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世界最北の空港…植村直己さんをしのんで

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なし 世界最北の空港…植村直己さんをしのんで

msg# 1.3.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1.1
depth:
42
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-11-26 4:41 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 650
hideです。
 北極圏「オーロラ・フライト2010」第6回をお届けします。先日到着したスピッツベルゲン島(施政権はノルウェー)のニーオーレスンから、ピラタスPC7改でグリーンランド北端付近を越え、隣接するカナダ領・北極諸島の北東端、エルズミア島のアラート空港(北緯82度31分)へ向かいます。ここは「世界最北の空港」として知られ、Atlas画面をくまなくスクロールしても、なるほどマップデータには、これより北に空港はありません。極点までは約450nmを残すのみです。

 アラートは1978年に、探検家の故・植村直己さんが、北極点往復とグリーンランド縦断旅行のベースキャンプにした場所です。植村さんはここから、特注の犬ぞり「オーロラ号」と17頭の犬を、チャーター機のDH6ツインオッターに積んで、西へ74nm離れた、同じエルズミア島のコロンビア岬に運び、約2カ月に及ぶ単独行を経て極点に立ちました。ソリの搭載能力は約500キロしかなく、常に「燃料」にあたる犬の餌を始め、物資の不足に悩まされる旅ですから、ツインオッターによる空中補給は、この前人未踏の大冒険を実現する必須条件ですけれども、それを支えたのは正確な衛星航法でした。
 今回は、犬ぞりとテント付きの「ナオミくん人形」を氷上に置き、FlightGearのツインオッターで捜索する実験も行いました。マイアルバムに画像をアップしておきますので、併せてご覧頂けましたら幸いです。それではまず、アラートへの旅をお話ししましょう。

●氷海を越えて、世界最北の空港へ:
 出発地のニーオーレスンとゴールのアラートは、いずれも小さな飛行場で、NDBはありますが、ILSはもちろんなく、滑走路の照明もありません。この緯度ではすでに、正午でも夕焼けがほぼ終わって、宵闇に入りかけているので、灯火のない飛行場に降りるのは相当困難です。近く極点横断に向けてアラートを離陸する時は、それほど問題はないと思いますが、やはり到着時は滑走路が見えないと困ります。従って今回は、オーロラ・フライト唯一の例外として、あえてパソコンのクロックを日照時間の長い季節まで巻き戻し、日中に飛ぶことにしました。コースは以下の通りです。
◎ニーオーレスン(ENAS)(78°55'39"N-11°52'27"E) NDB414。
   ▼321度695nm(大圏コース)
◎アラート(CYLT)(82°31'04"N-62°16'50"W) 偏差=偏西061度
 5500ft滑走路(048T/228T) NDB305。

 このフライトを実施したのは11月22日ですが、まるまる2カ月巻き戻しましたので、ほぼ秋分に匹敵する環境となりました。ニーオーレスン飛行場は、暗い夕焼けの残照から一転、青い空のもと、緑あふれる風景が広がりまして、こんなに美しいところだったのかと、しばらく見とれました。
 風は3000ft以下300度10Kt、9000ft以上は320度30Kt。雲量は19500ftにcirrus、4000ftにscatterdでした。この数値は、ごく見慣れたもので、私の環境では…実はFlightGearのデフォルトです。クロックを過去の日付に変更してしまうと、どうやらリアルウエザー機能が無効になるようですね。

 0936時(現地1136時)にエンジン始動。燃料は機内タンクに半分の2000Lbsとしておきます。
真方位の針路は321度で、これに風力補正を掛けます。幸いほとんど正確に向かい風なので、対地速度が30Kt減るだけと考えていいでしょう。いっぽうGPSにGRIDN(グリッド方位の「北極点」=赤道上の経度180度を意味するフィックス)をセットすると、自作の計器が示したコンバージェンス(真方位とグリッド方位の差)は12.1度と判明。ここは東経なので、321度引く12.1度イコール308.9度で、グリッド針路が算出できました。数値を丸めて309度とし、針路が決まりました。離陸して巡航高度まで上昇し、巡航速度で落ち着いたところで、空港NDBの真上に舞い戻り、航法を開始します。
 0953時、ニーオーレスン上空28000ftを227KIAS(指示対気速度。真大気速度は348KTAS)で通過しつつ、燃費を測定すると3.5971nm/galと好調でした。針路をグリッド方位309度にセット。気速は間もなく230KIAS(353KTAS)あたりで落ち着きました。GS(対地速度)は323Ktなので2.15時間後、すなわち1202時ごろには、アラートに着くはずです…もし本当に、風が変わらなければ。1004時、4倍速に加速。
 1008時、ニーオーレスンNDBにセットしておいたADFの指針が、早くも揺れています。よほど送信出力が小さいのでしょうね。1013時、スピッツベルゲン島が背後の水平線下に沈み、正面には広大な氷原が見え始めました。いよいよ本格的な「北極」の始まりです。

