夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
hide
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hideです。実はパソコンがぶっ壊れまして、思わぬ長いご無沙汰を致しました(^^;)。
前回までの「旅日記」は、3月末に南極点へ到達して、ロス海に面したマクマード基地まで北上し、次に新型GPSの扱い方に関して、若干のご報告をしたところまででした(toshiさん、ご紹介下さいましてありがとうございます)。その後、南極大陸からニュージーランドの首都ウェリントンに到着し、一連の南極フライトを終えたのですが、この最終航程をご紹介しようと思った4月の始めに、突然パソコンの画面表示に異常が現れ、結局買い換える羽目になりました。今回は、このお話から始めましょう。
●初めて、マウスコンピューター製品を購入:
今回発生したトラブルは、デスクトップ画面が6分割で表示され、解像度も極端に落ちる…というもので、起動ドライブのバックアップ書き戻しなど、あれこれ手を打ちましたが効果がなく、ハードの故障と見なして購入系列店へ修理に出しました。「たぶんグラフィックボードの問題。交換に2〜3週間」と説明を受けましたが、その後さっぱり音沙汰がなく。不便この上ないため、修理完了を待たずに先日、新しいノートを購入しました。(故障機について本日確認したところ、台湾からの部品取り寄せに1カ月掛かるそうです。結局マザーボード交換が必要となり、3年保証を付けておいたのは大正解でした)
新たなパソコンの候補は、グラフィックボード内蔵のBTOノートに絞りました。壊れたマシンもパソコン工房のGeForce内蔵ノートで、「余計な機能やソフトは無し。ただし基本性能は、同価格帯の大手家電メーカー品より上」という方向性が大変気に入りまして、今回も踏襲した次第です。ただ購入時点では、パソコン工房は在庫が非常に少なく、またRadeon搭載機しかなかったので諦め、雑誌で知った「マウスコンピューター」の大阪直営店(日本橋電気街)を見に行きました。余談ながら、パソコンを使わずにパソコン選びをするのは、なかなか手間が掛かるものですね(^^;)。
購入したのは15.6インチ(1366x768)ノートで、次のようなスペックです。
・Intel Core i7-720QM 1.60GHz 2.99GB
・GeForce GT240M 1GB
・Windows-XP SP3(Win7も同梱、Officeと3年保証付き)
以前のCPUはCore2Duoでしたので、2気筒からV8エンジンに乗り換えた気分です。また今回のグラフィックボードは、現在のGeForceの中ではエントリーモデルだと思いますが、店頭では派手なバトル系ゲームが、40fps前後でサクサク動いていましたので、恐らく不自由はないものと判断しました。
購入後さっそく、次の環境でFlightGear Ver.2.0.0を動かしてみました。
・表示サイズ:1024x768
・場所:KSFO上空5000ft
・描画設定:FeaturesとRenderingオプションを、ほぼ全項目オン。いずれも最大負荷状態。
・雲量:3D表示で、4000ftにScatterd、19500ftにCirrus。
これでフレームレートは22〜40fpsくらい。十分に快適です。飛行エリアを、ややオブジェクトの少ない大阪上空に移しますと、ほぼコンスタントに50fps台後半の快速を保ちまして、まさに夢のようです。
●視界100nmに挑戦、日本海・瀬戸内海・太平洋を一望する:
フレームレートはさほど高望みしませんので、グラフィックの余力を利用して、従来より大規模な視野を楽しむことにしました。すでに、それなりの画像処理環境をお持ちの方には、当たり前のお話だと思いますけれど、私には初めての経験で、かなり感激しました。少し詳しくご報告させて頂きましょう。
パソコンの負荷を軽くするため、私は長らく Advanced Optionsの Visibility設定を、12nmくらいに抑えていました。特に携帯ノートばかり使っていたころは、チップ内蔵式のグラフィック・アクセラレータでしたので、パワーもメモリー容量も十分とは言えず、FlightGearの異常終了を少しでも回避するには、こうするしかありませんでした。
この設定では当然、約20nm四方のマップデータしか生成されません。坂井三郎氏は「続・大空のサムライ」の中で、「五千メートル以上に上がると、大阪付近なら太平洋、瀬戸内海、日本海が同時に見える」と語りましたが、こんな雄大な景観は、夢のまた夢です。FlightGearが描く20nm四方の大地は、坂井氏の挙げた例に近い高度20000ftを飛んでいる場合、せいぜい8畳間の中央に立って、カーペットを見下ろす画角に過ぎないからです。この場合、地平線からカーペットまでの間には空白が生じます。以前のMSFSやYSFSはこうした空白を大地の緑や茶色、或い海を示すブルーで、取りあえず一色に塗りつぶす仕掛けでした。いっぽうFlightGearの場合は、自動的に空白へモヤを発生させてボロ隠しをします。少ない情報量でリアルな風景が得られる巧みな設計ですけれども、Visibilityを短く設定していると、中東の砂漠を飛ぼうが快晴に設定しようが、ごく低空飛行を除いて、ほぼ常に下界は白いモヤに覆われてしまい、強いフラストレーションが溜まります。私はOV-10ブロンコ改を愛用していた昔、これが嫌いで、もっぱら低空を飛んでいました。
