Ver.2.0のGPSをめぐる研究
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居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです。
前回は南極飛行で極点に到達し、ロス海のマクマード基地まで引き揚げましたが、この時に使用したVer.2.0のGPSについて、トラブルや疑問点が多々ありました。そこで今回はニュージーランド方面への帰還飛行を順延し、このGPSの使い方を調べました。バージョンアップの直後でもあり、もし皆様のお役に立てば幸いです。
●素晴らしい高機能…ただし、不安定も同居:
すでに詳しい方には、以下は「何を今さら」というお話になりますが。米国本家サイトのFlightGear Wiki にある「GPS」と「Route Manager」の両項目を読んだところ、Ver.2.0のGPSは私が想像していたより、はるかに多機能に設計されており、正直、驚きの連続でした。
例えば…ウェイポイントの入力は、空港や無線施設、FIXを選択することに加え、これらを基点に磁気方位と距離を指定して、任意のベクトル(FlightGearの名称では「オフセット」)として定義したり、私の夢だった緯度・経度の直接入力もできます。各ウェイポイントは通過時の高度指定が可能で、近い将来に速度制御なども加えて、より高度なフライト・マネジメント・システムへ進化することを、明確に指向しています。どうも英語の敷居が高くて、これまで本家Wikiを利用したことはなかったのですが、読んでみて大変よかったと思います。
しかしまた同時に、Ver.2.0のGPSは熟成への途上にあり、まだまだ設計通りに動かない部分もあることを痛感しました。(これが商品なら腹を立てるところですが、FlightGearの場合は無料かつオープンソースの条件下、「数々のアイディアを、取りあえずここまで、形にしてみた!」という意気込みが伝わってきますので…当然ながら「できるものなら、改良に協力したいが、せめて応援したい」と思うばかりです)
本来は、モデルコースのフライトご紹介すべきですが、私の環境下では、多数のウェイポイントからなるルートを入力してアクティブ化しても、なぜか順番通り実行されません。かなり試行錯誤を重ねましたが、現段階では残念ながら、ウェイポイントを一つずつ入力するのが最も確実な操作法ですので、モデルコースは無意味と考え、現時点で分かっている基本操作と幾つかの留意点、そして先に述べた英文Wiki2項目の拙訳をご紹介することにしました。
●基本的な使い方:
(1)ウェイポイントを入力:
機体を起動して、メニューバーからRoute Managerを開くと、Depature欄にデフォルトで出発空港のIDが入っており、ウェイポイントとして自動的にアクティブ化されています。HUDを開くと帰投方位と距離が常に一目瞭然で、「ちょっとそのへんを一周」フライトには、非常に便利ですね。
Route Managerにウェイポイントを入力する場合、現バージョンでは高度を同時に入力しないと、ウェイポイント通過時にオートパイロットの高度指定がゼロになり、気付かぬうちにどんどん降下しますので、ご注意ください。高度の書式はID@ftです。例えば大阪国際空港を3000ftで通過するなら、「RJOO@3000」と打ち込みます。この機能は恐らく、空港周辺のFIXをたどってSID/STARを利用するためにあるのでしょう。目的地の空港は別途「Arrival:」欄からも入力可能です。
(2)ルートをアクティブ化する:
入力が終わった時点で、hキーを押してHUDを開きますと、出発地のIDがウェイポイントに選択されたままで、まだルートが読み込まれていません。航法を始めるためには、Route Manager最下段の「Activate」ボタンを押さなくてはなりませんが、いきなり操作しますと、FlightGearが非常に高い確率で異常終了します。必ず最初に、上段の「X」ボタンをクリックしてください。(これは出発空港の滑走路を、自動的に選択・登録するためのボタンのようです)
出発空港のウェイポイントは、そのまま離陸して直線上昇したり、リバーサル・ディパーチュアを行って空港上空を通過すると消え、次のウェイポイントが繰り上がるはずです。ダメでしたらPop Waypointで消します。
Ver.2.0のRoute Managerでは、わざわざPop Waypointで消さない限り、すべてのウェイポイントが飛行終了時までリストに残ります。途中で、いずれかのウェイポイントに逆戻りしたい場合は、リストから再選択してActivateボタンを押すと、再びアクティブ化することができます。
