Calleidas 160試乗と、アルゼンチン横断の旅
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居住地: 兵庫県
投稿数: 650
hideです。Tatさん、先日はRSSとPHP、エンジンテーブルなどについて、ていねいなご教示を大変あり
がとうございました。皆さん3連休は、いかがお過ごしでしょうか。
私は、少しずつ仕事が入りまして、少々ウォームビズ(?)な気分の毎日です。あまり落ち着かない気分の
書き込みながら、今回は「Calleidas 160」という、風変わりなジェット機に試乗した後、新しいブロンコ改で、
ブエノスアイレスからアンデス山麓のメンドーサまで、アルゼンチンを横断します。
●1960年代の夢が詰まった、豪華な小型ジェット機:
きょうご紹介しますCalleidas 160は、本サイトでお馴染みの、Helijahさんの「私の格納庫」からダウンロー
ドした新作です。1966年に公表された、リアエンジン3発の超高級ビジネスジェットで、なんと可変後退翼。
最大巡航速度はマッハ2です。
はて、そんな飛行機あったっけ? とお思いでしょうが…済みません。これはベルギーを代表するマンガ
家、エルジェの長編「タンタンの冒険」シリーズ(1927年〜1976年連載)に登場する、架空機です(^^;)。
この飛行機が、「タンタン」シリーズの「シドニー行き714便」という巻に登場した1966年というと、B747の
就航まであと6年。コンコルドやボーイング 2707、ロッキード L-2000など、SSTの開発が進められ、航空
の未来がまだ、夢多きバラ色に包まれていたころです。
Calleidas 160の、作画の基礎になる図面を引いたのは一応、航空機の専門家だそうで、スロッテッド・フ
ラップと、ストレーキ部を含む前縁スラット付きですから、全体のスタイルともども、まだ新鋭機だったB727
をモデルにした感じがします(FlightGear版は単純フラップのみ)。3発エンジンのうち、中央の1発はインテ
ークがありませんが、サイドエンジンのダクトが、それぞれ内側に拡がっており、ここから抽気するようです。
(吸気効率は、かなり悪くなりそうですけれど)
FlightGear版のパネルは、セスナの計器を拝借しており、大変簡素ですが、一応VORとILSが使えるよう
です。客室は、YS-11のシートなら15席は置けそうですが、8席に抑えたゆったり仕様。FlightGear版は座席
のみの再現で、「d」キーで客室ドアが開閉できます。原作では、カレイダスという大富豪が開発させた自家
用機という設定ですので、かなり大きなテーブルやギャレー、トイレなどもあるようです。
ついでに…ちょっとだけ、「タンタンの冒険」シリーズのご紹介も。このマンガは大戦をはさんで連載され、
今もなお再販が続き、日本語版も福音館から約20冊出ており、フランス語圏を代表する、冒険コミックの
古典と言えそうです。主人公のタンタンは、中学生くらいの少年で、若いのに著名なフリーランス記者。しか
も車を運転し、飛行機を操縦し、射撃も結構うまいのは、冒険マンガならでは。作者も新聞社出身なので、
時代背景をストーリーにうまく取り入れ、昔のマンガにしては、考証がていねいです。
タンタンは世界中を駆け回って事件に巻き込まれ、戦後の作品ではアポロより早く月にも訪れて、ギャグ
満載の華麗な冒険や、謎解きを繰り広げました。作中に各種の飛行機が登場しますが、作画はなかなか
リアルです。初期の作品は戦後、ファッションや乗り物などが、時代に合わせてリライトされたのも、今なお
人気が続く理由でしょう。
エルジェは1938〜39年に、航空マンガも描いています。少年少女が高速長距離機「ストラトネフ H.22」を
操り、さまざまな妨害工作をかわしながら、パリ=ニューヨーク間の懸賞飛行に挑むお話で、いつか福音
館から翻訳が出ないかと、心待ちにしています。このストラトネフは、1934年のフランス製レーサー、コード
ロンC460を、やや大型にしたようなスタイルで、巡航速度は何と1000キロ。ですが、この時代なのでプロ
ペラ機(!)です。まぁアメリカ空軍も、戦後しばらくは、超音速ターボプロップ機の研究をしていましたから、
未来予測としては、デタラメでもありませんね…。
●簡単操作で超音速。ただし安定性が…:
では、Calleidas 160を飛ばしてみましょう。ブエノスアイレスの、アントニオ・カルロス・ジョンビン空港(SB
GL)RWY-11で離陸準備。風は150度9Kt程度、燃料はデフォルト8000Lbs満タンです。空港VOR(116.50)を
入力し、4段作動のフラップを2段下げ。トリムは中立です。
