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北緯78°飛行船の島

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なし 北緯78°飛行船の島

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2010-11-14 22:40 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 634
hideです。北極「オーロラ・フライト2010」の5回目をお届けします。
 前回は、極地用のグリッド航法を使って、ノルウェー北端付近のアルタを出発し、北極海に浮かぶスバールバル諸島・スピッツベルゲン島の中心地、ロングイェールビェンの空港(ロングイヤー空港 ENSB)へ進出したところまででした。
 ここスピッツベルゲンから北極点までは、わずか600nmです。大昔から北極探検の最前線で、航空機の出現後は、極点への最終発進基地としても、盛んに利用されました。格納庫や飛行船係留塔などが造られたのは、西岸のキングス湾という場所で、あれこれ調べたところ、FlightGearのマップにある、ニーオーレスン飛行場(ENAS)の一帯だと分かりました。ロングイヤーからニーオーレスンは、ほんの60nmほど。今回はこの区間を古典機でショートフライトし、また飛行船に試乗して、空の北極探検史の一部を振り返ります。

●空から「地球の頂上」へ:
 まず、歴史のお話を。スピッツベルゲンから、初めて北極を目指して飛んだ探検家は、恐らくスウェーデンのサロモン・アンドレーでしょう。1897年7月11日、彼は仲間2人とともに、水素気球「エルネン(鷲)」号でキングス湾を出発。この気球は、言うなれば帆走式でした。
 気球は風に乗ると、空気との相対速度がゼロになりますから、帆や舵では操縦できません。そこでエルネン号は、イギリスで発明された「ガイドロープ」(地面に垂らして、重量を浮力と釣り合わせ、一定の高度を保つためのロープ)を氷上に引きずってブレーキに使い、風より少し遅く飛んで、帆の操作で針路をある程度、制御する仕組みでした。うまいアイディアですが、本番ではガイドロープが離陸直後に外れてしまい、ただの気球となって北上。数日後に通信用の伝書バトを放った後、消息を絶ちました。33年後の1930年、アンドレーらの遺体と日記、未現像フィルムなどが発見され、3人は氷結による重量増のため不時着し、徒歩で帰還中、ホッキョクグマの生肉を食べ、寄生虫によって死亡したと判明。痛ましい結末ですが、彼らは北緯83度まで飛行しており、これは2000年に記録が破られるまでの約1世紀間、気球が到達した北限だったそうです。

 キングス湾は、多くの探検家を引きつけました。航空関係では1906年と09年、アメリカのウェルマンが気球で北極探検を試み失敗(幸い生還)。また南極探検で有名なノルウェーのアムンゼンは1925年に、水陸両用のドルニエ・ワール飛行艇で当地から極点を目指し、9時間後に不時着して失敗しましたが、極地でも飛行機が使えることを実証しました。アムンゼンは翌1926年、イタリア陸軍のウンベルト・ノビレ大佐(当時)が開発した半硬式飛行船を買い取り、ノルゲ号と命名して再来。5月11日、ノビレを交えた計16人でキングス湾を出発し、無事に北極点を通過して、アラスカに到着しました。
 空からの北極点一番乗りは、実はわずか2日前、同じキングス湾から、アメリカ海軍のリチャード・バード中佐(のちに大西洋横断や南極点初飛行。米国を代表する極地探検家)が成功しています。彼はフォッカー3発機「ジョセフィン・フォード」号を駆り、往復15時間の飛行後に帰還しました。
 翌1927年は、あのリンドバーグが大西洋を横断した年ですが、北極の空にも新たな航跡が刻まれました。オーストラリアの探検家、ヒューバート・ウィルキンスが、デビューしたばかりの名機ロッキード・ヴェガで、アラスカ北端バーロー岬からスピッツベルゲンへ北極海横断に成功。猛吹雪で目的地の8匱蠢阿防垰着し、5日後にようやく再離陸してゴールする、苦難の旅でした。
(ちなみにウィルキンスは1931年、史上初の潜水艦による北極点到達に挑戦。ツェッペリン飛行船開発の中心人物、ヒューゴー・エッケナー博士に「極点で会いましょう」と同時探検を持ちかけ、潜水艦のほうは失敗したものの、この提案によって、後にご紹介する「グラフ・ツェッペリン」号の北極飛行が実現しました)