ただし、これまでに述べた流れは、必ずしもうまく行きません。私の環境ではルートをアクティブ化すると、ほとんどの場合、到着地の空港が最初からウェイポイントに指定されてしまい、中継地をすっ飛ばしてしまいます。Route Managerにあるウェイポイントのリストから、中継したい地点を選択しなおしても正常にアクティブ化できないケースが、大部分のようです。
(3)画面表示及び計器との連動:
GPSを使用中、HUDには以下のような表示が出ます。
hdg= 機首方位(注意、これだけは真方位。他はすべて磁気方位)。
WPT 現在アクティブなウェイポイント。
BRG そのウェイポイントへのベアリング(方位)と距離。
GPS TRK GPSが測定した、現在のトラック=航跡(対地針路)。
XTRK クロス・トラック・エラー(トラックが正しいコースから
どれだけ離れているか)。nm単位の距離で表し、機体から
見た左右の別は、<>記号を矢印代わりにして示す。
例:XTRK:<10.05nm 正しいコースは機体の真左10.05nmにある。
注:GPS Settings画面の下段にある「NAV Slave」にチェックを入れるとGPSにHSIが連動し、CDI指針を使ってコースからの逸脱度を知ることも可能。この場合、CDI指針の目盛り1ドットは1nmを示していますが、表示には1割ほど誤差があります。
…以上に登場する各種の方位は、お互いに矛盾して見える場合がありますが、機体は常に風に流されており、GPSが風力を自動補正して進路を決めているためで、問題ありません。
(4)作動モード:
Ver.2.0のGPSは3種類の作動モードを持ち、GPS Settings下段のボタンで選択できます。それぞれの機能は別記Wiki翻訳をご覧下さい。起動時はOBSモードになっています。また複数のウェイポイントを入力し、ルートをアクティブ化した後は、基本状態であるLEGモードになります。計3モードは飛行中、自由に切り替えられる設計ですが、実際は非常に高い頻度で、途中から操作を受け付けなくなります。取りあえず解決するには、
・GPS Settingsの空港検索機能を使った後、再び選択ボタンを押す。
・それでも回復しなければ、登録済みウェイポイントをクリアして、
すぐ必要な1カ所だけ入力し、アクティブ化し直す…という方法が、あるにはあります。
以上3モードのうち、OBSモード使用時にHSIをスレーブ化(GPSに連動)して、さらにオートパイロットの針路保持機能でNAVI1 CDI Courseモードを選択している場合は、OBS(進路選択つまみ)を回転させてコース方位を変更することにより、まるでVORラジアルを変更したときのように、機体の飛行経路を変化させて、所定のコースへ滑らかに合流させることができます。
ただし、オートパイロットでVORラジアルやILSをトラッキングする場合のような、タイトなS字機動は行ってくれず、じわじわとコースに寄っていく感じです。目標のウェイポイントが至近距離にあり、かつ針路が大きくそれた状態では、GPSは直ちにコースへ合流することを諦めて、むしろ遠ざかる方向へいったん機首を向け、ウェイポイントを通過後(!)に、コースに合流しようとします。
またLEGモードにも、問題があります。目的地に設定したウェイポイントを、うっかりそのまま通過してしまうと、GPSは根拠不明な針路を勝手に算出して大変針し、高度保持もゼロになります。総じてGPSの振る舞いは、Atlas画面で常時監視した方が良さそうです。
●英文Wikiの拙訳:
以下、英文Wikiの翻訳です。なるべく逐語訳を目指しましたが、若干の意訳が混じっています。また付随的な記述の一部は省略し、(以下略)などと表記しました。では、本文です。
<GPS>
このページは、FlightGearがサポートするGPS一般について論じたもので、実世界におけるデバイスや操作法の詳細については述べていません。とは言うものの、(実物のGPSと)かなり似ています。また読者が、電波航法と基本的な計器飛行の知識があるものとしています。GPSの使用法そのものについては以下のページをご覧下さい。
http://wiki.flightgear.org/index.php/Avionics_Development_Resources#GPS
このGPSは書きかけ項目です(以下略)。
★基本的な情報:
GPSは位置や方位、速度の情報を、FlightGearの他の計器類から独立して−−例えば高度は高度計に依存せず−−計算します。GPSが計算した値は、他の計器とは誤差や精度が異なっています。(FlightGearのGPSは、あまりにも正確すぎます。将来は何かオプション・モデルが付け加えられるでしょう)
これらの情報には、(対気速度ならぬ)真対地速度と(機首方位とは異なる)グラウンド・トラック(hide注:航跡。風の影響を受けた対地針路)が含まれています。別の言い方をすれば、飛行経路と運動の方向(の基準)は地面から得ています。