 1023時、とうとう氷原に差し掛かりました。白い地色に濃淡を描いたテクスチャーですが、高々度から見下ろすと、滑り止めの凹凸を付けたコンクリートの敷石を、一面に張り巡らした広場のようにも見えます。ウイングレベラーで維持しているコースが、0.3度ほど右にずれたので修正。ちなみに計器を見ると、コンバージェンスはいつのまにか358.5度になっていました。極地では経度の線が放射状に走っているため、現在地が移動するにつれて「正しい針路」は刻々と変わりますが、これにコンバージェンスを加えたグリッド方位は、常に309度で一定です。今回、どうやら風向は変化しませんので、グリッド航法専用コンパスで、ひたすら309度を維持すればOKです。(注:この理解は、正しくありませんでした。あとでご説明します)

●地図を巡るトラブル:
 1050時、機首の左に小さな島が幾つか見えました。グリーンランドの端っこかな。まもなく正面に低くて大きい陸岸が登場。やはりグリーンランドです。燃料は4割消費して、残量は600Lbs×2まで減りました。軽くなった分、速度はいつのまにか228KIAS、350KTASに上がっています。陸上には多数の凍った湖が現れ、海岸には無数の湾が、凍った海には島々が、どこまでも広がる地域に突入。フィヨルドではなく、陸地はすべて平らな低地です。青い空のもと、久しぶりに見る壮大な風景で、じっくり「北極圏」を楽しみました。
 1154時、前方の広い湾で氷が切れ、開水面が現れました。山もあります。協定世界時では1203時で、ほぼちょうどアラートへの到着予定時刻です。今回はリアルウエザー機能が働かず、もやが少ないだけに、視界はドカーンと何十nmも開けているのですが、空港はどこにも見あたりません。
 Atlas画面を開けばすぐ「正解」が見えますが、それでは詰まらないので、背後で動いていたAtlasをいったん終了。地形から現在地を知る地文航法で行こうと思い、機体と連動しないバッチファイルを使って、Atlasの地図だけを起動しました。

 ところが、これがまずかったのです。デフォルトでは、たまたま地図をシベリアで起動するようにしており、はるばるグリーンランドまでスクロールしたら、さすがに負荷が重く、肝心のFlightGearがハングアップしました。馬鹿みたいですな…(^^;)。直前に保存した画像から、機体はアラートを約30マイル左に外して、北緯80度50分、西経63度付近にいたことが分かりました。私が見た開水面は湾ではなく、グリーンランドとエルズミア島を隔てるネアズ海峡でした。位置が分かればOKと、Initial Position機能を使った空中起動で、ほぼ同じポジションからリスタート。しかしまあ、ひどい目に遭いました。推測航法の場合、やっぱり地図は飛行前にきちんと展開しておくか、プリントアウトすべきでした。
 再起動後も、見覚えのある地形がありません。ひとつ隣の開水面を飛んでいたらしく、アラートのNDBをネットで確認し、ADFを動かして、やっと空港が見つかりました。慎重に接近し、難なく着陸。滑走路は未舗装で土に見えるテクスチャーでしたが、資料ではgravel(砂利)となっています。
 Atlasでは氷上に空港が見えますが、これは誤表示で、実際はちゃんと正しい位置…海岸にありました。地図上にはないDME(VORなし)も、現実通りに存在し、ちゃんと受信できます。吹き流しと進入角表示灯、航空灯台も作り込まれ、思ったほどひどくありません。しかし現地の衛星写真を見ると、深い雪の中に、土色をした滑走路がぼんやり埋まって見えるだけで、およそ楽しくなさそうな飛行場です。

 それはそうと、コースを30nmも外れた原因は、風の計算ミスでした。私は最初に補正計算をしたまま、風向きが変わらないとみて、以後は放置していました。針路一定のラームラインを使う、通常の航法でしたら、これで問題ありませんが、グリッド航法の場合は大圏コースを飛びますので、通常の緯度経度座標で考えれば、機首方位はどんどん変化します。機上ではこの変化する機首方位に、これまた変化するコンバージェンスを足して変化を相殺し、グリッド航法専用コンパスでは見かけ上「針路は一定」です。けれど風向は、通常の緯度経度座標で定義されていますから、「風向きが一定」であっても、機体との相対方位は、どんどん変化しているのです。今回の場合で言えば、「320度の風」は、最初ほぼ真正面から吹き、ついで右回りに位置を変え、機体を南に押し流したのです。グリッド航法では、無風でない限り、定期的に風力補正計算をやり直す必要があるのです…ちゃんと考えれば、当たり前なんですけれどね。勉強になりました。