●氷原の赤いテント…飛行船「イタリア」号の悲劇:
 ここで再び、アムンゼンとノビレが登場します。ノビレ(帰国後、少将に昇進)は、設計者/船長としての自分の功績が、世間に十分評価されなかったとして不満を抱き、1928年5月に再び北極探検を企て、ほぼ同型の新造飛行船「イタリア」号(全長82m、最大速度120/h、16人乗り組み)を指揮し、またもキングス湾から北極点を目指しました。
 イタリア号はグリーンランド北端を経由し、北極点に到達しましたが、帰路は悪天候の中で操縦の自由を失い、氷原に激突。ノビレら10人が乗る操縦ゴンドラは、衝撃で船体から分離。軽くなった船体は、残る6人の乗員を乗せたまま上昇しました。船体側に残された乗員らは、とっさの判断で多くの積み荷を投げ落とし、これらの物資がその後、ノビレら9人(墜落時1人死亡)の氷上サバイバルを支えました。しかし空中の6人は、そのまま船体と共に風に流され、消息を絶ちました。
 9人の生存者は、氷上にテントを張り、目立つよう赤く染めました。無線電信機を修理して救助を求めたところ、アマチュア無線家に受信され、ロシアの砕氷船クラッシン号や、北欧3国など計5カ国のパイロットが捜索飛行を展開。約50日後、生存していた全員が救助されました。航空技術が未熟な1920年代、極地の救難活動は非常に危険を伴うもので、かのアムンゼンも、この捜索飛行で命を落としました。
 ノビレは重傷を負っており、悪天候をついて最初に強行着陸した、スウェーデンの軽飛行機に救出されました。しかし帰国後は「部下を氷上に見捨て、真っ先に帰ってきた」と非難を浴び、追放同然に国を出て、米ソで飛行船開発の指導などを行い、波乱の後半生を送りました。イタリア号を巡るドラマは戦後、ソ連・イタリア合作の「赤いテント」という映画になっています。

 イタリア号遭難の年、硬式飛行船の先進地ドイツでは、ツェッペリン飛行船約130隻の歴史の中で、もっとも輝かしい成功を収めた、LZ-127「グラフ・ツェッペリン」号が完成しました。同船は大西洋航路を定期運航し、1929年の世界一周飛行では日本にも寄港。1931年にはイタリア号に続き、飛行船史上3例目の北極点到達に成功しました。当時、ドイツの飛行船技術と経験は極めて豊かで、ツェッペリン伯爵の後継者・エッケナー博士は、この北極飛行を自ら指揮するにあたって、絶大な自信を持っており。ノビレが「極地の専門家」として同乗と助言を申し出た際も、習うべきことはないと判断し、あっさり断っています。

●FlightGearの飛行船:
 スピッツベルゲンをめぐる、熱い物語を振り返ると、いつかはシミュレーターで北極をじっくり飛び、これら飛行船の探検の再現をしてみたい…という思いが沸いてきます。しかしながら数年にわたり、仮想地球を何万キロも飛び続けていますと、セスナの着陸速度より遅い飛行船で、広い北極海を横断するのは、並大抵の苦行ではないとも、ひしひし感じました(^^;)。
 そこで今回、キングス湾の位置が確認できたのを機会に、せめて前回到着したロングイヤー空港から、キングス湾に面したニーオーレスン飛行場まで、飛行船で飛ぼうと考えました。以下がコースです。
◎ロングイヤー空港(ENSB)
   ▼真方位315度59nm
◎ニーオーレスン飛行場(ENAS)
 余談ながら。ENSBがあるロングイェールビェンは、他の街と「世界最北の都市」の座を争っています。「都市」の定義は様々ですが、例えば英国風に言うと「大聖堂と、大学があること」が条件だとか。現地には少なくとも教会と、学生数350人の大学があって、地球環境などを研究しています。近くの永久凍土層には「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」が設けられ、遺伝子を組み換えていない穀物など、植物20万種の種子が貯蔵され、核戦争や温暖化から種の多様性を守る、現代版「ノアの方舟」の役目を担っています。