★アクティブなウェイポイント:
GPSは、空港やVOR、NDB、FIXまたは様々な方法によるユーザー定義のアクティブ・ウェイポイントを追跡し、目標への方位(bearing)、距離(range)、到着までの時間などを提供します。
★各種モード:
・OBS
OBSモードは、ウェイポイントにチューニングされた航法無線機のように振る舞います。希望するラジアル(原注:無線ダイアログから選択)を選ぶと、GPSはto/fromフラッグとコースからの誤差を、VOR受信機のように示します。NDBやFIXについても無線受信なしに働き、受信範囲外であるとかサービス時間外、などと言うことはありません。OBSラジアル方位は、いつでも調節することができます。(念のためhide注:OBSはオムニ・ベアリング・セレクタ=ラジアル選択ノブ。飛びたい針路をセットするつまみ)
・LEG
LEGモードはたいてい、(ルートマネージャで定義された)アクティブ・ルートに利用されます。(この場合の)アクティブ・ウェイポイントは、現在のルート上にある次のウェイポイントで、GPSは直前のウェイポイントとアクティブ・ウェイポイント間の直線飛行コースの誤差を計算します。GPSはアクティブ・ウェイポイントに到達すると、もし次のウェイポイントがあれば、自動的に切り替えます。
・DTO
このモードは、あるウェイポイントへ直航するのに使われます。DTOモードに入れると、コース中央に向けて誤差が修正され、リクエストされたアクティブ・ウェイポイントへの針路が計算されます。
ウェイポイント上に到達すると、GPSはインバウンド・ベアリングを飛び続けます。★ただし★、アクティブ・ウェイポイントが、アクティブ・ルートの一部になっている場合は、GPSは自動的にLEGモードに切り替わり、ウェイポイント・シーケンスを再開します。
★ウェイポイントを見つける:
ウェイポイントは次のように選びます。
・IDか名称で探す。全部の綴りか最初の一部を入力して検索すると、それに近い順に、ウェイポイントが次々と表示されます。
・最も近いウェイポイントを選ぶ。最も接近した10のウェイポイントがロードされ、検索されます。
・アクティブ・ルートからウェイポイントをロードする(フライトプラン)
★見越し旋回:
まだ実現していませんが…もうすぐ。(hide注:残念ながらVer.2.0では、advroutemgr.nasは効果がないようです)
★航法援助施設を参照:
GPSコードは自動的に、航法援助施設を参照します。もし一つが近くに見つかると、位置と方位、距離および周波数を提供し、この周波数に航法無線機を同調します。これはパイロットが、GPSの表示した位置を、航法援助施設の参照によりチェックできるよう想定したものです。
★一般的な手続き:
・ATCのダイレクト進入許可を実行する:(hide注:この項目の訳は自信ありません)
ATCは一般的に、エリア内のウェイポイントへ出入りする航空機を排除します。特に出発に関しては、SIDの様々なウェイポイントをスキップします。この場合、単にアクティブ・ウェイポイントをロードし、前方のウェイポイントを探して、DTOボタンを押します。GPSはウェイポイントに向けてダイレクトに飛び、必要に応じてLEGモードを再開する前に、いかなるウェイポイントもスキップします。
・進入復航:
現在のGPSコードには、アプローチ・サポートがありませんが、進入復航点をアクティブ・ウェイポイントにセットすることには価値があります。復航する場合は、直航(Direct to=DTOモード)を実行します。あなたの唯一の心配は、いつ進入をミスするか(進入復航するか)だけです。
<Route Manager>
★序論:(略)
★コンセプト:
ルート・マネージャーはフライトプランを管理し、出発地、目的地、代替空港、そしてウェイポイントのリストなど巡航情報から成り立っています。全ての情報は今のところ選択可能で、リアルではないが便利です。ルート・マネージャーのウェイポイントは、航法援助施設のIDか、明確な緯度経度、または航法援助施設からの(方位と距離による)オフセットで登録されます。それぞれのウェイポイントはVNAV(バーティカル・ナビゲーションモード)で使われる、関連の高度(情報)を持っています。将来は特に速度制限など、他のデータもウェイポイントに関わるでしょう。
ルート・マネージャーは、HUDにデフォルトで現れるGPSダイアログに示された(潜在的にはコクピットのコクピットにも表示可能な)、現在選択中のウェイポイントを管理します。一般にルート・マネージャーは現在選択中のウェイポイントを通過すると、次のウェイポイントに自動的に移動しますが、アクティブ・ウェイポイントはマニュアル選択される必要があります。