グラフィックボード搭載機に換えてからも、つい12nm程度のVisibility設定を使っていましたが、今回初めて70nmに変更して、国内外の空港数カ所で飛行テストをしたところ、まことに劇的な効果が得られました。例えば都心上空では、房総半島がスッポリと銚子まで視野に入り、振り向けば伊豆半島の大部分と、富士山が輝いていました。なんたる解放感! 高みに昇れば昇るほど、予想を超えた遠くが見えて、びっくりです…「飛ぶ」とは本来、そういうものですよね。
続いて、さらにVisibilityを100nmに拡張しました。マシンが描くマップの面積は、70nm時の約2倍ですので、少々設定を変更します。Enhanced runway lightingとSpecular highlightを切って、Advanced OptionsのShadingをSmoothからFlatに落とし、負荷に余裕を作って、再び飛行テストをしました。関東平野やカリフォルニアでは、上昇につれてスムーズに視野が広がっていくのですが、伊丹の大阪空港を離陸した場合は、なぜか最初はマップ面積が小さく固定され、しばらくは神戸空港くらいしか見えませんでした。しかし高度20000ftを超えたあたりから、バリバリと視野が拡がり、琵琶湖と日本海、四国の一部と太平洋などが描き出されました。これはまさに、坂井氏が戦前、戦闘機から味わった視界ではありませんか。感動しました。
京都府・長岡京市の上空で、約40000ftへ上昇したところ、北は若狭湾全域と福井の越前岬、西は姫路市や徳島県鳴門付近、南は紀伊半島南部、東は名古屋市街地と木曽川、渥美半島が見え、最大で220キロくらいの視界が得られました。雲を消したテストでは、さらにパソコンの負荷が減り、同じ地点から浜名湖まで視認可能でした。地球の曲率の関係上、高度40000ftでは水平線は約400キロ先になるため、実際は能登半島や伊豆半島、富士山も見えるはずですが…そこまで行かなくても十分に、「無限の広がりを持つ大空」の気分は味わえます。また気象状態さえ上々なら、仮に洋上で数十nmのミスコースをしたとしても、余裕で目的地の孤島が見えてしまうわけで、長大な視界は航法上も、非常に大きな意味を持っています。出来ればこの「目」を使って、世界一周をしたかったと、つくづく思いました。
例え10nmの視界でも、もちろんFlightGearは十二分に楽しめます。しかし出来ることなら、やはりグラフィック機能は強力なほうが嬉しいですね。このへんの事情は「真に音楽を楽しむために、果たして高性能のオーディオ機器は必要か?」という問いと、よく似ています。例え片耳イヤホンで聴いても、もちろんベートーベンはベートーベン。とは言うものの、かなり味は違う…というわけですね。
最後に一応、Visibility設定144nmも試しましたが、そろそろハードの限界に達したと見えまして、実際の視界は100nmの時と同じでした。
●ニュージーランドへの道:
次に、本題(?)であったはずの、南極からの帰路についても、ご報告しましょう。
なにぶん1カ月前のお話で、正直ちょっと記憶と気合いが低下しておりますし、飛行中の画像やメモの一部はバックアップを取りそびれたまま、古いパソコンとともに、手元を離れています。同じルートを飛び直すことも考えましたが、南極大陸のマップはバックアップがなく、再ダウンロードは大変ですし、すでに春分を過ぎて、現地の日照時間が短くなったこともあり、断念しました。あるだけの資料でお話を進めます。
まずコースです。先の飛行で到着したマクマード基地は、海を隔ててニュージーランドに面しています。南端のインヴァーカーギル市は数年前、すでに「縦周り世界一周」で訪れていますので、日本までの飛行は省略し、ここを今回のゴールに定めました。マクマード基地から直行してもいいのですが、地図を見ますと実世界では基地の西方に、地磁気の南極点にあたる「南磁極」があります。FlightGearでもこれが正しい位置にあるかどうか、ぜひ立ち寄って確認したいと思いました。以下が飛行計画です。
◎Mucmard Station Pagasus Field NZPG
緯度経度=77.57.48S-166.31.34E 航法援助無線なし
▼326度964nm(RL=ラームライン)311度955nm(GC=大圏コース)
△南磁極(6432S-13752E付近)
▼42度1486nm(RL)57度1474nm(CG)
◎インヴァーカーギル空港NZNV
VOR116.80 46.24.41S-168.19.03E
計2429nm
●支援用の空母を準備する:
使用機は、今回もピラタスPC7改。増槽付きで赤い「南極仕様機」ですが、ニュージーランドでは舗装滑走路に降りるのですし、航続距離延伸のため空気抵抗を減らそうと、スキーを外して引き込み脚に戻しました。離陸時は、氷上滑走路をタイヤで走るわけですが、これは目をつぶることにします…。
少々気になるのが、南極および周辺海域特有の、猛烈な突風です。離陸の際は広い氷上ですので、横風を食って少々滑走路をそれても、問題ありませんが、洋上で向かい風に遭うと、ニュージーランド南島に届かない恐れもあります。そこで今回は試験的に、燃料切れに備えて飛行コース上に、空母Nimitzを配置することにしました。思えば贅沢なお話ですが、実際の航空史でも、ブレリオの英仏海峡横断なんか、不時着に備えてフランス海軍が駆逐艦を出してくれたのですから、まるっきり荒唐無稽でもない…でしょう?