 使用機体ですが、今回は米国「本家」サイトの機体ダウンロード・リストにある、2隻のツェッペリン飛行船を用意しました。このうちLZ-129ヒンデンブルグ号は、戦前の硬式飛行船の技術的最高峰、かつ最大級の機体で全長247m。船舶で言えば、10万トン級タンカーくらいのボリュームでしょうか。この偉容は、飛行船の大いなる魅力でありますが、同時に強風に弱いという、最大の欠点にも繋がります。
 実物のヒンデンブルグ号は、ご存じのように、完成後わずか1年で有名な爆発炎上事故を起こし、全飛行船の商業運航にとどめを刺しましたが、飛行船の歴史全体を見れば、水素火災よりも悪天候で遭難した船の方が、圧倒的に多いようです。戦闘機を積んで「空中空母」と呼ばれた「アクロン」号と「メイコン」号など、ヘリウムを使ったアメリカの大型飛行船も、突風に起因する事故のため、すべて就役2年未満で失われました。このあたりは、ドイツとの経験の差でもあります。
 ヒンデンブルグと対照的なのが、もう1隻のFlightGear船「NT07」で、同じツェッペリンの名を持ちながらも、構造や操縦法が大きく異なる、軽快な現代のハイテク船です。いずれも私は伊丹空港などで「上がって降りて、係留した」ことはありますが、ごく短時間のフライトでした。

 今回は何度か練習飛行を重ねた後、ヒンデンブルグ号で島の分水嶺をすれすれに越え、キングス湾(ニーオーレスン)に向かったのですが、超鈍足に加え、仕事後の未明フライトのため疲労困憊し、途中で仮眠したら寝過ごしまして、目覚めると飛行船はガス欠のためエンストし、雲間を漂っておりました(^^;)。これら数回のミニフライトで、以下の重大な問題が判明しました。
   ・ヒンデンブルグ:一部タンクの燃料しかエンジンに回らず、航続力わずか約100nm。
   ・NT07     :オートパイロットが使えない。
   ・両船とも    :Aキーがバラスト投下に割り当てられ、倍速モードは使用不能。
これでは北極海横断どころか、今回のたった59nmを飛ぶにも、実時間通りに丸々2時間くらい掛かってしまいます。非常に残念ですけれども、要するにどちらの機体も、今後研究して改造しない限り、長距離飛行には使えそうにありません。取りあえずニーオーレスンへの飛行には、何か北極に縁のある歴史的飛行機を使い、飛行船は到着後の体験飛行だけに使うことにしました。

●「ブリキのガチョウ」を駆って:
 使用機に選んだのは、リチャード・バード中佐が1929年、前述の北極飛行に続いて、史上初の南極点往復飛行に使用した、フォード・トライモーターです。幸いちゃんと、FlightGear版があります(^^)/。
 この3発機は1926年、ヘンリー・フォードが作った唯一の旅客機。前年に発売されてベストセラーになった名旅客機・フォッカー3発機(バード北極飛行以外にも、多くの記録に挑戦)に酷似しており、木材と布のフォッカーを、全金属製に変えただけの模倣作…という、かなり辛口の評価を受けています。しかし性能は良好で、屋外係留でも木製機より腐食に強く、戦前としては多い200機を製造し、世界中で使われました。ただし近代的なダグラスDC-2などが出現すると、すぐ消える運命ではありました。ユンカースによく似た、波形トタン風の金属外板を張り巡らした姿は、さすがに古めかしく、「ブリキのガチョウ(Tin Goose)」のニックネームが、しっくりとなじみます…。さっそく、飛ばしてみましょう。

