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太陽を使いこなす

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なし 太陽を使いこなす

msg# 1.2.1.1.1.1
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5
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2011-10-25 17:41 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 619
hideです。
 ピラタスPC-9Mの改造がひとまず仕上がり、GPSも一応うまく使えるようになりましたので、そろそろ天文航法の研究に舞い戻ることにしました。今回はベルリン=ワルシャワ間を飛んで、天測による位置決定技術の集大成といえる「位置の線航法」を、初めて本格的に実習します。

 「位置の線航法」とは、「自機が、この線上のどこかにいる」という直線を、何本か求めてチャート上に作図すると、交点が現在位置を示す…という手法です。昼間でしたら、数時間おきに太陽を観測し、高度角を計ることによって、そのつど1本の位置の線が得られます(後でおさらいします)。また夜間でしたら、ほぼ同じ時刻に3個以上(2個でも可能ですが、あまり精度がよくありません)の星の高度角を観測し、3本かそれ以上の位置の線を得て、航空図上に交点を作図すると、その場所が現在位置です。ちょうど、船舶から陸の目標への見通し線を海図に記入して、その交点を船位としたり、NDB局を二つ受信し、その方位から現在地を得たりするのと原理はそっくりで、いわゆるクロスベアリング(交差方位法)の一種です。

●天文航法の、本質的な謎:
 すでにご紹介しましたように、私は最近、太陽の南中時の高度角を計る「子午線高度緯度法」を使っていました。これは天文航法の原点で、1回の測定で自分の緯度が決まります。計算も赤緯(太陽の天球上の「緯度」)などの足し算引き算だけでシンプルです。これに、グリニッジの正午との時差(1年周期で生じる太陽の進み遅れ=「均時差」を補正)から経度を求める計算を組み合わせて、1回の測定で緯度経度の両方を求めていました。こちらも計算が単純です。いずれも、現地の正午ごろ1回しか計測チャンスがないのが、最大の欠点です。(注:実際の天文航法では、経度を求めるための天測は南中時ではなく、天体が真東か真西に来た時に行います。その方が精度が高いのでしょうが、理屈はよく分かりません)
 いっぽう「位置の線航法」は、天体が見える限り、いつ観測してもデータが取れます。1回では位置が決定できませんが、何回でも観測して、何本もの位置の線の交点として、最後に現在地が確定できます。特に船舶の場合、たとえ正午に曇っても、前後に晴れれば大丈夫となれば、非常に便利でしょう。また夜間は、複数の星をほぼ同時刻に観測できますので、比較的短時間で位置の線の交点が得られます。
 欠点としては、かなり計算が面倒なこと。また航空機で使う場合、昼間の観測には大きな問題がありそうです。基本的には太陽しか見えませんので、太陽が大きく位置を変えるのを待って再観測しないと、2本目の位置の線が得られません。チャートに交点を作図する時、位置の線の交差角は大きいほど測位精度が高く、30度以下は好ましくないとされます。地球の自転角速度は毎時15度ですから、最低でも2時間待ち、と言うことになります。ベストの交差角は90度(3本取るなら60度)ですが、最初の観測から最後の観測まで4〜6時間掛かることになり、大抵のフライトは終わってしまいます(^^;)。

 天文航法は、軍用機でも民間の長距離便でも、1960年ごろまで盛んに使われた技術ですが、昔の飛行家たちは一体どうやって、こんな大きな欠点を乗り越えたのか不思議でした。あまりにも不便なので、私は3年前に初めて天文航法に挑んだ時、実世界では(精度が出ないため)計らない太陽の方位角も、internal propertiesから入手して計算に加え、任意の時刻に1回の測定で、一気に緯度経度の両方が算出できる方法を考えました。しかし…まともな教科書で勉強して、初めて分かったのですが…この独自の方法には原理的な見落としがあり、位置の線は出るものの、一発で現在地を確定することは困難でした。では、それに代わる方法は?