さっそく、マクマード基地の沖合にNimizを浮かべましたが、この艦はPC7改のレーダーに映らず、TACANでも装備しない限り、広い洋上では会合が困難と判明。Aircraftモードの物体ならレーダー・ターゲットになりますので、上空1000ftにヘリを出し、空母と同じ緯度経度を起点に、同じ針路、速度で航行させることにしました。次は発着艦の再訓練。左斜め後方から40Ktの風を受けるという猛烈な悪条件でしたが、ごくあっさり着艦に成功しました。極地の風をさんざん体験したおかげで、私は強風下のマニューバーが、少しうまくなったようです。
この時は、艦橋よりかなり前に停止したのですが、あえてそのまま発艦テストに挑戦。フルフラップのまま再加速し、思いきって艦首から「落っこちた」ところ、わずか60Ktの気速でしたが、ちゃんと浮揚しました。離陸時のフラップ角度は、半分以下が普通ですが、PC7改やブロンコ改の場合は、フラップの抵抗による加速力低下よりも、失速速度(=離陸速度)低減のメリットの方が大きいようで、裏技としては有効です。(一般的には、まあ無茶でしょうね。重量超過状態の軍用輸送機が、離陸直後にフルフラップを使い、建物への衝突を緊急回避した話を読んだことがありますが、滑走中から最大角度にしたわけではありません)
最後に、南磁極とインヴァーカーギルの中間点に空母を配置し、走らせるxmlファイルを書いて、飛行準備はおしまいです。
●FlightGearの「地球」は丸いが、「地面」は平ら:
ところで、先ほど見た一辺100nmの視界に広がる大地は、果たして球体の一部でしょうか、或いはシンプルな平面として作られているのでしょうか。まぁ見た感じは平面のようで、特に丸く作る必要もなさそうですが、答えを出すためのヒントが、南極にもちゃんと転がっていました。
マクマード基地から6nm沖の海上には、ヨットが1隻浮いています。海面と同じ高さの滑走路に駐機したPC7改のコクピット視点から、この艇を目一杯にズームアップしてみたところ、船体は完全に喫水線まで見えていました。機上の私の眼高は、わずか海抜2mくらいですので、実世界なら6nm(11キロ)も離れると、地球の丸みの関係で、ヨットはもう少し、沈んで見えなくてはおかしいのです。海抜Hメートルの眼高から、海抜hメートルの目標物を見ることの出来る最大距離M(nm=マイル)は、以下の式で求められます。
M=(√H+√h)×2.083
つまり6nm離れていますと、目標は高さ2.2mまで、水平線下に隠れます。FlightGearのヨットは30ftかそこらのクルーザーで、このクラスの艇の乾舷(喫水から甲板までの高さ)は1mちょっとだそうですから、本来はキャビンの屋根まで海に隠れ、水平線からは多分、マストや帆だけが見えているはずです。
FlightGearの世界では、航法と天文学に使う計算上のマクロな地球は、ちゃんと「丸い」ものの、視覚上の地面は単なる平面として設計されていることが、このことからも分かります。なおFlightGearのヨットは、広い洋上でも目立たせるため、実際の倍くらいの大きさになるよう、縮尺を誤魔化してあります。そういえば、たまに見るホルスタイン種の牛も、近づいてみますと、ゾウくらいのサイズがありますね(笑)。
●南磁極の位置を確定:
Wikipedeiaによると、南磁極は2005年に南緯64度32分、西経137度52分(南極大陸のウィルクス・ランドと呼ばれる地域の沖)にあり、毎年約10kmずつ、北または北西に移動しているそうです。1914年のデータでは、現在より約600nmも離れた陸上にあったそうで、ずいぶん派手に動くものですね。南磁極へ到達するには、偏差は関係なく、ひたすら磁気コンパスが指す「南」に向かえばいいので、簡単そうに思えますが…実際は磁極に近づくほど、磁力はコンパスの針を下に引っ張る向きに費やされ、方角を指す水平分力はゼロに近づくので、コンパスだけで精密に磁極の位置を割り出すのは、ほぼ不可能です。昔の研究者は、苦労して磁極の周辺を移動しながら、地磁気観測と天測を繰り返し、計算と作図で位置を決定したと思われます。
幸い、FlightGearの磁場は強度が一定ですし、PC7改には「磁気俯角・偏差航法」のために開発した、デジタル偏差計と俯角計があります。磁極を中心に放射状に広がる「等偏差線」のどれかに乗って飛び、同心円状に広がる「等俯角線」がゼロを指せば、そこがゴール。あとはGPSで位置を計るだけです。またFlightGearにおける各地の偏差・俯角の分布は、私が知る限りでは緯度・経度にして1度程度の誤差で、05年の観測データ地図と一致していますので、磁極の位置もおおむね正しいはずです。
…以上の仮定のもとに、主にGPSを使って南磁極の予想点へ向かい、磁気測定で精密に位置を詰めたところ、だいたい予想通りの地点に磁極を発見しました。この書き込みのため、今日改めてUFOを飛ばして、等偏差線をたどり、俯角を測定して位置を出し直しましたが、Internal propertiesの俯角が89.992度を示す(つまり、方位磁石の針が垂直に立つ)海上の一点で、UFOのHUDが表示した正確な緯度経度は、
