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星が導くウラル越え

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なし 星が導くウラル越え

msg# 1.2.1.1.1.1.1.1
depth:
7
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-12-10 8:47
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 632
hideです。
 ロンドン・グリニッジ子午線から、明石の日本標準時子午線へ向かう、ユーラシア大陸横断飛行の続きです。今回は約1150マイル(nm)進んで、ウラル山脈を飛び越え西シベリアへ。ヨーロッパ・ロシアをあとにして、いよいよアジア入りですが、ゴールはまだまだです(^^;)。

 天文航法研究も佳境に入り、今回は太陽に加えて、初めて恒星や惑星を観測しました。また以前は粗い手製の航法チャート上で、位置の線を平行移動して最新のものと交差させ、現在地を求める方法をご覧に入れましたが、今回は船舶で実際に使われる「天測位置決定用図」を、初めてフライトシミュレーターの航法に導入し、より簡単かつ高精度の作図を実現しました。
 では、さっそくコースと作戦をご紹介しましょう。

●●シベリアへの道:
◎シクティフカル空港UUYY 61-38-49N 50-50-42E Var.016E EV342ft
   ▼107.6度175.6nm
△A点(ウラル山脈西の変針点) 60-45-00N 56-37-00E
   ▼90度115.8nm
△B点(ウラル山脈東の変針点) 60-45-00N 60-34-00E
   ▼130.5度534.5nm
◎オムスク空港UNOO 54-58-01.35N 73-18-37.85E Elev 311 feet MagVar 011°E NDB332
          RWY066/246(ILS=108.30/110.10) 7/25 15/33 NDB332
   ▼89.5度322.2nm
◎ノヴォシビルスク・トルマチョーヴォ空港UNNT 55-00-45.44N 82-39-02.36E

 前回到着したシクティフカル空港からノヴォシビルスクまで、お馴染みのAtlas画面を利用したチャートを作って眺めながら、私はどうコースを引いたものか、しばし考えました。
 シクティフカルのすぐ南には、例の幅30nmの平たい谷間「大地溝帯」が走っており、約200nm東で、ウラル山脈の分水嶺を貫通しています。取りあえずここを飛べば、地形が目印になって楽だし、山脈の通過時は両側の山の断面が見えるので、ワイドに引いて撮影すれば面白いだろう…などと思いました。大地溝帯の中心・北緯60度45分の線を東へ進み続けると、やがて広大なオビ川に出逢い、そのまま川沿いに飛べば自動的に南へ機首を振ってゴール、ということになります。天気さえ良ければ楽ですが、航法上はあまり、面白味がありません。そこでマイアルバムの図のように、山脈を抜けたらすぐ大地溝帯を捨て、南東に進んでオムスクを探し、最後の区間はほぼ真東に飛んで、ノヴォシビルスクに向かうことにしました。

 このフライトで、天文航法が一番役に立つのは恐らく、地図中央の西シベリア低地を、オムスクに向けて南東に進む区間でしょう。ここは目印が少ないので、天測で推測航法の精度を確認したいところです。以前にも少し触れましたが、こういう場合は予定コースと重なるように、同じ方位のLOP(Line Of Position=位置の線)を求める手があります。天測で得たLOPをチャートに描き込めば、コースとの比較で、自分が左右どちらに、どれだけそれているか一目で分かります。
 実際の測定結果は、マイアルバムの説明図下段の地図に茶色の線で記入しました。「太陽 1009時」とあるのが、その時に見えた太陽の方位線。これと直角に「LOP」と書いてある線が、その時に算出した「位置の線」です。青で示した予定コースのすぐ北側にあり、実際の航跡が、予定より左方向へ約4.7nmずれていたことを示しています。観測手順は以下の通りです。

