放したまま飛んでいる写真があるので、横開きではなく。後方へスライドした可動部が写っていないので、スライド式でもないのです。一体何なんだぁ?これは。
数々の実機写真と図面をにらんでいるうちに、風防の可動部と固定部の間に段差がなく、どうやら可動部は窓枠ごと動くのではなくて、透明なガラス部分だけが上下に動くらしいことが分かりました。決め手になったのは、実機のコクピット内を上下180度+左右360度、オンラインでパイロット視点から見ることの出来るパノラマ映像です。これによると可動部のガラスは、てっぺんで2分割になっており、左右別々にガイドレール状の窓枠に沿って、コクピット内側へ引き下ろす構造のようです。1930年代半ばの風防ガラスは、かなり薄いアクリルで弾力があり、湾曲した窓枠の形に沿って上下動が出来るのでしょうが、こんな設計があったとは、今回始めて知りました。
さて…このガラスの動きを、どうモデル化したらいいのでしょう。窓枠のカーブ通りにスライドさせるとなると、例えばキャタピラのように、小さなオブジェクトに分割すべきでしょうか。しかし、一体どうプログラムしたらいいのか、想像も出来ません。
結局。左右2分割した可動部を、胴体から少し離した仮想の回転軸を中心に、大きな半径で17度だけ回転させると、ひいき目に見れば、さも上下にスライドしたように見えることが分かり、一安心。ガラス面のオブジェクトに、chrome シェーダーを指定して表面反射を与えると、すっかり風防らしくなりました。自作中つくづく感じたのですが、機体のモデル化は工作技術より、むしろデフォルメの能力がカギを握っているような気がします。FlightGear用の零戦など、あれほど見事に実機の雰囲気を再現しながら、acファイルを開いてみると、ピラタスPC-9Mなどよりシンプルですからね。デフォルメも、ここまで来れば芸術です。
●●タイヤには、ちょっと砂ぼこりを:
パネルなどコクピット内部の製作は、工数が多い一大事業ですので、後日に回します。ここまで来ますと、早く皆様に写真で製作発表を行いたいので、「飛んで、その辺を回って、降りられること」「いちおう外観が出来上がっていること」を優先しました。
塗装は、何枚もデジタルカラー写真が手に入るため、あまり問題がありません。テクスチャー張り込みに必須の全機展開図を描くのは初めてですが、張り込み用エディタの操作に多少習熟したため、思ったより簡単に、下絵となる線画を作ることが出来ました。唯一残念だったのは最初、登録記号を実機通りに、輪郭だけの文字にする方法が分からず、画像アップ時はただのゴシック体でごまかしたこと。現在は、もっと実機に近い書体になっております。
脚柱カバーとタイヤのスパッツを作ると、いよいよモホークらしくなってきました。本機のタイヤはせっかく回転させても、スパッツに隠れてよく分からないため、トレッド面にブラシツールで砂ぼこりを着色。また機首下面にある、バーテンダーさんのメジャーカップ(ラッパ型をした、ウィスキーなどの計量器)そっくりのベンチュリー管も再現。ピトー管のスタティック・ラインだと思いますが、なぜ二つもあるのかは謎です。併せて右翼下面のピトー管も作っておきました。これで機体の一期工事は一段落、あとは動力・空力性能などを煮詰めながら、パネルを始め残された工作を進めていくつもりです。
もう少し完成に近づいたら、何らかの形で機体データを公開したいのですが、例えば「JPオリジナルダウンロード」に登録するには、どうしたらよろしいのでしょうか。ご教示をよろしくお願い致します。
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