滑走を始めますと、定規で引いたような直進性。約16秒後、約230Ktに達したところで離陸。ここで、コン
パス表示が逆になっているバグを発見し、HUDとAtlasに頼る飛行に移行しました。上昇力は猛烈で、機首
を上げて速度を落とし、やっと計器速度250Kt(10000ft以下の制限速度)に合わせた時は、もう17000ftを
突破しており、上昇率毎分5850ft、対地速度321Kt、燃費0.345gal/nmでした。ここで高度保持を20000ftに
セットし、エンジン全開のまま真方位90度で定針。速度はどんどん上がり、約400Ktで自動的に主翼が作
動して、最大後退角(約60度)になります。
さて、動力性能は素晴らしいのですが。FlightGearの機体は、オートパイロットの高速飛行では、しばしば
ピッチ方向に振動が発生しますね。本機も広いラプラタ川上空を、河口方面に向かったところ、540Ktまで
加速した時点、緩やかにピッチングが始まって、「あーあ、やっぱり!」という気分です。収束する場合もあ
るのですが、困ったことに今回は発散性の振動でして、途中からロールも交じって操縦不能になりました。
空中を、転げ落ちるような格好で高度を失い、こりゃいかん…と、パワーアイドルで200Kt以下に落として、
なんとか180Ktで安定。主翼は自動的に前進し、後退角約15度に戻っていました。
JSBsimの機体は、降下すると機嫌を直す場合があるので、パワーアイドルのまま毎分6000ftで降下し、
高度10000ftまで下げて、速度をいったん220Ktにしてコースを変更。なおも加速を続けると、670Ktでまた
ピッチングが出ました。オートパイロットをピッチホールドに切り替え、取りあえず解決。最終的には、速度
872Kt、マッハ1.6を記録しましたが、燃費は0.2487nm/galと悪く、進路保持も不安定で、ぎくしゃくと左右に
旋回します。あげくの果てに、FlightGearが突然終了してしまって、さんざんでした。ちなみに、この機体は
超音速でも、かなりの急旋回が可能です。Gメーターも加速度限界も無いので、何とも言えませんが、Gは
すごい値になっていると思います(^^;)。
●YAsimでも、決して安定は良くないようで…:
フライトモデルをYAsimに切り替えて、再度離陸。今度もピッチ方向が不安定でしたが、何とかピッチホー
ルドでだまして、30000ftで680Kt、マッハ1.7、燃費は0.3387nm/galをマーク。ラプラタ河口に近い、モンテビ
デオ上空まで進出した時点で、早くも燃料が半分に減ったので反転。今度は出力を50%に落としてみたと
ころ速度675Kt、マッハ1.05を維持して、燃費0.49nm/galを記録しました。この状態では5倍速でも安定する
ようですので、この機体はどうやら、低空で高速巡航するのが向いているようです。試しにパワーを25%ま
で落すと470Ktを維持して、燃費は0.95nm/galまで改善しました。しかし癖の強い機体で、このままでは、旅
に使う気分ではありません。
テスト飛行も、そろそろ堪能しましたので、そのままAtlasに頼って、出発空港へ逆戻り。2000ftくらいで
ファイナルアプローチに入り、手動操作でパスに乗せます。慣れない機体ですので緊張気味です。
フルフラップ、ギアダウン。正規の進入速度は150Ktですが、余裕を見てパワー25%前後で160Ktを保ち、
計器盤の上端ぎりぎりに滑走路を捉えながら、正規のパスよりやや低く入り、ほぼ完璧にタッチダウン。
燃料の残りは1500Lbsでした。
最高速マッハ2は、やや大風呂敷ながら。コンコルドと比べると、極めて簡単な操作で超音速飛行ができ
ます。しかし売り物の高速を発揮しますと、航続力はせいぜい600nm程度ではないかと思われます。操縦
安定性にもかなり難があるので、さらに熟成が待たれるところです。まあ、1960年代の香り漂う「夢の飛行
機」を操縦できただけで、よしとしましょう。
ここでブロンコに乗り換えまして、アンデス山麓の都市メンドーサへ向かいます。
■推測航法の訓練を兼ねて、アルゼンチン横断の旅■
以下はフライトプランです。
◎Buenos Aires Minisitro Pistarini空港(SAEZ、VOR-115.50)34.49.21S-58.32.08W
偏差:FlightGear=偏西6.4度
▼316度(磁気323度)161nm(35分)
◎ROSARIO空港(SAAR、VOR-117.30)32.54.14S-60.47.04W
偏差:FlightGear=偏西6.19度
▼271度(磁気278度)404nm(1時間30分)
