小説「航空救難隊」を再現する・前編
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居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです。
今回は、ピラタスPC7改に再び手を加えて、エンジンの始動・停止ができるように
しました。
PC7は、常にエンジンが回りっぱなしで、外観上も、プロペラ回転面を描いた円盤
が、常時ゆるゆる回る仕組みです。回したり止めたりできる、3Dオブジェクトの
プロペラはありません。これでは面白くありませんので、新たに3枚羽根のプロペ
ラを自作し、始動やアイドリング、停止の表示を実現しました。以下のリポートが
私と同様に、手探りで改造を楽しんでおられる方々の、ご参考になりましたら幸い
です。
改造後はPC7改で、カリブ海のドミニカ・サンサルバドル島から、バハマのキャッ
トアイランドにある、アーサーズ・タウン空港へ進出します。
またその後、同空港からパイパーカブJ3と、ロッキードの4発プロペラ旅客機・
スーパーコンステレーションを乗り継いで、フロリダ半島・マイアミ南方のホーム
ステッド空軍基地へ向かいます。
なぜ、わざわざ旅客機で空軍基地に降りるかと言いますと、後でご説明しますよ
うに、これは実は、ある航空小説のストーリーを、FlightGearで再現する試み
なのです。長くなりますので、今回は前編として、導入部のみご紹介します。
では、PC7改造のお話に進みましょう。
●プロペラを回転させる仕組み:
まず、他機のプログラムを研究し、プロペラを回転させる仕組みを調べました。
詳しい方はご存じの通り、FlightGearのプロペラ機は、低速では3Dのプロペラを
エンジン回転数に比例させて回し、高回転になると、回転面のみの表示に切り替え
ています。
私はまだ、3Dのプロペラが作れませんので、最初は他機のプロペラを借りよう
と思いました。しかしサイズの近い、PC6ターボ・ボーターのものでも、ブレードが
14センチ長く、あまり適当な物が見つかりません。少しでも直径が違うと、回転面
の画像に切り替えた時に、不自然に見えそうです。
●PC7に、疑似3Dプロペラを追加する:
そこで今回は、ピッチ角を付けるのは諦めて、プロペラを平面として製作するこ
とにしました。幸い単発機では、ペラは普通後ろから見るのですから、あまりボロ
は出ないと思った次第です(^^;)。
まずGIMPでオリジナルの propeller.rgb(回転面の画像)を開き、レイヤー
を追加して寸法を取り、実機のPC7の写真を参考に、静止した3枚羽根プロペラの
を描いて、fixedpropeller.rgb という名前で保存。次に機体3Dファイル
pc7.ac をテキストとして開き、"prop_disk"(プロペラ回転面の円盤)を
探して"fixedprop_disk"の名で複製しました。これにfixedpropeller.rgb を
張り付ければいいわけです。
それには、Aircraft/pc7/Models/pc7.xml に fixedprop_disk を書き
足せばOK。PC7のアイドリングは、タービン回転数で65%ですので、自作の静止
プロペラ画像を、回転数ゼロから70%まで表示させるようにしました。ただしパソ
コン画面のリフレッシュレートと同期し、ペラが止まって見えるのを防ぐため、回
転数は実際通りにはしていません。
一方プロペラ回転面の画像は、70%から出現するように設定しましたので、回転
を上げて行くと、一時的に両者がダブって表示され、自然に高回転に移行するよう
に見えます。以下にプロペラ関係の、全てのアニメーションを転載します。
<animation> ●静止プロペラを、75%以下で選択●
<type>select</type>
<object-name>fixedprop_disk</object-name>
<condition>
<less-than>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<value>75</value>
</less-than>
</condition>
</animation>
<animation> ●プロペラ回転面を、70%以上で選択●
<type>select</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<condition>
<greater-than>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<value>70</value>
</greater-than>
</condition>
</animation>
<animation> ●静止プロペラを、右回りにタービンの7倍速で回転●
<type>spin</type>
<object-name>fixedprop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>-7</factor>
<center>
<x-m>-0.48</x-m>
<y-m>0.0</y-m>
<z-m>0.59</z-m>
</center>
<axis>
<x>1.0</x>
<y>0.0</y>
<z>0.0</z>
</axis>
</animation>
<animation> ●プロペラ回転面を、半透明にする●
<type>blend</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>0.01</factor>
<min>0.3</min>
</animation>
<animation> ●プロペラ回転面を、右回り0.079倍速で回転させる●
<type>spin</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>-0.079</factor>