南緯64度26分02.2秒、東経137度26分38.4秒
…でした。05年の実際の位置を基準に計算すると、真方位で298度の方向に約12.5nmずれていましたが、フライトシムの地球環境再現データとしては、驚くべき高精度と言ってよろしいでしょう。改めて「ハンパじゃないソフトだなあ」と感心しました。
なお、PC7改によるフライトでは、旋回半径が大きく、あまり減速できないため、ここまで数値を正確に詰めることは出来ませんでした。余談ながら、本件のような探検フライトには、本当はbluebird(UFOモードで飛ぶ、ワンボックス・カーみたいなホバークラフト)が最適だろうと思います。超高速や超低速で飛べて、ホバリングも簡単。広い計器盤を改造して、地磁気関係の計器やもっと多機能なレーダー、TACANなど、思いつく限りの装備をしたら便利でしょうね。疲れたら景色のいいところに降りて、あらゆるドアやハッチを開き、キャンピングカー気分で休憩…なんてのも、楽しそうです。
●消えた救難空母:
いっぽう、ガソリンスタンド代わりのNimitzですが、残念ながら、洋上で発見することは出来ませんでした。レーダーには映ったため降下して、試験的に会合しようとしたのですが、2000ftくらいまで降りても、艦もヘリも、ついに見えませんでした。燃料が足りたのは幸いです。
以前お話ししました航海衛星の実験では、AIオブジェクトである衛星を、ある出発点から一定の方角へ走らせた場合、非常に長距離を進んだ後では、レーダーに映るがオブジェクトを視認できないとか、逆に視認は出来るがレーダー反応がない、という問題が起きました。今度も同様のケースであったようです。先日の極点飛行では、帰路に燃料切れを起こしつつも、不時着地点まで輸送機を飛ばし、燃料を空輸したと想定してPC7改に給油しましたが、さらにAI空母との会合が可能になれば、地球上に小型機で到達できない地点は、ほぼ無くなるだろうと期待されます。今回は実証試験を兼ねていたのですが、残念でした。
●ビル街変じて「発掘現場」に:
やっとの思いで、ニュージーランド到着です。実は飛行中に用事が出来て中座し、パソコンの前に戻ってきましたら、機体はインヴァーカーギルをとっくに過ぎ、南島を縦断中。よく燃料が持ったものですが…そのまま北島にある首都ウェリントンを目指しました。既に夜ですが、最近は夜間のILS進入を全く練習していませんので、GPSを使っているのに、グライドパスを捕まえるには、思わぬ苦労をしまして、ちょっと無理な機動をしたところ、危うく湾に突っ込みかけました。ううむ、落ち着かねば。
ILSに乗り、最後の最後になって、今度は滑走路灯の見え方が不自然なことを発見。どうも右半分が、見えたり隠れたりするのですね。タッチダウン直前の闇の中、不意に事態がピンと来まして、とっさに左へ回避。あろうことか、滑走路端の右半分をふさぐ格好で、8階建てのビルが建っていたのです(まさか、ジョークではないでしょうね)。またランプイン後に燃料残量を調べますと、確か数十ガロンならぬ、わずか数十ポンドでした。まあこんな調子で、この日は幸運に次ぐ幸運に恵まれ。別の言い方をすれば、ミスや、およそヒロイックではない危険な場面が相次いだものですから、いささかすっきりしない気分で着陸しましたが、総体としては、一連の南極飛行は大変充実したフライトでした。
到着後、昼間の光のもとで、バックアップHDDにデータが残っていた、スキー付きの南極仕様機(スキー無しは手元になし)を使って、けしからんビルの写真を撮り直しました。また3月にtigerさんがマイアルバムでご紹介下さいました urban Shader機能を、さっそく新しいパソコンに組んでみました。すでに従来のマシンで試していますが、市街地テクスチャーの上に、本当に3次元の家が立ち並ぶ光景には驚きました。陽光を反射すると、乾燥気味で暑苦しい「空から見たビル街」の雰囲気がリアルに再現され、見飽きません。
すっかり気に入ってしまったのですが、非常に残念なことに、今度買ったパソコンとは相性が悪いようです。マイアルバムでご覧に入れました通り、ビルの凹凸が上下逆に表現された上、テクスチャーの色合いも赤茶色に化けてしまいまして、まるで…チョコレートの空き箱か、考古学の発掘現場を見下ろしているようで、非常にがっかりしました。もしも解決法が分かりましたら幸いです。
私事ながら、4月から職場を移りまして、タスクの中身も拘束時間も、非常にハードになりました。以前のように、せっせと長距離を飛んでは、どっさり書くのは相当難しく、最近は伊丹周辺のショートフライトで、技量保持をはかる日が多いのですが、書き込みの間隔や量は多少変化しましても、今後もさらにテーマを開拓しながら、のんびり「旅日記」を続けさせて頂ければ、と思っています。
前回までの「旅日記」は、3月末に南極点へ到達して、ロス海に面したマクマード基地まで北上し、次に新型GPSの扱い方に関して、若干のご報告をしたところまででした(toshiさん、ご紹介下さいましてありがとうございます)。その後、南極大陸からニュージーランドの首都ウェリントンに到着し、一連の南極フライトを終えたのですが、この最終航程をご紹介しようと思った4月の始めに、突然パソコンの画面表示に異常が現れ、結局買い換える羽目になりました。今回は、このお話から始めましょう。