(1)コースの中央付近に1点、太陽の天測予定地を決める。
   (私の場合は、オビ川の支流・トボル川の上空を観測点としました。緯度経度は、
    おおむね57-49N 67-22Eです)
(2)天測する際の、太陽の方位を決める。
   (LOPとは、ある時刻に特定の天体を「同じ高度角で見上げる地点の集まり」
    ですから、本来は地球上に巨大な円を描きますが、便宜上もっと短い接線
    で代用したもの…と考えられますので、観測者から見た天体の向きに対し、
    常に直角に描かれます。従って、針路と正確に同じ向きのLOPが欲しい時は、
    太陽が機体の真横に差し掛かった瞬間に、高度角を計ります。今回の区間
    針路は130.5度なので、130.5度+90度=220.5度に太陽が見えたとき、測定
    します)
(2)太陽が、その方位に来る時刻を求める。
   (私の場合は、自作の天測計算ワークシートに、試行錯誤でさまざまな時刻を
    入力し、太陽方位の推測計算値が220.5度になるようにします=0956時55秒)

…この時刻から逆算して、出発時刻を決めます。ウラル山脈周辺は低空で観察したいので、高度10000ftを巡航速度280KTASで飛ぶと仮定し、出発はUTCの0752時としました。

 いま使っている天測計算ワークシートは、「太陽による位置の線航法テーブル Ver.B 恒星付き」と呼んでいる最新版です。太陽の動きのほか、必要に応じて天文データを手動入力すれば、任意の天体のLOP(位置の線)も計算できます。これは天文計算と推測航法の両方に使えます。1枚のワークシートに計4区間分コピペして、それぞれの冒頭に出発時刻(または通過予想時刻)や速度などを入力して行くと、中継地点の推測緯度経度、出発地・目的地から推測位置を見た場合の距離や方位、所要時間などが自動計算されますので、辻褄が合うかどうか確認します。こうしてナビゲーションの準備が整うまでに、あっという間に1時間半が経っていました。埼玉県・ホンダフライングスクールの地文航法教科書によりますと、「航法計画書が1時間以内でできることが自家用操縦士の目標」だそうです。がんばりましょう…。

●●昼間も明るいアークトゥルス:
 シクティフカルでピラタスPC-9M改を起動します。パソコンのクロックをUTCの0740時(現地1240時)に合わせ、満タンにしてエンジン始動。(日付変更時の混乱を避けるため、私のパソコンは最近、ほぼ常にグリニッジ時間で動いています)
 天候は、1300ftにovercastの雲がありますが、幸い厚さが1000ftしかないので、brokenな雲のように描画されています。風は10000ftで220度21Ktと少々強め。お昼時なのに太陽は低く、地平線からわずか直径6個分だけ上にあり、高緯度地方の冬を感じさせます。
 0746時離陸。高度10000ftまで上昇旋回し、速度250KIAS(280KTAS)、針路107度にセットして、出発点となる滑走路真上を航過し、0752時に航法を開始しました。すぐワークシートに風向風速を入力し、修正針路111.6度を得てオートパイロットで保針。対地速度は274Ktと推算され、次の中継地「A地点」の通過予定は0830時ごろと決定。ようやくホッとして地上を見下ろせば、灰色の雪景色が広がっています。ウラル山脈は、どのくらい見えるかな。

 右手やや後ろに、昼間の星を発見。日照が短くなったのをきっかけに、今月に入ってから少々、星を観測する練習をしていましたので、直ちにフライト・コードラント(航空四分儀)を向けて、0806時00秒に高度角を測定。結果は42.16度で、方位はざっと223度でした。使えるぞ、でもこの星はなんだろう?
 船舶用の航法フリーウェア「Navigator Lite 32」を起動し、観測した年月日時分秒と推定緯度経度を入力して「Visible stars」ボタンを押すと、航法に使う太陽や月、主な恒星など31個の天体の配置が図示されます。今のは、うしかい座の主星アークトゥルス(和名・麦星)と判明。さらにボタンを押し、Declination(赤緯=天球上の緯度)やGHA(グリニッジ時角=経度ゼロの線から測った、天球上の経度方向の位置)を表示させてワークシートに入力。するとアークトゥルスは現在、この位置からは、高度角41.15度に見えるはず、という推測計算の結果が返りました。
 ここで先ほどの実測高度角をワークシートに打ち込むと、推測値との差(インターセプト、または修正差と呼びます)が算出されます。結果はプラス0.74分角で、私は推測航法で得ている緯度経度よりも、実際はアークトゥルスの方角へ0.74nmだけ近づいたところにいる、と言うことが分かりました。さて、マイアルバムの画像をご覧下さい。下段の航法チャート左上に、黄色で描いた★マーク入りの線が、アークトゥルスの見える方角を示した線です。この線と青い針路の交点が、観測地点の推定位置です。「LOP」と記入した黄色い位置の線は、ほとんど推定位置と同一なので、この図では同じ位置に描き込みました。以上がLOP作図の実例です。

