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空の夢、星の夢

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なし 空の夢、星の夢

msg# 1.3.1.1.1.1.1
depth:
6
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2009-4-25 21:55 | 最終変更
hide  長老 居住地: 兵庫県  投稿数: 650
hideです。
 長い中南米の旅が終わりまして、これからたっぷり、北米の空を楽しみます。
今回は手始めに、ケネディ宇宙センターと、ノースカロライナ州・キティーホーク
の海岸を訪れて、擬似的な宇宙飛行や、「本場で乗るライト・フライヤー1号機」
を味わうことにしましょう。

●空港がウジャウジャ…航空大国アメリカ:
 まずはPC7改で、マイアミ郊外のホームステッド基地を出発し、ケネディ宇宙セ
ンターへ向かいます。

◎フロリダ・ホームステッド空軍基地KHST 偏西6度
   ▼29度21nm(35度)
☆マイアミ・MI Keys NDB248
   ▼6度53nm(12度)
★Palm Beach VORTAC115.70
   ▼341度64nm(347度)
★Vero Beach VORTAC117.30
   ▼343度27nm(348度)
★Melbourna VOR110.00
   ▼354度31nm(359度)
◎ケネディ宇宙センター 偏西5度

 上天気、微風のホームステッド基地を離陸。搭載燃料を600Lbsに抑えましたの
で、滑走わずか10秒でひらりと離陸。3000ftで景色を眺め、VORを使って中継地を
たどります。2本のVOR指針がぴったり重なり、航法は快調です。

 まず驚いたのは、空港の多さです。離陸後17分で、たぶん8カ所の空港の真上を
通過。さすがはアメリカです。長く伸びるビーチを見下ろすと、湘南海岸の藤沢あ
たりを飛んでいる気分ですが、はるかに大規模です。
 この区間は、初めて TerraSync を使いましたが、かなり負荷を感じ、数分おき
に画面がコマ送りになって、そのつど大揺れしました。またケネディ宇宙センター
到着の際、マップと機体の位置がずれて、HUD高度計が60ftのまま接地し、ブレー
キを掛けると、空中に停止しました。TerraSync は素晴らしいですが、あらかじめ
中継地でデータをロードし、飛び直した方が無難なようです。

●T-38で滑空着陸:
 ケネディ宇宙センターには、出来ればシャトルで着陸してみたいものです。あい
にくシャトルはないので、NASA御用達のT-38を起動し、天候偵察をする宇宙飛行士
の気分で、軽く発着を試みました。
(注:NASAでは打ち上げ前、同僚の宇宙飛行士が、わざわざジェット機を操縦して
天候を確認する習わしです。そんなの、地上と衛星の観測で分かるって? もちろ
んです。でも初期の宇宙飛行士は、テストパイロット出身で誇り高く、「飛ぶのは
俺たちだ。パイロット仲間がOKを出すまでは、本当のOKではない」という気風が色
濃くあって、これが伝統になったのでしょう)

 FlightGearのT-38は以前、操縦性に大変問題がありましたが、1代前のバージョ
ンから、かなり扱いやすくなりました。飛んでみると結構快適でしたので、次は本
格的に高度を上げ、シャトル同様の滑空着陸をめざします。さて開始高度は、どの
くらいにしようかな。
 向井万起男さんの「君について行こう 女房は宇宙をめざした」によると、シャ
トルはダウンウインド・レグ45000ftで、手動操縦に切り替えるそうです。私も
同じ高度を狙いましたが、T-38は40000ftが上昇限度のようでした。
 38300ftでアイドルに絞って、滑空で滑走路右7nmの、ダウンウインド・レグに
着けましたが、高度を処理する余裕がないので右ターン。Atlasを頼りに17nm沖ま
で出て、涙滴型の左ベースターンを描き、滑走路の北方を目指しました。後は終始
250Ktくらいで滑空し、かなりあっさり着陸に成功しました。