 ロングイヤー空港の、フィヨルドに面した滑走路で起動すると、北極圏もすでに11月。1000時(現地正午)だというのに、太陽は沈みっぱなしで、地表は夕焼けそっくりの残照に包まれ、あかね雲が浮いています。いかにも極地探検らしい光景ですが、どっちを向いても薄暗く、おまけに101度から34Ktの強風が吹き荒れており、いささか意気の上がらないスタートになりました。
 ガチョウさんのタンクは小さくて、左右合計で402Lbs(67gal)しか入りません。燃費不明なので、取りあえず2倍の容量に改造しておきました。機体の外観は精巧で、3舵を操作すると、キャビン両サイドの外壁に再現された操縦索や、昇降舵ベルクランクが実際に動き、なかなかすてきです。
 フラップはありませんが、たった50Ktで機尾が上がり。強風で機首が風上へ偏向したものの、滑走路にとどまりながら70Ktで離陸。尾輪式にしては、とても素直な操縦性で、非常に鈍重ながら飛ばしやすい機体です。また視界の良さは特筆もので、単発尾輪機と同様、機首にエンジンがあるにも関わらず、コクピットが高くて前下方に視界が開け、側面も(ベースレグに入るには重要な)斜め後ろ45度の視野まで、たっぷり確保。頭上も全部ガラス張りで、操縦席から六分儀で天測できそうです。当然、旋回の行き先(バンク中は、左右上方)もよく見えますからアプローチは楽で、DC-3なんかより、ずっとマシ。なんと先進的な機体でしょう。風防ガラスに、反射効果を再現しているのは邪魔ですが、まあリアルです。FlightGear機は10席で、実機の15〜17席よりスペース的には豪華ながら、客室視点やドア開閉の機能はありません。
 1200ftでレベルオフ、全開で130KIASをマーク。燃費は非常に悪くて0.79nm/galでした。1021時、315度でウイングレベラーを使って定針し、高度保持を3000ftにセットしてから、100KIASに減速。オートパイロットは使えますが、保針の操舵力とダンパーレートが弱いので、機首をしばらく左右に振るのは不満です。

●憧れのキングス湾へ:
 短距離フライトですが、一応は航法もしようと、ざっと偏流計算をしましたら、WCAは約10度と出ました。計算前に維持していた機首方位も勘案し、目分量で補正を加えて、針路を327度に変更。対地速度は約125Ktなので、28分で目的地に着くはずです。機外視点から確認すると、機体は右へ大きくラダーを取り、斜めに飛んでいます。なにしろ鈍足ですから、強風の影響が大きく出るのですね。申し遅れましたが、今回は計器の関係でグリッド航法を使いませんでした。
 対気速度100KIASでは、回転計は65%くらい。燃料も1028時に300Lbs×2タンク分残っていて、十分足りるはずです。ミクスチャーを薄めにして、プロペラピッチも高速寄りに引いたところ、すぐ燃費が1.7nm/galまで改善しました。ただしシリンダー温度計はないから、ガスを薄め過ぎても分からず、エンストの恐れがありますので要注意。1033時、断雲に紛れて、島中央付近の分水嶺が接近したため、4000ftへ上昇。いつのまにか針路がずれており修正。ウイングレベラーによる定針は、当てにならないようですが、仮に高緯度地域に特有の、未知の誤差があるとしても、この程度の短距離飛行で現れるとは思えず、原因が分かりません。地表に目を落とすと、テクスチャーの設計が変で、山中に森林と混じって、パックアイス(海水が凍った氷)が広がっています。おかげでどこが海なのか、いまいち地形が分かりません…。

