GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
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居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです。
今回から、久しぶりに旅を始めます。
ロンドン南方のビギンヒル空港を離陸し、東欧からロシア方面を越えて、大阪の伊丹空港に帰着する予定です。主に天文航法や地文航法の実験・研究をしながら飛ぶつもりですので、コースの正式な起点は、世界の経度の原点となった、ロンドン・グリニッジ公園内の旧王立天文台上空。ゴールは、東経135度の日本標準時子午線が通る、兵庫県明石市上空です。従って名称も、
「GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅」
としました。総飛行距離はたぶん、以前行った世界一周フライトの3割くらいでしょう。
天測に使う、六分儀代わりの自作フライト・コードラント(航空四分儀)は改良を加え、南北両半球の任意の天体はもちろん、地上目標の方位や仰角と俯角も、簡単に計れるようにしました。これを使えば天文航法だけでなく、島や灯台などの方位を計って、複数の「位置の線」を地図に描き入れ、交点を自分の位置とする「クロスベアリング」などが可能になるはずです。このクロスベアリングは、船舶で使う複雑で本格的な地文航法の、基礎技術でもあります。
フライトシミュレーターの地文航法は、平たく言えば「地図と地形を照合しながら飛ぶ」技術ですから、カーナビ普及以前のドライブや二輪ツーリングと感覚的に似ており、FlightGearで実施可能な各種のナビゲーションの中でも、特に楽しいものの一つです。先日、Hydeさんやtoshiさんと進めたABN(飛行場灯台)の改造が大成功で、非常に遠距離からの視認が可能になりましたので、地文航法を使った有視界飛行は今後、大きく前進しそうです。
さて使用機ですが、この種の航法にはあまり高速機は似合いませんし、不便でもあります。そこで今回は、扱い慣れたピラタスPC7改に加えて、私の好きな戦前の練習機であるスタンプSV4複葉機にも、新たにフライト・コードラントを装備しました。今回の旅は、古典的なナビゲーション技術だけに特化するわけではありませんが、取りあえずはこの両機で、ヨーロッパ地域の旅を開始します。
以下に初回のナビゲーション・ログを挙げておきます。飛行コースの設定は、各空港・中継地の緯度経度を調べて、航法フリーウェア「vertual E6-B」で方位と距離を出すのが、もっとも正確な方法ですが…今回はAtlas画面を開いて、出発地に本連載の定番フリーウェア「斜めものさし」の原点を置き、次の中継地にカーソルを合わせて、飛行ベクトルの方位と長さを直読するという、お馴染みの簡略な方法を使いました。これでもそこそこの精度が出ます。
◎ビギンヒル空港EGKB
▼353度9nm
△グリニッジ天文台上空
▼112度20nm
◎ロチェスター空港EGTB
▼約125度28nm
△フォークストン市。東隣がドーバー。
▼93度94nm
◎フランス・ダンケルク市。すぐ東にベルギー領KOKSIJDE空港EBFN(読みは「コクスアイデ」)
▼112度35nm
◎ベルギー・コルトレイクのWEVELGEM空港EBKT
▼84度49nm
◎ブリュッセル国際空港EBBR
●出発直前まで、天測とリアルウエザーのトラブル:
さてロンドンのすぐ南、ケント州のビギンヒル空港で、スタンプSV4を起動します。(本連載では以前、ここを「英空軍基地」と表現しましたが、現在は基地ではなく、すでに民間企業が運営するジェネラル・エビエーションの飛行場になっていますので、謹んで「空港」と訂正させていただきます)
出発に先立ち、解決すべきトラブルが2件ありました。
まず、ピラタスPC7改から急いで移植した、フライト・コードラントの調子が悪くて、太陽の高度角から割り出した緯度が、約2度も狂ってしまうこと。さんざん調べましたが原因不明で、一時はスタンプの使用を諦めかけましたが、応急措置として internal properties の pitch-offset-degを使って、太陽の高度角を計ることにしました。専用のビューを一つ、リアコクピットの少し後上方に新設し、南中時の太陽を狙って計算したところ、緯度経度とも、わずか2nm程度の誤差に収まりました。やれやれ!