●初めて、マウスコンピューター製品を購入:
今回発生したトラブルは、デスクトップ画面が6分割で表示され、解像度も極端に落ちる…というもので、起動ドライブのバックアップ書き戻しなど、あれこれ手を打ちましたが効果がなく、ハードの故障と見なして購入系列店へ修理に出しました。「たぶんグラフィックボードの問題。交換に2〜3週間」と説明を受けましたが、その後さっぱり音沙汰がなく。不便この上ないため、修理完了を待たずに先日、新しいノートを購入しました。(故障機について本日確認したところ、台湾からの部品取り寄せに1カ月掛かるそうです。結局マザーボード交換が必要となり、3年保証を付けておいたのは大正解でした)
新たなパソコンの候補は、グラフィックボード内蔵のBTOノートに絞りました。壊れたマシンもパソコン工房のGeForce内蔵ノートで、「余計な機能やソフトは無し。ただし基本性能は、同価格帯の大手家電メーカー品より上」という方向性が大変気に入りまして、今回も踏襲した次第です。ただ購入時点では、パソコン工房は在庫が非常に少なく、またRadeon搭載機しかなかったので諦め、雑誌で知った「マウスコンピューター」の大阪直営店(日本橋電気街)を見に行きました。余談ながら、パソコンを使わずにパソコン選びをするのは、なかなか手間が掛かるものですね(^^;)。
購入したのは15.6インチ(1366x768)ノートで、次のようなスペックです。
・Intel Core i7-720QM 1.60GHz 2.99GB
・GeForce GT240M 1GB
・Windows-XP SP3(Win7も同梱、Officeと3年保証付き)
以前のCPUはCore2Duoでしたので、2気筒からV8エンジンに乗り換えた気分です。また今回のグラフィックボードは、現在のGeForceの中ではエントリーモデルだと思いますが、店頭では派手なバトル系ゲームが、40fps前後でサクサク動いていましたので、恐らく不自由はないものと判断しました。
購入後さっそく、次の環境でFlightGear Ver.2.0.0を動かしてみました。
・表示サイズ:1024x768
・場所:KSFO上空5000ft
・描画設定:FeaturesとRenderingオプションを、ほぼ全項目オン。いずれも最大負荷状態。
・雲量:3D表示で、4000ftにScatterd、19500ftにCirrus。
これでフレームレートは22〜40fpsくらい。十分に快適です。飛行エリアを、ややオブジェクトの少ない大阪上空に移しますと、ほぼコンスタントに50fps台後半の快速を保ちまして、まさに夢のようです。
●視界100nmに挑戦、日本海・瀬戸内海・太平洋を一望する:
フレームレートはさほど高望みしませんので、グラフィックの余力を利用して、従来より大規模な視野を楽しむことにしました。すでに、それなりの画像処理環境をお持ちの方には、当たり前のお話だと思いますけれど、私には初めての経験で、かなり感激しました。少し詳しくご報告させて頂きましょう。
パソコンの負荷を軽くするため、私は長らく Advanced Optionsの Visibility設定を、12nmくらいに抑えていました。特に携帯ノートばかり使っていたころは、チップ内蔵式のグラフィック・アクセラレータでしたので、パワーもメモリー容量も十分とは言えず、FlightGearの異常終了を少しでも回避するには、こうするしかありませんでした。
この設定では当然、約20nm四方のマップデータしか生成されません。坂井三郎氏は「続・大空のサムライ」の中で、「五千メートル以上に上がると、大阪付近なら太平洋、瀬戸内海、日本海が同時に見える」と語りましたが、こんな雄大な景観は、夢のまた夢です。FlightGearが描く20nm四方の大地は、坂井氏の挙げた例に近い高度20000ftを飛んでいる場合、せいぜい8畳間の中央に立って、カーペットを見下ろす画角に過ぎないからです。この場合、地平線からカーペットまでの間には空白が生じます。以前のMSFSやYSFSはこうした空白を大地の緑や茶色、或い海を示すブルーで、取りあえず一色に塗りつぶす仕掛けでした。いっぽうFlightGearの場合は、自動的に空白へモヤを発生させてボロ隠しをします。少ない情報量でリアルな風景が得られる巧みな設計ですけれども、Visibilityを短く設定していると、中東の砂漠を飛ぼうが快晴に設定しようが、ごく低空飛行を除いて、ほぼ常に下界は白いモヤに覆われてしまい、強いフラストレーションが溜まります。私はOV-10ブロンコ改を愛用していた昔、これが嫌いで、もっぱら低空を飛んでいました。
グラフィックボード搭載機に換えてからも、つい12nm程度のVisibility設定を使っていましたが、今回初めて70nmに変更して、国内外の空港数カ所で飛行テストをしたところ、まことに劇的な効果が得られました。例えば都心上空では、房総半島がスッポリと銚子まで視野に入り、振り向けば伊豆半島の大部分と、富士山が輝いていました。なんたる解放感! 高みに昇れば昇るほど、予想を超えた遠くが見えて、びっくりです…「飛ぶ」とは本来、そういうものですよね。