●●星の天測に、どんどん習熟:
 アドリブの恒星観測が成功し、しかも非常に高精度でしたので元気百倍。嬉しさを噛みしめていると、すぐ太陽が南中。あわてて高度角を計ると6.78度で、時刻は0812時55秒でした。私のワークシートは、正午の天測計算については専用の機能があり、太陽の高度角に一つ補正数字を足す「子午線高度緯度法」で緯度を出し、太陽南中時とUTC正午の時差から経度も出して、緯度・経度を同時に一発で表示します。が、この方法は経度にある程度の誤差が出ます。この日は61-09N 54-10Eという答えが出ましたが、幸い誤差は東6nmにとどまり、かなり快調でした。続いて先ほどのアークトゥルスと同様の方法で、太陽の南中時のLOP(位置の線)も算出しました。南中時には、太陽はもちろん真南にあり、これと直角のLOPは正確に東西に向きます。従って、南中時のLOPの位置(推測緯度に修正差を足し引きした数値)は緯度そのものであり、欠かしたくないデータの一つです。計算法は違いますが、ほぼ先ほどの子午線高度緯度法と同じ答えが出ました。
 ついでに言いますと…真南にある太陽の高度を計って緯度が出るのでしたら、真東や真西の太陽(あるいは他の天体)を測定したら、LOPは正確に南北(経線と平行)を向くので、ずばり経度が得られるのでは…と思えますが、まさにその通りです。ただし太陽が低い冬期は、高緯度では恒星や惑星を使わないと無理です。

 これまで、星を観測しなかったのには、幾つか技術的な理由があります。最大の理由は、航法に使う特定の星を夜空で見分ける「索星」作業が、想像以上に困難だったからです。
 3年前の最初の挑戦では internal properties を使い、機外ビューのカメラ視点を極端に遠ざけて、米粒のように小さくなった機影ごしに、星を見ました。この方法では時々カメラ視点が地中に潜るので、地表の灯火類と星が入り交じってしまい、とても見分けられませんでした。
 この問題は、フライト・コードラントの開発により解決しました。しかしそもそも、私は星が好きですが、星座は詳しくありません。またFlightGearでは、星の見え具合(明るさ・大きさから受ける印象)が必ずしも実物通りではなく、星の色彩も再現されません。なので、仮想の天球に見えているのが宵の明星かシリウスか、或いはアークトゥルスなのか、さっぱり分からなかったりします。よくある「星座早見盤」は国内の空が対象で、今回のような旅には無力です。従って「Navigator Lite 32」の索星画面には大感謝で、これがなければ、星の航法利用は困難だったと思います。また実機では、天測予定時刻に見える星を数個選んで、事前に高度・方位計算を終えておくようですが、FlightGearでは、事前計算を済ませた星が、うまく見つからない場合も多々あります。なので、逆に「いま高度角を計った、この星はいったい何?」とドタバタ調べて、計算に移行する方が、ずっと確実です。

●●ウラルの「断面」を飛ぶ:
 間もなく地平線に月が見え隠れしましたので、これも高度をゲット。ただし地平を割っており-2.4度でした。一応、LOPを求める計算を(推測緯度経度および天体方位、推測高度角と実測値の修正差を算出)しましたが、月の修正差は54分55秒角(距離換算で約55nmの誤差)もあって、とても航法の対象になりません。月の運動は、太陽や恒星よりずっと複雑ですので、FlightGearではあまり精度を与えていないのでしょう。