<center>
<x-m>-0.48</x-m>
<y-m>0.0</y-m>
<z-m>0.59</z-m>
</center>
<axis>
<x>1.0</x>
<y>0.0</y>
<z>0.0</z>
</axis>
</animation>
●エンジンの始動・停止シーケンスを追加:
最後に pc7/pc7.xml を開き、OV-10ブロンコのプログラムを参考に、始動と
停止の機能を書き加えました。エンジン関係の記述は、次のようになりました。
<engines> ●起動時には、エンジンは停止状態●
<engine n="0">
<running>false</running>
<rpm>0</rpm>
</engine>
</engines>
<input> ●シフト+rキーで、燃焼をON-OFF●
<keyboard>
<key n="82">
<name>R</name>
<desc>Toggle cutoff on Selected Engine(s)</desc>
<binding>
<condition>
<property>/sim/input/selected/engine[0]</property>
</condition>
<command>property-toggle</command>
<property>/controls/engines/engine[0]/cutoff</property>
</binding>
</key>
<key n="83"> ●シフト+sキーで、スターター作動●
<name>S</name>
<desc>Fire Starter on Selected Engine(s)</desc>
<binding>
<condition>
<property>/sim/input/selected/engine[0]</property>
</condition>
<command>property-assign</command>
<property>/controls/engines/engine[0]/starter</property>
<value type="bool">true</value>
</binding>
</key>
</keyboard>
</input>
サンサルバドル島でテストを重ねた後、小説再現飛行の出発地点に選んだ、アー
サーズ・タウン空港まで、カリブ海を飛んでみました。以下フライトプランです。
ドミニカ サンサルバドル島240340N-743204W
▼277度42nm(●286度)
△バハマ キャットアイランド・南東端 240837N-751743W
▼320度13nm(329度)
◎ニュー・バイト空港 241854N-752706W
▼327度22nm(●336度)
◎アーサーズ・タウン空港 243745N-754024W MYCA
エンジンの始動法は、Sでペラがゆっくり回り始め、N2=25%で安定。Rを押すと
燃焼開始し、排気温度や流量計が上がり、65%でパラパラとアイドリングします。
ここでスロットルを全開すると、ブンブン回転が上がり、間もなく回転面の画像に
切り替わりつつ機体が前屈し、気分はもう最高です(^^)。ブレーキを放して突進。
解放感あふれる、楽しい離陸でした。
約180度の風3nm。サンサルバドル空港上空3000ftから、磁気方位286度に定針。
航法施設のない小飛行場ばかり中継しますので、コンパスに頼る推測航法ですが、
微風のため、PC7改の速度なら、針路補正は無用と判断しました。
晴れた空を快調に飛び続け、途中で多くの船に出会いました。航法も概ね正確で
キャットアイランド南東端の岬に、2nmの誤差で到着。リボンのように細長い島影
を見下ろしながら、アーサーズ・タウン空港に到着。前回のスラスト軸調整のお陰
で、非常に滑らかなアプローチでした。
●冒険小説「航空救難隊」の世界:
PC7の改造記が長くなりましたが…ここで、小説シーンの再現飛行に移ります。
ネタ本は、学生時代に古本で読んだ、米作家ジョン・ボール作の「航空救難隊」
(ハヤカワ。原題 Rescue Mission 1966年)です。
アメリカの映画や小説には、よく「満席の大型旅客機を、素人が着陸させる羽目
になった!」というストーリーがありますが、本書はこの先駆けとも言える傑作。
スリル満点の物語と、操縦や航法、交信の詳細を極めた描写、ヒコーキを愛してや
まない登場人物の、細やかな心理や会話などに感心しました。この本はかなり昔、
紛失してしまいましたが、フライトシムでぜひ一度、飛行を再現してみたいと思っ
ていました。
絶版になって久しいので、あらすじをご紹介します。
時は1960年ごろ、舞台はカリブ海。主人公は、CAP(民間航空巡察隊)パイロット
の、シルヴェスター大尉とエド・チャン中尉。CAPは実在する組織で、民間人がボ
ランティアで小型機に乗り、海難捜索飛行などをする団体です。
2人はこの日、プロペラ単発観測機に乗って、巨大ハリケーンが接近中のカリブ
海を捜索飛行中、向かい風で燃料が欠乏し、架空のリゾートアイランド、トレス・
サントスへ島へ給油に着陸。島のローカル航空会社員たちは、すでに米本土へ避難
し、ターミナルは無人でした。ところがエプロンには、プロペラ時代の最後を飾る
4発旅客機、ロッキード・スーパーコンステレーション(愛称コニー)が1機、
満タンのまま放置されていました。
間もなく暴風雨で破壊されるのに、なぜ? と2人は首をかしげます。
この島には、急患2人を含む約80人の島民がいて、米空軍が輸送機で全員を救出
する手はずでしたが、風速が強まり、まもなく発着不能になりそうです。2人は島
の神父に懇願され、コニーで全島民を米本土へ運ぶはめに。機内の運航規定(操縦
マニュアル)を読み、エンジン始動と暖機、タキシングに成功しましたが、離陸時