●昔の鳥人は、位置の線から何を読んだ?:
 バブル・セクスタント(航空用の気泡六分儀)を使い、実際に大洋や極地を越えた飛行家たちの記録を、何例か読んでみますと、彼らのやっていたことは、以上に述べた教科書的な(船舶向けの)測位法とは違うらしいことが、だんだん分かってきました。飛行中、せっせと位置の線を取っていますが、彼らは図上でそれを交差させて、機位を出した気配があまりないのです。
 本連載で3年前にご紹介した戦前の飛行家、サー・フランシス・チチェスター(戦後は世界的ヨットマン)は1931年、軽水上機でタスマニア海を横断した際、わずか1時間おきに4、5回も天測を重ね、そのつど太陽の方位をチャートに記入していますが、位置の線の交点は描いていません。また戦前の米国を代表する極地探検家、リチャード・バードが1926年、飛行機による初の北極点往復をした時の航法図も、これとよく似ています。何本も位置の線が描いてあるが、交点は見あたりません。この航法は…なんなのだ?
 彼らはどうも、推測航法がメインのようです。天測は補正手段と割り切って、チャートに描いた切れ切れの線から、私には見えない何かを読み取っていたらしいのです。その謎を解く文献が(少なくとも日本語では)見つからないこともあり、実態は分かりませんでした。答えが見えないまま、すでに3年が経ちましたので、こうなったら想像や先入観は捨てて、実際にFlightGearで位置の線航法をやってみるしかあるまい、と思いました。自分で作図してみればチャートの線が、何かを語ってくれるかも知れません。

 フライトシミュレーターの航法では、天体の見かけ位置が信用できるとは限りませんが、現在のFlightGearで子午線高度緯度法を行うと、緯度については非常に正確で、ほぼ必ず1分角未満の誤差にとどまっています。時差による経度の計算結果にはばらつきが出るものの、太陽の高度角は信用できます。位置の線航法では、天体の方位測定は不要で、高度角しか実測しないのですから、十分に有望だと思いました。

●天文航法の「位置の線」とは:
 ここで簡単に、原理のおさらいをしておきましょう。マイアルバムにアップロードさせて頂いた「太陽を使いこなす」という画像の中段右側にある、白い説明図をご覧下さい。
 いま仮に、あなたが太陽の高度角を六分儀で計ったら、60度だったとします。太陽を60度で見上げる地域は、地球上に丸く分布しており、その集合は図上のオレンジ色の円になります。こうした円を「位置の圏」と呼びます。あなたが同じ地点で、数時間おきに太陽を3回測定したり、夜間に三つの星を測定して、3種類の「位置の圏」をチャートに描いたとすると、三つの円はほぼ1点で交差するはずで、そこがあなたの現在地です。ただし「位置の圏」は巨大すぎて作図困難なので、実際の航法計算では、この円上にあなたの推測位置を定めて、そこを通る接線を便宜上「位置の線」として使います。ではこの推測位置は、どうやって求めるかと言いますと…離陸後の針路と速度、経過時間から計算します。推測航法というやつですね。
 で。推測計算で仮の位置の線を得たら、次は実際に太陽の高度を計って、本当に60度になるかどうか調べます。実測値が60度より大きければ、本当の位置の線はAに近いし、逆に小さければBに近いところにいることがわかり、確定的な位置の線(青色)が引けます。

 位置の線を算出する流れを、少し具体的に見ていきましょう。あなたが空港を出発して巡航速度で一直線に飛び、1時間後に天測する場合を考えます。
(1)まず巡航速度と風向風速から、自機の対地速度と真の飛行方位を計算します。
(2)これをもとに、1時間後の自機の予測位置(緯度経度)を算出し、チャートに
   書き込んでおきます。(マイアルバムの白い説明図で言えば、空色で描いた
   「位置の線(計算値)」の中心点が、この予測位置に当たります)