 1044時、断雲の前方に本物の海が見えました。もうキングス湾かな? 雲の下に出なければ。1046時、低空でキョロキョロしていたら、眼下すぐ右前1.5nmの至近に、ニーオーレスン飛行場が見えました。日陰の小さな滑走路で、照明もPAPIもなく、路面の明度が周囲の地表と似ているため、非常に見分けにくいのですが、ほとんどピンポイントで到着しました。近いし、一応は航法計算したから、当たり前ですけれど…山も越えたのに、よく風が大きく変わらなかったなと、嬉しい思いをしました。
 1047時、空港の南1nmを通過。褐色の海、凍て付いた台地。氷河テクスチャーに覆われた低い山々が、太陽の残照でバラ色に燃える雲と、青空の下に広がっています。そして突風。これが、スピッツベルゲンのキングス湾か。北極飛行の聖地か。実世界では同じ風景を、バードが、アムンゼンが、ノビレが、アンドレが見たのか…などと感激している間に、目立たない滑走路を見失ってしまい、慌てました。
 風が強い。ガストも強い。また滑走路は、低空に降りるとますます見にくくなります。いったん湾に出てターンし海岸に引き返したけれど、どうしても視認できません。でもバードらは、もっと悪い条件でも降りたはず。海岸線の特徴を頼りに、やっと薄暗がりに滑走路を発見。いよいよ接近してから…私の悪癖ですが…ミクスチャーとピッチを高空・高速設定のまま、戻し忘れたことに気付いて、とっさに手放し操縦で解除。これをやっておかないと、いざという時、ゴーアラウンドが出来ません。左15度から30Ktの風を食いつつも、どうやら無事に、波形トタンのガチョウを降ろしました。
 1055時、エンジン停止。燃料の残量は210.5Lbs(35.1gal)×2でした。搭載量を倍増したのに、240nm程度しか飛べない計算ですが、改造は簡単ですので問題ありません。今回はショートフライトながら、ちょっとだけ技術を使い、スリルもあり、とても面白かったです。

●雄大にして荘重…かつ厄介な「空の巨船」:
 日を改めて、また2隻の飛行船に試乗しましたので、インプレッションをお話しします。
ヒンデンブルグ号は、起動すると滑走路端に係留塔が現れ、船首をつないだ姿で登場します。起動直後は船体が軽く、船尾が上がる感じでバウンドしますが、船体のバランスを調べる「w」キーを押すと、デフォルトでは同じ体積の空気より11トンほど重いようです。ここで大文字「W」キーを何度か押すと自動調整され、次第に重量の超過分が小さくなります。
 デフォルトの視点は、船首下方の操縦ゴンドラ前方右寄りに立つ、船長の位置になっていますが、その左に立つ舵手、左後方にいる昇降舵手にも切り替わります。他に、ゴンドラ中央のチャートルーム、その後ろの航法室、船体上部の天測用見張り台(バブル・セクスタントを使うオプションもあるが不作動)、さらに前後左右4カ所のエンジン・ゴンドラ内にも視点があり、面白いです。
 エンジン・ゴンドラには計器盤があり、前後に開口部を持つ小型機関室という感じです。前方からラジエーター越しに冷却風が入り、プロペラで吸い出される仕組みになっています。実物の操縦ゴンドラには船舶と同じエンジン・テレグラフ(出力を指令する表示器)がありますので、エンジン・ゴンドラには機関士が詰めて、運転操作やメンテナンス、そして必要なら修理をするのでしょう。大型飛行船は数日間飛び続けるので、こうした設計になっているのですね。
 なお飛行船のゴンドラは「カー」と呼ばれることがありますが、四角い窓が並ぶ操縦ゴンドラは、なるほど客車みたいです。

 さて出発します。前部バラストは、「a」キー1発で0.1%投下。大文字「A」キーなら1%投下。同様に「d」と「D」で後部バラストが落ちます。離陸時はわずかに船体を軽くし、係留索をリリースしますと、ごく静かに船体が地面を離れ、垂直に浮いて行きます。比重は空気とほぼ同じですが、船体のマスは極めて大きいので、10Kt以上の風が吹いていても、流され始めるまでには時間があります。200ftほど上がってから、落ち着いてエンジンを始動しましょう。
 これがスタンダードな離陸法ですが、この船は若干ガス漏れがあるのか、少しずつ船体が重くなります。浮力と重量の複雑なバランスに悩むよりは、起動直後に大きくバウンドしている数秒間に、さっさと係留策を外して一気に浮いてしまうのが、一番簡単です。これは、現代の小型飛行船の離陸法の一つ「アップ・シップ」に似ています。アップ・シップとは「地上で約10人がゴンドラのハンドレールをつかみ、『せーの!』で船体を持ち上げ、次いで引き下ろして地面に叩き付ける。するとランディングギアの反動で、船体が空中に跳ね上がるから、ある程度高度が上がった時点で、動力を使って上昇に移る」というテクニックです。