二つのウェイポイントを結ぶ「レグ(区間)」は、重要な専門用語です。多くの実世界の装置はレグを最初に取り扱います。FlightGearのルート・マネージャーでは、「アクティブ・レグ」とは、前のウェイポイントから現在のウェイポイント(今向かっているウェイポイント)のことです。
★ルートを定義する:
もっとも簡単なルートの定義法は、ウェイポイントのIDを一つずつ入れることです。航法援助施設のIDはそれぞれ固有のものではないので、ルート・マネージャーは出発空港か直前に定義されたウェイポイントを基点に使ってIDを探します。実際問題、重複する名前の航法援助施設は十分に離れており、これで自動的にうまくいきます。
以下の方法でオフセット・ウェイポイントを作ることにより、自分で出発から到着までの手順をサポートできます。ルートは単純なXMLフォーマットで読み込んだり保存できるので、手で入力するよりテキストエディターで作った方がいいでしょう。フライトプランを作るツールも計画されており、興味があるなら開発者リストにコンタクトしてください。将来は航空路を使った自動ルーティングや、VOR-VORルーティングも加えられるでしょう。
ウェイポイント定義の例:
KJFK
空港ID。
UW
航法援助施設(NDB、VORまたはFIX)ID。
TLA/210/35
航法援助施設を基準とした場合の位置(=オフセットという)。
この例では、TLA VORから磁気方位210度35nm先。
WOBAD@18000
WOBADのFIX上空1万8000ft。
SPL/050/12.3@2000
SPL VORから磁気方位50度ラジアル12.3nm地点の上空2000ft。
★ルートをアクティブ化する:
ルートをアクティベートすると、幾つかのチェックが実行され、選択された出発地と到着地情報に基づき、最初と最後のウェイポイントが作られます。取りあえず、出発滑走路が(最初の)ウェイポイント・ゼロですが、将来は(出発プロシージャーがサポートされれば)よりふさわしいプロシージャー・ウェイポイントが作られるでしょう。
これはまた、将来は上昇の頂点や下降への頂点のような、巡航情報を計算する基点となります。また他の装置(特にGPS/FMS)は、ルートのアクティベートに基づき、最初のレグのシーケンスに入るとか、(プログラム内部の)カウンターやタイマーをリセットする、などの変更を発動します。
★ルートを飛行する:
ルートがアクティベートされると、GPSシステムは「レグモード」に入り、(すべての)ウェイポイントを飛び切ってしまうまで、自動シーケンスに入ります。こんなシステムを持っていなかった(歴史的な)航空機を含め、すべての航空機がルートマネージャーとGPSを使えることにご留意下さい。これはカジュアルなユーザーや、テストなどに便利でしょう。
特に、GPSは一般的なオートパイロットのプロパティを操作します。True Headingモードでは、ルートマネージャーのルートを使って飛ぶことができます。
HUD(Hキーで起動)はデフォルトで画面左上に、選択中のウェイポイントのIDと到達までの距離や時間、現在のグラウンド・トラック(対地針路)、ウェイポイントへの磁気方位、そしてレグからのずれ(マイル単位)を含む、ウェイポイントとレグ(区間)情報を表示します。(以下2行略)
★滑走路にぴったり合わせる:
ルートマネージャーは、個々の位置への誘導を提供するだけなので、滑走路やILSローカライザに機首を合わせるには、幾つものウェイポイントを使う必要があります。全てのILSアプローチは事実上、そのために作られた高度制限を伴うフィックスで定義されています。例えば、 KPHX 08 approach(hide注、原文にはアプローチ・チャートへのリンクあり)では、進入開始点から20nmの間にALLIS、SARTE、HIKID、ILIKE、JAMILとWAZUPが定義されています。(以下、チャートの説明は省略)
★プロパティ:
ルートがアクティブになっていると、ルートマネージャーは、航空機の現在位置/速度と、ルートをどこまで進んだかに基づき、幾つかの情報を提供します。これらの値は、現実のシステムでは航法コンピューターで計算されますが、FlightGearでは便宜上、ルートマネージャーで行われます。記録される値は、離陸時間、予定飛行時間(ETE)、残りの飛行距離などです。どんなものが得られるか、プロパティ・ツリーをご覧下さい。
★もっと読むには:
詳細については Route manager internals をご覧下さい。
http://wiki.flightgear.org/index.php/Route_manager_internals
=訳文、以上です=