●ナオミくんを探せ!:
 到着後、これまで使っていた夏のテクスチャーを、遅ればせながら冬モードに変更。冒頭お話ししましたように、次は植村直己さんをモデルにした「ナオミくん人形」の捜索フライトに移ります。
 植村さんの1978年の遠征は、恐らく衛星航法による犬ぞり探検の先駆けでしょう。本連載では以前、植村さんがGPSを使ったと書きましたが、時代的にも間違いで、実際はNASA提供のDCPという無線機が使われました。ごめんなさい。これは気温などを自動計測し、気象衛星ニンバス6号へ送信する装置で、NASAがデータを解析して現在位置を算出し、約1日遅れで通報してくれる仕組みでした。GPSに比べると非常に不便ですが、天候などに左右されず、正確な位置が分かることは、やはり画期的であったと思われます。
 限られた量しか運べない単独行で、長距離を移動するには、空中補給が必須です。しかし氷原は平らではなく、気象条件もさまざまですから、よほどピンポイントの測地手段を持たないと、空から発見してもらえません。私は南極飛行(本連載では今年3月13日〜5月20日)の折りに、C-130を使って、燃料切れで氷上に不時着した、赤いピラタスPC7改を捜索したところ、GPSで至近距離まで近づきながら、なかなか目視できなくてショックを受けました。そこで、もっと小さい犬ぞりクラスの目標は、どのくらい見えにくいのか、ぜひ試してみたいと思った次第です。

●そりと人形を作る:
 マイアルバムでお目に掛けた「ナオミくん人形」は6月ごろ、この北極飛行のプランを練りながら、AC3Dで遊んでいる間に、サクサクと出来てしまいました。犬ぞりは植村さんのオーロラ号がモデルで、さほど大きな間違いはないと思いますが、犬は正直、時間があれば作り直したかったです。
 これが犬に見えるかどうかは、さておき(笑)。実はサイズをうっかり、普段見慣れている愛玩犬並みにしてしまったのです。実際のそり犬は体重約40キロで、後足で立つと人の肩くらいはあり。また私は犬を2列縦隊に並べましたが、これは欧米や日本の探検隊でお馴染みの、カナダ・エスキモーのスタイルです。植村さん自身は、グリーンランド西岸のチューレで犬ぞりを学んでおり、全部の犬を扇形に繋ぐ方法がメインでした。引き綱の描き方も極めていい加減ですが、どうか目をつぶって下さい…(^^;)。
 そりと人形は、UFOを使って配置することも可能ですが、氷上の位置や見え方が事前に分かってしまうので、航空機を駐機させるのと同じ方法を使い、緯度経度で位置決めをしました。最近は、すっかりやり方を忘れてしまいましたので、同じ境遇の方のお役に立てばと思い、以下に方法を書いておきます。
 まず…次のようなシナリオを書き、naomi.xmlという名称で保存。ぶっつけ本番で飛んで、氷上にそりがなかったら困るので、最初はニーオーレスンで実験しました。

<?xml version="1.0"?>
<PropertyList>
<scenario>
<description>
</description>

<entry>
<type>aircraft</type> ←■タイプを航空機とすると、レーダーに映る。
<model>/Aircraft/naomi-aurora/Models/naomi-aurora.xml</model> ←■注■
<latitude>83.100000</latitude> ←■植村さんの著書にある、コロンビア岬の緯度経度。
<longitude>-71.033333</longitude>
<altitude>0</altitude> ←■凍った海の上では、標高ゼロとする。
<speed>0</speed>
<roll>0</roll>
<!-- <latitude>78.925</latitude> ←■テストに使ったニーオーレスンの緯度経度。
<longitude>11.8916</longitude>
<altitude>70</altitude> ←■滑走路の標高。
<speed>0</speed>
<roll>0</roll> -->
<heading>270</heading>
</entry>