 ヒンデンブルグの加速は非常に遅く、何分も掛けて30Ktを少し超えます。舵の利きも鈍く、180度回頭に最大3分ほど掛かりました。旋回を止める時は慣性も働きますし、旋回半径は1nm近くありそうです。昇降舵で船首を上げ下げすると、船体に気流が当たって、ダイナミック・リフト(動揚力)が発生します。速度と燃費は当然悪化しますが、重量をいじると、上昇や降下がすぐには止まらなくなる恐れがあるので、バラストやガス放出は最低限にとどめ、なるべくダイナミック・リフトで操船するべきでしょう。また、むやみに上昇してしまうと降下が大変ですので、可能なら5000ft以下の飛行がお勧めです。

●一つ間違えば、地上で大暴れ:
 空港進入は風下から低速で。数nm手前で、前部と後部のガス弁を開きます。浮力が急速に減りますので、弁は10秒で閉鎖し、係留塔の手前を狙ってゆっくり降下します。なかなか行き足が止まりませんので、必要ならいったんエンジンを止め、大文字「R」キーで逆転にしてブレーキを掛けますが、簡単には効きません。(実機もカムシャフトをスライドさせ、バルブタイミングを切り替えて、エンジンを逆転させました)

 係留塔前で地面近くに降ろし、大文字「U」キーを押すと、1500ft以内なら係留索が掛かり、小文字「u」キーでウインチを巻けば係留完了です。ただしアプローチの対地速度は、非常に小さくないとダメです。今回は8Ktでもまだ速すぎ、索を引っかけてから反動で船体が水平に反転して、慣性でしばらく大暴れしました。これを防ぐには係留塔の寸前で、向かい風と行き足を釣り合わせて一度停止し、最微速で近づくべきです。また係留後、後進全開で船体を引っ張って安定させようとすると、かえって係留塔を軸に、水平面で振り子運動のような暴れ方をすることがあります。風が絡んだ一種の振動ですが、主なエネルギー源は後進推力そのものらしく、エンジンを止めるとあっさり収束しました。
 アメリカの古いニュース映画には、大型硬式飛行船「ロサンゼルス」が1928年に強風にあおられ、係留塔の真上に85度まで逆立ちする場面があって、まれにテレビで放映されますね。また船名は忘れましたが、やはり硬式飛行船が強風のため、数百人の地上要員を振り切って地上を離れてしまい、勇敢にも最後までヨーライン(着陸索)にしがみついた数人が、空中高く吊り上げられて墜死するシーンも記録されており。これはアニメ「魔女の宅急便」の作中、飛行船「自由の冒険号」の遭難場面に引用されましたが、ヒンデンブルグが地上で暴れると、これらの恐ろしい映像が、にわかに実感を伴って心に迫ってきます。
 ヒンデンブルグの操船は、以上のようになかなか骨でして、あっという間に1時間程度は経ち、くたくたになります。しかし、まさに大きな船舶を動かしたみたいで、達成感のほうも特大でした。

●大空を自在に…新時代の「カッ飛びクジラくん」:
 これに対し、ハイテクで武装した現代のツェッペリンNT07飛行船は、まるでスポーツカーです。
戦後の飛行船と言えば、1980年ごろまでは、大戦中にグッドイヤー社が対潜哨戒用として量産した軟式飛行船が、宣伝や観光にゆったり飛んでいましたけれど、その後はエンジンを上下にティルト(回転)させて推力の向きを変え、ダイナミック・リフトや操縦モーメントに能動的に使って、極めて高い操縦性を発揮する、新しいタイプの小型飛行船が現れました。NT07はその代表例です。
 この船は、一般的な軟式船と同様、船体内部の前後に各一個のバロネット(膨張・収縮する空気室)を持っていて、どちらかを膨らますことによりヘリウムガスを移動して、大幅にトリムを変えます。また船体内部には、かつての硬式船よりずっと簡素ながら、軽金属の骨組みを持っており、軟式船や半硬式船よりも頑丈です。軟式船ですと、エンジンは操縦ゴンドラに付けるしかありませんが、NT07は骨組みを土台にして、3基のエンジンを船体中央両舷と船尾に、かなり離して取り付けています。こうすると、重心からのモーメントアームが大きくなり、エンジンをティルトさせた場合に、在来船よりも操縦の利きが良くなるのでしょう。