前回は南極飛行で極点に到達し、ロス海のマクマード基地まで引き揚げましたが、この時に使用したVer.2.0のGPSについて、トラブルや疑問点が多々ありました。そこで今回はニュージーランド方面への帰還飛行を順延し、このGPSの使い方を調べました。バージョンアップの直後でもあり、もし皆様のお役に立てば幸いです。
●素晴らしい高機能…ただし、不安定も同居:
すでに詳しい方には、以下は「何を今さら」というお話になりますが。米国本家サイトのFlightGear Wiki にある「GPS」と「Route Manager」の両項目を読んだところ、Ver.2.0のGPSは私が想像していたより、はるかに多機能に設計されており、正直、驚きの連続でした。
例えば…ウェイポイントの入力は、空港や無線施設、FIXを選択することに加え、これらを基点に磁気方位と距離を指定して、任意のベクトル(FlightGearの名称では「オフセット」)として定義したり、私の夢だった緯度・経度の直接入力もできます。各ウェイポイントは通過時の高度指定が可能で、近い将来に速度制御なども加えて、より高度なフライト・マネジメント・システムへ進化することを、明確に指向しています。どうも英語の敷居が高くて、これまで本家Wikiを利用したことはなかったのですが、読んでみて大変よかったと思います。
しかしまた同時に、Ver.2.0のGPSは熟成への途上にあり、まだまだ設計通りに動かない部分もあることを痛感しました。(これが商品なら腹を立てるところですが、FlightGearの場合は無料かつオープンソースの条件下、「数々のアイディアを、取りあえずここまで、形にしてみた!」という意気込みが伝わってきますので…当然ながら「できるものなら、改良に協力したいが、せめて応援したい」と思うばかりです)
本来は、モデルコースのフライトご紹介すべきですが、私の環境下では、多数のウェイポイントからなるルートを入力してアクティブ化しても、なぜか順番通り実行されません。かなり試行錯誤を重ねましたが、現段階では残念ながら、ウェイポイントを一つずつ入力するのが最も確実な操作法ですので、モデルコースは無意味と考え、現時点で分かっている基本操作と幾つかの留意点、そして先に述べた英文Wiki2項目の拙訳をご紹介することにしました。
●基本的な使い方:
(1)ウェイポイントを入力:
機体を起動して、メニューバーからRoute Managerを開くと、Depature欄にデフォルトで出発空港のIDが入っており、ウェイポイントとして自動的にアクティブ化されています。HUDを開くと帰投方位と距離が常に一目瞭然で、「ちょっとそのへんを一周」フライトには、非常に便利ですね。
Route Managerにウェイポイントを入力する場合、現バージョンでは高度を同時に入力しないと、ウェイポイント通過時にオートパイロットの高度指定がゼロになり、気付かぬうちにどんどん降下しますので、ご注意ください。高度の書式はID@ftです。例えば大阪国際空港を3000ftで通過するなら、「RJOO@3000」と打ち込みます。この機能は恐らく、空港周辺のFIXをたどってSID/STARを利用するためにあるのでしょう。目的地の空港は別途「Arrival:」欄からも入力可能です。
(2)ルートをアクティブ化する:
入力が終わった時点で、hキーを押してHUDを開きますと、出発地のIDがウェイポイントに選択されたままで、まだルートが読み込まれていません。航法を始めるためには、Route Manager最下段の「Activate」ボタンを押さなくてはなりませんが、いきなり操作しますと、FlightGearが非常に高い確率で異常終了します。必ず最初に、上段の「X」ボタンをクリックしてください。(これは出発空港の滑走路を、自動的に選択・登録するためのボタンのようです)
出発空港のウェイポイントは、そのまま離陸して直線上昇したり、リバーサル・ディパーチュアを行って空港上空を通過すると消え、次のウェイポイントが繰り上がるはずです。ダメでしたらPop Waypointで消します。
Ver.2.0のRoute Managerでは、わざわざPop Waypointで消さない限り、すべてのウェイポイントが飛行終了時までリストに残ります。途中で、いずれかのウェイポイントに逆戻りしたい場合は、リストから再選択してActivateボタンを押すと、再びアクティブ化することができます。
ただし、これまでに述べた流れは、必ずしもうまく行きません。私の環境ではルートをアクティブ化すると、ほとんどの場合、到着地の空港が最初からウェイポイントに指定されてしまい、中継地をすっ飛ばしてしまいます。Route Managerにあるウェイポイントのリストから、中継したい地点を選択しなおしても正常にアクティブ化できないケースが、大部分のようです。