次いでもう一つ、リアルウエザーが効かない、という切実なトラブルも。
これはすでに、半年ほど続いていまして悩みの種です。FlightGear Ver.2.0はこの冬を境に、私の環境(Win-XP SP-3、Geforce GT240M)では、実際の天候を反映しなくなりました。たまたま北極飛行の最中だったもので、サービスエリア外かと思って、気付くのが遅れましたが、その後ずっと不作動のままです。最初は、Cドライブの丸ごとバックアップを使って、リアルウエザーが確実に動作していた、昨年9月時点の起動環境を再現したのですが、全く効果なし。常に、
Error: connect() failed in make client_socket()
SG_IO_OUT socket creation failed
というメッセージが、繰り返し出現します。そこで、
http://wiki.flightgear.org/Howto:_Fetch_live_aloft_data
http://www.flightgear.org/forums/viewtopic.php?f=27&p=118176
…上記のWikiや本家フォーラムを参照して、Advanced OptionsのInput/Outputに設定を追加したり、Networkのproxy設定に「58.17.71.121:8080」と書き込んだうえ、Windowsのファイアーウォールに「8080」の例外設定を設けたりしてみましたが、見当はずれらしく、さっぱりダメでした。最後の望みを新バージョンに託し、取りあえずは試験的にv20110530をインストールしたものの、ほぼ同じメッセージが出ます。
METARが自動受信できないなら、手動でデータを入れるという応急手段もあります。しかしEnvironmentメニューのWeater Scenario欄は、コピペを受け付けない設計になっており、NOAAで見たデータを全文タイプしなければならず、いささか煩雑に思われました。となると最低限、せめて風と雲の状態だけ、メニューからの選択で設定する手が残されます。これも、いざMETARの通報式を毎回読もうとすると、結構知らない略語だらけで、自分の不勉強を思い知らされました。
あれこれ探していたら、非常に便利な情報サイトを発見。以下がアドレスです。
http://ja.allmetsat.com/airports/index.html
これは最新のMETARとTAF(予報)が、日本語訳で読めてしまう…という、素敵なホームページです。「天気予報」のタグを選択し、世界地図を順次クリックして、出発地や中継地の空港ボタンにたどり着けばOKです。全世界4000以上の空港が対象で、むろん機械翻訳ですが、書式と用語が定型ですので、ほぼ誤訳の心配はないでしょう。飛行経路に沿って時々、新しいデータを参照すれば…天候の激変には対応できないものの、取りあえず「現在の天気」を追って飛べそうです。やれやれ、これでやっと、旅ができることになりました。
●グリニッジ子午線を越えて…遙かなる明石へ:
さっそく滑走路上で、上記サイトからビギンヒルを選択し、天候を確かめると…西の風8Kt、高度2000ftに雲量fewの好条件。燃料は満タン。一番最初の計画ではヒースローから離陸するつもりだったのですが、グリニッジから結構遠く、鈍足のスタンプSV4で今さら、そこまで回り道をする気にはなれません。えーーい、このまま行ってしまえ!!
私は最初の天測を、ベルギー海岸の少し手前、ダンケルク沖あたりの北海上空で行うつもりでしたので、出発時間は正午から逆算して、UTCの1040時(地方時は1140時)にしました。勇躍ビギンヒルを離陸し、高度1900ftで北へ10nm進みますと、テムズ川が「ひ」の字型にカーブして、南へ大きく張り出した地形に差し掛かります。カーブの北岸が、17世紀に拓けた「ドック地区」(造船・港湾・海軍施設ゾーン)で、南岸がグリニッジ地区です。実世界ではここに1675年、航海術の研究のため王立天文台が設けられ、初代台長が観測に使った小さな旧館を通過する経線が、のちに世界の経度原点である「本初子午線」になりました。
離陸後10分弱で、グリニッジ公園を示す緑のテクスチャーの上空に達しまして、HUDで経度ゼロのラインを確認。さあ東経135度…遙かなる明石へフライト開始。東へ変針し、川岸のロンドン・シティ空港を通過して、20nmかなたのロチェスター空港に機首を向けます。私の環境では今回から、全空港がABN(飛行場灯台)を点灯していますので、一発で位置が分かります。なんて便利なんだろう…と、しばし自画自賛(^^;)。
さて。わざわざグリニッジ上空を飛んでみたのは、今年の春に「経度への挑戦」(デーヴァ・ソベル、角川文庫、590円)という、実にエキサイティングな本を読んだからです。この本は、18世紀に独学で時計作りを学んだ天才職人、ジョン・ハリソンが40年を費やして完成した、世界初のクロノメーター(月差10秒で、初期のクォーツ腕時計並み!)の開発物語です。言うまでもなく、経度を正確に計算するには、一般的には非常に正確な時計が欠かせません。