◎PLUMERILLO空港(114.90)32.49.56S-68.47.34W
→南方2nmにMendoza空港(SAMQ)
偏差:FlightGear=偏東1.28度
●さび付いた航法に、少々磨きを掛ける:
ブエノスアイレスは、350度の風11Kt程度。飛行距離は600nm弱です。搭載燃料にはかなり余裕をみて、
機内タンク4000Lbs、増槽はセンタータンクのみ1000Lbsの、計5000Lbsとしました。
前回、かなり航法に誤差があったので、かつての推測航法の精度を取り戻そうと、コース計算や風力補
正を慎重に進めました。UTC(協定世界時)1558時、現地時間では正午ごろ離陸し、6nm先でターンして
空港VOR上空に戻り、改めて目的地へ定針する、いわゆるリバーサル・ディパーチュアを実施。風速から
対地速度を出し、中継地の到着予定時刻を算出してメモを取り、高度10000ftで燃料を補助タンクに切り
替えると、ようやくフライトを楽しむ気分になりました。燃費は1.5826nm/galと順調で、眼下はひたすら広大
な耕地が続きます。
高度保持を掛けると、3倍速ではピッチングが出ますので、ピッチ保持にして、マイナス4.5度で安定。
針路保持は真方位モードですが、VORコースはちょっと右に偏向しています。これは、ラームライン(地図
上での直線・方位一定コース)と、VORが指す大圏コースの差ですので、そのままにして続航。やがて予定
より5分早く、ROSARIO空港の右アビーム(真横)を通過しました。DME測定の距離誤差は7nm。飛行距
離に対し、右に3%程度のずれが出たわけで、いささか大きい気がします。
気象状況を確認すると、間違って低空の風速を入れたことが分かり、さっそく計算をやり直しました。
ROSARIO空港VORの上空で、再び涙滴型のターンを打って、正確に目的地・PLUMERILLO空港に向けて
定針。ここからは、約400nmの長い航程になります。
●ようやく、合格レベルの航法精度に:
今使っている新ブロンコ改は、オートパイロット使用中に倍速モードに入れますと、短周期のローリング
が出る場合があります。ウィングレベラーを使うと抑えられますが、5分も飛ぶと、コースが右へ0.5度くら
い、ずれてくるようです。針路保持を真方位モードにして修正し、またレベラーを入れて、4倍速で距離を
稼ぐ…といったくり返しで、安定して飛べることが分かりました。
VORを、目的地PLUMERILLO空港に切り替え。まだ175nmも離れていますが、断続的にDMEも入ります。
引き続き、計算上の推測航法コースとVORコースは一致しませんが、計算を信じて続航。機体は、コルド
バ南方に拡がる低い山脈を越え、さらに西へ向かいます。やがて補助タンク使用済みの警告灯が点き、
機内タンクに切り替え。燃料の消費に応じて、ピッチ角の調整も頻繁に必要ですので、淡々たる巡航にして
は、結構忙しいフライトです。というわけで、あまり景色も見ずに飛び続けましたが、眼下はひたすら平らな
耕地です。アルゼンチンは、領土面積世界8位の農業国だそうですが、思わず納得の眺めです。
機内時計(UTC)で1802時、予定より11分早く、PLUMERILLO空港VORの、右アビーム7.7nm付近を
通過しました。推測航法による針路の左右誤差は、飛行距離に対して1.9%。もう一声、小さくできればとは
思いますが、これなら洋上を飛んでも天候が悪くない限り、無線標識のない孤島を狙っても、的を外すこと
のない航法精度です。ここんとこ、航法のタガが緩んでいましたが、ようやく、まずまずの結果が出ました。
今回のフライトでは、PLUMERILLO空港は航法上の目標点で、実際の着陸地は南方2nmの小飛行場、
メンドーサ空港です。まずPLUMERILLO空港の滑走路に軸線を合わせ、ローアプローチを行った後、再び
増速してやや高度を上げ、メンドーサ空港上空を通過。風下のメンドーサ市街地で反転し、減速して着陸
態勢を整え、ファイナルに入ります。
…この時、どうも機体が振り子のように、頼りなく動揺するのを感じました。まるで昔のJSBsimに戻った
みたいです。また滑走路に正対し接近を続けると、とても10Ktの横風とは思えないほど、強く機体が流され
ました。このままでは、正常な着陸は困難ですが、横風用滑走路はありません。本来ならダイバート(代替
空港への着陸)をするのでしょうが、そんな準備はしていませんので、無理やり降ろしたところ転覆してしま
い、かなり悔しい思いをしました。
スイスでも同様の状況で一度しくじっているので、目的地の滑走路が1本の場合は、代替空港を考えてお
くべきなのでしょうね。しかし、ますますフライトプランが煩雑になるので、現実的にはAtlas画面で、最寄り