(3)1時間後の推測位置における、太陽の推測方位と推測高度を、あらかじめ算出します。
   (これがないと、位置の線が確定しません。天測した直後に、ドタバタ計算することも
    可能ですが、結果を得るのが遅れますので、出来れば先に)
 このあたりからの計算には、航法用の天文データブックである「天測暦」と球面三角法(三角関数の迷宮!)が必要で、航法の教科書に公式や例題が載っていますが、素人には習得は大仕事です。一応原理だけ理解したら、計算は機械にやってもらいましょう。専用の電卓もありますが、私はタダで手に入る「航海士のためのExcel用関数集 Navigational Functions Version 1.13」を使っています。11年前にリリースされたアドオンですが、現在も下記のアドレスで公開され、今年の「理科年表」に載っている日々の天文データと、ほぼ完璧に同じ計算値を返します。
     http://www4.ocn.ne.jp/~happoone/hfsoft-1.htm
(航海用関数集は他にもありますが、Navigational Functions は機能が多く、使い勝手も柔軟です)
 天文航法の計算には、やや予備知識が必要です。例えば天測暦は、一般の大手書店にある理科年表でも代用できますが、理科年表は太陽の経度方向の動きについて「均時差」という補正値を使うのに対し、天測暦は「E値」という特殊な変数(均時差+12時間)を使っています。またNavigational Functions や、アメリカ製のフリーウェア「Navugator Lite」は近似値計算式を内蔵していて、天文データブックは不要ですが、同様の計算に「グリニッジ時角」(世界時+均時差+12時間)という別の変数を使います。自分でExcelを使って演算する場合、E値は無視しても構いませんが、均時差とグリニッジ時角の最低いずれかは使うので、天文の入門書などで、よく意味を理解しておく必要があります。

(4)先ほどチャートに書き込んだ、1時間後の推測位置から、いま算出した太陽の推測方位へ
   直線を引きます。マイアルバムの「図1」に、水色で描いた「太陽の方位」がこれです。
   次に1時間後の推測位置から、いま引いた線に直角に線を引きます。
   (図では水色の「位置の線(計算値)」です)
(5)観測予定時間がきたら、太陽の高度を測定します。
(6)太陽の高度角の実測値から、先ほど求めた推定高度を引きます。
   この差の数値を、「修正差」或いは「インターセプト」と呼びます。
 インターセプトの単位は「度」ですが、通常は60倍して「分」に直しておきます。高度角の1分角の差は、距離にしますと1nm(ノーティカル・マイル=海里=1852m)に当たります。

(7)もしインターセプト(分単位)がゼロなら、あなたは水色の「位置の線(計算値)」の
   真上にいます。おめでとう。しかし通常は大なり小なり、誤差が出ることと思います。
    白い説明図に赤い線分で示したインターセプトは、数値が負の場合で、あなたは予測
   値より小さな角度で太陽を見上げています。つまり水色の「位置の線(計算値)」より
   太陽から遠い位置Cにいますので、太陽から遠ざかる方向へ「1分角=1nm」の換算率で
   インターセプトの数値だけ距離を計り、C点に水色の線と平行の線を引きます。これが
   青で示した「位置の線(実測値)」です。
    逆にインターセプトが正の数字であれば、あなたは予測値より大きな角度で太陽を見上
   げていますので、太陽に近づく方向へ距離を計り、位置の線を引きます。自機はこの線上
   にいます。

…これでやっと、位置の線が1本手に入りました。数時間後にもう1本計算すれば、2本の交点がその時点の現在地です。「数時間後には、かなり遠くにいるが、位置の線は交差するのか?」という疑問もありましょう。まさにその通りで、実際は第1の位置の線を、飛行距離の分だけ図上で平行移動して、第2の観測位置まで持って行く必要があります。移動速度の大小とは無関係で、船舶の航法でも全く同じ操作をします。
 実例を見た方が分かりやすいので、ベルリン=ワルシャワ間飛行のご紹介に進みましょう。