ハリソンはこの時計のため、現在の精密機械にも必要不可欠なボールベアリングを発明し、酷寒や暑熱にさらされる部品の熱膨張を補正するバイメタルを考案するなど、大変な努力を重ねたのですが、本書はこうしたディテールを詳細に追うだけでなく、同時期の他の研究や時代背景について、たっぷり紹介しているのも魅力です。ハリソンの航海時計の最大のライバルは、月などの天体観測によって経度を算出する「月距法」で、精度不足のために結局、実用化はされなかったのですが…ガリレオ・ガリレイやカッシーニ、アイザック・ニュートン、そして彗星の回帰計算で名高いエドモンド・ハレーら、実にそうそうたるメンバーが、月距法の研究に参加していたのは驚きでした。そういえば、チャールズ・バベッジが19世紀に歯車式コンピューターを設計したのも、天測暦の計算ミスを無くすのが動機だったそうですね。イギリスの学術研究は、必ずしもアカデミックな好奇心だけが推進力ではなく、ずいぶん多くの部分で、国家の生命線だった航海術と深い関わりを持っていたんだなと、改めて思いました。
●北海上空をベルギーへ向かう:
1100時、ロチェスターの空港上空を通過。振り返ると、ロンドンと周辺に広がる十数カ所の飛行場灯台が、わずかなタイムラグを挟んで、呼び交わすように明滅しています。「貴機の航行安全なるを祈る」と、出発を祝っているようにも見え、久しぶりの長旅に、我ながら相当舞い上がっていることが分かりました(^^;)。
針路は約130度。出発前になって、スタンプSV4の計器類の不備を思い出し、あわてて磁気コンパスを取り付けたうえ、計器を発光式に改造したのですが、このコンパスは飛行中に方位カードが盛んに動揺し、なかなかリアルですが読み取りにくいため、ときどきHUDで真方位を確認しました。
眼下には高速と鉄道が、南東のフォークストンやドーバー方面へ延びており、基本的には、これに沿って飛べば楽勝です。なんだかバイクで東京から、第三京浜や横浜新道を使って、湘南海岸に抜けるような気分ですね。気になる燃費は10.8nm/galくらい。タンクには約20galしか入らないので、200nm程度しか飛べない計算です。90Ktに減速しても2000回転で10,95nm/galと、あまり改善されません。タンクの容量増が必要かも知れませんが、ヨーロッパは着陸地が多いので、当面このまま行くことにします。
1116時、英仏海峡に面したフォークストンの上空に到着。ここでMRTARを参照して、イングランド東端に近いマンストン空港EGMHの天候を見ると、雲高が3000ftまで上がっていました。私も雲のレイヤーを調整し、ついでに雲底のすぐ下まで上昇して、隣町のドーバーへ向かいます。
1121時、ドーバーの無線塔を通過。私がFlightGearで、最初にドーバー海峡を越えたのは2007年の11月で、世界一周の途中、ブレリオの海峡初横断を再現する試みでした。当時は携帯ノートのためグラフィック能力が低く、視界を10nmくらいに落としていたため、海の中に乗り出すと陸岸は見えず、真後ろに昇るコンパス代わりの朝日を振り返りながらのフライトでした。現在は約100nm先まで見えて、フランス突端のグリネ岬も視野に入っており、同じ海峡がずっと狭く感じられます。
1123時、ドーバー市街から、フランス東北端のダンケルクに定針し、いよいよ海峡上空へ。コースは真方位で93度。せっかく追い風を7Ktもらっているので、対気速度を75KIASに落とし、燃費が11.24nm/galまで改善されました。というわけで北海の上に出ましたが、左にイギリス、右手にフランスがたっぷり見えているので、緊張感はありません。カレー・ダンケルク空港の灯台も視界内です。1130時、マンストンとダンケルクの灯台を結ぶ直線上を東へ通過。さっそくAtlas画面をFlightGear非連動で起動し、地図代わりにして現在地を確認しました。20nm以上離れた、マンストンの飛行場灯台がまだ明瞭に見えます。これなら天候さえ許せば、鈍足かつ航続距離の短い複葉機でも、空港密度の高いヨーロッパは、地文航法だけで飛べてしまいそうです。
●フライト・コードラントと灯台を使って、位置の線を出す:
1150時、ダンケルク市が右アビーム(真横)に見え、コースを65度に変更。ここは第二次大戦冒頭、敗走を重ねた連合軍がドイツ軍に追いつめられ、英海軍の艦艇はもちろん、民間の遊覧船やボランティアのヨットまで参加して、必死に英本国へ兵士をピストン輸送した、あの有名な「ダンケルク撤退」の舞台です。機上からイギリスを振り返ると、まだマンストンやドーバーが見え、なるほど近いですけれども、ドイツ空軍が一番元気な時期に、潮流の速い外海を片道40nm近く航行するのですから、小さな船艇にとっては、楽な航海ではなかったことでしょう。