の空港を探すべきかなとも思います。また横風・強風下の離着陸訓練も、絶えず必要ですね。
いささか、締まらない終わり方になりましたが…次回はアンデスを越えて、チリに向かいます。
追伸:機体改造の幅を広げるため、近くAC3Dを購入しようと思っています。すでにダウンロードして試用
中ですが、料金の支払いは、どんな方法でやるのが便利かつ、安全でしょうか。どなたかアドバイスを頂け
ますと幸いです。
がとうございました。皆さん3連休は、いかがお過ごしでしょうか。
私は、少しずつ仕事が入りまして、少々ウォームビズ(?)な気分の毎日です。あまり落ち着かない気分の
書き込みながら、今回は「Calleidas 160」という、風変わりなジェット機に試乗した後、新しいブロンコ改で、
ブエノスアイレスからアンデス山麓のメンドーサまで、アルゼンチンを横断します。
●1960年代の夢が詰まった、豪華な小型ジェット機:
きょうご紹介しますCalleidas 160は、本サイトでお馴染みの、Helijahさんの「私の格納庫」からダウンロー
ドした新作です。1966年に公表された、リアエンジン3発の超高級ビジネスジェットで、なんと可変後退翼。
最大巡航速度はマッハ2です。
はて、そんな飛行機あったっけ? とお思いでしょうが…済みません。これはベルギーを代表するマンガ
家、エルジェの長編「タンタンの冒険」シリーズ(1927年〜1976年連載)に登場する、架空機です(^^;)。
この飛行機が、「タンタン」シリーズの「シドニー行き714便」という巻に登場した1966年というと、B747の
就航まであと6年。コンコルドやボーイング 2707、ロッキード L-2000など、SSTの開発が進められ、航空
の未来がまだ、夢多きバラ色に包まれていたころです。
Calleidas 160の、作画の基礎になる図面を引いたのは一応、航空機の専門家だそうで、スロッテッド・フ
ラップと、ストレーキ部を含む前縁スラット付きですから、全体のスタイルともども、まだ新鋭機だったB727
をモデルにした感じがします(FlightGear版は単純フラップのみ)。3発エンジンのうち、中央の1発はインテ
ークがありませんが、サイドエンジンのダクトが、それぞれ内側に拡がっており、ここから抽気するようです。
(吸気効率は、かなり悪くなりそうですけれど)
FlightGear版のパネルは、セスナの計器を拝借しており、大変簡素ですが、一応VORとILSが使えるよう
です。客室は、YS-11のシートなら15席は置けそうですが、8席に抑えたゆったり仕様。FlightGear版は座席
のみの再現で、「d」キーで客室ドアが開閉できます。原作では、カレイダスという大富豪が開発させた自家
用機という設定ですので、かなり大きなテーブルやギャレー、トイレなどもあるようです。
ついでに…ちょっとだけ、「タンタンの冒険」シリーズのご紹介も。このマンガは大戦をはさんで連載され、
今もなお再販が続き、日本語版も福音館から約20冊出ており、フランス語圏を代表する、冒険コミックの
古典と言えそうです。主人公のタンタンは、中学生くらいの少年で、若いのに著名なフリーランス記者。しか
も車を運転し、飛行機を操縦し、射撃も結構うまいのは、冒険マンガならでは。作者も新聞社出身なので、
時代背景をストーリーにうまく取り入れ、昔のマンガにしては、考証がていねいです。
タンタンは世界中を駆け回って事件に巻き込まれ、戦後の作品ではアポロより早く月にも訪れて、ギャグ
満載の華麗な冒険や、謎解きを繰り広げました。作中に各種の飛行機が登場しますが、作画はなかなか
リアルです。初期の作品は戦後、ファッションや乗り物などが、時代に合わせてリライトされたのも、今なお
人気が続く理由でしょう。
エルジェは1938〜39年に、航空マンガも描いています。少年少女が高速長距離機「ストラトネフ H.22」を
操り、さまざまな妨害工作をかわしながら、パリ=ニューヨーク間の懸賞飛行に挑むお話で、いつか福音
館から翻訳が出ないかと、心待ちにしています。このストラトネフは、1934年のフランス製レーサー、コード
ロンC460を、やや大型にしたようなスタイルで、巡航速度は何と1000キロ。ですが、この時代なのでプロ
ペラ機(!)です。まぁアメリカ空軍も、戦後しばらくは、超音速ターボプロップ機の研究をしていましたから、
未来予測としては、デタラメでもありませんね…。
●簡単操作で超音速。ただし安定性が…:
では、Calleidas 160を飛ばしてみましょう。ブエノスアイレスの、アントニオ・カルロス・ジョンビン空港(SB