続いて、さらにVisibilityを100nmに拡張しました。マシンが描くマップの面積は、70nm時の約2倍ですので、少々設定を変更します。Enhanced runway lightingとSpecular highlightを切って、Advanced OptionsのShadingをSmoothからFlatに落とし、負荷に余裕を作って、再び飛行テストをしました。関東平野やカリフォルニアでは、上昇につれてスムーズに視野が広がっていくのですが、伊丹の大阪空港を離陸した場合は、なぜか最初はマップ面積が小さく固定され、しばらくは神戸空港くらいしか見えませんでした。しかし高度20000ftを超えたあたりから、バリバリと視野が拡がり、琵琶湖と日本海、四国の一部と太平洋などが描き出されました。これはまさに、坂井氏が戦前、戦闘機から味わった視界ではありませんか。感動しました。
京都府・長岡京市の上空で、約40000ftへ上昇したところ、北は若狭湾全域と福井の越前岬、西は姫路市や徳島県鳴門付近、南は紀伊半島南部、東は名古屋市街地と木曽川、渥美半島が見え、最大で220キロくらいの視界が得られました。雲を消したテストでは、さらにパソコンの負荷が減り、同じ地点から浜名湖まで視認可能でした。地球の曲率の関係上、高度40000ftでは水平線は約400キロ先になるため、実際は能登半島や伊豆半島、富士山も見えるはずですが…そこまで行かなくても十分に、「無限の広がりを持つ大空」の気分は味わえます。また気象状態さえ上々なら、仮に洋上で数十nmのミスコースをしたとしても、余裕で目的地の孤島が見えてしまうわけで、長大な視界は航法上も、非常に大きな意味を持っています。出来ればこの「目」を使って、世界一周をしたかったと、つくづく思いました。
例え10nmの視界でも、もちろんFlightGearは十二分に楽しめます。しかし出来ることなら、やはりグラフィック機能は強力なほうが嬉しいですね。このへんの事情は「真に音楽を楽しむために、果たして高性能のオーディオ機器は必要か?」という問いと、よく似ています。例え片耳イヤホンで聴いても、もちろんベートーベンはベートーベン。とは言うものの、かなり味は違う…というわけですね。
最後に一応、Visibility設定144nmも試しましたが、そろそろハードの限界に達したと見えまして、実際の視界は100nmの時と同じでした。
●ニュージーランドへの道:
次に、本題(?)であったはずの、南極からの帰路についても、ご報告しましょう。
なにぶん1カ月前のお話で、正直ちょっと記憶と気合いが低下しておりますし、飛行中の画像やメモの一部はバックアップを取りそびれたまま、古いパソコンとともに、手元を離れています。同じルートを飛び直すことも考えましたが、南極大陸のマップはバックアップがなく、再ダウンロードは大変ですし、すでに春分を過ぎて、現地の日照時間が短くなったこともあり、断念しました。あるだけの資料でお話を進めます。
まずコースです。先の飛行で到着したマクマード基地は、海を隔ててニュージーランドに面しています。南端のインヴァーカーギル市は数年前、すでに「縦周り世界一周」で訪れていますので、日本までの飛行は省略し、ここを今回のゴールに定めました。マクマード基地から直行してもいいのですが、地図を見ますと実世界では基地の西方に、地磁気の南極点にあたる「南磁極」があります。FlightGearでもこれが正しい位置にあるかどうか、ぜひ立ち寄って確認したいと思いました。以下が飛行計画です。
◎Mucmard Station Pagasus Field NZPG
緯度経度=77.57.48S-166.31.34E 航法援助無線なし
▼326度964nm(RL=ラームライン)311度955nm(GC=大圏コース)
△南磁極(6432S-13752E付近)
▼42度1486nm(RL)57度1474nm(CG)
◎インヴァーカーギル空港NZNV
VOR116.80 46.24.41S-168.19.03E
計2429nm
●支援用の空母を準備する:
使用機は、今回もピラタスPC7改。増槽付きで赤い「南極仕様機」ですが、ニュージーランドでは舗装滑走路に降りるのですし、航続距離延伸のため空気抵抗を減らそうと、スキーを外して引き込み脚に戻しました。離陸時は、氷上滑走路をタイヤで走るわけですが、これは目をつぶることにします…。
少々気になるのが、南極および周辺海域特有の、猛烈な突風です。離陸の際は広い氷上ですので、横風を食って少々滑走路をそれても、問題ありませんが、洋上で向かい風に遭うと、ニュージーランド南島に届かない恐れもあります。そこで今回は試験的に、燃料切れに備えて飛行コース上に、空母Nimitzを配置することにしました。思えば贅沢なお話ですが、実際の航空史でも、ブレリオの英仏海峡横断なんか、不時着に備えてフランス海軍が駆逐艦を出してくれたのですから、まるっきり荒唐無稽でもない…でしょう?