</scenario>
</PropertyList>

 これをFlightGear/data/AIに置きます。このフォルダ内に、さらにAircraft/naomi-aurora/Modelsというフォルダを作り、naomi-aurora.ac(3D犬ぞり・ナオミくん人形)を置きました。
 上記シナリオの■注■にあるModels/naomi-aurora.xmlは、本来はAI航空機の飛行性能を記述するファイルだと思いますが、今回は飛ばさないので、単にナオミくんのacファイル名を定義しています。これを省略して前記シナリオで、いきなりacファイルを定義することも可能で、より簡単に思えます。ただし、FlightGear起動時にウイザードからシナリオを呼び出す際、この方法でも、ちゃんとメニュー欄に表示されるのかどうか、といった細かい部分は未確認です。ちなみにnaomi-aurora.xmlの内容は、以下の通りです。
<?xml version="1.0"?>
<PropertyList>
<description>naomi-aurora</description>
<author>hide</author>
<path>Models/naomi-aurora.ac</path>
</PropertyList>

●ケンボレック航空のツインオッターを飛ばす:
 では、コロンビア岬へ出発します。コースは次の通りです。
注:CGは大圏コース、RLはラームラインの針路と距離。今回は短距離なのでRLを使用。
◎アラート(CYLT)(82°31'04"N-62°16'50"W)
   ▼GC=302.3°74.32nm RL=298°74.4nm
△エルズミア島コロンビア岬(83°06'N-71°02'W)
   ▼RL=118°74.4nm
◎アラート(CYLT)

 FlightGearのDHC-6ツインオッターは、車輪かフロート、またはスキーが選択可能です。機種選択画面では、濃いめのオレンジと白に塗られた機体が登場しますが、あれこれ調べたところ、これはまさに、植村さんがグリーンランドで利用した、Kenn Borek Air Ltd.社の塗装だと分かりました…嬉しいなあ! カナダのレゾリュートに本社があり、北極圏で活動する小型チャーター機の航空会社としては、かなりの技術と信用を持っているようです。本機には当然、グリッド航法用コンパスはありませんし、距離も近いので、航法にはGPSを使うことにしました。小さな犬そりを発見するのは難しいので、これでちょうどいいはずです。帰路には、アラートのNDBとDMEも使えます。
 今回も地図代わりに、スタンド・アローン設定のAtlasを使いますが、ハングアップしては困るので、最初から起動して表示範囲や倍率をセットしておきます。Atlas上のコロンビア岬は、先端部分がちょうど緯度の線に沿って切断されたように見え、少々バグの気配を感じます。そりとナオミくんが、無事に配置できるのかどうか不安です。場合によっては、地中に潜ったりするかもしれません。
 1355時(現地10時55分)、ツインオッターを起動。燃料は満タン1200Lbsです。さっそくケンボレック航空の塗装に切り替え、エンジンを始動。7000ftまで上がる予定で、航法計算をしておきます。310度20Ktの風を受けて、仮に120KTASで飛んだとすると、WCA(針路補正値)は2度右となり、針路は真方位で300度です。計8段階に下がる、フルスパンのフラップ(エルロンも同期して動く)を3段目にセットして離陸。上昇旋回を経て1408時(現地1108時)、雲を抜けた7000ftでレベルオフして、目的地に機首を向けました。ここでちょっと問題を発見。DHC-6のオートパイロットは、高度保持は効きますが、なぜか真方位保持モードがGPSに対応していません。やむを得ず、GPSの指す356度にウイングレベラーで定針しました。
 久しぶりにGPSを使ったので、HUDのベアリング(目標への針路)表示が、真方位ではなく磁気方位だということを、うっかり忘れておりました。パネルのジャイロコンパス(当然、磁気方位)で機首方位を決め、旅を続けます。出力を90%まで絞り、燃費を計ると1.94nm/galをマーク。まあまあというところでしょうか。

 過去に、ごく短時間飛ばした限りでは、ツインオッターの印象はさほど良くありませんでした。スマートな機体なのに割と鈍足で、かつ失速特性がシビアに調整され、FlightGearの機体には珍しく翼端から失速して自転し、スピンに入ろうとします。しかし、例えばブロンコのように…予告もなく失速し、機体の姿勢すら変えずフラットに落下して、しかもリカバリーが困難…といった変な癖はなく。ていねいに扱えば十分安全な飛行機です。気になっていた速度も、このくらい(7000ft)の高度では全開で168Kt出ており、同時代のライバル機ショート・スカイバンより遅いですが、単発オッターやピラタス・ポーターに比べれば、数十ノットも優速です。モデリングはなかなか精密で、Y字型支柱の左右にそれぞれハンドルが付いた、戦前のユンカース旅客機みたいにレトロな操縦桿や、天井から下がった二式大艇さながらのスロットルなど、機体の味を生かした工作が光ります。後部のカーゴドアを開けたり、ワイパーを動かしたり、グライダー曳航も可能な設計で、それなりに名機ではあろうと思います。