 0820時ごろ、左手の地表に浅い段差が見えて、大地溝帯に入ったことが分かりました。7分後、右手にも段差が見え、大地溝帯の中央部へ予定より3分ほど早く着いたことが判明。さっそく両側の段差の方位をコードラントで計ると、ちょうど機首が中心にあって、ほぼぴったり予定コース上にいることを確認しました。0843時ごろには、ウラル山脈の分水嶺に達するはずです。
 やがて大地溝帯の両側が、目立つほど盛り上がってきました。いわば山脈の断面図ですが…けっこう低いものです。0844時ごろ分水嶺を確認しましたが、とても南北2500キロに及ぶ「世界最古の山脈」の切れっ端とは思えません。調べてみますと、ウラル山脈の最高点は1895mで、平均ですと1000mかそこらだそうです。高さのみ言えば、四国最高峰の石鎚山や、東京・奥多摩の山々と同程度だったのですね。0852時、計算より少々早くウラル山脈を脱出。川と鉄道の交点が見え、イブデリとか言う街の付近だろうと想像しました。予定通りオムスクへ向けて変針し、5度ばかり修正角を調整。これで当機は欧州を離れ、アジアに入った次第です。

●●便利な上昇率を発見…オムスクへ:
 0910時、毎分2000ftで上昇を開始。この区間は534nmもあるので、高度を上げて速度を稼ぐことにしました。しばらくして気付いたのですが、ピラタスPC-9M改はこの上昇率ですと、指示対気速度はじりじり下がりますが、真大気速度は280KTASに落ち着き、30000ftくらいまで長時間維持します。つまり上昇中でも、対地速度は高度10000ftを巡航中と同一で、航法計算が非常に楽です。いいことを発見しました(^^;)。
 0921時、高度27000ftでレベルオフ。加速が始まり、真大気速度は335KTASで安定しました。さすがに高空では速いです。速度変更に伴い針路も修正して、あと71.5分でオムスクに到着するはずです。このデータを基に改めて、太陽のLOPがコースと平行になる時刻を確認。1007時に天測すれば大丈夫です。

 0938時、今度は金星の観測に成功。高度角は6.92度で、推測位置との修正差は+7分角とまずまず。最初は修正差の値が大きく発散してしまいましたが、急いでチェックしたところ、マイナスとなるべき赤緯の値を、プラスに入力したことが判明。すぐ修正して事なきを得ました。私の天測・計算技術は安定期に入りつつあり、操作にも習熟してきたようで、面白いように測定が成功します。0946時、オビ川の支流が真下に見えて、ほぼコース上と確認。あと260nmくらいで、1033時ごろオムスクに到着の見込み。天文航法を使うフライトでは倍速モードを全く使いませんので、天測と計算、修正操縦を重ねて3時間近く飛ぶと結構疲れます。きょうはオムスクに降りる流れでしょうね、こりゃ。

 1005時になって、太陽が計算より少し早く右アビーム(真横)に来ました。高度角は2.70度。LOPの修正差は-4.69分角ですので、コースの右4.7nmくらいにいると判断しました。推測航法の精度も、天測による確認作業も快調。下手に針路を修正するより、このまま続航して、オムスク空港を左4.7nm付近(高々度では足もと同然)に探した方が、精度と航法簡略化の両面でベターに思えます。
 鉄道と道路の交差点が近くに見え、いわゆるウラル工業地帯のようです。しかし日本の四大工業地帯のような都市ベルトはなく、小都市が点在する感じで、どちらかというと…北九州工業地帯の後背地、筑豊の炭田地帯を行くみたいなムードです。やがて眼下には、直径数百メートルとみられる、小型の湖(池?)が一面に現れました。これが、本で読んだ沼沢地帯かな?

 1026時、地方時ではまだ午後4時半ですが、日が傾いて、地上に道路の灯火が見えてきました。まもなく蛇行する川と都市、そして右手から空港が出現。オムスクです。私は機体がコース右にそれたと思っていましたが、これは勘違いでした。インターセプト(高度角と推測値の修正差)はマイナスでしたから、自機は推定位置を挟んで、太陽から遠い向きにいたわけで、実際はコースの左にそれていたのでした。
 1032時、スピードブレーキを開いて旋回降下に入り、低空で雲が邪魔になったので、ILS進入に切り替えます。以前お話しした人工水平儀の不調と交換のため、愛機はグライドパス指示器が後席にしかないので、そっちで操縦してビームに乗り、視界のいい前席に切り替えて滑走路を目視。左から21Ktの横風を受けつつ、片足からそっと降ろしました。タッチダウン寸前に、空がオレンジ色に染まり始め、美しい夕景の中を着陸。1050時、誘導路までタキシーして停止。燃料残は566.9Lbs(85.9gal)×2で、4割ほど残ったものの、予定通りノヴォシビルスクまで続行していたら、ややギリギリだったかも知れません。