1153時、ベルギー領内の飛行場灯台が二つ、はっきり見えるので、フライト・コードラントでそれぞれ方位を測定。オーステンデ空港EBOSが79度、コクスアイデ空港EBFNが120度に見えました。本来は航空図に記された両空港から、それぞれ測定した角度の反方位にあたる直線を引くと、その交点が現在位置です。いわゆるクロスベアリングですが、私の場合はAtlas画面の中心にフリーウェア「斜めものさし」を置き、両空港を交互にカーソルで指して、「斜めものさし」の示すベクトル方位が、それぞれ79度と120度になる機体位置を探りました。こうするとAtlas画面中心の+マークが、先ほど申し上げた「交点」にあたる位置にプロットされますので、Atlasのデータウィンドウから、緯度経度を直読することができます。結果は北緯51度9分4秒、東経2度29分5秒で、HUDで確認した正解と比べますと、南へ約0.5nm、東へ約0.3nmずれただけでした。想像以上に高い精度で、これは使える!と思いました。
お次は天測です。
1201時02秒、太陽が南中。高度角はカーソル目盛りで62.40度、pitch-offset-degでは62.253度。南中の数秒前から薄雲が太陽の前を走り始め、「えーっ、嘘だろ!?」と、ハラハラしながらの観測になりました。地文航法のため高度を下げていましたが、天測前には雲の上に出るべきだったですな。
うまく太陽は見えましたが、緯度経度の計算値は、北緯51度13分33.4秒-東経2度43分47.7秒で、正解と比べますと緯度は約20nm、経度は恐るべし約50nmもずれています。離陸前のテストは好調だったのに、どうして本番で大ハズレをしたのか、今のところ謎です。パソコンのクロックが飛行中に0時を越えて翌日になったため、念を入れて翌日分の天文データでも再計算しましたが、わずかに誤差が縮んだだけでした。まったく天文航法は、一筋縄ではいきません。
●「アトミウム」を飛び越え、ブリュッセル空港へ:
1205時、北海からベルギーの陸岸に入り込んで、オーステンデ空港上空を通過。ここのMETARを調べると、西北西の風5Kt、雲は4000ftにfewで、相変わらず上天気が続いています。眼下は見渡す限り平らな農地で、豊かな楽園といった感じ。なるほどこれが、フランドル地方ですか。地図代わりのAtlas画面上でコースを計り直すと、きょうの目的地・ブリュッセルの中心までは111度60nm。到着予定は1250時ごろと分かりました。今日初めての風力補正計算をして、コースを右に2度修正しておきます。
1217時。南東への旅を続けて、ブラッケフェルト空港EBULの南を通過しましたが、ここだけは飛行場灯台がありません。また緑の四角い巨大ビルがあって、どうも様子が変です。好奇心に負けて低空で近づくと、緑の巨大オブジェクトは、どうやらビルではなくて森のつもりみたいです。GoogleEarthで調べると、ここは森を切り開いて作った小飛行場で、滑走路と誘導路の間に森林が残してあります。誘導路は短く枝分かれして、明らかに軍用飛行場。滑走路には着陸禁止を示す×マークが見え、すでに廃港なので灯台がないのだと分かりました。反転して1224時、ほぼもとのコースに復帰。
飛行コースに戻ってから、ブリュッセルへ延びる道路を第一の位置の線、振り返ってブラッケフェルト空港が見える方位340度を第二の位置の線として、地図上でだいたいの機位を出し、さらに続航。平野のあちこちに、発電用の風車が散在しておりまして、FlightGearのヨーロッパでも、再生可能エネルギーは注目を集めておる様子です。1237時、かなたにうっすらとブリュッセル空港の灯が見えました。
1248時、ブリュッセル市街地の外れにある「アトミウム」上空を通過。9個の球体(直径18m)をパイプ構造の通路でつなぎ合わせた、高さ約100mの銀色に輝くオブジェクト…というか、展望台やレストランのある建物で、1958年万博のパビリオンです。小学生のころ、ちらりと写真を見ましたが、一体どこの何なのか、ずっと疑問でした。ブリュッセルのシンボルの一つで、実は鉄の結晶構造を1650億倍に拡大した模型でもある、とは今回初めて知った次第です。大阪の「太陽の塔」と趣旨は同じですが、岡本太郎的な野性のエネルギーはありません。(ただし、ずっと知的で上品かも)
アトミウムの先に空港が見えており、またまたMETARで天気を確認すると、風が方向不定の2Ktに低下しており、雲はfewで4000ftのまま。天気には実に恵まれた日でした。鼻歌気分でファイナルアプローチに入りましたが、速度と高度がなかなか処理できません。ふと気付くと、スロットルがほぼ全開のまま戻らなくなっていました。このトラブルは、ブロンコとピラタスPC7改でも1、2回起きていますが、いつなぜ起きるかは不明です。とっさにオートパイロットの速度設定を変え、パワーを自動で約20%まで絞り、何とか滑走路にたどり着いて、またも速度設定でエンジンをアイドルに落とし、しっかり減速して機首を上げ、ほぼ完全な三点着陸に成功。そのまま惰性で誘導路に滑り込み、エプロンに駐機しました。エンジンが止まらないので、燃料をカットして強制停止し(この場合、再起動は不能)、無事に飛行計画終了。燃料残は26.4Lbs(4.4gal)と、ややギリギリでしたが、天測不調と最後のスロットル故障を除けば、充実感のある、いいフライトでした。
●ようやく、グラウンド・ループを克服:
私は以前から尾輪式の機体が苦手で、着陸時にはほとんど、大なり小なりグラウンド・ループを起こしておりましたが…今回、かくも鮮やかに降りられたのは、飛行場灯台のテストに尾輪式の機体を使って、結果的に相当な回数の発着訓練を重ねたからです。数機をダウンロードしてテストしたところ、操縦性の鈍いフォッケウルフ44複葉練習機とボーイング・ステアマン複葉機が比較的、グラウンド・ループを起こしにくいことが分かりました。
両機で自信を付けたあと、好きなスタンプSV4に戻ったところ、私はもうほとんど、グラウンド・ループを起こさなくなっていました。コツは、しっかり減速して機首を高く上げ、尾輪から先に降ろすつもりで接地することです。上げ舵を使い切る場合は、重心位置をやや後退させるとよいようです。なお単葉機では、v20110530に同梱されている新しいパイパーカブJ3が、非常に直進性を高めてあって、とても操縦しやすくなりました。
今回から、久しぶりに旅を始めます。
ロンドン南方のビギンヒル空港を離陸し、東欧からロシア方面を越えて、大阪の伊丹空港に帰着する予定です。主に天文航法や地文航法の実験・研究をしながら飛ぶつもりですので、コースの正式な起点は、世界の経度の原点となった、ロンドン・グリニッジ公園内の旧王立天文台上空。ゴールは、東経135度の日本標準時子午線が通る、兵庫県明石市上空です。従って名称も、
「GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅」
としました。総飛行距離はたぶん、以前行った世界一周フライトの3割くらいでしょう。
天測に使う、六分儀代わりの自作フライト・コードラント(航空四分儀)は改良を加え、南北両半球の任意の天体はもちろん、地上目標の方位や仰角と俯角も、簡単に計れるようにしました。これを使えば天文航法だけでなく、島や灯台などの方位を計って、複数の「位置の線」を地図に描き入れ、交点を自分の位置とする「クロスベアリング」などが可能になるはずです。このクロスベアリングは、船舶で使う複雑で本格的な地文航法の、基礎技術でもあります。
フライトシミュレーターの地文航法は、平たく言えば「地図と地形を照合しながら飛ぶ」技術ですから、カーナビ普及以前のドライブや二輪ツーリングと感覚的に似ており、FlightGearで実施可能な各種のナビゲーションの中でも、特に楽しいものの一つです。先日、Hydeさんやtoshiさんと進めたABN(飛行場灯台)の改造が大成功で、非常に遠距離からの視認が可能になりましたので、地文航法を使った有視界飛行は今後、大きく前進しそうです。
さて使用機ですが、この種の航法にはあまり高速機は似合いませんし、不便でもあります。そこで今回は、扱い慣れたピラタスPC7改に加えて、私の好きな戦前の練習機であるスタンプSV4複葉機にも、新たにフライト・コードラントを装備しました。今回の旅は、古典的なナビゲーション技術だけに特化するわけではありませんが、取りあえずはこの両機で、ヨーロッパ地域の旅を開始します。
以下に初回のナビゲーション・ログを挙げておきます。飛行コースの設定は、各空港・中継地の緯度経度を調べて、航法フリーウェア「vertual E6-B」で方位と距離を出すのが、もっとも正確な方法ですが…今回はAtlas画面を開いて、出発地に本連載の定番フリーウェア「斜めものさし」の原点を置き、次の中継地にカーソルを合わせて、飛行ベクトルの方位と長さを直読するという、お馴染みの簡略な方法を使いました。これでもそこそこの精度が出ます。
◎ビギンヒル空港EGKB
▼353度9nm
△グリニッジ天文台上空
▼112度20nm
◎ロチェスター空港EGTB
▼約125度28nm
△フォークストン市。東隣がドーバー。
▼93度94nm
◎フランス・ダンケルク市。すぐ東にベルギー領KOKSIJDE空港EBFN(読みは「コクスアイデ」)
▼112度35nm
◎ベルギー・コルトレイクのWEVELGEM空港EBKT
▼84度49nm
◎ブリュッセル国際空港EBBR
●出発直前まで、天測とリアルウエザーのトラブル:
さてロンドンのすぐ南、ケント州のビギンヒル空港で、スタンプSV4を起動します。(本連載では以前、ここを「英空軍基地」と表現しましたが、現在は基地ではなく、すでに民間企業が運営するジェネラル・エビエーションの飛行場になっていますので、謹んで「空港」と訂正させていただきます)
出発に先立ち、解決すべきトラブルが2件ありました。
まず、ピラタスPC7改から急いで移植した、フライト・コードラントの調子が悪くて、太陽の高度角から割り出した緯度が、約2度も狂ってしまうこと。さんざん調べましたが原因不明で、一時はスタンプの使用を諦めかけましたが、応急措置として internal properties の pitch-offset-degを使って、太陽の高度角を計ることにしました。専用のビューを一つ、リアコクピットの少し後上方に新設し、南中時の太陽を狙って計算したところ、緯度経度とも、わずか2nm程度の誤差に収まりました。やれやれ!