(3)画面表示及び計器との連動:
GPSを使用中、HUDには以下のような表示が出ます。
hdg= 機首方位(注意、これだけは真方位。他はすべて磁気方位)。
WPT 現在アクティブなウェイポイント。
BRG そのウェイポイントへのベアリング(方位)と距離。
GPS TRK GPSが測定した、現在のトラック=航跡(対地針路)。
XTRK クロス・トラック・エラー(トラックが正しいコースから
どれだけ離れているか)。nm単位の距離で表し、機体から
見た左右の別は、<>記号を矢印代わりにして示す。
例:XTRK:<10.05nm 正しいコースは機体の真左10.05nmにある。
注:GPS Settings画面の下段にある「NAV Slave」にチェックを入れるとGPSにHSIが連動し、CDI指針を使ってコースからの逸脱度を知ることも可能。この場合、CDI指針の目盛り1ドットは1nmを示していますが、表示には1割ほど誤差があります。
…以上に登場する各種の方位は、お互いに矛盾して見える場合がありますが、機体は常に風に流されており、GPSが風力を自動補正して進路を決めているためで、問題ありません。
(4)作動モード:
Ver.2.0のGPSは3種類の作動モードを持ち、GPS Settings下段のボタンで選択できます。それぞれの機能は別記Wiki翻訳をご覧下さい。起動時はOBSモードになっています。また複数のウェイポイントを入力し、ルートをアクティブ化した後は、基本状態であるLEGモードになります。計3モードは飛行中、自由に切り替えられる設計ですが、実際は非常に高い頻度で、途中から操作を受け付けなくなります。取りあえず解決するには、
・GPS Settingsの空港検索機能を使った後、再び選択ボタンを押す。
・それでも回復しなければ、登録済みウェイポイントをクリアして、
すぐ必要な1カ所だけ入力し、アクティブ化し直す…という方法が、あるにはあります。
以上3モードのうち、OBSモード使用時にHSIをスレーブ化(GPSに連動)して、さらにオートパイロットの針路保持機能でNAVI1 CDI Courseモードを選択している場合は、OBS(進路選択つまみ)を回転させてコース方位を変更することにより、まるでVORラジアルを変更したときのように、機体の飛行経路を変化させて、所定のコースへ滑らかに合流させることができます。
ただし、オートパイロットでVORラジアルやILSをトラッキングする場合のような、タイトなS字機動は行ってくれず、じわじわとコースに寄っていく感じです。目標のウェイポイントが至近距離にあり、かつ針路が大きくそれた状態では、GPSは直ちにコースへ合流することを諦めて、むしろ遠ざかる方向へいったん機首を向け、ウェイポイントを通過後(!)に、コースに合流しようとします。
またLEGモードにも、問題があります。目的地に設定したウェイポイントを、うっかりそのまま通過してしまうと、GPSは根拠不明な針路を勝手に算出して大変針し、高度保持もゼロになります。総じてGPSの振る舞いは、Atlas画面で常時監視した方が良さそうです。
●英文Wikiの拙訳:
以下、英文Wikiの翻訳です。なるべく逐語訳を目指しましたが、若干の意訳が混じっています。また付随的な記述の一部は省略し、(以下略)などと表記しました。では、本文です。
<GPS>
このページは、FlightGearがサポートするGPS一般について論じたもので、実世界におけるデバイスや操作法の詳細については述べていません。とは言うものの、(実物のGPSと)かなり似ています。また読者が、電波航法と基本的な計器飛行の知識があるものとしています。GPSの使用法そのものについては以下のページをご覧下さい。
http://wiki.flightgear.org/index.php/Avionics_Development_Resources#GPS
このGPSは書きかけ項目です(以下略)。
★基本的な情報:
GPSは位置や方位、速度の情報を、FlightGearの他の計器類から独立して−−例えば高度は高度計に依存せず−−計算します。GPSが計算した値は、他の計器とは誤差や精度が異なっています。(FlightGearのGPSは、あまりにも正確すぎます。将来は何かオプション・モデルが付け加えられるでしょう)
これらの情報には、(対気速度ならぬ)真対地速度と(機首方位とは異なる)グラウンド・トラック(hide注:航跡。風の影響を受けた対地針路)が含まれています。別の言い方をすれば、飛行経路と運動の方向(の基準)は地面から得ています。
★アクティブなウェイポイント:
GPSは、空港やVOR、NDB、FIXまたは様々な方法によるユーザー定義のアクティブ・ウェイポイントを追跡し、目標への方位(bearing)、距離(range)、到着までの時間などを提供します。