さっそく、マクマード基地の沖合にNimizを浮かべましたが、この艦はPC7改のレーダーに映らず、TACANでも装備しない限り、広い洋上では会合が困難と判明。Aircraftモードの物体ならレーダー・ターゲットになりますので、上空1000ftにヘリを出し、空母と同じ緯度経度を起点に、同じ針路、速度で航行させることにしました。次は発着艦の再訓練。左斜め後方から40Ktの風を受けるという猛烈な悪条件でしたが、ごくあっさり着艦に成功しました。極地の風をさんざん体験したおかげで、私は強風下のマニューバーが、少しうまくなったようです。
この時は、艦橋よりかなり前に停止したのですが、あえてそのまま発艦テストに挑戦。フルフラップのまま再加速し、思いきって艦首から「落っこちた」ところ、わずか60Ktの気速でしたが、ちゃんと浮揚しました。離陸時のフラップ角度は、半分以下が普通ですが、PC7改やブロンコ改の場合は、フラップの抵抗による加速力低下よりも、失速速度(=離陸速度)低減のメリットの方が大きいようで、裏技としては有効です。(一般的には、まあ無茶でしょうね。重量超過状態の軍用輸送機が、離陸直後にフルフラップを使い、建物への衝突を緊急回避した話を読んだことがありますが、滑走中から最大角度にしたわけではありません)
最後に、南磁極とインヴァーカーギルの中間点に空母を配置し、走らせるxmlファイルを書いて、飛行準備はおしまいです。
●FlightGearの「地球」は丸いが、「地面」は平ら:
ところで、先ほど見た一辺100nmの視界に広がる大地は、果たして球体の一部でしょうか、或いはシンプルな平面として作られているのでしょうか。まぁ見た感じは平面のようで、特に丸く作る必要もなさそうですが、答えを出すためのヒントが、南極にもちゃんと転がっていました。
マクマード基地から6nm沖の海上には、ヨットが1隻浮いています。海面と同じ高さの滑走路に駐機したPC7改のコクピット視点から、この艇を目一杯にズームアップしてみたところ、船体は完全に喫水線まで見えていました。機上の私の眼高は、わずか海抜2mくらいですので、実世界なら6nm(11キロ)も離れると、地球の丸みの関係で、ヨットはもう少し、沈んで見えなくてはおかしいのです。海抜Hメートルの眼高から、海抜hメートルの目標物を見ることの出来る最大距離M(nm=マイル)は、以下の式で求められます。
M=(√H+√h)×2.083
つまり6nm離れていますと、目標は高さ2.2mまで、水平線下に隠れます。FlightGearのヨットは30ftかそこらのクルーザーで、このクラスの艇の乾舷(喫水から甲板までの高さ)は1mちょっとだそうですから、本来はキャビンの屋根まで海に隠れ、水平線からは多分、マストや帆だけが見えているはずです。
FlightGearの世界では、航法と天文学に使う計算上のマクロな地球は、ちゃんと「丸い」ものの、視覚上の地面は単なる平面として設計されていることが、このことからも分かります。なおFlightGearのヨットは、広い洋上でも目立たせるため、実際の倍くらいの大きさになるよう、縮尺を誤魔化してあります。そういえば、たまに見るホルスタイン種の牛も、近づいてみますと、ゾウくらいのサイズがありますね(笑)。
●南磁極の位置を確定:
Wikipedeiaによると、南磁極は2005年に南緯64度32分、西経137度52分(南極大陸のウィルクス・ランドと呼ばれる地域の沖)にあり、毎年約10kmずつ、北または北西に移動しているそうです。1914年のデータでは、現在より約600nmも離れた陸上にあったそうで、ずいぶん派手に動くものですね。南磁極へ到達するには、偏差は関係なく、ひたすら磁気コンパスが指す「南」に向かえばいいので、簡単そうに思えますが…実際は磁極に近づくほど、磁力はコンパスの針を下に引っ張る向きに費やされ、方角を指す水平分力はゼロに近づくので、コンパスだけで精密に磁極の位置を割り出すのは、ほぼ不可能です。昔の研究者は、苦労して磁極の周辺を移動しながら、地磁気観測と天測を繰り返し、計算と作図で位置を決定したと思われます。
幸い、FlightGearの磁場は強度が一定ですし、PC7改には「磁気俯角・偏差航法」のために開発した、デジタル偏差計と俯角計があります。磁極を中心に放射状に広がる「等偏差線」のどれかに乗って飛び、同心円状に広がる「等俯角線」がゼロを指せば、そこがゴール。あとはGPSで位置を計るだけです。またFlightGearにおける各地の偏差・俯角の分布は、私が知る限りでは緯度・経度にして1度程度の誤差で、05年の観測データ地図と一致していますので、磁極の位置もおおむね正しいはずです。
…以上の仮定のもとに、主にGPSを使って南磁極の予想点へ向かい、磁気測定で精密に位置を詰めたところ、だいたい予想通りの地点に磁極を発見しました。この書き込みのため、今日改めてUFOを飛ばして、等偏差線をたどり、俯角を測定して位置を出し直しましたが、Internal propertiesの俯角が89.992度を示す(つまり、方位磁石の針が垂直に立つ)海上の一点で、UFOのHUDが表示した正確な緯度経度は、