次いでもう一つ、リアルウエザーが効かない、という切実なトラブルも。
これはすでに、半年ほど続いていまして悩みの種です。FlightGear Ver.2.0はこの冬を境に、私の環境(Win-XP SP-3、Geforce GT240M)では、実際の天候を反映しなくなりました。たまたま北極飛行の最中だったもので、サービスエリア外かと思って、気付くのが遅れましたが、その後ずっと不作動のままです。最初は、Cドライブの丸ごとバックアップを使って、リアルウエザーが確実に動作していた、昨年9月時点の起動環境を再現したのですが、全く効果なし。常に、
Error: connect() failed in make client_socket()
SG_IO_OUT socket creation failed
というメッセージが、繰り返し出現します。そこで、
http://wiki.flightgear.org/Howto:_Fetch_live_aloft_data
http://www.flightgear.org/forums/viewtopic.php?f=27&p=118176
…上記のWikiや本家フォーラムを参照して、Advanced OptionsのInput/Outputに設定を追加したり、Networkのproxy設定に「58.17.71.121:8080」と書き込んだうえ、Windowsのファイアーウォールに「8080」の例外設定を設けたりしてみましたが、見当はずれらしく、さっぱりダメでした。最後の望みを新バージョンに託し、取りあえずは試験的にv20110530をインストールしたものの、ほぼ同じメッセージが出ます。
METARが自動受信できないなら、手動でデータを入れるという応急手段もあります。しかしEnvironmentメニューのWeater Scenario欄は、コピペを受け付けない設計になっており、NOAAで見たデータを全文タイプしなければならず、いささか煩雑に思われました。となると最低限、せめて風と雲の状態だけ、メニューからの選択で設定する手が残されます。これも、いざMETARの通報式を毎回読もうとすると、結構知らない略語だらけで、自分の不勉強を思い知らされました。
あれこれ探していたら、非常に便利な情報サイトを発見。以下がアドレスです。
http://ja.allmetsat.com/airports/index.html
これは最新のMETARとTAF(予報)が、日本語訳で読めてしまう…という、素敵なホームページです。「天気予報」のタグを選択し、世界地図を順次クリックして、出発地や中継地の空港ボタンにたどり着けばOKです。全世界4000以上の空港が対象で、むろん機械翻訳ですが、書式と用語が定型ですので、ほぼ誤訳の心配はないでしょう。飛行経路に沿って時々、新しいデータを参照すれば…天候の激変には対応できないものの、取りあえず「現在の天気」を追って飛べそうです。やれやれ、これでやっと、旅ができることになりました。
●グリニッジ子午線を越えて…遙かなる明石へ:
さっそく滑走路上で、上記サイトからビギンヒルを選択し、天候を確かめると…西の風8Kt、高度2000ftに雲量fewの好条件。燃料は満タン。一番最初の計画ではヒースローから離陸するつもりだったのですが、グリニッジから結構遠く、鈍足のスタンプSV4で今さら、そこまで回り道をする気にはなれません。えーーい、このまま行ってしまえ!!
私は最初の天測を、ベルギー海岸の少し手前、ダンケルク沖あたりの北海上空で行うつもりでしたので、出発時間は正午から逆算して、UTCの1040時(地方時は1140時)にしました。勇躍ビギンヒルを離陸し、高度1900ftで北へ10nm進みますと、テムズ川が「ひ」の字型にカーブして、南へ大きく張り出した地形に差し掛かります。カーブの北岸が、17世紀に拓けた「ドック地区」(造船・港湾・海軍施設ゾーン)で、南岸がグリニッジ地区です。実世界ではここに1675年、航海術の研究のため王立天文台が設けられ、初代台長が観測に使った小さな旧館を通過する経線が、のちに世界の経度原点である「本初子午線」になりました。
離陸後10分弱で、グリニッジ公園を示す緑のテクスチャーの上空に達しまして、HUDで経度ゼロのラインを確認。さあ東経135度…遙かなる明石へフライト開始。東へ変針し、川岸のロンドン・シティ空港を通過して、20nmかなたのロチェスター空港に機首を向けます。私の環境では今回から、全空港がABN(飛行場灯台)を点灯していますので、一発で位置が分かります。なんて便利なんだろう…と、しばし自画自賛(^^;)。
さて。わざわざグリニッジ上空を飛んでみたのは、今年の春に「経度への挑戦」(デーヴァ・ソベル、角川文庫、590円)という、実にエキサイティングな本を読んだからです。この本は、18世紀に独学で時計作りを学んだ天才職人、ジョン・ハリソンが40年を費やして完成した、世界初のクロノメーター(月差10秒で、初期のクォーツ腕時計並み!)の開発物語です。言うまでもなく、経度を正確に計算するには、一般的には非常に正確な時計が欠かせません。