★各種モード:
・OBS
OBSモードは、ウェイポイントにチューニングされた航法無線機のように振る舞います。希望するラジアル(原注:無線ダイアログから選択)を選ぶと、GPSはto/fromフラッグとコースからの誤差を、VOR受信機のように示します。NDBやFIXについても無線受信なしに働き、受信範囲外であるとかサービス時間外、などと言うことはありません。OBSラジアル方位は、いつでも調節することができます。(念のためhide注:OBSはオムニ・ベアリング・セレクタ=ラジアル選択ノブ。飛びたい針路をセットするつまみ)
・LEG
LEGモードはたいてい、(ルートマネージャで定義された)アクティブ・ルートに利用されます。(この場合の)アクティブ・ウェイポイントは、現在のルート上にある次のウェイポイントで、GPSは直前のウェイポイントとアクティブ・ウェイポイント間の直線飛行コースの誤差を計算します。GPSはアクティブ・ウェイポイントに到達すると、もし次のウェイポイントがあれば、自動的に切り替えます。
・DTO
このモードは、あるウェイポイントへ直航するのに使われます。DTOモードに入れると、コース中央に向けて誤差が修正され、リクエストされたアクティブ・ウェイポイントへの針路が計算されます。
ウェイポイント上に到達すると、GPSはインバウンド・ベアリングを飛び続けます。★ただし★、アクティブ・ウェイポイントが、アクティブ・ルートの一部になっている場合は、GPSは自動的にLEGモードに切り替わり、ウェイポイント・シーケンスを再開します。
★ウェイポイントを見つける:
ウェイポイントは次のように選びます。
・IDか名称で探す。全部の綴りか最初の一部を入力して検索すると、それに近い順に、ウェイポイントが次々と表示されます。
・最も近いウェイポイントを選ぶ。最も接近した10のウェイポイントがロードされ、検索されます。
・アクティブ・ルートからウェイポイントをロードする(フライトプラン)
★見越し旋回:
まだ実現していませんが…もうすぐ。(hide注:残念ながらVer.2.0では、advroutemgr.nasは効果がないようです)
★航法援助施設を参照:
GPSコードは自動的に、航法援助施設を参照します。もし一つが近くに見つかると、位置と方位、距離および周波数を提供し、この周波数に航法無線機を同調します。これはパイロットが、GPSの表示した位置を、航法援助施設の参照によりチェックできるよう想定したものです。
★一般的な手続き:
・ATCのダイレクト進入許可を実行する:(hide注:この項目の訳は自信ありません)
ATCは一般的に、エリア内のウェイポイントへ出入りする航空機を排除します。特に出発に関しては、SIDの様々なウェイポイントをスキップします。この場合、単にアクティブ・ウェイポイントをロードし、前方のウェイポイントを探して、DTOボタンを押します。GPSはウェイポイントに向けてダイレクトに飛び、必要に応じてLEGモードを再開する前に、いかなるウェイポイントもスキップします。
・進入復航:
現在のGPSコードには、アプローチ・サポートがありませんが、進入復航点をアクティブ・ウェイポイントにセットすることには価値があります。復航する場合は、直航(Direct to=DTOモード)を実行します。あなたの唯一の心配は、いつ進入をミスするか(進入復航するか)だけです。
<Route Manager>
★序論:(略)
★コンセプト:
ルート・マネージャーはフライトプランを管理し、出発地、目的地、代替空港、そしてウェイポイントのリストなど巡航情報から成り立っています。全ての情報は今のところ選択可能で、リアルではないが便利です。ルート・マネージャーのウェイポイントは、航法援助施設のIDか、明確な緯度経度、または航法援助施設からの(方位と距離による)オフセットで登録されます。それぞれのウェイポイントはVNAV(バーティカル・ナビゲーションモード)で使われる、関連の高度(情報)を持っています。将来は特に速度制限など、他のデータもウェイポイントに関わるでしょう。
ルート・マネージャーは、HUDにデフォルトで現れるGPSダイアログに示された(潜在的にはコクピットのコクピットにも表示可能な)、現在選択中のウェイポイントを管理します。一般にルート・マネージャーは現在選択中のウェイポイントを通過すると、次のウェイポイントに自動的に移動しますが、アクティブ・ウェイポイントはマニュアル選択される必要があります。
二つのウェイポイントを結ぶ「レグ(区間)」は、重要な専門用語です。多くの実世界の装置はレグを最初に取り扱います。FlightGearのルート・マネージャーでは、「アクティブ・レグ」とは、前のウェイポイントから現在のウェイポイント(今向かっているウェイポイント)のことです。