に操縦桿を引いても、エレベーターは動きませんでした。とっさのトリムタブ操作
でコニーは危うく機首を上げ、荒れ模様の大空へ。
実はこの機体、直前にエレベーターの油圧シリンダーが壊れて、パワー制御とト
リム操作だけで、本拠地の空港に緊急着陸したばかり。乗員らは応急修理の手段も
ないまま、せめて突風から守るバラスト代わりにと満タンにして、後ろ髪を引かれ
る思いで置き去りにしたのでした。ちなみにコニーは、米旅客機としては初めて、
油圧操舵を全面採用した機体だそうです。さて…約80人の運命はいかに?
といったお話です。そこで私の計画は…
(1)カリブ海のそれらしき場所に、トレス・サントス空港に見立てた
空港を設定する。
(2)荒天下、小型観測機でこの空港に着陸し、コニーに乗り換える。
(3)事前に、FlightGearのコニー(Lockheed1049)に手を加え、
エレベーターを作動不能にしておく。
(4)小説通りにフロリダへ向かい、パワー制御とトリム操作だけで、
ホームステッド空軍基地に降りられるかどうか、実験する。
…というものです。
長くなりますので、実際のフライトは、近く後編でご紹介します。
今回は、ピラタスPC7改に再び手を加えて、エンジンの始動・停止ができるように
しました。
PC7は、常にエンジンが回りっぱなしで、外観上も、プロペラ回転面を描いた円盤
が、常時ゆるゆる回る仕組みです。回したり止めたりできる、3Dオブジェクトの
プロペラはありません。これでは面白くありませんので、新たに3枚羽根のプロペ
ラを自作し、始動やアイドリング、停止の表示を実現しました。以下のリポートが
私と同様に、手探りで改造を楽しんでおられる方々の、ご参考になりましたら幸い
です。
改造後はPC7改で、カリブ海のドミニカ・サンサルバドル島から、バハマのキャッ
トアイランドにある、アーサーズ・タウン空港へ進出します。
またその後、同空港からパイパーカブJ3と、ロッキードの4発プロペラ旅客機・
スーパーコンステレーションを乗り継いで、フロリダ半島・マイアミ南方のホーム
ステッド空軍基地へ向かいます。
なぜ、わざわざ旅客機で空軍基地に降りるかと言いますと、後でご説明しますよ
うに、これは実は、ある航空小説のストーリーを、FlightGearで再現する試み
なのです。長くなりますので、今回は前編として、導入部のみご紹介します。
では、PC7改造のお話に進みましょう。
●プロペラを回転させる仕組み:
まず、他機のプログラムを研究し、プロペラを回転させる仕組みを調べました。
詳しい方はご存じの通り、FlightGearのプロペラ機は、低速では3Dのプロペラを
エンジン回転数に比例させて回し、高回転になると、回転面のみの表示に切り替え
ています。
私はまだ、3Dのプロペラが作れませんので、最初は他機のプロペラを借りよう
と思いました。しかしサイズの近い、PC6ターボ・ボーターのものでも、ブレードが
14センチ長く、あまり適当な物が見つかりません。少しでも直径が違うと、回転面
の画像に切り替えた時に、不自然に見えそうです。
●PC7に、疑似3Dプロペラを追加する:
そこで今回は、ピッチ角を付けるのは諦めて、プロペラを平面として製作するこ
とにしました。幸い単発機では、ペラは普通後ろから見るのですから、あまりボロ
は出ないと思った次第です(^^;)。
まずGIMPでオリジナルの propeller.rgb(回転面の画像)を開き、レイヤー
を追加して寸法を取り、実機のPC7の写真を参考に、静止した3枚羽根プロペラの
を描いて、fixedpropeller.rgb という名前で保存。次に機体3Dファイル
pc7.ac をテキストとして開き、"prop_disk"(プロペラ回転面の円盤)を
探して"fixedprop_disk"の名で複製しました。これにfixedpropeller.rgb を
張り付ければいいわけです。
それには、Aircraft/pc7/Models/pc7.xml に fixedprop_disk を書き
足せばOK。PC7のアイドリングは、タービン回転数で65%ですので、自作の静止
プロペラ画像を、回転数ゼロから70%まで表示させるようにしました。ただしパソ
コン画面のリフレッシュレートと同期し、ペラが止まって見えるのを防ぐため、回
転数は実際通りにはしていません。
一方プロペラ回転面の画像は、70%から出現するように設定しましたので、回転
を上げて行くと、一時的に両者がダブって表示され、自然に高回転に移行するよう
に見えます。以下にプロペラ関係の、全てのアニメーションを転載します。
<animation> ●静止プロペラを、75%以下で選択●
<type>select</type>
<object-name>fixedprop_disk</object-name>
<condition>
<less-than>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<value>75</value>
</less-than>
</condition>
</animation>
<animation> ●プロペラ回転面を、70%以上で選択●
<type>select</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<condition>
<greater-than>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<value>70</value>
</greater-than>
</condition>
</animation>
<animation> ●静止プロペラを、右回りにタービンの7倍速で回転●
<type>spin</type>
<object-name>fixedprop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>-7</factor>