●ベルリンのモーニングサイト(朝の天測):
 まず、飛行コースをご覧に入れます。
◎ベルリン テンペルホーフ空港EDDI 52-28-22.89N 013-24-14.20E Var.2E
   ▼91°279nm RLでは93.8度278nm
◎ワルシャワ Varsovie Okecle空港EPWA 52-09-56.70N 020-58-01.64E Var.4E

 「52-28-22.89N」とは、北緯52度28分22.89秒のことです。緯度経度には幾つも略記法がありますが、海上保安庁の書式を借りています。「Var.2E」は磁気偏差の向きと大きさで、Variationが東へ2度、つまり磁針が真北の2度東を指す(偏東2度)という意味です。
 さて…飛行距離は278マイル。となりますと、低空を250Kt(高度10000ft以下の制限速度)でゆっくり飛んでも1時間強ですね。どう考えても飛行中、天測は1回しかできません。つまり、このままでは位置の線の交点から現在地を出す、というテクニックは使えないわけです。さてどうするか。
 私が思いついた解決策は単純で、「離陸の数時間前に、空港で観測して、位置の線を1本出しておく」というものです。あとで冷静に考えると、出発点から250nm(無風時)先に、飛行予定コースと直交する線を1本描いても、同じだったような気もしますが…思いついたことは、何でも試してみることにしました。フライトシミュレーターの天文航法は、どっちみち未完成なのですから。

 テンペルホーフでピラタスPC-9M改を起動し、自作のフライト・コードラント(航空四分儀)を南東へ回して、UTCの0612時(ローカル0812時)30秒に太陽の高度を測定。うゎあ、たったの3.74度しかありません。冬が近づいていますし、ベルリンはけっこう高緯度なのですね。どうも精度は、ヤバそうな予感が漂いますなぁ。
 出発点の地上で計ったのですから、本来は実際の高度角と、その予測計算値(緯度経度と現在の日時分秒からワークシートで計算)の差は、ゼロでないと困ります。しかし、あまりにも太陽が低いせいか、-6.76分角の差が出ました。眼高や視差など、実世界では補正計算の対象になる誤差原因を検討しましたが、関係なさそうで原因不明。くそっ…「図1」をご覧下さい。赤で「修正差(インターセプト)」と書いた、赤くて短い線がこの-6.76分に当たる、長さ6.76nmの修正差です。ちゃんと出発点にいるのに、わざわざ誤差を含んだ「位置の線(実測値)」を、青線で描き込むのは馬鹿げていますが、初めての作業なので、手順確認のためと割り切り記入しました。これで「モーニングサイト」(朝の天測)は、おしまい。燃料を満タンにします。

●さあ昇ってこい、太陽よ:
 クロックを進めて1027時とし、少し光量が増した景色の中でエンジンを始動。雲量は4200ftにscatterd、20000ftにfewでした。風は185度から5.2Kt。Virtual E6-Bで補正計算すると、250Ktで0.3Ktプラス、修正角は右1.1度と出ました。すると…修正コースは92.1度か、と私は思って、オートパイロットに入力しましたが、飛行後にこれは、誤って大圏コースの初期針路を計算に使ったことが分かりました。正解は、ラームライン(航程線=常に針路一定となる飛行コース)の針路93.8度+修正角1.1度=約95度だったのです。最初にお目に掛けたコースデータに、使いもしない大圏コースを先に記入したのが間違いの元だったのですが…これに気付かないまま、間もなく私は東向きに離陸して、左旋回上昇に入りました。
 ベルリン市街が眼下に沈んで、どんどん視界が広がります。昔のMSFSのベルリンは、壮麗な歴史的建物をたくさん並べていましたが、今のFlightGearのシーナリーは、近代的なビルばかり。あっ、連邦議会が見えた。中央ドームはガラス張りです。有名なナチスの放火事件で壊れたからですが、歴史を感じさせるのは、あれとテンペルホーフ空港くらいですかね。市街地をゆっくり2周しながら高度10000ft、速度は250KIAS、針路は東向きと、ほぼ完全に巡航状態を作って、1038時にテンペルホーフ空港中央を通過しながら、オートパイロットの針路保持をオンにして、推測航法を開始しました。
 広大な平野の上を東へ向かいます。少し時間的余裕を持たせたつもりでしたが、1043時ごろには、早くも太陽が子午線に近づいてきました。フライト・コードラントを真南に指向し、太陽をクローズアップします。