●●「星の狙撃手」:
 エンジンを止め、風防を開いた機体を放置して、しばし休憩していますと、次第にまた元気が出てきました。この日は天候が非常に安定しており、恒星や惑星の天測にも慣れつつあるので、結局もうちょい頑張って、やっぱりノヴォシビルスクへ入るか、という気分に落ち着きました。

 燃料を少し足して、合計672.7Lbs(101.9gal)×2とします。1124時、あかね雲の中で始動。激しい横風を受けながらオムスクを離陸し、反転して1127時に空港上空で定針。コースは約3度修正。280KTASで飛びながら、例の上昇率2000ft/分をキープしつつ33000ftへ上がって、1141時にレベルオフ。その後3分間で197KIAS(342KTAS)まで加速しました。1233時に目的地へ到着予定です。
 ここで、正面か真後ろの星を観測してLOPを求めれば、自分の進出距離が分かります。ほぼ機首が真東なので、ずばり経度が取れるはずです。正面わずか右に手頃な星があり、1157時に高度角を計ったら25.23度。フリーウェア「Navigator Lite 32」で確認すると、これは木星でした。DeclinationとGHAも取って推測高度角を算出し、推測緯度経度とともに計算すると、LOPの修正差は-2.25分となり、予定よりわずかに西寄りを示しています。この時点の推測経度は77-39.3Eで、天測で実際に得た経度は77-37.05E。いっぽう、画面キャプチャーによって確認した正解は…東経77度57分14秒でした。うう〜む、約20分角の誤差ですね。

 今回は、マイアルバムの上段でご紹介した通り、実物の船舶で使う「天測位置決定用図」を、初めてフライトシミュレーターの航法に使ってみました。個別の地点で、時間間隔をおいて測定したLOPを3本、最終測定時の推定緯度経度地点に、まとめて重ね書きしてしまうテクニックです。天測の教科書によると、過去にご紹介した「航空図に作図した複数の位置の線を平行移動し、交差させて使う」方法と、等価なのだそうです。話がうますぎるようですが…欧米でも盛んに使われており、作図が非常に単純になって、すごく便利です。この方法を使った場合でも、この時点の経度は東経77度38.3分と出て、精度はほとんど同じレベルでした。
 20分角の誤差はやや残念ですが、この高緯度ですと、誤差の実距離は4〜5nmのはず。3年前に天文航法の研究を始めた時、空港が視認できる距離との関係で、航法の許容誤差を10nmと見込んだことを思うと、取りあえず実用精度をカバーしています。低緯度ではどうなるのか、まだ少々不安ですけれども。

 図では省略しましたが、1219時にも機首正面付近でアルデバランを観測。高度角13.51度でした。ほぼ真東に飛んでいますので、LOPの算出結果は実用上、経度と考えてよろしいでしょう。得た数値は東経81度40分で、HUDの緯度経度表示をもとに誤差を試算したら、やはり約10分角だけずれていました。しかしこれは、推測航法で得た東経80度50分よりずっと正確でしたので、アプローチを前に、目的地の空港までの距離確認手段としても、天測は有意義な場合があることが実証できました。
 こんな場合は当然、「過去のLOPとの交点を作図して…」などと考えている時間はありません。いきなり得た1本のLOPを、とっさに単独で使うのです。「星が見えた。LOPが取れた。これは針路との相対関係で、何の役に立つだろう。緯度を意味するのか、経度の代用品か、予定コースの左右どっちにいるかを教えてくれるのか?」と、頭が突っ走って答えが出る感じです。まだ実際に試していませんが…例えば目的地の100nmかそこら手前で、何回もLOPを求め、うち1本が目的地を串刺しにする瞬間を選んで変針すれば、天測をNDBホーミングに近い感覚で使うことも可能です。(以前お話しした、フランシス・チチェスターがタスマニア海横断に使った、洋上で直角に近い変針をする独自の天文航法は、このような原理だろうと考えています)