GL)RWY-11で離陸準備。風は150度9Kt程度、燃料はデフォルト8000Lbs満タンです。空港VOR(116.50)を
入力し、4段作動のフラップを2段下げ。トリムは中立です。
滑走を始めますと、定規で引いたような直進性。約16秒後、約230Ktに達したところで離陸。ここで、コン
パス表示が逆になっているバグを発見し、HUDとAtlasに頼る飛行に移行しました。上昇力は猛烈で、機首
を上げて速度を落とし、やっと計器速度250Kt(10000ft以下の制限速度)に合わせた時は、もう17000ftを
突破しており、上昇率毎分5850ft、対地速度321Kt、燃費0.345gal/nmでした。ここで高度保持を20000ftに
セットし、エンジン全開のまま真方位90度で定針。速度はどんどん上がり、約400Ktで自動的に主翼が作
動して、最大後退角(約60度)になります。
さて、動力性能は素晴らしいのですが。FlightGearの機体は、オートパイロットの高速飛行では、しばしば
ピッチ方向に振動が発生しますね。本機も広いラプラタ川上空を、河口方面に向かったところ、540Ktまで
加速した時点、緩やかにピッチングが始まって、「あーあ、やっぱり!」という気分です。収束する場合もあ
るのですが、困ったことに今回は発散性の振動でして、途中からロールも交じって操縦不能になりました。
空中を、転げ落ちるような格好で高度を失い、こりゃいかん…と、パワーアイドルで200Kt以下に落として、
なんとか180Ktで安定。主翼は自動的に前進し、後退角約15度に戻っていました。
JSBsimの機体は、降下すると機嫌を直す場合があるので、パワーアイドルのまま毎分6000ftで降下し、
高度10000ftまで下げて、速度をいったん220Ktにしてコースを変更。なおも加速を続けると、670Ktでまた
ピッチングが出ました。オートパイロットをピッチホールドに切り替え、取りあえず解決。最終的には、速度
872Kt、マッハ1.6を記録しましたが、燃費は0.2487nm/galと悪く、進路保持も不安定で、ぎくしゃくと左右に
旋回します。あげくの果てに、FlightGearが突然終了してしまって、さんざんでした。ちなみに、この機体は
超音速でも、かなりの急旋回が可能です。Gメーターも加速度限界も無いので、何とも言えませんが、Gは
すごい値になっていると思います(^^;)。
●YAsimでも、決して安定は良くないようで…:
フライトモデルをYAsimに切り替えて、再度離陸。今度もピッチ方向が不安定でしたが、何とかピッチホー
ルドでだまして、30000ftで680Kt、マッハ1.7、燃費は0.3387nm/galをマーク。ラプラタ河口に近い、モンテビ
デオ上空まで進出した時点で、早くも燃料が半分に減ったので反転。今度は出力を50%に落としてみたと
ころ速度675Kt、マッハ1.05を維持して、燃費0.49nm/galを記録しました。この状態では5倍速でも安定する
ようですので、この機体はどうやら、低空で高速巡航するのが向いているようです。試しにパワーを25%ま
で落すと470Ktを維持して、燃費は0.95nm/galまで改善しました。しかし癖の強い機体で、このままでは、旅
に使う気分ではありません。
テスト飛行も、そろそろ堪能しましたので、そのままAtlasに頼って、出発空港へ逆戻り。2000ftくらいで
ファイナルアプローチに入り、手動操作でパスに乗せます。慣れない機体ですので緊張気味です。
フルフラップ、ギアダウン。正規の進入速度は150Ktですが、余裕を見てパワー25%前後で160Ktを保ち、
計器盤の上端ぎりぎりに滑走路を捉えながら、正規のパスよりやや低く入り、ほぼ完璧にタッチダウン。
燃料の残りは1500Lbsでした。
最高速マッハ2は、やや大風呂敷ながら。コンコルドと比べると、極めて簡単な操作で超音速飛行ができ
ます。しかし売り物の高速を発揮しますと、航続力はせいぜい600nm程度ではないかと思われます。操縦
安定性にもかなり難があるので、さらに熟成が待たれるところです。まあ、1960年代の香り漂う「夢の飛行
機」を操縦できただけで、よしとしましょう。
ここでブロンコに乗り換えまして、アンデス山麓の都市メンドーサへ向かいます。
■推測航法の訓練を兼ねて、アルゼンチン横断の旅■
以下はフライトプランです。
◎Buenos Aires Minisitro Pistarini空港(SAEZ、VOR-115.50)34.49.21S-58.32.08W
偏差:FlightGear=偏西6.4度
▼316度(磁気323度)161nm(35分)
◎ROSARIO空港(SAAR、VOR-117.30)32.54.14S-60.47.04W