 今回からリアリズムを追求し、天測の難しさを知るため、ポーズを使わずに観測することにしました。太陽がグレーの子午線カーソルに掛かって南中する瞬間に、TimeのUTCを正確に読むと同時に、0.1度単位の赤い高度角目盛りを打ったカーソル(視野の向きを自動追尾)で、太陽の高さを正確に読むわけですが、チャンスは一度だけです。白く輝く光輪を、ミカンくらいの大きさまで拡大すると、1秒ごとに微かに高度を増し、そのペースが次第に遅くなってくるのが分かります。もうすぐ正中です。高度角目盛りを読み違えると、飛んだことになるので、私はコードラントのビューを、アップにしたりロングに引いたりして、目盛りに打った10度ごとの数字を確認。数秒後の南中時は、高度角が27.2度台になりそうです。

 「さあ昇れ、昇ってこい、大いなる真昼よ」…遠い昔に読んだ、ある海洋小説の一節が心によみがえってきます。はいっ、南中!! 正確にはUTC1047時27秒、高度角27.24度でした。昔の商船ではこの瞬間、六分儀を構えたセカンドオフィサー(航法担当)が、気合いを入れてストップウォッチを起動。クロノメーターと照合して正確な南中時刻を記録し、チャートテーブルへ行って計算を始めたのですね。

●てんやわんやの、メリパス(南中時の天測)計算:
 私も計算です。従来の、南中時用ワークシートが出したヌーンポジションは、52-28-00N 14-20-53Eですが、最近の経験からすると、経度は西へ10分以上誤差が出ていそうです。今回は航法に使わず参考にとどめ、正午の位置の線を計算します。
 太陽が真南だから、直交する位置の線はちょうど東西に向きます。これを作図するには、まず太陽の方角線を描きますが、その起点として現在の推測位置(緯度経度)が必要です。これはインターセプトの計算にも使います。ベルリンから9分間で42nm飛んだとして、予測緯度・経度は…しまった、ワークシートを用意していませんでした。作図でやるしかないけど、頼みのAtlas画面は…だめだ、ログを取るためにバックグラウンドで起動中です。A4の自作航路図(Atlas画面を印刷したもの)に作図しても精度が出ないので、飛行を記録していたAtlasを切って、代わりに非連動のAtlas画面を起動。「斜めものさし」を使って、画面上に飛行距離のベクトルをプロットし、Atlasカーソルの緯度経度表示機能で、観測時の推測位置を52-28E 14-35Eと読み取りました。ポーズを使わないと、なんと焦りまくって忙しい…いや、これも一種のロマンかな。

 メリパス(Meridian Passage=太陽の子午線通過時)のインターセプトは、プラス0.1分角と判明。距離にして0.1マイル(185m)の誤差で、望外の好成績です。しかし、ここから作図で正確に現在地を出すのが、けっこう難しいことも分かりました。出発時の位置の線を、セオリー通りに三角定規で、現在の推測位置まで平行移動しましたが、私の自作地図では、すぐ1nm程度の誤差が出てしまいます。2本の位置の線の交点は取れたものの、紙上では緯度経度の線が粗く、座標として読み取るのは困難です。あれこれ手間を掛け、再び非連動のAtlas画面を使って北緯52度34分、東経14度38分付近と判断しました。
 結果は「図2」をご覧下さい。赤い線分が、モーニングサイトの位置の線を平行移動したもの。青い「正午の位置の線」との交点Aが、求める現在地なのですが。私は間違えて、ここでB点に印を付けてしまいました。このことが間もなく、さらに混乱を呼びます。