南緯64度26分02.2秒、東経137度26分38.4秒
…でした。05年の実際の位置を基準に計算すると、真方位で298度の方向に約12.5nmずれていましたが、フライトシムの地球環境再現データとしては、驚くべき高精度と言ってよろしいでしょう。改めて「ハンパじゃないソフトだなあ」と感心しました。
なお、PC7改によるフライトでは、旋回半径が大きく、あまり減速できないため、ここまで数値を正確に詰めることは出来ませんでした。余談ながら、本件のような探検フライトには、本当はbluebird(UFOモードで飛ぶ、ワンボックス・カーみたいなホバークラフト)が最適だろうと思います。超高速や超低速で飛べて、ホバリングも簡単。広い計器盤を改造して、地磁気関係の計器やもっと多機能なレーダー、TACANなど、思いつく限りの装備をしたら便利でしょうね。疲れたら景色のいいところに降りて、あらゆるドアやハッチを開き、キャンピングカー気分で休憩…なんてのも、楽しそうです。
●消えた救難空母:
いっぽう、ガソリンスタンド代わりのNimitzですが、残念ながら、洋上で発見することは出来ませんでした。レーダーには映ったため降下して、試験的に会合しようとしたのですが、2000ftくらいまで降りても、艦もヘリも、ついに見えませんでした。燃料が足りたのは幸いです。
以前お話ししました航海衛星の実験では、AIオブジェクトである衛星を、ある出発点から一定の方角へ走らせた場合、非常に長距離を進んだ後では、レーダーに映るがオブジェクトを視認できないとか、逆に視認は出来るがレーダー反応がない、という問題が起きました。今度も同様のケースであったようです。先日の極点飛行では、帰路に燃料切れを起こしつつも、不時着地点まで輸送機を飛ばし、燃料を空輸したと想定してPC7改に給油しましたが、さらにAI空母との会合が可能になれば、地球上に小型機で到達できない地点は、ほぼ無くなるだろうと期待されます。今回は実証試験を兼ねていたのですが、残念でした。
●ビル街変じて「発掘現場」に:
やっとの思いで、ニュージーランド到着です。実は飛行中に用事が出来て中座し、パソコンの前に戻ってきましたら、機体はインヴァーカーギルをとっくに過ぎ、南島を縦断中。よく燃料が持ったものですが…そのまま北島にある首都ウェリントンを目指しました。既に夜ですが、最近は夜間のILS進入を全く練習していませんので、GPSを使っているのに、グライドパスを捕まえるには、思わぬ苦労をしまして、ちょっと無理な機動をしたところ、危うく湾に突っ込みかけました。ううむ、落ち着かねば。
ILSに乗り、最後の最後になって、今度は滑走路灯の見え方が不自然なことを発見。どうも右半分が、見えたり隠れたりするのですね。タッチダウン直前の闇の中、不意に事態がピンと来まして、とっさに左へ回避。あろうことか、滑走路端の右半分をふさぐ格好で、8階建てのビルが建っていたのです(まさか、ジョークではないでしょうね)。またランプイン後に燃料残量を調べますと、確か数十ガロンならぬ、わずか数十ポンドでした。まあこんな調子で、この日は幸運に次ぐ幸運に恵まれ。別の言い方をすれば、ミスや、およそヒロイックではない危険な場面が相次いだものですから、いささかすっきりしない気分で着陸しましたが、総体としては、一連の南極飛行は大変充実したフライトでした。
到着後、昼間の光のもとで、バックアップHDDにデータが残っていた、スキー付きの南極仕様機(スキー無しは手元になし)を使って、けしからんビルの写真を撮り直しました。また3月にtigerさんがマイアルバムでご紹介下さいました urban Shader機能を、さっそく新しいパソコンに組んでみました。すでに従来のマシンで試していますが、市街地テクスチャーの上に、本当に3次元の家が立ち並ぶ光景には驚きました。陽光を反射すると、乾燥気味で暑苦しい「空から見たビル街」の雰囲気がリアルに再現され、見飽きません。
すっかり気に入ってしまったのですが、非常に残念なことに、今度買ったパソコンとは相性が悪いようです。マイアルバムでご覧に入れました通り、ビルの凹凸が上下逆に表現された上、テクスチャーの色合いも赤茶色に化けてしまいまして、まるで…チョコレートの空き箱か、考古学の発掘現場を見下ろしているようで、非常にがっかりしました。もしも解決法が分かりましたら幸いです。
私事ながら、4月から職場を移りまして、タスクの中身も拘束時間も、非常にハードになりました。以前のように、せっせと長距離を飛んでは、どっさり書くのは相当難しく、最近は伊丹周辺のショートフライトで、技量保持をはかる日が多いのですが、書き込みの間隔や量は多少変化しましても、今後もさらにテーマを開拓しながら、のんびり「旅日記」を続けさせて頂ければ、と思っています。
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手探り航法・旅日記(その2)
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