●T-38最新版で、無重力弾道飛行:
 「本家」サイトを調べたところ、最新版は待望の3Dパネルが装備され、しかも
VORとNDBが使えます。これをNASA塗装にして、再び滑空着陸に挑みましたが、相当
困難でした。現行機は着陸時のクラッシュ判定が、やたらにシビアなのです。フラ
ップを出さず、200Ktで突っ込むのが一番安全でした。
 飛行テスト中、ふと思いついて、宇宙飛行士の無重力訓練に使う、ゼロG飛行を
試しました。20000ftの水平飛行から、徐々に下げ舵を取って、加速度計をゼロに
保ちます。古くはマーキュリー計画の飛行士たちが、F100Fの後席に同僚(或いは
チンパンジー)を乗せて実施し、最近では727-200改がNASAで使われているとか。
FlightGearでは案外簡単で、10000ftまで降下中、20秒以上にわたり、ほぼゼロG
を維持できました。

●X-15並みの推力で、超高空へ:
 こんなフライトを重ねながら、トム・ウルフの「ザ・ライトスタッフ」を読み返
していましたら、ぜひ宇宙を飛びたくなりました。FlightGearは、軌道飛行を想定
していませんが、なにも軌道上だけが「宇宙」ではありません。マーキュリー計画
だって、最初は弾道飛行でした。これならFlightGearでも出来そうです。

 有翼機の弾道飛行は、最大でマッハ7近くを出したX-15の、一連の飛行実験が参
考になりそうです。同機は1950年代に、弾道飛行で高度10万mを超えており、やが
ては大型ブースターを付けて衛星軌道に到達し、手動操縦で滑空・帰還する飛行を
めざしていました。いわばシャトルの原型の一つですね。
 ただしFlightGearのX-15は出来が悪いので、T-38の推力を同レベルまで上げるこ
とにしました。X-15は当初、X-1のエンジンを2台束ねた、通称リトル・エンジンを
使ったので、私もT-38の推力(デフォルト2050Lbs)を、これと同じ16000Lbsに
書き換えました。
 パワーが巨大過ぎるので、地上で全開にすると、コントロールを失いそうです。
2割に抑えて離陸し、垂直近くまで機首を上げ、後は全開で急上昇しました。空は
みるみる黒ずみ、振り返れば水平線が、徐々に丸くなっていきます。(実際は多角
形ですが、気分はマルです!)
 この推力では78860ftが上昇限度で、エンジンを切って自由落下に入りました。
まだ宇宙とは呼べないものの、超高空から「青い地球」を堪能することができまし
た。ここまで来るとぜひとも、宇宙の始まりとされる高度(諸説あり)100キロ=
約330000ftを超えたくなります。

●UFOぶっちぎりの高速で「宇宙」に王手:
 X-15は、のちに57000lbsの XLR-99(通称ビッグ・エンジン)で高度107.96kmを
記録しましたので、私もT-38を同じ推力にしました。ビッグ・エンジンの飛行は
2回実験し、いずれも成功しました。2回目を簡単にご紹介します。

 天候は、最近私がオフラインのデフォルトにしている、190度の風約4Kt、雲量は
4000ftでscattered、20000ftでcirrusです。パワーは強烈で、アイドリングでもブ
レーキを振り切って走り出します。翼の揚力に依存しないロケットは、いかに猛烈
な推力を使うか、改めて実感しました。
 ストップウォッチをオン。推力1割弱で離陸。機首を上げ、いよいよ全開にする
と、HUDの高度計が、読めない速さでスクロールして行きました。高速のため操舵は
やや不自由で、いったん機首が天頂を行き過ぎて修正、ピッチ角約70度で安定しま
した。軽いロールが、なかなか納まらず、正面では真昼の太陽が、暗黒に近い空を
バックに、ゆっくり円を描きます。
 離陸後1分。高度103200ft、速度383KIAS、仰角70度、針路220度。その後の経過
時間と到達高度、速度の垂直成分は、次の通りです。