●ワルシャワへの道を開いた、第3の天測:
 B点から、ワルシャワへ修正コースを引き直すと、分度器で求めた真方位で95.5度。すでに1107時で、試行錯誤を重ねる間に、デフォルトの針路で20分も飛行しています。実際の天文航法では、計算に必要な直進飛行時間を10分程度とみて、これを織り込んだ修正針路を算出するのだそうですが、不慣れでまったく不可能です。とは言え、何らかの修正値を出さなければ。
 ええと、観測から作図や計算で25分経過。その間に117nm飛んでいるので、その地点を正確に地図上で出すには? 出発前にテンペルホーフで取った位置の線の、本来は無用な6分角のインターセプト(距離では6nm)も、何らかの形で相殺しなくてはなりませんが、フィックス(実測した現在位置)を6nm、反対方向にずらすだけでいいのかな? 評価する方法がうまくつかめないまま、飛行機は真大気速度280KTASで飛び続けます。正午に得た確定位置(誤ってB点と判断)では、コースから北へそれているのは確実に見えるので、1110時になってから、地図をにらんでの山勘で、思い切って真方位96度に変針しました。
 次に必要なのは、ワルシャワ到着の予定時刻です。さっきのフィックスからだと、残る飛行距離は234nmなので、風が一定だから単純計算で1137時と算出しました。

 しかし。本当にさっきの変針でいいのでしょうか。判断材料として、ぜひもう一本、位置の線が欲しいと切実に思いました。天気はいいし、南中の瞬間が必要な子午線高度緯度法と違って、新たな位置の線を一本得るだけなら、いつ観測したって構いません。コードラントを再び南に指向して、さっそく測定。高度角は26.36度、UTCで1122時ちょうどでした。
 ここで「図3」をご覧下さい。さっき変針した96度線(細い赤線)の上に、現在の推定位置を、時刻と飛行速度から案分して53-20N 19-10Eと判断してプロットし、まずこの位置から、この時刻の太陽の方角(計算したところ194.8度)に線を引きました。以上の推測緯度経度と時刻から、太陽の推定高度が計算できるので、これを実測値と比較すると、その差(インターセプト)はプラス0.0552度(3.3分角)となり、推定位置から3.3マイル(図の短い赤線)だけ南にいることが判明。なので、さっき引いた太陽の方角の194度線上、推定位置より南に3.3マイル下がったところに、直角に青い位置の線を引きました。

 新たに取った位置の線は、先ほどの修正コース(細い赤線)より、やや南にあります。位置の線は、もちろんピンポイントの現在地は示しませんが、実測で出た一種の確定データです。幸い位置の線の向きは、修正コースの針路とよく似ていますので、私は修正コースより、やや南にいることが確信できました。ワルシャワを正確にヒットするには真東か、少し北へ修正しなくてはならないのですね。市街地の北へ外れるのと南へ外れるのでは、どっちがマシか考えますと、北へそれた場合のほうが、そばを流れるビスワ川を修正目標に取りやすいのでベターです。

●ビスワ川、そしてゴール:
 そこで1129時に89度へ変針。気が付けば今度のフライトは、作業の大部分がパソコン画面ではなく、パソコンラックの左に置いたサイドテーブルの上で進んでいます。天測と各種計算はパソコン上ですが、結果を必ず自作地図上に作図して、分度器で角度を確かめたりしながら、次の策を練っているからです。パイロットであると同時に、操縦は誰かさん任せで外を見る暇もなく計算する、多忙なナビゲーターの気分も少々しており、まさに一人二役です。ふと視線を画面に向けると、機体の左に大きな川が平行に走っているのが見えました。
 やった、街の真ん中へ向かうビスワ川です。もうすぐ目的地で、私は正確なコースの上か、すぐ北にいます。コードラントを川に向けて、機上から見た俯角を計ると18度でした。地面の標高が分かりませんが、高度10000ftで考えますと、ビスワ川はだいたい10キロ離れていることになり、見た目の印象と一致します。雲が少なくて幸いでした。