ハリソンはこの時計のため、現在の精密機械にも必要不可欠なボールベアリングを発明し、酷寒や暑熱にさらされる部品の熱膨張を補正するバイメタルを考案するなど、大変な努力を重ねたのですが、本書はこうしたディテールを詳細に追うだけでなく、同時期の他の研究や時代背景について、たっぷり紹介しているのも魅力です。ハリソンの航海時計の最大のライバルは、月などの天体観測によって経度を算出する「月距法」で、精度不足のために結局、実用化はされなかったのですが…ガリレオ・ガリレイやカッシーニ、アイザック・ニュートン、そして彗星の回帰計算で名高いエドモンド・ハレーら、実にそうそうたるメンバーが、月距法の研究に参加していたのは驚きでした。そういえば、チャールズ・バベッジが19世紀に歯車式コンピューターを設計したのも、天測暦の計算ミスを無くすのが動機だったそうですね。イギリスの学術研究は、必ずしもアカデミックな好奇心だけが推進力ではなく、ずいぶん多くの部分で、国家の生命線だった航海術と深い関わりを持っていたんだなと、改めて思いました。
●北海上空をベルギーへ向かう:
1100時、ロチェスターの空港上空を通過。振り返ると、ロンドンと周辺に広がる十数カ所の飛行場灯台が、わずかなタイムラグを挟んで、呼び交わすように明滅しています。「貴機の航行安全なるを祈る」と、出発を祝っているようにも見え、久しぶりの長旅に、我ながら相当舞い上がっていることが分かりました(^^;)。
針路は約130度。出発前になって、スタンプSV4の計器類の不備を思い出し、あわてて磁気コンパスを取り付けたうえ、計器を発光式に改造したのですが、このコンパスは飛行中に方位カードが盛んに動揺し、なかなかリアルですが読み取りにくいため、ときどきHUDで真方位を確認しました。
眼下には高速と鉄道が、南東のフォークストンやドーバー方面へ延びており、基本的には、これに沿って飛べば楽勝です。なんだかバイクで東京から、第三京浜や横浜新道を使って、湘南海岸に抜けるような気分ですね。気になる燃費は10.8nm/galくらい。タンクには約20galしか入らないので、200nm程度しか飛べない計算です。90Ktに減速しても2000回転で10,95nm/galと、あまり改善されません。タンクの容量増が必要かも知れませんが、ヨーロッパは着陸地が多いので、当面このまま行くことにします。
1116時、英仏海峡に面したフォークストンの上空に到着。ここでMRTARを参照して、イングランド東端に近いマンストン空港EGMHの天候を見ると、雲高が3000ftまで上がっていました。私も雲のレイヤーを調整し、ついでに雲底のすぐ下まで上昇して、隣町のドーバーへ向かいます。
1121時、ドーバーの無線塔を通過。私がFlightGearで、最初にドーバー海峡を越えたのは2007年の11月で、世界一周の途中、ブレリオの海峡初横断を再現する試みでした。当時は携帯ノートのためグラフィック能力が低く、視界を10nmくらいに落としていたため、海の中に乗り出すと陸岸は見えず、真後ろに昇るコンパス代わりの朝日を振り返りながらのフライトでした。現在は約100nm先まで見えて、フランス突端のグリネ岬も視野に入っており、同じ海峡がずっと狭く感じられます。
1123時、ドーバー市街から、フランス東北端のダンケルクに定針し、いよいよ海峡上空へ。コースは真方位で93度。せっかく追い風を7Ktもらっているので、対気速度を75KIASに落とし、燃費が11.24nm/galまで改善されました。というわけで北海の上に出ましたが、左にイギリス、右手にフランスがたっぷり見えているので、緊張感はありません。カレー・ダンケルク空港の灯台も視界内です。1130時、マンストンとダンケルクの灯台を結ぶ直線上を東へ通過。さっそくAtlas画面をFlightGear非連動で起動し、地図代わりにして現在地を確認しました。20nm以上離れた、マンストンの飛行場灯台がまだ明瞭に見えます。これなら天候さえ許せば、鈍足かつ航続距離の短い複葉機でも、空港密度の高いヨーロッパは、地文航法だけで飛べてしまいそうです。
●フライト・コードラントと灯台を使って、位置の線を出す:
1150時、ダンケルク市が右アビーム(真横)に見え、コースを65度に変更。ここは第二次大戦冒頭、敗走を重ねた連合軍がドイツ軍に追いつめられ、英海軍の艦艇はもちろん、民間の遊覧船やボランティアのヨットまで参加して、必死に英本国へ兵士をピストン輸送した、あの有名な「ダンケルク撤退」の舞台です。機上からイギリスを振り返ると、まだマンストンやドーバーが見え、なるほど近いですけれども、ドイツ空軍が一番元気な時期に、潮流の速い外海を片道40nm近く航行するのですから、小さな船艇にとっては、楽な航海ではなかったことでしょう。
1153時、ベルギー領内の飛行場灯台が二つ、はっきり見えるので、フライト・コードラントでそれぞれ方位を測定。オーステンデ空港EBOSが79度、コクスアイデ空港EBFNが120度に見えました。本来は航空図に記された両空港から、それぞれ測定した角度の反方位にあたる直線を引くと、その交点が現在位置です。いわゆるクロスベアリングですが、私の場合はAtlas画面の中心にフリーウェア「斜めものさし」を置き、両空港を交互にカーソルで指して、「斜めものさし」の示すベクトル方位が、それぞれ79度と120度になる機体位置を探りました。こうするとAtlas画面中心の+マークが、先ほど申し上げた「交点」にあたる位置にプロットされますので、Atlasのデータウィンドウから、緯度経度を直読することができます。結果は北緯51度9分4秒、東経2度29分5秒で、HUDで確認した正解と比べますと、南へ約0.5nm、東へ約0.3nmずれただけでした。想像以上に高い精度で、これは使える!と思いました。