 天測による航法は、まるでインターネット時代における、無線電信のようなものです。利便性・即時性・確実性の点で、GPSには絶対かないませんが、航法の根本原理をきっちり押さえたソリューションであり、オペレートする人のスキルによって、精度や使い勝手が大きく変化し、創意工夫の余地がふんだんにあります。天測をするナビゲーターは、いわば星の狙撃手であって、ナウシカのような「風使い」ならぬ、「星使い」への長い道を歩む、旅人のような気がします。

●●シベリア鉄道の橋の上で:
 1227時、予定より数分早く、滑走路の灯火の真上に到達。滑走路の配置を見ると、すぐ隣の空港だったので、変針して予定の空港へ向かい、ブレーキを開いてダイブに入りました。暗いので今回もILS進入し、無事に着陸。1239時(現地1839時)ごろ、灯火が点在するエプロンらしいところに乗り入れて、エンジンを停止。燃料残は、333.3Lbs(50.5gal)×2とたっぷり。やれやれ、盛りだくさんな旅でした。

 余談ながら、ノヴォシビルスクについて少々。この街はシベリア鉄道建設中の1893年に、大河・オビ川の架橋地点として建設され、最初は皇帝ニコライ二世にちなんで、ノヴォニコラエフスク(新しいニコライの街)と呼ばれましたが、革命後はノヴォシビルスク(新しいシベリアの街)と改名されました。
 「ノヴォニコラエフスク」時代の1925(大正4)年8月14日、この街に史上初めて、日本国籍の飛行機がやってきました。東京の代々木練兵場を出発して、モスクワ経由でロンドン、パリ、ローマなどを親善訪問した、朝日新聞のブレゲー19型「初風」と「東風(こちかぜ)」の2機です。
 1910(明治43)年に、同じ代々木練兵場で、陸軍の徳川好敏大尉が初の公式飛行をして以来15年。欧米からは、記録飛行に挑む長距離機が次々訪日しており、日本からもぜひヨーロッパへ…という悲願を、初めて実現したフライトでした。まだ国産機には無理な長旅で、定評あるフランス機を購入しての計画でしたが、未開地の多い全行程1万7000キロを、実質28日間で無事に翔破したのは見事です。これは、革命後のソ連が初めて外国機を受け入れたケースであり、モスクワでも中継地でも、大きな支援と歓迎を受けています。その一方ではシベリア横断飛行そのものが、ソ連への申請時には達成例がなく、ソ連側が許可寸前に滑り込みで、自国機による史上初横断を果たす…といった一幕もあったようです。

 この大飛行は、昭和30年代ごろまでは、子供向け「飛行機の図鑑」などに紹介されていましたが、最近は忘れ去られた感がありました。残念に思っていたら、2004年になってノンフィクション作家・前間孝則氏(もと航空エンジン技術者)の「朝日新聞訪欧大飛行」(講談社、上下2巻)が出版され、ようやく全貌が詳しく分かりました。「国家的壮途」に挑む緊張と栄光ばかりでなく、ハプニング満載の「珍道中」ぶりも程よく入り交じった、ヒコーキ好きには楽しい読み物です。
 久しぶりに読み返してみると、2機は1日平均1000キロを、基本的にノンストップで飛んでおり、最長の飛行区間は約1200キロで、当時のブレゲー複葉機とエンジンの信頼性に感心します。ほぼ全行程が地文航法で、例外的に推測航法を使った時は「羅針盤飛行」と呼んで、かなり緊張の連続であったようです。なので当然ながら、天文航法は使っていません。また無線電信機も搭載していませんでした。

 …私の東向きユーラシア・フライトは、今回のオムスク=ノヴォシビルスク区間で、西向きに飛んだ「訪欧機」の航跡と、向きは反対ながら、初めて重なり合いました。今回の原稿を書き終えるに当たって、ピラタスPC-9M改で再離陸し、現在のFlightGearが描くノヴォシビルスク上空を一周してみると、なかなかの大都会です。雲の垂れ込めた市街地を、緩やかに蛇行するオビ川には、白っぽい線路が交差しています。
 「あれが、シベリア鉄道か」と感動して低い雲の下に降り、橋の上をかすめると…ほぼ同じ高度を懸命に巡航する、緑色の塗装を輝かせた2機の複葉機と、一瞬すれ違ったような気分にも、なってくるのでした。
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