1分10秒:141600ft。
1分20秒:177200ft(上記との差35600ft、垂直速度11672m/s)
1分30秒:210180ft(同32980ft、同10813m/s)
1分40秒:238000ft(同27820ft、同9121m/s)

 というわけで、この時点で第1宇宙速度(衛星となる最低速度=秒速約8キロ)
を超えていました。ただし重力と釣り合う遠心力を発生しないので、衛星にはなれ
ません。ちなみにUFOモードの最高速は、この4分の1くらいです。

●FlightGearの天球を、ぶち破る:
 1分50秒、26万2730ftで異変が起こりました。
背後の丸い地球が、まるで展開図のようにバラバラに開き、12角形をした、黒い
お盆になりました。その外側と頭上は薄曇り色の空で、宇宙と地球が入れ替わっ
た印象です。機体の真下には、黒く四角い地表マップが見えており、その周囲に
白い水平線と黒い空を映した、長方形の壁6枚がストーンヘンジのように並び、
幻想的な光景でした。
 要するにこれは、FlightGearに設けられた(恐らく半径250000ftの)天球を、
突破してしまったのだろうと思います。25万フィートと言えば、定義によっては
大気圏の最上部ですから、これをもって「宇宙に達した」とみてよさそうです。
 離陸後2分で SHIFT+Qキーを押し、エンジンを停止。機体は弾道飛行に移行し
惰性で上昇を続けました。
 3分12秒で、弾道の頂点に到達。HUDの高度計では355130ft、速度は55KIAS、仰角
10度でした。気速計が動き、舵も効きますから、「空気はある」ようですね。しか
しパネル上の高度計は、約100000ftでロックしていました。機体は落下を始めま
したが、過速による制御不能を予防するため、早めにスピードブレーキを出してお
きました。

●「地球」への帰還:
 200KIAS程度で、長い長い急降下。真対気速度は、ちょっと見当が付きません。
次第に加速したため、飛行時間5分でブレーキに加えてフラップを使い、引き起こし
に掛かります。ブラックアウトしましたが、ここでコントロールを確立しないと、
今度は天球ならぬ、地球をぶち抜くことになりそうです。構わず大Gをかけ続け、
水平飛行に移行。間もなく100000ftを割りました。
 上昇と降下に気を奪われている間に、ケネディ宇宙センターから南西へ70nm近く
離れています。利きにくい舵を一杯使い、約3分掛けて反転。帰還目標のNDBに機首
を向けました。
 残念ながら、ケネディ宇宙センターには、ちょっと届きそうにありません。飛行
15分、高度約18000ftでエンジンを再始動し、飛行機らしい飛び方に戻りました。
すぐ下には、もくもくと雲が湧いています。生き物のように懐かしくて、「ああ、
バイオスフィアに再突入した」と実感しました。
 目標NDB上空で、南方へ鋭角のターン。すぐ滑走路を視認し、数マイルのリード
を取ってから、右ベースターンを描いてファイナルへ。遠くから慎重にアプローチ
して接地点に向かい、接地前にエンジンを切って、うまく降りました。最高の気分
でした。(本機は翼面加重が高いので、少しだけパワーを残した方が、スムーズに
降りられると思います)

●「聖地」キティーホークへ:
 同じT-38(ただし、ノーマルエンジン)で、東海岸を北上します。

◎ケネディ宇宙センター 偏西5度
 NASA Shuttle Landing Facility KTTS 283648N-804136W
   ▼332度47nm
★Ormond Beach VOR112.60 291812N-810645W
 デイトナ・ビーチのそば
   ▼14度222nm
★チャールストン空軍基地KCHS VORTAC113.50 325342N-800216W
   ▼57度201nm
☆Michael J Smith FLD NDB269 344352N-763943W
   ▼60度60nm
◎Billy Michel KHSE 351358N-753702W
 ハッテラス岬のそば
   ▼355度41nm
◎Dare Co RGNL KMQI VOR 111.60 355513N-754148W RWY-04-22
   ▼12度6nm
◎First Flight KFFA 360108N-754015W 偏西10.8度
 ライト兄弟初飛行の地点のそば。ここまで計577nm。