 …さてコロンビア岬に到着、やはり岬の先端が、断ち切られたような風景です。実景の画像はネットで見つからず、GoogleEarthも解像度が低く、実際はどうなっているのか、よく分かりません。ともかくGPSのベアリング表示を見ながら、約1000ftに降下して、そりがいるはずの地点に機首を向け、必死で氷上を探しました。南極では、もっと大きな飛行機を探すのに苦労しましたので、今回は「正確に狙い、その付近だけ見る」ことに留意しましたが、これは正解でした。

●コロンビア岬にて:
 1440時。目標地点付近をフライパスし、視線を左に振ったら、氷原の模様とは違う、細長い黒点が見えました。あっと思って減速、旋回降下し、低い太陽を背にしたら、黒点はそりになりました。おおっ、ナオミ君が万歳しています。赤い服と、赤いテントが陽光を受け、ひときわ鮮やかです。なんだかもう、感動的です。ナオミくんは、実は前後対称に作ってあるので、どっちから近づいても必ず、こっちに顔を向けて万歳してくれるのですけれども…ともかく、やった。一発で捉えました!
 フルフラップにして着陸。氷上はプログラム上、不整地と見なされるようで、降りてからが大変でした。スキー付き前輪やラダーを曲げようが、ブレーキを片利きさせようが、思うように地上旋回しません。最初はスルスル向きを変えても、デコボコに邪魔されて機首が反対に振れたり、頑固に直進したり…かなり手を焼きました。やっとソリの真後ろに駐機して、画像をキャプチャーします。機体を背に陽光を浴びるナオミ君と、反対から見た逆光の、荒々しいコロンビア岬を背にしたシルエット。どれも大満足の光景です。余談ながら、1909年に初めて北極点に到達したアメリカのピアリーも、この場所から出発しています。
 FlightGearの世界では、あっさり着陸できる氷原ですが、植村さんの出発時は、海岸から沖合に掛けて数キロに及ぶ、大変な乱氷帯が広がっていたそうです。あらゆるサイズ(多くは数メートル大)の氷塊が、無秩序に重なり合い、最初はそり1台が通れるすき間も見あたらず、数十分を費やして氷を割り、そりを通し、すぐまた氷に阻まれ…という繰り返しだったとか。氷の割れ目にそりや犬が落ちかけ、たった一人で命がけのリカバリーをしたり、犬の食糧を獲る猟の失敗やシロクマの襲撃、飛行機が着陸可能な広い平地を探すなど、あらゆる苦労を重ねての前進でした。数年ぶりに手記を拾い読みしましたが、すごい旅です。

 私は数十分滞在し、名残を惜みながら離陸。高度保持を6000ftにセットし、アラートに機首を向けました。磁気方位でほぼ真南、真方位ですと約130度。間もなくアラートNDBが受かり、正面に指針を置いてコンパスを見ると真方位117度となっていて、ほぼピタリ往路の反方位ですので、間違いなく帰れます。もちろん風も変化しておらず、帰路は追い風になって、少し速いはずです。約170KIASに加速し、6倍速でガンガン帰投。せっかくのDMEは、パネルに指示器がなくて使えないのですが、コロンビア岬にセットしたままのGPS距離表示から逆算でき、不便はありません。順調に滑走路が視界に入り、ベースレグから右旋回で最終進入へ。
 接地寸前に約70Ktまで減速したところ、機体が勝手に左ロールを始めました。とっさに失速開始と判断し、スロットルを開いて約10Kt増速。無事にタッチダウン。あとで分かったのですが、フラップ全開のつもりで操作を誤り、完全に格納してしまって減速したため、翼端失速で自転に入りかけたのです。お粗末な話で、非常に危ないところでしたが、わずかな増速がしっかりと効き、コントロールを失わずに済みました。操縦性を巡る本機のプログラムは、なかなかデリケートに熟成されていると思います。
 ちなみに、実機もすごいです。あとでユーチューブを探したら、ケンボレック航空のスキー付き同型機が、どこの山でしょうか…雪の積もったクレーターの底に強行着陸して、外輪山ぎりぎりに停止し、すぐ反転・離陸してSTOL性能をデモするシーンが見つかりました。いかにも「これが、ブッシュパイロットだ!」という飛び方で、改めて感心しました。
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