<center>
<x-m>-0.48</x-m>
<y-m>0.0</y-m>
<z-m>0.59</z-m>
</center>
<axis>
<x>1.0</x>
<y>0.0</y>
<z>0.0</z>
</axis>
</animation>
<animation> ●プロペラ回転面を、半透明にする●
<type>blend</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>0.01</factor>
<min>0.3</min>
</animation>
<animation> ●プロペラ回転面を、右回り0.079倍速で回転させる●
<type>spin</type>
<object-name>prop_disk</object-name>
<property>engines/engine[0]/n2</property>
<factor>-0.079</factor>
<center>
<x-m>-0.48</x-m>
<y-m>0.0</y-m>
<z-m>0.59</z-m>
</center>
<axis>
<x>1.0</x>
<y>0.0</y>
<z>0.0</z>
</axis>
</animation>
●エンジンの始動・停止シーケンスを追加:
最後に pc7/pc7.xml を開き、OV-10ブロンコのプログラムを参考に、始動と
停止の機能を書き加えました。エンジン関係の記述は、次のようになりました。
<engines> ●起動時には、エンジンは停止状態●
<engine n="0">
<running>false</running>
<rpm>0</rpm>
</engine>
</engines>
<input> ●シフト+rキーで、燃焼をON-OFF●
<keyboard>
<key n="82">
<name>R</name>
<desc>Toggle cutoff on Selected Engine(s)</desc>
<binding>
<condition>
<property>/sim/input/selected/engine[0]</property>
</condition>
<command>property-toggle</command>
<property>/controls/engines/engine[0]/cutoff</property>
</binding>
</key>
<key n="83"> ●シフト+sキーで、スターター作動●
<name>S</name>
<desc>Fire Starter on Selected Engine(s)</desc>
<binding>
<condition>
<property>/sim/input/selected/engine[0]</property>
</condition>
<command>property-assign</command>
<property>/controls/engines/engine[0]/starter</property>
<value type="bool">true</value>
</binding>
</key>
</keyboard>
</input>
サンサルバドル島でテストを重ねた後、小説再現飛行の出発地点に選んだ、アー
サーズ・タウン空港まで、カリブ海を飛んでみました。以下フライトプランです。
ドミニカ サンサルバドル島240340N-743204W
▼277度42nm(●286度)
△バハマ キャットアイランド・南東端 240837N-751743W
▼320度13nm(329度)
◎ニュー・バイト空港 241854N-752706W
▼327度22nm(●336度)
◎アーサーズ・タウン空港 243745N-754024W MYCA
エンジンの始動法は、Sでペラがゆっくり回り始め、N2=25%で安定。Rを押すと
燃焼開始し、排気温度や流量計が上がり、65%でパラパラとアイドリングします。
ここでスロットルを全開すると、ブンブン回転が上がり、間もなく回転面の画像に
切り替わりつつ機体が前屈し、気分はもう最高です(^^)。ブレーキを放して突進。
解放感あふれる、楽しい離陸でした。
約180度の風3nm。サンサルバドル空港上空3000ftから、磁気方位286度に定針。
航法施設のない小飛行場ばかり中継しますので、コンパスに頼る推測航法ですが、
微風のため、PC7改の速度なら、針路補正は無用と判断しました。
晴れた空を快調に飛び続け、途中で多くの船に出会いました。航法も概ね正確で
キャットアイランド南東端の岬に、2nmの誤差で到着。リボンのように細長い島影
を見下ろしながら、アーサーズ・タウン空港に到着。前回のスラスト軸調整のお陰
で、非常に滑らかなアプローチでした。
●冒険小説「航空救難隊」の世界:
PC7の改造記が長くなりましたが…ここで、小説シーンの再現飛行に移ります。
ネタ本は、学生時代に古本で読んだ、米作家ジョン・ボール作の「航空救難隊」
(ハヤカワ。原題 Rescue Mission 1966年)です。
アメリカの映画や小説には、よく「満席の大型旅客機を、素人が着陸させる羽目
になった!」というストーリーがありますが、本書はこの先駆けとも言える傑作。
スリル満点の物語と、操縦や航法、交信の詳細を極めた描写、ヒコーキを愛してや
まない登場人物の、細やかな心理や会話などに感心しました。この本はかなり昔、
紛失してしまいましたが、フライトシムでぜひ一度、飛行を再現してみたいと思っ
ていました。
絶版になって久しいので、あらすじをご紹介します。
時は1960年ごろ、舞台はカリブ海。主人公は、CAP(民間航空巡察隊)パイロット
の、シルヴェスター大尉とエド・チャン中尉。CAPは実在する組織で、民間人がボ
ランティアで小型機に乗り、海難捜索飛行などをする団体です。