 燃料満タン、天候データは同じ設定で離陸。高度別の燃費やオートパイロットの
特性(揺れなど)を確認しながら飛び続けます。燃費はかなり悪く、実機の航続力
750nmはとても無理で、せいぜい400nmでしょう。推力を60%くらいまで落とせば、
かなり改善されるものの、これじゃまるでプロペラ機。PC7改の方がずっと快適で、
しかも高速です。T-38にも愛着は湧いてきましたが、あまり長距離を飛ぶ飛行機で
はなさそうです。
 燃費が不安なので50%まで絞り、何とかMichael J Smith FLDまで飛んで、ここ
でPC7改に乗り換えようと思いましたが、滑走路が短くて、200Kt進入のT-38では
着陸は危険です。北西15nmにある、チェリーポイント空港KNKT VOR-108.90に着陸
地を変更し、ベースターンを決めて降りました。

 ここからはPC7改で、海上はるか沖合にリボン状に伸びた、細い陸地の上を飛び
続けます。外洋と内海が、幅1nm足らずの土地で仕切られており、まるで丹後地方の
「天橋立」が約170nm続いているような、不思議な眺めです。どうやったら、こんな
地形ができるのでしょうね。
 そのリボンが、大きく大西洋に張り出した、「く」の字型の突端がハッテラス岬
です。北米の地図を見ると、フロリダとニューヨークを結ぶ線の中点で、この線上
では、もっとも大西洋に張り出しており、昔から航海上の参照点です。キティーホ
ークは、この岬の40nmほど北、やはり「リボン」の一部ですから、大西洋の風や波
をまともに受ける位置です。ライト兄弟がグライダー実験のため、「年間を通じ、
安定した強風が吹く土地」として選んだ理由が、よく分かりました。

●フライヤー1号機、海をわたる:
 兄弟初飛行の地には、その名も First Flight という小空港があり、南北に走る
滑走路の北端に接して、非常に短くて狭い、第2の滑走路があります。なんでこん
なものを作ったのかと Google Earthで観察し、はたと気付きました。これこそが、
最初の飛行の、離陸用レールを敷設した場所だったのですね。

 FlightGearのライト・フライヤー1号は、ご存じのように、極めてピッチ安定が
悪く、エレベーターが過敏で、パワーは低く、ロール・コントロールの重い飛行機
です。どうせ十数秒しか飛べまいと思いつつ、私は大事を取って、メインの滑走路
から離陸しました。ところがこれが、よく飛ぶのですねぇ。

 Ver.1.9.1bになってから、今回初めて操縦しましたが、機体自体は古いままなの
に、FlightGear本体のフライトモデルが改善されたのか、かなり飛ばしやすくなっ
ように感じました。操縦のコツは、
 ・離陸から着陸までエンジン全開。25Ktくらいで離陸する。
 ・注意力の9割をピッチ制御に注ぎ、20〜30Ktを維持する。
 ・上昇力がないため、障害物を早めに避けること。

…この3点に尽きます。何分飛べるかは、集中力と根気次第です。
私は最初のトライで10分を超え、かなり驚きました。2回目は、思い切って西側の
内海に出て、隣の島まで約4nmの海を越え、直線で約7nm南南西の、DARE CO RGNL
空港に降りました。滞空24分20秒、旋回を重ねたので、飛行距離はたぶん23nmくら
い、最高高度は200ftでした。
 私は最初、フライヤー1を改造し、馬力と前後のモーメント・アームを、ライト
兄弟の最高傑作とされた「A型」と同じにして、何分間でも飛べるようにしてみた
かったのですが、改造の必要は、まったくないようです。

 今回は、超高速から超低速まで、ずいぶん充実感のある空の旅でした。さて次は
どこへ行こうかな?
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