お次は天測です。
1201時02秒、太陽が南中。高度角はカーソル目盛りで62.40度、pitch-offset-degでは62.253度。南中の数秒前から薄雲が太陽の前を走り始め、「えーっ、嘘だろ!?」と、ハラハラしながらの観測になりました。地文航法のため高度を下げていましたが、天測前には雲の上に出るべきだったですな。
うまく太陽は見えましたが、緯度経度の計算値は、北緯51度13分33.4秒-東経2度43分47.7秒で、正解と比べますと緯度は約20nm、経度は恐るべし約50nmもずれています。離陸前のテストは好調だったのに、どうして本番で大ハズレをしたのか、今のところ謎です。パソコンのクロックが飛行中に0時を越えて翌日になったため、念を入れて翌日分の天文データでも再計算しましたが、わずかに誤差が縮んだだけでした。まったく天文航法は、一筋縄ではいきません。
●「アトミウム」を飛び越え、ブリュッセル空港へ:
1205時、北海からベルギーの陸岸に入り込んで、オーステンデ空港上空を通過。ここのMETARを調べると、西北西の風5Kt、雲は4000ftにfewで、相変わらず上天気が続いています。眼下は見渡す限り平らな農地で、豊かな楽園といった感じ。なるほどこれが、フランドル地方ですか。地図代わりのAtlas画面上でコースを計り直すと、きょうの目的地・ブリュッセルの中心までは111度60nm。到着予定は1250時ごろと分かりました。今日初めての風力補正計算をして、コースを右に2度修正しておきます。
1217時。南東への旅を続けて、ブラッケフェルト空港EBULの南を通過しましたが、ここだけは飛行場灯台がありません。また緑の四角い巨大ビルがあって、どうも様子が変です。好奇心に負けて低空で近づくと、緑の巨大オブジェクトは、どうやらビルではなくて森のつもりみたいです。GoogleEarthで調べると、ここは森を切り開いて作った小飛行場で、滑走路と誘導路の間に森林が残してあります。誘導路は短く枝分かれして、明らかに軍用飛行場。滑走路には着陸禁止を示す×マークが見え、すでに廃港なので灯台がないのだと分かりました。反転して1224時、ほぼもとのコースに復帰。
飛行コースに戻ってから、ブリュッセルへ延びる道路を第一の位置の線、振り返ってブラッケフェルト空港が見える方位340度を第二の位置の線として、地図上でだいたいの機位を出し、さらに続航。平野のあちこちに、発電用の風車が散在しておりまして、FlightGearのヨーロッパでも、再生可能エネルギーは注目を集めておる様子です。1237時、かなたにうっすらとブリュッセル空港の灯が見えました。
1248時、ブリュッセル市街地の外れにある「アトミウム」上空を通過。9個の球体(直径18m)をパイプ構造の通路でつなぎ合わせた、高さ約100mの銀色に輝くオブジェクト…というか、展望台やレストランのある建物で、1958年万博のパビリオンです。小学生のころ、ちらりと写真を見ましたが、一体どこの何なのか、ずっと疑問でした。ブリュッセルのシンボルの一つで、実は鉄の結晶構造を1650億倍に拡大した模型でもある、とは今回初めて知った次第です。大阪の「太陽の塔」と趣旨は同じですが、岡本太郎的な野性のエネルギーはありません。(ただし、ずっと知的で上品かも)
アトミウムの先に空港が見えており、またまたMETARで天気を確認すると、風が方向不定の2Ktに低下しており、雲はfewで4000ftのまま。天気には実に恵まれた日でした。鼻歌気分でファイナルアプローチに入りましたが、速度と高度がなかなか処理できません。ふと気付くと、スロットルがほぼ全開のまま戻らなくなっていました。このトラブルは、ブロンコとピラタスPC7改でも1、2回起きていますが、いつなぜ起きるかは不明です。とっさにオートパイロットの速度設定を変え、パワーを自動で約20%まで絞り、何とか滑走路にたどり着いて、またも速度設定でエンジンをアイドルに落とし、しっかり減速して機首を上げ、ほぼ完全な三点着陸に成功。そのまま惰性で誘導路に滑り込み、エプロンに駐機しました。エンジンが止まらないので、燃料をカットして強制停止し(この場合、再起動は不能)、無事に飛行計画終了。燃料残は26.4Lbs(4.4gal)と、ややギリギリでしたが、天測不調と最後のスロットル故障を除けば、充実感のある、いいフライトでした。
●ようやく、グラウンド・ループを克服:
私は以前から尾輪式の機体が苦手で、着陸時にはほとんど、大なり小なりグラウンド・ループを起こしておりましたが…今回、かくも鮮やかに降りられたのは、飛行場灯台のテストに尾輪式の機体を使って、結果的に相当な回数の発着訓練を重ねたからです。数機をダウンロードしてテストしたところ、操縦性の鈍いフォッケウルフ44複葉練習機とボーイング・ステアマン複葉機が比較的、グラウンド・ループを起こしにくいことが分かりました。
両機で自信を付けたあと、好きなスタンプSV4に戻ったところ、私はもうほとんど、グラウンド・ループを起こさなくなっていました。コツは、しっかり減速して機首を高く上げ、尾輪から先に降ろすつもりで接地することです。上げ舵を使い切る場合は、重心位置をやや後退させるとよいようです。なお単葉機では、v20110530に同梱されている新しいパイパーカブJ3が、非常に直進性を高めてあって、とても操縦しやすくなりました。
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