2人はこの日、プロペラ単発観測機に乗って、巨大ハリケーンが接近中のカリブ
海を捜索飛行中、向かい風で燃料が欠乏し、架空のリゾートアイランド、トレス・
サントスへ島へ給油に着陸。島のローカル航空会社員たちは、すでに米本土へ避難
し、ターミナルは無人でした。ところがエプロンには、プロペラ時代の最後を飾る
4発旅客機、ロッキード・スーパーコンステレーション(愛称コニー)が1機、
満タンのまま放置されていました。
間もなく暴風雨で破壊されるのに、なぜ? と2人は首をかしげます。
この島には、急患2人を含む約80人の島民がいて、米空軍が輸送機で全員を救出
する手はずでしたが、風速が強まり、まもなく発着不能になりそうです。2人は島
の神父に懇願され、コニーで全島民を米本土へ運ぶはめに。機内の運航規定(操縦
マニュアル)を読み、エンジン始動と暖機、タキシングに成功しましたが、離陸時
に操縦桿を引いても、エレベーターは動きませんでした。とっさのトリムタブ操作
でコニーは危うく機首を上げ、荒れ模様の大空へ。
実はこの機体、直前にエレベーターの油圧シリンダーが壊れて、パワー制御とト
リム操作だけで、本拠地の空港に緊急着陸したばかり。乗員らは応急修理の手段も
ないまま、せめて突風から守るバラスト代わりにと満タンにして、後ろ髪を引かれ
る思いで置き去りにしたのでした。ちなみにコニーは、米旅客機としては初めて、
油圧操舵を全面採用した機体だそうです。さて…約80人の運命はいかに?
といったお話です。そこで私の計画は…
(1)カリブ海のそれらしき場所に、トレス・サントス空港に見立てた
空港を設定する。
(2)荒天下、小型観測機でこの空港に着陸し、コニーに乗り換える。
(3)事前に、FlightGearのコニー(Lockheed1049)に手を加え、
エレベーターを作動不能にしておく。
(4)小説通りにフロリダへ向かい、パワー制御とトリム操作だけで、
ホームステッド空軍基地に降りられるかどうか、実験する。
…というものです。
長くなりますので、実際のフライトは、近く後編でご紹介します。
投票数:13
平均点:5.38
投稿ツリー
-
手探り航法・旅日記(その2)
(hide, 2008-7-7 21:53)
- Re: 手探り航法・旅日記(その2) (Tat, 2008-7-8 4:54)
-
Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(hide, 2008-7-9 19:04)
-
Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(Tat, 2008-7-10 3:08)
-
Calleidas 160試乗と、アルゼンチン横断の旅
(hide, 2008-7-20 21:22)
-
ac3d について
(Tat, 2008-7-21 2:52)
-
Re: ac3d について
(hide, 2008-7-27 16:23)
-
アンデスの昼と夜(その1)
(hide, 2008-7-27 16:28)
-
アンデスの昼と夜(その2)
(hide, 2008-8-10 12:17)
-
天文航法でロビンソンの島へ(前編)
(hide, 2008-10-5 16:06)
-
天文航法でロビンソンの島へ(後編)
(hide, 2008-11-16 11:58)
-
難航する天文航法、バルパライソからリマへ
(hide, 2008-12-24 22:16)
-
PC7改「Edelweiss」号で、リマからトリニダード島へ
(hide, 2009-2-2 21:24)
- カタリナ飛行艇で、カリブ海の休日を (hide, 2009-2-16 22:50)
-
PC7改「Edelweiss」号で、リマからトリニダード島へ
(hide, 2009-2-2 21:24)
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難航する天文航法、バルパライソからリマへ
(hide, 2008-12-24 22:16)
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天文航法でロビンソンの島へ(後編)
(hide, 2008-11-16 11:58)
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天文航法でロビンソンの島へ(前編)
(hide, 2008-10-5 16:06)
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アンデスの昼と夜(その2)
(hide, 2008-8-10 12:17)
-
アンデスの昼と夜(その1)
(hide, 2008-7-27 16:28)
-
Re: ac3d について
(hide, 2008-7-27 16:23)
-
ac3d について
(Tat, 2008-7-21 2:52)
-
Calleidas 160試乗と、アルゼンチン横断の旅
(hide, 2008-7-20 21:22)
-
Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(Tat, 2008-7-10 3:08)
-
Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(toshi, 2009-2-17 2:28)
-
Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(hide, 2009-2-18 20:17)
-
コロンブス初上陸の島へ
(hide, 2009-3-11 15:46)
-
小説「航空救難隊」を再現する・前編
(hide, 2009-4-2 17:47)
-
小説「航空救難隊」を再現する・後編
(hide, 2009-4-6 18:56)