偏差:FlightGear=偏西6.19度
▼271度(磁気278度)404nm(1時間30分)
◎PLUMERILLO空港(114.90)32.49.56S-68.47.34W
→南方2nmにMendoza空港(SAMQ)
偏差:FlightGear=偏東1.28度
●さび付いた航法に、少々磨きを掛ける:
ブエノスアイレスは、350度の風11Kt程度。飛行距離は600nm弱です。搭載燃料にはかなり余裕をみて、
機内タンク4000Lbs、増槽はセンタータンクのみ1000Lbsの、計5000Lbsとしました。
前回、かなり航法に誤差があったので、かつての推測航法の精度を取り戻そうと、コース計算や風力補
正を慎重に進めました。UTC(協定世界時)1558時、現地時間では正午ごろ離陸し、6nm先でターンして
空港VOR上空に戻り、改めて目的地へ定針する、いわゆるリバーサル・ディパーチュアを実施。風速から
対地速度を出し、中継地の到着予定時刻を算出してメモを取り、高度10000ftで燃料を補助タンクに切り
替えると、ようやくフライトを楽しむ気分になりました。燃費は1.5826nm/galと順調で、眼下はひたすら広大
な耕地が続きます。
高度保持を掛けると、3倍速ではピッチングが出ますので、ピッチ保持にして、マイナス4.5度で安定。
針路保持は真方位モードですが、VORコースはちょっと右に偏向しています。これは、ラームライン(地図
上での直線・方位一定コース)と、VORが指す大圏コースの差ですので、そのままにして続航。やがて予定
より5分早く、ROSARIO空港の右アビーム(真横)を通過しました。DME測定の距離誤差は7nm。飛行距
離に対し、右に3%程度のずれが出たわけで、いささか大きい気がします。
気象状況を確認すると、間違って低空の風速を入れたことが分かり、さっそく計算をやり直しました。
ROSARIO空港VORの上空で、再び涙滴型のターンを打って、正確に目的地・PLUMERILLO空港に向けて
定針。ここからは、約400nmの長い航程になります。
●ようやく、合格レベルの航法精度に:
今使っている新ブロンコ改は、オートパイロット使用中に倍速モードに入れますと、短周期のローリング
が出る場合があります。ウィングレベラーを使うと抑えられますが、5分も飛ぶと、コースが右へ0.5度くら
い、ずれてくるようです。針路保持を真方位モードにして修正し、またレベラーを入れて、4倍速で距離を
稼ぐ…といったくり返しで、安定して飛べることが分かりました。
VORを、目的地PLUMERILLO空港に切り替え。まだ175nmも離れていますが、断続的にDMEも入ります。
引き続き、計算上の推測航法コースとVORコースは一致しませんが、計算を信じて続航。機体は、コルド
バ南方に拡がる低い山脈を越え、さらに西へ向かいます。やがて補助タンク使用済みの警告灯が点き、
機内タンクに切り替え。燃料の消費に応じて、ピッチ角の調整も頻繁に必要ですので、淡々たる巡航にして
は、結構忙しいフライトです。というわけで、あまり景色も見ずに飛び続けましたが、眼下はひたすら平らな
耕地です。アルゼンチンは、領土面積世界8位の農業国だそうですが、思わず納得の眺めです。
機内時計(UTC)で1802時、予定より11分早く、PLUMERILLO空港VORの、右アビーム7.7nm付近を
通過しました。推測航法による針路の左右誤差は、飛行距離に対して1.9%。もう一声、小さくできればとは
思いますが、これなら洋上を飛んでも天候が悪くない限り、無線標識のない孤島を狙っても、的を外すこと
のない航法精度です。ここんとこ、航法のタガが緩んでいましたが、ようやく、まずまずの結果が出ました。
今回のフライトでは、PLUMERILLO空港は航法上の目標点で、実際の着陸地は南方2nmの小飛行場、
メンドーサ空港です。まずPLUMERILLO空港の滑走路に軸線を合わせ、ローアプローチを行った後、再び
増速してやや高度を上げ、メンドーサ空港上空を通過。風下のメンドーサ市街地で反転し、減速して着陸
態勢を整え、ファイナルに入ります。
…この時、どうも機体が振り子のように、頼りなく動揺するのを感じました。まるで昔のJSBsimに戻った
みたいです。また滑走路に正対し接近を続けると、とても10Ktの横風とは思えないほど、強く機体が流され
ました。このままでは、正常な着陸は困難ですが、横風用滑走路はありません。本来ならダイバート(代替
空港への着陸)をするのでしょうが、そんな準備はしていませんので、無理やり降ろしたところ転覆してしま
い、かなり悔しい思いをしました。