 ワルシャワ市手前の小空港EPSUが視界に入り、1136時ごろ市街地上空に到着。南寄りに目的地のEPWAが見えます。FlightGearではVarsovie Okecle空港といいますが、実物は現在、ワルシャワ・フレデリック・ショパン空港というのだそうです。去年がショパンの生誕200年ですから、最近の命名かも知れませんね。
1144時着陸、1145時ランプイン。燃料残は1045Lbs(158gal)×2でした。

 一応、初めて天文航法の位置の線を交差させて、クロスカントリーに成功しました。勘違いで蛇行しましたが、前後方向は1分半くらいの誤差でした。大混乱しましたが、加速モード無しのリアルタイム厳守、ポーズ無しのフライトはスリル満点、非常に充実した飛行でした。そのぶん、本気でイライラしましたが(^^;)。改善点がいろいろあり、さっそくメモしました。最大の発見は、「位置の線は、クロスベアリングで現在地を一点に絞らなくても、役に立つ」ということでした。以上ご覧に入れましたように、今回は最終段階で追加の位置の線を取ったことが、最終的なコース確認に非常に役立ちました。

●半分解けた、位置の線の謎:
 これで思い出したのが、国際的なフェリー・パイロット(機体空輸専門の飛行家)として有名だった故・清水千波氏の大西洋横断です。氏は1974年、ビーチクラフト・ボナンザで、カナダのセントジョーンズからスペインのマラガ(ジブラルタルの近く)へ単独飛行しましたが、行程のほとんどを推測航法と天測で飛んでいます。清水氏の生涯を描いた「孤独の操縦桿」(福本和也著、徳間文庫)に、天測結果を描き込んだチャートが収録されており、これによると現地時間の1015時(UTCで1415時)にセントジョーンズを出発。3時間後に太陽を右翼のアビーム(真横)に見た時点で、3分間隔で連続2回天測し、位置の線を描き込んでいます。夜間、アゾレス諸島を通過時にNDBで若干のコース修正を行い、さらに推測航法を継続。翌日夕刻にもう一度、西日を観測して位置の線を得て、間もなくゴールイン。つまり、位置の線の交点を使って現在地を決定するテクニックは、一度も使っていません。
 しかし航路をよく見ると、非常に合理的に天測を活用したことが分かります。まず出発後3時間目の測定では、太陽がアビームですから、位置の線は当然、針路と平行です。そして位置の線は、ほぼぴたりと予定コースに重なっています。つまり最初の天測は、推測航法の精度を、初期段階のうちに確認するためのものだったのですね。これと対照的に、2日目の位置の線はコースとほぼ直角です。ゴール接近を前に、飛行距離を確認する目的とみられ、燃料が足りるかどうか最終確認する意味もあるのでしょう。リチャード・バードの飛び方もよく似ており、やはり初期に針路と平行の位置の線を求め、北極点付近では数分おきに観測を繰り返して、飛行距離を確認しています。いま思えば、あれは極点の位置を見定める作業だったのですね。

 という次第で、空中航法の場合の位置の線は、クロスベアリングをしなくても、十分に有意義だと言うことが分かりました。机上の想像では思いつかず、精密なフライトシミュレーターで実験して、初めて知り得たことです。しかし…今回名前を挙げたもう一人のパイロット、サー・フランシス・チチェスターの天文航法は、まだ私には半分ほど謎です。彼は洋上で、ほぼ直角に変針して目的地に向かうのですが、私は長い間、この変針はコース左右方向の誤差を吸収する手段だと思っており、3年前にも本連載で、そのようにご紹介しました。しかし今では、もっと深い技術的根拠があるものと思います。まだ中身が完全には見えていませんが、いつの日か解明しましたら、ぜひご報告させて頂きます。長文、失礼しました。
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