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空の夢、星の夢
(hide, 2009-4-25 21:55)
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グラウンド・ゼロ
(hide, 2009-5-19 3:30)
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リンドバーグの視界
(hide, 2009-6-6 17:10)
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ILS自動着陸に挑む
(hide, 2009-6-18 18:59)
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ILS自動着陸を洗練する
(hide, 2009-6-27 20:28)
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YS−11でアメリカ中西部を行く
(hide, 2009-7-21 11:10)
-
Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(Tat, 2009-7-28 0:25)
-
Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(hide, 2009-7-28 19:44)
-
Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(Tat, 2009-7-29 12:23)
-
Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(hide, 2009-7-29 18:14)
-
新開発の航法でバリンジャー隕石孔へ
(hide, 2009-7-29 18:20)
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ラスベガスから、超巨大なエドワーズ空軍基地へ
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レーダーで航法を
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空の巨船と零戦に導かれ…ハワイから硫黄島へ
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帰還…富士山と松山に再会
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Re: 帰還…富士山と松山に再会
(toshi, 2010-2-1 23:32)
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Re: 帰還…富士山と松山に再会
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夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
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Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
(toshi, 2010-5-21 2:37)
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Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
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極地の「グリッド航法」を再現
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Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
(sambar, 2011-2-16 22:03)
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Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
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GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
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Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
(toshi, 2011-7-14 1:09)
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Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
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Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
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Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