スイスでも同様の状況で一度しくじっているので、目的地の滑走路が1本の場合は、代替空港を考えてお
くべきなのでしょうね。しかし、ますますフライトプランが煩雑になるので、現実的にはAtlas画面で、最寄り
の空港を探すべきかなとも思います。また横風・強風下の離着陸訓練も、絶えず必要ですね。
いささか、締まらない終わり方になりましたが…次回はアンデスを越えて、チリに向かいます。
追伸:機体改造の幅を広げるため、近くAC3Dを購入しようと思っています。すでにダウンロードして試用
中ですが、料金の支払いは、どんな方法でやるのが便利かつ、安全でしょうか。どなたかアドバイスを頂け
ますと幸いです。
投票数:84
平均点:5.12
投稿ツリー
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手探り航法・旅日記(その2)
(hide, 2008-7-7 21:53)
- Re: 手探り航法・旅日記(その2) (Tat, 2008-7-8 4:54)
-
Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(hide, 2008-7-9 19:04)
-
Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(Tat, 2008-7-10 3:08)
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Calleidas 160試乗と、アルゼンチン横断の旅
(hide, 2008-7-20 21:22)
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ac3d について
(Tat, 2008-7-21 2:52)
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Re: ac3d について
(hide, 2008-7-27 16:23)
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アンデスの昼と夜(その1)
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Re: ac3d について
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ac3d について
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Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(Tat, 2008-7-10 3:08)
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Re: 手探り航法・旅日記(その2)
(toshi, 2009-2-17 2:28)
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Re: 手探り航法・旅日記(その2)
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YS−11でアメリカ中西部を行く
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(Tat, 2009-7-28 0:25)
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(Tat, 2009-7-29 12:23)
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
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帰還…富士山と松山に再会
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Re: 帰還…富士山と松山に再会
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Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
(toshi, 2010-5-21 2:37)
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Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
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Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
(sambar, 2011-2-16 22:03)
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Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
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Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
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Re: GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
(toshi, 2011-7-14 1:09)
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GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅
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Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
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Re: 北半球を一周する「グレート・サークル・バレー」
(sambar, 2011-2-16 22:03)
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Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
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Re: 夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
(toshi, 2010-5-21 2:37)
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夢の視界100マイル、そして南極からの帰還
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Re: 帰還…富士山と松山に再会
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Re: 帰還…富士山と松山に再会
(toshi, 2010-2-1 23:32)
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帰還…富士山と松山に再会
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空の巨船と零戦に導かれ…ハワイから硫黄島へ
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新開発の航法でバリンジャー隕石孔へ
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(Tat, 2009-7-29 12:23)
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
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Re: YS−11でアメリカ中西部を行く
(Tat, 2009-7-28 0:25)
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YS−11でアメリカ中西部を行く
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コロンブス初上陸の島へ
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Re: 手探り航法・旅日記(その2)
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