★ルートを定義する:
もっとも簡単なルートの定義法は、ウェイポイントのIDを一つずつ入れることです。航法援助施設のIDはそれぞれ固有のものではないので、ルート・マネージャーは出発空港か直前に定義されたウェイポイントを基点に使ってIDを探します。実際問題、重複する名前の航法援助施設は十分に離れており、これで自動的にうまくいきます。
以下の方法でオフセット・ウェイポイントを作ることにより、自分で出発から到着までの手順をサポートできます。ルートは単純なXMLフォーマットで読み込んだり保存できるので、手で入力するよりテキストエディターで作った方がいいでしょう。フライトプランを作るツールも計画されており、興味があるなら開発者リストにコンタクトしてください。将来は航空路を使った自動ルーティングや、VOR-VORルーティングも加えられるでしょう。
ウェイポイント定義の例:
KJFK
空港ID。
UW
航法援助施設(NDB、VORまたはFIX)ID。
TLA/210/35
航法援助施設を基準とした場合の位置(=オフセットという)。
この例では、TLA VORから磁気方位210度35nm先。
WOBAD@18000
WOBADのFIX上空1万8000ft。
SPL/050/12.3@2000
SPL VORから磁気方位50度ラジアル12.3nm地点の上空2000ft。
★ルートをアクティブ化する:
ルートをアクティベートすると、幾つかのチェックが実行され、選択された出発地と到着地情報に基づき、最初と最後のウェイポイントが作られます。取りあえず、出発滑走路が(最初の)ウェイポイント・ゼロですが、将来は(出発プロシージャーがサポートされれば)よりふさわしいプロシージャー・ウェイポイントが作られるでしょう。
これはまた、将来は上昇の頂点や下降への頂点のような、巡航情報を計算する基点となります。また他の装置(特にGPS/FMS)は、ルートのアクティベートに基づき、最初のレグのシーケンスに入るとか、(プログラム内部の)カウンターやタイマーをリセットする、などの変更を発動します。
★ルートを飛行する:
ルートがアクティベートされると、GPSシステムは「レグモード」に入り、(すべての)ウェイポイントを飛び切ってしまうまで、自動シーケンスに入ります。こんなシステムを持っていなかった(歴史的な)航空機を含め、すべての航空機がルートマネージャーとGPSを使えることにご留意下さい。これはカジュアルなユーザーや、テストなどに便利でしょう。
特に、GPSは一般的なオートパイロットのプロパティを操作します。True Headingモードでは、ルートマネージャーのルートを使って飛ぶことができます。
HUD(Hキーで起動)はデフォルトで画面左上に、選択中のウェイポイントのIDと到達までの距離や時間、現在のグラウンド・トラック(対地針路)、ウェイポイントへの磁気方位、そしてレグからのずれ(マイル単位)を含む、ウェイポイントとレグ(区間)情報を表示します。(以下2行略)
★滑走路にぴったり合わせる:
ルートマネージャーは、個々の位置への誘導を提供するだけなので、滑走路やILSローカライザに機首を合わせるには、幾つものウェイポイントを使う必要があります。全てのILSアプローチは事実上、そのために作られた高度制限を伴うフィックスで定義されています。例えば、 KPHX 08 approach(hide注、原文にはアプローチ・チャートへのリンクあり)では、進入開始点から20nmの間にALLIS、SARTE、HIKID、ILIKE、JAMILとWAZUPが定義されています。(以下、チャートの説明は省略)
★プロパティ:
ルートがアクティブになっていると、ルートマネージャーは、航空機の現在位置/速度と、ルートをどこまで進んだかに基づき、幾つかの情報を提供します。これらの値は、現実のシステムでは航法コンピューターで計算されますが、FlightGearでは便宜上、ルートマネージャーで行われます。記録される値は、離陸時間、予定飛行時間(ETE)、残りの飛行距離などです。どんなものが得られるか、プロパティ・ツリーをご覧下さい。
★もっと読むには:
詳細については Route manager internals をご覧下さい。
http://wiki.flightgear.org/index.php/Route_manager_internals
=訳文、以上です=
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Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
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