(toshi, 2011-7-14 1:09)
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GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
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子午線への挑戦(1)
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Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
(hide, 2011-2-17 23:26)
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Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
(sambar, 2011-2-16 22:03)
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北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
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極光に導かれ極点へ そしてシベリアへ
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「初飛行」満100年!!
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世界最北の空港…植村直己さんをしのんで
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Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
(hide, 2010-5-25 13:34)
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Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
(toshi, 2010-5-21 2:37)
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夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
(hide, 2010-5-20 2:33)
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Ver.2.0のGPSをめぐる研究
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hide式大阪空港に「巣箱」を設置
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Re: 帰還…富士山と松山に再会
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Re: 帰還…富士山と松山に再会
(toshi, 2010-2-1 23:32)
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帰還…富士山と松山に再会
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空の巨船と零戦に導かれ…ハワイから硫黄島へ
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レーダーで航法を
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オアフ島でAI機研究
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FlightGearの原点・KSFOに到着
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セントルイス号の「ふるさと」訪問
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ラスベガスから、超巨大なエドワーズ空軍基地へ
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新開発の航法でバリンジャー隕石孔へ
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(Tat, 2009-7-29 12:23)
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(hide, 2009-7-28 19:44)
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(Tat, 2009-7-28 0:25)
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YS−11でアメリカ中西部を行く
(hide, 2009-7-21 11:10)
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小説「航空救難隊」を再現する・後編
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Re: 手探り航法・旅日記(その2)
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