 FlightGearのNT07は、もちろんティルトとバロネット操作が可能で、基本的には浮力や重量を変更する必要は薄く、ジョイスティックで自在に操縦できます。気球の仲間と言うよりは、極めて低速の飛行機か、ティルトスクリューを3軸に装備した、軽快な小型潜水艇のような感じです。
 今回の試乗では、1103時(現地1203時)にニーオーレスン飛行場で起動。風は300度10Kt、雲は4000ftにscatterd、20000ft付近にcirrusという好条件でした。
 まず、係留索を付けたまま、両舷エンジンを垂直にティルトさせて始動。ちょっと回転を上げると、船体がじわりと地面から浮きます。少し待つと、船体が風見効果で係留塔の風下側に回って、完全に風に正対し、安定します。この方法はマニュアルには書いてありませんが、ユーチューブで同型船の離陸を観察すると、こうやっていました。
 向きが安定したら、いったんエンジンを絞ってから係留を解き、ティルトを掛けたままハーフスロットルまで出力を上げると、船体はエレベーターに乗ったような感じで、真上に上昇を開始しました。視界が十分に開けたら、エンジンを水平にして全開。昇降舵で目一杯アップトリムを掛けますと、仰角40度で急上昇しつつ40Ktまで加速して、起動後4分で高度5000ftを突破。さらに30秒後には、30Ktに落ちたものの6700ftを通過。起動後9分に8000ftに達し、さすがにこの辺で上昇力は頭打ちとなり、速力も鈍ってきました。
 ヨー方向の操縦は、ラダーと、リアエンジンから独立して設けられている、ヘリコプターのテールローターそっくりの装置を併用します。エルロン軸の操作でラダーが、またラダー軸の操作でテールローターのピッチが変わります。テールローターを使えば、たとえ地上付近に降りて静止寸前であっても、非常にアクティブに回頭します。急旋回の角速度は、もうセスナに近い印象ですね。航法計器付きのグラス・コクピットは持っているし、これはまったく、すごい船です。

 8000ftまで上昇したところ、なぜか船首が上がりっぱなしになり、失速警報が鳴りました。どうやら…プログラム上は飛行機に近いらしいですね(^^;)。リア・バロネットをしぼませて、フロントをふくらませたつもりでしたが、なかなか機首が下がりません。この辺の操作は、もっと調べなくては。
 そこでリアエンジンをティルトして、強制的に機首下げモーメントを発生。これで制御しやすくなり、40〜55Ktで降下を続けました。ファイナルアプローチでは最初、係留マストを通過してしまいましたが、こんな場面こそ、テールローターの出番です。アクセルターンさながら、その場で反転して軽く接地し、歩くような速度でマストに近づいて、あっさりと係留に成功。計29分間のフライトでした。なおNT07は運動性が高いため、マストの至近(100ft)まで寄らないと、係留操作が有効になりません。(ヒンデンブルグは1500ftです)

 ヒンデンブルグのような大型硬式飛行船は、着陸と係留時に、300人くらいの地上支援員がロープを引っ張りました。小型のグッドイヤー軟式飛行船(懐かしのキドカラー号やレインボー号)は、支援員が1割以下で済んだようです。そしてNT07になりますと、たったの3人。劇的な操縦性の良さに加え、係留塔をトラックに積んで移動式にするなど、作業を機械化したのも理由の一つでしょう。FlightGearの機体にも、このトラック式係留塔が使われており、機上からの操作で、任意の着陸地に新設することもできます。車体の前に吹き流しを持ったオジサンがたたずんでいるのが、なかなか楽しいですね。このあたりは、マイアルバムの画像をご覧頂けましたら幸いです。

     ○

 久しぶりに大長文となり、申し訳ありません。さて…北極の旅は、さらに続きますが。そろそろ冬が来てしまい、間もなく極地は真っ暗になりそうで、困っています(^^;)。
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